名称 株式会社JPEC
所在地 東京都目黒区八雲四丁目8番19号(注1)
(注1) 公開買付者によれば、公開買付者の設立時の本店所在地は東京都千代田区丸の内二丁目3番2号 郵船ビルディング1階であるところ、2025年8月5日付で本店所在地を東京都目黒区八雲四丁目8番19号に変更しているとのことです。本書提出日現在、当該本店所在地の変更について登記申請手続中とのことです。
普通株式
(1)意見の内容
当社は、2025年8月6日開催の当社取締役会において、下記「(2)意見の根拠及び理由」に記載の根拠及び理由に基づき本公開買付けに賛同する旨の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に対して、本公開買付けへの応募を推奨する旨の決議をいたしました。
なお、上記取締役会決議は、下記「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「④ 当社における利害関係を有しない取締役全員(監査等委員を含む。)の承認」に記載の方法により決議されております。
(2)意見の根拠及び理由
本公開買付けに関する意見の根拠及び理由のうち、公開買付者に関する記載については、公開買付者から受けた説明に基づいております。
① 本公開買付けの概要
公開買付者は、東京証券取引所スタンダード市場に上場している当社の普通株式(以下「当社株式」といいます。)を非公開化し、その後、当社の常務取締役である齋藤智記氏(以下「齋藤氏」といいます。)の所有する公開買付者の普通株式を当社の第1位の株主(2025年3月31日現在)である株式会社ヒロエキスプレス(注1)(所有株式数:6,595,500株、所有割合(注2):36.37%、以下「不応募合意株主」といいます。)に対して譲渡すること等を通じて、最終的に不応募合意株主のみが当社(但し、下記のとおり、公開買付者を吸収合併存続会社、当社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を実施した後の吸収合併存会社を指します。)の株主となる状態を実現することを目的とした一連の取引(以下「本取引」といいます。)を実施することを主たる目的として2025年6月23日に設立された株式会社であり、本書提出日現在、当社の常務取締役である齋藤氏が公開買付者の代表取締役を務めており、公開買付者の発行済株式を全て所有しているとのことです。なお、本書提出日現在、公開買付者は、当社株式を所有していないとのことですが、齋藤氏は当社株式127,900株(所有割合:0.71%)を所有しているとのことです。
本公開買付けは、当社取締役会の賛同の下、友好的に当社株式の全て(但し、当社が所有する自己株式及び本不応募株式(以下に定義します。以下同じです。)を除きます。)を取得するために実施されるとのことです。また、本取引はいわゆるマネジメント・バイアウト(MBO)に該当し、当社の創業家一族の1人、かつ、当社の常務取締役であり、公開買付者の代表取締役である齋藤氏は、本取引実行後も継続して当社の経営にあたることを予定しているとのことです。
本公開買付けに際し、公開買付者は、2025年8月6日付で、不応募合意株主との間で、その所有する当社株式の全て(以下「本不応募株式」といいます。)について本公開買付けに応募しない旨並びに本公開買付けが成立した場合には本臨時株主総会(下記「(5)本公開買付け後の組織再編等の方針(いわゆる二段階買収に関する事項)」に定義します。)において本スクイーズアウト手続(以下に定義します。以下同じです。)に関連する各議案に賛成する旨及び本スクイーズアウト手続の実施に必要な協力を行う旨を定めた契約(以下「本不応募契約」といいます。)を締結しているとのことです。本不応募契約の詳細については、下記「(7)公開買付者と当社の株主・取締役等との間における公開買付けへの応募に係る重要な合意に関する事項」の「① 本不応募契約」をご参照ください。
また、公開買付者は、2025年8月6日付で、当社の第2位の株主(2025年3月31日現在)である株式会社増進会ホールディングス(所有株式数:1,480,300株、所有割合:8.16%、以下「応募合意株主」といいます。)との間で、応募合意株主が所有する当社株式の全て(以下「本応募合意株式」といいます。)を本公開買付けに応募する旨を定めた契約(以下「本応募契約」といいます。)を締結しているとのことです。本応募契約の詳細については、下記「(7)公開買付者と当社の株主・取締役等との間における公開買付けへの応募に係る重要な合意に関する事項」の「② 本応募契約」をご参照ください。
本公開買付けにおいて、公開買付者は、買付予定数の下限を5,493,700株(所有割合:30.30%)としており、本公開買付けに応募された株券等(以下「応募株券等」といいます。)の数の合計が買付予定数の下限(5,493,700株)に満たない場合には、応募株券等の全部の買付け等を行わないとのことです。他方、上記のとおり、公開買付者は、当社株式の全て(但し、当社が所有する自己株式及び本不応募株式を除きます。)を取得することにより、当社株式を非公開化することを企図しているため、買付予定数の上限を設定しておらず、応募株券等の数の合計が買付予定数の下限(5,493,700株)以上の場合は、公開買付者は、応募株券等の全部の買付け等を行うとのことです。
買付予定数の下限(5,493,700株)については、本基準株式数(18,133,832株)に係る議決権数(181,338個)の3分の2以上となる議決権の数(120,892個)から本不応募株式(6,595,500株)に係る議決権の数(65,955個)を控除した数(54,937個)に当社の単元株式数である100株を乗じた株式数(5,493,700株)としているとのことです。かかる買付予定数の下限を設定したのは、公開買付者は、本公開買付けにおいて、当社株式の全て(但し、当社が所有する自己株式及び本不応募株式を除きます。)を取得できなかった場合には、当社に対し、当社の株主を公開買付者及び不応募合意株主のみとし、当社株式を非公開化するための一連の手続(以下「本スクイーズアウト手続」といいます。)の実施を要請する予定であるところ、本株式併合(下記「(5)本公開買付け後の組織再編等の方針(いわゆる二段階買収に関する事項)」に定義します。以下同じです。)を実施する際には、会社法(平成17年法律第86号。その後の改正を含みます。以下「会社法」といいます。)第309条第2項に基づき、株主総会において総株主の総議決権数の3分の2以上の賛成による特別決議が必要とされていることから、本スクイーズアウト手続の実施を確実に遂行すべく、本公開買付け成立後に公開買付者及び不応募合意株主が当社の総株主の総議決権数の3分の2以上を所有することとなるようにするためとのことです。
(注1) 株式会社ヒロエキスプレスは当社の創業家一族の1人である齋藤氏の資産管理会社であり、齋藤氏が発行済株式の全てを所有しているとのことです。
(注2) 「所有割合」とは、当社が2025年8月6日に提出した「2026年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(以下「当社第1四半期決算短信」といいます。)に記載された2025年6月30日現在の発行済株式数(18,504,000株)から、当社第1四半期決算短信に記載された、当社が同日現在所有する自己株式数(370,168株)を控除した株式数(18,133,832株、以下「本基準株式数」といいます。)に対する割合(小数点以下第三位を四捨五入)をいいます。以下同じとします。
なお、本取引の概要は以下のとおりとのことです。
Ⅰ.本公開買付けの実施前
2025年3月31日時点において、不応募合意株主が当社株式6,595,500株(所有割合:36.37%)、応募合意株主が当社株式1,480,300株(所有割合:8.16%)、その他の株主が残りの当社株式10,058,032株(所有割合:55.47%)を所有。
Ⅱ.本公開買付け(2025年8月7日~9月19日(予定))
公開買付者は、当社株式の全てを対象に本公開買付けを実施(当社株式1株当たりの買付け等の価格(以下「本公開買付価格」といいます。)は350円。)。不応募合意株主は、本不応募契約に基づき、公開買付者との間で、本不応募株式を本公開買付けに応募しないことを合意。応募合意株主は、本応募契約に基づき、公開買付者との間で、本応募合意株式を本公開買付けに応募することを合意。
Ⅲ.本公開買付けの実施後
① 本スクイーズアウト
公開買付者は、本公開買付けにおいて、当社株式の全て(但し、当社が所有する自己株式及び本不応募株式を除きます。)を取得できなかった場合には、本公開買付けの成立後、当社に対して本株式併合を行うことを要請し、本スクイーズアウト手続を実施予定。当社は本株式併合を行い、当社の株主は公開買付者と不応募合意株主のみとなる。なお、本スクイーズアウト手続の完了時期は、2025年12月下旬頃を予定。
② 株式譲渡及び吸収合併
本スクイーズアウト手続の完了後に、当社において有価証券報告書提出義務の免除を受けた上で、齋藤氏の所有する公開買付者の普通株式を不応募合意株主に対して譲渡(以下「本譲渡」といいます。)し、その後、公開買付者及び当社は、公開買付者を吸収合併存続会社、当社を吸収合併消滅会社とする吸収合併(以下「本吸収合併」といいます。)を実施予定。なお、本譲渡において、公開買付者の普通株式の譲渡対価は齋藤氏が公開買付者の設立時に出資した金額(10,000円)と同額に設定し、また、本吸収合併において、不応募合意株主は不応募合意株主が所有する当社株式の対価として公開買付者の普通株式を取得予定。但し、公開買付者を吸収合併存続会社、当社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行うことにより、当社において事業上の支障(入札案件への参加資格喪失や地方公共団体から受給している各種給付金に係る受給資格喪失等)が生じることが明らかとなった場合には、公開買付者を吸収合併消滅会社、当社を吸収合併存続会社とする吸収合併に変更するなど本スクイーズアウト手続の完了後の手続に変更が生じる可能性がある。
③ 本取引実施後
不応募合意株主が当社株式の100%を所有することとなる予定。
公開買付者は、本公開買付けが成立した場合、本公開買付けに係る決済等に要する資金として、本公開買付けの決済の開始日の前営業日までに、株式会社きらぼし銀行(以下「きらぼし銀行」といいます。)から6,500,000千円を上限として借入れ(以下「本銀行融資」といいます。)を受けることを予定しており、かかる資金をもって、本公開買付けの資金決済等に充当する予定とのことです。本銀行融資に係る融資条件の詳細は、きらぼし銀行と別途協議の上、本銀行融資に係る融資契約において定めることとされているとのことですが、本銀行融資に係る融資契約では、本公開買付けに係る公開買付届出書の添付書類である融資証明書に記載されている融資実行の前提条件及び一定の財務制限条項等の同種の融資契約に通常定められる契約条件が規定されることが予定されているとのことです。
② 公開買付者が本公開買付けの実施を決定するに至った背景、目的及び意思決定の過程
当社は、1980年12月に国内の個人顧客向けに資格教育、実務教育を核とした人材育成事業を営む東京アカウンティング学院株式会社として設立され、1988年3月にタック株式会社、2002年6月に現在のTAC株式会社に商号を変更いたしました。2001年10月に株式会社ジャスダック証券取引所に上場し、2003年1月に東京証券取引所市場第二部に市場変更しました。また、2004年3月に東京証券取引所第一部に指定替えを行いました。その後、2022年4月の東京証券取引所における市場区分の見直しにより、東京証券取引所スタンダード市場に移行いたしました。
当社グループ(当社及びその子会社並びに持分法適用関連会社を総称していいます。以下同じです。)は、本書提出日現在、当社、連結子会社7社及び持分法適用関連会社1社により構成され、当社グループは「プロフェッションの養成」を経営理念として社会人、大学生を対象に資格教育、実務教育を核とした人材育成事業として、「個人教育事業」、「法人研修事業」、「出版事業」、「人材事業」を展開しております。各事業の概要は以下のとおりです。
(ⅰ)個人教育事業
公認会計士、税理士をはじめとして不動産鑑定士、社会保険労務士、証券アナリスト、情報処理技術者、米国公認会計士等の資格試験に対する受験指導を行っております。そして、上記各資格講座の合格実績を背景に、「資格の学校TAC」として個人教育事業を行っております。資格講座は「教室・ビデオブース講座」、「Web通信講座」、「オンラインライブ通信講座」、「DVD通信講座」及び「資料通信講座」にて実施しており、講師が作成する独自のテキストを使用しております。そして、長年の受験指導により蓄積された法律学系及び経済学系を中心とした社会科学の分野を網羅する教育コンテンツは、当社の貴重な財産となっております。また、当社が提供している講座の販売ネットワークの構築にも力を入れており、全国の大学・書店と販売提携をしております。
(ⅱ)法人研修事業
法人研修事業として、企業、大学、専門学校、会計事務所等に対して資格取得研修や実務研修等の社員研修の実施や自己啓発講座の提供、専門学校等への教材提供とコンサルティング、「TAC」の商号及び当社の教材を使用して講座運営を行う提携校の展開、ビジネススクールや大学内セミナー、国・自治体等からの委託訓練を実施しております。また、情報処理・IT関連の資格試験の取得指導(マイクロソフトオフィススペシャリスト試験、オラクル認定Java等)及びIT関連の国際資格の導入と普及に努めております。現在、米国CompTIA(コンピューティング技術産業協会)主催のA+(エープラス)試験、Network+(ネットワークプラス)試験、Server+(サーバープラス)試験及びSecurity+(セキュリティプラス)試験等の普及に努め、日米の情報技術格差の溝を埋める役割を果たしております。
(ⅲ)出版事業
個人教育事業及び法人研修事業で展開している資格講座・実務研修の教育コンテンツを活かし、「啓蒙書」、「入門書」、「受験用書籍」、「実務書」等のさまざまなラインナップを取り揃えて出版事業を行っております。具体的には、合格の秘訣シリーズ、過去試験問題シリーズ等のシリーズ物として、出版物を通してその指導ノウハウを広く普及することを目的としております。2025年3月末現在の稼働点数(注1)は「TAC出版」ブランドで1,047点、「Wセミナー」ブランドで189点、合わせて1,236点にのぼります。
(注1) 「稼働点数」とは、現に販売されている書籍の点数のことをいいます。
(ⅳ)人材事業
人材紹介・派遣事業及びインターネットによる求職・求人Webサイトの運営を展開しており、当社でスキルアップした優秀な人材に対して多くのキャリアアップの機会を提供し、より有利な就職環境の支援を行っております。当社の人材ビジネスの強みは、資格取得を目指す約20万人の受講者が存在することであります。また、医療系人材の人材紹介・人材派遣事業等も行っております。
当社グループは、1980年の設立以来、その時々において世の中に必要とされる多くの“プロフェッション”を養成し世に輩出してまいりました。会計・税務分野から出発し、法律、不動産、金融、公務員・労務、情報、医療、理系分野までその幅を拡げております。これからも時代の変化を見極めながら今の時代に必要とされる多様な“プロフェッション”を養成していくことで、社会の発展に貢献してまいります。
当社が行っている資格関連教育サービスは、日本経済の健全な発展を支えていくために必要不可欠なプロフェッショナル人材の育成であり毎年一定の需要が見込める比較的安定したものであります。一方、近年はIT環境が飛躍的に進歩したことにより、様々な手段によって教育を提供する環境が整備され、それに伴い受講生・消費者側のニーズも多様化してきております。従来の対面授業中心からオンライン・オンデマンド講義の拡大を背景に、既存大手間の競争激化に加え、タブレット等におけるアプリ利用によるサービスを武器にした新興プレイヤーによる低価格サービスの台頭など、競争環境はますます厳しさを増しており、新規分野への投資、対面授業からオンライン学習へのシフト、人材の確保などの対策が喫緊の課題であると認識しております。
他方、齋藤氏は、当社が1980年の設立以来、時代の要請に応じて多様なプロフェッションを養成し、会計・税務分野のプロフェッションの養成から出発して、法律、不動産、金融、公務員・労務、情報、医療及び理系分野のプロフェッションの養成へと事業領域を拡大されてきており、株式上場を通じて知名度の向上、優秀な講師陣の確保、社会的信用やブランド力の強化などを実現し、着実な成長を遂げてこられたと認識しているとのことです。一方で、当社をとりまく近年の業界環境は大きく変化しており、従来の対面授業中心からオンライン・オンデマンド講義の拡大を背景に、既存の大手競合会社間の競争激化に加え、デジタル化を武器にした新興プレイヤーによる低価格サービスの台頭など、競争環境はますます厳しさを増しており、デジタル教材・学習管理システム・AI活用等、IT投資が競争力の源泉となると認識しているとのことです。こうした業界環境の変化を踏まえ、齋藤氏は、当社グループ関係者との協議及び競合他社を含む業界動向の調査等を踏まえ、当社グループのビジネスにおける課題・リスクについて、以下のとおり認識しているとのことです。
(ⅰ)市場縮小リスク
日本国内では少子高齢化が年々加速しており、大学生や若年層人口が減少し続けているとのことです。これにより、資格取得を目指す受験者の絶対数自体が減少傾向にあるとのことです。特に少子高齢化により当社の主力分野の一つである公務員試験の受験者数は年々減少しており、競争倍率も低下傾向とのことです。今後もこの流れは続く可能性が高く、自治体や国も多様な人材確保策を講じていますが、実際、国家公務員採用試験申込者数は20年前から半減しているとのことです(人事院公表の「国家公務員採用総合職・一般職(大卒程度・高卒者)試験等の申込者数・合格者数・採用者数[年度別]」参照)。この傾向は今後も継続する可能性が高く、市場全体の規模が縮小し続けることは、既存ビジネスモデルに対して大きな脅威と考えているとのことです。
(ⅱ)資格の魅力の変化
従来、専門性の高い試験を突破した士業資格保有者は、独占業務や高い社会的ステータス、安定的なキャリアパスが約束されていたとのことです。しかし、近年ではAIやRPA(注2)などのテクノロジーの進展により、専門家としての業務の一部は自動化・効率化が可能となっているとのことです。これにより、資格取得後の業務内容や将来性について世間で懸念が広がりつつあると認識しているとのことです。また、若年層を中心に「資格よりスキル」「資格より実務経験」を重視するキャリア観も台頭していると認識しており、受験動機の多様化・減退が進んでいると考えているとのことです。
(注2) 「RPA」とは、「Robotic Process Automation」の略で、パソコン上での事務作業を自動化できるソフトウェアロボット技術のことをいいます。
(ⅲ)収益モデルの転換
従来の対面授業を中心とした高付加価値・高価格帯のサービスモデルは、オンライン学習の普及とともに変革を迫られているとのことです。既存の大手競合会社だけでなく、低価格・高機能なタブレット等におけるアプリ利用によるサービス専門の新興事業者が参入し始めており、受講料の価格競争が激化していると認識しているとのことです。一方で、デジタル教材やオンラインプラットフォームへのシフトは固定費の圧縮やスケーラビリティ(注3)の向上という側面もありますが、ITインフラやコンテンツ開発への初期投資・運用コストは無視できないとのことです。加えて、従来の高単価・長期間のサービスから、生徒の目標に合わせた短期集中講座や講座内容・支払を分割できる低価格・短期間の分割型サービスへの需要シフトも起きており、受講生1人当たりの売上減少リスクや、収益構造そのものの見直しが急務となっていると考えているとのことです。
(注3) 「スケーラビリティ」とは、システムやサービスが需要の増加に応じて効率的に拡張できる能力のことをいいます。
(ⅳ)多様化する学習ニーズ
働き方改革や生涯学習・リスキリング(注4)の重要性が高まる中、資格取得を目指す層は学生だけでなく、社会人・主婦・シニア層など多様化しており、働きながら学習したい、短期間で合格したい、仕事と両立しやすい柔軟な学習スタイルを求める声が増えていると認識しているとのことです。これらに対応するためには、時間や場所にとらわれないオンライン学習体制の充実、個別指導・チューター制度の導入、AIを活用したパーソナライズド学習、学習進捗管理システムの強化など、従来型の一斉授業だけでは対応しきれないサービス拡充が求められていると考えているとのことです。また、利用者の満足度や継続率向上のためには、学習サポートや就職支援など付加価値サービスの強化も重要と考えているとのことです。
(注4) 「リスキリング」とは、新しい職業に就くため又は今の職業で必要とされるスキルの変化に適応するために、必要なスキルを獲得することをいいます。
(ⅴ)海外展開・他分野展開の模索
国内市場の縮小を背景に、成長機会の創出には海外市場への進出や、多分野への事業拡大が不可欠と考えているとのことです。例えば、日本の資格取得者を対象とした英語対応コースの開発や、ASEAN諸国など成長著しい海外市場での教育事業の展開、あるいはIT・医療・介護など他の専門分野への教育サービスの拡充といった戦略が考えられるとのことです。しかし、これらは現地市場の調査・パートナー開拓・法規制対応・カリキュラム設計など多岐にわたる準備や投資が必要であり、短期的な収益貢献は見込みにくい一方、中長期的な企業価値向上には不可欠な挑戦領域と考えているとのことです。
齋藤氏は、当社がこれらのリスク・課題に対応し、今後も持続的な成長を実現するためには、当社グループにおける大規模なデジタル投資、迅速かつ大胆な経営判断・先行投資が不可欠と考えているとのことです。具体的には以下の施策を実行することで、当社グループの更なる企業価値向上を実現することが可能であると考えているとのことです。
a 市場縮小リスク・資格の魅力変化への対応を踏まえた教育コンテンツの高度デジタル化と差別化
少子高齢化による受験者数の減少や、資格そのものの魅力に対する懸念が増加する中、従来の「資格取得=安定キャリア」といった価値観だけではなく、多様なキャリア志向や実務重視層にも選ばれる教育サービスへの転換が不可欠と考えているとのことです。例えば、受講生の過去の学習履歴や正答率、理解度テストの結果をAIが分析し、それぞれの苦手分野や理解度に応じて最適な問題集や動画講義を自動でレコメンドしてくれるような、AI・データ分析を活用したパーソナライズ学習が考えられるとのことです。これを実現することにより、画一的なカリキュラムではなく、個々の受講生が効率良く知識を定着できる仕組みを実現することが考えられるとのことです。さらに、AIによる自動添削機能を導入することで、論述試験やケーススタディ演習の答案についても個別にフィードバックを受け取ることが可能となるとのことです。
また、VR/AR(注5、6)等を用いた実践型デジタル教材の開発では、士業による独立を目指す受講生向けに、仮想の士業事務所や専門的な相談の現場を再現したシミュレーション教材を提供することが考えられるとのことです。受講生はVR空間でクライアントとの面談や決算処理の流れを体験し、実際の業務で求められるコミュニケーション力や問題解決力を身につけることができるとのことです。さらに、医療や介護分野では、患者様への対応や医療機器の操作などをVR/ARで繰り返し練習できるため、現場に近い実践力を養うことが可能とのことです。
(注5) 「VR」とは、「Virtual Reality」の略で、人工的に創り出された仮想的な空間を疑似体験できる技術のことをいいます。
(注6) 「AR」とは、「Augmented Reality」の略で、現実世界の映像にデジタル情報を付加する技術のことをいいます。
このように、AIやVR/ARといった先端技術を具体的な教材・学習プロセスに落とし込むことで、受講生が「資格取得のための知識」だけでなく、「現場で通用する実践力」や「業務に直結するスキル」を効率的に獲得できる環境を構築したいと考えているとのことです。
また、資格取得後のキャリア支援・リスキリング支援や、社会人向け・短期間集中型のコンテンツ開発を強化することで、資格取得の動機が多様化する中でも幅広い層に価値を提供していきたいと考えているとのことです。さらに、日本語だけでなく英語対応や、海外資格対応コースの開発を進めることで、国内市場縮小リスクや海外展開ニーズにも応える体制を構築していくことを考えているとのことです。
さらに、企業や業界団体と連携し、実際の業務課題を教材化したり、現場担当者からフィードバックをもらえる仕組みを構築すれば、よりリアルで実践的な学びを提供できると考えているとのことです。これらの取り組みをマルチデバイス対応で展開し、いつでもどこでも学べる環境を整えることで、受講生の利便性と学びの体験価値を最大化し、競争優位性を高めることができると考えているとのことです。
b 収益モデルの転換・多様な学習ニーズに対応したオンライン・オフライン融合型のハイブリッド教育モデルの確立
上記のとおり、高価格・長期間型から、低価格・短期間型へのニーズシフトや、受講生のライフスタイル多様化に対応するため、オンライン・オフライン融合型のハイブリッド教育モデルの確立に向けては、まずオンラインと対面授業それぞれの強みを最大限に活かし、受講生の多様なニーズに柔軟に応えることが重要と考えているとのことです。具体的には、基礎知識の習得や反復学習にはオンラインやオンデマンド講義を活用し、時間や場所に縛られず学べる環境を整備したいと考えているとのことです。一方で、実技演習やディスカッション、グループワークなど対面でのコミュニケーションや実践力が求められる学習については、教室での授業やワークショップを重視することが望ましいと考えているとのことです。このように学習内容に応じて最適な学習形態を組み合わせることで、教育効果の最大化を図ることが可能になると考えているとのことです。
また、オンライン環境下でも受講生同士や教員との交流・協働を促進するために、バーチャル教室やオンラインコミュニティ、受講生同士がお互いの学習状況や学習内容を評価する仕組みなどを活用し、学習者同士が刺激し合える仕組みを整えることも考えられるとのことです。さらに、定期的な対面イベントや実地研修を組み合わせることで、実社会に近い経験やネットワーク形成の機会を提供し、学びのモチベーション向上につなげていくことも考えられるとのことです。社会人や地方在住者など多様なバックグラウンドを持つ受講生にも学びやすい環境を提供するため、受講スケジュールや学習場所に柔軟性を持たせることも重要と考えているとのことです。
加えて、学習管理システムを活用して、オンライン・オフラインの学習進捗や成果を一元的に管理し、個別のサポートやフィードバックを行う体制を構築することで、ハイブリッド型教育モデルの質と効果を高めていくことが求められているとのことです。こうした取り組みにより、受講生それぞれのライフスタイルや学習目的に寄り添った、実践的かつ柔軟な学びの場を提供することが可能になると考えているとのことです。
c 海外展開・他分野展開を見据えたIT基盤への持続的投資と組織変革
当社の今後の成長を支えるためには、国内市場の縮小や競争激化、海外・他分野展開といった経営環境の変化に柔軟に対応できるIT基盤と組織体制の強化が不可欠と考えているとのことです。IT基盤への持続的投資と組織変革を推進するためには、まず安定かつ柔軟性の高い学習管理システムの導入・運用を徹底することが重要であると考えているとのことです。学習管理システムを中心としたITインフラの整備によって、学習進捗や成績、教材の配信管理を一元化し、データ分析による教育改善や個別指導の最適化が可能となるとのことです。また、クラウドサービスやセキュリティ対策を強化することで、個人情報や学習データの安全性を確保し、サイバーリスクやシステム障害にも迅速に対応できる体制を築くことが求められるとのことです。
さらに、急速なデジタル化に対応するためには、教職員のITリテラシー向上とデジタルスキルの習得も不可欠と考えているとのことです。従業員や講師に対して定期的な研修を促し、IT活用やデジタル教材作成、データ分析などの知識・スキルを組織全体で底上げしていくことも必要と考えているとのことです。同時に、デジタルトランスフォーメーション(注7)を推進する専門部署やプロジェクトチームを設置し、現場からの課題発掘や新技術の導入、業務プロセスの見直しを積極的に進めることで、教育現場の変化に柔軟に対応する組織風土を醸成したいと考えているとのことです。また、海外展開を行う上では、海外市場特有の言語・法規制対応や現地パートナーとの連携、カリキュラムの現地最適化など、グローバル対応力・他分野対応力のある組織づくりを進めることで、中長期的な成長基盤を構築したいと考えているとのことです。
(注7) 「デジタルトランスフォーメーション」とは、データとデジタル技術を活用して、受講生のニーズを基に、サービスやビジネスモデルを変革することをいいます。
加えて、IT基盤やシステムは一度導入して終わりではなく、定期的なアップデートや新しいテクノロジーの導入を継続し、時代の変化や教育ニーズに合わせて最適化し続けることが重要であると考えているとのことです。外部パートナーやベンダーとの連携も活用し、先進的なサービスやノウハウを積極的に取り入れることで、当社のIT基盤と組織の競争力を中長期的に高めることができると考えているとのことです。
しかし、齋藤氏としては、当社が株式上場を継続する限りは株主を意識した経営が求められ、短期的な利益の確保・分配への配慮が必要になることから、当社株式の上場が、短期的なキャッシュ・フローや収益の悪化を招くおそれがある先行投資や抜本的な構造改革等の中長期的な施策実行の足枷となる可能性が高いと考えているとのことです。また、上記a乃至cの施策は直ちに当社グループの収益に貢献するとは限らず、相応の時間と大きなリスクを伴うものであり、当社の株主に当該リスクを負担いただきつつ、施策の実行を全面的に支持いただくことは難しいと考えているとのことです。また、中長期的な当社グループの企業価値最大化を考えると、急速に変化していく事業環境において激化する競争に勝ち抜くために、抜本的かつ機動的な意思決定を柔軟かつ迅速に実践できる経営体制を構築することこそが、必要不可欠であると考えているとのことです。
さらに、齋藤氏としては、近年、当社グループにおける株式の上場を維持するために必要な費用(継続的な情報開示に要する費用、株主総会の運営や株主名簿管理人への事務委託に要する費用等)が増加しており、今後、当該コストは当社グループの経営上の更なる負担となる可能性があると考えているとのことです。齋藤氏としては、当社は上場以来、社会的な信用の向上や知名度の向上による優秀な人材の確保等、上場会社としてのメリットを享受してきたと認識しているとのことですが、事業活動を行うために必要な資金が確保できている現在の当社グループの財務状況に鑑みても、当面はエクイティ・ファイナンスの活用による大規模な資金調達の必要性は高くなく、また、社会的な信用やブランド力も維持可能であると見ており、今後も継続して当社株式の上場を維持することの必要性を見出しにくい状況にあると考えているとのことです。
このようなことから、齋藤氏は、当社株式を非公開化することが当社グループの企業価値向上のために最も有効な手段であり、本取引を通じて、短期的な株価変動にとらわれることなく中長期的な成長を見据えた柔軟かつ持続可能な経営を行うことが可能となり、ひいては中長期的な当社の企業価値向上に資すると考えているとのことです。
また、齋藤氏は、急速に変化する事業環境の中で競争が激化する中、経営判断の迅速化と施策の実行力強化が不可欠であり、齋藤氏自身が当社の所有の主体となることで、当社の現状と課題を的確に把握した上で、必要な施策を迅速かつ果敢に実行する体制を構築することが可能となり、当社の企業価値の向上につながると判断したため、当社株式の非公開化にあたっては、第三者ではなく、当社グループの事業内容を熟知している当社の常務取締役である齋藤氏自身がマネジメント・バイアウト(MBO)を実施し、当社の所有と経営を一体化させた上で上記施策を迅速かつ積極的に実行していくことが当社にとって最善であると考えるに至ったとのことです。
以上の考えのもと、齋藤氏は、2025年2月上旬に、当社株式の非公開化に関する初期的な検討を開始したとのことです。そして、齋藤氏は、本取引に関して検討するにあたり、2025年4月上旬に齋藤氏、当社、応募合意株主及び不応募合意株主(以下、総称して「公開買付関連当事者」といいます。)から独立したファイナンシャル・アドバイザーとして大和証券株式会社(以下「大和証券」といいます。)を、2025年4月下旬に公開買付関連当事者から独立したリーガル・アドバイザーとしてシティユーワ法律事務所を、公開買付関連当事者から独立した財務・税務に関するデュー・ディリジェンスを担うアドバイザーとして株式会社クリフィックスFAS及びクリフィックス税理士法人をそれぞれ選任し、当社株式の非公開化に係る協議・交渉を行う体制を構築したとのことです。
また、齋藤氏は、当社株式の非公開化に関する具体的な検討を進め、2025年5月2日、当社に対し、齋藤氏が本取引を申し入れた背景や本取引実施後の成長戦略、本取引に係るスキーム等を記載した法的拘束力を有しない初期的提案書(以下「本提案書」といいます。)を提出したとのことです。その後、齋藤氏は、2025年5月15日、当社から本取引の提案を検討するための本特別委員会(下記「④ 当社が本公開買付けに賛同するに至った意思決定の過程及び理由」において定義します。以下同じです。)を設置し、本取引の実施に向けた協議・交渉に応じる旨の連絡を受けたとのことです。
さらに、齋藤氏は、2025年5月上旬から2025年6月下旬まで、当社グループに対して財務・税務及び法務等に関するデュー・ディリジェンス(以下「本デュー・ディリジェンス」といいます。)を実施し、本取引の諸条件等についてさらに具体的な検討を進めたとのことです。そして、本デュー・ディリジェンスの結果、当社の財務情報等及び当社の株価の動向等を総合的に勘案し、当社が2026年3月期の中間配当及び期末配当を無配とすることを前提として、2025年6月27日、本公開買付価格を280円(価格提案書提出日の前営業日の東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の終値232円に対して20.69%(小数点以下第三位を四捨五入。以下、プレミアムの計算において同じです。)、同日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値230円(小数点以下を四捨五入。以下、終値の単純平均値の計算において同じです。)に対して21.74%、同日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値218円に対して28.44%、同日までの過去6ヶ月間の終値の単純平均値214円に対して30.84%のプレミアムをそれぞれ加えた価格です。)とする旨の初回の価格提案書を提出したとのことです。これに対して、齋藤氏は、当社及び本特別委員会から、2025年7月8日、株式会社AGS FAS(以下「AGS FAS」といいます。)から受けた当社株式の株式価値に係る助言及びTMI総合法律事務所からの助言を踏まえ、当該提案価格は、当社の少数株主(一般株主)の利益に配慮された水準には到底達していないとして、提案内容の再検討の要請を受けたとのことです。これを受けて、齋藤氏は、2025年7月14日、本公開買付価格を305円(価格提案書提出日の前営業日の東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の終値224円に対して36.16%、同日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値228円に対して33.77%、同日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値224円に対して36.16%、同日までの過去6ヶ月間の終値の単純平均値216円に対して41.20%のプレミアムをそれぞれ加えた価格です。)とする旨の価格提案書を提出したとのことです。これに対して、齋藤氏は、当社及び本特別委員会から、2025年7月16日、AGS FASから受けた当社株式の株式価値に係る助言及びTMI総合法律事務所からの助言を踏まえ、当該提案価格は、当社の少数株主(一般株主)の利益に配慮された水準には依然として到底達していないとして、提案内容の再検討の要請を受けました。これを受けて、齋藤氏は、2025年7月22日、本公開買付価格を325円(価格提案書提出日の前営業日の東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の終値223円に対して45.74%、同日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値225円に対して44.44%、同日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値225円に対して44.44%、同日までの過去6ヶ月間の終値の単純平均値217円に対して49.77%のプレミアムをそれぞれ加えた価格です。)とする旨の価格提案書を提出したとのことです。これに対して、齋藤氏は、当社及び本特別委員会から、2025年7月23日、AGS FASから受けた当社株式の株式価値に係る助言及びTMI総合法律事務所からの助言を踏まえ、当該提案価格は、当社の少数株主(一般株主)の利益保護の観点において十分と考えられる価格とは言い難い水準であるとして、提案内容の再検討の要請を受けたとのことです。これを受けて、齋藤氏は、2025年7月29日、本公開買付価格を340円(価格提案書提出日の前営業日の東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の終値233円に対して45.92%、同日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値225円に対して51.11%、同日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値227円に対して49.78%、同日までの過去6ヶ月間の終値の単純平均値218円に対して55.96%のプレミアムをそれぞれ加えた価格です。)とする旨の価格提案書を提出したとのことです。これに対して、齋藤氏は、当社及び本特別委員会から、2025年7月30日、AGS FASから受けた当社株式の株式価値に係る助言及びTMI総合法律事務所からの助言を踏まえ、当該提案価格は、当社の少数株主(一般株主)の利益保護の観点において十分と考えられる価格とは言い難い水準であるとして、提案内容の再検討の要請を受けたとのことです。これを受けて、齋藤氏は、2025年8月1日、本公開買付価格を1株当たり350円(価格提案書提出日の前営業日の東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の終値230円に対して52.17%、同日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値226円に対して54.87%、同日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値228円に対して53.51%、同日までの過去6ヶ月間の終値の単純平均値218円に対して60.55%のプレミアムをそれぞれ加えた価格です。)とする旨の最終の価格提案書を提出したとのことです。その後、齋藤氏は、当社及び本特別委員会から、2025年8月5日、AGS FASから受けた当社株式の株式価値に係る助言及びTMI総合法律事務所からの助言を踏まえ、当社として提案内容を応諾する旨の回答を受領したとのことです。
以上の協議及び交渉を経て、公開買付者は、2025年8月6日、本公開買付価格を350円とし、本取引の一環として本公開買付けを開始することを決定したとのことです。
他方、齋藤氏は、2025年7月22日、応募合意株主に対して、本応募契約の締結を申入れ、応募合意株主との間で本応募契約の内容について協議・交渉を実施し、2025年8月6日付で本応募契約を締結したとのことです。なお、本応募契約の詳細については、下記「(7)公開買付者と当社の株主・取締役等との間における公開買付けへの応募に係る重要な合意に関する事項」の「② 本応募契約」をご参照ください。
また、齋藤氏は、2025年7月22日、不応募合意株主に対して、本不応募契約の締結を申入れ、2025年8月6日付で本不応募契約を締結したとのことです。なお、本応募契約の詳細については、下記「(7)公開買付者と当社の株主・取締役等との間における公開買付けへの応募に係る重要な合意に関する事項」の「① 本不応募契約」をご参照ください。
③ 本公開買付け後の経営方針
公開買付者によれば、本取引は、いわゆるマネジメント・バイアウト(MBO)に該当し、齋藤氏は、本取引後も継続して当社の経営にあたることを予定しており、上記「② 公開買付者が本公開買付けの実施を決定するに至った背景、目的及び意思決定の過程」に記載の各経営施策を推進する予定とのことです。なお、公開買付者と当社のその他の取締役との間、齋藤氏と当社のその他の取締役との間には、本取引後の役員就任や処遇について何らの合意も行っていないとのことです。本取引後の当社の役員構成を含む経営体制の詳細については、本取引後、当社と協議しながら決定していく予定とのことです。
④ 当社が本公開買付けに賛同するに至った意思決定の過程及び理由
(ⅰ)検討体制の構築の経緯
当社は、上記「② 公開買付者が本公開買付けの実施を決定するに至った背景、目的及び意思決定の過程」に記載のとおり、2025年5月2日付で本提案書を受領したことを踏まえ、本取引に関する具体的な検討を開始いたしました。
その後、当社は、下記「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」に記載のとおり、本取引に関して検討を進めるにあたり、本公開買付価格の公正性その他本公開買付けを含む本取引の公正性を担保すべく、2025年5月15日開催の当社取締役会において、公開買付関連当事者から独立したリーガル・アドバイザーとしてTMI総合法律事務所を、公開買付関連当事者から独立したファイナンシャル・アドバイザーとしてAGS FASを、それぞれ選任いたしました。
また、当社は、下記「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」に記載のとおり、本取引がいわゆるマネジメント・バイアウト(MBO)として行われるものであり、構造的な利益相反が存することを踏まえ、本取引における構造的な利益相反の問題及び情報の非対称性の問題に対応し、当社取締役会の意思決定過程における恣意性を排除し、本取引の公正性、透明性及び客観性を担保するために、TMI総合法律事務所の法的助言を踏まえ、2025年5月15日開催の当社取締役会において、本取引及び公開買付関連当事者から独立した委員によって構成される特別委員会(以下「本特別委員会」といいます。)を設置する旨を決議し、本取引を検討するための体制を構築いたしました。本特別委員会の構成、設置の経緯、検討の経緯及び判断内容については、下記「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「③ 当社における独立した特別委員会の設置及び特別委員会からの答申書の取得」をご参照ください。
その後、下記「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」に記載のとおり、2025年5月27日開催の本特別委員会において、当社のリーガル・アドバイザーであるTMI総合法律事務所及び当社のファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関であるAGS FASについて、その独立性及び専門性に問題がないことを確認の上、その選任の承認を受けております。
加えて、当社は、公開買付者から2025年5月2日付で本提案書を受領して以降、齋藤氏、公開買付者、不応募合意株主及び応募合意株主から独立した立場で、本取引に係る検討、交渉及び判断を行うための体制(本取引に係る検討、交渉及び判断に関与する当社の役職員の範囲及びその職務を含みます。)を当社の社内に構築いたしました。本取引に係る検討、交渉及び判断に関与する役職員の範囲及びその職務については、下記「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「⑤ 当社における独立した検討体制の構築」をご参照ください。
(ⅱ)検討・交渉の経緯
上記「(ⅰ)検討体制の構築の経緯」の検討体制の下、当社は、当社の経営環境及び事業の状況等を踏まえ、本取引の是非や本公開買付価格を含む本取引の諸条件の妥当性について、本特別委員会により事前に確認された交渉方針や本特別委員会からの意見・指示・要請等に基づき、TMI総合法律事務所及びAGS FASからの助言も随時受けながら、公開買付者との間で継続的に協議及び交渉を行い、慎重に検討を行ってまいりました。
具体的には、2025年5月2日付で本提案書を受領して以降、本特別委員会における検討・協議を進め、2025年6月9日付で当社に対して、本取引及び本取引後の目的・意義等に関して書面による質問事項を送付し、同月23日付で書面による回答を受領し、同月25日開催の本特別委員会において、当社から、本取引の提案を受けた経緯、本取引の目的、事業環境、経営課題等に関する説明を受け、これらに対する質疑応答を行いました。
また、本特別委員会は、2025年6月23日付で齋藤氏に対して、本取引及び本取引後の経営方針等に関して書面による質問事項を送付し、同月27日付で書面による回答を受領し、同月30日開催の本特別委員会において、齋藤氏から、本取引を提案するに至った経緯及び理由、本取引の目的、当社事業に関する評価、本取引の諸条件、本取引後の経営方針等について説明を受け、これらに対する質疑応答を行いました。
加えて、本特別委員会は、2025年6月26日開催の本特別委員会において、公開買付者に対して提示する本事業計画(下記「(3)算定に関する事項」の「② 算定の概要」において定義します。以下同じです。)の内容、重要な前提条件及び作成経緯等について説明を受け、その合理性について確認の上、承認しております。
本公開買付価格については、当社は、2025年6月27日に、齋藤氏より、当社が2026年3月期の中間配当及び期末配当を無配とすることを前提として、本公開買付価格を1株当たり280円(価格提案書提出日の前営業日の東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の終値232円に対して20.69%、同日までの過去1ヶ月間の終値単純平均値230円に対して21.74%、同過去3ヶ月間の終値単純平均値218円に対して28.44%、同過去6ヶ月間の終値単純平均値214円に対して30.84%のプレミアムをそれぞれ加えた価格)とする旨の初回の価格提案書を受領いたしました。これに対して、当社及び本特別委員会は、2025年7月8日に、AGS FASから受けた当社株式の株式価値に係る助言及びTMI総合法律事務所からの助言を踏まえ、当該提案価格は、当社の少数株主(一般株主)の利益に配慮された水準には到底達していないとして、提案内容の再検討の要請を行いました。その後、当社は、2025年7月14日に、齋藤氏より、本公開買付価格を1株当たり305円(価格提案書提出日の前営業日の東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の終値224円に対して36.16%、同日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値228円に対して33.77%、同日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値224円に対して36.16%、同日までの過去6ヶ月間の終値の単純平均値216円に対して41.20%のプレミアムをそれぞれ加えた価格です。)とする旨の価格提案書を受領いたしました。これに対して、当社及び本特別委員会は、2025年7月16日に、AGS FASから受けた当社株式の株式価値に係る助言及びTMI総合法律事務所からの助言を踏まえ、当該提案価格は、当社の少数株主(一般株主)の利益に配慮された水準には依然として到底達していないとして、提案内容の再検討の要請を行いました。その後、当社は、2025年7月22日に、齋藤氏より、本公開買付価格を1株当たり325円(価格提案書提出日の前営業日の東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の終値223円に対して45.74%、同日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値225円に対して44.44%、同日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値225円に対して44.44%、同日までの過去6ヶ月間の終値の単純平均値217円に対して49.77%のプレミアムをそれぞれ加えた価格です。)とする旨の価格提案書を受領いたしました。これに対して、当社及び本特別委員会は、2025年7月23日に、AGS FASから受けた当社株式の株式価値に係る助言及びTMI総合法律事務所からの助言を踏まえ、当該提案価格は、当社の少数株主(一般株主)の利益保護の観点において十分と考えられる価格とは言い難い水準であるとして、提案内容の再検討の要請を行いました。その後、当社は、2025年7月29日に、齋藤氏より、本公開買付価格を1株当たり340円(価格提案書提出日の前営業日の東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の終値233円に対して45.92%、同日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値225円に対して51.11%、同日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値227円に対して49.78%、同日までの過去6ヶ月間の終値の単純平均値218円に対して55.96%のプレミアムをそれぞれ加えた価格です。)とする旨の価格提案書を受領いたしました。これに対して、当社及び本特別委員会は、2025年7月30日に、AGS FASから受けた当社株式の株式価値に係る助言及びTMI総合法律事務所からの助言を踏まえ、当該提案価格は、当社の少数株主(一般株主)の利益保護の観点において十分と考えられる価格とは言い難い水準であるとして、提案内容の再検討の要請を行いました。その後、当社は、2025年8月1日に、齋藤氏より、本公開買付価格を1株当たり350円(価格提案書提出日の前営業日の東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の終値230円に対して52.17%、同日までの過去1ヶ月間の終値の単純平均値226円に対して54.87%、同日までの過去3ヶ月間の終値の単純平均値228円に対して53.51%、同日までの過去6ヶ月間の終値の単純平均値218円に対して60.55%のプレミアムをそれぞれ加えた価格です。)とする旨の最終の価格提案書を受領いたしました。これに対して、当社及び本特別委員会は、2025年8月5日に、AGS FASから受けた当社株式の株式価値に係る助言及びTMI総合法律事務所からの助言を踏まえ、提案内容を応諾いたしました。
(ⅲ)判断の内容
当社は、リーガル・アドバイザーであるTMI総合法律事務所から、本取引に関する諸手続を含む当社取締役会の意思決定の方法及び過程その他の留意点について、必要な法的助言を受けるとともに、2025年8月1日の齋藤氏からの最終提案を受け、本特別委員会から2025年8月6日付で答申書(以下「本答申書」といいます。)の提出を受けました(本答申書の概要及び本特別委員会の具体的な活動内容等については、下記「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「③ 当社における独立した特別委員会の設置及び特別委員会からの答申書の取得」をご参照ください。)。その上で、当社は、2025年8月6日開催の取締役会において、リーガル・アドバイザーであるTMI総合法律事務所から受けた法的助言並びにファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関であるAGS FASから2025年8月5日付で取得した株式価値算定書(以下「本株式価値算定書」といいます。)の内容を踏まえつつ、本特別委員会から提出された本答申書の内容を最大限に尊重しながら、本取引により当社の企業価値の向上を図ることができるか、本取引における本公開買付価格を含む本取引の諸条件は妥当なものか等の観点から慎重に協議・検討を行いました。また、当社は、2025年5月2日付で本提案書を受領して以降、本取引の必要性や、本取引によって見込まれるデメリット・メリットその他の影響及び程度について検討を重ねるとともに、これらの事項及び本取引後の経営方針等に関する齋藤氏の説明内容も踏まえ、本取引により当社株式を非公開化することが、当社グループの企業価値の向上に資するものであるか否かについて検討を重ねてきました。
当社グループが行っている資格関連教育サービスは、日本経済の健全な発展を支えていくために必要不可欠なプロフェッショナル人材の育成であり毎年一定の需要が見込める比較的安定したものでありますが、近年はIT環境が飛躍的に進歩したことで様々な手段によって教育を提供する環境が整備され、それに伴い受講生・消費者側のニーズも多様化してきていると認識し、今後の事業環境について、(ⅰ)市場縮小リスク、(ⅱ)当社における人材不足、(ⅲ)合格者数シェア(合格実績)の低迷、(ⅳ)対面授業からオンライン学習へのシフト、(ⅴ)多様化するニーズと収益モデルの転換が課題であることも認識するに至りました。
(ⅰ)市場縮小リスクについては、日本国内で加速している少子高齢化により、当社のターゲット顧客層である大学生や若年層人口が減少し続けています。また、企業の人材不足により、就職環境は良好な状況が続いておりますが、その影響で、就職や転職のために資格取得やスキルの向上を目指す大学生や若年層が減少傾向にあり、公務員志願者の減少が続いております。これらの要因により、特に当社の主力分野の一つである公務員試験の受験者数は過去10年間毎年減少しております。当該受験者の減少傾向は今後も継続する可能性が高く、当社の事業運営における重大なリスクであると考えております。次に、(ⅱ)当社における人材不足については、当社は講座数を数多く有する点が強みである一方で、法人顧客向けの営業担当者の育成に長期間を要します。営業部門は少数精鋭で全国的に対応しておりますが、講座数の更なる増設、法人顧客の増加及び新規分野への進出に際しては、現在の営業部門における人員のみで対応することが難しく、営業人材の拡充が必要となります。(ⅲ)合格者数シェア(合格実績)の低迷については、当社の展開する講座の中には、資格試験の申込者数は増加傾向にあるものの、当社の合格者数シェア(合格実績)が近年低迷している講座もあります。合格実績は顧客が資格スクールを選ぶ際の重要な指標の一つであり、当社にとっては合格者数シェア(合格実績)が低下することは、その後の顧客獲得に大きな影響を及ぼすことになります。(ⅳ)対面授業からオンライン学習へのシフトについては、コロナ禍(2020年)以降、オンライン授業を取り入れた学習スタイルが一般化しており、通学時間を省略したいという考えが浸透しつつあり、校舎の存在自体の意味合いが薄れており、受講形態のシフトが急務となっています。(ⅴ)多様化するニーズと収益モデルの転換については、働き方改革や生涯学習の考えが次第に広まっている中で、コロナ禍における対面授業の制限とオンライン学習の普及に加えて、資格取得を目指す層及び求められる学習スタイルが多様化しつつあります。かつては、資格取得を目指す層は主に学生及び若年層の社会人でしたが、現在は、学生及び若年層の社会人のみならず、主婦・シニア層なども資格取得を目指す方が増えており、当社における顧客ターゲット層となっています。また、学習スタイルも多様化しており、従来から主な学習スタイルであった対面授業を好む資格受験生も多く存在する一方で、ワーク/ライフと両立できるフレックスな学習スタイルを求める資格受験生も増えております。これらの多様化するニーズを満たすためには、時間と空間にとらわれない学習体制、適材適所な講座コース設計、ITプラットフォームのアップグレード、及び管理システムの強化が必要と考えております。さらに、従来の対面授業を中心とした高付加価値・高価格帯のサービスモデルは変革を迫られており、受講料の価格競争が激化しています。
当社は、このような事業環境の下、当社グループが上記のリスクや課題を解決し、今後もさらなる企業価値の向上を実現していくためには、中長期的な視点での大規模なデジタル投資、迅速かつ大胆な経営判断・先行投資が不可欠であると考えるに至りました。
かかる状況の中で、当社は齋藤氏から、本取引に係る協議・交渉の過程において、上記「② 公開買付者が本公開買付けの実施を決定するに至った背景、目的及び意思決定の過程」に記載のとおり、齋藤氏は、市場縮小リスク・資格の魅力変化への対応を踏まえた教育コンテンツの高度デジタル化と差別化、収益モデルの転換・多様な学習ニーズに対応したオンライン・オフライン融合型のハイブリッド教育モデルの確立、海外展開・他分野展開を見据えたIT基盤への持続的投資と組織変革、といった施策に取り組むことが必要であり、当該取り組みにより当社の事業基盤を強固なものとし、企業価値向上につながる提案を受けました。当社としても、中長期的に収益性を向上させ、企業価値を向上していくためには、事業構造の改革が必要不可欠であり、いずれの施策も当社の中長期的な企業価値向上のために積極的に推進していくべきものであると考えるに至りました。当社が考える、各施策のメリットは下記のとおりです。
a 市場縮小リスク・資格の魅力変化への対応を踏まえた教育コンテンツの高度デジタル化と差別化
当社グループは国内の顧客をターゲットとし、文系資格のみならず理系資格にも対応した幅広い講座を展開しており、特に文系資格に注力してきましたが、上記(ⅰ)に記載のとおり、日本国内で加速している少子高齢化に起因して国内市場が縮小していることから、さらなる成長のためには幅広い顧客層の取り込みが不可欠と考えております。オンラインライブ講座など比較的参加しやすいチャンネルを通して、従来であれば受講することへのハードルが大きかった子育て中の女性層や50代以上の客層にアプローチすることも可能となり、当該客層をターゲットとした新たな教育コンテンツの開発が考えられます。また、当社は、資格取得を目指す受講者層及びその学習動機の多様化に応じて、AIなどの先端技術を用いて従来の画一的な教育コンテンツを進化させることも可能と考えております。具体的には、オンライン通信講座、オンデマンド講座を通じて通学講座と同等のクオリティの学習体験を提供するための講座コースの見直し、受講用プラットフォームの改善、デジタル版コンテンツの開発、及び学習補助システムによる付加価値の提供が可能と考えております。
b 収益モデルの転換・多様な学習ニーズに対応したオンライン・オフライン融合型のハイブリッド教育モデルの確立
上記(ⅳ)に記載のとおり、当社においては、対面授業からオンライン学習へのシフトが経営課題となっていますが、通学講座の割合を徐々に減らしつつ、オンライン通信講座へ移行する際に、並行して校舎の統廃合や人員再配置を通して効率化を図ることにより、オンライン通信受講を希望する受講生への対応がより広く可能となり、新規受講者の獲得に貢献できると考えております。また、オンライン通信講座、オンデマンド講座を通して通学講座と同等のクオリティの学習体験を提供するためのコースの見直し、コンテンツのアレンジ及びプラットフォームの改善が考えられます。一方で、一般的にオンライン通信講座の受講者は、モチベーションが保ちにくく、継続率が低いという課題を抱えることがありますが、そのような課題に対しては、講師やクラスメートとの対面式のコミュニケーションを可能にしたり、学習進度を講師と共有する機能を拡充したりするなど、ライブ授業と同等以上のコミュニケーションツールを積極的に開発・拡充させるなど、オンライン通信講座でモチベーションを保てる運用を構築することにより、継続率を維持することが可能と考えております。このようにオンライン通信講座に付加価値のある機能を追加していくことにより、自由な受講形態ときめ細やかな講師等による個別対応を組み合わせたハイブリッドな学習スタイルにより従来どおりに「早期に合格させる」という当社の強みを発揮することで高付加価値なサービスを提供可能となり、顧客単価の維持、さらには引き上げにもつながると考えております。
c 海外市場への進出・他分野展開を見据えたIT基盤への持続的投資と組織変革
上記aに記載のとおり、国内市場が縮小していることから、成長機会創出のためには海外市場への進出や、多分野への事業拡大が不可欠と考えております。例えば、海外人材獲得へのパイプの構築、それにつながる海外人材向けの資格教育、あるいはIT・医療・介護・電気など他の専門分野への教育サービスの拡充などが考えられます。これらの実現のためには当社グループとして、グローバル対応が可能な組織づくりを進める必要があり、中長期的な時間軸で成長基盤を構築することが考えられます。また、上記a及びbのいずれも積極的なIT投資が必要となりますが、それに伴うITリテラシーの拡充は必要不可欠と考えております。デジタル化に対応するためには、当社グループの従業員及び講師のデジタルスキルの向上のための定期的な研修を実施する必要があります。ITリテラシーの維持・向上は継続する必要があり、当社グループのIT基盤を強化することで、組織の競争力を中長期的に高めることができると考えられます。
d 中長期的な視点からの人材の確保
上記(ⅱ)に記載のとおり、当社は営業人材の拡充が課題であり、営業担当者の増員により法人顧客の新規獲得に大きく貢献することを見込んでおりますが、当社は展開している講座数が多く即戦力としての起用が困難であることから、営業担当者の育成には長期間を要し採用費用や育成費用が先行することが想定されます。また、上記(ⅲ)に記載のとおり、当社の合格者数シェア(合格実績)が近年低迷している講座があることから、優秀な講師のスカウトが急務となります。実績ある講師を積極的にスカウトすることで、有能な講師を即戦力として起用することが可能となり、合格実績の向上が可能と考えられるものの、優秀な講師のスカウトには相応の支出が必要であり、かつ、合格実績は単年度のみでなく数年間の蓄積として判断されることから、短期的には合格実績の向上が生じず講師費用が先行する可能性があり得ます。当社株式を非公開化し、当社の株主が不応募合意株主のみとなることにより、短期的な利益の減少や株価の下落に囚われることなく、中長期的な視点から人材の確保を行うことができると考えられます。
しかしながら、上記の各施策はいずれも事業構造上の大きな転換や新たな取り組みを伴うものであり、中長期的には当社の企業価値向上に資することが期待できるものの、各施策が当社グループの業績に貢献するまでに、相応の時間と戦略的な投資を含む各種先行投資が必要になることを考慮すると、少なくとも短期的には当社グループの財務状況や業績の悪化をもたらすリスクがあると考えられます。そのため、当社が上場を維持したままこれらの施策を実行した場合には、短期的に株価の下落や配当の減少等、当社の株主の皆様に対して多大な悪影響を与えてしまうおそれが懸念され、他方で株価の下落等を避けつつこれらの施策を実施しようとすると投資規模等に自ずと限界が生じるために十分な成果を上げられない可能性が高く、当社株式の上場を維持したままこれらの施策を実施することは難しいと考えるに至りました。一方で、本取引により、当社株式を非公開化することで、長期的な視点から短期的な業績下落に顧慮することなく公開買付者からの提案にあるような施策の実行に取り組むことが可能となると考えており、本取引の実行は当社の企業価値向上の観点からもメリットがあると考えております。また、当社株式の非公開化により、当社株式の上場を維持するために必要な費用(有価証券報告書等の継続的な情報開示に要する費用、会計監査費用、株主総会の運営や株主名簿管理人への事務委託に要する費用等)を削減することができ、かつ、上場会社として必要となる管理部門の維持のための費用その他のコスト等、当社株式の上場を維持することによるその他の経営負担も軽減され、より一層、事業成長への経営資源の集中を図ることも可能になると考えております。
このような状況下において、当社としても、当社の株主の皆様に対して発生する可能性がある上記の悪影響を回避しつつ、中長期的な視点から当社の企業価値を向上させるためには、マネジメント・バイアウト(MBO)の手法により当社株式を非公開化し、所有と経営を一体化させ、短期的な株式市場からの評価にとらわれず、各施策に迅速に取り組むことができる経営体制を構築することが必要であると考えるに至りました。また、当社の常務取締役である齋藤氏は当社の事業内容を熟知していることを踏まえれば、マネジメント・バイアウト(MBO)の手法により、齋藤氏が引き続き当社の経営に関与し、当社を所有することは十分な合理性があると判断するに至りました。
なお、当社株式の非公開化を行った場合には、①資本市場からのエクイティ・ファイナンスによる資金調達を行うことができなくなること、②上場会社としてのブランドを喪失することで従業員の採用及びリテンションに悪影響が生じること、及び③取引先をはじめとするステークホルダーに対する信用力の低下といったデメリットが一般的には予想されると認識しております。しかしながら、当社の現在の状況に鑑みると、①については、昨今の良好な資金調達環境に鑑みても、間接金融を通じて必要に応じた資金調達を行うことが十分可能であり、エクイティ・ファイナンスの活用による資金調達の必要性は見込まれないことから、大きなデメリットにはならないと考えております。②については当社の上場会社としてのブランドよりも、「資格の学校TAC」としての当社グループの知名度や社会的な貢献及び信用により培ってきたブランドが大きいことから、当社従業員はこれまでと同様の高い意識をもって働くことが可能であり、本取引による今後の採用活動への影響はないものと考えられること、③については当社グループの知名度や社会的な信用はこれまでの事業活動を通じて獲得・維持されている部分が大きいことから、非公開化によるデメリットは限定的と考えられます。
以上を踏まえ、当社取締役会は、本公開買付けを含む本取引により当社株式を非公開化し、最終的に不応募合意株主のみが当社の株主となることが、当社の企業価値の向上に資するものであると判断いたしました。
また、当社は、以下の点等から、本公開買付価格(350円)は当社の少数株主(一般株主)の皆様が享受すべき利益が確保された妥当な価格であり、本公開買付けは、当社の少数株主(一般株主)の皆様に対して適切なプレミアムを付した価格での合理的な当社株式の売却の機会を提供するものであると判断いたしました。
(a)本公開買付価格が、下記「(3)算定に関する事項」に記載されている本株式価値算定書における算定結果のうち、市場株価法による算定結果の上限値を超える金額であり、また、ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法(以下「DCF法」といいます。)に基づく算定結果のレンジの中央値を上回ること
(b)本公開買付価格が、本公開買付けの公表日の前営業日である2025年8月5日の東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の終値234円に対して49.57%、同日までの過去1ヶ月間の終値単純平均値227円に対して54.19%、同過去3ヶ月間の終値単純平均値228円に対して53.51%、同過去6ヶ月間の終値単純平均値219円に対して59.82%のプレミアムをそれぞれ加えた金額であり、これらの各プレミアムは、経済産業省の「公正なM&Aの在り方に関する指針」が公表された2019年6月28日以降に公表され、2025年6月30日までに公開買付けが成立しているマネジメント・バイアウト(MBO)の類似事例80件における、公表日前営業日の終値、並びに過去1ヶ月間、3ヶ月間及び6ヶ月間の終値単純平均値それぞれに対するプレミアムの平均値(対公表日前営業日終値:48.74%、対過去1ヶ月間:51.05%、対3ヶ月間:53.98%、対6ヶ月間:54.50%)に比して合理的なものであるといえること
(c)本公開買付価格の決定に際しては、下記「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」に記載の本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置が採られていること等、少数株主(一般株主)の利益への配慮がなされていると認められること
(d)本公開買付価格が、上記利益相反を回避するための措置が採られた上で、本特別委員会の実質的な関与の下、当社と公開買付者との間で独立当事者間の取引における協議・交渉と同等の協議・交渉が複数回行われた上で決定された価格であること
(e)本公開買付価格は、下記「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「③ 当社における独立した特別委員会の設置及び特別委員会からの答申書の取得」に記載のとおり、本特別委員会から取得した本答申書においても、妥当であると認められると判断されていること
また、本公開買付価格は、当社の2025年6月30日現在の自己資本(6,490百万円)を、2025年6月30日現在の本基準株式数(18,133,832株)で割ることにより算出した1株あたりの純資産額である357.93円を下回っているものの(2.22%のディスカウント)、純資産額は将来の収益性を反映するものではないため、継続企業である当社の企業価値算定において重視することは合理的ではないと考えております。また、一般的に会社の保有する資産には換価が困難な資産も多くかつ清算に際しては従業員への退職金の支払いその他の多額の手続費用が必要になる点に鑑みれば純資産額は会社の清算価値を示す金額でもありません。特に当社の資産には、棚卸資産、校舎の土地・建物、無形固定資産、校舎の差入保証金などの流動性の低い事業用資産(当社の連結貸借対照表(2025年6月30日現在)上、他目的への流用が困難な「商品及び製品」(566百万円)、「原材料及び貯蔵品」(306百万円)や売却に際して多額の除却損が見込まれる「有形固定資産(その他)」(1,963百万円)、短期間での売却が困難な「土地」(2,744百万円)が多数相応に含まれており、資産売却に際しての困難性や清算に伴う様々な追加コストの発生等を考慮すると、仮に当社が清算する場合にも、相当程度の毀損が見込まれること(なお、当社は、清算を予定していないことから、清算を前提とする見積書の取得までは行っておらず、本公開買付価格が、具体的な検討を経て概算された想定清算コストを勘案して算出される想定の清算価値を上回っていることの確認までは行っておりません。)から、継続企業である当社の企業価値の算定において、純資産額を重視することは合理的ではないと考えております。
以上より、当社は、2025年8月6日開催の当社取締役会において、審議及び決議に参加した当社の取締役(取締役全13名のうち、齋藤氏を除く当社の取締役12名)の全員一致で、本公開買付けに賛同する旨の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に対して、本公開買付けに応募する旨を推奨する旨の決議をいたしました。なお、当該取締役会における決議の方法については、下記「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「④ 当社における利害関係を有しない取締役全員(監査等委員を含む。)の承認」をご参照ください。
(3)算定に関する事項
① 算定機関の名称並びに上場会社及び公開買付者との関係
当社は、本公開買付けに関する意見表明を行うに当たり、公開買付関連当事者から独立したファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関であるAGS FASに対して、当社株式の株式価値算定を依頼し、2025年8月5日付で、本株式価値算定書を取得しました。なお、下記「(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置」の「① 当社における独立した第三者算定機関からの株式価値算定書の取得」に記載のとおり、公開買付者及び当社において、本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置を実施していることから、当社は、AGS FASから本公開買付価格の公正性に関する意見書(フェアネス・オピニオン)は取得しておりません。AGS FASは、公開買付関連当事者の関連当事者には該当せず、本公開買付けを含む本取引に関して記載すべき重要な利害関係を有しておりません。また、本取引に係るAGS FASに対する報酬は、本取引の過程に複数のマイルストーンを設定し、各マイルストーンに到達する都度支払われるマイルストーン報酬が含まれているところ、AGS FASとしては、本取引の成否が不明な中において、報酬体系を固定報酬のみとするよりもむしろ、報酬の一部をマイルストーン報酬とする方が当社の金銭的負担の観点から望ましく、双方にとっても合理性があると考えているとのことであり、当社としてはマイルストーン報酬が含まれていることをもって独立性が否定されているわけではないと判断しております。また、本特別委員会は、2025年5月27日開催の第1回の本特別委員会において、AGS FASの独立性に問題がないことを確認した上で、当社のファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関として承認しております。
② 算定の概要
AGS FASは、本公開買付けにおける算定手法を検討した結果、当社株式が東京証券取引所スタンダード市場に上場しており、市場株価が存在していることから市場株価法を、また、当社の将来の事業活動の状況を算定に反映させるためにDCF法をそれぞれ算定方法として採用し、当社株式の株式価値の算定を行いました。
AGS FASによれば、上記の各手法に基づいて算定された当社株式1株当たりの株式価値の範囲は以下のとおりです。
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市場株価法 |
219円~234円 |
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DCF法 |
302円~383円 |
市場株価法では、本公開買付けに対する意見表明に係る当社取締役会決議日の前営業日である2025年8月5日を算定基準日として、東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の基準日終値234円、直近1ヶ月間の終値単純平均値227円、直近3ヶ月間の終値単純平均値228円及び直近6ヶ月間の終値単純平均値219円を基に、当社株式の1株当たりの株式価値の範囲を219円から234円までと算定しております。
DCF法では、当社が作成した事業計画(以下「本事業計画」といいます。)を基に、2026年3月期から2030年3月期までの5期分の本事業計画における財務予測、一般に公開された情報等の諸要素を前提として、当社が2026年3月期第2四半期以降に生み出すと見込まれるフリー・キャッシュ・フローを一定の割引率で現在価値に割り引いて当社の企業価値や株式価値を算定し、当社株式の1株当たりの株式価値の範囲を302円から383円までと算定しております。なお、割引率は加重平均資本コスト(WACC:Weighted Average Cost of Capital)を採用し、8.68%~10.68%としております。継続価値の算定にあたっては永久成長率法を採用し、永久成長率は日本の物価上昇率を基に0.90%~1.50%とし、継続価値を2,945百万円から4,321百万円と算定しております。
本事業計画は、当社が2024年5月15日付で作成した5ヵ年の中期経営計画をベースとして、毎事業年度末を中心に、試験制度の変更、就職状況等の各資格を取り巻く社会情勢や足元の合格実績等を考慮し適宜見直しを行っております。本事業計画は、上記「(2)意見の根拠及び理由」の「④ 当社が本公開買付けに賛同するに至った意思決定の過程及び理由」に記載のとおり、(ⅰ)市場縮小リスク、(ⅲ)合格者数シェア(合格実績)の低迷等を踏まえると、事業規模の更なる拡大は容易ではないとの想定であり、オンライン講座へのシフトに伴う校舎の縮小による費用削減を見込むものの、昨今の物価上昇及び人件費上昇の影響を踏まえ、営業利益は減少傾向で推移するとの前提を置いております。
また、本事業計画の対象期間は、2026年3月期から2030年3月期までとなっておりますが、経済情勢の変動や顧客ニーズの急速な変化に鑑みると2030年3月期以降の明示的な事業計画の策定は困難であり、上記施策の実現可能性を見込むことができ、効果が反映され、かつ業績が平準化すると考えられるまでの期間として5期分としております。なお、本特別委員会は、本事業計画の対象とする期間を含めてその内容を承認しております。
なお、本事業計画には、対前年度比較において大幅な増減益及びフリー・キャッシュ・フローの大幅な増減を見込んでいる事業年度は含まれておりません。
また、当社の保有する現預金については、当社における最低限の必要運転資金(2023年3月期から2025年3月期までの各事業年度における売上原価及び販管費の合計額に占める月別最大資金需要額の割合を算出し、当該割合の過去3事業年度の平均値に対して2026年3月期の売上原価及び販管費の合計額を乗じることにより算出された月別最大資金需要額となります。)を除き、残額を非事業用資産とし、当社の保有する投資有価証券については、持分法適用会社に対する投資を除き純投資目的として時価で売却することを想定した際の税効果を加味した上で非事業用資産とし、当社の保有する保険積立金については、解約した際の返戻金相当額に税効果を加味した上で非事業用資産として、当社の事業価値に加算しております。
AGS FASがDCF法の算定の前提とした本事業計画に基づく財務予測は以下のとおりです。
なお、本取引の実行により実現することが期待されるシナジー効果については、現時点において具体的に見積もることは困難であるため、本事業計画には加味されておりません。
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(単位:百万円) |
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2026年3月期 (9ヶ月) |
2027年3月期 |
2028年3月期 |
2029年3月期 |
2030年3月期 |
|
売上高 |
13,876 |
19,257 |
19,256 |
19,314 |
19,374 |
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営業利益 |
266 |
837 |
709 |
707 |
650 |
|
EBITDA |
633 |
1,255 |
1,118 |
1,118 |
1,067 |
|
フリー・キャッシュ・フロー |
1,486 |
746 |
619 |
494 |
457 |
AGS FASは、当社株式の株式価値の算定に際して、当社から提供を受けた資料及び情報、一般に公開された情報を原則としてそのまま使用し、分析及び検討の対象とした全ての資料及び情報が正確かつ完全であることを前提としており、これらの資料及び情報の正確性又は完全性に関し独自の検証を行っておらず、またその義務を負うものではありません。AGS FASは、当社株式の株式価値の算定に重大な影響を与える可能性がある事実でAGS FASに対して未開示の事実はないこと等を前提としております。当社及び当社の関係会社の全ての資産又は負債(金融派生商品、簿外資産及び負債、その他の偶発債務を含み、これらに限られない。)について、個別の資産及び負債の分析及び評価を含め、独自に評価、鑑定又は査定を行っておらず、また第三者機関への評価、鑑定又は査定の依頼も行っておりません。AGS FASは、提供された本事業計画その他将来に関する情報が、当社の経営陣による現時点において可能な最善の予測と判断に基づき、合理的に確認、検討又は作成されていることを前提としており、独自に検証することなくこれらの情報に依拠しております。AGS FASの算定は、2025年8月5日現在における金融、経済、市場その他の状況を前提としております。なお、AGS FASが提出した当社株式の株式価値の算定結果は、本公開買付価格の公平性について意見を表明するものではありません。
(4)上場廃止となる見込み及びその事由
本書提出日現在、当社株式は、東京証券取引所スタンダード市場に上場しておりますが、公開買付者は、本公開買付けにおいて買付予定数の上限を設定していないため、本公開買付けの結果次第では、当社株式は、東京証券取引所の定める上場廃止基準に従い、所定の手続を経て上場廃止となる可能性があります。また、本公開買付け成立時点で当該基準に該当しない場合でも、本公開買付けの成立後、下記「(5)本公開買付け後の組織再編等の方針(いわゆる二段階買収に関する事項)」に記載の本スクイーズアウト手続が実行された場合には、東京証券取引所の上場廃止基準に従い、所定の手続を経て上場廃止になります。なお、上場廃止後は、当社株式を東京証券取引所スタンダード市場において取引することはできません。
(5)本公開買付け後の組織再編等の方針(いわゆる二段階買収に関する事項)
公開買付者は、上記「(2)意見の根拠及び理由」の「① 本公開買付けの概要」に記載のとおり、当社株式を非公開化する方針であり、本公開買付けにおいて、公開買付者が、当社株式の全て(但し、当社が所有する自己株式及び本不応募株式を除きます。)を取得できなかった場合には、本公開買付け成立後、以下の方法により、本スクイーズアウト手続を実施することを予定しているとのことです。
具体的には、公開買付者は、本公開買付けの決済の完了後速やかに、会社法第180条に基づき、当社株式の併合(以下「本株式併合」といいます。)を行うこと及び本株式併合の効力発生を条件として単元株式数の定めを廃止する旨の定款の一部変更を行うことを付議議案に含む当社の臨時株主総会(以下「本臨時株主総会」といいます。)を開催することを当社に要請する予定とのことです。当社は、本公開買付けが成立した場合には、公開買付者によるこれらの要請に応じる予定です。なお、上記「(2)意見の根拠及び理由」の「① 本公開買付けの概要」に記載のとおり、公開買付者及び不応募合意株主は、本臨時株主総会において上記各議案に賛成する予定とのことです。
本臨時株主総会において本株式併合の議案についてご承認をいただいた場合には、本株式併合がその効力を生ずる日において、当社の株主の皆様は、本臨時株主総会においてご承認をいただいた本株式併合の割合に応じた数の当社株式を所有することとなります。本株式併合をすることにより株式の数に1株に満たない端数が生じるときは、当該端数の株式を所有する当社の株主の皆様に対して、会社法第235条その他の関係法令の定める手続に従い、当該端数の合計数(合計した数に1株に満たない端数がある場合には、当該端数は切り捨てられます。以下同じです。)に相当する当社株式を当社又は公開買付者に売却することによって得られる金銭が交付されることになります。公開買付者は、当該端数の合計数に相当する当社株式の売却価格については、当該売却の結果、本公開買付けに応募されなかった当社の各株主の皆様(公開買付者、当社及び不応募合意株主を除きます。)に交付される金銭の額が、本公開買付価格に当該各株主が所有していた当社株式の数を乗じた価格と同一となるよう設定した上で、裁判所に対して任意売却許可の申立てを行うことを当社に要請する予定とのことです。また、当社株式の併合の割合は、本書提出日現在において未定ですが、公開買付者及び不応募合意株主が当社の発行済株式の全て(当社が所有する自己株式を除きます。)を所有することとなるよう、本公開買付けに応募されなかった当社の株主の皆様(但し、公開買付者、当社及び不応募合意株主を除きます。)の所有する当社株式の数が1株に満たない端数となるように決定するよう要請する予定とのことです。当社は、本公開買付けが成立した場合には、公開買付者によるこれらの要請に応じる予定です。
本株式併合に関連する少数株主の権利保護を目的とした会社法上の規定として、本株式併合がなされた場合であって、本株式併合をすることにより株式の数に1株に満たない端数が生じるときは、会社法第182条の4及び第182条の5その他の関係法令の定めに従って、当社の株主の皆様(但し、公開買付者、当社及び不応募合意株主を除きます。)は、当社に対してその所有する株式のうち1株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができる旨及び裁判所に対して当社株式の価格決定の申立てを行うことができる旨が定められています。上記のとおり、本株式併合においては、本公開買付けに応募されなかった当社の株主の皆様(公開買付者、当社及び不応募合意株主を除きます。)の所有する当社株式の数は1株に満たない端数となる予定ですので、本株式併合に反対する当社の株主の皆様は、これらの申立てを行うことができることになる予定です。なお、上記申立てがなされた場合における、当社株式の買取価格は、最終的には裁判所が判断することになります。
上記の手続については、関係法令の改正や関係法令についての当局の解釈等の状況、本公開買付け後の公開買付者の当社株式の所有割合、公開買付者及び不応募合意株主以外の当社株主の当社株式の所有状況等によっては、実施に時間を要し、又はそれと概ね同等の効果を有するその他の方法に変更する可能性があるとのことです。但し、その場合でも、本公開買付けに応募されなかった当社の株主の皆様(但し、公開買付者、当社及び不応募合意株主を除きます。)に対しては、最終的に金銭を交付する方法が採用される予定であり、その場合に当該各株主に交付される金銭の額については、本公開買付価格に当該各株主が所有していた当社株式の数を乗じた価格と同一になるよう算定する予定とのことです。
以上の場合における具体的な手続及びその実施時期等については、決定次第、当社が速やかに公表する予定ですが、本臨時株主総会を開催する場合には2025年11月下旬を目途に開催されることを見込んでいるとのことです。
なお、本公開買付けは、本臨時株主総会における当社の株主の皆様の賛同を勧誘するものではありません。加えて、本公開買付けへの応募又は上記の各手続における税務上の取扱いについては、当社の株主の皆様が自らの責任にて税理士等の専門家にご確認いただきますようお願いいたします。
(6)本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等、本公開買付けの公正性を担保するための措置
公開買付者及び当社は、本公開買付けがいわゆるマネジメント・バイアウト(MBO)に該当する本取引の一環として行われるものであり、構造的な利益相反の問題が存在すること等を踏まえ、本公開買付価格の公正性の担保、本公開買付けの実施を決定するに至る意思決定の過程における恣意性の排除及び利益相反の回避の観点から、本公開買付けを含む本取引の公正性を担保するため、以下の措置を実施いたしました。
なお、公開買付者は、本公開買付けにおいて、いわゆる「マジョリティ・オブ・マイノリティ」(Majority of Minority)の買付予定数の下限を設定すると、本公開買付けの成立を不安定なものとし、かえって本公開買付けに応募することを希望する当社の少数株主の利益に資さない可能性もあるものと考え、本公開買付けにおいて、いわゆる「マジョリティ・オブ・マイノリティ」(Majority of Minority)の買付予定数の下限は設定していないとのことです。もっとも、公開買付者及び当社において、本公開買付価格の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置として、以下の措置を実施していることから、当社の少数株主の利益には十分な配慮がなされていると考えております。
また、以下の記載のうち、公開買付者において実施した措置については、公開買付者から受けた説明に基づくものです。
① 当社における独立した第三者算定機関からの株式価値算定書の取得
当社は、上記「(3)算定に関する事項」の「① 算定機関の名称並びに上場会社及び公開買付者との関係」に記載のとおり、本公開買付価格の公正性及び妥当性を担保するため、公開買付関連当事者から独立したファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関であるAGS FASに対して、当社株式の株式価値の算定を依頼し、2025年8月5日付で本株式価値算定書を取得いたしました。なお、AGS FASは、上記「(3)算定に関する事項」の「① 算定機関の名称並びに上場会社及び公開買付者との関係」に記載のとおり、公開買付関連当事者の関連当事者には該当せず、本公開買付けを含む本取引に関して重要な利害関係を有しておりません。なお、当社及び公開買付者において、本公開買付けの公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置を実施していることから、当社は、AGS FASから本公開買付価格の公正性に関する意見書(フェアネス・オピニオン)を取得しておりません。AGS FASの報酬は、本取引の過程に複数のマイルストーンを設定し、各マイルストーンに到達する都度支払われるマイルストーン報酬が含まれているところ、AGS FASとしては、本取引の成否が不明な中において、報酬体系を固定報酬のみとするよりもむしろ、報酬の一部をマイルストーン報酬とする方が当社の金銭的負担の観点から望ましく、双方にとっても合理性があると考えているとのことであり、当社としてはマイルストーン報酬が含まれていることをもって独立性が否定されるわけではないと判断の上、上記の報酬体系によりAGS FASを当社のファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関として選任しております。また、本特別委員会において、AGS FASの独立性に問題がないことが確認されております。
本株式価値算定書の概要については、上記「(3)算定に関する事項」の「② 算定の概要」をご参照ください。
② 当社における独立した法律事務所からの助言
当社は、本取引に係る当社取締役会の意思決定に慎重を期し、当社取締役会の意思決定過程における恣意性を排除し、その公正性を担保することを目的として、公開買付関連当事者から独立したリーガル・アドバイザーとしてTMI総合法律事務所を選任し、その後、本取引において手続の公正性を確保するために講じるべき措置、本取引の諸手続、並びに本取引に係る当社の取締役会の意思決定の方法及び過程その他の本公開買付けを含む本取引に関する意思決定にあたっての留意点に関する法的助言を受けております。
なお、TMI総合法律事務所は、公開買付関連当事者の関連当事者には該当せず、本公開買付けを含む本取引に関して、重要な利害関係を有しておりません。また、TMI総合法律事務所の報酬は、時間単位報酬のみとしており、本取引の公表や成立等を条件とする成功報酬は含まれておりません。本特別委員会は、当社が選任したリーガル・アドバイザーにつき、独立性及び専門性に問題がないことから、当社のリーガル・アドバイザーとして承認し、本特別委員会としても必要に応じて専門的助言を受けることができることを、本特別委員会において確認しております。
③ 当社における独立した特別委員会の設置及び特別委員会からの答申書の取得
当社は、本取引がいわゆるマネジメント・バイアウト(MBO)の一環として行われるものであり、構造的な利益相反状態が生じ得ること等に鑑み、当社取締役会の意思決定過程における恣意性を排除し、本取引の公正性、透明性及び客観性を担保するために、2025年5月15日開催の当社取締役会において、公開買付関連当事者から独立した委員によって構成される本特別委員会を設置することを決議いたしました。当社は、TMI総合法律事務所及びAGS FASの助言も得つつ、特別委員会の委員の候補について、公開買付関連当事者からの独立性を有すること、及び本取引の成否に関して少数株主(一般株主)とは異なる重要な利害関係を有していないことに加え、委員としての適格性を有することを確認した上で、いずれも当社の社外取締役である本特別委員会の委員として、原口健氏(当社社外取締役(監査等委員)・弁護士)、丹羽厚太郎氏(当社独立社外取締役(監査等委員)・弁護士)及び阿部茂雄氏(当社独立社外取締役)の3名を選任いたしました。なお、本特別委員会の委員は設置当初から変更しておりません。また、本特別委員会の委員の互選により、当社の社外取締役である原口健氏が本特別委員会の委員長に就任しております。なお、本特別委員会の委員の報酬は、答申内容にかかわらず支払われる報酬のみであり、本公開買付けを含む本取引の成立等を条件に支払われる成功報酬は含まれておりません。
そして、当社は、本公開買付けに対する意見表明及び本公開買付けへの応募の推奨が当社の少数株主にとって不利益とならないかを諮問するべく、上記取締役会決議に基づき、本特別委員会に対し、(a)本取引の目的の正当性、(b)本取引に係る交渉過程の手続の公正性、(c)本取引により当社の少数株主に交付される対価の妥当性、(d)上記(a)乃至(c)その他の事項を前提に、本取引(本公開買付けに係る当社の意見表明を含む。)が当社の少数株主にとって不利益であるか否か(以下、(a)から(d)を総称して「本諮問事項」といいます。なお、東京証券取引所による企業行動規範の改正実施を受け2025年8月1日当社からの通知に基づき上記(a)を「本取引が当社企業価値の向上に資するか否か」、上記(c)を「本取引の取引条件の公正性(買収者との協議・交渉の過程、株式価値算定内容及びその前提とした財務予測・前提条件等の合理性、過去の市場株価・同種案件に対するプレミアム水準の合理性を含む。)」、上記(d)を「上記(a)乃至(c)その他の事項を前提に、本取引(本公開買付けに関する当社の意見表明を含む。)が当社の一般株主にとって公正であるか否か」に変更しており、当該変更も含む。)について諮問し、これらの点についての答申書を当社取締役会に提出することを委嘱しました。
また、当社は、上記取締役会決議において、当社取締役会における本取引に関する意思決定については、本特別委員会の設置の趣旨に鑑み、本特別委員会の判断内容を最大限尊重して行うものとし、本特別委員会が本取引に関する取引条件を妥当でないと判断したときには、当社取締役会は、当該取引条件による本取引を行わないものとする旨を決議しております。併せて、当社は、(ⅰ)本取引に関与する当社の役職員又は本取引に係る当社のアドバイザーに対し、本諮問事項の検討に必要な事項について質問を行い、説明又は助言を求め、その他の調査を行う権限、(ⅱ)公開買付者との協議・交渉の方針について、当社に対して意見を述べ、また、必要な指示・要請を行う権限、及び(ⅲ)本特別委員会が必要と判断した場合には、当社の費用負担のもと、弁護士、公認会計士その他のアドバイザーを独自に選任し、本特別委員会に対する助言を求めることができる権限を付与することを決議しております。これを受けて、2025年5月27日に開催された第1回の本特別委員会において、当社が選任する外部アドバイザー等について、いずれも独立性に問題がないことを確認した上で、リーガル・アドバイザーとしてTMI総合法律事務所を、ファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関としてAGS FASをそれぞれ選任することを承認いたしました。
本特別委員会は、2025年5月27日から2025年8月5日までに、合計10回開催したほか、各会日間においても電子メール等を通じて、意見表明や情報交換、情報収集等を行い、必要に応じて随時協議を行う等して、本諮問事項に関し、慎重に検討を行いました。具体的には、本特別委員会は、当社から、当社の事業内容・業績推移、主要な経営課題、本取引により当社の事業に対して想定されるメリット・デメリット、本取引の条件の検討の際に基礎とされる本事業計画の策定手続等について説明を受け、質疑応答を行いました。また、公開買付者から、本取引を提案するに至った検討過程、本取引の目的及びストラクチャー、本取引によって見込まれるメリット・デメリットその他の影響の内容及び程度、並びに本取引後に予定している当社の経営方針等について説明を受け、質疑応答を行いました。さらに、当社のファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関であるAGS FASから、当社株式の株式価値の算定に関する説明を受け、その算定過程に関して質疑応答を行った上で、当該算定結果の合理性について検討いたしました。以上の検討に際して、本特別委員会は、当社のリーガル・アドバイザーであるTMI総合法律事務所から、特別委員会の意義・役割等を含む本取引の公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置の内容について助言を受けております。
そして、本特別委員会は、AGS FASから、公開買付者の提案内容や協議・交渉の状況等につき適時に報告を受け、TMI総合法律事務所及びAGS FASから聴収した意見も踏まえて審議・検討するとともに、適宜意見を述べた上で、交渉方針や提案内容に対する回答書を協議・承認し、当社に対して指示・要請を行う等しております。
本特別委員会は、以上の経緯の下、本諮問事項について慎重に審議及び検討を重ねた結果、2025年8月6日付で、当社取締役会に対し、委員全員の一致で、大要以下の内容の本答申書を提出いたしました。
(ⅰ)答申内容
(a)本取引が当社企業価値の向上に資するか否か
(b)本取引に係る交渉過程の手続の公正性
(c)本取引の取引条件の公正性(買収者との協議・交渉の過程、株式価値算定内容及びその前提とした財務予測・前提条件等の合理性、過去の市場株価・同種案件に対するプレミアム水準の合理性を含む。)
(d)上記(a)乃至(c)その他の事項を前提に、本取引(本公開買付けに係る当社の意見表明を含む。)が当社の一般株主にとって公正であるか否か
(ⅱ)答申理由
(a)本取引が当社企業価値の向上に資するか否か
(ア)本取引の目的等の概要
本特別委員会は、本取引の目的及び本取引により向上することが見込まれる当社の企業価値の具体的内容等について、当社及び齋藤氏に対してヒアリングを行った。それらの内容をまとめると、大要、以下のとおりである。
- 当社は、1980年12月に設立され、当社グループは「プロフェッションの養成」を経営理念として社会人、大学生を対象に資格教育、実務教育を核とした人材育成事業として、「個人教育事業」、「法人研修事業」、「出版事業」、「人材事業」を展開している。
- 当社は、当社グループが行っている資格関連教育サービスは、日本経済の健全な発展を支えていくために必要不可欠なプロフェッショナル人材の育成であり、毎年一定の需要が見込める比較的安定したものであるが、近年はIT環境が飛躍的に進歩したことで様々な手段によって教育を提供する環境が整備され、それに伴い受講生・消費者側のニーズも多様化してきていると認識し、今後の事業環境について、以下のとおり(ⅰ)市場縮小リスク、(ⅱ)当社における人材不足、(ⅲ)合格者数シェア(合格実績)の低迷、(ⅳ)対面授業からオンライン学習へのシフト、(ⅴ)多様化するニーズと収益モデルの転換が課題であることも認識するに至った。
(ⅰ)市場縮小リスク
日本国内で加速している少子高齢化により、当社のターゲット顧客層である大学生や若年層人口が減少し続けている。また、企業の人材不足により、就職環境は良好な状況が続いているが、その影響で、就職や転職のために資格取得やスキルの向上を目指す大学生や若年層が減少傾向にあり、公務員志願者の減少が続いている。これらの要因により、特に当社の主力分野の一つである公務員試験の受験者数は過去10年間毎年減少している。当該受験者の減少傾向は今後も継続する可能性が高く、当社の事業運営における重大なリスクであると考えている。
(ⅱ)当社における人材不足
当社は講座数を数多く有する点が強みである一方で、法人顧客向けの営業担当者の育成に長期間を要する。また、営業部門は少数精鋭で全国的に対応しているが、講座数の更なる増設、法人顧客の増加及び新規分野への進出に際しては、現在の営業部門における人員のみで対応することが難しく、営業人材の拡充が必要となる。
(ⅲ)合格者数シェア(合格実績)の低迷
当社の展開する講座の中には、資格試験の申込者数は増加傾向にあるものの、当社の合格者数シェア(合格実績)が近年低迷している講座もある。合格実績は顧客が資格スクールを選ぶ際の重要な指標の一つであり、当社にとっては合格者数シェア(合格実績)が低下することは、その後の顧客獲得に大きな影響を及ぼすことになる。
(ⅳ)対面授業からオンライン学習へのシフト
コロナ禍(2020年)以降、オンライン授業を取り入れた学習スタイルが一般化しており、通学時間を省略したいという考えが浸透しつつあり、校舎の存在自体の意味合いが薄れており、受講形態のシフトが急務となっている。
(ⅴ)多様化するニーズと収益モデルの転換
働き方改革や生涯学習の考えが次第に広まっている中で、コロナ禍における対面授業の制限とオンライン学習の普及に加えて、資格取得を目指す層及び求められる学習スタイルが多様化しつつある。かつては、資格取得を目指す層は主に学生及び若年層の社会人であったが、現在は、学生及び若年層の社会人のみならず、主婦・シニア層なども資格取得を目指す方が増えており、当社における顧客ターゲット層となっている。また、学習スタイルも多様化しており、従来から主な学習スタイルであった対面授業を好む資格受験生も多く存在する一方で、ワーク/ライフと両立できるフレックスな学習スタイルを求める資格受験生も増えている。これらの多様化するニーズを満たすためには、時間と空間にとらわれない学習体制、適材適所な講座コース設計、ITプラットフォームのアップグレード、及び管理システムの強化が必要と考えている。さらに、従来の対面授業を中心とした高付加価値・高価格帯のサービスモデルは変革を迫られており、受講料の価格競争が激化している。
- 当社は、このような事業環境の下、当社グループが上記のリスクや課題を解決し、今後もさらなる企業価値の向上を実現していくためには、中長期的な視点での大規模なデジタル投資、迅速かつ大胆な経営判断・先行投資が不可欠であると考えるに至った。
- かかる状況の中で、当社は齋藤氏から、本取引に係る協議・交渉の過程において、公開買付者は、市場縮小リスク・資格の魅力変化への対応を踏まえた教育コンテンツの高度デジタル化と差別化、収益モデルの転換・多様な学習ニーズに対応したオンライン・オフライン融合型のハイブリッド教育モデルの確立、海外展開・他分野展開を見据えたIT基盤への持続的投資と組織変革、といった施策に取り組むことが必要であり、当該取り組みにより当社の事業基盤を強固なものとし、企業価値向上につながる提案を受けた。当社としても、中長期的に収益性を向上させ、企業価値を向上していくためには、事業構造の改革が必要不可欠であり、いずれの施策も当社の中長期的な企業価値向上のために積極的に推進していくべきものであると考えるに至った。当社が考える、各施策のメリットは下記のとおりである。
a 市場縮小リスク・資格の魅力変化への対応を踏まえた教育コンテンツの高度デジタル化と差別化
当社グループは国内の顧客をターゲットとし、文系資格のみならず理系資格にも対応した幅広い講座を展開しており、特に文系資格に注力してきたが、上記(ⅰ)に記載のとおり、日本国内で加速している少子高齢化に起因して国内市場が縮小していることから、さらなる成長のためには幅広い顧客層の取り込みが不可欠と考えている。オンラインライブ講座など比較的参加しやすいチャンネルを通して、従来であれば受講することへのハードルが大きかった子育て中の女性層や50代以上の客層にアプローチすることも可能となり、当該客層をターゲットとした新たな教育コンテンツの開発が考えられる。また、当社は、資格取得を目指す受講者層及びその学習動機の多様化に応じて、AIなどの先端技術を用いて従来の画一的な教育コンテンツを進化させることも可能と考えている。具体的には、オンライン通信講座、オンデマンド講座を通じて通学講座と同等のクオリティの学習体験を提供するための講座コースの見直し、受講用プラットフォームの改善、デジタル版コンテンツの開発、及び学習補助システムによる付加価値の提供が可能と考えている。
b 収益モデルの転換・多様な学習ニーズに対応したオンライン・オフライン融合型のハイブリッド教育モデルの確立
上記(ⅳ)に記載のとおり、当社においては、対面授業からオンライン学習へのシフトが経営課題となっているが、通学講座の割合を徐々に減らしつつ、オンライン通信講座へ移行する際に、並行して校舎の統廃合や人員再配置を通して効率化を図ることにより、オンライン通信受講を希望する受講生への対応がより広く可能となり、新規受講者の獲得に貢献できると考えている。また、オンライン通信講座、オンデマンド講座を通して通学講座と同等のクオリティの学習体験を提供するためのコースの見直し、コンテンツのアレンジ及びプラットフォームの改善が考えられる。一方で、一般的にオンライン通信講座の受講者は、モチベーションが保ちにくく、継続率が低いという課題を抱えることがあるが、そのような課題に対しては、講師やクラスメートとの対面式のコミュニケーションを可能にしたり、学習進度を講師と共有する機能を拡充したりするなど、ライブ授業と同等以上のコミュニケーションツールを積極的に開発・拡充させ、オンライン通信講座でモチベーションを保てる運用を構築することにより、継続率を維持することが可能と考えている。このようにオンライン通信講座に付加価値のある機能を追加していくことにより、自由な受講形態ときめ細やかな講師等による個別対応を組み合わせたハイブリッドな学習スタイルにより従来どおりに「早期に合格させる」という当社の強みを発揮することで高付加価値なサービスを提供可能となり、顧客単価の維持、さらには引き上げにもつながると考えている。
c 海外市場への進出・他分野展開を見据えたIT基盤への持続的投資と組織変革
上記aに記載のとおり、国内市場が縮小していることから、成長機会創出のためには海外市場への進出や、多分野への事業拡大が不可欠と考えている。例えば、海外人材獲得へのパイプの構築、それにつながる海外人材向けの資格教育、あるいはIT・医療・介護・電気など他の専門分野への教育サービスの拡充などが考えられる。これらの実現のためには当社グループとして、グローバル対応が可能な組織づくりを進める必要があり、中長期的な時間軸で成長基盤を構築することが考えられる。また、上記a及びbのいずれも積極的なIT投資が必要となるが、それに伴うITリテラシーの拡充は必要不可欠と考えている。デジタル化に対応するためには、当社グループの従業員及び講師のデジタルスキルの向上のための定期的な研修を実施する必要がある。ITリテラシーの維持・向上は継続する必要があり、当社グループのIT基盤を強化することで、組織の競争力を中長期的に高めることができると考えられる。
d 中長期的な視点からの人材の確保
上記(ⅱ)に記載のとおり、当社は営業人材の拡充が課題であり、営業担当者の増員により法人顧客の新規獲得に大きく貢献することを見込んでいるが、当社は展開している講座数が多く即戦力としての起用が困難であることから、営業担当者の育成には長期間を要し採用費用や育成費用が先行することが想定される。また、上記(ⅲ)に記載のとおり、当社の合格者数シェア(合格実績)が近年低迷している講座があることから、優秀な講師のスカウトが急務となる。実績ある講師を積極的にスカウトすることで、有能な講師を即戦力として起用することが可能となり、合格実績の向上が可能と考えられるものの、優秀な講師のスカウトには相応の支出が必要であり、かつ、合格実績は単年度のみでなく数年間の蓄積として判断されることから、短期的には合格実績の向上が生じず講師費用が先行する可能性があり得る。当社株式を非公開化し、当社の株主が不応募合意株主のみとなることにより、短期的な利益の減少や株価の下落に囚われることなく、中長期的な視点から人材の確保を行うことができると考えられる。
- しかしながら、上記の各施策はいずれも事業構造上の大きな転換や新たな取り組みを伴うものであり、中長期的には当社の企業価値向上に資することが期待できるものの、各施策が当社グループの業績に貢献するまでに、相応の時間と戦略的な投資を含む各種先行投資が必要になることを考慮すると、少なくとも短期的には当社グループの財務状況や業績の悪化をもたらすリスクがあると考えられる。そのため、当社が上場を維持したままこれらの施策を実行した場合には、短期的に株価の下落や配当の減少等、当社の株主の皆様に対して多大な悪影響を与えてしまうおそれが懸念され、他方で株価の下落等を避けつつこれらの施策を実施しようとすると投資規模等に自ずと限界が生じるために十分な成果を上げられない可能性が高く、当社株式の上場を維持したままこれらの施策を実施することは難しいと考えるに至った。一方で、本取引により、当社株式を非公開化することで、長期的な視点から短期的な業績下落に顧慮することなく公開買付者からの提案にあるような施策の実行に取り組むことが可能となると考えており、本取引の実行は当社の企業価値向上の観点からもメリットがあると考えている。また、当社株式の非公開化により、当社株式の上場を維持するために必要な費用(有価証券報告書等の継続的な情報開示に要する費用、会計監査費用、株主総会の運営や株主名簿管理人への事務委託に要する費用等)を削減することができ、かつ、上場会社として必要となる管理部門の維持のための費用その他のコスト等、当社株式の上場を維持することによるその他の経営負担も軽減され、より一層、事業成長への経営資源の集中を図ることも可能になると考えている。
- このような状況下において、当社としても、当社の株主に対して発生する可能性がある上記の悪影響を回避しつつ、中長期的な視点から当社の企業価値を向上させるためには、マネジメント・バイアウト(MBO)の手法により当社株式を非公開化し、所有と経営を一体化させ、短期的な株式市場からの評価にとらわれず、各施策に迅速に取り組むことができる経営体制を構築することが必要であると考えるに至った。また、当社の常務取締役である齋藤氏は当社の事業内容を熟知していることを踏まえれば、マネジメント・バイアウト(MBO)の手法により、齋藤氏が引き続き当社の経営に関与し、当社を所有することは十分な合理性があると判断するに至った。
- なお、当社株式の非公開化を行った場合には、①資本市場からのエクイティ・ファイナンスによる資金調達を行うことができなくなること、②上場会社としてのブランドを喪失することで従業員の採用及びリテンションに悪影響が生じること、及び③取引先をはじめとするステークホルダーに対する信用力の低下といったデメリットが一般的には予想されると認識している。しかし、当社の現在の状況を踏まえると、①については、昨今の良好な資金調達環境に鑑みても、間接金融を通じて必要に応じた資金調達を行うことが十分可能であり、エクイティ・ファイナンスの活用による資金調達の必要性は見込まれないことから、大きなデメリットにはならないと考えている。②については当社の上場会社としてのブランドよりも、「資格の学校TAC」としての当社グループの知名度や社会的な貢献及び信用により培ってきたブランドが大きいことから、当社従業員はこれまでと同様の高い意識をもって働くことが可能であり、本取引による今後の採用活動への影響はないものと考えられること、③については当社グループの知名度や社会的な信用はこれまでの事業活動を通じて獲得・維持されている部分が大きいことから、非公開化によるデメリットは限定的と考えられる。
(イ)小括
以上の本公開買付けを含む本取引の目的等には、いずれも不合理な点はなく、本取引は当社の企業価値の向上に資することを企図するものであり、本取引は当社の企業価値向上に資すると認められると判断するに至った。
(b)本取引に係る交渉過程の手続の公正性
(ア)外部専門家の専門的助言等
当社が本取引について検討するにあたっては、公開買付関連当事者のいずれからも独立したファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関であるAGS FAS並びにリーガル・アドバイザーであるTMI総合法律事務所から助言・意見等を得ながら、当社の企業価値の向上ひいては株主共同の利益の観点から、本公開買付価格を始めとする本公開買付けの買付条件の妥当性及び本取引の一連の手続の公正性といった点について慎重に検討及び協議を行っている。なお、本特別委員会は、AGS FAS及びTMI総合法律事務所が公開買付関連当事者の関連当事者には該当せず、本公開買付けを含む本取引に関して重要な利害関係を有していないことから、その独立性に問題がないことを確認し、当社のファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関並びにリーガル・アドバイザーとして承認している。
(イ)本特別委員会の設置及び本特別委員会の意見を最大限尊重すること
当社は、本取引がいわゆるマネジメント・バイアウト(MBO)として行われるものであり、構造的な利益相反が存することを踏まえ、本取引における構造的な利益相反の問題及び情報の非対称性の問題に対応し、当社取締役会の意思決定過程における恣意性を排除し、本取引の公正性、透明性及び客観性を担保するために、TMI総合法律事務所の法的助言を踏まえ、2025年5月15日開催の当社取締役会において、公開買付関連当事者から独立した委員によって構成される本特別委員会を設置する旨を決議し、本取引を検討するための体制を構築している。また、当社は、本特別委員会に対する諮問に対して、当社による本取引に係る決定を行うに際しては、本特別委員会の意見を最大限尊重し、本特別委員会が本取引について妥当でないと判断した場合には、本取引を行わないことを事前に決議している。なお、本特別委員会の委員は設置当初から変更していない。本特別委員会の委員の報酬は、答申内容にかかわらず支払われる報酬のみであり、本公開買付けを含む本取引の成立等を条件に支払われる成功報酬は含まれていない。
(ウ)当社による協議・交渉
当社は、本公開買付価格について、一般株主の利益保護の観点からその公正性を確保するための実質的な協議・交渉を公開買付者との間で複数回にわたって行っている。具体的には、当社は、AGS FASを通じて、公開買付者からの本公開買付価格の提案に対して、2025年7月8日以降、4回にわたり価格提案の出し直しを求めるなど、繰り返し価格交渉を実施した。なお、当該協議・交渉にあたっては、本特別委員会は当社から当該協議・交渉の経緯及び内容等について適時に報告を受け、本特別委員会を通じて方針等を協議し、公開買付者への主張内容について具体的に意見を述べるなどした上で行うなど、本特別委員会は公開買付者との交渉過程に実質的に関与している。そして、その交渉の結果として、350円という本公開買付価格の決定に至るまでには、当社株式1株当たり280円とする公開買付者の当初の提案より、70円の価格引上げを引き出している。
(エ)本取引の交渉過程における特別利害関係人の不関与
当社を代表して本取引を検討・交渉する取締役には、齋藤氏を含め、本取引に特別な利害関係を有する者は含まれておらず、その他、本取引に係る協議、検討及び交渉の過程で、公開買付者らその他の本取引に特別な利害関係を有する者が当社側に不当な影響を与えたことを推認させる事実は存在しない。
(オ)本公開買付けの公正性を担保する客観的状況の確保
公開買付者は、本公開買付けにおける買付け等の期間(以下「公開買付期間」という。)について、法令に定められた最短期間が20営業日であるところ、本公開買付けにおいては、当該期間よりも長期の30営業日に設定している。このように、公開買付期間を比較的長期に設定することにより、当社の株主に本公開買付けに対する応募について適切な判断機会を確保するとともに、当社株式について対抗的買収提案者にも対抗的な買付け等を行う機会を確保し、これをもって本公開買付けの公正性を担保することを企図している。また、公開買付者と当社は、当社が対抗的買収提案者と接触することを禁止するような取引保護条項を含む合意等、当該対抗的買収提案者が当社との間で接触等を行うことを制限するような内容の合意を行っていない。このように、上記公開買付期間の設定とあわせ、対抗的な買付け等の機会が確保されることにより、間接的なマーケット・チェックを行い、本公開買付けの公正性の担保に配慮している。なお、本取引においては、積極的なマーケット・チェックが実施されていないものの、情報管理の観点に加え、現時点における不応募合意株主の当社株式の所有割合(36.37%)を踏まえると、公開買付者による買収提案に対する対抗提案がなされるとは考えにくいことから、積極的なマーケット・チェックを実施する意義が大きいとはいえず、積極的なマーケット・チェックが採用されていないことのみをもって、本公開買付けにおける公正性の担保として不十分であることにはならないと考えられる。
(カ)マジョリティ・オブ・マイノリティ条件
本取引においては、いわゆる「マジョリティ・オブ・マイノリティ」(Majority of Minority)に相当する買付予定数の下限は設定されていない。いわゆる「マジョリティ・オブ・マイノリティ」(Majority of Minority)の買付予定数の下限を設定すると、本公開買付けの成立を不安定なものとし、かえって本公開買付けに応募することを希望する当社の少数株主の利益に資さない可能性もあるものと考え、本公開買付けにおいて、いわゆる「マジョリティ・オブ・マイノリティ」(Majority of Minority)の買付予定数の下限は設定していないとのとのことであり、かかる理由には一定の合理性が認められることに加え、上記(ア)乃至(オ)に記載のとおり、本取引においては、公正性担保措置が講じられており、公正な手続を通じて当社の株主の利益への十分な配慮がなされていることに照らせば、本公開買付けにおいて、いわゆる「マジョリティ・オブ・マイノリティ」(Majority of Minority)に相当する買付予定数の下限が設定されていなくても、本取引の条件の公正性・妥当性が否定されるものではないと考える。
(キ)適切な情報開示及び強圧性の排除
本取引においては、本公開買付けが成立した場合に、その後に実施される予定の本スクイーズアウト手続について、公開買付者が提出する公開買付届出書、当社が公表するプレスリリース等において、十分な開示がなされることが予定されている。また、本スクイーズアウト手続は、株式併合によって行われる予定であり、本取引に反対する株主に対する株式買取請求権又は価格決定請求権が確保されるスキームとなっているところ、本公開買付け後に本スクイーズアウト手続を行うにあたり、本公開買付けに応募しなかった当社の株主に交付される金銭の額が、本公開買付価格に当該各株主が所有していた当社株式の数を乗じた価格と同一となるよう株式併合により生じる端数の合計数の売却代金が算定される予定である旨が、プレスリリース等で明示される予定であると認められ、本公開買付けに応募することの強圧性が低減される適切な措置が採られているといえる。
(ク)小括
以上のような点を踏まえ、本特別委員会において、慎重に協議及び検討した結果、本取引おいては取引条件の公正さを担保するための手続が十分に講じられており、本取引に係る交渉過程の手続は公正であると判断するに至った。
(c)本取引の取引条件の公正性(買収者との協議・交渉の過程、株式価値算定内容及びその前提とした財務予測・前提条件等の合理性、過去の市場株価・同種案件に対するプレミアム水準の合理性を含む。)
(ア)AGS FASによる株式価値算定書
当社が、公開買付関連当事者のいずれからも独立したファイナンシャル・アドバイザー及び第三者算定機関であるAGS FASから取得した株式価値算定書によれば、当社株式の1株当たりの株式価値は、市場株価平均法によると219円から234円、DCF法によると302円から383円とされている。本公開買付価格は、AGS FASから取得した株式価値算定書の市場株価平均法による算定結果の上限値を超える金額であり、また、DCF法に基づく算定結果のレンジの中央値を上回る金額である。そして、本特別委員会は、AGS FASから株式価値評価に用いられた算定方法等について詳細な説明を受けるとともに、AGS FAS及び当社に対して評価手法の選択や算定の基礎となる当社の事業計画に基づく財務予測を含む前提条件等に関する質疑応答を行った上で検討した結果、一般的な評価実務に照らして不合理な点は認められなかった。具体的には、当社の事業計画は、当社が2024年5月15日付で作成した5ヵ年の中期経営計画をベースとして、毎事業年度末を中心に、試験制度の変更、就職状況等の各資格を取り巻く社会情勢や足元の合格実績等を考慮し適宜見直しを行っており、上記「(a)本取引が当社の企業価値向上に資するか否かについて意見の根拠及び理由」の「(ア)本取引の目的等の概要」に記載のとおり、(ⅰ)市場縮小リスク、(ⅲ)合格者数シェア(合格実績)の低迷等を踏まえると、事業規模の更なる拡大は容易ではないとの想定であり、オンライン講座へのシフトに伴う校舎の縮小による費用削減を見込むものの、昨今の物価上昇及び人件費上昇の影響を踏まえ、営業利益は2030年3月期に向けて減少傾向で推移するとの前提を置いている。さらに、維持更新投資として数年サイクルで基幹システムの改修投資が必要となることも相まって、フリー・キャッシュ・フローは2030年3月期に向けて減少傾向で推移すると見込んでいる旨の説明を受けている。
加えて、本公開買付価格(350円)は、算定基準日(2025年8月5日)の東京証券取引所スタンダード市場における当社株式の終値234円に対して49.57%(小数点以下第三位を四捨五入。以下、株価に対するプレミアムの数値(%)において同様とする。)、同日までの過去1か月間の終値の単純平均値227円に対して54.19%、同日までの過去3か月間の終値の単純平均値228円に対して53.51%、同日までの過去6か月間の終値の単純平均値219円に対して59.82%のプレミアムをそれぞれ加えた金額であり、相応なプレミアムが付された価格であると評価できる。
(イ)交渉過程の手続の公正性
上記のとおり、本公開買付けを含む本取引に係る交渉過程の手続は公正であると認められるところ、本公開買付価格は、かかる交渉の結果も踏まえて決定されたものであると認められる。
(ウ)本公開買付け後の手続において交付される対価
本公開買付けに応募しなかった一般株主は、本公開買付けの後に実施される予定の非公開化の手続において、最終的に金銭が交付されることになるところ、当該手続において交付される金銭の額については、本公開買付価格に当該各株主が所有していた当社株式の数を乗じた価格と同一になるよう算定される予定である。
(エ)本取引の対価の種類の妥当性
本取引の対価は、本公開買付け及びその後に実施される予定の本スクイーズアウト手続を通じて、現金であることが予定されているところ、公開買付者が非上場会社であることを踏まえると、本取引において、流動性が乏しい公開買付者の株式を対価とするのではなく、金銭を対価とすることは妥当であるといえる。
(オ)小括
以上のような点を踏まえ、本特別委員会において、慎重に協議及び検討した結果、本取引の取引条件は公正であると判断するに至った。
(d)上記(a)乃至(c)その他の事項を前提に、本取引(本公開買付けに係る当社の意見表明を含む。)が当社の一般株主にとって公正であるか否か
本特別委員会の審議においてその他当社の一般株主に特段の悪影響を及ぼす事象は確認されておらず、上記(a)乃至(c)記載の事項等を踏まえて、本取引が当社の一般株主に及ぼす影響を慎重に検討した結果、本公開買付けに係る当社の意見表明を含め、本取引は当社の一般株主にとって公正であると判断するに至った。
④ 当社における利害関係を有しない取締役全員(監査等委員を含む。)の承認
当社は、AGS FASから受けた財務的見地からの助言及び2025年8月5日付で提出を受けた本株式価値算定書の内容、並びにTMI総合法律事務所から受けた法的助言を踏まえつつ、本特別委員会から提出を受けた本答申書の内容を最大限に尊重しながら、本取引により当社の企業価値向上を図ることができるか、本取引に関する諸条件は妥当なものか等の観点から慎重に協議及び検討を行いました。その結果、当社は、上記「(2)意見の根拠及び理由」の「④ 当社が本公開買付けに賛同するに至った意思決定の過程及び理由」に記載のとおり、2025年8月6日開催の取締役会において、審議に及び決議に参加した当社の取締役(取締役全13名のうち、齋藤氏を除く当社の取締役12名)の全員一致で、公開買付けを含む本取引は当社の企業価値の向上に資するとともに、本公開買付価格(350円)を含む本取引に係る取引条件は妥当なものであり、本公開買付けは、当社の株主の皆様に対して合理的な株式の売却の機会を提供するものであると判断し、本公開買付けに賛同の意見を表明するとともに、当社株主の皆様に対して、本公開買付けへの応募を推奨する旨を決議いたしました。
⑤ 当社における独立した検討体制の構築
当社は、上記「(2)本公開買付に関する意見の根拠及び理由」の「④ 当社が本公開買付けに賛同するに至った意思決定の過程及び理由」に記載のとおり、当社は、本取引における構造的な利益相反の問題及び情報の非対称性の問題に対応し、当社取締役会の意思決定過程における恣意性を排除し、本取引の公正性、透明性及び客観性を担保するために、齋藤氏、公開買付者、不応募合意株主及び応募合意株主から独立した立場で、本取引に係る検討、交渉及び判断を行う体制を社内に構築いたしました。具体的には、齋藤氏は、本取引に関して当社と構造的な利益相反状態にあるため、本取引に関する取締役会における審議及び決議には一切参加しておらず、また、当社の立場において齋藤氏及び公開買付者との協議及び交渉にも一切参加しておりません。当該検討体制は、全て齋藤氏及び公開買付者から独立性の認められる役職員のみで構成することとし、本書提出日に至るまでかかる取扱いを継続しております。また、かかる取扱いを含めて、当社の社内に構築した本取引の検討体制、具体的には本取引に係る検討、交渉及び判断に関与する役職員の範囲及びその職務(当社に株式価値の評価の基礎となる事業計画の作成等高い独立性が求められる職務を含みます。)は、TMI総合法律事務所の助言を踏まえております。
⑥ 本公開買付けの公正性を担保する客観的状況の確保
公開買付者は、公開買付期間について、法令に定められた最短期間が20営業日であるところ、本公開買付けにおいては、当該期間よりも長期の30営業日に設定しているとのことです。このように、公開買付期間を法令に定められた最短期間よりも長期に設定することにより、当社の株主の皆様に本公開買付けに対する応募について適切な判断機会を確保するとともに、当社株式について対抗的買収提案者にも対抗的な買付け等を行う機会を確保し、これをもって本公開買付けの公正性を担保することを企図しているとのことです。
また、公開買付者と当社は、当社が対抗的買収提案者と接触することを禁止するような取引保護条項を含む合意等、当該対抗的買収提案者が当社との間で接触等を行うことを制限するような内容の合意を行っておりません。このように、上記公開買付期間の設定とあわせ、対抗的な買付け等の機会が確保されることにより、本公開買付けの公正性の担保に配慮しております。
(7)公開買付者と当社の株主・取締役等との間における公開買付けへの応募に係る重要な合意に関する事項
① 本不応募契約
上記「(2)意見の根拠及び理由」の「① 本公開買付けの概要」に記載のとおり、本公開買付けの実施に際して、公開買付者は、不応募合意株主との間で、2025年8月6日付で本不応募契約を締結しているとのことです。
本不応募契約においては、不応募合意株主は、(a)本不応募株式について本公開買付けに応募しないこと、(b)本株式併合の効力が生じるまでの間、公開買付者の事前の書面による承諾なしに、当社の株主総会の招集請求権、議題提案権及び議案提案権その他の株主権を行使しないこと、(c)本公開買付け成立後、(ⅰ)公開買付者を吸収合併存続会社、当社を吸収合併消滅会社とする吸収合併(又は公開買付者を吸収合併消滅会社、当社を吸収合併存続会社とする吸収合併)の効力発生まで、公開買付者の指示に従って当社株式に係る議決権を行使するものとし、(ⅱ)本株式併合及び本株式併合の効力発生を条件として単元株式数の定めを廃止する旨の定款の一部変更を付議議案に含む本臨時株主総会が開催された場合、本臨時株主総会において、本スクイーズアウト手続に関する議案に賛成の議決権を行使するとともに、本スクイーズアウト手続の実施に必要な協力を行うこと等を合意しているとのことです。なお、本不応募契約を除いて不応募合意株主との間で本取引に関する重要な合意は締結しておらず、本公開買付けに際して付与される利益はないとのことです。
② 本応募契約
上記「(2)意見の根拠及び理由」の「① 本公開買付けの概要」に記載のとおり、本公開買付けの実施に際して、公開買付者は、応募合意株主との間で、2025年8月6日付で本応募契約を締結しているとのことです。
本応募契約においては、応募合意株主は、(a)本応募合意株式について本公開買付けに応募(以下「本応募」といいます。)し、かつ、本応募を撤回せず、本応募の結果成立した本応募合意株式の買付けに係る契約を解除しないこと、(b)本応募契約締結日から本公開買付けに係る決済の開始日までの間、公開買付者の事前の書面による承諾なく、当社の株主総会の招集請求権、株主提案権その他の株主権を行使しないこと、(c)本応募契約締結日から本公開買付けに係る決済の開始日までの間に開催される当社の株主総会において議決権を行使できる場合、可決されれば当社の財政状態、経営成績、キャッシュ・フロー、事業、資産、負債若しくは将来の収益計画又はその見通しに重大な影響を及ぼす又は及ぼすことが合理的に予想される議案が上程されるとき(株主提案による場合及び当社が提出した議案を修正する旨の動議がなされた場合も含みます。)は、本応募合意株式に係る当該株主総会における議決権について、当該議案又は動議に反対の議決権を行使すること、(d)本公開買付けが成立した場合において、本公開買付けに係る決済の開始日より前の日を権利行使の基準日とする当社の株主総会が、本公開買付けに係る決済の開始日以降に開催される場合、本応募合意株式に係る当該株主総会における議決権その他の一切の権利行使について、公開買付者の指示に従って権利を行使すること等を合意しているとのことです。但し、公開買付者以外の者から、本公開買付価格を上回る金額に相当する取得対価により当社株式を対象とする公開買付け(以下「適格対抗公開買付け」といいます。)が開始された場合又は具体的かつ実現可能性のある適格対抗公開買付けに係る提案(以下、適格対抗公開買付けに係る提案と併せて「対抗提案」といいます。)を受領した場合には、応募合意株主は、公開買付者に対して、本公開買付価格の変更について協議を申し入れることができ、公開買付者が所定の期限までに本公開買付価格を適格対抗公開買付けに係る公開買付価格又は対抗提案に係る取得対価以上の金額に変更しない場合には、応募合意株主は、本応募をせず、又は(既に本応募がなされている場合においては)法及び本公開買付けに係る公開買付届出書に定める手続に従って本応募により成立した本公開買付けに係る契約を解除することができるものとされているとのことです。
なお、本応募契約において、応募合意株主による本公開買付けへの応募の前提条件は規定されていないとのことですが、各当事者の表明保証事項のほか、契約違反時又は表明保証違反時の補償義務、秘密保持義務等の一般条項が定められているとのことです。また、本応募契約を除いて応募合意株主との間で本取引に関する重要な合意は締結しておらず、本公開買付価格の支払を除き、本公開買付けに際して付与される利益はないとのことです。
|
氏名 |
役職名 |
所有株式数(株) |
議決権の数(個) |
|
多田 敏男 |
代表取締役社長 |
10,000 |
100 |
|
近藤 敦 |
取締役副社長 |
27,000 |
270 |
|
猪野 樹 |
常務取締役 |
2,000 |
20 |
|
齋藤 智記 |
常務取締役 |
127,900 |
1,279 |
|
干潟 康夫 |
取締役 |
3,700 |
37 |
|
高橋 裕 |
取締役 |
1,900 |
19 |
|
川野 貴未 |
取締役 |
6,700 |
67 |
|
野中 将二 |
取締役 |
1,200 |
12 |
|
阿部 茂雄 |
取締役 |
- |
- |
|
池上 玄 |
取締役 |
- |
- |
|
原口 健 |
取締役 |
- |
- |
|
丹羽 厚太郎 |
取締役 |
- |
- |
|
町田 弘香 |
取締役 |
- |
- |
|
計 |
|
180,400 |
1,804 |
(注1) 役職名、所有株式数及び議決権の数は本書提出日現在のものです。
(注2) 阿部茂雄氏、池上玄両氏は、社外取締役であり、東京証券取引所が指定を義務付ける一般株主と利益相反が生じるおそれのない独立役員であります。
(注3) 原口健氏、丹羽厚太郎氏、町田弘香氏は社外取締役(監査等委員)であります。また、丹羽厚太郎氏は、東京証券取引所が指定を義務付ける一般株主と利益相反が生じるおそれのない独立役員であります。
該当事項はありません。
以 上