第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社グループは、「HCI(Human Communication Integration)の実現」をビジョンに掲げ、人がコンピュータやAIに自然に意思を伝えられる「ソフトコミュニケーションの時代」を拓くべく、有用な最先端技術を広く社会へ普及させ、その実用化を通して新しい価値観、文化を創造してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、売上高および営業利益を経営指標とし、2027年3月期に売上高100億円、営業利益25億円にすることを目標としております。

 

(3)経営環境、経営戦略及び対処すべき課題等

当社グループは、AIを利用することで仕事の効率を高め、そしてAIを相棒にすることで仕事を楽しくするAISH(AI Super Humanization)の実現によりサステナブルな社会の実現に貢献することを目指しております。

その第1ステップとして、BSR拡大期の最終年度である2027年3月期に売上高100億円、営業利益25億円の達成を目指します。そのための施策は以下のとおりであります。

 

①新規サービスの市場投入

仕事の効率化や快適性を高める「パーソナライズAIエージェント注1)」(特許取得済み)や、WEBサイトにタグやタグテキスト注2)を活用した「アドバンストコミュニケーション注3)」(特許取得済み)を導入することにより、WEBサイトの来訪者が必要とする情報を効率よく得ることができるサービスなどの新規サービスを市場に投入してまいります。

 

②新たな利用料モデルの実装によるプラットフォームビジネスの拡大

これまで、製品・サービスの利用企業の利用目的に沿った集合化と命名により、ユーザー数の増大に繋げてきたプラットフォームや、新たなプラットフォームに、新たな利用料モデルを実装することで、利用者を格段に増大させビジネスを拡大させてまいります。新たな利用料モデルとは、アプリケーションやサービスのサブスクの利用料を従量利用料に変換できる利用料モデル(特許取得済み)です。これまで、利用時間の問題で利用を断念していた利用者に使わせることや、これから必要になるAIのスキリングを安価に行え、AIを使うことでの仕事の効率化や、AIを仕事の相棒にすることでの仕事の快適化に繋げることができるようになります。

 

③音声認識の市場開発の深化によるビジネスの拡大

これまでは、既存の顧客のニーズを分析して製品を開発し、PoC注4)などにより顕在化されたニーズを反映した製品として浸透を図ることで、音声認識の市場開発を行ってまいりました。これからは、顧客の潜在ニーズを顕在化するための開発や市場への浸透などを、他社との連携により行うことを加えることで、市場開発の規模と速度を高めてまいります。そのために、M&Aも有力な手段のひとつと捉えております。

 

 

(注1)パーソナライズAIエージェントとは、利用企業や利用者の個別の利用目的に合わせたカスタマイズにより、汎用型のAIエージェントを正確さや処理速度で凌ぐことが可能なAIエージェントのことをいいます。また、カスタマイズとは、AIが自らの判断のごとくに動くための知識やデータを集めた知識ベースやデータベースを、利用者の側で正確さの向上に向けて調整することをいいます。

 

(注2)WEBサイト来訪者の欲しいと思われる情報に、タグという目印を関連付けて検索しやすくします。タグは、その名称と関連付けられた情報に関してのメタ情報で構成されます。また、タグテキストは、タグ名とメタ情報を言語化した属性のテキストです。

 

(注3)これまでにない先進的なコミュニケーション機能のことをいいます。タグ名を流動的に表示するサイネージウィンドウと、可読型のタグテキストを固定的に表示するコミュニケーションウィンドウとその表示内容を変えられる操作機能とにより、WEB来訪者のWEBサイトとの能動的なコミュニケーションによる効率的な情報の取得が可能となります。

 

(注4)PoC(Proof of Concept):製品の期待効果の検証のために行われるプロセスです。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、社会のサステナビリティに自らのサステナビリティの追求によって貢献するという考え方を有しております。当社グループのビジョンは、「HCI(Human Communication Integration)の実現」であり、これは、人がコンピュータやAIに自然に意思を伝えられることで利用が進み、働き方改革から働き甲斐改革へと社会をウェルビーイングに導きサステナビリティを実現することを指向したものです。

このビジョンのもと、環境・社会・ガバナンスを重視したESG経営の取り組みを行い、中でも、社会課題の解決が特に重要と認識し経営の取り組みを行っております。

具体的には、日本の喫緊の社会課題はDXの促進であり、それにはキーボードやマウス操作を前提としたITアプリケーションやITサービスの利活用を必要としますが、日本人のキーボード操作が欧米人に比べて極めて遅いという現実のため、当社のAI音声認識を利用しキーボードやマウス操作に起因する生産性の低さを改善するITアプリケーションやITサービスを市場投下してまいります。更には、当社のAI音声認識だからこそできる他の社会課題の解決にも取り組んでまいります。

 

(1)ガバナンス

 急速に変化する社会環境や事業環境に対応し持続的成長を実現するために、多様性に対応した取締役会を構築してまいります。よって、取締役会において、経営上とあわせてサステナビリティ関連のリスク及び機会を監視してまいります。そのリスク管理及び体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 当社は、取締役会を中心とした経営基盤を強化し、事業を成長させることで社会課題解決の成果をあげ社会のサステナビリティに貢献してまいります。

 

(2)戦略

 当社は、事業の成長とは組織を構成する人の成長の足し算と捉えています。また、人の成長は、組織が目標とする課題解決に対して、各人に与えられた役割を果たす気持ちと行動で得られます。それらを最大限に引き出すために当社は、「ETICA」(Earning(良い報酬)、Task(良い仕事)、Information(有用な情報)、Colleague(尊敬、刺激しあえる仲間)、Asset(資産の形成))を重視した人的資本の強化に取り組んでまいります。

 

(3)リスク管理

 当社はリスク管理規程を定め、主に取締役から構成されるリスク管理委員会を定期的に開催することにより、当社が直面する可能性のあるリスクを識別すると共に予防策を講じております。そのような中で、サステナビリティ経営推進において想定されるリスクも含めて全体的に管理し、必要な対策を講じております。

 

(4)指標及び目標

 社会課題の解決による事業成長が、当社がサステナビリティに対して貢献できる重要なことであると考えております。よって、掲げている経営目標がサステナビリティの目標であり、指標はその目標に対する乖離度と乖離を埋める活動の進捗度としております。

 また、人的資本に関する指標については、(2)戦略に記載した「ETICA」を重視した人的資本の強化に取り組む中で、最も重要である報酬を重視し平均年間給与を指標としております。目標は、2025年3月期の平均年間給与6,258千円の実績を、7,000千円に向上させることにしております。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの業績は、今後起こり得る様々な要因により大きな影響を受ける可能性があります。

 以下に当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。当社グループは、当社グループでコントロールできない外部要因や事業上のリスクとして具体化する可能性は必ずしも高くないと見られる事項も含め、投資家の投資判断上重要と考えられる事項については、積極的に開示しております。当社グループは、これらのリスクが発生する可能性を認識したうえで、その発生の予防および対応に努力する方針ですが、当社グループの経営状況および将来の事業についての判断は、以下の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。また、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありません。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 業績の変動について

A 経営成績について

 当社グループは、従来の音声認識のアプリケーションやサービスを販売するビジネスを経て、販売するばかりでなく、顧客集団がそれらを使い顧客集団の目的、例えば、生産性の向上や営業効率・効果を高めるなどの課題を解決する支援サービスの提供をも併せたビジネスを目指しております。それをBSR(Beyond Speech Recognition)と名付け、目標値を超えるビジネス活動と定義して、顧客集団が製品・サービスを使い始めるBSR導入期から、その利用を継続させるBSR展開期を経て、製品・サービスの拡大やそれらを利用する顧客集団の数を増大させるBSR拡大期へとその活動を進めてまいりました。当社グループは、2024年3月期から2027年3月期をBSR拡大期とし、BSR拡大期の最終年度では売上高100億円、営業利益25億円を目指しており、現行ビジネスの拡大に「仕事における新たな日常を創る」という新規ビジネスへの挑戦の成果を加えることで目標値超えを行ってまいりますが、掲げているビジネス活動の遅延、音声認識市場や外部環境の変化等、当社が想定できない諸般の要因で、当社の事業が計画どおりに進捗しなかった場合には、想定している経営成績に影響する可能性があります。

 

B 四半期毎の業績の変動
 当社グループの音声事業は、プロダクト販売やソリューションビジネスというフロービジネスとサブスクリプションサービスなどのストックビジネスで成り立っています。現状においてストックビジネスの比率が向上しているものの、フロービジネスの出荷および検収が毎年9月および3月に集中する傾向があり、売上比率の関係から当社グループ全体の売上も第2四半期と第4四半期に偏重しております。

 

C 予算編成

 予算は経営推進本部を中心とした予算編成体制を構築し、予実精度の向上に努めております。しかし、音声認識市場の創造を行いながらビジネスを進めており、当社が手掛ける各事業の将来予測が難しい部分があることや、昨今の経済環境の急激な変化等想定できない外部要因による影響を受ける場合があります。よって、各事業で予算と実績の管理を徹底し、予実の乖離が起こらないように努めますが、今後も乖離が発生する可能性があります。なお、当社は予算と実績の乖離が発生した段階で、速やかに業績予想の修正の開示を行います。

 

② 音声認識市場開拓において市場展開から市場拡大が遅延すること

 当社グループは今後の音声認識市場開拓の分野をコールセンター、医療・介護、議事録作成・文字起こし、音声認識エンジンプラットフォーム、モバイル・ビジネスソリューション、金融・保険、製造・物流・小売、建設・不動産等と考えております。「仕事における新たな日常を創る」という新規ビジネスにより、既に市場導入に成功した現行ビジネスを展開から拡大フェーズへとその移行を加速させてまいりますが、新規ビジネスの導入と現行ビジネス自体の展開から拡大フェーズへの移行が想定どおりに行えず、長い時間を要する可能性もあります。

 

③ AI音声認識について

A 新製品及び新技術の開発
 現在、AI音声認識の基礎的な開発は終了し、既に様々な商品を販売しておりますが、今後とも技術の革新と向上が必須です。「音声入力インターフェース」として利用者が「ないと困る」を感じるためには、単なる音声認識精度の向上のみならず、対話機能の高度化、口語体文章認識能力の向上、辞書・言語モデルの広汎化および耐雑音性の強化等の技術開発が必要であり、当該開発に資金や時間が想定以上に必要となった場合、あるいは当社グループが想定する売上計画が達成できなくなり、先行的に支出された研究開発費等の回収が困難になった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

B AI音声認識に代替する新技術の誕生

 AI音声認識に代わる新しいインターフェース等の誕生、普及により、当社の技術優位性がなくなる等、当社が明確な競争優位性を確保できなくなった場合には、当社グループの経営に影響を与える可能性があります。

 

C 競合他社について
 当社グループの音声事業の競合製品には、国内外の音声認識事業者や各社の音声認識事業部門が開発した製品やそれらを利用した製品等が挙げられます。現時点では当社の製品は、高い認識率、速い認識処理、不特定話者対応、発話スピードへのフレキシブルな対応、発話者のイントネーションやアクセント等の違いへの対応、耐雑音性能等の点で国内外の競合他社の製品と差別化されると考えておりますが、将来的に高い技術力および開発力を有する競合企業が出現する可能性は否定できず、競争の激化によって当社の優位性が失われた場合、また、競合他社が他の有望な音声認識市場を創造開拓し、当社グループが後塵を拝した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 また、当社のAI音声認識が技術的に秀でていたとしても、他の音声認識事業者がアライアンス・パートナー戦略で優位に立った場合、当社のAI音声認識が音声認識市場での高シェアを獲得できない可能性があります。

 

④ 当社の組織について

A 人材の育成について

 当社グループは、現段階では事業運営に適した従業員数および組織形態となっております。しかしながら、業務を従業員個人の技量や経験・ノウハウに依存している部分もあります。そのため、各部署における既存の人材の社外流出・病欠等による長期休暇・欠勤等が生じた場合、当社グループの事業活動に支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。このため、従業員間における技量、ノウハウの共有化を組織として進めるとともに、従業員個人の技量や経験・ノウハウなどの研鑽環境の充実と成長を促す仕組みの活性化を経営の重要課題と捉えています。

 

B 人材の確保について

 当社グループでは優秀で意欲に満ちた魅力ある人材を確保できるよう、自由で創造性に満ちた企業文化の醸成に力を入れておりますが、今後当社グループが必要とする人材が、必要な時期に確保できる保証はなく、人員計画に基づいた採用が行えなかった場合、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 法的なリスクについて

A 知的財産権について

 当社グループが第三者の知的財産権を侵害する可能性、および当社グループが今後進出する事業分野において知的財産権を取得できず、さらに第三者から必要なライセンスを取得できない可能性があります。当社の音声認識技術及び音声認識ソリューションは広範囲にわたる技術を利用しており、その技術が第三者の保有する知的財産権を侵害しているという主張が当社に対してなされる可能性が皆無とはいえず、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

B 特有の法的規制・取引慣行について
 現在、当社グループの事業に悪影響を与えるような法的規制はありませんが、今後も制定されないという保証はありません。もし、かかる法的規制が制定されたり、解釈が不明瞭な規制が制定されたりした場合、当社グループの業績に影響を与えたり、事業展開のスピードに悪影響を及ぼす可能性があります。

 

C 情報セキュリティについて
 当社グループは、個人情報を含む重要情報の管理については、プライバシーマークの取得に加え、入退室管理システムやPC操作ログの管理システムを全社に導入し、情報管理を徹底しております。しかしながら、個人情報を含む重要情報が当社グループ関係者や業務提携・委託先などの故意または過失により外部に流出したり、悪用されたりする可能性が皆無とはいえません。このようなことが起こった場合、当社グループのサービスが何らかの悪影響を受けたり、ブランドイメージが低下したり、法的紛争に巻き込まれる可能性があります。

 

⑥ 投資・M&A等の事業展開について
 当社グループは、AI音声認識を活用した新サービスの立上げおよびアジアを中心としたグローバルなビジネスの展開を計画しております。そのため、それらの計画を早期に達成するために投資やM&A等は、迅速かつ効率的・効果的手段の一つと考えております。
 そこで当社グループは、投資やM&A等を行う場合においては、対象企業の財務内容や契約関係等について詳細なデューデリジェンスを行うことによって、極力リスクを回避するように努めてまいります。しかし、買収後その他における偶発債務の発生等、未認識の債務が判明する可能性も否定できません。また、投資やM&A等にあたっては、事業環境や競合状況の変化等により当初の事業計画の遂行に支障が生じ、当社グループの事業展開への影響が生じるリスクや、投資を十分に回収できないリスク等も存在しており、結果的に当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性もあります。また国外企業を対象とした場合には、上記のリスク以外にカントリーリスクや為替リスクを被る可能性もあります。

 

⑦ 感染症、自然災害に関するリスク

 新型コロナウイルスなどの感染症で事業活動に何かしらの制限や要請がなされた場合、計画している事業が遅延する可能性があります。また、その影響が長期化する場合や、自然災害による不測の事態が生じた際には、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑧ サイバー攻撃等について

 当社グループの事業活動においては、情報システムの安定運用の重要性が増大しています。サイバー攻撃やコンピュータウイルスへの感染等による情報セキュリティ事故が発生した場合、情報システムの深刻な不具合やデータ改ざんが、当社グループの社会的信用やブランド価値の棄損に繋がり、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 配当政策について

 当社は、株主の皆様に対して利益還元を経営の重要事項のひとつと位置付け、当社の事業拡大に向けた戦略的投資や財務体質強化のために必要な内部留保を勘案し、連結配当性向30%(1株当たり当期純利益の30%を1株当たりの配当金とする)を基準として、株主への利益還元に取り組むことを基本方針としております。

 しかしながら、通期業績、財政状態及びその他の状況の変化によっては、配当政策に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

(経営成績の状況)

当連結会計年度におけるわが国経済は、企業業績の好調を背景とした雇用環境の改善等により景気は緩やかに回復しているものの、米国政権交代に伴う政策動向や、物価上昇による国内景気の懸念等、先行きは不透明な状況が続いています。

当社グループは、2024年3月期から2027年3月期をBSR拡大期とし、BSR拡大期の最終年度では売上高100億円、営業利益25億円を目指しております。これを、音声認識とAI技術を融合させた当社独自のパーソナライズAIの市場導入を行い、それを利用することでの業務の効率化と快適化により達成することを計画しております。ここで、パーソナライズAIとは利用企業や利用者の個別の利用目的に合わせたカスタマイズにより汎用型のAIを正確さや処理速度で凌ぐことが可能なAIのことをいいます。また、カスタマイズとはAIが自らの判断のごとくに動くための知識やデータを集めた知識ベースやデータベースを利用者の側で正確さの向上に向けて調整することをいいます。

そのような計画のもと、当連結会計年度につきましては、BSR導入期・展開期で伸長させた製品やサービスをプラットフォーム化するとともに、販売パートナー・開発パートナーとの連携を強化し、あわせて、生成AI等のAI技術を各種製品やサービスへ連携強化させることで、ユーザー数の格段の増大とさらなるストックビジネスの拡大を進めてまいりました。

当連結会計年度においては、各企業で生産性向上にAI技術を活用するニーズの高まりを背景にAI音声認識AmiVoice® の各種製品やサービスの導入・利用の継続が堅調に推移しました。よって、売上高、営業利益、経常利益において4期連続で増収増益し過去最高を実現することができました。

売上高に関しましては、BSR1(第一の成長エンジン)において、全ての事業部が増収し前年同期比11.0%の増収、BSR2(第二の成長エンジン)においては海外事業部が増収し前年同期比13.8%の増収となりました。その結果、当社グループ全体では、前年同期比11.1%の増収となりました。

損益に関しましては、営業利益につきまして、BSR1(第一の成長エンジン)において、主力事業であるCTI事業部、VoXT事業部、医療事業部が増益し、前年同期比で3.1%の増益となりました。BSR2(第二の成長エンジン)においては、前年同期比で赤字幅の縮小となりました。その結果、当社グループ全体では、前年同期比5.5%の増益となりました。営業利益の増益により経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益も増益となりました。

これらの結果、当連結会計年度は、売上高6,665百万円(前年同期は売上高6,001百万円)、営業利益1,442百万円(前年同期は営業利益1,367百万円)、経常利益1,539百万円(前年同期は経常利益1,414百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益1,408百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益1,005百万円)となりました。

 

音声事業の各分野別の状況は、以下のとおりであります。

 

BSR1の状況(連結調整前)

売上高(前年同期比)

営業利益(前年同期比)

5,945百万円(11.0%増)

1,520百万円(3.1%増)

 

ストック売上高(前年同期比)

ストック比率(前年同期比)

4,433百万円(15.9%増)

74.6%(+3.2%)

 

CTI事業部(コンタクトセンター業界向け事業)

 大手SIerを中心とした販売パートナーと連携しコンタクトセンター向けAI音声認識ソリューション「AmiVoice® Communication Suite」の導入が堅調に推移しました。

 「AmiVoice® Communication Suite」に外部生成AI連携機能を追加し、通話内容の要約やCRM(顧客管理システム)との連携など製品の性能の強化を進めました。また、セキュアなローカル環境で利用企業の所有データなどにより正確性を高めた大規模言語モデルを利用できる「AOI LLM for AmiVoice® Communication Suite」の先進的な企業の採用などにより、コンタクトセンター業界におけるAI活用のニーズの喚起と増大化を進めました。

 ライセンス数の増大及びストック比率を向上させたことで、増収増益となりました。

 ストック比率:前期末71.3%→今期末77.1%

 ライセンス数(累計):前期末74,314→今期末82,779

VoXT事業部(議会・会議ソリューション事業)

 AI音声認識AmiVoice®を活用した議事録作成・文字起こし支援アプリケーションやサービスの需要が増大し、ユーザー数が増加いたしました。また、議事録ソリューションのプラットフォーム「VoXT One」の各種サービスをバージョンアップし、発言者識別機能を向上させたほか、LGWAN(総合行政ネットワーク)環境でAI要約機能を利用できるようにしました。

 自治体向け及び民間企業向け両方のライセンス数が増大したことで、増収増益となりました。

 ストック比率:前期末95.2%→今期末91.2%

 主力2製品のライセンス数:前期末4,446→今期末20,396注1)

 

注1)顧客1社からの15,000ライセンスの受注による増加です。

 

医療事業部(医療業界向け事業)

 2024年4月から開始された「医師の働き方改革」で、医師の勤務時間の適正化に向けた取り組みが必要となっております。それにともない、病院における医師や看護師、医療従事者の生産性向上へのニーズが高まっており、主力製品であるAI音声入力ソフト「AmiVoice® Ex7」シリーズや医療向けAI音声認識ワークシェアリングサービス「AmiVoice iNote」の販売が好調に推移し、増収増益となりました。

 ストック比率:前期末33.5%→今期末39.6%

 ライセンス数(累計):前期末52,251→今期末64,775

 

SDX事業部(API・SDK/接客・商談ソリューション/製造・物流業界向け事業)

 医療、製薬、保険、金融などの分野に特化したAI音声認識AmiVoice® APIをクラウド型で提供する「AmiVoice® Cloud Platform(ACP)」の利用企業数と利用時間数が増加しました。

 従来のハイブリッド型の音声認識を認識精度で上回るEnd-to-End型の音声認識を利用できるAI音声認識API「AmiVoice® API」をリリースしました。

 接客・商談の会話を見える化・分析するサービス「AmiVoice® SF-CMS」と、AIを活用して効率的な営業トレーニングを可能にするサービス「AmiVoice® RolePlay」を集合化した営業支援プラットフォーム「AmiVoice® Sales Boost(ASB) Platform」の提案活動を進めました。

 ストック比率:前期末79.6%→今期末71.9%

 領域特化型エンジンのユーザー数(累計):前期末3,804→今期末6,187

 

BSR2の状況(連結調整前)

売上高(前年同期比)

営業利益(前年同期比)

762百万円(13.8%増)

△98百万円(-)

 

BDC本部(建設・不動産業界向け事業)・海外事業部(海外企業向け事業)

 BDC本部は、建設業界向け建築工程管理のプラットフォームサービス「AmiVoice® スーパーインスペクションプラットフォーム(SIP)」の導入が進み、堅調にライセンス数を増加させました。また、同サービスを活用した人材サービスを拡大するために、連結子会社株式会社アミサポとの連携を進めました。

 主力製品・サービスは堅調に伸びたものの人材サービスの上半期の停滞により売上高はほぼ前年並みとなりましたが、損益に関しましては、黒字化いたしました。

 ライセンス数(累計):前期末55,530→今期末69,344

 海外事業部は、大口顧客の利用が増大したため、大幅に増収し赤字幅の縮小となりました。

 

連結子会社等

 AMIVOICE THAI CO., LTD.(タイ王国)は、主要顧客に対する案件獲得と収益改善に向けた事業構造の改革を進めました。その結果、減収するとともに事業構造の改革関連コストの計上のため赤字幅が拡大いたしました。

 株式会社速記センターつくばは、自治体、裁判所及び民間向け案件の受注獲得等を進め、増収増益となりました。

 株式会社アミサポは、BDC本部における人材ビジネスの運用を請け負いましたが、採用経費等先行投資を回収するに至らず赤字となりました。

 

(財政状態の状況)

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は9,341百万円となり、前連結会計年度末に比べ255百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が848百万円減少したものの、金銭の信託が979百万円増加したことによるものであります。固定資産は6,628百万円となり、前連結会計年度末に比べ110百万円減少いたしました。これは主に繰延税金資産が236百万円、ソフトウエアが211百万円、有形固定資産が181百万円増加したものの、金銭の信託が979百万円減少したことによるものであります。

 この結果、総資産は15,970百万円となり、前連結会計年度末に比べ145百万円増加いたしました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は2,509百万円となり、前連結会計年度末に比べ16百万円減少いたしました。これは主に未払金が135百万円増加したものの、売上に関する前受金が52百万円、1年内返済予定長期借入金が58百万円減少したことによるものであります。固定負債は1,154百万円となり、前連結会計年度末に比べ888百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が850百万円減少したことによるものであります。

 この結果、負債合計は3,663百万円となり、前連結会計年度末に比べ904百万円減少いたしました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は12,307百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,049百万円増加いたしました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益1,408百万円及び剰余金の配当303百万円によるものであります。

 この結果、自己資本比率は77.1%(前連結会計年度末は71.0%)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

営業活動により増加(△は減少)したキャッシュ(純額)

1,494

1,432

投資活動により増加(△は減少)したキャッシュ(純額)

△1,270

△1,069

財務活動により増加(△は減少)したキャッシュ(純額)

△978

△1,209

現金及び現金同等物に係る換算差額

4

△2

現金及び現金同等物増減額(△は減少)

△750

△848

 

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ848百万円減少し、4,105百万円となりました。

 各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりです。

 

〈営業活動によるキャッシュ・フロー〉

 営業活動の結果、獲得した資金は1,432百万円となりました。これは主に税金等調整前当期純利益1,606百万円を計上したことによるものであります。

 

〈投資活動によるキャッシュ・フロー〉

 投資活動の結果、使用した資金は1,069百万円となりました。これは定期預金の預入による支出4,600百万円、定期預金の払戻による収入4,600百万円、無形固定資産取得による支出561百万円、投資有価証券の取得による支出559百万円等によるものであります。

 

〈財務活動によるキャッシュ・フロー〉

 財務活動の結果、使用した資金は1,209百万円となりました。これは主に長期借入金の返済による支出908百万円、配当金の支払額301百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

音声事業(百万円)

1,618

111.3

合計(百万円)

1,618

111.3

 (注) 生産実績は当期総製造費用で表示しております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

音声事業

6,796

101.3

2,343

105.9

合計

6,796

101.3

2,343

105.9

 (注) 上記の金額は販売価格によっております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

音声事業(百万円)

6,665

111.1

合計(百万円)

6,665

111.1

 

(2)経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮説

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき、重要な会計方針及び見積りによって作成されております。具体的には、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績の分析

当連結会計年度の経営成績の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

④ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b. 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ848百万円減少し、4,105百万円となりました。

当連結会計年度においても、安定的に利益を計上しており、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す財務体質への改善が進みました。今後も営業利益率を向上させることで、さらなる財務体質の改善を進めてまいります。

 当社グループは流動性かつ安全性の高い現金及び預金を有しており、事業活動を推進する上で当面の必要な資金は既に確保しています。

5【重要な契約等】

(1)技術受入契約

① 第27期以前からの重要契約

契約会社名

相手方の名称

契約書名

契約内容

契約期間

株式会社アドバンスト・メディア

(当社)

Solventum Health Information Systems,Inc.

Development and
Cross License
Agreement(DCLA)

(開発及びクロスライセンス契約)

Multimodal Technologies, LLC(以下「MTL社」)の音声認識技術を組み込んだ日本語音声認識の製品・サービスを独占的に作成・販売(サブライセンス等による間接的な販売形態を含む。)する権利を、当社に付与する契約。

2003年2月20日から2025年3月31日。以後、1年毎の自動更新。

株式会社アドバンスト・メディア

(当社)

Solventum Health Information Systems,Inc.

Supplemental Agreement

(補足契約)

4,450千ドルを支払い、ソースコードの開示を受け、改変権を獲得するとともに、MTL社から当社社員に対して同ソースコード利用のトレーニングの提供を受けるための契約。

2006年7月4日から2025年3月31日。以後、1年毎の自動更新。

株式会社アドバンスト・メディア

(当社)

Solventum Health Information Systems,Inc.

FOURTH SUPPLEMENTAL

AGREEMENT

(補足契約書4)

ロイヤリティの払込済期間を2025年9月30日までの5年間延長。

2014年7月11日から2025年9月30日まで。

 

 

株式会社アドバンスト・メディア

(当社)

Solventum Health Information Systems,Inc.

FIFTH SUPPLEMENTAL AGREEMENT

(補足契約書5)

2025年10月1日から2035年9月30日までの10年間のライセンス費用を一括して前払いする契約。

2019年7月25日から2035年9月30日まで。

 

 上記のすべての契約について、2024年5月に相手方の名称が3M Health Information Systems,Inc.から、Solventum Health Information Systems,Inc.へ変更になりました。

 

② 第28期に締結した重要契約

該当事項はありません。

 

(2)その他の契約

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、「HCI(Human Communication Integration)の実現」をビジョンに掲げ、人がコンピュータやAIに自然に意思を伝えられる「ソフトコミュニケーションの時代」を拓くべく、AI音声認識および有用な最先端技術について研究開発活動を行っております。

当連結会計年度においては、「AI音声認識AmiVoice®」のさらなる認識精度向上、およびAI音声認識の周辺技術や関連技術の研究開発について取り組みました。そして、各分野別に新規製品・サービスの開発、既存製品の機能向上および強化について取り組みました。

 

 当連結会計年度における研究開発活動の概要は、以下のとおりであります。

① 「AI音声認識AmiVoice®」において、最新のディープラーニング技術に関する研究、実装を進め、End-to-End型音声認識エンジンの精度向上、適応範囲の拡大、機能の追加や改良などを行いました。

② AI音声認識APIサービス「AmiVoice® API」に新たにEnd-to-Endを採用した次世代音声認識エンジンを搭載し、従来のハイブリット型エンジンを上回る高い音声認識精度を実現しました。

③ ローカル環境向け大規模言語モデル(以下、LLM)に関する各種チューニング手法の研究を進め、計算資源制約があるローカル環境でも当社対象タスクにおいて高精度を実現できるモデルを作成しました。また、クラウドLLMにおいてもRAG手法の研究やプロンプトエンジニアリングによる対象タスクの精度向上を図り、これを実現しました。

④ 「AI音声認識AmiVoice®」を搭載したコンタクトセンター向けソリューション「AmiVoice® Communication Suite」に外部LLMおよびローカルLLM連携機能を追加し、通話内容の要約やCRM(顧客管理システム)との連携など製品の性能の強化を進めました。

⑤ スタンドアローン型でセキュアな環境下で利用できるAI音声認識文字起こし支援アプリケーション「ScribeAssist」と、クラウド型文字起こしサービス「ProVoXT」を統合した、議事録ソリューションの新プラットフォーム「VoXT One」をリリースいたしました。また、「VoXT One」にクラウドLLMを活用した要約議事録作成機能を実装しました。

⑥ 医療向けAI音声入力ソフト「AmiVoice® Ex7」シリーズや、AI音声認識ワークシェアリングサービス「AmiVoice iNote」などの機能強化、対話型看護アシストシステムなどの新たな医療向け製品・サービスを企画し開発を進めました。

⑦ 商談や接客の会話を可視化・分析する「AmiVoice® SF-CMS」と、AIを活用した効率的な営業トレーニングを実現する「AmiVoice® RolePlay」を統合し、組織全体の営業力強化を図るプラットフォーム「AmiVoice® SalesBoost」をリリースいたしました。

⑧ 「AI音声認識AmiVoice®」の領域特化型エンジンを従量利用で安価に利用可能なクラウド型の「AmiVoice® Cloud Platform」に話者ダイヤライゼーション機能や感情解析機能などの機能実装を行いました。

⑨ 建設・建築業界向け建築工程管理のプラットフォームサービス「AmiVoice® スーパーインスペクションプラットフォーム(SIP)」の機能強化を行いました。

 

 この結果、当連結会計年度の一般管理費に含まれている研究開発費は480百万円となりました。