第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度の日本経済は、熊本地震やブレグジット、円高進行などが重なり、景気の停滞感が強い状況が続きましたが、米国の大統領選以降、米国経済拡大への期待感の高まりからドル高/円安が進行し、国内企業の収益改善、株高、消費者マインドの改善が見られるなど、景気の流れが上向き傾向となりました。国内広告市場(注1)については、すべての四半期において前年を上回るなど底堅い動きが継続し、通期で前年同期比+2%程度と、着実な市場の伸長がみられております。
 このような環境下、当社グループは、平成31年3月期を最終年度とする中期経営計画に則り、積極的な事業展開を継続してまいりました。この結果、売上高は1兆2,554億74百万円と前年同期比3.3%の増収となりました。
 当連結会計年度の売上高を種目別に見ますと、4マスメディアでは、前年同期に好調だったテレビで反動減があり、新聞、雑誌、ラジオも低調に推移した結果、4マスメディア取引合計は前年同期を下回りました。一方、4マスメディア以外では、インターネットメディアとクリエイティブが好調に推移し、4マスメディア以外取引合計は前年同期を上回りました。
 また、売上高を得意先業種別に見ますと、幅広い業種で前年同期を上回っておりますが、主な増加業種としましては、「情報・通信」「化粧品・トイレタリー」「家庭用品」、一方、主な減少業種としましては、「自動車・関連品」「薬品・医療用品」「外食・各種サービス」となっております。(注2)
 売上総利益に関しては、既存事業の順調な拡大に加え、新規連結子会社の取り込みによる押し上げ効果もあり、前年同期より161億41百万円増加し、2,486億40百万円(同6.9%増加)となりました。販売費及び一般管理費は、M&Aによる体制強化および戦略的費用投下を行った結果、7.4%の増加となり、その結果、営業利益は472億61百万円(同5.0%増加)の増益となりました。一方、営業外損益において持分法による投資損失を計上した結果、経常利益は454億91百万円(同4.2%減少)の減益となりました。
 これに特別利益の14億12百万円及び特別損失の19億44百万円を加味した税金等調整前当期純利益は449億59百万円(同2.8%減少)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は258億80百万円(同9.3%減少)となりました。

(注)1 「特定サービス産業動態統計調査」(経済産業省)によります。
   2 当社の社内管理上の区分と集計によります。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて33億89百万円増加し、1,466億88百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(449億59百万円)の計上等に対して、売上債権の増加(△106億13百万円)、退職給付に係る資産の増加(△46億82百万円)、法人税等の支払(△169億44百万円)等があり、162億88百万円の増加(前連結会計年度末は296億98百万円の増加)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得による支出(△34億42百万円)、有形固定資産の取得による支出(△29億26百万円)、無形固定資産の取得による支出(△28億3百万円)等により、42億80百万円の減少(前連結会計年度末は206億86百万円の減少)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払(△78億15百万円)等により、78億3百万円の減少(前連結会計年度末は52億90百万円の減少)となりました。

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

 当社グループは、広範囲かつ多種多様にわたる広告業務サービスの提供を主たる事業としており、その内容、構造、形式が必ずしも一様ではないため、生産実績及び受注実績について、その金額あるいは数量を記載しておりません。

 また、販売実績については、「業績等の概要」に含めて記載しております。

 

3 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループを取り巻くビジネス環境においては、「デジタル化の進展による企業のマーケティング活動の変化」と「企業のグローバルシフトの加速」という2つの大きな構造的変化が起きており、この流れは今後も更に進むと考えております。

まず、「デジタル化の進展による企業のマーケティング活動の変化」についてですが、デジタル化の進展により、これまで把握できていなかった生活者の情報接触行動や購買行動をデータで可視化することが可能となりました。そして、これにデータ処理技術等の高度化・高速化が加わり、大量で多種多様なデータをリアルタイムに扱う「マーケティングへのデータ利活用」が本格化してきております。また、ソーシャルメディアの浸透等が企業と生活者を直接つなぐ機会を増加させており、「生活者とのつながりを活用したマーケティング活動ニーズ」も拡大してきております。このようにデジタル化の進展が、マーケティング手法の革新や新たなソリューションの開発を活発化させており、加えて、このような変化が、世界中ボーダレスに、しかも一斉に伝播普及する「マーケティングの世界同時/同質化」も引き起こしております。

次に、「企業のグローバルシフトの加速」についてですが、新興国、中でもアジア諸国における中間層の拡大は、今後一層、世界の消費を牽引していくと見られ、企業のアジアを中心とした新興国でのマーケティング活動の更なる活発化と、新興国を含めたグローバル・マーケティングの進展につながっていくと考えております。

当社グループは、このようなビジネス環境の変化に対応し、グループ全体の持続的成長を実現するため、平成25年11月に策定した中期経営計画に基づいて、積極的な事業活動を展開しております。平成31年3月期を最終年度とする本中期経営計画では、以下の中期基本戦略に則り、3つの成長ドライバーを強化し、各種経営課題への対応を積極的に行うことで中期経営目標の達成を目指すことを掲げております。

 

(1) 中期基本戦略

当社グループは、「企業のベスト・マーケティング・パートナーとして、世界一級のマーケティングサービス企業集団を目指すこと、そして、先進的かつ創造的な統合マーケティング・ソリューションの提供を通じて、新たな市場やムーブメントを創造し、社会/生活者に活力を与え続ける存在になること」を中期基本戦略としております。

この基本戦略に基づき、以下に掲げる3つの成長ドライバーを強化し、統合マーケティング・ソリューションの高度化・尖鋭化に努めております。

 

(2) 3つの成長ドライバー

① “生活者データ・ドリブン”マーケティング対応力の強化

デジタル化の進展により、これまで把握できていなかった多種多様な生活者データが入手できるようになり、それらを利活用した、いわゆる“生活者データ・ドリブン”なマーケティング活動に対するニーズは、益々本格化すると考えております。

当社グループは、これまでも、個々の人間を単なる消費者としてではなく、「生活者」としてまるごと理解し、その根源にある価値観や欲求の変化を読み解き発想する「生活者発想」をビジネス展開の、そして競争優位の「核」に据えてきました。

本中期経営計画期間においては、これまで当社グループが独自に蓄積してきた生活者データと、デジタル化の進展によって入手可能となった「リアルタイム・365日の生活者の情報行動・購買行動のデータ」及び「得意先・業種・メディア・コンテンツのデータ」を「先端テクノロジー」を用いて掛け合わせるなど、生活者発想の更なる高度化に取り組んでおります。

そして、今後も当社グループの強みであるプラニング力、クリエイティブ力、エグゼキューション力を駆使し、“生活者データ・ドリブン”な質の高いマーケティング・ソリューションを提供することで、得意先のマーケティング活動全体を統合的にマネジメントしてまいります。

 

② アジアを中心とした新興国での体制強化

アジアは今後も世界の成長センターであり、中でもアセアンについては、経済統合や中間層の拡大等、大きな成長機会があると考えております。特に、モータリゼーションの本格化は、自動車業種を最大の顧客基盤とする当社グループにとっては大きなチャンスであり、アジアでの企業・人材・ナレッジ構築への投資を積極的かつ重点的に行ってまいります。

具体的には、引き続き、日系得意先対応を強化する一方、ローカル得意先の獲得・拡大にも注力しております。また、M&A等の手法を積極的に活用し、成長著しいデジタル領域や、その他広告周辺領域の体制強化に注力することで、アジア地域に根差した統合マーケティング・ソリューション提供体制の構築を加速してまいります。

そして、このようなアジアでの基盤を「核」にしながら、その他新興国への新規参入、更には、得意先企業のグローバル・マーケティング・ニーズにも対応してまいります。

 

③ “専門性”と“先進性”の継続的な取り込み

デジタル化やグローバル化の進展に伴い、マーケティング手法の革新や新たなソリューションの開発が活発化しており、これが企業のマーケティング活動の高度化・複雑化をもたらしております。

当社グループは、このような状況に対応するため、主力事業である広告事業の強化に加え、専門的かつ先進的なマーケティング手法やソリューションを提供する「専門マーケティングサービス事業」領域の企業ラインナップを拡充することにも注力しております。

具体的には、国内だけでなく、最先端でユニークな専門マーケティングサービスの多くを生み出している欧米等海外においてもM&Aを一層積極化し、このような高度な専門マーケティングサービス事業会社の当社グループ内への取り込みを進めております。そして、これら専門事業会社が、直接得意先企業に対して先進的なソリューションを提供するとともに、グループ各社とも連携・協働することで、高度化・複雑化する得意先企業の課題解決に資する最適かつ統合的なソリューションを提供してまいります。

なお、平成26年5月に設立した戦略事業組織「kyu」は、本取り組みを推進する体制強化の一環であり、これまで複数のM&Aを実行するなど積極的な活動を継続しております。

 

今後も、上記の3つの成長ドライバーに人材を重点配置し、M&A及びインフラ整備に積極的に資金を投入することで、スピーディーかつ着実な成長を目指してまいります。

 

(3) 中期経営計画における目標

 本中期経営計画を策定した平成25年11月時点で、計画最終年度(平成31年3月期)の中期経営目標として掲げた「連結のれん償却前営業利益:450億円」は平成28年3月期に3年前倒しで達成するに至りました。また、重点指標についても目標水準と同等もしくはこれを上回る水準で推移いたしました。そこで、昨年、中期経営目標及び重点指標について見直しを行い、以下のとおり、新たな数値目標を掲げました。

 

□中期経営目標(平成31年3月期)

 連結のれん償却前営業利益(注1)          : 570億円

 

 また、計画期間中に管理していくべきと考える重点指標は、以下のとおりです。

 

<重点指標>

 連結売上総利益年平均成長率(注2)         : +7~10%

 連結のれん償却前オペレーティング・マージン(注3) : 18~20%

 のれん償却前ROE(注4)              : 10%以上

 

 

(注)1 連結のれん償却前営業利益とは、企業買収によって生じるのれんの償却額等を除外して算出される連
結営業利益のこと。

2 連結売上総利益年平均成長率は、平成28年3月期の実績から平成31年3月期までの年平均成長率のこ
と。

    3 連結のれん償却前オペレーティング・マージン=連結のれん償却前営業利益÷連結売上総利益

 4 のれん償却前ROE=企業買収によって生じるのれんの償却額等(持分法適用会社分を含む)を除外して
   算出される親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本(期首・期末平均)

    5 中期経営計画に関する上記の記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定
     の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業
     績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
 

上記に掲げた中期経営計画の達成に向け、当社グループ一丸となって各種施策を推進してまいります。加えて、働き方改革等の経営課題にも積極的に取り組み、企業価値の一層の向上に努めてまいります。

 

4 【事業等のリスク】

 以下において、当社グループの事業及びその他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。

 なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めてまいりますが、当社の株式に関する投資判断は、本項目及び本書中の本項目以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があります。また、本項目に記載した予想、見通し、方針等、将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであり、将来実現する実際の結果とは異なる可能性がありますのでご留意ください。

 

(1) 経済状況・市場環境の変動

 国内企業の広告費の支出は、企業が景況に応じて広告費を調整する傾向にあるため、国内の景気動向に大きく影響を受ける傾向にあります。当社グループの国内売上高は、連結売上高全体に占める割合が非常に高く、国内景況が悪化すると当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、景況の悪化による影響を軽減するため、広範囲の業種にわたる顧客基盤の構築、マーケティング・コミュニケーションサービスの多様化、海外展開等をはかる所存でありますが、日本経済の回復が遅いもしくは不十分な場合、又は当社グループの対応が十分ではない場合もしくは十分にはかかる影響を軽減できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(2) 当社グループの事業活動に関するリスク

 当社グループの新聞・雑誌・ラジオ・テレビといったマスメディア広告の売上高は、ここ数年、売上高全体に占める構成比が減少してきているものの、平成29年3月期においても、47%程度と大きなシェアを占めております。また、今後も引き続き、広告主のマーケティング活動に活用され、当社グループの中心的な事業であり続けると認識しております。

 一方、インターネット、スマートフォン等の新たなメディアを活用した広告は、マスメディア広告などと組み合わせることにより、相乗効果が高まるものと考えられ、広告市場全体の拡大に寄与すると思われます。

 しかしながら、当社グループを取り巻くビジネス環境においては、「デジタル化の進展による企業のマーケティング活動の変化」と「企業のグローバルシフトの加速」という2つの大きな構造的変化が起きており、この流れは今後も更に進むと考えております。そのため、当社グループは、そのような構造的変化に対応した施策を随時行なっております。しかし、このような施策を迅速かつ十分に行うことができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(3) 広告業界における取引慣行

 マスメディアの広告取引は、主として、広告主からの受注に基づき行いますが、各広告会社は自社の責任で媒体社等と取引を行うのが一般的です。そのため、広告主の倒産や未払いの増加等により、広告料金を回収できなかった場合には、広告会社が媒体社や制作会社に媒体料金や制作費を負担することとなり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 また、広告業界では、慣行上、広告計画や内容の変更に柔軟かつ機動的に対応できるよう契約書を締結することは一般的には行われておりません。当社グループにおいても、継続的な取引関係が成立している広告主との間であっても、個別取引に関する書面は存在するものの、基本契約書等を締結していないことが一般的であります。そのため、広告主との間で明確な契約書を締結していないことにより、取引関係の内容、条件等について疑義が生じたり、これをもとに紛争が生じたりする可能性があります。

 なお、欧米では「一業種一社制」(同一業種では一社のみの広告主を広告代理店が担当する取引形態)が一般的であり、広告会社の報酬構造や報酬決定方法も異なっております。日本においてはこのような取引形態は一般的ではありませんが、欧米の広告主、広告会社が日本に進出してきている昨今の状況に鑑みると、今後これらの取引形態及び報酬構造や報酬決定方法が日本の広告の取引慣行に影響を与える可能性があります。当社グループにおきましては、こうした動向に対応し、サービス形態の多様化等に努めてきておりますが、今後、取引慣行の動向・変化に適切に対応できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(4) 法規制等の導入や変更

 広告主の広告活動、メディアにおける広告の掲載・放送方法や内容等、広告会社の事業活動等に関する法令・規制・制度の導入や強化、法令等の解釈の変更等がなされる場合があります。法規制等の導入や強化等に対して当社グループが適切に対応できない場合又は広告主の広告活動が減少する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(5) 広告主との関係

 当社グループと広告主の間は、継続的な取引関係が成立しておりますが、広告主がコスト削減、取引関係の合理化等の要請を強める昨今の状況の中で、今後取引関係が解消、縮減等されない保証はなく、また、報酬等の水準は当事者間の合意によるものであり、その水準が今後も保証されるものではありません。もし従前と同様の取引関係が継続されない場合又は従前の取引条件が変更される場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。なお、平成29年3月期における当社グループの上位広告主10社に対する売上高は、当社グループの全売上高の17%程度となっております。

 

(6) 媒体社との関係

 当社グループの広告事業においては、新聞・雑誌・ラジオ・テレビといったマスメディアの広告に関する事業が主体であるため、主要媒体社からの仕入れの依存度は高くなっております。

 当社グループと媒体社では、長年の継続的な取引関係が成立しておりますが、媒体社との取引が継続されない場合又は取引条件等が変更された場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(7) 競合に関するリスク

 わが国の広告業界では、サービスの多様性、対応力、企画力、販売力等の観点から、売上高で上位の広告会社への集中傾向が高く、また上位広告会社を中心に熾烈な競争が行われております。更には、大手の海外広告会社も日本市場に参入してきており、競争がますます激しくなる傾向にあります。

 また、事業領域を拡大していく中で、コンサルティング会社など異業種企業との競合や、インターネット、スマートフォン広告市場等における新規参入企業や新興企業との競合が生じる機会も増加してきております。

 当社グループは、サービスの多様化、企画力、創造的提案力、経験、広告主との長年の継続的な取引関係等により競争上の優位性を確保していく所存でありますが、今後かかる優位性を確保できる保証はなく、優位性を逸した場合あるいは競争の激化に伴い報酬が低下した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

 

(8) インターネット広告等のニューメディアの進展

 近年、インターネット、スマートフォン等新たな広告メディアの進展も著しく、かかる分野における広告市場は拡大傾向にあります。また、この分野においては技術の進化や多様な広告手法が生み出されております。当社グループといたしましても、早期の段階からインターネットメディアレップ会社であるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社の設立に関与し、連携強化に努めていることを含め、積極的な取り組みを行い、また新規メディアと既存メディアを組み合わせた広告戦略を広告主に提案してきております。

 しかしながら、新しいメディアが既存のメディアの広告価値を低め、かかる状況に対して広告主等へ広告戦略の構築、推進等の対応を当社グループが適切に提案、実行できない場合、又は新しいメディアに対する当社グループの事業戦略や取り組みが功を奏しないもしくは十分でない場合には、当社グループのサービスの低下をきたし、もって当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(9) 当社グループの事業展開に関するリスク

 当社グループは、総合広告会社である株式会社博報堂、株式会社大広、株式会社読売広告社及び総合メディア・コンテンツ事業会社である株式会社博報堂DYメディアパートナーズの4社並びに専門性と先進性の継続的な当社グループへの取り込みを狙った当社傘下の事業組織「kyu」に加えて、各組織がそれぞれ所有する広告関連サービスを提供する子会社群等から形成されており、広告主に対しワンストップでのマーケティング・コミュニケーションサービスを提供すべく事業展開をしております。また平成31年3月期までの中期経営計画においては、スピーディかつ着実な成長を支える積極的な投資戦略をとることとしており、成長の重点の一つとして、M&Aを位置づけております。

 グループ会社を通じた事業展開、すなわちインターネット分野等の特定の事業や専門マーケティングサービスに特化、注力する会社の設立、買収、資本業務提携等により出資を含むグループ会社関係を構築することについては、出資額あるいは場合によっては出資額を超える損失が発生するリスク、グループの信用低下リスク等を伴う可能性があり、出資会社の事業活動や経営成績によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(10) 知的財産権

 広告業一般におけると同様、当社グループにおいても、事業活動を行う過程で、当社グループが所有する又は使用許諾を受けている以外の知的財産権を侵害してしまうおそれ、また逆に当社グループが所有する知的財産権が侵害されてしまうおそれがあり、当社グループがかかる事態を防止し、あるいは適切な回復をすることができない可能性があります。その場合、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に悪影響を与える可能性があります。

 

(11) 人材の確保及び育成

 当社グループの成長性及び競争上の優位性は、優秀な人材の確保に大きく依存します。人材に関しては、新卒者の安定的採用や即戦力となる中途採用の推進により確保をはかり、各職責、能力、市場環境の変化に対応した教育研修等による育成に努めておりますが、何らかの理由により優秀な人材が流出する可能性や人材の確保に支障をきたすおそれもあります。かかる事態が生じた場合、当社グループの競争力に悪影響を与える可能性があります。

 

(12) メディア・コンテンツビジネスに関わるリスク

 当社グループは、今後もスポーツ等イベントの権利取得や興業、映画製作への投資、アニメ・キャラクター関連番組制作等のコンテンツ関連ビジネスを行なってまいります。しかしながら、メディア・コンテンツビジネスの事業展開には、投資リスクを伴うものもあり、計画通りに進行しない場合又は収益を確保できない場合には当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(13) アジア等の海外市場展開

 当社グループは、広告主のニーズに応えるため、また中期経営計画における成長の重点の一つとして、海外市場(特にアジア)における更なる拠点拡充や北米・欧州の専門マーケティングサービス企業のM&Aによるグループ内への取り込みを含め、積極展開をはかってまいりますが、これらの事業展開には、海外の事業投資に伴うリスク(為替リスク、カントリーリスク等)、出資額あるいは出資額を超える損失が発生するリスク、グループの信用低下リスク等を伴う可能性があり、計画通りに事業展開ができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(14) グループ経営基盤に関わるリスク

 当社グループは、持株会社体制という枠組みの持つ優位性等、経営統合の相乗効果を最大限活用し、グループ経営基盤の強化に努めてまいりますが、持株会社統治等の効果が十分発揮されなかった場合には当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 また、資金運用面においても、グループ内での資金運用、配分の効率化を進めておりますが、その効果が十分に発揮されない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

  なお、グループ経営基盤の強化、資金運用の効率化などの効果が十分に発揮されたとしても、他の不確定要因により当社グループの財政状態及び経営成績が当社の予想している水準に達する保証はありません。

 

(15) 訴訟等に関わるリスク

 当社グループは、現在においてその業績に重大な影響を与え得る訴訟・紛争には関与しておりませんが、様々な要因により今後直接又は間接的に、何らかの訴訟・紛争に関与することとなる可能性は否定できません。当社グループが訴訟・紛争に関与した場合、その経過・結果如何によっては、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に悪影響を与える可能性があります。

 

(16) 投資有価証券に関わるリスク

 当社グループは、投資有価証券の評価基準及び評価方法として、投資有価証券のうち時価のあるものについては期末の時価を適用し、株式市況等の変動により評価損を計上する可能性があります。そのほか、投資有価証券については、発行会社の財務状況や今後の見通しなどに鑑み、時価が著しく下落し、その回復が見込めない場合には、減損処理により評価損を計上する可能性があります。このような状況になった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(17) 退職給付債務に関わるリスク

 当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、割引率、年金資産の期待運用収益率等の一定の前提条件に基づいて数理計算を行なっております。実際の結果が前提条件と異なる場合又は前提条件が変更された場合、その差額は将来にわたって規則的に損益認識されます。金利の低下、運用利回りの低下、年金資産の時価の下落等があった場合や退職金制度、年金制度を変更した場合には、追加的な退職給付に係る負債の計上、未認識の過去勤務費用の発生又は将来の退職給付費用の増加により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。また、退職給付に関する会計基準の変更等により、従来の会計方針を変更した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(18) 役職員等の不正行為のリスク

 当社グループは、その規模、業務範囲及び活動領域が広範に亘っていることから、日常的に、その役職員が法令や社内規定を遵守しているとの確証を得ることはできません。法令及び社内規定の遵守のための様々な取組みをもってしても、役職員の不正行為を完全に防止できる保証はありません。また、当社グループの取引先等の不正行為への関与が問題となる可能性もあります。そのほか、当社グループの役職員又はその取引先等により顧客情報その他の機密情報が漏洩したり不正に使用されたりする可能性もあります。これらの役職員等の不正行為により、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に悪影響を与える可能性があります。

 

(19) 災害、事故等に関わるリスク

 当社グループが事業を遂行又は展開する地域において、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が起こった場合には、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に悪影響を及ぼし、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(20) 情報システムに関わるリスク

 当社グループは、広告主のマーケティング又は広告に関する情報の管理を含む当社グループの事業のために、情報システムを使用し、情報インフラに依存しております。当社グループ又は当社グループが利用する第三者の情報システムに、システムの障害や停止、システムへの不正なアクセス、コンピュータウィルスの侵入、サイバーアタック、従業員の不適正な事務・事故・不正等による人為的過誤などが発生した場合、また同様の要因により情報の外部漏洩・不正使用等が発生した場合、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動あるいは当社グループの社会的信用に悪影響を及ぼし、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

  該当事項はありません。

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度(平成28年4月1日から平成29年3月31日まで)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は以下のとおりであります。
 なお、本項に記載した予想、見通し、方針等、将来に関する事項は、当連結会計年度末(平成29年3月31日)現在において判断したものであり、将来生じる実際の結果とは異なる可能性がありますのでご留意ください。

 

(1) 経営成績の分析

①  売上高

 当連結会計年度における売上高は1兆2,554億74百万円と前年同期比3.3%の増収になりました。
 サービスの種目別(注)にみると、4マスメディアでは、前年同期に好調だったテレビで反動減があり、新聞、雑誌、ラジオも低調に推移した結果、4マスメディア取引合計は前年同期を下回りました。一方、4マスメディア以外では、インターネットメディアとクリエイティブが好調に推移し、4マスメディア以外取引合計は前年同期を上回りました。
 得意先業種別にみると、幅広い業種で前年同期を上回っておりますが、主な増加業種としましては、「情報・通信」「化粧品・トイレタリー」「家庭用品」、一方、主な減少業種としましては、「自動車・関連品」「薬品・医療用品」「外食・各種サービス」となりました。

 

②  売上総利益及び営業利益

 売上総利益は、既存事業の順調な拡大に加え、新規連結子会社の取り込みによる押し上げ効果もあり、前年同期より161億41百万円増加し、2,486億40百万円(同6.9%増加)となりました。

 販売費及び一般管理費合計は、M&Aによる体制強化および戦略的費用投下を行った結果、7.4%の増加となりました。
 以上の結果、営業利益は472億61百万円(同5.0%増加)となり、前年同期より22億66百万円の増益となりました。

 

③  営業外損益及び経常利益

 営業外収益は、持分法による投資利益が7億27百万円減少し、為替差益が2億55百万円減少したため、前年同期比9億95百万円減少17億93百万円となりました。

 営業外費用は、持分法による投資損失が26億6百万円増加し、為替差損が4億99百万円増加したため、前年同期比32億74百万円増加35億62百万円となりました。

 以上の結果、経常利益は前年同期比4.2%減少454億91百万円となりました。

 

④  特別損益及び税金等調整前当期純利益

 特別利益は、段階取得に係る差益が10億61百万円増加した一方、関係会社株式売却益が5億31百万円減少したため、前年同期比2億69百万円増加14億12百万円となりました。

 特別損失は、減損損失が6億78百万円増加した一方、投資有価証券評価損が4億64百万円減少し、関係会社清算損が2億93百万円減少したため、前年同期比4億42百万円減少19億44百万円となりました。

 以上の結果、税金等調整前当期純利益は前年同期比2.8%減少449億59百万円となりました。

 

⑤  法人税等、非支配株主に帰属する当期純利益及び親会社株主に帰属する当期純利益

 法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は、前年同期比24億6百万円増加175億4百万円、非支配株主に帰属する当期純利益は、前年同期比10億47百万円減少15億74百万円となりました。
 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は258億80百万円(前年同期比9.3%減少)となり、前年同期より26億51百万円の減益となりました。

 

(注) 当社の社内管理上の区分と集計によります。

 

(2) 財政状態及びキャッシュ・フローの分析

①  資産及び負債の主な増減

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ435億18百万円増加し、7,220億51百万円となりました。
  項目別にみると、流動資産は、前連結会計年度末に比べて178億74百万円増加し、5,161億83百万円となりました。これは、受取手形及び売掛金が135億99百万円増加したこと等によります。固定資産は、前連結会計年度末に比べて256億44百万円増加し、2,058億68百万円となりました。これは、投資有価証券が196億74百万円増加したこと、退職給付に係る資産が57億18百万円増加したこと等によります。

流動負債は、前連結会計年度末に比べて65億41百万円増加し、3,595億3百万円となりました。これは、支払手形及び買掛金が22億10百万円減少したこと、短期借入金が33億5百万円増加したこと等によります。固定負債は、前連結会計年度末に比べて51億90百万円増加して367億29百万円となりました。これは、主に繰延税金負債が45億3百万円増加したこと等によります。この結果、負債合計では、前連結会計年度末に比べて117億31百万円増加し、3,962億33百万円となりました。

純資産は、前連結会計年度末に比べて317億87百万円増加し、3,258億18百万円となりました。これは、利益剰余金が180億55百万円増加し、その他有価証券評価差額金が144億10百万円増加したこと等によります。 

 

②  キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて33億89百万円増加し、1,466億88百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(449億59百万円)の計上等に対して、売上債権の増加(△106億13百万円)、退職給付に係る資産の増加(△46億82百万円)、法人税等の支払(△169億44百万円)等があり、162億88百万円の増加(前連結会計年度末は296億98百万円の増加)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得による支出(△34億42百万円)、有形固定資産の取得による支出(△29億26百万円)、無形固定資産の取得による支出(△28億3百万円)等により、42億80百万円の減少(前連結会計年度末は206億86百万円の減少)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払(△78億15百万円)等により、78億3百万円の減少(前連結会計年度末は52億90百万円の減少)となりました。