当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営環境
当社は法人向け及び個人向けにサービスを展開しており、法人向けは陸・海・空のそれぞれの領域におけるインフラ企業をはじめとした様々な企業に、個人向けはアプリ・各メディアのプラットフォームを通じて一般のお客様に気象サービスを提供しています。
法人向け事業のSea Domainはグローバルに展開しており、国や地域をまたぐ大型船舶の長期航海のサポートが主なサービスとなっています。またSky Domainは日本やアジアを中心としたエアライン向けに航空気象サービスを展開しています。Land Domain及び、個人向け事業であるInternet Domainは主に日本国内で展開しており、Land Domainは道路、鉄道といったインフラ企業をはじめとした様々な業種にサービスを提供しており、Internet Domainは自社アプリ「ウェザーニュース」のサブスクリプションサービス売上並びに広告収入で構成されています。
(2)対処すべき課題
1.中長期的な会社の経営戦略
当社グループは「船乗りの命を守りたい。地球の未来も守りたい。」という夢に向かって、サポーターとともに最多・最速・最新の気象コンテンツサービスにより気象・環境に関する社会的リスクに対応する「気象コンテンツ・メーカー」になることを基本コンセプトとしており、気象コンテンツ市場のフロントランナーとして、独創的に新たな市場を創造しながら「サポーター価値創造」と企業価値の最大化を目指します。
また、このコンセプトの実現のため、「世界最大のデータベース・業界No.1の予報精度・あらゆる市場におけるコミュニティ」をコアコンピタンスと考え、Full Service “Weather & Climate” Companyとなることが当社のミッションであると認識しています。
2.中期経営計画
当社グループは売上高、営業利益率、ROEを主要な経営指標としています。成長市場である気象コンテンツ市場においては、継続的な売上(ストック売上)が発生するサービスの拡販を実現することによって売上高成長を企業成長に結びつけることができると考えています。この認識に基づき2024年5月期からの3年間について中期経営計画を策定しました。詳細は当社HPの中期経営計画の資料をご覧ください。
https://jp.weathernews.com/irinfo/plan/
(3)今後の見通し
売上面では、各Domainでの成長を見込んでいます。Sea Domainでは新プロダクトの市場展開やカスタマーサクセス体制の推進、Sky Domainでは国内ヘリ市場およびアジア航空市場での拡販、Land Domainではカスタマーサクセスと営業の強化を通じたWxTechサービスの拡販、Internet Domainでは気象メディアとしての圧倒的なポジションの確立を通じたサブスクリプションサービス売上と広告収入の伸長、による増収を計画しています。
投資面では、SaaS型ビジネスの拡大戦略に基づくプロダクト開発費用やデータ・クラウドへの投資、グローバルの気象データ取得への投資、及び各Domainにおける広告投資を計画しています。
これらの結果により、2026年5月期は、売上高25,000百万円、営業利益5,000百万円、経常利益5,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益3,500百万円と見込んでいます。なお為替レートは1米ドル150円を前提としています。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りです。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループは気象・気候を事業ドメインとし、また「いざというときに人の役に立ちたい」という経営理念を持つ企業として、気象を軸とした価値創造を通じて人間社会・企業活動・地球環境がともに持続可能な社会を実現することが使命であると考えています。
また、Transparency(透明性)という当社の企業理念のもと、法律に規定される情報開示にとどまらず、企業理念・文化・経営戦略・ビジネスモデル・将来の価値創造に向けたビジョン等を自ら積極的に開示し、企業価値を巡る根源的な考え方を示すことで、サポーターとの相互信頼を醸成し、中長期的な企業価値の向上の共創を目指します。
(マテリアリティの特定)
当社グループでは持続可能な社会の実現に向けて、社会課題の重要性と自社の事業・経営理念とを照らし合わせて、事業を通じた社会への価値創造である「気候変動の緩和」「強靭な街づくり」、社会への価値創造を推進するための重要な基盤である「技術革新&パートナーシップ」「ダイバーシティ&インクルージョン」という、重点的に取り組むべき4つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。
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マテリアリティ |
取り組みの概要 |
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気候変動の緩和 |
・AI等を活用した最新の予測技術とビッグデータ解析を用いて、法人顧客が抱える気象や気候に関する重要課題の1つであるCO2排出量の削減等の環境負荷低減をサポート ・事業利益の最大化と環境負荷低減の両方を可能とする技術・ソリューションの向上とグローバル・パートナーシップを推進し、法人顧客の持続的な事業成長に貢献 ・サービス提供を通じて削減したCO2排出量の可視化など、業界・社会全体が持続的に成長できる仕組みづくり |
|
強靭な街づくり |
・気象や気候予測を通じて自然災害のリスクを捉え、いち早く交通機関や生活者に伝えることで、人々の生命、財産、企業の経済活動を守り、法人顧客や個人サポーター(ユーザー)とともに自然災害に強い社会づくりに貢献 ・航海、航空、道路、鉄道といった交通インフラを担う法人顧客が直面する気象や気候のリスクに対する安全性の強化をサポートし、気象災害に対するレジリエンス向上を目指す ・個人サポーターに対する、局地的かつ突発的な現象に対応した高精度な気象予報の提供や、竜巻の目撃情報や道路の冠水報告などの気象リスクをサポーター同士が情報共有できる場の整備を通じて人々の生活をサポート ・気候変動によって前例の無い気象現象が起こることを踏まえた予測精度向上への継続的な取り組み |
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技術革新 & パートナーシップ |
・気象のビッグデータや新しい解析技術を活用した戦略的マネジメント及びそれを支える観測インフラの設置 ・G20やAPEC等の国際会議での気象情報の有用性・可能性の提案を通じた国際パートナーシップの推進 |
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ダイバーシティ &インクルージョン |
・気象を志して世界中から集まった、性別・言語・宗教・文化などが異なる人材のあらゆるダイバーシティの尊重 ・人材一人ひとりに対する公正な雇用と成長機会の提供、可能性を最大化できる能力開発、快適に働ける環境の整備 ・地域全体の防災や減災意識の向上、及び社会に貢献する次世代の気象人材の輩出を目的とした気象や自然について学ぶ機会の提供 |
(2)TCFDフレームワークに基づく情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)
当社は2022年6月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について、TCFDフレームワークに基づいた情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を進め、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーの皆様とともにサステナブルな社会の実現に取り組んでいきます。
①ガバナンス
気候変動に関わる基本方針や重要なリスク・機会を特定しマネジメントする組織として、最高経営責任者を委員長とするサステナビリティ委員会を2021年5月に設置しています。サステナビリティ委員会ではサステナビリティに関する課題の特定、対応計画の策定を行うとともに、当社グループ全体の取り組みの推進・サポートを行っています。また、その進捗をモニタリングし、その結果を定期的に取締役会に報告することで、取締役会による管理・監督が適切に図られる体制を構築しています。
②戦略
当社グループでは将来の気候変動に関する「1.5℃シナリオ」と「4℃シナリオ」の2つのシナリオを用いて、気候関連のリスク・機会の重要性評価に向けた「移行リスク」「物理リスク」「機会」の区分でシナリオ分析と評価を実施しました。リスク・機会それぞれの詳細や財務影響についての評価結果は以下の通りです。
(1.5℃、4℃シナリオの定性的な想定内容)
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シナリオ |
想定内容 |
|
1.5℃ |
パリ協定に基づき、社会全体が脱炭素に向けて変革を遂げ、地球温暖化に歯止めがかかるシナリオ。炭素税等の環境関連規制強化が想定される一方、異常気象の被災の度合いが抑制される |
|
4℃ |
気温の上昇が著しく、地球温暖化がさらに進むシナリオ。化石燃料主体での社会の発展が継続し、異常気象の激甚化が加速する |
(事業戦略および財務への影響度の定義)
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リスク・機会 |
影響度 |
事業戦略への影響 |
影響額(リスク) 売上規模(機会) |
|
リスク |
大 |
全社的に大きな被害(事業回復に著しく時間を要する) |
2,000百万円以上 |
|
中 |
全社的な被害(事業回復に数年を要する) |
1,000百万円以上 |
|
|
小 |
全社レベルに至らない(1年以内に事業回復が可能) |
1,000百万円未満 |
|
|
機会 |
大 |
激甚災害への対応策及び気候変動への緩和・適応策への社会のニーズがグローバルもしくは日本国内で非常に大きいと想定され、また気象会社の使命として提供する当社サービスを通じた社会課題への大きな貢献が期待でき、当社の利益に大きな影響を与えると予想されるもの |
2,000百万円以上 |
|
中 |
激甚災害への対応策及び気候変動への緩和・適応策への社会のニーズが日本国内において大きいと想定され、また気象会社の使命として提供する当社サービスを通じた社会課題への中程度の貢献が期待でき、その結果当社の利益に中程度の影響を与えると予想されるもの |
1,000百万円以上 |
|
|
小 |
激甚災害への対応策及び気候変動への緩和・適応策への社会のニーズが日本国内において一定程度想定され、また気象会社の使命として提供する当社サービスを通じた社会課題への一定の貢献が期待でき、その結果当社の利益にも一定の影響を与えると予想されるもの |
1,000百万円未満 |
(リスク及び機会)
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区分 |
内容 |
事業 分野 |
想定されるリスク・機会の詳細 |
財務影響 |
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|
1.5℃ |
4℃ |
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移行 リスク |
政策・ 法規制 |
炭素税・ 炭素価格 |
全社 |
炭素税の導入や炭素価格の上昇に伴うオフィス電力調達コストの増加 |
小 |
- |
|
GHG排出規制への対応 |
全社 |
GHG排出量規制強化等による自家発電設備のグリーンエネルギー化に伴う設備更新コストの増加 |
小 |
- |
||
|
市場 |
エネルギー価格 |
全社 |
エネルギー価格の上昇による電力調達コストの増加 |
小 |
- |
|
|
評判 |
投資家の評価 |
全社 |
気候変動および環境対策への取り組みが、投資家により不十分と判断された際の企業価値・評価の低下 |
中 |
- |
|
|
物理 リスク |
急性 |
異常気象の 激甚化 |
全社 |
洪水・高潮等による一部資産の浸水被害と一時的な運営・営業等業務の停止 |
- |
小 |
|
慢性 |
温暖化による 海面上昇 |
全社 |
海面上昇による影響は限定的も、洪水・高潮等が併発した際に運営・営業等業務の一時停止 |
- |
- |
|
|
機会 |
エネルギー源 |
環境対策の 取り組みによる 企業価値の上昇 |
全社 |
気候変動に伴う自然災害の激甚化に対する当社サービスへの注目や期待が高まることで企業価値が向上 |
大 |
大 |
|
製品/ サービス |
グリーン エネルギーの 需要増 |
Sea |
船舶のグリーンエネルギーへのシフトに対応する環境指標を軸とした新たな運航支援サービスの展開 |
大 |
- |
|
|
Sea |
洋上風力発電の需要の高まりに伴う、発電施設の建設や保守等に対する支援サービス需要の増加 |
|||||
|
Land |
電力需給におけるグリーンエネルギーの比率が高まり、電力需給バランス想定サービスの需要が増加 |
|||||
|
化石燃料の 使用量削減 |
Sea Sky Land |
化石燃料の使用量削減につながる支援サービスの需要増加、および航海・航空・陸上等各事業間のシナジーを生かした輸送計画支援サービスの新規開発 |
中 |
- |
||
|
Internet |
個人及び一般家庭等での節電意識の高まりに対する、個人向け電力需給予報サービスへの需要が増加 |
|||||
|
市場 |
環境配慮志向 へのシフト |
Land |
消費者の環境配慮志向へのシフトに伴い、食品廃棄ロスの極小化サービスへの期待・需要が増加 |
中 |
- |
|
|
レジリエンス |
気候変動に伴う極端気象による激甚災害増加に対する対応策ニーズの高まり |
Sea Land |
船舶の到着遅延、スポーツ・イベントの中止など、極端気象による被害への補償サービスの新規開発 |
中 |
大 |
|
|
Land
|
自然災害の激甚化による工場・倉庫・発電所等陸上施設の浸水リスクなどの事業継続リスク計測・対策サービスへの需要増加(TCFDへの対応) |
|||||
|
Land |
自然災害の増加による事業への影響度算出、急性リスク分析サービスへの需要増(1.5℃シナリオ) 産地毎の農作物の成長・収穫への影響分析、収量予測サービスへの需要増加(4℃シナリオ) |
|||||
|
Land |
気温上昇により高まる運動・勤務中の熱中症リスクの保険サービスおよび健康状態のモニタリングサービスの需要増加 |
|||||
|
Internet |
自然災害の増加・激甚化への危機感の高まりによる個人向け防災・減災情報サービスへの需要増加 |
|||||
③リスク管理
企業を取り巻く環境が複雑かつ不確実性を増す中、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクに対し的確に対処することが、経営戦略や事業目的を遂行していく上では不可欠です。当社グループは、気候変動関連の問題を経営上の重大な影響を及ぼすリスクとして位置付け、サステナビリティ委員会において適切に検討・管理しています。また、その内容を事業の継続性を踏まえてリスクマネジメント・危機管理を所掌する組織であるリスクマネジメント委員会とも共有し、リスク発生前の管理監督とリスク発生直後の対応方針等、リスク管理の基本方針を定めていく仕組みを構築しています。
④指標と目標
当社グループは、環境負荷低減と企業の事業利益最大化の両方を可能とする技術・ソリューションの向上とグローバル・パートナーシップを推進し、業界・社会全体としてサステナブルな社会実現に向けて取り組んでいます。
この取り組みの一環として、国際的なイニシアチブであるSBTi(Science Based Targets initiative)に認定された科学的根拠に基づく目標に沿って、温室効果ガス(GHG)排出量の削減を推進しています。
<科学的根拠に基づく目標(SBT認定)>
Scope1+2: 2030年度までにGHG排出量を50%削減(2022年度比)
Scope3: 2030年度までにGHG排出量を25%削減(2022年度比)
上記SBT認定目標の達成に加え、当社はより高い目標水準として、2030年度までにGHG排出量(Scope1+2)の実質ゼロを目指してまいります。
|
カテゴリ (※1) |
CO2排出量(単位:tCO2) |
|||||
|
2021年度 |
2022年度 (※3) |
2023年度 (※3) |
||||
|
Scope1 |
非常時の自家発電設備 |
8 |
7 |
7 |
||
|
社用車 |
21 |
22 |
22 |
|||
|
Scope2 |
オフィス |
国内 |
本社 |
3,075 |
3,028 |
296 |
|
その他 |
33 |
27 |
31 |
|||
|
海外 |
27 |
37 |
66 |
|||
|
気象観測器 (※2) |
14 |
7 |
9 |
|||
|
Scope3 |
カテゴリ1 |
購入した製品・サービス |
- |
13,204 |
14,451 |
|
|
カテゴリ2 |
資本財 |
- |
391 |
219 |
||
|
カテゴリ3 |
Scope1,2に含まれない 燃料及びエネルギー活動 |
- |
762 |
368 |
||
|
カテゴリ4 |
輸送、配送(上流) |
- |
108 |
126 |
||
|
カテゴリ5 |
事業から出る廃棄物 |
- |
15 |
22 |
||
|
カテゴリ6 |
出張 |
- |
942 |
1,291 |
||
|
カテゴリ7 |
雇用者の通勤 |
- |
127 |
135 |
||
|
合計 |
|
|
|
|||
※1 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼)
Scope2:他社から供給された電気等の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1,Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
※2 オフィス以外の国内外に設置・自社運用しているため別掲しております。
※3 第三者保証について
当社は、CO2排出量実績の信頼性向上のため、2022年度及び2023年度算出分の直接的なCO2排出量(Scope1)とエネルギー起源の間接的なCO2排出量(Scope2)およびその他の間接的なCO2排出量(Scope3)について、一般社団法人日本能率協会による第三者保証を受けました
(3)人的資本に関する戦略並びに指標
(人的資本経営の考え方)
当社は、「船乗りの命を守りたい。地球の未来も守りたい。」という企業理念を掲げています。この企業理念と共鳴する社員一人ひとりのDreamこそが会社の原動力であり、人的資本です。個人のDreamは、会社の企業理念と重なり合うことで、個人の自律的な成長と組織全体のイノベーションが促進され、持続的な企業価値向上につながる相乗効果を生み出します。
(人的資本経営モデル「Weather HR」)
複雑さが増し加速度的に多様化する現代社会において、当社は人も組織も変化し続けることを自然な状態と捉え、『Weather HR』をコンセプトに人的資本経営を推進しています。これは、気象の変化に適応するように、人も組織も常に柔軟に、そして自律的に変化・成長し続けることを目指す、当社独自の人材戦略です。社員が自身の能力を最大限に発揮し、組織全体がしなやかに対応する土壌を育みます。
①人材育成
常に変化し循環する自然のように、人も組織も柔軟に成長し続けることを目指し、多角的な人材育成を推進しています。経営戦略に必要な基礎・専門能力開発やリスキリングを支援し、客観的評価制度を通して社員のキャリア形成を後押しします。個性や強みを発信する機会を設け、社員の成長と組織の価値創造が好循環する適所適材を実現します。
(自然循環を模したキャリアパス)
社内公募制度は、常に変化する事業環境に対応するため、期中での異動も積極的に促しています。同時に、個人のキャリアに関する研修や面談を「Pit in Career」で実施し、社員のキャリア自律を包括的に支援しています。
個人の志と会社の成長を連動させる「My Dream My Job」制度では、長期貢献社員が自身の「My JOB」(過去の実績)と「My Dream」(未来への想い)を役員等との面談で共有し、対話する機会を提供します。
さらに、一度当社を離れたアルムナイ(離職者)が新たな経験を携えて再入社するケースも多くあり、培われた多様な視点を組織に「還流」させることで、イノベーションと文化創造を促進します。
(成長を加速する学びと実践のサイクル)
当社は、変化に対応し社員の成長を促すため、インプットとアウトプット両面から多様な研修・リスキリング機会を提供しています。全社共通の基礎知識、階層別・新入社員研修で土台を築き、リスキリングで専門性を向上し、AIハッカソン等の実践的アウトプット型研修で新たな価値創造を推進します。さらに、「Hyde Park」では全社員が自由にアイデアを発表・議論し、ナレッジシェアの場となっています。また、気象エンジニアやITエンジニアの気象予測技術やIT知識の共有と課題解決を図るために「Weather Forecast Engineer Conference」や「テクニカルサークル」を開催しています。社員同士の知と技術の交流が、組織全体のイノベーションとモチベーション向上を促します。
②サステナブルな働き方
当社は、社員の特性や能力のレンジを広く捉え、一人ひとりの活躍の可能性を最大限に引き出すことを目指します。社員のライフステージや成長フェーズに応じて、最適な働き方を選択できる柔軟な制度を整えるとともに、事業貢献に専念できる環境づくりに投資しています。
(ハイブリッドワーク)
オフィスとリモートを組み合わせたハイブリッド形式を働き方のスタンダードとしています。個人の生産性向上とチームの協働効率を最大化するため、出社率をモニタリングしながら最適なバランスを追求しています。
(働く環境への投資)
当社はオンライン会議に対応した会議室や個室ブースを拡充するなど、ハイブリッドな働き方を実現するためのオフィス環境へ投資しています。また、カフェスペースの整備により部門を越えた偶発的会話やアイデア交換を促進しています。
(特別有給休暇制度の充実)
当社は、社員一人ひとりが多様なライフステージや価値観を尊重しつつ、自律的かつ前向きに働ける環境の整備を重要な経営課題と捉え、特別有給休暇制度の拡充に取り組んでいます。具体的には、「傷病休暇」や「ボランティア休暇」等、すべての特別休暇を有給にて付与しています。また、単に制度を整えるだけでなく、ボランティア休暇については、能登半島の災害復興支援や千葉市内の里山保全・自然共生サイトでの活動など、会社主導によるボランティア派遣の機会を企画・提供しており、社員がグループで休暇を取得し、社会貢献活動に参加しやすい環境づくりを推進しています。
③ダイバーシティ&インクルージョン
当社は、気象に関する共通の志を持つ人材が最大限に能力を発揮できる組織を目指しています。性別、言語、宗教、文化等の多様性は、気候変動や気象災害といったグローバルな社会課題解決と当社の持続的成長に不可欠です。
従業員リソースグループ(ERG)として組織された「ダイバーシティ委員会」では、育児・介護との両立、女性や外国籍社員の活躍促進等をテーマに、コミュニティ形成や制度改善を通じ、価値創造と成果創出に取り組んでいます。
(女性活躍)
当社における女性社員の割合は33%、管理職に占める女性の割合は13%です(2025年5月期)。この管理職比率を2030年までに20%とすることを目指します。当社はダイバーシティ委員会と意見交換をしながら、女性管理職を育成しており、ライフイベントに合わせた柔軟な働き方として、時短勤務、フレックスタイム制、リモートワークなどを整備しています。
(育児・介護との両立)
当社は、社員の育児や介護との両立を支援しています。
育児においては、育休後復職率100%(例年)、男性育休取得率82.3%と、性別問わず子育てしやすい環境です。また、家族の体調不良等により急遽勤務が困難となった際、そのフォローを引き受けたスタッフに対し「Thanks Cover Reward」として手当を支給する新制度を導入しました。
介護に関しては、柔軟な労働条件を運用しています。
リモートワークや独自の傷病休暇を家族の看護・介護にも使用できるようにし、柔軟な家族ケアを可能にしています。また、外部専門家による介護セミナー等を定期的に開催しています。リモートワークや独自の傷病休暇を家族の看護・介護にも使用できるようにし、柔軟な家族ケアを可能にしています。また、外部専門家による介護セミナー等を定期的に開催しています。
(外国籍社員の活躍)
当社は21カ国に拠点を持ち、全社員の約3割を占める外国籍スタッフを含め、世界約30カ国から多様な人材が集まっています。全社会議では、言葉の壁を感じさせず誰もが議論に参加できるよう、英語の同時通訳や資料の英語併記を実施しています。希望者には日本語・英語学習プログラムを提供しています。外国籍スタッフ主導の語学学習サークルや交流会も活発です。本社にはPrayer Room(礼拝室)も設置し、宗教の自由にも配慮しています。
(参考)人的資本に関する指標
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区分 |
指標 |
2023年5月期 |
2024年5月期 |
2025年5月期 |
目標 |
|
連結 会社 |
|
27.6% |
27.5% |
|
目処として |
|
採用者における中途採用者の割合 (中途採用者/新卒含む採用者総数) |
58.0% |
57.7% |
|
として継続 但し、採用方針による変動あり |
|
|
|
32.6% |
32.9% |
|
- 注1 |
|
|
|
11.0% |
13.2% |
|
2030年迄に20% |
|
|
提出 会社 |
男女別勤続年数 |
男性:11.7年 女性: 8.9年 |
男性:12.2年 女性: 9.3年 |
男性:12.8年 女性: 10.1年 |
- 注1 |
|
能力開発研修(リスキリング)時間 (受講者延数) |
2,727時間 (69名) |
5,169時間 (176名) |
4,752時間 (870名) |
目処として 6,000時間 (200名) |
|
|
全社研修(コンプライアンス等)時間 (受講者延数) |
3,455時間 (3,561名) |
1,665時間 (1,925名) |
2,399時間 (2,901名) |
- 注2 |
|
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階層別研修)リーダーシップ等)時間 (受講者延数) |
2,003時間 (1,142名) |
2,617時間 (526名) |
3,097時間 (555名) |
- 注2 |
|
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新入社員研修時間 (新入社員数) |
6,528時間 (34名) |
6,405時間 (56名) |
5,233時間 (36名) |
維持 |
|
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女性労働者の育児休業取得率 及び復職率 |
取得率:100.0% 復職率:100.0% |
取得率:100.0% 復職率:100.0% |
取得率:100.0% 復職率:100.0% |
維持 |
(注1)実力主義で性別は影響ないため、目標は定めておりません。
(注2)必要に応じて実施のため、目標を定めておりません。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
<リスクマネジメント基本方針>
当社グループは、世界中のあらゆる企業、個人の生命、財産に対するリスクを軽減し、機会を増大させることに貢献する気象・環境サービスを目指しています。全世界に向けてサービスを継続して提供していることから、事業継続性を担保することは、当社グループだけでなく社会経済においても重要であると認識しております。また、近年は気候変動や資源の枯渇、大規模災害などの環境課題をはじめ、グローバルでの複雑な政治・経済情勢の変化などの要因により、当社グループの経営目標の達成や企業の継続性に大きな影響を受け、その結果当社グループの株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループではリスクを「経営目標の達成や企業の継続性に大きな影響を与える不確実性」と定義し、事業環境を定量面・定性面から把握・分析しています。リスクの発生頻度や経営への影響を低減していくことを目的に、リスクマネジメントを統括・推進する執行役員を置くとともに、リスクマネジメント委員会を設置する等、リスクマネジメント体制を整備しています。
<リスクマネジメント体制・重要リスクの確定プロセスとモニタリング>
リスクマネジメントの国際的なフレームワークであるCOSO-ERMなどを参照し、全社的なリスクマネジメント体制を構築しています。年1回、外部・内部要因の変化を踏まえ、想定されるリスクを網羅的に洗い出して「リスクインベントリー(リスク一覧)」を更新しています。インベントリー上の全てのリスクを対象に、事業への影響額や発生可能性を評価し、取締役会での審議を経て重要リスクを特定しています。重要リスクについては、取締役会で状況変化の確認や対応策の見直しを半期に一度行っています。各事業部門(第1のライン)は、リスク内容に応じた各種の対策を立案・実行するとともに、リスク管理部門(第2のライン)は必要な支援やモニタリングを行うなど、相互に連携することでリスクマネジメントを推進しています。また、継続的に戦略・リスクの両面からモニタリングを実施し、リスク顕在化の未然防止を図っています。こうした体制によって、リスクを適切にコントロールしています。当社グループは、今後も事業環境の変化に対応し、リスクマネジメント体制の継続的な改善に努めてまいります。
<主要リスク>
(1)気候変動リスク
当社グループでは、ESGの1つである「Environment(環境)」を重要な経営課題の1つと認識しております。昨今、世界各地で発生する大雨・台風・豪雪・乾燥等の極端気象は深刻化しており、気象・気候が与える社会への影響は年々大きくなってきております。当社グループではこのような気象状況の変化に対し、気象・環境サービスを通じて世界中の企業・人々の生活に対する気象・環境リスクを軽減することや、気象・気候データやビジネスデータ等のビッグデータの解析をすることで環境負荷低減に貢献するソリューションの提供を継続してきました。
さらに、ESGへの取り組みとして、「いざというときに人の役に立ちたい」という理念を持つ当社は、人間社会・企業活動のみならず、地球環境がともに持続可能となる社会の実現を私たちのミッションとし、事業を通じた社会への価値創造として「気候変動の緩和」と「強靭な街づくり」を、次に社会への価値創造を推進するための重要な基盤として「技術革新&パートナーシップ」、「ダイバーシティ&インクルージョン」という4つのマテリアリティを制定し、ウェブサイトにて当社取り組みに関する情報発信を行っております。また、気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識し、2022年6月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明しました。気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について、TCFDのフレームワークに基づいた情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を進め、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーの皆様とともにサステナブルな社会の実現に取り組んでいきます。
しかしながら、今後当社グループが深刻化する気候変動リスクの変化に適切に対応できなかった場合には、顧客離れや投資先としての信頼が得られないなどの事態が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績等が影響を受ける可能性があります。
(2)自然災害
当社グループは、気象・環境サービスを世界各国の物流事業や公共交通機関、放送事業等に提供しており、社会的なインフラに対して密接したサービスとなっております。そのため、有事の際もサービス継続性を確保できるよう体制整備を進めていますが、巨大地震や津波、竜巻、台風、寒波等の自然災害や戦争・テロ、紛争、その他の要因による社会混乱により、本社や主要な事業会社(拠点)が被災し、経営体制の本社機能もしくは各拠点の運営機能が麻痺することによるオペレーション上の事業継続リスクがあります。
上記の通り、災害や事故等で被害を受けた際に、重要な機能を可能な限り中断せず、また中断した場合にも可能な限り早急に復旧できるよう、当社グループ全体で事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定し、遠隔での運営が行えるような体制の構築やインフラ強化の対策等を整備すると共に、日頃から災害を想定した訓練を実施しています。しかしながら、これらの対策を講じたとしても、全てのリスクを完全に排除できるものではなく、当社グループの財政状態及び経営成績等が重大な影響を受ける可能性があります。
(3)情報セキュリティ
当社グループは、事業上の重要情報及び事業の過程で入手した個人情報や取引先等の秘密情報を保有しており、「個人情報保護法」、「EU一般データ保護規則(GDPR)」、その他の法令に基づき、個人情報保護に関する義務を課されています。当該情報の盗難・紛失などを通じた外部漏洩・第三者による不正流用の防止はもちろん、不適切な利用、改ざん等の防止のため、委託先の管理を含め、情報の取り扱いに関する管理の強化を行い、法規制強化への対応等も都度実施しています。
また、個人情報の管理を事業運営上の重要事項と捉え、保護管理体制の確立に努めており、当社において個人情報管理規程等を制定し、個人情報の取り扱いに関する業務フローを定めて厳格に管理するとともに、当社グループの役職員を対象として社内教育を徹底する等、関連法令並びに当社に適用される関連ガイドラインの遵守に努め、個人情報の保護に積極的に取り組んでいます。新型コロナウイルスの感染拡大時に推進したリモートワーク時には、規程・ガイドラインを整備する等新しい働き方における情報管理の方針を策定しました。リモートワーク推進により、更に重要性が高まっている情報管理への社内意識向上を促す施策を積極的に整備しています。
しかしながら、不測の事態によってこれらの情報の漏洩やインシデントが発生する可能性は完全には排除できず、また情報システムへのサイバー攻撃などによって、重要データの破壊、改ざん、流出、システム停止等を引き起こす可能性もあります。したがって、これらの事態が起こった場合には、業務効率の著しい低下や、事業継続、あるいはビジネスの伸長に困難を来すことが想定され、適切な対応を行うための相当なコストの負担、損害賠償による損失、社会的信用やブランドイメージの低下によって、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。
(4)社会・制度の大規模な変化
当社グループは多岐にわたる業界・サポーターに対し世界中で気象・気候を軸とした様々なサービスを提供しており、各事業により事業環境が大きく異なることから、国内外の広範な社会環境・商慣習のもと事業活動を展開しております。また、それに伴い、税や各種規制といった法制度、各国の政治・経済動向、気候変動等、様々な要因の影響下にあります。これらの要因は当社グループが関与し得ない理由によって大きく変化する可能性があり、このような変化が生じた場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があることから、重要なリスクと認識しています。
また、当社グループの事業は気象・環境サービスの提供を主体に行っていることから、各国の気象業務法の公的規制を受けております。そのため、今後予測できない大幅な規制変更が行われ、その変化に当社グループが対応できない場合、当社グループの事業に重大な影響が及ぶ可能性があります。
(5)コンプライアンス(法令遵守)
当社グループの事業の根幹である気象・環境サービスは、各国の気象業務法及び関連法令の法的規制を受けています。今後、例えば気象業務法で定める認定基準等を満たすことができず、認定の取り消しを受けた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に重大な影響を与える可能性があります。
また、当社グループは、事業範囲および活動領域が拡大していることから、日常業務は自ずと分権的に運営されており、従業員が全ての法律や社内規定を遵守している確証を得ることは困難になりつつあります。例えば、Sea Domainは世界各国の海運会社等を対象に各船舶の航海ごとに従量課金型のサービスを提供する場合もあり、今後サービス提供先が飛躍的に増加することなどにより、サービス提供の把握方法によっては、実在性を確認できない取引が発生するなどのリスクがあります。
そのため、当社グループではこのような法令違反が発生しないようグループ全体の業務執行に関する方針・行動基準となる「天気街憲章」、社会的責任を明確にした「Weathernewsグループ 行動規範」を定めウェブサイトで公表し、積極的なSDGs貢献を推進する社会インフラ企業のスタッフとしての自覚を促し、法令と社会規範遵守についての教育・啓蒙・監査活動を実施しております。また、リスクマネジメント委員会にて総合的にリスク評価・対応策を検討しております。内部統制システムの整備に関しては基本方針を定め、社内にて内部統制の運用徹底・改善の取り組みを実施しております。詳細は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご確認ください。
しかしながら、コンプライアンス上のリスクや、当社グループ従業員の全ての不正行為は完全に排除することはできない場合もあり、これらが法令等に抵触した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの財政状態及び経営成績等が影響を受ける可能性があります。
(6)グローバル展開
当社グループは、グローバル展開を推進しており、世界各国に拠点を設けてサービス展開を行っております。これらの海外拠点が存在する各国での予期せぬ公的規制の変更、テロ、戦争、その他予期し得ない政治・経済上の変動により、当社グループの経営成績、財務状況に影響が及ぶ可能性があります。具体的には、以下に掲げるいくつかのリスクが内在しています。
・政治的又は経済的要因
・事業・投資許可、租税、為替管制、国際資産の没収、独占禁止、通商制限など公的規制の影響
・他社と合弁・提携する事業の動向により生じる影響
・戦争、暴動、テロ、伝染病、ストライキ、マルウェア、その他の要因による社会的混乱
・地震、津波、台風等の自然災害の影響
・各国規制・制裁などの把握不全
これらリスクに対して、現地の大使館・商工会議所などから情報収集を行い、各拠点の外部コンサルタントと連携し、適切な対応がとれるようにしております。
(7)人権問題
当社グループは、グローバル展開を推進しており、世界各国に拠点を設けて、多様かつグローバルな環境において事業活動を行っております。そのため、自らの事業活動において影響を受けるすべての人々の人権が尊重されなければならないことを理解し、多様な価値観や異文化を認め合い、尊重することを企業活動の基盤とし、その責務を果たす指針として、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」などを支持する「人権基本方針」を2024年7月に定めました。また、人権デュー・ディリジェンスによって、人権に対する負の影響を引き起こしたり助長するリスクを早期に検知し、適切な手続きを通じて予防、是正及び救済に取り組んでおります。
しかしながら、事業活動において人権問題が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下により、事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8)サービス品質
当社グループは、気象・環境サービスを世界各国の物流事業や公共交通機関、放送事業等に提供しており、社会的なインフラに対して密接したサービスとなっています。そのため、社内外で障害が発生する等、システムやサービスが停止した場合、顧客や個人のサービス利用者に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、データにおいても、予報としての性格上不可知の要素を含んでいるため、BtoB事業においてサービスを提供するにあたっては、リスクコミュニケーションによる顧客との連携に努めるとともに、各契約において当社グループのリスクを限定的に制限しております。しかしながら、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクの蓋然性は高くはないものの、発生する可能性は完全には排除できず、社会的な影響度を踏まえると当社グループの財政状態のみならず、社会的信用やブランドイメージの信頼性を著しく損なう可能性が考えられます。
当社グループでは、安定性のあるサービス提供のため事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定し障害発生時には即時に対応策をとれるよう体制を整備するとともに、気象・環境サービスの品質向上のため、予報精度向上やシステム品質向上に日々努めています。
(9)知的財産権
当社グループは、気象が「水、エネルギー、交通、通信」に続く第5の公共資産=公共インフラであると考えており、また技術発展のための社会的責任として、可能な限り情報を公開していく「情報民主主義」というポリシーを持っております。一方で、当社グループが目指す目標を達成するため、競合や第三者から当社グループの知的財産権を守ることや、当社グループ従業員の権利を守ることも重要と考えており、適切なバランスを考慮した対応を取る必要があります。
当社グループは、ストック型ビジネスを主としておりますが、近年同様なビジネスの増加や、基礎技術開発の際に独自開発した技術が他社の知的財産権を侵害しているとして、損害賠償請求を受ける可能性等、リスクが顕在化する蓋然性は高くはありませんが皆無とは言えません。この場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があり、重要なリスクとなることを認識しています。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当期の連結売上高は23,505百万円(前期比5.7%増)となりました。Sea Domainでは、カスタマーサクセスの強化や一部の大型顧客におけるアップセル、並びに為替の影響で増収となりました。Land Domainでは、高速道路市場における売上増、エネルギー市場・小売市場におけるSaaS型プロダクトの拡販により増収となりました。Internet Domainでは、広告投資や新コンテンツの充実を通じてサブスクリプション売上や広告収入が増収となる一方、キャリア向け売上の一部における減収が継続しました。
費用面では、AIを活用した運営効率化が進み、当初想定より人件費の増加幅が縮まりました。また、開発・運営体制の見直しによりアウトソース費が減少し、前期に計上した外注費等の一時的な費用も減少しました。
その結果、営業利益は4,517百万円(前期比38.1%増)となりました。なお、経常利益は4,468百万円(前期比33.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,115百万円(前期比27.8%増)となりました。
(事業別の状況)
<Sea Domain>
欧州市場を中心にカスタマーサクセスの強化を通じて売上が増加しました。また、一部の大型顧客におけるアップセルや為替の影響もあり、増収となりました。
<Sky Domain>
国内ヘリ市場やアジアのエアライン市場にて増収となりました。
<Land Domain>
高速道路市場の顧客数が増加しました。また、エネルギー市場や小売市場でWxTechサービス(SaaS型プロダクト)を拡販し、増収となりました。
<Internet Domain>
広告投資や新コンテンツの充実でユーザー数が増加し、アプリのサブスク売上と広告収入が増加しました。一部通信キャリア向け売上が低迷したものの、Domain全体では増収となりました。
|
事業領域 |
前連結会計年度 (自 2023年6月1日 至 2024年5月31日) (百万円) |
当連結会計年度 (自 2024年6月1日 至 2025年5月31日) (百万円) |
増減率 (%) |
|
|
|
Sea |
5,813 |
6,139 |
5.6 |
|
Sky |
1,210 |
1,319 |
9.0 |
|
|
Land |
6,301 |
6,749 |
7.1 |
|
|
Internet |
8,082 |
8,281 |
2.5 |
|
|
ストック売上 合計 |
21,407 |
22,490 |
5.1 |
|
|
フロー売上 |
835 |
1,015 |
21.5 |
|
|
総 計 |
22,242 |
23,505 |
5.7 |
|
(注)ストック売上:サービス提供の対価として継続的に発生する売上
フロー売上 :一時的な調査やシステム販売による売上
(参考)地域別売上高
|
地域区分 |
前連結会計年度 (自 2023年6月1日 至 2024年5月31日) (百万円) |
当連結会計年度 (自 2024年6月1日 至 2025年5月31日) (百万円) |
増減率 (%) |
|
|
|
日本 |
16,788 |
17,713 |
5.5 |
|
アジア |
3,073 |
3,138 |
2.1 |
|
|
欧州 |
1,984 |
2,263 |
14.1 |
|
|
米州 |
397 |
390 |
△1.9 |
|
|
合 計 |
22,242 |
23,505 |
5.7 |
|
② キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等1,078百万円を支払う一方で、税金等調整前当期純利益4,468百万円を計上したことなどにより4,427百万円の収入(前期3,385百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形固定資産の取得による支払などにより269百万円の支出(前期408百万円の支出)となりました。
また、財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払などにより1,436百万円の支出(前期1,313百万円の支出)となりました。
現金及び現金同等物に係る換算差額62百万円を減算し、現金及び現金同等物の当期末残高は16,970百万円(前期末14,311百万円)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績及び受注実績
当社グループの主な事業は、気象情報を中心とした総合的なコンテンツ提供サービスです。加えて、継続的にサービスを行うストック型ビジネスを主に展開しているため、受注生産方式を採用していません。このため、生産実績、受注実績を数量、金額で示すことはしておりません。
b. 販売実績
当連結会計年度における事業別売上高は下記のとおりであります。
|
事業区分 |
前連結会計年度 (自 2023年6月1日 至 2024年5月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年6月1日 至 2025年5月31日) |
増減率 |
|
|
(百万円) |
(百万円) |
(%) |
|
Sea |
5,813 |
6,144 |
5.7 |
|
Sky |
1,261 |
1,415 |
12.2 |
|
Land |
6,961 |
7,475 |
7.4 |
|
Internet |
8,206 |
8,470 |
3.2 |
|
合計 |
22,242 |
23,505 |
5.7 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
<1>経営成績の分析
当期の経営成績については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」をご参照下さい。
<2>財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金などの増加により、前連結会計年度末に比べて2,699百万円増加し、25,757百万円となりました。負債は、未払法人税等などの増加により、前連結会計年度末に比べて942百万円増加し、4,212百万円となりました。
純資産は、前期末及び当中間期末に配当1,437百万円を行う一方で、親会社株主に帰属する当期純利益3,115百万円を計上したことなどにより、前連結会計年度末に比べて1,757百万円増加し、21,545百万円となりました。これらの結果、当連結会計年度末の自己資本比率は83.5%となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
<1>キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
<2>所要資金の調達方針
当社グループの所要資金の調達は、当社グループにおける財務安定性及び資本コストの適正性を勘案して行うことを方針としております。また、グループにおける資金需要を当社にて一元把握し、調達することとしております。基本的に、多額な設備投資以外の資金需要は「営業活動によるキャッシュ・フロー」により確保することとし、子会社(グローバルビジネスモデルにおけるSSB: Strategic Sales Base)にて資金の不足が生じる場合には、当社からの貸付けによって補うことを原則としております。
なお、グローバルビジネスモデルにおけるSSBは、本来的に戦略性に重点をおいた販売拠点展開として投資しているため、資金を固定的に用いるのではなく、その販売拠点の戦略性の変化に対してダイナミックに変化させることができるものとなっております。
<3>資金調達の方法
運転資金につきましては、「営業活動によるキャッシュ・フロー」を原資として、必要な場合は金融機関からの短期的な借入を行い、設備投資・投融資資金につきましては、金融機関からの長期借入金・社債及び証券市場を通じての増資等により調達することとしております。また、より効率的な資金調達を行うため、取引金融機関とコミットメントライン契約及び当座貸越契約を締結しております。
<4>資金の流動性について
当社グループは、現在及び将来の事業活動のために適切な水準の流動性の維持及び機動的・効率的な資金の確保を財務活動の方針としております。当連結会計年度は、現預金及びコミットメントラインを十分に確保し、資金の流動性を維持しております。当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は16,970百万円となっております。また、流動比率は626.6%となっております。
③ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用等、開示に影響を与える判断と見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
当社グループが採用している重要な会計方針(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載)のうち、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼす事項であると考えております。
<1>貸倒引当金の計上
当社グループは、債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。将来、顧客の財政状態の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。
<2>固定資産の減損処理
当社グループは、事業用資産について、内部管理上、キャッシュ・フローを生み出す最小単位を基準として資産のグルーピングを行っております。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、その減少額を減損損失として計上しております。減損兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討してまいりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、追加の減損損失の計上が必要となる可能性があります。
<3>繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、課税所得がその見積り額を下回る場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が計上される可能性があります。
該当事項はありません。
当社グループでは、民間の気象情報会社として「船乗りの命を守りたい。地球の未来も守りたい。」という夢を掲げ、気象が水、電気、交通、通信に続く第5の公共資産=公共インフラであるという考えのもと、世界中のあらゆる企業、個人の生命、財産に対するリスクを軽減し、ソリューションの提供などを通じた顧客の事業の効率化・最適化の機会の増大を実現する気象サービスを目指しています。研究開発活動においては、革新的な気象サービスを実現する技術及びインフラの構築に注力しています。また、技術的な側面にとどまらず、事業の立ち上げを視野に入れ、市場創造を実現する体制の構築にも取り組んでいます。当社グループではData, Forecast, Community の3つのValueに基づいて価値創造を進めて参ります。それぞれに関連する主な研究開発活動は以下の通りです。
<Data>
提供を開始した海外渡航者向けの気象情報サービス「世界天気」の中核技術として、全世界を対象とする「世界の雨雲レーダー」を独自に開発しました。このレーダーは、当社の世界最大級の観測ネットワークで収集した各国の気象レーダーデータや、独自の気象予測モデルの出力に対し、AIによる分析を加えることで、48時間先までの雨雲の動きを1時間ごと、5km四方の解像度で予測し可視化するものです。具体的な提供情報としては、世界の主要約1,500地点における2週間先までの天気・気温・降水確率の予報や、国内主要都市の月別平年値比較データなどです。
<Forecast>
生成AIによるアシスタント機能『お天気エージェント』を開発、提供を開始しました。これは、自社が保有する詳細な気象データ、具体的には全国約40万地点のピンポイント予報、250mメッシュの超高解像度雨雲レーダー、2018年以降の過去気象データなどを情報源に用いています。技術的な特徴として、ユーザーは自然言語を用いたチャット形式で、従来のアプリケーションのUIでは困難だった複雑な条件でのデータ抽出が可能となります。同社が蓄積してきた詳細な気象・防災情報と最新の生成AI技術を組み合わせることで、膨大なデータセットに対する新たな情報アクセス手法を提供する試みとなっています。
また、第三者機関の調査において、年間予報精度(適中率)で国内主要5サービス中3年連続1位の評価を獲得しました。全国13,000カ所に展開する独自の観測網からの物理的な観測データと、ユーザーから寄せられる1日約20万通の天気報告や空の写真(ウェザーリポート)といった、クラウドソーシングによる定性的な実況情報を統合・活用することで実現しています。また、これらの多様なデータソースを基にした日々の予報評価とアルゴリズムの改善を継続的に実施する運用体制を構築しており、このフィードバックループが精度の維持・向上に寄与しています。
<Community>
ドローンを活用した医薬品配送ビジネスモデルの実現を目的として、技術的および運用面の検証を実施しています。本実証は、東京都の「ドローン物流サービスの社会実装促進に係る実証プロジェクト」に基づき、都心部におけるドローン物流サービスの早期社会実装、具体的には特定の条件下におけるドローンの安全な運航と、医薬品という特別な要件を持つ物資の配送プロセスを確立するためのもので、検証ではドローンの運航ルートにおける局地的な気象変化の把握や、突風・視程不良といった安全運航に影響を及ぼす気象リスクの評価に、当社の高精度な気象予測技術が活用されます。
なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は