第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針

当社は、「私たちは“インターネット”で熱量を持って挑戦する全ての人の「やりたいこと」を「できる」に変える」を会社の理念としており、DX(デジタルトランスフォーメーション。以下、「DX」という。)時代において、顧客の成功を支援するクラウドサービスの提供を通じて顧客満足度を向上させること(カスタマーサクセス)を事業上では重視し、この実現を目指しながら当社グループのシナジーを発揮することで全てのステークホルダーとともに成長するための努力が企業価値の増大につながるものと考えております。

 

(2) 経営環境

当社グループが属するクラウド・インターネットインフラ市場は、DXが進む中で、企業ITインフラのクラウドへの移行が進んでおり、国産パブリッククラウドへの期待も高まっているなかで、今後も拡大が継続すると見込んでおります。

こうした状況のもと、当社グループはシステムインテグレーションから開発、クラウド・インターネットインフラサービスの提供、保守、運用、お客様サポート等をグループ内においてワンストップで提供することで、お客様の「やりたいこと」の実現を支援することを目指しております。現在の48万件を超える顧客と新たな顧客にとってのカスタマーサクセスの実現に注力することで、今後も高い市場成長が見込まれるクラウドサービスの拡大に注力してまいります。

なお、新型コロナウイルス感染症以降のライフスタイルの変化を契機として、クラウドシフトはより加速することが予想される一方、原油価格、為替等の影響による電気代や半導体の供給等に不透明感がみられており、当社グループは現時点で入手し得る適正かつ合理的であると判断する一定の条件に基づき事業計画を策定しておりますが、今後の事業環境や顧客の利用状況の推移を注視し、見直しが必要と判断した場合には適時開示してまいります。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

DXの進展やAI技術の急発展等、社会のデジタル化が急速に進む中、当社グループは成長市場であるクラウド・インターネットインフラ市場において、デジタル前提の社会づくりに不可欠なデジタルインフラ基盤を総合的に提供することで、カスタマーサクセスの実現を目指してまいります。これに向けて、当社グループは以下に取り組んでまいります。

① 成長戦略

クラウドサービスの強化加速とGPUクラウドサービスの提供による新たな成長領域の拡大に向けた各種施策の推進

ガバメントクラウドの技術要件充足を目指したクラウドサービスの機能開発の加速と市場開拓

生成AI向けGPUクラウドサービスの提供による新規成長領域の拡大

クラウドサービスの資格制度新設やパートナー制度の取組み強化による、顧客・パートナー・当社間のサクセスの連鎖(エコシステム)の構築

② 経営資源の集中

成長機会を逃すことなく中長期のさらなる成長を実現するため、成長戦略と連動した人・モノ両面への積極投資を実施

中長期の稼ぐ力の向上にむけ、組織の変化と成長を実現するための人材獲得と体制の強化

・コアビジネス(クラウドサービス、GPUクラウドサービス)の競争力強化のためのデジタルインフラ(データセンタ―・GPU基盤等)への積極投資。具体的には、本有価証券報告書提出日現在で予定している石狩データセンターへの以下の設備投資を含みます。

-2024年6月から2026年11月までに運用開始を見込むGPUクラウドサービスにかかる設備投資(総額約659億円)(注1)

-2024年11月竣工を見込むコンテナ型データセンターにかかる設備投資(総額約29億円)(注2)

-2026年10月迄に段階的に竣工を見込むコンテナ型データセンターにかかる設備投資(総額約171億円) (注3)

-2025年5月運用開始を見込む石狩データセンター3号棟Aゾーンにかかる設備投資(総額約25億円)

(注1)当該設備投資については本有価証券報告書提出日現在、一部詳細は未定でございます。当該設備投資のうち未確定の内容については、今後確定次第、必要に応じて速やかに開示する予定です。

(注2)当該設備投資額は計画当初23.5億円でしたが、詳細は未定ではあるものの、本有価証券報告書提出日現在、約6億円程度の追加投資が見込まれます。当該追加投資については今後確定次第、必要に応じて速やかに開示する予定です。

(注3)当該設備投資については本有価証券報告書提出日現在、詳細は未定でございます。当該設備投資については、今後確定次第、必要に応じて速やかに開示する予定です。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、持続的な成長と安定した収益体質の実現を経営の目標としており、中長期的には前期対比売上高成長率10%以上、売上総利益率30%以上、売上高対経常利益率10%以上の継続的な達成を目指しております。

 

(注) 将来に関する記載事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループでは、運営する国内のデータセンターを活かしクラウド・インターネットインフラサービスを提供する事業を行っており、インターネットおよびデータセンターはいずれも必要不可欠なものとなっております。

生成AI向けの高度な計算資源の需要の増加を背景に、データセンター運営ではより大量の電力を消費することになり、インターネットの利活用が「デジタルインフラ」とも表現される社会インフラ・ライフラインの維持・確保に繋がるという考えから、サイバーセキュリティへの取組みについてもとくに重要視しております。また、サステナブルな企業経営実現のための人的資本経営への取組みにも以前から注力しており、ここではこの3点について記載いたします。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 気候変動・脱炭素への取組み

社会・産業のデジタル化により、あらゆる分野でデータを活用したビジネスや社会課題の解決が期待される中、デジタルインフラの一部であるデータセンターの重要性は年々増しています。一方で、データセンターはもともとサーバーの稼働及び冷却に大量の電力を消費し、さらに近年の生成AI活用の急発展やVR技術の商業化の進展等によって、運用される高性能サーバーの消費電力も増大しています。地球温暖化防止等の地球環境保全、SDGsの観点から消費エネルギーを管理・削減するなど、脱炭素実現への取組みによって、サステナブルな社会への貢献を求められていることを当社は十分に認識しております。
 2011年11月には、環境に配慮した郊外型大規模データセンター(石狩データセンター)を北海道石狩市に開所し、運営してきました。立地条件による冷涼な外気を活用したデータセンター運用はもちろん、再生可能エネルギーの自社利用を目的とした石狩太陽光発電所の開設(2015年)や、非化石証書の利用による電力の実質CO2排出量ゼロを達成(2022年)後、再生可能エネルギー電源100%に切り替える(2023年)など、当社ではデータセンター運営において、地球環境の保全活動に積極的に取り組み続けています。

 

①ガバナンス

当社はデータセンターを運営する事業者としてエネルギー使用の削減や合理化を実践していく責務があると考えており、中長期的な方針については、常勤取締役と執行役員が参加する定例会議にて報告され、意見交換が行われております。
 脱炭素実現に向けた取組みとしては、北海道石狩市と2021年9月に「デジタルトランスフォーメーションの推進及び脱炭素等のイノベーションによる地域活性化に関する包括連携協定」を締結しており、主に石狩データセンターを対象として、取締役がオーナーを務める再生エネルギーの検討プロジェクトを開始し運用しています。
 また、当社におけるエネルギーの管理・実行機関としてエネルギー管理委員会が組織され、エネルギー管理統括者である執行役員が委員長を務めております。各種法的な対応や社内啓蒙などを推し進めながら、消費電力の使用実態を把握し、エネルギー削減活動等による地球環境保全に努めております。

 

②リスク管理

当社は、企業活動の持続的発展を阻害するリスクに適切に対処するべく、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置しており、運営・検討状況については、必要に応じて取締役会に報告することとしております。

脱炭素への取組みなどの地球環境保全、気候変動に関するリスクについては、経営戦略の重要な要素として位置づけていることから、2021年6月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言」への賛同を行い、同提言に賛同する企業・機関等による「TCFDコンソーシアム」にも参加しております。現在は気候変動を主軸とした情報整理となっておりませんが、石狩データセンターの電力における再生可能エネルギー電源の100%利用によるCO2排出量ゼロの実現を始め、他データセンターにおいても空調方式の改善による省エネルギー化など、環境保全のための活動を以前から行っております。今後は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について適切な開示を行えるよう、引き続き準備を進めてまいります。

 

 

<石狩データセンターにおける取組み>

2011年11月に北海道石狩市に開所した石狩データセンターは、クラウドコンピューティングに最適化した日本最大級の郊外型大規模データセンターで、率先して先端技術を取り入れ、立地を活かした空調や自然エネルギーの活用に挑戦しています。北海道の冷涼な外気を活用した外気冷房によるエネルギー効率の向上に加え、再生可能エネルギーを売電することなく完全自社利用ができるという考えから、当社は2015年に「さくらインターネット 石狩太陽光発電所」を開所しました。

また、石狩データセンターでは、2023年6月より水力発電を中心とした再生可能エネルギー電源の100%利用によるCO2排出量ゼロを実現しています。今後も、年間CO2排出量ゼロを維持することはもちろん、より環境にやさしい電力への供給切替を進めるなど、これまで以上に環境に配慮したデータセンターの運営を目指します。

北海道内全域が約60時間の停電に見舞われた2018年の北海道胆振東部地震では、石狩データセンターも被災しました。準備されていた非常用発電機の備蓄燃料は標準的なデータセンター同様の48時間程度であり、データセンターの運用停止もあり得るかという緊迫した状況となりました。この経験により、非常用発電機の連続稼働時間の超過といった実際に災害に直面しなければ表面化しづらい問題の可視化が行われ、他データセンターも対象にした大規模災害時等の対応指針が策定されました。復旧シナリオの共有や復旧優先順位・体制の明確化が行われるなど、現在の災害対策に活かされています。

 

(2) サイバーセキュリティへの取組み

近年、企業活動のデジタル化の進展に伴い、インターネット上での個人情報や企業の機密情報のやり取りが一般化しています。同時に、現実世界と同様に、迷惑行為や様々な権利侵害、違法で有害なコンテンツの流通など、さまざまな問題が発生しています。そのため、インターネットの安全性や品質の向上がますます重要視されています。当社は、クラウド事業者として各サービスを日々見直し、多面的な取組みを行うことで安全性や品質を確保し向上させています。

 

①ガバナンス

 当社は、2009年に総合的な情報セキュリティマネジメントシステムであるISMSを全社適用して情報セキュリティ水準の強化を行いました。現在は、ISMAP(※1)やISMSクラウドセキュリティ認証(※2)をはじめとした各種セキュリティ認証も取得し、お客様に安心して選択していただけるサービスの提供に努めております。

サイバーセキュリティを含む情報セキュリティ全般についての方針や目標・ロードマップ等については、最高情報セキュリティ責任者(最高情報責任者兼任の執行役員)より常勤取締役と執行役員が参加する定例会議にて報告され、意見交換が行われております。

 

組織としては2022年4月に情報システム統括室を設立し、分散していた情報セキュリティ対策の管理運用を統合するとともに、同年7月にはSRE(Site Reliability Engineer)室を新設し、サービス開発チームとも連携してセキュリティ対策を行うなど、サービスのさらなる信頼性の向上に努めております。

 ※1 政府情報システムのためのセキュリティ評価制度( Information system Security Management and Assessment Program: 通称、 ISMAP (イスマップ))
政府が求めるセキュリティ要求を満たしているクラウドサービスを予め評価・登録することにより、政府のクラウドサービス調達におけるセキュリティ水準の確保を図り、クラウドサービスの円滑な導入に資することを目的とした制度。

 ※2 ISMS 認証を前提に、クラウドサービスに特化した情報セキュリティの第三者認証制度。

 

 

②リスク管理

当社は、企業活動の持続的発展を阻害するリスクに適切に対処するべく、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置しており、運営・検討状況については、必要に応じて取締役会に報告することとしております。

とくにサイバーセキュリティのリスク管理においては、適切かつ最新の情報収集や対策が必要不可欠であり、最高情報セキュリティ責任者の統括のもと、迅速な対応が行われています。当社のサイバーセキュリティを含む情報セキュリティ全般の事故・インシデントは、発生・検知とともに情報システム統括室に報告され、可用性・情報漏洩観点から重要度の判断が行われます。事業継続に影響する可能性があると判断された場合には、即座に最高情報セキュリティ責任者をはじめとした経営層に報告され、必要に応じてサポート部門や広報担当とも連携して影響を受けるお客様とのコミュニケーションを図りながら、調査・復旧作業が行われます。

当社では当社サービスを不正に利用して行われる迷惑行為・不正なサイトなどの報告を受ける窓口を設けております。専門の対策チームが、社内はもちろん業界団体や同業他社とも連携し、サービスや顧客・インターネットそのもののセキュリティリスク低減に努めています。

 

<加盟・協賛する業界団体との連携>

当社では、生成AIなどのインターネット上の技術の進歩やサイバーセキュリティなどに係わる法律上及び行政上の諸問題について、加盟・協賛団体を通じて広く情報を収集して的確に対応できる体制を整備し、必要に応じて意見を述べることも、クラウド・インターネットインフラサービス事業者としての責務であると認識しております。

具体的には、一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)の部会である行政法律部会に、迷惑行為などの対応・対策を行う専門チームの担当者や法務担当者が参加し、健全なインターネットの活用について関係省庁との意見交換等を行っております。また、当社はコンテンツの制作・提供会社ではないものの、インターネット上の知的財産の適切な保護が重要であるという考えから、一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)に所属しております。同会の主催する各種研究会への参加などを通じ当社の知見を高めるとともに、情報交換や著作権の権利保護等の活動を行っております。

 

<透明性レポートの公開>

当社では、自社でインターネットのバックボーンとデータセンターを所有するクラウド・インターネットインフラサービス事業者として、「個人情報」「表現の自由」「通信の秘密」の重要性を認識しています。捜査機関等からの要請に対応する際には、個人情報保護法、電気通信事業法、プロバイダ責任制限法等をはじめとする関係法令やガイドラインを遵守することでこれらの保護に努め、当社の事業活動を通して社会とインターネットの発展に貢献することを目指しております。

このようなインターネットの安全性や品質の向上への取組みの一環として、2023年8月より、当社が要請を記録した数と対応の概要を「透明性レポート」として公開し、情報の取扱いに関する透明性を確保しております。

 

(3) 人的資本経営への取組み

①戦略

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針として、「ES(エンプロイーサクセス)」を掲げています。これは、社員の能力発揮を後押しする学びと実践のサイクル、多様な人材が集い挑戦する機会の提供、安心して長く活躍できる基盤作りを通して、社員一人ひとりの成長と成功(ES)を実現し、社会やお客様への価値提供の源泉である人材の価値をより高めていくことを目指すものです。
 また、ESの実現に向けて、当社グループは以下に取り組んでまいります。

イ 人材育成と学び合う文化づくり

社会・産業のデジタル化を支えるデジタルインフラ企業として、“インターネット”で社会やお客様の「やりたいこと」を「できる」に変えることを目指し、社員のさらなる意欲向上と成長促進のために、社内外でデジタルリテラシーに関する学びの場を提供するとともに、学びを活かす機会の提供、学び合う文化づくりに取り組んでまいります。

 

ロ こころと身体の健康

社員がそれぞれの持つ能力を最大限発揮し、やりがいをもって働くためには、こころと身体の健康が必要不可欠です。安全と衛生、健康推進およびこころと身体を大切にする組織的な文化作りを通し、ウェルビーイング経営を実現し、社員と会社の持続的な成長と成功につなげることを目指しています。

ハ 多様な人材の活躍促進

すべての社員が多様な価値観を持つダイバーシティの担い手であることを前提に、属性の多様性とキャリアやスキルの多様性の双方を生かすことで、当社グループ全体の成長と、お客様への価値提供と貢献を目指します。ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの理解につながる機会づくり、多様な社員の活躍につながる環境づくり、成長実感を持てるキャリアや学びへの仕組みづくりなどを通して、社員一人ひとりの個性や成長する意欲と、個々の能力を最大限に発揮できる風土づくりに取組んでいきます。

ニ 多様な特性・能力を持つ人材が集まり、リーダーシップが新しい価値を育む文化づくり

学生起業した創業者の挑戦マインドを受け継ぐ組織文化によって、社員がリーダーシップを発揮し、事業創造や新規事業を創出します。多様な人材が集い、コラボレーションし、自由な発想で集中して活動にチャレンジできる環境および機会の提供を行うことで、社員とお客様と会社の持続的な成長と成功につなげることを目指しています。

ホ フレキシブルな働き方

会社が「働きやすい」環境を提供し、その中で社員個人が「働きがい」を追求できることを理想として、働き方の多様性を尊重するさまざまな取組みをおこなっています。

 

②指標及び目標

戦略である「多様な人材の活躍促進」のうち「属性の多様性」については、全社員に対する女性の割合と比較して、全管理職に占める女性の割合にはまだ差がある状況です。当社においては多様な属性の社員が多様な価値観を持ち、互いの価値観を認め合った上で共創することがイノベーションにつながると考えていることから、全管理職に占める女性の割合について、全社員に対する女性の割合と同等までの上昇を指標としているものです。指標の達成を目指し、女性社員を対象とした外部機関運営の女性リーダー育成プログラムへの派遣による自己認識の変革への取組みや、ロールモデルの策定など、よりポジティブに管理職を目指すことができるよう、取り組んでまいります。

なお、経営機能の強化を図るべく、当社では当事業年度中に女性4名を含む執行役員6名を新しく登用しており、2024年3月31日現在、執行役員を含む女性役員比率は25.9%となっております。(2023年6月に閣議決定された「女性版骨太の方針 2023」におけるプライム市場上場企業対象の女性役員比率に関する数値目標は、「2030年までに女性役員(執行役員を含む)の比率を30%以上」です。)

「フレキシブルな働き方」における「多様性の尊重」としては、社員一人一人がそれぞれのライフステージの中でも活躍できるよう、お子様が生まれた男性社員に対して育児休業制度についての説明を行うための面談を実施することを提案し、希望する男性社員全員に対して面談を行うなど、男性の育児休業取得に力を入れています。

なお、当社グループでは、上記「①戦略」において記載した内容に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標および実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

指標

目標(2026年3月まで)

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合

25

11.49

男性労働者の育児休業取得率

60以上を維持(※)

77.78

育児休業からの復職率

男女とも100を維持

100

 

※ 育児休業の取得を希望する社員全員が育児休業を取得できる状況を目指します。一方、育児休業を希望しない社員の選択も尊重してまいります。

 

 

<教育プログラム DX Journey の開催と、資格取得の推進>

当社では、2022年度より非エンジニアを対象に、デジタル人材の教育プログラム「DX Journey」を継続的に開催しています。当事業年度末までに第4期まで開催され、計65名の社員が参加してプログラミングや自動化の基礎を身につけました。提出日現在では、第5期の開催準備が進められています。

また、全社員がITについての理解を深め共通言語で話すことができるよう、2023年5月より正社員全員に対し国家試験「 ITパスポート試験」(※1)の資格取得の推奨を開始し、同年10月には、生成 AI領域を含む DXをリードする人材を支援すべく、推奨範囲をデータサイエンティスト検定、 G検定を含む「Di-Lite」(※2)に拡大しました。

職種を問わず、ITの基礎知識を活用することで、当社は社会やお客様の『「やりたいこと」を「できる」に変える』に取り組んでまいります。

※1 ITパスポート試験:情報処理推進機構が実施する情報処理技術者試験の一試験区分であり、「情報処理の促進に関する法律」に基づく国家試験

※2 Di-Lite:「デジタルを使う人材」であるために、全てのビジネスパーソンが、共通して身につけるべきデジタルリテラシー範囲

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業活動において、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスク要因を、以下に記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。ただし、以下の記載事項は、投資判断に関連するリスクのすべてを網羅するものではありませんので、ご留意ください。

当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。なお、記載中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業環境及び事業について

① 他社との競合状態について

当社グループは、成長市場であるクラウド・インターネットインフラ市場において、クラウドサービスの技術水準の引き上げや他社との協業による新たなサービス開発の推進、コンサルティング・教育・開発等を通じた課題解決の推進といった新たな成長領域の基盤づくりと、成長戦略の実現に向けた人員の拡充・再配置・教育や中長期視点で見た成長分野への投資拡大等によって、競合他社との差別化やシェア拡大に努めておりますが、同業他社の中には、当社グループと比べ大きな資本力、販売力等の経営資源、高い知名度等を有しているものもあり、当社グループの競争力が低下する可能性があります。

② 安全対策について

データセンターの管理体制については、24時間有人管理体制をはじめ、ハウジングサービス契約者の入退室管理、監視カメラの設置、カードキーや生体認証による入退室時の情報管理など、細心の注意を払っております。また、火災への対策として、ガス式の消火設備や高感度の火災検知装置などを導入するとともに、専門業者による定期的な検査の実施や、社員による目視の安全点検を行っております。

通信設備につきましても、火災・地震などの災害に対して必要な防災措置を施し、電源やネットワークの非常時対策・データセンターの24時間監視に努めております。また、ファイヤーウォール、接続回線の二重化、コンピュータウイルス防御などの安全対策も施しております。

また、地震等の自然災害の発生を想定した防災訓練を行い、緊急時の情報連携を中心とした対応フローの見直しを実施するなどの対策も行っております。しかしながら、予期せぬ大規模な自然災害や不法な行為、感染症等の世界的な大流行(パンデミック)による設備封鎖などが生じた場合には、サービスの提供ができなくなり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ データセンターの使用契約について

当社グループは、他のデータセンター事業者とデータセンターを賃借する契約を結び、一部のサービスを提供しております。

しかし、契約期間内であっても3ヶ月前までに通告することによって解消できるなどの条項が含まれており、その場合には当社グループの負担により当社グループの設備の撤去を行わなければならないこととなっております。そのため、契約先の経営悪化等により当社グループの予期せぬ契約の解消が生じた場合には、撤去費用もしくは他のデータセンターへの移転費用が予算を超えて計上されることとなり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 個人情報保護法について

当社グループは、個人から法人、文教・公共分野まで幅広い顧客にサービスを提供しているため、多くの顧客情報を蓄積しております。このため当社グループは個人情報保護法に定める個人情報取扱事業者に該当し、個人情報の取扱いについて規制の対象となっております。

当社グループでは、専門部門を設置し、個人情報の保護に関する規定の整備運用、システムのセキュリティ強化、役員・社員への定期的な教育を実施するなど個人情報保護への取り組みを推進しております。また、当社のサイト上の個人情報保護ポリシーにおいて、取り組みを提示しております。

昨今、コンピュータウイルス等の侵入、不正なアクセスのリスクが高まっております。当社グループが保有する顧客情報が業務以外で使用されたり、外部に流出したりする事態になりますと、対応コストの負担、顧客からの損害賠償請求、風評被害による申し込み数の低下や解約の発生などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 法的規制について

当社グループは、電気通信事業者として届出等を行っており、電気通信事業法に定める「通信の秘密」や「利用の公平」などを遵守しております。また、特定商取引に関する法律及び特定電子メールの送信の適正化等に関する法律に定める広告・宣伝メールの送信や、不当景品類及び不当表示防止法に定める広告表示及び景品類の提供についても遵守するため、当社グループは、役員・社員に対して定期的に教育するとともに、法務担当者による法令適合性の審査を行っており、法令違反の発生を防止する体制作りを行っております。

しかし、万一これらの法令に規定される一定の事由に当社グループが該当した場合、所管大臣等から指導や業務改善等の命令もしくは罰則を受け、当社グループの業務に影響を及ぼす可能性があります。

また、将来的にこれらの法令の改正や当社グループの事業に関する分野を規制する法令等の制定、あるいは自主的な業界ルールの制定等が行われた場合、当社グループの業務に影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 出資や企業買収等について

当社グループは、既存事業に関連する領域を中心に出資や企業買収等を行っております。これらの実施にあたっては、事前に事業内容や財務状況等について、様々な観点から必要かつ十分な検討を行っております。しかしながら、出資や買収後に事業環境の急変や予期せぬ事象の発生等により、当初期待した成果をあげられない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 当社グループのサービスの不正利用について

当社グループでは、約款において会員ID・ユーザーアカウント・各種パスワード等の管理に関し、当該サービス契約者が責任を負う旨を定めており、また、不正利用防止の観点から、一部のサービスではサービス申込時に本人確認のための電話認証の仕組みを導入するなどしておりますが、第三者がこれらの情報を悪用し、もしくはサービス申込時に第三者と偽って大量のサービス利用等をした場合、サービス利用料の回収が困難となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑧ 知的財産権について

当社グループでは、他者の知的財産権を侵害することがないよう、事前に調査を実施しておりますが、サービスに用いる技術について他者の知的財産権を侵害している可能性を完全に排除することは困難です。他者の知的財産権を侵害しているとして損害賠償請求や使用差止等の訴訟が生じた場合、当社グループの企業イメージの一時的な毀損、損害賠償責任の発生、サービス提供が一時的に困難となる等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑨ ネットワークセキュリティについて

インターネットに接続される環境下にあるコンピュータやサーバーには、ウイルスへの感染、クラッキング、不正アクセス、DoS攻撃等によるサービス提供への影響や情報の流出等のリスクが常に存在します。当社グループでは、提供サービスやネットワークについて、適切なセキュリティ対策を講じておりますが、想定を超えた大規模な攻撃の発生もしくは当社グループの対策が十分に機能しなかった等の理由により、これらのリスクが現実に生じた場合、当社グループの企業イメージの一時的な毀損、損害賠償責任の発生、サービス提供が一時的に困難となる等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑩ エネルギー価格や設備投資金額の上昇等について

当社グループは、多数のサーバー等機材をデータセンター内で稼働させることにより、サービスを提供しております。安定的な電力の供給と空調環境により支えられるサービスは、大量の電力を使用しており、電力価格が想定以上に上昇し、上昇分をサービス価格に反映できない場合などには、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは気候変動に係るリスクとサステナビリティを巡る取組みの重要性について十分に認識し、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言」への賛同を行うとともに、脱炭素に向けた取組みを継続的に行っております。

当社サービスの提供にはサーバー及びネットワーク機器等への投資が必要であり、一定額を超える場合には常勤取締役と執行役員が参加する定例会議 において事業計画の蓋然性を十分に検討した上で機材投資を行いますが、減価償却費の増加に対し顧客の獲得が計画通りに進まない場合 などには、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社は石狩データセンターを自社で所有して運用しており、事業拡大に伴い増床を行っております。経済環境の変化等により、データセンターの建設や工事にかかる資材、人件費などが上昇し、これらをサービス価格に反映できない場合などにおいても、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑪ 固定資産の減損について

当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化により事業の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合などには、固定資産の減損会計の適用による減損損失が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑫ コンテンツの内容について

当社グループでは、約款において禁止事項を定め、法令や公序良俗に反するなどのコンテンツを排除するよう努めておりますが、当社グループの顧客が約款に反するコンテンツの設置をはじめとした違法行為を行った場合には、企業イメージの一時的な毀損により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業体制について

① 顧客の確保について

当社グループは、日進月歩の市場動向に合わせてより高品質なサービスの提供と価格の低廉化に努め、新規顧客の獲得と既存顧客の継続的なサービス提供を図っておりますが、これが計画どおりに進まない場合は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。他方、顧客が急激に拡大するような局面においては、これに対応するためのバックボーンの整備が必要となります。当社グループといたしましては、今後も大容量の通信回線を確保することが可能と考えておりますが、十分な通信回線を適正な価格で確保できない場合には、事業機会の喪失や収益性低下の可能性があります。

② 内部管理体制について

当社グループは、企業価値の持続的な増大を図るにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底を目的に、当社代表取締役社長直轄の独立した組織として内部監査室を設置する等、内部管理体制の充実に努めております。

しかしながら、事業環境の急速な変化などにより、十分な内部管理体制の構築が間に合わない場合には、一時的に管理面に支障が生じ、効率的な業務運営がなされない可能性があります。

③ 技術の進歩と人材確保について

今後、当社グループ全体で総合的なクラウドソリューションの提供に注力していく中で、必要とされる新技術に迅速に対応できない場合、業界における競争力に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループが、新技術を導入しつつ今後の事業拡大を図っていくためには、優秀な人材を確保していく必要がありますが、新規サービス開発のためのエンジニアや営業・マーケティングを主とした人材確保及び育成が順調に進まない場合、重要な人材が離脱した場合又は積極的に人員を採用したこと等により人材関連費用を適切にコントロールすることができなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 資金調達について

当社グループは、サーバーなどの機材に関する投資、その他事業資金について、金融機関からの借入又はリース等を通じて資金調達を行っております。今後も、データセンターの最適化や新サービス開発のための継続的な投資等を計画しており、安定的な資金調達を可能とするため、財務体質の強化に努めたいと考えております。

しかし、金融市場やその他外部環境において大きな変動が生じた場合には、資金調達が困難になる可能性や調達コストが増大する可能性があります。このような場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 株式の追加発行等による株式価値の希薄化について 

 当社は、当社の取締役(社外取締役を除く。以下、「対象取締役」という。)が、株価変動のメリットとリスクを株主の皆様とより一層共有し、株価上昇及び企業価値向上への貢献意欲を従来以上に高めることを目的として、対象取締役に対し、譲渡制限付株式を交付する株式報酬制度(以下、「本制度」という。)を導入しており、本制度に基づき、対象取締役に対する譲渡制限付株式に関する報酬等として支給する金銭報酬債権の総額を年額100,000千円以内として設定し、対象取締役に対して各事業年度において譲渡制限付株式の総数200,000株を上限として割り当てることがあります。同様に、当社の執行役員に対しても各事業年度において45,000千円程度に相当する譲渡制限付株式を割り当てることがあります。当社は、本制度導入以降、対象取締役及び割当対象者である執行役員に対して2022年7月8日付で処分価額の総額66,875,000円の自己株式の処分を、同様に2023年7月7日付で処分価額の総額63,470,730円の自己株式の処分をそれぞれ実施しておりますが、2025年3月期においても、対象取締役及び割当対象者である執行役員に対して譲渡制限付株式として自己株式の処分を実施する方針であり、その場合、既存の株主が有する株式価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績の概況

当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、景気の緩やかな回復が続くことが期待されますが、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなっております。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある状況となっております。

当社グループの属するクラウド・インターネットインフラ市場は、DXが進むなか、企業ITインフラのクラウドへの移行が進んでおり、国産パブリッククラウドへの期待も高まっているなかで、今後も拡大が継続すると見込んでおります。

こうした状況のもと、当社グループはシステムインテグレーションから開発、クラウド・インターネットインフラサービスの提供、保守、運用、お客様サポート等をグループ内においてワンストップで提供することで、お客様の「やりたいこと」の実現を支援することを目指しております。現在の48万件を超える顧客と新たな顧客にとってのカスタマーサクセスの実現に注力することで、今後も高い市場成長が見込まれるクラウドサービスの拡大に注力しております。

売上高につきましては、クラウドサービス売上が順調に増加したこと等により、21,826,794千円(前連結会計年度比5.8%増)となりました。
 営業利益につきましては、売上高の増加がありましたが、クラウドサービスの機能開発強化の一層の加速や販売促進に向けた人材採用・マーケティング強化等の投資の積極的な実施等により、884,507千円(前連結会計年度比19.1%減)となりました。

経常利益につきましては、営業利益の減少などにより、764,080千円(前連結会計年度比20.9%減)となりました。
 親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、経常利益の減少などにより、651,716千円(前連結会計年度比2.2%減)となりました。

 

サービスカテゴリー別の状況は以下のとおりです。

① クラウドサービス

さくらのクラウド、さくらのVPSが順調に推移したこと等から、クラウドサービスの売上高は12,773,779千円(前連結会計年度比7.9%増)となりました。

② 物理基盤サービス

他サービスへの移行や解約等により、物理基盤サービスの売上高は3,589,785千円(前連結会計年度比1.3%減)となりました。

③ その他サービス

2024年1月からのGPUクラウドサービス提供開始(当連結会計年度売上高201,107千円)やドメイン売上の増加等により、その他サービスの売上高は5,463,229千円(前連結会計年度比6.2%増)となりました。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

① 生産実績

記載すべき事項はありません。

 

② 受注実績

記載すべき事項はありません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度の販売実績をサービス区分別に示すと、次のとおりであります。

サービス区分

販売高(千円)

前年同期比(%)

クラウドサービス

12,773,779

+7.9

物理基盤サービス

3,589,785

△1.3

その他サービス

5,463,229

+6.2

合計

21,826,794

+5.8

 

(注) 当連結会計年度における販売実績の著しい変動の要因は、「(1) 経営成績の概況」に記載のとおり

   であります。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末における資産・負債及び純資産の状況とそれらの要因は次のとおりです。

① 資産

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ3,968,337千円増加し30,224,447千円(前連結会計年度末比15.1%増)となりました。主な要因は、GPUクラウドサービス等向けのサービス機材調達による有形固定資産の増加や政府系案件に係る売掛金の増加等によるものです。

② 負債

当連結会計年度末の負債の合計は、前連結会計年度末に比べ3,133,267千円増加し20,903,238千円(前連結会計年度末比17.6%増)となりました。主な要因は、サービス機材調達に係るリース債務、借入金の増加等によるものです。

③ 純資産

当連結会計年度末の純資産の合計は、前連結会計年度末に比べ835,070千円増加し9,321,209千円(前連結会計年度末比9.8%増)となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加等によるものです。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度と比べ447,177千円増加し5,257,805千円(前連結会計年度比9.3%増)となりました。

各キャッシュ・フローの状況と主な要因は、次のとおりです。

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ収入が 1,079,287千円減少し、2,884,133千円(前連結会計年度比27.2%減)となりました。主な要因は、売掛金の増加等によるものです。

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ支出が1,419,509千円増加し△2,025,638千円(前連結会計年度比234.2%増)となりました。主な要因は、GPUクラウドサービス等向けサービス機材等の有形固定資産の取得による支出の増加等によるものです。

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比べ支出が3,588,783千円減少し、△410,590千円(前連結会計年度比89.7%減)となりました。主な要因は、GPUクラウドサービス用の借入れによる収入等によるものです。

 

 (資本の財源及び資金の流動性について)

当社グループにおける資金の配分につきまして、適正な手元資金として月商の約2ケ月分程度を目安とし、緊急の資金需要や当社を取り巻く様々な環境変化に伴うリスク等については借入等の資金調達枠を確保いたします。当社グループの資金需要は主にサービス提供にかかる設備投資資金です。当社グループが属するクラウド・インターネットインフラ市場は今後も拡大が見込まれており、当社が事業運営において重視するカスタマーサクセスの実現にはサーバなどの機材に関する継続的な投資が不可欠なものであると認識しております。株主還元につきましては、当社グループは成長フェーズにあると考えており、持続的成長と収益力確保のため原資を確保しつつ、株主様への一定の利益還元を両立させたいと考えております。資金調達につきましては、賞与・納税等の短期運転資金は自己資金及び借入を基本とし、設備投資資金や長期運転資金は自己資金、借入及びリースを基本とすることで、事業運営上必要な資金の安定的な確保に努めており、設備効率の向上によるキャッシュ・フローのさらなる創出と、財務の安全性を確保しながらの成長投資を見極めてまいります。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は12,414,884千円、資金の残高は5,257,805千円となっております。

 

(4) 経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識等

当社グループは、持続的な成長と安定した収益体質の実現を経営の目標としており、具体的には前期対比売上高成長率10%以上、売上総利益率30%以上、売上高対経常利益率10%以上の継続的な達成を目指しました。

当連結会計年度においては、クラウド集中を図る中で、クラウドインフラストラクチャーサービスが好調に推移し、前期対比売上高成長率は5.8%増となりました。利益面につきまして、売上総利益率は26.3%(前期は26.0%)と収益性を向上させることができましたが、中長期的な成長促進のための人材採用やマーケティング強化等の先行投資を加速させたため、売上高対経常利益率は3.5%(前期は4.7%)となりました。

今後の見通しにつきまして、社会のデジタル化の一層の加速によりデータ総量・トラフィックが増大し、データセンターやネットワークなどのデジタルインフラの重要性が急速に高まっております。また、ネット企業ではない一般企業がデジタル上で利益を得る時代になりつつあるなか、経済安全保障の観点から国産パブリッククラウドへの期待が高まるとともに、AI・大規模言語モデルの発展によりGPUなどの高度な計算資源への需要が増加しております。

このような環境のもと当社グループは、より一層コアビジネスに注力し、当社の経営リソースをクラウドビジネスに集中して事業の強化・成長を促進させるとともに、戦略と連動した人材の獲得や社員の成長と活躍を促進してESとCSの実現を図り、もって日本を代表するデジタルインフラ企業を目指してまいります。具体的には、生成AI向けのGPUクラウドサービス拡大に向けた助成金を活用しての大規模投資、ガバメントクラウド認定の機能要件充足に向けたクラウドサービスの機能開発加速、拡販強化に向けたクラウドサービスの資格制度やパートナー制度の構築・整備、注力事業とそのサービスを支える共通基盤を強化するための200名規模の採用と組織体制の強化等を進めてまいります。

2025年3月期は、これらの中長期的な成長を見据えた積極的な投資を実施しますが、GPUクラウドサービスの本格提供開始により、増収増益を見込んでおります。

 

  (5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

① 固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各社ごとに資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、当該減少額を減損損失として計上しています。

固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

② 繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。

将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。

③ 資産除去債務

当社グループは、データセンター及び事務所の不動産賃貸借契約に伴う原状回復義務等につき、有形固定資産の除去に要する将来キャッシュ・フローを見積もっております。

当該有形固定資産の除去に要する将来キャッシュ・フローは、過去における類似の特性を有する拠点の資産で発生した原状回復工事の実績額、除去サービスを行う業者など第三者からの情報、賃貸契約開始時の原状回復工事見積金額等に基づき、見積り計算を行っております。

経済状況や市況による工事単価の変動、想定していない工事の発生等により、実際に生じた工事金額が見積り金額と異なった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(吸収分割契約)

当社は、2024年1月31日開催の取締役会において、2024年4月1日を効力発生日とする当社の衛星データプラットフォーム事業に係る権利義務を、会社分割の方法により、当社の非連結子会社である株式会社Tellusへ承継させることを決議しました。

 

(1)本吸収分割の目的

当社は、「やりたいこと」を「できる」に変える、という企業理念のもと、衛星データを利用した新たなビジネスマーケットの創出を目的として、日本発の衛星データプラットフォーム「Tellus」を開発・運用しております。

2024年4月より政府衛星データ関連案件の履行やスターダストプログラム(日本政府による宇宙開発利用加速化戦略プログラム)に基づく活動が本格スタートする予定であるなか、これらを株式会社Tellusにて実施するため、本吸収分割を行うものであります。

将来的に、当社とは異なる宇宙事業に関する知見を有した優秀な人材の確保や業界知見のある第三者による株式会社Tellusへの増資引受けを視野に入れながら、衛星データプラットフォーム事業の拡大を図ってまいります。

 

(2)本吸収分割の要旨

① 本吸収分割の日程

吸収分割承認取締役会(当社) 2024年1月31日

吸収分割契約締結日      2024年1月31日

効力発生日          2024年4月1日

(注)本吸収分割は、吸収分割会社である当社においては会社法第784条第2項に定める簡易吸収分割に該当し、吸収分割承継会社である株式会社Tellusにおいては会社法第784条第1項に定める略式分割に該当するため、それぞれ株主総会による吸収分割契約の承認を得ずに行いました。

② 本吸収分割の方式

当社を吸収分割会社とし、株式会社Tellusを吸収分割承継会社とする吸収分割です。

③ 本吸収分割に係る割当の内容

本吸収分割は、当社と当社の完全子会社との間で行われるため、本吸収分割による株式の割当てその他金銭等の対価の交付は行いません。

④ 本吸収分割に伴う新株予約権及び新株予約権付社債に関する取扱い

該当事項はありません。

⑤ 本吸収分割により増減する資本金

本吸収分割による当社の資本金の増減はありません。

⑥ 承継会社が承継する権利義務

株式会社Tellusは、効力発生日における衛星データプラットフォーム事業を遂行する上で必要な資産、負債、その他の権利義務(契約上の地位を含む。)のうち、吸収分割契約に定めるものを承継します。

 

(3)本吸収分割の当事会社の概要(2024年3月31日現在)

 

吸収分割会社

吸収分割承継会社

商 号

さくらインターネット株式会社

株式会社Tellus

所 在 地

大阪市北区梅田一丁目12番12号

東京都新宿区西新宿七丁目20番1号

代表者の役職・氏名

代表取締役社長  田中邦裕

代表取締役社長  山﨑秀人

事 業 内 容

クラウド・インターネットインフラ事業等

衛星データプラットフォーム事業

資 本 金

2,256百万円

10百万円

 

 

 

(4) 吸収分割する部門の概要

① 分割する部門の事業内容

衛星データプラットフォーム事業

② 分割する部門の経営成績(2023 年3月期)

売上高 458百万円

③ 分割する資産、負債及び純資産の項目及び金額(2024年3月31日現在)

固定資産 60百万円

 

6 【研究開発活動】

当社は、インターネット技術に関するさまざまな研究を行う専門部署として「さくらインターネット研究所」があります。本研究所では、インターネット技術に関する調査・研究を通じ、当社事業へのフィードバックと技術スタッフの育成、研究成果の発信を行います。

なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は166,021千円であります。