第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、人々の健康を支え、いい人生を提供すること、イノベーションを通して人々の健康を支え、幸せでいい人生を送っていただけるための土台となることを使命として、健康を支えるインフラを提供すること、さまざまなサービスを絶えず展開し、人々の健康を支えるインフラを提供することを目指します。

 国内の健康寿命や平均寿命が年々伸びを見せるとともに人々の健康でありたいとの想いが高まるなかで、医療・健康に関連する事業領域は広がりを見せております。当社グループは、臨床検査事業及び調剤薬局事業で培ったノウハウとICTを活用し、顧客ニーズに対応した医療・健康サポートサービスを提供してまいります。

 また、ステークホルダーの信頼に応えるため、財務基盤の安定化に努めるとともに、事業の収益力の向上を図り、グループ全体での企業価値の向上を目指してまいります。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略及び事業上・財務上の課題

 当社グループは、2024年5月に、2030年までの期間を事業の転換期とし、当社グループの果たすべき役割とグループ全体の経営方針を示す長期ビジョン「FALCO VISION 2030」を策定いたしました。また「FALCO VISION 2030」の実現に向けて、2024年度から2026年度までの3ヶ年を中長期的な持続的成長に向けた事業構造の転換推進期とし、中期経営計画「FALCO INNOVATION 2026」を策定いたしました。

 

①長期ビジョン「FALCO VISION 2030」

 「FALCO VISION 2030」におきましては、事業構造の転換をグループ経営方針として定めており、事業ポートフォリオの変革により、成長事業による利益の成長と基盤事業による利益の安定化を実現することにより、持続的成長可能な収益構造への転換を目指しております。

 また、企業価値向上に向けた取り組みについて定めており、株価純資産倍率(PBR)の向上に向けて、収益性及び資本効率の向上による自己資本利益率(ROE)の改善と期待成長率の向上を図るため、中長期的に以下の取り組みを推進しております。

1)事業ポートフォリオの変革

2)成長事業の強化

3)適切なキャピタルアロケーション

4)株主還元の強化

5)成長に向けた事業基盤の強化

 

②中期経営計画「FALCO INNOVATION 2026」

 「FALCO INNOVATION 2026」におきましては、事業構造の転換の推進により持続的成長に向けた収益基盤を確立することを中期経営方針として、以下の基本方針を定めております。

1)臨床検査事業・調剤薬局事業の事業変革の推進

2)ゲノム事業・ICT事業の更なる成長に向けた取り組みの推進

3)サステナビリティの実現に向けた取り組みの推進

4)中長期的な成長に向けた事業基盤の確立

5)適切なキャピタルアロケーションと配当を重視した株主還元

 上記の基本方針のもと、各事業において、以下の取り組みを推進することにより、医療を取り巻く環境変化に対応したインフラを提供し、社会課題を解決するソリューションを提供してまいります。

 

1)臨床検査事業:情報化の推進による集荷体制の強化と検査業務の効率化

2)調剤薬局事業:高齢者施設向けの新たな薬局・ビジネスモデルの確立

3)ゲノム事業: NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)及び体外診断用医薬品「MSI検査キット(FALCO)」の市場拡大と遺伝性腫瘍パネル検査の開発

4)ICT事業:医療DXの推進を見据えた顧客基盤の確立とサービス価値の向上

 

 また、配当による株主還元をより一層強化し、中長期的な株主価値の向上を図るため、当連結会計年度より、株主還元に関する指標を連結純資産総還元率から連結純資産配当率(DOE)に変更し、株主還元につきましては連結純資産配当率(DOE)5%を目標としております。

 

 上記の株主還元の目標の達成及び株価純資産倍率(PBR)の向上に向けて、収益性と資本効率の向上及び期待成長率の向上を図るため、「FALCO INNOVATION 2026」におきましては、自己資本利益率(ROE)8%以上、営業利益28億円、当期純利益20億円を中期経営計画の対象期間における中期経営目標としております。

 

 「FALCO INNOVATION 2026」の初年度である当連結会計年度の進捗状況は、臨床検査事業におきましては、検体の集荷体制の強化及び検査データの集中管理による検査業務の効率化などにより、生産性が向上し、順調に推移いたしました。ゲノム事業におきましては、NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)の販路拡大及び体外診断用医薬品「MSI検査キット(FALCO)」の市場浸透を図るとともに、遺伝性腫瘍パネル検査の薬事申請・保険適用に向けた研究開発を推進いたしました。

 調剤薬局事業におきましては、高齢者施設からの処方箋応需を拡大し、ICTの活用による調剤業務の標準化と効率化を着実に進めました。

 ICT事業におきましては、販売体制の確立と新たな機能開発を推進したことにより、診療所向けクラウド型レセプト総合支援サービス「レセスタ」の契約数及び中小規模病院向けクラウド型電子カルテ「HAYATE/NEO」の導入数は順調に増加いたしました。

 また、収益性及び資本効率の改善により、自己資本利益率(ROE)が向上いたしました。株主還元につきましては、継続的な増配により、連結純資産配当率(DOE)5%の早期目標達成を見込んでおります。

 

 このような状況により、中期経営目標の達成に向けて、当連結会計年度は順調に推移いたしました。

 

 当社グループは、「FALCO INNOVATION 2026」の取り組みを推進し、引き続き事業構造の転換による持続的成長可能な収益基盤の確立と中長期的な株主価値の向上を図ってまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、持続可能な社会の実現に向けて、社会・環境問題等をはじめとするサステナビリティに関する課題に対して、事業活動を通じた取り組みを推進してまいります。

 当社グループが取り組む7つのマテリアリティ

 ①健康で安心な社会の暮らしの実現

 ②イノベーションを通じた社会課題の解決

 ③脱炭素社会の実現

 ④自然環境の保全

 ⑤ダイバーシティ&インクルージョンの推進

 ⑥働きやすく活躍できる環境の確保

 ⑦地域社会との共生

 

(1)ガバナンス

 当社グループでは、企業活動を通じて、お客様、株主様、従業者をはじめ、私たちを取り巻くステークホルダーの皆様にいい人生を送っていただけることに、私たちの存在価値があると考えています。

 サステナビリティ経営の推進のため、取締役会のもとに「サステナビリティ委員会」を設置し、グループ全体のサステナビリティに関する方針・対策の立案、リスク・機会の特定、サステナビリティに関する情報の収集及び方針に基づく事業会社・各部門の取組状況の監督等を行い、活動状況については、取締役会へ報告され、必要に応じて対応指示を行っております。

 サステナビリティに関するリスクについては、リスク管理委員会と連携し、リスクマネジメント体制において管理しています。

 

(2)戦略

①気候変動

 気候変動に関するシナリオ分析においては主要な事業である臨床検査事業・調剤薬局事業・ICT事業を対象に、2030年度の影響を検討しました。

 シナリオは、脱炭素へ移行する2℃シナリオと、現状を上回る温暖化対策が取られず温暖化が進行する4℃シナリオの2つを検討しました。

シナリオに基づくリスクと機会の抽出を行い、必要な対応を検討した結果、臨床検査事業・調剤薬局事業・ICT事業における、気候変動に伴う重大な事業リスクは確認されませんでした。

 当社グループは、脱炭素社会の実現・資源環境の保全に向け、事業活動を通じ温室効果ガスの削減、環境負荷の低減等に取り組んでおります。

 

②人材育成

 当社グループは、中長期的な持続的成長に向けて、イノベーションを促進し労働生産性を向上するために、以下のとおり人材基盤の強化に取り組んでおります。

・多様な人材の採用強化

薬剤師・臨床検査技師等の専門人材やデジタル人材等多様な人材の採用強化

・多様な人材とリーダーの育成

女性管理職を含む次世代リーダーの早期登用と育成、デジタル人材の育成とDX推進力の強化

・働きやすい環境の整備

多様で柔軟な働き方を選択できる環境の整備、定年延長・シニア人材の雇用確保を見据えた人事制度の構築

・人材の活躍機会の提供

ジョブローテーションやワークシェアによる多様な活躍機会の提供、女性・シニア人材の活躍推進

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、業務の健全性と適切性の確保を図り、持続的な成長を実現するため、業務におけるリスクを把握し、損失防止につとめるとともに、リスク発生時に迅速に対応できるように、リスクマネジメント体制を構築し、当社グループのリスク評価の実施・リスクマネジメントの推進機関として、取締役会のもとに「リスク管理委員会」を設置しています。

 リスク管理委員会では、当社グループのリスクマネジメントに関する方針・対策の立案や方針に基づく事業会社・各部門の取組状況の監督、リスク情報の収集等を行っています。

 サステナビリティに関するリスクについても、サステナビリティ委員会と連携し、リスクマネジメント体制において管理しています。

 リスク管理委員会での審議内容・活動状況については、取締役会へ報告し、必要に応じて対応指示を受けています。

(4)指標と目標

 環境問題、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮などを「行動指針」(ESG5箇条)として定め、従業員に周知しております。

① 気候変動

 当社グループは、省エネ設備への更新、業務のICT化等によるペーパレス化等に取り組んでいます。当社グループとしてのCO2排出量削減の目標設定に向けた検討を進めています。

 

② 人材育成

 当社グループは経営者候補及び経営幹部候補を早期選抜もしくは採用し、将来のグループ経営を担う人材育成に取り組んでおります。また、当社グループの管理職に占める女性比率の向上を目指し、係長職以下の役職に占める割合を高める取り組みを進めていきます。

 有給休暇の取得推進、リフレッシュ休暇制度の導入、育児・介護の両立支援等、ワークライフバランスを実現しながら、多様な人材が働きやすく活躍できる環境整備に取り組んでおります。

 

 

3【事業等のリスク】

  有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)臨床検査事業の法的規制について

  当社グループが実施する臨床検査事業は、「臨床検査技師等に関する法律」により衛生検査所が所在する都道府県知事の許可を必要とし、衛生検査所の設備、管理組織等の面において、同法に基づく規制が実施されております。万一、法令違反により、営業停止又は取消を受けることとなった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

許認可の名称

有効期限

関連する法令

登録等の交付者

衛生検査所登録

臨床検査技師等に関する法律

各都道府県知事

体外診断用医薬品製造業登録

5年

医薬品医療機器等法

各都道府県知事

体外診断用医薬品製造販売業許可

5年

医薬品医療機器等法

各都道府県知事

 

(2)調剤薬局事業に対する法的規制について

  当社グループが実施する調剤薬局事業は、「医薬品医療機器等法」や「健康保険法」等により各都道府県知事の許可並びに各地方厚生局長の指定等を必要とし、調剤薬局の設備、管理組織等の面において、同法等に基づく規制が実施されております。万一、法令違反により、営業停止又は取消を受けることとなった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

許認可等の名称

有効期限

関連する法令

登録者の交付者

医薬品販売業許可

6年

医薬品医療機器等法

各都道府県知事

薬局開設許可

6年

医薬品医療機器等法

各都道府県知事

保険薬局指定

6年

健康保険法

各地方厚生(支)局長

麻薬小売業者免許

3年

麻薬及び向精神薬取締法

各都道府県知事

医療機器販売業許可

6年

医薬品医療機器等法

各都道府県知事

 

(3)その他法的規制について

 上記の臨床検査事業及び調剤薬局事業の法的規制以外にも独占禁止法、税制、環境関連諸法令等様々な公的規制を受けております。
 万一、これらの規制を遵守できなかった場合、制裁金等を課される可能性があります。また、今後規制の強化や大幅な変更がなされた場合、当社グループの活動の制約を受けたり、規制内容の変更に対応するためのコストが発生する可能性があります。これらの規制は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 この対策として、許認可等の状況を各担当部門が定期的に確認することに加え、関連法令の改正情報を早期に入手し、影響を検討し対応することにより、リスクの低減を図ってまいります。

(4)診療報酬点数の改定について

  当社グループが実施する臨床検査に係る診療報酬点数は、「健康保険法」の規定により厚生労働省が決定しております。また、毎年の診療報酬点数の引き下げが慣例となっており、今後、健康保険法の改正が行われ診療報酬点数が引き下げられた場合、臨床検査事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 この対策として、健康保険法の改正情報を早期に入手し、影響を検討し早期に対応するとともに、検査体制及び営業体制の再構築を進め、収益基盤の強化に継続的に取り組むことによってリスクの低減を図ってまいります。

(5)薬価並びに調剤報酬の改定について

  当社グループが実施する調剤薬局事業に係る薬価並びに調剤報酬は、「健康保険法」の規定により厚生労働省が決定しております。今後、健康保険法の改正が行われ薬価並びに調剤報酬が引き下げられた場合、調剤薬局事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 この対策として、健康保険法の改正情報を早期に入手し影響を検討し、医薬品購入価格の低減化等をはじめとする対応を行うとともに、店舗運営の効率化を継続的に取り組むことによってリスクの低減を図ってまいります。

 

(6)検査過誤及び調剤過誤について

  当社グループが実施する臨床検査事業に係る検査過誤を防止するため、標準作業書に基づく作業の徹底と精度管理体制を整えるとともに、細心の注意を払い検査業務を行っておりますが、万一、検査過誤等による訴訟等が生じた場合、信用失墜や賠償責任等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
  また、調剤薬局事業に係る調剤過誤を防止するために「調剤ミス防止システム」等を導入し、ミス防止体制を整えるとともに、細心の注意を払い調剤業務を行っておりますが、万一、調剤過誤等による訴訟等が生じた場合、信用失墜や賠償責任等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(7)情報保護について

  当社グループの事業において、事業活動上多くの個人・顧客情報を取り扱っており、その保護に努めておりますが、万一、情報が外部に流出した場合、信用失墜や賠償責任等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 この対策として、当社では「個人情報保護方針」「情報セキュリティーポリシー」を制定するとともに、医療総合サービスにおける情報セキュリティーの重要性を深く認識し、安心・安全な情報システム環境の構築に努め、情報セキュリティーの確保、委託先への適切な監督や社内通報の保護に向けた必要な取り組みを継続的に実施しております。また、グループ会社の全役員・従業員が、情報の守秘義務はもとより、個人情報保護法等の関連法令等を遵守し、個人情報の適切な保護が確保できるよう、教育研修の実施等を通じて、従業者の個人情報の保護意識の継続的な啓発を図ってまいります。

(8)企業買収等について

  当社グループは、企業買収及び資本参加を含む投資による事業の拡大を企画することがあります。当社グループは対象事業との統合効果を最大限に高めるために当社グループの経営戦略等を図りますが、期待した利益やシナジー効果をあげられる保証はありません。

(9)投資有価証券の減損処理について

  当社グループは、市場価格のない株式等以外の有価証券を保有しておりますが、時価が著しく下落した場合には、取得原価と時価との差額を当該期の損失とすることとなり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(10)関係会社株式の減損処理について

  今後、企業買収等により取得した関係会社株式において、当初想定していた超過収益力が低下した場合、関係会社株式の減損処理等によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(11)固定資産の減損処理について

  当社グループは、自社保有している固定資産の価値が将来大幅に下落した場合並びに店舗等の収益性が低下した場合、減損会計の適用により対象となる資産又は資産グループに対して、固定資産の減損処理が必要になる場合があります。これにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(12)繰延税金資産の取崩しについて

 当社グループは、将来の課税所得の予測に基づいて繰延税金資産の計上・取崩を行っております。経営成績が大幅に悪化した場合には、繰延税金資産の回収が見込めないと判断をし、繰延税金資産を減少させることにより、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)子会社の統廃合について

  当社は、競争力強化のため買収した子会社の統廃合を実施しております。今後、子会社の統廃合を実施した場合、当社の財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(14)災害、事故等に起因する事業活動の停止、制約等について

  当社グループの各事業所が、大規模な台風、地震等の自然災害に見舞われた場合は操業に支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、重大な労働災害、設備事故等が発生した場合には事業活動の停止、制約等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 この対策として、実際に自然災害が発生した場合は、直ちに対策本部を立ち上げ対応できる体制を整備しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善の下、景気は緩やかな回復が見られました。一方で、先行きにつきましては、米国の通商政策や物価上昇の継続、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある状況にあります。

 当社グループを取り巻く経営環境は、受託臨床検査市場におきましては、医療機関への受診控えが解消したこと等により、コロナ禍前の環境へと回復しつつあります。また、ゲノム医療における遺伝学的検査の重要性が注目されており、遺伝子情報を活用した個別化医療への期待が高まっております。一方で、調剤薬局市場におきましては、調剤報酬及び薬価の改定による影響が大きく、厳しい事業環境となりました。医療分野におきましては、医療DXの実現に向け、情報通信、デジタル技術やデータを活用した新たなビジネスやサービスの創出が期待されております。

 このような状況のもと、当社グループは、2024年5月に長期ビジョン「FALCO VISION 2030」・中期経営計画「FALCO INNOVATION 2026」を策定し、中長期的な持続的成長に向けた収益基盤を確立するために、基盤事業である臨床検査事業・調剤薬局事業の事業変革を推進するとともに、成長事業であるゲノム事業・ICT事業の更なる成長に向けた取り組みを推進してまいりました。

 当連結会計年度におきましては、臨床検査事業及びICT事業の売上高、営業利益が増加したことにより、売上高は43,313百万円(前年同期比0.7%増)、営業利益は2,335百万円(同8.5%増)、経常利益は2,499百万円(同9.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,920百万円(同15.2%増)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

(臨床検査事業)

 臨床検査事業におきましては、大都市圏を重点地域とした事業展開を進めたこと等により、受託数は増加いたしました。また、情報化の推進による集荷体制の強化と検査業務の効率化を推進することにより、生産性が向上し、コスト構造の改善が進みました。

 ゲノム事業におきましては、体外診断用医薬品「MSI検査キット(FALCO)」の販売が堅調に推移し、周産期医療に係る遺伝子検査につきましても販路拡大に努めてまいりました。また、遺伝性腫瘍パネル検査の薬事申請・保険適用に向けた研究開発を推進いたしました。

 このような事業展開の結果、臨床検査事業の売上高は26,397百万円(前年同期比1.7%増)、営業利益は1,594百万円(同5.9%増)となりました。

(調剤薬局事業)

 当社グループが運営する調剤薬局等店舗総数は、当連結会計年度に3店舗閉局したことにより、107店舗(フランチャイズ店5店舗含む)となりました。

 調剤薬局事業におきましては、かかりつけ薬剤師・薬局として求められる役割・機能を果たすとともに、高齢者施設及び在宅を中心とした地域医療との連携を進めつつ、処方箋応需の拡大に取り組んでまいりました。また、電子処方箋の受付やオンライン服薬指導等のICTを活用した患者との接点の強化、調剤業務の標準化と効率化を推進してまいりました。

 このような事業展開を行ってまいりましたが、店舗数減少等による処方箋応需枚数の減少及び薬価改定による影響を受け、売上高は15,464百万円(前年同期比3.3%減)、営業利益は816百万円(同15.0%減)となりました。

 

(ICT事業)

 ICT事業におきましては、販売活動を推進したことにより、診療所向けクラウド型レセプト総合支援サービス「レセスタ」の契約数及び中小規模病院向けクラウド型電子カルテ「HAYATE/NEO」の導入数は、順調に増加いたしました。また、医療DXの推進を見据え、顧客基盤の確立とサービス価値向上に向け、新たな機能開発を推進してまいりました。

 このような事業展開の結果、ICT事業の売上高は1,452百万円(前年同期比35.8%増)、営業利益は353百万円(同148.5%増)となりました。

 

②財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は18,228百万円(前年同期末比5.2%減)となり、前連結会計年度末に比べ997百万円減少いたしました。これは主に現金及び預金が644百万円減少したことによるものであります。固定資産は17,790百万円(同3.4%増)となり、前連結会計年度末に比べ591百万円増加いたしました。これは主に工具、器具及び備品が290百万円増加したことによるものであります。

 この結果、総資産は、36,019百万円(同1.1%減)となり、前連結会計年度末に比べ406百万円減少いたしました。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は7,432百万円(前年同期末比4.3%減)となり、前連結会計年度末に比べ331百万円減少いたしました。これは主に仕入債務が129百万円減少したことによるものであります。固定負債は3,332百万円(同26.5%増)となり、前連結会計年度末に比べ698百万円増加いたしました。これは主に長期借入金が844百万円増加したことによるものであります。

 この結果、負債合計は10,765百万円(同3.5%増)となり、前連結会計年度末に比べ366百万円増加いたしました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は25,253百万円(前年同期末比3.0%減)となり、前連結会計年度末に比べ773百万円減少いたしました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益1,920百万円、剰余金の配当1,440百万円及び自己株式の取得1,218百万円によるものであります。

 この結果、自己資本比率は69.9%(前連結会計年度末は71.2%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ644百万円減少し、9,420百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は2,619百万円(前年同期は3,433百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益2,777百万円、減価償却費936百万円、法人税等の支払額663百万円及び投資有価証券売却益397百万円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は1,182百万円(前年同期は1,445百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,082百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は2,082百万円(前年同期は4,527百万円の使用)となりました。これは主に、配当金の支払額1,438百万円及び自己株式の取得による支出1,218百万円によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

  臨床検査事業(百万円)

26,397

101.7

  調剤薬局事業(百万円)

15,463

96.7

  ICT事業(百万円)

1,452

135.8

合 計(百万円)

43,313

100.7

(注)金額は販売価額によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

  臨床検査事業

26,407

101.7

260

104.1

  調剤薬局事業

  ICT事業

1,453

133.9

78

101.3

     合 計

27,861

103.0

339

103.5

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

  臨床検査事業(百万円)

26,397

101.7

  調剤薬局事業(百万円)

15,463

96.7

  ICT事業(百万円)

1,452

135.8

合 計(百万円)

43,313

100.7

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主要な販売先(総販売実績に対する割合が10%以上)に該当するものはありません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績の分析

(概要および売上高・営業利益)

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等の概要および売上高、営業利益は、「(1)経営成績等の状況の概要①経営成績の状況」に記載しております。

 

(経常利益)

 経常利益は、営業利益の増加の影響に加え、受取保証料33百万円の影響等により、前連結会計年度に比べ211百万円増加し、2,499百万円(同9.2%増)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の増加の影響に加え、投資有価証券売却益397百万円を特別利益として計上した影響により、前連結会計年度に比べ253百万円増加し、1,920百万円(同15.2%増)となりました。

 

財政状態の分析

 財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要の主なものは、臨床検査事業における検査試薬、調剤薬局事業における医薬品の購入費やICT事業のソフトウェア開発費のほか、各事業における人件費や製造・販売経費等があります。また、設備投資需要としては、臨床検査事業の検査設備及び事業所、調剤薬局事業の店舗設備やICT事業の自社開発ソフトウェア等があります。

 当社グループでは事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入れにより資金調達を行っており、当社においてグループ全体の運転資金及び設備資金を一元管理しております。

 運転資金は内部資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。

 また、当連結会計年度末現在において予定されている臨床検査事業の検査機器等や調剤薬局事業の店舗設備等の設備投資については、自己資金及び借入金を充当する予定です。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は1,439百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は9,420百万円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

業務・資本提携契約

 

契約会社名

相手方の名称

契約締結日

契約内容

株式会社ファルコ

ホールディングス

(当社)

株式会社ODK

ソリューションズ

2016年8月5日

業務提携

1.ITシステムに係る業務の委託

2.ITシステム開発における協力

3.協業サービスの商品企画

4.協業サービスの提供実現に向けた

システム開発及び導入

5.協業サービスの共同営業展開

資本提携

株式の相互保有

株式会社ファルコ

ホールディングス

(当社)

株式会社ビー・エム・エル

2023年3月10日

業務提携

1.検査機能の相互補完と受注拡大

2.基幹ラボの相互連携によるBCP対応

3.地域ラボの相互活用による効率化とサービス向上

4.顧客基盤の相互活用によるICT事業の収益拡大

資本提携

株式の相互保有

 

6【研究開発活動】

 当グループは、臨床検査事業においてゲノム医療に関する研究開発に取り組んでおります。

 当社の連結子会社である㈱ファルコバイオシステムズにおいて、遺伝性腫瘍パネル検査の研究開発活動を推進しておりますが、当連結会計年度に研究開発費として計上するものはありません。