当社が事業ドメインとするオンライン決済市場については今後も一定の伸長を見込んでおりますが、電子決済拡大による決済自体のコモディティ化が進むとみており、決済+αの具体的な形として、事業者側のDX化を支援するクラウドサービスの拡充に尽力しております。
文中における将来に関する事象は、当事業年度末(2024年6月30日)現在において当社が判断したものであり、現時点で予測できない下記以外の事象の発生により、当社の経営成績及び財政状態に影響を受ける可能性があります。
A.ペーパーレス化・キャッシュレス化における“スマホ決済”「支払秘書」・電子マネー対応
決済を銀行口座と連携するスマホで行う「支払秘書」は、新たに2024年2月のみずほ銀行との接続で、主要都市銀行との接続を完了し利便性が増しました。また、電力会社各社に加え、公金支払いでも提携銀行が多い地域を中心に「支払秘書」で支払える案件が増加しているほか、当社が提供するクラウドサービスである下記B項記載の「バスもり!」、「アルタイルトリプルスター」及び「ekaiin.com」とのシームレスな連携を中心とした展開を行うとともに、電子マネーを自社のサービスに組み込む流れが今後出てくると予測し、組み込み型電子マネーの提供準備を進めております。今後は交通事業者向けのクラウドサービスと連携させたサービスへ進化させてまいります。
B.交通事業者向けIT化プロジェクトを積極推進
2016年8月に開始したスマホ電子チケットアプリ「バスもり!」は、1回券、回数券、定期券、フリーパス、企画券など電子化券種を拡大し、バス・鉄道の取り扱い路線は646となりました。コロナ禍を契機として、非対面で購入できるスマホ定期やスマホ回数券の利用は拡大し続けております。また、2017年から開発してきたオールインワンの交通事業者向けクラウドサービス「アルタイルトリプルスター」は、乗物やイベントの在庫・時刻表管理、チケット予約・購入・発券・認証、そして売上情報の集計と精算処理に至るまでの一連の業務の自動化を実現できるトータルクラウドサービスで、全国各地のMaaS基盤および、交通系各社様のDX化支援の有効ツールとしてその利用が拡大しております。2024年6月には、関西の大手私鉄で利用できるサーバ型QR乗車券サービス”スルッとQRtto”が提供開始されました。また、利用が拡大している複数事業者共同利用MaaSにおいて、多大な労力を要する精算業務に関する十分な知識と経験を当社が持っていることは大きなアドバンテージです。
C.ウェルネットの“主力決済商材”「マルチペイメントサービス」「送金サービス」の現況
非対面決済「マルチペイメントサービス・送金サービス」は引き続き伸長するポテンシャルがあると見込んでおります。当社は、30年以上にわたり様々な事業者に決済サービスを採用いただいておりますが、今後も事業者・コンシューマ双方の利便性向上に資する決済機能拡充を目指します。当社は決済+αのサービス開発を推進しますが、決済基盤を持っている当社は大きなアドバンテージを持っております。
2022年9月にファミリーマートでスマホバーコード決済「stanp」が採用され、利用者はスマートフォンに表示されるバーコードを店頭レジで直接読み取るのみでリアルタイム支払いができるようになり利便性が向上、利用者が着実に増加しております。今後、ファミリーマート以外のコンビニでの採用に向け、積極的に営業活動を進めております。
D.地域貢献活動
当社のビジネスである「IT利活用・DX化」そのものが、環境に優しいビジネスモデルへの転換を支援するものであり、ビジネス拡充自体が地球環境保全に資するものと認識しております。
地域社会への貢献として、北海道の工業高等専門学校に通う経済面で苦労する学生向けに設立した“ウェルネット奨学金”により多くの学生を支援しております。2023年度までの累計で902名に対して約98百万円の奨学金を支給しており、経済的困窮による退学者0に直接的に貢献しております。本活動は今後も継続してまいります。
さらに、地元のスポーツ振興に寄与することを目的とし、北海道オール・オリンピアンズが推進する「スクラム札幌」構想へ参画、オリンピック出場が期待されるスピードスケートの山田将矢選手は2023年4月から当社社員として活動しており、2023年11月に北海道帯広市明治十勝オーバルで開催された「ISU World Cup Speed Skating 2023/2024 第1戦」の「男子1000m、1500m」において金メダルを獲得、日本人初の快挙を達成いたしました。また、2023年12月ノルウェー・スタバンゲルで開催された「ISU World Cup Speed Skating2023/2024 第3戦」の「男子1000m、1500m」において銅メダルを獲得した弟の山田和哉選手も2024年4月から当社の社員となり、兄弟揃ってのオリンピック出場及びメダル獲得に向けた活動を支援しております。今後は「ekaiin.com」をスポーツ選手の支援にも積極活用し、当社のITサービスによるスポーツ振興を促進してまいります。
また、2021年に竣工した札幌本社新社屋は、働く環境や従業員の健康に配慮したオフィス設計により、2022年9月に「WELL認証」最高ランク「プラチナ」を取得いたしました。「WELL認証」は2014年に米国で始まったビルやオフィスなどの空間を人間の健康の視点で評価・認証する先進的な取り組みであります。さらに、札幌本社は2023年8月に創意と工夫を凝らしたオフィスを表彰する制度である「第36回日経ニューオフィス賞」を受賞いたしました。これらの取り組みは、人的資本である従業員への投資であり、ひいては生産性向上、働き方改革など企業価値向上につながると考えております。
E.収益予想と株主還元
2025年6月期の業績予想につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響による落ち込みからの回復傾向を踏まえ、主に高付加価値提供サービスの業績が好調であることから、業績見通しは2024年6月期と比べて増加となる見込みであり、次のとおり予想しております。
※中期経営計画から売上高のみを今回修正しておりますが、その理由は前記のとおりです。
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売上高 |
経常利益 |
当期純利益 |
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12,000百万円 |
1,500百万円 |
1,000百万円 |
2024年6月期の期末配当につきましては、株主様への利益配分の基本方針(配当性向50%以上)に基づき、22.15円といたしました。また、2025年6月期の期末配当につきましては26.46円を予想しております。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末(2024年6月30日)現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社は、サステナビリティに関するリスク及び機会の監視及び管理、統制等については、会社の重要事項であると捉え、取締役会において検討することとしております。サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視・管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続きとしては、リスクが生じた場合には主管部門又は認識した部門が取締役会に報告し、取締役会での確認・指示に基づき対応を図ることで統制を取って対応しております。
(2)戦略
当社は2023年1月に以下を骨子とする「サステナビリティ基本方針」を定め、活動しております。
①社会・環境問題の解決への貢献
②社会からの信頼の確立
③Well-beingの尊重
④地域社会への貢献
当社におけるサステナビリティへの取り組みについては、まず、経営理念「安全・安心・快適・便利を最大効率で実現する。」に基づき、様々な仕組みをITで実現することを目指して、請求・決済の電子化等の事業推進を通じてペーパーレス社会の推進に資する企業活動そのものが重要なものであります。そのため、当社の経営方針・経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組みは、以下のとおりであります。
(重要な影響を与えるリスク)
コンビニインフラへの依存、システムトラブル及び事務リスク、競合他社との競争激化、新サービスへの対応、新規事業への投資、知的財産権、個人情報の管理などが経営成績に重要な影響を与える要因と認識しております。
(対処するための取組み)
キャッシュレス社会に向けた大きな時代の変革期が予測されているなか、当社はこの変革期を大きなビジネスチャンスに変えるべく、積極的な経営姿勢に転換しております。かつてコンビニ決済など斬新なアイディアで現在の地歩を確立したように、強い思いをもってチャレンジを続けてまいります。当社の目指すサービスプラットホームは「ストック型」であり、一旦収益ラインを突破すると一気に拡大する可能性を秘めております。重要なことは、ビジネスボリューム拡大に伴う人件費増加を避けることで、そのために運用など後方処理自動化に相当額の投資を継続的に行っております。
当社は、地域社会への貢献として、何らの義務を課さない奨学金の設立と運営によって、高等専門学校苦学生の就学支援を継続している他、スポーツ振興への支援も行っております。
また、札幌本社の新社屋の建設にあたっては、従業員の健康・働く環境や地域社会にも配慮したオフィス設計を行い、先進的な取組である米国発祥の「WELL認証」において、最高ランクのプラチナを2022年9月に取得し、さらに2023年8月には創意と工夫を凝らしたオフィスを表彰する制度である「第36回日経ニューオフィス賞」を受賞しております。
なお、人材の多様性を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関しては、次の事項を掲げて実施しており、女性従業員がいきいきと働き、かつ様々なフィールドで継続的に活躍できる職場環境づくりやワーク・ライフ・バランス実現に向けた支援策を積極的に推進してきております。
①育児・介護等に関する両立支援制度の整備(2019年度、育児支援対象者の子女年齢の引き上げ)と社内周知
②女性活用支援策「育休復帰プラン」(厚労省)への参画検討
③女性従業員の職域拡大および女性従業員の積極的な採用・登用
④残業時間の抑制の促進
⑤病気治療等により出勤が困難な従業員を対象に在宅勤務制度を制定
(3)リスク管理
当社は、サステナビリティに関連するリスクについては、取締役会で検討することとしております。サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、評価し、及び管理するための過程としては、(1)ガバナンスに記載のとおり、リスクが生じた場合には主管部門又は認識した部門が取締役会に報告し、取締役会での確認・指示に基づき対応を図ることで統制を取って対応しております。
(4)サステナビリティ及び人的資本に関する指標及び目標
当社は、前記のとおり、請求・決済の電子化等の事業推進を通じてペーパーレス社会の推進に資する企業活動そのものがサステナビリティの最重要項目と考えており、業績予想や中期経営計画での経営目標を重要な指標及び目標として考えております。
なお、人材の多様性を含む育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関しては、次の重点目標を掲げて活動しており、当事業年度の実績は以下のとおりであります。
(目標)
全社員に育休に関連する制度を定期的に周知し、育休取得しやすい環境を構築する。
具体的には、女性の育児休業取得率100%達成と男性の育児休業取得率50%達成を目指す。
(当事業年度の実績)
女性の育児休業取得率:-(対象者なし)
男性の育児休業取得率:-(対象者なし)
以下については、当社の事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。
また、当社として必ずしも特に重要なリスクとは考えていない事項についても投資判断の上で、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項について、株主及び投資家の皆様に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の予防及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、本株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行う必要があります。また、以下の記載は本株式への投資に関連するすべてのリスクを網羅したものではありませんのでご留意ください。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2024年6月30日)現在において当社が判断したものであり、現時点で予測できない下記以外の事象の発生により、当社の経営成績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。
① 法令による規制について
当社の決済代行事業については、「割賦販売法」の施行に伴い、加盟店に対する管理の強化等が実施される規制の中で事業を行っております。また、当社の送金サービス、支払秘書サービス等については、「資金決済に関する法律」及び「犯罪による収益の移転防止に関する法律」の施行、並びに金融庁による「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」の策定に伴い、取引に対する運用・管理の強化が要求されている中で事業を行っております。今後これらの法令等が改正された場合は、その内容によっては当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 収納代行預り金について
当社のマルチペイメントサービスでは、当社が事業者に代わり収納した代金を、分別管理された当社名義の預貯金口座に一時保管した後、所定の期日に事業者に送金する仕組みとなっております。収納代行により当社が一時保管する代金につきましては、貸借対照表上「現金及び預金」(資産)及び「収納代行預り金」(負債)として両建計上しております。
なお、当該収納代行代金につきましては、事業者財産保護のために金融機関の決済性預貯金口座において当社自身の決済用資金と分別管理し、また貸倒リスク軽減のために契約に基づき事業者に送金する際に手数料(当社売上)を相殺するスキームを主としておりますが、ペイオフ等に関する金融行政の方針が変更され、当該口座が預金保護の対象とならなくなった場合、収納代行代金の保管方法の変更や、当社売掛金の回収方法変更等により当社の事業運営や業績に影響が生じる可能性があります。
③ コンビニ業界のインフラへの依存について
マルチペイメントサービスのうちコンビニ決済におきましては、コンビニのKIOSK端末などが前提となります。コンビニ各社が同時期に端末自体の変更などのサービス提供方法の変更を行った場合、これに対応するコストが当社側に発生するなど、当社の業績に影響を与える可能性があります。
④ システムトラブル及び事務リスクについて
当社においてシステム停止は重大な問題となるため、当社はサーバ設備及び通信回線の冗長化などによるシステム停止への対応や保守要員の24時間常駐化などの対策を講じております。しかしながら、このような体制による管理にもかかわらず、自然災害や事故など不測の事態が起こった場合、予測できない外部からのシステムへの侵入・コンピューターウィルス・サイバー攻撃等による不正行為が生じた場合、当社のシステムの機能低下、誤作動、故障などの事態を招くなどによって、当社の業績に影響を与える可能性があります。また、当社の業務は収納金等の金銭を扱う重要な業務であることから、事務リスクを回避するよう、その管理は厳格に行われております。しかしながら、このような厳格な管理体制にもかかわらず、当社の信頼を損なうことなどによって、損害賠償請求や障害事後対応により営業活動に支障をきたし、当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑤ 外部環境について
a.決済サービス市場におけるパラダイムシフト
キャッシュレス化の進展が予見される中、当社はそれに先駆けて対応するスキーム開発を行っておりますが、当社の予見を超えるイノベーション等による新規決済スキーム出現によるパラダイムシフトなどが発生する場合、当社業績に影響を与える可能性があります。
b.新規事業の創出・育成に係る投資について
新規事業に積極的に投資をしておりますが、当社の計画通りに進捗せず十分な投資効果が得られないときは、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
c.特定取引先への依存について
当社は継続的に新規取引先の拡充に努めてきておりますが、現行の大口取引先向けの売上高減少などが発生する場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
d.知的財産権について
当社は、第三者の知的財産権を侵害することのないように、社内管理体制を強化しておりますが、当社の事業分野における知的財産権の状況を、適時、完全に把握することは困難であるため、当社が第三者の知的財産権を侵害し、損害賠償請求または差し止め請求を受ける可能性があります。
⑥ 個人情報の管理について
当社は各種業務を行うに際し、顧客の個人情報を保有することがあり、今後もサービス拡大に伴い当社が取り扱う個人情報は増加することが予想されます。当社はこれら個人情報の取り扱いについてはプライバシーマーク及び情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS・札幌事業所)を取得し、これに準じて社内管理体制を整備し、情報管理への意識を高めております。
これらの対策により個人情報が漏洩する可能性は極めて低いと考えておりますが、今後何らかの原因により重要な情報の外部流出が発生した場合には、損害賠償請求を受けるとともに、社会的信用が失墜することなどにより、当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑦ 不正対策、セキュリティ対応コストについて
新サービス「支払秘書」は、電子マネー関連金融サービスであるため、不正対策が極めて重要となっております。当社は生体認証、リアルタイムモニタリングなどサーバ側のセキュリティ対策を進めてきておりますが、今後も継続的に対応が必要になるものと考えております。また、外部からの攻撃に対しては外部機関にストレステストを依頼するとともに、情報セキュリティ専門家とコンサルティング契約を締結しております。これらセキュリティ対応コストが当社業績に影響を与える可能性があります。
⑧ 革新的技術の出現について
当社が提供するサービスは、技術革新のスピードが非常に速く、従来とは違う全く新しい決済スキーム等の出現により、当社サービスが著しく陳腐化することにより当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 競合について
当社の提供する収納代行サービスは参入障壁は必ずしも高いものではなく、既存の決済代行業者間の競争は激化しております。また、全く新しい技術を活用した画期的なサービスを展開する競合他社が出現したり、競合他社が低価格を前面に打ち出した営業を展開する等の結果として、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 災害リスクについて
当社はシステムダウンが発生しないよう然るべき対応を適宜図っておりますが、地震や台風等の自然災害や、火災・停電・テロ行為・パンデミック等が発生した場合、システムダウン以外にも人的・物的な損害の発生や、営業活動が制限される等により当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要
① 財政状態及び経営成績に関する説明
当事業年度におけるわが国経済は、不安定な国際情勢や不信感が高まる国内政治情勢のなか、日銀の金融緩和策の変更、円安見通しへの不安、資源価格などにより不透明な状況が続いております。
このような状況のなか、当社の主要事業ドメイン市場においては様々な業種業態において、DX(デジタルトランスフォーメーション)が積極推進されており、ITが果たすべき社会的役割も増してきております。
当社も「ペーパーレス化」「キャッシュレス化」に取り組み、重点施策「電子決済対応」「交通業界向けIT化プロジェクト/MaaS事業」などを推進、その文脈上にある生活密着フィンテック・プラットフォームを見据えた施策を行っており、会員管理のDX化ツール「ekaiin.com(e会員ドットコム)」の利用拡大や電子請求書発行及び保存を行う新サービス「しまえーる」の提供など、「決済+αプラットフォーム拡大」に注力しております。
「札幌生活応援プレミアム商品券」においては、当社の支払ポータルサイトと送金システムを活用、様々な機能をご提供いただく会社との連携によるトータルサービスを提供、「交通事業者向けオールインワンクラウドサービス」につきましては、スルッとKANSAIのQRコードを利用するサーバ型デジタル乗車券サービス“スルッとQRtto(クルット)”が今年6月サービス開始など、本格的な展開が始まりました。一方、もう一つの大規模開発の成果物「電子マネー」につきましては、各企業が自社マネーとして利用できる仕組みに対応する等、引き続き次世代を見越したサービス展開の準備を行っております。また、プロジェクトの大規模化に対応できる地域密着営業体制(東京、札幌、大阪3拠点)を整えました。
これらの活動の結果、当期の経営成績は、売上高10,132百万円(前期比7.5%増)、営業利益1,222百万円(前期比30.1%増)、経常利益1,223百万円(前期比30.8%増)、当期純利益836百万円(前期比31.7%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は16,657百万円(前年同期比18.4%増)となりました。
当事業年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度末において営業活動により獲得した資金は2,644百万円(前年同期比137.4%増)となりました。主な増加要因は税引前当期純利益1,224百万円、減価償却費の計上314百万円、収納代行預り金の増加986百万円であり、主な減少要因は売上債権の増加204百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度末において投資活動により獲得した資金は333百万円(前年同期比24.4%増)となりました。主な増加要因は敷金及び保証金の返還による収入510百万円であり、主な減少要因は投資有価証券の取得による支出101百万円、無形固定資産の取得による支出60百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度末において財務活動により支出した資金は392百万円(前年同期は360百万の資金の支出)となりました。減少要因は配当金の支払による支出317百万円、長期借入金の返済による支出75百万円であります。
③ 受注及び販売の状況
a. 受注状況
当事業年度の受注状況は、次のとおりであります。
|
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
365 |
499.9 |
231 |
726.9 |
(注)1.当社における受注の内容は、相手先からの受託開発であります。
2.金額は販売価格によっております。
b. 販売実績
当事業年度の販売実績は次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
前年同期比(%) |
|
決済・認証事業(百万円) |
10,132 |
107.5 |
(注)最近2事業年度の主要な販売先及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
当事業年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
アマゾンジャパン合同会社 |
2,397 |
25.4 |
2,173 |
21.4 |
|
株式会社DEGICA |
― |
― |
1,261 |
12.4 |
(2) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。この財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債及び収益・費用の計上に関連して、種々の見積りを行っております。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
② 経営成績の分析
当事業年度の経営成績は、売上高10,132百万円(前期比7.5%増)、営業利益1,222百万円(前期比30.1%増)、経常利益1,223百万円(前期比30.8%増)、当期純利益836百万円(前期比31.7%増)となりました。
③ 財政状態の分析
(資産)
当事業年度末の流動資産は21,746百万円(前年同期比15.9%増)となりました。主な内訳は現金及び預金16,657百万円、預け金3,641百万円、売掛金及び契約資産809百万円であります。現金及び預金には回収代行業務に係る収納代行預り金11,427百万円が含まれておりますが、これは翌月の所定期日には事業者に送金されるものであります。また、その他、送金サービスに係る預り金のうち、信託口座への預け金を相殺した残高552百万円が現金預金に含まれておりますが、これも所定期日に事業者の取引先に送金されるものであります。これらの預り金は一時的に当社が保管するものであります。また、固定資産は5,394百万円(前年同期比12.1%減)となりました。主な内訳は建物2,015百万円、土地1,602百万円、差入保証金948百万円、ソフトウエア340百万円であります。以上の結果、資産合計は27,141百万円(前年同期比9.0%増)となりました。
(負債)
当事業年度末の流動負債は16,917百万円(前年同期比12.0%増)となりました。主な内訳は収納代行預り金11,427百万円、預り金4,250百万円であります。また、固定負債は1,844百万円(前年同期比5.9%減)となりました。主な内訳は長期借入金1,600百万円であります。以上の結果、負債合計は18,762百万円(前年同期比9.9%増)となりました。
(純資産)
当事業年度末の純資産は8,378百万円(前年同期比7.1%増)となりました。主な内訳は株主資本8,272百万円であります。
(参考)現金及び預金の純額(回収代行業務に関する預り金を相殺した、正味の現預金残高)
|
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前事業年度 (2023年6月30日) |
当事業年度 (2024年6月30日) |
|
(A)現金及び預金(百万円) |
14,070 |
16,657 |
|
(B)収納代行預り金(百万円) |
10,441 |
11,427 |
|
(C)送金サービスに伴う預り金(百万円) |
73 |
552 |
|
(A)-(B)-(C)現金及び預金純額(百万円) |
3,556 |
4,677 |
④ 資金の財源及び資金の流動性についての分析
a. キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
b. 資金需要
当事業年度における当社の主な資金需要は、サーバ設備やソフトウエアの取得による設備投資等であります。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社におきましては、コンビニインフラへの依存、システムトラブル及び事務リスク、競合他社との競争激化、新サービスへの対応、新規事業への投資、知的財産権、個人情報の管理などが経営成績に重要な影響を与える要因と認識しております。
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について
キャッシュレス社会に向けた大きな時代の変革期が予測されております。当社はこの変革期を大きなビジネスチャンスに変えるべく、積極的な経営姿勢に転換しております。かつてコンビニ決済など斬新なアイディアで現在の地歩を確立したように、強い思いをもってチャレンジを続けてまいります。
当社の目指すサービスプラットホームは「ストック型」であり、一旦収益ラインを突破すると一気に拡大する可能性を秘めております。重要なことは、ビジネスボリューム拡大に伴う人件費増加を避けることで、そのために運用など後方処理自動化に相当額の投資を継続的に行っております。
仕入先との契約
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提携先 |
契約年月日 |
提携内容 |
備考 |
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株式会社ファミリーマート (注)1 |
1998年6月11日 |
料金収納業務の委託等に関する契約 |
業務委託契約 |
|
株式会社セブン-イレブン・ジャパン |
1998年6月30日 |
料金収納業務の委託等に関する契約 |
業務委託契約 |
|
株式会社ローソン |
1998年8月1日 |
料金収納業務の委託等に関する契約 |
業務委託契約 |
|
株式会社みずほ銀行 |
2003年1月10日 |
収納事務に関する委託契約 |
業務委託契約 |
|
株式会社三井住友銀行 |
2023年1月16日 |
送金サービス等に関する業務提携契約書 |
業務提携契約 |
(注)1.株式会社ファミリーマートとの契約は一部、2004年3月1日付で株式会社ファミマ・ドット・コム(現 株式会社ファミマデジタルワン)に継承されております。
2.上記の契約の契約期間に関しましては、全て一定年数経過以降、双方とも解約または変更の意思表示がない場合は、1年間の自動更新となっております。
当社は、将来に向けて成長スピードを維持していくため、「次世代を担うビジネススキームの確立」と「カイゼン(機能拡充・システムの安定運用・コストパフォーマンスの向上、いわば筋肉質の企業体質づくり)」を行っていくことが必要と考えております。
当事業年度においては、組込型のハウス電子マネーサービスの開発に取組みました。その結果、当事業年度における研究開発費は
なお、当社は決済・認証事業の単一セグメントであるためセグメント別の記載を省略しております。