第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社は1981年に設立以来、経営のモットー「愛と夢のある企業」と5つの経営理念を掲げ、“お客様の夢を実現するソリューションカンパニー”を目指して参りました。私共の事業は決して目立つことのない裏方ではありますが、夢が溢れる社会を実現するための下支えとして必要不可欠であると重責を自負しております。

当社は原点である経営モットーと経営理念を軸に、SDGs(2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標)を経営に取り入れることにより、社会への対応力を高める事が出来ました。今後は益々、当社グループが注力する「FinTech」、「Cloud」、「IoT」、「CASE」、「AI」などの技術を駆使したデジタルトランスフォーメーション(DX)ビジネスを推進し、深刻化する地球規模の課題解決の一助となるソリューションを創出し、事業を通じて持続可能な社会の実現に寄与したいと考えています。

ソルクシーズグループはサステナビリティ経営を推進し、半世紀、100年後も末永く愛される「愛と夢のある企業」を目指してまいります。

 

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは最新の情報技術(IT)を駆使し、お客様にご満足頂ける最適なITソリューションを提供することを基本方針とし、この方針に沿った継続的な努力により社業の拡大・発展を期します。また、最適なITソリューションの提供を通じ、社会に貢献することを会社の使命といたします。

 

 経営のモットー

「愛と夢のある企業」を目指します。合理性に裏打ちされた厳しさは当然必要ですが、ともすれば合理性に偏重しがちなソフトウェア開発が仕事の中心であればこそ、その経営には愛と夢が必要と考えます。

 

 経営スローガン:「チェンジ・チャレンジ・スピード」

激変する業務環境、根底から変わりつつある業務構造に合わせ、私たち自身の意識、スキル、業務プロセスを変えてまいります。若いメンバーからなる組織のまとまりを活かし、スピードを大事にしながら、大胆な発想の下、変化に果敢に挑戦し続けます。また、こうした姿勢があってはじめて同じような状況におかれているお客様の変革を支えることができるものと確信しております。

 

 

(2)経営環境

① 当社グループを取り巻く事業環境と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

a.人材およびビジネスパートナーの確保

わが国では、DX推進の重要性が浸透し、IT企業だけでなくユーザー企業までも優秀なIT人材の囲い込みを進め、IT人材獲得競争の時代に入っております。その結果、新卒、中途を問わず、優秀なIT人材の確保が困難になりつつあります。当社はもともと技術者達が「IT技術者の楽園を作ろう」として自ら設立したという経緯から、スキルを磨くための教育・研修制度の充実、働きやすい環境の整備等に努めており、IT人材確保に必要な追加施策として給与水準の見直しについても既に着手しております。今後についても、長期安定的な業績拡大のためには、引き続き魅力的な職場環境作りに努めるとともに、IT人材マーケットや物価の動向等も踏まえた弾力的な給与水準の見直しが必要であると認識しております。また、開発リソース確保の方法として、品質の高いビジネスパートナーの維持・拡大も重要であり、当社では長期優良案件の確保、ノウハウ・スキルに応じた弾力的な条件提示等に努めておりますが、優秀なビジネスパートナーとの関係強化のための施策を更に推進します。

b.クラウドサービスのニーズの高まり

単独のクラウドサービスの利用だけではなく、クラウドサービスをAPI連携させた利用形態など、企業のクラウドの利用方法が多様化しています。更に、IoTやAIシステムとクラウドサービスの連携が進み、今迄以上にクラウドファーストが一般化し、質の高いクラウドサービスを提供することが課題となっています。これに対応して、連結子会社株式会社Fleekdriveが提供するオンラインストレージサービス「Fleekdrive」、クラウド帳票サービス「Fleekform」を核に、他のサービスとの連携を進めます。また、引き続き、海外市場の開拓・拡大を図ります。

c.IoTの活用

IoTによって収集したビッグデータの分析・解析にAIを活用したサービスが始まり、ウェアラブルデバイスや様々なクラウド技術を組み合わせた新たな領域としてヘルステックも進化しております。今後は、グループが保有するセンサーを利用したサービスと画像AIなどを組み合わせ、これまでの2次元から3次元化に向けたセンシングソリューションを創出していきます。また、「いまイルモ」・「状態監視/予知保全システム」などの既存ソリューションについても、拡販に向けた活動を更に強化します。

d.CASEの進化

特定の条件下でシステムが全て操作し、人の対応は必要ない「自動運転レベル4」が2023年4月1日の道路交通法改正で解禁されました。また、次世代コックピットやスマートミラーなどの既存機能のスマート化や、車載センサーがクラウドに接続されるコネクテッドカーも市場に投入され、自動車を取り巻く環境が益々変化を遂げ、ソフトウェアの重要性が高まり品質の向上が課題となっています。これまで連結子会社株式会社エクスモーションを中心とした自動車業界へのソフトウェア設計の支援体制拡大を推進しておりますが、自動車業界以外の製造業からのソフトウェア設計の需要も伸びております。また、ハードウェアスキルからソフトウェアスキルへのリスキリングの動きが日本政府を挙げて推進されており、同様の人材育成事業も推進する方針です。

e.FinTechの実用化

日本政府が資産所得倍増計画を策定し、NISA制度・ⅰDeCo制度の改革が進んでおります。その為、ブロックチェーンやスマートコントラクトなどの分散型台帳技術(Distributed Ledgers Technology:DLT)を核にしたサービスが、益々活発化するものと思われます。当社グループでは、FinTech関連の開発案件の獲得を目的とした技術協力を中心に、ブロックチェーンやバーチャルカレンシーに関する開発案件へ参画を継続しています。銀行業務向けを手始めに、証券業務向けも始まり、更に今後は他の金融分野での取り組みも視野に入れた活動を行っていきます。

f.AI利用の本格化

ChatGPTの登場をはじめ「生成AI」は日進月歩で進化を遂げております。生成AIの適用範囲は製造現場における業務支援や製品開発支援に止まらず、金融・公共・通信・放送分野などにも利活用が広まると予測され、生成AIを組み込んだソリューションの提供が課題となり、加えてAIを分析・活用できる人材の確保も課題です。引き続き、ソフトウェア開発上流工程のコンサルティングにおけるノウハウ提供サービスに生成AIを組み合わせたソリューションなどの開発に加え、研修制度の拡充や社内コンテスト開催などにより社員の技術力向上を積極的に推進します。

② 注力分野

上記環境認識を踏まえ、当グループでは、以下の5分野を注力分野としてとらえ、デジタルトランスフォーメーションの推進に向けて一層の強化を行います。(下図の「注力する分野」)

 

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(3)経営戦略

当社グループは、次年度を初年度とする中期計画(2024年12月期~2026年12月期)を定め、基本方針として1)経営基盤の強化、2)本業であるSIビジネスの競争力強化、3)ストック型ビジネスの強化・拡大、4)海外マーケットの開拓をテーマとして掲げております。具体的な内容は以下の通りです。

 

1)経営基盤の強化

既存事業を再評価し、経営資源の成長分野への傾斜的集中と不採算部門の再構築を進めます。成長分野については、十分なフィージビリティスタディーとグループ内シナジー効果の確認の下、積極的な進出・強化を図って参ります。

2)本業であるSIビジネスの競争力強化

業種・業務別の専門特化戦略を継続推進し、非価格競争力を強化いたします。また、オフショアやニアショア開発を積極的に利用し、価格競争力の強化と、お客様との低コストメリットの共有化を推進します。

3)ストック型ビジネスの強化・拡大

クラウドサービス「Fleekdrive」や、IoTによる見守りサービス「いまイルモ」、IoTソリューションである「状態監視/予知保全」などについては、引き続き強化・推進し、事業基盤の強化と収益安定化に向けて注力していきます。SIビジネスと並ぶ収益の柱として成長を加速させ、営業利益額比率で50:50にすることを目指します。また、クラウド・AI・IoTの活用など、ICT市場における技術の変化に対応し、グループの持つソリューションの更なる拡大について、継続的に推進いたします。

4)海外マーケットの開拓

海外マーケットに対し、グループ内外の優れた製品・サービスを積極的かつスピーディーに紹介・展開し、新たなストック型ビジネスとして拡大します。その足がかりとして株式会社ノイマンにおけるベトナムの自動車教習所向けのソリューション展開については、現地に自動車教習所を合弁で設立し、日本の高水準な交通教育メソッドをベトナムに提供しております。今後は、ベトナム現地におけるソリューションの横展開を計画して参ります。

 

上記中期計画を推進する事業戦略を構築し、以下の通り各事業セグメントの強化に取り組んでおります。

 

 

a.ソフトウェア開発事業

顧客のSIベンダーへの期待はコスト面のみならず、スピード、専門性、ビジネスへの利用上の価値などを重視した総合的なサービスに変わりつつあります。当社ではITサービス業者としての専門性を活かし、ITシステムの保守・運用までをも含めたトータルサービスを提供し、顧客のニーズに対し、柔軟な体制で対応して参ります。クラウドを使う事を前提としたシステム開発案件が増加傾向であり、この様なトレンドに柔軟に対応するべく、既に体制を構築しておりますが、直近では金融領域において生成AIの顧客ニーズが高まりつつあり、更なる体制強化を図って参ります。

b.コンサルティング事業

ソフトウェア開発事業を推進するにあたり、上流工程における設計支援、システム構築の企画・提案等、高付加価値業務の重要性が今後益々高まっております。クレジット領域における専門コンサルティングファームの株式会社アリアドネ・インターナショナル・コンサルティングや、業務系システムのコンサルティングを得意とするインフィニット・コンサルティングの営業活動から派生するシステム開発需要をシームレスに繋げる事で、優良案件の開拓を推進して参ります。

c.ソリューション事業

お客様のビジネス上の現実的な課題を解決したいとするソリューションニーズは一層強まっております。当社グループではソフトウェア開発事業と並行し、売上・収益が要員数に依存しない安定収益業務として、ソリューション事業を拡大させる方針です。またオンリーワンとなるソリューションを創出していく技術力を保有していることから、当社の成長ドライバーとして今後も注力して参ります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、サステナビリティを巡る課題を経営の課題と捉え、サステナビリティ経営を推進しております。原点である経営モットー「愛と夢のある企業」と5つの経営理念「高い技術力を持ち社会に貢献する」「お客様に最高の満足を提供する」「皆が夢を持ち続けられる企業をめざす」「グローバル企業をめざす」「新ビジネス・新技術へチャレンジする」を軸に当社では、気候変動課題を含むサステナビリティの観点を踏まえた経営を推進するために、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を2024年2月に新設いたしました。

今後、サステナビリティ委員会を年1回開催し、サステナビリティ課題とその影響について審議・検討を行い、取締役会へ付議または報告され、取締役会は各種課題への対応方法や施策の指示をするといった管理体制を敷くことでガバナンスを確保いたします。

なお、体制図につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(2)リスク管理

当社グループでは気候変動リスクをはじめとするサステナビリティ関連リスクについてサステナビリティ委員会にて、リスクの特定・評価を行ってまいります。今後、サステナビリティ委員会にて特定されたサステナビリティ関連リスクについては、リスク管理委員会にも報告し、その他リスクと相対的な評価を行うとともに、その対応方針や施策の検討を行い全社的なリスク管理プロセスへ統合を推進します。

なお、重要なリスクについては取締役会において審議・決議するとともに、関係部署を通じリスク低減に向けた対応策を実施し、対応策の進捗については取締役会に定期的な報告を実施する予定です。

 

(3)戦略

当社グループでは、SDGsを経営に取り入れ、注力する「FinTech」、「Cloud」、「IoT」、「CASE」、「AI」などの技術を駆使したデジタルトランスフォーメーション(DX)ビジネスを推進し、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。サステナブルな社会を実現する為には、システム開発技術を駆使したDXソリューションビジネスに注力し、持続可能でよりよい世界に繋がるソリューションの創出に取り組む事が必要となります。DXビジネス推進を標榜する当社では、「イノベーションで産業や技術の発展に貢献」と「次世代のIT人材の育成を通じ社会や産業の発展に貢献」を重点目標と捉えており、これを可能とするには、IT人材・イノベーション人材の育成および多様な人材が実力を発揮できる環境の整備が必要と考えております。人材に関する社内環境整備においては、採用数の拡大と従業員満足度を高めるための人事制度をはじめとする社内体制の構築、教育・研修プログラムの拡充に着手しております。

 

① 人材育成方針

・新卒や未経験者を中心とした採用活動による幅広い人材確保と適切な教育機会の提供

・当社グループとのシナジーが見込まれるターゲットへのM&Aによる人材確保

・継続的なベースアップや適切な評価制度運用による従業員のモチベーションアップ

・キャリアパス制度の適切な運用と、それに伴う従業員への学びの機会創出および支援

・高度な技術を保有するスペシャリストの育成を後押しするチャレンジ制度

② 社内環境整備方針

・ダイバーシティ&インクルージョン推進を目的とした従業員への教育機会の提供

・社内ベンチャー制度などのチャレンジ機会の創出

・テレワークや副業など柔軟な働き方の提供による離職防止

・職場環境改善やコミュニケーション活性化など、従業員の心身への影響を鑑みた各種施策による健康経営の推進

 

 

(4)指標及び目標

指標及び目標につきましては、今後、新設したサステナビリティ委員会等で検討し充実させていく方針です。

 

①気候変動に関する指標及び目標

気候変動については、2022年度の温室効果ガス排出量(Scope1,2)の算定を実施した結果、当社グループでは現時点において重要な影響がないと認識しておりますが、引き続き現状把握を行い環境への取り組み目標について検討してまいります。

 

②人材の育成および社内環境整備方針に関する指標及び目標

当社グループでは、「(3) 戦略」において記載したIT人材・イノベーション人材の育成および多様な人材が実力を発揮できる環境の整備に向けて、次の指標を用いております。なお、当該指標に関する実績は、当社のものとなります。当社グループ全体としての具体的な目標は現時点では設定しておりませんので、今後検討してまいります。

指標

実績(当事業年度)

目標(2026年3月末)

女性管理職比率

7.6%

10%以上

男女間賃金格差

81.6%

80%

女性社員の割合

18.2%

20%

 

 

3【事業等のリスク】

当社グループの事業その他に関するリスクとしては以下のようなものがあります。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、その影響をコントロール可能な範囲にとどめるよう、2006年度に設置した当社リスク管理委員会を中心に、適切なリスク対応に努めております。なお、この中には将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 受注、システム開発上のプロジェクトリスク

システムの受託開発業務においては、受注時に想定した以上に工数が嵩む場合や、検収遅れ、成果物に瑕疵があることによる追加原価が発生する場合があり、予定原価との差異が発生することにより、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、検収後においても、当社の責任に帰する重大なシステム障害が発生した場合には、当社グループの信用が損なわれ、その後の事業展開、業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対して、技術的問題や期間・工数の問題等を事前に検証する商談検討会を受注前に開催し、プロジェクト開始後にはPA会(プロジェクト審査会)を適宜・適切に開催して、問題が顕在化する前の事前対処に努めております。

 

(2) 一部顧客への依存

当社グループの売上高は、メーカー系ベンダー等で40%強程度が占められております。これら顧客は、外部環境等を考慮して営業政策を決定しており、これらの環境が大きく変動した場合、その営業政策を変更する場合があります。営業政策の変更により、当社グループの受注が大幅に減少した場合や受注条件が大幅に悪化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対して、特定顧客に過度に依存しないようリスクの分散に努めております。

 

(3) 外部環境の変化

当社グループの受注は、顧客企業の予算削減、顧客の業種特有の環境変化、情報サービス業界における価格競争の激化および新技術や新サービスの激しい変化などの外部環境要因により影響を受けております。従って、これらの要因が大きく変化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対して、特定の業種に過度に集中しないように、リスク分散や各事業に関わる技術の動向分析並びに研究開発等、新しいソリューションの開発に努めております。

 

(4) 要員および外注先の確保

中長期的に新卒者人口は減少傾向にあるため、業界一般の傾向として優秀な人材の確保が困難になる場合があり、当社グループにおいても必要なシステムエンジニア等の要員が十分確保出来ず、当社グループの業務に支障をきたす場合があります。また、システムの受託開発業務においては、協力会社の活用も不可欠であります。ICT投資が活況となり、システム開発案件の需要が増大した場合には、協力会社の確保が困難となり、開発リソース確保のための発注単価が上昇することで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対して、新卒および中途採用活動への注力、従業員への待遇向上による他社への流出防止、専門組織を社内に設置し協力会社の確保に努める等、リスクの軽減に努めております。

 

(5) 情報漏洩リスク

当社グループが属する情報サービス業界においては、業務特性上、顧客情報を取り扱うことがあります。情報漏洩事故等が発生した場合、当社グループの信用が損なわれ、その後の事業展開、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、最悪の事態に備え、情報漏洩賠償責任保険に加入しておりますが、リスクを完全に回避できる保証はありません。

当該リスクに対して、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得し、情報セキュリティ基本方針を定め、ソルクシーズグループ全社で遵守、徹底を図る等により情報漏洩のリスクの軽減に努めております。

 

(6) 海外事業リスク

当社グループは、ベトナムで現地法人による間接的な事業活動等を行っておりますが、今後は更に積極的に海外各国のマーケットを睨んだ事業活動を行ってまいります。海外進出には、①予期できない法律または規制の変更、②事業活動に不利な政治または経済要因の発生、③未整備な社会インフラによる影響、④税制等の変更、⑤戦争、テロ、伝染病、その他の要因による社会的混乱などのリスクが内在しております。

当該リスクに対して、法律事務所等と契約を締結し、適時適切な対応が採れる体制を整え事前にリスクの軽減に努めております。

 

(7) 投資有価証券の減損リスク

当社グループでは、業務上の関係構築、余資運用等を目的に取引先等の投資有価証券を保有しております。投資有価証券の評価は発行会社の財政状態や経営成績等の個別の事情または株式市場や外国為替等の動向に依存しております。

当該リスクに対して、投資先の経営状態を把握できる様に資料の収集を行い、適宜分析のうえ早期対応が取れる体制を整え、事前にリスクの軽減に努めております。しかしながら、完全に回避できるものではなく、当社グループが保有する投資有価証券について、今後時価の下落や実質価額の低下により減損処理を行うこととなった場合、投資有価証券評価損等の計上により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) M&A・業務提携

当社グループは事業基盤の強化・拡充のためにM&Aや業務提携は非常に重要であると認識しており、積極的に対応していく方針です。それらを実施する場合には、対象企業の財務内容等についてデューディリジェンスを行うことにより、事前にリスクの軽減に努めておりますが、その後の市場環境の変化や不測の事態により、当初予定していた効果を得ることができず、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対して、事後においても定期的に定量面・定性面をウォッチし、変化の予兆を掴み早期対処をすることでリスクの軽減に努めております。

 

(9) 特有の法的規制・取引慣行

当社グループの属する情報サービス業界においては、請負契約による受発注が多くを占め、元請け、下請けといった請負関係の多重構造や顧客先常駐による業務形態が一般的であります。その為、これらの対応が不十分であるとして、監督官庁から是正指導を受けた場合には、当社グループの信用が失墜し、業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクに対して、当社グループでは請負業務の適正化のためガイドラインを制定し、社員に対してその遵守の徹底を図るとともに、外注先、顧客に対しても協力を要請し、事前にリスクの軽減に努めております。

 

(10) 大規模災害や重大な感染症等に関するリスク

地震等の大規模な自然災害の発生やテロにより社会インフラや当社グループの事業所等が壊滅的な損害を被った場合、ならびに新型コロナウイルス感染症のような大規模な感染症等の発生によって、従業員等の感染や、感染拡大防止のために行動が制限される等の場合には、システムやサービスの提供が困難になり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対して、不測の事態の発生に備え、災害対策マニュアルの構築および災害対策本部の整備、危機対策訓練の実施の他、当社グループ社員のリモートワーク推進およびインフラ環境整備等の施策を講じております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

  当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」とい

 う。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

当連結会計年度の我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限等が緩和され、世界的な半導体不足も改善が進むなど、経済活動の正常化が進みましたが、中東等での紛争勃発・拡大による原油供給の不安定性の問題が浮上するなど、依然として先行き不透明な状況下で推移しました。

国内IT投資については、広範囲の業種においてデジタルトランスフォーメーション(DX)化や生成AIのビジネス応用などの取り組みが進んだ外、国際情勢を反映した防衛関連需要等も加わり、全般的に堅調に推移しましたが、一方でIT人材の人員不足が常態化しました。

 

このような環境の中、当社はセグメント毎に売上維持・拡大に向けた事業施策に注力するとともに、DX関連、AI関連を中心に以下のような戦略施策を実施・推進し、将来の成長を睨んだ事業基盤の強化に努めました。

(DX関連)

・高い計測技術を有する連結子会社株式会社イー・アイ・ソルにおいて、AI技術を使ったデータアナリティクスの分野で世界的に定評のあるSAS Institute社(NC, USA)とパートナー契約を締結。製造業におけるDX化やAI活用の推進に向け、協力体制を構築しました。

・自動車教習所向けソリューション提供をメインとする連結子会社株式会社ノイマンにおいて、教習所のDX化推進に不可欠の「デジタル教習原簿」の開発を完了。予約配車システム、オンライン学科教習ツールと合わせ、教習所業務の全てのシステムが繋がり、教習所業務のDX化が大きく進展しました。

・自治体のDX化支援のモデル事業として、岡山県真庭市の「真庭DX戦略推進協議会」に参画。DXソリューションの提供やeスポーツ推進企画等を通じ、地域経済の活性化に貢献しました。

(生成AI関連)

・連結子会社株式会社エクスモーションにおいて、これまでのソフトウェア開発上流工程のコンサルティングノウハウ提供サービスに生成AIを組み合わせた新しいサービス「CoBrain」のベータ版を開発。本格的なサービス提供に向けた準備が進展しました。

・当社においてもChatGPTコンテストを開催するなど、新しいアプリケーションやサービスの開発に取り組みました。

(競争力アップ)

・連結子会社株式会社エクスモーションにおいて、ソフトウェアのテスト業務を専門とする日の出ソフト株式会社を子会社化し、ソフトウェア開発のトータルコンサルティングサービスの提供を開始しました。また、テスト工程における品質向上ソリューションで定評のあるバルテス株式会社と業務提携し、ソフトウェア開発の品質改善と効率アップを更に強化・推進する体制を構築しました。なお、日の出ソフト株式会社は、2023年12月1日付で、株式会社buboに社名変更しております。

 

これらの結果、当連結会計年度の売上高は、前年度比13.6%増の15,883百万円となりました。セグメント別の外部顧客への売上高の状況は、次のとおりです。

・ソフトウェア開発事業は、DX需要を中心に長期・優良案件と開発リソースの確保に努めた結果、サービサー等の金融業向け、流通業向け、証券業向けなどが増収となり、情報機器販売の大口案件も加わって、同11.7%増の11,984百万円となりました。

・コンサルティング事業は、自動車業界におけるCASE需要等で好調であったエッジコンピューティング系(組込系)を中心に、同4.6%増の1,277百万円となりました。

・ソリューション事業は、エッジコンピューティング系(組込系)開発業務における極端な半導体不足の解消、自動車教習所向けソリューション業務におけるオンライン学科教習ツール売上の好調、クラウドサービス業務における収益認識基準適用の売上計上への影響の一巡化などにより、いずれの業務も増収となった結果、同28.7%増の2,621百万円となりました。

 

損益面につきましては、ソフトウェア開発事業およびソリューション事業が好調に推移した結果、売上総利益は同12.5%増の3,757百万円となりました。

販売費及び一般管理費は、コロナ禍で一時的に減少した旅費交通費・広告宣伝費等の費用が増加に転じたことにより、同13.0%増の2,612百万円となり、営業利益は同11.3%増の1,145百万円、経常利益は同13.8%増の1,202百万円となりました。また、連結子会社において臨時的な信託型ストックオプション関連費用(特別損失)105百万円の計上があったものの、一方で投資有価証券売却益(特別利益)119百万円の計上もあり、親会社株主に帰属する当期純利益は、同33.5%増の753百万円となりました。

 

②財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は7,791百万円となり、前連結会計年度末に比べ192百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が増加したことによるものであります。固定資産は4,137百万円となり、前連結会計年度末に比べ282百万円増加いたしました。これは主に、連結子会社の取得によりのれんが増加したほか、クラウド事業への投資によりソフトウエアが増加したことによるものであります。

この結果、総資産は11,929百万円となり、前連結会計年度末に比べ474百万円増加いたしました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は2,861百万円となり、前連結会計年度末に比べ323百万円増加いたしました。これは主に、未払法人税等およびその他の流動負債が増加したことによるものであります。固定負債は825百万円となり、前連結会計年度末に比べ273百万円減少いたしました。これは主に、長期借入金が減少したことによるものであります。

この結果、負債合計は3,687百万円となり、前連結会計年度末に比べ50百万円増加いたしました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は8,241百万円となり、前連結会計年度末に比べ424百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は62.3%(前連結会計年度末は61.2%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ176百万円増加し、当連結会計年度末残高は4,869百万円となりました。主な要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は1,386百万円(前連結会計年度は1,176百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益および減価償却費によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果支出した資金は534百万円(前連結会計年度は465百万円の支出)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出および連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動の結果支出した資金は675百万円(前連結会計年度は809百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出および配当金の支払額によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

1.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

 (自 2023年1月1日

   至 2023年12月31日)

    前年同期比(%)

ソフトウェア開発事業(千円)

9,211,843

112.8

ソリューション事業(千円)

1,499,586

114.8

コンサルティング事業(千円)

746,016

108.9

合計(千円)

11,457,446

112.8

(注)金額は、製造原価によっており、セグメント間の取引については相殺処理しております。

 

 

2.商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

 (自 2023年1月1日

   至 2023年12月31日)

    前年同期比(%)

ソフトウェア開発事業(千円)

298,151

93.9

ソリューション事業(千円)

353,657

135.7

合計(千円)

651,809

112.8

(注)金額は、実際仕入額によっており、セグメント間の取引については相殺処理しております。

 

3.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高

(千円)

前年同期比(%)

ソフトウェア開発事業

11,968,562

105.3

1,624,206

99.0

ソリューション事業

2,888,326

122.4

791,008

150.9

コンサルティング事業

1,309,387

107.8

264,479

113.7

合計

16,166,276

108.2

2,679,694

111.8

(注)1.セグメント間の取引については相殺処理しております。

2.当連結会計年度において、ソリューション事業の受注残高に著しい変動がありました。これは比較的長期大規模の受注があったことによるものであります。

 

4.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

 前年同期比(%)

ソフトウェア開発事業(千円)

11,984,646

111.7

ソリューション事業(千円)

2,621,618

128.7

コンサルティング事業(千円)

1,277,573

104.6

合計(千円)

15,883,837

113.6

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、総販売実績に対する割合が10%未満であるため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①当連結会計年度の経営成績の分析

当社グループでは当連結会計年度を初年度とする中期計画(2023年12月期~2025年12月期)においては、基本方針として1)経営基盤の強化、2)本業であるSIビジネスの競争力強化、3)ストック型ビジネスの強化・拡大、4)海外マーケットの開拓をテーマとして推進しております。

当連結会計年度における主な取組み状況は以下のとおりです。

1)経営基盤の強化

限られた開発リソースの中で企業価値向上を遂げる施策として、より利益率の高い開発プロジェクトへの要員シフト、ビジネスパートナーの新規開拓およびプライム案件の確保に注力しました。次年度以降についても成長分野への投資継続に加え、従来のSI会社のM&Aに加え、開発エンジニア育成を組み合わせたSI会社の買収も併せて行い、不足している開発リソースの早期拡充を図ります。

2)本業であるSIビジネスの競争力強化

主業務であるSIビジネスにおける喫緊の課題は人材確保であるとの認識に立脚し、この課題に対する取り組みとして、未経験者の採用を行っております。また、近年の円安・原材料費の高騰による物価上昇に対応するため、ベースアップを実施しました。

非価格競争力の強化については、引き続き専門特化戦略を推進しております。特にグループ会社においては、製造業向けモデル化支援、機能安全化支援などのコンサルティングサービスの高い技術力を活かした先進的なソリューションの提供や、計測系技術を活かしたIoTソリューションが引き続き好評でした。また、アナリティクスのトップ企業とパートナーシップを結び、適用分野の広がりとともに新たな顧客の開拓が進みました。

3)ストック型ビジネスの強化・拡大

安定的な収益を狙いとするストック型ビジネスとして注力しているソリューションの一つが、日本発のストレージサービス「Fleekdrive」であり、株式会社Fleekdriveが展開しています。コロナ禍において定着したリモートワーク等の寄与もあり、利用ユーザー数を伸ばしました。もう一つが自動車教習所向けソリューションであり、株式会社ノイマンが、オンライン学科教習ツール「N-LINE」の業界シェアをさらに拡大、デジタル視聴覚教材等の既存サービスとのクロスセルについても好調でした。他業界への展開としてドローン講座へのツール提供も開始しました。引き続き教習所DX化を推進して参ります。

4)海外マーケットの開拓

株式会社ノイマンにおけるベトナムの自動車教習所向けのソリューション展開については、日本の教習所指導要領の採用による品質向上や日本で実用されている教習管理システムを現地合弁自動車教習所に導入し生産性が向上した結果、現地合弁自動車教習所の業績が伸長しました。また、ベトナム国内向けソリューションの検証にも繋がっております。

 

②当連結会計年度末の財政状態の分析

当連結会計年度末における財政状態は、増加した現金の一部を金融機関からの借入の返済に充てることで、財務のスリム化を図るなどし、自己資本比率が、前連結会計年度の61.2%から62.3%となりました。

(資産)

流動資産は、営業活動によるキャッシュ・フローが増加したことにより現金及び預金が増加したほか、売上高の増加に伴い受取手形および売掛金が増加いたしました。

固定資産は、連結子会社の取得によりのれんが増加したほか、クラウド事業への投資によりソフトウェアが増加し無形固定資産が増加しました。また、連結子会社の将来減算一時差異が増加したことにより繰延税金資産が増加し、投資その他の資産も増加しております。

上記により、資産合計は、前連結会計年度末と比べて474百万円増加いたしました。

 

(負債)

流動負債は、売上高の増加に伴い営業債務、未払法人税等および未払消費税が増加したほか、大口案件の受注に伴い契約負債の増加がありましたが、金融機関からの借入の返済を進めたため、1年内返済予定の長期借入金は減少しております。

固定負債は、金融機関からの借入の返済を進め、長期借入金が減少しております。

上記により、負債合計は、前連結会計年度末と比べて50百万円増加いたしました。

(純資産)

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加し、前連結会計年度末と比べて424百万円増加いたしました。

 

③資本の財源及び資金の流動性の分析

当社グループは、資金の調達方針として、コスト面を考慮しつつも、安定資金を確保することを優先し調達することを基本方針としております。

運転資金につきましては、自己資金及び金融機関からの短期借入による調達を基本としておりますが、一定の運転資金については長期借入により調達しております。

設備投資資金につきましては、金融機関からの長期借入による調達を基本としております。ただし、余資が膨らんだ状況においては、財務の健全性向上のため、自己資金を新事業への投資資金として活用することも検討されます。

当連結会計年度においては、主に、ストック型ビジネス拡充のための設備投資に資金を使用したほか、十分な手元流動性を確保したうえで、金融機関からの借入の返済を進めるなどし、当社グループ内の余剰資金の有効活用に努めました。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国における一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

また、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.(1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

また、連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績やその時々の状況を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があることから、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、新たに締結した経営上の重要な契約等はありません。

 


 

6【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発活動で、特記すべきものはありません。