文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2025年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
今後の見通しにつきましては、建設コスト高騰が続き、人手不足が進む中、関税政策の動向等が民間建設投資に影響をもたらす可能性があることから、新築プロジェクト需要等の影響を慎重に見極め、顧客ニーズに的確に対処してまいります。
当社は一層の事業発展と企業価値向上に向けて、以下の課題に取り組んでまいります。
①CMサービスの価値向上
当社はこれまで、発注者側に立って競争環境を構築し、発注者の利益となる品質、コスト、スピードにおける成果を提供し、CMサービスを普及してきました。発注者を取り巻く環境の変化に対して、一層お客様に寄り添い、リスクを先読みして根拠や選択肢をご提供するとともに、お客様のご判断と前に進む力をご支援し、CMサービスの価値向上を追求してまいります。
②事業創造への取組み
当発注者支援事業の更なる価値向上のために、継続して建設プロジェクトや維持保全のプロセスにおける発注者側のDX化や脱炭素化支援に取り組んでおります。ITや建築の技術者をはじめとした社内の様々な専門家の眼でシステム開発に取組むことで、新たな顧客ニーズを創造してまいります。
③リーダーの育成と組織力向上
発注者支援事業の社会的意義を共有し、将来の事業を育てる人を育成し、組織の機能向上をはかり、発注者支援事業の価値向上を追求します。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2025年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
(サステナビリティ全般に関する考え方及び取組)
当社は企業理念である「フェアネス」「透明性」「顧客側に立つプロ」に基づき、高い専門性と共に、全てのプロセスとコストを常時オープンにするCM(コンストラクション・マネジメント=発注者支援事業)手法で、建設プロジェクトやオフィスづくりに取り組まれるお客様に価値と安心をご提供しております。発注者支援事業の透明性に基づく納得感のある意思決定プロセスの構築を通じて、信用を基盤とした持続可能な社会の実現に貢献し、ESG/SDGsを重視した経営に取り組んでまいります。
また、東京都発行のグリーンボンドに対する投資やこども食堂への支援を通じて、地域社会の持続的発展に貢献してまいります。

当社は、サステナビリティに関する対応について、取締役、執行役員、部門長によって構成される事業推進会議にて定期的に多角的な視点から議論しております。
また、協議された内容は、適宜取締役会へ付議または報告され、取締役会において経営戦略やリスク管理に反映しております。

(気候変動への取組とTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応)
当社は、TCFD提言の趣旨に賛同し、TCFDコンソーシアムに加盟し、気候変動に関する推奨されたフレームワークの整備と透明性向上に努めています。
(1) 戦略
当社が検討した結果、下表のようなリスクと機会が想定されると判断しました。
これらの中長期(2030~2050年)の気候変動に関連するリスクと機会の分析を踏まえ、2050年までの中長期の環境への対策と促進に取り組んでいます。
社会が脱炭素化に向かう中、取り組みの遅れはリスクと認識し、自らのCO2ゼロエミッションを推進するとともに、得られるノウハウをお客様へのサービス化も含め、脱炭素社会の構築と気候変動に適応できるサービスを進めることを狙いとしています。
当社では、気候変動関連リスクを重要なリスクのひとつと位置づけ、取締役・執行役員・部門長によって構成される事業推進会議を定期的に開催しており、各種リスクを協議・分析し、事業に重大な影響を及ぼす事象への対処を進めております。その内容は適宜取締役会へ報告され、経営戦略やリスク管理に反映しております。
今後も、お客様と当社、ひいては、社会全体のリスク低減に向け、低炭素・循環型社会を実現していくための行動を強化してまいります。
当社における事業所(本社・大阪支店)については、働き方の見直しや、照明のLED化等によってオフィスの電力使用による炭素排出を低減させるとともに、グリーン電力等を活用することで2030年度までに2019年度比50%削減を目指しています。
また、2050年までに上記の排出量削減の取組みに加えて、再生可能エネルギーの活用などにより、ネット・ゼロとする目標を設定しております。

(人材の育成及び社内環境整備に関する方針)
(1) 戦略
当社ではCMの価値向上や更なる進化に向けて、人材育成、体制構築、ナレッジや働き方改革等の人的資本経営を推進しております。
発注者支援事業を「明朗経営」の下で推進し、各プロジェクトに関するプロセスや成果等及び当社企業業績等に関する情報を可視化し、自ら「隠し事」が出来ない仕組みの構築及び各種法令を遵守するための体制や規程等を整備しております。
当社は、性別国籍を問わず社員一人ひとりの多様な能力、質の高いワークライフバランスにより、より高品質なサービスを顧客へ提供し、発注者支援事業を通じて社会に貢献することを目指しております。社員が高い生産性を発揮できるよう、当社は社員の能力やキャリアを最大限に生かせる職場環境を構築し、ダイバーシティ推進に取り組んでおります。
・社内研修と教育コンテンツの充実化
・社員が互いの成長を支援する組織マネジメント及びOJTの推進
・採用の促進
・ダイバーシティ・インクルージョンの推進
・当社独自のナレッジセンターの充実化と活用
・生産性を向上し、社員が効率の良い働き方を選択できるデジタルワークスタイルの更なる進化
〈中途採用者の管理職への登用〉
顧客が様々な経営課題を抱える中で、当社の発注者支援事業に対する顧客の期待は年々高まっております。当社はこのような高い期待に応えるため、現時点では、性別国籍を問わずプロフェッショナルを中途採用することを優先して取り組んでおります。当社は採用後、本人の経験や発揮された能力を多面的かつきめ細かく評価する人事制度を通じて、中途採用者を的確に処遇する仕組みを構築しております。中途採用者は管理職としてリーダーシップを発揮し、将来性のある部下の人材育成を担っております。
〈多様性の確保に向けた人材育成方針、社内環境整備方針、その状況〉
当社は、多様な人材一人ひとりが自身の能力を最大限に発揮し活躍することができるよう、働く場所・時間を自由に選択できるアクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)をベースとした、デジタルな働き方を推進しております。経営のDX化を2000年頃から定着させ、システムをアジャイル方式で自社開発し、セキュアな環境の中でテレワークを全社員が活用し、社内に蓄積される情報を社員に可視化して提供するデータ活用推進室を設置し、社員自らが主体的に働き方を変えていく環境とする等、デジタルを経営の中心におき様々な課題に取り組んでおります。こうしたDXにより、社員のニーズやライフステージでのイベントと仕事とを両立させ、当社でのキャリアプランを描けるよう諸制度を整備しております。
社内環境整備方針は以下のとおりです。
①それぞれの分野でのプロフェッショナルを養成する人材育成と、プロフェッショナル同士が品質レビュー等を通じてお互いを高めあえる環境
②育児、介護を担う女性・男性社員にとって働きやすい環境
③定年後再雇用したプロフェッショナルが活躍しやすい環境
④障がい者にとって働きやすい環境
これらの取り組みの結果、2022年(令和4年)6月28日付で厚生労働省より「くるみん認定」を受けました。
「くるみん」は「仕事と家庭の両立しやすい職場環境づくりに取り組んでいる企業」として、一定の基準を満たした場合に申請を行うことによって「子育てサポート企業」として厚生労働省により認定を受けるものです。
今後も、社員一人ひとりが顧客側に立つプロとして自らの成長と達成感を実感し、「フェアネス・透明性・顧客側に立つプロ」の企業理念を企業風土として定着させ、高い志の下に社員一丸となって行動してまいります。
そのために今後も代表取締役会長をトップとした社員教育の他、社内研修や社内教育コンテンツの充実をはかり、社員が互いの成長を支援する組織マネジメント及びOJTの推進等人材育成を継続し、ダイバーシティ・インクルージョンの推進、ナレッジセンターの活用及びデジタルな働き方の推進等に一層の力を入れる等、社員一人ひとりの成長と組織力強化による顧客本位の「明豊のCM」を徹底することで企業価値向上につなげてまいります。
(2) 指標及び目標
当社では、上記「(1) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性のある主なリスクを記載します。当社は、これらリスクの可能性を認識し、リスク管理を行うとともに、最善の対処をいたす所存です。なお、これらは当社の事業に関するリスクのすべてを網羅するものではないことをご留意ください。
文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2025年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
①事業環境の変化について
当社は、オフィス構築や、ビル、教育施設、生産施設、研究施設や設備等についてCM(コンストラクション・マネジメント)手法でのPM(プロジェクト・マネジメント)サービスを提供しています。経済環境、景気動向による企業の設備投資意欲の変化、既存建設業者との競合状況の変化、CM手法に対する建設マーケットでの評価などが、当社の業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
②フィービジネスの安定性について
フィービジネスでは、資材・設備等の材料費や外注費などのコストや物価変動に収益が左右されることがなく、基本的に安定した収益を確保できると考えられます。ただし、お客様との間で業務内容毎にマンアワーベースで計算し事前に取り決める固定フィーに関して、マンアワーの見積りが不適当であった場合や、プロジェクトに従事する当社社員の労働生産性効率が低下した場合などには、フィービジネスであっても安定した収益を確保できるとは限りません。
③情報共有システムの障害について
当社では、ウェブ上での情報共有システムを活用し、お客様の企画構想段階から、発注・施工の各プロセス情報を開示・共有化することで、お客様の信頼確保・意思決定支援、当社の業務効率向上に役立てております。また、顧客側のDXを支援するシステムを提供しております。これらシステムの開発・運用・保全には万全を期しておりますが、関連するスキルが不十分な場合や、システム自体に不具合が生じた場合などには、業務効率が低下してマンアワーのコストアップを招くことや、不具合に対するリカバリー対応などで、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
④施工物等の瑕疵について
工事請負契約については、当社が施工物に関する契約不適合責任を負っています。
当社は、施工管理の徹底により品質管理には万全を期しておりますが、提供する施工物及びその他製品について重大な契約不適合が発生した場合、経営成績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。
⑤人材の確保について
当社の成長を持続していくためには、優秀な人材の確保と組織力の強化が必要であります。
当社では、上場企業であることの信用力や知名度を活かし、また業績の向上と処遇面の向上を両立させ、優秀な人材を確保していく方針ですが、優秀な人材の確保に支障をきたした場合は、当社業績に影響が及ぶ可能性があります。
⑥情報管理について
当社は業務のデジタル化(デジタルな働き方)を導入し、情報の可視化やデータベース活用による情報の利活用によって競争優位性を高めています。当社は情報セキュリティマネジメントシステムを導入し、ISO27001の認証を取得しております。この仕組みは、毎期情報管理に関するリスクを分析し、リスクを低減させる対策を実行し、その結果を評価分析し、新たな対策を講じるというPDCAサイクルで構築されており、当社としては情報管理に万全を期しておりますが、当社の保有する情報が、外部からの不正アクセスや、内部者による故意又は過失によって喪失した場合、当社業績に影響が及ぶ可能性があります。
⑦業績の季節変動について
当社は、受注したCM業務契約のプロジェクトに関して、財又はサービスに対する支配が顧客に一定の期間にわたり移転する場合には、期間がごく短いプロジェクトを除き、財又はサービスを顧客に移転する履行義務を充足するにつれて、当該一定の期間にわたり収益を認識しており、受注したプロジェクトの進捗に応じて売上と売上原価を計上しております。当社の過去の業績は、主にお客様のニーズ(完成時期が下期であったり、下期の工程が多いスケジュール設定などの要望)により、過去の業績は下期偏重となっております。
受注時期を含む受注状況や、受注したプロジェクトの下期の進捗状況によっては、通期の業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧法的規制等について
工事請負契約には、「建設業法」、「建築基準法」等の法的規制があります。
今後、これらの法令等の改正や新たな法令等の制定により規制強化が行われた場合、また、法令違反が発生してしまった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、法的規制の遵守を徹底しており、現時点において法令違反の事象は発生しておりませんが、将来何らかの理由により、法令違反の事象が発生し、監督官庁より業務の停止や免許の取消し等の処分を受けた場合には、当社の事業活動に支障をきたすとともに当社の経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、法的規制について、その有効期間やその他の期限が法令、契約等により定められているものは下表のとおりであります。
(許認可等の状況)
⑨業績予想の変動について
当社は、業績予想を発表するにあたって個々のプロジェクトの現状を確認しておりますが、プロジェクトの進捗過程で顧客の事情等により、プロジェクトの進行予定等が変動する場合には、当該事業年度の売上及び利益に大きな影響を与える可能性があります。
⑩自然災害について
自然災害が発生した場合、被災地域において、社会インフラが大規模に損壊し、相当期間に亘り生産・流通活動が停止することで建築資材・部材の供給が一時的に途絶えたり、多数の社員が被災し勤務できなくなった場合等、契約締結・工事着工・工事進捗が遅延し、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(経営成績等の状況の概要)
当社は、「フェアネス」「透明性」「顧客側に立つプロ」の企業理念に基づき、建設プロジェクトの発注者である顧客側に立ち、顧客の建築・設備プロジェクトの目標達成を支援しております。
当社メイン事業でありますCM(コンストラクション・マネジメント=発注者支援事業)業界への影響が大きい中・大規模建設投資、設備投資等の現況は、建設資材価格の高騰や労務費の上昇、人材供給力の不足等による納期等の不透明感など、発注者自身が単独で建設投資を実行することが難しい環境が続いており、高い専門性を持ち個々の建設投資におけるリスクを可視化して発注者の意思決定を支援する、当社CMの社会的役割が一層高まっております。
当社は、日本最大の鉄道会社や数多くの自治体等のプロジェクトで品質・コスト・スケジュールの適正化に加え、プロジェクトの早期立ち上げ支援や高度化した建設プロジェクトにおける発注者の意思決定をきめ細かく支援しております。また、脱炭素化、SDGs関連(環境共生・BCP・長寿命化等)の支援、働き方の可視化や施設の維持保全等に係るDX(デジタルトランスフォーメーション)化についても中央省庁の一部本庁舎を始め多くの実績を重ね、当事業年度も発注者へより高い「CMの価値」を提供しております。
当事業年度における社内で管理する受注粗利益(※1)および売上粗利益(※1)は過去最高となり、当社の企業価値向上において重要となる優秀な人材の確保に繋げる処遇向上と、当社をご支援いただいている株主の皆様に対する還元を連続増配という形で実施できました。
これらの結果、当事業年度の売上高は5,716百万円(前年同期比8.6%増)となりました。売上総利益は3,112百万円(同12.3%増)、営業利益は1,226百万円(同14.8%増)、経常利益は1,230百万円(同14.9%増)、当期純利益は910百万円(同15.1%増)となり、過去最高となりました。
事業のセグメントの業績は次のとおりです。
当社CM手法によるオフィス移転・新設・改修等のPM(プロジェクト・マネジメント)サービスは、オフィス移転の可否や働き方改革の構想策定、移転先ビルの選定等といったプロジェクト立ち上げ段階から、引越しに至るまでをワンストップで高度な専門性をもって支援を行っております。大規模開発によるオフィスビルの新築と工事費の高騰が続く中で、難度の高い新築ビル竣工同時入居型の大型移転やラボ施設構築などの設備要件が重視されるプロジェクトにおいて、当社の高い専門性への評価が一層高まっております。また、多くの企業が優秀な人材の獲得に積極的に取り組み、新たな働き方とオフィスの在り方を模索する中で、働き方改革及びDXに自ら取り組む先進企業として当社への関心が高まり、大企業のグループ統合や中央省庁等公共団体の施設における働き方改革支援及び執務環境整備プロジェクトの引き合いが増加しました。
当事業年度のオフィス事業の売上高は、1,134百万円(前年同期比13.0%増)、セグメント利益114百万円(前年同期比4.7%増)となりました。
地方公共団体庁舎や国立大学を始めとする教育施設等、数多くの公共施設において当社のCMサービスが採用されております。民間企業においては、グローバル企業の国内拠点となる大型研究施設、生産施設をはじめ、私立学校法人の教育施設の再構築や、日本最大の鉄道会社による大規模複合施設や各地方拠点の施設、国内大企業等が保有する施設の電気・空調・衛生設備の新設・更新等様々な分野での実績を重ね、更に既存顧客からも継続的に引き合いを頂いております。また、建設を取り巻く環境変化の中で、当社内の専門技術者による強力な体制によって、建設途中のコスト推移や工程検証等の当社が提供する根拠資料により、発注者の意思決定をきめ細かく支援することでプロジェクトの推進を支援し、これらによって当社CMの社会的役割が一層高まり、大手国内企業等の新規顧客からの引き合いも増加しております。
当事業年度は、国土交通省の「2024年度地方公共団体における入札契約改善に向けたハンズオン支援業務」を公募にて選定され、国土交通省から11年連続での公募選定となりました。その他、多くの地方自治体における施設建設や公共施設マネジメント等に関するプロポーザルに応募し、審査の結果、当社が発注者支援事業者として数多くの公共プロジェクトで選定されました。
また、一般社団法人日本コンストラクション・マネジメント協会が主催する「CM選奨2025」において、当社がCM業務を行った「ジブリパーク整備事業CM業務」が優秀賞、「墨田区新保健施設等複合施設整備事業」と、都内自治体庁舎初の「ZEB Ready」を取得した「中野区新庁舎整備事業」がCM選奨を受賞しました。
当事業年度のCM事業の売上高は、3,250百万円(前年同期比6.7%増)、セグメント利益839百万円(前年同期比17.0%増)となりました。
公共団体や大手企業における大規模な保有資産の最適化をサポートするCREM(コーポレート・リアルエステート・マネジメント)事業は、当社のプロジェクトマネージャーと技術者集団による透明なプロセス(CM手法)と、当社独自のITシステム活用による情報の可視化やデータベース活用によって、多拠点施設同時進行プロジェクトを一元管理し、新築・改修・移転や基幹設備等の最適化更新や、脱炭素化及び環境・省エネ・ライフサイクルコストの最適化等に関するサービスを提供しております。
当事業年度も新規顧客を含む大企業の多拠点改修同時進行プロジェクトや自治体の数多くの公立学校改築計画、金融機関の各施設再編等を中心に、当社が自社開発したシステムMPS(※2)を活用して、個別プロジェクト(拠点)毎の進捗状況を一元化して可視化し、工事コストやスケジュール管理及び保有資産のデータベース化による資産情報の一元管理とそれらのデータを活用することで、顧客におけるプロジェクト管理や多拠点施設の維持保全の効率化を支援しました。発注者支援事業として人手不足の中顧客の多拠点施設整備を効率化する、DXを活用した当社独自の「CMの価値提供」によって社会的なニーズの変化に応え、評価されております。
当事業年度のCREM事業の売上高は、924百万円(前年同期比8.6%増)、セグメント利益201百万円(前年同期比34.3%増)となりました。
④ DX(デジタルトランスフォーメーション)支援事業
2021年度以来、当社が自社開発し、社内で10年以上の運用実績がある独自システムを活用して、顧客の働き方や施設の維持保全等に係るDX化を推進する「DX支援事業」のサービス提供を行っております。DX化による働き方改革に取り組む企業や団体が増えている中、働く人がシステムによって可視化された自らのアクティビティを定量的に分析し、生産性向上につなげるシステムMeihoAMS(※3)、多拠点施設や設備の新設・改修の同時進行一元管理、維持保全業務のタスク及び顧客が意思決定に必要な関連情報を可視化・一元管理することで、顧客施設管理のDX化を支援するシステムMPSへのニーズが高まっております。最近では、顧客側の人材不足対策に伴う保有施設の維持保全プロセスの効率化等、顧客の視点に基づくMPS機能の充実化を推進し、DX支援事業に多くの引き合いを頂きました。
当事業年度のDX支援事業の売上高は、406百万円(前年同期比11.9%増)、セグメント利益71百万円(前年同期比22.9%減)となりました。
また、当社は、2024年4月に、経済産業省が定める「DX認定事業者」に認定されました。当社における情報処理技術(デジタル)活用の目的と、顧客への価値提供について、「デジタルガバナンス・コード」に対応し、DXによって自らのビジネスを変革する準備と、ステークホルダーへの適切な情報開示等の基準を満たしていることが評価され、認定を取得しました。
当社は、CM(コンストラクション・マネジメント=発注者支援事業)を専業とする唯一の上場企業として、各種法令を遵守するための体制や規程等を整備し、自ら「隠し事」が出来ない独自の経営基盤を構築し、「明朗経営」の下で、日々事業に取り組んでおります。
今後の社会の変化に向けた対応として、顧客の人手不足対策やサステナビリティへの対応等を考慮し、新築から維持保全まで施設のライフサイクル全般への支援、高い専門性に基づく脱炭素化支援、働き方改革や優秀な人材獲得を目的としたオフィス構築支援などDXと一体となったサービスを新たな事業として推進し、発注者支援事業の価値を更に向上させ、企業としての将来性を高めてまいります。
また、CMの価値向上と更なる進化の礎となる人的資本経営を重要な経営マターとして位置づけ、人材の採用・育成、更なる顧客本位のCMサービス提供体制構築、ナレッジ活用の向上、働き方改革等を推進しております。今では「フェアネス」「透明性」「顧客側に立つプロ」の企業理念が企業風土として定着し、社員一人ひとりが顧客に価値を提供することで、自らの成長と達成感を実感し、高い志の下に社員一丸となって行動しております。
優秀な人材の採用と人材育成システムの向上に一層力を入れて取り組み、社員一人ひとりの成長と組織力強化による顧客本位の「明豊のCM」を徹底することで事業の社会性を高め、継続的な企業価値向上を実現してまいります。
※1 社内で管理する粗利益は、顧客との契約金額(受注高・売上高)から、システム開発の一部外部委託等の外注費を控除したものです。当社は、この「粗利益」にて、収益の伸びを社内で管理しております。
※2 MPS(Meiho Project Management System)は、新設プロジェクト管理情報や施設の維持保全に関する情報を可視化・データベース化することで、効率的なプロジェクトの推進や計画的な維持保全及び「過去からの学び」を目的とする、情報の一元管理システム。
※3 MeihoAMS(Meiho Activity Management System)は、20年以上当社で活用している、個人のアクティビティの可視化・定量化・気づきの確認、そして社員一人ひとり及び全社員の生産性や働き方向上を目的とするマンアワーシステム。
当社における生産状況は、施工管理、施工技術、機械力、資金力及び資材調達力等の総合によるものであり、工事内容が多様化しており、また当社自体で生産している割合が低いことから具体的に表示することが困難であるため、記載を省略しております。
当事業年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当事業年度の販売状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2025年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されており、財政状態及び経営成績に関する以下の分析が行われております。
当社経営陣は、財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。経営陣は、収益の認識、対応する原価の計上、貸倒損失、税効果、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判断しにくい資産・負債の簿価及び収入・費用の報告数字についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 2財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2)財政状態の分析
当社の当事業年度の財政状態は、以下の通りであります。
①資産の部
流動資産は、前事業年度末に比べて、452百万円増加し、6,324百万円となりました。これは、契約資産が1,178百万円増加したことなどによります。
固定資産は、前事業年度末に比べて、251百万円増加し、1,702百万円となりました。
この結果、総資産は、前事業年度末に比べ703百万円増加し、8,027百万円となりました。
②負債の部
流動負債は、前事業年度末に比べて、141百万円増加し、1,605百万円となりました。これは、賞与引当金が164百万円増加したことなどによります。
固定負債は、前事業年度末に比べて、49百万円増加し、825百万円となりました。
この結果、負債合計は、前事業年度末に比べ191百万円増加し、2,430百万円となりました。
③純資産の部
純資産合計は、前事業年度末に比べて、512百万円増加し、5,597百万円となりました。これは、利益剰余金が456百万円増加したことなどによります。
(3)経営成績の分析
当社の当事業年度の経営成績は、建設投資の実行に関する様々な課題の難度が高まる中で、発注者を支援する当社への期待が更に高まり、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益ともに過去最高を記録しました。
区分ごとの主な内容は、以下の通りであります。
①売上高
当事業年度の売上高は5,716百万円となりました。
②売上原価
当事業年度の売上原価は2,604百万円であり、前期に比べ109百万円増加しました。
③販売費及び一般管理費
当事業年度の販売費及び一般管理費は1,885百万円であり、前期に比べ182百万円増加しました。これは主として、賞与引当金繰入額の増加60百万円であります。
④営業利益
当事業年度の営業利益は1,226百万円であり、前期に比べ157百万円増加しました。
⑤営業外収益・費用
当事業年度の営業外収益は4百万円であり、主として助成金収入1,580千円であります。営業外費用は564千円であり、主として保険解約損558千円であります。
⑥経常利益
当事業年度の経常利益は1,230百万円であり、前期に比べ159百万円増加しました。
当事業年度の経常利益目標1,200百万円(実績1,230百万円)を上回りました。
(4)流動性及び資金の源泉
①キャッシュ・フロー
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前事業年度末に比べ878百万円減少し、829百万円となりました。
当事業年度末の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果支出した資金は、213百万円となりました(前事業年度は738百万円の取得)。
支出の主な内訳は、売上債権及び契約資産の増加1,348百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、212百万円となりました(前事業年度は250百万円の支出)。
支出の主な内訳は、投資有価証券の取得による支出120百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は、453百万円となりました(前事業年度は379百万円の支出)。
支出の主な内訳は、配当金の支払額453百万円であります。
②資金需要
当社の運転資金需要のうち主なものは、従業員の人件費、DX支援事業関連の設備投資であります。当該部分については自己資金により充当しております。
該当事項はありません。
当事業年度の研究開発活動といたしまして、東京大学大学院工学系研究科による「既存建物情報のデジタル化による空間価値創造(キャンパスマネジメント DX)」社会連携講座に参画し、2023年3月1日に共同開設いたしました。
本講座は、スクラップ&ビルドによる旧来の施設更新のあり方を脱却するという目的意識のもと、センシングやモニタリング、XR技術やゲームエンジン等の技術を活用し、デジタル空間情報の集約・分析手法やそれに基づく施設マネジメントのための定量的評価・運用手法を確立することで、既存建物群のハード/ソフト両面からの新たなマネジメントの在り方の提案と実証を目指します。
本講座の当事業年度における金額は