文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社は、「社会の安全と発展のために」を会社理念とするリアルタイム技術専門会社であります。
当社は、情報社会のキーコンセプトはリアルタイムにあるとし、創業以来、リアルタイム技術を中核に据えてビジネスを展開してまいりました。これからも、リアルタイム技術にこだわり、トップブランドのリアルタイム技術専門会社を目指して、ビジネスを展開してまいります。
そして、当社会社目標である「最良のリアルタイムソフトウェアを提供して、社会に貢献する」ことの追究を通して、お客様満足度を継続的に改善して事業成長に繋げることで、株主・投資家の皆様のご期待に応えてまいります。
(2) 経営戦略等
当社は、「QCD&I」―――QCD(品質・価格・納期)を窮め、I(イノベーション)で飛躍する。―――をビジネスコンセプトとして、主体的なビジネスに取り組んでおります。
基本的な事業基盤として、お客様からの厳しいQCD改善要請への対応力を強化したうえで、さらなるイノベーション努力で、ニューエレメント(革新的技術、標準化技術、ソリューション製品、特許など知的財産権、新ビジネスモデルなど)を生み出し、このニューエレメントを核とした高付加価値化ビジネスで他社差別化を図って飛躍していくことを基本方針としております。
お取引先展開としては、訴求力あるニューエレメントでお取引先を開拓し、開拓後は、強力なQCD対応力などで高いお客様満足度を獲得してリピートオーダーに確実に繋げ、横展開・深掘りで量的拡大を図り、こうしたお取引先毎の新たな成長曲線を重ね合わせていくことで会社全体での成長を実現することを基本方針としております。
また、イノベーションの連鎖を断つことなくニューエレメントを継続的に得ていくために、R&Dのテーマを「ユビキタス」として研究開発・製品開発活動を強化し、また大学や企業などとの共同研究を積極的に推進してまいります。
(3) 経営環境
IoT時代の本質は、「モノのサービス武装」と「サービスのモノ武装」により、様々な業界の境界がなくなり、境界なき協業と想定外のライバルが出現することであります。ソフトウェア業界は、今までお客様の効率化や生産性向上に寄与してまいりましたが、これからは、お客様のパートナーとなって新しい価値を創造していくことが必須になります。お客様のご期待に応えるには、当社単独では限界があり、他社・大学・官公庁・研究機関などと連携し、新しい価値を創造する「オープン・イノベーション」を実践することが重要であると認識しております。
またプログラミング的思考が義務教育化され、デジタル庁が発足するなど、国全体がデジタル化を推進し、ソフトウェアが主役の時代になりました。このような時代にあっては、生成AIを始めとするソフトウェア技術が多様化・高度化し、高度な技術に対応できる専門家が必要となります。当社は、「基礎なくして高度な専門性なし」のもと、高度な技術に適応可能な基礎能力が高い人材を採用し、6か月間の新入社員教育でリアルタイム技術を習得させることにより、優秀な技術者を育て上げることを基本方針としております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①高い成長性の確保
当社では、安定的な成長に加え、高い成長性を確保することが課題であります。急速に技術が進歩していくソフトウェアビジネスでは、現場の感度を高め研究開発で変化先取りに注力して新技術をいち早く習得し、主体的なビジネスを展開することが高い成長に繋がると認識しております。
官公庁を主体とした社会基盤系の開発で業績のベースを確保し、その上に研究開発や製品開発を強化し、ビジネスモデルを含めた新技術の提案力で成長分野を戦略的に受注し、高い成長性に繋げてまいります。
また成長を維持するには需要構造の変化に迅速に対応する必要があります。そのためには、社員が敏感に変化を感じる感度とその環境変化に適応する能力が必須であります。当社では、基礎能力の高い人材を採用し、知識教育と実践教育を行い、社員の適性を見ながら、適用分野に必須となる技術や業務知識を保有する技術者を育成してまいります。
②安定的な収益確保
当社では、安定的な収益を確保することが課題であります。安定的に収益を確保するためには、不採算プロジェクトを発生させないことが重要であり、プロジェクトマネージメント力の強化を図ってまいります。また組織的なリスク管理の強化、品質マネジメントシステムの徹底、品質管理部門によるプロジェクト管理支援、内部統制機能や社員教育の強化などを推進して、この課題に取り組んでまいります。
③優秀な人材の確保
当社では、高い成長性を確保するために、優秀な人材の確保が課題であります。人間力が競争力の元であるソフトウェアビジネスでは、社員の質が会社の質を決め、社員の成長が会社の成長に繋がります。このため、社会的信用力と知名度の向上を活かし、優秀な人材をより多く獲得し、入社後は社員自らが成長できる環境を用意し、社員の成長を促す教育制度を充実させ、「学ぶ組織」を構築してまいります。
また優秀な人材には、魅力あるチャレンジングな仕事と魅力的な待遇が重要であり、さらにグローバルなビジネス展開を意識しながら、大学との共同研究や他社とのアライアンスを積極的に推進し、イノベーションを生む環境を研究し、社員の能力を最大限に発揮できる執務環境も構築してまいります。
④優良な外注先の確保
当社では、高い成長性を確保するために、経営資源の一部を社外に求める必要があり、優良な外注先を確保することが課題であります。また優良な外注先を確保するためには、まずは当社が魅力ある会社になる必要があり、外注先の開発力と当社の開発分野の適合性をみながら、協力関係を構築してまいります。
一方、売上高に対する外注比率が高くなると、技術の空洞化や品質の劣化に繋がるため、受注弾力性を考慮しながら適正な外注比率を追究してまいります。
(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社では、会社理念の方針のひとつである「質重視経営」の成果は売上高営業利益率に表れると考え、売上高営業利益率2桁を維持するよう努力してまいります。
(6) 今後の見通しについて
次期の我が国情報サービス業は、地政学的リスクや世界経済の減速、インフレなどによる影響が懸念されるものの、DX推進のためのIT投資が増加し、IT需要は全体としては堅調であると予想しております。当社事業領域では、全体的には今期と同様の需要環境が継続するものと予想しております。
こうした傾向の中、次期の重点テーマは、今期と同様、「先端技術を窮め、オープン・イノベーションで事業成長を目指す」とします。当社の強みである先端技術を窮めるため、高度技術教育を充実させ、大学や国、企業の研究機関との共同研究を推進して、継続的な成長を目指します。
BF別には、モバイルネットワークBFは、スマートコンストラクション関連の開発が引き続き堅調であるものの、XR(クロスリアリティ)サービス関連の開発が減少し、微減を見込んでおります。インターネットBFは、民間企業向けのDX案件が継続するものの、他のBFとの人員配分の最適化により、前期並みを見込んでおります。社会基盤システムBFは、環境分野や医療・福祉分野をはじめとした官公庁向けの開発が引き続き好調で、増加を見込んでおります。宇宙先端システムBFは、サービスロボットの研究開発案件や宇宙関連の開発が堅調に推移し、増加を見込んでおります。
営業利益は、人に対する投資(処遇改善や先端技術の教育拡充)、技術に対する投資(研究開発投資)、イノベーションを促進し、最適な働き方を実現する環境への投資(執務環境や開発環境への投資)を引き続き行うものの、生産性向上により、増加を予想しております。経常利益は、次期も国の研究機関からの受託研究による補助金収入を今期並みに見込み、増加を予想しております。当期純利益は、今期は賃上げ促進税制が適用され実効税率が下がったことにより増加しましたが、次期は税金費用を法定実効税率どおりで計算しております。
以上により、次期の業績としては、売上高9,200百万円、営業利益1,570百万円、経常利益1,650百万円、当期純利益1,145百万円を見込んでおります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(サステナビリティについての基本方針)
当社は、「社会の安全と発展のために」を会社理念とし、最良のリアルタイムソフトウェアを提供して社会に貢献することを目標としており、当社の事業活動そのものがサステナビリティの実現につながるものであると認識しております。
事業活動を通してのサステナビリティの実現を基本としながら、事業活動を取り巻く課題とサステナビリティのさらなる調和を目指し、全社員が環境、社会および経済のバランスの問題に積極的に取り組み、この取組みを継続的に改善していくことを、サステナビリティを巡る取組みについての基本的な方針としております。
(1) ガバナンス
当社では、環境活動や品質活動については品質/環境推進委員会、情報セキュリティ活動や個人情報保護活動、事業継続活動についてはセキュリティ委員会、研究開発については研究企画室、人材育成や健康経営については総務人材部、開発環境や執務環境の整備については事業推進部がそれぞれ中心となって推進しております。委員会や各組織からその活動内容が定期的に取締役会に報告され、重要な事項については取締役会で十分な時間をかけて審議し、意思決定しております。また、コーポレート・ガバナンスについては、審議に十分な時間をかけた取締役会を開催すること、監査等委員会監査や内部監査による経営チェック機能の充実、任意の諮問機関である指名報酬委員会による取締役の指名・報酬等に関する手続きの公正性・透明性・客観性の強化を重視しております。全てのステークホルダーの立場を踏まえたうえで、コーポレート・ガバナンスが目的とする透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行う仕組みを構築・維持・改善し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のための自律的な対応を進めております。
(2)戦略
①マネジメントシステム
当社では、お客様をはじめとする当社に関係する全ての皆様から、当社への信頼と安心を獲得するべく、国際規格などの社外基準に従ったマネジメントシステムを積極的に導入し、規格・基準を遵守した企業活動を推進しております。また、それら規格・基準の遵守状況について定期的に第三者の審査を受け、透明性の高い経営を推進しております。
a) 環境活動
当社は「地球資源が有限であることを認識し、環境の保全に永続的に配慮する」ことを会社方針としております。2000年12月に環境マネジメントシステム(ISO 14001)の認証を取得し、企業活動と地球環境の調和を目指して全社員が環境問題に積極的に取り組んでおります。この取組みを継続的に改善し、情報通信技術の活用で省資源・省エネルギーを実現することで、ソフトウェア会社としての社会的責任を果たしてまいります。
b) 品質活動
社会の安全と発展に貢献していくためには、高品質なソフトウェアを継続的に生み出すための仕組みと組織基盤が必要です。当社は1998年1月に品質マネジメントシステム(ISO 9001)の認証を取得して以来、品質マネジメントシステムを組織に根付かせるとともに、お客様満足度追究の基盤ツールとして、継続的な改善を続けてまいります。
c) 情報セキュリティ活動・個人情報保護活動
情報資産を適切かつ安全に保護することは、情報通信技術に携わる企業の社会的責任のひとつです。当社は2001年11月に「プライバシーマーク」の使用許諾事業者としての認定を取得、2003年3月に情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC 27001)の認証を取得、2022年11月に個人情報保護マネジメントシステム(JIS Q 15001)の認証を取得し、情報資産に対する安全対策を日々実施しています。あらゆる脅威から情報資産を保護し、情報セキュリティ上のトラブルを発生させない事業活動を通じて、安全な情報社会の発展に貢献してまいります。
※情報セキュリティ方針につきましては、当社ホームページをご覧ください。https://www.sec.co.jp/ja/security.html
※個人情報保護方針につきましては、当社ホームページをご覧ください。https://www.sec.co.jp/ja/privacy.html
d) 事業継続活動
近年、巨大地震などの自然災害、大規模な感染症流行、サイバー攻撃をはじめとする外部からの脅威など、事業活動の中断・停止を招きかねないリスクに適切に対処していくことが企業経営の重要な課題となっています。当社は2014年3月に事業継続マネジメントシステム(ISO 22301)の認証を取得しました。国際規格に準拠した事業継続活動に継続的に取り組むことで、企業の社会的責任を果たしてまいります。
②研究開発
「イノベーションは成長の源泉」とする当社にとって、研究開発は、事業を通して社会に貢献していくための全ての活動のベースとなるものです。当社は「ユビキタス」を1990年代から研究開発テーマとしていますが、「ユビキタス」とは、身の回りの全てのものにコンピュータを埋め込んでネットワークに接続することで、私たちの生活を安全、安心、快適、効率的にし、また、環境負荷を軽減するという概念です。今後もより多くの経営資源を研究開発に振り向け、主体的なビジネスで持続的な成長を目指してまいります。
当事業年度における研究開発活動につきましては、「
③人材育成及び社内環境整備
ソフトウェアサービスを事業とする当社にとって、人的資本への投資と知的財産の創出は重要な経営課題であると認識しており、人材育成方針及び社内環境整備方針を以下のとおり定めております。
a) 人材育成方針
当社は会社理念において「社員の自己実現と会社の存続発展の一致をはかる」ことを目標の一つとして掲げています。
ソフトウェアビジネスは人への依存度が極めて高く、社員の質が会社の質を決め、社員の成長が会社の成長につながります。ソフトウェアエンジニアの素養とプロとしての志を持つ優秀な人材を採用し、プロに相応しい挑戦の機会と自ら学び成長する機会を提供することが当社の人材育成の基本方針です。
b) 社内環境整備方針
・技術革新が繰り返されるソフトウェアビジネスにおいて社員が成長し続けるためには、ソフトウェアの基礎を徹底して身に付けておくことが重要です。「基礎なくして高度な専門性なし」の基本理念のもと、半年間にわたる新入社員教育で基礎技術を教育し、変化への対応力を鍛えます。
社員の自己啓発を促し、社員の成長意欲に応えるための社員教育の拡充に常に努め、仕事を通して専門性を高める成長と社員自らの学びが循環する「学ぶ組織」を構築しています。
・社員の知的好奇心を高めるためには、新しい知識・技術を取り入れ、変化を先取りする研究開発を推進することが重要です。開発部門に研究開発機能を持たせ、社員ひとりひとりの着想と知的好奇心を起点とした研究開発テーマを採用し、より多くの挑戦の機会を提供します。
・社員の能力を最大限に発揮し、イノベーションを起こすためには、社員の意欲を高めるオフィス環境が重要です。生産性を高め、社員のコミュニケーションを促進し、イノベーションを生み出すための開発環境や執務環境の設備投資を進めます。
・当社が持続的に成長するためには、社員が安心して働き続けることのできる制度や仕組みが必要です。社員の心身両面の健康と安全に配慮し、社員が様々なライフステージの変化を経る中で働き続けることのできる環境や制度を整備します。また、社員との対話を促進し、社員の心理的安全性と従業員エンゲージメントの向上に努めます。
人的資本及び社内環境整備への投資につきましては、重要な経営課題として、「
(3)リスク管理
当社は「リスク管理規程」を定め、リスク管理の意思決定機関である取締役会の役割を規定しております。取締役会では、経営リスク及び機会を識別、分析、評価し、対応方針を決定しております。また、環境活動、品質活動、情報セキュリティ活動、個人情報保護活動、事業継続活動に関してはマネジメントシステム認証を取得しており、これらのマネジメントシステムプロセスに適用される、PDCAモデルを用いて実践しております。それぞれ委員会組織で活動しており、(P)リスク及び機会を識別し、年度目標を計画し、(D)導入・実践し、(C)パフォーマンス評価・日常監査・マネジメントレビューを実施し、(A)改善・是正処置を実施するというPDCAサイクルを回して、継続的な改善を図っております。
(4)指標及び目標
当社では、管理職や役職者など中核人材への登用に際しては、性別や国籍、経歴によらず、本人の適性・資質・能力を重視して登用する方針としております。当社の従業員には情報技術だけでなく様々な学術分野の専門的な知見を有した者を採用しており、またソフトウェア・システムの開発という事業を通して、従業員が様々な業界の知識・経験を得ることにより多様性を確保していると考えております。そのため、女性、外国人、中途採用者の管理職登用に関する目標は設定しておりません。
当社は、女性の活躍推進は企業の責務であると認識しております。当社では、従業員数に占める女性の割合が少ないこと、採用応募者に占める女性の割合が少なく女性従業員の増加につながりにくいことが課題となっております。採用応募者に占める女性の割合を30%以上にすることを目標とし、採用担当者への女性の活用、女性が安心して就業・成長できる環境についての情報発信に努めており、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画を厚労省に提出しております。
社員が様々なライフステージの変化を経る中で、働き続けることのできる環境を用意することも、多様性の確保において重要だと認識しています。育児や介護などの支援制度を整え、社員が働きやすい環境の整備にも努めております。
社員教育については、変化の速いソフトウェアの世界に対応できる揺るぎない基礎と、高品質なソフトウェアを開発するためのノウハウを徹底して教育し、チャレンジのしがいのある質の高い仕事を通して社員の成長につなげます。オープンマーケットで評価される人材の育成に取り組んでおり、情報処理に関する公的資格の取得を推進しております。
当社では、上記「(2) 戦略」において記載した、人材の多様性を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。
指標及び目標
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指標 |
目標 |
実績(当事業年度) |
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(注)1.2024年4月に入社する社員に対する採用活動で算出しております。
2.全社員の取得を推進しているため、具体的な目標数値は設定しておりません。
3.情報処理技術者試験資格保有率のうち、31.4%は高度試験合格者となっております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 当社の事業全体に共通する業績変動要因
①問題プロジェクトの発生
当社では、納期遅延、お客様クレーム、過大勤務を発生させたプロジェクトを問題プロジェクトと定義しております。問題プロジェクトは必ずしも不採算プロジェクトではありませんが、過去の実績では多額な原価を発生させて不採算となるケースが多く、問題プロジェクトが大型プロジェクトである場合には、当社全体の業績に影響を及ぼすことがあります。
また、問題プロジェクトを発生させたことでお客様からの信用が失墜して、取引が減少あるいは停止となった場合には、当社業績に影響が及ぶことがあります。
②大型プロジェクトの採算
大型プロジェクトは事業効率が高いなどのメリットも大きく積極的に受注していく方針であります。当社は原則としてプロジェクト全体を一括して受注する契約形態を基本としていることもあり、開発要員などの経営資源の多くの割合を投入する大型プロジェクトの採算は、当社全体の業績に影響を及ぼすことになります。
③大型プロジェクトの組み替え不調
大型プロジェクトの場合、開発工程が完了すると多くの開発技術者が一斉に手空きとなる一方で、都合良く多くの開発技術者を要する後続のプロジェクトを用意できていることはまれであり、技術者の稼働率が低下しがちで、大型プロジェクトの切り替えが不調の場合には当社業績に影響が及ぶことがあります。
④受注価格水準の変動
当社の売上原価の大部分は、ソフトウェア開発に関する人件費と外注費で構成されていますが、最近のIT人材争奪戦と社会的要請から、いずれも増加傾向にあります。当社は、高付加価値化による受注価格の引上げやQCD(品質・コスト・納期)改善活動の一環として生産性向上によるコスト削減に努力しておりますが、増加したコスト分を受注価格に反映できなかった場合には、当社業績に影響が及ぶことがあります。
⑤先行投資の影響
当社は、これからも研究開発・製品開発投資、研究開発型ベンチャー企業への投資、事務所移転・拡張、社内開発環境の最新化などを実施してまいりますが、当社の計画どおりに投資効果が得られなかった場合や、投資先企業の経営が悪化した場合などには、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
⑥取引先の事業再編や組織変更
当社の取引先において、グループ再編やM&Aなどにより経営体制が代わり、外注への発注方針が変更になった場合には、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
⑦取引先の事業計画や研究開発計画の変更
当社の取引先自体の激しい競争や環境の変化を背景に、事業計画や研究開発計画の変更や中止が発生し、それに伴い技術者の稼働率が大きく変動した場合には、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
⑧新しい要素技術の適用
当社の事業領域では、新しい要素技術を実装する案件が多く、経験に基づく見積が困難な難度の高い新技術の一括受託契約での見積を誤った場合には不採算になりがちで、逆に新しい要素技術の適用が減少した場合には、需要そのものが減少する可能性があり、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
⑨公的セクターの予算変動や規制
当社の社会公共分野の事業領域では、公的セクターの予算の増減や規制が業績変動要因となっております。当社では、社会公共分野での新事業領域への拡大に努力をしておりますが、予算削減や予算の執行が滞ると、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
⑩競争入札の拡大
当社の公的セクターや大手民間企業の開発案件は、競争入札になります。当社では、技術力を背景とした積極的な提案活動を展開しておりますが、戦略的な低価格での落札や失注した場合には、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
(2) 主要取引先への依存度が高いことについて
当社では、継続して営業活動を強化して取引先バランスの確保に努めてまいりますが、上位取引先の受注動向等によっては当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 需要構造の変化やイノベーションの停滞について
当社では、創業以来、技術革新などによる需要構造の激変を何回か経験してきましたが、研究開発・製品開発活動によりニューエレメントを得て、それを核とした主体的ビジネスで業績成長を果たしてまいりました。今後も研究開発による変化先取りで対応していく方針ですが、需要構造の変化に対して当社が適切に対応できなかった場合やイノベーションが停滞した場合には、当社業績に影響が及ぶことがあります。
(4) 人材の確保について
当社成長の元は優秀な人材の獲得・定着にあります。当社では、上場企業であることの信用力や知名度を活かし、また処遇面も向上させ、優秀な人材を獲得していく方針ですが、IT人材争奪戦の激化に伴い、こうした獲得策が成果に繋がらない場合、当社の更なる成長機会を逸する可能性があります。また、獲得した人材が定着しなかった場合、技術の伝承・再利用が途切れたり、プロジェクト編成に支障をきたしたりして、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
(5) 安全衛生・労働災害について
当社は、従業員の安全、衛生及び健康の確保に向けて、労働安全衛生法その他の法令や通達の遵守など安全衛生管理に努めておりますが、プロジェクトに予期せぬ事態が発生して過大な勤務が続くなどで、精神性疾患や体調に不調をきたす従業員が発生し発病した場合、士気の低下や休職者・退職者の増加に繋がり、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
(6) 優良な外注先の確保について
当社は、受注責任を全うできる範囲に外注範囲を限定することを基本方針として、業容の拡大、高収益の維持、受注弾力性の確保などを期して外注体制の強化を図っておりますが、優良な外注先が確保できない場合、当社の更なる成長機会を逸する可能性があります。
(7) 法令違反・内部統制について
当社では、法令・規制要求事項やISO 9001、ISO 14001、ISO/IEC 27001、ISO 22301、JIS Q 15001、プライバシーマークなどを含め、広くお客様の要請を満たしていく経営をコンプライアンス経営と定義しておりますが、何らかの事故が発生した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は効率的な内部統制の仕組みを構築しておりますが、何らかの財務報告上の指摘があった場合には、業績に影響が及ぶ可能性があります。
(8) セキュリティ事故について
当社は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC 27001)や個人情報保護マネジメントシステム(JIS Q 15001)の認証、プライバシーマーク使用許諾を得て、サイバーセキュリティ経営ガイドラインに則り組織を挙げてセキュリティ事故の防止に努めておりますが、何らかのセキュリティ事故が発生し、信用の失墜による取引停止や賠償金の支払いなどが発生した場合、当社の業績に影響が及ぶ可能性があります。また、セキュリティ要求レベルの高い案件を受注する場合には、取引先から特別なセキュリティ設備の設置を要請されることもあり、その設備投資の金額によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 大規模な自然災害の発生や感染症の拡大について
当社は、事業継続マネジメントシステム(ISO 22301)認証を取得し、地震や台風などの自然災害、火災、テロなどの発生、感染症の拡大に備え、事業継続計画(BCP)を整備して被害の最小化を図っておりますが、社員や設備、取引先の被害状況によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 賠償責任の発生について
当社が提供した技術サービスの瑕疵が原因でお客様が経済的損害を被った場合に、損害賠償金等を請求されることがあります。当社では、賠償責任保険に加入して備えておりますが、当該保険の免責事項に該当する、ないし支払限度額を超えた損害を発生させた場合には、当社の業績に影響が及ぶことになります。
(11) 売上高計上について
当社では、請負契約案件について、案件毎に費消製造原価を発生主義で認識し、原価進捗率(費消製造原価の見積り総製造原価に対する割合)に応じて売上高を認識し、計上しております。
そのため、売上高の認識には受注総額と総製造原価の見積りが不可欠であり、契約・見積管理や計画管理を厳格に行うことが求められます。この受注総額と総製造原価の見積りを誤った場合には、請負契約案件の期末日時点の適時・適正な売上高計上が阻害される可能性があります。
当社は経営上の主要なリスクについて、毎年取締役会において棚卸を実施し、リスクを評価しております。
上記のリスクの中で、当事業年度末現在において特に重要な影響を与えうる可能性があるのは、需要構造の変化や上位取引先の受注動向の変化、問題プロジェクトの発生、大型プロジェクトの採算であると認識しており、対応をより一層強化してまいります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度における我が国情報サービス業の業況は、経済産業省「特定サービス産業動態統計」によると、2023年4月以降の月別売上高は前年同月比で増加しており、IT需要は全体的には概ね堅調と推察されます。当社事業分野では、サービスロボット関連やスマートコンストラクション関連の開発が大幅に増加したことに加え、官公庁向けの開発も引き続き好調であるなど、需要構造の変化が継続しております。
こうした傾向の中、当社は、重点テーマであります「先端技術を窮め、オープン・イノベーションで事業成長を目指す」を実践し、増収増益となりました。
ビジネスフィールド(以下、ビジネスフィールドをBFと省略)別には、モバイルネットワークBFは、スマートコンストラクション関連の開発が大幅に増加し、売上高は1,248百万円(前年同期比6.4%増)となりました。インターネットBFは、民間企業向けの開発が増加し、売上高は1,155百万円(同13.5%増)となりました。社会基盤システムBFは、環境分野や医療・福祉分野をはじめとした官公庁向けの開発が引き続き好調で、売上高は3,325百万円(同21.5%増)となりました。宇宙先端システムBFは、宇宙関連の開発が堅調であることに加え、サービスロボット関連の開発が大幅に増加し、売上高は2,804百万円(同9.6%増)となりました。
この結果、全社売上高に占める割合では、社会基盤システムBFが上昇し、インターネットBFがほぼ前年同期並みとなり、モバイルネットワークBF、宇宙先端システムBFが減少しております。
以上の結果、当事業年度の業績は、売上高8,534百万円(前年同期比14.0%増)、営業利益1,467百万円(同20.7%増)、経常利益1,547百万円(同21.1%増)、当期純利益1,105百万円(同25.8%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ108百万円減少して、期末残高は2,968百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果得られた資金は384百万円となりました。これは主に、税引前当期純利益1,547百万円による増加、売上債権の増加836百万円による減少、法人税等の支払額441百万円による減少の結果であります。前年同期と比較して142百万円の収入減となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果支出した資金は139百万円となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出201百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入100百万円、有形固定資産の取得による支出33百万円によるものであります。前年同期と比較して164百万円の支出減となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果支出した資金は352百万円となりました。これは主に、配当金支払いによる支出350百万円によるものであります。前年同期と比較して28百万円の支出減となりました。
③生産、受注及び販売の実績
当社は単一セグメントであるため、ビジネスフィールド別に記載しております。
(a) 生産実績
当事業年度の生産実績をビジネスフィールド別に示すと、次のとおりであります。
|
ビジネスフィールド |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
モバイルネットワーク |
1,248,537 |
106.4 |
|
インターネット |
1,078,228 |
116.8 |
|
社会基盤システム |
3,301,431 |
121.7 |
|
宇宙先端システム |
2,781,148 |
109.3 |
|
合計 |
8,409,346 |
114.4 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.リアルタイムソリューションの製品ビジネスは、サービスの性格上生産実績を定義することが困難であるため、金額に含まれておりません。
(b) 受注実績
当事業年度の受注実績をビジネスフィールド別に示すと、次のとおりであります。
|
ビジネスフィールド |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
モバイルネットワーク |
1,197,346 |
98.7 |
234,457 |
82.1 |
|
インターネット |
1,235,635 |
127.4 |
323,156 |
132.9 |
|
社会基盤システム |
5,030,820 |
150.1 |
4,323,720 |
165.1 |
|
宇宙先端システム |
3,077,582 |
122.2 |
888,336 |
144.3 |
|
合計 |
10,541,384 |
130.9 |
5,769,672 |
153.3 |
(c) 販売実績
当事業年度の販売実績をビジネスフィールド別に示すと、次のとおりであります。
|
ビジネスフィールド |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
モバイルネットワーク |
1,248,537 |
106.4 |
|
インターネット |
1,155,694 |
113.5 |
|
社会基盤システム |
3,325,431 |
121.5 |
|
宇宙先端システム |
2,804,868 |
109.6 |
|
合計 |
8,534,531 |
114.0 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析
a.当事業年度の経営成績の分析
(a) 売上高
売上高は、サービスロボット関連やスマートコンストラクション関連の開発が大幅に増加したことに加え、官公庁向けの開発も引き続き好調であるなど需要環境は好調で、前事業年度と比較して1,045百万円増加し、8,534百万円となりました。詳細については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
(b) 営業利益
売上原価は、外注費の増加、社員数の増加やベースアップによる人件費の増加などにより、前事業年度と比較して736百万円増加し、5,983百万円となりました。売上総利益は、前事業年度と比較して308百万円増加し、2,550百万円となりました。売上総利益率は29.9%となり、前事業年度と同水準となりました。
販売費及び一般管理費は、新入社員の増加などに伴う人件費の増加、研究開発費の増加などにより、前事業年度と比較して57百万円増加し、1,083百万円となりました。
以上の結果、営業利益は、前事業年度と比較して251百万円増加し、1,467百万円となりました。
当社では、会社理念の方針のひとつである「質重視経営」の成果は売上高営業利益率に表れると考えてその向上に努力しております。当事業年度は15.9%で計画しましたが、計画を1.3ポイント上回って17.2%となり、前事業年度と比較して1.0ポイント改善いたしました。
(c) 経常利益
営業外収益は、受取出向料が減少したものの、研究開発の補助金収入が大幅に増加したことにより、前事業年度と比較して17百万円増加し、82百万円となりました。
営業外費用は、前事業年度と比較して0百万円減少し、1百万円となりました。
以上の結果、経常利益は前事業年度と比較して269百万円増加し、1,547百万円となりました。
(d) 当期純利益
特別利益、特別損失は発生しませんでした。
法人税・住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた法人税等の合計は、賃上げ促進税制適用による税負担の減少などにより、前事業年度と比較して42百万円の増加にとどまり、442百万円となりました。
以上の結果、当期純利益は前事業年度と比較して226百万円増加し、1,105百万円となりました。
b.当事業年度の財政状態の分析
(a) 資産の状況
当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べ923百万円増加し、10,108百万円となりました。これは主に、現金及び預金の減少108百万円・売上債権(受取手形、売掛金及び契約資産)の増加831百万円などによる流動資産の増加742百万円、投資有価証券の増加143百万円などによる固定資産の増加181百万円によるものであります。
(b) 負債の状況
負債は、前事業年度末に比べ128百万円増加し、1,710百万円となりました。これは主に、買掛金の増加106百万円・未払消費税等の増加60百万円・賞与引当金の増加14百万円などによる流動負債の増加148百万円、長期未払金の減少27百万円などによる固定負債の減少20百万円によるものであります。
(c) 純資産の状況
純資産は、当期純利益による増加、自己株式取得による減少、配当金支払いによる減少などの結果、前事業年度末に比べ795百万円増加し、8,398百万円となりました。自己資本比率は前事業年度末の82.8%から83.1%となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.当事業年度のキャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ108百万円減少して、期末残高は2,968百万円となりました。詳細については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
b.資金需要の主な内容
当社の資金需要は、主に生産活動に必要となる人件費、外注費となります。これらについて、現在手元資金でまかなえる状況でありますが、手元資金の変動を平準化し、突発的な資金需要に備えるため、賞与資金の一部について短期借入を行っております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社では、イノベーションの成果としての「ニューエレメント」(革新的技術、標準化技術、ソリューション製品、特許など知的財産権、新ビジネスモデルなど)を核とした高付加価値化ビジネスで他社差別化を図り、事業成長を実現することを期しております。当社の研究開発は、その成果として、当社ビジネスにこの「ニューエレメント」を供給することを目的としております。
当社の研究開発は、お客様や市場に密着したテーマを中心とするため、製造部門各部門が主体的に活動を推進し、その一方で、研究企画室が全社の研究開発活動を統括し、また研究開発テーマ間のシナジーを促進する役割を担っております。
当事業年度における研究開発費の総額は、
当社は研究テーマを「ユビキタス*」とし、IoT*、AI(人工知能)、ロボットの3つを注力分野として取り組み、大学や国の研究機関との共同研究も推進しております。テーマ別の研究開発の状況は以下のとおりです。なお、*印を付した専門用語につきましては、本項最後の用語集にて解説しております。
①IoT
当社では、ユビキタスの概念が技術の進化により具現化したものがIoTであると考え、IoTの研究開発に取り組んでおります。
IoTの普及において不可欠な基盤技術が5G(超高速、超低遅延、多数同時接続)となりますが、当社は5Gの特徴を活かしたエッジデバイスを実現するための技術としてMR*に注目しており、当事業年度は、MR技術を用いた次世代可視化技術に関する研究機関との共同研究を実施しました。そのほか、ロボット・IoT向けコンピュータビジョンの研究、ブロックチェーン技術の研究、スマートシティに関する研究開発なども実施しております。
②AI(人工知能)
当社では、ユビキタス社会のキーテクノロジーがAIであると考え、大学や国の研究機関との共同研究を中心に、AIの研究開発に取り組んでおります。
当事業年度は、空間特性可視化システムに関する大学との共同研究、画像系AIを利用したXRサービスの研究などを実施しました。
③ロボット
当社では、ユビキタス社会における究極の端末はロボットであると考え、ロボットの研究開発に取り組んでおります。特に、ロボットを制御するソフトウェアのコンポーネント化(部品化)技術であるRTミドルウェア*や、ロボット開発のフレームワークであるROS*などの共通化技術を有しており、これらをベースとしたロボット技術の研究開発を推進しております。
当事業年度は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術統合開発機構(以下、NEDO)が実施している「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」に引き続き参画し、FPGA*にレザバー計算モデル*を搭載する超低電力エッジAIチップの研究開発を実施しました。また、NEDOが実施している「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第 3 期/人協調型ロボティクスの拡大に向けた基盤技術・ルールの整備」の委託先として採択され、住宅・ビル等の人協調ロボティクスの社会実装技術開発の研究を開始しました。さらに、ロボットの開発技術に関する研究、ロボットの自律移動に関する研究、ロボットアーム制御ソフトウェアの研究などを実施しました。
そのほか、量子ソフトウェアの基礎研究、先進的宇宙機搭載ソフトウェアに関する研究、民間宇宙拠点におけるインフラ技術の研究、大規模データのリアルタイム処理に関する研究などの研究開発を実施しました。
用語集
ご参考までに本項の専門用語を下記に解説いたします。
ユビキタス
ラテン語で「同時に、いたるところで存在する」という意味です。あらゆる情報機器がネットワークで結ばれ、いつでもどこでも情報をやり取りできる社会を「ユビキタス・ネットワーク社会」ないし「ユビキタス社会」と呼び、21世紀の情報社会の方向性を示す言葉として用いられています。
IoT
IoT(Internet of Things)は、ユビキタスの概念が技術的な進歩により具現化したもので、あらゆるモノがインターネットにつながり、相互に情報をやり取りすることで、新たな付加価値を生み出すというものです。これにより、製造業のビジネススタイルが製品販売型から機能提供型に変化し、「モノのサービス化(ソフト化)」をもたらすものとされます。
MR
MR( Mixed Reality )は、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)などのデバイスを用いて現実世界にデジタル世界を重ね合わせ、現実の物体と仮想のデジタル情報が輻輳する新しい世界を構築する技術です。
これまでコンピューティングリソース(情報)にアクセスするためには、キーボードやタッチパネルで情報を入力し、パソコンやスマートフォンのディスプレイを通して情報を得る必要がありました。MRを用いることで、こうした情報機器を境界とすることなく、現実世界から直接、デジタル世界にアクセスできるようになります。CAD、CGなどのデジタル情報を利用した研究・設計現場でのシミュレーションや、医療、製造、建築分野などでの活用が進んでいます。
RTミドルウェア
RT(Robot Technology)ミドルウェアは、ロボットを構成する要素(アクチュエータやセンサなど)やロボットを制御するソフトウェアを、コンポーネントとして部品化するための技術です。RTミドルウェアを利用することで、部品化されたソフトウェアコンポーネントを組み合わせるだけで、多様な機能を持つロボットシステムを容易に構築することができます。RTミドルウェア技術が提唱するソフトウェアコンポーネントのモデルは、2008年4月に国際標準化団体OMG(Object Management Group)にて、「ロボット用ソフトウェアのモジュール化に関する標準仕様」として採択されました。
ROS
ROS(Robot Operating System)は、ソフトウェア開発者のロボット・アプリケーション作成を支援するオープンソースのライブラリ及びツールの総称です。コンピュータ上で自動化したタスクを実行する簡単なロボットから、認識・行動制御を伴う複雑な自律型ロボットまで広く活用され、世界中のロボットソフトウェア開発現場で、デファクトスタンダードになりつつあります。ROSを活用することで、ロボットソフトウェアを早く低コストで実装できることに加え、ロボット研究の最先端の知見を得ることができます。
FPGA
FPGA(Field Programmable Gate Array)は、プログラム可能な集積回路です。通常、コンピュータシステムには演算装置としてCPU(Central Processing Unit)が用いられますが、CPUの回路構成そのものに柔軟性はなく、動作させるソフトウェアで柔軟性を確保しています。これに対し、FPGAは回路構成そのものを利用者が変更(プログラム)することが可能で、並列的な計算処理により、CPUと比較して高速な処理が可能です。
プログラム可能で高速な演算装置としてGPU(Graphics Processing Unit)がありますが、FPGAは消費電力が少なく、ロボットなど消費電力の制約が想定される環境において、GPUよりも優位性を有しています。
レザバー計算モデル
レザバー計算モデルは、自己回帰型ニューラルネットワーク Recurrent Neural Network(RNN)の一種で、時系列情報処理に適した機械学習の枠組みです。
レザバーはため池という意味で、例えば小石をため池へ投げると水面に波紋が生じますが、この波紋から、どこに、どのような小石が、どのような順番で投げられたのかなどを推測することができます。このように、投げ入れた小石の時系列情報を知りたいときに、水面の波紋という全く別の形に変換して認識処理を行うのがレザバー計算モデルの概念です。
他のディープラーニングモデルに対するレザバー計算モデルの優位性として、結果出力部分のみを学習対象とすることで、大幅に学習の計算量を削減可能となることが挙げられます。これをハードウェアに実装することで、高効率・高速な機械学習デバイスを実現することが可能な技術として注目されています。