第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループは、2019年5月に2024年3月期を最終年度とする中期経営計画を発表し、各種取り組みを進めてきましたが、コロナ禍の影響によりビジネス環境が激変したことを受け、2022年2月に同計画の見直しを行いました。

 

 主要なビジネス環境変化として、まずコロナ禍に伴い、生活全体がデジタル化する「オールデジタル化」が急速に進行していることが挙げられます。あらゆるモノがインターネットとつながる世界が現実となり、モノと生活者の関係は単なる「接点」ではなく、相互に情報のやりとりをする「インターフェース」に進化してきています。この新しい市場のことを、当社グループは「生活者インターフェース市場」と名付けました。

生活者インターフェース市場では、身の回りのモノ、デバイス、店舗、メディアがネットワークにつながり、データ化され、インターフェース化します。企業はそれらを活用することで、一人ひとりの生活者に最適化したサービスを提供することが可能になります。

 「生活者インターフェース市場」が拡大する中で、企業のマーケティングニーズも変化していきます。今後の企業と生活者のつながりは、広告などの「間接接点」のみならず、店舗やECサイトなどの「直接接点」が重要となり、それら全体をデータで統合管理することが求められます。

 このような環境認識の下、2022年3月期から2024年3月期までの3年間を、得意先のマーケティングとイノベーション両課題の解決をリードし、得意先と自社のサステナブルな成長を実現するために「提供サービスと事業基盤の変革を加速する期間」と位置付けました。そして、これまで掲げてきた「中期基本戦略」は継続しつつ、変革に向けた4つの取り組みを進め、グループ全体をアップデートしてまいります。

 

(1) 中期基本戦略

 当社グループは、「生活者発想を基軸に、クリエイティビティ、統合力、データ/テクノロジー活用力を融合することで、オールデジタル時代における、企業のマーケティングの進化とイノベーション創出をリードすること。そのことで、生活者、社会全体に新たな価値とインパクトを与え続ける存在になること。」を中期基本戦略としております。

この基本戦略に基づき、以下に掲げる4つの取り組みを進め、未来をデザインし、社会実装していくことで、生活者一人ひとりが自分らしく活きいきと生きられる「生活者中心の社会づくり」に貢献していきたいと考えています。

 

(2) 提供サービスと事業基盤の変革に向けた4つの取り組み

 ① 提供サービスの変革

 オールデジタル化が加速する中で、データをもとに、認知、興味、検討からCRMまで、一気通貫でアプローチする、いわゆる「フルファネル型のマーケティング」に対するニーズが高まっています。当社グループは、これまで先行してきた「“生活者データ・ドリブン”マーケティング」をフルファネルで実践できる形、すなわち「“生活者データ・ドリブン”フルファネルマーケティング」へと進化させ、企業のマーケティングニーズに的確に応え、リードしていける存在になりたいと考えております。その実現のために、「マーケティング実践領域の拡張」「メディアビジネスの変革」「生活者視点でのDX推進」という3つの戦略施策を進めていきます。

 まず、「マーケティング実践領域の拡張」については、得意先企業と生活者のつながりが直接接点へと広がりをみせる中、必須要件となりつつあります。さらに生活者データと基盤テクノロジーをベースとしたフルファネルでの統合管理ニーズも高まってきております。同領域の戦略と実行の両機能をグループ内に保持することで、スピーディーかつ高質なサービス提供と、高い収益性の確保を両立してまいります。そして、当社のこのケイパビリティを、企業の課題解決のみならず、社会課題の解決にも活かしていきたいと考えております。

 次に、「メディアビジネスの変革」については、当社グループオリジナルの「AaaS(アース)」という新たなモデルの導入を促進することで、「広告枠」というモノを売るビジネスから、広告効果の最大化という「サービス」を提供するビジネスへ、変革を推進していきます。加えて、グループ内に「得意先の成長に合わせたデジタルサービス提供のエコシステム」を構築し、デジタルビジネスのさらなる拡大を目指します。そのために、これまで整備してきた高度デジタル運用や、オンラインとオフラインの施策の統合、いわゆる「オンオフ統合」の体制に加え、地方や中小・ベンチャー企業に対応する機能の強化にも注力していきます。

 「生活者起点でのDX推進」については、生活者のインサイト発掘力と、生活者インターフェーステクノロジーを掛け合わせることで、企業のマーケティングや事業そのものに変革をもたらし、さらには社会に変革を生み出す、価値創造型のDXサービスを提供してまいります。
 
② 変革を加速する横串機能の強化

 変革を加速し、グループ総体としての競争力を高めるために、従来のメディア機能に加え、新たに「グループのテクノロジー基盤となる新会社の設立」「グループのコーポレート機能の高度化・効率化を推進する新会社の設立」「グループ連携を促進する経営管理の仕組みの強化」という、3つのグループ横串機能の強化を進めていきます。

 「グループのテクノロジー基盤となる新会社」については、2022年4月に株式会社博報堂テクノロジーズを新たに設立しました。グループ内に点在するリソースを集約するとともに、専門機能会社として、エンジニアにマッチした人材マネジメント体系を整備することで、外部専門人材の採用、育成を強化します。計画期間中に、積極的にエンジニアの採用を行うなど順次機能を拡充し、同社を中心に、グループ全体をより「テクノロジー・ドリブン」な企業体へと進化させていきます。

 

 ③ 従来戦略に基づく変革の継続

ⅰ) ボーダレス化する企業活動への対応力強化

 成長市場である海外への積極的な投資を行い、「得意先のグローバルシフト」「専門性/先進性」「“生活者データ・ドリブン”フルファネルマーケティング」の3つの要素を起点とした海外事業の強化を継続します。また、当社のグループ戦略立案・推進機能を強化し、博報堂などの「海外ネットワーク」と、kyuの「専門性/先進性」の連携を深めていくことで、海外事業のさらなる拡大に取り組んでいきます。

ⅱ) 外部連携によるイノベーションの加速

 取引先企業/ベンチャー企業/当社グループをつなぐ連携基盤を拡張し、3者の強みの相乗効果による「提供サービスと自社のイノベーション」を加速していきます。生活者インターフェース市場における新たな事業の開発、ソーシャルグッドな事業の創出など、生活者に対して新たな価値を提供する新規事業開発を、「クリエイティビティ×テクノロジー」を起点に推進してまいります。

 

 ④ サステナブルな企業経営のための基盤強化

 当社グループは、持続的な事業成長を遂げながら、同時に生活者のパートナーとして社会の発展に寄与する「新しい価値」を創造し続けていくという「循環型の価値創造モデル」に基づき、サステナビリティゴールである「生活者一人ひとりが、自分らしく、いきいきと生きていける社会の実現」を目指しています。

 当社グループのサステナブルな成長を支える最大の要素は「ヒト」であり、短期的にはコスト先行となるような施策も含め、人材への積極投資を行い、社員がクリエイティビティを最大限発揮できる環境を整備していきます。

 

 

(3) 中期経営計画における目標

 2022年3月期から2024年3月期までの3年間を、「提供サービスと事業基盤の変革を加速する期間」と位置付けているため、中期経営目標についても「成長性の維持・向上」と、中長期の継続的な成長に向けた「構造改革のための戦略投資」を踏まえた計画値といたしました。新たな中期経営目標、及び同目標を達成するにあたり注視すべき重点指標は、以下のとおりです。

 

<中期経営目標(2024年3月期)>

 

調整後連結売上総利益年平均成長率(注1)

:+7%以上

調整後連結のれん償却前営業利益年平均成長率(注2)

:+7%以上

連結のれん償却前営業利益(注3)

:650億円以上

 

 

<重点指標>

 

調整後連結のれん償却前オペレーティング・マージン(注4)

:15%程度

のれん償却前ROE(注5)

:10%以上

 

 
 

(注1)

 

調整後連結売上総利益年平均成長率とは、投資事業を除いた主力事業における、2021年3月期の実績から2024年3月期までの3年間の年平均成長率のこと。

(注2)

 

 

調整後連結のれん償却前営業利益年平均成長率とは、投資事業を除いた主力事業における、企業買収によって生じるのれんの償却額等を除外して算出される連結営業利益の、2021年3月期の実績から2024年3月期までの3年間の年平均成長率のこと。

(注3)

 

連結のれん償却前営業利益とは、企業買収によって生じるのれんの償却額等を除外して算出される連結営業利益のこと。投資事業を含む全ての事業を対象とする。

(注4)

 

調整後連結のれん償却前オペレーティング・マージン=調整後連結のれん償却前営業利益÷調整後連結売上総利益

(注5)

 

のれん償却前ROE=企業買収によって生じるのれんの償却額等(持分法適用会社分を含む)を除外して算出される親会社株主に帰属する当期純利益÷自己資本(期首・期末平均)

(注6)

 

 

上述の中期経営計画に関する事項は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。また、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 


  

2024年3月期までの3年間は、短期的な利益成長を追うのではなく、事業構造の変革を進め、中長期的な大きな成長を目指す土台をより盤石なものとする期間と位置付けております。掲げた中期戦略に則り、グループの変革を着実に進め、中長期での大きな成長と、企業価値の向上を目指してまいります。

 

なお、過年度に連結子会社である株式会社博報堂DYメディアパートナーズの元社員、及び同連結子会社である株式会社博報堂プロダクツの元社員による不正行為が発覚したことに伴い、当社では2021年1月に、独立社外取締役を委員長とし外部有識者を委員とする特別委員会を設置し、原因究明と再発防止策の検討を要請しました。同年6月に同委員会より得た提言に基づき、グループを挙げて各種施策を実施しております。

引き続き、法令遵守の徹底と再発防止及びコンプライアンス意識のさらなる向上に努めてまいります。

 

 

 

2 【事業等のリスク】

 以下において、当社グループの事業及びその他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。

 なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めてまいりますが、当社の株式に関する投資判断は、本項目及び本書中の本項目以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があります。また、本項目に記載した予想、見通し、方針等、将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであり、将来実現する実際の結果とは異なる可能性がありますのでご留意ください。

 

(1) 経済状況・市場環境の変動

 国内企業の広告費の支出は、企業が景況に応じて広告費を調整する傾向にあるため、国内の景気動向に大きく影響を受ける傾向にあります。当社グループの国内売上高は、連結売上高全体に占める割合が非常に高く、国内景況が悪化すると当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、景況の悪化による影響を軽減するため、広範囲の業種にわたる顧客基盤の構築、マーケティング・コミュニケーションサービスの多様化、海外展開等をはかる所存でありますが、日本経済の回復が遅いもしくは不十分な場合、又は当社グループの対応が十分ではない場合もしくは十分にはかかる影響を軽減できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(2) 当社グループの事業活動に関するリスク

 当社グループの新聞・雑誌・ラジオ・テレビといったトラッド広告の国内売上高は、ここ数年、売上高全体に占める構成比が減少してきているものの、2022年3月期においても、35%程度と大きなシェアを占めております。また、今後も引き続き、広告主のマーケティング活動に活用され、当社グループの中心的な事業であり続けると認識しております。

 一方、インターネット、スマートフォン等の新たなメディアを活用した広告は、マスメディア広告などと組み合わせることにより、相乗効果が高まるものと考えられ、広告市場全体の拡大に寄与すると思われます。

 しかしながら、当社グループを取り巻くビジネス環境においては、「デジタル化の進展による企業のマーケティング活動の変化」と「企業のグローバルシフトの加速」という2つの大きな構造的変化が起きており、この流れは今後も更に進むと考えております。そのため、当社グループは、そのような構造的変化に対応した施策を随時行なっております。しかし、このような施策を迅速かつ十分に行うことができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(3) 広告業界における取引慣行
 マスメディアの広告取引は、主として、広告主からの受注に基づき行いますが、各広告会社は自社の責任で媒体社等と取引を行うのが一般的です。そのため、広告主の倒産等により、広告料金を回収できなかった場合には、広告会社が媒体料金や制作費を負担することとなり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 また、広告業界では、慣行上、広告計画や内容の変更に柔軟かつ機動的に対応できるよう契約書を締結することは一般的には行われておりません。当社グループにおいても、継続的な取引関係が成立している広告主との間であっても、個別取引に関する書面は存在するものの、基本契約書等を締結していないことが一般的であります。そのため、広告主との間で明確な契約書を締結していないことにより、取引関係の内容、条件等について疑義が生じたり、これをもとに紛争が生じたりする可能性があります。

 なお、欧米では「一業種一社制」(同一業種では一社のみの広告主を広告代理店が担当する取引形態)が一般的であり、広告会社の報酬構造や報酬決定方法も異なっております。日本においてはこのような取引形態は一般的ではありませんが、欧米の広告主、広告会社が日本に進出してきている昨今の状況に鑑みると、今後これらの取引形態及び報酬構造や報酬決定方法が日本の広告の取引慣行に影響を与える可能性があります。当社グループにおきましては、こうした動向に対応し、サービス形態の多様化等に努めてきておりますが、今後、取引慣行の動向・変化に適切に対応できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(4) 法規制等の導入や変更

 広告主の広告活動、メディアにおける広告の掲載・放送方法や内容等、広告会社の事業活動等に関する法令・規制・制度の導入や強化、法令等の解釈の変更等がなされる場合があります。法規制等の導入や強化等に対して当社グループが適切に対応できない場合又は広告主の広告活動が減少する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(5) 広告主との関係

 当社グループと広告主の間は、継続的な取引関係が成立しておりますが、広告主がコスト削減、取引関係の合理化等の要請を強める昨今の状況の中で、今後取引関係が解消、縮減等されない保証はなく、また、報酬等の水準は当事者間の合意によるものであり、その水準が今後も保証されるものではありません。従前と同様の取引関係が継続されない場合又は従前の取引条件が変更される場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。なお、2022年3月期における当社グループの上位広告主10社に対する売上高は、当社グループの国内売上高の22%程度となっております。

 

(6) 媒体社との関係

 当社グループの広告事業においては、新聞・雑誌・ラジオ・テレビといったマスメディアの広告に関する事業が主体であるため、主要媒体社からの仕入れの依存度は高くなっております。

 当社グループと媒体社では、長年の継続的な取引関係が成立しておりますが、媒体社との取引が継続されない場合又は取引条件等が変更された場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(7) 競合に関するリスク

 わが国の広告業界では、サービスの多様性、対応力、企画力、販売力等の観点から、売上高で上位の広告会社への集中傾向が高く、また上位広告会社を中心に熾烈な競争が行われております。更には、大手の海外広告会社も日本市場に参入してきており、競争がますます激しくなる傾向にあります。

 また、事業領域を拡大していく中で、コンサルティング会社など異業種企業との競合や、インターネット、スマートフォン広告市場等における新規参入企業や新興企業との競合が生じる機会も増加してきております。

 当社グループは、サービスの多様化、企画力、創造的提案力、経験、広告主との長年の継続的な取引関係等により競争上の優位性を確保していく所存でありますが、今後かかる優位性を確保できる保証はなく、優位性を逸した場合あるいは競争の激化に伴い報酬が低下した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(8) インターネット広告等の進展

 近年、インターネット、スマートフォン等新たな広告メディアの進展は著しく、かかる分野における広告市場は拡大傾向にあります。また、この分野においては技術の進化や多様な広告手法が生み出されております。当社グループは、早期の段階からインターネットメディアレップ会社であるデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社の設立に関与し、連携強化に努める等、積極的な取り組みを行ってまいりました。また、新規メディアと既存メディアを組み合わせた統合的なソリューションを提供することを競争力の源泉としております。

 しかしながら、今後、インターネットメディアの拡大をはじめとしたマーケティングのデジタル化の進展に対して当社グループが適切に対応できない場合、又は新しいメディアやマーケティング手法に対する当社グループの事業戦略や取り組みが功を奏しないもしくは十分でない場合には、当社グループのサービスの低下をきたし、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

 

(9) 当社グループの事業展開に関するリスク

 当社グループは、総合広告会社である株式会社博報堂、株式会社大広、株式会社読売広告社、次世代型デジタルエージェンシーである株式会社アイレップ及び総合メディア・コンテンツ事業会社である株式会社博報堂DYメディアパートナーズの5社並びに専門性と先進性の継続的な当社グループへの取り込みを狙った当社傘下の事業組織「kyu」に加えて、各組織がそれぞれ所有する広告関連サービスを提供する子会社群等から形成されており、広告主に対しワンストップでのマーケティング・コミュニケーションサービスを提供すべく事業展開をしております。また、中期経営計画においては「広義デジタル領域でのリーディングポジションの確立」「ボーダレス化する企業活動への対応力強化」「外部連携によるイノベーションの加速」に向けて積極的な投資戦略をとることとしており、M&Aを成長基盤強化のための重要な手段のひとつとして位置づけております。

 グループ会社を通じた事業展開、すなわちインターネット分野等の特定の事業や専門マーケティングサービスに特化、注力する会社の設立、買収、資本業務提携等により出資を含むグループ会社関係を構築することについては、出資額あるいは場合によっては出資額を超える損失が発生するリスク、グループの信用低下リスク等を伴う可能性があり、出資会社の事業活動や経営成績によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(10) 知的財産権

  広告業一般におけると同様、当社グループにおいても、事業活動を行う過程で、当社グループが所有する又は使用許諾を受けている以外の知的財産権を侵害してしまうおそれ、また逆に当社グループが所有する知的財産権が侵害されてしまうおそれがあり、当社グループがかかる事態を防止し、あるいは適切な回復をすることができない可能性があります。その場合、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に悪影響を与える可能性があります。

 

(11) 人材の確保及び育成

 当社グループの成長性及び競争上の優位性は、優秀な人材の確保に大きく依存します。人材に関しては、新卒者の安定的採用や即戦力となる中途採用の推進により確保をはかり、各職責、能力、市場環境の変化に対応した教育研修等による育成に努めておりますが、何らかの理由により優秀な人材が流出する可能性や人材の確保に支障をきたすおそれもあります。かかる事態が生じた場合、当社グループの競争力に悪影響を与える可能性があります。

 

(12) メディア・コンテンツビジネスに関わるリスク

 当社グループは、今後もスポーツ等イベントの権利取得や興業、映画製作への投資、アニメ・キャラクター関連番組制作等のコンテンツ関連ビジネスを行ってまいります。しかしながら、メディア・コンテンツビジネスの事業展開には、投資リスクを伴うものもあり、計画通りに進行しない場合又は収益を確保できない場合には当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(13) 海外市場展開

 当社グループは、広告主のニーズに応えるため、また中期経営計画における成長の重点の一つとして、海外市場における更なる拠点拡充や専門マーケティングサービス企業のM&Aによるグループ内への取り込みを含め、積極展開をはかってまいりますが、これらの事業展開には、海外の事業投資に伴うリスク(為替リスク、カントリーリスク等)、出資額あるいは出資額を超える損失が発生するリスク、グループの信用低下リスク等を伴う可能性があり、計画通りに事業展開ができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

 

(14) グループ経営基盤に関わるリスク 

 当社グループは、持株会社体制という枠組みの持つ優位性等、経営統合の相乗効果を最大限活用し、グループ経営基盤の強化に努めてまいりますが、持株会社統治等の効果が十分発揮されなかった場合には当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。 

 また、資金運用面においても、グループ内での資金運用、配分の効率化を進めておりますが、その効果が十分に発揮されない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。 

  なお、グループ経営基盤の強化、資金運用の効率化などの効果が十分に発揮されたとしても、他の不確定要因により当社グループの財政状態及び経営成績が当社の予想している水準に達する保証はありません。

 

(15) 訴訟等に関わるリスク

 当社グループは、現在においてその業績に重大な影響を与え得る訴訟・紛争には関与しておりませんが、様々な要因により今後直接又は間接的に、何らかの訴訟・紛争に関与することとなる可能性は否定できません。当社グループが訴訟・紛争に関与した場合、その経過・結果如何によっては、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に悪影響を与える可能性があります。

 

(16) 投資有価証券に関わるリスク

 当社グループは、投資有価証券の評価基準及び評価方法として、投資有価証券のうち時価のあるものについては期末の時価を適用し、株式市況等の変動により評価損を計上する可能性があります。そのほか、投資有価証券については、発行会社の財務状況や今後の見通しなどに鑑み、時価が著しく下落し、その回復が見込めない場合には、減損処理により評価損を計上する可能性があります。このような状況になった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(17) 退職給付債務に関わるリスク

 当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、割引率、年金資産の期待運用収益率等の一定の前提条件に基づいて数理計算を行っております。実際の結果が前提条件と異なる場合又は前提条件が変更された場合、その差額は将来にわたって規則的に損益認識されます。金利の低下、運用利回りの低下、年金資産の時価の下落等があった場合や退職金制度、年金制度を変更した場合には、追加的な退職給付に係る負債の計上、未認識の過去勤務費用の発生又は将来の退職給付費用の増加により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。当社グループは、これらの影響を軽減すべく退職給付制度の一部を2018年4月以降、確定給付年金から確定拠出年金に変更しておりますが、引き続き確定給付年金も残されているため、これらの可能性を完全になくすことはできません。また、退職給付に関する会計基準の変更等により、従来の会計方針を変更した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(18) 役職員等の不正行為のリスク

 当社グループは、その規模、業務範囲及び活動領域が広範に亘っていることから、日常的に、その役職員が法令や社内規定を遵守しているとの確証を得ることはできません。法令及び社内規定の遵守のための様々な取組みをもってしても、役職員の不正行為を完全に防止できる保証はありません。また、当社グループの取引先等の不正行為への関与が問題となる可能性もあります。そのほか、当社グループの役職員又はその取引先等により顧客情報その他の機密情報が漏洩したり不正に使用されたりする可能性もあります。これらの役職員等の不正行為により、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に悪影響を与える可能性があります。

 

 

(19) 災害、事故、紛争(あるいは戦争)、感染症の流行等に関わるリスク

 当社グループが事業を遂行又は展開する地域において、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が起こった場合には、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に悪影響を及ぼすことが想定されます。

新型コロナウイルスの感染拡大により、イベント等の業務が実施不能となったほか、国内外の経済が大きく打撃を受けたことにより得意先企業の広告需要の減退が見られ、当社グループでも広範な地域、分野で受注が減少しました。その影響は2022年3月期においては欧米や日本を中心に回復が見られ、事業活動への影響は低下しておりますが、現時点でも一部残っており、回復の時期を正確に予測することは困難な状況です。

 このように災害、事故、紛争(あるいは戦争)、感染症の流行、及びその回復状況等が、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(20) 情報システムに関わるリスク

 当社グループは、広告主のマーケティング又は広告に関する情報の管理を含む当社グループの事業のために、情報システムを使用し、情報インフラに依存しております。当社グループ又は当社グループが利用する第三者の情報システムに、システムの障害や停止、システムへの不正なアクセス、コンピュータウィルスの侵入、サイバーアタック、従業員の不適正な事務・事故・不正等による人為的過誤などが発生した場合、また同様の要因により情報の外部漏洩・不正使用等が発生した場合、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動あるいは当社グループの社会的信用に悪影響を及ぼし、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

  2022年3月期の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等(以下、収益認識基準)を適用しており、遡及適用後の数値で前期比較を行っております。以下における「収益」は収益認識基準適用後の数値であります。また「売上高」は従前の会計基準に基づくものであり、財務諸表利用者にとって有用であると考えていることから、収益認識基準に準拠した開示ではないものの、定性的情報において自主的に開示しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

 当連結会計年度の日本経済は、持ち直しの傾向にあるものの、変異株の感染拡大に伴う行動制限長期化の影響や、サプライチェーン停滞に伴う生産や輸出の回復鈍化もあり、力強さを欠く動きとなりました。一方、国内広告市場(注1)は、前年の大幅な落ち込みからの反動増もあり、期初から強い伸びが継続し、通期で前年同期比二桁増となるなど、着実な回復がみられております。

 

① 売上高及び収益 

 当連結会計年度の売上高は1兆5,189億21百万円(前期比17.0%の増収)、収益は8,950億80百万円(同25.3%の増収)となりました。

 当連結会計年度の売上高を種目別に見ますと、雑誌とラジオを除く全ての種目で前年を上回りました。中でも、マーケティング/プロモーションでは大型案件の貢献もあり大きく前年を上回り、インターネットメディアも高い伸びとなりました。

 また、得意先業種別では、サプライチェーン停滞の影響が大きい「自動車・輸送機器・関連品」などで前年同期を下回りましたが、「官公庁・団体」、「情報・通信」及び「交通・レジャー」で前年を大きく上回ったほか、そのほかの業種も多くが前年を上回りました。(注2)

 

② 売上総利益及び営業利益

 売上総利益は、3,870億93百万円(前期比23.6%増加)と前期より738億75百万円の増加となりました。なお、このうち国内事業については3,110億58百万円と23.2%の増益、海外事業については北米や中華圏における回復基調に加えて連結範囲の拡大もあり、790億34百万円と24.3%の増益となりました。販売費及び一般管理費において、連結範囲の拡大による費用の増加があったものの、営業利益は716億42百万円(同59.1%増加)となりました。

 

③ 営業外損益及び経常利益  

 営業外収益は、持分法による投資利益が26億7百万円計上されたこと等により、前年同期比20億50百万円増加76億83百万円となりました。

 営業外費用は、条件付取得対価に係る公正価値変動額が13億46百万円、支払報酬が9億2百万円計上されたこと等により、前年同期比25億12百万円増加35億85百万円となりました。

 以上の結果、経常利益は前年同期比52.7%増加757億40百万円となりました。

 

④ 特別損益及び税金等調整前当期純利益

 当社が㈱リクルートホールディングスの株式を売却したこと等により投資有価証券売却益を236億27百万円計上した結果、特別利益は258億12百万円となりました。また特別退職金を43億26百万円計上した結果、特別損失は68億44百万円となりました。以上を加味した税金等調整前当期純利益は947億8百万円(前期比76.5%増加)となりました。

 

 

⑤ 法人税等、非支配株主に帰属する当期純利益及び親会社株主に帰属する当期純利益

 法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は、前年同期比112億97百万円増加358億46百万円、非支配株主に帰属する当期純利益は、前年同期比10億42百万円増加36億83百万円となりました。

 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は551億79百万円(前期比108.4%増加)となり、前期より286億99百万円の増益となりました。

 

(注)1 「特定サービス産業動態統計調査」(経済産業省)によります。

    2 当社の社内管理上の区分と集計によります。

 

(2) 財政状態

 当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ1,119億12百万円増加し、1兆530億16百万円となりました。主な増減は、受取手形及び売掛金の増加776億81百万円、棚卸資産の増加267億50百万円、投資有価証券の減少344億96百万円であります。

 負債は、前連結会計年度末に比べ866億37百万円増加し、6,656億1百万円となりました。主な増減は、賞与引当金の増加243億78百万円、未払法人税等の増加190億21百万円であります。

 純資産は、前連結会計年度末に比べ252億75百万円増加し、3,874億14百万円となりました。主な増減は、その他有価証券評価差額金の減少223億39百万円、利益剰余金の増加428億73百万円であります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて46億54百万円増加し、1,806億97百万円となりました。

 

  (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(947億8百万円)の計上等に対して、賞与引当金の増加額(243億1百万円)、売上債権の増加(△641億21百万円)、法人税等の支払額(△250億8百万円)等があり、208億52百万円の増加(前連結会計年度は362億12百万円の増加)となりました。

 

  (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出(△50億37百万円)、無形固定資産の取得による支出(△54億11百万円)、投資有価証券の取得による支出(△71億41百万円)、投資有価証券の売却による収入(350億47百万円)、子会社株式及び出資金の取得による支出(△56億76百万円)、関係会社株式取得資金の拠出を含むその他の支払(△180億23百万円)等により、112億92百万円の減少(前連結会計年度は98億31百万円の減少)となりました。

 

  (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入(135億36百万円)、長期借入金の返済による支出(△108億52百万円)、配当金の支払額(△112億4百万円)等により、86億98百万円の減少(前連結会計年度は127億67百万円の減少)となりました。

 

(4) 生産、受注及び販売の状況

 当社グループは、広範囲かつ多種多様にわたる広告業務サービスの提供を主たる事業としており、その内容、構造、形式が必ずしも一様ではないため、生産実績及び受注実績について、その金額あるいは数量を記載しておりません。

 また、販売実績については、(1) 経営成績に含めて記載しております。

 

 

(5) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、2019年5月に2024年3月期を最終年度とする中期経営計画を発表し、各種取り組みを進めてきましたが、コロナ禍の影響によりビジネス環境が激変したことを受け、一旦目標をとり下げ、2022年2月に、2022年3月期から3ヵ年の見直し中期経営計画を発表しました。

見直し中期経営計画においては、以下の通り、中期経営目標及び同目標を達成するにあたり注視すべき重点指標を掲げております。

 当連結会計年度においては、中期経営目標である投資事業の影響を除外した調整後連結売上総利益及び調整後連結のれん償却前営業利益は、広告需要の回復の取り込みに加えて、コロナ環境下特有の業務の獲得や活動費の未発生など、一時的な押上げ要因もあり、前期比二桁以上の強い伸びとなりました。投資事業の損益を含めた連結のれん償却前営業利益も同様に、前期から大きく伸長し、840億円の過去最高益となっております。

 また、重点指標として掲げている、調整後連結のれん償却前オペレーティング・マージンは、変革を進めるための戦略投資を進める一方で、コスト構造改革の効果の発現や、行動制限に伴う活動費の未発生など一時的な押し上げ要因もあり、20%を上回る水準での着地となりました。のれん償却前ROEについても、19.7%と高い水準となっております。

 また、中期経営計画で掲げた変革の推進という観点では、地方や中小、ベンチャー企業向けのデジタルサービスの提供に強みを持つソウルドアウト㈱の連結子会社化や、アプリマーケティングに強みを持つ㈱アドウェイズの持分法適用会社化、グループのテクノロジー開発と基盤整備のコアとなる㈱博報堂テクノロジーズの設立など、各種変革を推進する動きが具体化してきており、計画初年度は、想定を上回る順調な滑り出しであったと認識しております。

 ウクライナ問題など先行きの不透明感が強い状況ではありますが、引き続き、掲げた中期戦略の推進に一層注力し、中期経営目標の達成を目指してまいります。

 

(6) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループは、経営環境のいかなる変化のもとでも事業活動を安定的に継続させる為に必要な手元流動性を確保した上で、事業活動から生み出されるネットキャッシュを、中期経営計画に基づき成長分野に重点的に投下することを基本方針としております。また、安定かつ継続的に株主に配当を実施することを株主還元の基本方針とし、資金需要の状況、業績の動向及び内部留保の充実等を総合的に勘案の上、配当額を決定しております。
 将来の成長の為に必要な投資資金や株主還元の為の資金は、前述の通り自己資金から賄うことを基本方針としておりますが、M&Aや設備投資は個別案件毎の規模やタイミングにも依存するため、状況次第では手元資金のみで賄えない場合も想定されます。このような場合には、当社グループの財務状況や金融・資本市場の動向を鑑み、コストや機動性等を精査した上で、金融機関からの借入等の適切な手段で資金調達を実行する所存であります。

 なお、現在の当社グループの財政状態等から勘案すると、十分な資金調達能力を有していると判断しております。

 

(7) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

なお、新型コロナウイルスの拡大による影響は、今後の感染症の広がり方や収束時期等を予測することが困難であるため、当連結会計年度期末時点で入手可能な情報に基づき見積りを行っております。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

  該当事項はありません。