第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年9月24日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、1976年にイベント・プロモーションを企画、制作、施工、運営する会社として設立以来、イベント・プロモーションを行う会社として、「人と人とのコミュニケーションを大切にする心豊かな社会作りに貢献すること」を目標としてまいりました。

2022年2月にパーパス「新しい時代の体験を創る」を制定し、社会・生活のデジタル化や生活者の価値観の多様化が進む世の中において、時代や世の中の変化に応じて柔軟に適応し最適なかたちに変えていくことを追求し、当社グループの持つ普遍的な強みである「体験価値」を軸にしながら、リアルやデジタルなど様々な方法を駆使し、柔軟な発想力で新たな可能性を生み出してまいります。また、持続的な成長及びパーパスの実現に向けて、体験デザインの進化による事業成長と、人的資本をはじめとした基盤強化によってサステナビリティ経営を推進してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、株主重視の経営という観点から企業価値最大化を図るため、収益性と効率性の観点より、目標とする経営指標を、連結経常利益及び従業員一人当たりの売上総利益とし、その向上を目指しております。

 

(3)経営環境

当社グループがおかれている市場環境は、緩やかな景気回復基調が期待されるものの、世界的な金融面、地政学面、供給面での変動影響が懸念される等、先行き不透明な状況が予想されます。

こういった環境の中、生活者と社会の急速なデジタルシフトを背景に、企業マーケティングにおいてもリアルとデジタルによる統合プロモーションがますます求められることが予想されます。今後も当社グループがこれまで取り組んできた成長戦略をアップデートしながら実行してまいります。

 

(4)優先的に対処すべき課題

2025年6月期は、通期を通してイベント等のリアルな体験への需要や広告におけるプロモーション市場の堅調さを継続していることに加え、大阪・関西万博も寄与し、当社の主力事業であるイベント領域においては、リアル体験を通じた広告・広報業務が堅調に推移しました
 2026年6月期においては、物価上昇等の影響があるものの、インバウンド需要の回復や雇用・所得環境が改善する一方で、金融面・地政学面・交易条件等の世界的な変動影響が懸念される等、先行き不透明な状況が継続しております。
 このような事業環境の中、当社グループは、持続的な成長及びパーパスの実現に向けて、体験デザインの進化による事業成長と、人的資本をはじめとした基盤強化によってサステナビリティ経営を推進してまいります。

特に、基盤強化においては、2025年6月期に発覚した労働制度運用に関する不備を機に、ガバナンス体制の再構築を進めております。

 

事業成長について

成長戦略として掲げる、「クライアントの拡張」と「領域の拡張」による事業拡大を推進してまいりました。今後も、体験価値を軸としたマーケティングに対する期待を背景に、既存取引先に加えて新規取引先の開発を強化し、受注先の拡大を進めてまいります。また、生活者や社会のデジタルシフトが急速に進み、リアルとデジタルの融合が加速している中、企業マーケティングにおいても成果の最大化を追求するために、リアルとデジタルを統合したイベント・プロモーションが求められるケースが増加しております。今後も、当社グループのリアルとデジタルを統合する強みを活かして事業領域の拡大を実践し、体験デザインの一層の進化を図ってまいります。なお、収益面においては、高付加価値の提供によるフィー型業務及びグループ内製化を継続して推進してまいりましたが、2026年6月期は、高い収益力の維持向上の上、基盤強化に向けて戦略的な費用投下を進め、中長期的な成長を目指してまいります

 

基盤強化について

当社グループのサステナビリティ方針である「社員一人一人が創り出す体験を通じて企業課題・社会課題に向き合い、持続的に成長する会社へ」に基づき、人的資本経営を中心とする取り組みを推進しておりますが、2025年6月期に発覚した労働制度運用に関する不備を機に、組織全体の運営体制や風土を見直す必要性を改めて認識し、ガバナンス体制の再構築を進めております。

2026年6月期においては、以下のとおり基盤強化を推進し、今後の持続的な成長を目指してまいります。

 

1.ガバナンス体制の強化と意識改革の推進

経営及び組織運営におけるガバナンス体制の強化と企業倫理の浸透を図るため、代表取締役副社長兼チーフガバナンスオフィサー兼グループCHROを新たに設置し、制度運用及び体制の明確化を行います。また、経営陣及び管理職層に対するガバナンス・コンプライアンスに関する研修を強化し、倫理意識の向上に取り組みます。併せて、コンプライアンス行動規範の再構築と社内浸透、意識改革の推進をすることで、実効性ある企業統治の確立を目指してまいります。

2.外部視点を活用した監査・診断体制の構築

制度設計及び運用状況の検証のため、外部専門家と連携した運用の実態調査及び制度の再設計を実施しております。併せて、内部監査及び外部監査の体制を整備・再構築するとともに、モニタリング体制の強化を行い、継続的なチェック機能の向上を図ってまいります

3.労働制度の適正化と制度設計の見直し

現場における運用実態及び法令要件に即した労働制度の再設計を進めております。外部専門家の助言を積極的に取り入れながら、法令適合性と運用が整合した制度の導入を推進してまいります

4.担当部門の実務運用体制の強化

労務及び制度運用に関わる専門性の向上と業務対応体制の強化を図るため、外部人材の登用及び人員体制の拡充を進めてまいります。また、実務担当者への研修を通じたスキルアップと、業務効率化の取り組みにより、実務対応力の量と質の向上に努めてまいります

 

今後も、当社のパーパスである「新しい時代の体験を創る」の実現に向けて、持続的な成長と企業価値の向上の実現を図ってまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

<サステナビリティに関する基本スタンス>

当社グループは、パーパス「新しい時代の体験を創る」の実現を図るため、クライアントビジネスを通じた社会貢献・環境貢献を実践し、持続可能な社会へ貢献すること、またそれらの業務の実践・ノウハウを通じて当社グループ事業の成長へ還元し、持続的な企業価値向上に繋げていくことを基本スタンスとしております。

なお、当社のパーパスは以下のとおりであります。

 

新しい時代の体験を創る

 

どんなに時代が変化しても人と人が存在する限り、

「体験」は自由自在にかたちや役割を変え、

生活者や社会に寄り添い、人のココロとカラダを動かす。

我々は、リアルやデジタルなど様々な方法を駆使し、

「体験」を創り出し、人々に感動や共感、ワクワクを届け続ける。

 

本パーパスは、代表取締役社長以下の経営陣や社員で構成された社内横断プロジェクトから生まれたものであります。当社グループは、持続的に価値を生み出す源泉は「人」であることを認識し「社員が財産」として捉えており、社員が生み出したこれらの理念体系もまた当社グループにとっての重要な価値を持つものと考えており、その実現を図ってまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

当社グループは、パーパスの実現に向けてサステナビリティ課題への取り組みを行うことが経営上の重要課題の1つであるとして認識し、取締役会の諮問機関として設置した各種委員会・社内横断プロジェクトでの審議・答申を行うガンバナンス体制を構築するとともに、取締役会による監督体制を構築しております。2026年6月期においては、より一層のガバナンス強化に向けて体制の再構築を行います

 

<ガバナンス体制>


 

サステナビリティ課題への取り組みは、代表取締役社長及び代表取締役副社長以下の経営陣や社員で構成されたサステナビリティ委員会において推進することとしており、その役割は以下のとおりであります。

①基本方針、戦略の策定、改定

②マテリアリティの特定

③指標、目標の設定、PDCAの実施

④情報開示とエンゲージメントに関する事項

⑤その他重要な事項

この役割に基づいて、2023年6月期に基本方針及び戦略の策定とマテリアリティの特定を行い、サステナビリティ課題への取り組みを推進してまいりました。2026年6月期においては、ガバナンス体制の再構築を経て、より実効性の高い取り組みの推進を行ってまいります。

(2)サステナビリティ方針と戦略、指標および目標

当社グループは、2024年に策定したサステナビリティ方針の下で、「持続可能な社会に貢献」および「持続的な企業価値向上」の2軸の持続可能性に鑑み、4つのマテリアリティを特定し、戦略として策定しております。

 

当社グループのサステナビリティ方針および各マテリアリティにおける取組は以下のとおりであります。

 

社員一人一人が創り出す体験を通じて

企業課題・社会課題の解決に取り組み、

持続的に成長する会社へ

 

①人材:新しい時代の体験を創る多様な人材が活躍できる会社を目指す

<基本方針>

多様な価値観・課題に応える新しい時代の体験を創り出すためには、当社グループの人材も多様であるべきと考えております。女性リーダー育成や女性活躍の推進に取り組むほか、各世代における社員の一層の成長と活躍に応える評価制度・人事制度の再整備、ナレッジ共有や階層別育成、専門性スキリングといった社員教育、インセンティブ制度などを通じて、社員の活き活きとした活躍を支える環境と仕組みをアップデートしてまいります。

2026年6月期においては、労働環境改革と生産性向上に重点的に取り組みます。

 

<取組の状況と指標及び目標>

コーポレートガバナンス体制の強化とあわせて、「働く環境」の再構築も重要な経営課題として位置づけ、取り組みを進めてまいります

労働環境改革では、法令遵守や働き方に関する制度の見直しに加え、社員一人ひとりが安心して力を発揮できる環境づくりを通じて、「働きやすさ」と「やりがい・成長」を両立させる持続的な人材基盤の確立を目指しています。

 


 

1.働きやすさの実現

教育当社では、持続可能な働き方の実現に向けて、労働制度の見直しと労働時間の適正化・削減を最優先の取り組みと位置づけております。2025年6月期に労働制度運用に関する不備が発覚したことを受け、2026年6月期においては、制度の法令適合性および実態との整合性の確保を軸に、制度設計および運用の再構築を進めております。また、従来より労働時間の適正化・削減の定着を目指す施策を強化しており、2025年6月期における労働時間は全社で前年比6.3%削減となりました。今後も制度運用と連動した業務設計を通じて、さらなる是正を図ってまいります。

加えて、全社生産性向上を目標としたAI・テクノロジーの活用を推進し、現場・管理部門における業務効率化を通じて、働き方改革を加速させております。

さらに、女性社員や若手社員を含む多様な人材が安心して活躍できる環境整備にも注力し、職場の安心・安全と効率性を両立させることで、「働きやすさ」の実現を図ってまいります。
 

2.やりがい・成長の支援

当社では、多様な社員の活躍を支援するため、育成への投資を拡大し、各種OJTやテーマ別・階層別の研修などを強化してまいりました。社員一人ひとりへの活躍環境の提供・成長の支援を行うとともに、給与体系の見直しによって報酬を充実させ、やりがいを感じ続けられる環境を目指すことで、中長期的な事業拡大への人材基盤構築に取り組んでおります。

2026年6月期においては、これらの取り組みを更に強化し、案件の中核を担う人材層の強化と、若手社員の活躍支援を推進するとともに、マネジメント層への研修をより一層充実させ、リーダーとしての知識・スキル・意識の向上に取り組んでまいります。社員一人ひとりのやりがいと成長への支援を通じ、定着率の維持・向上とともに、中長期的な組織力の向上を図ります。

 

3.意識・文化の変革

経営層・管理職・従業員、各層への研修強化をはじめとした意識・文化の変革に取り組み、社員一人ひとりの「働きやすさ」と「やりがい・成長」を支える実効力の高い組織環境を目指してまいります。

2026年6月期においては、制度や規程の改定とあわせて、その趣旨や目的に対する理解を深めるための研修や社内協議の場の設置を進めてまいります。また、業務慣習の見直しを図り、各部門のマネジメントリーダーと連携して、週単位でのマネジメント実態を見直す定期的なミーティングを実施するなど、制度と運用の整合性を高める仕組みづくりにも注力しております。

 

②体験の将来性:テクノロジーを活用し、体験領域の進化をリードする

<基本方針>

持続的な事業成長のためには、あらゆるテクノロジーの進化に対応しながら新しい価値を提供し、挑戦し続けることが重要だと考えております。急速な進化を続ける生活全体のデジタル化を背景としたプロモーション業務における高度化・複雑化・高速化に対応し、AIを含むデジタルテクノロジーのイベント・プロモーションへの活用を加速するほか、案件成果の可視化、業務の効率化による生産性の向上、自社ソリューション開発などを推進し、体験領域の更なるアップデートをリードしてまいります。

 

<取組の状況と指標及び目標>

2025年6月期においては、AI技術の活用による体験デザインの質の向上および個人・チームの業務効率化を目指して、専門部署「AI推進グループ」を新設し、全社員向けの研修の実施に加えて、業務ツールの導入やチャットボットシステムの自社開発・導入を行い、全社的なAI活用の基盤・風土の整備を行い、80%の社員が日常的にAIを活用して業務に取り組む状況となっております。
 2026年6月期は、これらの基盤・風土をもとに、さらに社員による業務活用および各社員の習得状況のモニタリングによる活用拡大を進めてまいります。営業企画制作などでの活用に加え、マネジメント業務へのAI・テクノロジー導入による現場活動の活性化や管理業務の効率化・高度化を進めることで業務構造改革への取り組みを本格化し、組織全体の生産性20%向上を目指してまいります。生産性の向上とともにリソースシフトによる既存事業の競争力強化、あらたな成長領域の開拓・育成の実現により持続的な成長を目指してまいります

 

③社会貢献:自社サービスの向上に取り組み、クライアントビジネスを通じて社会貢献・環境貢献を実践

<基本方針>

当社グループは、社会を構成する一員であることを認識し、クライアントが掲げる環境問題・ウェルビーイング・少子高齢化など様々な社会課題をテーマにしたプロモーション活動にも積極的に参画し、企業の課題解決に加えてクライアントビジネスを通じて社会貢献・環境貢献を実践してまいります。

 

<取組の状況と指標及び目標>

2025年6月期においては、2024年8月に提供を開始した「EventGX」により約350件のイベントにおいてCO2排出量の算定を行い、また、刷新した「サステなイベントガイドライン」に基づきCO2排出量を低減可能な工夫を施し、イベントCO2排出量削減に取り組みました。2026年6月期においては、これらの取り組みを継続するとともに、業界団体と共にイベント業界標準カーボンカリキュレーターの開発への参画など、引き続き環境問題への対応力強化を継続、拡充してまいります

 

④コンプライアンス:企業の社会的責任を認識し、コンプライアンスを遵守する

<基本方針>

社会的責任と公共的使命の認識のもと、健全性および適切性を確保するために、企業倫理と法の遵守、適切な情報管理、環境問題への適切な取り組み、職場環境の維持・向上を中心に、コンプライアンスの強化及び徹底を経営の最重要課題の一つとして取り組むことで、さまざまなステークホルダーの期待に応え、オープンでフェアな企業活動を推進してまいります。

 

<取組の状況>

2024年6月期にコンプライアンス委員会を再編・強化し、重点管理項目を定めて実行と推進を行ってまいりました。コンプライアンス基本方針も再整備を行い、「全ての行動、判断において利益よりもコンプライアンスを優先する」に基づいて経営と業務執行を行ってまいります。また、コンプライアンス委員会以下は、3つの委員会(ビジネス・コンプライアンス委員会、情報セキュリティ委員会、安全管理委員会)で構成されており、各委員会を中心に法令遵守に向けた管理、教育啓蒙を行っており、その内容はコンプライアンス委員会に報告することとしております。

 

このほか、専門部署を設置し、各現業部門に専門人材を配置することで、業務プロセスにおける法令遵守及び管理を強化しております。 

 

 

(3)リスク管理

当社グループでは、サステナビリティ課題を機会と捉えるとともに、係るリスクを経営上の重要課題と認識しており、取締役会の諮問機関として代表取締役副社長を委員長とするコンプライアンス委員会での審議・答申を中心とするリスクマネジメント体制を構築するとともに、取締役会による監督体制を構築しております。
 また、サステナビリティ委員会とコンプライアンス委員会が連携し、リスクを識別及び評価するプロセスを構築してまいります。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年9月24日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 社会情勢及び自然災害、感染症の流行等に伴うリスクについて

イベント・プロモーションは、景気・消費の悪化等に伴いクライアント広告・宣伝費の支出が減少した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります

また、感染症の世界的流行や自然災害により、業務の中止、受注の減少及び規模の縮小等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

加えて、南海トラフ地震や首都圏直下型地震等の大規模地震が発生した場合には、当社グループの拠点やクライアントに対する物理的な影響のほか、社会全体の活動が一時的に停滞し、広告宣伝活動の自粛や延期が広がることで、イベント・プロモーションの実施中止や先送りが相次ぎ、広告市場全体が大きく冷え込む可能性があります。

従いまして、国内市場における景気後退や自然災害、感染症の流行等の発生に伴う需要の縮小は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 企画、制作業務に関する業界の特徴について

イベント・プロモーションの制作は、企画、制作、実施及び管理等、各段階によって構成されます。そのステップについては、コンペによる受注や指名による受注等、その受注形態に関わらず、制作作業に入る前の企画段階があり、企画を立案し関係者との打合せを経て制作段階・実施段階に進みます。その段階において主催者や広告主からの追加発注や仕様変更の要請があったり、天候や社会情勢の変化により直前に実施内容の変更等が生じたりすることがあります。結果として、当初の基本計画の内容変更等により、予算金額に変動が生じる場合があります。また、主催者や広告主側の広告費の削減や広告会社の変更等により、当社グループ受注分がなくなることもあります。

このようにイベント・プロモーションでは、制作段階・実施段階で当初の内容や金額が変動するケースが多いことから、当社グループでは社内の受注管理システムにより、案件の進捗度合いの正確な把握に努めております。また、企画・制作・運営において品質上の問題や対応不全が発生した場合には、クライアントや関係者からの信頼を損ね、将来的な取引機会やブランド評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 人材確保・人材流動性に関するリスクについて

当社グループの競争力は、クライアントニーズに応えるための企画力・推進力・制作力を有する優秀な人材の確保と育成に依拠しております。近年、イベント・プロモーション領域においては、顧客の要望の多様化や業務の高度化が進む中で、専門性を有するプロデューサーやプランナーへの期待が高まっております。

こうした環境のもと、当社グループでは人的資本経営の強化を進め、「働きやすさ」と「やりがい・成長」の実現による、採用強化の継続や離職の抑制と定着率の向上を図っております。特に新卒採用については、将来的な中核人材の育成を見据えた計画的な強化を継続しており、現場力と専門性を兼ね備えた人材層の拡充に取り組んでいます。また、人材育成の観点では、専門性の向上やリーダー層の育成に加え、AIやデジタルテクノロジーを活用した業務の効率化・高度化にも取り組んでおります。

しかしながら、今後の採用市場の動向や人材の流動性の高まり等によって、必要な人材の確保や育成が想定どおりに進まなかった場合、また特定人材への依存が高まった場合には、当社グループの業務遂行や競争力、ひいては業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 実施期間及び売上時期の変更について

当社グループが手掛ける業務には、主催者や広告主である企業の新商品やサービスのプロモーションを目的としたものが多く、その商品やサービスによっては製造・販売等に許認可を要するものもあるため、その許認可の下りるタイミングにより発売開始時期がずれ込むことがあります。また、商品開発の遅れや生産体制の遅れで発売開始時期が遅れたり、逆に早まったりする場合もあります。

イベント・プロモーションは開催時期、期間の変更が発生するケースがあるため、案件の終了日が当初の予定からずれ込んだ場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このため、当社グループでは社内の受注管理システムによりイベント・プロモーションの終了日を把握するとともに、業務終了後にイベント・プロモーションの終了日が記載された業務実施確認書を入手し、受注管理システムの終了日と業務実施確認書に記載された終了日の一致を確認しております。

 

(5) 法令遵守およびコンプライアンスに関するリスクについて

当社グループは、下請法、フリーランス保護法、個人情報保護法、知的所有権、景品表示法、建設業法、警備業法、薬事法、屋外広告物条例など、多岐にわたる法令や規制の遵守を必要とする業態で事業を行っております。また、事業内容に関わらず、企業としての基本的な法令遵守も行っております。

これらの法令に対しては、社内教育や管理体制の整備を通じて継続的な遵守に努めておりますが、万が一法令違反等が認定された場合には、当社グループの社会的信用や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。特に近年は、SNS等を通じた情報の即時拡散性の高まりにより、法令違反等に起因する社会的評価の毀損が、当社グループの信用や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 特定販売先の売上高構成比について

当社グループは、幅広い領域の業務を手掛けておりますが、現状、日本における主催者や広告主は、発注先の多様化が進んだものの、その実施を大手広告会社に発注する場合が多い傾向にあります。従いまして、当社を含むイベント・プロモーションの企画、制作、実施を行う会社は、その多くを大手広告会社から受注する傾向にあります。

当社グループにおきましても、販売先上位は広告会社であり、2025年6月期における主要な販売先(大手広告会社)に対する売上高構成比は58.5%となっております。広告会社より発注量の手控えがあれば、当社グループに影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 特別需要による売上高の変動について

当社グループでは、大型の行事・催事や周年事業、その他単年で開催されるイベント・プロモーションなど大型の案件の受注がある場合、売上構成比に影響が生じる可能性があります。

 

(8) 情報セキュリティおよびシステム障害に関するリスクについて

当社グループでは、社内外のプロジェクト推進や勤怠、情報共有等において各種情報システム・クラウドサービスを活用しております。また、AI等の先端技術の利活用も進めております。

しかしながら、サイバー攻撃やシステム障害、外部委託先の脆弱性等により、システムが停止または情報が漏えいする場合には、業務の継続に支障をきたす可能性があります。このような事態は、当社グループの業績や信用に重大な影響を与える可能性があります。

 

(9) 個人情報漏洩に関するリスクについて

当社グループは、2004年11月にISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)、2005年8月にはPマーク(プライバシーマーク)の認証を取得し、個人情報の保護には細心の注意を払っております。

しかしながら、管理体制や運用に瑕疵が生じ、個人情報の漏洩や不正利用が発生した場合には、当社グループの業績や信用に重大な影響を与える可能性があります

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の概要

 

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及び キャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、物価上昇等の影響があるものの、インバウンド需要の回復や雇用・所得環境が改善する一方で、金融面・地政学面・交易条件等の世界的な変動影響が懸念される等、先行き不透明な状況が継続しております。

当社グループを取り巻く事業環境については、イベント等のリアルな体験への需要や広告におけるプロモーション市場の堅調さを継続していることに加え、大阪・関西万博も寄与し、当社の主力事業であるイベント領域においては、リアル体験を通じた広告・広報業務が堅調に推移しました。

 

セグメントの経営成績につきましては、セグメント情報を記載していないため、カテゴリー別で記載しております。

なお、ビジネス環境及び当社の業務内容の変化に伴い、従来のカテゴリーの見直しを行いました。前連結会計年度との比較・分析は見直し後のカテゴリーに基づいて記載しております。生活者と社会が急速にデジタルシフトするなか、リアルとデジタルの融合が加速しており、また企業マーケティングにおいても成果の最大化を追求するために、リアルとデジタルによる統合プロモーションが求められるケースが増加していることを背景に、当社の強みであるリアルとデジタルを統合した体験デザインの強化に向けて変更するものです。変更後のカテゴリーは「リアルイベント」「ハイブリッドイベント」「統合プロモーション」及び「その他」といたしました。

 

当連結会計年度におけるカテゴリーごとの売上高は次のとおりであります。

 

a. リアルイベント

飲料や嗜好品の街頭プロモーションのほか、ビジネスカンファレンスや官公庁・団体の大型案件などリアル体験への需要が継続、大阪・関西万博関連業務も寄与し、売上高は112億47百万円(前連結会計年度比3.6%増)となりました。

 

b. ハイブリッドイベント

情報通信関連、ゲームやIPコンテンツ等の案件が伸長し、売上高は22億32百万円(前連結会計年度比2.3%増)となりました。

 

c. 統合プロモーション

グループ連携で映像業務が増加するも大阪・関西万博へのリソース影響もあり、前年比ほぼ横ばいで着地し、売上高は41億79百万円(前連結会計年度比1.3%減)となりました。

 

d. その他

官公庁・団体からの事務局業務の減少により、売上高は1億23百万円(前連結会計年度比45.3%減)となりました。

 

以上の結果、当連結会計年度の売上高は177億82百万円(前連結会計年度比1.6%増)、営業利益は21億52百万円(同7.3%増)、経常利益は21億94百万円(同6.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、2025年7月15日に公表した労働制度運用に関する是正措置対応に伴い、特別損失5億80百万円を計上し、11億32百万円(同19.5%減)となりました。

 

②財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ1億34百万円増加し、142億19百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べ70百万円減少の122億55百万円となりました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産が1億99百万円、前払費用が70百万円増加しましたが、現金及び預金が3億24百万円減少したこと等によるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べ2億5百万円増加の19億64百万円となりました。

固定資産のうち有形固定資産は、前連結会計年度末に比べ2百万円減少の2億14百万円となりました。これは主に、減価償却等によるものであります。

無形固定資産は、前連結会計年度末に比べ1億円増加の1億45百万円となりました。これは主に、のれんの増加等によるものであります。

投資その他の資産は、前連結会計年度末に比べ1億7百万円増加の16億4百万円となりました。これは主に、投資有価証券が89百万円減少しましたが、繰延税金資産が1億96百万円増加したこと等によるものであります。

流動負債は、前連結会計年度末に比べ5億42百万円減少の38億80百万円となりました。これは主に、労務関連引当金が5億80百万円増加しましたが、買掛金が4億38百万円、短期借入金が2億98百万円、未払法人税等が2億59百万円減少したこと等によるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ86百万円増加の4億47百万円となりました。これは主に、長期借入金が71百万円、退職給付に係る負債が18百万円増加したこと等によるものであります。

純資産は、前連結会計年度末に比べ5億89百万円増加の98億92百万円となりました。これは主に、その他有価証券評価差額金が76百万円減少しましたが、利益剰余金が5億40百万円、自己株式の処分等により85百万円増加したこと等によるものであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3億24百万円減少し、81億28百万円となりました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
 
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動の結果獲得した資金は7億33百万円(前連結会計年度は33億95百万円の獲得)となりました。これは主に、法人税等の支払額が9億17百万円、仕入債務の減少額が4億54百万円、売上債権の増加額が1億39百万円ありましたが、税金等調整前当期純利益が16億11百万円、労務関連引当金の増加額が5億80百万円あったこと等によるものであります。
 
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動の結果使用した資金は91百万円(前連結会計年度は44百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が99百万円あったこと等によるものであります。
 
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動の結果使用した資金は9億66百万円(前連結会計年度は6億78百万円の使用)となりました。これは主に、配当金の支払額が5億91百万円、短期借入金の返済による支出が3億15百万円あったこと等によるものであります。

 

 

 

④制作、受注及び販売の実績

セグメント情報を記載していないため、制作実績、受注状況及び販売実績は、カテゴリー別で記載しております。

 

a.制作実績

当連結会計年度における制作実績をカテゴリー別に示すと、次のとおりであります。

カテゴリー

当連結会計年度

(自 2024年7月1日

至 2025年6月30日)

金額(千円)

前年同期比(%)

リアルイベント

9,232,655

△9.5

ハイブリッドイベント

1,799,624

4.8

統合プロモーション

3,455,334

41.8

その他

95,095

△43.4

合計

14,582,710

0.4

 

(注) 上記の金額はイベント・プロモーション制作に要した費用で表示しております。

 

b.受注状況

イベント・プロモーションは制作段階、運営段階で当初の内容や金額が変動するケースが多いことから、当業界では、契約書の取交しや、発注書等が発行されることが少なく、したがって、受注残高の正確な把握が困難なため、受注状況の開示はいたしておりません。

なお、当社グループでは社内の受注管理システムにより、案件の進捗度合いの正確な把握に努めております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をカテゴリー別に示すと、次のとおりであります。

カテゴリー

当連結会計年度

(自 2024年7月1日

至 2025年6月30日)

金額(千円)

前年同期比(%)

制作売上高

 

 

リアルイベント

11,247,699

3.6

ハイブリッドイベント

2,232,214

2.3

統合プロモーション

4,179,811

△1.3

その他

123,129

△45.3

合計

17,782,855

1.6

 

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

当連結会計年度

(自 2024年7月1日

至 2025年6月30日)

金額(千円)

総販売実績に
対する割合(%)

金額(千円)

総販売実績に
対する割合(%)

㈱博報堂

5,111,784

29.2

4,791,035

26.9

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針につきましては、「第5  経理の状況  1連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5  経理の状況  1連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)
 当連結会計年度における売上高は、情報通信、食品・飲料のリアルイベントやハイブリッドイベントの伸長、官公庁・団体の大型イベントに加えて、大阪・関西万博も寄与し、堅調に推移したため、177億82百万円(前連結会計年度比1.6%増)となりました。

(売上総利益)
 売上総利益は、高付加価値の提供によるフィー型業務の拡大やグループ内製化により、高い収益力を維持したため、31億83百万円(同8.3%増)となりました。

(営業利益)
 販売費及び一般管理費は、従業員給料、支払手数料の増加等により、10億30百万円(同10.5%増)となりました。
 この結果、営業利益は21億52百万円(同7.3%増)となりました。

(経常利益)
 営業外収益は、持分法による投資利益の減少等により、48百万円(同20.1%減)となりました。営業外費用は、支払利息の増加、譲渡制限付株式関連費用の減少等により、6百万円(同21.4%減)となりました。

この結果、経常利益は21億94百万円(同6.6%増)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)
 労務関連費用5億80百万円、法人税等を4億79百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は11億32百万円(同19.5%減)となりました。

(経営成績に重要な影響を与える要因について)
 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

(資本の財源及び資金の流動性についての分析)

キャッシュ・フローにつきましては、「(1)経営成績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、イベント・プロモーションの制作費並びに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費になりますが、事業戦略上、多種多様な回収・支払のサイクルに対応していくために、売掛債権の流動化による資金調達も財源としております。
 今後、既存事業の事業成長を図りながら、積極的に新規事業の創出や、必要に応じてM&Aを実施し成長性のあるビジネスを当社グループの成長に取り込んでいく考えでありますが、資金需要の必要性に応じて柔軟に資金調達を実施いたします。

 

5 【重要な契約等】

当社グループは、機動的な調達手段を確保することにより、手元流動性を圧縮し、資金効率を高めることを目的として、取引銀行4行(株式会社三菱UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、株式会社三井住友銀行、株式会社りそな銀行)と総額30億50百万円の当座貸越契約を締結しております。

 

6 【研究開発活動】

特記事項はありません。