第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営環境

 当社は法人向け及び個人向けにサービスを展開しており、法人向けは陸・海・空のそれぞれの領域における交通・インフラ企業をはじめとした様々な企業に、個人向けはアプリ・各メディアのプラットフォームを通じて一般のお客様に気象サービスを提供しています。当社の売上をけん引するモバイル・インターネット気象事業は主に日本国内で展開しており、売上は自社アプリ「ウェザーニュース」のサブスクリプションサービス及び広告事業で構成されています。当連結会計年度は、日本国内において、気候変動に伴う極端気象の激甚化、気象災害の頻発などを背景に、気象情報へのニーズが一層の高まりを見せました。また、法人向け売上で構成比率の最も大きい航海気象事業はグローバルに展開しています。国や地域をまたぐ大型船舶の長期航海のサポートが主なサービスとなっており、グローバルの海運市場における荷動きや、その背景にある地政学的リスクが当社の業績に影響を与えます。当連結会計年度は、欧州地域における国際情勢の不安定化を受けて荷動きが鈍化しました。

 

(2)対処すべき課題

1.中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは「船乗りの命を守りたい。地球の未来も守りたい。」という夢に向かって、サポーターとともに最多・最速・最新の気象コンテンツサービスにより気象・環境に関する社会的リスクに対応する「気象コンテンツ・メーカー」になることを基本コンセプトとしており、気象コンテンツ市場のフロントランナーとして、独創的に新たな市場を創造しながら「サポーター価値創造」と企業価値の最大化を目指します。

 また、このコンセプトの実現のため、「世界最大のデータベース・業界No.1の予報精度・あらゆる市場におけるコミュニティー」をコアコンピタンスと考え、Full Service “Weather & Climate” Companyとなることが当社のミッションであると認識しています。

 

2.中期経営計画

 当社グループは売上高、営業利益率、ROEを主要な経営指標としています。成長市場である気象コンテンツ市場においては、継続的な売上(ストック売上)が発生するサービスの拡販を実現することによって売上高成長を企業成長に結びつけることができると考えています。この認識に基づき2023年6月からの3年間について中期経営計画を策定しました。詳細は当社HPの中期経営計画の資料をご覧ください。

https://jp.weathernews.com/irinfo/plan/

 

(3)今後の見通し

 売上面では、モバイル・インターネット気象事業において、自社配信コンテンツの充実によるサブスクリプションサービス売上及び広告事業の更なる拡大を通じた広告収入それぞれの増加による継続成長を見込んでいます。また、航海気象事業においては、欧州地域におけるルーティングサービスの拡販による増収を計画しており、その他、陸上気象や環境気象、気候テックなどのBtoB事業においても、SaaS型ビジネスモデルへのシフトによる成長を計画しています。

 投資面では、海外の販売体制強化を中心とした人財投資、SaaS型ビジネスの本格展開を見据えたデータ・クラウドへの投資、グローバルの気象データ取得への投資や、モバイル・インターネット気象事業における継続的な広告投資を計画しています。

 これらの結果により、2025年5月期は、売上高23,500百万円、営業利益3,800百万円、経常利益3,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益2,700百万円と見込んでいます。なお為替レートは1米ドル150円を前提としています。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社グループは気象・気候を事業ドメインとし、また「いざというときに人の役に立ちたい」という経営理念を持つ企業として、気象を軸とした価値創造を通じて人間社会・企業活動・地球環境がともに持続可能な社会を実現することが使命であると考えています。

 また、Transparency(透明性)という当社の企業理念のもと、法律に規定される情報開示にとどまらず、企業理念・文化・経営戦略・ビジネスモデル・将来の価値創造に向けたビジョン等を自ら積極的に開示し、企業価値を巡る根源的な考え方を示すことで、サポーターとの相互信頼を醸成し、中長期的な企業価値の向上の共創を目指します。

 

(マテリアリティの特定)

 当社グループでは持続可能な社会の実現に向けて、社会課題の重要性と自社の事業・経営理念とを照らし合わせて、事業を通じた社会への価値創造である「気候変動の緩和」「強靭な街づくり」、社会への価値創造を推進するための重要な基盤である「技術革新&パートナーシップ」「ダイバーシティ&インクルージョン」という、重点的に取り組むべき4つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。

 

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マテリアリティ

取り組みの概要

気候変動の緩和

・AI等を活用した最新の予測技術とビッグデータ解析を用いて、法人顧客が抱える気象や気候に関する重要課題の1つであるCO2排出量の削減等の環境負荷低減をサポート

・事業利益の最大化と環境負荷低減の両方を可能とする技術・ソリューションの向上とグローバル・パートナーシップを推進し、法人顧客の持続的な事業成長に貢献

・サービス提供を通じて削減したCO2排出量の可視化など、業界・社会全体が持続的に成長できる仕組みづくり

強靭な街づくり

・気象や気候予測を通じて自然災害のリスクを捉え、いち早く交通機関や生活者に伝えることで、人々の生命、財産、企業の経済活動を守り、法人顧客や個人サポーター(ユーザー)とともに自然災害に強い社会づくりに貢献

・航海、航空、道路、鉄道といった交通インフラを担う法人顧客が直面する気象や気候のリスクに対する安全性の強化をサポートし、気象災害に対するレジリエンス向上を目指す

・個人サポーターに対する、局地的かつ突発的な現象に対応した高精度な気象予報の提供や、竜巻の目撃情報や道路の冠水報告などの気象リスクをサポーター同士が情報共有できる場の整備を通じて人々の生活をサポート

・気候変動によって前例の無い気象現象が起こることを踏まえた予測精度向上への継続的な取り組み

技術革新 &

パートナーシップ

・気象のビッグデータや新しい解析技術を活用した戦略的マネジメント及びそれを支える観測インフラの設置

・G20やAPEC等の国際会議での気象情報の有用性・可能性の提案を通じた国際パートナーシップの推進

ダイバーシティ &インクルージョン

・気象を志して世界中から集まった、性別・言語・宗教・文化などが異なる人財のあらゆるダイバーシティの尊重

・人財一人ひとりに対する公正な雇用と成長機会の提供、可能性を最大化できる能力開発、快適に働ける環境の整備

・地域全体の防災や減災意識の向上、及び社会に貢献する次世代の気象人財の輩出を目的とした気象や自然について学ぶ機会の提供

 

(2)TCFDフレームワークに基づく情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)

 当社は2022年6月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について、TCFDフレームワークに基づいた情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を進め、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーの皆様とともにサステナブルな社会の実現に取り組んでいきます。

 

①ガバナンス

 気候変動に関わる基本方針や重要なリスク・機会を特定しマネジメントする組織として、最高経営責任者を委員長とするサステナビリティ委員会を2021年5月に設置しています。サステナビリティ委員会ではサステナビリティに関する課題の特定、対応計画の策定を行うとともに、当社グループ全体の取り組みの推進・サポートを行っています。また、その進捗をモニタリングし、その結果を定期的に取締役会に報告することで、取締役会による管理・監督が適切に図られる体制を構築しています。

 

 

 

②戦略

 当社グループでは将来の気候変動に関する「2℃シナリオ」と「4℃シナリオ」の2つのシナリオを用いて、気候関連のリスク・機会の重要性評価に向けた「移行リスク」「物理リスク」「機会」の区分でシナリオ分析と評価を実施しました。リスク・機会それぞれの詳細や財務影響についての評価結果は以下の通りです。

 

(2℃、4℃シナリオの定性的な想定内容)

シナリオ

想定内容

2℃

気温の上昇が現在程度に留まり、地球温暖化に歯止めがかかるシナリオ。低炭素化・炭素循環によるグリーンエネルギー化で社会影響、異常気象の被災の度合いが抑制される

4℃

気温の上昇が著しく、地球温暖化がさらに進むシナリオ。化石燃料主体での社会の発展が継続し、異常気象の激甚化が加速する

 

(事業戦略および財務への影響度の定義)

リスク・機会

影響度

事業戦略への影響

影響額(リスク)

売上規模(機会)

リスク

全社的に大きな被害(事業回復に著しく時間を要する)

2,000百万円以上

全社的な被害(事業回復に数年を要する)

1,000百万円以上

全社レベルに至らない(1年以内に事業回復が可能)

1,000百万円未満

機会

激甚災害への対応策及び気候変動への緩和・適応策への社会のニーズがグローバルもしくは日本国内で非常に大きいと想定され、また気象会社の使命として提供する当社サービスを通じた社会課題への大きな貢献が期待でき、当社の利益に大きな影響を与えると予想されるもの

2,000百万円以上

激甚災害への対応策及び気候変動への緩和・適応策への社会のニーズが日本国内において大きいと想定され、また気象会社の使命として提供する当社サービスを通じた社会課題への中程度の貢献が期待でき、その結果当社の利益に中程度の影響を与えると予想されるもの

1,000百万円以上

激甚災害への対応策及び気候変動への緩和・適応策への社会のニーズが日本国内において一定程度想定され、また気象会社の使命として提供する当社サービスを通じた社会課題への一定の貢献が期待でき、その結果当社の利益にも一定の影響を与えると予想されるもの

1,000百万円未満

 

 

(リスク及び機会)

区分

内容

事業

分野

想定されるリスク・機会の詳細

財務影響

2℃

4℃

移行

リスク

政策・

法規制

炭素税・

炭素価格

全社

炭素税の導入や炭素価格の上昇に伴うオフィス電力調達コストの増加

GHG排出規制への対応

全社

GHG排出量規制強化等による自家発電設備のグリーンエネルギー化に伴う設備更新コストの増加

市場

エネルギー価格

全社

エネルギー価格の上昇による電力調達コストの増加

評判

投資家の評価

全社

気候変動および環境対策への取り組みが、投資家により不十分と判断された際の企業価値・評価の低下

物理

リスク

急性

異常気象の

激甚化

全社

洪水・高潮等による一部資産の浸水被害と一時的な運営・営業等業務の停止

慢性

温暖化による

海面上昇

全社

海面上昇による影響は限定的も、洪水・高潮等が併発した際に運営・営業等業務の一時停止

機会

エネルギー源

環境対策の

取り組みによる

企業価値の上昇

全社

気候変動に伴う自然災害の激甚化に対する当社サービスへの注目や期待が高まることで企業価値が向上

製品/

サービス

グリーン

エネルギーの

需要増

Sea

船舶のグリーンエネルギーへのシフトに対応する環境指標を軸とした新たな運航支援サービスの展開

Sea

洋上風力発電の需要の高まりに伴う、発電施設の建設や保守等に対する支援サービス需要の増加

Land

電力需給におけるグリーンエネルギーの比率が高まり、電力需給バランス想定サービスの需要が増加

化石燃料の

使用量削減

Sea

Sky

Land

化石燃料の使用量削減につながる支援サービスの需要増加、および航海・航空・陸上等各事業間のシナジーを生かした輸送計画支援サービスの新規開発

Internet

個人及び一般家庭等での節電意識の高まりに対する、個人向け電力需給予報サービスへの需要が増加

市場

環境配慮志向

へのシフト

Land

消費者の環境配慮志向へのシフトに伴い、食品廃棄ロスの極小化サービスへの期待・需要が増加

レジリエンス

気候変動に伴う極端気象による激甚災害増加に対する対応策ニーズの高まり

Sea

Land

船舶の到着遅延、スポーツ・イベントの中止など、極端気象による被害への補償サービスの新規開発

Land

 

自然災害の激甚化による工場・倉庫・発電所等陸上施設の浸水リスクなどの事業継続リスク計測・対策サービスへの需要増加(TCFDへの対応)

Land

自然災害の増加による事業への影響度算出、急性リスク分析サービスへの需要増(2℃シナリオ)

産地毎の農作物の成長・収穫への影響分析、収量予測サービスへの需要増加(4℃シナリオ)

Land

気温上昇により高まる運動・勤務中の熱中症リスクの保険サービスおよび健康状態のモニタリングサービスの需要増加

Internet

自然災害の増加・激甚化への危機感の高まりによる個人向け防災・減災情報サービスへの需要増加

 

 

③リスク管理

 企業を取り巻く環境が複雑かつ不確実性を増す中、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクに対し的確に対処することが、経営戦略や事業目的を遂行していく上では不可欠です。当社グループは、気候変動関連の問題を経営上の重大な影響を及ぼすリスクとして位置付け、サステナビリティ委員会において適切に検討・管理しています。また、その内容を事業の継続性を踏まえてリスクマネジメント・危機管理を所掌する組織であるリスクマネジメント委員会とも共有し、リスク発生前の管理監督とリスク発生直後の対応方針等、リスク管理の基本方針を定めていく仕組みを構築しています。

 

④指標と目標

 当社グループは、環境負荷低減と企業の事業利益最大化の両方を可能とする技術・ソリューションの向上とグローバル・パートナーシップを推進し、業界・社会全体としてサステナブルな社会実現に向けて取り組んでいます。

 この取り組みに関する具体的な指標および目標は次の通りです。

 

2030年

Scope1,2の実質ゼロ (※1)

 

カテゴリ

(※2)

CO2排出量(単位:tCO2)

2021年度

2022年度

 (※4)

2023年度

(※4)

Scope1

非常時の自家発電設備

8

7

8

社用車

21

23

23

Scope2

オフィス

国内

本社

3,075

3,325

347

その他

33

28

29

海外

27

28

66

気象観測器 (※3)

14

8

6

Scope3

カテゴリ1

購入した製品・サービス

-

20,797

13,290

カテゴリ2

資本財

-

392

98

カテゴリ3

Scope1,2に含まれない

燃料及びエネルギー活動

-

762

16

カテゴリ4

輸送、配送(上流)

-

111

128

カテゴリ5

事業から出る廃棄物

-

25

41

カテゴリ6

出張

-

1,050

1,318

カテゴリ7

雇用者の通勤

-

127

119

合計

3,178

26,683

15,489

(注)カテゴリ8~15は該当なし

 

※1 2030年までのScope3削減目標の設定についても今後検討してまいります。

※2 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼)

   Scope2:他社から供給された電気等の使用に伴う間接排出

   Scope3:Scope1,Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

※3 オフィス以外の国内外に設置・自社運用しているため別掲しております。

※4 第三者保証について

   当社は、CO2排出量実績の信頼性向上のため、2022年度算出分の直接的なCO2排出量(Scope1)とエネルギー起源の間接的なCO2排出量(Scope2)およびその他の間接的なCO2排出量(Scope3)について、一般社団法人日本能率協会による第三者保証を受けました。2023年度算出分についても第三者保証を受ける予定です。

 

 

 (3)人的資本に関する戦略並びに指標

 (人材戦略に関する基本方針「Dream Driven Company」)

 当社グループには、「船乗りの命を守りたい。地球の未来も守りたい。」に共感し、様々な夢(Dream)を持つ多くの社員がいます。社員一人ひとりが会社で実現したい夢は、会社が成長していく原動力であり、一人ひとりが大胆にチャレンジできる環境づくりを大切にしています。そして、人も組織も、大気と同じように常に循環し、変化し続けることが自然な状態、という考えを軸に、人事戦略「weather HR」を策定しています。

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①the weather is Changing / 一人ひとりが変化・成長しよう

 当社では、先陣を切って海へ飛び込む「1匹目のペンギン」のような精神を大切にしています。日々、変わりゆく気象や気候、ビジネス環境に対して、失敗を恐れず立ち向かうために、経営戦略やビジネスモデルの変革に必要な基礎能力・専門能力の開発を支援するとともに、客観的な評価制度の構築やリスキリングの拡充など、社員が自律的にキャリアをデザインする支援をしています。

 

(人材循環・活性化)

 当社では、個人と組織の成長を活性化する制度を積極的に取り入れています。当期導入した360度レビュー制度では、管理監督者のマネジメント力、リーダーシップ、専門性について、上司やチームのメンバーなど複数の視点からレビュー・フィードバックし、管理監督者自身の成長とチーム全体の変化を促進しています。また、社内公募制度は、社員が自らのキャリアプランにイニシアティブを持ち、公募された社内業務やポジションに挑戦することを奨励しています。他にも組織の持続的成長と世代交代を目的として、一定の年齢に達した社員においては、早期定年や役職定年を選択できる制度を導入しています。

 

(評価制度運用)

 社員一人ひとりの成長を支援するため、評価制度の透明性と客観性を重視しています。当期は役割と責任を明確にするJob Descriptionを、まずは管理監督者に導入する準備を進めました。Job Descriptionの全社への公開により、未来の管理監督者がキャリアプランを考える一助とします。また、全社事業計画(MMCL: My and My Colleague Leader)を踏まえた各部門の業務計画、および販売計画に基づく体制、四半期実績を各部門間で横断的に確認し、マトリックス評価(Matrix Management Evaluation)により評価の透明化を図っています。併せて、新卒で採用した社員については、入社後3年の間は重点的に活躍状況を確認し、成長を後押しする体制を整えています。

 

(研修・リスキリング拡充)

 当社では、社員のスキル向上とキャリア形成を支援し、会社の競争力を強化するための研修へ積極的に投資しています。階層別研修では、各職階に応じた専門的な知識とリーダーシップ能力を養成し、全社研修では、行動規範をはじめコンプライアンスやリスク管理、メンタルヘルスに関する研修を行うことで、法令を遵守しリスクを適切に防止・管理する体制を整えています。新入社員研修では、企業文化やビジネスの基礎知識から実務まで幅広くカバーし、現場での早期活躍の後押しを図っています。併せて、社員が自ら学びを進める、英語やITリテラシーのリスキリング制度にも近年注力しています。当期は、全社研修の内容を階層別研修・個別リスキリングへと最適化しています。

 

②the weather is Dynamic / 可能性を最大化しよう

 当社は、社員の個性や能力のレンジを広く捉え、一人ひとりの活躍の可能性を最大限に引き出すことを目指しています。社員自身の変化・成長ステージに合わせて、アウトプットを最大化できるよう、働き方を柔軟にアップデートするとともに、業務により専念できる環境づくりや活力の源となる心身の健康サポートに投資しています。

 

(働き方アップデート)

 個々がより力を発揮できる体制づくりの一環として、職種の定義を見直し、ビジネス環境の変化・組織の役割変化に率先して適応するGeneral職と、契約変更を経て役割を変更するExpert職の2職種としました。また、リモートワーク規程について、条件に応じて遠地リモートやフルリモートを可能にし、社員が継続的にアウトプットを出せるようアップデートしました。休暇制度においては、能登半島地震災害を受けボランティア休暇をトライアル的にスタートし、社員のフィードバックからボランティア貢献のニーズを確認するとともに、「いざというときに人の役に立ちたい」の思いを体現する機会の拡充として、正式に制度化しました。

 

(働く環境整備への投資)

 当期は、人事に関する社内問合せ対応においてAIチャットボットを導入しました。夜間・休日にサービスを運営する社員も24時間365日質問できる環境づくりや、社員が事業により専念できる事務手続きの効率化を実現しています。また、リアルとリモートの両方における働きやすさ向上のため、全社会議の録画共有やチャットツールでの情報共有により、最新情報をキャッチアップしやすい体制を構築するとともに、本社オフィスに少人数のミーティングルームや個室ブースを増設し、集中しやすい環境整備等に投資しています。

 

(心身の健康サポート)

 当社は、創造性の源は一流の個人の力の和であるという考えのもと、その土台として、社員の心身の健康を最も重要な要素の一つと捉えています。「Pit in Spot(衛生委員会)」では、チームを超えて相談できる仕組みを作り、自己管理のサポートや社内コミュニティ活動を促進しています。また、2名の産業医により心身の両面からサポートする体制を整えています。特に「WNI保健室(カウンセリング室)」では、仕事やプライベートの悩みに幅広く対応し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことに繋げており、復職支援やリーダー層からのマネジメント相談にも応じています。ストレスチェックや健康診断の結果は、産業医と連携して経年推移を把握・分析し、個人やチームへフィードバックしています。

 

 

③the weather is Diverse / 違いを強みに、輝こう

 当社には、気象を志し「いざというときに人の役に立ちたい」という思いを持った人材が世界中から集まっています。この同じ志の下に集まった、性別・言語・宗教・文化などが異なる多様性に富んだ人材が、最大限に能力を発揮し活躍できる会社であることが、自然環境がもたらすグローバルな社会課題の解決をより推進できると考えています。そのため、公正・公平な雇用と成長機会を提供し、多様な視点により、イノベーションが生まれる土壌をつくることに注力しています。

 

(Global人事制度アップデート)

 当期は、海外拠点における競争力を確保するため、報酬の最適化など海外拠点における人事制度を抜本的に見直しました。当社事業および各国の労働市場に適合した制度を策定し、特に、当社グループの重点拠点である欧州においては、迅速な意思決定を可能とする仕組みを構築しました。また、それに伴い、本社ではガバナンス強化のため、本社と海外拠点のハブとなる機能を再構築するなど、グループ全体の一貫性と透明性を維持しつつ、地域特性に応じた柔軟な運用を実現しています。

 

(ダイバーシティ推進)

 当社では、性別・国籍等を問わず多様な人材の活躍をサポートするために「ダイバーシティ委員会」を設置しています。女性や外国籍社員の活躍、育児や介護などをテーマとした6つの分科会があり、特に産休・育休は、休業前の準備や休業後の復帰に対する支援を充実させるための施策の検討や、情報収集を容易にするポータルサイトを設置しています。加えて、育児休業に関する相談窓口による案内をはじめ休業しやすい雰囲気の醸成により、男性の育児休業取得者は50%を超えています。また、外国籍社員に対して、全社会議や研修での英語同時通訳や、勤務中に礼拝ができるPray Roomの設置などを通して、言語や宗教の自由に配慮しています。

 

(Community Meritの向上)

 当社では、共創的なイノベーションに繋がるコミュニケーションを重視しています。チームや職種・職格に関係なくフラットにコミュニケーションをする風土に加え、チーム単位でのインフォーマルなイベントの開催を促進する制度や、全社員がリアルやオンラインで自由に参加できる場であるHydeparkを運営しています。Hydeparkは社員が自発的に企画し、新しいアイディアや制度のナレッジシェア、外部の講師から専門的な知見を得る機会として、毎週、開催されています。また、年に2回開催するAWARD Celemonyでは、売上への貢献や社会貢献に対する表彰に加え、社員同士が日頃の感謝を伝える機会を設けています。

 

 

(参考)人的資本に関する指標

区分

指標

2022年5月期

2023年5月期

2024年5月期

目標

連結

会社

外国籍の人数割合

28.6%

27.6%

27.5%

目処として30%

採用者における中途採用者の割合

(中途採用者/新卒含む採用者総数)

55.4%

58.0%

57.7%

50%を水準

として継続

但し、採用方針による変動あり

従業員数の男女比率(女性比率)

32.9%

32.6%

32.9%

-

注1

管理職に占める女性労働者の割合

12.4%

11.0%

13.2%

2026年迄に15

2030年迄に20%

提出

会社

男女別勤続年数

男性:11.5年

女性: 8.1年

男性:11.7年

女性: 8.9年

男性:12.2年

女性: 9.3年

-

注1

能力開発研修(リスキリング)時間

(受講者延数)

-

2,727時間

(69名)

5,169時間

(176名)

目処として

6,000時間

(200名)

全社研修(コンプライアンス等)時間

(受講者延数)

-

3,455時間

(3,561名)

1,665時間

(1,925名)

-

注2

階層別研修)リーダーシップ等)時間

(受講者延数)

-

2,003時間

(1,142名)

2,617時間

(526名)

-

注2

新入社員研修時間

(新入社員数)

-

6,528時間

(34名)

6,405時間

(56名)

維持

女性労働者の育児休業取得率

及び復職率

取得率:100.0%

復職率:100.0%

取得率:100.0%

復職率:100.0%

取得率:100.0%

復職率:100.0%

維持

(注1)実力主義で性別は影響ないため、目標は定めておりません。

(注2)必要に応じて実施のため、目標を定めておりません。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループは、世界中のあらゆる企業、個人の生命、財産に対するリスクを軽減し、機会を増大させることを実現する気象サービスを目指し、全世界に向けてサービスを継続して提供していることから、事業継続性の担保は当社グループだけでなく社会経済においても重要であると認識しております。また、当社グループの事業において、世界各国の経済情勢、政治的又は社会的な要因等により、当社グループの事業や業績が影響を受け、その結果当社グループの株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループではリスクを「財務状況及び事業の発展性の観点で、事業継続に重大な影響を及ぼす事象」と定義し、事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し、リスクの発生頻度や経営への影響を低減していくことを目的に、リスクマネジメントを統括・推進する執行役員を置くとともに、リスクマネジメント委員会を設置する等、リスクに対する体制を整備しております。また、事業活動への影響額及び発生頻度に鑑み、全社横断で重要なリスクを特定しています。
 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

 (1)気候変動リスク

 当社グループでは、ESGの1つである「Environment(環境)」を重要な経営課題の1つと認識しております。昨今、世界各地で発生する大雨・台風・豪雪・乾燥等の極端気象は深刻化しており、気象・気候が与える社会への影響は年々大きくなってきております。当社グループではこのような気象状況の変化に対し、気象・環境サービスを通じて世界中の企業・人々の生活に対する気象・環境リスクを軽減することや、気象・気候データやビジネスデータ等のビッグデータの解析をすることで環境負荷が少ないソリューションを提示する環境貢献に対する事業を継続してきました。

 さらに、ESGへの取り組みとして、「いざというときに人の役に立ちたい」という理念を持つ当社は、人間社会・企業活動のみならず、地球環境がともに持続可能となる社会の実現を私たちのミッションとし、事業を通じた社会への価値創造として「気候変動の緩和」と「強靭な街づくり」を、次に社会への価値創造を推進するための重要な基盤として「技術革新&パートナーシップ」、「ダイバーシティ&インクルージョン」という4つのマテリアリティを制定し、ウェブサイトにて当社取り組みに関する情報発信を行っております。また、気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識し、2022年6月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について、TCFDのフレームワークに基づいた情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を進め、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーの皆様とともにサステナブルな社会の実現に取り組んでいきます。

 しかしながら、今後当社グループが深刻化する気候変動リスクの変化に適切に対応できなかった場合には、顧客離れや投資先としての信頼が得られないなどの事態が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績等が影響を受ける可能性があります。

 

 (2)自然災害

 当社グループは、気象・環境サービスを世界各国の物流事業や公共交通機関、放送事業等に提供しており、社会的なインフラに対して密接したサービスとなっております。そのため、有事の際もサービスを継続して提供できるような体制の整備を進めてはいるものの、巨大地震や津波、竜巻、台風、寒波等の自然災害や戦争・テロ、紛争、その他の要因による社会混乱により、本社や主要な事業会社(拠点)が被災し、経営体制の本社機能もしくは各拠点の運営機能が麻痺することによるオペレーション上の事業継続リスクがあります。

 上記の通り、災害や事故等で被害を受けた際に、重要な機能を可能な限り中断せず、また中断した場合にも可能な限り早急に復旧できるよう、当社グループ全体で事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定し、バックアップセンターや遠隔での運営が行えるような体制の構築やインフラ強化の対策等を整備すると共に、日頃から災害を想定した訓練を実施しています。しかしながら、これらの対策を講じたとしても、全てのリスクを完全に排除できるものではなく、当社グループの財政状態及び経営成績等が重大な影響を受ける可能性があります。

 

 

 (3)情報セキュリティ

 当社グループは、事業上の重要情報及び事業の過程で入手した個人情報や取引先等の秘密情報を保有しており、「個人情報保護法」、「EU一般データ保護規則(GDPR)」、その他の法令に基づき、個人情報保護に関する義務を課されています。当該情報の盗難・紛失などを通じた外部漏洩・第三者による不正流用の防止はもちろん、不適切な利用、改ざん等の防止のため、委託先の管理を含め、情報の取り扱いに関する管理の強化を行い、法規制強化への対応等も都度実施しています。

 また、個人情報の管理を事業運営上の重要事項と捉え、保護管理体制の確立に努めており、当社において個人情報管理規程等を制定し、個人情報の取り扱いに関する業務フローを定めて厳格に管理するとともに、当社グループの役職員を対象として社内教育を徹底する等、関連法令並びに当社に適用される関連ガイドラインの遵守に努め、個人情報の保護に積極的に取り組んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大時に推進したリモートワーク時には、規程・ガイドラインを整備する等新しい働き方における情報管理の方針を策定しました。リモートワーク推進により、更に重要性が高まっている情報管理への社内意識向上を促す施策を積極的に整備しています。

 しかしながら、不測の事態によってこれらの情報の漏洩やインシデントが発生する可能性は完全には排除できず、また情報システムへのサイバー攻撃などによって、重要データの破壊、改ざん、流出、システム停止等を引き起こす可能性もあります。したがって、これらの事態が起こった場合には、業務効率の著しい低下や、事業継続、あるいはビジネスの伸長に困難を来すことが想定され、適切な対応を行うための相当なコストの負担、損害賠償による損失、社会的信用やブランドイメージの低下によって、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

 (4)社会・制度の大規模な変化

 当社グループは多岐にわたる業界・サポーターに対し世界中で気象・気候を軸とした様々なサービスを提供しており、各事業により事業環境が大きく異なることから、国内外の広範な社会環境・商慣習のもと事業活動を展開しております。また、それに伴い、税や各種規制といった法制度、各国の政治・経済動向、気候変動等、様々な要因の影響下にあります。これらの要因は当社グループが関与し得ない理由によって大きく変化する可能性があり、このような変化が生じた場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があることから、重要なリスクと認識しています。
 また、当社グループの事業は気象・環境サービスの提供を主体に行っていることから、各国の気象業務法の公的規制を受けております。そのため、今後予測できない大幅な規制変更が行われ、その変化に当社グループが対応できない場合、当社グループの事業に重大な影響が及ぶ可能性があります。

 

 (5)コンプライアンス(法令遵守)

 当社グループの事業の根幹である気象・環境サービスは、各国の気象業務法及び関連法令の法的規制を受けています。今後、例えば気象業務法で定める認定基準等を満たすことができず、認定の取り消しを受けた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に重大な影響を与える可能性があります。
 また、当社グループは、事業範囲および活動領域が拡大していることから、日常業務は自ずと分権的に運営されており、従業員が全ての法律や社内規定を遵守している確証を得ることは困難になりつつあります。例えば、航海気象事業は世界各国の海運会社等を対象に各船舶の航海ごとに従量課金型のサービスを提供する場合もあり、今後サービス提供先が飛躍的に増加することなどにより、サービス提供の把握方法によっては、実在性を確認できない取引が発生するなどのリスクがあります。
 そのため、当社グループではこのような法令違反が発生しないようグループ全体の業務執行に関する方針・行動基準となる「天気街憲章」、社会的責任を明確にした「Weathernewsグループ 行動規範」を定めウェブサイトで公表し、積極的なSDGs貢献を推進する社会インフラ企業のスタッフとしての自覚を促し、法令と社会規範遵守についての教育・啓蒙・監査活動を実施しております。また、リスクマネジメント委員会にて総合的にリスク評価・対応策を検討しております。内部統制システムの整備に関しては基本方針を定め、社内にて内部統制の運用徹底・改善の取り組みを実施しております。詳細は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご確認ください。
 しかしながら、コンプライアンス上のリスクや、当社グループ従業員の全ての不正行為は完全に排除することはできない場合もあり、これらが法令等に抵触した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの財政状態及び経営成績等が影響を受ける可能性があります。

 

 (6)グローバル展開

 当社グループは、グローバル展開を推進しており、世界各国に拠点を設けてサービス展開を行っております。これらの海外拠点が存在する各国での予期せぬ公的規制の変更、テロ、戦争、その他予期し得ない政治・経済上の変動により、当社グループの経営成績、財務状況に影響が及ぶ可能性があります。具体的には、以下に掲げるいくつかのリスクが内在しています。

 ・政治的又は経済的要因

 ・事業・投資許可、租税、為替管制、国際資産の没収、独占禁止、通商制限など公的規制の影響

 ・他社と合弁・提携する事業の動向により生じる影響

 ・戦争、暴動、テロ、伝染病、ストライキ、マルウェア、その他の要因による社会的混乱

 ・地震、津波、台風等の自然災害の影響

 ・各国規制・制裁などの把握不全

 これらリスクに対して、現地の大使館・商工会議所などから情報収集を行い、各拠点の外部コンサルタントと連携し、適切な対応がとれるようにしております。

 

 (7)人権問題

 当社グループは、グローバル展開を推進しており、世界各国に拠点を設けて、多様かつグローバルな環境において事業活動を行っております。そのため、自らの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権が尊重されなければならないことを理解し、多様な価値観や異文化を認め合い、尊重することを企業活動の基盤とし、その責務を果たす指針として、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」などを支持する「人権基本方針」を2024年7月に定めました。また、人権デュー・ディリジェンスによって、人権に対する負の影響を引き起こしたり助長するリスクを早期に検知し、適切な手続きを通じて予防、是正及び救済に取り組んでおります。

 しかしながら、事業活動において人権問題が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下により、事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 (8)サービス品質

 当社グループは、気象・環境サービスを世界各国の物流事業や公共交通機関、放送事業等に提供しており、社会的なインフラに対して密接したサービスとなっています。そのため、社内外で障害が発生する等、システムやサービスが停止した場合、顧客や個人のサービス利用者に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、データにおいても、予報としての性格上不可知の要素を含んでいるため、BtoB事業においてサービスを提供するにあたっては、リスクコミュニケーションによる顧客との連携に努めるとともに、各契約において当社グループのリスクを限定的に制限しております。しかしながら、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクの蓋然性は高くはないものの、発生する可能性は完全には排除できず、社会的な影響度を踏まえると当社グループの財政状態のみならず、社会的信用やブランドイメージの信頼性を著しく損なう可能性が考えられます。
 当社グループでは、安定性のあるサービス提供のため事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定し障害発生時には即時に対応策をとれるよう体制を整備するとともに、気象・環境サービスの品質向上のため、予報精度向上やシステム品質向上に日々努めています。

 

 (9)知的財産権

 当社グループは、気象が「水、エネルギー、交通、通信」に続く第5の公共資産=公共インフラであると考えており、また技術発展のための社会的責任として、可能な限り情報を公開していく「情報民主主義」というポリシーを持っております。一方で、当社グループが目指す目標を達成するため、競合や第三者から当社グループの知的財産権を守ることや、当社グループ従業員の権利を守ることも重要と考えており、適切なバランスを考慮した対応を取る必要があります。
 当社グループは、ストック型ビジネスを主としておりますが、近年同様なビジネスの増加や、基礎技術開発の際に独自開発した技術が他社の知的財産権を侵害しているとして、損害賠償請求を受ける可能性等、リスクが顕在化する蓋然性は高くはありませんが皆無とは言えません。この場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があり、重要なリスクとなることを認識しています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

 売上面では、モバイル・インターネット気象事業において、広告投資を通じた認知度向上によるアプリ利用者数の増加や広告市況の改善等を背景に、サブスクリプションサービス売上及び広告収入が増加しました。一方で、サブスクリプションサービス売上におけるキャリア向け売上が減少したことで、当初想定より緩やかな売上成長となりました。なお、当社の天気予報サービス「ウェザーニュース」が2023年の1年間における予報精度(適中率)No.1を獲得しました。2022年に引き続き2年連続の獲得となります。航海気象事業においては船舶需要の低迷や紅海の物流混乱などで荷動きが軟調に推移したものの、一部顧客のサービス対象航路の拡張や環境運航対応サービスの新規受注、また為替の影響もあり増収となりました。陸上気象事業においては、高速道路市場における顧客数の増加により増収となりました。その結果、当期の連結売上高は22,242百万円(前期比5.3%増)となりました。

 費用面では、広告投資については足許の天候状況に鑑みた柔軟な投資を実行しており、当期においては想定よりも安定した天候を背景に前期比で減少しました。人件費についてはSaaS型プロダクト開発をはじめとするIT開発人財及び海外事業人財の強化を前年度に引き続き実施したことで増加しました。通信費については開発・運用環境のクラウド化の継続実施に伴い増加しました。

 また、一時的な費用として外注費等にかかる費用が発生しました。加えて、中期経営計画に基づき気象データの取得戦略の見直しを行い、その一環として自社開発の気象観測レーダーの生産台数を当初計画から減少させること及び既存のレーダーの利用計画を縮小することを決定し、それぞれ処分費用と評価損などを計上しました。

 その結果、営業利益は3,270百万円(前期比0.4%増)、経常利益は3,341百万円(前期比1.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,437百万円(前期比1.7%増)となりました。

 

 

(事業別の状況)

<航海気象>

 海運市場では、欧州の地政学的リスクの高まりを背景として荷動きが鈍化し、アジアにおいても本格的な回復に至らず全体的に荷動きは軟調に推移しました。当社においては環境運航対応サービスであるOSR-eなどの新規受注などがあった一方で一部顧客の失注によりサービス提供数は横ばいとなりました。なお、為替の影響もあり全体では増収となりました。

 

<航空気象>

 エアライン市場では、旺盛な訪日需要や国内のレジャー需要を中心に国内・国際線ともに旅客数の回復が継続しました。当社においても国内外のエアライン市場向けの売上を中心に増収となりました。

 

<陸上気象>

 極端気象発生時の拠点防災や輸送影響など物流における安全確保の観点で気象情報のニーズが高まりました。当社の高速道路市場においては、地域特性に基づいた気象情報の提供により顧客数が増加し増収となりました。

 

<環境気象>

 日本と欧州の再生可能エネルギー市場の拡大によるエネルギー気象全般の市場性の高まりが継続しました。当社においては、日本においてSaaS型プロダクトのサービスである「WxTech data」「ウェザーニュース for business」の販売が堅調に推移し増収となりました。

 

<その他BtoB>

 気候テック事業において、国内企業を中心に気候変動リスク分析サービス「Climate Impact」の採用社数が伸び、増収となりました。

 

<モバイル・インターネット気象>

 テレビCM等の広告投資を継続したこと及び日本国内において気象トピックへの注目が高まったことでアプリ利用者数が増加しました。サブスクリプションサービス売上のうちキャリア向け売上が減少しましたが、広告市況の緩やかな改善やアプリ利用者数の増加を背景に広告収入が増加した結果、全体では増収となりました。

 

<放送気象>

 防災報道において気象情報の重要性がますます高まる中で、サービス運営の効率化や新サービス構築の取り組みを継続しましたが、売上は減収となりました。

 

 

事業領域

事業区分

前連結会計年度

(自2022年6月1日

  至2023年5月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自2023年6月1日

  至2024年5月31日)

(百万円)

増減率

(%)

 

Sea

航海気象

BtoB

5,503

5,813

5.6

Sky

航空気象

1,235

1,261

2.1

Land

陸上気象

3,202

3,495

9.1

環境気象

1,044

1,184

13.4

その他 BtoB

50

123

142.8

放送気象

BtoS

2,247

2,159

△3.9

Internet

モバイル・インターネット気象

7,829

8,206

4.8

合 計

21,114

22,242

5.3

(BtoB事業 計)

11,037

11,877

7.6

(BtoS事業 計)

10,077

10,365

2.9

(参考)地域別売上高

地域区分

前連結会計年度

(自 2022年6月1日

  至 2023年5月31日)

(百万円)

当連結会計年度

(自 2023年6月1日

  至 2024年5月31日)

(百万円)

増減率

(%)

 

日本

6,616

7,044

6.5

アジア

2,213

2,451

10.7

欧州

1,865

1,984

6.4

米州

341

397

16.4

BtoB事業 計

11,037

11,877

7.6

 

日本

9,371

9,743

4.0

アジア

705

621

△11.9

欧州

-

-

-

米州

0

-

△100.0

BtoS事業 計

10,077

10,365

2.9

合 計

21,114

22,242

5.3

(注)1.前連結会計年度まで、サービス提供の対価として継続的に発生する売上であるトールゲート売上(ストック売上)と一時的な調査やシステム販売であるSRS売上(Stage Requirement Settings)(その他)の2つの区分で売上を開示しておりましたが、全体の売上に占めるSRS売上の割合が減少してきたため、売上の区分を廃止しております。

2.BtoS事業:個人向け事業(Sはサポーターの意)を指します。

② キャッシュ・フローの状況

 営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等902百万円を支払う一方で、税金等調整前当期純利益3,337百万円を計上したことなどにより3,385百万円の収入(前期2,384百万円の収入)となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形固定資産の取得による支払などにより408百万円の支出(前期254百万円の支出)となりました。

 また、財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払などにより1,313百万円の支出(前期1,100百万円の支出)となりました。

 現金及び現金同等物に係る換算差額127百万円を加算し、現金及び現金同等物の当期末残高は14,311百万円(前期末12,519百万円)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績及び受注実績

当社グループの主な事業は、気象情報を中心とした総合的なコンテンツ提供サービスです。加えて、継続的にサービスを行うストック型ビジネスを主に展開しているため、受注生産方式を採用していません。このため、生産実績、受注実績を数量、金額で示すことはしておりません。

 

b. 販売実績

当連結会計年度における事業別売上高は下記のとおりであります。

事業区分

前連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

当連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日)

増減率

 

百万円

百万円

BtoB事業

11,037

11,877

7.6

BtoS事業

10,077

10,365

2.9

合計

21,114

22,242

5.3

 

(注)当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

当連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社NTTドコモ

2,393

11.3

2,072

9.3

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

<1>経営成績の分析

当期の経営成績については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」をご参照下さい。

 

<2>財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金などの増加により、前連結会計年度末に比べて2,078百万円増加し、23,058百万円となりました。負債は、契約負債などの増加により、前連結会計年度末に比べて690百万円増加し、3,270百万円となりました。

 純資産は、前期末及び当中間期末に配当1,324百万円を行う一方で、親会社株主に帰属する当期純利益2,437百万円を計上したことなどにより、前連結会計年度末に比べて1,388百万円増加し、19,788百万円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の自己資本比率は85.4%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

<1>キャッシュ・フローの状況

 キャッシュ・フローの状況は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。

 

<2>所要資金の調達方針

 当社グループの所要資金の調達は、当社グループにおける財務安定性及び資本コストの適正性を勘案して行うことを方針としております。また、グループにおける資金需要を当社にて一元把握し、調達することとしております。基本的に、多額な設備投資以外の資金需要は「営業活動によるキャッシュ・フロー」により確保することとし、子会社(グローバルビジネスモデルにおけるSSB: Strategic Sales Base)にて資金の不足が生じる場合には、当社からの貸付けによって補うことを原則としております。

 なお、グローバルビジネスモデルにおけるSSBは、本来的に戦略性に重点をおいた販売拠点展開として投資しているため、資金を固定的に用いるのではなく、その販売拠点の戦略性の変化に対してダイナミックに変化させることができるものとなっております。

 

<3>資金調達の方法

 運転資金につきましては、「営業活動によるキャッシュ・フロー」を原資として、必要な場合は金融機関からの短期的な借入を行い、設備投資・投融資資金につきましては、金融機関からの長期借入金・社債及び証券市場を通じての増資等により調達することとしております。また、より効率的な資金調達を行うため、取引金融機関とコミットメントライン契約及び当座貸越契約を締結しております。

 

<4>資金の流動性について

 当社グループは、現在及び将来の事業活動のために適切な水準の流動性の維持及び機動的・効率的な資金の確保を財務活動の方針としております。当連結会計年度は、現預金及びコミットメントラインを十分に確保し、資金の流動性を維持しております。当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は14,311百万円となっております。また、流動比率は713.4%となっております。

 

③ 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用等、開示に影響を与える判断と見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。

 当社グループが採用している重要な会計方針(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載)のうち、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼす事項であると考えております。

 

<1>貸倒引当金の計上

 当社グループは、債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。将来、顧客の財政状態の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。

 

<2>固定資産の減損処理

 当社グループは、事業用資産について、内部管理上、キャッシュ・フローを生み出す最小単位を基準として資産のグルーピングを行っております。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、その減少額を減損損失として計上しております。減損兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討してまいりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、追加の減損損失の計上が必要となる可能性があります。

 

<3>繰延税金資産の回収可能性

 当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、課税所得がその見積り額を下回る場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が計上される可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、民間の気象情報会社として「船乗りの命を守りたい。地球の未来も守りたい。」という夢を掲げ、気象が水、電気、交通、通信に続く第5の公共資産=公共インフラであるという考えのもと、世界中のあらゆる企業、個人の生命、財産に対するリスクを軽減し、ソリューションの提供などを通じた顧客の事業の効率化・最適化の機会の増大を実現する気象サービスを目指しています。研究開発活動においては、革新的な気象サービスを実現する技術及びインフラの構築に注力しています。また、技術的な側面にとどまらず、事業の立ち上げを視野に入れ、市場創造を実現する体制の構築にも取り組んでいます。当社グループではData, Forecast, Community の3つのValueに基づいて価値創造を進めて参ります。それぞれに関連する主な研究開発活動は以下の通りです。

 

<Data>

新型気象IoTセンサー「ソラテナPro」をオムロン株式会社と共同開発しました。「ソラテナPro」はオムロン社のセンシング技術により、気温・湿度・気圧・雨量・風向・風速・照度の7要素を1分毎に高精度に観測できるセンサーです。特に雨量50mm/h、風速50m/sの大雨・強風まで観測可能で、災害リスク検知に有用です。観測データは当社のお天気アプリ「ウェザーニュース」と連携し、アプリ上で閲覧可能です。また、APIを通じて企業のシステムに組み込むことも可能です。本製品により、様々な業界で気象データを活用した安全対策や生産性向上が期待されます。

 

<Forecast>

当社は当事業年度においても継続して日本財団の無人運航船プロジェクトに参加しています。第1ステージではAIによる最適航路自動推奨システムを開発し、今回の第2ステージでは航海中のみならず到着後の荷役中の気象影響まで考慮した、無人運航船のための気象リスクマネジメントインフラの構築を担当しています。2025年の無人運航船の実用化に向け、技術開発に取り組んで参ります。

「ウェザーニュース for business」では5mメッシュの高解像度で風を予測する「超高解像度モデル」の提供を開始しました。このモデルは、建物や周辺環境の3次元データを入力し、複雑な市街地の風の流れを1時間ごとに34時間先まで予測します。予測する高さは地上付近から上空150mまで選択でき、建設作業や不動産管理、屋外イベント開催時の安全対策に役立てることができます。

また、継続的な予報精度改善の取り組みを行った結果、第三者機関が行った天気予報の精度に関する調査において、日本国内の主要な天気予報5サービスの中で昨年に引き続き予報精度(適中率)No.1を獲得しています。

 

<Community>

ドローンポートを用いた医薬品授受管理の実証を実施しました。ドローンポートは、ドローンの安全運航に加え、配送物の安全かつ確実な授受と、授受管理の省人化による利便性向上を実現するために必要とされています。本実証では、IHI運搬機械社製のドローンポートとACSL社製のドローン機体が使用されました。ドローンポートのサイズや、ドローンポートとドローン間のシステム連携、高精度な着陸やより多くのペイロードを運搬できるドローンなどの課題・ニーズを把握しました。今後は、これらの課題への対応策を検討し、安全運航体制やビジネスモデルの確立を目指します。

 

 なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は402百万円であります。