第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、お客様一人ひとりの尊厳に共感したサービスを提供し、全従業員とその家族の幸せを追求することを企業理念として掲げ、事業を展開しております。この企業理念のもと、高齢化社会が進むに伴い拡大が予想される介護業界において東京23区を中心とした地域密着型企業としてブランドを確立するとともに、ご高齢のお客様とご家族が必要とする介護保険外のサービスを拡充し、株主、地域社会、ご利用者及び従業員等すべてのステークホルダーにとって価値ある企業となることを目指しております。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは当面の間、経常利益率の向上を目指してまいります。さらに中長期的には収益性と資本効率をより高めて総合的な企業価値を増大させていく方針であります。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、前述の「(1)会社の経営の基本方針」を具現化するために、以下を中長期的な経営戦略として位置づけております。

①在宅介護事業における首都圏ドミナント戦略の推進

東京23区を中心に在宅介護サービス事業所を開設し、ドミナントエリアの形成を推進することにより、厚生労働省が推し進める地域包括ケアシステムの中で、地域の医療機関との連携をはじめとした地域のニーズに合った「通い」及び「訪問」等を担う体制を構築してまいります。一つの地域で多様なサービスの提供が実現できるよう、サービスの拡充と事業内容の深化に取り組んでまいります。

②介護保険外事業の拡大

エンゼルケアサービスの全国展開と、終活関連事業等の拡大やご高齢のお客様とご家族が必要とする衣食住に関するサービス開発等既存事業の顧客基盤を活かした新規事業開発により、介護保険外事業の拡大を推進してまいります。

③経営基盤の強化

長期的な成長に向けた強い組織を作り上げるため、質の高いサービスを提供できる体制を整備してまいります。

 

(4) 経営環境及び優先的に対処すべき課題

①国内事業

当社グループが所属する国内の介護サービス産業は、高齢化の進行に伴い今後も拡大傾向が続くと予想されます。このような経営環境に対応するために、当社グループでは首都圏を中心としたドミナント戦略により、各在宅介護サービス間の連携を高め、地域のニーズに合った介護サービスの拡充と拠点の拡大を進めてまいります。東京23区は介護報酬において全国で最も高い地域区分単価が適用されていることに加えて、在宅介護サービスのニーズが高いこと、人口密度が高く移動効率性が良いことからも、当社グループでは引き続き東京23区を中心に事業所の開設を進めてまいります。しかしながら、新規出店においては、3年ごとに改正される介護保険法の動向と、地域の顧客データや人口動態、テナント賃料、建設コストなどを慎重に見極めて進めてまいります。

また、創業期より最後の介護と位置付け、お亡くなりになった方への湯灌やメイクを行うエンゼルケアサービスにおいても、事業規模の拡大を図り、全国展開を目指し拠点数の拡大を進めてまいります。

既存サービスの品質向上によるサービスの価値向上や拠点の拡大と、これまで培ってきた高齢者に関する分野における新規事業や介護保険外サービスの開発に努めてまいります。

 

②人材の採用と定着

国内のあらゆる産業において従事する人材の採用が年々難しくなっており、当社グループにおいても、成長拡大のための人員の確保や介護サービスを提供するために必要な有資格者の確保と定着は、引き続き大きな経営課題となっております。当社グループでは、採用エリアの拡大等の採用力の強化に加えて、給与水準の引き上げ、優秀な従業員の育成・定着のために職能や経験に応じたキャリアパスや、各種手当を拡充するほか、労働市場の変化にも適切に順応を図っております。また、介護サービスにおいては特定処遇改善加算の取得を推進し、事業所従業員の手当を拡充することで、経験を持った優れた人材が引き続き当社グループで活躍できる環境を整備しております。

今後、さらに高齢化が進行する中で、当社グループの「介護からエンゼルケアまで」の一貫したサービスを提供するため、事業の成長拡大を引き続き推し進めてまいります。

株主や投資家の皆様との対話や、IR・広報活動の充実、内部統制の整備を通じて、社会からさらに厚い信頼を得ることができるよう努めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(ガバナンス)

当社グループでは、代表取締役を委員長とする「リスク・コンプライアンス対策委員会」において、社外取締役を含む役員が、サステナビリティに関する基本方針や収益機会、リスクなどの基本的事項について審議し、施策について検討しております。検討の結果は随時、取締役会に報告しております。取締役会は、経営上のサステナビリティ関連の機会及びリスクを含む重要事項の決定と、業務執行の監督について責任を負い、進捗状況の確認を行っております。

 

(戦略)

(人材の育成及び社内環境整備)

当社グループでは、「私たちは、全従業員とその家族の幸せを追求します。」という企業理念のもと、従業員一人ひとりがやりがいを持っていきいきと活躍し、さまざまなライフイベントを迎えても働き続けられるよう環境を整えることを基本方針としております。

また、当社グループの持続的な成長拡大のため、人員の確保や、介護サービスを提供するために必要な有資格者の確保と定着は、重要な経営課題であると認識しております。人員の確保と定着に向けた取り組みとして、採用エリアの拡大等の採用力の強化に加えて、給与水準の引き上げ、従業員の育成・定着のために職能や経験に応じたキャリアパスや、各種手当の拡充、サービス品質向上のための研修の拡大、将来を担う管理職の育成を実施しております。特に、女性活躍推進の取り組みとして、職能研修や管理職研修を通じて女性従業員の事業所所長の登用を推進しており、将来の管理職の育成を実施しております。

その他、従業員が長く活躍できるよう社内制度を設けております。

・女性従業員が出産や子育てを理由に離職をせずにすむよう「産前産後休業」と「育児休業」の拡充

育児休業延長の
終了時期

法定基準 2歳まで

当社規程 2歳の年度末

担当業務の転換

短時間勤務の復職者に対し、事務職等の配置転換が可能

 

・従業員の働く意欲を尊重し、正社員に対し、希望に応じて70歳まで(パートタイマーの場合は75歳まで)の継続雇用を実施

・ライフイベントを機に一度は退職した方が、再度入社しやすい再雇用制度「おかえりなさい制度」

・資格取得にかかる費用の補助や取得後の奨励金の贈呈等、スキルアップに取り組む従業員へ経済的な支援、資格取得後の職種変更等多種多様なキャリア形成の支援

これらの施策により、女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)に基づく取り組みが優良であるとして、厚生労働大臣より「えるぼし」の認定を受けているほか、2021年6月には「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受け「くるみんマーク」を取得しました。

 

なお、人材の確保や育成が想定通りに進まない場合、事業計画の進捗に影響を及ぼす可能性や、介護保険法に基づく介護サービスを行う事業所においては、各種基準を満たせなくなった場合には、事業の停止や介護報酬などの減額等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。リスクの詳細と対策については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク (2)法的規制について 及び (5)人材の確保について」をご参照ください。

 

(気候変動)

気候変動は、当社グループの事業活動にさまざまな「機会」と「リスク」をもたらす可能性があり、企業としてこれらに対応していくことが重要であると考えております。例えば、利用者の環境意識に則した製品を選択し提供するサービスは、当社グループの企業価値向上につながる機会である一方、風水害による施設や設備等への損害の増加や、炭素税の導入による費用の増加等のリスクが懸念されます。なお、自然災害に関するリスクの詳細と対策については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク (14)自然災害について」をご参照ください。

現在、当社グループでは、全社の業務効率化や経費削減に取組む中で、環境に配慮した選択を行っており、CO2排出量の軽減に努めております。

・既存施設の照明のLED化を進め、施設内の照度を改善するとともに電気使用量を軽減

・業務効率改善のため電子カルテを導入し、紙使用量を軽減

・介護施設の新設やリノベーションにおいて、壁材、床材にリサイクル品や廃番品を使用する等、環境に配慮した施設作り

今後、当社グループが成長・拡大していくために、事業活動の継続に影響を与えると想定される気候変動による機会とリスクについて適宜検討し、特に影響の大きい機会の獲得及びリスクの軽減に向けた対応策を実施し、利益創出と環境課題の解決との両立に努めてまいります。

 

(リスク管理)

当社グループでは、事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し対応するため、全社的な視点でリスクマネジメントを統括・推進する「リスク・コンプライアンス対策委員会」を設置しております。代表取締役を委員長として、リスクの対応方針や、課題について、優先度を選別、評価し、迅速な意思決定を図っております。重要なリスクは、取締役会へ報告しております。取締役会は、経営上のサステナビリティ関連の機会及びリスクを含む重要事項の決定と、業務執行の監督について責任を負い、進捗状況の確認を行っております。

 

(指標及び目標)

当社グループでは、2026年3月期までの男性育休取得率について、2024年3月期実績を維持することを目標として、堅実に推進してまいります。

(当社実績  2023年3月期:66.7%、 2024年3月期:40.0%、 2025年3月期:73.3% )

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。必ずしも事業展開上のリスクに該当しない事項についても、投資者の投資判断において重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。

当社はこれらのリスクの発生の可能性を認識した上で、その発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。また、以下の記載は当社株式への投資リスクをすべて網羅するものではありませんので、この点にご留意ください。なお、以下の事項は、特に断りがない限り、当連結会計年度末現在の事項であり、将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 介護保険制度について

当社グループの在宅介護サービス事業セグメントに属する各サービスは、主に介護保険法の適用を受けるサービスの提供を行うため、介護保険制度の改正及び介護報酬の改定の影響を強く受けることとなります。介護保険制度は、3年ごとに制度の見直しと介護報酬の改定が行われることとされておりますが、後期高齢者の増加により当該制度の財政基盤は悪化しつつあり、今後、介護報酬の引き下げ、介護サービス料金の自己負担割合の引き上げ等、介護給付費の伸びを抑えるための制度改正や報酬改定が行われた場合、売上単価の減少等の採算性に問題が生じ、当社グループの主力である在宅介護サービス事業の収益に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、当社グループはシニア向け総合サービス事業をもう一つの柱として展開し、エンゼルケアサービスのほかにも介護保険外サービスの新規事業開拓を積極的に進めております。

 

(2) 法的規制について

介護保険法に基づく介護サービスを行うには、事業所毎に指定事業者としての指定を都道府県知事(地域密着型サービスについては市区町村長)から受ける必要があります。指定を受けるには、「指定居宅サービス等の事業の人員、設置及び運営に関する基準」(介護保険法に基づく厚生労働省令)を満たしていなければなりませんが、従業員の退職等により当該基準を満たせなくなった場合には、事業の停止や介護報酬の減額等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、当社グループは事業所の運営体制を常時指導・監督するとともに、人材教育担当とも連携し、各種マニュアルの整備及び研修を充実させることで管理体制の強化や教育の徹底をしております。

ドミナント展開している事業所間においては相互サポートができる体制を整備するなどして適切な事業運営に努めております。

また、その他の指定取消事由として、介護報酬の不正請求、帳簿書類等の虚偽報告等が定められております。現時点では当社グループでは指定の取消事由に該当する事実は発生しておりませんが、遵守できなかった場合に指定の取消や停止処分を受ける可能性があります。さらに、事業所の指定取消処分がなされ、その理由となった不正行為に対して当社グループの組織的関与(連座制)が認められた場合は、同一のサービス類型の事業所の新規指定及び6年毎の更新を受けることができなくなり、計画している収益を達成できない可能性があります。

当該リスクに対応するため、当社グループは介護保険の請求業務の専門部署を配置し、不正請求、帳簿書類等の虚偽報告等が起こらないように複数チェックの管理体制をとっております。

 

(3) 競合について

2000年4月の介護保険法施行を契機に介護保険制度に基づく地方自治体単位での介護サービスが開始され、医療法人等の公的非営利主体及び異業種を含めたさまざまな企業が参入しました。高齢化社会の進展に伴い要介護認定者数の増加基調が予想されるとともに、介護保険法の施行から20年以上が経過し、社会全般における介護保険制度に対する認識が着実に深まりつつあります。このため、介護関連ビジネスの市場は今後の拡大が予測され、既存事業者の活動の活発化に加え、新規参入が再び激しくなってきております。したがって、今後の競争の激化に伴い当社グループの事業所において、利用者の確保が困難になった場合等には、当社グループの在宅介護サービス事業の業績が影響を受ける可能性があります。

 当該リスクに対応するために一部デイサービス事業所では、デイサービスへ通う利用者が、事業所で過ごす時間の中で、「やらされ感」を払拭し、「やってみたかった」「やりたい」という思いを実現することができるよう、プロの講師による各種の教室活動を開催しております。具体的には、陶芸教室、編み物教室、絵手紙教室、書道教室、水彩画教室、メディカルアロマ教室、フラワーアレンジメント教室、カルトナージュ、フラワーセラピー教室、手作りライト教室、ガラス玉工芸教室、水性ネイル教室、折り紙教室、ヨーガ教室、フラダンス教室、音楽療法の開催実績があります。その他に自社配食センターによる食事の質の向上等に努めております。

シニア向け総合サービス事業においては、エンゼルケアサービスの認知度が高まることにより、他の事業者の参入により、競争が激化する可能性があります。さらに葬儀形態の多様化により、エンゼルケアサービスの利用が減少した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、介護施設の紹介サービスの開始やエンゼルケアサービスの提供エリアの拡大等、新たな市場開拓を進めております。

 

 

(4) 新規出店について

当社グループでは開設にあたり綿密なマーケットリサーチを行い、事業所等の新規開設を進めておりますが、地価の高騰等により好立地に物件を確保できない場合や、事業環境の変化及び経済的要因により開設事業計画に大幅な乖離が生じた場合には、当社グループの業績予想に影響を与える可能性があります。

当該リスクに対応するため、当社グループでは、経済状況や各地域の人口動態等の市場分析を適時適切に行い、変化に対して迅速に対応できる店舗開発体制を整えております。

 

(5) 人材の確保について

当社グループが事業を拡大していくためには、人材の確保が必要となります。とりわけ介護事業においては、サービス提供にあたり介護支援専門員、看護師、介護福祉士など専門資格取得者の確保が必須であります。

景気の動向次第では、人材確保について同業他社だけでなく異業種を含めた競争となり、万一、十分な人材の確保が困難な場合には、「(2)法的規制について」のとおり、現在提供しているサービスを継続することができなくなる可能性があり、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、人件費が高騰した際にも当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当該リスクに対応するため、給与水準の引き上げを継続的に実施するほか、従業員が働きやすくいきいきと活躍できる職場環境の整備、人材育成や人材登用に注力し、当社グループ全体の採用力の向上を進めております。

 

(6) 高齢者介護における安全管理及び健康管理について

当社グループが提供する介護サービスの利用者は、要支援又は要介護認定を受けている高齢者であり、転倒事故、食物誤嚥事故及び感染症の集団発生等、高齢者の特性に起因する事故等が発生する可能性があります。万一、事故や感染症等が発生した場合、当社グループの信用が低下するとともに訴訟等で損害賠償請求を受ける恐れがあり、過失責任が問われた場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、当社グループでは、サービス提供中の安全衛生管理には細心の注意を払い、研修・マニュアルの整備等により従業員の教育指導を徹底しております。

 

(7) 情報管理について

当社グループが提供するサービスは、業務上、利用者あるいはその家族の重要な個人情報を取扱います。万一、システム等から個人情報が外部に漏洩する等のトラブルが発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償請求の発生等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、当社グループは、個人情報をはじめとした情報の適正な取得及び厳重な管理のために、各種規程や研修等を通じて、情報漏洩の防止に取り組んでおります。

 

(8) 地域との関係について

当社グループの事業の性格上、地域のお客様、自治体はじめ関係各機関等との信頼関係が何よりも重要であると考えております。このため、良質かつ安定的なサービスの提供が必要であり、業績が改善されない事業所があった場合でも、収益性の観点だけで直ちに撤退することが困難な場合は、当社グループの財務状況に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、エリア毎に業績を管理しておりますので、業績不振事業所が撤退困難となった場合でも、同一エリア内の他事業所の業績を向上させることにより、当該エリア全体の業績が悪化しないように対応できる体制となっております。

 

(9) 長期賃貸借契約について

介護事業における事業所の開設にあたっては、土地及び建物等の設備投資が必要であることから、投資リスクが生じます。当該リスクを抑制するために、各事業所の展開は賃貸を基本とした設備投資戦略を採用しております。このため、投資リスクは抑制されるものの、一定期間は撤退の制約が課せられ、これに反した場合は中途解約による違約金などの支払が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当該リスクに対応するため、長期間にわたり撤退の制約がかかる物件は極力避けるとともに、一定期間の制約が避けられない場合は、当該期間を極力短縮して契約するようにしております。

 

 

(10) エンゼルケアサービスの季節変動について

エンゼルケアサービスは、葬儀需要により業績が変動します。葬儀需要は月間の平均件数に対し、夏場が少なく、冬場が多くなる傾向があり、それに伴い当社グループの業績も冬季に偏重する可能性があります。参考として下記に月別推移を記載します。

                                        売上高単位:百万円

 

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

当年度売上高

215

204

193

201

221

217

210

219

252

287

246

263

前年度売上高

182

177

171

175

193

195

199

203

227

239

225

235

当年度件数

4,527

4,385

4,128

4,313

4,690

4,555

4,520

4,636

5,374

6,025

5,056

5,407

前年度件数

3,784

3,764

3,643

3,663

4,105

4,130

4,233

4,343

4,859

5,059

4,719

4,966

 

 

(11) 減損会計の適用について

当社グループの保有する建物等について、今後、収益性が著しく低下した場合には、減損損失の計上が必要となり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対応するため、事業所開設地域を選定する際には、綿密なマーケットリサーチを行い、資産収益性の高い立地条件を選定し、減損損失の発生を未然に防ぐようにしております。

 

(12) 風評等の影響について

当社グループの事業においては、お客様をはじめ関係者の信用、評判が大きな影響力を持つと認識しております。何らかの理由により当社グループの評判が損なわれた場合または当社グループに対する好ましくない風評が立った場合には、当社グループの業績及び人材採用等に影響を与える可能性があります。

当該リスクに対応するため、「企業理念」、「行動指針」、及びそれに基づく日々の行動目標を記した「ケアサービスフィロソフィ」を制定し、高い理念の下に細心の注意を払って事業を運営しております。

 

(13) 自然災害について

地震、台風、大雨、大雪等の自然災害が発生し、やむなく業務を停止せざるを得なくなる場合や、建物や設備が損傷し、その修復に多大な費用が必要になった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。特に、当社の重要な事業拠点である首都圏において想定を上回る大規模な自然災害が発生した場合には、正常な事業運営が行われなくなる可能性があり、当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があるばかりでなく、事業の継続が困難になる可能性もあります。

当該リスクに対応するため、緊急時対応マニュアルを作成し周知徹底するほか、各事業所において定期的に防災訓練を実施しております。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用や所得環境の改善に伴う景気の緩やかな回復が見られた一方、中東情勢、ウクライナ情勢をはじめとした不安定な海外情勢を背景とした長引くエネルギー価格及び原材料価格の高止まりや為替動向の転換による影響懸念などから、依然として先行き不透明な状況が続いております。

介護業界におきましては、食材費や消耗品価格の高騰の影響に加えて、介護を必要とする高齢者に対し担い手が不足していることなどから人件費及び採用コストの上昇が続いており、特に介護人材の採用と定着は、引き続き介護事業者の大きな課題となっております。

 

このような状況の下、当社グループは「介護からエンゼルケアまで」の一貫したサービスを提供するための経営基盤の構築を図るとともに事業拡大に努めてまいりました。

当連結会計年度におきましては、コスト削減を継続するとともに、お客様満足向上に繋がる設備投資やサービス品質向上のための施策と、中長期的な成長の源泉となる従業員への利益の還元を両輪で進めてまいりました。お客様満足向上の施策として、老朽化した設備の修繕やサービス品質に繋がる設備や備品、日用品の入れ替えなどを実施しました。また、従業員の給与水準や賞与水準の引き上げ、労働環境の改善、マネジメント層の育成などを行ったほか、積極的な人材登用にも努めました。

当連結会計年度における国内既存事業所数につきましては、3事業所を開設、2事業所を閉鎖し、合計114事業所となりました。

なお、中国において事業を展開しておりました子会社「上海福原護理服務有限公司」の解散を決定し、清算に伴う費用を特別損失に計上しております。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は9,862百万円(前期比2.3%増)、営業利益は520百万円(前期比0.5%増)、経常利益は581百万円(前期比4.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は374百万円(前期比1.0%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

(在宅介護サービス事業)

当事業におきましては、従業員の労働環境の改善・適正化及び業務の効率化に伴う取り組みの一つとしてデイサービスの営業日の変更を実施いたしました。2024年9月末でデイサービスの日曜日の営業を終了したことにより、件数、売上ともに減少し、サービス別の売上では前期比1.2%減収となった一方、訪問入浴サービスでは前期比2.6%の増収となりました。

利益面におきましては、給与水準、賞与水準の引き上げに伴う人件費の増加、食材費及び消耗品等の価格上昇に伴う費用が増加したことにより減益となりました。

当連結会計年度の事業所の出退店状況につきましては、居宅介護支援事業所1事業所、訪問入浴事業所1事業所を開設、デイサービスセンター1事業所、訪問看護事業所1事業所を閉鎖しました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は6,867百万円(前期比1.1%減)、セグメント利益は437百万円(前期比16.3%減)となりました。

(シニア向け総合サービス事業)

当事業におきましては、エンゼルケアサービスにおいて、社内インストラクターによる人材育成や、マネジメント層の育成に注力したほか、引き続きサービス品質向上に取り組み、業績は好調に推移しました。

利益面におきましては、給与水準、賞与水準の引き上げに伴う人件費の増加、エネルギー及び消耗品等の価格上昇に伴う費用の増加があったものの、購買の見直し等に取り組み増益となりました。

当連結会計年度の事業所の出退店状況につきましては、全国へ拡大しているエンゼルケアサービスにおいて、島根県松江市に1事業所を開設しました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は2,994百万円(前期比11.1%増)、セグメント利益は773百万円(前期比21.4%増)となりました。

 

財政状態は、次のとおりであります。

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末より261百万円増加し、4,119百万円となりました。

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産の残高は、3,355百万円(前連結会計年度末3,076百万円)となり、279百万円増加しました。現金及び預金の増加320百万円、売掛金の減少42百万円が主な要因であります。

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産の残高は、763百万円(前連結会計年度末780百万円)となり、17百万円減少しました。工具、器具及び備品(純額)の増加12百万円に対し、リース資産(純額)の減少28百万円が主な要因であります。

 

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債の残高は、907百万円(前連結会計年度末924百万円)となり、17百万円減少しました。未払法人税等の増加84百万円、賞与引当金の増加24百万円に対し、未払金の減少146百万円が主な要因であります。

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債の残高は、288百万円(前連結会計年度末290百万円)となり、1百万円減少しました。退職給付に係る負債28百万円の増加に対し、リース債務が30百万円減少したことが主な要因であります。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は、2,923百万円(前連結会計年度末2,642百万円)となり、280百万円増加しました。親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加374百万円、配当金の支払いによる減少60百万円が主な要因であります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して320百万円増加し、1,843百万円(前連結会計年度末比21.1%増)となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、得られた資金は、553百万円(前年同期は546百万円の獲得)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益552百万円、減価償却費146百万円、法人税等の支払121百万円によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、使用した資金は、143百万円(前年同期は102百万円の使用)となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出95百万円、無形固定資産の取得による支出41百万円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、使用した資金は、91百万円(前年同期は119百万円の使用)となりました。これは、主にリース債務の返済による支出31百万円、配当金の支払60百万円によるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

該当事項はありません。

 

b. 受注実績

該当事項はありません。

 

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

在宅介護サービス事業(千円)

6,867,303

△1.1

シニア向け総合サービス事業(千円)

2,994,894

+11.1

合計(千円)

9,862,197

+2.3

 

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

東京都国民健康保険団体連合会

5,587,526

58.0

5,486,037

55.6

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(経営成績)

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、以下のとおりとなりました。

売上高は、9,862百万円と前連結会計年度から224百万円(2.3%)増加いたしました。これは、在宅介護サービス事業の売上、件数ともにコロナ前の水準に回復したことにより73百万円(1.1%)の減少、シニア向け総合サービス事業が主にエンゼルケアサービスの増収により298百万円(11.1%)の増加となったことによるものです。

利益面については、従業員の給与水準の引き上げ等による人件費の上昇を、業務改善や経費の見直し等のコストコントロールにより吸収し、営業利益は520百万円と前連結会計年度から2百万円(0.5%)増加いたしました。また、経常利益は営業利益の増加に伴い、581百万円と前連結会計年度から24百万円(4.4%)増加いたしました。親会社株主に帰属する当期純利益は、374百万円と前連結会計年度より3百万円1.0%)減少いたしました。

(キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」 に記載のとおりであります。

なお、当社グループは、施設の出店に際しては賃借によることを原則としており、重要な資本的支出の予定はないため、当面の設備投資、成長分野への投資並びに株主還元等は自己資金で対応する予定であります。

 

② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載の通りであります。この連結財務諸表の作成にあたりまして、必要と思われる見積りは、一定の仮定を置き合理的な基準に基づいて実施しておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は、実際の結果と異なる可能性があります。なお、会計上の見積りを行う上での考え方については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。