文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社が判断したものです。
(1) 経営の基本方針
(企業理念:Philosophy)
技術を探究し、価値を創造し、お客様とともに成長する
(存在意義:Purpose)
技術と創造力で人と社会の安心と幸せを支え続けます
(経営目標:Vision)
価値を共創するデジタルデータ社会の実現に向けて、「あなたに信頼されるITサービス」のリーディングカンパニーへ(※あなた:お客様、パートナーを含む全ての取引先)
(提供価値:Values)
技術を創意工夫し、時と場の制約を超え、業務を自動化し、人の力を補完補強するITサービスを真心を込めて提供します
(2) 中長期計画「Quest Vision2030」
当社では、2030年度の目標として中長期計画「Quest Vision2030」を策定しています。Quest Vision2030では、持続的な成長と高収益体質の維持、そして企業価値向上に向けた"QCSV"(Quest Creating Shared Value:クエストの共通価値の創造)へのストーリー及び6つのコミットメントを定義しています。具体的な目標として、2030年度の売上高200億円超、企業価値250億円超を設定しています。
当事業年度を初年度とする「第2期・中期経営計画(2024-2026年度)」では2030年度の飛躍と持続的成長を念頭に、着実な成長と計画的な投資継続、収益性の向上に取り組み、Quest Vision2030のさらなる加速と企業価値向上を実現していきます。
(図:Quest Creating Shared Value Story)

(図:6つのコミットメント)

(3) ブランドの目指す姿
当社が目指すブランドの世界観としてブランドスローガンを、全てのステークホルダーの方へのブランドの約束としてブランドプロミスを定義しています。
(ブランドスローガン)
Quest For More
(ブランドプロミス)
Digital Future As One
「Quest For More」の意味は文字通り、“もっと探究・もっと探求”することです。
探究:誠実な精神と創造力を通じてお客様の業務をより効率化し、期待を超える価値を提供していきます。
探求:新しい市場の開拓や技術の獲得に挑戦し、より便利で幸せな社会の実現に貢献していきます。
「Digital Future As One」には、お客様やパートナー、社員も、家族も、ともに1つになり、デジタルの未来に向かって邁進していくメッセージを込めています。
(4) 目標とする経営指標及び達成状況
当社は、事業の発展を通じて企業価値を安定的に成長させていくことを目標とし、中長期計画「Quest Vision2030」に基づいた3か年ごと中期計画を作成し、進捗と達成の状況レビューを行いながら事業を推進しています。
「2021-2023年度・中期経営計画」では、当初の目標としていた以下の指標を達成することができました。
当事業年度を初年度とする「2024-2026年度・中期経営計画」では、当初、以下の目標を設定していました。一方で、2025年4月15日に株式会社セプトを新たにグループに迎え、売上高については1年前倒しで達成する見込みです。今後、エンジニアリソースを強化するとともにサービス供給体制を安定化させることで中期経営計画のさらなる前倒し実現を目指していきます。なお、現行の中期経営計画及び2030年度までの中長期経営計画に変更がある場合には確定次第、速やかにお知らせします。
(5) 会社の対処すべき課題
我が国経済の雇用情勢や所得環境は改善傾向にあり、緩やかな景気回復が期待される一方で、物価上昇や人手不足の継続に加え、米国の関税政策の影響による世界的な景気後退懸念から、引き続き先行きは不透明な状況が続くと予想されます。
このような状況下において、当社は顧客産業の市況の変化を的確に捉えながら、Quest Vision2030の飛躍的な成長を念頭に以下の課題に取り組み、収益の維持・拡大と企業価値の向上に努めていきます。
① ITプロフェッショナル人材の獲得と育成
高度IT人材の獲得競争が激化するなか、事業のさらなる変革と発展のためには豊富な専門知識と高度なスキルを有する人材を確保することがより一層重要になっています。社員の積極的な採用活動に加えて、ビジネスパートナーとの戦略的なアライアンスやM&Aを含めた人材の獲得を強化していきます。
また、技術者が自分に適したキャリアを選択し成長できる環境と仕組みの整備や社員が能力を十分に発揮し成長するための教育投資を計画的かつ継続的に取り組んでいきます。
② 新たな強み「ソリューションサービス」の強化
当社は顧客に密着した常駐型サービスにおいて強みを有しています。日本・世界を代表する大手顧客への長年のサービス提供で培った豊富な経験を生かし、運用保守サービスの高度化や自動化を実現していきます。
さらに、新たな強みとして「ソリューションサービス」を強化していきます。技術・ソリューションの全社横断的な育成と立ち上げを目指し、2024年4月にソリューションデザイン部を新設しました。新しい技術領域の規模拡大と高付加価値化に向けて取り組んでいきます。
③ 企業価値向上に向けた取り組みの強化
当社では全社的な中長期経営目標を策定し、その中で企業価値向上のストーリーをQCSV(※1)として掲げています。2030年度に企業価値250億円超を達成すべく、その実現に向けて新規ビジネスの創出やIT人材の育成、重点領域への投資等を含む収益性の向上に取り組んでいきます。
当社は創業以来、株主様、お客様、社員、パートナー様、社会等、全てのステークホルダーに対して常に誠実堅実であることを経営方針としています。今後もCGCとCSV経営を重視し、透明性の高い経営を継続し、ITによる社会課題の解決、さらに一層の企業価値の向上と持続的成長のために邁進していきます。
※1.QCSV:Quest Creating Shared Value
文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1) サステナビリティ経営
当社グループは、経営理念体系に基づいた事業活動を通じて、お客様とともに価値を共創し、企業価値の向上と持続可能な社会の発展に貢献し続けます。
① ガバナンス
当社グループでは、取締役会がリスクや機会を含むサステナビリティに関する監督の責任を持ち、そのもとで社長執行役員を責任者とする経営会議が業務執行の責任を担います。
また、サステナビリティに係る取り組みに対しては担当役員を設置し、経営会議の中に設置するサステナビリティ委員会の中で議論を実施しています。議論内容については取締役会で定期的に報告、確認又は議論を行っています。
サステナビリティ委員会におけるこれまでの主な活動内容は以下のとおりです。
・経営におけるサステナビリティの位置づけの整理
・サステナビリティ基本方針の制定
・ステークホルダーに向けたサステナビリティ情報の開示充実化に向けた議論
・当社ウェブサイトへのサステナビリティページ開設
・マテリアリティの特定
・非財務指標及び目標の設定
・クエストグループ人権方針の制定
・ビジネスパートナー基本方針の制定
サステナビリティに係る各種施策の実行においては、中長期経営計画であるQuest Vision2030及びマテリアリティに基づき、それぞれの主管となる組織が推進し、各種計画の進捗について定期的な確認を実施しています。
サステナビリティを巡る課題への対応は持続的な成長の実現に向けた重要な経営課題であると認識し、取締役会はマテリアリティに基づく取り組みが適切に行われるかの助言及び監督を担っています。
② 戦略
(マテリアリティ)
当社グループは、ステークホルダーの視点・長期的な視点に立ったサステナブルな経営を推進していくために、2024年度にマテリアリティ(重要課題)を設定しました。
マテリアリティに基づく取り組みを進め、持続可能な社会への貢献と持続的な成長を実現していきます。

(人) 多様な人財が学び、活躍し、成長できる働きがいあふれる職場の醸成
(技術と社会還元) 社会課題を解決する、信頼されるITサービスの「探究」と新たな提供価値の「探求」
(ガバナンス) 誠実・堅実で透明性の高いグループ経営の実践
(マテリアリティの特定プロセス)
Step1. 国際的な枠組みやガイドライン、ステークホルダーからの関心や期待を踏まえた社会課題と当社が取り組むべきテーマの洗い出し
Step2. リストアップした社会課題に対して「社会(ステークホルダー)に対する重要度」と「自社にとっての重要度」の側面からマトリクス上で評価を実施
Step3. マトリクスで評価した内容をもとに、特に重要度の高い内容をマテリアリティとして定義
Step4. 社外取締役を含む取締役会においてマテリアリティに対する意見を求め、内容の妥当性確認を実施
(マテリアリティに基づく取り組み例)
・従業員の健康促進、増進(労働安全衛生を含む)
・高いスキルを持ったシニア人材の活躍(高度な課題解決、ノウハウと経験の継承)
・パートナー企業との関係強化(責任ある調達)
・情報セキュリティ及び個人情報保護管理強化
・リスクマネジメントの実践
・法令遵守、コンプライアンス徹底と人権の尊重(差別や不正行為、ハラスメントのない職場も含む)
(事業を通じた社会課題解決)
当社グループは、公共・社会分野(エネルギー等)、移動・物流分野(鉄道等)、ヘルスケア・メディカル分野の顧客を「社会課題解決領域」として定義しています。
これらの「社会課題解決領域」は、高まる電力需要や物流問題、健康寿命の延伸などの社会背景において、ますますIT化・デジタル化が求められる成長産業です。当社グループは、IT化・デジタル化のニーズを的確に捉えることで持続的な成長を実現する機会を得るとともに、お客様の業務やITインフラを支えることで間接的に社会に貢献していきます。
「社会課題解決領域」のお客様に限らず、全ての産業分野のお客様が目指す「生産性の向上」「省力化」「多様な働き方への対応」「セキュリティの強化」にITの力で貢献することで、現代の様々な課題をお客様と共に解決してまいります。
③ リスク管理
サステナビリティ関連のリスクは、情報セキュリティリスク、人材確保に関するリスク、人権に関するリスクに分類し、これらに対応する管理体制を構築しています。それぞれの管理体制には部門長及び執行役員クラスが参加し、中心的な役割を担い、特にリスクが高いと思われるものに関してはその内容に応じて、取締役会、経営会議、部門長連絡会等の会議体においても報告・議論を実施しています。
また、事業環境の変化に伴うビジネスリスクをはじめ、当社の提供するサービス品質に関わるリスク、内部統制・コンプライアンスリスク、災害・不祥事ほか社会リスク等に対するリスク管理については、
④ 指標と目標
マテリアリティに関する指標と目標は下記のとおり定義しています。
サステナビリティに関する指標と目標については、中期的な観点でモニタリングを推進していく観点から、目標設定年度である2026年度、2030年度に対する実績の確定後、記載していきます。
なお、各指標と目標の設定理由及び当事業年度の進捗については後述のとおりです。また、特に記載がない場合は、提出会社における目標と実績を記載しています。

(各指標と目標の設定理由及び当事業年度の進捗)
■従業員エンゲージメントスコア(改善率)
当社では、経営の健康状態を測定する1つの尺度として、従業員エンゲージメントの定点観測を行っています。従業員エンゲージメントの向上は持続的な経営の実現において重要であることから、マテリアリティに関する指標として定義しています。目標設定としては、「対前年での改善と適正レベルの維持」としており、絶対値での目標設定はしていません。この理由としては、具体的な改善数値目標を置くことで従業員からの恣意的な回答を助長してしまうおそれがあること、及び目指す状態として「毎年少しずつでも良くなること」を意識している点にあります。2024年度の従業員エンゲージメントスコアの結果は前年度と同水準となりました。
■女性管理職比率
当社では、働きがいにあふれる職場の実現を中長期的な目標として掲げています。具体的には、性別や年齢の区別なく多様な人財が活躍しやすい機会と場を提供し、能力の発揮や成長、自己実現ができる職場環境の維持・発展、社内風土の醸成を目指しています。多様な人財が活躍する状態を測る尺度の1つとして「女性管理職比率」を指標として設定し、従業員の性別構成や採用状況に応じた目標値を設定しています。2024年度の女性管理職比率は10.9%となり、前事業年度から4ポイント上昇しました。
■サービスに対する社外からの評価
当社では、「あなたに信頼されるITサービス」のリーディングカンパニーになることを経営目標として掲げています。2023年度には、サービスエクセレンス成熟度評価において情報通信業で初めて最高評価を獲得しました。2026年度、2030年度の目標設定としては、「信頼されるITサービスの探究」としています。当事業年度以降においても、お客様の戦略パートナーとして選出されるなど、より強固な信頼関係が構築できています。今後も当社らしい「おもてなしのあるITサービス」の追求と提供を通して、お客様とともに社会課題の解決に貢献していきます。
■技術の深耕と探索
当社の社名であるクエストは「探検」「冒険」を意味するQuestに由来します。2023年度には、新しい事業領域として、製造業顧客向けの設計・製造プロセスを支える「エンジニアDX」をM&Aにより獲得しました。誠実な探究心を糧に、顧客ニーズに遅滞なく応えるサービスメニューのラインナップ拡充や体制の強化を進めるとともに、貪欲で旺盛な技術への好奇心と挑戦心を胸に、顧客の期待を超えるサービス・ソリューションをこれからも提供していきます。
■コーポレートガバナンス
コーポレートガバナンスについては、持続的な成長を実現するうえで重要な項目の1つであると考えています。
当社では、コーポレート・ガバナンスコード各原則に対しての取り組みを毎年評価し、当社ウェブサイトにおいて公表を行っています。また、毎年取締役会の実効性評価を実施することでガバナンスの向上を図っています。これらの取り組みを今後も継続しながら、ガバナンスの強化と実効性の向上を実現していきます。
■社外取締役の比率
当社の2023年度、2024年度における社外取締役の比率はそれぞれ36%、40%となっています。
社外取締役の比率については、コーポレートガバナンス・コードにおいて、プライム市場に上場する企業に求められる水準である3分の1以上を念頭に置きながら、指名・報酬諮問委員会において事業とガバナンスを意識した適正な役員指名を議論・検討していきます。
■女性の経営幹部(事業部長以上)数
誠実・堅実で透明性の高いグループ経営を実践するとともに、不確実な時代のなかで持続的な成長を実現していくためには、多様な経験と深い見識を有する経営陣幹部の指名が重要であると考えています。
経営幹部の多様性を測る観点から女性の経営幹部数を指標として設定しています。目標としては、各設定年度における絶対目標ではなく「能力と多様性を考慮した計画的な経営幹部養成」としています。なお2025年4月時点における事業部長以上の女性経営幹部数は3名であります。
(2) 人権尊重について
当社グループは、人権の尊重をサステナビリティ経営の基盤の一つととらえ、人権尊重の取り組みを通じて社会的責任の遂行に努めるため、「国際人権章典」及び国際労働機関(ILO)の「労働における基本的権利に関する原則/ILO基本条約」を支持・尊重し、「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき「クエストグループ人権方針」を制定しています。この「クエストグループ人権方針」に沿って、事業とサプライチェーン全体で起こりうる人権への負の影響を特定し、その防止及び軽減を図るために、人権デューデリジェンスを推進していきます。
(3) 人的資本に対する考え方と取り組み
① 人材育成方針
当社グループでは、Quest Vision2030 で掲げる「働きがいあふれる職場」づくりに向けて、「成長意欲・チャレンジ精神を促す人材育成の仕組みづくり」「多様な人材が活躍する働きがいのある職場環境・風土づくり」「成果に応じた納得性の高い人事処遇制度の改善・ブラッシュアップ」の3つの柱を軸に、高い成長意欲・チャレンジ精神と自律したキャリア意識を持ち、高度な専門性を有するプロフェッショナル人材を育成していきます。
各社の特性を活かして最適な取り組みを行っており、当社における取り組みは以下のとおりです。
働きがいのあふれる職場 自ら学び、称え、育み合う文化を醸成する
② 指標と目標
人的資本を含むサステナビリティに関する指標と目標については、(1) サステナビリティ経営 ④指標と目標に記載のとおりです。
当社グループでは、最高の資産である「人材」に対する投資及び諸制度の充実化を図り、各種取り組みを加速しています。
各社の特性を活かして最適な取り組みを行っており、指標に関する実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しています。
(多様な従業員の働き方と活躍の支援に関わる指標)
(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであり、公表が義務化されている常時雇用労働者101人以上の会社である提出会社について掲載しています。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年労働省令第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものであり、公表が義務化されている常時雇用労働者301人以上の会社である提出会社について掲載しています。
(4) 環境・社会貢献に関する取り組み
当社では以下の取り組みを実施しています。
■環境に関する取り組み
・エネルギー効率の高いオフィスへの移転
・デジタル化推進によるペーパーレスの推進
・環境に配慮した備品の購入、順次置き換え
・環境配慮型の取り組みを検討する社内有志プロジェクトの活動実施
■社会貢献に関する取り組み
・東海地区を中心とした情報通信セミナーの運営協力
・大学生の研究活動・調査、ゼミ活動への協力
・グループ社員向けファミリーデーの開催とイベント内での次世代教育
・プロスポーツチームへの協賛を通じた地域貢献、スポーツ振興(エヌ・ケイ)
現時点で、当社の事業展開上その他に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しています。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものです。
当社グループでは、事業活動の根幹をなすシステム開発事業、インフラサービス事業ともに多くの先端技術に深く関連しており、事業のさらなる発展のためには豊富な専門知識と高度なスキルを有する人材を確保することが重要になっています。人材の獲得競争が激化するなか、技術者の獲得、定着、育成及びビジネスパートナーとの連携などの取り組みを強化していますが、人材確保が計画通りに進まない場合には、事業の発展拡大に制約を受け、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業環境の変化に伴うリスク
国内外の経済状況や地政学的リスク、原材料価格の高騰や製品の需給バランスの変動などによって顧客企業がIT投資を抑制することにより、当社の事業活動や業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは、事業環境の変化を注視し、8つの顧客セグメントから需要の高い産業にリソースをシフトすることで収益の安定確保に努めています。
当社では品質管理強化及び収益性向上への取り組みとして、プロジェクトの内容や規模から高リスクとみなされたプロジェクトについては、全社会議により受注可否の判断を行ったうえで、進捗状況を個々にモニタリングしています。また「ビジネスイノベーション推進部」を設置し、プロジェクト品質管理と不採算案件防止に向けた活動を行っています。しかしながら、案件の難易度やバグの発生等による想定外のコスト発生、低収益又は不採算プロジェクト発生等により、当社の業績に影響を与える可能性があります。
近年、世間ではサイバー攻撃やランサムウェア、委託先の管理不備、情報機器の紛失等による情報流出といった事件が起きており、より慎重かつ厳格な管理体制の構築及び運営が求められます。そのため当社では情報セキュリティ教育やネットワークの監視、委託先への調査、毎月委員会形式でセキュリティ活動の状況を報告する「統合セキュリティ委員会」により情報保護強化に向けた取り組みを行っています。しかしながらこれらの対策を講じていても機密情報の漏洩や紛失、喪失等が生じた場合には、社会的信用やブランドイメージの低下や取引停止、損害賠償責任が生じることにより、当社の事業活動や業績に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)における我が国経済は、インバウンド需要の増加や賃上げによる雇用・所得環境の改善を背景に、緩やかな回復基調で推移しました。一方で、物価の上昇や米国の政策動向、中東情勢等の影響により、先行きの不透明な状況が続いています。
当社グループが属する情報サービス産業においては、人手不足を背景とした業務効率化ニーズに加え、情報セキュリティ対策、既存システムの刷新及びクラウド化、AI導入支援等の需要が高まっており、企業のIT投資意欲は引き続き高い状況です。
このような事業環境のもと、当社は中長期ビジョン「Quest Vision2030」(※1)の第2期である「2024-2026年度・中期経営計画」で掲げた以下の基本方針に基づき、基盤の強化と着実な成長を念頭に活動を展開しました。
■事業ポートフォリオの変革
・当社の強みである顧客密着型の既存事業(コアサービス)の深耕と、ソリューションサービスの拡大を通し収益性向上を目指します。
・当事業年度においては、組織体制を抜本的に改革し、顧客産業の需給動向や今後の拡大可能性を考慮し、顧客を「重点強化領域」「安定成長領域」「社会課題解決領域」の3つの領域(※2)に区分・定義しました。これに基づき、日常のビジネスにおける適正なリソース配分と強化すべき技術領域に向けた計画的なリソースシフト等を進めています。
■人と技術への未来投資
・人的資本投資を拡充するとともに、「ソリューションサービス」の強化に向けた新たな技術獲得への投資を引き続き実施します。
・当事業年度においては、ソリューションサービスに関するビジネスデザインや人財・技術開発を強化しました。さらに、持株会制度の改善と加入プロモーションを通じた従業員への還元施策を実施しました。
■事業体質と経営基盤の強化
・持続的成長と企業価値向上の実現を支える強固な事業基盤を構築します。
・当事業年度においては、資本コストと株価を意識した経営計画に基づくキャッシュアロケーションやリソース強化に向けたM&Aの実行を推進しました。(2025年4月15日に株式会社セプトを完全子会社化)
上記の結果、当連結会計年度における当社グループの経営成績は以下のとおりとなりました。
売上高は、前期比5.0%増の149億36百万円となりました。これは重点強化領域の主要顧客である半導体分野顧客(イメージセンサ、メモリ)、社会課題解決領域の顧客である移動・物流分野顧客及び公共・社会分野顧客における新規案件受注の拡大等によるものです。
営業利益は10億55百万円(前期比5.8%増)、経常利益は11億12百万円(前期比4.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は7億67百万円(同10.3%増)となりました。当社は従業員の処遇向上や教育を含む人的資本投資の拡充に引き続き取り組んでおり、これらの成長投資に加えて物価上昇によりコストが増加しましたが、増収に伴う収益改善により吸収しました。また、親会社株主に帰属する当期純利益については、「賃上げ促進税制(による税額控除)」を適用したことにより対前期比で大きく増加しています。
連結会計の適用に伴い、一定期間において顧客関連資産及びのれんの償却費用が計上されることとなります。比較可能性を担保するための指標として、当連結会計年度におけるEBITDA(※3)は12億73百万円、EBITDAマージン(※4)は8.5%となりました。参考値として、前連結会計年度のEBITDAは12億28百万円、EBITDAマージンは8.6%となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
システム開発事業については、重点強化領域の半導体分野顧客、安定成長領域のエンタテインメント分野顧客、社会課題解決領域の移動・物流分野顧客における開発案件の受注が増加したことにより、売上高は92億52百万円(前期比7.0%増)、セグメント利益は16億50百万円(同14.0%増)となりました。
インフラサービス事業については、重点強化領域の半導体分野顧客及び製造分野顧客、社会課題解決領域の公共・社会分野顧客に対するサービス提供が増加したことにより、売上高は56億34百万円(同1.2%増)、セグメント利益は8億73百万円(同5.6%減)となりました。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.セグメント利益については、全社費用等の配分前で記載しています。
3.2024年4月に組織体制の大幅な再編を行い、協力会社管理をはじめとした事業基盤を強化しました。この結果、増加した間接費の配賦によりセグメント利益の対前期比はセグメント間で大きな変動があります。
※1.Quest Vision2030:当社のウェブページをご参照ください。
https://www.quest.co.jp/corporate/ir-info/quest-vision-2030.html
2.重点強化領域:半導体分野、製造分野
安定成長領域:金融分野、情報通信分野、エンタテインメント分野
社会課題解決領域:公共・社会分野、移動・物流分野、ヘルスケア・メディカル分野
3.EBITDA:税金等調整前当期純利益+支払利息+減価償却費+顧客関連資産償却費+のれん償却費
4.EBITDAマージン:EBITDA÷売上高
当社は、プロジェクトごとに作業完了した業務につき、顧客の検収書あるいは当社の完了報告書に基づき売上計上しています。このため、販売実績のほとんどが生産実績であることから、生産実績の記載を省略しています。
当連結会計年度の受注状況をセグメント別に示すと、次のとおりです。
(注) 1.システム開発セグメント以外のセグメントについては、受注に該当する取引形態に相当しないため、記載していません。
2.受注残高は契約金額を記載しています。
当連結会計年度の販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、商品販売事業を含んでいます。
④ 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
(3) 財政状態
<資産>
当連結会計年度末における資産の残高は98億18百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億58百万円増加しました。これは主に現金及び預金が4億16百万円、退職給付に係る資産が2億63百万円増加したこと等によるものです。
<負債>
当連結会計年度末における負債の残高は25億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億7百万円減少しました。これは主に買掛金が81百万円増加したものの、役員退職慰労引当金が55百万円、未払法人税等が42百万円減少したこと等によるものです。
<純資産>
当連結会計年度末における純資産の残高は72億53百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億65百万円増加しました。これは主に利益剰余金が5億5百万円増加したこと、その他有価証券評価差額金が1億27百万円減少したこと等によるものです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は35億31百万円となり、前連結会計年度末と比較し、4億16百万円増加しました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況と要因は以下のとおりです。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
営業活動の結果、5億90百万円の収入となりました。これは主に税金等調整前当期純利益11億12百万円、法人税等の支払額3億32百万円、売上債権及び契約資産の増加による資金の減少2億35百万円によるものです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動の結果、91百万円の収入となりました。これは主に投資有価証券の償還による収入79百万円、投資有価証券の払戻による収入11百万円、投資事業組合からの分配による収入10百万円等によるものです。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動の結果、2億65百万円の支出となりました。これは主に配当金の支払額2億62百万円によるものです。
当社グループは財務の安全性を重視するとともに、銀行借入に依存しない経営を継続しています。資金の運用は短期的な預金等に限定するとともに、運転資金については内部資金により調達することを原則としています。当社グループの資本の財源及び資金の流動性について当社グループの運転資金の需要は、人件費や外注費等の営業費用によるものがその多くを占めていますが、これらの運転資金の需要は、主に営業活動によるキャッシュ・フロー等によりまかなっています。また、設備投資資金等についても、現金及び預金を使用することとしており、安全性を重視しつつも効率的な資金運用を目指しています。当連結会計年度末における資金は、資産合計の36.0%を占めており、また流動比率は331.0%であることから、十分な流動性を確保しています。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しています。
2026年3月期においては、賃金の上昇を背景に緩やかな景気回復が期待される一方で、物価上昇や人手不足の継続に加え、米国の関税等の政策の影響による世界的な景気後退懸念から、先行きは不透明な状況が続くと予想されます。
また、当社グループの属する情報サービス業界においては、生成AIやIoT等のデジタル技術、ビッグデータを活用したDX推進の動きが加速しており、IT関連投資は引き続き堅調に推移すると予想されます。一方で、IT人材の不足が深刻さを増しており、高度なスキルを有する人材の確保・育成に伴う人件費や採用費等の増加が収益を圧迫する懸念があります。
当社グループは、中長期ビジョン「Quest Vision2030」の第2期・中期経営計画(2024-26年度)において、「高収益体質への変革」、「成長に向けた未来投資の実行」を軸として活動を展開しています。その一環として、2026年3月期第1四半期より、株式会社セプトを完全子会社として当社グループに迎えます。Quest Vision2030実現に向けてエンジニアリソースを強化し、より高度な顧客課題の解決と安定したサービス供給を実現していきます。2026年3月期の連結業績見通しについては、売上高168億60百万円、営業利益11億80百万円、経常利益12億40百万円、親会社株主に帰属する当期純利益8億45百万円を予想しています。
(注) 業績予想につきましては、本資料作成日時点で入手可能な情報に基づいて当社で判断したものであり、実際の業績がこれらの予想数値と異なる場合があります。
当社は2025年3月26日開催の取締役会において、株式会社セプトの全株式を取得し、子会社化することについて決議しました。これに基づき、2025年4月15日付けで全株式を取得し、同社を連結子会社としました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。