(1)経営方針
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は企業理念「より良い未来を創造するITのプロフェッショナル集団」に基づき、今後の社会・産業にとって必要不可欠な領域における事業を加速し、社会課題を解決するためのサービス提供を通して持続可能な社会の創造に向けて取り組んでいます。
当社グループのビジネスは、(1) お客様のニーズに沿った最適なITインフラとITライフサイクルをワンストップで提供する「情報基盤事業」、(2) 蓄積された業務ノウハウを実装したアプリケーションの提供により顧客の課題解決を実現する「アプリケーション・サービス事業」、(3) “医療情報をみんなの手に。そして、未来へ。”をテーマに健康な社会を支えるための医療情報インフラの構築に取り組む「医療システム事業」の三つの事業セグメントにより構成されております。
情報基盤(ネットワーク、サイバーセキュリティ、サーバ、ストレージ等)事業では、個別企業(エンタープライズ)向けのビジネスに加え、クラウドサービスを提供する事業者(通信キャリア、データセンター、大手システム・インテグレーター等)へのビジネス展開を加速させます。サイバー攻撃が常に高度化・巧妙化する中で、従来のセキュリティ対策製品では必ずしも対処できるとは限らないため、引き続き、最先端のセキュリティ関連技術の動向を先取りし、積極的に新規商材 を発掘・展開していきます。また、セキュリティ対策製品は導入して完了ではなく、継続的に検知及び監視する運用が必要であるため、当社は、最先端のセキュリティ対策製品の提供に加えて、マネージドサービス等付加価値の高いサービスの開発に積極的に投資していきます。
アプリケーション・サービス事業では、特定市場、特定業務向けのアプリケーション・パッケージの開発を加速し、パッケージ販売のみならず、クラウドサービス(SaaS)事業を積極的に推し進めます。CRM分野においては、前中期経営計画においても戦略的に進めてきたASEAN地域での事業展開をより一層加速させるとともに、前期に引き続き、生成AIを用いてコンタクトセンター業務の効率化を促進するための自社ソリューションの拡充に取り組んでいきます。ソフトウェア品質保証分野においては、様々な分野で機能安全の国際規格への対応が必要とされていることを背景に、組込みソフトウェアの品質向上は社会的にも非常に重要な課題と考えています。また、開発支援ツールをより効果的に利用してもらうための自動化・効率化を目的とした開発基盤の構築や導入支援サービスの提供を強化するとともに、自社の独自付加価値の向上に取り組んでいきます。ビジネスソリューション分野においては、従来の特定顧客向け受託開発ビジネスで積み上げてきた技術力を活かし、公共分野のDX化とCX向上ソリューションの開発と提供に取り組んでいきます。教育分野においては、子どもの「主体的・対話的で深い学び」や「個別最適な学び」の実現と教職員の働き方改革を推進するクラウドサービスの小中校への導入とあわせて、株式会社ベネッセコーポレーションとの連携強化を図りつつ、高等学校向けのビジネスの拡大も進めていきます。
医療システム事業では、2022年4月1日に新たにスタートした新生PSP株式会社が、顧客基盤の統合、サービス・製品の集約と統合を進めるとともに、旧PSP株式会社によって導入された医用画像管理システム(PACS) のクラウド化によりストック型ビジネスへの転換を推進します。 また、医療画像データの利活用を進展させるAIプラットフォーム事業の推進、メドメイン株式会社との協業による新たなマーケットである病理分野への拡充、コンシューマ(患者)をターゲットとしたPHRサービスのサービスおよび利用者拡大に取り組みます。
目標とする経営指標としては、当社グループが経営の最重要課題の一つに掲げる「株主価値の向上」のための事業規模拡大が挙げられますが、収益力の強化及び収益の安定性向上も必要と考えております。収益力の指標として営業利益率を、安定性向上の指標としてはストック比率を重視しており、当該指標の向上を目指しております。
■営業利益率(%)
※IFRS基準ベースで記載しております。
※営業利益率(%)の表示については以下のとおりです。
情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業においては、グループ連結の数字を表示しております。医療システム事業においては、グループ連結の数字を表示しており、同事業の2023年3月期は、新生PSP株式会社(2018年に当社から分社化し連結対象子会社であった株式会社NOBORIと、2022年2月に連結子会社化した旧PSP株式会社が2022年4月1日に合併しました。以下同じ。)、連結対象子会社である合同会社医知悟及び株式会社A-Lineの数字を表示しております。
2024年3月期より、報告セグメントの業績をより適切に評価するため、一部費用の配賦方法を変更しております。なお、2023年3月期のセグメント情報は、変更後の算定方法により作成したものを開示しております。
■ストック比率(%)
※ストック比率の表示については以下のとおりです。
情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業においては、当社単体の数字を表示しております。医療システム事業においては、2023年3月期からアプリケーション・サービス事業部門から分離独立し、新生PSP株式会社(2018年に当社から分社化し連結対象子会社であった株式会社NOBORIと、2022年2月に連結子会社化した旧PSP株式会社が2022年4月1日に合併しました。以下同じ。)の数字を表示しております。
(2)経営環境・経営戦略及び対処すべき課題等
当社グループは、2024年5月9日に新中期経営計画「Creating Customer Value in the New Era」を発表しました。日々進化を続けるAIなどの新たなテクノロジーの出現、少子高齢化に伴う国内労働人口の減少、企業が担うべき社会的責任の変化といった新たな時代が到来する中でも、テクマトリックスグループは「目利き力」と「業務ノウハウ」を詰め込んだソリューションで社会課題を解決し、より良い未来を創造する会社であり続け「顧客価値」を向上させることを目指します。「目利き力」とは、最先端のテクノロジーと解決すべき社会課題を発見することであり、発見した社会課題を「業務ノウハウ」で解決していきます。専門性を要する特定の業界・業務に対しては、数百・数千のお客様にご利用いただいた結果としての深い業務の知見を有していることがテクマトリックスグループの強みであると認識しています。「顧客価値」とは、提供するソリューションやサービスだけでなく、それを提供する当社のブランディングイメージ、当社従業員のお客様への対応、当社とのお取引における手続きややり取りなど、お客様が感じる価値です。
<Creating Customer Value in the New Eraにおける基本戦略・焦点エリア>
当社グループは、お客様の利便性や業務効率性が向上し、安全にかつ安心して暮らせる社会「より良い未来」を創造する企業集団であり続け、より多くの顧客価値を提供します。創造した価値によって得られたステークホルダーからの信頼は、当社グループの「目利き力」や「業務ノウハウ」として蓄積され、競争力強化や新たなビジネスの機会につながります。顧客価値創造の源泉(DNA)は業務ノウハウを詰め込んだソリューションの提供であり、それを支えるベースとなるのは社員一人一人が挑戦し成長できる環境です。逃げずに粘り強く対応し、常に学び続けるという企業文化を一層浸透させ、持続的な価値創造の輪の拡大を目指していきます。

セグメント別の基本戦略は以下のとおりです。

焦点エリアは以下のとおりです。

<目標とする経営指標>
■収益力の指標としての営業利益率
営業利益率(%)
※IFRSベースで記載しております。
※2024年5月9日に公表いたしました中期経営計画の計画値を、2025年5月9日に修正公表しております。
<戦略リスク(対処すべき課題)>
当社グループの取扱い製品には、Palo Alto Networks, Inc.(米国)をはじめ、最先端の技術や製品・サービスを有する海外のネットワーク機器メーカーやソフト開発ベンダー等の製品が当連結会計年度において仕入金額の6割程度含まれております。また、新規性の高い技術を扱うという当社グループの事業戦略上、当社グループの仕入先には小規模な海外ベンチャー企業も含まれております。こうした仕入先が買収された場合、日本法人を設立して販売網の見直しを行う場合、或いは倒産した場合等には、当社グループが従来同様の販売代理権を継続できる保証はなく、場合によっては製品の調達が困難となる可能性もあります。当社グループでは、仕入先との関係強化に日頃から努めておりますが、万が一当社グループの主力製品の仕入に支障が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループの取扱い製品は、現時点において、各製品分野でデファクト・スタンダード(実質的な業界標準)となった競争力の高い製品が中心であると認識しており、また、ソリューションや自社サービス等の付加価値の高いビジネスを増やすことで仕入先の競争力低下による影響を受けにくい事業構造への改善を進めております。しかしながら、IT業界の技術革新は著しく、競争も激化しているため、当社グループ若しくは仕入先による技術革新への対応や価格低下への対応が遅れた場合、当社グループの事業の競争力が低下し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、主に海外の最先端製品の調達、コールセンターや医療等特定業務分野におけるパッケージソフトの開発やクラウドサービスの提供等により、各事業において競合他社との差別化と付加価値の確保に努めております。しかしながら、当社グループが先行する分野への大手企業の参入、新興企業の台頭等により当社グループの競争力が低下する可能性があります。また、景気の低迷等によって企業のIT投資が抑制されるような環境下においては、他社との価格競争の激化により売上収益及び利益が減少し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
④ 人材の確保
当社グループでは、ITサービス産業において一般的な労働集約型ビジネスではない、より高付加価値なストック型ビジネスの拡大を目指しておりますが、更なる成長に向けては、優秀な人材の確保・育成は不可欠であります。当社グループでは、新卒の定期採用においては、潜在能力の高い人材を、また中途採用においては、即戦力として活用できる経験者を幅広く採用しております。
ITが全産業分野に浸透して行く中、IT人材の獲得競争は、同業者間のみならず、異業種やベンチャー企業の間でも熾烈になってきております。今後、当社グループが事業拡大に必要な人材を十分に確保・育成できない場合には、当社グループの事業展開、経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、シェア拡大及び事業規模拡大策として、同業他社や当社グループの事業を補完しうる他社等に対するM&Aや資本・業務提携の実施を経営の重要課題と位置付けております。
M&A等の実行に際しては、対象企業に対して財務・税務・法務・ビジネス等に関する詳細なデューディリジェンスを行い、各種リスクの低減に努めておりますが、デューディリジェンスの実行後、これらの調査で確認・想定されなかった事象が判明あるいは発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。また、M&A等が当社の予測通り円滑に進捗するとは限らず、M&A等の結果、仮に実施に至ったとしても、当社が想定した事業上のシナジーや事業の効率化等の効果が生じる保証はなく、また当社グループの収益構造が変化する等のディスシナジーが生じる可能性もあります。また、当社グループは、M&Aや資本・業務提携等により関係会社、取引先等の株式等を保有しております。当社グループは、原則として保有する全ての株式等を公正価値で評価しており、当該株式等の公正価値が著しく下落した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、今後の社会にとって必要不可欠な領域において事業を加速し、社会課題を解決するためのサービス提供を通して持続可能な社会の創造に貢献することを目指しています。その実現に向けた中長期的な成長戦略として、中期経営計画「Creating Customer Value in the New Era」を策定しました。
また、役員・従業員ひとりひとりが「良き企業市民」としての自覚を持って行動し、法令順守は当然のこと、企業活動を通して、より積極的に社会貢献、顧客への貢献に取り組むべきと考え、企業倫理ガイドラインをもとに企業活動を行っております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
■取締役会の監視体制
当社は、サステナビリティ課題への対応を重要な経営課題と認識し、取締役会により適切な監督が図られる体制を構築しています。全体の業務執行責任を担う「業務執行会議」の配下にある「サステナビリティ委員会」がマテリアリティを特定した上で進捗を管理し、その施策立案については、経営企画部を事務局とし、各事業部・本部・部・支店・営業所に対し監督を行っております。サステナビリティ委員会は、任命されたコーポレート本部の各部メンバーで構成されております。サステナビリティ委員長は代表取締役社長が務めており、代表取締役社長は、サステナビリティ課題に対する取り組みの推進に関し、最終責任を負っています。
当該委員会の活動の進捗状況あるいは重要事項は、業務執行会議によって審議された後、年に1回以上取締役会にて報告・審議され、経営戦略への織り込み・整合を高めています。
2024年度は、計4回のサステナビリティ委員会を開催しました。マテリアリティに対する各担当部署の進捗状況を共有の上、必要に応じた連携を図りながら取り組みを進めてまいりました。また、その取り組み内容は、適宜、当社ホームページ等で対外的に開示を行っております。
■マテリアリティの特定
社会課題と事業環境を把握して経営陣と議論を重ね、当社の経営戦略と現状及びステークホルダー視点による当社のマテリアリティを特定しています。中期経営計画に定める戦略を着実に実行することでマテリアリティに対する取り組みを進捗させるとともに、主に人材育成・開発及び環境関連データの公開に努めています。
情報セキュリティについては、
当社は、地球環境の維持・保全が、当社グループ経営の持続的な発展と成長の基盤であるとの認識から、気候変動への対応を重要な経営課題の一つと位置付けています。具体的には、TCFD提言に沿う形で気候変動が当社の事業に与える影響を分析し、リスクと機会を特定し、対応策を講じるとともに、以下の枠組みで関連する情報の開示を進めています。
①ガバナンス
■取締役会の監視体制
当社は、気候変動を含むサステナビリティ課題への対応を重要な経営課題と認識し、取締役会により適切な監督が図られる体制を構築しています。気候変動への対応については、全体の業務執行責任を担う「業務執行会議」の配下にある「サステナビリティ委員会」が進捗を管理し、その施策・立案については、経営企画部を事務局とし、各事業部・本部・部・支店・営業所に対し施策の立案・監督を行っております。なお、サステナビリティ委員会は、任命されたコーポレート本部の各部メンバーで構成されております。
当該委員会の活動の進捗状況あるいは重要事項は、業務執行会議によって審議された後、年に1回以上取締役会にて報告・審議され、経営戦略への織り込み・整合を高めています。
■経営者の役割
気候関連に関する対応の責任者には代表取締役社長が選任され、サステナビリティ委員長も代表取締役社長が務めています。具体的には、代表取締役社長は、気候関連リスク及び機会の評価・管理、戦略の策定、具体的な取り組みの推進に関し、最終責任を負っています。
※気候変動における取締役会の監視体制図については、
https://www.techmatrix.co.jp/ir/esg/esg_01.html
企業活動の在立基盤である「地球環境」に大きな変化をもたらす「気候変動」はグローバルな課題です。
当社は、「気候変動」に対する企業の役割と責任を果たすことを重要な経営課題と捉え、中期経営計画「Creating Customer Value in the New Era」実現に向けた経営戦略と具体的な事業活動に連動させた対応計画を策定するとともに、想定されるリスクと機会に対処するさまざまな施策を進めています。
■当社の気候戦略(サマリー)
気候変動におけるリスクと機会の特定を行い、事業に重要な影響を与える項目について、気候戦略及び行動計画を作成しました。また、このリスクと機会の中で比較的大きな影響があると推測された一部の項目について、1.5℃及び4℃シナリオ等のパラメータを用い、シナリオ分析を行いました。
※時間軸は、短期(1年以内)、中期(1年~2年)、長期(2年~10年)と設定しております。
※当社の気候戦略の詳細版については、
https://www.techmatrix.co.jp/ir/esg/esg_01.html
■気候関連のリスクと機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響
リスクに対する考え方
当社では、企業理念の具現化並びに中期経営計画の目標達成を阻害する可能性があるリスクを「リスク」と認識しています。このため戦略、オペレーション、財務、コンプライアンスなどの全領域において「リスク」を特定・評価した上で対応計画を策定し、その確実な実行及び継続的なモニタリングにより効果的かつ効率的にリスク総量をコントロールしています。
リスクの定義
リスクの判断基準として、財務面、戦略面における影響度合の定義は以下のとおりです。
財務面:過去の売上高(売上収益)成長率を鑑み、「売上高の10%」と定義
戦略面:「事業継続計画で定める5段階の脅威の中で3段階目となるレベルB以上」と定義
■気候関連リスクの識別・評価プロセス
当社のリスク管理を主管する内部統制推進室及び環境データの集計・企画立案・対外開示を行う経営企画部の主導により、財務または戦略面に重要な影響を及ぼす気候関連リスクについて識別・評価を実施し、最高責任者(代表取締役社長/最高執行役員)の承認を経て各部門・各社に共有展開しています。
具体的には、気候変動へ適応を求められる『移行リスク(政策・法規制、技術、市場、評判)』と物理的影響への対応を求められる『物理的リスク(急性、慢性)』に大別し、これら項目について上記プロセスと同様の手法で識別評価等の検討を実施しています。
また、リスクの識別・評価に際しては、当社独自のリスク管理手法により重大な影響があると判定されたものを重要リスクと特定しています。
■リスク管理プロセス
当社では、最高責任者から業務執行会議(執行役員・事業部長により構成)に気候リスクに関する評価を諮問し、同会議は重要リスクの評価及び予防策を答申しています。業務執行会議の事務局である経営企画部は内部統制推進室と協働し、各事業部・本部・部・支店・営業所と連携をとりながら「気候関連リスク」を識別・評価し、同会議に上程します。上程された「気候関連リスク」は業務執行会議において審議され、重要リスクの評価・監督が実施されます。
最高責任者は、取締役会に議案付議すべき重要事項として「財務または戦略面での重大な影響を及ぼす気候関連リスクと予防策」を報告します。
特定されたリスクは業務執行会議から各部門・各社へ共有展開され、各部門・各社で個別具体的対応策が検討されます。業務執行会議では、これら具体策の進捗についてデータ収集・モニタリングを実施し、検証(年1回以上)を経た上で次年度のリスク管理の取組みに反映させています。
※当社の気候関連リスクの識別・プロセスの体制図については、
https://www.techmatrix.co.jp/ir/esg/esg_01.html
当社グループは、気候関連リスク及び機会を管理するために目標を設定しています。
■GHG排出量目標
2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指して、2030年度に向けたGHG排出量の削減目標を策定しています。順次連結対象会社を追加し対象範囲を拡大予定です。(SCOPE1・2対象)
※TCFD提言に基づく情報開示の詳細については、
https://www.techmatrix.co.jp/ir/esg/esg_01.html
SCOPE1:事業者自らによる直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
SCOPE2:他社から供給された電気、熱・上記の使用に伴う間接排出
SCOPE3:SCOPE1、SCOPE2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
■再生可能エネルギーによる電力の目標
当社は、事業所(本社・支社・営業所)を対象に、2030年度までに電力消費量の50%を再生可能エネルギーにより発電された電力に切り替える目標を設定し、脱炭素への移行を進めております。なお、本社については2022年12月に実施した移転時に、電力消費量の100%を再生可能エネルギーにより発電された電力に切り替えております。
■排出削減活動計画の詳細
当社では事業所において、高効率な空調設備への更新、クールビズ・ウォームビズ(ビジネスカジュアルウェア)を取り入れた空調温度の調整や業務効率改善によるエネルギー消費の抑制等によるCO2排出削減活動を実行しています。
■排出削減活動の促進方法の設定
当社の事業活動に伴い排出されるGHGは、事業所で使用する電力・ガスに起因するため、使用する電力の再生可能エネルギーへの変更やJクレジット・グリーン電力証書・非化石証書の購入に必要な資金を設定し、カーボンニュートラル達成に向け安定・継続的に活動を進めています。
■第三者の排出量削減に貢献できる製品・サービス
セキュリティ分野では、当社グループのクラウド型セキュリティを導入することによりサーバー機器及び施設を保有・管理する必要がなくなり、電力消費量を削減してGHG排出量を最小限に抑えることができます。また、CRM分野においても当社のクラウド型CRMシステム導入により同様の効果が期待できます。さらに、医療分野では、当社グループのクラウドサービス導入により医療画像管理や医療機関支援、AIを用いた診断支援など各種サービスを活用し業務効率を大幅に改善することが可能となります。業務効率化により稼働時間が短縮されれば、施設利用におけるエネルギー消費・GHGの削減につながります。
当社グループでは、これらの製品・サービスの利用がお客様をはじめ第三者のGHG削減にどのように貢献できるのか、貢献量の可視化を推進し、事業機会の拡大に努めています。
■今後の活動計画


(3) 経営戦略を実現する人事戦略
当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
■人事戦略の基本方針
社員の挑戦と成長を支援し、やりがいを醸成する組織風土を実現しながら、組織の能力を最大化する。
■4つの基本戦略
1. 経営方針・事業戦略に沿った人材の確保
→経営方針や事業戦略に沿った人材確保と人材ポートフォリオの実現
2. これからの当社の経営や事業を牽引する次世代リーダーの育成
→次世代リーダーの創出
3. 社員の能力を高め、その能力を引き出し、活かすための人材育成
→社員の専門性向上と挑戦機会の創出
4. ダイバーシティ&インクルージョンの推進
→多様な人材の活用による組織力の強化
a. 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針
当社グループの持続的成長のためには、社員一人ひとりの能力を高め、その成長を支援し、組織の能力を最大化することが不可欠です。すなわち、人事戦略こそが当社の経営戦略そのものであると考えています。人事戦略を実現する第一歩として、まずは経営方針と事業戦略に沿った人材の確保が必要です。経営方針の実現と事業戦略の実現に必要な人材の「質」と「量」を明確に定め、確実に確保していくために必要な採用戦略の策定と施策を実行していきます。
続いて、当社の経営や事業を牽引する次世代のリーダーの育成については、人事戦略における重要なテーマとして位置付けています。
未来を担う人材の育成に関する具体的な施策は、下記のとおりです。
①次世代リーダー育成施策
リーダー層のさらなるリーダーシップ向上と将来的な経営人材の養成を目的とし、リーダー層の育成に取り組んでおります。
その一環として、次期経営人材候補者による「TMX未来会議」の実施を行っております。これは、自分たちが考えるテクマトリックスの未来像を真剣に描き、議論し、実現に向けてどのように歩を進めていくか、当事者意識としての意識を持ち、向き合う機会となります。またその実現に向け、360度のヒアリングによりリーダーとしての自分を理解し、自身の強み弱みに向き合い、内部・外部のコーチング等による支援を得ながら、次代のリーダーとしてさらなる成長を遂げていくというプログラムを実行しております。
マネジメントの入り口となる階層に対しては、従前のプレイヤーから脱却し、マネジメントとして求められる知識・スキルの習得機会を設けることで、自組織の組織力を高め、着実な組織成果につなげられるための支援を行っております。日々の組織・人材マネジメントの実践とともに、上位者からのフィードバック・コーチングを通じて内省支援を行うという、学びと実践の中から自身のマネジメントスタイルと経験知を確立していくプロセスを実行しています。
②専門性の向上
高度・最先端のIT技術の活用は当社のビジネスの源泉となります。当社のITエンジニアが高度かつ最先端なスキルを習得し、当社の事業戦略を加速的に実現するために積極的な教育投資を行っています。当社のエンジニア育成においては、新卒入社時にITインフラ及び開発技術の基礎知識を学び、開発演習などを通じてアプリケーション開発からネットワーク・セキュリティ等の基盤に至るまでのシステム開発の全般的な要素技術を体系的かつ実践的に学んでいます。
また、これまで、エンジニア一人あたりに年度ごとに教育研修予算を割り当て、外部専門機関の研修機会を積極的に活用することにより、高度かつ最先端なIT技術を習得し、流れの早いITトレンドの変化に素早く対応できる仕組みを実現してきましたが、今期より対象範囲(職種や役職)を拡大し、社員一人ひとりの専門性をこれまで以上に高める仕組みや環境を整備しています。
専門性の向上とそれに見合う適切な機会の提供により社員の生産性や業績への貢献に対する意識の度合いをより高め、その貢献を正しく評価することでさらなる成長意欲につなげるという好循環の実現を目指しています。
③資格取得報酬制度・資格取得支援
ITの各専門分野の公的資格(情報処理推進機構(IPA)認定資格)や、サーバー、ネットワーク、サイバー・セキュリティ、データベース等のベンダー認定資格、DX・AIの推進に必要なクラウドコンピューティングやディープラーニング等、多種多様な資格の取得者に対する資格所得報奨金の支給や、その資格取得・維持のための支援制度を設け、技術力の維持・向上を支えています。
■資格取得者数(IPA資格取得人数)
・2022年度 実績 単体 235名
・2023年度 実績 単体 250名
・2024年度 実績 単体 297名
④多様な人材活用によるイノベーション創造
基本的人権を尊重し、多様性を推進する職場の実現を目指して、「多様な価値観」を認め、育んでいます。多様性を持つ人材が、多様な価値観を発揮することで、それがイノベーションの源泉となり、当社のビジネスの発展につながっていくと考えています。これを推進するため、当社では「D&I推進室」が中心となり、ダイバーシティ&インクルージョンの意識の啓発や、ダイバーシティ&インクルージョンを実現するための様々な取り組みを加速させています。
⑤採用におけるダイバーシティ
多様な人材を活用するために採用におけるダイバーシティを強化しております。とりわけ女性の採用に注力しています。当社の女性採用比率に関しては、年々増加しており、2024年度に採用した労働者に占める女性の割合は30.5%となっております。これにより全社員に占める女性労働者の割合は2024年度末時点で26.5%となっており、2017年度末の18.3%より、8.2ポイント増加しております。
■障がい者雇用率(期末時点)
・2022年度 実績 単体 3.1%
・2023年度 実績 単体 2.5%
・2024年度 実績 単体 2.0%
■採用した労働者に占める女性労働者の割合(正社員)
・2022年度 実績 単体 33.3%
連結 25.9%
・2023年度 実績 単体 31.0%
連結 34.3%
・2024年度 実績 単体 30.5%
連結 33.3%
・2026年度 目標 単体50%以上(営業職の新卒採用における女性採用比率に限る)
■労働者に占める女性の割合(正社員)
・2022年度 実績 単体 25.3%
連結 23.4%
・2023年度 実績 単体 25.6%
連結 23.9%
・2024年度 実績 単体 26.5%
連結 25.4%
・2030年度 目標 単体30%
⑥女性活躍推進の取組
育児と就業の両立を支援するため、法律の規定を上回る育児休業制度や、育児休業からの復職後の社員の託児費用の補助制度、看護の目的に限らず育児のために幅広く利用できる子育て支援休暇制度などの様々な制度を設けています。これらにより、過去5か年では出産を経た女性社員の育児休業取得率及び復職率は100%となっており、その結果として子育てサポート企業認定マーク「くるみん」に加え、2024年6月19日付で、新たに「プラチナくるみん」の認定を取得しました。また、育児と就業の両立支援だけでなく、女性を対象としたキャリア研修の実施など、女性のキャリア形成を支援し、マネジメントやスペシャリストとして能力を遺憾なく発揮してもらうための施策に取り組んでいます。また、社員が仕事と介護が両立できる勤務制度を整備しており、介護支援企業マーク「トモニン」の認定を受けております。
■管理職に占める女性の割合
・2022年度 実績 単体 5.6%
・2023年度 実績 単体 5.3%
・2024年度 実績 単体 6.0%
※2024年度は新たに女性2名が管理職に昇進しました。従業員の母数が増加する一方、女性管理職の育成には一定時間を要するため、管理職に占める女性の伸長は緩やかになっております。
・2030年度 目標 単体 20%
⑦シニア人材の活躍機会の拡大
当社は2024年4月より、従来60歳だった定年年齢を65歳に、定年後再雇用制度の上限年齢についても、従来の65歳から70歳へと、それぞれ5歳ずつの引き上げを行いました。シニア年齢であっても「活き活き」と長く活躍できることを目的としていますが、一方で、ワークライフバランスや人生設計との調和や多様性を実現できる制度となっており、自分自身をマネジメントしながら、働き方や貢献の仕方を自律的に選択することができます。
具体的には60歳到達時点で、従前と同様の職務での従事か(正社員)、限定的な職務・勤務地での従事(限定社員)かを選択できる制度となり、60歳以降の賃金については、いずれも原則として正社員と同様の賃金テーブルを適用し、役割に応じた処遇となっています。また、再雇用制度の対象となる65歳から70歳までは、嘱託社員か業務委託(タイムアンドマテリアル)を選択できる制度となり、社員の能力・価値観・人生設計に柔軟に対応する雇用体系となっています。
シニア人材がこれまでに培った知見やスキルを発揮することで、会社の「未来」を支えてもらうことを目指し、会社視点におけるシニア人材の活用に留まらず、社員の自律的な人生設計と自己実現を実現する制度を目指しています。
b. 社内環境整備方針
社員一人ひとりの能力を高め、その成長を支援し、総合的な組織力を高めるためには、社員の潜在能力を最大化する新たなコミュニケーションスタイルと柔軟なワークスタイルの実現、並びに各種制度設計と組織風土の整備が重要であると考えています。当社は、ニューノーマルな時代や働き方に向け、「TMX Communication Design」を定義し、様々なアクションと施策から、新たな時代に向けたコミュニケーションスタイルとワークスタイルをデザインして、それらを勤務制度や人事戦略に反映しています。
具体的な取り組み内容は、下記のとおりです。
① 自立と自律を促進し、より良いパフォーマンスを生み出すためのワークスタイルと環境の実現
働き方を「自らデザイン」し最大限のパフォーマンスを実現するワークスタイルとして「TMX Communication Design(TCD)」を定義し、オフィス出社による勤務とリモートによる勤務を日ごとに選択できる制度を導入しました。業務都合や個人の事情を考慮したうえで、最大限のパフォーマンスを実現するために、最適なワークスタイルを自律的に選択し運用することで、組織としてのパフォーマンスの最大化につなげています。
また、2022年12月の新たなオフィスへの移転では、「共創」を推進するオフィスを実現しました。固定席を設けることなく完全にフリーアドレス化となり、組織や役割を超え必要に応じて必要なメンバーが集い、最適なコラボレーションが実現できるオフィス環境です。このように、固定のワークスタイルを定義することなく、必要に応じて最適なワークスタイルを選択できる環境と制度が整えられています。なお、オフィス移転後のワークスタイルについては、出社:18%、リモート:82%となっております。(※2024年4月~2025年3月末の平均値。)
② ライフとワークの調和を実現し、ウェルビーイングを向上する柔軟な勤務制度の実現
柔軟な働き方が可能になることで、ワークライフバランスの調和を実現し、長期的に当社でパフォーマンスを発揮してもらうため、柔軟な勤務制度を2023年4月に導入しています。
具体的には結婚や、育児・介護、配偶者や同居家族の転勤等のライフイベントにより、遠方への転居が余儀なくされてしまった場合においても、居住地を柔軟に選択することができる「Life Event Support」や、「フレックスタイム制度」の導入、時間単位の有給休暇制度の導入等により、当社における継続的なパフォーマンスの発揮やワークライフバランスの実現、ウェルビーイングの向上を推進しています。
また、心身ともに継続的にリフレッシュされた状態で業務にあたってもらうために、「ワークスタイル」を提唱するだけでなく、「休み方」についても「勤務間インターバル(勤務間に11時間の休息を確保)」のトライアル導入や有給休暇取得奨励日の導入等を行うとともに、しっかりと休むためのガイドラインを示しながら制度の定着のための啓蒙を行っています。
■男女の平均継続勤続年数の差異(正社員)
・2022年度 実績 単体 全体8.3年
男性8.8年
女性7.2年
・2023年度 実績 単体 全体8.3年
男性8.7年
女性7.3年
・2024年度 実績 単体 全体8.5年
男性8.8年
女性7.6年
③ 社員の成長を支援する「人事評価・処遇制度」
当社の未来を担う人材を絶え間なく生み出すため、評価・育成の仕組みを強化し、適正な処遇ややりがいを醸成する組織風土の実現、個人のキャリア形成を支援する制度や体制を構築しています。
2022年4月に従来の人事制度を改定し、会社の将来や仲間の成長に対する貢献に、より重きを置いた評価制度を導入し、社員一人ひとりが何を期待され、何を追求すべきかをより明確化する等級体系を設けることにより、職場での貢献度や成長に対しより公平で納得感のある人事制度を実現しています。
役割によって決定される各等級に求められる要件を満たすコンピテンシーを導入しています。コンピテンシーの内容は全社員にオープンにすることにより、人事評価だけでなく社員の育成につなげることを目的としています。人事等級に関しては、プレイヤー・マネジメント・スペシャリストにレイヤーが分かれており、それぞれのレイヤーにおける役割等級ごとにミッションの定義がされ、全社員に公開されています。このうち、マネジメントとスペシャリストは上級職となり、個人の適性やキャリア志向に合わせて選択可能な複線型の人事制度を設けています。
④ 新たな人事評価・処遇制度と連動した人材育成体系の実現
人事評価・処遇制度の改定を契機に、階層別研修の内容についても各等級に求められるミッションやコンピテンシーとの連動をより強めた研修の実施を進めていきます。自身の役割に必要な能力・スキルを獲得し、日々の業務で発揮することにより、組織の能力を最大化し、継続的な業績向上につなげることだけでなく、社員のモチベーションのさらなる増進を目指します。
⑤ キャリア支援制度
個人の能力や経験をより良い形で発揮できる場を主体的に切り開く環境を創るための「キャリアチャレンジ制度」や、一人ひとりが考えるなりたい姿の実現を支援するための「キャリアデザイン制度」を設け、社員のキャリアの実現を支援しています。
「キャリアチャレンジ制度」は、中途採用でオープンになっているポジションに対し社内からも応募できる制度となり、自身の可能性をより主体的に発揮し、会社に貢献することを目的としています。「キャリアデザイン制度」は中長期的な視点でのキャリアプランや現状を年に1度の面談を通じ上司と共有することで、なりたい姿の実現を支援することを目的とした制度となります。
また、2024年度においては、34~44歳を対象にしたキャリア開発研修とキャリアコンサルティング面談を実施したほか、上司向けのキャリア面談支援研修を実施しました。キャリア開発研修は社員の年齢層ごとに実施し、年齢層ごとに起き得るライフイベントと仕事を両立しながら、継続的にポテンシャルを発揮すべく、社員一人ひとりが自身のキャリアについて向き合う機会を創出します。
⑥ 人権の尊重
■人権基本方針
役員・従業員一人ひとりが、人権、国籍、宗教、信条、年齢、出身、身体的・精神的障がいその他、業務の遂行と全く関係のない事由に基づくハラスメントを行わず、また容認することがないよう、人間尊重の企業文化の確立に取り組むべく、人権基本方針を策定しています。当該方針に基づき、「企業倫理ガイドライン」「コンプライアンス行動指針」等の周知徹底を図るために役員・全従業員に対する教育・研修を定期的に実施しています。
事業の成長を加速させるために、当社では新卒採用、中途採用の双方ともに、性別、国籍等のバックボーンを問わず、多様な人材の採用を行っており、多様性のある人材の活用によるさらなる組織の活性化と新たなる価値の創造を目指します。
■取引先向けガイドライン
テクマトリックスグループ(以下、当社グループ)は、バリューチェーン全体を通じて人権の尊重を推進し、責任ある調達活動に努めます。当社グループの取引先の企業(以下、取引先企業)は、本ガイドラインに準じることが求められます。本ガイドラインは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」及び国際人権章典、ILO 中核的労働基準等の国際基準のほか、「テクマトリックスグループ 人権基本方針」を踏まえて策定されています。
本ガイドラインと国内関係法令が異なる場合は、より高い基準に従い、相反する場合には、適用されるべき国内法令を遵守しつつ、本ガイドラインを最大限尊重するための方法を追求することが求められます。
■人権デューデリジェンスの実施
□調査・評価の実施
テクマトリックスグループが掲げる取引先向けのガイドラインに沿って、取引先への要求事項を整理のうえ、海外(タイ、ベトナム)のオフショア先に対して、人権・労働に関する定期的な実態調査を実施しています。
※調査テーマ
・強制労働の禁止
・児童労働の禁止・若年労働者の保護
・適正な労働時間
・適正な賃金・福利厚生
・非人道的待遇の禁止
・多様性の尊重と差別・ハラスメントの禁止
・結社の自由・団体交渉権の尊重
・労働安全衛生の確保
・従業員への周知
・体制の整備
□フォローアップの実施
各社からの回答結果をもとに現状把握し、課題や改善点の分析を行うとともに、必要に応じて打ち手の検討や取引先への依頼・指導を行い、人権尊重を促進するための働きかけを実施しています。また、人権侵害に相当する事例が発生していないかだけでなく、人権侵害の発生を未然に防止するための措置が講じられているか、発生してしまった場合に適切に対処できる体制が整備されているかについても注視して取り組んでいます。
当社グループの人権基本方針、取引先向けガイドライン、人権デューデリジェンスの実施状況については、
https://www.techmatrix.co.jp/ir/social/social_5.html
⑦ 労働安全衛生と職場環境、労使関係の取組み
当社で働くすべての人が心身ともに健全であり、ポテンシャルと情熱をフルに発揮できる労働環境の実現や組織風土の醸成を目指しています。新規入社者に対しては、職場環境に関するアンケートと人事によるインタビューを実施し、そこで捕捉した改善のポイントは人事及び配属部署と協働し、早急に改善することで、新規入社者のオンボーディングを支援し、ポテンシャルを引き出すための環境構築を行っています。
従業員に対しては、月に一回のパルスサーベイを実施しており、心身の問題や職場の人間関係における課題を早期に発見し、速やかに対応することで、早期の解決に取り組んでいます。また、年に一回、組織サーベイを実施し、サーベイにより組織、環境、風土・文化に関する現状分析を行い、その結果は全従業員に公表のうえ、改善のための施策につなげています。当社は、eNPS(R)(Employee Net Promoter Score)を指標として定めており、同業界平均値を上回るスコアを獲得しております(2024年度実績)。今後も同業界平均値を上回るスコアを維持し、従業員エンゲージメントを継続的に高めてまいります。
■従業員エンゲージメントeNPS(R)(従業員ネットプロモータースコア)

・2025年3月時点のGeppo導入企業の推奨者平均5.6%に対し、16%と推奨者の割合が10.4ポイント高い。
・2025年3月時点のGeppo導入企業の批判者平均69.5%に対し、32%と批判者の割合が37.5ポイント低い。
・eNPSは前回の結果に比べ8ポイント改善。その要因として批判者の割合が4ポイント低下し、反対に推奨者が4ポイント増加したことが挙げられる。
※eNPS(R)の測定について
・従業員に、「当社への入社を友人や知人に勧める可能性はどのくらいありますか」という質問に0~10点で回答してもらい、分類し、以下の計算式にて算出しております。
10~9点「推奨者」
8~7点「中立者」
6~0点「批判者」
・eNPS(R)=「推奨者の割合」-「批判者の割合」
※Net Promotor Score(R)及びその略称であるNPS(R)は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。
⑧ 「心理的安全性」の理解促進
当社がダイバーシティ&インクルージョンを推進する目的として、「異なること(多様性)をイノベーションの源泉にする」ことと、「多様な人材が持つ多様な力の最大活用」を掲げています。多様な人材が多様な価値観を認め、高め合い、会社と社員がともに成長できる風土を醸成しながらダイバーシティ&インクルージョンの推進をしています。
その目的を達成するために、まず「心理的安全性の高い環境」を整え、積極的な意見発信や、挑戦が歓迎される風土を作っていくことが重要と考えています。2022年2月には心理的安全性の高い組織を実現するためのワークショップを実施し、心理的安全性をどうすれば高めることができるかについて学び合う機会を設けました。2023年度においては、より良いコミュニケーションを築いていくための組織風土の醸成ガイドブックを発行しました。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、戦略に関するリスクは、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の(2)経営環境・経営戦略及び対処すべき課題等に記載しております。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において当社グループが判断したものです。また、必ずしも事業上のリスクに該当しないものについても、投資判断上重要と考えられる事項について積極的に開示しております。ただし、当社グループの事業上のリスクを必ずしも全て網羅するものではないことをご留意ください。
① 法的規制について
当社及び当社グループ会社の一部(クロス・ヘッド株式会社、及びアレクシアフィンテック株式会社)では、労働者派遣法に基づく労働者派遣事業の許可を取得しており、エンジニア派遣サービスの提供を行っております。
医療システム事業では、2005年4月に施行された改正薬事法において、当社連結子会社であるPSP株式会社(旧株式会社NOBORI)が開発・販売する医用画像システムの一部の製品が「管理医療機器」と指定されました。これに伴い、薬事法における製造業、製造販売業、販売賃貸業の許可を取得しております。更に、その薬事法を元に2014年11月に改定された「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)への対応も行っております。このように当社グループの提供するサービスは、薬事法や薬機法の影響を受けるものであって、診療報酬の改訂によって当該分野の業績に影響が及ぶ可能性があります。
CRM分野、ビジネスソリューション分野、医療分野においては、電気通信事業法に基づく電気通信事業の届出を行っており、同届出に基づくサービスの提供を行っております。
当社グループでは、当該許可の諸条件や各法令の遵守に努めておりますが、万が一、法令違反に該当するような事態が発生した場合や、関連法令の制定・変更及び行政対応等の動向によっては、規制対応費用が増加すること等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② サイバーセキュリティについて
当社グループは、幅広く事業を展開しており、顧客企業が保有する個人情報や機密情報等を取り扱う場合があります。コンピュータウィルスや不正アクセス等により、または自然災害等の不測の事態によって、これらの情報の漏洩や改竄等が発生した場合、顧客企業等から損害賠償請求や当社グループの信用失墜による取引関係悪化の事態を招き、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
このため、内部統制システムの基本方針に沿って、情報セキュリティ管理及び個人情報保護に関する内部規程を定めています。2006年11月に外部認証機関に基づく監査を経て、国際規格「ISO/IEC 27001」及び国内企画「JIS Q27001」を取得しており、取得以降は、毎年の定期監査、若しくは更新監査を受けております。
内部の体制としては、経営者をトップとした情報セキュリティ委員会を構成し、四半期毎に委員会を開催し、情報セキュリティマネジメントに係るPDCAサイクルの実施状況の共有や社内課題(セキュリティ対策の強化等)の検討を行っています(コーポレート部門の社員を中心とする「事務局会議」は毎月開催)。
運用状況の評価は、毎年内部監査と外部監査により実施しております。また、セキュリティ・インシデントが発生した際に迅速な事態の収束、被害の最小化を実現できる体制を構築しております。その他、全従業員を対象としたセキュリティ研修を毎年定期実施しており、インシデントが発生した部署においては、再教育を実施する等、再発防止の対策も講じています。
③ システム障害の可能性について
当社グループが提供するシステムやクラウドサービスは、顧客業務において重要な役割を担っています。当社としても細心の注意や耐障害性を考慮したシステムやサービスを常に意識しておりますが、これらのシステムやクラウドサービスにおいて、不具合やオペレーションミス等により障害が発生した場合、発生した損害の補償を求められることや、当社グループ全体の信用力やブランドイメージにも影響が及ぶことが考えられ、当社グループ全体の事業、業績及び財政状態にな影響を与える可能性があります。
④ 受託開発案件の採算について
当社グループがアプリケーション・サービス事業で行う受託開発は、プロジェクトの見積りの誤り、作業進捗の遅れ、契約不適合責任の履行等により、自社での超過経費の負担が発生し、プロジェクトの採算が悪化する可能性があります。このような場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
① 為替変動による影響について
当社グループの取扱い製品のうち、海外から仕入れた製品の大部分は米ドル建で取引しております。当社グループは為替変動によるリスクをヘッジする目的で先物為替予約を行っており、また状況に応じて販売先に対する価格交渉を行っておりますが、必ずしもすべてのリスクをヘッジできるものではなく、為替相場の急激な変動があった場合等には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
② 無形資産(ソフトウェア)について
当社グループは市場販売目的のソフトウェア(パッケージソフト)及び自社利用のソフトウェアのうち第三者提供目的のソフトウェア(クラウドサービス、ASPサービス)を無形資産として資産計上しており、一定期間で償却を行っております。ソフトウェアの開発に際しては、市場性等を慎重に見極めておりますが、市場や競合状況の急激な変化などにより、今後利用が見込めなくなった場合や、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、除却あるいは減損の対象となる可能性があります。このような場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 検収時期による業績の変動について
当社グループでは、ストック型ビジネスの推進により、売上収益が特定時期に偏重する季節性は薄れてきておりますが、顧客企業の予算執行のタイミングや開発システムの工期との兼ね合いから通期決算期末(3月末)に役務提供の完了及び売上収益計上が集中する傾向があります。このため、技術者の業務集中又は不測の事態等により役務提供の完了及び売上計上が決算期末を超えて遅延した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
④ 大型の継続取引における資金繰りについて
昨今、サイバーセキュリティ分野においてもクラウドサービス化が進み、複数年にわたるサブスクリプション契約など顧客との継続取引契約が大型化する傾向にあります。その際、顧客よりの資金回収が単年度毎となり、一方で、海外ベンダーへの支払いが一括前払いとなるケースがあります。その場合、当社には資金繰り負担が発生するため、回収サイクルと前渡金負担のギャップを注視し、資金繰り計画に留意する必要があります。
① パンデミック・自然災害の発生について
パンデミック(感染症・伝染病の世界的な大流行)や天災事変等の自然災害の発生に起因して、当社グループの従業員やビジネスパートナー企業の事業活動に影響が生じた場合は、当社の事業継続にも大きな影響が出る可能性があります。また、サプライチェーンの乱れ等、経済活動の混乱に波及した場合は、当社グループが提供する製品や保守、各種ITサービスに対する投資動向にも影響を与える恐れがあります。さらには、このような場合、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
② 半導体や部品の不足による製品の納期遅延について
戦争の勃発や地政学的リスクの増大による世界情勢の混乱、パンデミックや自然災害の発生、経済安全保障上の調達・供給制限等、あらゆる不測の事態に起因して半導体や部品の安定的な調達が困難になった場合は、当社グループが提供する製品の納期遅延が発生するリスクがあります。このような場合には、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における国内経済は、雇用・所得環境が改善する中で、景気が緩やかな回復基調にあると言われています。一方で、中東情勢の緊迫化やウクライナ情勢の長期化等による原材料・エネルギー価格の高騰に加え、不安定な金融市場の動向により、景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。また、トランプ政権による他国への関税措置の影響等、米国の政策動向による今後の世界経済への懸念が高まっています。
情報基盤事業では、大手企業を中心としたサイバー攻撃の頻度の高まり、攻撃手法の高度化・巧妙化、法的規制、ガバナンスの強化に伴い、セキュリティ対策は経営課題として捉えられており、サイバーセキュリティ対策製品やサービスの需要は、依然として拡大しています。このような状況下、当社のコア事業である情報基盤事業においては、クラウド型セキュリティ対策製品の需要が、引き続き好調に拡大しています。また、当社が提供する統合セキュリティ監視サービスも堅調で、付加価値向上に向けた戦略が進捗しつつあります。また、海外市場での事業拡大を目的に、マレーシアの最大手サイバーセキュリティ事業会社 Firmus Sdn.Bhd. の全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。
アプリケーション・サービス事業では、CRM分野において、大手システム・インテグレーターやテレマーケティング・ベンダーとの協業により、ビジネスは堅調に推移しており、また、サブスクリプション化により、ビジネスが着実に積み上がっています。また、先期に実施したモビルス株式会社との資本業務提携を足掛かりに、生成AI技術の活用によるソリューションの拡充を進めました。ソフトウェア品質保証分野では、企業向けシステムや組込ソフトウェアの品質を担保するためのテストツールの需要は、引き続き堅調です。特に、自動車のIT化に伴い、車載ソフトウェアなど組込みソフトウェアの品質向上の需要は底堅く、引き続き好調な受注環境を維持しています。ビジネスソリューション分野においては、入札案件等の案件の積上げが鈍化しており、引き続き受注の積み上げに注力している状況です。教育分野においては、引き続き引き合いが順調で、公立校・私立校それぞれにおいて新規採用が進みました。また、当社の提供するフルクラウド型校務支援システム「ツムギノ」が、株式会社ベネッセコーポレーションが高等学校向けに提供を開始する校務支援システム「ベネッセ校務クラウド」に正式採用されました。今後も同社との連携強化を図りつつ、ビジネス拡大に取り組んでいきます。
医療システム事業においては、2022年4月1日に新たにスタートした新生PSP株式会社において、顧客基盤の統合、サービス・製品の集約と統合を進めるとともに、医用画像管理システム(PACS)のストック型ビジネス化を推進しています。また、デジタル病理関連事業の推進を目的に、メドメイン株式会社との資本業務提携を行い、病理分野でのソリューションの提供を開始しました。さらに同社は、医用画像(医用イメージング)領域を事業とするレギュラス株式会社を完全子会社化しました。
以上の結果、当連結会計年度の売上収益は、648億82百万円と前期比115億78百万円(21.7%)の増加、売上総利益は205億54百万円と前期比23億51百万円(12.9%)の増加となり、過去最高となりました。販売費及び一般管理費は、主に人件費が増加したことにより、135億61百万円と前期比12億51百万円(10.2%)の増加となりました。この結果、営業利益は66億68百万円と前期比8億18百万円(14.0%)の増加となりました。
以上により、税引前利益は64億24百万円と前期比5億69百万円(9.7%)の増加、親会社の所有者に帰属する当期利益は40億60百万円と前期比5億20百万円(14.7%)の増加となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、273億25百万円と前期比59百万円(0.2%)の増加となりました。当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローについては、前連結会計年度と比較して、前渡金の増加等により、収入は68億36百万円と前期比21億45百万円(23.9%)の減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローについては、前連結会計年度と比較して、子会社株式の取得による支出等により、支出は59億55百万円と前期比40億17百万円(207.3%)の増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローについては、前連結会計年度と比較して、その他の金融負債による収入等により、支出が7億99百万円と前期比9億46百万円(-%)の増加となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、製造原価によっております。
2 セグメント間取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 売上割合が10%以上の取引先はありません。
2 セグメント間取引については、相殺消去しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析は以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日現在において当社グループが判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表の作成に用いた重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。
情報基盤事業の売上収益は455億85百万円と前期比105億79百万円(30.2%)の増加、営業利益は52億73百万円と前期比13億円(32.7%)の増加となり、売上収益、営業利益ともに過去最高となりました。
当連結会計年度における情報基盤事業の業績は、サブスクリプション型のクラウド型セキュリティ対策製品およびオンプレ型のセキュリティ製品の大型受注により、新規案件の受注が好調に推移しました。加えて、複数年契約を含む更新受注も着実に積み上げることができました。売上収益は、前期までの受注残実績に加え、新規案件の獲得およびオンプレ製品の売上により、順調に増加しました。営業利益については、円安の進行、要員数・販管費の増加などの影響をビジネスの伸長で吸収し、前期実績を上回る水準となりました。製品別では、クラウド型セキュリティ対策製品に加え、ランサムウェア攻撃の入り口となるメールを使った攻撃に対応するメールセキュリティ対策製品や、セキュリティ意識向上トレーニング、企業や組織に内在する脆弱性を可視化するソリューションなどのセキュリティ対策製品への注目度が高まってきており実績も増加しています。また、2024年11月に子会社化しましたFirmus Sdn. Bhd.他子会社2社を第3四半期連結会計期間より新たに連結対象会社としています。
クロス・ヘッド株式会社は、ストレージソリューション製品の大型案件を受注したことも含め、受注高、売上収益、営業利益ともに前期実績を大きく上回りました。
OCH株式会社は、受注高は前期実績を大きく上回りましたが、売上収益、営業利益ともに前期実績を下回る結果となりました。中小企業向けの新型UTM(Unified Threat Management)※11製品(SG-ONE)の主要取引代理店の販売実績の減少が主な要因です。現在、新規代理店への販売強化に取り組んでいます。
アプリケーション・サービス事業の売上収益は91億77百万円と前期比9億72百万円(11.8%)の増加となり、過去最高となりました。営業利益は1億41百万円と前期比1億75百万円(55.4%)の減少となりました。
当連結会計年度におけるアプリケーション・サービス事業の業績は、受注高、売上収益が前期実績を上回りましたが、営業利益は前年実績を下回りました。
CRM分野では、受注高、売上収益、営業利益のいずれも前期実績を大きく上回りました。売上収益は、サブスクリプションの積み上がりにより増加しております。
ソフトウェア品質保証分野では、引き続き車載分野でのテストツールの需要が旺盛です。また、サブスクリプションの積み上がりにより、受注高、売上収益、営業利益いずれも前期実績を大きく上回りました。
ビジネスソリューション分野では、入札案件などの受注の積上りが伸長しなかったことにより、受注高、売上収益、営業利益ともに前期実績を下回る結果となりました。アレクシアフィンテック株式会社は、受注、売上収益、営業利益ともに前期実績を上回りました。今後は、2023年7月に実施した事業再編による金融システム関連事業を拡大していきます。株式会社カサレアルでは、受注高は前期実績を上回りましたが、売上収益、営業利益については、IT研修などの教育事業の業績の伸び悩みや採算性の悪化により前期実績を下回る結果となりました。
新規事業である教育分野では、私立先進校に加えて、公立校への採用が進みました。また、本サービスの提供に付随して、導入校に対するクラウド型校務支援の基盤の提供案件もあり、受注高、売上収益共に前期実績を上回っています。営業利益については、製品開発、マーケティング、エンジニア・営業人員の増員等の投資を継続していることにより、期初予算よりも赤字幅は拡大しています。なお、当第4四半期連結会計期間において、製品開発等の固定資産を対象に、およそ3億33百万円の減損処理を行いました。
医療システム事業の売上収益は101億19百万円と前期比26百万円(0.3%)の増加となりました。営業利益は12億53百万円と前期比3億6百万円(19.7%)の減少となりました。
当連結会計年度における医療システム事業の業績は、医療情報クラウドサービス「NOBORI」の受注が堅調に推移し、累積の契約施設数は増加しています。加えて、既存ユーザのサービス契約更新も取りこぼすことなく受注できており、受注高は前期実績を上回りました。売上収益は医用画像管理システム(PACS)のクラウドシフトの影響等により、前期実績と同水準の結果となりました。営業利益は、期初計画に織り込んでいた医用画像管理システム(PACS)のクラウドシフト、事業拡大に向けた人員の増員、積極的な開発投資により前期比で減少しました。また、医用データの保管のためのパブリッククラウドの費用の増大も大きく影響しました。一般の患者をターゲットとしたPHR※12(Personal Health Record)サービスの開発や、医療機関、AIベンチャー・外部企業との連携による共同開発等の新規事業への先行投資を継続し、順調に成果を上げています。
医療関連の連結対象子会社である合同会社医知悟の業績は、大型案件の獲得により、受注高、売上収益、営業利益いずれも前期実績を大きく上回りました。
同じく医療関連の連結対象子会社である株式会社A-Lineについては、医療機関の診療用放射線の安全管理体制に対する投資意欲の向上により、線量管理システム「MINCADI」の受注は増加しています。その結果、売上収益は順調に増加し、営業損失は大幅に縮小しました。
以上の結果、当連結会計年度の売上収益は、648億82百万円と前期比115億78百万円(21.7%)の増加となり、過去最高となりました。売上総利益は205億54百万円と前期比23億51百万円(12.9%)の増加となりました。販売費及び一般管理費は、主に人件費が増加したことにより、135億61百万円と前期比12億51百万円(10.2%)の増加となりました。その結果、営業利益は66億68百万円と前期比8億18百万円(14.0%)の増加となりました。
以上により、税引前利益は64億24百万円と前期比5億69百万円(9.7%)の増加、親会社の所有者に帰属する当期利益は40億60百万円と前期比5億20百万円(14.7%)の増加となりました。
当連結会計年度末の流動資産の残高は、前連結会計年度末(以下「前年度末」という。)から149億84百万円(21.3%)増加し、854億46百万円となりました。前渡金が108億97百万円増加したことが主な要因であります。非流動資産の残高は、前年度末から47億円(30.7%)増加し、199億94百万円となりました。FirmusSdn. Bhd.の買収によりのれんが39億20百万円増加したことが主な要因であります。以上により、総資産は前年度末から196億85百万円(23.0%)増加し、1,054億41百万円となりました。
流動負債の残高は、前年度末から158億1百万円(30.6%)増加し、674億49百万円となりました。契約負債が154億37百万円増加したことが主な要因であります。非流動負債の残高は、前年度末から9億30百万円(13.2%)増加し、79億95百万円となりました。借入金が16億50百万円増加したことが主な要因であります。以上により、負債の残高は、前年度末から167億31百万円(28.5%)増加し、754億44百万円となりました。
資本合計の残高は、前年度末から29億53百万円(10.9%)増加し、299億96百万円となりました。利益剰余金が28億75百万円増加したことが主な要因であります。以上により、親会社所有者帰属持分比率は23.0%となりました。
中期経営計画「Creating Customer Value in the New Era」の数値目標と進捗
※2025年3月期目標につきましては、2024年10月31日開示の「2025年3月期第2四半期(中間期)業績予想と実績との差異及び通期業績予想の修正ならびに剰余金の配当に関するお知らせ」の通り、2024年5月9日公表の数値から修正しております。
※2026年3月期目標及び2027年3月期目標につきましては、2024年5月9日公表の数値から修正しております。
■情報基盤事業部門
当初の中期経営計画2年目の計画値(売上収益456.0億円、営業利益48.0億円)を修正し、売上収益526.0億円、営業利益62.0億円を見込んでおります。当期において、新規案件、更新案件の受注高が計画を大きく上回ったことにより、順調に受注残高を積みあがっている状況にあるため、売上収益は、ストック型ビジネスの伸長により、安定的かつ継続的な伸長を見込んでおります。営業利益は、サポート体制の強化に向けた積極的な投資を計画していることや、先行き不透明な為替の動向を勘案した見通しとなっております。また、当期第3四半期連結会計期間より新たに連結対象会社となったマレーシアのFirmus Sdn.Bhd.他子会社2社の業績貢献も見込んだ業績見通しとなっています。
■アプリケーション・サービス事業部門
売上収益102.0億円、営業利益5.0億円を見込んでおります。売上収益については、サブスクリプション型ビジネスへの移行が進展しサブスクリプション売上が順調に積み上がっていることにより、安定かつ継続的な伸長を見込んでいます。営業利益については、教育分野における人員の拡充を含め積極的な投資の規模が当初の中期経営計画策定時よりも拡大していますが、将来を見据えた経営判断として断行することを勘案した業績見通しとなっています。
■医療システム事業部門
売上収益102.0億円、営業利益9.0億円を見込んでおります。医用画像管理システム(PACS)のクラウドシフトは、短期的な売上・営業利益の減少要因となりますが、将来を見据えた経営判断として断行すること、また、事業拡大に向けた人員の拡充を含め積極的な開発投資を行うことを勘案した業績の見通しとなっています。
① キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
② 資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、取扱い製品であるネットワーク関連機器の保守用機材の購入等の設備投資資金及び販売用ソフトウェアの開発費等であります。
③ 資金の源泉
当連結会計年度末において273億25百万円の現金及び現金同等物の残高があり、当面の資金需要に充当し得る十分な資金を保有しております。
なお、資金の機動的かつ安定的な調達枠を確保するとともに、より一層の財務基盤の強化を図ることを目的として取引銀行5行との間に総額57億40百万円の当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結しております。
当社グループが成長を続けていくためには多くの課題が残されていると考えております。具体的には、①業界動向や顧客ニーズ等の「外部環境変化への対応力強化」と、②人材面や業務プロセスの効率化等の「内部の課題解決」の二つに大別されます。
① 外部環境変化への対応力強化
・為替変動への対応
当社グループの取扱い製品のうち、海外から仕入れた製品の大部分は米ドル建で契約しております。為替相場の急激な変動があった場合等には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため為替変動によるリスクをヘッジする目的で先物為替予約を行っております。また販売先に対して為替相場の状況に応じた価格交渉を行っております。
・大型の継続取引における資金繰り
昨今、サイバーセキュリティ分野においてもクラウドサービス化が進み、複数年にわたるサブスクリプション契約など顧客との継続取引契約が大型化する傾向にあります。その際は、顧客よりの資金回収が単年度毎となり、一方で、海外ベンダーへの支払いが一括前払いとなるケースがあり資金繰り負担が発生する可能性があります。そのため、回収サイクルと前渡金負担のギャップを注視し、計画的な資金繰りを行って行きます。
・持続的な成長シナリオの構築
現在、当社グループの事業セグメントにおいては、ニッチ市場ながらも競争力の高い製品やサービスを展開しておりますが、今後も持続的に成長するためには、市場ニーズに対応した新しい製品やサービスを切れ目なく立ち上げていく必要があります。
・ビジネスモデルの多様化
企業のITシステム投資の方向性が、設備の「所有」からサービスの「利用」へと加速度的に変化しております。IT資産においてもオフバランス化が進み、「持たざる経営」がITの分野にも浸透しつつあります。
これまで、企業はITシステム(ハードウェア、ソフトウェア、開発)を資産として購入・運用してきましたが、ITシステムを資産として保有せず、外部事業者のサービスをインターネット越しに活用するクラウドサービスの利用が広がっております。これにより、企業側はITシステムの初期投資や運用・保守等の負担を低減することができます。当社グループでは、アプリケーション・サービス事業において、自社開発ソフトウェア・パッケージの販売、保守を行ってまいりましたが、これらソフトウェアの機能をインターネット経由のサービスとして提供するクラウドサービス事業に参入しております。売り切り販売中心のフロー事業に加え、継続的に収入が得られるサービス事業によるビジネスのストック化をさらに推進します。クラウド時代の顧客企業ニーズの変化に積極的に対応し、ストック型ビジネスを中心戦略とした「持たざる経営」を支えるサービス・プロバイダー、サービス・クリエーターとしての地位の確立を進めてまいります。
・サービスのフルライン化
上述のとおり、IT業界ではクラウドという新しいビジネスモデルへの対応が必要となる一方で、従来どおりITシステムの自社所有を希望する企業があります。このため、当社グループは、システム導入以降に必要となる保守・運用サービスについても積極的に拡充し、システムのライフサイクル全てをカバーするフルラインのサービス提案を行ってまいります。また、グループ経営を一層強化することにより、システムのフルアウトソーシングの請負にも注力し、継続的な取引機会の確保に努めてまいります。24時間対応のオンサイト保守やリモート監視業務については、外部委託からクロス・ヘッド株式会社への委託へ切り替え、グループ内での機能の自活、内製化を進めております。また、株式会社カサレアルの完全子会社化によりソフトウェアの開発要員を拡充しておりますので、開発業務についても同社技術力を活用した効率化を進めます。以上の取り組みにより、グループの総合力を発揮するとともに、サービスのフルライン化を進めます。
・業界構造
一般的に、ソフトウェア開発会社は人的資源中心のビジネスであり、大規模な初期投資を必要としないことから、少人数の企業から大手のシステム・インテグレーターまで多数の企業が存在します。業界全体が多重の下請け構造になっているため、下請け構造の下層に位置する企業は、規模の大小にかかわらず苦しい経営を強いられております。このため、生き残りを図るためには、付加価値の高いサービスを提供し、顧客企業への直販、直接契約を志向することが重要であり、フルラインでのサービス提供と総合力の発揮、一定規模の開発体制が求められます。当社グループは、今後もM&Aの活用を経営の選択肢に取り入れ、スピード感を持って付加価値の向上、総合力の発揮、規模の拡大を目指してまいります。
・人材の採用と育成
当社グループは、これまで即戦力の中途入社社員の採用により事業の拡大を図ってまいりましたが、中堅社員層の比率が相対的に高くなっているため、将来的なコストアップを防ぐためにも、今後は、若手社員の拡充に軸足を移し、新卒や第二新卒の採用活動に力を入れていく必要があります。
また、一般的な労働集約型ビジネスではない、高付加価値なストック型ビジネスの拡大や、新規事業の創発等の事業戦略の実現に向け、今後のITの技術革新や業界を取り巻く環境変化にキャッチアップし、2023年4月に新たに策定した「経営戦略を実現する人事戦略」に沿って、新たな価値を創造できる人材育成計画の策定及び実現を進めてまいります。
・ 品質カイゼン活動
ITシステムは、社会インフラ化しており、また、企業経営にとっても経営戦略を具現化するためのツールとして、ITシステムの果たす役割は一層重要性を増しております。ITシステムを構成するハードウェアの性能は日進月歩で向上しておりますが、人的資源に依存するソフトウェアの開発においては、依然として属人的な要素が少なくありません。開発プロセスの標準化や科学的手法によるテストの合理化、既存ソフトウェア部品の有効活用等、さまざまな努力を重ね、ソフトウェア品質、サービス品質の向上に努めなければなりません。高品質な製品・サービスの提供は勿論のこと、企業業績の安定化のためにも、品質カイゼン活動を積極的に推進してまいります。
・ 社内ITシステムの充実
業務プロセスを効率化、合理化していくため、また、事業上の迅速な意思決定を促進するためにはITシステムの積極的な活用が不可欠であると認識しております。経営者のリーダーシップのもと、当社のIT推進部において、デジタル技術の活用による社内生産性の向上及び事業活動の質の向上に向けて自社ITシステム戦略を策定しております。また、月次単位の定期会議を開催し、経営者や他部署を交え、課題の把握及び今後の施策の検討を行っております。具体的には以下のような取り組みテーマがあります。
1 開発・導入のスピードアップ、品質向上
2 人材の育成、充実、体制の再構築
3 能動的な企画・提案活動
4 投資対効果の計測
5 クラウド化の促進
6 セキュリティの安心・安全の追及
上場企業として求められる内部統制を着実に実行していくためにも、ITによる業務統制は重要な役割を担っていると考えております。当社グループは、社内ITシステムの継続的な開発を通じて、業務プロセスの効率化、企業活動の可視化を図ってまいります。
販売代理店契約
子会社株式の取得
当社は、2024年10月18日開催の取締役会において、マレーシアの大手サイバーセキュリティ事業者であるFirmus Sdn. Bhd. の全株を取得し子会社化することを目的とした株式譲渡契約を決議し、2024年10月21日付で契約を締結しました。同年11月12日、本契約に基づき買収対象企業の株式を取得しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記(企業結合及び非支配持分の取得)」に記載のとおりであります。
常に最先端の技術動向を注視するとともに、多様化・高度化する顧客ニーズを把握し、顧客企業における事実上の諸問題を迅速に解決しうる最適なソリューションのあるべき方向性を調査・研究しております。基本的には、顧客ニーズに近いアプリケーション分野では、日本独自の顧客ニーズを反映するために当社独自技術の開発・製品化を行なうことを基本方針とし、基盤(ネットワーク・インフラ、サイバーセキュリティ)技術、プラットフォーム技術、ミドルウェア※13技術は、北米を中心とした先端テクノロジー開発企業の技術・製品を発掘し有効活用します。
企業活動においてIT技術が経営に与えるインパクトは益々大きくなっており、企業活動の変革を実現するためのシステム化ニーズに応えられる技術の発掘・研究・商品化・応用を、当社グループの研究開発活動のテーマとしております。具体的には、ソフトウェア開発技術、仮想化技術、サイバーセキュリティ技術、クラウド関連技術、運用・監視技術、ソーシャル・メディア関連技術、ビッグ・データ分析技術、ソフトウェア品質向上関連技術、IoT関連技術、AI関連技術及びAIと当社製品との連携に関して、金融工学理論、画像圧縮技術、アジア新興国の市場調査などの調査・研究・開発を行い、技術力の向上とともに、具体的なビジネス戦略への展開を目指しております。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は、