第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

 当社は、低分子医薬、がん特異的ペプチドワクチン、抗体医薬の3領域において戦略的に研究開発を進展させるとともに、がん個別化医療への取り組みを開始いたしました。

① 低分子医薬

 がん幹細胞の維持に重要な分子であるMELK(Maternal Embryonic Leucine zipper Kinase) を標的としたOTS167については、米国で実施しておりました標準療法不応の固形がんに対する第Ⅰ相臨床試験により、静脈投与において、本試験目的の安全性と薬物動態の確認が達成されました。本試験によって得られたデータはOTS167の後続する臨床試験計画と製剤開発に大きな意義をもたらしており、OTS167の急性骨髄性白血病に対する第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を米国にて実施しております。この臨床試験は、急性骨髄性白血病の患者さんを対象とし、OTS167の静脈内反復投与における安全性および推奨投与量の確認を行い、確認後には、急性骨髄性白血病を含む予後不良の各種白血病についてのPOC(Proof of Concept : 有効性や安全性を含めて作用機序などが臨床において妥当であることの証明)を獲得することを目的とするものです。また、OTS167の乳がんに対する第Ⅰ相臨床試験を米国コーネル大学(Weill Cornell Medicine)にて開始いたしました。この臨床試験は、トリプルネガティブ乳がんを含む乳がんの患者さんを対象とし、OTS167のカプセル剤による経口投与における安全性および推奨投与量の確認を主目的とし、副次的にトリプルネガティブ乳がんに対する臨床上の有効性を確認するものです。なお、OTS167は、オーストラリアで実施しておりました健常成人を対象とした経口投与による消化管吸収性(バイオアベイラビリティ)の確認を主たる目的とする臨床試験において、ヒトでの良好な経口吸収性が確認されています。

 OTS167の標的は、新規キナーゼのMELK (Maternal Embryonic Leucine zipper Kinase)であり、がん幹細胞に高発現し、その維持に重要な役割をしているタンパク(キナーゼ)です。そのキナーゼを阻害し、強い細胞増殖抑制効果が期待できる新しい作用機序(ファースト・イン・クラス)の分子標的治療薬です。 OTS167 は、すでに動物試験において、肺がん、前立腺がん、乳がん、膵臓がんなどに対し、強力な抗腫瘍効果が確認されています。

 また、細胞分裂に重要ながん特異的新規標的分子(TOPK)に対する最終化合物を同定しております。動物実験で、がんの消失等顕著な結果が得られたことから、臨床試験開始を目指し、製剤化検討および非臨床試験を進めております。なお、TOPK阻害剤OTS964は、米国立がん研究所が提供するがん治療薬候補化合物特性評価及び安全性評価プログラム(NCL characterization プログラム)に採択されており、本化合物の非臨床試験開発が促進されることが期待されます。

② がん特異的ペプチドワクチン

 がん特異的ペプチドワクチンにつきましては、提携先製薬企業との戦略的対話を促進し、提携先が実施する臨床開発の側面支援、後方支援を強化して参りました。

 塩野義製薬株式会社とは、当社がライセンスアウトしているがん特異的ペプチドワクチンS-588410の臨床開発を支援する目的で、食道がん患者さんを対象とした第Ⅲ相臨床試験実施に関する覚書を締結しており、塩野義製薬株式会社が臨床試験を実施しております。なお、塩野義製薬株式会社は、S-588410の食道がん第Ⅲ相臨床試験のほか、膀胱がんを対象としたS-588410について日欧で第Ⅱ相臨床試験(目標症例数登録完了)を、頭頸部がんを対象としたS-488210は欧州で第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を、それぞれ実施しております。

 小野薬品工業株式会社と提携しております、がん特異的ペプチドワクチンONO-7268MX1ならびにONO-7268MX2については、小野薬品工業株式会社が肝細胞がんを対象とした第Ⅰ相臨床試験を実施しております。

③ 抗体医薬

 がん治療用抗体OTSA101 については、肉腫治療の世界的権威であり、欧州がん研究・治療機構(European Organization for Research and Treatment of Cancer:EORTC)元会長のJean-Yves Blay 教授主導のもと、軟部肉腫の1種である滑膜肉腫に対する第Ⅰ相臨床試験を実施しておりましたが、臨床試験の主目的であった、安全性と体内集積につきまして良好な結果が確認でき終了いたしました。今回の臨床試験の結果を踏まえ、企業主導の次の臨床試験を計画し、日米欧の承認申請を目指してまいります。

 また、当社連結子会社であるイムナス・ファーマ株式会社が協和発酵キリン株式会社にライセンスアウトしております抗アミロイドβ(Aβ)ペプチド抗体KHK6640については、協和発酵キリン株式会社が、アルツハイマー型認知症に対する第Ⅰ相臨床試験を欧州ならびに日本にて実施しております。

 

④ TCR解析サービス

 がん免疫療法における最先端の取組みとして、当社は、シカゴ大学医学部中村祐輔研究室において開発された、次世代シーケンサーを用いてT細胞受容体を解析する方法を導入し、当社ワクチン事業を、科学的エビデンスを重視して推進するとともに、製薬企業、医療機関、研究機関等に対してTCR解析サービスを提供する事業を実施しております。学会発表やセミナー開催による啓蒙活動により、がん領域の研究者を中心に事業を拡大する見込みです。これは、がん患者さんのゲノム等の情報をもとに、患者さん一人ひとりに最適な医療を提供する、がん個別化医療に必須の技術となるものです。

 

 これらの結果、当連結会計年度における連結事業収益につきましては、提携先製薬企業からのマイルストーン、分析試験受託、研究用試薬販売のロイヤルティーの受領により、286百万円(前期比19百万円の増加)となりました。

 また、医薬品候補物質等の基礎研究、創薬研究の継続的な実施による研究開発費用の計上に加え、低分子医薬、がん特異的ペプチドワクチン、抗体医薬の3つの領域についての臨床開発進展による費用計上を主な要因として、連結営業損失は3,004百万円(前期は2,980百万円の損失)、連結経常損失は3,008百万円(前期は2,963百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は3,002百万円(前期は2,788百万円の損失)となりました。

 なお、当社および連結子会社は「医薬品の研究および開発」ならびにこれらに関連する事業内容となっており、事業区分が単一セグメントのため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、10,072百万円(前連結会計年度末比 2,997百万円減少)となりました。

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況は以下の通りです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金の減少は、2,988百万円(前連結会計年度末は、2,898百万円の減少)となりました。これは、減価償却費89百万円の計上、および未払金65百万円の増加により資金が増加した一方、税金等調整前当期純損失2,997百万円、および前受金83百万円減少により資金が減少したことが主な要因となっております。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金の減少は、11百万円(前連結会計年度末は、10,883百万円の増加)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出10百万円により資金が減少したことが主な要因となっております。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金の増加は、2百万円(前連結会計年度末は、12百万円の増加)となりました。これは、株式の発行による資金の増加2百万円が要因となっております。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当社の業務は、業務の性格上、生産として把握することが困難であるため、記載を省略しております。

 

(2)受注実績

 当連結会計年度における受注実績については、販売高に比べて受注高の重要性が乏しいことから、記載を省略しております。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

医薬品の研究及び開発

286,667

7.4

(注)1 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下の通りであります。

相手先

前連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

当連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

塩野義製薬㈱

250,000

93.7

250,000

87.2

小野薬品工業㈱

33,650

11.7

2 上記金額に消費税等は含まれておりません。

 

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは、「有効性が高く、より副作用の少ないがん治療薬・治療法を一日も早くがんに苦しむ患者さんに届けること、がんとの闘いに勝つこと」を企業使命として、その実現の基礎研究、創薬研究、並びに医薬品としての承認取得の為の臨床開発を推進しております。

 当社グループは、安定経営に留意しながら、がん治療薬・治療法の研究及び開発を着実に推進し、がん治療の分野で社会に貢献したいと考えております。

(2)経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、研究開発型企業として、基礎研究、創薬研究、並びに医薬開発を推進しており、収益につきましては、これまで、主として提携先製薬企業等からの契約一時金、開発協力金、マイルストーン収入等を計上しております。将来において、当社が自らがん治療薬を上市した場合には、医薬品の販売収入が計上され、また提携先企業ががん治療薬を上市した場合には、ロイヤリティ収入が計上されることとなり、収益及び利益が飛躍的に拡大するとともに収益基盤が安定することが想定されます。これらの収入等は、当社グループの研究開発の進展に伴い計上するものであり、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標と考えております。

 しかしながら、がん治療薬が上市されるまでの間は、事業領域の拡大や自社による研究開発の進展に伴い研究開発費が増加することが想定されますが、収益源となる製薬企業との新たな提携契約の締結、ベンチャー企業・アカデミアと共同研究や共同開発の実施、公的機関による補助・助成制度の積極的な活用などにより自社の経費負担を軽減し、経営の安定を図りながら事業を推進してまいります。

(3)事業上及び財務上の対処すべき課題

当社グループは、対処すべき課題を以下のように考えています。

① 基礎研究の継続的な実施

 当社グループは平成13年から平成25年にかけて東京大学医科学研究所との共同研究により、ほぼ全てのがんを対象とした網羅的な遺伝子発現解析等を実施し、多くのがん治療薬開発に適した標的分子を同定いたしました。現在、それらの標的に対する創薬研究を積極的に展開し、これら創薬研究の成果を基にした複数の臨床試験を実施中または準備中の医薬品候補物質を多数有しております。

 基礎研究の継続的な実施は当社グループ事業の将来にかかる重要課題の一つとして認識しており、シカゴ大学と進めております共同研究「新たながん治療標的の探索研究」等、今後も当社独自および共同研究等による研究体制の充実と円滑な推進のための対応を図っていく方針であります。

② 創薬研究の確実な推進

 当社グループは基礎研究の成果をもとに、臨床応用を目指して低分子医薬、がん特異的ペプチドワクチン、抗体医薬等の創薬研究を実施し、ファースト・イン・クラスの創薬を目指します。

③ 臨床開発の確実かつ迅速な推進

 当社グループは、「有効性が高く、より副作用の少ないがん治療薬・治療法を一日も早くがんに苦しむ患者さんに届けること、がんとの闘いに勝つこと」を企業使命とし、国内外において、当社グループ独自で複数の臨床試験を行っており、各提携先製薬企業とも共同で臨床試験を行っております。当社グループは、非臨床試験データに基づいた適応症の選択を行い、臨床開発を確実かつ迅速に推進させてゆく方針です。

④ 新規提携先の開拓および既存提携先との提携事業の確実な推進

 当社グループは、一日も早くがん治療薬を上市することを企業使命とし、今後とも新規提携先を積極的に開拓するとともに、提携先製薬企業との戦略的対話を促進し、提携先が実施する臨床開発の側面支援、後方支援を強化することにより提携事業を確実かつ迅速に進め、一日も早く当社グループの医薬品候補化合物の上市を目指します。

⑤ がん個別化医療への取組み

 21世紀に起こった技術革新により、個々の患者のゲノム・エピゲノム・プロテオームなどの変化を詳細に解析することが可能となりました。したがって、がん医療は、これらの情報を駆使して、予防・早期発見・最適な治療法の選択・新規治療法の開発を行う「がん個別化医療」(Cancer Precision Medicine)が必須であると、当社は考えております。

 当社は、「がん個別化医療」への取り組みを積極的に行って参ります。

 

 経営環境及び経営者の問題意識と今後の方針について

 当社グループの事業に深い関連を有する抗がん剤市場を取り巻く状況は、①高齢化の進行、②がん診断による早期発見の増加(長期的治療の増加)及び③分子標的治療薬の登場等により、市場は拡大しており、当社グループは今後においても同様に市場は拡大するものと想定しております。

 この様な市場の拡大は、参入企業の増加、潜在的な競合企業の増加の要因とも考えられ、また、異業種間の連携により技術革新などが飛躍的に進展する可能性もあり、当社グループを取り巻く事業環境は、急激な変化を生じる要素を数多く内包しているものと考えられます。このような経営環境のもと、当社グループの事業展開における重要な要素としては、「事業推進のスピード」「事業領域の拡大」「リスクとリターンのバランス」といった3点が挙げられます。

 事業推進のスピードにつきましては、医薬品業界、特にバイオ・テクノロジー業界においては、世界的な新薬開発競争とその新薬開発のための様々な研究開発や技術開発が世界的規模で行われており、当社の研究活動もこのスピード競争を勝ち抜き、質の高い研究成果を一日も早く臨床開発へ進展させることが当社の優位性を確保する上で非常に重要であると認識しております。

 事業領域の拡大につきましては、現在当社グループは、低分子医薬、がん特異的ペプチドワクチン、抗体医薬等で創薬研究を展開しており、今後とも、より積極的に事業を拡大していく方針であります。このような事業領域の拡大により、当社グループの研究成果を、より多くの医薬品開発用途へ応用することにより、事業価値を高めたいと考えています。

 最後にリスクとリターンのバランスですが、当社グループの最大の強みは、数多くのゲノム創薬にもとづく創薬ターゲットを所有していることであります。ただ、それら多数の創薬ターゲットの全てについて、多岐の用途にわたる創薬研究と臨床開発を、当社のみの資源と費用で、かつ世界的な競争に打ち勝つ「スピード」で遂行することは、膨大な設備投資と研究開発費を必要とし、資金的なリスクを生じせしめます。当社としては、製薬企業等との積極的な提携契約の締結や研究開発に提携等により、製品化の可能性を極大化しつつ、リスクは経営上合理的なレベルにとどめる方針を現時点では採用しています。本方針により、事業展開からの成果や利益といったリターンをパートナーと共有することにはなりますが、可能性のある製品を商業化できないリスクやスピード競争に負けるリスクを低減することができます。今後ともリスクとリターンのバランスに十分配慮し、最善と考えられる経営判断を行っていきたいと考えております。

(4)株式会社の支配に関する基本方針について

① 基本方針の内容の概要

 当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の財務及び事業の内容や当社の企業価値の源泉を十分に理解し、当社の企業価値・株主共同の利益を確保、向上していくことを可能にする者であるべきと考えています。

 当社は、金融商品取引所に株式を上場していることから、当社株式の取引は、株主、投資家の自由意思に委ねるのが原則であり、大規模買付行為がなされた場合においても、当社の企業価値・株主共同の利益の確保、向上に資するものである限り、これをすべて否定するものではありません。最終的には、株式の大規模買付提案に応じるべきかどうかは株主の皆様の決定に委ねられるべきと考えています。

 しかしながら、大規模買付提案の中には、例えばステークホルダーとの良好な関係を保持し続けることが困難であると予測されるなど、当社グループの企業価値・株主共同の利益を損なう恐れのあるものや、当社グループの企業価値を十分に反映しているとは言えないもの、あるいは株主の皆様が最終的に決定をされるために必要な情報が十分に提供されずに、大規模買付行為が行われる可能性も否定できません。

 とりわけ当社グループは「有効性が高く、より副作用の少ないがん治療薬・治療法を一日も早くがんに苦しむ患者さんに届けること、がんとの闘いに勝つこと」を企業使命として掲げており、患者様の生命や健康に直結する事業を進めていることから、その経営においては高い倫理観とバイオテクノロジーに関する専門的な知識・ノウハウ等が要求されます。

 このようなことから、当社は、大規模買付行為がなされた場合には、株主の皆様に提供される情報、検討機会を十分確保する方策が必要であると考えています。

② 基本方針の実現に資する取組み

 当社の研究開発は、平成13年4月からの東京大学医科学研究所との共同研究により出発致しました。当該研究は、各がん種において特異的に発現する遺伝子を網羅的に解析することにより、創薬ターゲットとなるがん関連遺伝子及び遺伝子産物を単離することを目的としており、主に基礎研究領域に重点を置いたものとなっています。

 その後、基礎研究の継続的な実施による進展とともに、当社グループの事業領域は、より医薬品の開発に近い創薬研究へと拡大しており、低分子医薬、がん特異的ペプチドワクチン、抗体医薬の各領域において、臨床応用を目指した創薬研究を実施しております。さらに、国内外において、各提携先製薬企業と共同で、または当社グループ独自で複数の臨床試験を実施しております。

 

 このように、当社グループは「有効性が高く、より副作用の少ないがん治療薬・治療法を一日も早くがんに苦しむ患者さんに届けること、がんとの闘いに勝つこと」という企業使命の実現のため、日々研究開発を推進しています。当社グループは、これらの研究開発の進展こそが当社グループの企業価値向上の源泉であると考えています。

③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

 当社は、上記基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの一つとして、平成21年5月27日に取締役会において、当社株式の大規模買付行為に関する対応策(以下「本プラン」といいます)を導入することに関して決定を行い、平成21年6月26日開催の第8回定時株主総会において承認可決され、平成24年5月28日の取締役会において原施策に軽微な修正を施したうえで内容に大幅な変更無く継続導入することに関して決定を行い、平成24年6月27日開催の第11回定時株主総会において承認可決、平成27年5月27日の取締役会において内容に大幅な変更無く継続導入することに関して決定を行い、平成27年6月22日開催の第14回定時株主総会において承認可決されております。

(a)本プランの概要

(ⅰ)本プランに係る手続きの設定

 本プランは以下のアまたはイに該当する当社株式の買付けまたはこれに類似する行為(但し、当社取締役会が承認したものを除きます。当該行為を、以下、「大規模買付け等」といいます。)がなされる場合を適用対象とします。大規模買付け等を行い、または行おうとする者(以下、「買付者等」といいます。)は、予め本プランに定められる手続きに従わなければならないものとします。

ア.当社が発行者である株式について、保有者の株式保有割合が20%以上となる買付け

イ.当社が発行者である株式について、公開買付けに係る株式の株式所有割合およびその特別関係者の株式所有割合の合計が20%以上となる公開買付け

(ⅱ)対抗措置の内容

 上記(ⅰ)記載の対抗措置として、当社は、上記(ⅰ)記載の買付者による行使は認められないとの条項及び当社が当該買付者以外の者から当社株式と引き換えに当該新株予約権を取得する旨の条項等が付された新株予約権を、当社株式1株に対し1個を上限として、当社取締役会が本新株予約権無償割当決議において別途定める割合で、その時点の全ての株主に対して割り当てる手法による無償割当て、その他法令または当社定款が取締役会の権限として認める措置を行います。

(b)本プランの有効期間

 本プランの有効期間は、平成27年3月期の事業年度に関する定時株主総会終結の時から平成30年6月開催予定の定時株主総会終結の時までと定めています。

(c)本プランの廃止および変更

 当社の株主総会において本プランの変更または廃止の決議がなされた場合には、本プランは当該決議に従い、その時点で変更または廃止されるものとします。また、当社の株主総会で選任された取締役で構成される取締役会により本プランの廃止の決議がなされた場合には、本プランはその時点で廃止されるものとします。

 なお、当社取締役会は、会社法、金融商品取引法、その他の法令若しくは金融商品取引所規則の変更またはこれらの解釈・運用の変更、または税制、裁判例等の変更により合理的に必要と認められる範囲で独立委員会の承認を得た上で、本プランを修正し、または変更する場合があります。当社は、本プランが廃止または変更された場合には、当該廃止または変更の事実および(変更の場合には)変更内容その他当社取締役会が適切と認める事項について、情報開示を行います。

④ 上記取組みが基本方針に沿い、当社の株主の共同の利益を損なうものではなく、当社役員の地位の維持を目的とするものでないことおよびその理由

 本プランは、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保または向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、事前開示・株主意思の原則、必要性・相当性確保の原則)を充足しています。また、本プランは、企業価値研究会が平成20年6月30日に発表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」を踏まえて設計されているものです。

(a)企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則

 本プランは、上記に記載の通り、当社株式に対する大規模買付け等がなされた際に、当該大規模買付け等に応じるべきか否かを株主がご判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提示するために必要な情報や期間を確保し、株主の皆様のために買付者等と交渉を行うこと等を可能とすることにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させるという目的をもって導入されるものです。

 

(b)事前開示・株主意思の原則

 本プランは、定時株主総会において株主の承認を得たうえで導入するものです。また、株主総会において本プランの変更または廃止の決議がなされた場合には、本プランも当該決議に従い変更または廃止されることになります。従いまして、本プランの導入及び廃止には、株主の意思が十分反映される仕組みとなっています。

(c)必要性・相当性確保の原則

(ⅰ)独立委員会による判断の重視と情報開示

 本プランは、大規模買付け等への対抗措置の発動等に関する取締役会の恣意的判断を排し、取締役会の判断及び対応の客観性及び合理性を確保することを目的として独立委員会を設置します。独立委員会は、当社の業務執行を行う経営陣から独立している、当社社外取締役、当社社外監査役または社外の有識者(実績のある会社経営者、官庁出身者、弁護士、公認会計士若しくは学識経験者またはこれらに準じる者)から選任される委員3名以上により構成されます。また、当社は、その判断の概要については株主及び投資家の皆様に情報開示を行うこととし、当社の企業価値・株主共同の利益に資するよう本プランの透明な運営が行われる仕組みを確保しています。

(ⅱ)合理的かつ客観的な発動要件の設定

 本プランは、合理的かつ客観的な発動要件が充足されなければ発動されないように設定されており、当社取締役会による恣意的な発動を防止するための仕組みを確保しています。

(ⅲ)デッドハンド型の買収防衛策ではないこと

 本プランは、当社の株主総会で選任された取締役で構成される取締役会により、いつでも廃止することができるものとされています。従って、本プランは、デッドハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の過半数を交代させても、なお発動を阻止できない買収防衛策)ではありません。

 

 

4【事業等のリスク】

 以下において、当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、本株式に関する投資判断は、本「事業等のリスク」及び有価証券報告書等中の「事業等のリスク」以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。また、以下の記載は本株式への投資に関連するリスク全てを網羅するものではありませんので、その点にご留意ください。

 なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

(1)研究開発活動について

① 大学との共同研究について

(a)共同研究契約について

 当社の研究活動においては、自社での研究活動に加えて、シカゴ大学等と共同研究を実施しております。

 また、平成13年から平成25年にかけて東京大学医科学研究所との共同研究においては、ほぼ全てのがんを対象とした網羅的な遺伝子発現解析等を実施し、多くのがん治療薬開発に適した標的分子を同定いたしました。現在、それらの標的に対する創薬研究を積極的に展開し、これら創薬研究の成果を基にした複数の臨床試験を実施中であり、さらに準備中の医薬品候補物質を多数有しております。

 当社は、今後も研究体制の充実と円滑な推進のため、シカゴ大学をはじめとした各大学との間で良好な関係を維持し、当社の事業基盤となる共同研究を継続していく方針であります。しかしながら、当該契約の更新が困難となった場合又は解除その他の理由により契約が終了した場合においては、当社事業に悪影響を与える可能性があります。

 

(b)がん関連遺伝子の網羅的解析について

 当社が国立大学法人東京大学と実施した基礎研究の、「抗がん剤開発のためのがん特異的蛋白の同定とその機能解析、及び分子標的治療薬(治療法)開発の共同研究」は、(a)臨床症例に基づいた研究成果であること、(b)LMM法によるがん細胞の分離により精度の高い解析が可能であること、(c)遺伝子解析においてcDNAマイクロアレイを利用していること、(d)特定された候補遺伝子とそれらのがんとの関連を複数の実験により検証していること等の特徴があり、当社は、これらの各要素を組み合わせた解析スキームに研究の優位性があり、各種のがんにおいて得られた遺伝子情報等は、治療効果が高く、かつ副作用が少ない抗がん剤等の開発や、特異性の高いがん診断薬の開発に有用であると認識しております。なお、現時点においては、第三者が同様の遺伝子解析を高精度で大規模に実施することは極めて困難であるものと考えておりますが、新たな研究手法等が確立された場合においては、今後における当該優位性が継続する保証はありません。

 

② その他の共同研究開発について

 当社グループは、創薬を目指した研究や開発をより加速させ、またその分野を拡大する計画であり、公的研究機関やその他企業等との共同研究の実施や新たな連携を、必要に応じて積極的に模索しております。

 今後も共同研究等の戦略的連携を積極的に推進していく予定ですが、これらの契約締結及び研究開発が当社の想定どおりに進捗しない可能性があるほか、契約内容によっては、当社において相応の費用負担が生じる可能性があります。

 

③ 研究および開発の進展を目的とした子会社・関連会社の設立について

 当社は、当社の事業機会である創薬シーズ(がん関連遺伝子等)を最大限有効活用するため、平成16年8月に株式会社医学生物学研究所と、抗体医薬の開発・製造・販売を行うイムナス・ファーマ株式会社を設立致しました。なお、イムナス・ファーマ株式会社は、平成19年9月21日に当社が、株式会社医学生物研究所所有の株式を取得したことにより、当社の子会社となっております。

 また、平成22年5月には、フランスでの抗体医薬をはじめとしたがん治療薬の研究開発体制を確立し、開発をより加速、充実させる目的で、現地子会社Laboratoires OncoTherapy Science France S.A.R.L.を設立致しました。

 今後も、研究及び開発の進展を目的として子会社や関連会社の設立を行う可能性がありますが、これら子会社、関連会社の研究及び開発活動が計画通りに実施できる保証はなく、また事業展開に伴う研究開発費用の増加等が当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 臨床開発について

 当社グループは、各提携先製薬企業と共同で、または当社グループ独自に複数の臨床開発を行っております。

 しかしながら、当社グループの臨床開発活動が計画通りに実施できる保証はなく、進捗に遅れが生じたり、臨床開発の成果が期待通り得られない可能性があります。

 その結果、共同開発につきましては、提携先と想定していたイベントの達成が遅れたり、達成できなかった場合、将来に期待していた収益の受領が遅れたり、収益を得られない可能性があります。一方、今後当社グループ独自に臨床開発を実施したにもかかわらず成果が期待通り得られなかった場合、当社グループはそれまでの多額の研究開発コストを回収できず、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 製造物責任のリスクについて

 当社グループが行う医薬品の開発、製造、及び販売は、製造物責任を負う可能性があります。今後当社グループが開発、製造、及び販売したいずれかの医薬品が健康に悪影響を及ぼし、不適当な点が発見された場合には、製造物責任を負うことにより、当社グループの事業及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 副作用に関するリスクについて

 当社グループが開発、製造、及び販売を行った医薬品で、臨床試験段階から製品上市後までにおいて、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。副作用が発現した場合、当社グループの業績に直接的な悪影響を及ぼすばかりか、副作用によるネガティブなイメージにより、当社グループが開発、製造、及び販売を行う医薬品に対する信頼に悪影響が生じる可能性があります。

 

(2)製薬企業等との提携について

① 提携先の研究開発の進捗状況等に影響を受けることについて

 当社グループは、研究活動により得られる医薬品候補物質を製薬企業等に対して提供することを主な収益源としており、製薬企業等と締結する技術導出契約に基づき、契約一時金、開発協力金、マイルストーン及びロイヤリティ等を段階的に受領することになっております。これらの対価のうち、多くのマイルストーン及びロイヤリティの発生については、製薬企業等の研究開発の進捗及び医薬品発売・販売の状況等に依存するものであり、事業収益として計上されるには長期間を要する可能性があり、またこれらの事業収益が計上されない可能性もあります。

 

② 今後の製薬企業等の事業提携について

 当社グループは、製薬企業等との提携については、創薬研究の成果である低分子医薬、がんワクチン、抗体医薬などのように個別の医薬品候補物質ごとに提携を拡大させてゆく方針です。しかしながら、当社グループが提供する医薬品候補物質等が、製薬企業等の研究開発ニーズと合致する保証はなく、また当社グループの想定通りに医薬品候補物質ごとの提携が推移する保証はありません。

 

(3)社内体制について

① 情報管理に関するリスクについて

 当社グループは、当社が関与する臨床試験に関する情報その他の機密情報について、コンピュータ管理を行っております。このため、規程等を整備し、従業員に対し情報管理の重要性を周知徹底するとともに、システムのセキュリティを高く設定し常時監視しておりますが、通信インフラの破壊や故障などにより当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状態に陥ってしまった場合、あるいは情報漏えい・不具合が発生した場合等には、当社グループの社会的信用、業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

(4)経営成績の推移等について

① 特定の販売先への依存について

 当社グループの販売先は、製薬企業等を対象とする限定されたものであることから、取引先あたりの事業収益に占める依存度は高いものとなっております。

 当社グループにおいては、今後においても新たな取引先を開拓することで取引先ごとの依存度低下を図る方針でありますが、当社グループの想定通り新たな提携先と契約が締結できる保証はありません。また、契約を締結している取引先の契約解消や取引先の経営方針に著しい変更等が生じた場合については、当社グループの業績は大きく影響を受ける可能性があります。なお、当社グループの受領する対価は下記②の通り、製薬企業との契約による契約一時金、研究協力金、開発協力金、マイルストーン及びロイヤリティ等となりますが、これらの対価は段階的に発生するため、その発生状況により、各連結会計年度における取引先あたりの事業収益に占める依存度は大きく変動する可能性があります。

② 収益計上について

 当社グループは、製薬企業との契約により、その対価については、契約一時金、研究協力金、開発協力金、マイルストーン及びロイヤリティ等を段階的に受領することとしております。

 契約一時金は、契約時に一定の権利の付与に対して受取る対価として一括収益計上しており、研究協力金及び開発協力金は製薬企業より契約に基づく研究開発に対する経済的支援として受領するものであり、役務の提供に基づき収益計上しております。

 マイルストーンは自社あるいは提携先製薬企業における研究開発の進捗(予め設定されたイベント達成等)に応じて受取る対価、ロイヤリティは製薬企業が医薬品として上市された場合に売上等の一定率を対価として受領するものであり、製薬企業等からの報告等に基づき発生時に収益計上することとしております。

 当社グループが契約に基づき受領する収益のうち、研究協力金及び開発協力金については、研究及び開発の内容等に応じて複数年に渡り受領することとされておりますが、一部については当該協力金について規定されていないものもあります。

 また、一般的に医薬品の開発期間は基礎研究開始から上市までに通常10年以上の長期間に及ぶものでもあります。なお、発生については、その多くが契約締結先の製薬企業等の研究開発の進捗及び医薬品発売・販売の状況等に依存するものであり、これらが事業収益として計上されるにはかなりの長期間を要する可能性があり、またこれらの事業収益が計上されない可能性もあります。

 さらに、製薬企業等との契約締結の可否、契約締結時期及び収益の発生時期によって当社グループの業績は大きく変動する傾向にあり、これによる業績の上期又は下期への偏重が生じる可能性、または場合によっては決算期ごとの業績変動要因となる可能性があります。

 

③ 研究開発費が多額の見通しであることについて

 当社グループは研究開発型企業として、平成29年3月期連結会計年度においては2,938百万円を計上しており今後とも、積極的に臨床開発に取り組んでいく方針であります。そのため、今後は、臨床試験を実施する開発パイプラインの進展や拡大、積極的な自社の創薬研究、がん個別化医療への積極的な取り組み等により、多額の研究開発費が必要となると想定されます。しかしながら、他の製薬企業との契約締結が進まない場合や既存の提携先との契約解消等が生じた場合は、当社グループの業績の圧迫要因として業績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(5)大学との関係について

① 共同研究実施に係る費用負担について

 当社は、シカゴ大学をはじめとした各大学(以下、「大学」という)との間で共同研究契約に基づく共同研究を実施しております。

 当該共同研究にかかる当社の費用負担については、大学との協議により、当該共同研究において必要と見込まれる直接経費について共同研究費として大学に支払っております。当該費用については、契約期間分を一括して支払うこととなっており、契約期間に対応して費用計上しております。なお、共同研究における活動状況に応じて生じる追加費用等については、相互協議による契約変更の手続きにより追加支払いを行う場合もあります。共同研究費の実績については、平成25年3月期は228百万円、平成26年3月期は209百万円、平成27年3月期は209百万円、平成28年3月期は314百万円、平成29年3月期は326百万円であります。

 当社グループは、今後においても当社の事業基盤である共同研究を継続していく方針であり、相応の共同研究費を負担することとなります。

② 各大学・研究機関教職員の兼業に係る利益相反の回避ついて

 当社においては、徳島大学教授片桐豊雅が当社取締役(非常勤)に就任しているほか、本書提出日現在、各大学・研究機関の複数の研究者(教授等)が同様に当社顧問等として兼業しております。当社グループとしてはこれらの兼業を行っている者との関係においては、利益相反等の行為が発生しないように法規制等を遵守するとともに、当社グループの企業運営上取締役会の監視等を通じて十分留意しております。しかしながら、このような留意にかかわらず、利益相反等の行為が発生した場合には、グループの利益を損ねる恐れがあるほか、社会的に指弾を受ける等の不利益を被り、その結果として当社グループの業績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6)知的財産権について

① 当社グループの特許に係る方針等について

 バイオ・テクノロジー関連業界、特に遺伝子関連事業においては、競合会社等に対抗していくために特許権その他の知的財産権の確保が非常に重要であると考えられます。

 当社は、東京大学との共同研究の成果として生じたがん関連遺伝子及び遺伝子産物情報等並びに一部のがんワクチンについて、国立大学法人化以前は東京大学と共同で特許を出願してまいりましたが、これらの出願に関しては包括的な譲渡契約の締結により、既に当社への譲渡が完了しております。独立法人化以降の共同発明についても、同様に包括的な譲渡契約の締結により、既に当社への譲渡が完了しております。東京大学以外の大学との共同研究の成果として生じた医薬品候補物質等の共同発明については、大学と共同で特許を出願する場合と、譲渡契約に基づいて当社が単独で特許を出願する場合とがあります。また、製薬企業等との提携にかかる医薬品関連の特許については、発明の実態と提携契約に基づき提携先企業が出願する場合もあります。

 なお、研究の過程において特許性を有する成果が生じた場合においても、特許出願については、有用性及び費用対効果等を考慮して行うものであり、全てについて特許を出願するものではなく、また、特許を出願及び取得した場合においても、特許の取得及び維持に係る費用等について、当社グループの事業の収益により全て回収できる保証はありません。

 

② 出願特許について

 当社は東京大学をはじめとした各大学との共同研究において発見したがん関連遺伝子及び遺伝子産物情報等並びに医薬品候補物質等または当社が単独で見出した医薬品候補物質等について、平成29年3月末現在においては、1,274件(同一遺伝子等に係る複数の出願を含む)の特許を出願しております。しかしながら、当該特許が全て成立する保証はなく、特許出願によって当社の権利を確実に保全できる保証はありません。

 遺伝子関連の特許については、個別の遺伝子特許が及ぶ権利範囲について日米欧の3極の特許庁が合意したガイドライン等は出ているものの、遺伝子を含む天然物関連の特許について新たなガイドライン等を採択する国がある等、複雑な法律上及び事実認定上の問題等が存在しております。また、日本及びその他の国の特許関連法規、あるいは、その解釈により、競合他社、大学あるいはその他の組織が、当社に対して補償等を行うことなく技術を使用し、医薬品などの開発及び販売を行うことができる可能性があります。

 

③ 知的財産権に関する訴訟およびクレーム等について

 本書提出日現在において、当社グループの事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生したという事実はありません。

 当社グループは、現時点においては、当社グループの事業に関し他者が保有する特許等への抵触により、事業に重大な支障を及ぼす可能性は低いものと認識しております。

 ただし、潜在的なリスクとして、当社グループのような遺伝子関連企業にとって、このような知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。今後において、当社グループが第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、当社グループは弁護士や弁理士との協議の上、その内容によって個別具体的に対応策を検討していく方針でありますが、当該第三者の主張に理由があるなしにかかわらず、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社の事業戦略や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 職務発明について

 当社が職務発明の発明者から特許を受ける権利を譲り受けた場合、当社は当該発明者に対して特許法第35条第3項に定める相当の対価を支払わなければなりません。これまでに対価の支払いについて発明者との間で問題が生じたことはありませんが、潜在的なリスクとして、将来的に権利の対価の相当性について紛争が生じる可能性を否定することはできません。これらの紛争により、発明者に追加の対価を支払う事態になった場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)バイオ・テクノロジー業界等にかかるリスクについて

① 業界動向について

 近年、いわゆる「ヒトゲノム・プロジェクト」以降、バイオ・テクノロジー業界は急速に変化しており、遺伝子構造解析の段階から、遺伝子機能解析を進めることによりゲノム情報を用いた創薬、遺伝子治療、再生医療、がん個別化医療といった分野の段階に進んでおり、ゲノム研究分野は急激な市場規模の拡大が見込まれております。同時に、業界への参入も従来の製薬関連メーカーのみならず、先進医療の材料を狙う繊維メーカー、発酵技術を持つ酒造メーカー、バイオ・インフォマティクス分野での取組みが目立つIT関連企業など幅広い広がりを見せており、今後においても当該傾向は継続するものと当社は想定しております。

 また、当社グループの事業に深い関連を有する抗がん剤市場を取り巻く状況は、①高齢化の進展、②がん診断による早期発見の増加(長期的治療の増加)及び③分子標的治療薬の登場等により、市場は拡大しており、当社グループは今後においても同様に市場は拡大するものと想定しております。

 この様な市場の拡大は、参入企業の増加、潜在的な競合企業の増加の要因とも考えられ、また、異業種間の連携により技術革新などが飛躍的に進展する可能性もあり、当社グループを取り巻く事業環境は、急激な変化を生じる要素を数多く内包しているものと考えられます。

 これらのことから、当該変化に柔軟に対応できなかった場合には、当社グループの事業戦略が予想どおり進まない可能性や事業戦略の変更を余儀なくされる可能性があり、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの想定通りに市場拡大が図られなかった場合においても、当社グループの事業戦略等は変更を余儀なくされる可能性があります。

 

② 競合について

 当社グループが事業を展開するゲノム研究分野は急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入しており、競争は激化する可能性があります。また、遺伝子の機能解析分野においては、競合企業として、製薬企業のみならず他の分野における資金力等を有する企業等もあります。

 がん関連遺伝子の単離・同定や機能解析については、スピード競争的な要素も強く、競合他社が当該領域において先行した場合、当社グループの事業の優位性は低下する可能性があります。

 また、これらの競争に巻き込まれ、当社グループの事業展開において当社グループが想定する以上の資金が必要となる可能性もあります。

 当社グループは、現時点において、東京大学医科学研究所との共同研究の成果であるがん遺伝子の高精度で網羅的な解析方法等に優位性があるものと認識しておりますが、今後の競争激化による影響等により、当社グループの事業戦略や経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 技術革新について

 当社グループが行う研究分野は、いずれも技術の革新及び進歩の度合いが著しく速いバイオ・テクノロジー分野に属しております。そのため、当社は、複数の大学等公的研究機関との共同研究において、最先端の研究成果を速やかに導入できる体制を構築しております。

 しかしながら、急激な研究の進歩などにより医薬品の研究開発において有効と思われる研究成果等への対応が困難となった場合には、当社グループの事業展開に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、必要な研究成果を常に追求するためには多額の費用と時間を要することから、これにより当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)その他

① 研究活動にかかる補助金等について

 当社グループは、自社の研究領域において、公的機関が実施する補助、助成制度を積極的に活用すべく、これら事業等への申請を積極的に実施していく方針でありますが、当社グループが申請する補助事業等について必ずしも採択される保証はありません。

② インセンティブの付与について

 当社は、会社の利益が取締役及び従業員個々の利益と一体となり職務に精励する動機付けを行うため、また、社外のリソースを有効に活用し当社事業の円滑な遂行を図る目的で、当社の役員、従業員及び社外協力者等に対するインセンティブ制度を導入しております。

 なお、平成29年3月末日現在における当社の発行済株式総数は147,027,000株でありますが、これに対して、新株予約権に係る新株発行予定株数の合計は2,427,500株であります。

 なお、当該新株予約権が行使された場合は当社の株式価値は希薄化することとなり、また、株式市場での需給バランスに変動が発生し株価へ影響を及ぼす可能性もあります。

 

 

③ 自然災害等の発生について

 当社グループが関与する研究ならびに臨床試験を実施または準備している地域において地震等の大規模な自然災害が発生し、設備等の損壊やインフラの機能停止などにより研究や臨床試験が停止した場合、当社グループの事業戦略や経営成績等が影響を受ける可能性があります。

 

④ 配当政策について

 当社は株主の皆様への利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しており、経営成績および財政状態を勘案しつつ利益配当を検討してまいりたいと考えております。しかしながら、現時点では将来のがんの治療薬の上市にむけ、基礎研究、創薬研究、ならびに医薬品の開発を継続的に実施する段階にあるため、当面は内部保留に努め、研究開発資金の確保を優先しております。

 

⑤ 調達資金の使途について

 平成25年9月に実施しました公募増資および第三者割当増資により、調達した資金の使途につきましては、医薬開発領域及び創薬研究領域における研究開発費用並びに当該研究開発を実施するために要する人件費等に充当する方針であり、具体的な資金需要の発生までは、安全性の高い金融商品等で運用していく計画であります。

 バイオ・テクノロジー業界等の当社を取り巻く外部環境については変化が速いことや、新規参入等により当社グループの事業環境に劇的な変動が生じる可能性があること等から、当社の経営判断として資金について、上記の対象以外に振り向けられる可能性も否定できません。

 また、当社グループ事業の性質上、研究開発資金等の多額な資金を必要とするものでありますが、急速な成長、技術変化、市場の発展等環境の変化に伴い、当社は新たな戦略を実行し、その事業を展開するための必要資金は、現時点における想定以上に拡大する可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度における、当社の経営上の重要な契約は以下の通りであります。

(1)技術導入

① 大学等研究機関との共同研究契約

 当社は、当社の業務に有用となる技術の開発および権利の取得のために、各研究機関との間で共同研究契約を締結しております。なお、契約の概要は、以下の通りであります。

契約先

主な契約内容

シカゴ大学

新たながん治療標的の探索研究

 

② 特許を受ける権利譲渡契約

 当社は、当社の低分子医薬分野、抗体医薬分野、がんワクチン分野および診断薬および研究用試薬分野の事業化に必要な特許に関し、東京大学医科学研究所に所属する複数の研究者より特許を受ける権利を譲り受けております。なお、契約の概要は、以下の通りであります。

契約会社名

主な契約内容

東京大学医科学研究所に所属する複数の研究者

当社は譲渡の対価として、上記特許を受ける権利に係る発明を第三者に実施させ、当該第三者から収受したロイヤルティーの一定割合を譲渡人に支払う。

 

③ 特許を受ける権利譲渡契約

 当社は、当社の低分子医薬分野、抗体医薬分野、がんワクチン分野および診断薬および研究用試薬分野の事業化に必要な特許に関し、国立大学法人東京大学より特許を受ける権利を譲り受けております。なお、契約の概要は、以下の通りであります。

契約会社名

主な契約内容

国立大学法人東京大学

当社は譲渡の対価として、一定額の契約一時金を支払う。

上記特許を受ける権利に係る発明を当社が使用して得た収入の一定額を支払う。

当社が上記特許を受ける権利を第三者に実施させ、当該第三者から収受した実施料の一定割合を譲渡人に支払う。

 

(2)技術導出

① 契約

 当社は、大塚製薬株式会社との間で、がんペプチドワクチンに関して、全世界での独占的な開発・製造・販売権を供与する旨の契約を締結しております。なお、契約の概要は、以下のとおりであります。

契約会社名

主な契約内容

大塚製薬株式会社

① 当社は大腸がんをはじめとする各種がんで同定された2種のがん関連遺伝子に由来するがんペプチドワクチンの、全世界での独占的な開発・製造・販売権を同社に供与する。

② 大塚製薬株式会社は、当社に対し、一定額の一時金を支払い、また一定の条件を満たす場合、それぞれ一定額のマイルストーンを支払う。

③ 大塚製薬株式会社は、当社に対し、本契約の対象たるがんワクチンの正味販売高に応じて、上市後特定の条件を満たす期間、一定率のロイヤルティを支払う。

 

② 契約

 当社と小野薬品工業株式会社との間で、がん治療用ペプチドワクチンに関して、独占的な開発・製造・販売権を供与するための契約を締結しております。

契約会社名

主な契約内容

小野薬品工業株式会社

① 当社は、3種のオンコアンチゲン由来のペプチドワクチンに関して、肝細胞癌をはじめとした全てのがん腫を対象として、日本・韓国・台湾における独占的な開発・製造・販売権を小野薬品工業株式会社に供与する。

② 当社は、テリトリーを全世界に拡大できるオプション権を小野薬品工業株式会社に供与する。

③ 当社は、小野薬品工業株式会社に対して、開発に必要な協力を行う。

④ 当社は、本契約締結に伴い、契約一時金、開発の進捗に応じたマイルストーンならびに上市後は売上高の目標達成に応じたマイルストーン、売上高に応じたロイヤルティーを小野薬品工業株式会社から受け取る。さらに、小野薬品工業株式会社がテリトリーを全世界に拡大できるオプション権を行使した場合は、オプション権行使に伴う一時金を受け取る。小野薬品工業株式会社は、当社に対し、一定額の一時金を支払い、また一定の条件を満たす場合、それぞれ一定額のマイルストーンを支払う。

 

③ 契約

 当社は、塩野義製薬株式会社との間で、治療用ペプチドワクチン並び網膜における血管増殖性因子による治療薬に関して、独占的な開発・製造・販売権を提供する旨の契約ならびに、より有効なペプチドワクチンの探索研究を共同で行う契約を締結しております。なお、契約の概要は、以下の通りであります。

契約会社名

主な契約内容

塩野義製薬株式会社

① ペプチドワクチン研究開発の継続的な発展を目的とし、当社は、全疾患を対象とした適応拡大と、オンコアンチゲン由来の当社が権利を保有するペプチドワクチンを複数個含有したペプチドカクテルワクチンを有効成分とする医薬品開発・製造・販売権を塩野義製薬株式会社に供与する。

② 塩野義製薬株式会社は、当社に対し、一定額の一時金を支払い、また一定の条件を満たす場合、それぞれ一定額のマイルストーンを支払う。

③ 当社は塩野義製薬株式会社の開発の協力要請に合意した場合には、科学的見地からの専門的助言や説明、その他の協力や支援をする。

④ 塩野義製薬株式会社は、当社に対し、治療薬の正味販売高に応じて、当該治療薬の上市後特定の条件を満たす期間、一定率のロイヤルティを支払う。

⑤ より有効なペプチドワクチンの探索研究を共同で行う。

⑥ 当社はS-588410の食道がんに対する第Ⅲ相臨床試験費用の一部を負担する。

塩野義製薬株式会社

① 当社と塩野義製薬株式会社は、ペプチドワクチンの迅速かつ確実な創薬化をめざし、より有効なペプチドワクチンの探索研究を共同で行う。

② 塩野義製薬株式会社は、当社に対し、研究経費を支払う。

 

④ 契約

契約会社名

主な契約内容

イムナス・ファーマ株式会社

① 当社は、当社が保有するあるがん特異的膜蛋白に結合するがん治療用ヒト抗体の全世界における開発・製造・販売に関する独占的な権利をイムナス・ファーマ株式会社に許諾する。

② イムナス・ファーマ株式会社は、一定額の契約一時金を当社に支払う。

③ イムナス・ファーマ株式会社は、当該がん治療用抗体に基づいて得られた収益については、その一定率を当社へ支払う。

④ イムナス・ファーマ株式会社が、当該がん治療用抗体の販売を行った場合、正味販売高に応じて、上市後特定の条件を満たす期間、一定率のロイヤルティを当社へ支払う。

イムナス・ファーマ株式会社

① 当社は、当社が保有するがん治療用抗体の内、当社が第三者に許諾した権利以外のがん治療用抗体について優先選択権を付与する。

② 当社は、イムナス・ファーマ株式会社が選択したがん治療用抗体について抗体医薬としての全世界における開発、製造、販売の権利を同社に許諾する。

③ イムナス・ファーマ株式会社は、一定額の契約一時金を当社に支払う。

④ イムナス・ファーマ株式会社は、候補抗体選択時に一定の金額を支払う。

⑤ イムナス・ファーマ株式会社は、当該がん治療用抗体に基づいて得られた収益については、その一定率を当社へ支払う。

⑥ イムナス・ファーマ株式会社が、当該がん治療用抗体の販売を行った場合、正味販売高に応じて、上市後特定の条件を満たす期間、一定率のロイヤルティを当社へ支払う。

 

⑤ 契約

 当社連結子会社であるイムナス・ファーマ株式会社は、抗アミロイドβペプチド抗体に関する特許、ノウハウ等の独占的実施権の許諾を含む独占的開発、製造、販売等の権利を協和発酵キリン株式会社に供与する契約を締結しております。

 なお、契約の概要は以下の通りであります。

契約会社名

主な契約内容

協和発酵キリン株式会社

① イムナス・ファーマ株式会社は、アルツハイマー型認知症に対する治療薬として期待される2つの抗アミロイドβペプチド抗体に関して全世界における研究、開発、使用、製造、輸出入、流通及び販売を行うための独占的実施権を協和発酵キリン株式会社に供与する。

② 協和発酵キリン株式会社は、契約締結に伴う一時金、マイルストーン及び上市後のロイヤルティをイムナス・ファーマ株式会社に支払う。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度における研究開発費の総額は2,938百万円です。

(1)当社の事業基盤について

 国立大学法人東京大学との共同研究の成果は当社の技術基盤となるものです。

① cDNAマイクロアレイについて

 コンピューターのマイクロチップは大量の情報を高速に処理する道具として開発されたものですが、cDNA(※10)マイクロアレイ(※11)と呼ばれる技術も同様に小さな基盤上に非常に高密度にDNAを配置して、それらを手がかりに大量の遺伝子情報を獲得するために開発されたものです。また、遺伝子情報の解析においては、このように一度に全体像を捉え網羅的に解析するシステムは有用なものとして考えられております。

 当社が共同研究において使用しているのは上述のcDNAをマイクロアレイ上の特定の区画に固定している(これを「スポットしている」といい、このスポットを実施する機械を「スポッター」といいます)cDNAマイクロアレイであります。これは共同研究先である東京大学医科学研究所および当社研究施設でスポッターを利用し、cDNAと、それをスポットしたcDNAマイクロアレイを作製しております。

 このcDNAの作製方法は、大変に時間と労力のかかるものですが、以下に簡単にご説明いたします。

 まず研究用に市販されているヒトの各種正常臓器の細胞からとったmRNA(※10)と同時に、発生過程の初期のmRNAもつかまえるために胎児のmRNAを入手します。そして、逆転写酵素でcDNAを作ります。さらに、このcDNAをもとにPCR法と呼ばれる方法でcDNAを増幅します。

 このcDNAマイクロアレイの特長は、主に以下の2点です。

 

a 現在32,000種類の遺伝子をスポットしていること

 平成15年4月に発表されたヒトゲノムの完全解読終了時の情報では、約35,000個の遺伝子があるとされておりましたが、その後の解析では25,000-30,000個と一般的には考えられております。当社のマイクロアレイは32,000種類のcDNAをスポットしていることから、ほぼ全遺伝子を網羅しております。

 またマイクロアレイにスポットするcDNAの合成は、ヒトの12種類の臓器よりプールしたmRNAにより実施しているため、およそヒトの発生過程以降に発現する遺伝子はほぼ検出することができます。これをマイクロアレイ上にスポットして使っているため、ヒトの細胞内での実際の遺伝子発現に近い状態で、かつ機能が未知の遺伝子まで解析することができます。

b cDNAを利用していること

 マイクロアレイには、合成で作った25~50個くらいの核酸塩基からなるオリゴDNAとよばれるものを用いる方法と、cDNAを用いる方法があり、導入の簡便性からオリゴDNAを用いる方法が一般的です。当社はcDNAを用いる方法を採用しておりますが、これはオリゴDNAに比較してシステム構築に手間がかかる欠点はありますが、cDNAが200から1,100個までの長い核酸塩基からなっており個々の塩基の結合力が強く、マイクロアレイ洗浄時に、より厳しい条件(塩濃度や温度等の条件)で洗浄可能なため、その結果正常(相補性が正しい)な結合のみがマイクロアレイ上に残ることになり、再現性の面でオリゴDNAの方式より優れていると考えております。

 

② 抗がん剤探索のための網羅的ながん遺伝子の解析方法について

<当社のがん遺伝子の解析方法>

 

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<ステップ①>LMM法による細胞切片からのがん細胞の切り出し

 がん組織を顕微鏡下で観察すると正常細胞とがん細胞が複雑に入り混じっており、精度の高いがん遺伝子解析のためには、まずこのような組織からがん細胞の集団のみを取り出す必要があります。当社共同研究においては、LMM(Laser Microbeam Microdissection)(※12)法と呼ばれる技術を採用しております。

 

<ステップ②>がん細胞で特異的に発現する遺伝子を特定

 ステップ①で回収したがん細胞からRNA(※10)を抽出し、逆転写酵素を用い蛍光色素で標識したcDNAを作成し、がん細胞に対応する正常細胞からも同様にRNAを抽出してがん細胞とは異なる蛍光色素で標識したcDNAを作成します。

 これらを、cDNAマイクロアレイ上でがん細胞と正常細胞での遺伝子発現量の比を検出し、がん細胞で特異的に発現する遺伝子を特定します。

 

<ステップ③>がんの分子標的治療薬の標的となり得る候補遺伝子の選択

 上記で特定した候補遺伝子について、がんの分子標的治療薬のターゲットとなり得るか否かを下記の実験により検証します。

a がん細胞の増殖に関与しているか否かを、遺伝子を直接細胞に入れた際の細胞増殖促進効果の有無で確認する。

b 遺伝子の働きを阻害することにより、がん細胞の増殖が阻害されるか否かを確認する。

c 心臓や肺など、生命の維持に重要な臓器で発現が低いか否かを、cDNAマイクロアレイで得た正常臓器における発現データベース等により確認する。

 

③ 研究の特徴について

 当該共同研究における主な特徴は、以下の通りであります。当社は、これらの各要素を組み合わせた解析スキームに研究の優位性があり、各種のがんにおいて得られた遺伝子情報等は、治療効果が高く、かつ副作用が少ない抗がん剤等の開発や、特異性の高いがん診断薬の開発に有用であると認識しております。なお、現時点においては、第三者が同様の遺伝子解析を高精度で大規模に実施することは極めて困難であるものと考えておりますが、新たな研究手法等が確立された場合においては、今後における当該優位性が継続する保証はありません。

 

a 臨床症例に基づいた研究成果であること

 当社の東京大学との共同研究は、同大学の医科学研究所が協力医療機関から収集した臨床症例に基づくものであり、各がん種について多数の症例の解析が可能となっております。

 

b LMM法によるがん細胞の分離により精度の高い解析が可能であること

 従来の研究開発においては、がん組織から直接RNAを回収していたので、がん細胞に加え正常細胞の混入も多く、結果としてがん細胞での遺伝子発現変化が反映できないことが少なからず生じておりました。当社共同研究においては、高度な病理学的知識を有する研究者ががん細胞および正常細胞を判別した上でLMM法によりがん組織からのがん細胞の切り出し作業を実施しており、多くの手間と時間が必要となるものの、ほぼ100%の純度のがん細胞分離が可能であり、当該がん細胞のみを解析に用いることにより解析結果の正確性が向上しております。

 

c 遺伝子解析においてcDNAマイクロアレイを利用していること

 当社が使用しているcDNAマイクロアレイは、元東京大学医科学研究所教授(現 シカゴ大学教授)である中村祐輔氏が独自に開発したものであり、その特徴として、ア)精度を高めるため独自に開発したcDNAのセットを利用していること、イ)現在32,000種類の遺伝子をスポットしていること、ウ)機能未知の遺伝子および新規遺伝子も解析対象となること、等であります。

 

d 特定された候補遺伝子とがんとの関連を複数の実験により検証していること

 前述の通り、近年においては分子標的治療薬という概念が確立し、肺がん、乳がんおよび慢性骨髄性白血病に対する抗がん剤の開発がなされており、特定のがん患者に対して一定の効果が生じているものと考えられます。しかしながら、当社においては、これらの抗がん剤について効果、特異性や副作用の観点から見ると必ずしも十分なものではないと認識しております。

 抗がん剤のターゲットとなる遺伝子はがん細胞のみに特異的に発現するのではなく、多くの正常臓器にも共通に発現している場合があることから、それらの副作用の原因として、抗がん剤が正常細胞に対しても作用してしまうことが考えられます。当該解析スキームにおいては、マイクロアレイによる解析から特定されたがん細胞で特異的に発現上昇している候補遺伝子について、ア)細胞の増殖に関与するもの、イ)働きを阻害するとがん細胞が増殖を停止する、もしくは死滅するもの、ウ)生命の維持に不可欠な臓器では発現していないもの等の条件により、分子標的抗がん剤のターゲットとして適当か否かを複数の実験により検証し、絞込みを行っており、がん細胞に対してより特異的で、かつ副作用の少ない抗がん剤等の開発に結びつくシーズの提供が可能になるものと考えております。

 

(2)研究開発活動

 当社グループは、元東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長(現、シカゴ大学教授)中村祐輔教授と共同で、ほぼ全てのがんを対象とした網羅的な遺伝子発現解析等を実施し、既にがん治療薬開発に適した多くの標的分子を同定しております。また、それらの標的に対し、低分子医薬、がん特異的ペプチドワクチン、抗体医薬等の、各領域における創薬研究を積極的に展開し、これら創薬研究の成果を基にした複数の臨床試験を実施しており、臨床試験準備中の医薬品候補物質も複数有しております。

 なお、平成29年3月31日現在、当社は全世界で442件の特許を取得しております。

<基礎研究領域>

 創薬ターゲットの特定等を行う基礎研究領域においては、ヒト全遺伝子の遺伝子発現パターンを網羅的に検索できるcDNAマイクロアレイのシステムによる大腸がん、胃がん、肝臓がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、食道がん、前立腺がん、膵臓がん、乳がん、腎臓がん、膀胱がんおよび軟部肉腫等について発現解析が終了しております。これらの発現解析情報からがんで発現が高く正常臓器では発現がほとんどない遺伝子を選択し、更に機能解析により、がん細胞の生存に必須な多数の遺伝子を分子標的治療薬の標的として同定しております。

<創薬研究領域>

 医薬品候補物質の同定および最適化を行う創薬研究領域においては、医薬品の用途毎に、より製品に近い研究を積極的に展開しております。

 低分子医薬につきましては、7種のがん特異的タンパク質を標的とする創薬研究を進めております。そのうち1種の標的であるリン酸化酵素(キナーゼ)については、医薬品候補化合物の臨床試験を実施中です。(詳細は、以下、<医薬開発領域>低分子医薬をご覧ください。)他の1種のリン酸化酵素については、これまでに得た高活性化合物に基づきリード最適化作業を進め、in vivoで強力な腫瘍増殖抑制効果を示すOTS964等複数の高活性化合物を同定しております。これらについては、医薬品候補化合物として臨床開発する為の薬効薬理・薬物動態・毒性試験を進めております。さらに、別の3種の標的酵素タンパク質に関して、これまでの構造活性相関研究の結果得られた多数の高活性化合物に基づきリード最適化作業を進め、有望化合物に対してin vivoでの薬効試験を実施中です。また、さらに別の2種の標的タンパク質に関して、大規模化合物ライブラリのスクリーニングから得た高活性化合物骨格につき、リード化合物獲得に向けた新規化合物合成と構造活性相関研究を進めております。

 がん特異的ペプチドワクチンにつきましては、これまでに日本人および欧米人に多く見られるHLA-A*24:02およびA*02:01を中心に、大腸がん、胃がん、肺がん、膀胱がん、腎臓がん、膵臓がん、乳がんおよび肝臓がんなどを標的とした計43遺伝子を対象としたペプチドワクチンを既に同定しておりますが、それら以外にもA*11:01, A*33:03, A*01:01およびA*03:01など、様々なHLAに対応したより多くのエピトープペプチドのスクリーニングを実施しております。さらに、塩野義製薬株式会社と、がん特異的ペプチドワクチンの迅速かつ確実な創薬化を目指した共同研究を実施しております。

 このように、独創的な分子標的治療薬の創製を目指した創薬研究を中心に積極的に展開しております。

<医薬開発領域>

 医薬開発領域においては、当社グループ独自で、ならびに複数の製薬企業との提携による開発を、以下の通りそれぞれ進めております。

低分子医薬

 がん幹細胞の維持に重要な分子であるMELK(Maternal Embryonic Leucine zipper Kinase) を標的としたOTS167については、米国で実施しておりました標準療法不応の固形がんに対する第Ⅰ相臨床試験により、静脈投与において、本試験目的の安全性と薬物動態の確認が達成されました。本試験によって得られたデータはOTS167の後続する臨床試験計画と製剤開発に大きな意義をもたらしており、OTS167の急性骨髄性白血病に対する第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を米国にて実施しております。この臨床試験は、急性骨髄性白血病の患者さんを対象とし、OTS167の静脈内反復投与における安全性および推奨投与量の確認を行い、確認後には、急性骨髄性白血病を含む予後不良の各種白血病についてのPOC(Proof of Concept : 有効性や安全性を含めて作用機序などが臨床において妥当であることの証明)を獲得することを目的とするものです。また、OTS167の乳がんに対する第Ⅰ相臨床試験を米国コーネル大学(Weill Cornell Medicine)にて開始いたしました。この臨床試験は、トリプルネガティブ乳がんを含む乳がんの患者さんを対象とし、OTS167のカプセル剤による経口投与における安全性および推奨投与量の確認を主目的とし、副次的にトリプルネガティブ乳がんに対する臨床上の有効性を確認するものです。なお、OTS167は、オーストラリアで実施しておりました健常成人を対象とした経口投与による消化管吸収性(バイオアベイラビリティ)の確認を主たる目的とする臨床試験において、ヒトでの良好な経口吸収性が確認されています。

 OTS167の標的は、新規キナーゼのMELK (Maternal Embryonic Leucine zipper Kinase)であり、がん幹細胞に高発現し、その維持に重要な役割をしているタンパク(キナーゼ)です。そのキナーゼを阻害し、強い細胞増殖抑制効果が期待できる新しい作用機序(ファースト・イン・クラス)の分子標的治療薬です。 OTS167 は、すでに動物試験において、肺がん、前立腺がん、乳がん、膵臓がんなどに対し、強力な抗腫瘍効果が確認されています。

 また、細胞分裂に重要ながん特異的新規標的分子(TOPK)に対する最終化合物を同定しております。動物実験で、がんの消失等顕著な結果が得られたことから、臨床試験開始を目指し、製剤化検討および非臨床試験を進めております。なお、TOPK阻害剤OTS964は、米国立がん研究所が提供するがん治療薬候補化合物特性評価及び安全性評価プログラム(NCL characterization プログラム)に採択されており、本化合物の非臨床試験開発が促進されることが期待されます。

がん特異的ペプチドワクチン

 がん特異的ペプチドワクチンにつきましては、提携先製薬企業との戦略的対話を促進し、提携先が実施する臨床開発の側面支援、後方支援を強化して参りました。

 塩野義製薬株式会社とは、当社がライセンスアウトしているがん特異的ペプチドワクチンS-588410の臨床開発を支援する目的で、食道がん患者さんを対象とした第Ⅲ相臨床試験実施に関する覚書を締結しており、塩野義製薬株式会社が臨床試験を実施しております。なお、塩野義製薬株式会社は、S-588410の食道がん第Ⅲ相臨床試験のほか、膀胱がんを対象としたS-588410について日欧で第Ⅱ相臨床試験(目標症例数登録完了)を、頭頸部がんを対象としたS-488210は欧州で第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を、それぞれ実施しております。

 小野薬品工業株式会社と提携しております、がん特異的ペプチドワクチンONO-7268MX1ならびにONO-7268MX2については、小野薬品工業株式会社が肝細胞がんを対象とした第Ⅰ相臨床試験を実施しております。

抗体医薬

 がん治療用抗体OTSA101 については、肉腫治療の世界的権威であり、欧州がん研究・治療機構(European Organization for Research and Treatment of Cancer:EORTC)元会長のJean-Yves Blay 教授主導のもと、軟部肉腫の1種である滑膜肉腫に対する第Ⅰ相臨床試験を実施しておりましたが、臨床試験の主目的であった、安全性と体内集積につきまして良好な結果が確認でき終了いたしました。今回の臨床試験の結果を踏まえ、企業主導の次の臨床試験を計画し、日米欧の承認申請を目指してまいります。

 また、当社連結子会社であるイムナス・ファーマ株式会社が協和発酵キリン株式会社にライセンスアウトしております抗アミロイドβ(Aβ)ペプチド抗体KHK6640については、協和発酵キリン株式会社が、アルツハイマー型認知症に対する第Ⅰ相臨床試験を欧州ならびに日本にて実施しております。

<がん個別化医療への取組み>

TCR解析サービス

 がん免疫療法における最先端の取組みとして、当社は、シカゴ大学医学部中村祐輔研究室において開発された、次世代シーケンサーを用いてT細胞受容体を解析する方法を導入し、当社ワクチン事業を、科学的エビデンスを重視して推進するとともに、製薬企業、医療機関、研究機関等に対してTCR解析サービスを提供する事業を開始いたしました。学会発表やセミナー開催による啓蒙活動により、がん領域の研究者を中心に事業を拡大する見込みです。これは、がん患者さんのゲノム等の情報をもとに、患者さん一人ひとりに最適な医療を提供する、がん個別化医療に必須の技術となるものです。

 

 

 

[用語解説]

(※10)mRNA、cDNA、RNA

RNAはリボ核酸、mRNAはRNAのうち、メッセンジャーすなわち「伝令」の役割をするものであります。人間の体は約60兆個の細胞によって作られていますが、体の構造や働きはおもにタンパク質によって決まっております。そのタンパク質の設計図は遺伝子であり、そして、遺伝子の本体はDNAであります。このDNAは細胞の核の中にある染色体に存在しておりますが、タンパク質は設計図であるDNAから直接作られるのではなく、一旦、DNAからRNAが作られ、そのRNAが翻訳されてタンパク質となります。この一旦作られるRNAを「伝令」すなわちメッセンジャーRNA(mRNA)といいます。つまり、遺伝子情報の流れはDNA→mRNA→タンパク質というようになっております。cDNAは、mRNAから逆転写酵素を用いた逆転写反応によって合成されたDNAで、イントロンを含まない状態の遺伝子(塩基配列)を知ることができることから、遺伝子のクローニングに広く利用されております。

(※11)マイクロアレイ

小さな基盤上に非常に高密度にDNAを配置し、それらを手がかりに大量の遺伝子情報を獲得することを目的として開発されたシステム。現在、遺伝子発現情報の解析において有用なものであると考えられております。

(※12)LMM(Laser Microbeam Microdissection)

がん組織を顕微鏡下で観察すると正常細胞とがん細胞が複雑に入り混じっており、がん遺伝子の解析のためには、まずこのような組織からがん細胞の集団だけを取り出す必要があります。当社では共同研究において、LMM(Laser Microbeam Microdissection)法と呼ばれる技術を採用しております。LMM法による手順の概要は、以下の通りであります。

イ)ガラススライドに置いた組織片上に特別なフィルムを貼り付ける。

ロ)コンピューターの画面を見ながら顕微鏡下に取り出したい部分を指定する。

ハ)その部分だけにレーザー光を当てることによって、フィルムの基質を溶かし、目的の組織部分をフィルムに固定し、がん細胞だけを取り出す。

 

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析は、以下の通りであります。

 なお、本項に記載した将来に関する事項は本書提出日現在において判断したものであり、不確実性を内在しており、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性があります。

(1)収益及び費用面の特徴

① 収益面の特徴

 当社グループは、製薬企業との契約により、その対価については、契約一時金、研究協力金、開発協力金、マイルストーンおよびロイヤリティ等を段階的に受領することとしております。

 契約一時金は、契約時に一定の権利の付与に対して受取る対価として一括収益計上しており、研究協力金および開発協力金は製薬企業より契約に基づく研究開発に対する経済的支援として受領するものであり、役務の提供に基づき収益計上しております。

 マイルストーンは自社あるいは提携先製薬企業における研究開発の進捗(予め設定されたイベント達成等)に応じて受取る対価、ロイヤリティは製薬企業が医薬品として上市された場合に売上等の一定率を対価として受領するものであり、製薬企業等からの報告等に基づき発生時に収益計上することとしております。

 当社グループが契約に基づき受領する収益のうち、研究協力金及び開発協力金については、研究および開発の内容等に応じて複数年に渡り受領することとされておりますが、一部については当該協力金について規定されていないものもあります。

 一般的に医薬品の開発期間は基礎研究開始から上市までに通常10年以上の長期間に及ぶものでもあります。事業収益の発生については、その多くが契約締結先の製薬企業等の研究開発の進捗および医薬品発売・販売の状況等に依存するもので、これらが事業収益として計上されるにはかなりの長期間を要する可能性があり、またこれらの事業収益が計上されない可能性もあります。

 さらに、製薬企業等との契約締結の可否、契約締結時期および収益の発生時期によって当社グループの業績は大きく変動する傾向にあり、これによる業績の上期または下期への偏重が生じる可能性、または場合によっては決算期ごとの業績変動要因となる可能性があります

 

② 費用面の特徴

 当社グループは研究開発型企業として、当連結会計年度においては研究開発費2,938百万円を計上しております。

 当社グループは提携先との共同開発に加えて、当社グループ独自での臨床開発に積極的に取り組んでいく方針であります。そのため、今後は、臨床試験を実施する開発パイプラインの進展や拡大、積極的な自社の創薬研究等により、多額の研究開発費が必要となると想定されます。しかしながら、他の製薬企業との契約締結が進まない場合や既存の提携先との契約解消等が生じた場合は、当社グループの業績の圧迫要因として業績に悪影響が生じる可能性があります。

 

(2)当連結会計年度の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析

① 経営成績の分析

 当連結会計年度における連結事業収益につきましては、提携先製薬企業からのマイルストーン、分析試験受託、研究用試薬販売のロイヤルティーの受領により、286百万円(前期比19百万円の増加)となりました。

 また、医薬品候補物質等の基礎研究、創薬研究の継続的な実施による研究開発費用の計上に加え、低分子医薬、がん特異的ペプチドワクチン、抗体医薬の3つの領域についての臨床開発進展による費用計上を主な要因として、連結営業損失は3,004百万円(前期は2,980百万円の損失)、連結経常損失は3,008百万円(前期は2,963百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は3,002百万円(前期は2,788百万円の損失)となりました。

 なお、当社及び連結子会社は「医薬品の研究及び開発」ならびにこれらに関連する事業内容となっており、事業区分が単一セグメントのため、セグメント別の記載を省略しております。

 

② 財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産は、10,592百万円(前連結会計年度末比3,070百万円減少)となりました。内訳としては、流動資産は10,288百万円(同 2,999百万円減少)、これは現金及び預金が2,997百万円減少したことが主な要因となっております。固定資産は303百万円(同 70百万円減少)となりました。

 負債の合計は488百万円(前連結会計年度末比60百万円減少)となりました。流動負債は369百万円(同 1百万円減少)となりました。これは、未払金が59百万円、未払法人税等が22百万円増加した一方、前受金が83百万円減少したことが主な要因となっています。固定負債は118百万円(同 58百万円減少)となりました。

 純資産は、10,104百万円(前連結会計年度末比3,010百万円減少)となりました。これは、利益剰余金が3,002百万円減少したことが主な要因となっております。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、10,072百万円(前連結会計年度末比 2,997百万円減少)となりました。

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況は以下の通りです

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金の減少は、2,988百万円(前連結会計年度末は、2,898百万円の減少)となりました。これは、減価償却費89百万円の計上、および未払金65百万円の増加により資金が増加した一方、税金等調整前当期純損失2,997百万円、および前受金83百万円減少により資金が減少したことが主な要因となっております。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金の減少は、11百万円(前連結会計年度末は、10,883百万円の増加)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出10百万円により資金が減少したことが主な要因となっております。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金の増加は、2百万円(前連結会計年度末は、12百万円の増加)となりました。これは、株式の発行による資金の増加2百万円が要因となっております。

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

平成25年3月期

平成26年3月期

平成27年3月期

平成28年3月期

平成29年3月期

自己資本比率(%)

81.3

90.0

93.1

92.9

91.6

時価ベースの自己資本比率

(%)

552.2

131.9

332.7

343.2

340.1

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。

(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。

(注3)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しています。

(注4)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。

(注5)「キャッシュ・フロー対有利子負債比率」、「インタレスト・カバレッジ・レシオ」については有利子負債がないため記載しておりません。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループが現在計画している資金計画については、共同研究費、研究開発要員の人件費及び外注費等の研究開発資金、自社の研究用設備等の設備資金に充当する方針であり、具体的な資金需要の発生までは、安全性の高い金融商品で運用していく計画であります。

 バイオ・テクノロジー業界等の当社を取り巻く外部環境については変化が速いことや、新規参入等により当社グループの事業環境に劇的な変動が生じる可能性があること等から、当社の経営判断として資金について、上記の対象以外に振り向けられる可能性も否定できません。

 また、当社グループ事業の性質上、研究開発資金等の多額な資金を必要とするものでありますが、急速な成長、技術変化、市場の発展等環境の変化に伴い、当社は新たな戦略を実行し、その事業を展開するための必要資金は、現時点における想定以上に拡大する可能性があります。