第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

当連結会計年度において、当社グループは、平成26年11月に施行された、企業等による細胞加工の受託を認めた「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」と、再生・細胞医療を実施するための再生医療等製品という新たなカテゴリーが創設された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」による規制環境の変化を捉え、新たな事業展開による事業拡大に向けた取り組みを強化してまいりました。それにより、これまでの主力事業であった医療機関に対する免疫細胞療法総合支援サービスに加え、企業、大学、研究機関等からの臨床用、治験用の細胞加工受託を事業化するため、また、当社グループが行っている研究開発の成果等をもとに細胞医療製品の製造・販売承認の取得を目指して、東京都品川区に新たに建設した品川細胞培養加工施設(品川CPF)の本格稼動に向けた構築作業を計画的に進めており、平成27年5月には同細胞培養加工施設の第1期工事が完成したことにより、当該施設について特定細胞加工物製造許可を取得いたしました。

その他の事業の進展としては、平成27年6月には、当社がレギュラトリーT細胞を標的とした免疫抑制解除法の研究により発見した新規モノクローナル抗体(抗BTN3(CD277)抗体)について、グローバル企業である米国ベクトン・ディッキンソン・アンドカンパニーとライセンス契約を締結いたしました。平成27年9月には、当社が出資し、ヨーロッパ諸国での細胞医療製品の開発・販売を目的に設立した英国TC BioPharm Ltd.が、当社が導出した細胞加工技術・ノウハウや蓄積した臨床実績をもとに英国医薬品庁より細胞医療製品「ImmuniCell®」の治験開始について承認を得ました。また、同月には国立大学法人東京大学と、iPS細胞の技術を応用し若返らせたCTLを用いた免疫細胞に係る共同開発について、基本合意書を締結いたしました。

売上高については、品川細胞培養加工施設(品川CPF)による細胞加工受託に向けた受注活動を積極的に進めておりますが、まだ売上を計上するまでには至っておらず、一方、既存契約医療機関に対する免疫細胞療法総合支援サービス売上については、前連結会計年度に比べて減少したこと等により、当連結会計年度の売上高は1,674,379千円(前期比169,615千円減、9.2%減)となりました。研究開発活動については、細胞医療製品の製造・販売承認の取得に向けて、米国Argos Therapeutics, Inc.が進める転移性腎細胞がんを対象とする細胞医療製品「AGS-003」の治験の進捗に伴うライセンス料や株式会社IDファーマ(旧社名:ディナベック株式会社)と締結した「樹状細胞を増幅する特許技術」の実施許諾契約に基づく技術評価、東京大学、大阪大学及び九州大学等と行っている共同研究に係る研究開発費が発生しております。一方で、研究開発投資の再評価を行い、研究開発費の適正化を図ったこと等により、当連結会計年度の研究開発費は645,978千円(前期比13,355千円減、2.0%減)となりました。販売活動については、新たな事業展開に向けた取引先の開拓等の取り組み強化により、当連結会計年度の販売費は346,225千円(前期比50,008千円増、16.9%増)となりました。また、新たな事業環境における細胞加工業及び細胞医療製品事業の推進・展開を図るための戦略的投資等により、当連結会計年度の一般管理費は1,422,678千円(前期比145,601千円増、11.4%増)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の販売費及び一般管理費は2,414,881千円(前期比182,255千円増、8.2%増)となり、営業損失は1,741,851千円(前期は営業損失1,407,022千円)となりました。

その他、投資事業組合運用益42,272千円、受取利息48,169千円、外貨建ての長期貸付金の円換算等による為替差益96,686千円等の営業外損益により、当連結会計年度の経常損失は1,571,129千円(前期は経常損失1,338,633千円)となりました。また、NCメディカルリサーチ株式会社との提携検討の中止に伴う和解金50,000千円、医療機関に対する賃貸用設備や情報システム機器等の固定資産除却損30,347千円等を特別損失に計上したこと、資産除去債務の増加による法人税等調整額36,510千円等により、当期純損失は1,712,320千円(前期は当期純損失1,580,722千円)となりました。

報告セグメント別の業績の概況は、以下のとおりであります。

①細胞加工業

細胞加工業については、企業、大学、研究機関等からの臨床用、治験用の細胞加工受託を事業化するため、品川細胞培養加工施設(品川CPF)の第1期工事の完成により、細胞加工受託に向けた受注活動を積極的に進めておりますが、まだ売上を計上するまでには至っていないことから、医療機関に対する免疫細胞療法総合支援サービス売上が収益の柱となっております。当連結会計年度においては、既存契約医療機関に対する免疫細胞療法総合支援サービス売上が減少したこと等により、売上高は1,666,018千円(前期比174,973千円減、9.5%減)、品川細胞培養加工施設(品川CPF)の第1期工事の完成による減価償却費等の諸経費の増加等により、セグメント損失は388,202千円(前期はセグメント損失22,486千円)となりました。

②細胞医療製品事業

細胞医療製品事業については、米国Argos Therapeutics, Inc.から導入した「AGS-003」による細胞医療製品の開発が順調に推移していることに加えて、米国ベクトン・ディッキンソン・アンドカンパニーとの当社が保有するモノクローナル抗体のライセンス契約、英国TC BioPharm Ltd.が開発を進めている細胞医療製品の治験の開始等、海外での事業が着実に進展しております。日本国内においては、当社グループで行っている研究開発の成果とともに、国立大学法人東京大学とiPS細胞を用いた免疫細胞治療技術の共同開発やこれまで継続的に行ってきた大学病院等との共同研究を通じて、細胞医療製品の可能性を探求しております。また、国内外で行われている細胞医療製品の開発動向にも注目し、すでに着手している上記「AGS-003」の日本での商業化への取り組みに加えて、それらのパイプライン取得を視野に入れた活動も行っております。当連結会計年度においては、先進医療の細胞培養加工売上の増加により、売上高は8,361千円(前期比5,357千円増、178.4%増)、研究開発投資の再評価を行い、研究開発費の適正化を図ったこと等により、セグメント損失は656,262千円(前期はセグメント損失722,825千円)となりました。

 

(2)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて2,099,076千円減少し、当連結会計年度末には3,811,801千円となりました。

 

 営業活動に使用した資金は1,567,375千円(前期は1,020,104千円の使用)となりました。

 投資活動に使用した資金は856,760千円(前期は1,155,834千円の使用)となりました。

 財務活動によって獲得した資金は325,059千円(前期は405,825千円の獲得)となりました。

 なお、キャッシュ・フローの詳細は、「7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)当連結会計年度の財政状態の分析 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

2【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

該当事項はありません。

 

(2) 受注状況

該当事項はありません。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 平成26年10月1日

至 平成27年9月30日)

前年同期比(%)

細胞加工業(千円)

1,666,018

90.5

細胞医療製品事業(千円)

8,361

278.4

合計(千円)

1,674,379

90.8

 (注)1.上記の金額には消費税等は含まれておりません。

2.最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 平成25年10月1日

至 平成26年9月30日)

当連結会計年度

(自 平成26年10月1日

至 平成27年9月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

医療法人社団 滉志会

1,762,885

95.6

1,574,548

94.0

 

3【対処すべき課題】

 当社グループは、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」及び「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」による規制環境の変化を捉え、これまで事業の中核をなしていた免疫細胞療法総合支援サービスに加えて、細胞加工受託を事業化することにより、早期の黒字化を達成するとともに、将来的には細胞医療製品の開発を実現することで、飛躍的な成長を目指してまいります。

 これを踏まえ当社グループが対処すべき特に重要な課題は、以下のとおりであります。

① 細胞加工業の推進

 当社グループがこれまで免疫細胞療法総合支援サービスにより培った免疫細胞の加工技術をベースに、臨床用、治験用の細胞加工受託を事業化するとともに、再生・細胞医療分野への進出を図るべく新たな細胞加工技術の開発により、幅広い企業、大学、医療機関、研究機関等からの受注を獲得すること、また、これから利用増加が見込まれる細胞加工施設の運営受託を含めたそれらの関連サービスを幅広く展開することにより、売上を拡大させてまいります。

 

② 細胞医療製品の開発

 当社グループがこれまで培ってきた免疫細胞治療に係る研究成果に加えて、国内外の有望な技術・物質等を探索することによりパイプラインの拡充を図り、当社グループが独自に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」による承認申請を行い、細胞医療製品の開発、製造、販売を実現することにより、売上の拡大を図ってまいります。

 

4【事業等のリスク】

 以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因と考えられる主な事項を記載しております。また、当社グループは必ずしも事業上のリスクとは考えていない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。

 なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応等に努める方針でありますが、投資判断は、以下の記載事項および本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があります。以下の記載は、当社グループに関連するリスクをすべて網羅するものではないことにご留意ください。

 なお、文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

①価格に係るリスク

 免疫細胞治療は先進的な医療技術であるため、一般的な治療として行われている外科療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤治療等)などのように、現時点では保険診療の対象とはなっておらず、当社契約医療機関における免疫細胞治療1クールの治療費総額は、医師が適切と判断する治療の種類等にもよりますが、およそ160万円であります。当社は、免疫細胞療法総合支援サービスの対価として細胞加工の種類と回数に基づく変動課金制によるサービス料を頂いておりますが、その金額は当該契約医療機関の患者が負担する治療費に制約されます。また、免疫細胞治療は先端医療であるがゆえに、医師の治療方法に対する考え方に相違があること、関連技術が急速な進歩過程にあること等の理由により、標準的な価格水準が定まっていないことから、今後の免疫細胞治療の普及過程における治療費水準の変化等に伴い、当社サービス価格の見直しがなされた場合等には、当社グループ業績に影響を与える可能性があります。さらに平成26年11月以降、免疫細胞治療が「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」のもとで医療機関により適切に提供されることになりますが、これによりこれまでの免疫細胞療法総合支援サービスの対価そのものの形態が変更される可能性があります。今後、企業が細胞加工を受託する細胞加工業という新たなビジネスモデルの構築の過程において、どのような価格体系が形成されるかは今後の動向次第であることから、まだ免疫細胞治療に係る価格については不確定要素があり、これらを早急に解決することも当社グループの経営課題のひとつと認識しております。

②競合及び競合他社に係るリスク

(1)再生・細胞医療に係る分野への企業参入状況

 近年、ベンチャー企業数社が、当社グループのサービスと類似したモデルで免疫細胞治療を含む再生・細胞医療に係る分野に参入してきております。こうした動きは、新たな技術革新の進展を促し、市場が拡大していく反面、玉石混淆の状況を作り出す可能性もあり、結果として患者のデメリットになることも考えられます。業界の発展とともに参入する企業が増え、他企業がトラブルを起こした場合、業界全体のイメージ低下等により、当社グループも間接的に悪影響を受ける可能性があります。また、平成26年11月の「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の施行は、これまで明確な法的枠組みが整わなかったために参入を控えていた、製薬企業などが当業界に参入する機会となり得ます。

(2)バイオテクノロジーの進歩に伴う競合

 当社グループの属するバイオテクノロジー業界は急速に変化・拡大しておりますが、特にがん治療分野では新しい治療薬の研究開発が進んでおります。大手製薬企業が、がんをターゲットとして開発を進める免疫チェックポイント阻害薬(がんの免疫逃避機構を阻止する薬)、分子標的薬(病気に関係がある細胞だけに働きかける機能を持った新しいタイプの治療薬)、血管新生阻害剤(がん細胞に栄養や酸素を供給する血管の新生を抑える薬)等は免疫細胞治療との併用効果が期待されておりますが、仮に免疫細胞治療との併用とは関連なく、治療効果の高い医薬品が開発された場合には、当社グループ業績に影響を与える可能性があります。

 また、当社グループにおいては、積極的な研究開発投資により、常に最先端の技術への対応、業界に先駆けた新技術の開発等に注力しておりますが、当該技術革新への対応が遅れた場合、あるいは、現在の主力事業の対象となっている免疫細胞治療に代わる画期的な治療法が開発された場合等には、当社グループ業績に影響を与える可能性があります。

③品質管理体制に係るリスク

 現在、当社グループが事業を推進している再生・細胞医療分野においては、急速に進歩した最先端技術に基づいた治療が行われるため、安全面・品質管理面でのスタンダードが十分に確立されていない現状でしたが、平成25年11月27日に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」が公布され、平成26年11月25日に施行されております。

 これまで、当社は、平成16年3月19日、細胞医療支援事業としては世界に先駆け、国際標準化機構が制定した品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001の認証を取得し、当社の細胞医療支援事業がグローバル・スタンダードに照らして公正に運営されていることを、独立した第三者機関による審査を受けることで裏付けてまいりました。今後は新たに施行された上記の2つの法律に対し、このような知見を活用し、ISO9001の品質マネジメントに加え、これまで培った経験・知見、再生・細胞医療分野の事業ノウハウを用いて効率的に適合させ、より高度で安全な品質管理体制の構築を継続して目指してまいります。現在、当社では以下のような品質管理体制を整備・運用しております。

(1)細胞培養加工施設の運営管理

 現在、当社が契約し、医療機関内で細胞加工を行っている施設は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に適合する設備構造を有しており、これまでの治療用細胞加工ノウハウを融合させた運営準備を遅延なく進め、同法で移行期間として設定された平成27年11月24日以降も従来通り事業を継続しておりますまた、当社の細胞培養加工施設として第1期工事が完成した品川細胞培養加工施設(品川CPF)では平成27年5月に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」における特定細胞加工物製造事業者許可を取得し、医療機関からの細胞加工受託の準備が整っております。

(2)細胞加工技術者の育成

 「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」の施行により、企業が医療機関から治療用細胞の加工を受託することが可能となります。当社にとってこれまでの事業経験をアドバンテージとして、十分な安全管理体制を確保できない医療機関や細胞培養加工施設を有しながらも効率的な運営ができないなどの問題を抱える医療機関から治療用細胞の加工を受託することが可能となり、営業収益を拡大する機会となります。しかしながら、治療用細胞を適正かつ安全に加工するためには、十分な教育をうけた細胞加工技術者の育成が必要であり、高い技能を有した細胞加工技術者は品質向上につながります。当社ではこれまでの事業経験に裏付けされた治療用細胞の加工を適正かつ安全に行うための細胞加工技術者の育成システムを有しており、継続的に細胞加工技術者を育成しております。

(3)原材料管理

 細胞加工には常に安全な原材料を用いることが条件となるため、培地(細胞培養液)や試薬については、製造先との厳密な購買契約を締結し、培地や試薬の不良品の混入、劣化を未然に防ぐとともに、仕入、保存管理の徹底、検査体制の充実等、常に品質管理体制の強化を図っております。

 当社グループは、今後とも常に品質管理体制の強化に努めてまいりますが、培地や試薬の不良品の混入、劣化、培養過程における人為的な過失、地震や火災等の災害等が発生した場合には、重大な事故に繋がる恐れもあり、当社グループ業績に影響を与える可能性があります。また、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」が平成26年11月25日に施行され、同法下で運営されている細胞培養加工施設の前例はなく、予期し得ない事象が生じた場合には、事業推進に影響を与える可能性があります。

④法的規制の影響

 当社グループが行う細胞医療支援事業は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の遵守が求められます。

(1)「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」との関連

 「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」は、再生医療等に用いられる再生医療等技術の安全性の確保及び生命倫理への配慮や医療機関が再生医療技術を用いた治療を行う場合に講じるべき措置、治療に用いる細胞組織の加工を医療機関以外が実施する場合の細胞加工物の製造の許可等の制度を定めた法律です。今後、医療機関が再生医療を行おうとする場合には、本法律に基づき、再生医療等提供計画の作成、認定再生医療等委員会における審議、厚生労働省への計画書等の提出が義務付けられた事により、粗悪な再生医療が排されると同時、再生医療を行おうとする医療機関の労力が大きくなります。また、治療に用いる細胞加工を行う場合には、細胞培養加工施設ごとに「特定細胞加工物製造業許可」を取得する必要があります(但し、医療機関が細胞加工を行う場合には届出のみ)。

(2)「医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」との関連

 「医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品及び医療機器の研究開発の促進のために必要な措置、医薬品等の有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うことを目的とした法律です。本法律では、再生医療技術を用いた医療用の製品として、新たに再生医療等製品がカテゴリ化されており、当社が再生医療技術を用いた医療用の製品の開発を行う場合には、当法律に従うことになります。

 当社は現在の主たる事業である医療機関を対象とした細胞加工について、(1)に関する契約医療機関の法律対応を支援するとともに、当社が保有する細胞培養加工施設においても特定細胞加工物製造事業者許可を取得し、医療機関からの細胞加工を受託する準備を整えております。しかしながら、新たに定められた法律であるため、関係官庁の動向や当社が想定し得ない事象が生じた場合には、その対応のためのコストが発生する可能性があります。また、これらの法律には罰則が規定されており、(1)に関しては当社グループ及び契約医療機関が、(2)に関しては当社グループ及び当社グループが技術導入・導出した企業等が予期せず当該罰則規定に抵触した場合には、罰則金の支払いが生じること等から社会的な信用を失う可能性があります。

⑤研究開発に内在する不確実性

 当社グループが事業を展開する分野は、急速に進歩を続ける最先端のバイオテクノロジーに立脚したものであるため、継続的な研究開発活動が将来的な事業拡大のための大変重要な役割を担っております。

 当社グループでは、研究開発を通して将来に渡る企業価値向上を図るべく、基盤研究から技術開発、臨床開発まで、総合的な研究開発を戦略的に遂行していくための体制を構築し、積極的な活動を行っております。

 これらに必要な研究開発費は、平成25年9月期518,580千円(連結総売上高に対する比率24.6%)、平成26年9月期659,333千円(連結総売上高に対する比率35.8%)、平成27年9月期645,978千円(連結総売上高に対する比率38.6%)となっており、将来に渡る企業価値向上を図るための先行投資と認識しております。

 しかしながら、研究開発テーマが事業化できなかった場合、又は事業化できた場合でも当初の想定通りに売上が確保できなかった場合等には、当社グループ業績に影響を与える可能性があります。

⑥知的財産権に係るリスク

(1)特許出願状況

 当社グループは、平成11年4月に分子免疫学研究所を開設して以来、バイオテクノロジー及びその周辺分野における最先端の研究開発及び技術開発に取り組んでおり、平成27年9月末までに、31件の特許を出願(うち海外出願10件)しております。その内、特許出願内訳は、技術に関するものが30件、ビジネスモデルに関するものが1件となっており、今後も、さらに知的財産権の獲得を進めていく方針であります。また、保有する知的財産権につきましては、自社利用のみにこだわることなく、積極的に他社へのライセンシング供与を検討し、当社グループ技術のデファクト・スタンダード化を促進してまいります。

 

 当社グループの出願特許状況は、以下の通りです。

 

出願件数

(国内)19件 (国際)2件(海外)10件 ※本件数は未公開出願も含みます。

登録件数

(国内)16件 (海外)米国4件、欧州6件、豪州2件、中国2件、韓国2件

登  録

ドナー等識別方法及び生体物質識別手段

日本

特許4031932号

医療支援システム

日本

特許4136350号

樹状細胞、該樹状細胞を含む医薬、該樹状細胞を用いた治療方法およびγδT細胞の培養方法
(Dendritic cell, drug containing the dendritic cell, therapeutic method using the dendritic cell and method of culturing gammadelta T cell)

日本

特許5156137号

米国

US8513010

欧州

EP1788078

豪州

AU2005260887

韓国

KR10-1217706

抗原提示細胞の活性化処理方法
(Method for activation treatment of antigen-presenting cell)

日本

特許5307944号

日本

特許5384827号

米国

US8609410

欧州

EP1930414

豪州

AU2006288348

中国

CN1438962

韓国

KR10-1419711

CTLとγδT細胞の同時誘導方法

(Method for simultaneous induction of CTL and γδT cell)

日本

特許5524056号

米国

US8962313

欧州

EP2311470

中国

CN1542956

食道癌の抗原およびその利用

日本

特許4557886号

癌抗原及びその利用
(Cancer antigens and utilization thereof)

日本

特許5112615号

日本

特許5291641号

欧州

EP1536006

培養容器、培養装置および細胞の培養方法

日本

特許4668568号

リンパ球増殖抑制因子の吸着剤及び処理方法

日本

特許4958554号

細胞培養評価システム、細胞培養評価方法および細胞培養評価プログラム

(Cell culture estimating system, method of cell culture estimation
and cell culture estimating program)

日本

特許4932703号

欧州

EP1862533

細胞培養装置

(Cell culture apparatus, cell culture method, cell culture program and cell culture system)

日本

特許5243038号

米国

US8383395

細胞培養用振盪装置及び細胞培養方法の振盪培養方法

(Shaker for cell culture and shaken culture system in cell culture method)

日本

特許5197013号

欧州

EP1944359

免疫増強機能を有する抗体

日本

特許5616782号

新規モノクローナル抗体とその用途

日本

特許5686600号

 

 上記のうち、「医療支援システム」は、免疫細胞療法総合支援サービスにおける「オーダーメイド医療管理システム」として実用化されております。また、「樹状細胞、該樹状細胞を含む医薬、該樹状細胞を用いた治療方法およびγδT細胞の培養方法」及び「抗原提示細胞の活性化処理方法」は、免疫細胞療法総合支援サービスにおける「樹状細胞ワクチン療法」に関連する技術として日本において実用化されており、当社の提供する技術を保護する重要な特許となります。本技術の海外特許権については、今後、海外へのライセンシング供与を検討してまいります。医療技術や細胞加工に密接に関わる重要な(周辺)技術については、積極的に知的財産権の出願を行い、当社グループの技術を適切に保護していく必要があります。

 ただし、これら先端医療技術に関する技術の中には、特許として知的財産権を獲得するよりも、ノウハウとして保有する方が事業戦略上優位であると考えられるものも少なからずあり、必ずしも全ての技術について特許としての権利化を目指す必要はないと考えております。当社グループの持つ技術・ノウハウについては、取引先あるいは共同研究先との秘密保持契約等で守ることにより、外部流出が厳しく管理されております。

 このように当社グループは、当社独自の技術あるいは研究成果、事業化に伴うビジネスモデルに関し、必要に応じて、また可能な範囲において特許権等知的財産権の出願を行い、権利の保護に努めております。

 また、他社からの当社グループ知的財産権の侵害及び他社知的財産権に対する侵害等に関しては、常時技術・特許調査を行い、権利の保護及び他社特許の侵害を回避するためのスキームを策定し、当社グループの技術やビジネスを適切に保護しております。

 しかしながら、このように常に様々な状況を想定して対応してはいても、出願した案件が権利化できないという可能性もあります。また、権利化できた場合でも、実際にその権利を行使できない可能性や、第三者の権利に抵触している可能性もあります。

(2)医療行為及び関連技術に係る特許

 現在、当社グループ契約医療機関で既に実施されている医療行為については公知の事実となっているため、現在の主要事業に関し上記係争リスクはないものと考えております。現在、特許庁では、再生医療等の発展に伴い、再生医療等に関連する技術に対応した発明に関する審査基準が運用されております。これにより保護される範囲が拡大され、当社グループが開発する技術のうち細胞を用いた医療関連技術に関しても特許化できる可能性が高まりました。また、政府の知的財産戦略本部では、社会の変化に対応した知的財産の保護についての検討が継続して行われております。当社グループとしても今後の動向を注視し、その時々の法規に沿った形での権利保護に努めてまいります。

⑦政府の推進政策等の変化

 現在、我が国においては、平成26年11月に施行された「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」及び「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」により、再生医療分野に関する規制制度環境が整備されておりますが、それ以外にも再生・細胞医療、バイオテクノロジー及び先端医療に係る各種の推進政策が実施されております。これらの推進政策は、これまでの主力事業である免疫細胞療法総合支援サービスだけではなく、当社グループの新たなビジネスモデルである細胞加工業及び細胞医療製品事業等、今後当社グループが事業を展開する分野に大きく関わっております。

 政府の主な推進政策とその概要は以下の通りであります。

(1)がん研究10か年戦略

 厚生労働省と文部科学省は、昭和59年度から平成5年度の「対がん10か年総合戦略」、平成6年度から平成15年度の「がん克服新10か年戦略」、平成16年度から平成25年度の「第3次対がん10か年総合戦略」に引き続き、平成26年度から10か年の「がん研究10か年戦略」を発表しました。この「がん研究10か年戦略」では、以下の具体的研究事項が提示されております。

a)がんの本態解明に関する研究

b)アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発に関する研究

c)患者に優しい新規医療技術開発に関する研究

d)新たな標準治療を創るための研究

e)ライフステージやがんの特性に着目した重点研究領域

f)がんの予防法や早期発見手法に関する研究

g)充実したサバイバーシップを実現する社会の構築をめざした研究

h)がん対策の効果的な推進と評価に関する研究

 また、これらの具体的研究事項の中には、「免疫療法」や「再生医療」が掲げられております。

 これらは、いずれも当社グループの細胞医療支援事業及び研究開発活動と密接に関わるものであり、今後の事業展開に大きな影響を与えるものと考えております。

(2)新たな成長戦略テーマとしての医療関連産業

 日本経済の再生に向けた成長戦略の一環として平成25年6月に閣議決定された「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」の戦略市場創造プランにおいて、医療関連産業の活性化を行うための方策として、医薬品・医療機器開発・再生医療研究を加速させる規制・制度改革等が含まれる等、近年、成長産業としての医療分野の注目度が急速に高まってきております。

 上記戦略においては、医療などの社会保障関連分野が健康長寿産業として戦略的分野の一つに位置づけられ、「健康長寿産業を創り、育てる」として医薬品、医療機器、再生医療の医療関連産業の市場規模を現状の12兆円から平成32年に16兆円に拡大すること等が盛り込まれていることから、その政策動向如何により、当社グループの今後の事業展開に大きな影響を与えるものと考えております。

(3)先進医療制度

 現在の日本における医療制度においては、保険診療と保険で認められていない診療(保険外診療)の併用は原則として禁止されており、全体について、自由診療として整理されることとなっております。しかし、将来的に保険導入を目指す先端的医療技術については、医療技術毎に定められた要件を満たす医療機関の届出により保険診療との併用を認める「先進医療」という制度があり、現在、がんに対する免疫細胞治療に関連する医療技術については、7つの医療技術が「先進医療」として認められております。

 これにより今後、「先進医療」として免疫細胞治療を実施する医療機関が増える可能性があり、免疫細胞治療の認知、普及が進むことも期待されます。

 

 しかしながら、今後、これら政府の政策の方向性に大きな変化が生じることとなった場合には、当社グループ業績に影響を与える可能性があります。

⑧特定の取引先への依存

 当社グループの技術・サービスを供与する契約医療機関は、平成27年9月30日現在、医療法人社団「滉志会」の4医療機関「瀬田クリニック東京」(東京都千代田区)、「瀬田クリニック新横浜」(神奈川県横浜市港北区)、「瀬田クリニック大阪」(大阪府吹田市)及び「瀬田クリニック福岡」(福岡県福岡市博多区)並びに「東京大学医学部附属病院」(東京都文京区)、「国立病院機構大阪医療センター」(大阪府大阪市中央区)、「九州大学先端医療イノベーションセンター」(福岡県福岡市東区)、「金沢大学附属病院」(石川県金沢市)の8施設であります。

 このうち、医療法人社団「滉志会」の4医療機関に対する売上の総額は、平成27年9月期1,574,548千円(連結売上高に占める割合94.0%)と、現時点では同医療法人に対する販売依存度が高い状態にあります。医療法人社団「滉志会」は、当社と緊密かつ安定的な関係にありますが、今後両者の関係が悪化した場合や、万が一同医療法人において不慮の事故が発生すること等により受診患者数の減少、閉鎖等の事態に至った場合には、当社グループ業績に影響を与える可能性があります。

⑨細胞医療製品事業及び貸付金に係るリスク

 当社グループは、計画的に細胞医療製品の開発を進め、最終的には細胞医療製品の製造販売承認を取得することにより、細胞医療製品事業を細胞加工業に続く新たな収益の柱とすることを目指してまいります。細胞医療製品事業においては、法改正を見据え、平成25年3月に米国Argos Therapeutics社の技術を臨床データとともにライセンス導入し、早期に細胞医療製品として製造販売承認を得るための資金を既に調達いたしましたが、新たに、Argos Therapeutics社のパイプラインに加えて、当社が平成16年以来、臨床研究中核病院や早期・探索的臨床試験拠点等の地域中核医療機関と共同で進めてきた臨床研究の成果をベースに、医薬品医療機器等法に則ったパイプラインを新たに複数立ち上げ、細胞医療製品の製造販売承認の取得を目指すべく、平成27年9月に新たな資金調達を行いました。

 当社グループとしては、計画の進捗管理のためにマイルストーンを設け、当マイルストーンごとに検証を加えながら慎重に細胞医療製品開発を進めてまいりますが、細胞医療製品の臨床試験において必ずしも当社の期待したとおりの結果が得られるとは限らず、結果として細胞医療製品の製造販売承認が得られなかった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 また、当社は、当該事業に係るライセンス契約の相手先に対して、資金の長期貸付を行なっており、平成27年9月30日現在の残高は8,000千米ドル(959,760千円)であることから、貸付先の運営が計画通りに進まず引当金等を設定する場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

5【経営上の重要な契約等】

(1)免疫細胞療法総合支援サービス契約

契約先

契約期間

契約の概要

医療法人社団 滉志会

平成20年10月1日から平成30年9月30日まで(以降1年毎の自動更新)

当社は、本契約に基づき、免疫細胞療法総合支援サービスを提供し、その対価を受け取るものであります。

国立大学法人  東京大学

平成19年2月6日から平成28年3月31日まで

同上

国立大学法人  九州大学

平成23年7月15日から平成28年3月31日まで

同上

 

(2)技術ライセンスを受けている契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

㈱メディネット

(当社)

MaxCyte,Inc.

アメリカ

エレクトロポレーション技術に係るライセンス契約

平成19年8月27日から

平成34年8月26日まで

㈱メドセル

(子会社)

Argos

Therapeutics,Inc.

アメリカ

細胞医療製品「AGS-003」に係るライセンス契約

(注)

(注)平成25年12月27日から下記のいずれかの時点まで

・Argos社が販売権及び製造権に関して取戻権を行使するまで

・Argos社が販売権及び製造権に関して取戻権を行使しない範囲で、下記(i)又は(ii)のいずれか遅い方まで

(i)ロイヤルティ期間の失効

(ii)Supply Agreementの失効

 

6【研究開発活動】

当社グループは、がんや感染症分野及び難治性疾患に対する基礎研究、産業化を目指した技術開発からその臨床応用まで、幅広い研究開発活動を推進しており、マイルストーンに沿った進捗が得られるように管理、運営を図っております。

これまでは、特に当社グループの中核事業である免疫細胞療法総合支援サービスに関わる臨床的エビデンスの構築や技術改良に積極的に取り組んでおりました。

当連結会計年度から、平成26年11月25日より施行された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」及び「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」により、当社グループの事業は、細胞加工業と細胞医療製品事業とに移行いたしました。当該移行に伴い、細胞加工業にむけた研究開発・技術開発として、提供技術の改良や様々な再生・細胞医療技術の細胞加工に対応できる体制の構築を進め、また、細胞医療製品事業に向けた研究開発・技術開発として、細胞医療製品の開発、製造のための技術構築を行うとともに、細胞医療製品の製造販売承認に向けた申請準備を進めてまいります。さらに、国内外を問わず積極的に研究開発のアライアンスを推進し、新規技術の早期実用化及び新規事業の早期実現を図ってまいります。

なお、平成27年9月末日現在、研究開発部門スタッフは総計34名おり、これは総従業員の約19%に当たります。

 

(1)細胞加工業

当連結会計年度においては、平成17年より、免疫細胞療法総合支援サービスでの提供を視野に入れて進めてきた、レギュラトリーT細胞を標的とした免疫抑制解除法の研究により開発した新規モノクローナル抗体(抗ヒトBTN3(CD277)抗体)について、米国ベクトン・ディッキンソン・アンドカンパニーとライセンス契約を締結いたしました。

今後も、免疫細胞加工技術の開発を推進するとともに、引き続き、がん免疫細胞治療の臨床研究支援活動も推進してまいります。

当連結会計年度における細胞加工業に係る研究開発費は144,293千円であります。

 

(2)細胞医療製品事業

当連結会計年度においては、前連結会計年度に日本国内における開発、製造権を取得した、米国Argos Therapeutics Inc.が開発を進めている転移性腎細胞がんを対象とする細胞医療製品「AGS-003」は、欧米で第Ⅲ相臨床試験が実施されており、このデータを利用することにより国内における開発費用・期間の短縮が可能です。また、米国ではFDAよりFast Trackに指定されており、米国において早期に承認されることが期待されます。今後は、当社グループによる日本国内での「AGS-003」の製造販売承認の取得に向けて、開発を進めてまいります。

また、東京大学の中内啓光教授らの研究グループが進めているiPS細胞を用いたCTL細胞による細胞医療製品を目的とした研究開発について、東京大学と共同開発に関する基本合意をいたしました。これは、がん等の異常な細胞を攻撃するリンパ球であるCTLをiPS細胞技術により大量に生産する技術であり、これまでを行われていたCTLを用いた免疫細胞治療の効果を向上させた新たな治療方法として期待される技術です。本契約に基づき、当社は、東京大学、中内啓光教授と本技術の開発などについて共同で検討を進めてまいります。

これらに加えて、当社グループでは、これまで継続的に行なってきた免疫細胞治療に係る研究開発、臨床開発の成果を生かして、新たな細胞医療製品の開発を目指した研究開発を進めてまいります。

当連結会計年度における細胞医療製品事業に係る研究開発費は501,684千円であります。

 

当社グループの臨床開発活動は、その活動から得られるデータ、成果は、細胞加工業、細胞医療製品事業の両事業での利用を想定しており、その活動については以下に記載いたします。なお、臨床開発に係る研究開発費は、上記のセグメント別研究開発費に配分され、含まれております。

当社グループの臨床開発活動としては、免疫細胞治療のエビデンス構築を目指し、当社グループの契約医療機関を中心に大学病院や各地域の中核医療機関との共同研究活動を実施しております。当社グループの主な研究活動の役割としては、腫瘍免疫分野を中心とした研究の企画及び推進、免疫細胞の加工に係る基礎データの提供等を行うことであり、これらの活動を通して臨床研究の円滑な推進に努めております。さらに、臨床研究の免疫学的検査を適切に支援することで免疫細胞治療の効果予測因子の探索等にも積極的に取り組んでおります。

当連結会計年度においては、前連結会計年度に引き続き、臨床エビデンスの構築を第一の目的とした国内の医療機関との共同臨床研究等を推進いたしました。

 

以上の取り組みの結果、当連結会計年度における研究開発費の総額は645,978千円となっております。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)当連結会計年度の経営成績の分析

 ①売上高及び営業利益

 当連結会計年度の売上高は1,674,379千円(前期比169,615千円減、9.2%減)となりました。これは、細胞加工受託に向けた受注活動を積極的に進めているものの、当連結会計年度においてはまだ売上を計上するまでには至っていないこと、既存契約医療機関に対する免疫細胞療法総合支援サービス売上が前連結会計年度に比べて減少したこと等によるものです。

 売上原価は、材料費の減少等により前連結会計年度に対して1.7%減少し、1,001,349千円となりました。売上原価の売上高に対する比率は、売上原価は減少したものの、売上高の減少による固定費割合の増加等により4.6ポイント増加し、59.8%となりました。その結果、売上総利益は前連結会計年度に対し18.5%減少し、673,030千円となりました。

 

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に対して182,255千円(8.2%)増加し、2,414,881千円となりました。当連結会計年度においては、研究開発投資の再評価を行い、研究開発費の適正化を図ったこと等により、研究開発費は13,355千円(2.0%)の減少となりました。販売費については、新たな事業展開に向けた取引先の開拓等の取り組み強化により、前連結会計年度に対して50,008千円(16.9%)増加しております。また、新たな事業環境における細胞加工業及び細胞医療製品事業の推進・展開を図るための戦略的投資等により、一般管理費については、前連結会計年度に対して145,601千円(11.4%)増加しております。

 この結果、営業損失は1,741,851千円(前期は営業損失1,407,022千円)となりました。

 

 ②営業外損益及び経常利益

 営業外損益は、前連結会計年度の68,389千円の利益(純額)に対し、当連結会計年度は170,722千円の利益(純額)となりました。これは、主に受取利息の増加(前期比6,989千円増)、為替差益の増加(前期比34,940千円増)、投資事業組合運用益の増加(前期比42,272千円増)、投資事業組合運用損の減少(前期比25,893千円減)によるものであります。

 この結果、経常損失は1,571,129千円(前期は経常損失1,338,633千円)となりました。

 

 ③特別損益及び税金等調整前当期純利益

 特別損益は、前連結会計年度の232,448千円の損失(純額)から、当連結会計年度は93,992千円の損失(純額)となりました。これは、主に投資有価証券売却益の減少(前期比440,145千円減)、貸倒引当金繰入額の減少(前期比580,000千円減)及び減損損失の減少(前期比55,138千円減)によるものであります。

 この結果、税金等調整前当期純損失は1,665,121千円(前期は税金等調整前当期純損失1,571,081千円)となりました。

 

 ④当期純利益

 法人税等については、法人税、住民税及び事業税10,689千円(前期比627千円増)、法人税等調整額36,510千円(前期比36,931千円増)により、当期純損失は1,712,320千円(前期は当期純損失1,580,722千円)となりました。

 

(2)当連結会計年度の財政状態の分析

 ①資産、負債及び純資産の状況

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて1,050,034千円減少し、8,897,381千円となりました。流動資産は4,670,284千円と前連結会計年度末に比べ1,925,431千円減少しており、主な要因は現金及び預金の増加100,845千円、有価証券の減少2,199,921千円です。固定資産は4,227,097千円と前連結会計年度末に比べ875,396千円増加しており、主な要因は有形固定資産の増加897,698千円、投資有価証券の増加53,980千円、長期前払費用の減少84,109千円によるものです。

 当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて256,055千円増加し、1,724,090千円となりました。そのうち流動負債は1,256,527千円で前連結会計年度末に比べて29,542千円減少しております。主な要因は、未払金の減少59,280千円、リース債務の増加28,723千円です。固定負債は467,562千円と前連結会計年度末に比べて285,598千円増加しており、主な要因は長期リース債務の増加94,193千円、品川細胞培養加工施設(品川CPF)に設置する設備の取得等に伴う資産除去債務の増加139,624千円です。

 当連結会計年度末の純資産は、当期純損失1,712,320千円、第三者割当増資による資本金及び資本剰余金の増加380,664千円、その他有価証券評価差額金の増加22,624千円等により前連結会計年度末に比べて1,306,089千円減少し、7,173,291千円となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の85.0%から80.3%となりました。

 ②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて2,099,076千円減少し、当連結会計年度末には3,811,801千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動に使用した資金は1,567,375千円(前期は1,020,104千円の使用)となりました。

 主な増加は、減価償却費278,291千円であり、主な減少は、税金等調整前当期純損失1,665,121千円、未払又は未収消費税等の増減額104,796千円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動に使用した資金は856,760千円(前期は1,155,834千円の使用)となりました。

 主な支出は、有形固定資産の取得による支出859,047千円、無形固定資産の取得による支出116,303千円であり、主な収入は、長期貸付金の回収による収入120,950千円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によって獲得した資金は325,059千円(前期は405,825千円の獲得)となりました。

 主な内訳は、株式の発行による収入378,109千円です。