文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、日本調剤グループ理念である「私たちの使命」として、「すべての人の『生きる』に向き合う」を掲げております。また、「グループの目指す姿」として、「誰もが一番に相談したくなるヘルスケアグループへ」を公表しています。このグループ理念のもと、当社グループは、生活の一番近くで医療を担う者として、一人ひとりの「生きる」に真摯に向き合い、全国で質の高い医療サービスを国民の皆さまに提供してまいります。
当社グループは2024年9月25日付にて、以下のとおり「日本調剤グループ 長期ビジョン2035」を公開いたしました。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年を境界線として医療・医薬品業界は大きな変化を迎えることとなります。“医療費の増加抑制”と“良質な医療サービスの提供”を同時に実現するために、さまざまな制度改革が進められ、柔軟かつ大胆な発想の転換が求められます。
調剤薬局業界では、2015年10月に厚生労働省より「患者のための薬局ビジョン」が公表され、薬剤師・薬局の将来像=必要とされる薬剤師像・薬局像が具体的かつ明確に示されました。同時にすべての調剤薬局をかかりつけ薬剤師・薬局に再編するとの構想が打ち出され、それ以降、同ビジョン・同構想の実現に向けた調剤報酬の改定が進められています。2019年11月には、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(改正薬機法)が可決・成立し(2019年12月4日公布)、機能別薬局の認定制度が開始されました。加えて、毎年薬価改定などの薬価制度の抜本的な改革、オンライン服薬指導及びリフィル処方箋の開始、電子処方箋の導入、マイナンバーカードの健康保険証利用の開始など制度改革が矢継ぎ早に実施されています。
日本調剤グループは、こうした大きな環境変化を乗り越え、さらなる飛躍に向けた強固な企業基盤を構築すべく、コア事業である調剤薬局事業と医薬品製造販売事業並びに医療従事者派遣・紹介事業とのシナジーを最大限発揮することに従来にも増して注力し業容拡大に努めております。
また、プライム市場上場企業としてステークホルダーからの中長期的な企業価値向上に向けた期待や要請も年々高まっています。このようなステークホルダーからの期待に応えるため日本調剤グループの「長期ビジョン2035」を策定いたしました。
私たちの使命
「すべての人の『生きる』に向き合う」
グループの目指す姿
「誰もが一番に相談したくなるヘルスケアグループへ」
※Net Promoter Scoreの略で、顧客ロイヤルティ(サービスに対する信頼・愛着)を測る指標。実際にそのサービスを推奨する人がどれくらいの割合いるのかを表すもの。
1.ROE(%)=当期純利益 ÷ 自己資本
2.ROIC(%)=税引後営業利益÷(有利子負債+株主資本)
3.EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費
当社グループにおける長期的な経営指標においては、財務KPIでは資本収益性の指標としてROEとROIC、成長性の指標として連結売上高年平均成長率と連結EBITDA年平均成長率を重要な経営指標と位置付けています。2036年3月期のありたい姿として、ROEとROIC15%、連結売上高年平均成長率と連結EBITDA年平均成長率で10%超を目指し、資本収益性と成長性の改善を図ってまいります。
我が国では2025年に団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となるなど、加速度的に進行する超高齢社会に対して“医療費の増加抑制”と“良質な医療サービスの提供”を同時に実現するために、「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」をはじめとして、さまざまな制度改革などが進められています。このような状況を背景として、医療・医薬品業界を取り巻く環境は大きな変化を迎え、業界再編が加速することが想定されます。
調剤薬局業界では、2021年8月より、患者さまが自身に適した薬局を選択できるよう、特定の機能を有する薬局の都道府県知事による認定制度が開始されました。この制度により、在宅医療や、入退院時を含め他の医療機関との服薬情報の連携に対応できる「地域連携薬局」及び、がん等のより高度な薬学管理への対応や高い専門性が求められる「専門医療機関連携薬局」の認定が始まり、患者さまのニーズに応えられる薬局づくりが今後ますます求められます。また、かかりつけ機能の強化と活用、質の高い在宅医療、医療DX推進体制等への評価に重点を置いた診療報酬改定がなされるなど、地域の医療機関として薬局・薬剤師に求められる役割が拡大するとともに、大きな変化への対応力が求められています。
調剤薬局事業では、これまで電子お薬手帳「お薬手帳プラス」を活用した服薬情報の一元管理や、患者さまに応じた服薬指導の実施、医療機関連携、調剤後の相談・フォローの充実といった対人業務へ積極的に取り組むとともに、自社開発の日本調剤オンライン薬局サービス「NiCOMS」によるオンライン医療の普及拡大や電子処方箋制度への対応等にもいち早く取り組みを行っております。さらに、患者さまにさらなる良質な医療サービスを提供すべく、業界に先駆けて数多くの専門医療機関連携薬局・地域連携薬局としての認定を取得しており、地域の医療機関連携や高度医療のハブとなる薬局づくりと高い専門性を有する薬剤師の育成に注力しております。
医薬品製造販売事業においては、ジェネリック医薬品の数量ベース使用割合について「後発医薬品の品質及び安定供給の信頼性確保を図りつつ、2029年度末までに全ての都道府県で80%以上」とする目標が継続されるとともに、「後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」とする等の副次目標が新たに定められ、引き続きジェネリック医薬品の使用促進が求められております。一方で、2021年度以降は、2年に1度の通常の薬価改定に加え中間年における薬価改定が実施されるなど、ジェネリック医薬品業界は大きな変化の時期を迎えております。このような環境において、従来以上に安定供給体制、品質に対する信頼性の確保及び情報収集・提供体制の整備・強化等が求められており、「誰もが一番に相談したくなるヘルスケアグループ」を掲げる当社としては、これらの要請に応えていくことが果たすべき社会的責任であると認識しております。ジェネリック医薬品の品質管理と安定供給を最優先としつつ、研究開発投資による新規薬価収載品の継続的な上市に取り組んでまいります。
医療従事者派遣・紹介事業においては、かかりつけ薬剤師制度の浸透により薬剤師事業のマーケット需要が、派遣から紹介へと大きく変化しております。当社グループでは、いち早く需要の変化をとらえて派遣事業から紹介事業へのシフトを進めるとともに、ブランド力の向上による薬剤師事業のシェア拡大を進めております。加えて、医師事業においても、2017年以降取組みを強化し全国展開を図ってまいりました。さらに、国内企業における健康経営の重要性の高まりを背景として産業医事業を含むヘルスケア事業の拡大を推し進める等、引き続き人材市場の需要に応えるべく更なる事業拡大に取り組んでまいります。
当社グループは、大きな事業環境の変化を乗り越え、高収益を実現するための事業ポートフォリオ戦略、ROICを主とした経営管理等による構造転換を進めていくと同時に、DXのさらなる推進やAI活用により労働生産性、ひいては資本効率性の向上を目指します。また、長期ビジョン2035の実現に向けて最も重要な課題の一つである人的資本経営の推進を加速してまいります。加えて、グループ理念である私たちの使命「すべての人の『生きる』に向き合う」のもと、サステナビリティ経営を強化し、社会課題の解決を通じて持続可能な社会の発展に貢献してまいります。
(1) サステナビリティ基本方針
私たち日本調剤グループは、サステナビリティを中長期的な企業価値向上に向けた経営戦略の重要事項と認識しています。あらゆるステークホルダーとの対話・協働のもと、人権を尊重し、環境保全に配慮した公正で透明性の高い経営基盤を構築します。そして、事業活動を通じて医療・ヘルスケア分野における社会課題の解決に取組み、社会の持続可能性を追求していきます。
(2) サステナビリティの取組み
当社グループは、持続可能な社会への貢献と継続的な企業価値の向上を果たしていくためにマテリアリティを特定し、経営戦略とサステナビリティを紐づけ実効性の高い取組みを進めています。マテリアリティの特定にあたり、組織横断での議論のもと、当社の事業活動とSDGsの17のゴール及びこれに紐づく169のターゲットを照らし合わせ、関係性や関連性の深さを検討し協議を重ねるとともに、外部有識者の視点も加えて評価を行いました。
また、気候変動問題への対応をサステナビリティ経営の重要事項と認識し、取組みを進めており、金融安定理事会(FSB)による「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」による提言に賛同しています。当社では気候変動に関する情報開示にあたり、TCFD提言の推奨する4つの開示項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標)に沿って開示を行っています。
なお、将来に関する事項につきましては、当社が認識している情報を元に取締役会及びサステナビリティ委員会で前提条件を設定した上で合理的な根拠に基づく適切な検討を経たものであります。今後の外部環境の変化、内部環境の変化により前提条件にずれが生じた場合、情報開示の見直しを行う可能性があります。
当社グループは、サステナビリティ基本方針にのっとり、経営戦略にサステナビリティを取り込んでいます。サステナビリティにおける重要事項の決定は取締役会が行い、取締役会の直属の機関としてサステナビリティ委員会を設置しています。代表取締役社長が委員長を務める本委員会は、原則として1事業年度に2回以上開催し、特定したマテリアリティ(重要課題)に対する取組みの進捗の統括と評価、事業戦略への落とし込み、国際的なガイドラインの遵守、参画の協議などを行い、適宜、取締役会に報告する体制をとっています。サステナビリティの取組みは責任部門を明確にし、各部門が進めています。サステナビリティ課題に対する執行機能はサステナビリティ統括室が担い、各部門と連携しながら着実に取組みを進める体制を構築しています。
また、気候関連課題をサステナビリティ経営における重要課題であると認識し、取締役会の直属の機関であるサステナビリティ委員会により気候変動問題に対する取組みを協議しています。
サステナビリティ推進体制

①全社戦略
当社グループは、事業活動とSDGsの17のゴール・169のターゲットとの紐づけを行い、社会における重要課題と当社の事業活動における重要課題の両面から検討を行い、6つの重要課題グループに大別される21のマテリアリティを特定しています。特定したマテリアリティは、ステークホルダー視点の優先度と経営視点の優先度の2軸で評価を行い、マテリアリティマップを作製した上で優先度の高いマテリアリティを開示しています。重要課題グループは、医療サービスを提供する企業として事業を通じた社会課題の解決を目指す「A.医療のクオリティとアクセシビリティ」、「B.医薬品の品質と安定供給」、「C.医療機関の人的課題の解消」、持続的な経営基盤を確立するための「D.カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーへの寄与」、「E.多様な人材の育成と活躍」、「F.社会的責任を果たすためのガバナンス強化」としています。「A.医療のクオリティとアクセシビリティ」は調剤薬局事業におけるマテリアリティであり、効率的かつ質の高い医療サービスの提供に貢献するものです。「B.医薬品の品質と安定供給」は医薬品製造販売事業におけるマテリアリティであり、医薬品の安定供給の側面から医療に貢献するものです。「C.医療機関の人的課題の解消」は医療従事者派遣・紹介事業のマテリアリティであり、医療人材の供給という人的側面から医療に貢献するものです。「D.カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーへの寄与」は気候変動課題への対応や循環型社会の構築に貢献するものです。「E.多様な人材の育成と活躍」は会社の重要な経営資源である人的資本への投資を行い、従業員価値を高めることで持続的な企業の成長に貢献するものです。「F.社会的責任を果たすためのガバナンス強化」はガバナンス、コンプライアンス、リスク管理など社会的責任を果たすためのものです。それぞれの重要課題グループに含まれるマテリアリティは重要な取組み・KPIを設定しており、グループ全体で重要課題への対応を進めるための戦略や施策として位置付けています。
(日本調剤グループ マテリアリティ)
A.医療のクオリティとアクセシビリティ
B.医薬品の品質と安定供給
C.医療機関の人的課題の解消
D.カーボンニュートラル・サーキュラーエコノミーへの寄与
E.多様な人材の育成と活躍
F.社会的責任を果たすためのガバナンス強化
取組み・KPI、貢献するSDGsの詳細は当社ウェブサイト「特定したマテリアリティ」をご参照ください。
②気候変動
当社グループは、気候変動が事業経営に及ぼす影響を認識するにあたり、IPCCやIEAが発表している長期的な仮説やシナリオを参照し、物理的及び副次的なリスクと機会の特定、またその影響度合いと対応策の評価・考察を行っています。具体的には、IPCCやIEAが想定する複数の将来予測シナリオを参考に、産業革命期の世界平均気温と比較して2100年頃までに平均気温が4℃上昇し、物理的被害が最大化することを想定した世界を4℃シナリオ、脱炭素化への取り組みによって2050年のカーボンニュートラルが達成され2℃未満の上昇に抑制された世界を1.5℃シナリオとして設定し、二つの将来世界を想定し分析をしています。
なお、シナリオ分析の実施は、2022年度時点で当社が認識している情報を元に前提条件を設定した上で判断し情報開示を行なっております。今後の外部環境の変化、内部環境の変化により前提条件のずれが生じた場合、情報開示の見直しを行う可能性があります。
参考シナリオ


③人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針
当社グループは、「すべての人の『生きる』に向き合う」というグループ理念のもと、従業員を重要な経営資源である人的資本と捉え、採用、人材育成、評価、エンゲージメント向上に対して積極的な投資を行うことで、経営戦略と連動した人的資本経営を推進し、持続的な企業価値向上を目指しています。また、多様な価値観の存在が、会社の持続的な成長の実現に繋がるとの認識に基づき、一人ひとりの個性や多様性を尊重した環境づくりを推進しております。
(人材確保に向けた取り組み)
・採用活動の強化
主要事業である調剤薬局事業では質の高い薬局サービスの提供と、組織拡大に向けた競争戦略を高める上で、薬剤師をはじめとする、専門性を持った多様な人材の確保は非常に重要です。法改正や業界再編に伴う外部環境の変化に対応すべく、新卒採用だけでなく、幅広いスキルや経験による組織活性化を目的にキャリア採用にも注力しており、様々なチャネルを駆使した活動を展開し、優秀な人材確保に努めています。
(人材育成の取り組み)
・求められる人材像と人材育成方針
当社グループは、全職種共通の“求められる人材像”として、「健全で優れた人格と強いリーダーシップを有し、周囲からの信頼を得つつ、高い専門性を発揮するプロフェッショナルとして、変化を恐れず挑戦し、多様な力を掛け合わせ、中長期的に高い成果を創出することで、医療分野を中心に社会課題解決に貢献できる人材」と掲げています。この人材像の実現に向け、社員の自律的なキャリア形成を促す成長機会の提供に力を入れています。調剤薬局事業の薬剤師職においては「薬剤師ステージ制度」を設け、社内認定資格の取得を推奨し、より高度な外部認定資格の取得へとステップアップを可能とすべく全面的に支援しています。その他の職種においても、職務別・階層別の研修を軸に、テーマ別の研修や異動配置を含むキャリア形成施策、オンライン学習のプラットフォームの提供、次世代リーダー育成のための選抜者育成プログラムの実行など、従業員一人ひとりが必要とする知識・スキルを学べる機会を提供しております。
・サクセッションプラン
グループの持続的な成長と経営基盤の強化のため、計画的な後継者育成は重要な経営課題と位置づけています。調剤薬局事業のマネジメントを担う主要ポジションである薬剤部長については、課長クラスの人材を対象としたサクセッションプランを実施することで候補者を選定しており、その他各部門の部長クラスについても、策定・進行しています。
(社内環境整備)
・多様な人材の活躍推進
多様な人材の育成と活躍を支える社内環境整備は、持続的な企業の成長には不可欠であるとの認識から、人種・国籍・年齢・性別・障がいなどに関わらず活躍できる職場環境を作るための施策を企画・推進しています。特に従業員の約7割を占める女性の活躍を後押しするため、女性管理職比率の向上を目指し、キャリアアップに向けた施策を展開しています。また、障がい者雇用にも積極的に取り組み、法定雇用率を上回る水準を維持しています。
・エンゲージメントサーベイ
定期的にエンゲージメントサーベイを実施し、その結果や寄せられた声をもとに、経営層との対話機会の設置、人事制度など各種制度・ルールの見直し、生産性向上やコミュニケーションの深化を目的とした改善案の企画・実行など、あるべき姿の実現に向けたアクションを起こすことで、従業員の組織への共感性や仕事のやりがいを高めてエンゲージメントを向上させ、従業員が明るく笑顔で働くことができる、活力ある組織づくりを目指して参ります。(2024年度トータルエンゲージメントスコア:3.49)
・健康経営への投資
当社グループの持続的な成長を実現するためには、従業員の健康への取り組みを強化し、個人と組織が健康な状態を維持・発展させることが不可欠です。そのためには健康経営の視点からのアプローチが大切であり、安全な職場環境の確保をベースに、産業医や産業保健師の連携による各種施策の実施や、ワークライフバランスを支える制度の導入など、従業員一人ひとりが長きに渡って、安全で健康的に活躍できる環境醸成を目指していきます。
①サステナビリティ関連リスク
気候変動関連リスクを含むサステナビリティに関連するリスクについては、サステナビリティ委員会が特定・評価しており、特定したリスクについては、当社グループ全体の総合的なリスク分析・管理を行うリスク管理委員会に報告し、当社グループ全体のリスクと比較して重要性を評価のうえ、対応するリスクの優先順位を決定しています。優先順位の高いリスクについてはサステナビリティ委員会で対応を検討し、取締役会へ報告しており、取締役会での審議の後、取締役会の指示のもと、サステナビリティ委員会と各部門が連携して個別リスクへの対応を進める体制となっています。
サステナビリティ関連リスクのリスク管理体制

②気候変動
設定した各シナリオに基づいた分析結果として、1.5℃シナリオでは、政府による積極的な気候変動対策の実施が予想され、炭素税・排出権取引などの新たな規制の導入やリサイクル法などの現行の規制の厳格化、電力価格高騰の影響を受け、当社事業における操業コストの増加が想定されます。他方で投資家や顧客のサステナブル思考の高まりや市場ニーズ変化への適正な対応は、当社の企業ブランド戦略とその発信に繋がる機会となり得ます。4℃シナリオでは、温暖化の進行に伴う気温上昇や感染症の増加、洪水や高潮をはじめとする自然災害の激甚化により、直接的被害の拡大や操業停止など、当社事業や物流への影響が懸念されます。こうした異常気象に起因した物理的リスクは、想定した双方のシナリオと共に当社事業への被害の拡大を確認しており、調達・操業・販売のすべての段階において対策を検討していくことが必要であると認識しています。一方で、酷暑や急激な気象状況の変化など消費者の外出意欲を阻害する影響については、当社の各種オンラインサービスが、新たなニーズにも対応した医薬品の供給インフラとして活用される可能性があることを評価しています。また当社事業全体を通した社会貢献の可能性としても、気温上昇や大雨・洪水による衛生環境の悪化など、様々な要因による動物媒介性感染症の拡大や健康被害の増加が想定されるため、そのような状況下でも適切にお客様へ医薬品が供給されるよう、インフラ整備を通した社会貢献が可能であると認識しています。
③リスクと機会
主となるリスク・機会における影響と対応
大:売上総利益に±1%以上の影響がある、もしくは財務的影響が大きいと想定されるもの
中:財務的影響はあるが、軽微なもの
小:影響が無いもの/極小のもの
①気候変動
当社グループでは、これまでにも自社の環境関連の取り組みを測る指標として、調剤薬局事業における残薬削減金額や、医薬品製造販売事業におけるCO2排出量、都市ガス・電力の使用量の削減率についてモニタリングを実施してまいりました。2020年10月の日本国におけるカーボンニュートラルへのコミットの表明やCOP26における国際的な1.5℃シナリオの実現に向けた合意を踏まえ、新たな指標として当社の事業活動全範囲を対象とした温室効果ガスの排出量のモニタリングを開始しています。今後は国際的な削減目標に準拠し、2050年のカーボンニュートラルの達成を見据えた取り組みを進めています。
当社のCO2排出量
当社のCO2排出量 Scope3の内訳
当社の温室効果ガス削減目標
・ 2030年
調剤薬局事業 1店舗あたりのCO2排出量 30%減 (2020年度比)
医薬品製造販売事業 生産錠数1億錠あたりのCO2排出量 30%減(2020年度比)
・ 2050年
カーボンニュートラルの実現(CO2排出量実質ゼロ)
②人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標
当社グループは、上記「(4)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。
なお、以下の目標及び実績は日本調剤株式会社のみ開示しています。
ダイバーシティ
(注)1. 管理職は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出。
2. 障害者雇用率は、障害者雇用促進法に基づき算出。
職場安全
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。当社グループはこれらのリスクに対処するため、リスク管理体制を整備し、リスクの集約・選定及びリスクへの対応を行っておりますが、全てのリスクを完全に回避するものではありません。また、以下に記載するリスクについては、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を、重要性の観点から取上げたもので、全てのリスクを網羅するものではありません。なお、文中における将来に関する事項は、当年度末時点において当社グループが判断したものであります。
1. 当社グループにおけるリスクマネジメント体制
当社グループでは、リスクマネジメント及びコンプライアンスに関する取組みを統括する「リスク管理委員会・コンプライアンス推進委員会」を設置し、リスク管理担当取締役が委員長を務めております。本委員会は、リスクマネジメントやコンプライアンスの重要項目の立案、重要性の高いリスクの設定、適切な対応、リスク顕在化時の情報共有や対策の実施といった役割を担っております。
重要性の高いリスクの選定にあたっては、外部環境・内部環境・業務オペレーションといった複数の観点からリスクを抽出し、評価を行っております。選定は、各グループ会社及び各部門にて行うと共に、グループ全体としての視点でも抽出し、優先度の高いリスクを特定しております。リスク管理委員会では、選定されたリスクの状況及び対応状況をモニタリングし、グループ全体でのリスク管理を推進しております。また、サステナビリティ課題に関連したリスクをグループ全体のリスクマネジメントの対象とし、対応を推進するため、リスク管理委員会とサステナビリティ委員会の連携を図っております。
2. 当グループにおける重要性の高いリスク
(1) 医療制度の変更に関するリスク
当社グループの主力事業である調剤薬局事業、医薬品製造販売事業は大きな変革期にあると認識しており、今後の薬価基準や調剤報酬の改定によっては、当社グループの業績等が影響を受ける可能性があります。また、医療制度の大きな変更による新たな競争の発生等により競争力を維持できない場合、事業計画や業績等が影響を受ける可能性があります。
このような状況を踏まえ、当社グループでは、経営目標の達成に向け、医療制度の方向性や社会環境の変化をふまえた事業戦略を策定、推進しております。
調剤売上は消費税法により非課税となる一方で、医薬品等の仕入は同法により課税されております。調剤薬局事業において当社グループは消費税等の最終負担者となっており、当社グループが仕入先に支払った消費税等は、販売費及び一般管理費の区分に費用計上されております。今後、消費税率が改定され、薬価基準が消費税率の変動に連動しなかった場合には、当社グループの業績等が影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、M&Aを推進する中で取得したのれん・固定資産、及び出店により取得した固定資産は、対象店舗の業績悪化等により、回収可能性が低下し減損損失を計上することとなった場合には、親会社株主に帰属する当期純利益など業績に影響を与える可能性があります。なお、調剤薬局事業におけるのれん・固定資産の減損に関する重要な会計上の見積りの前提条件については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。また、当社グループでは医療制度や社会環境の変化に対応すべくデジタルトランスフォーメーション(DX)への投資を拡大・推進しておりますが、医療制度改革や社会ニーズの変化と戦略との間に差異が生じた場合、追加での投資が必要となるか、または投資の回収可能性が低下し減損損失計上の対象となることで、業績等に影響を与える可能性があります。
このような状況に対し、当社グループでは、M&Aの活用を調剤薬局事業の業容拡大の有効な手段の一つとして位置付け、案件毎に十分な精査・検討を前提としたうえで、慎重に取り組んでおります。DXへの投資についても、医療制度改革や社会ニーズの変化を的確に捉え、慎重に投資判断を行っております。
調剤薬局事業においては、調剤過誤が発生し、多額の賠償金の支払いや、それに伴う信用低下等があった場合には、業績等に影響を及ぼす可能性があります。このような事態を防止するため、医薬品安全使用のための業務手順書の遵守、医療安全研修の実施、専門性の高い薬剤師の育成、医薬品自動チェックシステムの導入や危険性の高い薬剤の重点的な鑑査の実施等、さまざまな対策を講じております。また、調剤業務での医療安全・品質管理向上に関する統括機能を設け、会社全体での過誤防止の取組みを推進しております。
医薬品製造販売事業においては、未知・重篤な副作用の発生や製品の品質上の重大な瑕疵により製品回収・販売中止等が発生した場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。製造販売を行うジェネリック医薬品は、先発医薬品でその有効性と安全性が確認されており、再審査を経て発売されることから、予期せぬ重篤な副作用が発生するリスクは小さいと考えられますが、発生可能性は皆無ではなく、GMPに基づいた製造・品質管理体制の強化・拡充を進めております。
当社グループの事業に関連する法令は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)、薬剤師法、労働者派遣法など多岐にわたります。例えば、調剤薬局事業や医薬品製造販売事業においては、薬機法関連法規等の規制を受け、各都道府県知事等による許可・指定・登録・免許及び届出が必要です。万一、違反等があった場合、監督官庁からの業務停止、許認可の取消等が行われ、業績等に影響を与える可能性があります。
また、医薬品製造販売事業において開発・申請した製造販売品目ごとの承認は厚生労働大臣から取得しておりますが、これらの承認が計画どおりに得られない場合、法令改正や諸規制の変更に伴う対応費用の発生、サービスの提供、製品の開発、製造、販売活動等に影響が及ぶことで、当社グループの業績等が影響を受ける可能性があります。
このような状況に対し、当社グループでは、法令及び関連する規制の遵守を極めて重要な企業の責務と認識し、経営の最優先事項の一つに位置付けて事業を推進しております。
当社グループは、重要な事業戦略としてDX戦略を策定・推進しており、事業運営における情報システムの重要性が増しています。また、調剤薬局事業及び医療従事者派遣・紹介事業において、患者さまの病歴・薬歴や派遣労働者の経歴などの個人情報、及び全事業において営業上・技術上の機密情報を保有しています。このような状況において、サイバー攻撃等による機密情報や個人情報の漏えい、通信回線や機器のトラブル等による情報システムの停止等が発生した場合、被害規模によっては業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。万一、個人情報の漏えいがあった場合には、多額の賠償金の支払いや行政処分、それに伴う信用低下等により業績等が影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、これらの情報について厳重な管理を行い、サイバー攻撃等による不正アクセス、改ざん、破壊、漏えい及び滅失等を防ぐため、情報セキュリティに関する規定整備や各種セキュリティ管理施策の実施、従業員への教育等による情報セキュリティインシデントの未然防止と共に、インシデント検知ならびに発生時の対応力強化に努めております。
当社グループの事業戦略の遂行や事業の拡大において、人材の確保は最も重要な課題の一つであると認識しております。しかし、人材獲得競争の激化や人材の社外流出に伴う人材確保・人材不足の状況によっては、事業戦略の達成が困難となり、将来の当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
調剤薬局事業においては、薬機法及び厚生労働省令によって、薬局における薬剤師の配置人数に規制があります。このため、薬剤師の必要人員数が確保されない場合には、当社の出店計画及び業績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、医療を通じて社会に貢献する会社として人々の健康な生活を支える役割を担っており、人権の尊重は、当社グループの事業継続のための前提となる重要な基盤であると認識しております。事業を取り巻く環境の変化をふまえ、人権リスクが経営に及ぼす影響を適切に認識し、確実に対応していく必要があります。
当社グループでは、国際人権章典及び国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」に規定された基本的な人権を尊重し、ビジネスと人権に関する指導原則などの国際行動規範を支持し、これらの原則に基づく取組みを実施してまいります。「国連ビジネスと人権に関する指導原則」等をふまえ設定した「日本調剤グループ人権方針」に基づき、人権尊重への取組みを推進すると共に、当社グループの事業活動が直接的、間接的に及ぼす人権上の影響を評価し、具体的な対応を進めております。また、認識されたサプライチェーン上の課題については、「日本調剤グループ調達基本方針・サプライヤー行動規範」に基づき、お取引先を始めとする関係先と協力して取組みを行ってまいります。
医薬品製造販売事業においては、世界情勢の動向、感染症や自然災害、調達先での事故の発生、ジェネリック医薬品業界の情勢等により、原材料及び商品の仕入の遅延・縮小、製品の製造及び供給が停止・縮小する可能性があります。また、一部の医薬品において、製造を外部委託する方式、あるいは製造販売元の医薬品を自社販売する方式にて市場への製品供給を行っておりますが、製造委託先の事情による契約終了、契約内容変更等により製品供給が行われなくなる可能性があります。これらの場合、当社グループの業績等へ影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、重要な原薬ソースの二重化や適正在庫の確保といった安定供給に向けた取組みを実施しております。
当社グループでは、主として借入金により資金を調達し、新規出店やM&A、設備投資などを行っております。今後の経済状況により、新規借入金利が大きく上昇し、支払利息が増加する場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、世界情勢や気候変動等により、原材料市況が大きく変化し、エネルギー関連費用、原材料及び資材価格の上昇が生じた場合には、ジェネリック医薬品の製造原価が増加する等、事業計画や業績等が影響を受ける可能性があります。
(11) 気候変動に関するリスク
当社グループでは、気候変動の関連課題を事業経営上の重要課題であると認識しており、将来的な気候変動を見据えた脱炭素社会への移行リスクとして、炭素税・排出権取引制度等の導入による事業運営コストの増加、原材料における規制や需給バランスの変化に伴う価格高騰、輸送コストの高騰、電力価格の高騰を認識しております。また、異常気象災害の激甚化による拠点の被災や物流網の寸断、感染症の増加など、将来的な気候変動が業績等に重大な影響を与える可能性のある物理リスクも想定されます。
こうした状況をふまえ、当社グループでは、代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会を設置し、気候変動問題に対する取組みを協議しております。気候変動が事業経営に及ぼす影響を認識するにあたり、IPCCやIEAが発表している長期的な仮説やシナリオを参照し、物理的及び副次的なリスクと機会の特定、その影響度合いと対応策の評価・考察を行っております。そして、『日本調剤グループ環境方針』を定め、サプライチェーンの各段階において対策を検討し、取組みを開始しております。
(12) 大規模災害、感染症の拡大に関するリスク
当社グループでは、大規模な自然災害の発生、重篤な感染症の広域での流行などにより事業運営が影響を受ける可能性があります。例えば、新たな感染症の大規模な流行が発生した場合、患者さまによる医療機関受診回避や、医療機関による外来診療の抑制・処方日数の長期化・薬剤師の派遣紹介需要の減少等により、事業活動へ影響が発生することが想定されます。また、当社グループの事業活動は広範な地域で行っており、事業のサプライチェーンも含めると、自然災害及び感染症発生時の被害を完全に回避できるものではなく、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、事業拠点の分散、事業継続計画の策定などの対策を講じております。例えば、医薬品製造販売事業においては生産拠点を茨城県つくば市と徳島県徳島市に分散し、物流拠点も全国3拠点に分散するなど、災害等が発生した場合に備えた対応を行っております。また、オンライン服薬指導や電子お薬手帳の活用など医療DXへの積極的な取組みを通じて、利便性と医療の品質を追求し、患者さまに安心してご利用いただける体制整備を行っております。
(13) 技術革新によるビジネスモデルの変革に関するリスク
近年の新たな技術を用いたサービスや商品の新規展開、例えば、新たなオンラインサービスの利用拡大、AI活用の普及といった継続的な変化に対し、当社グループの対応が劣後する場合には、業界での競争力の低下につながり、業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、このような環境変化を機会としてとらえ、新たな技術を活用して事業の拡大に向けた取組みを図っております。
(14) 訴訟等に関するリスク、並びに特許及び知的財産に関するリスク
医薬品製造販売事業では、知的財産権及び不正競争防止法に十分に留意した製品開発を行っておりますが、ジェネリック医薬品の商品としての特性上、医薬品メーカーから特許訴訟を提起される場合があります。この他にも、当社グループの事業に関連して、訴訟等の当事者となる可能性があります。これらの訴訟等において、当社グループに不利な判断がなされた場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において判断したものであります。
当連結会計年度(2024年4月~2025年3月)においては、売上高360,512百万円(前年同期比5.9%増)、営業利益6,239百万円(同31.8%減)、経常利益6,915百万円(同26.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,391百万円(同45.5%減)となりました。
セグメントごとの経営成績の概要は次のとおりです。
・調剤薬局事業
売上高は321,951百万円(前年同期比6.3%増)、営業利益13,446百万円(同11.5%減)となりました。
・医薬品製造販売事業
売上高は40,156百万円(前年同期比0.7%減)、営業損失630百万円(前年同期は250百万円の利益)となりました。
・医療従事者派遣・紹介事業
売上高は11,365百万円(前年同期比13.8%増)、営業利益は937百万円(同0.0%増)となりました。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローが8,824百万円、投資活動によるキャッシュ・フローが△9,921百万円、財務活動によるキャッシュ・フローが2,526百万円となりました。この結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ1,429百万円増加し、27,463百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
主な収入項目は、減価償却費7,659百万円、仕入債務の増加564百万円、税金等調整前当期純利益2,850百万円であります。一方、主な支出項目は、法人税等の支払額3,480百万円、棚卸資産の増加額3,103百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
主な支出項目は、調剤薬局事業における新規出店及び医薬品製造販売事業における設備投資を主とした有形固定資産の取得による支出6,376百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
主な収入項目は、長期借入れによる収入9,450百万円であります。一方、主な支出項目は、長期借入金の返済による支出10,981百万円であります。有利子負債の削減が進み、財務体質は着実に強化されてきています。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注) 1.金額は製造原価によっております。
2.日本ジェネリック株式会社及び長生堂製薬株式会社の工場における生産実績を示しております。
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注) 1.一般薬等部門とは、一般大衆薬、衛生用品、健康食品、雑貨等の販売部門であります。
2.医薬品製造販売事業の仕入実績は、製造委託品等の仕入実績を示しております。
3.医療従事者派遣・紹介事業については、仕入はありません。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引は相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
直近2連結会計年度の調剤薬局事業の処方箋枚数は以下のとおりであります。
(財政状態)
当連結会計年度末における資産合計は197,105百万円となり、前連結会計年度末の195,087百万円に対し2,018百万円、1.0%増加いたしました。また、当連結会計年度末の負債合計は138,008百万円となり、前連結会計年度末の136,735百万円に対し1,273百万円、0.9%増加いたしました。
流動資産は、前連結会計年度末91,031百万円に対し5,931百万円、6.5%増加し、96,962百万円となりました。主に、原材料及び貯蔵品の増加3,004百万円によるものです。
固定資産は、前連結会計年度末104,056百万円に対し3,912百万円、3.8%減少し、100,143百万円となりました。うち、有形固定資産は、前連結会計年度末60,428百万円に対し2,647百万円、4.4%減少し、57,781百万円となりました。無形固定資産は前連結会計年度末21,426百万円に対し1,025百万円、4.8%増加し、22,452百万円となりました。投資その他の資産は、前連結会計年度末22,200百万円に対し2,291百万円、10.3%減少し、19,908百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末84,858百万円に対し171百万円、0.2%減少し、84,687百万円となりました。短期借入金の増加5,050百万円が主な要因であります。
固定負債は、前連結会計年度末51,876百万円に対し1,445百万円、2.8%増加し、53,321百万円となりました。資産除去債務の増加866百万円が主な要因であります。
純資産合計は、前連結会計年度末58,351百万円に対し745百万円、1.3%増加し、59,097百万円となりました。グループ各社が売上高の拡大と収益性の改善の取組みを強力に進めたことなどにより利益剰余金が前連結会計年度末比641百万円増加したことが主な要因であります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の29.9%から30.0%となりました。
(経営成績)
当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)における我が国経済は、一部に足踏みが残るものの景気は緩やかな回復が見られました。先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、引き続き緩やかな回復が続くことが期待されておりますが、海外景気の下振れや物価上昇等の影響に十分注意すべき状況が続いております。このような経済情勢のもと、当社グループでは、「すべての人の『生きる』に向き合う」を使命とするヘルスケアグループとして、良質な医療サービス及び医薬品の提供に取り組んでおります。
当連結会計年度の業績は、調剤薬局事業における処方箋枚数の増加及びグループ全社を挙げたコスト抑制の取り組み等が寄与した一方、同事業の一部店舗において減損損失を計上したこと、及び医薬品製造販売事業において長生堂製薬株式会社の川内工場における製造管理上の不備による影響が継続したこと等により、売上高360,512百万円(前年同期比5.9%増)、営業利益6,239百万円(同31.8%減)、経常利益6,915百万円(同26.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,391百万円(同45.5%減)となりました。
セグメント別の経営成績分析は以下のとおりです。
・調剤薬局事業
当連結会計年度の業績は、前期及び当期の出店効果に加えて12月中旬以降のインフルエンザ等の急性疾患の前年を上回る拡大等が寄与したことで、処方箋枚数は前年同期比で4.1%増加いたしました。その一方で、2024年4月に給与水準の引き上げを行ったこと等により売上原価及び販売管理費が増加しております。この結果、売上高は321,951百万円(前年同期比6.3%増)、営業利益が13,446百万円(同11.5%減)と前年同期比で増収減益となりました。
3月末時点での総店舗数は、同期間に38店舗の新規出店、21店舗の閉店を行った結果、計753店舗となりました。なお、ジェネリック医薬品の数量ベース使用割合は、2024年10月より長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)の選定療養制度が開始されたこと等により、2024年9月比で3.2pt上昇し、平均で93.3%(供給停止品目などを算出対象から除外して計算)に達しております。また、在宅医療実施店舗の割合は94.9%(年間24件以上実施の店舗割合)と順調に推移しております。
また、患者さまの医療アクセス及び利便性の向上に資する取り組みとして、積極的にマイナンバーカードの健康保険証利用の普及・促進に取り組んでまいりました。2025年3月時点のマイナンバーカードの健康保険証利用率は、日本調剤の薬局での平均は44.2%となっております。
さらに、日本調剤の価格均一OTC医薬品ブランド「5COINS PHARMA」につきましては、引き続き商品ラインアップを拡充するとともに、2025年3月より総合オンラインストア「Amazon」での販売を開始するなど、当社グループの薬局以外にも販路を拡大しており、すべての人のセルフメディケーション推進に貢献するための取り組みを拡大させております。
・医薬品製造販売事業
当連結会計年度の売上高は40,156百万円(前年同期比0.7%減)、営業損失は630百万円(前年同期は250百万円の利益)となりました。
売上高及び営業利益につきましては、既存販売品の伸長及び2024年12月発売の新規薬価収載品が寄与した一方、2024年4月の薬価改定に伴う製品価格の下落及び長生堂製薬株式会社川内工場における製造管理上の不備の影響が継続したこと等により減収減益となりました。同社においては、2025年3月27日、徳島県より「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に基づく行政処分を受け、同年4月23日に業務改善命令に対する業務改善計画書を提出いたしました。また、同社は、同社川内工場に対する医薬品製造業の業務停止命令による業務停止期間を満了し、同年4月30日より医薬品の製造業務を再開しております。当社グループは、この度の行政処分を重く受け止めており、長生堂製薬株式会社による業務改善計画の着実な遂行に加えて、再発防止及び品質管理の向上にグループ一丸となって取り組んでまいります。
なお、当連結会計年度末での販売品目数は、ポートフォリオの見直しを進めた結果、434品目(一般用医薬品1品目を含む)となりました。自社製造品比率につきましては50.2%と、2020年3月期以降順調に拡大しております。安定供給に向けては、限定出荷を行っていた製品について、供給体制が整ったものから順次通常出荷に戻しており、2025年3月末時点での限定出荷数は115品目となっております。引き続き、ジェネリック医薬品の品質管理と安定供給を最優先としつつ、継続的な研究開発投資による自社開発品の拡大及び生産性の向上に取り組んでまいります。
・医療従事者派遣・紹介事業
当連結会計年度の売上高は11,365百万円(前年同期比13.8%増)、営業利益は937百万円(同0.0%増)となりました。売上高及び営業利益につきましては、主力である薬剤師の派遣・紹介事業の業績が引き続き拡大したことにより前年同期比で増収増益となりました。産業医事業を含むヘルスケア事業においても需要が拡大しており、国内企業の健康経営への貢献をさらに推し進めてまいります。
当社グループの調剤薬局事業、医薬品製造販売事業においては、3[事業等のリスク]に記載のとおり、薬価改定・調剤報酬改定の動向が経営成績に重要な影響を与える要因となっております。国の医療費増加抑制方針を背景に、今後も実質マイナス傾向の改定が行われることが予想されるため、国の方針及び事業環境変化を注視しつつ事業を進めてまいります。
政府によるジェネリック医薬品使用促進政策も経営成績に重要な影響を与える要因となっております。医療費の増加抑制のための具体策として政府によるジェネリック医薬品の使用促進策が強力に進められており、調剤薬局事業、医薬品製造販売事業の事業計画(損益計画・投資計画)は、政府の取組みが引き続き積極的に推進されることを前提として策定・実行されており、政府のジェネリック医薬品使用促進に関する方針等に変更が生じた場合には、当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があります。
医薬品製造販売事業においては、製造販売を行う医薬品の品質や安定供給に関するリスクが経営成績に重要な影響を与える要因となっております。長生堂製薬株式会社においては、2021年に発生した品質問題を受け、業務改善計画に則った改善施策を実施しておりましたが、2024年5月、同社川内工場における製造上の不備が判明したことにより、当社グループの業績に影響を与えております。同社は2025年4月、徳島県による業務改善命令に対する業務改善計画書を提出しており、本計画の着実な遂行に加えて、再発防止及び品質管理の向上にグループ一丸となって取り組んでおります。
当社グループの資金需要のうち主なものは、各事業セグメントにおける仕入資金、営業費用等の運転資金、また調剤薬局事業における新規出店資金、医薬品製造販売事業における製造設備導入・更新等の設備資金等であります。調剤薬局事業においては、業容拡大の有効な手段の一つとしてM&Aにも積極的に取り組んでおり、良質なM&A案件が結実した場合には買収資金が必要となります。加えて調剤薬局事業では、策定したDX戦略に基づきDX投資を推し進めていく計画であり、システム関連投資等の資金が必要となります。これらの資金需要に対して、営業活動によるキャッシュ・フローにおける当期純利益と減価償却費及びのれん償却費の合計額は、安定した水準を維持しており、業容拡大に向けた資金需要を賄うとともに、長期借入金の返済による有利子負債の削減、財務体質の改善・強化を実現するための原資確保を可能としております。
当社グループは、事業運営上必要な流動性を安定的に確保するための源泉として、自己資金及び金融機関からの借入によることを基本方針とし、借り換え需要も含めて円滑に調達ができている状況にあります。現状では金利動向を踏まえ主として5年程度の固定金利での調達となっております。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、資産合計の13.9%を占める27,463百万円となっております。当該残高に加え、未使用の借入枠の状況等を勘案し現状の事業活動維持の観点から十分な財源が確保された状態にあるものと捉えております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
医薬品製造販売事業において連結子会社の日本ジェネリック株式会社及び長生堂製薬株式会社は、特許切れが見込まれる医療用医薬品に対応するジェネリック医薬品の自社製品の製造販売に向け、自社の研究所を中心に研究開発を行っており、当連結会計年度に支出した金額は