第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、次の使命を掲げております。

 「創薬と医療技術の向上を支援し、人類を苦痛から解放する事を絶対的な使命とします。」

 当社グループは、この使命の実現に向け、医薬品開発分野におきまして、網羅的に前臨床試験と臨床試験を受託できる研究機関として事業基盤の確立を図ってまいりました。半世紀を超えて長年培った研究実績や豊富な経験を活かして、最新の設備と確かな技術であらゆる疾患分野における医薬品開発のサポートを実施しております。

 一方、科学技術の進展により、医薬品の開発環境は大きく変化します。このような新しい環境の変化にも迅速に対応し、世界に通用するビジネスモデルを構築して、当社の理念を共有でき優れた発想や卓越した才能を持つバイオベンチャーなどと共存共栄を図っていくトランスレーショナル リサーチ事業にも積極的に取り組んでまいります。

 社会貢献と企業価値の極大化を経営の基本方針として、株主、顧客、取引先、従業員等すべてのステークホルダーの期待に応えるべく努力を重ねてまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、各事業、セグメントの創出する利益を極大化することを重視し、営業利益、経常利益の増大を経営目標にしており、これらの経営指標の中期的向上を目指しております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループの中長期的な経営ビジョンは、顧客となる製薬企業の研究開発が、大型化、高度化、国際化しつつある中で、バリューチェーンの構築を通じてグローバルマーケットにおいてクライアントから選択される「オンリーワンカンパニー」となることを標榜しております。

 基幹事業である医薬品開発受託事業に加えて、知的財産を導出することにより収益を上げていく研究開発型のトランスレーショナル リサーチ事業にも注力し、より一層の付加価値を付けた質の高い技術と特化したサービスを提供できる体制を整備し、受託試験事業に依存した従来形態から創薬研究支援型の事業会社にパラダイムシフトしてまいります。

 

(4)経営環境

 医薬品業界は、国内外において研究開発のスピードアップと効率化を目指したアウトソーシングが引き続き堅調です。このようなトレンドを受け、当社は顧客から選ばれ続けるパートナーとなるべく、顧客ニーズを満たす迅速な対応とサービスの向上並びに継続的な質の向上に注力しております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 こうした中で、当社グループが対処すべき課題は次のとおりです。

① グローバル事業展開の更なる強化

医薬品業界は、国際化が急速に進んでおります。当社グループは、これらのニーズに対応してグローバルな創薬支援体制を構築すべく、これまで国内事業の強化に加えて、米国事業、アジア事業を強化し、グローバルな事業展開を図って参りました。特に、国内製薬企業においても薬価改定や特許切れによるコスト圧力を受け海外承認申請への動きが高まる中、当社グループとしても、これまでに培った海外市場における経験やネットワークを有効に活用しながら、グローバル事業展開の更なる強化を進め、顧客基盤の拡充に取り組んでおります。

② 人材の育成

当社グループの事業継続及び拡大にあたっては、各分野における専門的な知識・技能を有する技術系研究員等の人材を多数確保する必要があります。また、昨今のAI・ビッグデータ・IoTといったデジタル化の流れを受け、IT技術や変化する経営環境に適応するためのマネジメントに優れた人材も多く必要とされております。

当社グループの競争力を強化する上で最も強く求められますのは、顧客から高く評価される質の高いサービスの提供であり、これを実現するためには優秀な人材の確保とレベルアップが必要であります。こうした人材の確保や教育研修のために、当社では社内教育機関の「SNBLアカデミー」を中心として、職種、職位に応じた研修を最重要課題として取り組んでおります。

③ トランスレーショナル リサーチ事業に対する取り組み

当社グループの持つ知財を基に、創薬型の医薬品開発支援事業へパラダイムシフトするトランスレーショナル リサーチ事業は、すでに当社が独自開発した経鼻投与基盤技術(NDS)について種々の化合物による技術評価試験が実施されており、対象薬剤の科学的性状から世界的市場性までを確実に評価し、上市を見据えた開発を行っております。

特に、当社の基盤技術ライセンスに基づき経鼻偏頭痛薬の早期上市に向け臨床開発を行っているSatsuma Pharmaceuticals, Inc.が、同じく当社が設立したWave Life Sciences Ltd.に続き昨年米国ナスダック市場に上場した事もあり、新規開発中のNose-to-Brain送達技術も含めた他の経鼻投与製品の自社開発・共同開発・ライセンスアウトを積極的に進めております。

④ 多様化する創薬モダリティへの対応

昨今の医薬品開発においては、低分子医薬品から抗体医薬・核酸医薬、さらに再生医療・遺伝子治療へと創薬モダリティの多様化が進んでおります。当社グループは、こうした業界の動きに一早く対応し、常に新たな創薬ニーズに応えるべく取り組んで参りました。特に再生医療分野においては、京都大学iPS細胞研究所との共同研究に基づくiPS細胞を用いた治療に向けた安全性試験に関する研究開発経験を活かして受託しているほか、重要投資先である株式会社リジェネシスサイエンスを通じたライセンス事業にも取り組んでおります。

今後とも創薬モダリティの多様化により生じる顧客からの様々な新規ニーズに迅速に対応し、付加価値の高いサービスを効率的に提供してまいります。

⑤ 実験動物の安定的確保

当社の前臨床試験において主体となる実験動物はサル(主にカニクイザル)であります。サルはヒトとの遺伝子類似性が9割以上もあり、ヒト特異性の高い抗体医薬品等へ交差反応性を示すことが知られております。前臨床試験においては他の動物と比較して優位性が最も高いとされており、当社の前臨床事業の特色の一つであります。

当社は、品質の高い実験動物を安定的に確保するために、戦略的統括拠点として、中国及びカンボジア王国内に検疫・繁殖・育成施設を有し、日本国内では鹿児島に検疫・育成施設を設けております。

今後も、これらの施設運営の効率化と質向上を図ると共に、実験動物の安定的確保に向けた取り組みを強化してまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在(2020年3月31日)において当社グループが判断したものであります。

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 法的規制について

当社グループ国内企業の事業は、「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」及びそれに関連する厚生労働省令等による諸規制を受けております。前臨床事業においては、実験動物の調達にあたって、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」、動物の輸入届出制度等による諸規制を受け、試験実施施設は「医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施の基準」(GLP)に基づく各省庁の専門査察官による定期調査(試験施設のGLP適合性確認のための調査)の対象となっております。臨床事業においては、「医薬品の臨床試験の実施の基準」(GCP)を厳格に遵守して臨床試験を実施することが義務付けられております。

また、当社グループの在外企業においては、国内と同様に所在する各国における関連法律・制度による諸規制を受けております。

当社グループの事業において、何らかの要因によりこれらの諸規制に抵触する事象が生じた場合には、事業展開に支障が生じる可能性があります。この場合、当社グループに対する製薬企業や医療機関等からの信頼が損なわれ、受託試験が中止あるいは削減され、その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

② 製薬業界の動向による影響について

当社グループは、製薬企業等の委託を受け前臨床及び臨床試験を行っております。このため、当社グループの経営成績は、製薬業界の研究開発活動並びに前臨床及び臨床試験等の動向に大きな影響を受けております。

日本、米国、欧州における前臨床及び臨床試験データは、新薬の承認申請において相互に利用することが可能になってきており、近年においては国内大手製薬企業が海外において前臨床、臨床試験を行うケースが増加する傾向にあります。また、近年、製薬業界は研究開発における新薬開発競争力の強化を狙いとして合併・再編が進められており、わが国の製薬企業等の研究開発能力は、欧米大手製薬企業との規模の格差に起因して、相対的に低下していく可能性があります。

そうした中で、当社グループは国内においてもFDA(米国食品医薬品局)査察をはじめとする海外のGLP法令に対応可能な試験施設としての要件を備えるなど、成長性のある欧米市場の需要を取り込む体制を構築しております。

加えて、将来の市場拡大を見据えた中国における前臨床試験施設の立ち上げその他により、アジア地域を含めたグローバル展開の強化も推進していく方針であります。

しかしながら、世界的に製薬業界における前臨床・臨床試験に対する取り組みに変化が生じた場合、また当社グループが製薬業界の変化に対して十分な対応が出来ない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 自然災害等による影響について

当社グループは、国内に加えて米国、中国等に事業所を保有し、そのうち現地法規制に適合した研究施設において、前臨床試験の受託業務を行っております。

これらの地域における台風、地震、火災など大型の自然災害の発生・罹災や伝染病の流行等により、施設・機器の損壊及び従業員の就業状況に支障を来たす事態が生じた場合には、予定していた受託試験の実施スケジュールの変更を余儀なくされます。その結果、施設の稼働率低下、収益計上時期のずれ込み、施設の補修等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 前臨床事業に係るリスク要因について

(a) 実験動物の取得について

当社グループが行う前臨床試験において使用される実験動物には、サル、イヌ、ウサギ、ラット、マウス等が含まれます。サルを除いた諸動物は、多産かつ妊娠期間が比較的短く、取得に関して特に大きな障害はありませんが、実験用に供するサルは、一回当たりの出産頭数が1匹で、妊娠期間も5か月近くあり、成熟するのに2年ほどかかることから、他の実験動物と比較して繁殖が容易ではありません。

当社グループにとって最も重要な実験動物はカニクイザルであり、前臨床事業の拡大に伴い必要とされるカニクイザルの数量も増加しており、今後もこのような傾向が続くと予想されます。当社グループは、この需要に対応すべく複数の国からの輸入体制を整備しておりますが、今後、我が国又は輸出国の法規制改正や伝染病の発生等により、カニクイザルの確保及び輸入に支障が生じた場合、円滑な試験実施に支障が生じ、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(b) 前臨床試験におけるサルの優位性について

現状、実験用サルはヒトとの遺伝子類似性が9割以上もあることから、前臨床試験における優位性は高いとされており、前臨床試験における当該需要は、拡大する傾向にあるものと考えております。しかしながら、サル以外の動物においてヒトでの安全性評価に対する優位性が認められた場合、競合他社との十分な差別化が図れず、当社グループの事業戦略、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(c) 研究施設における感染症等の発生について

実験動物の調達、特に霊長類の輸入にあたっては、動物輸入届出制度等の規制のもと、農林水産省動物検疫所に輸入届出書と衛生証明書の提出が義務付けられており、輸出国では、日本の農林水産省の審査を受けて認可された施設において厳格な輸出検疫を受け、基準を満たした個体だけが輸入されております。さらに、国内では農林水産省に認可を受けた指定動物(霊長類)検疫施設にて、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に定められた厳格な検疫を実施した上で試験に使用しております。実験動物は、試験施設において、外部と遮断され、圧調整により相互の汚染が防止された室内で、新鮮な空気を定められた換気回数で入れ替え、温度・湿度ともに一定に制御された環境下にて飼育されております。また、GLP基準に基づく研究施設は、試験従事者等の入退出管理を含めて、安全管理・衛生管理には万全の態勢を構築しております。

また、当社グループの在外企業においては、所在する各国における関連法律・制度による諸規制を受けておりますが、いずれも国内と同様に、安全管理・衛生管理には万全の態勢を構築しております。

しかしながら、施設内のトラブルや感染症(新型コロナウイルス感染症を含む)等、予期せぬ事態が生じた場合には、適正な試験の進行に支障をきたし、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(d) 動物愛護について

当社グループでは、製薬企業等から実験動物等を用いた前臨床試験を実施しておりますが、GLP基準に適合した業務遂行を行うと共に、実験動物を用いるに際しては「動物の愛護及び管理に関する法律」、「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」等の適用法令及び動物実験に関する指針を遵守し、実験動物の適正な管理を行うと共に、実験動物の苦痛の軽減に務め、試験に用いる実験動物数の削減につながる代替法の開発にも注力しております。

しかしながら、生命の尊厳等の観点から動物実験全体を否定する立場もあり、動物愛護の風潮が高まる等により実験動物の利用に対して社会的評価が著しく低下した場合、当社グループのイメージに悪影響を与え、前臨床事業の円滑な遂行に支障を来たし、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 臨床事業に係るリスク要因について

(a) CRO業界における競争の激化の可能性について

日本国内におけるCRO業界は市場規模が拡大しているものの、今後もその成長性に着目した新規参入が予想され、業界に市場競争の激化が考えられます。このような競争激化の結果、当社グループの提供するサービス価格の低下や売上の減少を余儀なくされる可能性や、要員獲得競争による人件費の上昇の可能性があります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(b) 被験者の健康被害について

治験に係る被験者に健康被害が生じた場合には、治験依頼者である製薬企業等が治療に要する費用やその他の損失を補償することがGCP省令で義務付けられておりますが、当社の過失によるものである場合には、製薬企業、医療機関等から損害賠償請求を受ける可能性があります。また、係る訴訟が社会問題に発展した場合には、当社グループの信用が損なわれ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 研究開発活動について

当社グループにおきましては、新しい環境にも迅速に対応した質の高い業務ができるよう、前臨床事業及び臨床事業において最先端水準の技術を利用しております。また、必要に応じて他社、大学等の研究機関等との共同開発研究や技術提携等を行っております。また、関係会社においても研究開発活動(後述⑩を参照)を展開しており、当社グループは、今後も独自又は他社、大学等の研究機関等との連携を図った効率的かつ効果的な研究開発を進めていく方針であります。

当社グループの2020年3月期における研究開発費は400,853千円でありますが、こうした研究開発活動に費やした費用が、当社グループに十分な成果をもたらすという保証はありません。

⑦ 知的財産権について

当社グループの事業において、研究開発活動に関わる成果を特許やその他知的財産権として確保することは、事業推進上重要であると考えております。しかしながら、当社の研究成果を全て権利化できるという保証はなく、また、保有している特許や将来取得する特許によって当社グループの権利を確実に保全できるという保証もありません。

有価証券報告書提出日現在、当社グループの開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームが発生したという事実はありません。当社グループにおきましては、このような問題を未然に防止するため、事業展開に際しては弁護士への相談や特許事務所を活用して知的財産権の侵害等に関する事前調査を実施しておりますが、知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。また、仮に当社グループが第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、当該第三者の主張の正当性の有無にかかわらず、解決には多大な時間及び費用を要する可能性があり、場合によっては当社グループの事業戦略や財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑧ バイオベンチャー企業との提携について

当社グループは連結子会社及び持分法適用関連会社に対する投融資の他、当社グループの企業戦略に則り、当社事業とのシナジー効果を期待して、国内外のバイオベンチャー等と資本提携関係を結んでおります。

提携先企業の財政状態及び事業計画の変更等により投資の回収可能性が懸念される事態が生じた場合には、当社として投資に対する評価損を計上することとなり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑨ トランスレーショナル リサーチ事業について

注射による薬剤や経口剤など、従来の投与剤型に工夫を施して、薬効成分を鼻粘膜から吸収させる経鼻投与システム及び経鼻投与に必要な医療器具を自社開発しております。現時点において、鼻粘膜からの高い吸収率と十分な安全性を示す前臨床試験及び臨床試験のデータを得ております。並行して、経鼻投与システムの新たな活用も含めた製薬企業との共同研究、共同開発やライセンス供与について交渉を進めております。

これらの事業については、確実に収益をもたらすという保証はなく、その進捗等により当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑩ 関係会社について

当社グループは、2011年3月期より2018年3月期まで連続して営業損失、2011年3月期より2015年3月期の間並びに2017年3月期及び2018年3月期において、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しております。また、営業キャッシュ・フローにおいても、2014年3月期より2017年3月期の間の4期連続してマイナスとなっております。

そうした状況の中で、SNBL U.S.A., Ltd.をはじめとする下記の関係会社について、業績改善に向けた取り組みを強化しております。

(a) SNBL U.S.A., Ltd.について

米国前臨床事業のSNBL U.S.A., Ltd.(米国 ワシントン州)は、2009年3月期においては黒字化が図られておりましたが、2010年3月期以降においては損失を計上しており、2015年3月期、2017年3月期、2018年3月期及び2020年3月期において、当社単体の投資額に対して関係会社株式評価損を計上いたしました。

そのような中で、中長期的な視点で米国事業の成長を加速するためにシナジー効果が期待できる海外CROとの提携がより効果的と考え、米国前臨床事業を分社化したうえで、北米を拠点とする臨床CROであるAltasciencesグループ(カナダ ケベック州)に2018年9月に事業譲渡いたしました。

(b) その他の関係会社について

その他の関係会社においても研究開発型企業があり、研究開発活動に対して資金を投下しておりますが、これら関係会社においても十分な収益化が図られる保証はありません。

⑪ 情報セキュリティ管理体制について

 前臨床及び臨床試験に係る秘密情報の管理について

当社グループの事業では、製薬企業等から預託された開発品目の情報等(以下「秘密情報」)を得て前臨床及び臨床試験を実施しております。秘密情報については、事前の承諾なしに第三者に開示、譲渡、貸与、漏洩してはならない旨を規定した秘密保持契約を製薬会社等と締結しており、当社グループでは秘密情報を厳重に管理すると共に、役職員に対しては、個別に秘密情報の保全を義務付ける機密保持契約を締結して、在籍中、退職後を問わず、厳重に機密保持が遵守されるように注力しております。しかしながら、万が一、当社グループより秘密情報が第三者に流出した場合には、製薬企業等からの信頼が損なわれ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫ 人員の確保、育成について

当社グループの事業推進にあたっては、医学、薬学、化学、理学、獣医学及び農学等の専門性が求められることから、博士、修士並びに医師、獣医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師等の有資格者、かつ医療業務への従事経験を有する者が不可欠となります。また、昨今のAI・ビッグデータ・IoTといったデジタル化の流れを受け、IT技術や変化する経営環境に適応するためのマネジメントに優れた人材も多く必要とされております。

当社グループは今後も事業の拡大に伴い、積極的に人材の確保、育成を図る方針でありますが、こうした人材の確保や教育研修が当社の計画どおりに進むという保証はなく、人員の確保、育成が順調に進まない場合、当社グループの事業推進に支障が生じ、当社グループの経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、現在在籍するこれら人材の流出が生じた場合にも同様のリスクがあります。

なお、当社グループの事業拡大の進捗によっては、人員の増加による固定費負担が増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑬ 有利子負債への依存について

当社グループでは事業拡大の必要資金の多くを金融機関からの借入により調達しており、当連結会計年度末における連結決算における有利子負債残高(リース債務、短期借入金、長期借入金の合計額)は15,122,776千円であり、総資産比で38.8%と相応の水準にあります。また、2020年3月期には235,012千円の支払利息が生じております。

また、当社グループでは、今後の金利上昇リスクを回避するため、長期借入金の大半は固定金利による調達等を実施しておりますが、今後における金融機関借入(借換えを含む)等においてはその時点の市場金利によることとなることから、当社グループの経営成績等は今後の金利変動に影響を受ける可能性があります。

今後も、国内及び米国等における設備資金並びに金融機関借入の約定返済を中心に相応の資金需要が生じるものと考えております。今後の資金調達に関しては資本市場からの調達と金融機関借入(借換えを含む)等のバランスを考慮しつつ、実施していく方針でありますが、これが当社グループの希望する条件で実行できる保証はなく、当社グループの事業展開の制約要因となる可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑭ 為替の変動について

当社グループでは、海外製薬企業等からの試験受託や実験動物等の輸入仕入に関わる外貨建取引の決済に際しては為替相場の影響を受けております。また、連結子会社20社中9社は在外子会社であり、連結に際しては為替相場の影響を受けております。従って、為替の動向によっては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑮ 業績の季節変動等について

過去3期間における当社グループの業績の上半期及び下半期の状況は下表のとおりであります。

当社グループの業績は、顧客である製薬企業等の検収が年度末である期末に集中する傾向にあることから、売上高は下半期に偏重する傾向にあります。しかしながら、利益面では、各期における個別又は複数の売上計上案件の利益率の差異及び計上時期並びに連結子会社における事業の進展状況その他の要因により変動しており、過年度においては必ずしも下期偏重は生じておりません。今後においても、当社グループの業績は、これら各種要因等により変動が生じる可能性があります。

 (単位:千円)

 

 

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

上半期

下半期

上半期

下半期

上半期

下半期

(連結決算)

 

 

 

 

 

 

売上高

7,552,892

9,047,658

8,880,521

6,778,156

6,389,274

8,171,809

営業利益

△779,382

81,911

△137,246

967,042

1,078,583

1,149,668

経常利益

△640,187

△172,894

885,827

727,826

1,258,675

1,862,629

親会社株主に帰属する当期純利益

△1,650,261

△1,905,687

912,235

1,038,072

877,251

1,673,127

(単体決算)

 

 

 

 

 

 

売上高

4,474,692

6,233,369

4,925,111

6,107,328

5,750,647

7,416,782

営業利益

△273,996

677,496

320,108

763,083

907,898

924,103

経常利益

△436,260

219,270

1,554,811

578,166

777,085

2,505,626

当期純利益

△2,387,043

7,605,307

2,206,084

△347,774

613,729

△3,295,352

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

2019年3月期中に米国前臨床事業及びSMO事業を譲渡したことにより14,561百万円と前連結会計年度に比べて1,097百万円(7.0%)の減少となりましたが、事業譲渡による影響を除くと2,623百万円(22.0%)の増加となっております。

営業利益は2,228百万円と前連結会計年度に比べて1,398百万円(168.5%)の増加、経常利益は3,121百万円と前連結会計年度に比べて1,507百万円(93.4%)の増加となり、親会社株主に帰属する当期純利益は2,550百万円と前連結会計年度に比べて600百万円(30.8%)の増加となりました。

 

 当社グループのセグメント別業績は次のとおりであります。

(a) 前臨床事業

売上高は米国前臨床事業を譲渡したことにより13,119百万円と前連結会計年度に比べて627百万円(4.6%)の減少となりましたが、営業利益は、2,870百万円と前連結会計年度に比べて1,483百万円(107.1%)の増加となりました。

 

(b) 臨床事業

売上高は、703百万円と前連結会計年度に比べて465百万円(39.8%)の減少となりましたが、営業利益は67百万円と前連結会計年度に比べて10百万円(19.3%)の増加となりました。なお、株式会社新日本科学PPDの利益は、経常利益として計上しております。

 

(c) トランスレーショナル リサーチ事業(TR事業)

売上高は1百万円と前連結会計年度に比べて10百万円(89.8%)の減少となり、営業損失は503百万円(前連結会計年度:営業損失299百万円)となりました。

 

(d) メディポリス事業

売上高は1,002百万円と前連結会計年度に比べて39百万円(4.1%)の増加となり、営業利益は2百万円(前連結会計年度:営業損失239百万円)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」)は前連結会計年度末に比べて108百万円(2.1%)増加して、5,243百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は3,018百万円と前連結会計年度に比べて125百万円(4.3%)の増加となりました。

主な内訳は、税金等調整前当期純利益3,062百万円、減価償却費1,229百万円、持分法投資利益888百万円、売上債権の増加額619百万円及びたな卸資産の増加額445百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は1,455百万円(前連結会計年度:434百万円の獲得)となりました。

主な内訳は、有形固定資産の取得による支出1,147百万円、投資有価証券の取得による支出790百万円及び貸付金の回収による収入578百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は1,449百万円と前連結会計年度に比べて2,052百万円(58.6%)の減少となりました。

主な内訳は、短期借入金の減少額5,920百万円、長期借入れによる収入9,060百万円及び長期借入金の返済による支出4,166百万円であります。

③ 生産、受注及び販売の実績

(a) 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

前臨床事業

13,657,434

92.7

臨床事業

469,088

48.3

トランスレーショナル リサーチ事業

1,202

10.4

メディポリス事業

964,483

103.6

報告セグメント 計

15,092,209

90.6

その他事業

56,984

328.8

合計

15,149,193

90.9

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

    2 金額は、販売価格によっております。

    3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(b) 受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前期比(%)

受注残高(千円)

前期比(%)

前臨床事業

13,783,973

71.8

11,299,549

106.6

臨床事業

509,938

41.8

200,167

138.8

トランスレーショナル

リサーチ事業

1,802

39.7

600

メディポリス事業

964,483

103.6

報告セグメント 計

15,260,198

71.5

11,500,317

107.0

その他事業

56,984

328.8

合計

15,317,182

71.7

11,500,317

107.0

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

    2 金額は、販売価格によっております。

    3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(c) 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

前臨床事業

13,084,437

95.4

臨床事業

453,977

46.3

トランスレーショナル リサーチ事業

1,202

10.4

メディポリス事業

964,483

103.6

報告セグメント 計

14,504,100

92.7

その他事業

56,984

328.8

合計

14,561,084

93.0

 (注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっております。

3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

4 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります

相手先

前連結会計年度

(自 2018年4月1日

至 2019年3月31日)

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

アステラス製薬㈱

1,933,131

13.3

中外製薬㈱

1,485,073

10.2

 (注)前連結会計年度は当該割合が10%未満のため、記載を省略しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、次のとおりであります。

(a) 概要

医薬品業界は、国内外において研究開発のスピードアップと効率化を目指したアウトソーシングが引き続き堅調です。このようなトレンドを受け、当社は顧客から選ばれ続けるパートナーとなるべく、顧客ニーズを満たす迅速な対応とサービスの向上並びに継続的な質の向上に注力しております。

なお、新型コロナウイルス感染症による当連結会計年度の業績への影響は軽微であると判断しております。

 

(b) 前臨床事業

顧客満足度をさらに高めることに注力し、信頼と品質で選ばれる受託研究機関(CRO)を目指すとともに、再生医療開発支援等、新しい技術分野におけるサービスも強化しております。また、大手製薬企業からの包括的受託契約も獲得し、2019年4月から業務を開始しております。豊富な受注残高を背景に稼働状況は堅調であり、内部業務プロセスのイノベーションと経費節減を合わせ、利益率が改善しております。

 

(c) 臨床事業

2019年3月期に行ったSMO事業の譲渡によりグループ内の業務の集約を図る一方、臨床事業における米国臨床CRO企業のPPD社との合弁会社、株式会社新日本科学PPD(持分法適用会社)では、グローバル治験(国際共同治験)に対応すべく盤石な組織体制の構築を順調に進めております。

 

(d) トランスレーショナル リサーチ事業(TR事業)

経鼻投与基盤技術(Nasal Delivery System: NDS)を応用した薬物吸収フィージビリティ試験や製剤研究結果に基づいて、複数の候補化合物の新規事業化を進めております。併せて、標的鼻内部位への送達を的確に実現するため、新規デバイスを開発いたしました。市場予測のもとに、製剤開発を行い、NDSを用いた薬物吸収フィージビリティ試験により候補化合物を絞り込み、最終製剤を選定いたしました。また、NDSを応用した Satsuma Pharmaceuticals, Inc. (カリフォルニア州: Satsuma社)は、2019年9月に米国ナスダック市場上場を果たし、現在第Ⅲ相臨床試験が順調に進行中です。

一方、鼻から脳へと薬物を送達させる技術(Nose-to-Brain送達技術)が進展中です。本技術研究では、薬物を能動的に中枢神経細胞へ移行させるメカニズムを解析しております。鼻腔内標的である嗅部への送達、そこから脳内への送達、さらに脳内分布や薬効判定などをいかに安全に効率的に行うかについて、薬物の脳移行イメージング解析などを駆使しながら鋭意進めております。併せて大手製薬企業との共同研究も順調に進んでおります。

 

(e) メディポリス事業

 環境に配慮する社会的事業として地熱発電事業、自然と健康をテーマにした指宿ベイヒルズ HOTEL&SPAの運営などを行っております。発電事業は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を利用しており、地球温暖化防止、純国産エネルギーの創出推進という我が国のエネルギー政策をうけて、1,500kw級のバイナリー型地熱発電所を稼働しております。ホテル事業は、丘の上から桜島と錦江湾、その背後の大隅半島を一望できる素晴らしい眺望と豊富な温泉を利用した露天風呂や砂蒸し風呂、森の中の個室風呂などの各種スパ施設のほか、鉄板焼き“道(みち)”やフレンチレストラン“セレステ”が好評です。

 

(f) 財政状態の分析

当連結会計年度における前連結会計年度末からの財政状態の変動は、以下のとおりとなりました。

当連結会計年度末の総資産は、固定資産の投資有価証券の時価評価額が減少したことなどにより前連結会計年度末に比べ15,326百万円(28.2%)減少し、39,002百万円となりました。流動資産は、前連結会計年度末に比べ743百万円(6.4%)増加して12,409百万円となりました。固定資産は、前連結会計年度末に比べ16,070百万円(37.7%)減少して26,592百万円となりました。

負債は、前連結会計年度末に比べ3,230百万円(12.5%)減少し、22,620百万円となりました。流動負債は、短期借入金が減少したことなどにより前連結会計年度末に比べ4,816百万円(27.1%)減少して12,951百万円となりました。固定負債は、繰延税金負債が減少し、長期借入金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ1,585百万円(19.6%)増加して9,669百万円となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を2,550百万円計上し、上述のとおり投資有価証券の時価評価額が減少したことでその他有価証券評価差額金が14,424百万円減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ12,095百万円(42.5%)減少し、16,381百万円となりました。

 

(g) 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループは、GLPやGCPといった法的規制に対する適合性の調査等で高い評価を受けております。しかしながら、クライアントの創薬開発競争が激化し国際化、高度化及び大型化していく中で、当社グループは、サービスの質を継続的に高めていくと共に、グローバル化し複雑化していく顧客ニーズに対し的確に対応しつつ成長を維持していくために、設備、人材面での投資が不可欠となっております。人材の育成には時間を要する部分があり、また施設に対する投資も規模の経済性の観点からも先行的に行う必要が生じます。

 とりわけ、日本よりもはるかに巨大な市場を有する米国等の海外クライアントからのニーズに迅速かつ的確に対応していくためには、海外の規格や法的規制に対応可能な体制を整えることが戦略的に重要であると考えております。海外の規格や基準に適合性をもつためには、十分なる準備や適合性に関する調査への対応が必要であります。

 従って、事業のグローバルな競争力の向上と事業規模拡大のためには、これらに継続的に取り組む必要があり、その結果、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(h) 戦略的現状と見通し

 前臨床事業は、中長期的な視点で国内外の顧客からの要望に対して、確実に応えられる体制構築に取組んでおります。再生医療分野では最新装置を導入しており、他施設では実施困難な案件を受託できております。また、2019年4月には、大手製薬企業から創薬プロセスの一部業務の包括契約の受託に成功しました。今後も効率的かつ効果的に各種実験を適切なタイミングで行えるオンリーワンの事業価値を継続して提供してまいります。

 海外顧客からの引き合いが活発に推移しており、グローバルな大手製薬企業から継続的な受注に成功しております。この20年間、米国前臨床事業運営で培ったノウハウと米国での勤務経験を積んだ人材資産を活用して、海外顧客からの受託拡大に注力しております。

 臨床事業は、PPD社との合弁会社である株式会社新日本科学PPDを通じ、国内におけるグローバル治験を主体に受託サービスの拡充を積極的に展開しております。

 TR事業は、当社独自の経鼻投与基盤技術であるNDSを用いた既存薬剤の投与経路変更による医薬品開発など、パートナー企業とのアライアンス構築を継続して進めており、特に国外の製薬企業との、複数の候補薬剤ライセンスアウト・共同開発交渉を継続します。また、経鼻偏頭痛薬の第Ⅲ相臨床試験を順調に進めているSatsuma社に対し、さらなる知財のライセンス供与元として技術支援をしてまいります。

 その他自社開発品については、至適製剤化を進め、早期に臨床開発に入れるよう準備をおこないます。さらに、それに続くポートフォリオとして、本年初頭より猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症の予防・治療薬に関してもNDS技術の応用ができないか、感染状況の追跡評価等を進めてまいります。

 一方、NDSの新たな応用領域として、Nose-to-Brain送達技術の研究開発を加速いたします。中枢疾患におけるアンメットメディカルニーズは非常に高く、その治療薬開発は製薬企業における重点注力領域であります。血液-脳関門(Blood Brain Barrier)の存在により、静脈注射でも脳内に送達できない薬物について、Nose-to-Brain送達技術の応用が期待されています。現在、社内研究の継続に加えて、複数の大手製薬企業と共同研究契約やフィージビリティ試験契約交渉を進めてまいります。

 メディポリス事業は、従来の発電事業に加えて、地熱資源量の把握のための調査事業費補助金制度等を利用した新規発電の可能性を検討しております。また、シラスウナギの人工種苗生産は、今後の事業化に向けた展開の一環として、新たに稼働した沖永良部島(鹿児島県和泊町)での研究を本格化させてまいります。

 その他、メディポリス指宿の資源を最大限活用すべく、様々な取組みを検討してまいります。

 

(i) 経営者の問題認識と今後の方針について

 当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するよう努めておりますが、ここ数年の世界的な新薬開発における国際化、大型化、高度化等の動向に鑑みますと、環境の変化に対応して経営施策を機動的かつ柔軟に展開していくことが要求されております。

 前臨床事業におきましては、より付加価値が高く、かつ顧客満足度の高いサービスを、効率的かつ迅速に提供していく方針です。この前提条件として、より品質の高い実験動物を顧客ニーズに従い安定供給していく重要性が一層高まってきているために、中国、アジア地域の当社施設からの安定的な供給体制の確立に取り組んでおります。市場規模が日本の数倍あると予想される米国でのビジネスチャンスを逃さぬよう、SNBL U.S.A., Ltd.の運営で長年培ったノウハウと米国での勤務経験のある人材資産を最大限に活用して、今後も海外顧客からの受託拡大に注力してまいります。

 臨床事業におきましては、世界トップクラスの臨床CROであるPPDと日本における臨床事業を統合し、国内における臨床試験の実施体制を強化するとともに、PPDの有するグローバルネットワークを通じて、グローバル試験を含む幅広い試験の受託体制を強化し、事業の拡大を進めております。

 トランスレーショナル リサーチ事業におきましては、創薬型の医薬品開発支援事業へのパラダイムシフトを進めるべく、外部資金を活用した開発を積極的に推進し、早期の事業化を目指していくよう取り組んでおります。

 昨今の医薬品開発においては、低分子医薬品から抗体医薬・核酸医薬、さらに再生医療・遺伝子治療へと創薬モダリティの多様化が進んでおります。当社グループは、こうした業界の動きに一早く対応し、常に新たな創薬ニーズに応えるべく取り組んで参りました。特に再生医療分野においては、京都大学iPS細胞研究所との共同研究に基づくiPS細胞を用いた治療に向けた安全性試験に関する研究開発経験を活かして受託しているほか、重要投資先である株式会社リジェネシスサイエンスを通じたライセンス事業にも取り組んでおります。

 今後とも創薬モダリティの多様化により生じる顧客からの様々な新規ニーズに迅速に対応し、付加価値の高いサービスを効率的に提供してまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(a)資金需要

当社グループの資金需要は、主に設備投資等の投資及び運転資金等となっております。設備投資等の投資を行うにあたっては、案件ごとに投資の回収可能性や収益向上の点から検討を行い、重要なものについては取締役会での決議を経て決定するなど、社内の所定の手続に従って決定しております。計画については、第3設備の状況 3設備の新設、除却等の計画(1)重要な設備の新設等に記載のとおりです。

(b)資金の源泉

営業キャッシュ・フローからの収入で賄いきれないものについて、借入により調達しております。また、設備投資の一部についてファイナンス・リースを利用しております。なお、当連結会計年度における現金及び現金同等物等の残高は5,243百万円となっております。

(c)有利子負債

 当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債残高は15,122百万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積及び当該見積に用いた仮定

 当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。

以下「連結財務諸表規則」) に基づいて作成しております。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計方針に関する事項」に記載しております。

 なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う影響は、収束時期を見通すことが依然困難な状況にあるものの、当社グループの事業活動及び業績への影響は限定的であることから、本連結財務諸表における重要な会計上の判断及び見積りの変更は見込んでおりません。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

5【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発活動は、科学技術の急速な進展により医薬品の開発環境が大きく変化している中、新しい環境にも迅速に対応した質の高い開発支援ができるよう、当社グループの各セグメントにおいて最先端と思われる技術を開発利用しております。

 当連結会計年度における研究開発費は、400,853千円であり、各セグメント別の研究開発活動は、次のとおりであります。

(1) 前臨床事業

当社の安全性研究所及び薬物代謝分析センターでは、迅速で質の高い試験成績を委託者に提供できるよう、バックグラウンドデータの蓄積や解析を行うだけではなく、事前検討の実施や新技術獲得のための基礎研究や技術改良に日々取り組んでおります。また、いずれの施設も動物福祉に積極的に取り組み、第三者機関により動物福祉適合施設として認証されております。

 医薬品の主流が、低分子化合物から抗体医薬に代表されるバイオ医薬品の開発、iPS細胞に代表される再生医療及び遺伝子治療に移行する中で、当社は、これらの業界の動きに対応するため、種々の検討を先駆けて実施しております。例えば、抗体医薬ではこれまで日本では受託できる機関がなかった組織交差性試験を立ち上げ受託実績を積み上げました。抗体の特性評価をより詳細に実施するためのキャピラリー電気泳動や免疫学的測定法の一つであるELISAの自動測定装置Gyrolabでの受託も開始しております。さらに、既存技術より高感度でバイオマーカーを測定できる高感度免疫分析装置Erennaの受託も開始しており、高品質な測定結果について製薬企業より評価頂いております。抗体医薬は霊長類のみに反応性がみられるものが殆どであり、日本で唯一の霊長類を用いた生殖発生毒性試験を実施できる施設として、次世代への影響を評価する試験実績を増やしております。

 再生医療の分野では、iPS細胞を含む各細胞の機能解析にも応用可能な高機能細胞分析装置Attune NxTを導入し、研究受託機器を強化しております。Attune NxTのような高機能細胞分析装置を導入しているCROはほとんどないため、既に臨床検体の解析等も受託しており、前臨床だけでなく臨床試験の受託増加が見込めます。

 近年新規ながん治療として注目されているがん免疫療法の分野におきましても、その有効性評価が可能な細胞機能解析装置であるフローサイトメーターを導入しました。当該機種LSRFortessa X-20は、国内CROでいち早く立ち上げ、非臨床分野のみならず、臨床分野にも応用可能な高性能機種です。

 また、霊長類の感染実験が実施可能な施設を活用し、各種ウイルスに対するワクチンなどに関して企業や大学との共同研究を行っており、フェレットやマウスを用いた感染実験も確立しております。

 これまでの安全性研究所における収益の柱であった安全性評価に加え、近年では医薬品の有効性評価に関わる業績が向上しております。特に当社は霊長類を用いた前臨床試験では国内でトップクラスの業績を有しており、これまで培ってきた実績を基礎に霊長類を主体とした各種病態モデルを確立し、臨床への外挿性が高い有効性評価手法が国内外の製薬企業より評価を頂いております。それら病態モデルの中でも、臨床でiPS細胞の適用が進められている加齢性黄斑変性症の薬効試験は国内でも少数の試験施設でしか受託体制は整っていないため、当該モデルの確立後から既に複数試験の受託をしております。引き続き、加齢黄斑変性症のみならず、時代に応じて変化する創薬ニーズに対応した新しい病態モデルの確立も積極的に進めております。

 また、有効性評価の実績向上には、業界に先駆けて導入を進めた各種イメージング機器を用いた前臨床試験数の増加も寄与しております。当社で導入しているMRI、CT、及び血管造影装置はすべて臨床でも使用している機器となります。そのうち一昨年更新したMRIでは脳活動の機能的評価も可能となりました。すなわち、サルなどの大動物を用いてヒトと近似の病態モデルを作出し、ヒトと同じ機器を用いて動物を傷つけることなく薬物の評価を継時的にできる技術が高く評価されております。従来、前臨床試験ではイメージングを用いた有効性評価及び安全性評価は一般的ではありませんでしたが、新薬が出にくくなり、動物福祉のさらなる向上が求められている製薬業界において、イメージングを用いた新しい評価系へのニーズは国内外の製薬企業を問わず今後も高まっていくことが予想されます。

 これらの研究活動には、外部アカデミア等との共同研究も含まれております。すなわち、京都大学iPS細胞研究所とは再生医療分野の安全性研究について、岐阜薬科大学とは寄附講座を開設した上で眼科疾患を中心とした病態モデル作出について、九州大学とは共同研究講座を開設した上でがん免疫研究について協働しております。

 なお、研究成果については海外や国内の学会等において多数発表したり、国内外の学術雑誌へ論文として掲載されたりしております。

 以上の活動における研究開発費は、202,863千円であります。

 

(2) トランスレーショナル リサーチ(TR)事業

 TRカンパニーにおいては、血液-脳関門の存在により、静脈注射でも脳内に送達できない薬物につき、経鼻投与技術(NDS)の新たな応用として鼻から脳へと薬物を送達させる技術(Nose-to-Brain送達技術)の研究開発活動に注力しております。中枢疾患におけるアンメットメディカルニーズは非常に高く、治療薬の開発は製薬企業における重点領域となっています。本技術研究では、細胞間隙から脳への通過を解析するのみならず、薬物を能動的に中枢神経細胞へ移行させるメカニズムを解析しております。鼻内標的である嗅部への送達、そこから脳内への送達、さらに脳内分布や薬効判定などをいかに安全に効率的に行うかについて、神経細胞の培養実験や外部アカデミアとの共同研究による薬物の脳移行イメージング解析などを駆使しながら鋭意進めております。併せて大手製薬企業との共同研究も順調に進んでおります。TRカンパニーは、本技術を臨床研究ステージへと飛躍させることを目標としております。

 一方、NDSを用いた従来型の薬物吸収フィージビリティ試験や自社での製剤研究結果を用いて、国内外での事業化のために自社開発候補化合物を特定しつつあります。また的確な鼻内部位への送達と低価格化を実現すべく、新規デバイスの開発が進んでいます。

 TRカンパニーよりスピンアウトした経鼻偏頭痛薬の開発会社である Satsuma Pharmaceuticals, Inc. (米国 カリフォルニア州)では、2019年3月に米国NASDAQ市場への上場を遂げ、第Ⅲ相臨床試験を順調に施行中であり、引き続きその支援をおこないます。

 以上の活動における研究開発費は、180,571千円であります。

 

(3) その他

 その他の研究開発費は、17,418千円であります。