当社代表取締役社長執行役員大石 清恭は、当社の財務報告に係る内部統制の整備及び運用に責任を有しており、企業会計審議会の公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」に示されている内部統制の基本的枠組みに準拠して財務報告に係る内部統制を整備及び運用しております。
なお、内部統制は、内部統制の各基本的要素が有機的に結びつき、一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものであります。このため、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性があります。
財務報告に係る内部統制の評価は、当事業年度の末日である2025年1月31日を基準日として行われており、評価に当たっては、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠しております。
本評価においては、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)の評価を行った上で、その結果を踏まえて、評価対象とする業務プロセスを選定しております。当該業務プロセスの評価においては、選定された業務プロセスを分析した上で、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点を識別し、当該統制上の要点について整備及び運用状況を評価することによって、内部統制の有効性に関する評価を行いました。
財務報告に係る内部統制の評価の範囲は、当社並びに連結子会社及び持分法適用会社について、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲を決定しております。財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性は、金額的及び質的影響の重要性を考慮して決定しており、当社並びに連結子会社5社及び持分法適用関連会社1社を対象として行った全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制の評価範囲を合理的に決定しました。なお、連結子会社5社及び持分法適用関連会社2社については、金額的及び質的重要性の観点から僅少であると判断し、全社的な内部統制の評価範囲に含めておりません。
業務プロセスに係る内部統制の評価範囲については、各事業拠点の前連結会計年度の売上高(連結会社間取引消去後)の金額が高い拠点から合算していき、上位2事業拠点(当社及びIP Infusion Inc. (以下、「当該米国子会社」といいます。))の合計がおおむね90%に達することから、これらの2事業拠点を「重要な事業拠点」としました。選定した重要な事業拠点においては、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目として売上高、売掛金及び棚卸資産に至る業務プロセスを評価の対象としました。さらに、選定した重要な事業拠点にかかわらず、それ以外の事業拠点をも含めた範囲について、重要な虚偽記載の発生可能性が高く、見積りや予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスやリスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセスとして、当社の原価計算プロセス、ソフトウェアプロセス、当該米国子会社の原価計算プロセス(ソフトウェア資産計上プロセスを含む)などを評価対象に追加しております。
下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼすこととなり、開示すべき重要な不備に該当するため、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断しました。
記
当社は、当社グループのネットワーク事業を主に担う連結子会社であるIP Infusion Inc.(以下、「当該米国子会社」といいます。)における一部取引について、不適切な売上計上の疑義が生じたため、2024年11月29日に特別調査委員会を設置し、調査を進めてまいりました。当社は、2025年6月30日に特別調査委員会から調査報告書を受領し、その結果、当該米国子会社において、以下の事実が判明しました。
(a) ソフトウェアのライセンスの販売取引に関し、本体契約と同時期に顧客をリスクフリーにするサイドレターを別途締結し、当該米国子会社が実質的にリスクを継続的に保持する条件となっていたにもかかわらず、本体契約のみに基づき売上を計上していたこと(売上高の過大計上)。
(b) ソフトウェアのライセンスの販売取引に関し、収益認識の条件が充足されていない状況であるにもかかわらず、虚偽の取引証憑や資料を作成して売上を計上していたこと(売上高の早期計上)。
また、特別調査委員会の調査に並行して、当社側で当該米国子会社のソフトウェア資産計上額の点検を行った結果、ソフトウェア開発費の資産計上範囲について、同社の規定方針からの逸脱が判明したため、あるべきソフトウェア資産計上額の再算定を行った結果、以下の事実が判明しました(以下、これらの事案を合わせて「本件事案」といいます。)。
(c) ソフトウェアの資産計上額の算定根拠となる集計データの内容区分に関する不適切な操作や、ソフトウェアの計上タイミングの根拠となる取引証憑の不適切な改変が行われており、その結果、過去に遡って当該米国子会社におけるソフトウェア資産計上額が過大計上であったこと(ソフトウェアの過大計上=研究開発費等の過少計上)。
これらは、いずれも当該米国子会社の一部のマネジメント(内、1名は当社の取締役も兼務。以下同じ。)が関与する形で進められたものでしたが、当社は、これら売上高の過大計上及び早期計上、並びにソフトウェアの過大計上について関連する会計処理を過年度に遡って訂正する必要があると判断し、2021年1月期から2024年1月期の有価証券報告書、2023年1月期第2四半期から2025年1月期第1四半期までの四半期報告書及び2025年1月期半期報告書について、訂正報告書を提出いたしました。
当社は、本件事案に関し調査報告書で判明した事実と原因分析に関する報告を踏まえ、改めて財務報告に係る内部統制の再評価を行った結果、当社及び当該米国子会社の全社的な内部統制、並びに当該米国子会社の決算・財務報告プロセス、収益認識プロセス及び原価計算プロセス(ソフトウェア資産計上プロセスを含む)の一部に不備があったことを識別いたしました。当社は、これらの不備は財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高いため、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。
本件事案における売上の過大計上及び早期計上、並びにソフトウェアの過大計上の不適切な会計処理が長期間にわたり行われてきた原因及び内部統制上の不備として、以下を認識しております。
(1) 米国子会社における不備について
① 全社統制(統制環境)の不備
本件事案では、予算対実績やネットワーク事業に対する期待を意識した当社の米国子会社の一部のマネジメントが、売上取引に関する取引条件の交渉(サイドレター含む)や売上計上の根拠証憑や資料の不適切な改変、並びにソフトウェア資産計上のための根拠データの操作や取引証憑の不適切な改変に関与する形で進めており、概して当該米国子会社の一部のマネジメントがその立場を利用し、同社の内部統制を無効化することにより、不適切な売上計上やソフトウェア資産計上を行っていた、というものでした。従って、当該米国子会社の一部のマネジメントにおいて、信頼性ある財務報告に対する姿勢や規範意識が不十分であったものと認識しております。
また、事業規模が拡大する当該米国子会社において、特に会計処理に関して、当該米国子会社のCFOに管理機能が集中し続けていた結果、財務報告に関連する内部牽制の仕組みが十分に構築できておりませんでした。加えて、当該米国子会社全体において、日本の上場企業である当社グループの一員としての意識が必ずしも十分に醸成できていなかった点も認識しております。
② 収益認識プロセスに係る内部統制の不備
本件事案における売上の過大計上や早期計上は、当該米国子会社のマネジメントが関与する形で進めており(売上計上の根拠証憑の不適切な改変等も含む)、当該米国子会社内での自立的な内部統制が機能しづらい状況における処理でした。
このような状況に至った背景として、当該米国子会社において、収益認識に関する一連の社内ルールが十分詳細に設定がなされていない中、新規取引先に対する十分な調査(代表者や会社実態の把握も含む)や、契約書等についても系統立った網羅的な保管が十分になされておらず、また、ライセンス売上に対して、ライセンス管理システム上の各種情報(顧客側におけるダウンロードの実績や、バージョン情報等)との整合性を別途確認するような手続までは求められていなかったことが、本件事案のような不適切な売上計上の温床となった可能性がある点、すなわち、収益認識プロセスに係る内部統制上の不備を認識しております。
③ 原価計算プロセス(ソフトウェア資産計上プロセスを含む)に係る内部統制の不備
本件事案におけるソフトウェアの過大計上は、当該米国子会社の他のマネジメントの意を汲んだCFOが指示する形で進められており、特に開発費のソフトウェア計上(資産計上)に関しては、会計処理の承認も含め当該CFOが広く権限を有していたため、当該米国子会社内での自立的な内部統制が実質的には機能しない状況における処理でした。
このような状況に至った背景として、当該米国子会社では、開発費のソフトウェア計上(資産計上)の要件やその集計プロセスに関する社内ルールが、同社におけるソフトウェアの開発実態を十分反映した形で設定されておらず、そのことが本件事案のような不適切なソフトウェアの過大計上の温床となった可能性がある点、すなわち、ソフトウェア資産計上プロセスに係る内部統制上の不備を認識しております。
④ 決算・財務報告プロセスに係る内部統制の不備
当該米国子会社のCFOが本件事案における各種不適切な会計処理を承認していたため、同社における決算・財務報告プロセスの会計仕訳入力時のCFOレビュー・承認プロセスには不備があったものと認識しております。
(2) 当社における全社的な内部統制の不備について
① 全社統制(統制環境、情報と伝達)の不備
当社業務執行取締役(海外担当)が、米国子会社の取締役を兼務しており、当社取締役でありながら当該米国子会社側における不適切な会計処理に関与していたことから、当社側においても信頼性ある財務報告に対する姿勢や規範意識が必ずしも十分ではなかったものと認識しております。
また、当社取締役会における業務執行取締役と社外役員(特に社外取締役)との関係性において、率直な議論ができない状況があり、業務執行取締役にはネガティブ情報の取締役会への上程に対する消極的な姿勢がありました。その結果、本件事案に関する重要な情報も、当社取締役会及び監査役に適切に伝達・共有されず、取締役会による業務執行取締役の監督が必ずしも十分にできていなかったと認識しております。
② 全社統制(リスクの評価と対応)の不備
本件事案は当社の米国子会社における事案であり、当該米国子会社は当社によるグループ会社化後、ネットワーク事業において中心的な役割を果たし、ネットワーク事業の拡大に伴い当社グループ全体における重要性も高まってきておりました。一方、当社側において、本件事案のような子会社のマネジメントが関与した不適切な会計処理に関するリスク認識が必ずしも十分にできておらず、その結果、後述する統制活動やモニタリング体制の強化、当該米国子会社における取引実態についての情報収集等が十分になされず、当該米国子会社での特定の取引先との取引の急速な拡大、代金回収の大幅な遅延、直接の取引先ではない第三者からの入金といった状況についても、適切なリスク対応ができておりませんでした。
③ 全社統制(統制活動、モニタリング)の不備
前述のとおり、本件事案のような子会社のマネジメントが関与した不適切な会計処理に関するリスク認識が十分ではなかった結果、当該米国子会社の企業規模等の拡大に対し、当社の管理部門や内部監査部門による統制活動やモニタリングの強化が十分には行えておりませんでした。当該米国子会社のCFOのレポーティングライン(報告経路)が当該子会社のCEOのみとなっており、当社側からの統制が効きづらい状況が続く中、現地側からの情報収集も含め、海外拠点に対する第2線・第3線としての統制活動やモニタリングについて、十分な体制構築ができておりませんでした。
これらの全社的な内部統制、決算・財務報告プロセス、収益認識プロセス及び原価計算プロセスにおける不備は財務報告に重要な影響を及ぼしており、開示すべき重要な不備に該当すると判断いたしました。
なお、上記事実は当事業年度末日後に発覚したため、当該不備を当事業年度末日までに是正することができませんでした。
当社は、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、これらの開示すべき重要な不備を是正するために、特別調査委員会からの指摘・提言も踏まえ、以下の改善策を講じて適正な内部統制の整備及び運用を図ってまいります。
(米国子会社における改善策)
(1) 米国子会社におけるマネジメント体制の刷新
当該米国子会社において本件事案への関与が認められた同社取締役及びCFOについては、本件事案に関する経営責任を明確化の上、体制の刷新を進めます。具体的には、同社のCEO及びCFOを変更し、関与者の財務報告への影響力を早急に排除するとともに、当面は当社からの人員による、もしくは当社への報告義務を持たせた外部専門家を活用した監視監督を行います。
(2) 米国子会社における管理体制の強化
当該米国子会社の現在の規模に見合った管理体制を構築するため、新たに法務・コンプライアンス担当人材も採用の上、管理部門の人員を増強します(必要に応じ外部専門家の支援も受ける体制を構築いたします)。その上で、同社CFOに集中していた権限を、経理・財務と法務・コンプライアンスの第2線の両機能に分化し、相互に牽制を働かせる管理体制を構築いたします。
また、同社のCFOには当社CFOへの直接報告義務を課し、当社からのモニタリングの実効性を高めます。
(3) 海外拠点における意識改革
当該米国子会社を含む当社の海外拠点において、当社グループの一員としての意識の醸成を行うため、特に財務報告の重要性等についての継続的な教育を実施いたします。
(4) 収益認識に関する社内規程等の再整備
当該米国子会社における多様な取引形態や取引の実情を踏まえ、改めて収益認識に関する社内規程の見直しを行い、取引類型に応じた会計処理方針の規程の詳細化・具体化を行います。またこれらの規程や設定趣旨については、同社の経理部門のみならず、営業部門等関連部門へも周知徹底するとともに、継続的な意識づけを行います。
(5) 本件事案を踏まえた収益認識に係る業務フローの再構築
本件事案を踏まえて、収益認識に関する各種業務プロセスの見直しと再構築を進めます。具体的には、取引先管理の強化(取引開始時の審査項目の見直しを含む)や、各種契約書の事前チェックの強化(会計的なリスクの事前評価や、契約が複数のものからなる場合の各契約間の相互関連の評価、契約への署名や決裁の権限・職務分掌の明確化等)、出荷(Shipment)管理の強化(エンジニア部門内における独立したチェック体制の構築、出荷の成立要件の明確化、出荷証憑における例外の明確化等)等について改めて商流ごとに各種プロセスと手続の改善及び周知徹底を進めます。
(6) ソフトウェアの資産計上に関する社内規程等の再整備
当該米国子会社におけるソフトウェア開発の実情を踏まえ、改めてソフトウェアの資産計上に関する社内規程の見直しを行い、資産計上を行う費用の範囲(計上開始と計上終了のタイミングも含む)について社内規程の詳細化・具体化を行います。またこれらの規程や設定趣旨については、同社の経理部門のみならず、エンジニア部門等関連部門(ソフトウェア開発を行う当社の他の子会社も含む)へも周知徹底するとともに、継続的な意識づけを行います。
(7) 本件事案を踏まえたソフトウェア資産計上に係る業務フローの再構築
本件事案を踏まえて、ソフトウェア資産計上に関する各種業務プロセスの見直しと再構築を進めます。具体的には、ソフトウェア開発に関わるエンジニアによる工数入力の正確性の向上のための仕組みの構築、経理部門における手作業による工数データの修正作業についてのチェック等の改善を進めます。加えて、特にソフトウェア計上時期に関しては、エンジニア部門から報告された情報を経理部門が承認することで相互牽制が働く体制を構築いたします。
(当社における改善策)
(1) 当社における意識改革と経営トップのコミットメント
財務報告に関する当社全体の意識向上のため、継続的な教育を実施いたします。全社的な教育においては、財務報告やコンプライアンス等の内容を織り込むとともに、特に経営幹部向けの教育においては、財務報告、ビジネスエシックス、経営者のインテグリティ等に関する体系的・継続的な研修を行います。
また、それらに先立ち、当社経営トップが再発防止に向けた強いリーダーシップを発揮すべく、本件事案の総括を行い、反省し、どうあるべきかを考えたうえで、当社の全役職員に対し、自らを含め全社的に意識改革をしていく必要がある点、経営トップ自らが責任をもって主導していくという点を、トップメッセージとして発信いたします。
(2) 当社におけるガバナンスの改善
取締役会における業務執行側と社外取締役との間に健全な緊張関係を維持しながら、率直かつ建設的な議論ができるような環境を整えるため、特に取締役会における情報伝達の観点から、経営会議において共有・議論された内容のうち、重要なものが過不足なく取締役会に共有される仕組みと、後述する第2線・第3線における内部統制において検出された重要なリスク情報が漏れなく取締役会に報告される仕組みを構築いたします。
(3) 当社から米国子会社へのコントロールの強化
当該米国子会社CFOのレポーティングライン(報告経路)を当社に設定したうえで、同社のCFOの採用・評価・解雇に関する人事についても、当社CFOが権限を持つ体制整備を進めます。また当該米国子会社において一定の統制体制の運用が整うまでの当面の間は、外部専門家の協力も得ながら、当社CFOが当該米国子会社に各四半期決算の都度、現地に赴き、重要な取引や契約、会計処理等について直接確認を実施するようにいたします。
(4) 当社の管理部門(第2線)の強化
当社の管理体制の全般的なリソースについて拡充を図るとともに、特に海外拠点の管理とコントロールを強化いたします。具体的には、海外拠点の事業部門・経理・法務から当社への報告体制を整備し第2線同士での連携を強化いたします。
また、四半期毎に金額的に特に重要性の高い取引については、従前より当社の経理が行っていた取引証憑の確認に加え、当社法務も連携したうえで、関連契約書のレビューや取引担当者への質問を実施することで、会計・法務面から財務報告観点からのリスクを意識したレビューを実施するようにいたします。なお、海外拠点の販売管理システム等の重要性の高い業務システムについては、当社の管理部門に閲覧権限を付与し、必要に応じて現地の各種データを直接確認できるような体制も構築いたします。
(5) 当社の内部監査部門(第3線)の強化
当社の内部監査部門についても、体制の増強を進め、特に海外拠点に対する内部監査の強化を行います。定期的に当社の経理部門等の第2線の問題意識や懸念事項を吸い上げ、財務報告観点からのリスク分析を行ったうえで、内部監査の計画や手続の立案を行うとともに、当面は外部専門家の支援も受けながら海外拠点の現地監査をより深度あるものにいたします。
該当事項はありません。
該当事項はありません。