第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、創業以来「新しい足場文化と安全文化の創造」を理念に掲げ、単に「安全・安心」だけでなく「感動」も提供できるサービス会社として社会に貢献することを経営の基本方針としておりましたが、2024年4月21日付で新たに企業理念と経営の基本方針とパーパスを設定いたしました。

 企業理念「私たちは志を高く持ち常に未来を創造し、社会の持続と発展に貢献します」について、当社のコア事業である建築向け足場の生産・販売と足場の施工サービスは、ともに“仮設資材”の提供であり、使用される現場において常設されることはありません。しかしながら、建物を作る上では欠かせない資材であり、建物自体の品質や働く方の安全・安心を大きく左右する存在でもあります。そのため、当社で働くすべてのスタッフが、現場の安全を守る強い志を立て、お客様への対応や技術の向上に努めることで、快適で持続可能な社会の実現に貢献できることを理念としております。

 基本方針「ファーストなサービスを心から」については、当社グループ全体で掲げている方針であり、グループに所属するすべてのスタッフが、“心から”お客様に向き合い、最大限の技術と品質を提供することを表しており、行動の結果としてお客様からいただける“ありがとう”が、さらなる企業価値を創造し、業界の地位向上にもつながっていくと考えております。これからも常にお客様ファーストで物事を考え、感謝いただけるサービスを提供してまいります。

 パーパス「人と現場を守り抜く」については、当社が提供する商品・サービスをご利用いただくお客様の安全と未来を守り抜くという考えのもと定めております。現場という言葉には、建設現場だけでなく社会全体の職場環境の意味が含まれております。建設業に従事するすべてのお客様や当社スタッフ・社会全体に対して、働きやすくやりがいのある魅力的な職場環境を提供していくことで、当社の継続的な成長と高収益を実現し、企業価値向上を図りながらステークホルダーとも価値共有することを目指してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、事業を継続的に発展させていくためには、売上高を増加させ、適正な利益確保を図っていくことが必要であると考えております。また、成長のための財政基盤を強化する観点から営業外の活動も重視し、「売上高経常利益率」を重要な経営指標として捉え、その向上を図る経営に努めてまいりました。なお、49期より新たな経営指標として、人的資本への投資に関する指標を追加することといたしました。これは、当社グループ事業は“ヒト”を源泉とする事業を主体としており、人的資本への投資と、その生産性の向上を追求していくことが、足場業界だけでなく建設業における各種課題の解決に繋がると考えているためです。具体的な指標につきましては「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)指標及び目標」の通りであります。

 

(3)経営環境

 当社グループを取り巻く経営環境について、日本国内では今後さらに若年層の減少と高齢化が進み、単独世帯の増加が見込まれており、当社に関連の深い住宅業界については、新築の戸建てに対する建設需要が更に減衰していく予測もあります。一方、リフォームに対する需要は中長期的に微増していく傾向と予測されます。また、建設業全体において、従事する労働者は減少を続けており、全産業と比べても高齢化が進行しておりますが、足場施工の業界においても人手不足と高齢化が重要な課題となっています。原材料価格の高騰や賃金アップによる人件費及び採用コストの増加に加え、いわゆる運送業の2024年問題等も相まって仕入コストが高騰しており、売価へ転嫁するインフレ傾向が表面化すると予想されます。

 このような中、2024年4月の労働安全衛生規則改正を受け、建設現場における足場の仕様が厳格化されたことから、1現場あたりの部材数が増加しています。これに伴い作業時間も増加するため、労務費が上昇し、住宅業界における足場施工業者の淘汰が進むと想定されます。

 国際的にも一部の国では労働者不足が問題となっており、在外子会社のあるシンガポールについては、シンガポール人の雇用を守る目的で外国人労働者の採用可能枠が設けられており、過去数十年間に何度も改正による厳格化が行われております。直近では2024年1月に改正されており、日本国内同様に労働者不足が進むと想定されます。

 また、各国の経済発展が進む一方で、地球規模での資源枯渇リスクが高まり、環境保護への関心がさらに強くなることで、今後、資源の循環型社会の形成に向けて、3Rやシェアリングなどの取り組みがより進むものと考えられます。

 

(4)会社の対処すべき課題と中期経営計画

①会社の対処すべき課題

 当社グループでは、これからの経営環境を踏まえ、以下の課題を掲げております。

 

<住宅業界の足場施工業者不足と新築戸建て着工戸数の減少に対する対応>

 先述した経営環境でも触れたように、2024年4月の労働安全衛生規則改正を受け、住宅業界における足場施工業者の淘汰が進むことで、住宅業界の足場施工業者不足に陥る可能性があります。また、当社の開発したビケ足場は、住宅向け足場のトップブランドとして市場に定着したことから、低層向けの足場として使用されることが多いですが、長期的には戸建住宅の建設需要が減少していくものと予測されます。これに伴い、住宅業界でのシェア拡大と新築戸建て以外の案件へのシフトが求められています。

 

<足場の施工効率向上と施工スタッフの高齢化への対応>

 足場施工に関する一連の作業は、ほとんどが手作業で、作業効率の向上に限界があり、また、体への負担が大きく、高齢での作業従事が困難であることから、作業者の負担を軽減し、より効率的に働くことが求められています。

 

<足場施工技術の向上による安全な社会への貢献>

 社会の安全と高品質なインフラのために足場の果たす役割は大きいものと考えております。グループ内においては、国内外で対象とする施工現場が異なりますが、さらに安全な社会の実現に貢献するため、足場の施工技術向上が求められています。

 

<IT技術の活用による業務効率化>

 当社では、足場施工サービスを提供するため、施工スタッフ、足場部材、車両などの資源管理や取引先の管理を基幹システムにより効率化していますが、現場毎に必要な足場計画図の作図や足場資材の在庫管理など、未だ多くの作業が人手により行われていることから、IT技術を活用した業務効率化の実現が求められています。

 

<多様な人財の獲得と働き方改革>

 建設業全体での就業者数は減少を続けており、特に建設技能者の採用状況は厳しさを増していることから、様々な雇用形態、魅力的な労働環境等を整備し、多くの人財を確保すると共に、安心して一生涯働ける会社になることが求められています。

 

<グローバル人財の育成>

 今後、グループとしてアジア圏内でのビジネスを展開してまいりますが、そのためには語学力、コミュニケーション能力の基礎的なスキルの習得だけでなく、様々な環境へ対応できるチャレンジ精神旺盛な人財の育成がグループ内で求められています。

 

<物価高騰による資材調達方法の変化に対する対応>

 物価高騰の影響を受け、部材購入時の資金負担などの観点から、足場部材の調達方法の変化が予想されます。足場部材の購入を控え、レンタルでの部材調達を考えられるお客様も多く、柔軟なレンタル体制の構築が求められます。

 

②第3次中期経営計画の総括と第4次中期経営計画の概要

 当社グループでは、2022年4月期から2024年4月期までの3連結会計年度を期間として設定した『第3次中期経営計画』に続き、新たに、2025年4月期から2029年4月期までの5連結会計年度を期間とする中期経営計画を『第4次中期経営計画』と定めました。前中期経営計画の総括と新中期経営計画の概要については、以下の通りになります。

 

<第3次中期経営計画の総括>~2022年4月期から2024年4月期~

 当社グループでは、当連結会計年度を最終年度とする第3次中期経営計画として「ヒト創りとデジタル技術の共進」を方針に掲げ、将来を見据えた収益性の高い事業構造への転換を進めてまいりました。最終年度である当連結会計年度においては、適正価格受注に向けた値上げ交渉や施工パートナー企業との連携強化、次世代足場「レボルト」の認知度向上に向けたレンタル事業の拡充、足場の組立て等作業主任者等の技能講習提供を推進したほか、新たにデジタル事業部を発足し、社外向け業務改善ツールやデジタル商材の販売、社内向け議事録自動生成アプリ開発など、生産性向上の取り組みを進めました。海外事業においては、シンガポール子会社の現地日系大手顧客の獲得を行うなど、受注基盤拡大にも成功しております。また、人材定着・確保の観点から「ES(従業員満足)ファーストのガバナンス体制構築」に基づき、オープンバッジ制度を活用した社内教育等、人的資本への投資を行い、給与・手当制度の見直しを実施いたしました。

 

 

<第4次中期経営計画の概要>~2025年4月期から2029年4月期~

 今後の経済動向につきまして、地域紛争による国際情勢不安や各国首脳選挙、人口減少や不動産不況等に伴う中国経済の失速及び原材料価格の高止まり、米国経済の底堅さに伴う高金利政策の長期化等、依然として先行きは不透明な状況にあります。また、国内では賃金アップによる人件費及び採用コストの増加に加え、いわゆる運送業の2024年問題等も相まって仕入コストが高騰しており、売価へ転嫁するインフレ傾向が表面化すると予想されます。2024年4月の足場に関する法改正に伴い足場仕様が厳格化していることから、特に低層住宅分野を中心に影響を受けると考えられます。更に、少子高齢化に伴う人口減少や熟練技術者の引退による労働者不足が想定され、人材確保に向けた取り組みが益々重要となっています。

 

 これら国内外の経済見通しを踏まえ、当社グループでは次期より始動する第4次中期経営計画において、「Reborn」の方針の基、3つの重点戦略を設定しました。

 

<目標数値>

 当社グループでは、中期経営計画の最終年度である2029年4月期の連結売上高、連結営業利益の目標を以下の通り設定しております。

 

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<3つの重点戦略>

①コア事業領域の深化

 当社のメイン事業である足場施工サービス事業、製商品販売事業、海外事業をコア事業領域と定め、業界の新スタンダードや規範づくりの先導・普及、新しいレンタルシステムの構築等に取り組んでまいります。海外事業においては、適正な施工人員枠の確保と戦略的な配置、エンジニアリング会社としての高付加価値化、受注構成見直による収益性向上に取り組んでまいります。生産性・技術・品質の差別化を図り、より高付加価値のサービス提供により業界をけん引する存在となることを目指します。

 

②新たな収益事業の創造

 デジタル・IT技術を活用した建設業界の生産性向上のためのプロダクト開発や販売や新住宅用足場の開発、東南アジアを中心とした海外人材の育成など、コア事業領域における課題の解決に向けたノウハウ・技術の探索・活用により、新たな収益事業を創造し、社会を変革するサービス・価値提供の実現を目指します。

 

③経営基盤の強靭化

 コア事業領域の深化と新たな収益事業の創造を推進するため、経営環境の変化へ柔軟に対応できる強靭な経営基盤を構築してまいります。従業員エンゲージメント向上に向けた新人事評価制度の導入やデジタル技術活用による業務負担軽減、管理コスト削減を進めるほか、製品の製造・生産における優位性を高めるため、海外パートナーとの共創体制によるサプライチェーンの構築に取り組んでまいります。

 

 これら3つの重点戦略を推し進め、建設業界へのイノベーション創出を通じ、継続的な事業拡大と持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めてまいります。また、次期につきましては、引き続き施工サービス事業における適正価格受注や低層住宅業界を中心とした受注基盤の拡大、レンタル事業ネットワークの拡大を進めるとともに、シンガポールプラント市場でのエンジニアリング事業拡大、グローバル人材の将来を見据えた労働環境の整備、生産性向上を目的とした部材の開発およびデジタル事業展開のための受諾開発・デジタルコンテンツ開発、教育事業・SES事業の拡大などにも取り組んでまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループとして、優先的に対処すべき事業上の課題は、国内外とも現場で従事するスタッフの採用を増やすことと捉えております。財務上の課題としても、対象とするスタッフの採用と処遇向上に掛かる財源を優先的に確保することであると考えております。なお、課題に対する今後のセグメント別の取り組みは以下の通りです。

 

①施工サービス事業

 施工サービス事業においては、施工スタッフの雇用維持と採用強化のため、給与を含むさらなる待遇向上に努め、施工技術、安全衛生、業務効率化などの品質強化に関わる教育への投資を増やすほか、将来の体力的な不安を解消するためにも、足場施工以外の職務が提供できる体制創りに取り組んでおります。また、当社への就業を希望する特定技能外国人と外国人技能実習生を増加させることが、施工力強化に繋がるものと考えております。

 

②製商品販売事業

 製商品販売事業については、施工力が必須となる足場施工サービスだけに頼らず、足場部材のみレンタルする事業を推進するために、貸出用資材の生産と社内への投入を進めるほか、これまでに仮設資材の取引を通じて協力関係を築いてきた外部の足場施工会社への販売量を増やすために関係力を強化し、生産性向上に繋がる商品や仕組みを提供する事で、外部の足場施工会社の施工力を増強できる取り組みを推進しております。

 

③海外事業

 海外事業について、在外子会社のあるシンガポールでは、日本国内と同様に、海外からの労働力確保が進むものと考えております。また、シンガポール人の雇用を守る目的で外国人労働者の採用可能枠が設けられており、過去数十年間に何度も改正による厳格化が行われ、直近では2024年1月に改正されております。シンガポール人と外国人労働者をバランスよく採用し、施工力の強化を推進しております。

 

 また、当社グループの経営環境として、地政学的リスクに起因する各種資源の世界的な物価高と円安進行など、先行き不透明な状況が続くものと想定していることから、引き続き主要取引行との連携を強化し財務基盤の強化を図るとともに、厳格な予算統制を行ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社は企業理念として「私たちは志を高く持ち常に未来を創造し、社会の持続と発展に貢献します」を掲げ、サステナビリティを尊重した経営に取り組んでおります。

 サステナビリティに関する重要案件は、当社の経営陣が検討し、意思決定を行います。具体的に、経営が必要とするサステナビリティに関する意思決定にあたっては、当該事項に関係する事業部が検討し、そのうえで経営会議にて報告・審議され、重要事項は取締役会に報告されます。

 

(2)戦略

 サステナビリティ関連のリスク及び機会につきましては、建設業界全体における課題として、技能労働者の高齢化と若手世代の就業志望減少による人手不足、アナログ的手法による多数の非効率業務、事業運営に伴う環境への多大な負荷などが挙げられます。これらに対処するための取組として、当社では、働きがいのある職場づくりと建設業の魅力向上、デジタル技術の導入による作業負荷の軽減と品質の安定化、地球に配慮したやさしい事業運営のため、以下の取組を推進しております。

 

・ベテランスタッフによるアカデミー研修制度

・技能資格の選定・取得奨励とサポート制度の構築

・ありがとうの取組による仕事の価値化

・ベテラン・若手の処遇・役割を見直し評価制度を構築

・処遇見直しに係る源泉確保のための適正価格受注促進

・グローバル人財への積極的雇用・教育

・レンタル体制強化による足場業界への貢献

・足場計画図のCAD自動作図システムによる労務軽減

・パトロール、足場点検等の現場業務が省力化できるアプリ開発

 

 人財の育成については、会社を支え発展させる源の一つは「人財」であり、人財育成においてのスキル・知識とモチベーション・意欲の考えに基づき、お客様を含む社会からの期待に素早く応えられるよう、従来の考え方にとらわれない多様性を重視しつつ、自ら考え、判断し、行動できる人財育成を取り組むことで、ひとりひとりが事業の成長と社会の発展に貢献する組織を目指しております。

 

 

(3)リスク管理

 取締役会、経営会議や4つの専門委員会(中央安全衛生、監理、人事、内部統制)での合議により、具体的な執行内容の決定と進捗管理が行われ、必要に応じてリスク管理体制の見直しを行っております。各部門においては、決定された事項、具体的な施策及び効率的な業務の執行と進捗の報告が行われておりリスクに応じた適切な対応を行っております。

 

(4)指標及び目標

 企業成長の源泉である人財の力を最大限引きだすことにより、企業の持続的な成長を実現し、企業価値向上につなげるため、以下の目標指標を設定しております。

 〔人財育成に関わる指標と目標値〕

 

第48期

第49期

第50期

第51期(目標)

売上高に対する人材育成関連費用の割合

0.34%

0.73%

0.28%

0.75%

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している重要なリスクは、以下のとおりであります。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応に努める所存であります。

 本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 住宅着工戸数の動向について

 当社グループは、住宅関連産業を通して事業展開を行っておりますので、例えば建築基準法の改正、消費税率引き上げ、住宅ローン減税等の優遇策、住宅ローン金利の今後の動向により、大幅に新設住宅着工戸数が減少した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応として、住宅用途以外の建築物に対する足場施工サービスの展開によりリスクを分散することと、現在のセグメント以外の事業育成によりリスク回避することを進めております。

 

② 施工力の変動

 当社グループは、ビケ足場施工サービスを事業の柱としておりますが、施工スタッフの数、すなわち施工力が事業運営に大きな影響を及ぼします。その結果、施工力が計画的に確保できない場合には、業績に影響を与える可能性があります。

 当該リスクへの対応として、まずは施工スタッフの定着のため、請負から社員への転換推進、給与含む待遇の向上、足場施工以外の職務の提供など、生涯安心して働ける環境創りを進めるほか、施工スタッフの増員については、外国人技能実習生及び特定技能外国人の採用を増やすことに取り組んでおります。また、自社資源だけでなく、当社グループの安全・品質方針に理解がある足場施工会社への外注も進めております。

 

③ 原材料価格の変動

 当社グループは、ビケ足場および一般仮設機材の製造を行っており、原材料価格の著しい変動が、製品原価の高騰を招いた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応として、毎期、原材料の受入予定価格を設定しており、できる限り安い価格の際に発注するよう努めております。

 

④ 為替の変動

 当社グループには、シンガポールの連結子会社があるため、為替が著しく変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応として、予算編成の際に想定する為替レートを設定し、その範囲で対応できるよう、機会に応じて為替予約やデリバティブ取引などを利用し、できるだけ為替変動による業績への影響を回避するよう努めております。また、為替の状況に応じて機動的にサプライチェーンの変更が出来るよう、海外中心に取引先開拓を進めております。

 

⑤ その他

 当社グループは、事業展開上、様々なリスクがあることを認識し、それらを出来る限り事前に防止、分散あるいは回避するように努めております。しかしながら、当社グループが事業を遂行するにあたり、経済情勢、金融・株式市場、法的規制や災害およびその他の様々な影響が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

a.経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い、社会経済活動の正常化が進んだことから、景気は緩やかな回復基調となりました。しかしながら、不安定な国際情勢、資源・エネルギー及び原材料価格の高止まり、世界的な金融引き締め、円安の進行や消費者物価の上昇などにより、依然として先行き不透明な状況が続きました。

 当社に関連の深い住宅業界については、資材価格の高騰などを背景として、新設住宅着工戸数は全体で減少傾向が続きました。

 こうした状況において、当社では当事業年度を最終年度とする中期経営計画において、「既存事業の再構築と事業間連携の強化」、「新市場の創造と東南アジアでのビジネス基盤確立」、「未来社会に貢献するヒト創りと商品サービスの開発」、「ヒトとデジタル技術をつないだビジネス革新」、「ES(従業員満足)ファーストのガバナンス体制構築」を5つの重点戦略として設定し、将来を見据えた収益性の高い事業構造への転換を進めてまいりました。

 当期間においては、多様な人材が活躍できる職場づくりのための組織サーベイを実施するとともに、全社員を対象とした給与のベースアップを実施しました。また、人材育成のためオープンバッジを用いた社内研修制度の開始など、人的資本への投資を積極的に進めました。

 なお、全社業績に関して、売上高は微減となりましたが、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は黒字に転じました。これは前期に減損損失を計上したことによる減価償却費の減少等の影響によるものです。

 以上の結果、当連結会計年度における売上高は10,407百万円(前年同期比1.0%減)、営業利益56百万円(前年同期は営業損失63百万円)、経常利益37百万円(前年同期は経常損失1百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益60百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失1,016百万円)となりました。

 

 セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

 

(施工サービス事業)

 施工サービス事業につきましては、新設住宅着工戸数の減少が続く中、主要な取引先である大手ハウスメーカーの住宅の受注は全体で昨年並みとなりました。

 このような状況の中、当事業においては、商品別では販促を進めてきた中層大型建築物向け工事の売上が伸長しましたが、売上全体では微増となりました。利益面では、昨年来の物価上昇を背景に、業界及び施工スタッフの地位向上に向けた値上げ交渉の成果が出始めたものの、給与のベースアップや、レンタル市場の開拓を目論んだ部材の追加投入による減耗費の増加等もあり、当期間における利益への影響は限定的となりました。

 以上の結果、売上高は7,161百万円(前年同期比1.0%増)、売上総利益は1,900百万円(同5.9%減)となりました。

 

(製商品販売事業)

 製商品販売事業につきましては、鋼材価格の高止まりとそれに伴うレンタル需要の高まり、市場における施工人員の不足などから、市況全体で購買意欲の低下が見られました。

 このような状況の中、当事業においては、商品別では中層大型建築物向けに安全性を高めた次世代足場「レボルト」の売上が伸長し、また2024年問題の運送費増加を見込んだ駆け込み需要による引き合いも見られましたが、前年同期では販売価格引き上げ前の一時的な買い増しの動きがあったことから、売上、利益ともに前年同期比で減少となりました。

 以上の結果、売上高は1,077百万円(前年同期比32.8%減)、売上総利益は305百万円(同39.1%減)となりました。

 

 

(海外事業)

 海外事業につきましては、在外子会社のあるシンガポールでは、欧州及び中国の景気減速への懸念などを受けて、景気は鈍化しました。

 このような状況の中、当事業ではコロナ規制撤廃によるワーカー採用正常化により売上は拡大し、利益面では現場管理の厳格化による採算性の改善、前期に計上した減損損失による減価償却費の減少などにより、利益が大きく伸長しました。

 以上の結果、売上高は2,099百万円(前年同期比19.8%増)、売上総利益は561百万円(同56.9%増)となりました。

 

(その他)

 その他につきましては、業務受託料および保険代理店収入等で構成されており、売上高は69百万円(前年同期比2.3%増)、売上総利益は53百万円(同1.2%減)となりました。

 

b.資産、負債及び純資産の状況

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は6,628百万円となり、前連結会計年度末に比べ446百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が429百万円増加、受取手形、売掛金及び契約資産が190百万円減少、賃貸用仮設材が272百万円増加したことによるものであります。

 固定資産は3,743百万円となり、前連結会計年度末に比べ170百万円減少いたしました。これは主に投資その他の資産のその他に含まれる投資不動産が203百万円減少したことによるものであります。

 この結果、総資産は10,372百万円となり、前連結会計年度末に比べ275百万円増加いたしました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は4,173百万円となり、前連結会計年度末に比べ379百万円増加いたしました。これは主に短期借入金が268百万円増加、電子記録債務が117百万円減少、1年内返済予定の長期借入金が66百万円増加したことによるものであります。

 固定負債は844百万円となり、前連結会計年度末に比べ79百万円減少いたしました。これは主に債務保証損失引当金が34百万円減少、長期借入金が26百万円減少したことによるものであります。

 この結果、負債合計は、5,017百万円となり、前連結会計年度末に比べ299百万円増加いたしました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は5,354百万円となり、前連結会計年度末に比べ24百万円減少いたしました。これは主に為替換算調整勘定が49百万円増加、利益剰余金が74百万円減少したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は51.6%(前連結会計年度末は53.3%)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,697百万円と期首より429百万円増加となりました。

 各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は312百万円(前年同期は439百万円の支出)となりました。その主な要因は、減価償却費214百万円、売上債権の減少額203百万円に対し、賃貸用仮設材の増加額265百万円、仕入債務の減少額88百万円等があったことを反映したものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果増加した資金は143百万円(前年同期は415百万円の支出)となりました。その主な要因は、投資不動産の売却による収入246百万円に対し、貸付けによる支出49百万円等があったことを反映したものであります。

 

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果減少した資金は61百万円(前年同期は680百万円の収入)となりました。その要因は、短期借入金の増加額188百万円、長期借入れによる収入200百万円に対し、長期借入金の返済による支出159百万円、リース債務の返済による支出156百万円、配当金の支払額134百万円があったことを反映したものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.施工能力

 施工用資産であるビケ部材の当社の保有高は次のとおりであります。

セグメントの名称

品目別

当連結会計年度

(自 2023年4月21日

至 2024年4月20日)

前年同期比(%)

施工サービス事業

施工能力㎡数(千平方メートル)

1,219

90.3

(注)当社の施工用資産は極めて多種多様にわたり、かつ同種の品目であっても仕様、構造、形式は一様ではありません。このため、保有する主要部材で施工可能な広さを建物の架㎡数で表示しております。
ここに、主要部材とは、支柱・踏板・布材・ブラケット・ジャッキベースのことであります。

b.生産実績

 当連結会計年度の生産実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

品目別

当連結会計年度

(自 2023年4月21日

   至 2024年4月20日)

前年同期比(%)

製商品販売事業

ビケ部材等(千円)

981,517

63.7

一般仮設(千円)

330,477

96.3

 合計(千円)

1,311,995

69.6

(注)金額は販売価格によります。

 

c.外注の実績

 当社は、製商品販売事業における製品の製造及び部品加工の大部分を外注に依存しております。その依存度は、外注費が総製造費用に対し当連結会計年度で34.3%を占めております。

 なお、主な外注先は、株式会社山本興業、株式会社興和工業所、株式会社カワモト等であります。

d.商品仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

品目別

当連結会計年度

(自 2023年4月21日

   至 2024年4月20日)

前年同期比(%)

製商品販売事業

ビケ部材等(千円)

210,237

70.0

一般仮設(千円)

180,208

94.3

 合計(千円)

390,445

79.4

 (注)金額は仕入価格によります。

 

e.受注実績

 当連結会計年度の受注実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

セグメント

の名称

品目別

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

製商品

販売事業

製品

ビケ部材等

605,226

64.4

14,869

62.7

一般仮設

318,236

85.0

2,071

9.1

商品

ビケ部材等

56,224

62.9

1,934

26.0

一般仮設

55,919

42.5

57

0.9

 合計

1,035,607

67.5

18,932

31.3

 (注)1.数量については、種類が多岐にわたり表示が困難であるため記載を省略しております。

2.受注高は出荷額をベースに記載しております。

 

f.販売実績

 当連結会計年度の販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。

セグメント

の名称

品目別

当連結会計年度

(自 2023年4月21日

    至 2024年4月20日)

前年同期比(%)

施工サービス事業(千円)

7,161,621

101.0

製商品

販売事業

製品

ビケ部材等(千円)

614,063

60.1

一般仮設(千円)

339,027

94.4

計(千円)

953,090

69.0

商品

ビケ部材等(千円)

61,718

69.5

一般仮設(千円)

62,274

47.0

計(千円)

123,993

56.0

合計(千円)

1,077,084

67.2

海外事業(千円)

2,099,447

119.8

報告セグメント計(千円)

10,338,153

99.0

その他(千円)

69,470

102.3

合計(千円)

10,407,623

99.0

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。

 この連結財務諸表を作成するにあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び(重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、そのうち特に重要なものは以下のとおりであります。

(固定資産の減損)

 固定資産については、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合、回収可能価額までの下落額を減損損失として計上しております。事業計画や市場環境の変化により、見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析

 当社グループは、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載の通り、「売上高経常利益率」を重要な経営指標として捉えています。

 当連結会計年度においては、△0.3%を目標として事業を進めましたが、結果として0.4%となりました。

 

③ 財政状態の分析

「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.資産、負債及び純資産の状況」をご参照ください。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性

a.キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりでありますが、指標のトレンドを示しますと下記のとおりであります。

 

2023年4月期

2024年4月期

自己資本比率(%)

53.3

51.6

時価ベースの自己資本比率(%)

36.6

35.4

債務償還年数(年)

9.6

インタレスト・カバレッジ・レシオ

9.2

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

(注)1.株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数により算出しております。

2.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

3.債務償還年数(年)は、2023年4月期については、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。

4.インタレスト・カバレッジ・レシオは、2023年4月期については、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。

 

 

b.契約債務

2024年4月20日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。

区分

当期首残高

(千円)

当期末残高

(千円)

平均利率

(%)

返済期限

短期借入金

1,792,640

2,060,660

1.8

1年以内に返済予定の長期借入金

139,996

206,656

0.3

1年以内に返済予定のリース債務

83,285

114,072

3.0

長期借入金(1年以内に返済予定のものを除く。)

618,353

592,255

0.2

2025~2029年

リース債務(1年以内に返済予定のものを除く。)

40,963

23,390

3.7

2025~2029年

その他有利子負債

 1年以内に返済予定の割賦未払金

 割賦未払金(1年以内に返済予定のものを除く。)

 

 

 

 

合計

2,675,237

2,997,033

(注)1.「平均利率」については、期末借入金残高に対する加重平均利率を記載しております。

2.長期借入金及びリース債務の連結決算日後5年間の返済予定額は以下のとおりであります。

 

 

1年以内

(千円)

1年超2年以内

(千円)

2年超3年以内

(千円)

3年超4年以内

(千円)

4年超5年以内

(千円)

長期借入金

206,656

206,656

177,234

99,996

99,996

リース債務

114,072

18,258

1,790

1,876

1,465

 

c.財務政策

当社は、運転資金及び設備投資資金については、内部資金を充てるほか、銀行等の金融機関からの借入金や社債発行により資金調達することとしております。

 2024年4月20日現在の契約債務の状況は「b.契約債務」に記載のとおりであります。

 

⑤ 経営成績の分析

 当連結会計年度の経営成績は、売上高については、足場施工サービス事業の販路拡大、部材のみのレンタルの国内での本格始動、シンガポール子会社においては受注基盤拡大により増収となりましたが、2000年の株式上場以来最高となった前期から比べ微減となりました。しかし、営業利益においては、施工サービス事業部の値上げ交渉、シンガポール子会社の現場管理厳格化による採算性の改善や前期に減損損失を計上したことによる減価償却費の減少などの影響により、4連結会計年度ぶりに黒字に転じました。

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 セグメント別状況について、足場施工サービス事業では、中層大型建築物向けの売上が微増となったほか、グローバル人財の積極受け入れにより特定技能などの人財拡充が進みました。利益面においては、物価上昇を背景とした業界及び施工スタッフの地位向上に向けた値上げ交渉の成果が第4四半期連結会計期間より出始めたものの、給与のベースアップや、レンタル市場の開拓を目論んだ部材の追加投入による減耗費の増加等もあり、当連結会計年度における利益への影響は限定的となりました。

 製商品販売事業では、鋼材価格の高止まりとそれに伴うレンタル需要の高まり、市場における施工人員の不足などから、市況全体で購買意欲の低下が見られました。このような状況の中、当事業においては、2024年問題の運送費増加・2024年4月の足場に関する法改正に伴う足場仕様が厳格化を見込んだ駆け込み需要による引き合いも見られましたが、前期では販売価格引き上げ前の一時的な買い増しの動きがあったことから、売上・利益ともに前期比で減少となりました。

 海外事業では、在外子会社のあるシンガポールにおいて、欧州及び中国の景気減速への懸念などを受けて、景気は鈍化しました。このような状況の中、当事業ではコロナ規制撤廃によるワーカー採用正常化により売上が拡大しました。利益面においても、現場管理の厳格化による採算性改善や受注構成の見直し、原価の見直しに加え、前期に計上した減損損失による減価償却費の減少などにより、大きく伸長しました。

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5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

  研究開発は、当社営業本部製造部製品開発課が主管となって行っております。

  この研究の推進にあたっては、製品開発課を中心に製商品販売事業部門、及び施工サービス事業部門が協同し、顧客と一体となったマーケティングを実施して設計開発業務を推進しております。

  当連結会計年度における研究開発費の総額は29百万円となっており、全社共通の費用として管理しております。