当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年9月26日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、1976年にイベント・プロモーションを企画、制作、施工、運営する会社として設立以来、イベント・プロモーションを行う会社として、「人と人とのコミュニケーションを大切にする心豊かな社会作りに貢献すること」を目標としてまいりました。
2022年2月にパーパス「新しい時代の体験を創る」を制定し、社会・生活のデジタル化や生活者の価値観の多様化が進む世の中において、時代や世の中の変化に応じて柔軟に適応し最適なかたちに変えていくことを追求し、当社グループの持つ普遍的な強みである「体験価値」を軸にしながら、リアルやデジタルなど様々な方法を駆使し、柔軟な発想力で新たな可能性を生み出してまいります。また、持続的な成長及びパーパスの実現に向けて、体験デザインの進化による事業成長と、人的資本をはじめとした基盤強化によってサステナビリティ経営を推進してまいります。
当社グループは、株主重視の経営という観点から企業価値最大化を図るため、収益性と効率性の観点より、目標とする経営指標を、連結経常利益及び従業員一人当たりの売上総利益とし、その向上を目指しております。
当社グループがおかれている市場環境は、緩やかな景気回復基調が期待されるものの、世界的な金融面、地政学面、供給面での変動影響が懸念される等、先行き不透明な状況が予想されます。
こういった環境の中、生活者と社会の急速なデジタルシフトを背景に、企業マーケティングにおいてもリアルとデジタルによる統合プロモーションがますます求められることが予想されます。今後も当社グループがこれまで取り組んできた成長戦略をアップデートしながら実行してまいります。
2024年6月期は、通期を通して主力事業であるリアルイベント回帰の動きが本格化し、コロナ禍においての業績の落ち込みと、特定のBPO業務による影響が混在する状況から、売上高、経常利益ともにコロナ前の2019年6月期水準を上回るところまで回復いたしました。
2025年6月期においては、緩やかな景気回復基調が期待されるものの、世界的な金融面・地政学面・供給面での変動影響が懸念される等、先行き不透明な状況が予想されます。
このような事業環境の中、当社グループは、持続的な成長及びパーパスの実現に向けて、体験デザインの進化による事業成長と、人的資本をはじめとした基盤強化によってサステナビリティ経営を推進してまいります。
コロナ禍における3年間の取り組みとして「2軸の成長戦略」を掲げ、「クライアントの拡張」と「領域の拡張」による事業拡大を推進してまいりました。今後も、体験価値を軸としたマーケティングに対する期待を背景に、既存取引先に加えて新規取引先の開発を強化し、受注先の拡大を進めてまいります。また、生活者や社会のデジタルシフトが急速に進み、リアルとデジタルの融合が加速している中、企業マーケティングにおいても成果の最大化を追求するために、リアルとデジタルによる統合プロモーションが求められるケースが増加しております。今後も、当社グループのリアルとデジタルを統合する強みを活かして事業領域の拡大を実践し、体験デザインの一層の進化を図ってまいります。なお、収益面においては、高付加価値の提供によるフィー型業務及びグループ内製化を継続して推進してまいりましたが、2025年6月期は、高い収益力の維持向上の上、基盤強化に向けて戦略的な費用投下を進め、中長期的な成長を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティ方針である「社員一人一人が創り出す体験を通じて企業課題・社会課題に向き合い、持続的に成長する会社へ」に基づき、人的資本経営を中心とする以下4つのマテリアリティへの取り組みを推進しています。そのための体制強化として、グループCHROの任命、部署の新設、人員の配置を行ったほか、環境整備のための投資を進めております。
中長期的な業績拡大を目指し、社員数の持続的な拡大を進め、提供価値の高い人材を増やしてまいります。そのために、新卒・キャリア採用の強化、人事制度や評価・報酬体系のアップデート、女性活躍の取り組み等を通じて、新しい時代の体験を創る多様な人材が活躍できる会社を目指してまいります。
2025年6月期は積極的な投資を行い、「体験デザインの質向上」と「業務効率化」に取り組みます。専門部署を新設し、AIツールを導入したほか、全社員向けの施策として当社独自の実践型研修プログラムをスタートしており、全社員の8割が業務にAIを活用できる状態を目指してまいります。
クライアントのESG意識の加速や、生活者のSDGsへの関心の高まりを背景に、取り組みを強化いたします。これまでも環境配慮型イベントをプロデュースするために「サステなイベントガイドライン」を進めてまいりましたが、更なる強化に向けて、イベントCO2排出量可視化ツール「EventGX」を開発し、2024年8月からサービスを提供しております。
委員会体制を再編・強化し、重点管理項目を定めて実行推進を図ってまいりました。また、コンプライアンス基本方針も再整備し、「全ての行動、判断において利益よりもコンプライアンスを優先する」を定めております。ほか、専門部署の設置や、各現業部門に専門人材を配置することで、業務プロセスにおける法令遵守を管理してまいります。
今後も、当社のパーパスである「新しい時代の体験を創る」の実現に向けて、持続的な成長と企業価値の向上の実現を図ってまいります。
<サステナビリティに関する基本スタンス>
当社グループは、パーパス「新しい時代の体験を創る」の実現を図るため、クライアントビジネスを通じた社会貢献・環境貢献を実践し、持続可能な社会へ貢献すること、またそれらの業務の実践・ノウハウを通じて当社グループ事業の成長へ還元し、持続的な企業価値向上に繋げていくことを基本スタンスとしております。
なお、当社のパーパスは以下のとおりであります。
新しい時代の体験を創る
どんなに時代が変化しても人と人が存在する限り、
「体験」は自由自在にかたちや役割を変え、
生活者や社会に寄り添い、人のココロとカラダを動かす。
我々は、リアルやデジタルなど様々な方法を駆使し、
「体験」を創り出し、人々に感動や共感、ワクワクを届け続ける。
本パーパスは、代表取締役社長以下の経営陣や社員で構成された社内横断プロジェクトから生まれたものであります。当社グループは、持続的に価値を生み出す源泉は「人」であることを認識し「社員が財産」として捉えており、社員が生み出したこれらの理念体系もまた当社グループにとっての重要な価値を持つものと考えており、その実現を図ってまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、パーパスの実現に向けてサステナビリティ課題への取り組みを行うことが経営上の重要課題の1つであるとして認識し、取締役会の諮問機関として設置した各種委員会・社内横断プロジェクトでの審議・答申を行うガンバナンス体制を構築するとともに、取締役会による監督体制を構築しております。
<ガバナンス体制>

サステナビリティ課題への取り組みは、代表取締役社長以下の経営陣や社員で構成されたサステナビリティ委員会において推進することとしており、その役割は以下のとおりであります。
①基本方針、戦略の策定、改定
②マテリアリティの特定
③指標、目標の設定、PDCAの実施
④情報開示とエンゲージメントに関する事項
⑤その他重要な事項
この役割に基づいて、2023年6月期に基本方針及び戦略の策定とマテリアリティの特定を行い、サステナビリティ課題への取り組みを推進しております。
当社グループは、2024年に策定したサステナビリティ方針の下で、「持続可能な社会に貢献」および「持続的な企業価値向上」の2軸の持続可能性に鑑み、4つのマテリアリティを特定し、戦略として策定しております。
当社グループのサステナビリティ方針および各マテリアリティにおける取組は以下のとおりであります。
社員一人一人が創り出す体験を通じて
企業課題・社会課題の解決に取り組み、
持続的に成長する会社へ
①人材:新しい時代の体験を創る多様な人材が活躍できる会社を目指す
<基本方針>
多様な価値観・課題に応える新しい時代の体験を創り出すためには、当社グループの人材も多様であるべきと考えております。女性リーダー育成や社内ベンチャー制度を活用した女性活躍の推進に取り組むほか、各世代における社員の一層の成長と活躍に応える評価制度・人事制度の再整備、ナレッジ共有や階層別育成、専門性スキリングといった社員教育、クリエイティブなアイデアを促すインセンティブ制度などを通じて、社員の活き活きとした活躍を支える環境と仕組みをアップデートしてまいります。
<取組の状況と指標及び目標>
多様な社員の活躍
当社においては近年増加しているSDGsなどの社会課題や女性商材・若年層向けのプロモーション業務を中心に女性社員が活躍しており、女性社員比率が連結で40%を超える状況につながっております。女性社員向け社外メンター制度の導入、管理職向け女性活躍セミナー等の取り組みにより、2025年6月期における女性管理職比率は16.7%へ伸長いたしました。また、2024年9月20日付でえるぼし認定の取得を完了しており、今後も引き続き女性社員の活躍を促進し、女性管理職比率や平均勤続年数の向上を目指して取り組みを継続してまいります。
また、キャリア社員においては、管理職におけるキャリア社員比率が45.2%となっており、当社は従来よりキャリア社員がその能力を発揮し活躍する土壌があります。2025年6月期においても積極的な採用活動を行うとともに、各種育成施策とも合わせて多様な活躍を促進し、事業戦略における領域拡張を実現してまいります。
育成
教育研修など社員育成への投資を拡大し、テーマ別研修等や階層別研修を実施しております。
特に2025年6月期においては、社員一人ひとりの業務の効率化・高度化、当社が提供するイベントやプロモーションのアウトプットへのAI活用力の向上を目的として、実際の業務内容に即した形でのAI活用スキルの向上を目指す当社独自のAI活用力向上研修を新設したAI推進グループを中心に開発し、全社員を対象に実施しております。
やりがいと働きやすさの実現
前述の育成や多様な活躍のための取り組み等と合わせて、社員への還元の一環として給与体系の一部見直しを行いました。
社員一人ひとりに成長機会や活躍機会を提供し、活躍に対する報酬を充実させることでやりがいを感じ続けられる環境をつくると共に、働きやすい環境の実現に向けての各種取り組みを行っております。かねてより重要課題であった労働時間の削減に関して、2024年6月期より開始した複数の取り組みの効果により前期比3.5%削減いたしました。2025年6月期についても引き続き労働時間削減に取り組み、2024年6月期比3.9%削減を目指しております。
このほか、営業サポート人材配置による現業部門の業務効率化・生産性向上、オフィス環境の改善や社員向けケータリングの拡充などを行っており、2025年6月期についても継続、拡大する予定であります。
また、社員一人ひとりのやりがいと働きやすさの可視化を目的として、2025年6月期より従業員エンゲージメントサーベイを開始し、継続的なモニタリングを通じてこれらの取り組みによる効果を把握し、離職率の継続的な低減および社員の成長の実現に向けて取り組んでおります。
②体験の将来性:テクノロジーを活用し、体験領域の進化をリードする
<基本方針>
持続的な事業成長のためには、あらゆるテクノロジーの進化に対応しながら新しい価値を提供し、挑戦し続けることが重要だと考えております。急速な進化を続ける生活全体のデジタル化を背景としたプロモーション業務における高度化・複雑化・高速化に対応し、AIを含むデジタルテクノロジーのイベント・プロモーションへの活用を加速するほか、案件成果の可視化、業務の効率化、自社ソリューション開発などを推進し、体験領域の更なるアップデートをリードしてまいります。
<取組の状況と指標及び目標>
AI技術の活用による体験デザインの質の向上および個人・チームの業務効率化を目指して、専門部署「AI推進グループ」を新設し、前述のAI活用研修の実施に加えて、業務ツールの導入やチャットボットシステムの自社開発・導入するなどAI活用施策を推進しております。
これらの取り組みを通じて、全社員におけるAI活用率80%を目指しており、業務プロセスの改善による効率化・高度化に加え、各種イベント・プロモーション施策におけるAI活用の強化など、体験デザインの質向上を図ってまいります。
③社会貢献:自社サービスの向上に取り組み、クライアントビジネスを通じて社会貢献・環境貢献を実践
<基本方針>
当社グループは、社会を構成する一員であることを認識し、クライアントが掲げる環境問題・ウェルビーイング・少子高齢化など様々な社会課題をテーマにしたプロモーション活動にも積極的に参画し、企業の課題解決に加えてクライアントビジネスを通じて社会貢献・環境貢献を実践してまいります。
<取組の状況と指標及び目標>
2024年6月期より開始した環境問題への対応力強化を継続、拡充を行ってまいります。
2023年2月に策定したサステなイベントガイドラインを刷新し、脱炭素・脱プラ・ゼロエミッションに繋がるイベントプロデュースにおけるソリューションを拡充いたしました。
また、2024年8月にはイベントによるCO2排出量を計測するツール「EventGX」の提供を開始し、イベントで排出されたCO2を削減・低減するためのソリューションと共にクライアント企業へ報告し、次回イベントにおいて環境に配慮されたプロデュースを実践し、改善してまいります。なお、一定金額以上の案件(年間のイベント業務の約30%に相当する300件)を対象に、イベントCO2排出量を算出し、クライアント企業へ報告することを目指してまいります。
これらのソリューションや環境研修を通じて、当社社員の意識とリテラシーを高め、クライアント企業に環境配慮型のイベントプロデュースを提供し、社会貢献・環境貢献に取り組むとともに、環境配慮型イベントにおける提供力を強化することで、環境配慮型イベントの受注拡大を目指してまいります。
④コンプライアンス:企業の社会的責任を認識し、コンプライアンスを遵守する
<基本方針>
社会的責任と公共的使命の認識のもと、健全性および適切性を確保するために、企業倫理と法の遵守、適切な情報管理、環境問題への適切な取り組み、職場環境の維持・向上を中心に、コンプライアンスの強化及び徹底を経営の最重要課題の一つとして取り組むことで、さまざまなステークホルダーの期待に応え、オープンでフェアな企業活動を推進してまいります。
<取組の状況>
2024年6月期にコンプライアンス委員会を再編・強化し、重点管理項目を定めて実行と推進を行ってまいりました。コンプライアンス基本方針も再整備を行い、「全ての行動、判断において利益よりもコンプライアンスを優先する」に基づいて経営と業務執行を行ってまいります。また、コンプライアンス委員会以下は、3つの委員会で構成されており、各委員会を中心に法令遵守に向けた管理、教育啓蒙を行っており、その内容はコンプライアンス委員会に報告することとしております。各委員会における取組は以下のとおりであります。
ビジネス・コンプライアンス委員会:
全社ヒヤリハット事案及び他社事案の分析・再発防止協議・全社共有、月1回行われる全社会議におけるコンプライアンス研修、年2回のeラーニングの実施
情報セキュリティ委員会:
社内セキュリティ運用管理、ヒヤリハット事案の分析・再発防止協議・全社共有、年2回のeラーニングの実施
安全管理委員会:
リスクの高いイベント現場の安全管理指導及び現場巡視・管理、災害時における社内及び現場の初動対応整備・体制構築
このほか、専門部署を設置し、各現業部門に専門人材を配置することで、業務プロセスにおける法令遵守及び管理を強化しております。
当社グループでは、サステナビリティ課題を機会と捉えるとともに、係るリスクを経営上の重要課題と認識しており、代表取締役社長を委員長とする取締役会の諮問機関として設置したコンプライアンス委員会での審議・答申を中心とするリスクマネジメント体制を構築するとともに、取締役会による監督体制を構築しております。
また、サステナビリティ委員会とコンプライアンス委員会が連携し、リスクを識別及び評価するプロセスを構築してまいります。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年9月26日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 社会情勢及び自然災害、感染症の流行等に伴うリスクについて
イベント・プロモーションは、景気・消費の悪化等に伴いクライアント広告・宣伝費の支出が減少した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により、リアルイベント分野の業務が中止または規模の縮小となったほか、自然災害による受注の減少や規模の縮小など大きな影響を受けております。
従いまして、国内市場における景気後退や自然災害、感染症の流行等の発生に伴う需要の縮小は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 企画、制作業務に関する業界の特徴について
イベント・プロモーションの制作は、企画、制作、実施及び管理等、各段階によって構成されます。そのステップについては、コンペによる受注や指名による受注等、その受注形態に関わらず、制作作業に入る前の企画段階があり、企画を立案し関係者との打合せを経て制作段階・実施段階に進みます。その段階において主催者や広告主からの追加発注や仕様変更の要請があったり、天候や社会情勢の変化により直前に実施内容の変更等が生じたりすることがあります。結果として、当初の基本計画の内容変更等により、予算金額に変動が生じる場合があります。また、主催者や広告主側の広告費の削減や広告会社の変更等により、当社グループ受注分がなくなることもあります。
このようにイベント・プロモーションでは、制作段階・実施段階で当初の内容や金額が変動するケースが多いことから、当社グループでは社内の受注管理システムにより、案件の進捗度合いの正確な把握に努めております。
(3) 実施期間及び売上時期の変更について
当社グループが手掛ける業務には、主催者や広告主である企業の新商品やサービスのプロモーションを目的としたものが多く、その商品やサービスによっては製造・販売等に許認可を要するものもあるため、その許認可の下りるタイミングにより発売開始時期がずれ込むことがあります。また、商品開発の遅れや生産体制の遅れで発売開始時期が遅れたり、逆に早まったりする場合もあります。
イベント・プロモーションは開催時期、期間の変更が発生するケースがあるため、案件の終了日が当初の予定からずれ込んだ場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループでは社内の受注管理システムによりイベント・プロモーションの終了日を把握するとともに、業務終了後にイベント・プロモーションの終了日が記載された業務実施確認書を入手し、受注管理システムの終了日と業務実施確認書に記載された終了日の一致を確認しております。
(4) 特定販売先の売上高構成比について
当社グループは、幅広い領域の業務を手掛けておりますが、現状、日本における主催者や広告主は、発注先の多様化が進んだものの、その実施を大手広告会社に発注する場合が多い傾向にあります。従いまして、当社を含むイベント・プロモーションの企画、制作、実施を行う会社は、その多くを大手広告会社から受注する傾向にあります。
当社グループにおきましても、販売先上位は広告会社であり、2024年6月期における主要な販売先(博報堂グループ及び電通グループ)に対する売上高構成比は60.5%となっております。広告会社より発注量の手控えがあれば、当社グループに影響を及ぼす可能性があります。
(5)特別需要による売上高の変動について
当社グループでは、大型の行事・催事や周年事業、その他単年で開催されるイベント・プロモーションなど大型の案件の受注がある場合、売上構成比に影響が生じる可能性があります。
(6)個人情報漏洩に関するリスクについて
当社グループは、2004年11月にISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)、2005年8月にはPマーク(プライバシーマーク)の認証を取得し、個人情報の保護には細心の注意を払っておりますが、個人情報保護管理について瑕疵が生じた場合、当社グループの社会的信用並びに当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及び キャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、社会経済活動及び生活行動の本格的な活性化がみられ、緩やかな景気回復基調が期待されるものの、世界的な金融面・地政学面・供給面での変動影響が懸念される等、先行き不透明な状況が継続しております。
当社グループを取り巻く事業環境については、主力事業であるイベント領域において、リアルイベントを中心に回帰の動きが本格化し、体験型商材プロモーションの活発化、IPコンテンツ、行政などの大型イベントの実施が寄与し、大幅な伸びを示しました。また、リアルイベントをオンライン配信するハイブリッド型イベントが定番化し、オンラインイベントも伸長いたしました。オンラインプロモーションにおいては、リアル領域とオンライン領域の融合が進んだことにより、オンラインプロモーション単体では案件単価も下がり減少いたしました。
当社グループの事業は単一セグメントでありますが、当社グループの業務を「リアルイベント」「オンラインイベント」「オンラインプロモーション」及び「その他」と分類しております。
当連結会計年度におけるカテゴリーごとの売上高は次のとおりであります。
a. リアルイベント
リアルイベント回帰への動きが本格化し、食品・飲料、化粧品等の体験商材を中心に街頭プロモーションやインナーイベントが活性化したほか、大型展示会、行政、IPコンテンツ等の大型案件が寄与し、売上高は120億69百万円(前連結会計年度比92.5%増)となりました。
b. オンラインイベント
リアルとオンラインのハイブリッド型イベントの増加等により、売上高は21億81百万円(前連結会計年度比45.0%増)となりました。
c. オンラインプロモーション
SNS・動画活用プロモーション、デジタル広告等の各種オンラインプロモーション施策の引き合いは継続しているものの、案件単価が下がったことにより、売上高は30億27百万円(前連結会計年度比18.7%減)となりました。
d. その他
官公庁・団体からの事務局業務の受注により、売上高は2億25百万円(前連結会計年度比18.8%減)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は175億3百万円(前連結会計年度比48.7%増)、営業利益は20億6百万円(同74.4%増)、経常利益は20億58百万円(同74.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は14億5百万円(同295.3%増)となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ28億90百万円増加し、140億85百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ27億77百万円増加の123億26百万円となりました。これは主に、未収入金が8億27百万円、未成業務支出金が1億54百万円減少しましたが、現金及び預金が26億71百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が11億65百万円増加したこと等によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ1億13百万円増加の17億59百万円となりました。
固定資産のうち有形固定資産は、前連結会計年度末に比べ52百万円増加の2億16百万円となりました。これは主に、レイアウト変更等によるものであります。
無形固定資産は、前連結会計年度末に比べ18百万円増加の44百万円となりました。これは主に、のれんの増加等によるものであります。
投資その他の資産は、前連結会計年度末に比べ43百万円増加の14億97百万円となりました。これは主に、投資有価証券が30百万円減少しましたが、繰延税金資産が60百万円増加したこと等によるものであります。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ20億57百万円増加の44億22百万円となりました。これは主に、買掛金が10億48百万円、未払法人税等が5億45百万円、その他が4億71百万円増加したこと等によるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ41百万円減少の3億60百万円となりました。これは主に、その他が13百万円増加しましたが、繰延税金負債が67百万円減少したこと等によるものであります。
純資産は、前連結会計年度末に比べ8億75百万円増加の93億2百万円となりました。これは主に、利益剰余金が8億31百万円増加したこと等によるものであります。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ26億71百万円増加し、84億52百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は33億95百万円(前連結会計年度は7億17百万円の使用)となりました。これは主に、売上債権の増加額が10億55百万円ありましたが、税金等調整前当期純利益が20億55百万円、仕入債務の増加額が10億36百万円、未収入金の減少額が7億52百万円あったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は44百万円(前連結会計年度は2億11百万円の獲得)となりました。これは主に、会員権の取得による支出が16百万円、無形固定資産の取得による支出が12百万円あったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は6億78百万円(前連結会計年度は23億3百万円の使用)となりました。これは主に、配当金の支払額が5億74百万円、長期借入金の返済による支出が1億4百万円あったこと等によるものであります。
セグメント情報を記載していないため、制作実績、受注状況及び販売実績は、カテゴリー別で記載しております。
当連結会計年度における制作実績をカテゴリー別に示すと、次のとおりであります。
(注) 上記の金額はイベント・プロモーション制作に要した費用で表示しております。
イベント・プロモーションは制作段階、運営段階で当初の内容や金額が変動するケースが多いことから、当業界では、契約書の取交しや、発注書等が発行されることが少なく、したがって、受注残高の正確な把握が困難なため、受注状況の開示はいたしておりません。
なお、当社グループでは社内の受注管理システムにより、案件の進捗度合いの正確な把握に努めております。
当連結会計年度における販売実績をカテゴリー別に示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、主力事業であるイベント領域において、リアルイベントを中心に回帰の動きが本格化し、体験型商材プロモーションの活発化、IPコンテンツ、行政などの大型イベントの実施が寄与し、175億3百万円(前連結会計年度比48.7%増)となりました。
(売上総利益)
売上総利益は、高付加価値の提供によるフィー型業務の増加等により、29億39百万円(同54.6%増)となりました。
(営業利益)
販売費及び一般管理費は、従業員給料、支払手数料の増加等により、9億32百万円(同24.3%増)となりました。
この結果、営業利益は20億6百万円(同74.4%増)となりました。
(経常利益)
営業外収益は、受取配当金の増加、持分法投資利益の計上等により、60百万円(同92.4%増)となりました。営業外費用は、支払利息の増加、譲渡制限付株式関連費用の計上等により、8百万円(同200.5%増)となりました。
この結果、経常利益は20億58百万円(同74.6%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等を6億49百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は14億5百万円(同295.3%増)となりました。
(経営成績に重要な影響を与える要因について)
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
キャッシュ・フローにつきましては、「(1)経営成績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、イベント・プロモーションの制作費並びに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費になりますが、事業戦略上、多種多様な回収・支払のサイクルに対応していくために、売掛債権の流動化による資金調達も財源としております。
今後、既存事業の事業成長を図りながら、積極的に新規事業の創出や、必要に応じてM&Aを実施し成長性のあるビジネスを当社グループの成長に取り込んでいく考えでありますが、資金需要の必要性に応じて柔軟に資金調達を実施いたします。
当社グループは、機動的な調達手段を確保することにより、手元流動性を圧縮し、資金効率を高めることを目的として、取引銀行4行(株式会社三菱UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、株式会社三井住友銀行、株式会社りそな銀行)と総額30億50百万円の当座貸越契約を締結しております。
特記事項はありません。