文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
①経営方針
当社グループは、「生命が長い時間をかけて獲得した遺伝子の力を借りて画期的な遺伝子医薬を開発・実用化し、人々の健康と希望にあふれた暮らしの実現に貢献する」ことを企業理念としています。
当社グループのあるべき姿を定めた、世界で認知されるスペシャリストを意味する「遺伝子医薬のグローバルリーダー」となることがその柱です。これを実現するために、治療法のない病気に対する新薬を開発することで新市場を創出するという目標を掲げております。
②利益配分に関する基本方針
当社グループの事業のステージは、現時点では創薬における先行投資の段階にあることから、利益配当は実施しておりません。
当社グループは研究開発活動を継続的に実施していく必要があることから、当面は、利益配当は実施せず、内部留保に努め、研究開発資金の確保を優先する方針です。しかしながら株主への利益還元についても重要な経営課題と認識しており、将来、経営成績及び財政状態を勘案しながら、利益配当も検討する所存です。
③投資単位の引き下げに関する方針
投資単位の引き下げは、個人株主増加や株式流動性向上のために望ましい施策であると考えております。このため、投資単位の引き下げについては、引き下げによる費用増加、当社株式の出来高、株主数、株主分布状況を考慮しながら、慎重に検討していきたいと考えております。
(2) 経営環境
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、日本経済に大きな影響を及ぼしており、ワクチンや治療薬が普及するまでは、企業活動や消費活動が一定程度抑制され、不透明な状況が続くものと想定されます。
当社はこの感染症拡大に対して2020年3月に大阪大学と共同開発で新型コロナウイルス感染症予防ワクチンの開発を開始し、現在第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験を実施しております。また、新型コロナウイルス感染症において感染症発症後に重症化した患者での急性呼吸不全など血管不全に対する治療薬が望まれております。当社はカナダのバイオ医薬品企業であるVasomune社と細菌やウィルス感染などに起因する急性呼吸不全などを原因とする疾病を対象とした医薬品に関する共同開発契約を締結し、現在新型コロナウイルス感染症に対する治療薬として第Ⅰ相臨床試験を米国にて開始いたしました。第Ⅰ相臨床試験では、48名の健康成人での投与を行い、安全性と忍容性を確認し、良好な結果を発表しました。この後、FDA(アメリカ食品医薬品局)と前期第Ⅱ相に向けた協議を行う予定です。また、前期第Ⅱ相臨床試験では、米国に加えてカナダの施設も含めた実施を検討しています。
(3) 目標とする経営指標
当社グループは研究開発型の創薬系バイオベンチャーであり、利益が本格的に拡大するのは、現在開発している複数の新薬が上市され、提携先からロイヤリティの支払いを受ける時期になる予定です。したがって、現段階においては、提携先から契約一時金や開発協力金を受け取り財務リスクの低減を図りながら、研究開発を進め、早期の黒字化を目指しております。
具体的には以下の方針に沿って事業を進めてまいります。
・主要製品である「コラテジェン®」の価値最大化を図る。
具体的には慢性動脈閉塞症の安静時疼痛症の適応拡大の臨床試験推進に加え、強皮症などの種々の疾患に適用できるかどうか検討を進めてまいります。
・臨床開発の加速化及び早期事業化の推進
「コラテジェン®」に続いて臨床開発中の核酸医薬のNF-κBデコイオリゴDNAや高血圧DNAワクチン開発を加速化または導出を進め遺伝子治療・核酸医薬の早期の事業化を目指します。また、新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大を受け、その感染予防を目指した新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの早期実用化、Vasomune社と米国で共同開発しているAV-001(新型コロナウイルス感染症治療薬)の早期承認を目指します。
・共同開発による開発パイプラインの拡充を図る
遺伝子医薬の領域は、既存の製薬会社にとってノウハウが少なく、研究開発に取り組みにくい技術分野です。当社グループは、国内外の大学などで生まれた研究成果や、国内外の企業の開発品を積極的に導入し、開発パイプラインの拡充を図ってまいります。
・新たな遺伝子医薬技術を用いた開発パイプラインの拡充と事業基盤の拡大
当社グループの既存の遺伝子治療の手法である「プラスミドDNA」技術に加え、完全子会社化したEmendo社の究極の遺伝子治療ともいわれる「ゲノム編集」技術とそれを用いた研究開発パイプラインに加え、更に今後「ウイルスベクター」の技術も獲得し、これら全ての遺伝子治療手法を携えて開発パイプラインの拡充と事業基盤の拡大を目指します。
・事業提携、資本参加による新規事業への参入
これまでに資本参加したBarcode Diagnostics Ltd.(ビジネス対象:抗がん剤選択のための診断技術)やMyBiotics Pharma Ltd.(ビジネス対象:マイクロバイオーム-常在菌の培養、製剤化)を活用し、各種疾患予防、健康維持の製品開発及び診断事業へ参入し具体的なビジネスに向けた取り組みを行ってまいります。

<当社グループの経営戦略>
医薬品開発には一般に多額の資金と長い期間が必要であり、加えて開発の成功確率の点で大きなリスクを伴います。最先端の技術を使い革新的な医薬品開発に挑戦している当社グループの場合には、特にこれが当てはまります。さらに販売面においても、マーケティング・販売機能を自社で構築するには多額の資金を必要とします。このため、経営資源の限られたベンチャー企業である当社グループは、当社グループで開発した医薬品の販売権を確保したい製薬企業と積極的に提携することで、提携先が持つ医薬品開発力・販売力を活用し、さらに提携先から契約金・マイルストーン及びロイヤリティを受け取ることで、開発・財務面でのリスクを低減することを目指しています。
なお当社グループは、事業が未だ先行投資の段階にあるため現時点では親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりますが、事業計画に沿って研究開発を着実に進め、将来、医薬品の販売から得られる収益によって損益を改善し、さらには利益を拡大する計画です。
<開発段階と収益構成>

<一般的な新薬開発のプロセスと期間>
(5) 会社の対処すべき課題
当社グループは、創薬系バイオベンチャーとして、次世代のバイオ医薬品である遺伝子医薬(DNAプラスミド製剤、核酸医薬)や治療ワクチンなどの医薬品開発と製造販売の事業を推進しております。さらに2020年度より、新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン開発等による開発パイプラインの拡充や、先進のゲノム編集技術を有するEmendo社の買収を行い事業基盤の拡大を推進してまいりました。
一方で医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、当社グループは継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあり、すべての開発投資を補うに足る収益は生じておりません。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
このような環境のもと、当社グループは継続的な発展のため、下記を重要な課題として取り組んでおります。
① 自社既存プロジェクトの推進
当社グループでは、2019年3月に国内初の遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の条件及び期限付承認を厚生労働省から取得し、同年9月から販売を開始いたしました。現在、製造販売後承認条件評価を行うとともに国内での同製品の適応拡大のための臨床試験及び米国での閉塞性動脈硬化症を対象とした臨床試験を進めております。また、現在海外で臨床試験を進めております椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNA、高血圧DNAワクチンを含めた3プロジェクトを推進しております。これらのプロジェクトを確実に推進していくことが最優先課題であると考えております。
② 開発パイプラインの拡充と事業基盤の拡大
当社グループでは新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延を機に予防用としてのDNAワクチンの開発を2020年3月より開始し、現在第Ⅱ/Ⅲ相の臨床試験を実施しております。また、カナダのVasomune社と新型コロナウイルス感染症治療薬としてAV-001を共同開発しております。米国で行っている第Ⅰ相臨床試験では、安全性、忍容性において良好な結果を確認しました。今後FDAと前期第Ⅱ相臨床試験についての協議を進めます。そして、ゲノム編集における先進技術を持つEmendo社を完全子会社化し、究極の遺伝子治療ともいわれるゲノム編集で世界に戦いを挑みます。これらの開発パイプラインの拡充や事業基盤の拡大により、当社グループは遺伝子治療の世界でグローバルリーダーを目指します。
今後も、ライセンス導入や共同開発、創薬プラットフォーム技術の獲得を目指した事業提携に加え、他社に対する資本参加や他社の買収等により開発品パイプラインの拡充による事業基盤の拡大を図り、将来の成長を実現してまいります。
③ 開発プロジェクトにおける提携先の確保
当社グループでは、開発プロジェクトのリスクを低減するために、製薬会社と提携し、契約金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを低減しながら開発を進めるという提携モデルを基本方針としております。
「コラテジェン®」について日本と米国を対象とした独占的販売契約を田辺三菱製薬と締結しており、マイルストーン収入やロイヤリティ収入が見込めます。また、2019年2月にイスラエルにおけるHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の独占的販売権の許諾について同国Kamada社と基本合意書を締結しております。さらに2020年10月にスペシャルティ薬(特定疾患専門薬)を扱うトルコのEr-Kim社と「コラテジェン®」のトルコでの導出(独占的販売権許諾)に関する基本合意書を締結しました。椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNA、高血圧DNAワクチンにつきましては臨床試験が予定どおり進捗しており、早期に製薬企業等に導出することで契約一時金等を得ることにより開発費の負担削減を目指してまいります。今後も、製薬会社との提携を進めることにより、事業基盤の強化に努めてまいります。
④ 資金調達の実施
当社グループにとって、研究開発活動及び事業基盤の拡大を推進することは継続的な発展のために重要であり、そのためには状況に応じ機動的に資金調達を行うことが必要となります。2020年3月4日に発行したフィリップ証券株式会社を割当先とする第37回新株予約権(第三者割当て)について2020年4月までに全数が行使され、当連結会計年度において114億69百万円を調達いたしました。また、2021年3月8日開催の取締役会において、第41回新株予約権(第三者割当て)(行使価額修正条項付)の発行を決議いたしました。今後も、研究開発活動推進及び企業維持のために必要となる資金調達の可能性を適宜検討してまいります。
これら諸施策の実施により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。将来に関する事項については有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
(1) 遺伝子治療の現状について
遺伝子治療とは、遺伝子を用いて病気を治療することです。世界初の遺伝子治療は1990年に米国で、アデノシン・デアミナーゼ(ADA)欠損症という先天的に免疫が正常に働かない遺伝子疾患を対象に実施されました。その後、遺伝子疾患に加え、有効な治療法がない癌や後天性免疫不全症候群などに対しても、遺伝子治療が実施されてきました。国内でも1995年に北海道大学においてADA欠損症を対象とした初めての遺伝子治療が行われ以来、過去20年以上に亘り数多くの臨床試験が行われてきました。
遺伝子治療が有効と考えられる対象疾患としてはまず、遺伝子の変異が原因の遺伝子疾患があります。遺伝子疾患では、遺伝子治療により正常な遺伝子を補充することで治療効果が期待しやすいと考えられます。
最近では「ゲノム編集」技術の医療への応用が急速に進歩しています。「ゲノム編集」とは、ヒトゲノムの特定の部位で外因性の遺伝子を追加・挿入、あるいは遺伝子変異を修正、削除できる最新の遺伝子工学技術であり、従来の遺伝子組み換え技術と比べて著しく精度と効率が高いため、今後医療や科学にとって不可欠な技術になるとみられております。
「ゲノム編集」の前段階として、1990年代に本格的に始まった遺伝子治療(Gene Therapy)の研究は患者の骨髄から幹細胞を取り出し、正常な遺伝子をその幹細胞の核に組み込み、再度その細胞を患者の体内へ戻すことにより、正常な遺伝子が体内で機能するようにするものでした。 2010年代になり遺伝子を自在に書き換える「ゲノム編集」(Genome Editing)技術が開発され、その技術は今日ますます発展を遂げております。特に遺伝子異常による難病を持つ患者の治療方法として開発が進んでおり、医療・ヘルスケア業界だけでなく、農業・食品分野に革命的な影響を及ぼしており事業性の面からも注目されております。
ただし最新の「ゲノム編集」技術を利用した遺伝子(細胞)治療は新規性が高く有効性が期待されるものの、現段階では未知のリスクを否定できず、幅広い実用化には至らないリスクがあります。
(2) 今後の事業展開について
慢性動脈閉塞症を適応症としたHGF遺伝子治療用製品に関しては、田辺三菱製薬株式会社に対し末梢性血管疾患を対象とした米国と日本における独占的販売権を付与しており、開発の進捗に伴ったマイルストーンを、さらに上市後には売上高の一定料率を対価として受け取る予定です。HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」は2019年度に厚生労働省から条件及び期限付きの製造販売承認を受けておりますが、今後の本承認を目指して実施される製造販売後承認調査評価における条件(投薬量、投薬回数、投薬期間)やその他の理由により、製造販売承認を取得できない可能性があります。
また、イスラエルにおけるHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の独占的販売権の許諾について同国Kamada社と基本合意書を締結しております。更にスペシャルティ薬(特定疾患専門薬)を扱うトルコのEr-Kim 社と「コラテジェン®」のトルコでの導出(独占的販売権許諾)に関する基本合意書を締結しました。今後これらの導出先がそれぞれの国での使用の承認を受けた場合、海外での売り上げを見込むことができます。しかしながら導出先のイスラエルやトルコの薬事承認制度は異なるため、それらの国の当局による判断次第で販売承認を取得できないこともあり、事業計画が実現しない可能性があります。
NF-κBデコイオリゴDNAについては、塩野義製薬株式会社との間で外用剤全般の全世界における独占的な販売権を付与する契約を締結しており、その契約に基づいて当社グループは、開発の進捗に伴いマイルストーンを受け取ります。
NF-κBデコイオリゴDNAの新たな対象疾患として、椎間板性腰痛を対象とした臨床開発を実施しています。初期段階の臨床試験が良好な結果であったため、その後大手製薬企業に開発・販売権を導出する計画で、実現すれば契約締結に伴う一時金、開発の進捗に伴ったマイルストーンを、さらに上市後には売上高の一定料率を対価として受け取る予定です。しかしながら、導出条件やその他の理由により、こうした事業計画が実現しない可能性があります。
当社グループは遺伝子治療薬、デコイオリゴDNAに続く第三の事業の柱としてDNAワクチン事業の推進を掲げています。その一環として高血圧を対象としたDNAワクチンの臨床開発を実施しています。初期段階の臨床試験の結果、安全性が確認されたため、さらに今後臨床開発を進め、その後大手製薬企業に開発・販売権を導出する計画であり、実現すれば契約締結に伴う一時金、開発の進捗に伴ったマイルストーン、さらに上市後には売上高の一定率を対価として受け取る予定です。しかしながら、不十分な臨床効果やその他の理由により、こうした事業計画が実現しない可能性があります。
また、DNAワクチンでは新型コロナウイルスの感染を予防するDNAワクチンの臨床開発を実施しています。今後大規模な臨床での効果を確認し、早期に大手製薬企業に開発・販売権を導出する計画であり、実現すれば契約締結に伴う一時金、開発の進捗に伴ったマイルストーン、さらに上市後には売上高の一定料率を対価として受け取る予定です。しかしながら、現在世界的大流行の新型コロナウイルス感染症については、インフルエンザのように毎年流行するのか、あるいは感染が終息するのかは不明であり、また、不十分な臨床効果やその他の理由により、こうした事業計画が実現しない可能性があります。
また、長期的観点から、Brickell Biotech,Inc.(旧バイカル社)、MyBiotics Pharma Ltd.、Barcode Diagnostics Ltd.に資本参加しています。しかしながら、これらの事業が計画通りに進展しなかった場合やその他の理由により、投資資金を回収できない可能性があります。
(3) 研究開発について
一般に新薬の開発には、長期に亘る期間と多額の費用が必要です。それにもかかわらず、医薬品の開発は計画通りに進行するとは限らず、臨床試験のために必要とされる症例数を適時に確保できないこと、臨床試験の実施に係る各種業務を支援・代行するCRO(医薬品開発業務受託機関)における業務が計画通り進行しないこと等の様々な要因によって遅延する可能性があります。さらに、様々な試験の結果、期待した有効性を確認できなかったり、安全性に関する許容できない問題が生じたりした場合には、研究開発を中止するリスクがあります。このような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。
(4) 製造について
当社グループは、製品及び治験薬等を自社で製造しておらず、他社からの供給に依存しております。従って、製品や治験薬等について、何らかの要因により、品質上の問題が生じたり、もしくは予定通りに必要な数量を確保できない場合には、開発に遅れが生じたり、製品供給の不足により当社グループの業績が影響を受けたりする可能性があります。
(5) 販売について
当社グループが開発中の医薬品については、国内、米国及び欧州等の各地域において、将来競合する可能性のある製品及び開発品が存在します。当社グループは、競争力の高い製品を早期に開発、上市することで、一定の市場シェアの獲得を目指しております。しかしながら、競合他社が当社の想定以上のシェアを獲得した場合には、当社グループが開発した製品が上市された場合においても期待通りの収益をあげられない可能性があります。
また、日本や欧州においては新薬の価格は原則として政府あるいはそれに準じた公的機関により決定され、また、米国においては保険会社・マネージドケア(健康保険運営団体)及び政府のメディケア・プログラムとの交渉により決定されます。そのため、当社グループが開発した製品について当社グループが想定した薬価とならない場合があり期待通りの収益をあげられない可能性があります。
加えて、当社が販売する医薬品について、予期しない副作用が発生した場合には売上高の減少要因となり、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(6) 薬事法制による規制について
薬事法制は、医薬品・医療機器等の品質、有効性、安全性確保の観点から、企業が行う開発・製造・販売等に関して必要な規制を行う法律であり、当社グループが実施している医薬品の研究開発は日本をはじめ各国の薬事法制の規制を受けております。
各国において、様々な要因による承認要件の変更、さらに薬事法制度の変更により、承認を計画通りに取得できない可能性があります。このような場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。
(7) 知的財産権について
① 特許戦略
当社グループが現在展開しているHGF遺伝子治療用製品、NF-κBデコイオリゴDNAの研究開発活動は、主に当社グループが保有する又は当社グループが実施権を有する特許権あるいは特許出願中の権利に基づき実施しております。以下において、それらのうち特に重要なものを記載しております。
しかしながら、当社グループが現在出願中の特許が全て登録されるとは限りません。また、当社グループの研究開発を超える優れた研究開発により当社グループの特許が淘汰される可能性は、常に存在しております。仮に当社グループの研究開発を超える優れた研究開発がなされた場合、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当社グループの今後の事業展開の中でライセンスを受けることが必要な特許が生じ、そのライセンスが受けられなかった場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
② 知的財産権に関する訴訟、クレーム
連結会計年度末現在において、当社グループの開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームが発生したという事実はありません。
ただし、他社が当社グループと同様の研究開発を行っていないという保証はなく、今後とも知的財産について問題が発生しないという保証はありません。
当社グループとしても、このような問題を未然に防止するため、事業展開にあたっては特許調査を実施しており、当社グループ特許が他社の特許に抵触しているという事実は認識しておりません。しかしながら、当社グループのような研究開発型企業にとって、このような知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。
(8) 業績の推移について
当社グループの主要な経営指標等の推移は以下のとおりであります。
(注) 事業収益には消費税等は含まれておりません。
当社グループは、事業のステージが先行投資の段階にあるため、現時点では、上記記載のように、第18期から第22期において親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりますが、現在の研究開発を着実に進め、パイプラインの拡充を図り、将来医薬品の販売から得られる収益によって損益を改善し、さらには利益の拡大を目指してまいります。
ただし、現在の事業計画に沿った医薬品の研究開発や販売が実現しない場合には、当社グループが将来においても親会社株主に帰属する当期純利益を計上できない可能性もあります。
また、上記記載のように、第18期から第22期においては、営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスであり、現状の事業計画に沿った医薬品の研究開発や販売が実現しない場合には、将来においても営業活動によるキャッシュ・フローがプラスにならない可能性もあります。
(9) 経営上の重要な契約等について
当社グループのビジネス展開上重要と思われる契約の内容を本報告書「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等」に記載しております。なお、当社グループは、これらの契約に関して、いずれも当社グループの根幹に関わる重要な契約であると認識しております。したがって、当該契約の破棄が行われた場合、当社グループにとって不利な契約改定が行われた場合及び契約期間満了後に契約が継続されない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)組織体制について
① 人材の確保
当社グループの競争力は研究開発力にあり、専門性の高い研究及び開発担当者の確保が不可欠です。また、事業の成長拡大を支えるためには事業開発、営業、製造、内部管理等の人材も充実させる必要があります。当社グループは、優秀な人材の確保及び社内人材の教育に努めますが、人材の確保及び社内人材の教育が計画どおりに進まない場合には、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。
一方、当社グループは、業務遂行体制の充実に努めますが、小規模組織であり、限りある人的資源に依存しているために、社員に業務遂行上の支障が生じた場合、あるいは社員が社外流出した場合には、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。
② 特定人物への依存
当社グループの事業の推進者は、代表取締役である山田英です。代表取締役山田英は、当社グループの最高責任者として、当社グループの経営戦略の決定、研究開発、事業開発及び管理業務の遂行に大きな影響力を有しております。また、当社メディカルアドバイザーである森下竜一には、研究開発の面でアドバイスを受けております。
当社グループではこれらの特定人物に過度に依存しない体制を構築すべく、経営組織の強化を図っていますが、当面の間はこれらの特定人物への依存度が高い状態で推移すると見込まれます。このような状況のなかで、これらの特定人物が何らかの理由により当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(11)訴訟について
当社グループは、医薬品の副作用、製造物責任、知的財産権及び労務問題等に関して、訴訟を提起される可能性があります。将来、当社グループが提訴された場合には、その内容次第で当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
(12)配当政策について
当社グループは、創薬系バイオベンチャーであり、2019年9月よりHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」を販売しているものの、「コラテジェン®」は条件及び期限付の承認であります。また他の主要なプロジェクトにおいても医薬品の開発段階であり、事業のステージは、先行投資の段階にあります。このため、現時点においては、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しており、剰余金の配当は実施しておりません。
ただし、株主への利益還元については重要な経営課題と認識しており、将来、現在開発中の新薬が上市され、その販売によって利益が計上され分配可能額が生じる時期においては、経営成績及び財政状態を勘案しながら、剰余金の配当を検討したいと考えております。
(13)外国為替変動について
当社グループは、事業活動をグローバルに展開しており、海外での研究開発活動、海外企業とのライセンス、海外からの製品及び治験薬の仕入等において外貨建取引が存在します。また、当社グループが現在開発を行っている製品は、日本のみならず、米国を含む海外市場での販売が見込まれます。そのため、急激な為替変動によって為替リスクが顕在化した場合には、当社グループの事業戦略や業績が影響を受ける可能性があります。
(14)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)向け予防ワクチン開発プロジェクトのリスク
当社グリープは2020年3月より大阪大学とDNAプラスミド製造技術を用いた新型コロナウイルス感染症予防ワクチン(以下、「本ワクチン」といいます。)の開発を行っております。本ワクチンは、不活化ワクチンとは異なり、危険なコロナウイルスを使用せず、対象とする当該ウイルスの一部であるタンパク質をコードする環状DNAプラスミド(DNAワクチン)を接種することで、当該ウイルスのタンパク質を体内で生産し、当該ウイルスに対する免疫を付与します。非臨床試験で動物への本ワクチンの投与を行い、抗体価の上昇及び各種試験結果が確認され、現在第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験を実施しております。本ワクチンの製造は大腸菌を用いて行うため、鶏卵を用いる不活化ワクチンと比べて安全で短期間に行うことができます。しかしながら、本ワクチンの開発は従来の開発プロジェクトで想定されるリスクに加え、下記のリスクが想定され、今後の事業戦略、財政状態、経営成績及び当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。
①開発の進捗に関するリスク:本プロジェクトは緊急性が高く、短期間での非臨床試験、臨床試験から承認を経ての製品化が要請されております。この状況下で緊急性は要するものの、健常者に投与するワクチン開発において、安全性および有効性を様々な角度から慎重に検証していく必要があり、また本年2月より国内で接種が開始されたワクチンの安全性情報によっては、一層慎重な安全性評価を求められる可能性があり、その結果、想定していたよりも工数や時間がかかり、スケジュール遅延が起こる可能性があります。また、現在実施中の第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験に引き続いて1万人から数万人規模の第Ⅲ相臨床試験を予定していますが、今後先行ワクチンの接種率増加に伴い、ワクチン非接種の臨床試験参加者を国内だけで適時に確保することが困難になり、海外での臨床試験が必要になった場合、スケジュールの遅延や費用の増大が起こる可能性があります。さらに、様々な試験の結果、期待した有効性を確認できなかったり、安全性に関する許容できない問題が生じた場合には、研究開発を中止するリスクがあります。
②開発競争のリスク:新型コロナウイルスワクチン開発は国内外の大手製薬会社からベンチャー企業まで、参入企業が増加し開発競争が激化しております。当社はプラスミドDNA製造技術を用いた新型コロナウイルスワクチンの開発で優位性があるものと認識しておりますが、将来的に競業他社による様々な開発ワクチンの開発進捗・技術力・有効性・安全性等により当社の優位が低下する可能性があります。
③開発戦略のリスク: 新型コロナウイルス感染症パンデミックの発端となったのは従来型の新型コロナウイルスでしたが、その後相次いで変異型が見つかり、それらの中には従来型より感染力が高く、致死率が高いものもあると言われております。本プロジェクトのワクチンは、従来型ウイルスの遺伝子配列に基づいて作られたものですが、その有効性が減弱あるいは消失する変異型ウイルスが主流となった場合には、それに対応したワクチンに切り替えるなど開発戦略の見直しを迫られる可能性があります。
④供給体制のリスク:開発の進捗に関するリスクで記載のとおり、本ワクチン開発は緊急性が高く、一方で短期間での供給体制の確立が必要となっております。しかしながら、予測不能の製造設備の稼働問題等の要因から、充分な供給体制の構築ができない可能性があります。
(15)新型コロナウイルス感染症拡大に伴うリスク
当社グループはHGF遺伝子治療用製品について、適応拡大を目的として、慢性動脈閉塞症の安静時疼痛を有する患者を対象とする第Ⅲ相臨床試験を実施しております。また、米国においては、下肢潰瘍を有する慢性動脈閉塞症を対象とした後期第Ⅱ相臨床試験を開始しておりますが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、治験施設への訪問制限や新規患者の登録組み入れ鈍化などの影響が出ており、臨床開発ステージにあるプロジェクトの進捗に影響を受ける可能性があります。また、臨床試験以外にも研究開発材料の調達や外部委託をおこなう各種試験の遅延など事業活動全般に制約を受ける可能性が想定され、当該事象が長期化した場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(16)継続企業の前提に関する重要事象等について
医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、創薬ベンチャーである当社グループにおいては、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあります。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
当社グループは当該状況を解消すべく、下記を重要な課題として取り組んでおります。
①自社既存プロジェクトの推進
当社グループでは、2019年3月に国内初の遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の条件及び期限付承認を厚生労働省から取得し、同年9月から販売を開始いたしました。現在、製造販売後承認条件評価を行うとともに国内での同製品の適用拡大のための臨床試験及び米国での閉塞性動脈硬化症を対象とした臨床試験を進めております。また、現在海外で臨床試験を進めております椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNA、高血圧DNAワクチンを含めた3プロジェクトを推進しております。これらのプロジェクトを確実に推進していくことが最優先課題であると考えております。
②開発パイプラインの拡充と事業基盤の拡大
当社グループでは新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延を機に予防用としてのDNAワクチンの開発を
2020年3月より開始し、現在第Ⅱ/Ⅲ相の臨床試験を実施しております。また、ゲノム編集における先進技術を持つEmendo社を完全子会社化し、究極の遺伝子治療ともいわれるゲノム編集で世界に戦いを挑みます。これらの開発パイプラインの拡充や事業基盤の拡大により、当社グループは遺伝子治療の世界でグローバルリーダーを目指します。
今後も、ライセンス導入や共同開発、創薬プラットフォーム技術の獲得を目指した事業提携に加え、他社に対する資本参加や他社の買収等により開発品パイプラインの拡充による事業基盤の拡大を図り、将来の成長を実現してまいります。
③開発プロジェクトにおける提携先の確保
当社グループでは、開発プロジェクトのリスクを低減するために、製薬会社と提携し、契約金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを低減しながら開発を進めるという提携モデルを基本方針としております。
「コラテジェン®」について日本と米国を対象とした独占的販売契約を田辺三菱製薬と締結しており、マイルストーン収入やロイヤリティ収入が見込めます。また、2019年2月にイスラエルにおけるHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の独占的販売権の許諾について同国Kamada社と基本合意書を締結しております。さらに2020年10月にスペシャルティ薬(特定疾患専門薬)を扱うトルコのEr-Kim社と「コラテジェン®」のトルコでの導出(独占的販売権許諾)に関する基本合意書を締結しました。椎間板性腰痛症向けの核酸医薬NF- κBデコイオリゴDNA、高血圧DNAワクチンにつきましては臨床試験が予定どおり進捗しており、早期に製薬企業等に導出することで契約一時金等を得ることにより開発費の負担削減を目指してまいります。今後も、製薬会社との提携を進めることにより、事業基盤の強化に努めてまいります。
④資金調達の実施
当社グループにとって、研究開発活動及び事業基盤の拡大を推進することは継続的な発展のために重要であり、そのためには状況に応じ機動的に資金調達を行うことが必要となります。2020年3月4日に発行したフィリップ証券株式会社を割当先とする第37回新株予約権(第三者割当て)について2020年4月までに全数が行使され、当連結会計年度において114億69百万円を調達いたしました。また、2021年3月8日開催の取締役会において、第41回新株予約権(第三者割当て)(行使価額修正条項付)の発行を決議いたしました。今後も、研究開発活動推進及び企業維持のために必要となる資金調達の可能性を適宜検討してまいります。
これら諸施策の実施により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社3社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
① 経営成績及び財政状態の概要
当社グループでは、提携企業からの契約一時金、マイルストーンを研究開発事業収益に計上しております。また、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売収入につきまして製品売上高に計上しております。
この結果、当連結会計年度における事業収益は39百万円(前期比2億86百万円(△87.8%)の減収)、経常損失は66億18百万円(前年同期の経常損失は32億93百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は42億9百万円(前連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は37億50百万円)となっております。
財政状態につきましては、当連結会計年度末の総資産は383億54百万円(前連結会計年度末比258億30百万円の増加)となりました。現預金は新株予約権の行使等により115億37百万円(前連結会計年度末比14億96百万円の増加)となりました。負債は56億74百万円(前連結会計年度末比52億5百万円の増加)となりました。純資産は326億79百万円(前連結会計年度末比206億24百万円の増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ14億96百万円増加し、115億37百万円となりました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
当連結会計年度における営業活動による資金の減少は、29億61百万円(前年同期は21億79百万円の減少)となりました。前受金が35億94百万円、仕入債務が3億6百万円、未払金が2億80百万円増加しましたが、税金等調整前当期純損失42億4百万円に加え、前渡金が8億87百万円、たな卸資産が5億53百万円、未収消費税等が1億73百万円増加しております。その結果、前年同期と比べ、7億81百万円の支出増加となっております。
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、69億63百万円(前年同期は12億49百万円の減少)となりました。Emendo社株式の取得により、投資有価証券の取得による支出54億43百万円が発生しております。Emendo社への短期貸付による支出が21億70百万円発生しております。Emendo社を新規連結したことに伴い、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入が8億15百万円発生しております。
当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、114億3百万円(前年同期は76億76百万円の増加)となりました。新株予約権の発行による収入が73百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入が113億31百万円発生しております。
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。これは、当連結会計年度において「コラテジェン®」の生産がなかったためです。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額には、消費税等は含まれておりません。
2 当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これは、「ナグラザイム®」の販売が終了したことによるものであります。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額には、消費税等は含まれておりません。
2 当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、前連結会計年度においてマイルストーン収入を計上したこと及び「ナグラザイム®」の販売が終了したことによるものであります。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、本報告書「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。連結財務諸表及び注記事項等の作成上、必要な会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、創薬系ベンチャーとして、次世代のバイオ医薬品である遺伝子医薬(DNAプラスミド製剤、核酸医薬)や治療ワクチンなどの医薬品開発と製造販売の事業を推進しております。
当連結会計年度において、国内の慢性動脈閉塞症における潰瘍に対する条件及び期限付き製造販売承認を取得しているHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売を継続し、さらに同製品の適応拡大を目的として安静時疼痛に対する第Ⅲ相臨床試験を実施し、米国においては2020年2月より下肢潰瘍を有する慢性動脈閉塞症を対象とした第Ⅱb相臨床試験を開始いたしました。NF-κBデコイオリゴDNAにつきましては椎間板性腰痛症に対する第Ⅰb相臨床試験を実施し、安全性が確認され、患者の腰痛に対し著しい軽減とその効果の持続が認められ、有効性も確認できました。また高血圧DNAワクチンについては第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験を海外で進めておりますが、投与後の経過観察期間を経て、初期の試験結果の評価を行い、安全性に問題がないこと、アンジオテンシンⅡに対する抗体産生を認めました。
また、2020年3月より新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの開発を開始し、第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験を国内で進めております。また、カナダのVasomune社と共同開発しているAV-001を2020年12月より新型コロナウイルス感染症治療薬として健康成人を対象として米国において第Ⅰ相臨床試験を実施し、安全性と忍容性を認め、良好な結果を確認しました。引き続き、第Ⅱ相臨床試験の準備を進めます。
これらの既存プロジェクトに加え、ゲノム創薬を推進するため、新規ゲノム編集技術と開発パイプラインを有するEmendo社を子会社化し、戦略的提携先との共同開発や他社への資本参加等による開発品パイプライン拡充により、“遺伝子医薬のグローバルリーダー”を目指してまいります。
当連結会計年度の事業収益は39百万円(前年同期比2億86百万円(△87.8%)の減収)となりました。当社グループでは、提携企業からの契約一時金、マイルストーンを研究開発事業収益に計上しております。また、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®筋注用4mg(以下「コラテジェン®」といいます。)」の販売収入につきまして、製品売上高に計上しております。
2019年6月をもってムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」の販売が終了したため、当連結会計年度において商品売上高は計上がありませんでした(前年同期は1億70百万円)。研究開発事業収益も計上がありませんでした(前年同期は1億52百万円)。2019年9月よりコラテジェン®の販売を開始しており、当連結会計年度において製品売上高を39百万円計上いたしました(前年同期は4百万円)。
当連結会計年度における事業費用は、56億39百万円(前年同期比20億42百万円(+56.8%)の増加)となりました。売上原価は、23百万円(前年同期比64百万円(△73.6%)の減少)となりました。研究開発費は37億96百万円(前年同期比15億81百万円(+71.4%)の増加)となりました。当連結会計年度において、米国におけるHGF遺伝子治療用製品の下肢潰瘍を有する閉塞症動脈硬化症を対象とした第Ⅱb相臨床試験を開始し治験費用が発生したこと、及び新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン開発に伴い、外注費が12億59百万円、消耗品費が2億41百万円、研究用材料費が94百万円増加しております。当社グループのような研究開発型バイオベンチャー企業にとって研究開発は生命線でありますので、提携戦略により財務リスクの低減を図りながら、今後も研究開発投資を行っていく予定です。研究開発の詳細については、本報告書「第2 事業の状況 5 研究開発活動」をご参照ください。
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は18億20百万円(前年同期比5億25百万円(+40.6%)の増加)となりました。前年同期と比較して、EmendoBio Inc.及び同社の子会社であるEmendoBio Research and Development Ltd.(以下「Emendo社」と総称します。)を完全子会社化した際のコンサルティング費用及び弁護士報酬を計上したこと等により、支払手数料が4億65百万円増加しております。法人事業税の資本割額が増加したことにより、租税公課が1億39百万円増加しております。一方で、新型コロナウイルス感染症拡大による出張の自粛等により、旅費交通費が47百万円減少しております。前年同期において当社取締役及び従業員に対する株式報酬型ストック・オプション(新株予約権)を発行し、株式報酬88百万円を計上しておりましたが、当連結会計年度においては48百万円の計上となっております(前年同期比40百万円の減少)。この結果、当連結会計年度の営業損失は55億99百万円(前年同期の営業損失は32億70百万円)となり、前年同期より23億29百万円損失が拡大しております。
当連結会計年度の経常損失は、66億18百万円(前年同期の経常損失は32億93百万円)となりました。新株予約権の発行及び行使に伴う株式交付費が1億17百万円発生し、前年同期に比べ76百万円増加しております。第1四半期連結会計期間よりEmendo社が持分法適用会社となり、持分法による投資損失が9億9百万円発生しております。
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は、42億9百万円(前年同期の親会社株主に帰属する当期純損失は37億50百万円)となりました。Emendo社を完全子会社化したことに伴い、段階取得に係る差益が24億28百万円発生しております。ストック・オプションの権利行使期間終了による権利失効に伴い、新株予約権戻入益が5百万円発生しております。前年同期においては、投資有価証券評価損を4億68百万円計上しておりましたが、当連結会計年度においては発生しておりません。Emendo社への持分比率の変動により、持分変動損失を20百万円計上しております。
当連結会計年度末の総資産は383億54百万円(前連結会計年度末比258億30百万円の増加)となりました。
現金及び預金においては、新株予約権の発行及び行使に伴う114億69百万円の入金及びEmendo社を新規連結したことに伴う増加はありましたが、Emendo社株式の取得及び当期事業費用への充当により、前連結会計年度末比14億96百万円増加して115億37百万円となりました。主に新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの製造に係る費用を前払いしたことに伴い、前渡金が8億86百万円増加しております。コラテジェン®の原薬を製造したことに伴い、原材料及び貯蔵品が5億76百万円増加しております。流動資産は31億74百万円増加し141億66百万円となりました。
有形固定資産においては、主に研究開発設備への投資及びEmendo社を新規連結したことに伴い、建物が73百万円、工具器具及び備品が1億12百万円増加しております。無形固定資産においては、Emendo社を完全子会社化したしたことにより、のれんを227億13百万円計上しております。投資その他の資産においては、主にEmendo社を完全子会社化したことにより、投資有価証券が3億43百万円減少し、10億75百万円となりました。これにより、固定資産は226億55百万円増加し、241億87百万円となっております。
当連結会計年度末の負債は56億74百万円(前連結会計年度末比52億5百万円の増加)となりました。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)より採択された「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」及び厚生労働省より採択された「ワクチン生産体制等緊急整備事業」に関する助成金が入金され、前受金に35億94百万円を計上しております。Emendo社を完全子会社化した際の費用の計上及びEmendo社を新規連結したことに伴い、未払金が11億28百万円増加しております。新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの開発に係る費用の計上により、買掛金が3億31万円増加しております。
純資産は326億79百万円(前連結会計年度末比206億24百万円の増加)となりました。第三者割当増資、新株予約権の発行及び行使により、資本金が113億20百万円増加し、新株予約権が49百万円増加しております。増資及びEmendo社を新規連結したことに伴い、資本剰余金が136億49百万円増加しております。保有する有価証券の評価差額を計上したことに伴い、その他有価証券評価差額金が64百万円増加しております。Emendo社株式持分の円換算額の計上により、為替換算調整勘定が2億50百万円減少しております。親会社株主に帰属する当期純損失42億9百万円の計上により、利益剰余金が減少しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの事業活動における資金需要は、プロジェクト推進のための研究開発費需要と会社運営のための運転資金需要があります。これらの資金需要に対して、主に新株予約権によるエクイティファイナンスによって資金調達を行っております。
当社の経営上の重要な契約は以下のとおりであります。
(1) 導入
(2) 導出
当連結会計年度における研究開発費は
当社グループは、“遺伝子医薬のグローバルリーダー”を目指し、遺伝子治療を中心に医薬品開発に取り組んでおります。中でも2019年末から拡大している新型コロナウイルス感染症に関しては、予防用のワクチンと治療薬の二軸で、国内外で開発を進めております。また、究極の遺伝子治療であるゲノム編集においては、先進の技術を持つEmendo社を完全子会社とし、共にゲノム編集技術で、いままで治療法のなかった患者にお届けできる医薬品開発を進めてまいります。
2019年9月に製品化したHGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」は、適応拡大及び米国での承認を目指して、国内外で臨床試験を実施しております。導出に向けた活動も積極的に行い、トルコのEr-Kim社と独占販売契約を締結いたしました。椎間板性腰痛症を対象としてNF-κBデコイオリゴDNAや高血圧向けDNAワクチンの開発も継続して行っております。
当社は、海外企業との提携も積極的に行い、有望な医薬品の実用化に向けて共同開発を進めております。

■新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチン(自社品)
当社は、プラスミドDNAの技術を用いて2020年3月より大阪大学と共同で新型コロナウイルス感染症に対する予防用ワクチンの開発を開始し、現在第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験を実施しております。
■新型コロナウイルス感染症治療薬(共同開発品)
当社は、カナダのバイオ医薬品企業であるVasomune社と急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした医薬品に関する共同開発契約を締結し、現在AV-001を新型コロナウイルス感染症治療薬として、2020年12月より健康成人を対象とした第Ⅰ相臨床試験を米国において実施し、安全性と忍容性を認め、良好な結果を確認しました。引き続き、第Ⅱ相臨床試験の準備を進めます。
■HGF遺伝子治療用製品(一般名:ベペルミノゲンペルプラスミド)(自社品)
<対象疾患:慢性動脈閉塞症>
慢性動脈閉塞症を対象疾患としたHGF遺伝子治療用製品の開発については、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」により再生医療等製品の早期実用化を目的とした「条件及び期限付承認制度」(2014年11月施行)を活用し、2019年3月に国内初の遺伝子治療用製品「コラテジェン®」として、慢性動脈閉塞症の潰瘍の改善効能効果で条件及び期限付承認を取得し、2019年9月10日より発売を開始いたしました。
田辺三菱製薬株式会社(以下「田辺三菱製薬」といいます。)と当社は、HGF遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の販売に関し、日本及び米国における末梢性血管疾患を対象とした独占的販売権許諾契約を締結しており、田辺三菱製薬が販売を担当いたしております。今回の承認は、条件及び期限付であり、製造販売後承認条件評価を2024年までに行い、本承認取得を目指してまいります。海外開発については、米国において2020年1月より、下肢潰瘍を有する閉塞性動脈硬化症を対象とした第Ⅱb相臨床試験を実施しております。
<対象疾患:慢性動脈閉塞症における安静時疼痛>
「コラテジェン®」の適応拡大を目的として、国内において慢性動脈閉塞症における安静時疼痛を有する患者を対象にした第Ⅲ相臨床試験を2019年10月より開始しております。
■NF-κBデコイオリゴDNA
<対象疾患:椎間板性腰痛症(自社品)>
核酸医薬NF-κBデコイオリゴDNAについては椎間板性腰痛症を含む腰痛疾患を適応症とした開発を進めております。2018年2月より椎間板性腰痛症を対象とした第Ⅰb相臨床試験は、投与後の観察期間6カ月間を経た結果として、患者の忍容性は高いうえ、重篤な有害事象も認められず、安全性を確認できました。さらに、探索的にデータを評価したところ、患者の腰痛に著しい軽減とその効果の持続が認められ、有効性も確認できました。今後12ヵ月後までの結果を踏まえて、第Ⅱ相臨床試験へ移行することとなります。
核酸医薬デコイオリゴDNAのその他の開発については、これまでNF-κBデコイオリゴDNAの次世代型デコイオリゴDNAの研究を行っており、NF-κBとSTAT6という2つの転写因子を同時に抑制する働きを持った「キメラデコイ」の開発を進めております。NF-κBのみをターゲットとした従来のデコイオリゴDNAの作用に加えてさらに多くの炎症に関係する因子を抑制し幅広い作用を発揮することが期待されます。
■高血圧治療用DNAワクチン(自社品)
当社グループは、遺伝子治療用製品、核酸医薬につづく遺伝子医薬の第三の事業として、DNAワクチンの開発を手がけており、高血圧治療用DNAワクチンの開発を進めております。オーストラリアでの第Ⅰ/Ⅱa相臨床試験は投与後の初期の試験結果の評価を行ったところ、重篤な有害事象はなく、安全性に問題がないことを確認し、アンジオテンシンⅡに対する抗体産生を認めました。今後、安全性、免疫原性および有効性を評価する試験を継続的に行ってまいります。
新規研究開発プロジェクト及び新規事業プロジェクト
■ゲノム編集技術による遺伝子治療用製品開発
当社は、究極の遺伝子治療法ともいわれるゲノム編集技術を用いた遺伝子疾患治療に挑むため、2020年12月にゲノム編集における先進技術及びそれを活用した開発パイプラインを持つEmendo社へ追加出資し、完全子会社化しました。Emendo社のゲノム編集技術は、高い効率で正確なゲノム編集を可能にする画期的かつ実用的な独自技術です。
■マイクロバイオームを用いた疾患予防・健康維持
当社は、腸内細菌叢を利用した疾患治癒の薬品や健康維持のサプリメントについて開発しているイスラエルのMyBiotics Pharma Ltd.と2018年7月に資本提携し、1 人 1 人の健康状態・体質に合った腸内細菌を見つけ出し、それらを含む薬品やサプリメントを開発することを目指しています。
■診断事業への参入
当社は、事業基盤拡大を目的としイスラエルのバイオハイテク企業Barcode Diagnostics Ltd.が開発した、個々のがん患者にとって最適な抗がん剤を迅速に特定する診断技術の早期実用化に向け、2020年2月に公益財団法人がん研究会と共同研究契約を締結いたしました。
■Brickell Biotech,Inc.(旧:バイカル社)との戦略的な開発協力
当社と2016年12月に戦略的事業提携を締結したバイカル社は、2019年8月に米国のBrickell Biotech, Inc.との合併契約を締結し、合併後の新社名はBrickell Biotech, Inc.となりました。同社とは2020年9月に新型コロナウイルス感染症予防DNAワクチンの米国での臨床開発に関する共同開発契約を締結しました。
