第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当第3四半期連結累計期間において、前連結会計年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更があった事項は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は当四半期連結会計期間の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 以下の見出しに付された項目番号は、前事業年度の有価証券報告書における「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 事業等のリスク」の項目番号に対応したものです。

 

(10)その他

⑧ 新株予約権(第三者割当て)に関するリスクについて

 当社は、2018年12月26日取締役会決議に基づき、2019年1月15日に大和証券株式会社を割当先とする行使価額修正条項付第30回新株予約権(第三者割当て)293,000個(29,300,000株)を発行しました。

 なお、当該新株予約権は2020年1月17日に行使完了となり、その結果、2,728,049千円(発行に際して払い込まれた金額の総額12,013千円を合算した金額は、2,740,062千円)を調達しました。

 

(継続企業の前提に関する重要事象等)

 当社グループは、研究開発型企業として、医薬品の臨床試験を実施する開発パイプラインの拡充や拡大、積極的な創薬研究、がんプレシジョン医療への積極的な取組み等により、多額の研究開発費が必要となっております。一方で、特に、医薬品の開発期間は基礎研究から上市まで通常10年以上の長期間に及ぶものでもあり、収益に先行して研究開発費が発生している等により、継続的に営業損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローが発生しております。

 このようなことから、当第3四半期連結会計期間末において、今後の資金計画を含め、より保守的に検討したところ、当社グループは、当第3四半期連結会計期間末において、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しているものの、当第3四半期連結会計期間末現在で、現金及び預金を4,470百万円有しており、概ね1.5年分の研究開発費は確保していることから、当面は事業活動の継続性に懸念はなく、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 第3四半期連結累計期間における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間の末日現在において判断したものです。

(1)財政状態及び経営成績の状況

 当社グループは、低分子医薬、がんペプチドワクチン、抗体医薬等の創薬研究を進展させるとともに、後期臨床開発を目指したがん幹細胞維持に重要な分子であるMELKを標的としたOTS167の米国での臨床試験、がん治療用抗体医薬OTSA101の企業主導の臨床試験を開始する等、当社グループ独自で実施している臨床開発の推進に加え、提携先製薬企業との戦略的対話をより促進し、提携先が実施する臨床開発の側面支援、後方支援を強力に推し進めて参りました。さらにはがんプレシジョン医療関連事業として、がん細胞の詳細な遺伝子解析サービス(全エクソーム解析、RNAシーケンス解析、ネオアンチゲン解析)、血中のがん細胞を早期検出するためのリキッドバイオプシーといったがん遺伝子の大規模解析検査及びTCR/BCRレパトア解析、免疫反応解析等の解析サービスの共同研究及び事業化を進めて参りました。

 これらの結果、当第3四半期連結会計期間末の総資産は、4,866百万円(前連結会計年度末比501百万円減少)となりました。内訳としては、流動資産は4,637百万円(同 417百万円減少)、これは現金及び預金が387百万円減少したことが主な要因となっております。固定資産は228百万円(同 83百万円減少)となりました。これは建物が16百万円、工具器具及び備品が52百万円、それぞれ減少したことが主な要因となっております。

 負債の合計は397百万円(前連結会計年度末比99百万円減少)となりました。流動負債は267百万円(同 99百万円減少)となりました。これは、未払法人税等が66百万円減少したことが主な要因となっております。固定負債は129百万円(同 0百万円増加)となりました。

 純資産は、4,468百万円(前連結会計年度末比401百万円減少)となりました。これは、資本金が728百万円、資本準備金が728百万円、それぞれ増加した一方、利益剰余金が1,775百万円、新株予約権が93百万円、それぞれ減少したことが主な要因となっております。

 当第3四半期連結累計期間における連結事業収益につきましては、受託検査サービスによる収入や複数の契約一時金等の受領により、161百万円(前期比86百万円減少)となりました。また、医薬品候補物質の基礎研究、創薬研究の継続的な実施による研究開発費用の計上に加え、低分子医薬、がんペプチドワクチン、抗体医薬の3つの領域についての臨床開発進展による費用計上、がんプレシジョン医療関連事業に関する研究開発費用の計上を主な要因として、連結営業損失は1,735百万円(前期は2,146百万円の損失)、連結経常損失は1,738百万円(前期は2,152百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失は1,775百万円(前期は1,894百万円の損失)となりました。

 なお、本書提出日現在、臨床試験進捗に伴うマイルストーンの発生をリリースしておりますが、本件は2020年3月期第4四半期に事業収益として計上することとなります。

 セグメント別経営成績は、次のとおりであります。

a. 「医薬品の研究及び開発」並びにこれらに関連する事業

 複数の契約一時金等の受領により、事業収益は12百万円(前期比190百万円減少)となりました。また、医薬品候補物質の基礎研究、創薬研究の継続的な実施による研究開発費用の計上に加え、低分子医薬、がんペプチドワクチン、抗体医薬の3つの領域についての臨床開発進展による研究開発費用の計上を主な要因として、営業損失は1,152百万円(前期は1,328百万円の損失)となりました。

 なお、研究開発の状況の詳細につきましては、「(3)研究開発活動 (a)「医薬品の研究及び開発」並びにこれらに関連する事業」をご覧ください。

b. がんプレシジョン医療関連事業

 受託検査サービスによる収入等の受領により、事業収益は148百万円(前期比104百万円増加)となりました。また、遺伝子解析サービス(全エクソーム、RNAシーケンス、ネオアンチゲン解析)、リキッドバイオプシー解析サービス、TCR/BCRレパトア解析サービス、免疫反応解析サービス等に関する研究開発費用の計上を主な要因として、営業損失は312百万円(前期は645百万円の損失)となりました。

 なお、研究開発の状況の詳細につきましては、「(3)研究開発活動 (b)がんプレシジョン医療関連事業」をご覧ください。

 

(2)事業上及び財務上の対処すべき課題

 当社グループの重要事象等についての分析・検討内容及び当該重要事象等を解消し、又は改善するための対策案は、次のとおりであります。

① 基礎研究の継続的な実施

 当社グループは2001年から2013年にかけて元東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長(現 公益財団法人がん研究会 がんプレシジョン医療研究センター所長、東京大学名誉教授、シカゴ大学名誉教授)中村祐輔教授との共同研究により、ほぼ全てのがんを対象とした網羅的な遺伝子発現解析等を実施し、多くのがん治療薬開発に適した標的分子を同定いたしました。現在、それらの標的に対する創薬研究を積極的に展開し、これら創薬研究の成果を基にした複数の臨床試験を実施中または準備中の医薬品候補物質を多数有しております。

 基礎研究の継続的な実施は当社グループ事業の将来にかかる重要課題の一つとして認識しており、今後も当社独自及び共同研究等による研究体制の充実と円滑な推進のための対応を図ってゆく方針であります。

② 創薬研究の確実な推進

 当社グループは基礎研究の成果を基に、臨床応用を目指して低分子医薬、がんペプチドワクチン、抗体医薬等の創薬研究を実施し、ファースト・イン・クラスの創薬を目指します。

③ 臨床開発の確実かつ迅速な推進

 当社グループは、「有効性が高く、より副作用の少ないがん治療薬・治療法を一日も早くがんに苦しむ患者さんに届けること、がんとの闘いに勝つこと」を企業使命とし、国内外において、当社グループ独自で複数の臨床試験を行っており、各提携先製薬企業とも共同で臨床試験を行っております。当社グループは、非臨床試験データに基づいた適応症の選択を行い、臨床開発を確実かつ迅速に推進させてゆく方針です。

④ 新規提携先の開拓および既存提携先との提携事業の確実な推進

 当社グループは、一日も早くがん治療薬を上市することを企業使命とし、今後とも新規提携先を積極的に開拓するとともに、提携先製薬企業との戦略的対話を促進し、提携先が実施する臨床開発の側面支援、後方支援を強化することにより提携事業を確実かつ迅速に進め、一日も早く当社グループの医薬品候補化合物の上市を目指します。

⑤ がんプレシジョン医療関連事業への取組み

 がんプレシジョン医療関連事業につきましては、がん細胞の詳細な遺伝子解析サービス(全エクソーム解析、RNAシーケンス解析、ネオアンチゲン解析)、血中のがん細胞を早期検出するためのリキッドバイオプシー、TCR/BCRレパトア解析、免疫反応解析等の解析サービスの共同研究や事業化に加えて、ネオアンチゲン樹状細胞療法やTCR遺伝子導入T細胞療法等の新しい個別化がん免疫療法の研究開発を進めて参ります。

⑥ 経営環境及び経営者の問題意識と今後の方針について

 当社グループの事業に深い関連を有する抗がん剤市場を取り巻く状況は、高齢化の進行、がん診断による早期発見の増加、分子標的治療薬の登場、及びがんプレシジョン医療の進展等により、市場は拡大しており、当社グループは今後においても同様に市場は拡大するものと想定しております。

 このような市場の拡大は、参入企業の増加、潜在的な競合企業の増加の要因とも考えられ、また、異業種間の連携により技術革新等が飛躍的に進展する可能性もあり、当社グループを取り巻く事業環境は、急激な変化を生じる要素を数多く内包しているものと考えられます。このような経営環境のもと、当社グループの事業展開における重要な要素としては、「事業推進のスピード」「事業領域の拡大」「リスクとリターンのバランス」といった3点が挙げられます。

 事業推進のスピードにつきましては、医薬品業界、特にバイオテクノロジー業界においては、世界的な新薬開発競争とその新薬開発のための様々な研究開発や技術開発が世界的規模で行われており、当社グループの研究活動もこのスピード競争を勝ち抜き、質の高い研究成果を一日も早く臨床開発へ進展させることが当社の優位性を確保する上で非常に重要であると認識しております。また、今後市場が拡大すると予想するがんプレシジョン医療につきましても、質の高いがん遺伝子の大規模解析検査ならびにがん免疫療法の研究開発をより早く進展させることが非常に重要であると認識しております。

 事業領域の拡大につきましては、現在当社グループは、低分子医薬、がんペプチドワクチン、抗体医薬等で創薬研究を展開しており、さらにがんプレシジョン医療への積極的な取組み等により、今後とも、より積極的に事業を拡大していく方針であります。このような事業領域の拡大により、当社グループの研究成果を、より多くの医薬品開発用途へ応用することにより、事業価値を高めたいと考えています。

 最後にリスクとリターンのバランスですが、当社グループの最大の強みは、数多くのゲノム創薬にもとづく創薬ターゲットを所有していることであります。ただ、それら多数の創薬ターゲットの全てについて、多岐の用途にわたる創薬研究と臨床開発を、当社グループのみの資源と費用で、かつ世界的な競争に打ち勝つスピードで遂行することは、膨大な設備投資と研究開発費を必要とし、資金的なリスクを生じせしめます。当社グループとしては、製薬企業等との積極的な提携契約の締結や研究開発の提携等により、製品化の可能性を極大化しつつ、リスクは経営上合理的なレベルにとどめる方針を現時点では採用しています。本方針により、事業展開からの成果や利益といったリターンをパートナーと共有することにはなりますが、可能性のある製品を商業化できないリスクやスピード競争に負けるリスクを低減することができます。今後ともリスクとリターンのバランスに十分配慮し、最善と考えられる経営判断を行っていきたいと考えております。

 なお、当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針を定めており、その内容等(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりであります。

①基本方針の内容の概要

 当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の財務及び事業の内容や当社の企業価値の源泉を十分に理解し、当社の企業価値・株主共同の利益を確保、向上していくことを可能にする者であるべきと考えています。

 当社は、金融商品取引所に株式を上場していることから、当社株式の取引は、株主、投資家の自由意思に委ねるのが原則であり、大規模買付行為がなされた場合においても、当社の企業価値・株主共同の利益の確保、向上に資するものである限り、これをすべて否定するものではありません。最終的には、株式の大規模買付提案に応じるべきかどうかは株主の皆様の決定に委ねられるべきと考えています。

 しかしながら、大規模買付提案の中には、例えばステークホルダーとの良好な関係を保持し続けることが困難であると予測されるなど、当社グループの企業価値・株主共同の利益を損なう恐れのあるものや、当社グループの企業価値を十分に反映しているとは言えないもの、あるいは株主の皆様が最終的に決定をされるために必要な情報が十分に提供されずに、大規模買付行為が行われる可能性も否定できません。

 とりわけ当社グループは「有効性が高く、より副作用の少ないがん治療薬・治療法を一日も早くがんに苦しむ患者さんに届けること、がんとの闘いに勝つこと」を企業使命として掲げており、患者様の生命や健康に直結する事業を進めていることから、その経営においては高い倫理観とバイオテクノロジーに関する専門的な知識・ノウハウ等が要求されます。

 このようなことから、当社は、大規模買付行為がなされた場合には、株主の皆様に提供される情報、検討機会を十分確保する方策が必要であると考えています。

②基本方針の実現に資する取組み

 当社の研究開発は、2001年4月からの東京大学医科学研究所との共同研究により出発致しました。当該研究は、各がん種において特異的に発現する遺伝子を網羅的に解析することにより、創薬ターゲットとなるがん関連遺伝子及び遺伝子産物を単離することを目的としており、主に基礎研究領域に重点を置いたものとなっています。

 その後、基礎研究の継続的な実施による進展とともに、当社グループの事業領域は、より医薬品の開発に近い創薬研究へと拡大しており、低分子医薬、がんペプチドワクチン、抗体医薬の各領域において、臨床応用を目指した創薬研究を実施しております。さらに、国内外において、各提携先製薬企業と共同で、または当社グループ独自で複数の臨床試験を実施しております。

 このように、当社グループは「有効性が高く、より副作用の少ないがん治療薬・治療法を一日も早くがんに苦しむ患者さんに届けること、がんとの闘いに勝つこと」という企業使命の実現のため、日々研究開発を推進しています。当社グループは、これらの研究開発の進展こそが当社グループの企業価値向上の源泉であると考えています。

③基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

 当社は、上記基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの一つとして、2009年5月27日の取締役会において、当社株式の大規模買付行為に関する対応策(以下「本プラン」といいます)を導入することに関して決定を行い、2009年6月26日開催の第8回定時株主総会において承認可決、2012年5月28日の取締役会において原施策に軽微な修正を施したうえで内容に大幅な変更無く継続導入することに関して決定を行い、2012年6月27日開催の第11回定時株主総会において承認可決、2015年5月27日の取締役会において内容に大幅な変更無く継続導入することに関して決定を行い、2015年6月22日開催の第14回定時株主総会において承認可決、2018年5月23日の取締役会において内容に大幅な変更無く継続導入することに関して決定を行い、2018年6月22日開催の第17回定時株主総会において承認可決されております。

(a)本プランの概要

(ⅰ)本プランに係る手続きの設定

 本プランは以下のアまたはイに該当する当社株式の買付けまたはこれに類似する行為(但し、当社取締役会が承認したものを除きます。当該行為を、以下、「大規模買付け等」といいます。)がなされる場合を適用対象とします。大規模買付け等を行い、または行おうとする者(以下、「買付者等」といいます。)は、予め本プランに定められる手続きに従わなければならないものとします。

ア.当社が発行者である株式について、保有者の株式保有割合が20%以上となる買付け

イ.当社が発行者である株式について、公開買付けに係る株式の株式所有割合およびその特別関係者の株式所有割合の合計が20%以上となる公開買付け

(ⅱ)対抗措置の内容

 上記(ⅰ)記載の対抗措置として、当社は、上記(ⅰ)記載の買付者による行使は認められないとの条項及び当社が当該買付者以外の者から当社株式と引き換えに当該新株予約権を取得する旨の条項等が付された新株予約権を、当社株式1株に対し1個を上限として、当社取締役会が本新株予約権無償割当決議において別途定める割合で、その時点の全ての株主に対して割り当てる手法による無償割当て、その他法令または当社定款が取締役会の権限として認める措置を行います。

(b)本プランの有効期間

 本プランの有効期間は、2018年3月期の事業年度に関する定時株主総会終結の時から2021年6月開催予定の定時株主総会終結の時までと定めています。

(c)本プランの廃止および変更

 当社の株主総会において本プランの変更または廃止の決議がなされた場合には、本プランは当該決議に従い、その時点で変更または廃止されるものとします。また、当社の株主総会で選任された取締役で構成される取締役会により本プランの廃止の決議がなされた場合には、本プランはその時点で廃止されるものとします。

 なお、当社取締役会は、会社法、金融商品取引法、その他の法令若しくは金融商品取引所規則の変更またはこれらの解釈・運用の変更、または税制、裁判例等の変更により合理的に必要と認められる範囲で独立委員会の承認を得た上で、本プランを修正し、または変更する場合があります。当社は、本プランが廃止または変更された場合には、当該廃止または変更の事実および(変更の場合には)変更内容その他当社取締役会が適切と認める事項について、情報開示を行います。

④上記取組みが基本方針に沿い、当社の株主の共同の利益を損なうものではなく、当社役員の地位の維持を目的とするものでないことおよびその理由

 本プランは、経済産業省及び法務省が2005年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保または向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、事前開示・株主意思の原則、必要性・相当性確保の原則)を充足しています。また、本プランは、企業価値研究会が2008年6月30日に発表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」を踏まえて設計されているものです。

(a)企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則

 本プランは、上記に記載のとおり、当社株式に対する大規模買付け等がなされた際に、当該大規模買付け等に応じるべきか否かを株主がご判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提示するために必要な情報や期間を確保し、株主の皆様のために買付者等と交渉を行うこと等を可能とすることにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させるという目的をもって導入されるものです。

(b)事前開示・株主意思の原則

 本プランは、定時株主総会において株主の承認を得たうえで導入するものです。また、株主総会において本プランの変更または廃止の決議がなされた場合には、本プランも当該決議に従い変更または廃止されることになります。従いまして、本プランの導入及び廃止には、株主の意思が十分反映される仕組みとなっています。

(c)必要性・相当性確保の原則

(ⅰ)独立委員会による判断の重視と情報開示

 本プランは、大規模買付け等への対抗措置の発動等に関する取締役会の恣意的判断を排し、取締役会の判断及び対応の客観性及び合理性を確保することを目的として独立委員会を設置します。独立委員会は、当社の業務執行を行う経営陣から独立している、当社社外取締役、当社社外監査役または社外の有識者(実績のある会社経営者、官庁出身者、弁護士、公認会計士若しくは学識経験者またはこれらに準じる者)から選任される委員3名以上により構成されます。また、当社は、その判断の概要については株主及び投資家の皆様に情報開示を行うこととし、当社の企業価値・株主共同の利益に資するよう本プランの透明な運営が行われる仕組みを確保しています。

(ⅱ)合理的かつ客観的な発動要件の設定

 本プランは、合理的かつ客観的な発動要件が充足されなければ発動されないように設定されており、当社取締役会による恣意的な発動を防止するための仕組みを確保しています。

(ⅲ)デッドハンド型の買収防衛策ではないこと

 本プランは、当社の株主総会で選任された取締役で構成される取締役会により、いつでも廃止することができるものとされています。従って、本プランは、デッドハンド型買収防衛策(取締役会の構成員の過半数を交代させても、なお発動を阻止できない買収防衛策)ではありません。

 

(3)研究開発活動

当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は1,312百万円であります。

当社グループは、元東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長(現 公益財団法人がん研究会 がんプレシジョン医療研究センター所長、東京大学名誉教授、シカゴ大学名誉教授)中村祐輔教授と共同で、ほぼ全てのがんを対象とした網羅的な遺伝子発現解析等を実施し、既にがん治療薬開発に適した多くの標的分子を同定しております。また、それらの標的に対し、低分子医薬、がんペプチドワクチン、抗体医薬等の、各領域における創薬研究を積極的に展開し、これら創薬研究の成果を基にした複数の臨床試験を実施しており、臨床試験準備中の医薬品候補物質も複数有しております。

このような、「医薬品の研究及び開発」並びにこれらに関連する事業に加えて、がんプレシジョン医療関連事業を実施しております。

がんは遺伝子の異常により引き起こされる病気です。がん細胞での遺伝子の網羅的な解析は、がんの診断及びがん治療薬・治療法を選択するために非常に重要です。この解析を利用して、がんの早期診断や、がん患者さん一人ひとりの遺伝子情報に基づいた治療薬・治療法の選択をすることや新規の免疫療法につなげていくことをがんプレシジョン医療といい、近年、より効果的ながん治療をがん患者さんに提供できる手段として注目されています。

当社は、グローバルなゲノム・トランスクリプトム・エピゲノム等の次世代シーケンス解析サービスを行っているTheragen Etex Co., Ltd.(本社:韓国、CEO:Tae Soon (Samuel) Hwang、以下「TE社」という)との資本・業務提携により、がん遺伝子の大規模解析検査及びがん免疫療法の研究開発を行う子会社として、株式会社Cancer Precision Medicine(以下「CPM社」という)を設立し、がんプレシジョン医療関連事業を実施しております。

具体的な「医薬品の研究及び開発」並びにこれらに関連する事業及びがんプレシジョン医療関連事業の内容については、以下(a)及び(b)のとおりでございます。

なお、2019年12月31日現在、当社は全世界で512件の特許を取得しております。

 

(a)「医薬品の研究及び開発」並びにこれらに関連する事業

<基礎研究領域>

創薬ターゲットの特定等を行う基礎研究領域においては、ヒト全遺伝子の遺伝子発現パターンを網羅的に検索できるcDNA(※1)マイクロアレイ(※2)のシステムによる大腸がん、胃がん、肝臓がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、食道がん、前立腺がん、膵臓がん、乳がん、腎臓がん、膀胱がん及び軟部肉腫等について発現解析が終了しております。これらの発現解析情報からがんで発現が高く正常臓器では発現がほとんどない遺伝子を選択し、さらに機能解析により、がん細胞の生存に必須な多数の遺伝子を分子標的治療薬(※3)の標的として同定(※4)しております。

<創薬研究領域>

医薬品候補物質の同定及び最適化を行う創薬研究領域においては、医薬品の用途毎に、より製品に近い研究を積極的に展開しております。

低分子医薬につきましては、7種のがん特異的タンパク質を標的とする創薬研究を進めております。そのうち1種の標的であるリン酸化酵素(キナーゼ)(※5)については、医薬品候補化合物の臨床試験を実施中です(詳細は、別記「<医薬開発領域>(ⅰ)低分子医薬」をご参照ください。)。他の1種のリン酸化酵素については、これまでに得た高活性化合物に基づきリード最適化作業(※6)を進め、in vivo(※7)で強力な腫瘍増殖抑制効果を示す複数の高活性化合物を同定しております。これらにつき、医薬品候補化合物として臨床開発するための薬効薬理(※8)・薬物動態(※9)・毒性試験を進めております。さらに、別の3種の標的酵素タンパク質に関して、リード最適化の過程で得た高活性化合物群に対してin vivoでの薬効試験を進め、有意な薬効を示す化合物の構造に基づき、薬効向上のためのさらなるリード最適化作業を実施中です。また、さらに別の2種の標的酵素タンパク質に関して、これまでに得た高活性化合物に基づき、リード化合物獲得に向けた新規化合物合成と構造活性相関研究を進めております。

がんペプチドワクチンにつきましては、これまでに日本人及び欧米人に多く見られるHLA(※10)-A*24:02及びA*02:01を中心に、大腸がん、胃がん、肺がん、膀胱がん、腎臓がん、膵臓がん、乳がん及び肝臓がん等を標的とした計43遺伝子を対象としたエピトープペプチド(※11)を既に同定しておりますが、それら以外にもA*11:01, A*33:03, A*01:01及びA*03:01等、様々なHLAに対応したより多くのエピトープペプチドを同定しております。

このように、独創的な分子標的治療薬の創製を目指した創薬研究を中心に積極的に展開しております。

 

 

<医薬開発領域>

医薬開発領域においては、当社グループ独自での開発及び複数の製薬企業との提携による開発を、以下のとおりそれぞれ進めております。

(ⅰ)低分子医薬

がん幹細胞の維持に重要な分子であるMELK(Maternal Embryonic Leucine zipper Kinase)を標的としたOTS167については、急性骨髄性白血病に対する第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を米国シカゴ大学及びコーネル大学にて実施しております。この臨床試験は、急性骨髄性白血病を含む血液がんの患者さんを対象とし、OTS167の静脈内反復投与における安全性及び推奨投与量の確認を行い、確認後には、急性骨髄性白血病を含む予後不良の各種白血病についてのPOC(※12)を獲得することを目的とするものです。また、OTS167の乳がんに対する第Ⅰ相臨床試験を米国コーネル大学、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター、米国ノーウォーク・ホスピタル及び米国メモリアルスローンケタリングがんセンターにて実施しております。この臨床試験は、トリプルネガティブ乳がん(※13)を含む乳がんの患者さんを対象とし、OTS167のカプセル剤による経口投与における安全性及び推奨投与量の確認を主目的とし、副次的にトリプルネガティブ乳がんに対する臨床上の有効性を確認するものです。なお、OTS167は、オーストラリアで実施しておりました健常成人を対象とした経口投与による消化管吸収性(バイオアベイラビリティ)の確認を主たる目的とする臨床試験において、ヒトでの良好な経口吸収性が確認されています。

OTS167の標的は、MELKであり、がん幹細胞に高発現し、その維持に重要な役割をしているタンパク(キナーゼ)です。そのキナーゼを阻害し、強い細胞増殖抑制効果が期待できる新しい作用機序(ファースト・イン・クラス)の分子標的治療薬です。OTS167は、すでに動物試験において、肺がん、前立腺がん、乳がん、膵臓がん等に対し、強力な抗腫瘍効果が確認されています。

また、細胞分裂に重要ながん特異的新規標的分子(TOPK)に対する複数の最終化合物を同定しております。動物実験で、顕著な結果が得られたことから、製剤化検討及び非臨床試験を進めております。

 

(ⅱ)がんペプチドワクチン

がんペプチドワクチンにつきましては、提携先製薬企業との戦略的対話を促進し、提携先が実施する臨床開発の側面支援、後方支援を強化して参りました。

塩野義製薬株式会社とは、当社がライセンスアウトしているがん特異的ペプチドワクチンS-588410の臨床開発を支援する目的で、食道がん患者さんを対象とした第Ⅲ相臨床試験実施に関する覚書を締結しており、塩野義製薬株式会社が臨床試験を実施しております。この臨床試験におきましては、2018年3月に最後の患者登録が完了しております。なお、塩野義製薬株式会社は、S-588410の食道がん第Ⅲ相臨床試験のほか、膀胱がんを対象としたS-588410について日欧で第Ⅱ相臨床試験を完了しており、頭頸部がんを対象としたS-488210は欧州で第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を、また、固形がんを対象としたS-588210は英国で第Ⅰ相臨床試験を、それぞれ実施しております。

サイアス株式会社には、特定のがん治療用ペプチドワクチンを利用して製造した再生T細胞をがん治療に用いることに関する開発・製造・販売権を供与しており、サイアス株式会社はがん患者さんの治療を目指して、非臨床試験開始に向けた準備を行っております。

ノーベルファーマ株式会社には、当社の有するがん治療用ペプチドワクチンに関して、特定のがん種を適応症としたオプション権付きの開発・製造・販売権を供与しております。

また、シンガポールのNUH(National University Hospital)にて、がんペプチドカクテルワクチンOTSGC-A24の胃がんに対する第Ⅰ相臨床試験を、医師主導治験として実施しております。

 

(ⅲ)抗体医薬

がん治療用抗体医薬OTSA101については、日本における滑膜肉腫に対する第Ⅰ相臨床試験を実施しております。本試験は、難治性又は再発性の滑膜肉腫患者を対象に、放射性同位元素を結合したOTSA101投与における安全性及び体内薬物動態の確認を主たる目的とするものです。なお、フランスでのOTSA101第Ⅰ相臨床試験は一連の手続きが完了し、本試験を実施しておりました連結子会社Laboratoires OncoTherapy Science France S.A.R.L.は2019年4月に解散を決議、同年9月末日までに清算結了しております。

また、当社連結子会社であるイムナス・ファーマ株式会社が協和キリン株式会社にライセンスアウトしております抗アミロイドβ(Aβ)ペプチド抗体KHK6640については、協和キリン株式会社が、アルツハイマー型認知症に対する第Ⅰ相臨床試験を欧州及び日本にて実施しております。

 

(b)がんプレシジョン医療関連事業

<がんプレシジョン医療への取組み>

(ⅰ)がん遺伝子の大規模解析検査ならびにがん免疫療法の研究開発を行う合弁会社設立

当社は、2017年7月24日、がん遺伝子の大規模解析検査及びがん免疫療法の研究開発を行う子会社として、CPM社を設立致しました。CPM社に対しては、グローバルなゲノム・トランスクリプトム・エピゲノム(※14)等の次世代シーケンス解析(※15)サービスを行っているTE社が資本・業務提携したことから、当社とTE社との合弁会社となっております。また、当社の事業部門であり、オンコアンチゲン(※16)をはじめとしたがん免疫療法の研究開発及びT/B細胞受容体(TCR/BCR)レパトア解析(※17)サービスを行っていた腫瘍免疫解析部の事業について、会社分割(簡易分割)をし、CPM社に事業を承継させました。CPM社は、日本におけるがんプレシジョン医療を加速するため、全エクソーム解析(※18)、RNAシーケンス解析(※19)、ネオアンチゲン解析(※20)、リキッドバイオプシー(※21)といったがん遺伝子の大規模解析検査及びTCR/BCRレパトア解析及び免疫反応解析を提供しております。なお、2019年11月より、全ゲノムシーケンス解析(※22)、シングルセルRNAシーケンス解析(※23)、メタゲノムシーケンス解析(※24)の解析業務を新たに開始しております。さらに、CPM社は、ネオアンチゲン樹状細胞療法(※25)及びTCR遺伝子導入T細胞療法(※26)等の新しい個別化がん免疫療法の研究も行っております。

 

(ⅱ)製薬企業、医療機関、研究機関等に対してのTCR/BCRレパトア解析サービスの提供

がん免疫療法における最先端の取組みとして、シカゴ大学医学部中村祐輔研究室において開発された、次世代シーケンサーを用いてTCR/BCRレパトアを解析する方法を導入し、製薬企業、医療機関、研究機関等に対してTCR/BCRレパトア解析サービスを提供する事業を行っております。また、ワクチン投与前後の腫瘍組織及び末梢血におけるTCRレパトア解析を行うことにより、ワクチン投与によるペプチド特異的T細胞(※27)の増加を科学的に検証し、免疫チェックポイント阻害剤(※28)との併用による相乗効果に関する検討を進めております。

 

(ⅲ)DCワクチンコンソーシアムとの樹状細胞療法(※29)による治療法の共同研究

当社は、大阪、福岡、東京を拠点とする3医療法人(医療法人協林会 大阪がん免疫化学療法クリニック、医療法人慈生会 福岡がん総合クリニック及び医療法人社団ビオセラ会 ビオセラクリニック)からなる樹状細胞免疫療法懇話会(DCワクチンコンソーシアム)と、当社がライセンスを保有するペプチドワクチンについて、その非独占的実施権をDCワクチンコンソーシアムに供与し、樹状細胞療法によるがん治療法の研究・開発を共同で進めております。この共同研究により、当社及びCPM社が支援する、がん臨床領域でのプレシジョン医療の実施において、オンコアンチゲンやネオアンチゲンを利用した免疫療法に大きな役割を果たすと考えております。

 

(ⅳ)IMSグループとの共同研究

CPM社は、IMSグループ傘下の医療法人社団明芳会、医療法人財団明理会及び株式会社アイルと、リキッドバイオプシーによる胃がん及び大腸がんの手術後のがん細胞の残存、再発の早期発見法の検討にかかる共同研究契約を締結しております。本共同研究は胃がん及び大腸がんの患者さんに対し、リキッドバイオプシーの手法を用いた遺伝子解析により、手術前後の特定遺伝子における突然変異の検出によるがん細胞の残存、がん再発の早期発見可能性の探究を目的とするもので、本共同研究には、中村祐輔教授及びIMSグループ傘下の医療法人社団明芳会 板橋中央総合病院、医療法人社団明芳会 横浜旭中央総合病院、医療法人社団明理会 新松戸中央総合病院及び株式会社アイルが参加して実施しております。

本共同研究による成果を確認した後、IMSグループ各医療機関において、がん診断のためにリキッドバイオプシーを臨床応用する予定であり、さらに、CPM社とIMSグループ各医療機関とは、がん患者さん一人ひとりの遺伝子解析のためのクリニカルシーケンス等がんプレシジョン医療について幅広く提携して参ります。

 

 

(ⅴ)公益財団法人がん研究会との共同研究の実施

CPM社は、公益財団法人がん研究会(以下「がん研」という)と、リキッドバイオプシーによるがん遺伝子変異の検出に係る共同研究を実施しております。この共同研究は、固形がん(肺がん、大腸がん、乳がん等)の診断を目的として、がん遺伝子変異を検出するためのリキッドバイオプシー技術の改良、新規技術(新規遺伝子パネルを含む)の研究開発を共同で実施し、それらの臨床応用可能性を探求するもので、固形がん患者から採取した血液等を利用した、がん研独自技術を含むリキッドバイオプシーの評価、がんのスクリーニング、分子標的治療薬の選択、再発のモニタリング等におけるリキッドバイオプシー技術の課題抽出とそれらの解決法の検討を共同で行っております。

また、ネオアンチゲン予測アルゴリズム(全自動化パイプラインを含む)に関わる共同研究も実施しております。この共同研究は個別化がん免疫療法のために正確なネオアンチゲン予測アルゴリズムの開発と関連技術の改良を目的とするもので、シーケンスデータからネオアンチゲン予測用コンピュータアルゴリズムの開発及び評価、全自動化したネオアンチゲン予測パイプラインの開発、ならびに予測されたネオアンチゲンについて樹状細胞療法の治療効果に関わる科学的検証を共同で行っております。

 

(ⅵ)セコム医療システム株式会社及び医療法人社団あんしん会四谷メディカルキューブとのがんプレシジョン医療を提携して推進するためのリキッドバイオプシーによるがんの早期発見法の検討にかかる共同研究契約の締結

CPM社は、セコム医療システム株式会社及び医療法人社団あんしん会四谷メディカルキューブとがんプレシジョン医療を提携して推進するためのリキッドバイオプシーによるがんの早期発見法の検討にかかる共同研究契約を締結しました。この共同研究は、がん検診を受診する健常人における、リキッドバイオプシーの手法を用いた遺伝子解析により、特定遺伝子における突然変異の検出によるがんの早期発見可能性及び臨床現場での応用可能性を検討することを目的としたものです。本共同研究終了後は、四谷メディカルキューブにおいてのがん検診へのリキッドバイオプシーの採用をはじめ、がんプレシジョン医療において、セコム医療システムと幅広い提携を進めて参ります。

 

(ⅶ)コスモ・バイオ株式会社とのペプチド合成委受託契約の締結

CPM社は、コスモ・バイオ株式会社と、がん免疫療法のためのペプチド合成に関する委受託契約を締結しました。

CPM社のネオアンチゲン解析により得られた結果に基づき、ペプチド合成をコスモ・バイオ株式会社に委託してがん免疫療法におけるペプチド合成期間の短縮を図るとともに、CPM社が行うがん検体を用いたネオアンチゲン解析サービスに、コスモ・バイオ株式会社が合成したペプチドをCPM社から医療機関ならびに研究機関に提供するサービスを付加したものを、パッケージ化して提供します。

[用語解説]

(※1)mRNA、cDNA、RNA

RNAはリボ核酸、mRNAはRNAのうち、メッセンジャーすなわち「伝令」の役割をするものであります。人間の体は約60兆個の細胞によって作られていますが、体の構造や働きはおもにタンパク質によって決まっております。そのタンパク質の設計図は遺伝子であり、そして、遺伝子の本体はDNAであります。このDNAは細胞の核の中にある染色体に存在しておりますが、タンパク質は設計図であるDNAから直接作られるのではなく、一旦、DNAからRNAが作られ、そのRNAが翻訳されてタンパク質となります。この一旦作られるRNAを「伝令」すなわちメッセンジャーRNA(mRNA)といいます。つまり、遺伝子情報の流れはDNA→mRNA→タンパク質というようになっております。cDNAは、mRNAから逆転写酵素を用いた逆転写反応によって合成されたDNAで、イントロンを含まない状態の遺伝子(塩基配列)を知ることができることから、遺伝子のクローニングに広く利用されております。

(※2)マイクロアレイ

小さな基盤上に非常に高密度にDNAを配置し、それらを手がかりに大量の遺伝子情報を獲得することを目的として開発されたシステムです。

(※3)分子標的治療薬

ある分子に作用することがわかっている低分子化合物や抗体等を選択することによって作られ、疾患に関係がある細胞だけに働きかける機能を持った新しいタイプの治療薬のことです。従来の治療薬に比べて効果が高くかつ副作用が少ないとされ、近年、がん治療等で注目されております。

(※4)同定

ある物質の正体を特定することです。例えば、細胞の中からある現象に関係する分子を選り分けて取り出しその種類を特定することや、多数の化合物群を含むライブラリの中から望ましい活性を持つ化合物を見つけてその種類を特定すること等は、そのような分子や化合物を「同定する」と呼ばれます。

(※5)リン酸化酵素(キナーゼ)

化学反応を触媒するタンパク質は、「酵素」と呼ばれます。酵素のうち、反応の対象となる分子(「基質」)へのリン酸の付加(「リン酸化」)を触媒するものが、「リン酸化酵素(キナーゼ)」(kinase)です。特に、基質がタンパク質であるリン酸化酵素は、タンパク質リン酸化酵素(protein kinase)と呼ばれます。タンパク質の中には、リン酸化されることによってはじめて活性化するものが多くあります。活性化したタンパク質は、細胞レベルでの様々な現象の生起に関与することになります。がん細胞においては、正常細胞では不活発なタンパク質リン酸化酵素が活発化し、それによってリン酸化されて活性化したタンパク質が、異常な細胞増殖の発生に関与する場合があることが知られています。弊社が創薬標的としているリン酸化酵素は、そのようなタンパク質リン酸化酵素です。

(※6)リード最適化作業

創薬研究で多数の化合物を探索する中で、標的タンパク質に対し十分な活性を有し、以降の新規化合物設計の原型(プロトタイプ)となるような化合物が得られた時、それを「リード化合物」(lead compound)と称します。リード化合物の化学構造を様々に修飾して生体内での効果を高めていき、開発候補化合物を獲得するまでの過程が、「リード最適化」(lead optimization)です。

(※7)in vivo

in vitroと対比的に用いられ、「体の中で」を意味する医学・化学用語です。一般に生体内(主に実験動物)での実験的検証を意味します。

(※8)薬効薬理

薬が、その効果(薬効)を発揮する際に生体に対して及ぼす作用の様相(薬理)が、「薬効薬理」(pharmacology)です。例えば、がん細胞を移植したマウスに薬を投与して抗腫瘍効果の現れ方を調べる試験は、「薬効薬理試験」の一種です。

(※9)薬物動態

薬物は、生体に投与された時、吸収・分配・代謝・排泄の過程を経て、体内での存在状態を時間的に変化させていきます。その変化の様子のことを、「薬物動態」(pharmacokinetics)と呼びます。薬物動態を調べるために、例えば、血中の薬物濃度を経時的に測定する等の試験を行います。薬物動態の理解は、薬を効果的に作用させるのに必要な投与量や投与法、投与スケジュール等を検討するために役立ちます。

(※10)HLA

免疫の活性化に関与する分子(ヒト白血球抗原)です。断片化されたペプチドを挟んだ状態で細胞の表面に出てくることで、ペプチド(抗原)を提示します。このHLAに挟まった状態のペプチドを免疫細胞が認識し、免疫反応が誘導されます。

(※11)エピトープペプチド

細胞の表面に出てくる断片化されたタンパク質(ペプチド)です。細胞表面のペプチドが目印となり、そのペプチドを発現しているがん細胞を免疫細胞が認識し攻撃します。

(※12)POC

Proof of Conceptの略です。有効性や安全性を含めて作用機序等が臨床において妥当であることの証明の意味です。

(※13)トリプルネガティブ乳がん

HER2及びホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)が陰性の乳がんのことです。そのため、HER2に対する分子標的薬(ハーセプチン等)やホルモン療法の対象になりません。

(※14)ゲノム・トランスクリプトム・エピゲノム

ゲノムは、全ての染色体を構成するDNAの全塩基配列です。ヒトのゲノムは約30億塩基対のDNAから成り立っています。ゲノムの遺伝情報は、DNAからmRNA、mRNAからタンパク質の順で伝達され、機能します。トランスクリプトムは、ゲノムDNAから合成される全ての遺伝子転写産物(mRNA)の総体を示します。また、ゲノムの遺伝情報はゲノムの塩基配列を変えずに遺伝子発現を制御するしくみにより、調節されます。この仕組みをエピジェネティクスと呼び、ゲノム上に施される制御情報をエピゲノムと呼びます。

(※15)次世代シーケンス解析

数千万、数億のDNA断片の塩基配列を高速に決定することができる基盤技術です。

(※16)オンコアンチゲン

がん細胞において発現の上昇が認められる一方、正常細胞ではほとんど発現が認められず、がん細胞の生存や増殖に必須の機能を持ち、さらに免疫反応を引き起こす抗原性を有するタンパクです。このタンパクに由来するペプチドを用いると、がん細胞を傷害する活性化されたT細胞を誘導することができます。

(※17)T/B細胞受容体(TCR/BCR)レパトア解析

リンパ球の一種であるT細胞やB細胞の細胞表面に発現している受容体の塩基配列を網羅的に取得し解析する技術です。これら受容体が他の細胞表面に出ている目印(抗原)を認識し、攻撃(免疫反応誘導)します。

(※18)全エクソーム解析

ヒトゲノムのうちタンパク質を翻訳するエクソン領域(エクソーム)を解析する手法です。

(※19)RNAシーケンス解析

細胞中に存在する全てのmRNA(遺伝子転写産物)の配列および発現量を解析する手法です。

(※20)ネオアンチゲン解析

がん細胞に生じた体細胞変異に由来し、免疫細胞の標的となる新規抗原(ネオアンチゲン)を解析する手法です。

(※21)リキッドバイオプシー

シーケンス技術の進展により血液や尿等の液体(リキッド)を利用して、がんの存在を見つけることができるようになりました。がん細胞に由来するDNAが非常に少量ですが血液中や尿中に混入しており、これを高感度に検出することができるようになったからです。この液体を利用して調べる方法を、リキッドバイオプシーと呼んでいます。CT等の画像診断よりも早く、再発を見つけることができる可能性があります。また、がん組織を採取することは患者さんに大きな負担となり、合併症の危険を伴いますが、リキッドバイオプシーは、負担が非常に軽いので頻回に検出を行うことができます。

(※22)全ゲノムシーケンス解析

ゲノムの全域を対象にDNA塩基の変異を検出する解析です。以前から提供している全エクソーム解析は、タンパク質を作る情報を持つ遺伝子の部分を集中的に解読するもので、その領域はゲノム全体の約2%に相当します。そのため全エクソーム解析は高効率、低コストで実施できますが、がん細胞でしばしば見られるゲノムの大規模な入れ替わりや欠如などの変異を検出するのは難しいとされています。これに対し、全ゲノムシーケンス解析はこれらの変異も検出することができるため、より包括的な情報を取得することが期待できます。

(※23)シングルセルRNAシーケンス解析

検体の細胞を一つ一つ分離し、それぞれの細胞の遺伝子発現量を個別に測定する解析です。腫瘍組織において、がん細胞は分裂を繰り返す中で個別の変異を持つ複数の細胞集団に分化し増殖します。様々な細胞集団が混在した状態で腫瘍組織を解析すると、がんの特徴を正確に理解することが困難な場合があります。シングルセルRNAシーケンス解析では、腫瘍組織中の個別の細胞の特徴を捉えられ、治療方法の選択や予後の予測などをより正確に行うことが期待できます。

(※24)メタゲノムシーケンス解析

多種多様な微生物が混在する検体からそれぞれの微生物のゲノムを同時に解読し、検体中に存在する生物種やその存在比などを明らかにする解析です。がん研究においては主に腸内細菌の解析に用いられ、大腸がんの原因となり得る腸内細菌の検出や体内の免疫や薬剤の代謝との関連性等についての研究が進んでいます。

(※25)ネオアンチゲン樹状細胞療法

がん細胞に生じた体細胞変異に由来する新規抗原(ネオアンチゲン)は、正常細胞には発現していません。そのため、非自己の抗原として非常に強い免疫反応を引き起こすと考えられています。ネオアンチゲン由来のペプチドを利用する樹状細胞療法は、ネオアンチゲン樹状細胞療法と呼ばれています。

(※26)TCR遺伝子導入T細胞療法

T細胞は、がん細胞がHLA分子上に提示しているペプチドをT細胞受容体(TCR)を介して認識すると、活性化され、がん細胞を傷害します。がん細胞に由来するペプチドを認識するTCRを同定し、遺伝子導入によって同じTCRを発現するT細胞を大量に調製したのち体内に投与する治療法は、TCR遺伝子導入T細胞療法と呼ばれています。

(※27)ペプチド特異的T細胞

がん細胞表面のHLA分子上に提示されたペプチドを認識し、がん細胞を直接傷害するT細胞です。

(※28)免疫チェックポイント阻害剤

がん細胞は免疫抑制分子を作り出し、免疫細胞の機能を抑制し、免疫細胞からの攻撃を逃れる仕組みを持っています。免疫チェックポイント阻害剤は、免疫抑制分子に結合し、免疫細胞の機能抑制を解除する抗体です。これによって、免疫細胞ががん細胞を攻撃するようになります。

(※29)樹状細胞療法

がん細胞由来の抗原を提示した樹状細胞(免疫細胞の一種、がん細胞のような異物を細胞内に取り込み、取り込んだ細胞由来のタンパク質断片を細胞表面に出し、他の免疫細胞に提示することで免疫反応を誘導します)を大量に調製し、体内へ投与する治療法です。がん細胞を認識するT細胞が効率よく誘導され、抗腫瘍効果を発揮することが期待されます。

 

3【経営上の重要な契約等】

 当第3四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。