第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針

当社グループは、「創造と革新」を経営理念に掲げ、「音と映像で、世界に感動をクリエイトする」ことをパーパスとして、企業活動を実践しています。

当社グループは、経営理念、パーパス、ビジョン、バリューの4つの要素で構成される「ヒビノグループ理念体系」を定めています。この「ヒビノグループ理念体系」に基づく企業活動を通じて、あらゆるステークホルダーとのコミュニケーションを深め、世界的な社会課題の解決につながる価値創造に取り組むことにより、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図ります。

そのために、コーポレートガバナンスの充実を重要な経営課題の一つと位置づけ、コーポレートガバナンス・コードの趣旨に賛同し、透明性・公正性を担保しつつ、迅速・果断な意思決定を行う仕組みの充実に努めています。

 

[ヒビノグループ理念体系]

経営理念:経営の根本的な考え方、創業の精神

「創造と革新(Creation & Innovation)」

 

パーパス:企業使命、存在意義

「音と映像で、世界に感動をクリエイトする」

 

ビジョン:ありたい姿、経営目標

「世界のヒビノへ」

音響と映像を中心に、販売・施工及びサービスを組み合わせたヒビノ独自のビジネスモデルを、アジア、北米、欧州の各地域に展開し、世界トップレベルのAV&ITグループを目指します。

 

バリュー:価値観、心構え

「ヒビノ10訓」

01 クオリティを最優先!

02 安全第一 現場事故、交通事故ゼロ!

03 現場主義経営 現場の意見を尊重!

04 とことんこだわるプロ集団!

05 業界初の製品、商品、サービスで常に先駆け!

06 お客様に感謝され、信頼度ナンバーワン!

07 オンリーワン ヒビノグループにしかできないことにこだわる!

08 大きな仕事にチャレンジ 目指せ世界ナンバーワン!

09 イノベーション 進化し続ける会社!

10 健康経営 心身が資本!健康が一番!

 

「ヒビノグループ行動規範」

「ヒビノグループ行動規範」については、当社ホームページをご覧ください。

https://www.hibino.co.jp/company/philosophy.html

 

(2) 中期経営計画「ビジョン2025」

当社グループを取り巻く経営環境は、アフターコロナにおける人々のライフスタイルや価値観の多様化、デジタル技術の加速度的な進展、サステナビリティに対する意識の高まり、また中東地域等をめぐる地政学リスクの増大など、日々変化し、複雑さ・不確実さが増しています。一方で、都市再開発計画やスタジアム・アリーナ改革の進展、大阪・関西万博の開催、メディア・コンテンツ関連企業による投資の活発化など、具体的なビジネスチャンスが生まれています。

このような状況のもと当社グループは、グループビジョン「世界のヒビノへ」を実現するためのマイルストーンとして、2023年3月期から2026年3月期までの4ヵ年を対象とした中期経営計画「ビジョン2025」に取り組んでいます。

 

① 期間

2023年3月期から2026年3月期まで

 

② 中期経営方針

イ.持続的成長を可能とする経営体質の構築

2つの成長戦略「ハニカム型経営」及び「イノベーション」への取り組みによって、持続的成長を可能とする経営体質を構築していきます。

 

ロ.健全経営の確立

適正な利益、財務の安定、人的資本の向上の好循環サイクルによる健全経営を確立していきます。

 

③ 中期成長戦略(経営の基本戦略)

イ.新領域への挑戦によるハニカム型経営の高度化

グループ内に収益を生み出す事業を多数有することで、外部環境の変化に強い事業構造を構築します。M&Aも活用しながら新領域に挑戦、事業領域を拡大し、ナンバーワンの技術やオンリーワンのビジネスモデルを持つ事業の集合体を形成するとともに、事業間連携によるシナジーを創出していきます。

 

ロ.イノベーションによる新規事業の創造と既存事業の革新

イノベーションが全従業員に浸透し日常的な活動となるべく、新アイデア提案制度を設け推進しています。外部の企業、研究機関、行政との連携(オープンイノベーション)も積極的に活用しながら、新規事業の創造と既存事業の革新に取り組みます。

 

④ 主要な経営課題

イ.高収益体質への変革

全部門共通の「一人当たり経常利益」最低目標値を設定し、部門ごとに収益力の向上を図りながら、ワンストップソリューション機能の強化と組織の最適化により、グループ総合力を発揮していきます。また、大阪・関西万博、メディア関連及び都市再開発の特需案件について、着実に受注・遂行していきます。

 

ロ.未来事業の創造

「騒音対策」と「バーチャルプロダクション」を戦略事業分野と位置づけ育成を図るとともに、新たなものづくりに挑戦します。また、ECを強化しB to Cビジネスの拡大を図ります。グローバル展開においては、海外M&Aを活用した世界4極体制(日本、アジア、北米、欧州)を確立し、海外売上高比率30%を目標とします。

 

ハ.DXの推進

ビジネスDXでは、部門ごとにデジタルイノベーションに取り組み、既存事業の高度化及び新規事業の創造を実現していきます。業務プロセスDXでは、グランドデザインに基づくグループ全体最適を追求しながら、バックオフィス効率化及び顧客関係強化を実現していきます。

 

ニ.サステナビリティマネジメントの推進

4つのマテリアリティを設定し、SDGsの達成に資する取り組みを推進します。音と映像に関する価値提供を通じて、音楽文化、映像文化、エンターテインメントの発展と安全・安心な社会の実現に貢献します。会社とともに成長し、持続可能な社会に貢献する人材を育成するとともに、一人ひとりが健康で安心して働ける職場環境を構築していきます。また、廃棄物削減や省力化等に取り組み、脱炭素社会の実現に貢献します。

 

⑤ 財務目標

売上高 (2026年3月期):750億円(業績予想は660億円)、海外売上高比率30%以上

経常利益(2026年3月期):45億円(業績予想は40億円)、経常利益率6%

自己資本比率      :30%以上、目標40%

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

① サステナビリティに関する基本的な考え方

当社グループは、「創造と革新」を経営理念に掲げ、「音と映像で、世界に感動をクリエイトする」ことをパーパスとして、企業活動を実践しています。

当社グループは、経営理念、パーパス、ビジョン、バリューの4つの要素で構成される「ヒビノグループ理念体系」を定めています。このヒビノグループ理念体系に基づく企業活動を通じて、あらゆるステークホルダーとのコミュニケーションを深め、世界的な社会課題の解決につながる価値創造に取り組むことにより、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図ります。

サステナビリティ経営を推進するため、「ヒビノグループ行動規範」において「事業活動を展開するにあたり、経済、社会、環境の側面を総合的に捉え、持続可能な社会の創造に資する」旨を明文化するとともに、サステナブルポリシーを制定しています。

ヒビノグループ理念体系については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。サステナブルポリシーについては、当社ホームページの以下のURLからご確認いただけます。

https://www.hibino.co.jp/sustainabilitypolicy.html

 

② ガバナンス

当社グループでは、当社の取締役会がサステナビリティに関する重要事項の審議・決議及び監督を行っています。取締役会は、グループ全体のサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)の特定、マテリアリティに対する指標(KPI)と目標の設定、目標達成のための施策の検討及び進捗管理を行っています。また、当社グループにおけるサステナビリティ経営の推進機関として、代表取締役副社長を責任者とするSDGs推進会議を設置し、活動状況を定期的に取締役会に報告しています。

 

③ 戦略

当社グループは、音と映像の力で社会課題を解決し、誰もが感動と幸せを実感できるサステナブルな世界の実現を目指しています。

2022年5月に公表した中期経営計画「ビジョン2025」(2023年3月期~2026年3月期)において、「サステナビリティマネジメントの推進」を主要な経営課題の一つとして位置づけています。当社グループが取り組むべき課題を、ステークホルダーにとっての重要度(社会における影響度)と当社グループにとっての重要度の2軸で分類し、特に優先して取り組むべき4つの重要課題(マテリアリティ)と15の取り組みテーマを特定しました。また、特定したマテリアリティとSDGs(持続可能な開発目標)との関連を整理しています。2023年5月には、取り組みの進捗を管理するための指標(KPI)と目標を設定しました。なお、特定したマテリアリティについては、社会経済状況や当社グループを取り巻く環境等を踏まえ、毎年検証・見直しを行っています。

当社グループは、音楽文化、映像文化、エンターテインメントの発展と、安全・安心で暮らしやすい社会の実現に貢献するとともに、地球環境の保全や健康で働きがいのある職場環境づくりなど、企業としての責任に、グループ一丸となって取り組んでいきます。

 

④ リスク管理

サステナビリティに関するリスク管理については、全社的な視点でのリスクマネジメントサイクルの仕組みの中で取り扱っています。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑤ 指標と目標

サステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)、取り組みテーマ、指標(KPI)、目標及び実績は以下のとおりです。

 

 

[マテリアリティ1]世界中に音と映像を届ける

当社グループは、経営理念「創造と革新」のもと、音と映像に関する価値提供を通じて、音楽文化、映像文化、エンターテインメントの発展に貢献してきました。技術革新がもたらす産業の大きな変化を取り込みながら、常にイノベーティブなビジネスを構築し、社会課題の解決に取り組みます。

(貢献するSDGs)

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取り組みテーマ

定量的

定性的

指標

目標

実績

目標

2026年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

あらゆる人に音と映像を届ける

 

・音・映像の提供拡大に向けた事業領域・地域・顧客層の拡大

連結売上高

750.0億円

504.9億円

594.7億円

海外売上高比率

30.0%

14.6%

13.6%

音や映像に関するイノベーションの創出

 

・音・映像の先端技術への挑戦

・ヒビノイノベーション活動

(I Project)の推進

・社外パートナーとの連携によるプロダクト開発

ヒビノイノベーション活動(I Project)

従業員参加率

20.0%

10.7%

9.9%

音・映像の革新的な製品・商品・サービスの創出

音響・映像・音楽業界の発展に貢献

 

・市場リーダー地位の確立・維持

・音・映像の先端技術への挑戦

・業界団体等の活動への参画

販売施工事業

海外売上高

96.0億円

60.5億円

68.6億円

建築音響施工事業

騒音対策事業売上高

50.0億円

33.4億円

35.9億円

コンサート・イベントサービス事業

コンサート市場売上高

65.0億円

69.3億円

73.8億円

地域とのパートナーシップのもと、音と映像を活用したまちづくりに貢献

 

・地域等とのパートナーシップ強化

・音・映像を活用したまちの賑わい創出

音・映像を活用したまちづくりの実績化

音と映像の技術を伝える

 

・当社グループにおける音・映像技術の伝承、技術開発

・音・映像技術に関する外部向け教育・啓蒙活動の実施

音・映像技術の見える化・教育、技術開発拠点の創設・活用

音・映像技術に関する外部向けセミナー・イベントの実施

 

[マテリアリティ2]脱炭素社会への貢献

気候変動を地球上のすべての生物に関わる大きな課題と捉え、脱炭素社会移行に向けた、持続可能な企業活動の実現を目指します。SDGsやパリ協定で示された国際的な目標達成への貢献を目指し、廃棄物削減や省力化等に取り組みます。

(貢献するSDGs)

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取り組みテーマ

定量的

定性的

指標

目標

実績

目標

2026年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

エココンサートの実現

 

・エココンサート・イベントの開発・実施

エココンサート・イベントの実現

事業活動上の廃棄物削減推進

 

・廃棄物の排出削減

・廃棄物の再利用

バーチャルプロダクション事業売上高

6.0億円

4.9億円

3.6億円

事業活動上の省力化推進

 

・輸送に伴うエネルギー削減

・省エネの推進

・再生可能エネルギーの活用

バーチャルプロダクション事業売上高

6.0億円

4.9億円

3.6億円

 

[マテリアリティ3]健康で働きがいのある職場環境の構築

会社とともに成長し、持続可能な社会に貢献する人材を育成するとともに、一人ひとりが健康で安心して働ける職場環境をつくります。多様な人材が互いの個性や価値観を共有し、協働することによって、新たな価値を創造し続ける企業風土を醸成していきます。

(貢献するSDGs)

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取り組みテーマ

定量的

定性的

指標

目標

実績

目標

2026年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

働きがいの創出

 

・働きがいのある仕事の創造・維持

・人事制度改革

・能力開発

従業員エンゲージメント

70.0%

41.2%

さらに働きやすい職場環境の整備

 

・ワークライフバランスや多様な働き方の推進

・ダイバーシティ&インクルージョンの推進

・育児・介護支援

・福利厚生の充実

男性育児休業取得率

80.0

33.0%

86.0

健康経営の推進

 

健康経営の推進

「健康経営優良法人」の認定維持

ジェンダーフリーの実現

 

・女性の活躍推進

・セクハラ防止

女性管理職比率

15.0

9.9%

9.5

女性採用比率

30.0

38.8%

39.7

 (注)上記は、当社単体の指標、目標及び実績であります。当社において目標達成を目指すとともに、当社グループとしての指標、目標についても検討してまいります。

 

[マテリアリティ4]安全・安心な社会の実現

すべての人が安全・安心・快適で暮らしやすい社会の実現を目指します。自然災害やパンデミック、交通事故や騒音などの脅威から、人々の健康と暮らしを守るためのさまざまな取り組み、基盤づくりを進めます。

(貢献するSDGs)

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取り組みテーマ

定量的

定性的

指標

目標

実績

目標

2026年

3月期

2024年

3月期

2025年

3月期

音や映像技術を用いた地域の安全・安心強化

 

・地域の音環境の整備

・音・映像技術を活用したユニバーサルデザイン(すべての人に平等に情報を伝えること)の推進

・その他音・映像技術を用いた安全・安心への取り組み

騒音対策事業売上高

50.0億円

33.4億円

35.9億円

安全・衛生対策の強化

 

・現場事故防止

・交通事故防止

重大現場事故件数

0件

0件

0件

交通安全教育対象者の研修受講率

100.0%

95.2%

89.2%

防災・減災対策の強化

 

・防災・減災対策の強化

有事対応計画に関する定期的な見直しと訓練の遂行

 

(2)人的資本

① 人的資本に関する基本的な考え方(人材育成方針及び社内環境整備方針)

当社グループは、「感動」を生み出すことを通じて社会に貢献し、社会から感謝される会社であり続けたいと考えています。この「感動」を媒介とした貢献と感謝の輪を広げていくことで、会社の発展と従業員の幸福を実現することを人的資本経営の目標としています。「ヒビノグループ理念体系」に基づく経営戦略の実現に向けた人材・組織ビジョン(ありたい姿)として、①世界に通じるプロフェッショナル人材の育成、②クリエイティブでイノベーティブな企業文化の醸成、③多様な従業員が個の強みを発揮する全員経営参画を掲げています。

中期経営計画「ビジョン2025」では、「健康で働きがいのある職場環境の構築」をマテリアリティの一つとして、人材育成や社内環境整備に関する4つの重点テーマに取り組んでいます。

 

② ガバナンス

人的資本に関するガバナンスについては、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれています。詳細は、「(1)サステナビリティ全般 ② ガバナンス」をご参照ください。

 

③ 戦略

イ.働きがいの創出

当社グループでは、世界に通じるプロフェッショナル人材を「高度な専門性と変化への対応力を有する人材」及び「グローバルに活躍できる人材」と定義し、その育成に注力しています。

当社グループならではの規模の大きなプロジェクト、難易度の高いプロジェクトの業務遂行を通じて、実力を存分に発揮できる機会や挑戦・成長する機会を常に提供していきます。さらに、リスキルのためのさまざまな機会や自己実現のための仕組みを提供し、従業員の働きがいを高めます。

 

a.従業員エンゲージメント調査の実施

人的資本経営の実効性を高めることを目的として、2023年より従業員エンゲージメント調査を導入しています。2024年の調査では、国内グループ従業員(一部子会社を除く。)1,156名が回答し、回答率は85.5%となりました。

当社グループでは、従業員エンゲージメントの主要指標として、「当社で働くことへの誇り」「自発的貢献意欲」「勤続意向」「理念、ビジョンへの共感」「仕事のやりがいや楽しさ」の5項目を重視しており、これらに対する好意的回答の平均割合は41.2%となっています。

得られた結果については、各職場へのフィードバックを通じて人材・組織戦略に活用しているほか、当社人事部門が経営陣と連携し、グループ全体としてエンゲージメントの向上に取り組んでいます。

 

b.イノベーション創出に向けた活動

当社グループの成長戦略の一つである「イノベーションによる新規事業の創造と既存事業の革新」の実現を目指して2018年にスタートした「I Project」は、事業改善や新規事業等のアイデアを公募して具現化を目指す制度です。グループに属するすべての従業員が自らの夢の実現に向け提案でき、起業家精神を養成する場、挑戦を促進する場として発展しています。手挙げの文化の醸成、手を挙げた人材への機会の提供を通じて、イノベーションが生まれる環境を整えていきます。

 

c.リスキルのための機会の提供

当社グループは、階層別教育の充実を図るとともに、経営戦略と連動したテーマ型研修を導入しています。2025年3月期は、「オンライン英語研修」及び中堅社員を対象とした「業務改善研修」を実施しました。

また、グループ全従業員を対象に、経営環境の変化に対応するために必要なスキル・能力を育成する「ヒビノスクール」を開催しています。これまでにITやAI、国際ビジネス、コンセプチュアルスキル等に関するプログラムを提供しています。ほかにも、自己啓発支援制度を用意するなど学習の機会を戦略的に提供し、従業員のリスキルを促しています。

 

d.経営人材の育成

当社グループは、次世代を担う経営人材の計画的な育成が重要であると考えています。各部門からの推薦により将来の経営幹部候補として選抜された対象者を、グループの長期経営計画策定プロジェクトに参画させることで、経営人材として必要な基本的能力や知識を実践的に習得できるようにしています。

 

 

e.人事制度改革

従業員の働きがいの向上と優秀かつ意欲的な人材獲得を目的として、人事制度改革に取り組んでいます。

2023年6月には、当社及び国内子会社の一部を対象に「役割給人事制度」を導入しました。役割給人事制度は、経営戦略を実現するために必要な組織と役割を設計し、各役割に対して報酬の設定、人材の配置を行い、そのパフォーマンスによって評価するものです。

また、当社は、新卒入社者の初任給の引き上げを実施しました。2024年からの3ヵ年で3万円の引き上げを段階的に行います。若年層を中心に既存従業員の給与についても、併せて引き上げを実施します。

 

ロ.さらに働きやすい職場環境の整備

従業員が心身ともに健康で安心して働くことができる職場環境づくりに取り組みます。また、多様な価値観、バックグラウンド、スキルを持った人材が、自分らしく活躍できるダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進していきます。

 

a.多様な働き方の実現

当社グループの一部においてフレックスタイムを導入しています。また、在宅勤務、テレワークを取り入れることで時間と場所の制約を取り払い、業務特性に即したフレキシブルな働き方を目指しています。デジタル技術の積極的な活用により、より効果的なコミュニケーションや業務遂行が各職場において進められています。

また、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの取り組みとして、一人ひとりの多様な働き方を支援し受容する職場づくりを進めています。具体的には、仕事と育児・介護・傷病治療を両立するための制度として、短時間勤務制度、積立保存休暇制度、通院休暇制度等があります。

 

b.積極的なキャリア採用を通じた多様な知・経験の活用

当社グループは、専門性や経験、感性、価値観といった知と経験のダイバーシティを取り込むため、長年キャリア採用を積極的に推進してきており、ビジネスニーズに応じて継続的に外部人材を採用しています。2023年6月には、当社従業員による紹介から採用に結びつける「リファラル採用」を導入し、キャリア採用を強化しています。

 

ハ.健康経営の推進

当社グループのバリューである「ヒビノ10訓」に規定する「健康経営 心身が資本!健康が一番!」に基づき、代表取締役社長を健康経営推進責任者として、健康経営を実践しています。当社では、健康経営で解決したい経営課題を「従業員の能力を高め、業界のプロフェッショナルを育成し、お客様へ最高のサービスを提供すること」とし、定期健康診断に係る対策、メンタルヘルス対策、ヘルスリテラシーの向上、スポーツ機会の提供及び仕事と傷病治療の両立支援など、従業員の健康保持増進に向けた取り組みを推進しています。これらの取り組みが評価され、「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定されました。これにより、4年連続の認定となります。

 

ニ.ジェンダーフリーの実現

当社グループにおけるダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの取り組みは始まったばかりであり、ジェンダーフリーの実現はその第一歩であると考えています。

当社は、女性の活躍推進に向けた取り組みを進めています。女性活躍推進法に基づく現状把握、課題分析の結果をもとに、当社が取り組むべき行動計画(計画期間:2021年6月8日~2026年4月7日)を策定しています。主な取り組みとしては、業務・組織の棚卸し、見直しをしたうえで女性の採用を拡大することや、ジェンダーを問わず仕事と家庭を両立するための風土を醸成するために、年休取得率向上に向けた働きかけを行っています。女性の活躍に向け、引き続き必要な施策を検討していきます。

女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画

https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/detail?id=133

 

④ リスク管理

人的資本に関するリスク管理については、全社的な視点でのリスクマネジメントサイクルの仕組みの中で取り扱っています。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑤ 指標と目標

人的資本に関する指標と目標については、「(1)サステナビリティ全般 ⑤ 指標と目標」をご参照ください。

3【事業等のリスク】

当社グループは、経営目標の達成を阻害するあらゆる不確実性をリスクととらえ、そのリスク管理を行う組織としてリスク管理委員会及び傘下の実行委員会(安全管理委員会・防災管理委員会・交通安全管理委員会・衛生委員会)を設置し、グループ横断的なリスクマネジメントサイクルを構築しています。

リスク管理委員会は、内部監査室と連携し、グループ全体を対象にリスクを洗い出し、経営への影響度と発生可能性等で評価を行い、優先的に対処すべき重要リスクを特定するとともに所管部門を定めます。重要リスクの所管部門は、リスクを低減する対策を検討・実行し、その進捗状況をリスク管理委員会に報告します。また、内部監査室は、このリスク低減活動についてモニタリング、助言を行っています。

当連結会計年度末現在において、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している特に重要なリスクは「(8) 人材の安定的確保について」「(9) 情報セキュリティについて」「(3) 国際情勢の不安定化について」の3項目であり、それ以外の重要なリスクと合わせ、計13項目を主要なリスクと捉えています。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。

 

(1) 災害・感染症等の発生について

地震、津波、台風等の自然災害、火災、停電、感染症(パンデミック)等が発生した場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

これらに対し、当社グループは、災害・事故等の発生を防ぎ、また、万が一発生した場合の被害を最小限に抑えるため、リスク管理委員会を設置し、傘下の実行委員会(安全管理委員会・防災管理委員会・交通安全管理委員会・衛生委員会)における活動を通じて各種対策を検討しています。具体的には、事業継続計画(BCP)の策定、大規模地震及び新型インフルエンザ発生時におけるマニュアルの整備、安否確認システムの導入、定期的な防災訓練、テレワークの推進等の対策を実施しています。

 

(2) 景気変動について

当社グループの一部の事業は、日本国内の景気変動の影響を受けやすい傾向があります。企業の販売促進活動やその他のイベントは、景況に応じて広告宣伝費支出を増減させる企業が多いことから、開催数や規模が変動しやすい傾向にあります。また、景況感の悪化により企業の設備投資の抑制が進んだ場合や、政府及び地方自治体の方針により公共投資が削減された場合、計画されていたプロジェクトが中止や延期となる可能性があります。

これらの影響により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、「ハニカム型経営」によって事業の多角化を図るとともに、特定の顧客に依存することなく広範囲の業種にわたる顧客基盤を構築しています。また、海外売上高比率を30%にまで引き上げることを目標に、世界4極(日本、アジア、北米、欧州)での展開を進めることで、日本国内の景気変動リスクを最小限に抑えるよう努めてまいります。

 

(3) 国際情勢の不安定化について

当社グループは、商品販売及び役務提供を行うため、音響・映像機器等の多くを海外メーカーから仕入れています。大国間の競争や中東地域等をめぐる地政学リスクの高まりなどによって国際情勢は不安定化しており、国内外の経済社会活動に大きな影響を及ぼしています。当社グループにおいても、サプライチェーンの混乱、メーカーからの仕入れ価格の上昇、輸送費の高騰といったリスクが顕在化しており、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、情報収集及び事業に与える影響の分析を行い、対策として、適正在庫の維持、機動的な販売価格の改定等に取り組んでいます。

 

(4) 為替変動について

当社グループは、事業のグローバル化を推進しており、為替相場の変動は、外国通貨建ての売上高や仕入コストに影響を及ぼします。また、連結決算における海外連結子会社の財務諸表の円貨換算額にも影響を及ぼします。為替変動が想定以上となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、取引先企業との間で円建て等特定通貨による取引の交渉を進めるとともに、外貨通貨建て取引については、為替予約等のヘッジ取引により為替変動リスクの軽減に努めています。また、主要通貨の変動と事業への影響をモニタリングし、適時、経営会議に報告しています。そして、吸収できない為替変動に関しては、競合他社の動きも見つつ適切に売価反映を行うなど、関係部門は事業への影響を軽減する対策を講じています。

 

 

(5) 海外ブランド商品の輸入販売店契約について

当社グループは、海外メーカーと輸入販売店契約を締結して国内における輸入販売権を取得しています。これらの契約内容はメーカーごとに異なりますが、メーカーとの間で最低仕入額を設けるケースが多くなっており、輸入実績がメーカーの希望する金額を下回った場合は次回の契約に影響が及ぶ可能性があります。また、商品の開発・生産等に関しては、メーカーの事情に影響されるため、新商品の発表や商品供給に対する大幅な遅延や、メーカーの商品戦略に当社グループが考えているものと大きな乖離が発生する可能性があります。また、買収・統合等によりメーカー側の経営方針等が転換した場合、販売店が変更される可能性があります。これらの要因により、仕入先の海外メーカーとの取引関係が継続困難となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、多数の優秀なブランドの輸入販売権を確保することで、特定仕入先への依存によるリスクを軽減しています。著名なブランドだけではなく、まだ国内での知名度は高くなくても優秀であると当社グループが見極めたブランドの輸入販売店契約締結を推進し、優れた商品を直輸入販売することで業績拡大に努めています。

なお、現在、当社グループと仕入先の海外メーカーとの取引関係は安定しており、今後も良好な関係を継続する方針であります。

 

(6) 安全について

当社グループは、多数の施工現場、コンサート・イベント現場で業務を遂行しております。現場の安全確保に万全を期しておりますが、万が一、人身・施工物等に関わる重大な事故が発生した場合には、当社グループの信用、経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、災害・事故等の発生を防ぎ、また、万が一発生した場合の被害を最小限に抑えるため、リスク管理委員会を設置し、傘下の実行委員会(安全管理委員会・防災管理委員会・交通安全管理委員会・衛生委員会)における活動を通じて各種対策を検討しています。具体的には、現場におけるヒヤリハット事例の原因究明と共有、安全教育の実施、工事を担当する指定工事業者への教育や指導を通じて安全の確保に努めています。

 

(7) M&Aについて

当社グループは、音響、映像、音楽、ライブの分野でナンバーワン、オンリーワンの企業が集まり連携する仕組みをつくる「ハニカム型経営」の推進を目的として積極的なM&Aを進めており、これを成長戦略の要と位置づけています。しかしながら、M&A後の事業環境の変化等により業績計画との乖離が生じる場合や、事業や人材等の統合が進まず期待するシナジー効果が得られない場合には、投下資本の回収に一定の期間を要する、または回収ができない可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

当社グループは、M&Aの実施に際して、対象企業の財務、法務、事業等について詳細なデューデリジェンスを行い、リスクを検討し正常収益力を分析したうえで機関決定しています。当社グループの経営戦略との整合性や将来における成長性、シナジー効果等についても、事前に十分に議論し進めるように努めています。

M&A後においては、シナジー実現に向けたフォローアップを行うとともに、業績が当初計画から大きく乖離していないかを月次で確認するとともに、経営会議で報告しています。必要に応じて、関係部門は、今後の方向性や業績改善のための対策を検討しています。

当社は、2025年3月31日現在において、国内17社、海外9社の連結子会社があり、うち、国内17社、海外5社はM&Aによる子会社であります。子会社化した後に、過去最高売上高、過去最高益を更新した子会社も多く、連結業績に大きく貢献しています。

 

(8) 人材の安定的確保について

当社グループが提供する音響・映像機器のオペレートや、システム設計、メンテナンス等においては、専門的な知識や技術、ノウハウが要求されます。当社グループの持続的成長を可能とするためには、従業員一人ひとりの成長と活躍が欠かせません。今後、人材獲得競争の激化や人材の流動化が加速することが見込まれる中、従業員エンゲージメントの低下等により必要な人材の確保・育成が計画どおりに進まない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

当社グループでは、新卒社員の採用を強化するとともに、高度な専門性を持つ人材の中途採用を進めています。また、教育研修の実施や自己啓発支援制度の導入により成長に資する機会を提供し、変化を先導するリーダーの育成に取り組んでいます。さらに、評価制度の充実、社内表彰制度の運用、ワークライフバランスを支える各種制度の整備、健康増進支援等の施策により、従業員がいきいきと働き、最大限の能力を発揮できるよう、環境整備に努めています。

 

(9) 情報セキュリティについて

当社グループは、業務の多くを情報システムに依存しています。コンピューターウイルスの侵入や不正アクセス等のサイバー攻撃によって情報システムに何らかの障害が生じた場合、当社グループの業務に重大な支障をきたす可能性があります。また、当社グループが保有する顧客や取引先、あるいは当社グループの機密情報や個人情報が、取扱いの不備や不正アクセス等により漏えいした場合には、当社グループの信用は低下し、損害賠償等を行う必要が生じることにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、防御システムの多層化や情報システムの定期的なリプレイスなど、安定的に稼働できるよう対策を講じています。また、当社は、個人情報保護方針及び情報セキュリティ基本方針を定めるとともに、情報セキュリティに関する規程を整備し、情報管理の強化に努めています。具体的には、プライバシーマークを取得し、適切な個人情報の取扱いを実践することに加え、役員・従業員に対し情報セキュリティに関する研修やサイバー攻撃対応訓練を定期的に実施するなど、リテラシー向上に向けた取り組みを推進しています。

 

(10) コンプライアンスについて

当社グループは、事業活動を営むうえで、建設業法、製造物責任法、電気用品安全法、独占禁止法、下請法、労働基準法(その他 労務管理に関わる法令等を含む)等さまざまな法規制の適用を受けています。それらの法令の改廃、法的規制の新設・強化等が行われた場合、何らかの事情により法律に抵触する事態が生じた場合、当社グループの信用、経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

当社グループは、「ヒビノグループ行動規範」において法令を遵守することを定め、役員・従業員に対し研修等を通じて徹底を図っています。社内体制としては、代表取締役社長を委員長、全取締役を委員、全監査役をオブザーバーとする内部統制委員会を設置し、その機能を補完する下部組織であるコンプライアンス委員会に対して指示を行い、報告を求める仕組みとなっています。さらに、代表取締役社長直轄の内部監査室が子会社を含め内部監査を実施するとともに、内部通報制度を設置し、違法行為等の未然防止や早期発見に努めています。

 

(11) 資金調達について

当社グループは、事業活動に必要な資金調達を、金融機関からの借入等により行っています。金融市況及び景気動向の急激な変動があった場合、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの業績悪化等により資金調達コストが上昇した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループは、調達時の金利情勢、外部マクロ環境、当社グループの状況等を総合的に勘案し、資金調達を実施することとしています。また、金融機関との良好な関係を維持し、コミットメントライン等の活用により十分な流動性を確保するとともに、資金調達先及び期間の適度な分散等に努めています。

 

(12) 競合について

当社グループは音響と映像を中心とした製品、商品、サービスを多様な市場に提供しており、他の業務用音響・映像機器メーカーや、コンサート・イベントの音響サービス、大型映像サービス会社をはじめ、さまざまな企業と競合しております。今後、さらなる価格競争の激化や、当社グループよりも顧客のニーズに合った製品、商品及びサービスを提供できる企業が新たに台頭してくることも否定はできません。また、経済のグローバル化に伴い、欧米等先進国の企業だけでなく新興成長国の企業との競争も激化しつつあります。これらの場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの販売施工事業においては、競合他社との間で品質や機能・性能を含むさまざまな要素で競争しており、特に近年は、低価格化競争が激化しています。これらに対し、当社グループは、音と映像をコアとしたトータル・ソリューションの提供、顧客サービスの向上等によって競合他社との差別化を図り、競争力を維持・強化しています。

また、コンサート・イベントサービス事業においては、最新鋭かつ大量の機材を保有して競合他社との差別化を図るべく積極的な設備投資を実施していますが、今後、急速な技術革新により保有機材が陳腐化する可能性や、機材のコモディティ化、低価格化が進行した結果、機材での差別化が困難になる可能性があります。これらに対し、当社グループは、技術力やノウハウといった強みを生かすことはもとより、付加価値を生み出す源泉を機材等の有形資産から人的資産へとシフトするビジネスモデル変革を進めています。

 

 

(13) 技術革新について

当社グループの属する業務用音響・映像業界においては、技術の進化及び変化が著しく、当社グループが競争力を維持するためには、急速な技術革新に適時に対応していく必要があります。しかしながら、技術や市場ニーズの変化の読みと対応が遅れた場合、重点技術領域を強化するために必要な人材確保を含め適切な資源投下ができなかった場合などにおいては、当社グループの製品、商品、サービスの陳腐化、競争力低下等が生じる可能性があります。また、対応が可能な場合であったとしても、研究開発等に多額の費用が発生する可能性があります。かかる場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

これらに対し、当社グループでは、常に最新のソリューションを顧客に提供するため、最新の技術情報を把握し、将来における顧客ニーズや業界トレンドを予測して、新しい技術への投資と事業化を継続的に行っています。

また、2018年より、代表取締役社長を責任者とする「ヒビノ・イノベーション活動」(アイデア提案制度)を開始しております。アイデアから事業化までのプロセスの構築と体制整備を行うことで、新規事業のスピーディーな開発を可能としています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営成績等の状況の概要

(1) 財政状態

当連結会計年度末の資産につきましては、44,112百万円となり、前連結会計年度末と比べ3,283百万円増加しました。これは、売掛金、のれん及び無形固定資産の「その他」が増加したことが主な要因であります。

負債合計につきましては、32,104百万円となり、前連結会計年度末と比べ2,162百万円増加しました。これは短

期借入金及び長期借入金が増加したことが主な要因であります。

純資産合計につきましては、12,007百万円となり、前連結会計年度末と比べ1,121百万円増加しました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の利益剰余金への計上が主な要因であります。

 

(2) 経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続きました。ただし、アメリカの通商政策の影響による下振れリスクをはじめ、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響が懸念され、先行きが見通せない状況にあります。

当社グループを取り巻く経営環境は、都市再開発計画やスタジアム・アリーナ改革の進展、大阪・関西万博需要の本格化が見られ、コンサート・イベント市場も活況を維持しています。

このような状況のもと当社グループは、グループビジョン「世界のヒビノへ」の実現に向け、中期経営計画「ビジョン2025」(2023年3月期~2026年3月期)に取り組んでいます。本中期経営計画では、中期経営方針として「持続的成長を可能とする経営体質の構築」及び「健全経営の確立」の2つを掲げています。「ハニカム型経営」と「イノベーション」を成長戦略の柱とし、M&Aも活用して新領域を開拓するとともに、適正な利益、財務の安定、人的資本の向上の好循環サイクルを確立していきます。

この方針に基づき、第1四半期には、映像制作会社9社を傘下に持つCHホールディングス株式会社の株式を取得し、映像制作サービスの提供を開始しました。同社及び同社の子会社である株式会社エルロイ、株式会社massiveを連結子会社化しています。また、第2四半期には、高機能ワークチェアを中心としたオフィス家具の販売及びオフィス空間の設計・施工を行う株式会社オフィックスを連結子会社化しました。さらに、第3四半期には、オーストラリアにおける業務用音響・映像機器等の販売施工会社を傘下に持つInSight Systems Holdings Pty Ltdの株式を取得し、同社及び同社の子会社であるInSight Systems Unit Trustを連結子会社化しています。

当連結会計年度は、大型案件の増加や新規連結子会社の寄与により、すべてのセグメントにおいて2期連続で前連結会計年度の売上高を上回りました。特に、「長崎スタジアムシティ」と「大阪・関西万博」の2案件は、グループ連携による取り組みが功を奏し、業績拡大に大きく貢献しました。

長崎スタジアムシティへは、当社及びグループ3社が連携し、建築音響施工からLEDディスプレイ・音響・照明システムの販売施工までを担い、顧客のニーズにワンストップで応えるトータル・ソリューションを提供しました。また、大阪・関西万博においては、当社及びグループ14社が、会場内のパビリオンや施設、イベントなど50以上のプロジェクトに参画しています。その中の一つである「大阪ヘルスケアパビリオン」内に設置された体験施設「XD HALL」では、360度映像、立体音響、床振動を融合したイマーシブシアターシステムを設計し納入しました。

営業外損益については、前連結会計年度の為替差益が為替差損に転じましたが、営業利益の拡大により、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益も前連結会計年度と比べ増加しました。

これらの結果、売上高59,473百万円(前連結会計年度比17.8%増)、営業利益4,171百万円(同48.2%増)、経常利益3,924百万円(同32.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,722百万円(同5.9%増)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を新たに追加しております。詳細は、「第5 経理の状況 1

連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。

[販売施工事業]

販売施工事業は、主軸である業務用音響・映像機器等の輸入販売及び施工において、超大型案件である長崎スタジアムシティや大阪・関西万博に係る売上が業績をけん引しました。コンサート・イベント市場、設備市場においても、顧客の設備投資が引き続き活発に行われました。

LEDディスプレイ・システム販売も好調に推移し、上記の超大型2案件をはじめ、企業の新本社や体験型ブランドショップ、公営競技施設向け等の案件を手掛け、拡大する需要に対応しました。また、2023年12月に連結子会社化した株式会社エヌジーシーの業績が、当連結会計年度は第1四半期より寄与しています。

海外においては、韓国子会社が国内政治の混乱や景気低迷の影響を受け、案件の延期や中止が発生するなど、不透明な事業環境が続きました。一方で、第3四半期にオーストラリアのInSight Systems社を連結子会社化したことにより、アジア・オセアニア地域全体では収益が拡大しています。

 

これらの結果、売上高30,510百万円(前連結会計年度比21.4%増)と過去最高を更新し、セグメント利益2,114百万円(同77.1%増)となりました。

 

[建築音響施工事業]

建築音響施工事業は、顧客の旺盛な設備投資需要や都内で複数進行する再開発を背景に、放送局の建替やスタジオの新設、文化・交流施設の新築計画が中長期的に控えていることから、良好な事業環境にあります。前連結会計年度から継続するメディア関連の大規模プロジェクトが引き続き貢献したほか、大型オンライン配信スタジオ等の放送・制作スタジオ、メーカーの音響実験室、大阪・関西万博パビリオンの建築音響施工案件をはじめ、電磁波シールドや騒音対策の大型施工案件が集中し、順調に工事が進捗しました。さらに、原価低減による利益率向上の取り組み、工事契約の見直しや追加工事が行われたことから、売上高及びセグメント利益は過去最高を更新しました。

これらの結果、売上高10,597百万円(前連結会計年度比14.4%増)、セグメント利益1,030百万円(同56.7%増)となりました。

 

[コンサート・イベントサービス事業]

コンサート・イベントサービス事業は、関東圏におけるアリーナ会場の新設に伴う大規模公演の増加や、K-Popアーティスト案件の拡大により、主力のコンサート市場が伸長しました。加えて、大阪・関西万博案件の獲得もあり、好調を維持しています。

また、第1四半期において映像制作会社を子会社化し、映像制作サービス事業に本格参入しました。これにより、コンテンツ制作から大型映像システムの活用まで、ソフトとハードを融合したビジュアルソリューションの提供を開始しています。子会社化した10社のうち3社を連結化した効果も加わり、売上高及びセグメント利益は過去最高を更新しました。

これらの結果、売上高17,467百万円(前連結会計年度比8.5%増)、セグメント利益2,468百万円(同4.6%増)となり、売上高及びセグメント利益ともに過去最高を更新しました。

 

[その他の事業]

当連結会計年度より、株式会社オフィックスの株式を取得し、連結の範囲に含めたことに伴い、「その他の事業」の報告セグメントを新たに追加しております。当セグメントの業績には、企業結合に係るアドバイザリーに対する報酬・手数料等が含まれております。

これらの結果、売上高は898百万円、セグメント損失18百万円となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度に比べ554百万円減少し、3,773百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

  営業活動の結果獲得した資金は3,588百万円(前連結会計年度比48.5%減)となりました。

  資金の主な増加要因としては、税金等調整前当期純利益3,259百万円及び減価償却費2,824百万円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

  投資活動の結果使用した資金は4,842百万円(前連結会計年度比15.3%増)となりました。

  資金の主な減少要因としては、有形固定資産の取得による支出2,951百万円及び連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出1,752百万円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

  財務活動の結果獲得した資金は718百万円(前連結会計年度は1,303百万円の資金使用)となりました。

  資金の主な増加要因としては、短期借入金の純増額923百万円及び長期借入れによる収入と返済の純増額604百

万円であります。また、資金の主な減少要因としては、配当金の支払額694百万円であります。

 

生産、受注及び販売の実績

    (1) 生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 前年同期比(%)

販売施工事業

         (百万円)

3,819

138.3

建築音響施工事業

         (百万円)

6,798

121.8

合計          (百万円)

10,617

127.3

 (注)1.販売施工事業の金額は、当期完成工事高及び製造原価を記載しております。

2.建築音響施工事業の金額は、当期完成工事高を記載しております。

 

(2) 受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

 販売施工事業

9,011

115.3

3,433

102.8

 建築音響施工事業

8,322

75.9

10,455

113.5

 合計

17,333

92.3

13,888

110.7

 (注)1.販売施工事業の受注実績は、建設工事及び映像製品に係る特注品を対象としております。

2.建築音響施工事業の受注実績は、建設工事を対象としております。

 

(3) 商品仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 前年同期比(%)

 販売施工事業

          (百万円)

12,158

106.0

 その他の事業

          (百万円)

792

 合計          (百万円)

12,951

118.5

 

(4) 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 前年同期比(%)

 販売施工事業

          (百万円)

30,510

121.4

 建築音響施工事業

          (百万円)

10,597

114.4

 コンサート・イベントサービス事業

              (百万円)

17,467

108.5

 その他の事業

              (百万円)

898

 合計        (百万円)

59,473

117.8

 

 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において分析、判断したものであります。

 

(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたりまして経営陣は、資産・負債及び収益・費用の計上、偶発債務等の開示に関連した種々の見積りを行っております。これら見積りにつきましては過去の実績や状況を勘案した合理的な仮定に基づき判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しており、重要な会社の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「同注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(2) 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 売上高及び売上総利益

売上高は、大型案件の増加や新規連結子会社の寄与により、すべてのセグメントで前連結会計年度と比べ増加し、2期連続で過去最高を更新しました。特に、長崎スタジアムシティと大阪・関西万博の2案件は、グループ連携による取り組みが功を奏し、業績拡大に大きく貢献しました。

売上総利益は、売上高と同様の理由により、前連結会計年度と比べ増加しました。

これらの結果、売上高59,473百万円(前連結会計年度比17.8%増)、売上総利益は21,181百万円(同20.6%増)となりました。

 

② 営業損益、経常損益

販売費及び一般管理費は、給料等人件費、支払手数料及びのれん償却費が増加したこと等により、前連結会計年度比2,264百万円増の17,010百万円となりました。

営業外収益は、固定資産売却益及び受取補償金が増加した一方、前連結会計年度の為替差益が為替差損に転じたこと等により、前連結会計年度比202百万円減の206百万円となりました。

営業外費用は、為替差損を計上したこと及び支払利息が増加したこと等により、前連結会計年度比182百万円増の453百万円となりました。

これらの結果、営業利益は4,171百万円(同48.2%増)、経常利益は3,924百万円(同32.9%増)となりました。

 

③ 特別損益及び親会社株主に帰属する当期純損益

特別利益はなく、特別損失は、のれん償却額353百万円、投資有価証券評価損218百万円、為替換算調整勘定取崩損72百万円等を計上しました。

法人税、住民税及び事業税は1,607百万円、法人税等調整額は△127百万円となりました。

これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,722百万円(同5.9%増)となりました。

 

(3) 経営成績等に重要な影響を与える要因について

経営成績等に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に詳述したとおりであります。

 

(4) 経営戦略の現状と見通し

経営戦略の現状と見通しは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に詳述したとおりであります。

 

(5) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

① キャッシュ・フロー

当社グループのキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3)キャッシュ・フローの状況」に詳述したとおりであります。

 

② 資金需要

当社グループの資金需要の主なものは、運転資金、子会社取得に要する資金及び設備投資資金であります。設備(機材)投資資金は、最新鋭かつ大量の機材を保有し他社との差別化を図るために欠かすことのできないものです。また運転資金としては、売上債権の入金時期と仕入債務の支払時期に差異が出るため、一定の資金を常に保有しておく必要があります。

 

③ 財務政策

当社グループは、運転資金、子会社取得に要する資金及び設備投資資金について、必要に応じて借入による資金調達を行っております。運転資金につきましては、貸出コミットメント契約を締結し機動的な調達を行なっております。子会社取得に要する資金及び設備投資資金につきましては、長期借入金による調達を行っております。また、グループ全社資金の効率化を図るため、資金余剰状態にある子会社から当社が資金を借り入れ、資金需要が発生している子会社に貸出を行うグループファイナンスを実施しております。

なお、貸出コミットメント契約の締結につきましては以下の財務制限条項が付されており、これに抵触した場合、借入先の請求に基づき、借入金を一括返済することがあり(複数ある場合は、条件の厳しい方を記載しております。)、当社グループの財政状態、経営成績及び信用に影響が及ぶ可能性があります。

・各年度及び第2四半期の決算期末日において、貸借対照表(連結及び個別)における純資産の部の金額を、前年度決算期末日における純資産の部の合計額の80%以上に維持すること。

・各年度及び第2四半期の決算期末日における、損益計算書(連結及び個別)の営業損益及び経常損益においてそれぞれ損失を計上しないこと。

 

(6) 経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針は、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に詳述したとおりであります。

 

5【重要な契約等】

 (財務上の特約が付された貸出コミットメント契約)

 当社の借入金のうち、以下の貸出コミットメント契約については、財務上の特約が付されております。

契約締結日

相手方の属性

当連結会計年度末の債務残高

(百万円)

弁済期限

担保の有無

2022年9月21日

 

 

2025年9月26日

 

都市銀行3行

2,400

2025年3月25日

 

 

2026年3月30日

 

(注)財務制限条項など詳細な内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結貸借対照表関係)」をご参照ください。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、「創造と革新」を経営理念に掲げ、音と映像の事業を基軸としたプロ用AV&ITのトータル・ソリューション企業として、当社グループの持続的な成長の牽引力となるよう取り組んでおります。

 

  当社グループは、レンタルシステムや常設型システム等の研究開発をしております。

(1)レンタルシステム

 当社製LEDディスプレイ・システムを多数採用することによりクライアント等から好評を博しているコンサート・イベントサービス事業は、当該システムの広告塔にしてかつ最大のユーザーでもあることから、セグメントの枠を超えた厳しい要求や意見が非常に有効な助言となり製品開発はもちろん、効率的な研究開発の一助となっております。

  (2) 常設型システム

  あらゆる設置条件に最適な提案が行えるトータル・ソリューションシステムと同時に軽量、シンプルかつ堅牢で厳しい環境下においても耐久性に優れた全天候対応型構造について研究開発しております。

 

 当連結会計年度における研究開発費の総額は205百万円となっております。なお、当社グループの行っている研究開発活動は、概ね各セグメントに共通するものであり、セグメントに関連づけての記載は行っておりません。

 

 現在の主な研究開発テーマは、以下のとおりであります。

(1)より高精彩な、より臨場感あふれる「空間の演出に相応しい」LED表示装置

(2)高精彩(色調補正・輝度補正)の最適化

(3)LED表示装置用の映像信号変換装置及びLEDプロセッサーの操作性・利便性の向上

(4)現状の色再現性を超える次世代向けLED表示装置

(5)LEDを使用した表示装置以外の応用製品

 

(注) LED(エルイーディー): Light Emitting Diode(発光ダイオード)

   プロセッサー: Processor(映像信号制御装置)