第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、本届出書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針

 当社グループは、「投資家主権の確立」を根本的な使命とし、「投資家の皆様の資産形成に役立つ」ことを事業目的としております。投資家の皆様の資産形成に役立つために、投資家にとって望ましい投資信託を提供することを目的とするアセットマネジメント事業の拡大と、中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報を提供し、投資家の皆様の資産形成に役立つことを目指すファイナンシャル・サービス事業の展開により、投資家の皆様の資産形成に真に役立つ、金融を中心とした情報社会に不可欠な企業グループとして成長していきたいと考えております。

 

(2)経営環境

① 基本的経営環境

 我が国においては、近年、当社グループの事業に大きく関係する政策が政府主導で策定され実行に移されつつあるものと認識しております。具体的には、2022年11月に政府の新しい資本主義実現会議が決定した「資産所得倍増プラン」における、我が国の家計金融資産の過半を占める現預金を投資に繋げることで持続的な企業価値向上を図り、その恩恵が資産所得の拡大という形で家計にも好影響を及ぼす「成長と資産所得の好循環」を実現させるとの目標や、これに連動して政府が進める「資産運用立国実現プラン」において資産運用業・アセットオーナーシップの改革を進めることにより家計の安定的な資産形成を実現させ、我が国の経済の成長と国民の資産所得の増加に繋げるとの方針等がこれに該当いたします。中でも、この「資産運用立国実現プラン」では、家計に向けた具体的な取組みとして、NISAの抜本的拡充・強化(2024年1月スタートの新NISA)の他、一般投資家の立場に立ったアドバイザー機能の拡充の検討や金融経済教育の充実等が挙げられており、これらを実現するために、その実務を担う資産運用業・アセットオーナーシップの改革を進めることが重要であることも指摘されております。

このような環境は、前述のとおり「投資家の皆様の資産形成に役立つために、投資家にとって望ましい投資信託を提供する」アセットマネジメント事業と、「中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報および投資教育を提供し、投資家の皆様の資産形成に役立つ」ファイナンシャル・サービス事業を擁する当社グループといたしましては、事業を推進する上で良好なものであると考えております。加えて、この我が国政府による政策・方針にも沿った事業展開を積極的に推進することが、正しく当社が属するSBIグループが共通して掲げる「公益は私益にも繋がる」との理念にも合致するものであり、その観点からも現在の経営環境は当社グループにとって好ましい状況にあるものと考えております。

 なお、当社子会社のSBIアセットマネジメント株式会社が主として担当するアセットマネジメント事業における基本的な経営環境についての認識は以下の通りです。

 個人投資家向けの分野に関しては、上述のとおり、従来からの「貯蓄から投資」への潮流の中、資産形成のための運用ニーズはますます高まるものと考えられ、特徴ある多数の商品ラインナップを有するSBIアセットマネジメントが公募投資信託の分野で貢献できる余地も大きくなるものと考えております。

 機関投資家向けの分野につきましては、SBIアセットマネジメントが多くのお取引を頂いている地方銀行を中心とする金融機関では、有価証券運用ポートフォリオの多様化や、その管理・モニタリングの厳格化がより一層求められる状況にあるとの認識であり、この面でも私募投資信託に強みを持つSBIアセットマネジメントが寄与することが可能であると考えております。

 また、当社子会社のウエルスアドバイザー株式会社が担うファイナンシャル・サービス事業を取り巻く基本的な経営環境につきましても、当社グループが従来から積み重ねてきた、投資家目線での有益な金融関連情報の提供機能が、資産運用立国を目指す上で不可欠な重要な要素であることを勘案いたしますと、その需要は大きく、経営環境としては引き続き良好な状況であると認識しております。特に、当社グループの祖業でもある投資信託の評価・分析をはじめとする金融情報全般については、一般投資家の皆様向けのウェブサイト等の他、投資信託を販売する金融機関等において販売スタッフ等が使用する情報端末に組み込まれた「Wealth Advisor」が圧倒的なシェアを有する等、既に強固な基盤を築くに至っており、ファイナンシャル・サービス事業を推進して行く上での大きなアドバンテージを既に確保しているものと考えております。

 その他、当社グループは、親会社であるSBIホールディングス株式会社とその傘下にある、株式会社SBI証券や株式会社SBI新生銀行をはじめとする金融関連のグループ企業各社とも緊密な関係を保つことで、相互のシナジー効果によって競争力の強化や、効率的な経営と事業展開を追求していくことが可能な環境下にあることも強みであると考えております。

 

② 最近の経営環境

 最近連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)における世界経済は、多くの主要国・地域において特徴的な金融政策の転換が行われた中、米国においては市場でのソフトランディングを実現し株式市場を中心に比較的堅調な推移を示した一方、欧州における構造的、地政学的な課題、中国での主として不動産セクターの調整等、多くの問題点が存在するなど、不安定な要素を内包しつつも比較的穏やかな推移を示しておりましたが、2025年1月の米国での新政権発足以降は、トランプ新大統領が矢継ぎ早に打ち出す各種政策、特に関税関連の政策が年度末にかけて各国の市場を揺るがすなど、大きな混乱の中にありました。このような情勢の中、我が国においては、石破首相の就任と直後の総選挙などのイベントがあり、市場においては日本銀行の金融政策によるマイナス金利からの完全な脱却、物価上昇の継続等の動きが見られました。その後、2025年の年明け以降は米国のトランプ政権の繰り出す各種政策の影響もあり、株式市場は世界各国同様、下落局面の波乱の中で年度末を迎えることとなりました。

 このような経済環境の下、当社グループの事業に関連性の高い我が国における投資信託市場においては、2024年1月から開始された「新NISA」制度が一般にも浸透し、資金流入が続く追い風もある一方、運用会社間の競争は激化し、平均信託報酬率は低下傾向にあるなど、構造変化が見られた1年となりました。近年、資産運用を巡る環境は大きく変化しており、「貯蓄から投資」への流れが一層加速しているものと当社では考えております。

 この認識の下、アセットマネジメント事業においては、多様な資産クラスに対応する公募投信の設定を通じて、中長期の複利効果を活かす「成長投資型」に加え、定期的な分配を行う「成長&分配型」ファンドを提供し、投資家の皆様の幅広いニーズにお応えできるよう努めるなど、現在議論が始まっているNISA制度の改革等も視野に入れた対策を既に講じております。

 また、フィナンシャル・サービス事業では、このような「貯蓄から投資へ」の流れを全国に浸透させ、金融リテラシーの向上を目的とする「資産運用フェア」を全国各地で精力的に開催することで、引き続き我が国における重要課題である「地方創生」への貢献も果たしております。

 以上のとおり、当社グループでは、近時の社会、経済情勢を含めた当社グループを取り巻く経営環境に適切に対応することで、当社の理念及び事業目的の実現を図るべく事業の推進を行っております。

 

 

(3)経営戦略

 当社は持株会社として、事業子会社とともに、当社グループの理念や事業目的に適った適切な経営戦略を立案し、その推進を図っております。具体的には、アセットマネジメント事業とファイナンシャル・サービス事業のそれぞれについて、以下のとおり今後の事業を進めてまいりたいと考えております。

 アセットマネジメント事業においては、混乱する市場環境を見据えつつ、適切なタイミングでのファンドの積極的な新規投入を継続いたします。具体的には、投資家の皆様が自らにあった運用ポートフォリオを構築するための材料となるインデックスファンドの更なる拡充の他、引き続き根強いニーズのある「成長」と「分配」を両立するタイプの他、オルタナティブアセット(株式や債券等の伝統的な運用資産以外の代替資産)を組み込んだ商品の開発に当社グループとして積極的に取り組んでまいります。中でも、暗号資産を対象とするファンドについては、我が国における法規制等に関する議論の帰趨を見極めつつその開発につき検討してまいります。また、プロダクトガバナンスに基づく商品の適切なコントロールにより、「顧客中心主義」の徹底についても引き続き推進してまいります。当社は、投資信託の信託報酬をはじめとする各種コストの抑制について業界において先駆的 な取り組みを行ってきたと自負しておりますが、今後ともこの方針は堅持し、投資家の皆様に貢献し、その支持をいただくことで、当社の運用資産残高の伸長、ひいては当社の業績の成長に繋げてゆきたいと考えております。また、効率的な各種システムの導入やAI(人工知能)の業務への活用等の方策を通じた経営の合理化もあわせて徹底する所存です。

 ファイナンシャル・サービス事業については、「WealthAdvisor」ブランドを活用した国内の金融機関とのリレーションを活用した事業展開に注力してまいります。政府が推進する「資産運用立国」構想の下、国内の金融機関はフィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)を継続してゆくものと考えられますが、当社ではこれら国内金融機関と連携し各種のサービス開発し、提供していきたいと考えております。また、新NISAの浸透とともにますます加速すると思われる「貯蓄から投資へ」の流れにあわせて、重要性を増す投資教育の面においては、国内金融機関と共同で資産運用フェアや各種のセミナー等を活発に開催することで、投資家の皆様のニーズに応えてゆくとともに、当社の我が国の個人投資の環境におけるプレゼンスを高めてまいります。

 当社グループは、アセットマネジメント事業とファイナンシャル・サービス事業の2つの事業を「車の両輪」として、収益基盤を拡大し、「投資家主権の確立」という理念と、「中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報を提供し、投資家の皆様の資産形成に役立つこと」という事業目的の達成のために、金融を中心とした情報社会に不可欠な企業グループとしての成長を目指して中長期の事業運営を行っていく所存です。

 

 

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 (中長期の施策について)

 当社グループは、創業来の理念である「投資家主権の確立」を目指し、中立・客観的立場からの豊富で偏りのない金融情報の提供と、良質かつ低コストの投資信託商品の提供を通じて、投資家の皆様の資産形成に貢献する企業グループとして成長していきたいと考えております。

 そのために、当社グループでは、業務運営能力の強化を図り、投資家・消費者の皆様のために有用な商品や情報を提供する体制の更なる整備を進め、中長期的に当社のかかげる「顧客中心主義」を推進できるよう、各事業分野で以下のとおり事業運営を行なってまいります。

 当社ではグループの有する二つの事業である、アセットマネジメント事業とファイナンシャル・サービス事業のそれぞれについて、以下のとおり事業運営を行ない、課題に対処しております

 

 

・アセットマネジメント事業

 当社グループは、アセットマネジメント事業の強化を図っております。現在、グループの売上高および利益に占める割合のうち、投資信託の組成、運用を中心とするアセットマネジメント事業が既に8割を超えておりますが、今後ともこの事業を強化、注力していく分野と認識しております。

 アセットマネジメント事業におきましては、子会社であるSBIアセットマネジメント株式会社が、主に個人投資家の皆様向けの商品である公募投資信託と、主として地方金融機関等の 機関投資家を対象とする私募投資信託の運営全般を担い、2019年2月に子会社とした米国の資産運用会社Carret Asset Management LLCは海外債券型ファンド等の事業を展開しております。

 その中でSBIアセットマネジメントにつきましては、最近連結決算期中に公募投資信託を9本(当社で初めてのETF1本を含む)設定する等、個人投資家の投資意欲にお応えする有効かつ有益な選択肢の提供に重点的に取り進めました。この投資信託のラインナップの積極的な拡充は、当社では、投資を行う個人の皆様にとって、最適なポートフォリオはお一人お一人で当然異なることから、これからの個人投資家の皆様にとっては、ご自分にあった資産配分が自由に、低コストで気軽に行える環境を整えることが重要との考えに基づくものです。当社グループでは、そのための材料となる良質で低コストの投資信託のラインナップの更なる充実を図ることが必要と考えております。また、それにより、投資家の皆様の資産形成への貢献、ひいては我が国の投資環境の更なる発展の一翼を担ってゆくことも大切な事業目標であると考えております。

また、当社グループの運用資産残高は、2019年3月末に12,846 億円だったものが、2024年3月末には59,224億円となり、更に最近連結会計年度末(2025年3月末)には67,008億円となるなど、飛躍的な拡大を続けております。この拡大基調を維持し、加速させるためには、当社グループの事業推進体制の更なる整備と強化が必要と考えており、合理的な業務システム環境の構築や、内部統制・コンプライアンス等の内部管理に関して、更なる強化が必要であると考え、既に実行に移しております。

 

 

・ファイナンシャル・サービス事業

 当社グループのファイナンシャル・サービス事業はウエルスアドバイザー株式会社を中心に、「中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報を提供し、投資家の皆様の資産形成に役立つ」ことを目的に事業を推進しております。

 この目的の達成のためには、より多くの一般投資家・消費者の皆様に当社グループが提供する資産形成のための考え方や、各種金融商品に関する比較・分析等の当社グループの提供する情報に触れていただく機会を 増加させる必要があると認識しております。

 当社グループにおいては、2023年3月にそれまで設立以来25年間使用していた「モーニングスター」ブランドを売却しましたが、投信評価情報を含むファイナンシャル・サービス事業については、新たに「Wealth Advisor」「ウエルスアドバイザー」のブランドで、引き続き従来同様の商品およびサービスの提供を行っております。近時は、新たに「Wealth Advisor」「ウエルスアドバイザー」のブランドの社会的認知度の向上にも注力して、今後とも「Wealth Advisor」「ウエルスアドバイザー」のブランドの更なる確立に向けて、ウェブサイトほかの広告価値や提供データの利用価値を高め、業績の向上を図る必要があるものと考えております。

 なお、投資信託の販売金融機関が活用する「Wealth Advisor」の提供先は圧倒的なシェアを占めるに至っております。今後この分野においては、「ライフプランシミュレーション」、「ロボ・アドバイザー」、「相続シミュレーション」等の販売金融機関のフィデューシャリー・デューティーに資する様々なツールを提供することが重要な課題であり、引き続き販売金融機関と緊密に連携して各種商品、サービスを開発し、その提供に注力する必要があると考えております。

 「貯蓄から投資へ」の流れの中、当社グループでは、大手金融機関や、地域金融機関との連携による資産運用フェア等のイベントについては、対面型、オンライン型の双方ともニーズが大きいと考えており、これらの効率的なオペレーションにより積極的に開催することを目指してまいります。

 

 

 以上のとおり、当社グループでは「アセットマネジメント事業」と「ファイナンシャル・サービス事業」を「車の両輪」として双方の事業内容を活かすことにより、本格的に動き始めた我が国における「貯蓄から資産形成」の流れの中で、社会、経済情勢を含めた当社グループを取り巻く経営環境に適切に対応することで、当社の理念及び事業目的の実現を図るべく事業の推進を行ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社および当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は本届出書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)ガバナンス

 当社では親会社であるSBIホールディングス株式会社およびその傘下のグループ各社が共有する「企業は社会の一構成要素であり、社会に帰属しているからこそ存続できる」との考えのもと、社会の維持・発展に貢献することを重視しております。また、この考えに基づき策定されている「サステナビリティ基本方針」について、当社グループにおける事業内容等を踏まえた検討の上、これを受容しております。この基本方針のもと、当社グループでは、代表取締役社長を委員長とする当社および主要子会社の役職員からなる「グループサステナビリティ委員会」を設置し、グループの経営戦略の一環としてサステナビリティにつき、その方向性や、具体的施策を議論する体制、仕組みを整えております。なお、グループサステナビリティ委員会における議論の内容と結果、ならびにグループ各社のサステナビリティに関する活動については、その重要性に鑑み、定期的に当社取締役会に対しての報告を行っております。また、グループ各社の取締役または取締役会に対しても直接報告や提言を行う他、当社の監査役または監査役会に対しても報告を行うことで連携を図っており、当社グループ全体としてサステナビリティ経営への意識の共有を図る態勢をとっております。

 

(2)リスク管理

 当社グループでは、サステナビリティへの対応を企業として重大な責務であると認識しており、そのため、その対応の適正性を担保することについて一定のリスクが存在するものと考えております。このリスクに対する備えといたしましては、サステナビリティ以外の経営リスクと同様に、当社およびグループ各社の経営に重大な影響を与える問題が発生した場合、あるいはその可能性が生じた場合には、グループリスク管理規程およびリスク管理実施細則に従い行動し対応することを定めております。

 また、当社が継続的に把握すべきサステナビリティに関するリスク等については、グループサステナビリティ委員会において適宜のモニタリングを実施しております。その具体的な内容は以下の通りです。

 

 (主として環境に関する社会問題への対応リスク)

  ・社会問題、特に気候変動関連に代表される諸問題への法規制等の厳格化への対応

  ・アセットマネジメント事業における不適切な企業等への投資その他の管理状況

 

 

 (人的資本に関するリスク)

  ・多様な人材の活用推進の把握

  ・人材の流動化等により生じる可能性のある内部管理上、業務運営上の制約

 

 なお、グループサステナビリティ委員会においては、外部環境、業務プロセス、内部環境等のカテゴリーごとにサステナビリティに関するリスク情報を収集・分析するリスクアセスメントを実施することとしております。

 当社グループではサステナビリティに起因するリスクを正しく認識することが、当社の事業推進および経営戦略にとっても重要な課題であると考えており、統合的なリスク管理の枠組みの中での管理体制について継続して検討してまいります。

 

(3)戦略

 当社グループは、「投資家の皆様の資産形成に役立つために、投資家にとって望ましい投資信託を提供する」アセットマネジメント事業と、「投資家の皆様の資産形成に役立つために、中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報を提供する」ファイナンシャル・サービス事業とを展開しております。

 

 アセットマネジメント事業においては、子会社SBIアセットマネジメント株式会社では、2019年5月にESGの中でも特に環境にフォーカスしたファンドの(当時の名称:「SBIグローバルESGバランス・ファンド」(愛称:グリーンインパクト))の運用を開始し、2021年11月にはパリ協定温室効果ガス排出削減目標を実践しようとする企業で構成される株価指数への連動を目指すファンド(当時の名称:「SBI パリ協定ネット・ゼロ インデックス・ファンド」、および世界のジェンダー・フリーに取り組む企業で構成される株価指数への連動を目指すファンド(当時の名称:「SBI ジェンダー・フリー インデックス・ファンド」)の設定を行うなど、この分野にも積極的に取り組んでまいりました。これらの全ての投資信託は、現在では2023年3月に金融庁が改正した「金融商品取引業者向けの総合的な監督指針」に基づくESG投信には該当するものではなく、また、現在、当社グループにおいては当該ESG投信に該当するファンドの設定はありませんが、SBIアセットマネジメントでは、主として投資家の皆様のサステナビリティへの関心とそれに伴うニーズに着目し、サステナビリティの観点においての特徴あるファンドを中心とした新たな金融商品の開発と提供についても検討課題としてまいります。

 また、ファイナンシャル・サービス事業においては、サステナビリティに関する事業方針として、「投資家の皆様のESGへの関心に役立つために、ESGに優れた企業情報を提供する」ことを定めており、これに注力してまいります。

 なお、当社グループの企業運営に関してのサステナビリティに関する戦略については、法規制や当社の属する企業グループの取組みを含む社会情勢にも十分留意しつつ、グループサステナビリティ委員会を通じて適切に検討してまいります。

 

(4)人材の育成に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績

 当社グループでは、事業活動を推進する中で、社会の維持・発展に貢献できる人材の育成を図ることも、投資家をはじめとする当社グループに関係する皆様に対する責務の一つと考えており、経営上の重要な課題の一つであるとの考えをもっております。

 そのため、当社グループにおける人材の採用においては、プロフェッショナルとしての職歴等に加えて、人間性を重視した採用をおこなっており、人種・国籍・性別や学歴等は一切問うておりません。また、当社グループの業務内容から、採用職種はファンド・マネージャーやファンド・アナリスト等高度な専門性が求められるものが多く、その人材は社会一般にはかなり少数であり、その採用には困難を伴いますが、仕事と家庭との両立を目的とした職場環境の整備、育児及び介護による休暇・休業や育児を行う者の短時間勤務等の制度の充実を図っており、今後ともその適用範囲を拡充することにより対応してまいる所存です。

 

 また、当社グループの各社では、女性の役員、管理職への登用を積極的に行っており、これら女性管理職の多くは中途採用者であります。今後も女性のみならず外国人等の多様性に富んだ中核人材の育成に努め、管理職への登用を進めてまいりたいと考えておりますが、これらに関連する事項の現在の状況については次のとおりです。

 ・当社および国内子会社の業務執行取締役および執行役員のうち女性の割合は2025年3月末現在で、7.7%となっております。

 ・国内の管理職のうち、女性従業員が占める割合は当社グループ全体で、2025年3月末現在で25.7%です。

  なお、アセットマネジメント事業においては26.1%、ファイナンシャル・サービス事業では27.8%と

  なっています。(共通部門では16.7%)

 ・2025年3月末現在の当社における男女別の賃金差異は62.3%です。

 ・2024年度において育児休暇取得の対象となる男性社員はおりませんでした。

  ※上記の数値は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)」、または「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の定義により算出したものですが、当社グループ各社の従業員数はいずれも100名未満のため、両法に基づき公表しているものではありません。

 

 なお、これらの指標に関する具体的な数値については、国内における従業員の総数が94名(2025年3月末)と比較的少数であり、個別の人事戦略、施策による影響を受けやすく、その目標を設定することには困難が伴うことから、その策定については今後の検討課題といたします。ただし、多様性の確保は当社の人事戦略上の最重要課題であるとの認識に立ち、現行の数値を向上させることを前提において取り組んでまいります。

 

(5)アセットマネジメント事業における責任ある投資家としての行動方針について

 当社グループのアセットマネジメント事業においては、その業務の一環として、多くの企業その他へ投資し、運用を行っております。アセットマネジメント事業を営む各社においては、投資および運用アプローチにおいて、サステナビリティに関連して、ESG要因の考慮を行っております。具体的には、「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫の受け入れを表明し、スチュワードシップ活動に取り組んでいます。また、ESG評価を投資対象の選定に組み込む「ESGインテグレーション」や外部運用機関の投資状況を確認する「ESGモニタリング」など、ファンド毎の特性を踏まえた効果的なESG投資を推進するなど、各ファンドの運用方針、戦略や哲学に沿う形で、投資判断にサステナビリティに関する要素の組み入れを図っており、運用の高度化を検討しております。

 

 当社グループでは、サステナビリティの考慮とパフォーマンスの向上との両立を目指した運用の在り方について、今後とも継続的に検討してまいります。

 

3【事業等のリスク】

本届出書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本届出書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 業績の変動の外的要因について

当社グループは、アセットマネジメント事業およびファイナンシャル・サービス事業の二つの分野において、それぞれ商品やサービスの多様化を進め、事業リスクの分散による安定的な収益基盤の構築を図っておりますが、株式市況、為替、市場金利等の金融情勢や景気動静、金融機関の動向等の外部要因は、常に変動し、当社グループの業績に常に影響を与えています。特に、わが国の投資信託に関する状況は、当社グループが営む二つの事業分野に直接大きな影響を及ぼす可能性があります。これらの外部要因は、当社グループでコントロールができず、大きな変動が生じた場合には、当社グループの業績に影響がでる可能性がありますが、その時期や影響を予想することは困難であります。

 

① 株式市況および株価

当社グループのアセットマネジメント事業の中心である当社子会社のSBIアセットマネジメント株式会社は、投資信託の設定・運用が主業であり、その運用残高に応じた信託報酬を主な収益源としております。その中でも大きな柱の一つである公募投資信託では、国内外の株式等に投資する追加型株式投資信託が中心であり、そのため、わが国や世界各国の株式市況、並びに投資している個別株式の株価および投資対象とするインデックスの値動き等により、運用する投資信託の残高が変動し、信託報酬が変動する性格を持っております。また、もう一つの柱である私募投資信託については、株式に比べ比較的値動きに小さいアセットクラスである債券に投資するタイプが大きな割合を占める一方で、私募投資信託への投資家は地方銀行をはじめとする地域金融機関が多く、大ロットでの投資が多いため、これら投資家の投資行動により残高が大きく変動するという特徴を有しております。

このため、当社グループのアセットマネジメント事業においては、投資信託分野における商品ラインアップの多様化を図り、それによるリスクの分散を積極的に進めてまいりました。具体的には、従来はSBIアセットマネジメントにおける公募追加型株式投資信託、中でもインデックスファンドが事業の中心でありましたが、2019年2月に米国において私募の債券型ファンドを中心に運用しているCarret Asset Management LLCを子会社とし、2019年12月には主として、私募の債券型投資信託を運用するSBIボンド・インベストメント・マネジメント株式会社およびSBI地方創生アセットマネジメント株式会社を子会社といたしました。これらの株価変動による影響が小さい私募の債券型投資信託に係る事業規模の拡大により、運用する投資信託の種類や範囲を広げ、グローバル・アセット・アロケーションの再構築をおこない、収益の安定を図っております。更に、2022年10月には新生インベストメント・マネジメント株式会社を合併し、アクティブ型のファンド・オブ・ファンド等をラインナップに加えることで、特定の市況・指標等に左右されにくい事業ポートフォリオの整備にも注力してまいりました。なお、SBIボンド・インベストメント・マネジメントおよびSBI地方創生アセットマネジメントは2022年8月に、新生インベストメント・マネジメントは2023年4月に、それぞれがSBIアセットマネジメントを存続会社とする吸収合併を実施しております。

 ファイナンシャル・サービス事業につきましては、株式市況及び株価等の変動が業績に及ぼす影響は相対的に小さいものと想定しております。

 

② 為替、市場金利

当社グループは、前述のとおり2019年2月に米国において私募の債券型ファンドを中心に運用しているCarret Asset Management LLCを、2019年12月には国内外の債券に投資するタイプの投資信託が主力であったSBIボンド・インベストメント・マネジメント株式会社およびSBI地方創生アセットマネジメント株式会社を、2022年10月には海外の運用会社の運用手法をファンド・オブ・ファンドの形態で国内の投資信託として運用していた新生インベストメント・マネジメント株式会社をそれぞれ子会社といたしました。これにより、当社グループのアセットマネジメント事業が運用する投資信託・ファンドの投資対象に、国内および米国を中心とする海外の債券や、新興国を含む世界各国の株式等が追加されました。そのため、当社グループの業績は、国内の他、米国を中心とする海外の債券市場、国内外の金利、為替の変動の影響を受けることとなりました。

当社グループとしては、このリスク要因に対しては、適切な金利、為替のヘッジ取引や、親会社であるSBIホールディングス株式会社およびその傘下のグループ各社の金融情報や手法等を活用して、債券市場、国内外の金利、為替の変動の影響を低減しております。また、一方では投資対象地域や対象商品が多様化することは、それ自体が当該リスクへの備えともなるため、当社グループとしては、引き続き事業対象の拡大や適切なリスクヘッジ手段を用いて、顧投資家の皆様への安定的な運用結果を提供し、ひいては当社グループの収益の安定を図ってまいります。

なお、ファイナンシャル・サービス事業においては、為替や市場金利等の変動についても、業績に及ぼす影響は相対的に小さいものと想定しております。

 

③ 金融機関の動向

アセットマネジメント事業の中心である当社子会社のSBIアセットマネジメント株式会社においては、公募追加型株式投資信託を中心とする商品群を、SBI証券を中心にその他の証券会社や地方銀行等も含めた金融機関に対して、一般投資家への販売を委託している他、地域金融機関の自己資金を受託して私募の投資信託を設定・運用するなど、金融機関とは密接な関係を有しております。

また、ファイナンシャル・サービス事業は、投資信託を中心に各種金融商品のインターネット広告を受注している他、資産運用フェアや各種セミナー等において、運用会社等の金融機関からスポンサー収入を得ております。また、

金融機関の販売員が投資信託を中心とする金融商品の販売説明に利用する「ウエルスアドバイザー」端末においては、ファンドデータや金融機関のウェブサイト上のデータを、当該販売金融機関に提供しています。

このように、当社グループ各社において金融機関は主要な顧客であり、金融機関の動向は当社グループの業績に影響を与えます。

当社グループは、各金融機関と良好な関係を構築しておりますが、金融機関が株式市況および株価、債券市場、為替、市場金利などの変動により業績に影響を受けた場合、アセットマネジメント事業においては当社の運用する投資信託への投資金額が大きく変動する可能性があり、また、ファイナンシャル・サービス事業においては、金融機関からの当社グループへの広告、セミナーの発注等が変動する可能性があります。

このリスクに対しては、アセットマネジメント事業では、投資家への適切な関連情報や、運用状況の結果とその分析を丁寧に提供することで、投資家からの信頼を獲得することで対処しております。また、ファイナンシャル・サービス事業においても、フィデューシャリー・デューティーに注力する販売金融機関への時宜に適ったプロダクトの提供や、丁寧なサポートを行うことで、その低減を図っております。

 

 

(2) アセットマネジメント事業で運営するファンドの募集および運営成績について

当社グループのアセットマネジメント事業は、公募追加型株式投資信託や私募の債券型投資信託、投資助言を行っておりますが、新規ファンドの募集が困難となる場合や、当初予定していたとおりにファンドを運用できなくなる可能性があります。また、当社グループの運用するファンドが期待どおりの運用成績を達成出来なかった場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(3) アセットマネジメント事業に影響を与える法的規制について

当社グループのアセットマネジメント事業は、投資信託運用会社として金融商品取引法に基づき投資運用業及び投資助言業の登録を行っております。また、米国において、同国の金融商品取引法に基づき投資運用業及び投資助言業の登録を行っております。今後、日米両国で、これら金融商品取引法及びその関連法令等に関し改正が行われた場合、当該事業の業務遂行に影響を及ぼす可能性があります。また、何らかの理由により法令等への違反をし、これらの登録の取消処分等を受けた場合には、当該事業の業務遂行に支障をきたすと共に当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(4) 「のれん」の減損の可能性について

当社グループのこれまでの買収等の企業結合の結果、2025年3月31日現在の連結貸借対照表に「のれん」が1,625,593千円計上されています。

「のれん」の内訳は以下のとおりです。

「のれん」の発生要因

「のれん」が帰属する

事業・サービス

企業結合年月

「のれん」

の残高

Carret Holdings Inc.と Carret Asset Management LLC の買収、子会社化

米国における私募の債券型ファンドの運用

2019年2月

954,120千円

SBIアセットマネジメント株式会社に

係る買収、子会社化(注1)

私募の債券型投資信託の運用、公募ならびに私募の投資信託のアクティブ運用(注2)

2019年12月~

2022年10月

(注1)

671,473千円

 

1,625,593千円

(注1) SBIアセットマネジメント株式会社を存続会社とする吸収合併により消滅会社となった旧新生インベストメント・マネジメント株式会社(企業結合年月 2022年10月)、旧SBIボンド・インベストメント・マネジメント株式会社及び旧SBI地方創生アセットマネジメント株式会社(企業結合年月 2019年12月)の買収・子会社化によるものであります。

(注2) 上記の合併消滅会社3社が行っていた主要な事業であります。当該事業は、現SBIアセットマネジメント株式会社が承継し、営んでおります。

 

「固定資産の減損に係る会計基準」および「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」に従い、各「のれん」が帰属する事業・サービスに「営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナス」などの減損の兆候の有無を把握し、減損の兆候がある場合には、減損損失の認識と測定を行います。その結果、「のれん」の減損損失が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

  なお、最近連結会計年度末において、上記の「のれん」が帰属する事業・サービスの営業活動から生ずる損益はプラスであり、減損の兆候はありません。

  現時点においては、「のれん」の減損損失の計上を要する可能性は小さいものと考えております。

 

 

 (5) コンピュータシステム等のトラブルについて

当社グループは、インターネットを通じて各種評価情報を提供するとともに、ホームページへの広告の掲載や金融情報の配信を行っております。当社グループは、コンピュータシステムの拡充と安定性の確保には多大な努力をしておりますが、システムへの予想を超えるアクセス数の増加による過負荷、機器やソフトウェアの不具合、人為的ミス、回線障害、コンピュータウィルス、ハッカー等の悪意の妨害行為のほか、停電、自然災害によってもシステム障害が起こる可能性があります。

当社グループでは、さまざまなシステム障害対策を講じてはおりますが、何らかの理由により障害が発生した場合、サービス停止による収益機会の喪失、顧客やユーザーからの信頼性低下などにより、当社グループの業績に影響が出る可能性があります。

 

(6) 個人情報の管理について

当社グループは、事業に必要な個人情報を収集し活用しております。これらの個人情報の流出や外部による不正取得による被害の防止は、当社グループの事業にとってきわめて重要であり、当社グループではこれらの動向に注意し、顧客の利害が侵害されることのないようセキュリティ対策を講じております。過去に顧客情報の漏えいや破壊等が起こったことは認識しておらず、また、情報漏えい等により損害賠償を請求されたこともありません。しかし、今後個人情報の漏えい等があった場合、当社グループに対する信頼性低下の可能性があるほか、法的責任を問われる可能性もあり、その結果として当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。

 

(7) 当社グループの公正な中立機関としてのイメージについて

当社グループは、SBIグループの日本における総合金融サービスの一翼を担っております。その一方で、当社グループのファイナンシャル・サービス事業の営業基盤には、評価の客観性と中立性が求められる部分も大きいと考えております。したがって、投資家その他のユーザーからの当社グループの事業に対する信頼性が損なわれないように、SBIグループとの協力関係は維持しながらも、当社グループの独立性を重視して、客観的かつ公正な比較・評価情報を提供していく必要があると考えております。

そのため、当該ユーザーが当社グループの提供する情報に関して客観性や中立性が欠如していると判断した場合や、当社グループの提供するデータや記事の信頼性が、データの間違いや不適切な引用記事等によって損なわれ、評価機関としてのイメージが低下した場合には、当社グループの業績や株価に悪影響を与える可能性があるものと認識しております。

 

(8) SBIグループとの関係について

SBIホールディングス株式会社は、当社の議決権の所有割合の52.7%(最近連結会計年度末現在)に相当する株式を間接保有しております。また、連結総売上高においてSBIグループに対する売上高が一定の割合で存在しており、SBIグループの業績変動によって当社グループの業績に影響が出る可能性があります。また、SBIグループの金融サービス事業戦略、当社グループと取引を行っているSBIグループの会社の経営方針等によっては、当社グループの事業運営等に影響を与える可能性があります。特に、SBIグループの新たな事業構想等に当社グループが参画することとなる局面においては、想定外の事業リスク等が発生する可能性もあります。当社グループとしては、上場会社としてのガバナンス体制と独立した判断に基づき、これらのリスクに対しても適切に対処することができるものと考えております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

 最近連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

最近連結会計年度における世界経済は、多くの主要国・地域において特徴的な金融政策の転換が行われた中、米国においては市場でのソフトランディングを実現し株式市場を中心に比較的堅調な推移を示した一方、欧州においては構造的、地政学的な課題が継続し、中国では不動産セクターでの調整等の不安材料が顕在化するなど、多くの不安定な要素を内包しつつも比較的穏やかな推移を示しておりましたが、2025年1月の米国での新政権発足以降は、トランプ新大統領が矢継ぎ早に打ち出す各種政策、特に関税関連の政策が各国・地域の市場を揺るがすなど、年度末にかけて大きな混乱の中にありました。その中で、当社グループの事業に関連性の高い投資信託市場は、2024年1月から開始された「新NISA」制度が一般にも浸透し、資金流入が続くという追い風もある一方、運用会社間の競争は激化し、平均信託報酬率は低下傾向にあるなど、構造変化が見られた1年ともなりました。

このような経営環境下で、当社グループのアセットマネジメント事業は、公募の投資信託の最近連結会計年度末での運用残高が、前連結会計年度末の2.7兆円から30.7%増加の3.5兆円となりました。これは、新NISAに対応し、「成長」投資を中心とした様々な資産クラスを揃えたインデックスファンドが安定した資金流入により増加した他、高配当型に代表される「成長」と「分配」の両立を目指す特徴を持つファンドを業界に先駆け、数多く投入した結果によるものです。加えて、これらの商品群がいずれも当社グループの理念である「顧客中心主義」に則り、良質であることはもちろん、同種同等のファンドと比較して最低水準の信託報酬で提供している結果でもあると考えております。既存の商品につきましても、2023年6月に定めました当社のプロダクトガバナンス方針に基づき、コストの減額や、受益者目線に立った商品ラインナップの再構築を行うなど、年度を通じて「顧客中心主義」に基づき積極的な施策を実施してまいりました。

また、主として地域金融機関の有価証券運用の高度化と多様化を支援する私募の投資信託の運用残高は、最近連結会計年度末には2.4兆円となりました。これは、2021年3月末と比較して約25%増加しており、コロナ明け後の欧米金利の上昇、昨年度の国内金利の上昇と、債券の受託が多い私募投資信託においては厳しい環境の中にあっても、当社の顧客ニーズに即した営業活動が結実したものです。この結果、アセットマネジメント事業の最近連結会計年度の売上高は前年比で18.8%増の9,751百万円となりました。

ファイナンシャル・サービス事業では、子会社のウエルスアドバイザー株式会社が提供する「Wealth Advisor」端末を中心とした大手及び地域金融機関とのリレーションを基盤として、大手金融機関や、有力地方銀行とともに資産運用セミナーを積極的に開催し、その件数は前連結会計年度との比較で増加し19件に達するなど、この面でも新NISAを端緒として高まる我が国における資産運用ニーズへの「顧客中心主義」の観点からのアプローチを続けております。また、2024年12月には第2回となる「“新 NISA 成長投資枠”WA優秀ファンド賞」を表彰し、情報提供を通じた投資家への貢献も継続しております。これらにより、最近連結会計年度のファイナンシャル・サービス事業の売上高は1,817百万円となりました。

以上の結果、最近連結会計年度の当社連結業績は、売上高が前連結会計年度の10,137百万円から1,431百万円(14.1%)の増収となる11,568百万円となり、過去最高を記録いたしました。

 また、前連結会計年度と比べ、売上原価が953百万円増加し、販売費及び一般管理費が319百万円増加した結果、最近連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度の2,111百万円から157百万円(7.5%)の増益となる2,269百万円となり、2期連続の増益、および過去最高益を更新しました。

 営業外損益は、前連結会計年度と比べ、営業外収益が109百万円、営業外費用は7百万円それぞれ減少した結果、最近連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度の2,510百万円から55百万円(2.2%)の増益となる2,565百万円となり、16期連続の増益、および14期連続の過去最高益を更新しました。

 この結果、最近連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の1,589百万円から57百万円(3.6%)の増益となる1,646百万円となり、「モーニングスター」ブランドの返還対価8,000百万円が計上された2023年3月期を除くと過去最高益となりました。

 

 

 

 

 

 

 

(連結業績の概要)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

最近連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

前連結会計年度比較

金額(千円)

利益率(%)

金額(千円)

利益率(%)

金額(千円)

比率(%)

売上高

10,137,596

 

11,568,990

 

1,431,394

14.1

営業利益

2,111,325

20.8

2,269,274

19.6

157,948

7.5

経常利益

2,510,110

24.8

2,565,494

22.2

55,383

2.2

親会社株主に帰属する当期純利益

1,589,278

15.7

1,646,935

14.2

57,657

3.6

連結売上高は13期連続の増収、6期連続で過去最高売上を更新しました。

連結営業利益は2期連続の増益、過去最高益を更新しました。

連結経常利益は16期連続の増益、14期連続で過去最高益を更新しました。

連結最終利益(親会社株主に帰属する当期純利益)は増益となりました。米国モーニングスター・インクへの「モーニングスター」ブランドの返還対価8,000百万円が計上された2023年3月期を除くと、過去最高益となります。

 

  セグメント別、サービス別の販売実績

 

 セグメント別売上高

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

増減率

(%)

金額(千円)

構成比(%)

金額(千円)

構成比(%)

アセットマネジメント事業

8,210,510

81.0

9,751,909

84.3

18.8

ファイナンシャル・サービス事業

1,927,085

19.0

1,817,080

15.7

△5.7

連結売上高

10,137,596

100.0

11,568,990

100.0

14.1

(注)記載金額は千円未満を切捨てて表示しております。

 

アセットマネジメント事業

投資信託の最近連結会計年度末の運用残高の合計は、前連結会計年度末の5兆9,224億円から13.1%増加し、6兆7,008 億円となりました。内訳は、国内の公募投信が2兆7,144億円から30.7%増加の3兆5,484億円、国内の私募投信はほぼ横ばいの2兆4,204億円、また、海外が4,753億円から2.5%増加し、4,874億円となりました。資産運用残高の増加に伴い、アセットマネジメント事業の最近連結会計年度の売上高は、前連結会計年度の8,210百万円から1,541百万円(18.8%)の増収となる9,751百万円となりました。当社グループの売上における当事業の占める割合は継続して上昇しており、最近連結会計年度は84.3%に達しております。

 

ファイナンシャル・サービス事業

投資信託の販売金融機関が活用する「Wealth Advisor」の提供台数は安定的に推移(前連結会計年度末の116,315 台から最近連結会計年度末は116,327台)したほか、有力金融機関などと連携して開催する対面型セミナーは着実に増加し、19件となりました。また一般事業会社のIR活動の支援件数も増加いたしましたが、一部のコンテンツの開発と展開に関する見直しを前倒しで実施した結果、ファイナンシャル・サービス事業の最近連結会計年度の売上高は、前連結会計年度の1,927百万円から110百万円(△5.7%)の減収となる1,817百万円となりました。

 

②個別業績の概要について

 当社は2023年3月30日に実施した組織再編に伴い純粋持株会社に移行しております。個別業績については、当社単体の売上は殆どが子会社からの経営管理及び指導料と受取配当金で構成され、支出は主として当社の上場関連費用、および子会社運営のための経費となっております。当事業年度より、子会社配当の受領を開始したことで、当社単体の売上高は前年同期の800百万円から753百万円(94.2%)の増収となる1,554百万円となりました。販売費及び一般管理費は、前年同期の474百万円から14百万円(3.1%)増加して489百万円となった結果、営業利益は前年同期の325百万円から739百万円増加し、約3.3倍の1,064百万円となりました。また、営業外収益は208百万円、営業外費用は84百万円を計上したことにより、経常利益は前年同期の511百万円から677百万円増加し、約2.3倍の1,189百万円となりました。この結果、当期純利益は前年同期の299百万円から697百万円増加し、約3.3倍の996百万円となりました。

 

 

(2)最近連結会計年度の財政状態の概要

 最近連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末と比較して367百万円減少し、18,258百万円となりました。これは、流動資産が640百万円増加し、固定資産が1,005百万円減少したことによるものであります。流動資産の増加は、主として、現金及び預金の増加370百万円、売掛金の増加333百万円によるものであります。現金及び預金の増加の主な要因は、税金等調整前当期純利益2,564百万円の計上、配当金の支払1,950百万円及び未払法人税等の納付676百万円に、投資有価証券の取得及び売却等の投資活動において、純額で359百万円の収入となったことによるものです。固定資産の減少は、主として、投資有価証券の売却等ならびに基準価額の下落によるものであります。

 最近連結会計年度末の負債合計は前連結会計年度末と比較して333百万円増加し、2,848百万円となりました。これは主として、未払金の増加283百万円、未払法人税等の増加142百万円、リース債務の減少40百万円によるものであります。

 最近連結会計年度末の純資産合計は前連結会計年度末と比較して700百万円減少し、15,410百万円となりました。これは主として、親会社株主に帰属する当期純利益を1,646百万円計上し、1,950百万円の配当を行った結果、利益剰余金が303百万円減少したこと、また、投資有価証券(投資信託)の基準価額の下落ならびに為替換算レートの変動に伴い、その他の包括利益累計額合計が純額で418百万円減少したことによるものであります。

 

(3)最近連結会計年度の連結キャッシュ・フローの概況

 最近連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ370百万円増加し、4,008百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは2,007百万円の収入(前年同期は8,762百万円の収入)となりました。これは、主として、税金等調整前当期純利益2,564百万円の計上、法人税等の支払676百万円によるものであります。なお、前年同期の収入額に関しては、「モーニングスター」ライセンス返還等の未収入金の回収9,314百万円の臨時収入が含まれた金額となっております。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、359百万円の収入(前連結会計年度は5,492百万円の支出)となりました。これは、主として、投資有価証券の売却・償還などによる収入1,361百万円及び新規取得による支出860百万円、無形固定資産の取得143百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、2,013百万円の支出(前連結会計年度は2,148百万円の支出)となりました。これは、主として、配当金の支払額1,950百万円、リース債務の返済による支出63百万円によるものであります。

 

(4)今後の見通し

 アセットマネジメント事業においては、混乱する市場環境を見据えつつ、適切なタイミングでのファンドの積極的な新規投入を継続いたします。具体的には、投資家の皆様が自らにあった運用ポートフォリオを構築するための材料となるインデックスファンドの更なる拡充の他、引き続き根強いニーズのある「成長」と「分配」を両立するタイプ、オルタナティブアセット(株式や債券等の伝統的な運用資産以外の代替資産)を組み込んだ商品の開発に当社グループとして積極的に取り組んでまいります。中でも、暗号資産を対象とするファンドについては、我が国における法規制等に関する議論の帰趨を見極めつつその開発につき検討してまいります。

 また、プロダクトガバナンスに基づく商品の適切なコントロールにより、「顧客中心主義」の徹底についても引き続き推進してまいります。当社は、投資信託の信託報酬をはじめとする各種コストの抑制について業界において先駆的な取り組みを行ってきたと自負しておりますが、今後ともこの方針は堅持し、投資家の皆様に貢献し、その支持をいただくことで、当社の運用資産残高の伸長、ひいては当社の業績の成長に繋げてゆきたいと考えております。また、効率的な各種システムの導入やAI(人工知能)の業務への活用等の方策を通じた経営の合理化もあわせて徹底する所存です。

 ファイナンシャル・サービス事業については、「Wealth Advisor」ブランドを活用した国内の金融機関とのリレーションを活用した事業展開に注力してまいります。政府が推進する「資産運用立国」構想の下、国内の金融機関はフィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)を継続してゆくものと考えられますが、当社ではこれら国内金融機関と連携し各種のサービスを開発し、提供していきたいと考えております。また、新NISAの浸透とともにますます加速すると思われる「貯蓄から投資へ」の流れにあわせて、重要性を増す投資教育の面においては、国内金融機関と共同で資産運用フェアや各種のセミナー等を活発に開催することで、投資家の皆様のニーズに応えて行くとともに、当社の我が国の個人投資の環境におけるプレゼンスを高めてまいります。

 当社グループは、この2つの事業をベースに成長を希求してまいりますが、次期連結会計年度(2025年4月1日から2026年3月31日まで)の業績予想につきましては、海外の金利および景気動向、当社事業と関連性の高い株式市場の動向を通期で想定するのは難しく、当社グループの業績は、現時点では合理的な算定を行なうことが困難であるため、未定とさせていただきます。

 

(5)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績及び受注実績

当社グループの提供するサービスは広範囲かつ多種多様であり、また受注生産形態をとらない製品・サービスも多いため、セグメント別に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 

② 販売実績

セグメント別、サービス別の販売実績は以下のとおりです。

 

 セグメント別売上高

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

最近連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

増減率

(%)

金額(千円)

構成比(%)

金額(千円)

構成比(%)

アセットマネジメント事業

8,210,510

81.0

9,751,909

84.3

18.8

ファイナンシャル・サービス事業

1,927,085

19.0

1,817,080

15.7

△5.7

連結売上高

10,137,596

100.0

11,568,990

100.0

14.1

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

   2.記載金額は千円未満を切捨てて表示しております。

 

(6)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、最近連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)最近連結会計年度の財政状態の概要 及び (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a 資本の財源及び資金の流動性

キャッシュ・フローの分析・検討内容は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)最近連結会計年度の連結キャッシュ・フローの概況」に記載のとおりであります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。これらの連結財務諸表の作成にあたり、連結決算日現在における財政状態並びに連結会計年度の経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える見積り及び判断を一定の会計基準の範囲内で行う必要があります。しかし、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果とこれらの見積りが異なる場合があります。

当社グループは、特に以下の事項が、当社グループの連結財務諸表の作成において使用される重要な見積りと判断に大きな影響を及ぼすと考えております。なお、重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりです。

 

a 繰延税金資産の回収可能性

 連結貸借対照表に計上した繰延税金資産については、将来の回収可能性を十分に検討し、その全額が回収可能であると判断しております。

 

b 投資有価証券の評価

2025年3月31日現在、連結会社等が保有する有価証券について、回収可能性に疑義のある事象は認識しておらず、適切に評価しております。

 

c のれんの評価

 当社グループのこれまでの買収等の企業結合の結果、2025年3月31日現在の連結貸借対照表に「のれん」が1,625,593千円計上されています。

 

「のれん」の内訳は以下のとおりです。

「のれん」の発生要因

「のれん」が帰属する

事業・サービス

企業結合年月

「のれん」

の残高

Carret Holdings Inc.と Carret Asset Management LLC の買収、子会社化

米国における私募の債券型ファンドの運用

2019年2月

954,120千円

SBIアセットマネジメント株式会社に

係る買収、子会社化(注1)

私募の債券型投資信託の運用、公募ならびに私募の投資信託のアクティブ運用(注2)

2019年12月~

2022年10月

(注1)

671,473千円

 

1,625,593千円

(注)1.SBIアセットマネジメント株式会社を存続会社とする吸収合併により消滅会社となった旧新生インベストメント・マネジメント株式会社(企業結合年月 2022年10月)、旧SBIボンド・インベストメント・マネジメント株式会社及び旧SBI地方創生アセットマネジメント株式会社(企業結合年月 2019年12月)の買収・子会社化によるものであります。

(注)2.上記の合併消滅会社3社が行っていた主要な事業であります。当該事業は、現SBIアセットマネジメント株式会社が承継し、営んでおります。

 

「固定資産の減損に係る会計基準」および「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」に従い、各「のれん」が帰属する事業・サービスに「営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナス」などの減損の兆候の有無を把握し、減損の兆候がある場合には、減損損失の認識と測定を行います。その結果、「のれん」の減損損失が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

d 営業債権の評価

 営業債権は、決算日以前の売上から生じた債務者に対する正当な債権であり、また、決算日後に発生すると予想される貸倒損失に対して適切な引当金を計上することとしております。なお、最近連結会計年度においては、該当事項はありません。

 

e ソフトウェアの評価

 2025年3月31日現在、連結会社等が保有するソフトウェアについて、回収可能性に疑義のある事象は認識しておらず、適切に評価しております。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。