第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営環境

 当連結会計年度の世界経済は、米国におけるインフレや金融引き締め、欧州におけるロシア・ウクライナ情勢を受けたエネルギー供給制約、中国におけるゼロコロナ政策解除からの回復ペースの鈍化など、総じて減速傾向が続きました。日本経済においては、行動制限の緩和や水際対策の緩和を受けてインバウンド需要が回復するなど、個人消費を中心に経済活動の正常化が緩やかに進みました。

 当社グループでは、モバイル・インターネット気象事業において、大雨や台風、寒波による降雪などに伴う気象災害の発生により、人々の天気予報や防災への注目が高まりました。このような中で、積極的な広告投資を通じた認知度向上、予報精度の改善、独自コンテンツの充実を行うことでアプリ利用者数が増加し、サブスクリプションサービス売上及び広告収入が好調に推移しました。航海気象事業においては、港湾混雑の解消が進んだものの輸送需要が減退し、サービスを提供する船舶の航海数が伸び悩みました。その一方で、サービスを提供する隻数を増加させたことや、為替によるプラス影響があり売上は増加しました。航空気象事業においては、エアラインの国際線における出入国制限の緩和などでインバウンド需要が高まり、国内線においても行動制限の解除やその後の全国旅行支援の影響もあり、市況の回復が継続しました。また、国内ヘリコプター市場での動態管理システムの拡販が進み売上が増加しました。

 

(2)対処すべき課題(中期経営計画)

1.中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは「船乗りの命を守りたい。地球の未来も守りたい。」という夢に向かって、サポーターとともに最多・最速・最新の気象コンテンツサービスにより気象・環境に関する社会的リスクに対応する「気象コンテンツ・メーカー」になることを基本コンセプトとしており、気象コンテンツ市場のフロントランナーとして、独創的に新たな市場を創造しながら「サポーター価値創造」と企業価値の最大化を目指します。

 また、このコンセプトの実現のため、「世界最大のデータベース・業界No.1の予報精度・あらゆる市場におけるコミュニティー」をValueと考え、Full Service“Weather & Climate” Companyとなることが当社のミッションであると認識しています。

 

2.対処すべき課題(中期経営計画)

<1.第4成長期の振り返り>

 当社では、2012年6月から2023年5月の11年間を第4成長期と位置づけ、「革新性」をテーマにサービスのグローバル展開に取り組む中で、2020年5月期からの4年間(2019年6月~2023年5月)を第4成長期のStage3として中期経営計画を実行してきました。

 当該中期経営計画では①既存事業の継続成長による収益基盤の強化、②世界最高品質の予報精度の追求、③マーケット展開を加速するITサービス基盤の整備、④気候変動に対応した新規発展事業の創出の4点を重点テーマとして推進し、当初の目標通り利益成長を実現させました。成長の具体的な要因は次の通りです。

 

 売上面については、BtoSのモバイル・インターネット気象事業において予報精度No.1ブランドのもとテレビCMをはじめとする広告戦略を実施し、大幅な売上成長を達成しました。BtoBにおいても、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響がある中で売上成長を維持し、またグローバル展開のためのセールス基盤の整備を進めました。費用面については、顧客が求めるビジネススピードに対応できるDevOps体制の整備を推進した結果、開発体制のインハウス化への全社的な転換が進み、外部委託費が減少したことで利益成長を実現しました。

 

 2023年6月からの第5成長期においては、事業の一層のスケールアップに向けた新たな施策に取り組みます。

 新中期経営計画(2023年6月~2026年5月)の3年間における具体的な取り組みとして、より多くの企業をサポートできるSaaS型ビジネスモデルへの転換を目指していきます。同時に、人によるリスクコミュニケーション機能をAI型運営モデルによってコンテンツ化させることで運営の生産性を高めていきます。また、BtoSが持つサポーターのネットワークを生かした広報・マーケティング支援等をBtoBでも活用し、BtoBとBtoSのシナジー創出を狙います。加えて、グローバルビジネス展開を加速させるための海外販売体制の再構築を実施します。また事業拡大の新たな施策として、航海気象事業におけるCO2削減サービスや、気候テック事業における気候変動に対応したサービスの展開など、事業成長のみならず地球環境への貢献も行っていきます。

 

(中期経営計画のKPI進捗)

事業分野

KPI

内容

20.5期末

実績

21.5期末

実績

22.5期末

実績

23.5期末

目標

23.5期末

実績

BtoB事業全体の

TG売上比率

(国内:海外)

61:39

61:39

59:41

50:50

58:42

堅調に成長。グローバル展開のためのセールス基盤の整備が進む

1)既存事業の継続成長による収益基盤の強化

航海気象

(隻数)

4,600

5,300

6,300

9,200

7,050

主力サービスのOSRに加え、座礁や衝突回避を支援するNARをリリース。隻数増加に寄与

航空気象

(顧客数)

60

59

65

85

66

新型コロナの感染拡大でエアライン市況が大きく影響を受けるも、アジアを中心に顧客が増加

環境気象

(顧客数)

8

16

24

38

33

電力需給想定サービスや気象データ提供サービスの拡販で日本の電力事業顧客が増加

モバイル・インターネット気象

(MAU:万人)

3,242

3,849

4,516

5,500

5,880

広告投資による認知度向上、アプリのUI/UXの改善、コンテンツ充実でMAUが増加

2)世界最高品質の予報精度の追究とコンテンツ生産力の飛躍的向上

予報精度

(%)

93.3

91.2

90.7

90.0以上

90.3

気象データの充実、AIを活用した独自解析で90%以上を維持

 

<2.新中期経営計画>

 第5成長期の方針に基づき2023年6月からの3年間について新たに中期経営計画を策定しました。詳細は当社HPの中期経営計画の資料をご覧ください。 https://jp.weathernews.com/irinfo/plan/

 

(3)今後の見通し

 売上面では、モバイル・インターネット気象事業の自社配信コンテンツの充実の継続と、広告事業の更なる拡大による成長を見込んでおります。また、各BtoB事業においても従来サービスの成長に加え、SaaS型ビジネスモデルへのシフトによる成長を計画しています。

 投資面では、モバイル・インターネット気象事業における積極的な広告投資の継続、海外展開の加速に向けた人財投資、SaaS型ビジネスを見据えたデータ・クラウドへの投資を促進します。

 これらの結果により、2024年5月期は、売上高22,500百万円、営業利益3,500百万円、経常利益3,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益2,500百万円と見込んでいます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社グループは気象を事業ドメインとし、また「いざというときに人の役に立ちたい」という経営理念を持つ企業として、気象を軸とした価値創造を通じて人間社会・企業活動・地球環境がともに持続可能な社会を実現することが使命であると考えています。

 また、Transparency(透明性)という当社の企業理念のもと、法律に規定される情報開示にとどまらず、企業理念・文化・経営戦略・ビジネスモデル・将来の価値創造に向けたビジョン等を自ら積極的に開示し、企業価値を巡る根源的な考え方を示すことで、サポーターとの相互信頼を醸成し、中長期的な企業価値の向上の共創を目指します。

 

(マテリアリティの特定)

 当社グループでは持続可能な社会の実現に向けて、社会課題の重要性と自社の事業・経営理念とを照らし合わせて、事業を通じた社会への価値創造である「気候変動の緩和」「強靭な街づくり」、社会への価値創造を推進するための重要な基盤である「技術革新&パートナーシップ」「ダイバーシティ&インクルージョン」という、重点的に取り組むべき4つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。

 

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マテリアリティ

取り組みの概要

気候変動の緩和

・AI等を活用した最新の予測技術とビッグデータ解析を用いて、企業顧客が抱える気象や気候に関する重要課題の1つであるCO2排出量の削減等の環境負荷低減をサポート

・事業利益の最大化と環境負荷低減の両方を可能とする技術・ソリューションの向上とグローバル・パートナーシップを推進し、企業顧客の持続的な事業成長に貢献

・サービス提供を通じて削減したCO2排出量の可視化など、業界・社会全体が持続的に成長できる仕組みづくり

強靭な街づくり

・気象や気候予測を通じて自然災害のリスクを捉え、いち早く交通機関や生活者に伝えることで、人々の生命、財産、企業の経済活動を守り、企業顧客や個人サポーター(ユーザー)とともに自然災害に強い社会づくりに貢献

・航海、航空、道路、鉄道といった交通インフラ市場を担う企業顧客が直面する気象や気候のリスクに関する安全性の強化をサポートし、気象災害に対するレジリエンス向上を目指す

・個人サポーターに対する、局地的かつ突発的な現象に対応した高精度な気象予報の提供や、竜巻の目撃情報や道路の冠水報告などの気象リスクをサポーター同士が情報共有できる場の整備を通じて人々の生活をサポート

・気候変動によって過去の実績を超える気象現象が起こることを踏まえた予測精度向上への継続的な取り組み

技術革新 &

パートナーシップ

・気象のビッグデータや新しい解析技術を活用した戦略的マネジメント及びそれを支える観測インフラの設置

・G20やAPEC等の国際会議での気象情報の有用性・可能性の提案を通じた国際パートナーシップの推進

ダイバーシティ &インクルージョン

・気象を志して世界中から集まった、性別・言語・宗教・文化などが異なる人財のあらゆるダイバーシティの尊重

・人財一人ひとりに対する公正な雇用と成長機会の提供、可能性を最大化できる能力開発、快適に働ける環境の整備

・地域全体の防災や減災意識の向上、及び社会に貢献する次世代の気象人財の輩出を目的とした気象や自然について学ぶ機会の提供

 

(2)TCFDフレームワークに基づく情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)

 当社は2022年6月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について、TCFDフレームワークに基づいた情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を進め、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーの皆様とともにサステナブルな社会の実現に取り組んでいきます。

 

①ガバナンス

 気候変動に関わる基本方針や重要なリスク・機会を特定しマネジメントする組織として、代表取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を2021年5月に設置しています。サステナビリティ委員会ではサステナビリティに関する課題の特定、対応計画の策定を行うとともに、当社グループ全体の取り組みの推進・サポートを行っています。また、その進捗をモニタリングし、その結果を定期的に取締役会に報告することで、取締役会による管理・監督が適切に図られる体制を構築しています。

 

 

 

②戦略

 当社では将来の気候変動に関する「2℃シナリオ」と「4℃シナリオ」の2つのシナリオを用いて、気候関連のリスク・機会の重要性評価に向けた「移行リスク」「物理リスク」「機会」の区分でシナリオ分析と評価を実施しました。機会・リスクそれぞれの詳細や財務影響についての評価結果は以下の通りです。

 

(2℃、4℃シナリオの定性的な想定内容)

シナリオ

想定内容

2℃

気温の上昇が現在程度に留まり、地球温暖化に歯止めがかかるシナリオ。低炭素化・炭素循環によるグリーンエネルギー化で社会影響、異常気象の被災が抑制される

4℃

気温の上昇が著しく、地球温暖化がさらに進むシナリオ。化石燃料主体の従来型発展社会が継続し、異常気象の激甚化が加速する

(事業戦略および財務への影響度の定義)

リスク・機会

影響度

事業戦略への影響

リスク

全社的に大きな被害(事業回復に著しく時間を要する)

全社的な被害(事業回復に数年を要する)

全社レベルに至らない(1年以内に事業回復が可能)

機会

激甚災害への対応策及び気候変動への緩和・適応策への社会のニーズがグローバルもしくは日本国内で非常に大きいと想定され、また気象会社の使命として提供する当社サービスを通じた社会課題への大きな貢献が期待でき、当社の利益に大きな影響を与えると予想されるもの

激甚災害への対応策及び気候変動への緩和・適応策への社会のニーズが日本国内において大きいと想定され、また気象会社の使命として提供する当社サービスを通じた社会課題への中程度の貢献が期待でき、その結果当社の利益に中程度の影響を与えると予想されるもの

激甚災害への対応策及び気候変動への緩和・適応策への社会のニーズが日本国内において一定程度想定され、また気象会社の使命として提供する当社サービスを通じた社会課題への一定の貢献が期待でき、その結果当社の利益にも一定の影響を与えると予想されるもの

 

 

(リスク及び機会)

区分

内容

事業

分野

想定されるリスク・機会の詳細

財務影響

2℃

4℃

移行

リスク

政策・

法規制

炭素税・

炭素価格

全社

炭素税の導入や炭素価格の上昇に伴うオフィス電力調達コストの増加

GHG排出規制への対応

全社

GHG排出量規制強化等による自家発電設備のグリーンエネルギー化に伴う設備更新コストの増加

市場

エネルギー価格

全社

エネルギー価格の上昇による電力調達コストの増加

評判

投資家の評価

全社

気候変動および環境対策への取り組みが、投資家により不十分と判断された際の企業価値・評価の低下

物理

リスク

急性

異常気象の

激甚化

全社

洪水・高潮等による一部資産の浸水被害と一時的な運営・営業等業務の停止

慢性

温暖化による

海面上昇

全社

海面上昇による影響は限定的も、洪水・高潮等が併発した際に運営・営業等業務の一時停止

機会

エネルギー源

環境対策の

取り組みによる

企業価値の上昇

全社

気候変動に伴う自然災害の激甚化に対する当社サービスへの注目や期待が高まることで企業価値が向上

製品/

サービス

グリーン

エネルギーの

需要増

航海

船舶のグリーンエネルギーへのシフトに対応する環境指標を軸とした新たな運航支援サービスの展開

航海

洋上風力発電の需要の高まりに伴う、発電施設の建設や保守等に対する支援サービス需要の増加

環境

電力需給におけるグリーンエネルギーの比率が高まり、電力需給バランス想定サービスの需要が増加

化石燃料の

使用量削減

航海

航空

陸上

化石燃料の使用量削減につながる支援サービスの需要増加、および航海・航空・陸上等各事業間のシナジーを活かした輸送計画支援サービスの新規開発

モバイル・

インターネット

個人及び一般家庭等での節電意識の高まりに対する、個人向け電力需給予報サービスへの需要が増加

市場

環境配慮志向

へのシフト

環境

消費者の環境配慮志向へのシフトに伴い、食品廃棄ロスの極小化サービスへの期待・需要が増加

レジリエンス

気候変動に伴う極端気象による激甚災害増加に対する対応策ニーズの高まり

航海

スポーツ

船舶の到着遅延、スポーツ・イベントの中止など、極端気象による被害への補償サービスの新規開発

陸上

環境

自然災害の激甚化による工場・倉庫・発電所等陸上施設の浸水リスクなどの事業継続リスク計測・対策サービスへの需要増加(TCFDへの対応)

気候テック

自然災害の増加による事業への影響度算出、急性リスク分析サービスへの需要増(2℃シナリオ)

 

産地毎の農作物の成長・収穫への影響分析、収量予測サービスへの需要増加(4℃シナリオ)

気候テック

スポーツ

気温上昇により高まる運動・勤務中の熱中症リスクの保険サービスおよび健康状態のモニタリングサービスの需要増加

モバイル・

インターネット

自然災害の増加・激甚化への危機感の高まりによる個人向け防災・減災情報サービスへの需要増加

 

③リスク管理

 企業を取り巻く環境が複雑かつ不確実性を増す中、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクに対し的確に対処することが、経営戦略や事業目的を遂行していく上では不可欠です。当社グループは、気候変動関連の問題を経営上の重大な影響を及ぼすリスクとして位置付け、サステナビリティ委員会において適切に検討・管理しています。また、その内容を事業の継続性を踏まえてリスクマネジメント・危機管理を所掌する組織であるリスクマネジメント委員会とも共有し、リスク発生前の管理監督とリスク発生直後の対応方針等、リスク管理の基本方針を定めていく仕組みを構築しています。

 

④指標と目標

 当社グループは、環境負荷低減と企業の事業利益最大化の両方を可能とする技術・ソリューションの向上とグローバル・パートナーシップを推進し、業界・社会全体としてサステナブルな社会実現に向けて取り組んでいます。

 この取り組みに関する具体的な指標および目標は次の通りです。

 

2030年

Scope1,2の実質ゼロ (※1)

 

カテゴリ

(※2)

CO2排出量(単位:tCO2)

2021年度

2022年度

 (※5)

Scope1

非常時の自家発電設備

7

8

社用車 (※3)

21

22

Scope2

オフィス

国内

本社

2,357

2,373

その他

28

24

海外

27

27

気象観測器 (※4)

13

8

Scope3

カテゴリ1

購入した製品・サービス

-

18,793

カテゴリ2

資本財

-

391

カテゴリ3

Scope1,2に含まれない

燃料及びエネルギー活動

-

366

カテゴリ4

輸送、配送(上流)

-

98

カテゴリ5

事業から出る廃棄物

-

30

カテゴリ6

出張

-

755

カテゴリ7

雇用者の通勤

-

142

合計

2,454

23,037

(注)カテゴリ8~15は該当なし

 

※1 2030年までのScope3削減目標の設定についても今後検討してまいります。

※2 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼)

   Scope2:他社から供給された電気等の使用に伴う間接排出

   Scope3:Scope1,Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

※3 Scope3算出に伴い、Scope1に社用車の使用燃料を追加しております。

※4 オフィス以外の国内外に設置・自社運用しているため別掲しております。

※5 第三者保証について

   当社は、CO2排出量実績の信頼性向上のため、2022年度算出分の直接的なCO2排出量(Scope1)と

   エネルギー起源の間接的なCO2排出量(Scope2)およびその他の間接的なCO2排出量(Scope3)について、

   一般社団法人日本能率協会による第三者保証を受ける予定です。

 

 

 (3)人的資本に関する戦略並びに指標

(人財戦略に関する基本方針「Dream Driven Company」)

 当社グループでは、「船乗りの命を守りたい。地球の未来も守りたい。」という夢に共感した人財が世界中から集結しています。気象・気候と同様に常に変化する社会において、一人ひとりが持てる力を最大限に発揮することが企業の成長に繋がると考え、以下の点を人財戦略の重点施策としています。

 

①多様な人財のグローバルな活躍の促進

 当社グループの使命である「人間社会・企業活動・地球環境がともに持続可能な社会の実現」に向けて、今まで以上に気象・気候を軸とした価値創造を通じてグローバルビジネスを加速していきます。その上でキーとなる、多様な人財の確保や、社員の市場価値底上げ及び企業価値向上に繋がる評価・報酬制度の展開、言語の壁や立場を超えたコミュニケーションの促進に取り組んでいます。

 

(人財の確保)

 世界各地における、気象・気候リスクをはじめとしたあらゆる自然環境に起因する課題を自分事として捉え、当社グループの夢に共感し、自らの能力を惜しみなく発揮する、多様なバックグラウンドを持つ人財の採用に取り組んでいます。今後は特に事業成長を見込むアジア地域で、将来の現地マネジメントを担う人財の採用を、新卒・経験者採用ともに強化していきます。また、気象ビッグデータの解析・予測技術や最新のIT技術等を基盤として価値創造をよりグローバルに加速させるために、エンジニア採用を強化しており、当年度の新卒採用では、エンジニアの割合は79%となっています。経験者採用では、多様な専門性や志向を持つ人財の採用を進めており、引き続き50%を維持していきます。います。

 

(評価報酬制度)

 従来の、イニシアティブと有言(コミット)に基づく実力評価の考え方をベースに、職務要件の明確化やKGI・KPIに基づく適切な評価を行うことで、プロフェッショナリズムの底上げ及び、個人と会社がともに市場価値を高めることを目指します。当年度は、各グローバル拠点地域で新たな報酬テーブルの検討と導入に着手しました。また今後は、グループ全体として、世界各国の法令や労働市場、ビジネス慣習等を考慮し、グローバルに通用する新たな評価報酬制度の策定を進めていきます。

 

(ボーダーレスなコミュニケーション)

 多様な人財同士の対話により得られる多角的な視点は、価値創造を支える重要なものと考えています。互いに言語の壁を超えて議論を交わすためのサポートとして、全社員が参加する社内会議では、同時通訳や資料翻訳にて日英対応を行っているほか、日本国内の社員の英語コミュニケーション力の向上に積極的に取り組んでいます。また、当社グループにはチームや職種・職格に関係なくフラットにコミュニケーションをする風土があり、多様性のあるメンバーが領域を超えて対話することにより、共創的なイノベーションや新たな価値創造へと繋がっています。

 

 

②個人と組織がともに成長する仕組みづくり

 社員一人ひとりの成長を促進することにより、変化し続ける社会に柔軟に対応できる強い組織を目指します。経営戦略やビジネスモデルの変革に必要な基礎能力・専門能力の開発とともに、リスキリング機会の拡充や、社員が自律的にキャリアをデザインするための支援を行っています。なお、具体的な目標については定めておらず検討中です。

 

(能力開発)

 当社グループでは、人財が自ら"育つ"土壌づくりに力を入れています。新入社員研修では、全部署を回り自社事業とその社会的意義の理解を深め、入社4年目までは年1回の集合研修にて自身の仕事観やキャリア観に向き合うきっかけを提供しています。その他にもリーダー研修の実施等、階層別研修を通して各成長フェーズに必要な支援を行っています。また全社研修として、個人情報保護や情報セキュリティ、ハラスメント等に関する研修を定期的かつ継続的に実施し、リテラシー向上・維持を図っています。各種研修では、対面とオンラインでのハイブリッド形式に加えて録画によるeラーニング手法も取り入れ、より多くの社員が参加しやすい体制を整えています。

 

(リスキリング)

 地球規模での環境変化に伴い当社グループへ期待される提供価値の高度化に応じていくため、英語・IT・地球環境リテラシーの3つのテーマを柱としたリスキリングに積極的に投資をしています。当年度は、英語コミュニケーション力の向上を図るプログラムをスタートしました。次年度からは、DX推進に必要なITスキルを底上げする取り組みとして、エンジニアトレーニングをスタートします。プログラミングや情報処理に触れたことのない人を対象とし、業務効率化や生産性向上、価値創造の一つの手段としてITスキルを活用できるよう支援していきます。

 

(キャリア構築支援)

 高度な専門性志向やマネジメント志向に基づくキャリアパスの実現に向けた制度の構築や、次世代を担う中核人財の活躍を促進する施策を進めています。社内公募制度によるジョブローテーションの実施や、仕事・ライフプラン全般をテーマとした1-on-1の推進、本業にとどまらず社外の場でも自身の能力を発揮しスキルアップできる機会を提供する副業制度の導入を通じ、社員のキャリア自律や新たな知見の獲得を支援しています。

 

 

③社員の働きがいや健康のサポート

 社員が安心して能力を発揮するためには、相互理解と誇りをもって働ける環境が必要と考え、一人ひとりがライフステージやライフスタイルに合わせて柔軟に活躍できるための取り組みを行っています。また、社員が心身ともに健康に働くことは、会社の活力になるとともに、生産性向上やイノベーションの創出、さらには企業価値向上に繋がると考え、社員の健康管理に積極的に取り組むと同時に社員自身の健康意識の向上を促しています。

 

(働きやすさの向上)

 コロナ禍を期にリモートワークを全社へ展開して以降、オフィスワークとリモートワークのハイブリッド形式を働き方の新たなスタンダードとしています。オフィス環境については、出社した社員が快適に働くことができるよう、オンライン会議やコミュニケーション活性化のためのスペース拡充等の最適化を進めています。その他に、社員がリフレッシュや休息を取りやすい仕組みとして、勤続年数に応じ年間最大25日の年次有給休暇を付与しているほか、時間単位有給や有給傷病休暇など、安心して休養を取れる環境を提供しています。

 

(ダイバーシティへの取り組み)

 当年度は、女性の活躍を後押しする取り組みとして「女性活躍推進サロン」を設置しました。その後、女性のみならず多様な人財の活躍を視野に入れ、「ダイバーシティ委員会」へ発展しました。社員と会社が定期的かつ公式に意見交換を行う場として、育児や介護、外国籍社員の活躍等のテーマについて議論し、組織的な課題発見やよりよい職場づくりを進めています。中核人財に占める女性の割合は、2026年までに20%、2030年までにはグローバルにおける女性活躍状況に比例する30%程度を目指しています。また、2015年より運営中の企業内保育園「WNI RAIN KIDS HOUSE」の活用や、育児休業に関する全社的な理解促進により、当年度における女性の育児休業取得率及び復職率は100%、男性の育児休業取得率は70%近くに達しており今後も更なる増加を目指します。そのほか、宗教の自由への理解・配慮として、勤務中にも安心してお祈りができるよう「Pray Room」を設けており、日々活用されています。

 

(健康経営の推進)

 当社グループでは、社員が健康的に仕事に取り組める環境づくりに積極的に投資しています。自己管理を支える「Pit in Spot(衛生委員会)」では、心身の健康・働き方について相談できる場づくりや、運動や文化活動を通じてリフレッシュするコミュニティ活動の促進を行っています。また当年度は、産業医との連携により、メンタル不調の早期発見や予防を目的とした「WNI保健室(カウンセリング室)」を設置し、社員がセルフケアに関心を持ち心のバランスを保つためのサポートに注力しています。健康診断においては、費用の会社負担範囲を広く設定し、社員自身の健康に対する意識向上を図っています。これらの取り組みを継続した結果、昨年度より健康経営優良法人として認定されています。

 

(参考)人的資本に関する指標

区分

指標

2022年5月期

2023年5月期

連結会社

外国籍の人数割合

28.6%

27.6%

採用者における中途採用者の割合

(中途採用者/新卒含む、採用者総数)

55.4%

58.0%

従業員数の男女比率(女性比率)

32.9%

32.6%

提出会社

男女別勤続年数

男性:11.5年

女性: 8.1年

男性:11.7年

女性: 8.9年

能力開発研修(リスキリング)時間

(受講者延数)

2,727時間

(69名)

全社研修(コンプライアンス等)時間

(受講者延数)

3,455時間

(3,561名)

階層別研修(リーダーシップ等)時間

(受講者延数)

2,003時間

(1,142名)

新入社員研修時間

(新入社員数)

6,528時間

(34名)

女性労働者の育児休業取得率及び復職率

育児休業取得率:100.0%

復職率:100.0%

育児休業取得率:100.0%

復職率:100.0%

 

3【事業等のリスク】

 当社グループは、世界中のあらゆる企業、個人の生命、財産に対するリスクを軽減し、機会を増大させることを実現する気象・環境サービスを目指し、全世界に向けてサービスを継続して提供していることから、事業継続性の担保は当社グループだけでなく社会経済においても重要であると認識しております。また、当社グループの事業において、世界各国の経済情勢、政治的又は社会的な要因等により、当社グループの事業や業績が影響を受け、その結果当社グループの株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループではリスクを「財務状況及び事業の発展性の観点で、事業継続に重大な影響を及ぼす事象」と定義し、事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し、リスクの発生頻度や経営への影響を低減していくことを目的に、リスクマネジメントを統括・推進する執行役員を置くとともに、リスクマネジメント委員会を設置する等、リスクに対する体制を整備しております。また、全社リスクを横断的に見て、事業活動への影響額及び発生頻度に鑑み、重要なリスクを特定しています。
 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

 (1)気候変動リスク

 当社グループでは、ESGの1つである「Environment(環境)」を重要な経営課題の1つと認識しております。昨今、世界各地で発生する大雨・台風・豪雪・乾燥等の極端気象は深刻化しており、気象・気候が与える社会への影響は年々大きくなってきております。当社グループではこのような気象状況の変化に対し、気象・環境サービスを通じて世界中の企業・人々の生活に対する気象・環境リスクを軽減することや、気象・気候データやビジネスデータ等のビッグデータの解析をすることで環境負荷が少ないソリューションを提示する環境貢献に対する事業を継続してきました。

 さらに、ESGへの取り組みとして、「いざというときに人の役に立ちたい」という理念を持つ当社は、人間社会・企業活動のみならず、地球環境がともに持続可能となる社会の実現を私たちのミッションとし、事業を通じた社会への価値創造として「気候変動の緩和」と「強靭な街づくり」を、次に社会への価値創造を推進するための重要な基盤として「技術革新&パートナーシップ」、「ダイバーシティ&インクルージョン」という4つのマテリアリティを制定し、ウェブサイトにて当社取り組みに関する情報発信を行っております。また、気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識し、2022年6月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について、TCFDのフレームワークに基づいた情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を進め、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーの皆様とともにサステナブルな社会の実現に取り組んでいきます。

 しかし、今後当社グループが深刻化する気候変動リスクの変化に適切に対応できなかった場合には、顧客離れや投資先としての信頼性が得られないなどの事態が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績等が影響を受ける可能性があります。

 

 (2)自然災害

 当社グループは、気象・環境サービスを世界各国の物流事業や公共交通機関、放送事業等に提供しており、社会的なインフラに対して密接したサービスとなっております。そのため、有事の際もサービスを継続して提供できるような体制の整備を進めてはいるものの、巨大地震や津波、竜巻、台風、寒波等の自然災害や戦争・テロ、紛争、その他の要因による社会混乱により、本社や主要な事業会社(拠点)が被災し、経営体制の本社機能もしくは各拠点の運営機能が麻痺することによるオペレーション上の事業継続リスクがあります。

 上記の通り、災害や事故等で被害を受けた際に、重要な機能を可能な限り中断せず、また中断した場合にもできるだけ早急に復旧できるよう、当社グループ全体で事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定し、バックアップセンターや遠隔での運営が行えるような体制の構築やインフラ強化の対策等を整備すると共に、日頃から災害を想定した訓練を実施しています。しかしながら、これらの対策を講じたとしても、全てのリスクを完全に排除できるものではなく、当社グループの財政状態及び経営成績等が重大な影響を受ける可能性があります。

 

 (3)情報セキュリティ

 当社グループは、事業上の重要情報及び事業の過程で入手した個人情報や取引先等の秘密情報を保有しており、「個人情報保護法」、「EU一般データ保護規則(GDPR)」、その他の法令に基づき、個人情報保護に関する義務を課されています。当該情報の盗難・紛失などを通じた外部漏洩・第三者による不正流用の防止はもちろん、不適切な利用、改ざん等の防止のため、委託先の管理を含め、情報の取り扱いに関する管理の強化を行い、法規制強化への対応等も都度実施しています。

 また、個人情報の管理を事業運営上の重要事項と捉え、保護管理体制の確立に努めており、当社において個人情報管理規程等を制定し、個人情報の取り扱いに関する業務フローを定めて厳格に管理するとともに、当社グループの役職員を対象として社内教育を徹底する等、関連法令並びに当社に適用される関連ガイドラインの遵守に努め、個人情報の保護に積極的に取り組んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大時に推進したリモートワーク時には、規程・ガイドラインを整備する等新しい働き方における情報管理の方針を策定しました。リモートワーク推進により、更に重要性が高まっている情報管理への社内意識向上を促す施策を積極的に整備しています。

 しかし、不測の事態によってこれらの情報の漏洩やインシデントが発生する可能性は完全には排除できず、また情報システムへのサイバー攻撃などによって、重要データの破壊、改ざん、流出、システム停止等を引き起こす可能性もあります。したがって、これらの事態が起こった場合には、業務効率の著しい低下や、事業継続、あるいはビジネスの伸長に困難を来すことが想定され、適切な対応を行うための相当なコストの負担、損害賠償による損失、社会的信用やブランドイメージの低下によって、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

 (4)新型コロナウイルス感染症の再拡大

 新型コロナウイルス感染症は、依然として再拡大する可能性もあることから、今後も社会経済の状況により当社グループの事業にも影響を及ぼす可能性があると考えております。

 当社グループでは、従業員の在宅勤務(リモートワーク)を選択可能とすること等により、当社グループ従業員やその家族ならびに当社グループに勤務する関係者の安全と感染拡大の防止を最優先としつつ、民間気象情報会社として、防災や天候の急変時のお客様へのサービス提供の継続を行うとともに、感染拡大に伴う新たな社会課題への取り組みを進めています。
 上記の対応をしておりますが、特定の事業において従業員の病欠者が増加しサービス提供が滞ることや、感染拡大地域によってはサービスの提供に影響が出る可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があると考えております。一方で、当社グループの事業が気象・気候を通じた多岐にわたるサービスであることから、特定の事業における経済低迷は他事業で補填できる可能性はあり、今後感染の再拡大の状況や各国、各事業の政治経済の動向を注視しながら、当社グループ全体の事業展開の計画・実施・評価を進めていく予定です。
 また、引き続きリモートワーク推進を可能とする等、社内外への感染拡大防止と従業員の安全確保に努め、ニューノーマル時代に対応した働き方に向けて業務のデジタル化を推進しています。

 

 (5)社会・制度の大規模な変化

 当社グループは多岐にわたる業界・サポーターに対し世界中で気象・気候を軸とした様々なサービスを提供しており、各事業により事業環境が大きく異なることから、国内外の広範な社会環境・商慣習のもと事業活動を展開しております。また、それに伴い、税や各種規制といった法制度、各国の政治・経済動向、気候変動等、様々な要因の影響下にあります。これらの要因は当社グループが関与し得ない理由によって大きく変化する可能性があり、このような変化が生じた場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があることから、重要なリスクと認識しています。
 また、当社グループの事業は気象・環境サービスの提供を主体に行っていることから、各国の気象業務法の公的規制を受けております。そのため、今後予測できない大幅な規制変更が行われ、その変化に当社グループが対応できない場合、当社グループの事業に重大な影響が及ぶ可能性があります。

 

 (6)コンプライアンス(法令遵守)

 当社グループの事業の根幹である気象・環境サービスは、各国の気象業務法及び関連法令の法的規制を受けています。今後、例えば気象業務法で定める認定基準等を満たすことができず、認定の取り消しを受けた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に重大な影響を与える可能性があります。
 また、当社グループは、事業範囲および活動領域が拡大していることから、日常業務は自ずと分権的に運営されており、従業員が全ての法律や社内規定を遵守している確証を得ることは困難になりつつあります。例えば、航海気象事業は世界各国の海運会社等を対象に各船舶の航海ごとに従量課金型のサービスを提供する場合もあり、今後サービス提供先が飛躍的に増加することなどにより、サービス提供の把握方法によっては、実在性を確認できない取引が発生するなどのリスクがあります。
 そのため、当社グループではこのような法令違反が発生しないようグループ全体の業務執行に関する方針・行動基準となる「天気街憲章」、社会的責任を明確にした「Weathernewsグループ 行動規範」を定めウェブサイトで公表し、積極的なSDGs貢献を推進する社会インフラ企業のスタッフとしての自覚を促し、法令と社会規範遵守についての教育・啓蒙・監査活動を実施しております。また、リスクマネジメント委員会にて総合的にリスク評価・対応策を検討しております。内部統制システムの整備に関しては基本方針を定め、社内にて内部統制の運用徹底・改善の取り組みを実施しております。詳細は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご確認ください。
 しかしながら、コンプライアンス上のリスクや、当社グループ従業員の全ての不正行為は完全に排除することはできない場合もあり、これらが法令等に抵触した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの財政状態及び経営成績等が影響を受ける可能性があります。

 

 (7)グローバル展開

 当社グループは、グローバル展開を推進しており、世界各国に拠点を設けてサービス展開を行っております。これらの海外拠点が存在する各国での予期せぬ公的規制の変更、テロ、戦争、その他予期し得ない政治・経済上の変動により、当社グループの経営成績、財務状況に影響が及ぶ可能性があります。具体的には、以下に掲げるいくつかのリスクが内在しています。

 ・政治的又は経済的要因

 ・事業・投資許可、租税、為替管制、国際資産の没収、独占禁止、通商制限など公的規制の影響

 ・他社と合弁・提携する事業の動向により生じる影響

 ・戦争、暴動、テロ、伝染病、ストライキ、マルウェア、その他の要因による社会的混乱

 ・地震、津波、台風等の自然災害の影響

 ・各国規制・制裁などの把握不全

 これらリスクに対して、現地の大使館・商工会議所などから情報収集を行い、各拠点の外部コンサルタントと連携し、適切な対応がとれるようにしております。

 

 (8)人権問題について

 当社グループは、グローバル展開を推進しており、世界各国に拠点を設けて、多様かつグローバルな環境において事業活動を行っております。そのため、自らの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権が尊重されなければならないことを理解し、多様な価値観や異文化を認め合うべく、「Weathernewsグループ 行動規範」において、「人権の尊重」「多様性の尊重」に関する事項を明記し、積極的なSDGs貢献を推進する社会インフラ企業のスタッフとしての自覚を促し、社会規範遵守についての教育・啓発活動を実施しております。

 しかしながら、事業活動において人権問題が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下により、事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 (9)サービス品質

 当社グループは、気象・環境サービスを世界各国の物流事業や公共交通機関、放送事業等に提供しており、社会的なインフラに対して密接したサービスとなっています。そのため、社内外で障害が発生する等、システムやサービスが停止した場合、顧客や個人のサービス利用者に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、データにおいても、予報としての性格上不可知の要素を含んでいるため、BtoB事業においてサービスを提供するにあたっては、リスクコミュニケーションによる顧客との連携に努めるとともに、各契約において当社グループのリスクを限定的に制限しております。しかしながら、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクの蓋然性は高くはないものの、発生する可能性は完全には排除できず、社会的な影響度を踏まえると当社グループの財政状態のみならず、企業ブランドの信頼性を著しく損なう可能性が考えられます。
 当社グループでは、安定性のあるサービス提供のため事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定し障害発生時には即時に対応策をとれるよう体制を整備するとともに、気象・環境サービスの品質向上のため、予報精度向上やシステム品質向上に日々努めています。

 

 (10)知的財産権

 当社グループは、気象が「水、エネルギー、交通、通信」に続く第5の公共資産=公共インフラであると考えており、また技術発展のための社会的責任として、できる限り情報を公開していく「情報民主主義」というポリシーを持っております。一方で、当社グループが目指す目標を達成するため、競合や第三者から当社グループの知的財産権を守ることや、当社グループ従業員の権利を守ることも重要と考えており、適切なバランスを考慮した対応を取る必要があります。
 当社グループは、トールゲート型ビジネスを主としておりますが、近年同様なビジネスの増加や、基礎技術開発の際に独自開発した技術が他社の知的財産権を侵害しているとして、損害賠償請求を受ける可能性等、リスクが顕在化する蓋然性は高くはありませんが皆無とは言えません。この場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があり、重要なリスクとなることを認識しています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

 売上面では、モバイル・インターネット気象事業において、大雨や台風、寒波による降雪などに伴う気象災害の発生により、人々の天気予報や防災への注目が高まりました。このような中で、積極的な広告投資を通じた認知度向上、予報精度の改善、独自コンテンツの充実を行うことでアプリ利用者数が増加し、サブスクリプションサービス売上及び広告収入が好調に推移しました。航海気象事業においては、港湾混雑の解消が進んだものの輸送需要が減退し、サービスを提供する船舶の航海数が伸び悩みました。その一方で、サービスを提供する隻数を増加させたことや、為替によるプラス影響があり売上は増加しました。航空気象事業においては、エアラインの国際線における出入国制限の緩和などでインバウンド需要が高まり、国内線においても行動制限の解除やその後の全国旅行支援の影響もあり、市況の回復が継続しました。また、国内ヘリコプター市場での動態管理システムの拡販が進み売上が増加しました。その結果、当期の連結売上高は21,114百万円(前期比7.4%増)となりました。

 費用面では、ソフトウエア開発のインハウス化・アジャイル化に伴う開発体制の効率化によるソフトウエア開発費の最適化を継続しました。一方で、ソフトウエア開発能力の継続的強化及び新規事業に対する人財投資、並びにテレビCM及びネット広告などの積極的な広告投資を継続しました。また、開発・運用環境のクラウド化の進展に伴い通信費が増加しました。

 その結果、営業利益は3,256百万円(前期比12.1%増)、経常利益は3,284百万円(前期比7.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,398百万円(前期比11.2%増)となりました。

 

 

(事業別の状況)

<航海気象>

 海運市場では景気回復による一時的な輸送需要増が落ち着いたことに伴いサービスを提供している航海数が減少したものの、Carbon Intensity Indicator (CII) 格付け制度の施行に伴い、環境運航対応サービスの売上が増加しました。また、為替のプラス影響もあり航海気象事業全体では増収となりました。

 

<航空気象>

 エアライン市場では国際線における出入国制限の緩和などでインバウンド需要が高まり、国内線においても行動制限の緩和を背景に着実な市況回復が継続しました。当社においては国内ヘリコプター市場において官公庁を中心に動態管理システムを拡販し、増収となりました。

 

<陸上気象>

 国内の鉄道及び高速道路市場では全国旅行支援などの影響で人流が復調し緩やかな回復が続きましたが、当社においては一時的な売上の減少の影響により減収となりました。

 

<環境気象>

 国内の電力会社における広域送電連携や再生エネルギー送電計画、風力発電事業者による事業性検討などを背景に、風力発電量予測などのニーズが増大しました。当社では再生エネルギーの発電量予測の精度や生産性向上により欧州を中心に増収となりました。

 

<スポーツ気象>

 前期に大型スポーツ競技大会への気象情報提供に関する委託業務があった反動により、減収となりました。

 

<気候テック>

 自治体及び製造業向けに気候変動リスク分析サービスの拡販を進めました。

 

<モバイル・インターネット気象>

 テレビCMやネット広告などの積極的な広告投資による認知度の向上によってアプリ利用者数が増加しました。また、日本国内において気象災害など気象トピックへの注目が高まる中、台風情報や寒波による大雪情報などの自社配信コンテンツを充実させるとともに、アプリのUI/UXの継続的な改善などを通じてユーザーのアプリ満足度や活用度を向上させる各種取り組みを行った結果、サブスクリプションサービス売上及び広告収入が増加しました。

 

<放送気象>

 放送局向けシステムの更新サイクルの影響に伴う売上の減少、及び放送局の構造的変化によるコスト見直しの影響を受け、減収となりました。

 

 

事業区分

前連結会計年度

(自 2021年6月1日

至 2022年5月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

(百万円)

増減率

(%)

SRS

トールゲート

合計

SRS

トールゲート

合計

合計

 

航海気象

3

5,198

5,202

1

5,502

5,503

5.8

 

航空気象

55

878

934

80

1,154

1,235

32.2

 

陸上気象

243

3,019

3,262

175

3,027

3,202

△1.8

 

環境気象

114

780

894

138

906

1,044

16.8

 

その他 BtoB

16

48

65

16

34

50

△22.8

BtoB事業 計

433

9,925

10,359

411

10,625

11,037

6.5

 

モバイル・インターネット気象

15

6,806

6,821

61

7,768

7,829

14.8

 

放送気象

561

1,908

2,470

377

1,869

2,247

△9.0

BtoS事業 計

576

8,714

9,291

439

9,637

10,077

8.5

合 計

1,010

18,640

19,650

851

20,263

21,114

7.4

 

 

(参考)地域別売上高

地域区分

前連結会計年度

(自 2021年6月1日

至 2022年5月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

(百万円)

増減率

(%)

SRS

トールゲート

合計

SRS

トールゲート

合計

合計

 

日本

401

5,873

6,275

403

6,212

6,616

5.4

 

アジア

-

1,927

1,927

-

2,213

2,213

14.8

 

欧州

32

1,833

1,865

8

1,857

1,865

△0.0

 

米州

-

290

290

-

341

341

17.6

BtoB事業 計

433

9,925

10,359

411

10,625

11,037

6.5

 

日本

576

8,041

8,618

439

8,931

9,371

8.7

 

アジア

-

672

672

-

705

705

5.0

 

欧州

-

1

1

-

-

-

-

 

米州

-

-

-

-

0

0

-

BtoS事業 計

576

8,714

9,291

439

9,637

10,077

8.5

合 計

1,010

18,640

19,650

851

20,263

21,114

7.4

(注)トールゲート:高速道路の料金所に例えた当社独自の事業形態。サービス提供の対価として継続的に発生する売上

SRS(Stage Requirement Settings):将来のトールゲート売上につながる一時的な調査やシステム販売

BtoS事業:個人向け事業(Sはサポーターの意)を指す

 

② キャッシュ・フローの状況

 営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等794百万円を支払う一方で、税金等調整前当期純利益3,288百万円を計上したことなどにより2,384百万円の収入(前期3,573百万円の収入)となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形固定資産の取得による支払などにより254百万円の支出(前期395百万円の支出)となりました。

 また、財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払などにより1,100百万円の支出(前期1,098百万円の支出)となりました。

 現金及び現金同等物に係る換算差額66百万円を加算し、現金及び現金同等物の当期末残高は12,519百万円(前期末11,422百万円)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績及び受注実績

当社グループの主な事業は、気象情報を中心とした総合的なコンテンツ提供サービスです。加えて、継続的にサービスを行うトールゲート型ビジネスを主に展開しているため、受注生産方式を採用していません。このため、生産実績、受注実績を数量、金額で示すことはしておりません。

 

b. 販売実績

当連結会計年度における事業別売上高は下記のとおりであります。

事業区分

前連結会計年度

(自 2021年6月1日

至 2022年5月31日)

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

増減率

 

百万円

百万円

BtoB事業

10,359

11,037

6.5

BtoS事業

9,291

10,077

8.5

合計

19,650

21,114

7.4

 

(注)当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2021年6月1日

至 2022年5月31日)

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社NTTドコモ

2,363

12.0

2,393

11.3

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

<1>経営成績の分析

当期の経営成績については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」をご参照下さい。

 

<2>財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金などの増加により、前連結会計年度末に比べて1,852百万円増加し、20,979百万円となりました。負債は、資産除去債務などの増加により、前連結会計年度末に比べて295百万円増加し、2,579百万円となりました。

 純資産は、前期末及び当中間期末に配当1,101百万円を行う一方で、親会社株主に帰属する当期純利益2,398百万円を計上したことなどにより、前連結会計年度末に比べて1,556百万円増加し、18,400百万円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の自己資本比率は87.3%となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

<1>キャッシュ・フローの状況

 キャッシュ・フローの状況は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。

 

<2>所要資金の調達方針

 当社グループの所要資金の調達は、当社グループにおける財務安定性及び資本コストの適正性を勘案して行うことを方針としております。また、グループにおける資金需要を当社にて一元把握し、調達することとしております。基本的に、多額な設備投資以外の資金需要は「営業活動によるキャッシュ・フロー」により確保することとし、子会社(グローバルビジネスモデルにおけるSSB)にて資金の不足が生じる場合には、当社からの貸付けによって補うことを原則としております。

 なお、グローバルビジネスモデルにおけるSSBは、本来的に戦略性に重点をおいた販売拠点展開として投資しているため、資金を固定的に用いるのではなく、その販売拠点の戦略性の変化に対してダイナミックに変化させることができるものとなっております。

 

<3>資金調達の方法

 運転資金につきましては、「営業活動によるキャッシュ・フロー」を原資として、必要な場合は金融機関からの短期的な借入を行い、設備投資・投融資資金につきましては、金融機関からの長期借入金・社債及び証券市場を通じての増資等により調達することとしております。また、より効率的な資金調達を行うため、取引金融機関とコミットメントライン契約及び当座貸越契約を締結しております。

 

<4>資金の流動性について

 当社グループは、現在及び将来の事業活動のために適切な水準の流動性の維持及び機動的・効率的な資金の確保を財務活動の方針としております。当連結会計年度は、現預金及びコミットメントラインを十分に確保し、資金の流動性を維持しております。当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は12,519百万円となっております。また、流動比率は755.3%となっております。

 

③ 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用等、開示に影響を与える判断と見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。

 当社グループが採用している重要な会計方針(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載)のうち、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼす事項であると考えております。

 

<1>貸倒引当金の計上

 当社グループは、債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。将来、顧客の財政状態の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。

 

<2>固定資産の減損処理

 当社グループは、事業用資産について、内部管理上、キャッシュ・フローを生み出す最小単位を基準として資産のグルーピングを行っております。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、その減少額を減損損失として計上しております。減損兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討してまいりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、追加の減損損失の計上が必要となる可能性があります。

 

<3>繰延税金資産の回収可能性

 当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、課税所得がその見積り額を下回る場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が計上される可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、民間の気象情報会社として、気象が水・エネルギー・交通・通信に続く第5の公共資産=公共インフラであると考え、世界中のあらゆる企業、個人の生命、財産に対するリスクを軽減し、機会を増大させることを実現する気象サービスを目指しています。研究開発活動においては、革新的な気象サービスを実現する技術及びインフラの構築に注力しています。また、技術的な側面にとどまらず、事業の立ち上げを視野に入れ、市場創造を実現する体制の構築にも取り組んでいます。

 

(1)革新的サービスを実現する技術開発及びインフラ構築

 航海気象事業では、AIと衛星の観測データから得た高精度な海氷情報の活用に向けた共同実証を開始しました。本実証では、海氷との衝突による海難事故や、海氷の回避のための航路変更による到着遅延等のリスクに対して、衛星の観測データをAIで分析して海氷情報をマッピングし現地の実際の状況や既存のサービスと比較することで、海氷情報の精度や有用性を検証します。また、造船工学手法を活用した船舶性能の推定精度向上やビッグデータとAI的評価を活用した最適航路抽出ロジック構築など、運航最適化を支援する航路計画策定システムの開発も継続しています。

 陸上気象事業では、自動車会社と共同で気象とコネクティッドカーから得られる車両データを活用の実証実験を継続しています。道路冠水検知やワイパーデータを活用など、ドライバーの安全性向上に向けた取り組みを行っています。

 航空気象事業では、ドローンを活用した医療物資輸送を1カ月間運用する実証を他社と共同で実施しました。本実証は、東京都内におけるドローン物流サービスの早期の社会実装を目指すもので、飛行実証やオペレーションの確認を行い、2024年5月期以降のレベル4での飛行実証の基礎を確立することを目的としています。

 観測インフラについては、ゲリラ豪雨や大雪などの突発的な気象をリアルタイムで把握することが可能である高頻度観測小型気象レーダー「EAGLEレーダー」について本格運用の準備を進め、国内外での設置・検証を継続しています。さらに、雨・雪・雲(霧)を自動判別する世界初の多周波気象レーダーの開発も継続して行っており、低高度の雲の内部の観測を可能にすることでドローンや空飛ぶクルマなど次世代空モビリティの発展をサポートすることを目的としています。

 

(2)革新的サービスを実現する予測モデル及びAI技術開発

 気象災害による被害を減らすべく、超局地的な予測モデルや短時間予報解析モデル等、より高解像度・高頻度の予測モデルを開発し、継続的に予報精度の改善を行っています。また、AIを利用することで、既存の予測モデルで上手く表現されなかった地形効果による雲の発達や衰弱・速度変化も反映されるように改善が進んでいます。

 AIを活用した予測モデルや予報技術の具体的な成果として、電力需要予測に特化した独自のAIモデルを用いた電力需給予報サービス、5〜30分単位の発電量予測が可能なAIモデルによる風力発電量予測サービス、積雪・凍結によるスリップや視界不良、強風といった天気による運転リスクを確認できるドライブリスク予報サービスをリリースしています。

 また、継続的な予報精度改善の取り組みを行った結果、第三者機関が行った天気予報の精度に関する調査において、日本国内の主要な天気予報5サービスの中で、予報精度(適中率)No.1を獲得しています。

 

 なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は559百万円であります。