(1)会社の経営の基本方針
当社は1962年の創業以来、自主自立の精神で、企業理念『わが社は、最新の情報技術を提供し、お客様の繁栄に寄与するとともに、社員の生きがいを大切にし、社会と共に発展することを目指します。』に則り、経営を続けてまいりました。今後も当社はこの精神のもと、『情報通信技術で社会とお客様の繁栄に寄与し、最も信頼されるパートナー企業となる』ことを経営ビジョンに掲げ、できる限りお客様に近い位置に存在し、お客様の真のニーズ・課題を、共に考え、解決案を提案し、実現していく企業を目指してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、成長性と収益性の拡大を追求して企業価値を高めることが株主重視の経営であると認識し、経営指標としては、売上高、営業利益、自己資本利益率を重視しております。
(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
当社グループが属する情報サービス産業においては、事業の強化や変革を推進するDXの潮流が、企業の競争力強化に向けた戦略的投資需要を高め、需要は増加基調で推移していくことが見込まれております。
当社グループでは、2022年4月から2025年3月における中期経営計画「Shift to the Smart SI Plus」に基づき、市場や社会の潜在ニーズを捉えた付加価値の高いITサービスを提供していく基本コンセプトを前中期経営計画から継続しており、デジタル技術の新たな潮流に対応した次世代型のシステムインテグレーション(以下SI)事業へと進化することをビジョンに掲げております。
このビジョンを実現するために、当社グループは三つの基本戦略を定めております。
一つ目の「高付加価値SIサービスの追求」では、顧客のDX推進に対して、最新の要素技術を活用して顧客の価値創造ニーズに応えるサービス事業を推進いたします。二つ目の「SIモデル変革の推進」では、高付加価値SIサービスを実現するための基盤づくりや、高生産性と高品質を両立したSIプロセスの整備などをイノベーション的アプローチで実現し、他社との差別化を図ってまいります。三つ目の「事業領域の拡大」では、多様な顧客のITニーズに対応するサービス・製品等の販売事業や、顧客のデジタル変革を戦略策定からサポートするコンサルティング事業、開発からスタートして運用・保守まで集約したマネージドサービスの提供等への事業領域拡大へ向けた施策を推進いたします。
① 高付加価値SIサービスの追求
顧客のDX推進に対して、最新の要素技術を活用して顧客の価値創造ニーズに応えるサービス事業を推進する
ⅰ)最新技術による顧客のDXの支援
ⅱ)ITサービスマネジメント、専門業務知識を含めたノウハウによる経営課題の解決の支援
ⅲ)ビジネスアーキテクト、ITアーキテクトを活用した解決の支援
② SIモデル変革の推進
ⅰ)広範囲でサービス品質の高いビジネス手法への変革
個別の特定プロジェクトでハイスキル人材を活用する現状から、複数の案件で活用するなど、より当社全体がサービス品質水準を高めるビジネス手法の確立を図る
・ハイスキル人材を広範囲のプロジェクトで活用できる手法の構築
・当社独自の契約モデルの構築
ⅱ)品質担保プロセスの効率化
プロジェクト管理、品質担保プロセス等の効率化を図るとともに、顧客のシステム開発に関わる負荷を軽減したSIサービスの確立
・品質担保プロセス、付帯作業等のスリム化
・次世代技術(自動化)等を活用したSIモデルの効率化
③ 事業領域の拡大
社会や顧客のITニーズに総合的に対応するため、SI事業を主体に新たな領域へと事業を拡大
・DX/ITコンサルテーション事業や技術教育サービスの拡大
・ユーザーニーズやシーズを捉えた製品やサービスの販売事業の拡大
・SI事業における維持/保守領域等でのマネージドサービスによるビジネスボリュームの拡大
2022年5月に発表した中期経営計画「Shift to the Smart SI Plus」の2年目にあたる当連結会計年度(2024年3月期)は、受注高、売上高、営業利益ともに計画を大きく上回り、過去最高を更新いたしました。
堅調に推移する当社グループを取り巻く事業環境を背景に、従前より先端要素技術の獲得や人材の確保・育成に向けた積極的な投資を推進してきた効果もあいまって、各事業分野は計画を上回るペースで好調に推移しており、計画期間最終年度に目標としていた400億円の売上高は、ほぼ1年前倒しで達成している状況となります。
このような堅調な事業環境を受け、中期計画の推進に向けて2025年3月期も引き続き先端要素技術の獲得や人材の確保・育成に関する投資を積極的に図りつつ、事業拡大に向けた取り組みに注力してまいります。
具体的な技術分野での投資は、セキュリティ、UXD、クラウドネイティブ、データアナリティクスプラットフォーム、オートメーション・マネージドサービス、ネットワークデザイン等の今後のSI事業に大きく影響を及ぼす可能性の高い要素技術を先行し獲得する取り組みや、多様な顧客のITニーズに対応するサービス・製品開発を推進いたします。
人材分野での投資は、引き続き、ブランディング戦略の推進、採用体制拡充、エデュケーション施策の強化、人事制度再構築等に向けた取り組みや、多様な人材がより意欲的に仕事に取組める働き方の仕組みや環境作りを行う等の投資を推進してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、当社グループが持続的に発展する為に、経営者・社員一人ひとりが自らなすべきことを考え、行動を改革し、事業そのものを変革する為の基本的な考え方を「企業理念」としてまとめております。
「企業理念」の考え方に基づき、当社のサステナビリティ経営の目指すべき方向性として、サステナビリティ基本方針を定めております。
2021年度には、経営会議の下位組織として、サステナビリティ推進委員会を設置しております。
サステナビリティ推進委員会は、持続可能性の観点で当社グループの企業価値を向上させるために、サステナビリティに関する当社グループの在り方を提言することを目的に、以下の事項について審議し、経営会議及び取締役会に対して報告いたします。
① マテリアリティの特定および定期的な見直し
② マテリアリティ目標(KPI)の設定および測定/評価
③ 気候関連のリスク及び機会への対応
④ サステナビリティ活動全般の所管部門間調整
⑤ サステナビリティに関連する開示内容の検討
⑥ その他、取締役会が必要と判断した事項
経営会議は、サステナビリティ推進委員会で審議された内容の報告を受け、当社の全般的方針を踏まえた視点にて、審議を行い、取締役会に対して報告いたします。
取締役会は、サステナビリティ全般に関する監督責任と権限を有しております。経営会議・サステナビリティ推進委員会で審議された内容の報告を受け、当社グループのサステナビリティへの対応方針及び実行計画等について審議・監督を行います。
<推進体制>
当社グループは、スマートな社会を実現するとともに当社の持続的な成長を目指すために、次のサステナビリティ推進体制を構築しております。

① マテリアリティ
当社グループは中期経営計画『Shift to the Smart SI Plus』に基づき、「市場の潜在ニーズを捉え、デジタル技術や新たな潮流に対応した次世代型のシステムインテグレーション事業へと進化することで、スマートな社会の実現に貢献する」ことを目指しています。これに向け、サステナビリティ担当役員を委員長とするサステナビリティ推進委員会において、各種ガイドライン(GRIスタンダード、SASB、ISO26000)を参考に、対応すべき課題の候補を選出し、課題ごとにステークホルダー視点、企業視点の2軸で重要性を評価し、6つのマテリアリティ(ESG重要課題)を決定しております。

② 人的資本
ⅰ)方針及び施策
当社グループにおいて、人材は最大の競争力の源泉であるとの認識のもと、経営戦略上の最重点課題に位置付け、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針を掲げております。
・人材育成方針
当社グループは、グループのパーパス「世の中をもっとSmartに」を実現していくために、企業理念「最新の情報技術を提供し、お客様の繁栄に寄与するとともに、社員の生きがいを大切にし、社会とともに発展することを目指します」のもと、人材が当社の最大の資産であり競争力の源泉であることを基本認識として、社員の成長をはかり、社員の自己実現と継続的な企業価値の向上を目指します。
・育成プログラムについて
「お客様のビジネス価値創出をともに考え、付加価値を提供できる人材育成」を目指し、独自の人材開発フレームワーク「Together」にて育成コンセプトを策定し、育成プログラムを実行しております。
・社内環境整備に関する方針
当社グループは、様々な技術、知識、経験を持つ社員が集まり、多様な人材がそれぞれの特性を活かしながら、より意欲的に仕事に取組める組織風土や働き方の仕組み等の環境作りを行う方針を「Smart Work構想」として取りまとめており、これに向け最適なワークプレイス、人事制度、社員のキャリア開発に向けた体制・施策等の整備を図っております。
また、当社グループは、健康経営方針を策定しており、企業理念の「社員の生きがいを大切にする」に基づき取り組んでいる健康の保持・増進活動を前進させ、社員とその家族、会社、健康保険組合が一体となって健康づくりを推進しております。
ⅱ)指標及び目標
当社グループでは、TDCソフトグループ人権基本方針及び健康経営方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
なお、グループ方針に基づき、グループ各社と連携してESG重要課題に取り組んでおります。具体的な実績に関しては、当社ホームページのサステナビリティデータのページをご参照ください。
当社グループにおいて、全社的なリスク管理はリスクマネジメント委員会において行っております。気候変動リスクをはじめとしたサステナビリティに係るリスクのモニタリング及び特定と評価は、サステナビリティ推進部がサステナビリティ推進委員会と協議を実施した上で、適時適切にリスクマネジメント委員会へ報告を行います。また、事業に高い影響を与えるサステナビリティに係るリスクが特定された場合には、リスクマネジメント委員会へ報告し、重要リスクとして適切な対処と開示を行います。

当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項は、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に記載しております。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2024年6月27日)現在において判断したものであります。
(1) 情報サービス産業における経営環境の変化及び価格競争等の影響
情報サービス産業においては、国家的なIT戦略の後押しや事業の強化や変革を推進するDXに向けた投資等によりIT需要は増加基調で推移していくことが見込まれております。しかしながら、日本経済が低迷又は悪化する場合には、顧客の情報化投資が減少するおそれがあり、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。
また、国内における情報サービス産業は激しい競争状態にあります。これら競合会社との直接的競合が生じた場合や競合各社が市場に大きな影響を与える商品や技術を開発した場合、当社グループに対しての一層の価格引き下げ圧力や当社グループの提供するサービスや製品が陳腐化し、競争力の低下を招く可能性があります。
(2) 人材の確保や育成
人材の新たな確保と育成は当社グループの事業運営には重要であり、人材の確保又は育成できなかった場合には、当社グループの将来の成長、経営成績等に影響を与える可能性があります。
(3) アライアンスパートナーとの協力体制
当社グループは、事業運営に関連して、ベンダーや協力会社等、様々なパートナーとの協力体制を構築しております。これらのパートナーとの関係に変化が生じた場合、サービスの提供もしくは適正な価格でのサービスの提供が困難になる等により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
(4) システム開発サービスにおける見積違い及び納期遅延等の発生可能性
当社グループでは、作業工程等に基づき発生コストを予測し見積りを行っておりますが、開発期間の短期化及び機能の複雑化など顧客からの要請は高度化しており、当初想定した以上の開発工数の増加や機能改善による追加コストにより、当初見積ったコストを上回り低採算または採算割れとなる可能性があります。また、当社グループが顧客との間であらかじめ定めた期日までに作業を完了・納品できなかった場合には遅延損害金、最終的に作業完了・納品できなかった場合には損害賠償責任が発生する可能性があります。
(5) 納品・検収後のシステムの不具合
当社グループは、ISO9001の認証を取得し製品やサービスの品質向上に取組んでおり、現在までシステムの不具合に関し訴訟等重大な影響を受ける損害賠償等を請求されたことはありませんが、当社グループの過失によるシステムの不具合が顧客に損害を与えた場合には、損害賠償請求負担及び信用の失墜等により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
(6) 特定の顧客への依存
当社グループは、日本電信電話株式会社グループ、日本アイ・ビー・エム株式会社グループ及び富士通株式会社グループ等への売上高比率が多くを占めると想定いたしますが、これら顧客において事業方針の変更がなされた場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
(7) 情報漏洩
当社グループは、事業において顧客の機密情報(個人情報を含む)に触れる場合があります。当社グループでは、ISO27001の認証を取得すると同時に、プライバシーマークを取得し、厳格な管理体制の整備を行っております。しかしながら、何らかの理由により機密情報の外部への漏洩が生じた場合、顧客より損害賠償請求を受ける可能性があり、また当社グループの信用の失墜を招くことにより、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
(8) 知的財産権侵害リスク
現在国内においてビジネスモデル特許は広範囲な権利を有し、その範囲が不明確な特許が認められる可能性があります。従いまして、クラウドサービスを始めとする当社グループのサービス分野において、第三者の特許権等の知的財産権を侵害するとしてサービス提供の差し止め、損害賠償等の請求を受ける可能性があります。
また、当社グループはシステム開発業務において、第三者が開発したプログラム等を利用する場合があり、使用権の許諾を有した上で利用することとしておりますが、第三者の著作権等の知的財産権を侵害するとして損害賠償請求、使用差し止め請求等を受ける可能性があります。
(9) 長時間労働と労務問題
提供するサービスや構築システムの社会性の高さ、またシステム開発の属人性の高さから、緊急時において長時間労働が発生する可能性があり、健康問題や労務問題につながる可能性があります。
(10) コンピューター設備への影響
当社グループは、コンピューター設備を保有しておりますが、災害や停電の他、不正アクセスやコンピューターウイルス等による被害が発生した場合、システム開発やサービスが遅延・中断することにより、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
(11) デリバティブ取引
当社グループは、効果的かつ効率的な資金運用のため、運用資金の上限設定及びリスク分散を基本方針として他社株転換社債等のデリバティブが組み込まれた複合金融商品への投資を行うことがありますが、対象銘柄の株価下落などがあった場合には損失が発生し、業績に影響を与える可能性があります。
(12) 自然災害等の発生による影響
地震・台風等の自然災害や、火災やパンデミックの発生等により、予期せぬ事態が発生した場合に備え、当社グループは事業継続のための対応を実施、検討しておりますが、災害の状況によっては、業務の全部または一部が停止し当社グループの業績に影響する可能性があります。
(13) 投資活動による影響
当社グループは、新規事業の立ち上げや事業拡大を目的として、資本提携、企業買収、子会社の設立などを行っております。これらの実施に当たっては、事前に収益性や回収可能性について調査・検討を行っておりますが、経営環境の変化等により投資先の事業が当初の想定どおりの成果を得られない場合、投資の損失の発生、あるいは、追加資金拠出が必要となる等、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以 下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)における我が国の経済は、雇用・所得環境が改善する下で緩やかな景気回復の動きがみられるものの、世界的な地政学リスクの長期化や金利政策の経済への影響など依然として先行き不透明な状況が続いております。
情報サービス産業においては、企業の競争力強化やクラウドへの移行などでデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)へのシステム投資が堅調な状況が継続しており、引き続き市場規模の拡大が見込まれます。
このような環境の中で当社グループは2025年3月までを計画期間とする中期経営計画「Shift to the Smart SI Plus」を策定し、市場や社会の潜在ニーズを捉えた付加価値の高いITサービスを基本コンセプトとした次世代型のシステムインテグレーション(以下、SI)事業へと進化することをビジョンに掲げ企業活動を推進しております。
このビジョンを実現するために、当社グループは三つの基本戦略を定めております。
一つ目の「高付加価値SIサービスの追求」では、顧客のDX推進に対して最新の要素技術を活用して顧客の価値創造ニーズに応えるサービス事業を推進しております。
二つ目の「SIモデル変革の推進」では、高付加価値SIサービスを実現するための基盤づくりや、高生産性と高品質を両立したSIプロセスの整備などをイノベーション的アプローチで実現し、他社との差別化を図る施策を推進しております。
三つ目の「事業領域の拡大」では、顧客のデジタル変革を戦略策定からサポートするコンサルティング事業、多様な顧客のITニーズに対応するサービス・製品等の販売事業、そして開発からスタートして運用・保守まで集約したマネージドサービスの提供等、SI事業のコモディティ領域への事業拡大へ向けた施策を推進しております。
当期は、中期経営計画『Shift to the Smart SI Plus』に基づく取り組みを推進し、外部環境変化への柔軟な対応や、推進上の諸課題に確実に対応・改善を図ることを方針として参りました。主な取り組みは以下のとおりです。
1) 基本戦略「高付加価値SIサービスの追求」に関する取り組み
当社は、顧客の価値創造ニーズに応える高付加価値SIサービスを拡大するために、今後の社会やビジネスに大きなインパクトをもたらすテクノロジーを注力分野として見定め、人材育成や事業開発を積極的に行なってまいりました。特に、2020年3月期より重点戦略分野として定めているアジャイル関連事業、クラウド関連事業などが順調に拡大し、2024年3月期においては、当該事業の売上高は前年同期比17.5%増の10,137百万円、連結売上高構成比は前年同期から1.0ポイント増加し、25.5%を占めるまでに成長いたしました。
2) サービス・製品等販売事業の拡大
当期は、アジャイル関連事業やセキュリティ関連事業を始めとした高付加価値SIサービス領域においてエコシステム構築に向けたアライアンス契約締結先との協業推進に注力いたしました。
また、当社の提供サービスのさらなる品質向上や、開発プロジェクトにおける品質担保プロセスの効率化を図るためプロジェクトパフォーマンス評価システム「PROJECT IQ(プロジェクトアイキュー)」を構築いたしました。これにより、定量的なプロジェクトのパフォーマンスを可視化し、プロジェクトレビューや受注判定時の支援情報として活用を開始する等、より高度な先端技術を活用したSIプロセスの効率化に向けた施策を推進しております。
3) 事業領域の拡大
当期は、事業領域拡大のためのケイパビリティの獲得に向けた活動を推進いたしました。具体的にはマーケティング機能やプロダクトセールス機能の拡充によるサービス製品販売事業拡大や、ノウハウのアセット化やこれを用いた要員育成などコンサルティング事業拡大に向けた取り組みを推進いたしました。また、SI事業においても、維持・保守領域におけるマネージドサービスの提供等ビジネスボリューム拡大に向けた取り組みを推進しております。
当連結会計年度においては、各事業分野は堅調に推移し売上高は計画を上回り増収を達成いたしました。利益面では、将来の事業拡大に向けた投資を積極的に推進したことによるコストが拡大しておりますが、増収効果により営業利益が上回り、増益となっております。投資に関する具体的な取り組みは、新卒採用者数の拡大および早期戦力化や、次世代型SI事業拡大に向けた新技術獲得、ワークプレイス戦略「Smart Work構想」の一環として、高い生産性を発揮し続けることを目指した本社移転などを計画に沿って推進いたしました。
また、当社が保有する投資有価証券の一部を売却し、保有資産の効率化及び財務体質の強化を図りました。
その結果、当連結会計年度の業績は、売上高は39,698百万円(前年同期比12.6%増)、営業利益は3,807百万円(前年同期比10.1%増)、経常利益は4,253百万円(前年同期比14.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は賃上げ促進税制の適用により法人税等が減少し3,089百万円(前年同期比24.1%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比較して1,368百万円増加し、13,378百万円(前期は12,010百万円)となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
売上債権及び契約資産の増加額725百万円、法人税等の支払い1,377百万円などがありましたが、税金等調整前当期純利益4,253百万円などがあり、営業活動によるキャッシュ・フローは3,022百万円(前期は1,951百万円)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資有価証券の売却による収入523百万円などがありましたが、有形固定資産の取得による支出901百万円などがあり、投資活動によるキャッシュ・フローは△296百万円(前期は△354百万円)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払726百万円、自己株式の取得による支出616百万円などがあり、財務活動によるキャッシュ・フローは△1,357百万円(前期は△1,440百万円)となりました。
③ 生産実績、受注及び販売実績
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
なお、当社グループは、開発から運用・管理までの一貫したシステム開発サービス及びシステム製品の販売等を一体とするシステム開発事業を営んでおり、当社グループにおけるセグメントは、「システム開発」のみの単一セグメントであります。
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。
(注) 金額は、製造原価によっております。
当連結会計年度における受注状況は、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
・売上高(分野別)
<ITコンサルティング&サービス>
ITコンサルティング&サービスは、お客さまのDX推進に向けたIT戦略やシステム化構想の立案、技術コンサルティング、最新の技術や開発手法の教育サービスの提供や、自社開発のクラウドアプリケーションサービスの提供、BI(注1)/DWH(注2)、ERP(注3)/CRM(注4)等のソリューションサービスの提供を行っております。当期は、エンタープライズ向けのSaaS(注5)ソリューション案件が堅調に推移し、売上高は前年同期比18.0%増収の6,768百万円となりました。
<金融ITソリューション>
金融ITソリューションは、金融業向けにシステム化構想・設計・開発・保守などの統合的なITソリューションの提供を行っております。当期は、特に銀行系のシステム開発案件等が好調に推移し、売上高は前年同期比10.8%増収の17,618百万円となりました。
<公共法人ITソリューション>
公共法人ITソリューションは、流通業、製造業、サービス業や公共向けにシステム化構想・設計・開発・保守などの統合的なITソリューションの提供を行っております。当期は、官公庁や運輸業向けの開発案件等が堅調に推移し、売上高は前年同期比11.8%増収の10,637百万円となりました。
<プラットフォームソリューション>
プラットフォームソリューションは、ITインフラの環境設計、構築、運用支援、ネットワーク製品開発、ネットワークインテグレーション等の提供を行っております。当期は、銀行業向けのインフラ構築案件が堅調に推移し、売上高は前年同期比14.1%増収の4,675百万円となりました。
(単位:百万円)
(注)1 BI :Business Intelligenceの略。社内の情報を分析し、経営に活かす手法。
2 DWH:Data Ware Houseの略。データ分析や意思決定のために、基幹系など複数システムから必要なデータを収集し、目的別に再構成して時系列に蓄積した統合データベースのこと。
3 ERP:Enterprise Resources Planningの略。基幹系情報システムのこと。
4 CRM:Customer Relationship Managementの略。顧客管理システムのこと。
5 SaaS:Software as a Serviceの略。サーバで稼働するソフトウェアをサービスとして提供する形態のこと。
・売上総利益
当連結会計年度における売上総利益は、前連結会計年度と比較し632百万円増加し、8,112百万円となりました。
・営業利益
当連結会計年度における営業利益は、前連結会計年度と比較し348百万円増加し、3,807百万円となりました。
・経常利益及び税金等調整前当期純利益
当連結会計年度における経常利益及び税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度と比較し539百万円増加し、4,253百万円となりました。
・親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比較し599百万円増加し、3,089百万円となりました。
財政状態の分析
・流動資産
当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末と比較して1,606百万円増加し、20,434百万円となりました。その主な増減要因は、受取手形、売掛金及び契約資産が324百万円、現金及び預金が1,368百万円増加したことによります。
・固定資産
当連結会計年度末における固定資産は、前連結会計年度末と比較して1,128百万円増加し、5,071百万円となりました。その主な増減要因は、有形固定資産が774百万円、投資有価証券が335百万円増加したことによります。
・流動負債
当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末と比較して333百万円増加し、6,378百万円となりました。その主な増減要因は、買掛金が197百万円、未払消費税が158百万円増加したことによります。
・固定負債
当連結会計年度末における固定負債は、前連結会計年度末と比較して333百万円増加し、649百万円となりました。その主な増減要因は、資産除去債務が175百万円、その他に含まれる長期未払費用が171百万円増加したことによります。
・純資産
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末と比較して2,067百万円増加し、18,477百万円となりました。その主な増減要因は、自己株式が611百万円増加したものの、利益剰余金が2,363百万円増加したことによります。
当社グループが重視している経営指標の売上高、営業利益、株主資本利益率の推移は次の通りです。
・自己資本利益率
自己資本の効率的運用による投資効率の高い経営を図るため、自己資本利益率を重視する経営指標としております。
当連結会計年度における自己資本利益率は、前連結会計年度に比べ2.0ポイント増加し17.7%となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性
キャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。
なお、自己資本比率、時価ベースの自己資本比率、キャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは、次のとおりです。
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
* 連結ベースの財務数値により計算しております。
* 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
* 2024年4月1日付けで、普通株式1株につき2株の株式分割を行っております。第67期の期首に株式分割が行われたと仮定して「期末発行済株式数」を算定しております。
* 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
資本の財源及び資金の流動性
当社グループの主な資金需要は、人件費、外注費等の運転資金となります。これらにつきましては、基本的に営業活動によるキャッシュ・フローや自己資金を充当し、状況に応じて金融機関からの借入等による資金調達で対応していくこととしております。
なお、現在の現金及び現金同等物の残高、営業活動によるキャッシュ・フローの水準については、当面事業を継続していく上で十分な流動性を確保しているものと考えております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に際し、当連結会計年度末日における資産及び負債の報告数値及び当連結会計年度における収益及び費用の報告数値に影響を与える見積りは、過去の実績や当社グループを取り巻く環境等に応じて合理的と考えられる方法により計上しておりますが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に下記の会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断等に影響を及ぼすと考えております。
・繰延税金資産の回収可能性
当社グループの連結財務諸表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額との間に生じる一時差異に係る税効果については、当該差異の解消時に適用される法定実効税率を使用して、繰延税金資産を計上しております。将来の税金の回収可能予想額は、当社グループの将来の課税所得の見込額に基づき算出されておりますが、将来の課税見込額の変動により、繰延税金資産が変動する可能性があります。
・受注損失引当金
請負契約プロジェクトの特性に応じて個別に判断を行う必要があることから不確実性があり、実際に発生する製造原価が見積りと異なった場合に翌連結会計年度に係る連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。
・一定期間にわたり履行義務が充足される契約に関する収益の認識
一定期間にわたり履行義務が充足される契約については、期末日における見積総原価に対する累積実際発生原価の割合に応じた金額で履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識する方法にて計上しております。
総原価の見積りはプロジェクトの進行に応じて適時、適切に見直しを行いますが、契約毎に個別性が高く、顧客からの要請の高度化・複雑化や開発段階でのシステム要件の変更、納期の変更等により、プロジェクトの総原価の見積りが変動する可能性があります。また、これらの見積りは不確実性が含まれているため、翌連結会計年度以降の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループは、情報技術の高度化やその適用・利用分野の拡大等を目指し、新技術の研究開発・調査や新市場・新分野を開拓するための実験・実用化研究を推進しております。
また、長年にわたる情報・ネットワーク分野における技術力を背景として、今後ともお客様のニーズに積極的に応えるため、必要に応じて研究開発費等の技術投資を行う方針であります。
主な研究課題は次のとおりであります。
これらの技術は、顧客への情報化提案や受注案件に適用しております。また、研究成果としては、SIビジネスに対する競争力を高めています。その他、独自のサービスとしてクラウド型ワークフローシステム「Styleflow」、IT業界向け購買管理システム「BP-LINKS」、IT技術者のスキル管理や調達業務管理システム「Meeepa」など既存サービスや、新たなサービス開発にも力を注いでおります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は、