当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「埋もれた価値を発掘し、新たな価値を創造していく会社でありたい」と考え、事業運営を行ってまいりました。
その結果、理学系(化学・バイオ系)研究職への人材サービス事業という新たな市場を開拓し、現在では、理学系研究職派遣で働く人の3人に1人が、当社グループより就業しています。また、当社グループは、人材サービスおよびCROサービスを、プラットフォームを通じて提供することで、両業界の標準と比較して、より利便性が高いサービスを、より低いコストで提供することを目指しています。当社グループの多様な経営資源を組み合わせることにより、新たな価値を創造し、自身の企業価値も高めていく、そんな企業グループでありたいと考えています。
その実現の為に、四つのビジョンを掲げています。
① 顧客に対するビジョン=「仕事の成果」の保証 「新しい価値」の提供
人材サービス事業においては、「労働力の提供」ではなく「成果の保証」という考え方で事業に取り組みます。「人」を扱うが故に曖昧にされがちなサービス品質に対して、製品を提供することと同様の厳しさをもってサービス品質の維持向上に努めます。
そしてプラットフォーム事業、CRO事業においては、人材サービス事業から一歩進み、私たちの力で「新しい価値」を創造していきたいとも考えています。私たちが作り出す成果物や製品が「新しい価値」を生み出せるよう努力していきます。
② 私たちの会社を通じて働く人たちへのビジョン=「働く喜び」の提供
「働く」ということは人間にとって大切なことだと考えています。人材サービス事業は、直接的に「働く」ことに関与しています。プラットフォーム事業、CRO事業においても「自社のサービスを通じて人が働くこと」がサービスの要素です。その大切な「働く」ことに関わる会社として誠実に取り組んでいきます。
仕事の内容、報酬、ライフスタイルにあった働き方、自己の成長、社会的評価、職場環境、人間関係等、たくさんの要素から、働く一人一人に対してそれぞれの「働く喜び」を提供できる会社を目指します。
③ 私たち自身に対するビジョン=「誇り」をもって働ける会社
どれだけ目立たない仕事であっても、「私はこの仕事を通じて社会に貢献しているのだ」と胸を張って言える会社でありたいと考えています。企業の果たすべき責任を社員一人一人が認識し、その一部を自分が担っているのだという強い意識のもとで自信と誇りを持って業務を遂行できる会社。そしてその自信と誇りを支援するオペレーションシステムを持ち、また自らが作り上げたオペレーションシステムでさえ、環境の変化に伴い破壊し、新たな仕組みを作り上げていくパワーを持った会社を目指しています。
④ ステークホルダーに対するビジョン=「価値」の還元
顧客、派遣社員、グループ従業員、株主、取引先、地域社会など、すべてのステークホルダーに対する経営責任を果たしていきます。企業には利益を追求し、新たな価値を創出することで、その付加価値を社会に対し還元していく責任があります。その責任から逃避することなく、毅然とした態度で立ち向かい、派遣スタッフおよび社員一人一人が利益の最大化を目指す企業経営を行っていきます。
そして、取引先、地域社会から信頼される企業として行動し、会社の所有者である株主に対して配当を通して利益を還元していきます。適正な評価と社会的信頼を得るために、あらゆるステークホルダーに対して公正かつ適時・適切な情報の開示を行います。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、売上高営業利益率、売上高経常利益率および自己資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)を重要な経営指標と捉えております。今後も収益力の拡大に注力し、株主価値の向上に努めてまいります。なお、過去5年間の実績は以下の通りです。
|
|
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
売上高営業利益率 |
11.6% |
13.5% |
11.6% |
11.1% |
9.9% |
|
売上高経常利益率 |
11.9% |
13.6% |
11.8% |
11.2% |
10.0% |
|
ROE |
16.6% |
17.8% |
13.4% |
12.3% |
9.9% |
|
ROIC |
17.2% |
18.6% |
14.5% |
13.2% |
11.4% |
営業利益率および経常利益率については10%以上、ROEについては15%以上を目標としております。事業の競争力と生産性を高め、営業利益額、経常利益額、純利益額を増加させることによって、ROEおよびROICを向上させ、WACCとのスプレッドを可能な限り大きくすることで、資本コスト以上の利益を得られる状態を維持します。
(3)会社の優先的に対処すべき課題および中長期的な会社の経営戦略
日本社会全体の労働力人口減少とそれに伴う採用競争の激化を受けて賃金水準は上昇し続け、人材の確保は年々厳しさを増しております。
この影響は人材派遣業界にも及んでいます。求職者の選択肢が増える中、派遣スタッフを確保するためには賃金を上げ続ける必要があることに加え、求人募集費も高まり続けています。その結果、派遣会社の利益率は強く圧迫されており、大手の中でも赤字になる会社が出てきています。将来的な人手不足も相まって、このような現象が加速すれば、日本型の人材派遣モデルは成立しなくなっていくのではないかと考えています。同業他社において、人材紹介や業務受託、求人広告など、派遣以外の事業に活路を見出そうとする動きが見られるのも、その予兆であるととらえています。
CRO業界も、従来のビジネスモデルのままでは安泰とはいえません。受託した業務を人の手で処理する構造である以上、賃金水準の上昇は利益率に対する圧迫要因になります。加えて、生成AI等の技術進化により、定型業務の自動化が進む可能性は高く、アウトソーシングに依存する業務運用が見直されることが予想されます。そのため、業界全体としても、提供価値の再定義と事業構造の変革が求められています。
こうした考えから、当社は以下の戦略に基づいて事業を展開しています。
まず、人材派遣会社としての価値を極限まで高めることを目指します。
当社は理学系技術者・研究者の人材派遣を専門としておりますので、一般的な職種を扱う派遣会社に比べ、比較的高い利益率を維持しております。この強みを活かし、中期的には派遣社員の報酬アップを継続することに加え、「転勤を伴わない正社員型派遣」の取り組みと、営業体制の強化によって求職者のニーズにあった仕事をより多く取り揃えることで、新規の求職者から選ばれる割合を高めるとともに、当社から就業している派遣スタッフの契約が終了した際にも、速やかに次の派遣先を提供できるよう対応力を高め、継続就業につなげます。
また、複数の派遣会社に対して一斉に派遣サービスを発注でき、契約締結後の勤怠や請求等も一元管理できる派遣サービスプラットフォーム「ドコ1」を、2025年5月に公開しました。ドコ1を足がかりに新たなお客様とのお取引を開始し、派遣のご注文を頂ける関係を築くという、顧客獲得の方法にも取り組んでいきます。
長期的には、「求職者と就業先の仲介」と「就業中の支援」という、派遣会社の2つの価値を極限まで高めていきます。当社はすでにこの両方に、他社にはない強みを持っていますが、今後さらにプラットフォームを進化させることで極限まで自動化を進め、仲介コストを削減して派遣スタッフの報酬を高め続けるとともに、就業中の丁寧なフォローをさらに磨いていくことで、市場環境の厳しさがさらに増し、他社が新たな事業に転換せざるを得なくなったとしても、当社は派遣会社として顧客と派遣スタッフから支持されることで事業を継続します。そうなれば、現在のような激しい競合状態は解消され、高利益率を確保できる新たなビジネスモデルの構築も可能であると考えています。
また、プラットフォーム運営会社への転身にも取り組みます。
当社は2016年以降、「プラットフォーム運営会社」を目指して様々な取組みを行い、その成果として、派遣サービスをデジタル化するプラットフォーム「doconico」と「ドコ1」、CROサービスをデジタル化するプラットフォーム「CoCopos」を世に送り出しました。
次に目指すのは、派遣以外の新しいサービスを提供するプラットフォームです。doconicoとドコ1の開発および運営を通じて、当社はプラットフォーム運営会社としてのノウハウを積み重ねてきました。この経験と実績を活かし、数年後のサービス開始を目指して、開発に取り組んでいます。
CRO事業についてですが、中期的には、プラットフォームとAIを活用して業務の効率化を進め、社員の待遇改善を実現しながら、短期的な利益への影響を最低限に押さえつつ、事業の拡大を図ります。また、海外のCRO事業では利益率の低さが課題でしたが、2025年2月に不採算事業を売却する等して収益性の改善に取り組んでいます。
長期的には、生成AIや自動化技術の進展により、人手による定型作業が代替されるという変化に正面から向き合い、プロセスの自動化・標準化に加え、業務の安定性と効率性を両立するセンター運営の強化を着実に推進します。そのうえで、判断・顧客対応・品質担保・マルチタスクへの対応など、人が担うべき実務価値領域に資源を集中させ、AIと共存する新たなCROモデルを確立します。ドキュメント支援やPMS支援、臨床研究支援では、業務の標準化やツールの導入、プロセスのデジタル化を進め、再現性と生産性の向上を図ります。
また今後、国内で需要が見込まれる高度な医療機器分野においては、開発から申請、市販後までをカバーする一貫支援体制を基盤とし、そこにデジタル技術とデータの活用を組み込んでいき、国内外における事業展開を多面的に支援できる体制へと進化させていきます。
加えて、医療・医薬関連領域において、新たな事業の創出に取り組みます。既存サービスが対応しきれていない細分化された実務課題に対し、現場の実態に即した支援モデルをデジタルと融合させて構築し、特定領域で高い専門性と収益性を両立する新しい価値を提供します。
これらの取り組みを行い、長期的に事業を発展させてまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社が判断したものになります。
当社グループは、「埋もれている価値を見出し、そこに光を当てて新たな価値を付加できる会社でありたい」と考えています。この理念のもと健全な事業を営み、長期にわたって成長し続ける会社を目指します。多くの派遣スタッフ・社員にとって魅力的な仕事と報酬、労働環境を提供し続けることで、顧客に満足いただけるサービスを提供し、株主の期待に応え地域社会に貢献する会社であり続けたいと考えています。このため持続可能な社会の実現を経営課題と認識し、合わせてステークホルダーとの健全な関係維持を推進します。
(1)重視しているサステナビリティ項目
当社の考えるサステナビリティとは、「人材サービス・CROサービスを提供する会社として、将来にわたり発展し続けること」です。具体的には、「従業員、顧客、取引先や地域社会といったステークホルダーと良好な関係を維持すること」、「法令順守や機密保持、リスク管理の仕組みを機能させられる企業統治を行うこと」、「事業を発展させ続けられる地球環境を維持すること」を掲げています。当社の理念である「埋もれた価値を発掘し、新たな価値を創造していく会社」であり続けるためには、成長可能性のある事業へ経営資源を投入し、従業員、顧客、取引先に対し、高い利便性と生産性の高さを提供し続けることで、その事業や人材が持っている価値を最大限に発揮できなければなりません。このような考え方のもと、重視するサステナビリティ項目を次のように設定しています。
・人的資本(DE&I(ダイバーシティ・インクルージョン)、人材教育)
・IT推進による生産性の向上(ITプラットフォームビジネスへの転換)
・情報管理・倫理(派遣先との信頼性確保)
・コンプライアンス・内部統制(法令遵守)
一方、気候変動関連リスクが企業経営に関わるリスクとしてとらえられる中、脱炭素化等に対する取組が、企業における重要な社会的使命として期待されています。このような社会的要請を踏まえ、「事業を発展させ続けられる地球環境を維持すること」は、記載のサステナビリティの項目の中でも、各ステークホルダーとの健全な関係を維持、推進するうえで、今まで以上に重要性が高まっていると認識しております。
当社のサステナビリティに対する考え方および取り組みの詳細については、下記の当社ウェブサイトもご参照ください。
https://www.wdbhd.co.jp/sustainability/
(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理
当社では、サステナビリティに関する課題を、長期的な企業価値に直結する経営課題として認識しており、それぞれの重要課題(マテリアリティ)に対して、以下のような対応方針およびガバナンス・リスク管理体制を構築しています。特に人的資本に関するサステナビリティを重視しており、管理指標の設定とその状況をモニタリングし、退職率の悪化など、リスク要因が認識された場合には、対応策を検討しています。
|
重要項目 |
対応方針 |
ガバナンス・リスク管理体制 |
|
人的資本 (DE&I・人材教育) |
多様な人材の採用・登用 |
人材属性データの把握と偏り分析 |
|
教育研修・キャリア形成支援 |
戦略会議による施策進捗の定期モニタリング |
|
|
IT推進 |
ITによる生産性向上 |
経営会議にて開発状況と活用度をモニタリング |
|
ITプラットフォーム導入 |
||
|
情報管理・倫理 |
情報セキュリティ強化 |
情報管理に関する内部監査の定期実施 |
|
関係者向け教育研修の実施 |
研修実施状況の定期管理 |
|
|
コンプライアンス・ 内部統制 |
全社的なコンプライアンス研修実施 |
研修受講率・内部監査結果の定期報告とフォローアップ |
|
内部統制制度の強化 |
||
|
気候変動リスク |
環境負荷低減の取り組み(ペーパーレス化、オンライン業務推進など) |
関連KPI(電力使用量等)の社内モニタリングとレビュー |
(3)目標とする指標及び戦略
当社は、サステナビリティに関する各重要課題(マテリアリティ)に対し、明確な対応方針と管理指標(KPI)を定め、取締役会・経営会議等を通じてガバナンス・リスク管理体制のもとで状況把握を行っています。以下に、各項目別の戦略と指標を整理して示します。
|
重要項目 |
戦略の方向性 |
管理指標(KPI) |
管理体制・進捗確認 |
|
人的資本(DE&I、人材育成) |
・多様な人材の採用、登用 ・派遣社員の安定就業支援 ・スキルアップ研修の拡充 |
・ ・ ・派遣社員退職率(具体的な数値は競合他社との関係のため非開示) ・キャリア研修受講数、転職支援実績 |
・戦略会議で定期モニタリング ・属性データの把握・分析 ・経営層による研修評価・改善指示 |
|
IT推進 (プラットフォーム化) |
・業務効率化とプラットフォーム事業の確立 |
・業務自動化対象業務比率(年度ごとに目標設定) ・顧客満足度(CS)スコア |
・経営会議にて進捗確認と課題対応 |
|
情報管理・倫理 |
・情報セキュリティ体制の強化 ・派遣先との信頼性確保 |
・情報漏洩ゼロ継続 ・教育研修受講率:100% |
・内部監査による評価と是正措置 ・年次レビュー報告 |
|
コンプライアンス・内部統制 |
・教育・監査によるリスク管理強化 |
・内部監査指摘事項是正率:100% ・研修受講率:100% |
・取締役会・監査部門が定期的にレビュー |
|
環境対応 (気候変動) |
・ペーパーレス化、省エネ推進 |
・コピー用紙使用量 ・電力使用量 |
・環境指標の社内モニタリング ・年次サステナビリティレポートで確認 |
上記の指標および戦略は、当社の事業特性とステークホルダーの期待に即した形で設定されており、企業価値向上と持続可能な成長の両立を図るための具体的な指針となっています。今後も各指標について定点観測を行いつつ、項目についても定期的に見直しを行い、実効性のある施策の実施と進捗管理を継続してまいります。
当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は以下のとおりであります。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)派遣社員の確保について
当社グループの営む事業の性質上、顧客の求めるスキルや経験を有する求職者を速やかに選任できる体制を整えることが、事業拡大には不可欠な要素であると考えております。しかしながら、雇用情勢の変化等により顧客が要望する求職者を十分に確保できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対応するため、全国に研修のための施設を設け、求職者を教育・養成する注力するとともに、2022年4月以降は、継続的な報酬のアップを行い、派遣社員の確保に努めております。また、報酬アップに加え、正社員型派遣においては、配属エリアを限定したスタッフの採用を実施し、派遣スタッフの希望に出来るだけ応えること、登録型派遣については営業体制を強化し、求職者のニーズにマッチする求人をより多く取り揃えることで、採用数の増加や退職率の低減に努めております。
(2)法的規制ならびに関連法規の改正について
人材派遣事業は、「労働者派遣法」、「労働契約法」を中心とした、労働に関する各種法令の適用を受けます。また、人材紹介事業は、「職業安定法」の適用を受けます。万一当社グループが法令違反などを行った場合、労働者派遣事業および人材紹介事業を行えない、もしくは一時的に停止する状況となり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、今後法改正が実施された場合、その改正内容によりましては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
しかしながら、当社グループは法令順守を重視した事業運営を行っており、現在までに労働者派遣法および職業安定法の欠格事由(注)に該当する事実や業務停止命令を受ける法令違反の事実はありません。
なお、労働者派遣法および関連諸法令については、これまでにも労働市場をとりまく状況の変化等に応じて、改正が適宜実施されており、当社グループでは、その都度、当該法改正に対応するための諸施策を講じております。
(注)人材派遣事業の欠格事由は労働者派遣法第6条に、人材紹介事業の欠格事由は職業安定法第32条にそれぞれ定められております。
(3)企業買収に伴うリスクについて
当社グループが企業買収を行った後、計画通りに事業展開が進まなかった場合には、減損会計の適用に伴うのれんの減損処理が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
買収に際しては、対象企業に対する十分なデューデリジェンスを実施し、買収後についても定期的なモニタリング体制を整えることで、リスクの特定・抑制を図るとともに、買収効果を最大化することで持続的な成長を目指しております。
(4)個人情報の管理について
当社グループは、人材サービス関連事業を行っているため、多数の社員および求職者の個人情報を有しております。万一個人情報の漏洩や不正使用等の事態が発生した場合、企業イメージが悪化し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
これらの個人情報保護と派遣先企業、派遣労働者からの信頼の向上のため、当社グループでは年間3回の社員研修を行い、情報管理に関する教育を行うとともに、情報漏洩を防ぐシステム上の仕組みを数多く設けております。なお、2001年9月には財団法人日本情報処理開発協会(現一般財団法人日本情報経済社会推進協会)より個人情報の適切な取扱事業者に付与される「プライバシーマーク」の認定を、WDB株式会社が取得しております。
(5)自然災害等の影響について
当社グループの想定を大きく上回る規模での台風・地震・洪水・疫病等の自然災害や事故により、当社グループや主要顧客の事業活動の停止又は事業継続に支障をきたす事態が発生した場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
これらの事態に備え、当社グループでは従業員の被災リスクを把握しつつ、電子データの分散管理を行うことで、災害発生時にも事業運営を継続できる体制を整備しております。なお、過去に起こった災害時には、代表取締役社長が中心となった対策本部を設置し、状況の把握と被災した社員、派遣社員への対応を行ってきた実績があります。
(6)海外事業の拡大に伴うリスクについて
当社グループは、CRO事業において、欧州および米国での事業展開を行っております。これらの国々において政治・社会体制の急激な変化などが発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに対しては、進出先国の政治・社会情勢を定期的に把握し、リスクの兆候を早期に認識できる体制を整え、タイムリーに情報収集することで、事業運営に反映させています。
(7)社会保険(健康保険および厚生年金保険)の改定に伴う影響について
制度改革に伴う社会保険料の料率改定や、社会保険加入要件の見直し等により、雇用事業主である当社グループの社会保険料負担が増加した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
このリスクに対応するため、当社グループは、コスト管理を徹底して効率的な経営を心掛けるとともに、サービスの質を維持・向上させ続けることで、派遣料金の定期的な改定につなげております。
(8)技術革新に伴う省人化・無人化について
AIやロボットをはじめとした技術革新に伴い、顧客の省人化・無人化が進むことで、人材サービスの需要が大きく減少した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
そのような未来を見据えた事業展開に取り組むとともに、事業環境に応じた柔軟な経営判断ができるよう、社員のスキル向上や専門知識の強化を図ってまいります。
(経営成績等の状況の概要)
(1)財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、理学系分野(化学・バイオテクノロジー)の派遣を中心とした人材サービス事業および、CRO事業(医薬品開発の業務受託)を行う企業集団です。
人材サービス事業に関する事業環境および状況については、当連結会計年度(2024年4月~2025年3月)の有効求人倍率(季節調整値)の平均値が1.25倍(前期比0.04ポイント減)、完全失業率(季節調整値)の平均値が2.5%(前期比0.1ポイント減)となりました。当社の提供する人材派遣サービスに対する需要は、厳しい人手不足を反映して底堅く推移する一方、需要に応えるための求職者確保が課題となっております。
この課題に対応するため、当社グループでは2022年4月以降、派遣スタッフの待遇改善に向けた施策を継続しております。当連結会計年度においては、2024年4月に派遣スタッフの報酬を平均5.6%引き上げました。また、派遣サービスプラットフォーム「doconico(ドコニコ)」を活用した営業活動のオンライン化、東京と神戸に設けたサポートデスクへの業務の集約、およびChatGPTを活用した生産性の向上などにより、コストの削減を進め、派遣スタッフの待遇改善の原資としました。また、今後のさらなる待遇改善に向け、派遣料金の値上げ交渉も行いました。
CRO事業については、医薬品メーカーおよび医療機器メーカーから受託した業務を正確・迅速に処理するため、業務の標準化・自動化をさらに推し進め、顧客の課題解決に貢献しました。また、海外においては利益率の高い事業へ経営資源を集中するため、フィンランドのメドファイルズについて一部の不採算事業を売却し、アメリカのDZSは事業を停止いたしました。
以上のような活動の結果、当連結会計年度の売上高は、51,136百万円(前期比 3.7%増)となりました。営業利益は、5,068百万円(前期比 7.3%減)、経常利益は、5,095百万円(前期比 7.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、3,051百万円(前期比 14.0%減)となりました。
また、当社が重視している指標である売上高営業利益率は、9.9%(前期は11.1%)、売上高経常利益率
は、10.0%(前期は11.2%)、ROEは9.9%(前期は12.3%)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次の通りであります。
なお、セグメント利益は、セグメント間取引消去前の金額であります。
① 人材サービス事業
当セグメントの売上高は、42,985百万円(前期比2.1%増加)となりました。また、セグメント利益は、4,041百万円(前期比9.5%減少)となりました。減益となった要因は、派遣社員の待遇改善に伴う原価の増加、従業員の待遇改善に伴う販管費の増加であります。
② CRO事業
当セグメントの売上高は、8,150百万円(前期比13.5%増加)となりました。また、セグメント利益は、1,512百万円(前期比0.2%減少)となりました。国内、海外ともに受注が堅調に推移したことによって売上は増加した一方、人件費等の増加およびメドファイルズの事業売却費用が発生したことで利益は横ばいとなりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
①資金需要
当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金(派遣社員および従業員給与等の人件費、家賃)、法人税等の支払いならびに配当金の支払いであります。
②財務政策
当社グループの資金需要は、営業活動の結果得たキャッシュ・フロー等の自己資金で賄っております。
③キャッシュ・フローの状況と主な増減要因
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ367百万円減少し、20,574百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況と増減要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、税金等調整前当期純利益5,063百万円を計上しましたが、法人税等の支払額が875百万円となったこと等により、4,367百万円の収入(前期は4,494百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、主に有形固定資産の取得による支出3,132百万円があったことにより、3,334百万円の支出(前期は713百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、主に配当金の支払額1,325百万円があったことにより、1,419百万円の支出(前期は1,240百万円の支出)となりました。
④資金の振り分け方針
営業活動により得られた資金を元に、企業買収、システムの改築、人材採用などに投資を行います。また、株主還元については、2024年3月期以降、40%を目安としております。詳細は、以下の内容をご参照ください。
(https://www.wdbhd.co.jp/ir/dividend.html)
(3)生産、受注及び販売の状況
①生産実績
当社グループは、主として人材サービス事業を営んでおり、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載しておりません。
②受注状況
生産実績と同様の理由により、記載しておりません。
③販売実績
当社グループは、主として人材サービス事業を営んでおり、当連結会計年度における売上実績の内訳は、以下のとおりであります。なお、セグメント別の利益につきましては、「セグメント情報」をご参照ください。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
金額(千円) |
構成比 |
|
|
人材サービス事業 |
42,985,663 |
84.1% |
|
(理学系研究職) |
34,073,126 |
66.6% |
|
(工学系技術職) |
3,059,609 |
6.0% |
|
(一般事務職) |
4,918,904 |
9.6% |
|
(その他派遣) |
322,632 |
0.6% |
|
(人材紹介他) |
611,390 |
1.2% |
|
CRO事業 |
8,150,999 |
15.9% |
|
合計 |
51,136,663 |
100.0% |
(注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
(1)経営成績の分析
「経営成績等の状況の概要 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載の通りであります。
(2)財政状態の分析
① 流動資産
当連結会計年度末における流動資産の残高は27,406百万円となり、前連結会計年度末と比べ1,240百万円減少いたしました。主な要因は、現金及び預金の減少367百万円および未収法人税等の減少767百万円によるものであります。
② 固定資産
当連結会計年度末における固定資産の残高は14,347百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,166百万円増加いたしました。主な要因は、建設仮勘定の増加3,074百万円によるものであります。
③ 流動負債
当連結会計年度末における流動負債の残高は6,936百万円となり、前連結会計年度末に比べ206百万円減少いたしました。主な要因は、未払金の減少587百万円によるものであります。
④ 固定負債
当連結会計年度末における固定負債の残高は1,575百万円となり、前連結会計年度末に比べ42百万円増加いたしました。
⑤ 純資産
当連結会計年度末における純資産合計は33,241百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,090百万円増加いたしました。主な要因は、利益剰余金の増加1,725百万円によるものであります。また、1株当たり純資産は1,624.01円となり、前連結会計年度末に比べ94.16円増加いたしました。
(3)キャッシュ・フローの状況
「経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。