当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、あらゆる事業者のバックオフィス業務の改善に貢献することを使命とし、金融機関をはじめとしたさまざまなパートナーと共に支援を行っております。中でも日本の事業者の99%を占めながら、情報を入手しにくいことで不利益を受けることが多い個人事業主と中堅中小企業の支援に注力してまいりました。当社グループは「サービスの水道哲学」を企業哲学に掲げております。時流を捉え顧客の多様なニーズに応えうる有益で価値あるサービスを、リーズナブルな価格で、いただいた報酬以上の価値を顧客に提供することを事業のコンセプトとしております。そして全社員が愛される人物となり、「関わる全ての人と企業を物心両面で豊かにする」ことを、事業活動を行う上での目標とし、わが国経済の活性化に貢献できる経営に努めております。
(2)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは当面、収益力の向上を図ることが優先課題であると認識しております。従いまして、経営成績や事業の進捗を把握する上で、売上高営業利益率と売上高原価率の変動要因の把握を重視しております。また、全社的にストック型のビジネスモデルを基本として事業を展開していることから、契約継続率についても重要指標として捉えております。
今後の施策としましては、引き続き各セグメントにおいて、地域金融機関や税理士・社会保険労務士といった既存チャネルの深耕を進めると共に、営業機会の増強に努め、新たな販売チャネルの開拓に取り組むことでトップラインを引き上げてまいります。また、マーケットの拡大や顧客ニーズの多様化に対応するため、属人的なスキルやノウハウに頼らないサービス提供、オペレーションの構築に努めます。同時に、それぞれが持つ暗黙知を形式知にすることで高品質なサービスに昇華させ、蓄積データの活用や顧客とのタッチポイントを戦略的に組み合わせることで、画一的ではなく顧客ごとにカスタマイズされたサービスの提供に努めます。これにより顧客満足度を上げつつ営業及び顧客フォロー効率を高め、ストック部分の売上高を着実に増加させてまいります。
ビジネスソリューション事業における「オフィスステーション」シリーズの拡販においては、マーケットにおける認知度向上を進め、営業機会の増強に努めてまいります。ユーザビリティ向上のための追加機能開発や改善を継続的に行うこと、導入から稼働までの時間を短縮するためのフォロー、すでに何らかのプロダクトを利用中のユーザーについては、エクスパンションの取り組みに注力することで、利用プロダクトの拡大並びに顧客生涯価値(LTV)の向上に努めてまいります。
コストコントロールについては、主にアカウンティングサービス事業においてAI活用を引き続き推進することで処理工程における生産性の向上を図ること、また全社的にさまざまなITツールを活用し業務効率化を追求することなどを通して、ローコストオペレーションに継続して取り組んでまいります。
(3)経営環境
国内景気は、株式相場など金融市場が好材料となったものの、物価高騰にともなう消費者の節約志向の高まりや、製造業の停滞などの要因から悪材料となり、小幅ながら悪化傾向にあります。また、ウクライナへの軍事侵攻の長期化、中東情勢の悪化、および円安等による原油、原材料、物価が高騰する一方で価格転嫁が進まないことにより、厳しい経営環境に置かれています。事業運営においては、自動化、生産性向上のためのデジタル化の促進、人材の採用・育成、従業員の賃上げなど働く環境の整備も喫緊の課題となっております。
特に中小企業においては、ゼロ金利政策の解除により借入金利の上昇に伴う経営状況の悪化が懸念されており、中小企業経営は大きな転換期を迎えております。これらの外部環境の変化に適応し、企業を発展させていくためには、自社の強みを生かしたビジネスモデルの構築、省人化・デジタル化による労働生産性の向上、全社員一丸で取り組む経営体制が不可欠となります。2023年11月に成立した令和5年度補正予算では、継続的な賃上げを促進するための中小企業等の支援として、6,000億円の予算が組まれました。政府としてもポストコロナ時代の経済社会に対応し、危機に強い事業構築のための取り組みを支援することで、中小企業の付加価値向上や賃上げを早期に実現することを目指しております。当社グループではこうした政府方針に対し全面的に賛同し、推進の一翼を担うべく、取り組んでまいります。
また、税分野においては「インボイス制度」が導入され、これに対応するためには請求書や領収書のデジタル化、キャッシュレス対応を促進させていく必要があります。さらに、2023年12月に電子帳簿保存法の義務化猶予期間が終了し、2024年1月からは電子取引に関する電子データの保存に対応することが求められております。前者により適格請求書発行事業者の登録や消費税申告者が増加し、後者によって業務及び経理フローの見直しに迫られております。加えて社会保険手続きの電子化については、社会保険の適用範囲の拡大が進み、2024年10月からは51人以上の企業にも適用されることに伴い申請業務が増大してまいります。これらの事象は、企業の管理部門はもとより、税理士・公認会計士業界、社会保険労務士業界においても増加する業務量への対処が求められていることから、事業経営の転換期を迎えているといえます。このことにより、マーケットは拡大すると捉えております。法改正が企業の負担になるのではなく、既存オペレーションを見直し、業務の効率化を促進し、当社グループが一層社会に貢献できるよう、取り組んでまいります。
社会全体のデジタル化の促進により、あらゆる企業がデジタル社会に最適化するために、バックオフィス業務の外部委託やITツールの活用促進の動きが強まってきております。この流れは当社グループが提供する「オフィスステーション」にとってはマーケットの拡大であり、事業の成長速度を加速させる機会と捉えております。当社グループが創業以来一貫してバックオフィスに特化したコンサルティングサービスを提供してきたノウハウを「オフィスステーション」の開発に生かし、中小企業の労働生産性向上に寄与してまいります。
今後も各事業間のシナジーを高め、さらなるワンストップ・サービスの構築を図ってまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① チャネルの深耕とさらなるシナジーを生む事業体制の強化
当社グループはバックオフィスの業務改善により、事業経営の持続的な成長を支援することを使命として事業活動を展開しております。
経営力向上を目的とした事業計画の作成、助成金及び補助金などの公的支援活用、一層厳しさが増している環境下での採用、全社一丸となって経営課題に取り組む体制構築をするための教育、法改正に伴い煩雑化する労務管理など、バックオフィスにかかわる事業課題は多岐にわたっております。これらの経営支援を行う上で金融機関や税理士・公認会計士・社会保険労務士は非常に重要な役割を担っており、継続的な伴走型の支援が必要とされております。当社グループは全国の地域金融機関をパートナーとしている点、税理士・公認会計士及び社会保険労務士の会員ネットワークを持つ点は、ほかにはない強みであると認識しております。パートナーとの連携を強化・深耕することで、それぞれのパートナーの強みを最大化し、中小企業の課題解決に貢献してまいります。
② 業務効率化による利益率向上への取り組み
利益率向上のための取り組みとして、業務処理工程の見直し、高度な判断を必要としない比較的単純な情報処理、顧客からの問い合わせ等に対する一次対応、顧客属性に合わせた情報発信などへのITの積極活用を継続してまいります。
また、属人的なサービス提供は品質に均一性を欠くのに加え、量的・質的限界を迎えやすくなります。オペレーション分野での効率化追求だけではなく、営業分野においても効率化や提案内容の統一化を進め、より多くの顧客に効率的にアプローチできる体制を整備してまいります。あわせて、全社的に属人的なスキルやノウハウに頼らないサービスを追求することで、効率化だけではなく高品質サービスの提供につなげてまいります。求められているのは画一的ではなくパーソナライズされたサービスであると認識しており、顧客のエンゲージメントを高めていくため、蓄積データの活用や顧客との接点を戦略的に組み合わせて顧客満足の向上に努めてまいります。
③ 付加価値の高いサービスの開発
「オフィスステーション」シリーズは、コロナ禍により加速したHR領域での従業員情報の管理、時季によって発生する業務のIT化などに対応すべく、機能開発ならびにシリーズ展開を行ってまいりました。
企業の管理部門では、入社・退社に伴う各種申請、社会保険・年金の申告、年末調整などに伴い、従業員個人の身上情報、給与、企業内での資格取得・昇進情報の登録・変更・確認などの業務が行われております。これらの事象にあわせてHR領域では多くのツールが出現してまいりました。しかしながら企業側では、利便性を求めて導入したはずが、複数のソフトウエアを併用することによる情報連携の複雑化、既存ツールとの機能重複などの事象が発生しております。そのような現状を踏まえ、当社グループでは導入を検討する企業が自社にとって必要な機能ごとに導入できるよう、アラカルト方式の販売を行っております。それを前提として開発の優先順位を検討すると共に、顧客生涯価値(LTV)の最大化を企図した機能改善の開発をすすめてまいります。さらに、「オフィスステーション」シリーズを導入した企業のIT化による管理部門の課題解決や生産性向上を促すためには、使いこなせる状態にまで導くことが必要とされます。カスタマーサクセスの体制を強化することで、システム導入から実装まで伴走支援に努めてまいります。
④ 優秀な人材の確保と育成
当社グループの今後のさらなる成長を実現するためには、優秀な人材の確保及び育成が重要な課題であると認識しております。当社グループの唯一最大の財産は「人」であるため、採用後は「他社で3年で学ぶことを1年でマスターする」の教育方針に基づき、営業力・人間性・知識業務理解の面から3倍速の成長を支援しております。各人が能力を開発することが提供サービスの品質向上を加速させ、経営成績向上の重要な原動力となります。テレワークの推進、育児・介護等と仕事が両立しやすい環境の整備、有給休暇取得の促進、成果を正当に評価する仕組みの構築を進めるなどして、全社員の能力が最大限発揮できる環境づくりを行うことで、組織体制の強化に取り組んでまいります。あわせて、当社の経営理念に共感し、高い意欲を持った人材を採用するために積極的な新卒・キャリア採用活動を行い、早期に戦力化するための育成体制を強化することで、持続的な成長を支える重要資本である人材に対する中長期的な投資を継続してまいります。
⑤ セキュリティ体制の強化
当社グループは、提供するサービスに関連してユーザー企業の機密情報や個人情報を取り扱っております。継続的に安心してサービスをご利用いただくためにもセキュリティ監視体制を自社のみで実施するのではなく、外部業者による脆弱性の確認を継続して実施し、必要な対策をとってまいります。また、当社グループは情報セキュリティ基本方針を定めており、この方針にしたがって情報資産を管理、保護しております。引き続き、全従業員への教育・研修を実施し、セキュリティ体制の強化に努めてまいります。
⑥ コーポレート・ガバナンスの強化
持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るためには、コーポレート・ガバナンスが適切に機能することが不可欠であると認識しております。当社グループが事業活動を行う上では、顧客の個人情報や過去に当社グループと取引のあった企業を含む会員企業の各種機密情報等を扱うことが多くあります。外部からの不正な手段によるコンピューター内への侵入や、従業員等の過誤によりこれらの情報が漏洩した場合、当社グループの著しい社会的信用低下を招き、その結果、経営成績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクを回避するため、業務フローの厳格な運用、継続的かつ定期的な情報管理及びインサイダー取引に関する社内教育の実施、保管データへのアクセス制限などのシステム運用整備、データを取り扱う外部委託先に対する秘密保持契約の取り交わしを行っております。当社グループにおけるコーポレート・ガバナンスを機能させ、適正かつ効率的に事業運営し、事業基盤の強化を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ
当社グループは、これまで個人事業主と中堅中小企業の支援に注力してまいりました。時流を捉え多様なニーズに応えうる有益で価値あるサービスを、リーズナブルな価格で提供する「サービスの水道哲学」を企業哲学として、いただいた報酬以上の価値を顧客に提供することを事業のコンセプトとしております。
また、持続的発展が可能な社会の実現に貢献し、ステークホルダーおよび社会からの信頼を得ると共に、社会的責務を果たすため、サステナビリティに関するポリシーを定めております。
[サステナビリティに関するポリシー]
・地球環境の保全と企業活動との調和を目指す
・働く人々の安全衛生と健康を確保・推進して事業活動を行う
・腐敗行為および腐敗行為に加担する行為の防止を徹底する
当社グループの唯一最大の財産は「人」であります。持続的な成長を支える重要資本である人材に対する中長期的な投資を継続し、全社員が愛される人物となることを目指します。そして、「関わる全ての人と企業を物心両面で豊かにする」ことで、わが国経済の活性化に貢献し、当社グループにとどまらないサステナビリティを実践してまいります。
① ガバナンス
当社グループは、持続的な成長と企業価値向上のためには、コーポレート・ガバナンスが適切に機能することが不可欠であると認識しております。当社グループの事業活動では、顧客の個人情報や会員企業の各種機密情報等を扱うことが多くあります。これらの情報が、外部からの不正な手段によるコンピューター内への侵入や、従業員等の過誤によって漏洩するリスクを回避するため、以下の取り組みを行っております。
・業務フローの厳格な運用
・継続的かつ定期的な情報管理及びインサイダー取引に関する社内教育の実施
・保管データへのアクセス制限などのシステム運用整備
・データを取り扱う外部委託先に対する秘密保持契約の取り交わし
また、企業を取り巻く環境が大きく変化する中、当社グループは持続可能な社会の実現と当社グループの中長期的な企業価値向上を目指し、ESGの取り組みを推進するため、ESG委員会を設置し、以下のポリシーを定めております。
[ESG委員会]
・委員長:常務取締役(奥村 美樹江)
・事務局長:管理本部長(松尾 麻希)
・事務局:管理本部
・委員:各事業本部および連結子会社から選出(9名)
[ESGポリシー]
・環境ポリシー
・健康・安全に関するポリシー
・腐敗防止ポリシー
今後も事業規模の拡大に対応した内部管理体制の整備を進め、より適正かつ効率的な経営を遂行し、事業基盤の強化に努めてまいります。
② リスク管理
当社グループは、会社のリスクに関する統括責任者として担当取締役を任命し、リスク管理担当取締役を補佐する統括責任部署を総務部とし、組織横断的リスク状況の監視並びに全社的対応を行っております。リスク管理担当取締役は、必要に応じて全社的リスク管理の進捗状況と内部監査の結果を、取締役会及び監査等委員会へ報告します。
リスクの発生事項については、管轄する部門または委員会が情報収集および資料作成を行い、情報開示責任者である管理本部長を通じて、取締役会へ報告・付議し、取締役会で決議します。その後、情報開示責任者の指示により、管轄する部門または委員会より速やかに情報開示を行っております。
なお、管轄する部門または委員会については、以下の通りです。
・経理部:決算情報および投資有価証券・流動性リスクの管理
・各事業部門の営業管理部:営業債権の管理
・ESG委員会:ESGを含むサステナビリティ全般
・コンプライアンス委員会:法令・内部諸規則の遵守および不正の防止等のコンプライアンス全般
(2)人的資本
当社グループでは、「他社で3年かけて学ぶことを1年でマスターする」ことを掲げ、全社員が「成長し続ける環境」を整えております。新入社員であっても、入社して早い段階で多くの顧客を担当するなど大きな裁量を与え、圧倒的な場数を踏みます。大きな裁量を与えられることで、仕事に当事者意識が生まれ、強い責任感を持って仕事に取り組めるようになります。
それぞれが圧倒的に成長し、自分の価値を高めることで関わるすべての人と企業を豊かにすることが可能になります。それぞれが社会から必要とされ続ける人として発展を重ねていくことで、当社グループとして大きな社会貢献を目指しております。
① 戦略
A.人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針
当社グループでは、持続的な成長を支えるため、人材の採用および育成が非常に重要な事項であると考えております。人材の採用および育成に関する具体的な取り組み内容は、以下のとおりです。
[人材の採用]
新卒採用では、書類選考は一切なく、面接での採用を重視しております。学歴等では当人の魅力はわからないため、応募者全員に必ずお会いして判断しております。
インターンシップや面接では、本人の良かった点と改善点をそれぞれ2つ以上フィードバックしております。改善点については、他人からの指摘を好意的に受け止められるかどうか、またそれが改善できるようになるかということの確認でもあります。
採用プロセスについては、以下の通りです。
・エントリー
・インターンシップ(2日間)
当社グループで実際に支援した実例も含め中小企業の経営課題を題材にグループワークを中心としたプログラムを実施しています。学生同士の交流により、学生自身は学びを深め、当社グループは学生の素の部分を見ることを目的にしております。
・会社説明会
代表取締役社長が自ら当社グループの魅力を存分に語ると共に、入社1年目の先輩社員がなぜ当社グループへの入社を決めたのかと従事している業務内容について説明します。また、当社グループの面接を希望する学生には全員に、面接時のポイントを解説しております。これは、学生本人の面接時のパフォーマンスを最大化させたいためのものです。
・1次選考(グループ面接)
事前に「自己PR」という面接でのテーマをあらかじめ伝えております。準備したうえで、どこまでPRできるかを確認する機会としております。
・2次選考(個人面接)、3次選考(個人面接)、4次選考(個人面接)
2次選考以降では、面接の前半の時間を、学生からの質問時間としております。当社グループに対する疑問や不安を解消し、志望度を高めてもらうことを目的としております。また、質問の内容によって、本人の価値観を把握するためでもあります。
・最終選考(個人面接+筆記試験)
最終面接の前後には、面接ではなく「カジュアル面談」をオンラインまたは対面で複数回実施しております。学生の本音を引き出し、当社グループにマッチする人材かを、お互いにすり合わせ、本人の不安を取り払うことを目的としております。
・定期的な研修及び個人面談
内定者には、入社直前まで毎月オンラインまたは集合形式で研修を実施しております。また、定期的に採用担当者が内定者と個人面談を行っております。集合研修の際には、食事を先輩社員と一緒にすることもあります。これらは、入社後に必要となる知識やスキルの範囲やレベル、働くイメージのギャップを埋め、辞退や退職を防ぐことを目的としております。
・内定式
[人材の育成]
研修制度として、入社前から始まる内定者向け、キャリア採用者向け、年次別、階層別等を設けており、研修を介して企業文化が浸透される環境を整えております。
・内定者研修
採用内定後入社までの期間は、ビジネスパーソンとしての市場価値を高めることを目的とした研修を月に1~2回のペースで実施しております。実際にエフアンドエムクラブの会員企業向けに有料で行っているマネジメント研修やビジネスマナー研修をはじめ、入社後必要となる会計の知識も身に付けられるようにサポートしております。学生時代に経営について学ぶ機会がなかった学生でも無理なく必要な知識を習得できる環境を整えております。
・フェロー研修
入社1~6年目の社員を対象に、3ヶ月に一度のペースで年次別の研修を実施しております。当社グループは「他社で3年で学ぶことを1年でマスターする」を教育方針としております。自分自身の成長について振り返り、3倍速の成長を実現させるために必要な取り組みを自ら設定しております。業務内容や勤務地域が異なる同期入社の社員と、日頃の創意工夫を共有することでモチベーションが高まり、息切れすることなく3倍速の成長を続けられる機会となっております。
・キャリア採用者向け研修
キャリア採用で入社した1~3年目の社員を対象に、年に2回の研修を実施しております。配属された部門のことだけでなく、当社グループが展開する事業内容や、大切にしている企業文化を理解する機会となっております。キャリア採用者は、年齢も地域も採用時期も異なることから横のつながりが薄く、孤立しがちになる傾向にありますが、研修を介して一体感を醸成し、日頃から情報交換できる環境を構築します。
・事業本部研修
各事業本部にて、定期的に集合型で研修を実施しております。それぞれの成功体験やノウハウを共有することで、活動内容のレベルアップを図ることを目的としております。また、政府が行う支援策等については随時内容が更新されるため、タイムリーな情報共有や提案内容のブラッシュアップを行うことで、より強固な経営体制を築きます。
・F&M University(企業内大学)
社員を階層別にクラス分けし、それぞれのステージに応じた研修を、グループ外から講師を招聘し実施しております。全社員が「生涯学習」の精神で、3倍速の成長を体現しております。
B.社内環境整備に関する方針
当社グループでは、当社グループ自体が従業員・社会から愛されるため、従業員の安全および健康、ならびに会社の風土は非常に重要な事項であると考えており、具体的な取り組み内容は、以下のとおりです。
[従業員の安全および健康]
有給休暇の取得促進や、当社グループ独自のメンター制度により、従業員の安全と健康を守ります。
・セルフ大型連休制度
年間2回、有給休暇を5日連続で取得することができる制度。5日連続で有給休暇を取得すると、前後の土曜・日曜日と連続するため、最低でも9日間連続の大型連休となります。ルールとして、一定の強制力を持って全社員の有給休暇取得を進めております。
・リフレッシュ休暇
5年に一度、最大10日間の連続した休暇を取得できる制度。心身ともにリフレッシュし、休暇明けから集中して業務に取り組める制度となっております。
・語る&知る
当社グループ社員の発案から生まれたメンター制度をはじめ、「話そう、つよく繋がろう」をテーマに、社員がお互いのことを理解し合い、より強固な協力体制を築くためのコミュニケーション向上施策です。仕事もプライベートも、何でも相談できる先輩社員が入社後2年間フォローするもの、事業本部内でのチームビルディングや組織力強化を目的とするもの、事業本部を超えた交流を図ることで、お互いの事業や活動内容への理解を深め、現場レベルでの相互支援を行うことを目的とするもの、会社主導の組み合わせメンバーで交流できる機会を設け、そこでのシナジーを期待するものがあります。
[会社の風土]
性別・年次にかかわらず成果に対して報いる制度や、一般社員が当社グループの代表取締役社長と気軽に交流できる機会を持つことで、風通しの良い組織風土を醸成します。
・優績者旅行
優秀な成績を収めた社員を海外旅行に招待する制度。評価対象期間は半期ごとで、年2回実施しております。これまでハワイ、グアム、カナダ、オーストラリア、バリ、香港などの実績があります。
・MVP表彰
毎年、各事業本部から最も活躍した社員を年次に関係なく選出し、全社員の前で表彰する制度。受賞は、その中でもMVPゴールドとMVPシルバーに分かれ、それぞれに応じた報奨金を贈呈しております。
・MEET THE CEO
「社長としてではなく人生の先輩として話したい」という当社グループの代表取締役社長の想いで開催するイベント。話を聞くだけではなく、社員が自分の考えを伝えたり、アイデアを披露したり、仕事やプライベートの悩みを相談してアドバイスをもらう機会となっております。当社グループでは、社員一人ひとりが直接代表取締役社長と対話できる機会を大切にしております。
② 指標及び目標
当社グループでは、上記「① 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
|
指標 |
目標 |
実績 |
|
|
2023年3月期 |
2024年3月期 (当連結会計年度) |
||
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16.3% |
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53.8% |
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- |
58.3% |
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(うち正規雇用労働者) |
- |
59.6% |
61.6% |
|
(うちパート・有期労働者) |
- |
42.3% |
39.9% |
|
(うち総合職) |
2029年3月期までに90% |
87.9% |
86.6% |
|
(うちアソシエイト職) |
2029年3月期までに88% |
84.9% |
83.4% |
|
(うちアルバイト) |
2029年3月期までに88% |
85.5% |
90.4% |
|
(一人当たり平均日数)(注)3 |
2024年3月期 12日
|
10.5日 |
|
(注)1.連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定による公表をしないため、提出会社のみの実績となります。なお、実績の詳細については「
2.目標については、雇用区分(正規雇用労働者、パート・有期労働者)ごとではなく、職種(総合職、アソシエイト職、アルバイト)ごとに定めております。なお、総合職は転勤を含むジョブローテーションを重ねてキャリアを積み、その過程で新しいサービス及び仕組み作りや判断が求められる業務を主に担当し、アソシエイト職は総合職の補佐的業務を担当するものであります。
3.「年間有給休暇取得日数」については、総合職およびアソシエイト職が有給休暇付与日数の75%(2025年3月期は77%)を取得することを目標に、1人当たり平均日数を算出しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)主要事業の対象マーケットについて
アカウンティングサービス事業における生命保険会社営業職員のマーケットは、直近の10年間は18万人から20万人の間で増減を繰り返しております。今後の各生命保険会社の施策及び経営環境により、減少する可能性があります。コンサルティング事業では中小企業がマーケットとなりますが、原油・原材料価格の高騰、部材調達難、人手不足といった供給面の制約を受け、引き続き厳しい状況にあることから、政府は引き続き中小企業に対する支援策を継続的かつより多方面から講じており、それらを必要とする事業者は全国に数多く存在しています。この中小企業を取り巻く経営環境が急激な改善を見せることは現実的ではなく、引き続き行政による支援は継続するものと考えておりますが、その規模が大きく縮小すること等があった場合は、提供している一部のサービス内容の見直しを迫られる可能性があります。一方、ビジネスソリューション事業においては、近年、政府が行政のデジタル化を進めてきたことに加え、各社HR領域における業務の生産性向上の一環としてIT化への取り組みが加速したことが、「オフィスステーション」シリーズ拡販においてはマーケットの拡大と捉えることができます。
(2)海外での業務委託について
当社グループでは原価低減策のひとつとして、アカウンティングサービス事業の記帳処理作業をはじめとし、各セグメントで発生するデータ入力作業の一部を中華人民共和国のシンセンに位置する企業に業務委託しております。こうした海外への業務委託においては、予期せぬ法律または規制の変更、テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等のリスクが内在しております。このような事象が発生した場合、当社グループのサービスが円滑に提供できなくなり、経営成績に悪影響を与える可能性があります。
(3)個人情報の管理について
当社グループが一般個人及び法人向けに提供するサービスにおいて、その従業員等を含む個人情報等をサーバー等で管理する場合があり、採用しているさまざまなネットワークセキュリティにも拘らず、不正アクセス及びその他事由により個人情報の流出等の可能性は存在しております。このような事案が発生した場合、当社グループに対する損害賠償の請求、訴訟、行政官庁等による制裁、刑事罰、その他の責任追及がなされる可能性があります。また、これらの責任追及が社会的な問題に発展し、当社グループが社会的信用を失う可能性があります。
(4)減損会計について
当社グループでは、本社が所在する自社所有物件のほか、全国に営業拠点やパソコン教室直営店舗などが所有する事業用固定資産があり、また毎期積極的に開発費を投じている社内業務システムや販売用システムがあります。将来的に不動産の下落及び経営成績によってそれらの減損処理が必要となった場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
(5)許認可を要する事業について
当社グループの事業の一部においては、経営革新等支援機関などの関係省庁での許認可を必要とする事業を行っております。今後関連法規の改正などによっては、同事業の提供する一部のサービスを継続できなくなる可能性があります。
(6)業績の季節変動について
当社グループのサービスはバックオフィスの支援や改善を目的としたものですが、年末調整や確定申告などサービス導入のきっかけとなる主だった手続きが下半期に集中する傾向があります。このことにより、連結会計年度における各四半期の売上高、営業利益等の間に変動があり、今後も同様の傾向が続くため、上半期に比べて下半期の業績が通期業績に与える影響も大きいものと見込んでおります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、株式相場など金融市場が好材料となったものの、物価高騰にともなう消費者の節約志向の高まりや、製造業の停滞などの要因から悪材料となり、小幅ながら悪化傾向にあります。また、ウクライナへの軍事侵攻の長期化、中東情勢の悪化、および円安等による原油、原材料、物価が高騰する一方で価格転嫁が進まないことにより、厳しい経営環境に置かれています。
このような経済状況のもと、当社グループは引き続き主要事業の会員数の増加およびサービス内容の拡充と業務の効率化に取り組んでまいりました。
(財政状態)
(ⅰ)資産
当連結会計年度末における流動資産は64億96百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億38百万円増加しました。これは主に現金及び預金が3億13百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が1億90百万円、有価証券が1億円増加したことなどによるものです。
固定資産は87億6百万円となり、前連結会計年度末に比べ10億30百万円増加しました。これは主に建物及び構築物(純額)が1億5百万円、ソフトウエアが5億84百万円、投資有価証券が1億18百万円増加したことなどよるものです。
この結果、総資産は152億2百万円となり、前連結会計年度末に比べ16億69百万円増加しました。
(ⅱ)負債
当連結会計年度末における流動負債は34億39百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億18百万円増加しました。これは主にその他(流動負債)が2億97百万円増加したことなどによるものです。
固定負債は1億45百万円となり、前連結会計年度末に比べ0百万円増加しました。
この結果、負債合計は35億84百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億19百万円増加しました。
(ⅲ)純資産
当連結会計年度末における純資産合計は116億18百万円となり、前連結会計年度末に比べ10億50百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益16億9百万円が計上された一方、剰余金の配当5億25百万円が計上されたことなどによるものです。
この結果、自己資本比率は76.4%(前連結会計年度末は78.1%)となりました。
なお、特筆すべき重要な資本的支出の予定及びそれに伴う資金の調達は当面ありません。
(経営成績)
当連結会計年度の経営成績は、売上高148億61百万円(前連結会計年度比17.0%増)、営業利益21億28百万円(同18.2%減)、経常利益21億43百万円(同18.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益16億9百万円(同14.5%減)となりました。
セグメント別の経営成績は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前連結会計年度比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
(ⅰ)アカウンティングサービス事業
アカウンティングサービス事業は、生命保険営業職員を中心とする個人事業主及び小規模企業に対する記帳代行等の会計サービスになります。同事業では、各生命保険会社が新入社員向けに随時行っている研修への参加による営業機会の確保に注力いたしました。その結果、当連結会計年度末(2024年3月31日)の会計サービス会員数は92,045名(前連結会計年度末比7,990名増)となりました。
この結果、アカウンティングサービス事業における当連結会計年度の売上高は43億92百万円(前連結会計年度比11.0%増)、営業利益は12億86百万円(同0.8%増)となりました。
(ⅱ)コンサルティング事業
コンサルティング事業は、中堅中小企業の総務経理部門に対する各種情報提供サービスの「エフアンドエムクラブ」、ISO及びプライバシーマークの認証取得支援、「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」をはじめとした補助金申請支援等になります。
「エフアンドエムクラブ」については、2024年3月末時点で213行庫の地域金融機関と連携契約しております。連携済みの金融機関には、好連携事例の共有や勉強会の開催、結果報告などによる情報共有の強化によって稼働促進を図ることで、営業機会の増強に努めました。また、引き続き中小企業経営者から非常に高い注目を集めている「事業再構築補助金」などの補助金活用を切り口とした提案を行いました。加えて、常態化している人手不足を解消するため積極的に採用活動を行いたい企業、労務管理を適切に行うことで就業環境を整備したい企業、公的支援制度を漏れなく活用したい企業などの経営者ニーズを掴んだことが、新規の会員獲得に貢献しました。会員企業向けには、月に一度企業ごとに設備投資の予定、事業承継や企業ごとの退職金・支給手当の有無を確認し、その回答に応じてタイムリーなフィードバックを行いました。また、会員の従業員教育の一環として、コンプライアンスや時事問題をテスト形式で提供するサービスの提供を開始しました。加えて、他社の取り組み事例や業界の課題を共有する業種別のオンライン交流会を開催しました。個社ごとの状況を把握している担当者だけではなく、担当者頼みにならないサポート体制を構築することで、継続的にサービスをご利用いただけるよう支援を行っております。その結果、当連結会計年度末(2024年3月31日)のエフアンドエムクラブ会員数は11,192社(前連結会計年度末比2,145社増)となりました。
ISO及び第三者認証取得支援については、個人情報保護法の改正やサイバー攻撃等による情報セキュリティニーズによるプライバシーマークおよびISO27001、食品安全衛生意識の高まりにより企業間取引にHACCP・FSSC22000、自動車部品製造業サプライチェーンの品質面の強化のためISO9001の認証取得支援が増加傾向にあります。また公共工事への参入を目的にISO9001およびISO14001の取得が増加しています。これらの旺盛なニーズへの対応に注力しました。
「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」をはじめとした補助金受給申請支援については、「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」として、2024年1月に16次締切分の採択結果が発表となり、71件が採択されました。17次締切分については当連結会計年度での計上を見込んでおりましたが、2024年5月に採択結果が発表になり、3件が採択されました。18次締切分については採択結果の発表を待っております。また、「事業再構築補助金」は、2024年2月に第11回締切分の採択結果が発表になり、103件が採択されました。なお第11回締切分の全国の採択率は26.5%と過去最低水準を記録する大変厳しいものとなりました。「事業再構築補助金」については、2023年11月に実施された行政レビューを元に、支援枠を6枠から3枠に簡素化、コロナ債務を抱える事業者に加点措置、事前着手制度の原則廃止といった見直しがなされて、2024年4月23日より第12回締切分の公募が開始しておりますが、同締切分は当連結会計年度での公募とならなかったことが、業績に影響を与えました。
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補助金名 |
締切 |
採択数 |
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ものづくり補助金 |
14次 |
81件 |
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15次 |
59件 |
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16次 |
71件 |
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17次 |
3件 |
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18次 |
※ |
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事業再構築補助金 |
第8回 |
231件 |
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第9回 |
139件 |
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第10回 |
147件 |
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第11回 |
103件 |
※ 採択結果は発表待ちの状態です(2024年5月31日現在)。
この結果、コンサルティング事業における当連結会計年度の売上高は59億34百万円(前連結会計年度比9.5%増)、営業利益は12億70百万円(同34.1%減)となりました。
(ⅲ)ビジネスソリューション事業
ビジネスソリューション事業は、士業向けコンサルティング、及び企業・士業向けITソリューションの提供等になります。
士業向けコンサルティングは、認定支援機関である税理士・公認会計士事務所の対応力向上を支援する「経営革新等支援機関推進協議会」等となります。
「経営革新等支援機関推進協議会」では、コロナ禍によって強まった中小企業からの優遇税制支援や財務支援要請に対応するためのノウハウを必要とする税理士・公認会計士の継続的なニーズが、営業機会の確保につながりました。その結果、当連結会計年度末(2024年3月31日)の「経営革新等支援機関推進協議会」の会員数は1,708件(前連結会計年度末比30件増)となりました。
企業・士業向けITソリューションの提供としては、人事労務クラウドソフト「オフィスステーション」シリーズの販売となります。「オフィスステーション」シリーズは、社会保険労務士や税理士向けの「オフィスステーション Pro」、企業向けの「オフィスステーション マイナンバー」「オフィスステーション 労務」「オフィスステーション 労務ライト」(「労務」の機能を一部制限して無料提供)「オフィスステーション 年末調整」「オフィスステーション 給与明細」「オフィスステーション 有休管理」「オフィスステーション 勤怠」(2023年4月リリース)で構成されています。社会保険労務士事務所マーケットの深耕については、大規模事務所向けのパッケージプランの提案を進めました。大規模事務所からのニーズが強かった事務組合機能をリリースしたことにより、社会保険労務士事務所が求める一定程度の利便性を提供できる環境が整ったことが、販売を後押ししています。既存事務所に向けては、引き続き主に大規模事務所を対象としたハイタッチフォローを継続して行い、事務所での稼働を促進しました。企業向けには、販売代理店となるパートナー企業での定期的な勉強会の開催や主催イベントへの参加、大規模展示会への出展により、商談数の増加につなげました。また複数プロダクトを同時に提案することで、営業効率を上げることにも注力しました。合わせて都市部ではタクシー広告を展開することで価値訴求を行いました。「オフィスステーション 年末調整」については、入力された情報からふるさと納税の上限額の目安を表示し、連携したふるさと納税サイトへ誘引する機能を追加しました。情報の取りまとめを行う労務担当者の利便性向上だけではなく、導入企業の従業員のベネフィットを追求し、継続して選ばれるプロダクトを目指しました。また、新規の商談案件についてはフィールドセールスとカスタマーサクセスが連携を密にすることで、リードタイムの短縮や成約率向上に努めました。特にカスタマーサクセスについては、一社あたりのユーザー数を増大させることに加え、クロスセルの取り組みに注力しました。その結果、当連結会計年度末(2024年3月31日)の「オフィスステーション」シリーズの利用は、無料で提供している「オフィスステーション 労務ライト」の利用を含み、企業が36,731社(前連結会計年度末比10,718社増)、士業が3,013件(同546件増)となりました。
この結果、ビジネスソリューション事業における当連結会計年度の売上高は41億31百万円(前連結会計年度比40.5%増)、営業利益は5億48百万円(同69.8%増)となりました。
(ⅳ)不動産賃貸事業
不動産賃貸事業は、当社が所有するオフィスビルの賃貸収入で安定した収益を計上しております。当連結会計年度の売上高は1億6百万円(前連結会計年度比3.6%減)、営業利益は30百万円(同4.6%増)となりました。
(ⅴ)システム開発事業
システム開発事業は、連結子会社エフアンドエムネット株式会社のシステム開発事業等になります。前連結会計年度まではその他事業として区分していたものです。エフアンドエムネットでは、「オフィスステーション」シリーズを中心としたエフアンドエムが販売する商品などのグループ内向け開発が大部分を占めました。
この結果、システム開発事業における当連結会計年度の売上高は2億35百万円(前連結会計年度比25.2%増)、営業利益は77百万円(同21.7%増)となりました。
(ⅵ)その他事業
その他事業は、パソコン教室の本部運営及びFC指導事業等になります。パソコン教室の本部運営及びFC指導事業においては、受講生に対する積極的なカウンセリング、資格取得のためのサポートなどを強化することで継続率の向上に努めました。
この結果、その他事業における当連結会計年度の売上高は60百万円(前連結会計年度比28.9%減)、営業利益は5百万円(同31.7%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ3億13百万円増加(前連結会計年度末比6.4%増)し、52億22百万円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は32億60百万円(同9.2%増)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益22億33百万円、減価償却費12億96百万円、その他の流動負債の増加6億34百万円などがあった一方、売上債権の増加2億26百万円、法人税等の支払6億57百万円などがあったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は24億21百万円(同27.6%増)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出3億62百万円、無形固定資産の取得による支出18億50百万円、投資有価証券の取得による支出2億90百万円などがあった一方、投資有価証券の売却による収入1億10百万円などがあったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は5億24百万円(同12.2%増)となりました。これは主に配当金の支払5億24百万円などがあったことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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アカウンティングサービス事業(千円) |
4,392,990 |
111.0 |
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コンサルティング事業(千円) |
5,934,866 |
109.5 |
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ビジネスソリューション事業(千円) |
4,131,654 |
140.5 |
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不動産賃貸事業(千円) |
106,688 |
96.4 |
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システム開発事業(千円) |
235,159 |
125.2 |
|
報告セグメント計(千円) |
14,801,358 |
117.3 |
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その他(千円) |
60,410 |
71.1 |
|
合計(千円) |
14,861,769 |
117.0 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
主要3セグメントにおいては、いずれも会員制ビジネスであるため、主たる売上は会費収入となります。売上高の伸長は会員数の増加と原則的に比例するため、会員数を安定的に増加させることが、事業の成長には不可欠な要素となります。また、収益力の向上を図ることが優先課題であると認識していることから、売上高営業利益率と売上高原価率を注視し、その変動要因の把握に努めております。これらについてのセグメントごとの具体的な取り組みと振り返りは次の通りとなります。
[アカウンティングサービス事業]
主なマーケットである生命保険営業職員のチャネルで会員数が増加しました。なお、同営業職員数は18.5万人(2022年度月平均実働数 出所:株式会社保険研究所『インシュアランス生命保険統計号(令和5年版)』)であり、今後も拡大の余地は十分に見込めるものと考えております。いずれの生命保険会社においても年間を通して積極的な採用活動を行うことは継続しております。新入社員に向けては随時研修が実施されておりますが、当社は各生命保険会社で行われている同研修において、継続して一部のプログラムを担当しております。生命保険営業職員は個人事業主であり、個人で納税の手続きが必要であることについて、研修で詳細の説明を受けることになりますが、当社が確定申告やそのために必要な事柄についての研修を担当することで営業機会の確保に努めております。研修では当社で開発したアプリを活用し、確定申告についての理解を深めていただいた上で、自分で対応するのが難しいと判断された方が、当社サービスをスムーズご利用いただけるよう提案に繋げております。また、契約に関する一連の手続きはオンラインで完結できるため、効率的な営業活動を展開しております。
また、売上高原価率の改善のため、AIの活用による処理工程の業務効率化を進めました。AI学習には相応の時間を要するものではありますが、AI処理によるカバー率は順調に上昇しており、これが原価抑制に貢献しております。
インボイス制度がスタートしたことで、企業・個人事業主だけではなく、税理士・会計士業界においても、業務負担が増大しております。今後はAIによる処理精度の向上と共に、処理実績とノウハウを活用することにより、シェアードサービスやアウトソーシングを希望する企業・税理士・会計士の受け皿として機能し、新たな売上を創出していきます。
[コンサルティング事業]
ベースとなる収益は、エフアンドエムクラブ等の会費売上によるものです。売上拡大には、会員数の増大が必要であるため、新規会員企業獲得のための営業活動の強化ならびに営業人員の増強を行うと共に、サービスを長く利用いただくための取り組みが重要であるとして、契約継続率に注目しております。従来、中小企業の経営課題として上位に位置している、労務管理や人手不足などに対処したいとする経営者のニーズを掴んだ提案を行ったことも貢献しました。会員企業に向けては、引き続き全てのサービス提供が人を介して行われる属人的な体制からの脱却を目指したサービス提供体制の整備を進めました。企業ごとの事情に合わせてタイムリーな情報提供や経営支援を行える体制を整備するため、毎月月初に全ての会員企業に対して、設備投資や採用の計画の有無などを確認するサービスがより深い支援に繋がり、一定の評価を得ております。
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2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
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期末会員数 |
増減数 |
期末会員数 |
増減数 |
期末会員数 |
増減数 |
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エフアンドエムクラブ会員数 |
7,598 |
852 |
9,047 |
1,449 |
11,192 |
2,145 |
2021年3月から公募が開始された「事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)」は、第10回から要件の緩和や申請枠の新設など公募要領の大幅な改訂が行われ、より多くの企業が利用できる補助金となりました。一方で、第11回の申請締め切り後、行政レビューが実施され、採択条件が大幅に見直しされ、採択数は厳しい状況となりました。営業機会の増強にはパートナーとなる地域金融機関との連携が重要となりますが、活動実績を高く評価いただいていることから業務提携の締結は順調に進み、業務提携済みの地域金融機関は213行庫となりました。今後も開拓を進めると共に、稼働促進のための取り組みを積極的に行うことで営業活動を活性化させていきます。契約継続率については、タイムリーに個社の状況を把握する取り組みを強化することにより、伴走型支援を深化させることで継続率の改善が実現するものと見込んでおります。
エフアンドエムクラブの拡販は地域金融機関との連携によるところが大きいため、それに伴う手数料の支払いが発生しますが、あくまでも変動費であり、営業基盤と販売力強化のためには必要な費用だと認識しております。2023年11月に令和5年度補正予算が成立し、継続的な賃上げを促進するための中小企業等の支援として、6,000億円の予算が組まれました。地域金融機関と共に、申請を行いたいとする、より多くの企業の支援体制を構築することが、営業機会の増強につながります。翌期はさらなる「エフアンドエムクラブ」の営業活動強化と、新設された「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」等をはじめとした各補助金の申請支援を行うことが業績に貢献する見通しです。
[ビジネスソリューション事業]
税理士・公認会計士事務所向けサービスである「経営革新等支援機関推進協議会」の会員獲得は、「経営革新等支援機関」の認定を維持・更新するための実績作り、自事務所の新規関与先の拡大や、関与先企業からの優遇税制・財務支援の要請に対応するためのノウハウを必要とする税理士・公認会計士事務所からの継続的なニーズが、営業機会の確保に繋がりました。
「オフィスステーション」シリーズの拡販については、生産性向上の一環として、HR領域におけるペーパーレス化やDX推進の勢いが強まっていることが追い風となりました。市場にはそれを叶えるためのさまざまなデジタルツールが存在しており、比較検討して導入を進める企業は増加傾向にあります。「オフィスステーション」シリーズはアラカルト型であることから、企業が利用中のシステム機能と重複せず効率的な運用ができ、またIT化をスモールスタートしたい企業のニーズに対応することができます。当期はそれを背景に導入に至った企業に対して、カスタマーサクセスを稼働させることで、一社あたりのユーザー数を増大させることに加え、クロスセルの取り組みに注力しました。また、「オフィスステーション年末調整」に「ふるさと納税」の機能を追加しました。従業員は年末調整の情報を会社へ申告し、該当年度においてふるさと納税の上限額を自身のマイページで認識することが可能となりました。従業員の節税の支援だけではなく、寄付金額が増加したことで社会貢献へつながります。士業事務所向けは大規模事務所向けの提案が進んだことが業績に貢献しました。大規模事務所への導入が加速したことは、社労士業界での宣伝広告効果も高く、会員数増加が加速しました。翌期は有効リードの獲得のため広告宣伝活動を強化し、営業機会を増強いたします。既存ユーザーに対しては、利用機会を増やすための提案を強化することで顧客満足度及び継続率の向上を図り、ARRとLTVの最大化に取り組みます。また、「オフィスステーション」シリーズは利便性向上のため、機能追加や新しいプロダクトの開発を継続して行うことから、その減価償却費が売上高原価率を押し上げる要因となりますが、開発計画については内容を十分精査することでコストコントロールを行います。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、強固な財務体質を保持しつつ、企業価値向上に資する成長投資を行うべく、戦略的に経営資源を配分することを財務戦略の基本方針としております。強固な財務体質の維持については、自己資本比率を指標としております。当連結会計年度の自己資本比率は76.4%と、リスク耐性及び健全性において問題のないレベルだと認識しておりますが、円安や物価上昇、金融資本市場の変動等の影響により社会経済活動や事業環境の先行きは見通しづらい状況が続いているため、キャッシュ・フローの状況を注視しつつ財務規律を堅持してまいります。
経営資源の配分については、収益力の高い既存事業の強化・成長に貢献する投資と、事業経営の基盤である人材採用及び育成への投資を最優先しながら、生産性向上のためのIT活用及び新規事業育成のための投資も継続して行います。投資については、フリー・キャッシュ・フローを有用な指標と考えております。当社グループではフリー・キャッシュ・フローを、営業活動により獲得されたキャッシュ・フローと投資活動により支出されたキャッシュ・フローの合計として定義しております。この指標は戦略的投資や負債返済に充当可能な資金の純額となると考えており、以下の通りフリー・キャッシュ・フローを算出しております。
(単位:百万円)
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
2,985 |
3,260 |
274 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△1,898 |
△2,421 |
△523 |
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フリー・キャッシュ・フロー |
1,087 |
838 |
△248 |
当連結会計年度においては、営業活動は順調で、各セグメントの会員数とともにキャッシュ・インは増加しておりますが、「オフィスステーション」シリーズの開発を継続したことがキャッシュ・アウトを増加させました。企業規模を問わずHR領域では急速なIT化が進んでおり、「オフィスステーション」シリーズの拡販にとっては引き続き追い風であり、成長力・収益力の両面から今後も成長エンジンであると考えております。翌期以降も着実な拡販や収益力の強化に万全を期すことで、投資回収をしてまいります。その他のセグメントも含め、利益成長によるキャッシュの創出力を高めながら、資本コストと財務の柔軟性のバランスを考慮した資本構成を維持してまいります。
資金調達については、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を基本方針としております。当社グループのビジネスモデルでは大型の設備投資は発生しないため、そのための資金調達の必要性はありませんが、事業展開に伴う資金需要には機動的に対応するため、充分な現金及び現金同等物を保有しております。現金及び現金同等物の保有額については厳密な目標を設けておりませんが、金融情勢などを考慮しつつ、安全性ならびに流動性の高い短期金融商品を中心に運用しております。
株主還元については、安定的・継続的な利益還元に努めていくことを原則とし、事業活動を通じて創出した利益を成長分野へ投資することで、長期的なEPSの成長と配当水準の向上に努めてまいります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループは顧客である中堅中小企業及び個人事業主へ提供するサービスの品質向上を目的に、研究開発活動を行っておりますが、当連結会計年度は研究開発活動の金額はありませんでした。
当社グループでは特にアカウンティングサービス事業において、帳票の処理工程でのAI技術活用をさらに推進し、生産性向上を図っていきたいと考えております。そのため連結子会社であるエフアンドエムネット株式会社において、AIシステム構築を目的としたさまざまなツールやサービスの調査等の研究開発の取り組みは継続いたします。それに伴い今後グループとして研究開発活動費が計上されることがあります。