(1) 事業等のリスク
当第3四半期連結累計期間において、当四半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある以下の事項が発生しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。
また、以下の見出しに付された項目番号は、前事業年度の有価証券報告書における「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2事業等のリスク」の項目番号に追加するものです。
(15)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)向けワクチン開発プロジェクトのリスク
当社は2020年3月より大阪大学とDNAプラスミド製造技術を用いた新型コロナウイルス感染症向けワクチン(以下、「本ワクチン」といいます。)の開発を行っております。本ワクチンは、不活化ワクチンとは異なり、危険なコロナウイルスを使用せず、対象とする当該ウイルスの一部であるたんぱく質をコードする環状DNAプラスミド(DNAワクチン)を接種することで、当該ウイルスのたんぱく質を体内で生産し、当該ウイルスに対する免疫を付与します。非臨床試験で動物への本ワクチンの投与を行い、抗体価の上昇及び各種試験結果が確認され、2020年6月30日より第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を大阪市立大学医学部附属病院にて開始いたしました。本ワクチンの製造は大腸菌を用いて行うため、鶏卵を用いる不活化ワクチンと比べて安全で短期間に行うことができます。しかしながら、本ワクチンの開発は従来の開発プロジェクトで想定されるリスクに加え、下記のリスクが想定され、今後の事業戦略、財政状態、経営成績及び当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。
①開発の進捗に関するリスク:本プロジェクトは緊急性が高く、短期間での非臨床試験、臨床試験から承認を経ての製品化が要請されております。この状況下で緊急性は要するものの、健常者に投与するワクチン開発において、安全性および有効性を様々な角度から慎重に検証していく必要があり、その過程において、想定していたよりも工数や時間がかかる可能性があり、その結果としてスケジュール遅延が起こる可能性があります。また、臨床試験のために必要とされる症例数を適時に確保できないこと、臨床試験の実施に係る各種業務を支援・代行するCRO(医薬品開発業務受託機関)における業務が計画通り進行しないこと等の様々な要因によって臨床試験が遅延する可能性があります。さらに、様々な試験の結果、期待した有効性を確認できなかったり、安全性に関する許容できない問題が生じた場合には、研究開発を中止するリスクがあります。
②開発競争のリスク:新型コロナウイルスワクチン開発は国内外の大手製薬会社からベンチャー企業まで、参入企業が増加し開発競争が激化しております。当社はプラスミドDNA製造技術を用いた新型コロナウイルスワクチンの開発で優位性があるものと認識しておりますが、将来的に競業他社による様々な開発ワクチンの開発進捗・技術力・有効性・安全性等により当社の優位が低下する可能性があります。
③供給体制のリスク:開発の進捗に関するリスクで記載のとおり、本ワクチン開発は緊急性が高く、一方で短期間での供給体制の確立が必要となっております。しかしながら、予測不能の製造設備の稼働問題等の要因から、充分な供給体制の構築ができない可能性があります。
(16)新型コロナウイルス感染症拡大に伴うリスク
当社はHGF遺伝子治療用製品について、適用拡大を目的として、慢性動脈閉塞症の安静時疼痛を有する患者を対象とする第Ⅲ相臨床試験実施しております。また、米国においては、下肢潰瘍を有する慢性動脈閉塞症を対象とした後期第Ⅱ相臨床試験を開始しておりますが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、治験施設への訪問制限や新規患者の登録組み入れ鈍化などの影響が出ており、臨床開発ステージにあるプロジェクトの進捗に影響を受ける可能性があります。また、臨床試験以外にも研究開発材料の調達や外部委託をおこなう各種試験の遅延など事業活動全般に制約を受ける可能性が想定され、当該事象が長期化した場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 継続企業の前提に関する重要事象等
医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、創薬ベンチャーである当社グループにおいては、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあります。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
しかしながら、「第2 事業の状況 2経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(5)事業のリスクに記載した重要事象等についての分析及び改善するための対応方法」に記載のとおり、当該重要事象等を改善するための対応策を実施することにより、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。
当社グループ(当社、連結子会社1社及び持分法適用会社1社)は当第3四半期連結累計期間において、HGF遺伝子治療用製品を中心とする遺伝子医薬品、及び新型コロナウイルス感染症向けワクチンの研究開発を進めるとともに、戦略的提携先との共同開発を進めるなど、将来の成長を見据えた事業の深化を図ってまいりました。
当第3四半期連結累計期間の事業収益は28百万円(前年同期比2億95百万円(△91.2%)の減収)となりました。当社グループでは、提携企業からの契約一時金、マイルストーンを研究開発事業収益に計上しております。また、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®筋注用4mg(以下「コラテジェン®」といいます。)」の販売収入につきまして、製品売上高に計上しております。
2019年6月をもってムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」の販売が終了したため、当第3四半期連結累計期間において商品売上高は計上がありませんでした(前年同期は1億70百万円)。研究開発事業収益も計上がありませんでした(前年同期は1億52百万円)。2019年9月よりコラテジェン®の販売を開始しており、当第3四半期連結累計期間において製品売上高を28百万円計上いたしました(前年同期は1百万円)。
当第3四半期連結累計期間における事業費用は、28億86百万円(前年同期比2億3百万円(+7.6%)の増加)となりました。売上原価は、16百万円(前年同期比68百万円(△81.0%)の減少)となりました。研究開発費は18億80百万円(前年同期比2億93百万円(+18.5%)の増加)となりました。当第3四半期連結累計期間において、米国におけるHGF遺伝子治療用製品の下肢潰瘍を有する慢性動脈閉塞症を対象とした第Ⅱb相臨床試験を開始し治験費用が発生したこと、及び新型コロナウイルス感染症向けワクチン開発に伴い、外注費が3億2百万円増加しております。当社グループのような研究開発型バイオベンチャー企業にとって研究開発は生命線でありますので、提携戦略により財務リスクの低減を図りながら、今後も研究開発投資を行っていく予定です。研究開発の詳細については、本報告書「(4)研究開発活動」をご参照ください。
当第3四半期連結累計期間における販売費及び一般管理費は9億89百万円(前年同期比20百万円(△2.1%)の減少)となりました。前年同期と比較して、法人事業税の資本割額が増加したことにより、租税公課が54百万円増加しております。一方で、新型コロナウイルス感染症拡大による出張の自粛等により、旅費交通費が24百万円減少しております。前年同期において当社取締役及び従業員に対する株式報酬型ストック・オプション(新株予約権)を発行し、株式報酬73百万円を計上しておりましたが、当第3四半期連結累計期間においては48百万円の計上となっております(前年同期比24百万円の減少)。
この結果、当第3四半期連結累計期間の営業損失は28億57百万円(前年同期の営業損失は23億58百万円)となり、前年同期より4億99百万円損失が拡大しております。
当第3四半期連結累計期間の経常損失は、31億50百万円(前年同期の経常損失は23億85百万円)となりました。外貨預金の評価替に伴い、為替差益が22百万円発生しております。新株予約権の発行及び行使に伴う株式交付費が67百万円発生し、前年同期に比べ25百万円増加しております。第1四半期連結会計期間よりEmendoBio Inc.(以下「Emendo社」といいます。)が持分法適用会社となり、持分法による投資損失が2億63百万円発生しております。
当第3四半期連結累計期間の親会社株主に帰属する四半期純損失は、31億74百万円(前年同期の親会社株主に帰属する四半期純損失は27億70百万円)となりました。ストック・オプションの権利行使期間終了による権利失効に伴い、新株予約権戻入益が5百万円発生しております。前年同期においては、投資有価証券評価損を3億84百万円計上しておりましたが、当第3四半期連結累計期間においては発生しておりません。Emendo社への持分比率の変動により、持分変動損失を21百万円計上しております。
当第3四半期連結会計期間末の総資産は213億68百万円(前連結会計年度末比88億43百万円の増加)となりました。新株予約権の発行及び行使に伴う114億69百万円の入金はありましたが、Emendo社株式の取得及び当期事業費用への充当により、現金及び預金は22億75百万円増加し123億16百万円となりました。主に新型コロナウイルス感染症向けワクチンの製造に係る費用を前払いしたことに伴い、前渡金が9億1百万円増加しております。コラテジェン®の原薬を製造したことに伴い、原材料及び貯蔵品が4億58百万円増加しております。流動資産は36億70百万円増加し146億62百万円となりました。
投資その他の資産においては、Emendo社株式の取得により投資有価証券が50億94百万円増加し、65億12百万円となりました。これにより、固定資産は51億73百万円増加し、67億5百万円となっております。
当第3四半期連結会計期間末の負債は10億17百万円(前連結会計年度末比5億48百万円の増加)となりました。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より採択された「新型コロナウイルス(COVID-19)を標的としたワクチン実用化開発」に関する助成金の一部が入金され、前受金に5億63百万円を計上しております。
純資産は203億50百万円(前連結会計年度末比82億95百万円の増加)となりました。新株予約権の発行及び行使により、資本金及び資本剰余金がそれぞれ57億46百万円増加し、新株予約権が51百万円増加しております。保有する有価証券の評価差額を計上したことに伴い、その他有価証券評価差額金が14百万円減少しております。Emendo社株式持分の円換算額の計上により、為替換算調整勘定が58百万円減少しております。親会社株主に帰属する四半期純損失31億74百万円の計上により、利益剰余金が減少しております。
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの事業上及び財務上の対処すべき課題に重要な変更、及び新たに生じた課題はありません。
当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は18億80百万円であります。
当社グループでは、以下のプロジェクトを中心に研究開発を進めました。
■HGF遺伝子治療用製品(一般名:ベペルミノゲンペルプラスミド、開発コード:AMG0001)(自社品)
<対象疾患:慢性動脈閉塞症>
慢性動脈閉塞症を対象疾患としたHGF遺伝子治療用製品の開発については、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」により再生医療等製品の早期実用化を目的とした「条件及び期限付承認制度」(2014年11月施行)を活用し、2018年1月に厚生労働省に対し再生医療等製品の製造販売承認申請を行い、2019年3月に国内初の遺伝子治療用製品「コラテジェン®」として、慢性動脈閉塞症の潰瘍の改善効能効果で条件及び期限付承認を取得し、同年9月より発売を開始いたしました。
田辺三菱製薬株式会社(以下「田辺三菱製薬」といいます。)と当社は、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売に関し、日本国内及び米国における慢性動脈閉塞症を対象とした独占的販売権許諾契約を締結しており、田辺三菱製薬が販売を担当いたしております。今回の承認は、条件及び期限付であり、2024年3月には本承認取得を目指してまいります。
また、この「コラテジェン®」の適応拡大を目的として、慢性動脈閉塞症の安静時疼痛を有する患者を対象にした第Ⅲ相臨床試験を2019年10月より開始しております。試験期間は約2年間で、症例数は約40例を予定しています。
海外での開発については、米国において2020年より、下肢潰瘍を有する慢性動脈閉塞症を対象とした第Ⅱb相臨床試験を開始いたしました。2019年2月にイスラエルにおけるHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の独占的販売権の許諾について同国Kamada社と基本合意書を締結しております。現在は、Kamada社がイスラエル当局と実用化に向けた討議を行っています。また、2020年10月にトルコでの独占的販売権の許諾について、同国Er-Kim社と基本合意書を締結いたしました。薬事承認申請を進めると共に、Named Patient Programを活用しての提供を開始する予定です。
■NF-κBデコイオリゴDNA
<対象疾患:椎間板性腰痛症(開発コード:AMG0103) (自社品)>
NF-κBデコイオリゴDNAについては椎間板性腰痛症を含む腰痛疾患を適応症とした開発を進めています。2018年2月より椎間板性腰痛症を対象とした第Ⅰb相臨床試験を実施し、2020年2月に予定した25例の患者投与が完了いたしました。
<その他>
デコイオリゴDNAのその他の開発については、これまでNF-κBデコイオリゴDNAの次世代型デコイの研究を行ってきましたが、NF-κBとSTAT6という2つの転写因子を同時に抑制する働きを持った「キメラデコイ」の開発を進めております。NF-κBのみをターゲットとした従来のデコイに比べ、炎症を抑える効果が格段に高いことが期待されます。
■高血圧DNAワクチン(開発コード:AGMG0201)(自社品)
当社は、遺伝子治療用製品、核酸医薬につづく遺伝子医薬の第三の事業として、DNAワクチンの開発を手がけており、最初の開発品として高血圧DNAワクチンの開発を進めております。2018年4月より第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験を実施し、2020年3月に予定していた24例の患者投与が完了いたしました。
■Vasomune社との提携
当社は、2018年7月にVasomune社と全世界を対象とし、急性呼吸不全など過度の浮腫を原因とする疾患に対する医薬品に関する共同開発に合意、契約締結したことを発表いたしました。現在、非臨床段階の共同開発を進めております。
■新型コロナウイルス感染症向けワクチン開発
新型コロナウイルス感染症の全世界的な蔓延を機に、予防用としてのDNAワクチン開発を2020年度3月より開始しました。2020年6月30日より大阪市立大学医学部附属病院において第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を30症例にて開始しました。また、大阪大学医学部附属病院での、接種間隔及び接種回数を確認する第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を30症例にて実施しています。大阪市立大学医学部附属病院及び大阪大学医学部附属病院での第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の総合的な結果をもって、より大規模な臨床試験を行う予定としております。今後も引き続き、国産ワクチンとしての早期の実用化へ繋げるために開発を進めてまいります。

(5) 事業のリスクに記載した重要事象等についての分析及び改善するための対応方法
医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、創薬ベンチャーである当社グループにおいては、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあります。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
当社グループは当該状況を解消すべく、下記を重要な課題として取り組んでおります。
① 自社既存プロジェクトの推進と事業基盤の拡大
当社グループは慢性動脈閉塞症を対象としたHGF遺伝子治療用製品、椎間板性腰痛症向けの核酸医薬(NF-κBデコイオリゴDNA)、高血圧DNAワクチンの3プロジェクトを推進しております。HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」は国内初の遺伝子治療用製品として2019年3月に条件及び期限付承認を厚生労働省から取得し、同年9月より販売を開始いたしました。今後は国内での同製品の適用拡大のための臨床試験及び米国での慢性動脈閉塞症を対象とした臨床試験を進めてまいります。また、現在海外で臨床試験を進めております椎間板性腰痛症向けの核酸医薬(NF-κBデコイオリゴDNA)、高血圧DNAワクチンを含めた3プロジェクトを推進しております。
これらの既存プロジェクトに加え、2020年3月より、新型コロナウイルス感染症向けワクチンを大阪大学と共同開発に着手いたしました。さらに、ライセンス導入や共同開発、創薬プラットフォーム技術の獲得を目指した事業提携に加え、他社に対する一部資本参加や他社の買収等により開発品パイプラインの拡充による事業基盤の拡大を図り、将来の成長を実現してまいります。
② 開発プロジェクトにおける提携先の確保
当社グループでは、開発プロジェクトのリスクを低減するために、製薬会社と提携し、契約金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを低減しながら開発を進めるという提携モデルを基本方針としております。
「コラテジェン®」については、米国と日本を対象とした独占的販売契約を田辺三菱製薬株式会社と締結しており、マイルストーン収入やロイヤリティ収入が見込めます。また、椎間板性腰痛症向けの核酸医薬(NF-κBデコイオリゴDNA)、高血圧DNAワクチンにつきましては臨床試験を実施しており、良好な結果が得られましたら早期に製薬企業等に導出することで契約一時金等を得ることにより開発費の負担削減を目指してまいります。
今後も、製薬会社との提携を進めることにより、事業基盤の強化に努めてまいります。
③ 資金調達の実施
2020年3月4日に発行したフィリップ証券株式会社を割当先とする第37回新株予約権(第三者割当て)について2020年4月までに全数が行使され114億69百万円(新株予約権発行による入金含む)を調達いたしました。
これら諸施策の実施により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
当第3四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約は行われておりません。