(1) 会社の経営の基本方針
我が国は製造業を中心として飛躍的な経済発展を遂げ、現代においては、高度な知識・情報技術を組み合わせてイノベーションを起こし分野ごとに最適化した商品・サービスを創出し複雑化・多様化したニーズに応えていくことで更なる経済発展を遂げようとしています。そのような経済発展の過程において、どの時代においても必ず社会から必要とされるのが“プロフェッション”と呼ばれる各分野において専門的な知識を有する方々です。必要とされる専門的な知識の内容はもちろん時代の変化に応じて変わってきますが、専門的な知識を有する“プロフェッション”の存在は過去も現在もそして将来においても必要不可欠なものです。TACは1980年の設立以来、その時々において世の中に必要とされる多くの“プロフェッション”を養成し世に輩出してまいりました。会計・税務分野からスタートし、今では法律分野、不動産分野、金融分野、公務員・労務分野、情報分野、医療分野、理系分野にまでその幅を拡げております。これからも時代の変化を見極めながら今の時代に必要とされる多様な“プロフェッション”を養成していくことで、社会の発展に貢献してまいりたいと考えています。
(2) 目標とする経営指標
当社グループの経営指標は、安定的な売上成長と現金ベース売上高営業利益率の極大化を目標としております。当連結会計年度は、学生を主な受講生層とする講座において、人材不足による良好な就職環境等の影響もあり低調に推移した一方で、社会人を主な受講生層とする講座が年間を通じて好調に推移したことで個人教育事業の業績も前年に比べ改善し、グループ全体の現金ベース売上高は前年を上回りました。コスト面においても拠点床面積の適正化や講座運営体制の見直しなどによるコスト削減努力を継続した結果、個人教育事業における現金ベースの営業損益が大きく改善したこと等もあり、グループ全体での現金ベースの営業利益を前年の営業赤字から営業黒字に転換することができました。
今後も個人教育事業における収益力の強化はもとより、グループ全体の収益力強化やそのための人的資本の有効活用等の改善を重ね、現金ベース売上高営業利益率の向上を目指してまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、「プロフェッションの養成」を経営理念として社会人、大学生を対象に資格教育、実務教育を核とした人材育成事業を展開しております。また、当社グループで学ぶ方々は、自己投資の結果として希望の業種・職種への就職・転職を望む方も少なくなく、当社グループの提供する人材派遣・紹介サービスも個人及び企業へ浸透しつつあります。したがって、当社グループの中長期的な経営戦略は、教育ビジネスと人材ビジネスを強固に結びつけながら、双方のビジネスを拡大させていくことであります。これにより、毎期安定的な売上成長と売上高営業利益率の向上を実現し、株主価値を高める努力を継続してまいります。
(4) 経営環境及び対処すべき課題
(経営環境)
当社が行っている資格関連教育サービスは、日本経済の健全な発展を支えていくために必要不可欠なプロフェッショナル人材の育成であり毎年一定の需要が見込める比較的安定したものであります。また、教材の開発や合格実績の蓄積などには相当の年数が必要となるほか講師の手配や受講生を収容するための教室の確保などには財務的な基盤も必要となることから、競合他社が比較的生まれにくい業界であると考えております。一方、近年はIT環境が飛躍的に進歩したことで様々な手段によって教育を提供する環境が整備され、それに伴い受講生・消費者側のニーズも多様化してきております。そのような経営環境の中において当社グループは、これまでに蓄積してきた合格するための教育ノウハウや合格実績に裏打ちされたTACブランドを生かし、個人教育事業、法人研修事業、出版事業及び人材事業の各事業においてビジネスを拡大させていくとともに、各事業ごとのシナジーを最大限発揮できるよう事業間の連携を図ってまいります。また、当社の主要な顧客層は大学生から社会人までと幅広いことにくわえ、資格や教育・研修の内容等によって合格や学習目的を達成するために必要となる提供すべきサービスも異なるため、常に最も適切なサービス提供が行えるよう努めてまいります。
(対処すべき課題)
① 個人教育事業の収益力強化
当社の個人教育事業を取り巻く外部環境は常に変化しており、その変化のスピードはこれまでと比較にならないくらい早まっております。また、当社が展開している資格講座は、目指す資格ごとに競合相手や市場環境が異なっていることにくわえ、受講生の属性も異なることから、多様な受講生ニーズを素早く察知しそれに適時適切に対応していく必要があります。
インフラとしての拠点展開、カリキュラム開発やWEB環境の整備には一定程度の時間と資源を必要とするものの、物事の判断のスピード感を高めて事業運営を行い、個人教育事業の収益力の一層の強化を図ってまいりたいと考えております。
② 人的資本への取り組み
日本国内における少子高齢化や人口減少などにより、従前に比べ人材の確保が困難な状況となっております。当社の持続的な成長のためには、優秀な人材の確保と育成に一層注力する必要があることから、重要な経営資源である人材への投資を積極的に行い、人材力の強化を推進してまいります。
③ 株価純資産倍率の改善
当社の直近事業年度末における株価純資産倍率(連結)は0.59倍であり、一般的に割安な株価水準とされる1倍を割っております。株価の変動要因は景気や金利などの外部要因及び業績や配当などの内部要因に大別されますが、当社が直接的にコントロール可能な内的要因に関して、個人教育事業の早期回復や新商品の開発などを通じた業績面での結果を残すことで、株価純資産倍率の早期改善に努めてまいりたいと考えております。
以上のような施策を継続して実施することにより、早期に結果を出していくことが当社に求められている課題であると認識しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(サステナビリティに関する基本的考え方)
当社グループは「プロフェッションとしての人材の養成」を企業理念とし、プロフェッションの養成を通して社会に貢献すべく、活動を行っております。“プロフェッション profession”とは、英語のprofess=「神の前で宣誓する」を語源とし、中世ヨーロッパでは、神に誓いを立てて従事する職業として神父や法律家、会計士、医師、教師、技術者などの知識専門家を指していました。そして神の詔命によってプロフェッションとなった人々には、社会や市民に対する大きな責任と厳しい倫理観が求められました。
この企業理念実現のためには、お客様や株主の皆さまをはじめ社会から信頼され、社会規範を遵守する企業であり続けなければなりません。そのためには役員及び従業員一人ひとりが高い倫理観をもって行動するべきであるため、当社グループは全役員及び全従業員が遵守すべき行動規範として、10項目からなる「TAC行動憲章」を制定し、「顧客の満足」、「人権の尊重」、「社会への貢献」、「環境への配慮」などを掲げております。
当社グループが養成するプロフェッション(国家資格取得者等)は各分野における専門的知識を有し、その知識を活用して社会生活に貢献する役割を担っており、一種の社会インフラとしての機能も担っております。このようなプロフェッションの養成をしていくことで社会の発展に貢献していきたいと考えています。
当社グループが行うプロフェッションの養成のためには、「顧客の満足」を満たす質の高い教育サービスを提供することが重要であることから、「教育サービス品質管理委員会」を設置し、担当委員が定期的な調査・審議・改善策の検討を行い、その結果を経営会議や取締役会に報告し、教育サービスの品質維持・向上を図っております。
また、プロフェッション養成のための教育サービスを提供する当社グループ自身にも高い倫理観や法令順守の意識を持つことが重要であることから、「コンプライアンス委員会」を設置し、そのもとに「著作権委員会」、「法務アドバイザリー委員会」、「広告表示審査会」、「ハラスメント防止啓発協議会」、「情報セキュリティ委員会」を設け、各委員会における定期的な審議・議論を経て、経営会議や取締役会への付議・報告を行っております。経営会議及び取締役会においては、上記各委員会の付議・報告に基づいて審議を行い、その結果を経営戦略やリスク管理等に反映させることとしております。
当社グループがプロフェッションの養成のための教育サービスを提供し、社会に貢献していくためには、質の高い様々な教育コンテンツを開発していかなければなりません。この教育コンテンツを生み出す源は人であることから、当社グループは人的資本戦略を重視しており、人材育成やそのための社内環境整備に努めております。
(人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略)
既存のプロフェッションの養成だけではなく、時代が求める新しいプロフェッションを創造していくことも当社グループに課せられた課題と認識しております。そのためには既存の資格商品のコンテンツ開発はもとより、未開発の分野の様々な資格試験等を取り扱えるように新しいコンテンツを開発し、プロフェッション養成の幅を広げていかなければなりません。
このためには各分野における豊富な知識や経験を兼ね備えた多様な人材の育成を行っていかなければなりません。当社グループでは従業員の各種資格取得を推奨し、そのための講座受講料のサポートや合格祝賀金の進呈などに積極的に取り組んでおり、また、当社グループ内でのキャリア形成のため、様々な部署での業務経験を積むために計画的な配置転換等を行い、豊富な知識・経験を兼ね備えた人材を育成していきます。さらに、従業員が充実した人生を歩めるように男性の育児休暇取得の推奨や女性活躍の推進にも積極的に取り組んでいきます。
上記のガバナンスで示した「教育サービス品質管理委員会」においては、当社が展開しているサービスが社会からどのような評価を頂いているのかに関するレビューを行うために、「学習サービスの明確化→設計→実施→提供モニタリング→評価→必要に応じた改修による品質維持・向上」の管理サイクルを明文化して運用し、教育サービスの品質維持・顧客満足度に関するリスクを管理しております。
「コンプライアンス委員会」のもとでは、第三者外部委託窓口に直接通報できる内部通報の体制(TACコンプライアンス・ライン)を整備・運用し、不正や不祥事の可能性を迅速に把握し、発生を未然に防ぐようにしております。また、「著作権委員会」及び「ハラスメント防止啓発協議会」においては、原則として年1回、全社員を対象とした研修を実施し、高い倫理観や法令遵守意識の啓蒙にも努めております。さらに、お客様である受講生に対しても「TACハラスメント防止啓発に関するガイドライン」を設け、本社にハラスメント相談室、各拠点に拠点相談窓口を設置することで、人権やハラスメントに関するリスク管理に努めております。
また、当社グループは社内機関として設置している「広告表示審査会」において、当社が行う教育事業における受講生の募集に係る広告表示の基準を定めております。一般消費者の適正な商品選択に資するとともに、不当な顧客の誘引を防止し、もって公正な競争を確保することを目的として「広告表示に関する基準」を制定し、広告の表示に関してこの基準に準拠しているかを広告表示審査会において厳正にチェックした後に広告することで、リスクの管理を図っております。
上記の戦略でも示したとおり、当社グループは持続可能な社会のためにプロフェッションの養成を通して貢献していく考えであり、そのための人材育成が重要な戦略と考えております。そのため人材育成の目標及び指標の設定を重視しております。
(人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績 )
当社グループは、原則として簿記3級の取得を推奨しておりますが、その他当社グループの業務に関連する資格の取得も推奨しております。簿記3級に関してはグループ内の90%以上の者がすでに取得しており、そのほかの資格保持者を合わせると、概ね全従業員がいずれかの資格を取得しております。
また、各種資格の取得の推奨、サポートを行っておりますが、2025年3月期の1年間では、社員の25.3%(前年差+0.7%)が、さらにアルバイトスタッフ等の55.9%(前年差△1.4%)の者が自己研鑽のために資格取得に向けた学習を行っております。今後はこの比率をさらに引き上げ、従業員のスキルアップやキャリア形成につなげていきたいと考えています。
さらに、従業員の生活環境を豊かにし、安心して職務に従事できるように男性の育児休業取得の推奨等の様々なサポートを通じて2026年3月期中に「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定である「くるみん認定」を受けることを目指し、2023年4月に策定した行動計画を実行してまいりました。2025年3月末時点においてその基準を満たすことができ、2026年3月期中に「くるみん認定」を受けるべく、その申請を行う予定であります。これに満足せず、今後も質、量ともに従業員に対する様々なサポート体制を整え、より良い職務環境の整備に努めてまいります。
当社グループに関する事業等のリスクは、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。
教育訓練給付制度は、労働者の主体的な能力開発の取組みを支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とした雇用保険の給付制度であり、厚生労働省が主管しております。一定条件を満たす雇用保険の一般被保険者等がいったん全額受講料を支払い、講座修了後、出席率等一定条件を満たしている場合に、入会金・受講料の一定割合に相当する額が雇用保険からハローワーク(公共職業安定所)を通じて支給されるものであります。給付基準は数年に一度変更されることがあり、一般教育訓練における現在の給付水準は被保険者期間が3年以上(初回利用に限り1年以上)の方は一律20%、10万円が限度とされています。給付基準の変更により、講座申込みに駆け込み需要が生じることがあり、その後反動減が発生する等、短期的に業績が影響を受けますが、その影響額を想定することは非常に困難であります。
当社の行う資格取得支援事業は、受講申込者に全額受講料をお支払いいただき(現金ベースの売上)、当社はこれをいったん前受金として貸借対照表・負債の部に計上しておきます。その後、教育サービス提供期間に対応して、前受金を月ごとに売上に振り替えます(発生ベースの売上)。一般的に、現金ベースの売上が拡大していく局面では前受金残高が増大していき、当該会計期間以降、前受金戻入が多額になることによって発生ベースの売上を押し上げる効果が強まりますが、現金ベースの売上が減少していく局面では前受金残高が減少していき、当該会計期間以降、前受金戻入が少なくなることによって発生ベースの売上を押し上げる効果が弱まる傾向があります。さらに、現金ベースの売上が減少局面から増加局面に変わる期においては、発生ベースの売上に対する減少効果が増幅される場合があり、発生ベースで計算される当社の業績に影響を与えることになります。
2007年中に特定商取引法の規制を受ける大手英会話スクールが破綻する事件があったほか、解約・返金に関する訴訟で最高裁の判決が出ております。当社の属する資格取得スクール業界は、TOEIC(R)L&R TESTなど一部の講座等を除き、直接、特定商取引法で定められた特定継続的役務提供の規制を受けるわけではありません。一方、消費者契約法については広い範囲の事業者が対象となっており、消費者庁主導のもと消費者保護政策が強化される傾向にあります。当社としても、業界他社と足並みを揃えつつ無理由での解約・返金等に応じております。今後の法令改正等、消費者行政の動向等によっては、当社のビジネス・モデルに大きな影響を与える可能性があります。
2005年4月に「個人情報の保護に関する法律」が全面施行され、当社グループの個人顧客のみならず、法人顧客の関心も極めて高いため、当社グループとしてコンプライアンス体制の維持の観点から積極的に対応してまいりました。その結果、当社及び子会社の㈱TACプロフェッションバンクともに、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)よりプライバシーマークを取得いたしました。2016年1月からはマイナンバー制度も運用がスタートし、社会の個人情報保護への関心はますます高まっております。当社は、今後も引き続き、個人情報管理責任者のもと、情報流出等を防止する厳重なセキュリティ対策を維持するとともに、従業員への教育を継続することによって、個人情報の保護に努めてまいります。万一、流出事故が発生した場合は、当社グループへの社会的信用を失うこととなり、業績へ深刻な影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度の現金ベース売上高は192億4千2百万円(前年同期比3億1千万円増、同1.6%増)、前受金調整後の発生ベース売上高は191億9千6百万円(同1億9千5百万円増、同1.0%増)となりました。
売上原価は114億8千8百万円(同5億2千4百万円減、同4.4%減)、販売費及び一般管理費は69億8千2百万円(同3億1千3百万円減、同4.3%減)となりました。これらの結果、営業利益は7億2千5百万円(前年同期は3億7百万円の営業損失)となりました。
営業外収益に受取利息7百万円、受取手数料5百万円、受取保険金4千5百万円等、合計6千2百万円、営業外費用に支払利息4千1百万円、支払手数料7百万円、持分法による投資損失2百万円等、合計5千1百万円を計上した結果、経常利益は7億3千6百万円(前年同期は3億2千9百万円の経常損失)となりました。
特別損益には、特別損失に固定資産除売却損1千6百万円、減損損失3千6百万円等を計上いたしました。これらの結果、当期純利益は4億6千8百万円(前年同期は2億1千8百万円の当期純損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は4億6千7百万円(前年同期は2億1千9百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
当連結会計年度における当社グループの各セグメントの業績(現金ベース売上高)及び概況は、次のとおりであります。なお、当社ではセグメント情報に関して「セグメント情報等の開示に関する会計基準」等の適用によりマネジメント・アプローチを採用し、下記の数表における売上高を、当社グループの経営意思決定に即した“現金ベース”(前受金調整前)売上高で表示しております。
現金ベース売上高は、連結損益計算書の売上高とは異なりますので、ご注意ください。詳細につきましては、注記事項「セグメント情報等」をご覧ください。
(注) 各セグメントの売上高にはセグメント間の内部売上高を含めて記載しております。
個人教育事業は、社会人を主な受講生層とする講座が当連結会計年度においても年間を通じて好調に推移したことで、個人教育事業全体としての現金ベース売上高は前連結会計年度を上回り、現金ベースの営業損益も大きく改善いたしました。講座別では税理士講座、不動産鑑定士講座、建築士講座、社会保険労務士講座等が前年の現金ベース売上高を上回ったほか、宅地建物取引士講座、司法書士講座、行政書士講座、国家公務員(国家総合職・外務専門職)講座等も好調に推移いたしました。一方、人材不足による良好な就職環境等の影響もあり、学生を主な受講生層とする公務員(国家一般職・地方上級)講座、公認会計士講座等のほか、中小企業診断士講座、マンション管理士/管理業務主任者講座、USCPA講座等は低調に推移いたしました。コスト面では、講座運営体制の見直しによる効果等により、講師料、教材制作のための外注費、賃借料、広告宣伝費等を合わせた営業費用の合計は101億円(前年同期比6.4%減)となり、現金ベースの営業損益は前年同期に比べ8億3千3百万円改善いたしました。これらの結果、個人教育事業の現金ベース売上高は99億4百万円(同1.4%増)、現金ベースの営業利益は1億9千6百万円の営業損失(前年同期は10億2千9百万円の営業損失)となりました。
法人研修事業は、大学内セミナーや委託訓練事業が低調に推移したものの、企業向けの研修は年間を通じて堅調に推移したことで、法人研修事業全体としての現金ベース売上高は、前連結会計年度を上回りました。企業研修は主力の金融・不動産分野や情報・国際分野が好調であったほか、その他の経営・税務分野、法律分野等も堅調に推移いたしました。大学内セミナーは公務員志願者の減少等の影響もあり、前年同期比5.4%減、地方の個人を主な顧客とする提携校事業は同12.3%減、地方専門学校に対するコンテンツ提供は同2.2%減、自治体からの委託訓練は同32.1%減となりました。コスト面では、人件費や業務委託費、広告宣伝費等の削減効果もあり、営業費用全体としては33億4千万円(同2.7%減)となりました。これらの結果、法人研修事業の現金ベース売上高は44億7千5百万円(同0.7%増)、現金ベースの営業利益は11億3千5百万円(同12.2%増)となりました。
当社グループの出版事業は、当社が展開する「TAC出版」及び子会社の㈱早稲田経営出版が展開する「Wセミナー」(以下、「W出版」)の2つのブランドで進めております。
出版事業は、独学層に向けたアプローチの強化や販売促進活動に精力的に取り組んだことによる効果もあり、売上高、営業利益ともに前連結会計年度を上回る結果となりました。資格試験対策書籍では、TAC出版の簿記検定、税理士、不動産鑑定士、宅地建物取引士、建築士、社会保険労務士、情報処理、W出版の司法書士、行政書士が前年を上回りましたが、中小企業診断士、FP、電気主任技術者等は前年を下回りました。コスト面では営業費用全体として33億8千7百万円(前年同期比0.3%減)となりました。これらの結果、出版事業の売上高は43億8千1百万円(同3.2%増)、営業利益は9億9千3百万円(同17.1%増)となりました。
子会社の㈱TACプロフェッションバンクが手掛ける会計系人材事業は、引き続き人材需要が高い水準にあり、人材紹介売上は年間を通じて好調に推移しましたが、広告売上、人材派遣売上は前年を下回りました。㈱医療事務スタッフ関西が手掛ける医療系人材事業は、医療機関の人材不足等による需要がありつつも、派遣すべき人材の確保等に難しい面もあり、売上高は前年を下回りました。これらの結果、人材事業の売上高は5億8百万円(前年同期比0.4%減)となりましたが、コストコントロールの効果もあり、営業利益は7千4百万円(同17.2%増)となりました。
当社グループの各事業分野の業績及び概況は、次のとおりであります。なお、当社は「収益認識に関する会計基準」等の適用に際し、出版事業における返品の可能性のある取引については予想される返品相当額を売上高から直接控除しております。当該返品相当額は過去の売上高に対する返品実績等に基づいた全体的な見積計算を行っており分野ごとの控除額は把握しておりません。そのため、下表における各分野の売上高を合計した額(下表の「合計」欄に記載の数値)は連結損益計算書における売上高とは一致しませんのでご注意ください。
(注) 主要な相手先別の販売実績等については、当該割合が10%以下のため記載を省略しております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前年同期比2億2千4百万円増加し、59億7千万円となりました。なお、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは7億2千4百万円(同13億3千万円増加)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(注) フリー・キャッシュ・フローは、以下の計算式を使っております。
フリー・キャッシュ・フロー=親会社株主に帰属する当期純利益+減価償却費(のれん償却費含む)-設備投資額-運転資本増加額-配当金の支払額
なお、運転資本は、売掛金+受取手形+棚卸資産-買掛金-支払手形で算出しております。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは同19億1千1百万円増加し、13億8千7百万円の収入となりました。増加要因の主なものは売上債権の増減額の減少、前受金の増減額の増加、その他債務の増減額の増加等であります。減少原因の主なものは、返品廃棄損失引当金の増減額の減少、仕入債務の増減額の減少等であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは同6億6千7百万円減少し、7億1千1百万円の支出となりました。増加要因の主なものは、保険積立金の払戻による収入の増加、無形固定資産の取得による支出の減少、差入保証金の回収による収入の増加等であります。減少要因の主なものは、定期預金の預入による支出の増加、有価証券の売却及び償還による収入の減少、保険積立金の積立による支出の増加等であります。
財務活動によるキャッシュ・フローは同6億5千6百万円減少し、4億4千9百万円の支出となりました。増加要因の主なものは、短期借入金の純増減額の増加、長期借入による収入の増加等であります。減少要因の主なものは長期借入金の返済による支出の増加等であります。
当連結会計年度末の財政状態は、総資産が209億4千2百万円(前連結会計年度末比1億5千1百万円増)、純資産が62億3千1百万円(同3億5千9百万円増)となりました。連結上、増加した主なものは、現金及び預金が同7億2千4百万円増、商品及び製品が同8千4百万円増、前受金が同5千万円増、未払法人税等が同1億6千2百万円増等であります。減少した主なものは、売掛金が同3億5千6百万円減、有形固定資産が同1億4千3百万円減、長短借入金(1年以内返済予定の長期借入金を含む)が同3億1千7百万円減、返品廃棄損失引当金が同7千6百万円減等であります。
当社グループの個人教育事業及び法人研修事業に関する通学講座の開講地区は、下記の通り2025年3月末現在、22拠点で展開しております。また、教室数及び座席数はそれぞれ下表に記載の通りとなっております。
また受講者数については次のとおりであります。
当連結会計年度における受講者数は199,439名(前連結会計年度比0.3%減)、そのうち個人受講者数は111,422名(同0.3%増、329名増)、法人受講者数は88,017名(同0.9%減、830名減)となりました。個人・法人を合わせた講座別では、簿記検定講座が同4.1%増、税理士講座が同1.9%増、不動産鑑定士講座が同19.3%増、FP講座が同15.6%増、建築士講座が同36.3%増、行政書士講座が同12.1%増、CompTIA講座が同10.1%増等となった一方、公認会計士講座が同16.5%減、マンション管理士/管理業務主任者講座が同13.2%減、ビジネススクールが同12.0%減、公務員(国家一般職、地方上級)講座が同14.8%減、USCPA講座が同14.7%減等となりました。法人受講者は、通信型研修が同0.9%増、大学内セミナーは同11.0%減、提携校が同6.8%減、委託訓練は同12.4%減となりました。
該当事項はありません。
販売実績については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要)」に記載のとおりであります。
当社の提供する資格試験講座においては、原則として受講者の申込時点で講座受講料を全額前納していただいており、受け取った受講料をいったん全額負債としての前受金に計上し、受講期間に応じて受講者にサービスを提供していく都度、月割りで前受金を取崩し売上計上しております。当社の主力である公認会計士・税理士等の難関国家資格講座は、受講期間が1年を超えるものも多く、したがって前受金は1年以上にわたり各月の売上に振り替えられていくことになります。
当社は、資格取得スクールを展開するため多くのビルを賃借しております。貸主からフリーレントを受ける場合、フリーレント期間が長期化し金額的な重要性が増しているため、賃借料の要支払額を賃借期間で按分して会計上の費用として計上しております。
当社は「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号 2018年2月16日)に定める会社分類に基づき、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対して、将来の収益力に基づき課税所得が生じると見込まれる範囲内において繰延税金資産を計上しております。なお、課税所得の見積りについては、経営者会議で承認した5カ年分の損益予測により、当社の経営環境を考慮した将来の収益予測や講座運営体制の見直しによるコスト削減のための施策に基づいて見積りを行っております。当該見積りは将来の不確実な経済条件の変動などによって影響を受ける可能性があり、予測不能な事態により発生した課税所得の時期及び金額が見積りと異なった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において、繰延税金資産の計上額に重要な影響を与える可能性があります。
資産除去債務は本社及び各拠点の建物の不動産賃貸借契約に伴う原状回復義務等であり、当社では、利用実態に応じて賃借物件をグループ化しており、本社グループの賃借期間は23年、各拠点のうち基幹拠点は10年、その他の各拠点については6年等と見積もっております。割引率は、各平均賃借期間に合わせて、それぞれ0.000%~2.280%を使用して資産除去債務の金額を計算しております。原状回復費用の見積りにおいては、類似の特性を有する賃借物件の過去の原状回復工事の実績を基礎とした工事単価を仮定として利用しておりますが、将来の工事単価は、外部環境の変化により大きく影響を受ける可能性があり、工事単価が影響を受けた場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において、資産除去債務の計上額に重要な影響を与える可能性があります。
⑤ 棚卸資産の評価方法
当社は、棚卸資産の評価方法として原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。収益性の低下による簿価切下げ額は、決算日時点におけるテキストや問題集等の教材及び出版物のうち、その後において使用又は販売されることなく最終的に廃棄されることとなる金額の見込額及び出版物の過剰在庫の額であります。最終的に廃棄されることとなる金額の見込額については、恣意性を排除する観点から、対象期間の教材及び出版物の制作費用の額に、過去における教材及び出版物の制作費用並びにそれらの廃棄実績額から算定される平均廃棄率を乗じることで算出しております。また、出版物の過剰在庫の額については、当社が刊行する出版物の性質を考慮し、刊行後1年以上経過した出版物のうち今後の販売見込みを超えて保有している部分を過剰在庫とし簿価の切下げを行っております。
当社では、出版物の返品による廃棄損失に備えるため、返品廃棄損失引当金を計上しております。この返品廃棄損失引当金は、取次店等に対して納品し売上計上した出版物が、その後書店等における売れ残りや汚れ等の理由によって当社に返品され、最終的に当社において廃棄することとなる金額の見込額であります。当該見込額については、恣意性を排除する観点から、対象期間の制作費用の額に、過去における出版物の制作費用及び廃棄実績額から算定される平均廃棄率を乗じることで算出しております。
当連結会計年度は、社会人を主な受講生層とする講座が当連結会計年度においても年間を通じて好調に推移したことで、個人教育事業全体としての現金ベース売上高は前連結会計年度を上回り、現金ベースの営業損益も大きく改善いたしました。講座別では税理士講座、不動産鑑定士講座、建築士講座、社会保険労務士講座等が前年の現金ベース売上高を上回ったほか、宅地建物取引士講座、司法書士講座、行政書士講座、国家公務員(国家総合職・外務専門職)講座等も好調に推移いたしました。一方、人材不足による良好な就職環境等の影響もあり、学生を主な受講生層とする公務員(国家一般職・地方上級)講座、公認会計士講座等のほか、中小企業診断士講座、マンション管理士/管理業務主任者講座、USCPA講座等は低調に推移いたしました。コスト面では、講座運営体制の見直しによる効果等により、講師料、教材制作のための外注費、賃借料、広告宣伝費等を合わせた営業費用の合計は前連結会計年度に比べ6.4%減少し、個人教育事業の現金ベースの営業損益は前年同期に比べ8億3千3百万円改善いたしました。
TAC及び早稲田経営出版(W出版)のブランドで行う出版事業は、独学層に向けたアプローチの強化や販売促進活動に精力的に取り組んだことによる効果もあり、売上高、営業利益ともに前連結会計年度を上回る結果となりました。資格試験対策書籍では、TAC出版の簿記検定、税理士、不動産鑑定士、宅地建物取引士、建築士、社会保険労務士、情報処理、W出版の司法書士、行政書士が前年を上回りましたが、中小企業診断士、FP、電気主任技術者等は前年を下回りました。
法人研修事業及び人材事業の業績については、③及び④に記載の通りです。これらの結果、当社グループの当連結会計年度における現金ベース売上高は192億4千2百万円(前年同期比1.6%増)、前受金調整後の発生ベース売上高は191億9千6百万円(同1.0%増)となりました。
コストについては、売上原価で5億2千4百万円減(同4.4%減)、販売費及び一般管理費で3億1千3百万円減(同4.3%減)となりました。当連結会計年度は講座運営体制の見直しにより、講師料、教材制作のための外注費等の削減や数年前より取り組んでいる各拠点の床面積の適正化による賃借料の削減、紙媒体からWEB媒体等を利用した広告の転換等による広告宣伝費等の削減の効果等もあり、営業費用全体として前連結会計年度に比べ8億3千7百万円減(同4.3%減)となりました。
法人研修事業に係る受講者数、売上高及び営業利益の推移は以下のとおりであります。なお、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」等の適用によりマネジメント・アプローチを採用しており、下表では現金ベース(前受金調整前)の売上高及び営業利益で表示しております。
法人研修事業は、大学内セミナーや委託訓練事業が低調に推移したものの、企業向けの研修は年間を通じて堅調に推移したことで、法人研修事業全体としての現金ベース売上高は、前連結会計年度を上回りました。企業研修は主力の金融・不動産分野や情報・国際分野が好調であったほか、その他の経営・税務分野、法律分野等も堅調に推移いたしました。大学内セミナーは公務員志願者の減少等の影響もあり、前年同期比5.4%減、地方の個人を主な顧客とする提携校事業は同12.3%減、地方専門学校に対するコンテンツ提供は同2.2%減、自治体からの委託訓練は同32.1%減となりました。コスト面では、人件費や業務委託費、広告宣伝費等の削減効果もあり、営業費用全体としては33億4千万円(同2.7%減)となりました。これらの結果、法人研修事業の現金ベース売上高は44億7千5百万円(同0.7%増)、現金ベースの営業利益は11億3千5百万円(同12.2%増)となりました。
子会社の㈱TACプロフェッションバンクが手掛ける会計系人材事業は、引き続き人材需要が高い水準にあり、人材紹介売上は年間を通じて好調に推移しましたが、広告売上、人材派遣売上は前年を下回りました。㈱医療事務スタッフ関西が手掛ける医療系人材事業は、医療機関の人材不足等による需要がありつつも、派遣すべき人材の確保等に難しい面もあり、売上高は前年を下回りました。これらの結果、人材事業の売上高は5億8百万円(前年同期比0.4%減)となりましたが、コストコントロールの効果もあり、営業利益は7千4百万円(同17.2%増)となりました。
当社の取扱う資格試験の受験者数は、2010年には310万人にまで増加しましたが、翌年以降急激に減少し、2014年には253万人と5年間で50万人以上受験者数が減少しました。これは簿記検定試験が73万人から53万人にまで減少したほか、情報処理関連の受験者数が約15万人減少したこと等が主な要因です。2015年以降の受験者数は比較的安定的に推移しております。一般的には、不景気時に資格試験受験者は増加する傾向がありますが、2011年3月に発生した東日本大震災や消費税増税、公認会計士試験合格者の未就職者問題など、当社の取扱う各資格試験の受験者数は社会情勢や個々の資格ごとの状況などを反映しながらそれぞれ固有の動きをしており、当社の各講座の売上高及び営業利益も各資格試験の受験者の動向に影響を受けてまいります。
2006年の公認会計士試験制度の改正の前後で、新試験制度に向けた申込み控えや新試験2年目から始まった大量合格傾向、さらには監査法人の採用数減少による未就職者問題などで受験者数が大きく減少し、当社主力の公認会計士講座の売上高は大きく影響を受けました。また、2016年度より段階的に行われた日商簿記検定試験の試験出題区分の改定により、当社の簿記検定講座も教材やカリキュラムの見直しを行い、売上及び費用に影響が生じました。その他の資格においても、合格者数がこれまでと大きく増減するなど試験制度面における大きな状況変化が起こると、当社講座への申し込み状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。このように当社の取り扱う資格試験制度の改正内容、新試験の合格率や難易度等の結果によって、当社の経営成績は大きな影響を受けることがあります。
(4) 財政状態に関する分析
① 全体的な財政状態
当連結会計年度末における全体的な財政状態の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要) (3) 財政状態」をご参照ください。なお、セグメントごとの財政状態については、資産を事業セグメントに配分していないため記載を省略いたします。
② 前受金について
当社の行う資格取得支援事業は、受講申込者に全額受講料をお支払いいただき(現金ベースの売上)、当社はこれをいったん前受金として貸借対照表・負債の部に計上しておきます。その後、教育サービス提供期間に対応して、前受金を月ごとに売上に振り替えます(発生ベースの売上)。一般的に、現金ベースの売上が拡大していく局面では前受金残高が増大していき、当該会計期間以降、前受金戻入が多額になることによって発生ベースの売上を押し上げる効果が強まりますが、現金ベースの売上が減少していく局面では前受金残高が減少していき、当該会計期間以降、前受金戻入が少なくなることによって発生ベースの売上を押し上げる効果が弱まる傾向があります。さらに、現金ベースの売上が減少局面から増加局面に変わる期においては、発生ベースの売上に対する減少効果が増幅される場合があり、発生ベースで計算される当社の業績に影響を与えることになります。前受金及びその他の財政状態の指標の推移は以下のとおりであります。
(注) 自己資本は、純資産の額から非支配株主持分の額を控除して算出しております。
当連結会計年度は、人材不足による良好な就職環境や公務員志願者の減少傾向等の影響もあり、学生を主な受講生層とする講座が低調に推移しましたが、一方で社会人を主な受講生層とする講座は年間を通じて好調に推移し、前受金比率は前連結会計年度と同じになりました。自己資本比率は、前受金に見合う資金が徐々に取り崩されて使用され事業活動に必要な自己資本は相対的に低い水準で済むため、相対的に過小である傾向があります。当連結会計年度は4億6千7百万円の親会社株主に帰属する当期純利益となり、自己資本比率は1.5ポイント上昇いたしました。
当社グループの事業所は原則として賃借によっております。したがって、当社は、教育サービスを提供する教室確保のための直営校各拠点を賃借するために、資産の部・固定資産の「投資その他の資産」の区分に差入保証金を多額に計上しております。
賃借契約は原則として2年であり、受講者数の増加に伴い教室スペースの確保のため各拠点の増床や新規拠点の開設を行うと、差入保証金は増加することになります。当連結会計年度においては、一部拠点の床面積の削減等や前受金残高の増加もあり保証金比率は1.0ポイント減少しました。
当社グループの事業所は賃借ビルが多いため、「資産除去債務に関する会計基準」に基づいて、各賃借ビルの原状回復義務等を資産除去債務として負債の部に多額に計上しております。また、同時に資産の部に計上された資産除去債務相当額からは、その関連する有形固定資産の減価償却方法に準じて減価償却費が発生し、毎期計上されます。これにより、将来、原状回復義務を履行した場合の費用又は損失が一時に計上されずに、使用する各期間に費用配分されることになりますが、結果として、各期の減価償却費が押し上げられ固定費負担が重くなっております。なお、当連結会計年度において資産除去債務の見積りの変更を行い、41,943千円を変更前の資産除去債務残高に加算しております。
前受金が増加していくことは、受講者からの預り資金が増加することを意味します。そのうちの一部は、教室スペース確保のための差入保証金に充当されております。残額は、順次サービスを提供していくため、講師料、賃借料等のほか、教材の印刷費・DVDのダビング費・広告費等に消費されます。そうした消費のタイミングまでは、前受金の一部の資金は現金及び預金又は有価証券等の金融商品で保有されます。当社の有価証券投資の方針は運用規程に定められており、元本確保型の安全性を重視した金融商品であって、かつ、利回りを追求した金融商品を中心に運用しております。過去3期間の運用有価証券の推移は、以下のとおりであります。
「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において説明しておりますとおり、売上高の増加が喫緊の課題であります。そのため、①個人教育事業の収益力強化、②人的資本への取り組み、③株価純資産倍率の改善を中心とした施策に取り組んでまいります。
キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (経営成績等の状況の概要) (2) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社グループの資本の源泉及び資金の流動性については、事業運営上必要となる資金は、手許資金及び金融機関からの借入により調達することを基本としております。
2025年3月末時点における短期及び長期借入金の合計53億3千2百万円のうち9億5千万円は本社ビル取得に係る借入金であり、その他は事業運営上必要な設備等の導入や入れ替え、経費の支払いなどの経常的な支払等に必要となる資金に係る借入金であります。
有価証券報告書提出日現在において支出が予定されている重要な資本的支出はありません。
なお、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末において入手可能な情報に基づき当社グループが合理的であると判断したものであります。したがって、将来や想定に関する事項には不確実性を内在しており、将来における実際の業績は様々な要因により大きく異なる結果となる可能性があります。
提携校契約とは、提携先が「TAC」の商号及び当社の教材を使用して講座運営ができる契約であります。前連結会計年度末までに提携校契約を行っている11校(群馬校、金沢校、富山校、岡山校、福山校、高松校、徳島校、大分校、熊本校、宮崎校、沖縄校)については、契約更新期限が到来したものから順次、当連結会計年度において契約を更新しております。
当連結会計年度において、研究開発活動は行われておりません。