第2 【売出要項】
【募集又は売出しに関する特別記載事項】
当社は2023年8月28日開催の取締役会において、2023年9月下旬開催予定の当社定時株主総会に係る基準日(2023年6月30日)後に本第三者割当で新株式を取得する割当予定先に対し、同じく基準日後に本株主割当における新株予約権を行使した者に対して交付される新株式と併せ、当該新株式についても、当該定時株主総会に係る議決権を付与することを決議いたしました。
(本第三者割当の割当予定先に定時株主総会に係る議決権付与に関する判断の内容)
当社は、本日開示しております「基準日後株主の議決権付与に関するお知らせ」に記載のとおり、会社法第124条第4項本文に基づき、本日開催の取締役会において、本第三者割当増資の実行を条件として、本定時株主総会において、各割当予定先が本第三者割当増資によって取得する本新株式に議決権を付与する旨決議しております。これは、貸主たる割当先から、有利発行ではなく時価でのDESに応じるためには議決権の付与が必須であるとの口頭で意見表明があったことによるものです。
前述のとおり、外部借入の弁済日は迫っており、当社の財務状況下においてこれら借入を全て弁済するならば、当社事業の継続、立て直し、ひいては、上場の維持も困難となってしまうため、同決議が必要と判断するに至りました。
なお、本第三者割当の決定に関する取締役会に出席した監査役3名(うち社外監査役3名)全員から、本第三者割当により一定の議決権への影響はあるものの、当社の財務状況かつ業績並びにキャッシュフローの状況を踏まえると、当社事業の継続性並びに上場維持を担保し、債務超過解消に向けた財務体質の改善に照らすと不合理であるとはいえず、特に外部専門家による意見を得たうえで実施する事は合理性があるとの意見を得ております。また、下記(第三者意見書の概要)に記載のとおり、経営者から独立した第三者として、著名な会社法学者より意見の入手を行い、当社が本株主総会の翌日に返済期限の迫った債務を処理すべく、債務額に見合う(DESを含めた)資金調達を行う緊急的必要性があり、また、その手段は純資産の増加を伴う新株発行等によることが望ましい状況にあり、本件債務の処理としてDESを選択したことについても、取締役の経営判断として、その合理性を積極的に肯定し得るといえ、本第三者割当は不公正発行に該当せず、適法であるとされております。
(第三者意見書の概要)
【結論】
不公正発行に該当しない(適法)と考える。
【理由】
(1) 有利DESから時価DESへの変更の合理性について
既存株主の立場から、有利DESと時価DESの効果の違いを比べた場合、有利DES・時価DESいずれの場合も、対象会社の貸借対照表上、本件債務の金額が資本金等に振り替えられることとなるため、対象会社における財務内容の改善効果は同じである。
一方、時価DESの場合、有利DESと比べて、1株当たりの発行価格が大きくなる分、DESによる発行株式数は少なくなるから、既発行の株式の希釈化が抑えられるという意味において、既存株主にとっては有利(逆にDESに応じる債権者にとっては不利)となる。
そのため、当初は株主総会決議(特別決議)による承認が得られることを前提として、有利DESの実行を想定していたものの、承認を得ることが事実上不可能となったことを受け、債権者らに対し、改めて時価DESへの応諾を依頼するに至ったとの経緯は、本件債務の返済期限が比較的間近に迫っていることも踏まえれば、取締役の経営判断として合理性を有するとの評価が妥当と考える。
(2) 議決権付与の点について
会社法124条4項は、会社に、株主総会の基準日後に株式を取得した者の全部又は一部について、議決権を付与することを認めている。そして、ここにいう「基準日後に株式を取得した者」の代表例が、基準日後における新株発行により、株式を(原始)取得した者である。
その点、同項ただし書では、「当該株式の基準日株主の権利を害することができない。」と規定しているが、「『当該』株式の基準日株主」とあるように、これは基準日後に株式譲渡が行われた場合の譲渡人等を指しており、新株発行の引受や新株予約権の行使により取得(原始取得)した株式の場合、基準日株主は存在しないため、これには該当しない。そのため、公開会社では、発行可能株式総数の範囲内で取締役会に発行権限が授権され、既存株主の議決権比率維持の利益は、不公正発行がとられた場合に問題となるに過ぎない。
上記(1)で述べたとおり、有利DESから時価DESへの変更は、発行株式数の減少を招くことになるため、それだけでは債権者らにとって一方的に不利益となる。そのため、債権者らの立場として、当該変更案を受け容れるに当たり、対象会社に対し、本総会において議決権行使が可能となるよう要請する、すなわち、本総会前迄の手続の完了および議決権付与を要請することには合理性が認められるし、法がこれを認めている以上、十分に想定し得ることでもある。そして、時価DESの実現のため、対象会社が当該要請に応じることもまた、取締役の経営判断として合理性を有するとの評価が妥当と考える。
(3) 新株発行による資金調達の必要性
対象会社は、現状、資金不足に陥っており、本総会の翌日に返済期限が迫った本件債務を処理すべく、(DESを含めた)資金調達を行うことにつき緊急的必要性が客観的に見て存在するといえる。
また、直近の2023年6月期末時点で対象会社は債務超過に陥っているが、対象会社は上場会社であり、債務超過は上場維持基準に抵触し、1年以内に解消しなければ原則上場廃止となること、また、一般論として、債務超過の状態にあれば、新たな資金調達に困難を伴うこと、取引面においても、信用不安から新規開拓ないし取引継続が困難となる恐れも生じるため、これを早期的に解消するのが望ましいことは言うまでもない。そのため、対象会社においては、純資産の増加を伴う形での資金調達、すなわち、借入や社債等によるのではなく、(DESを含む)新株発行等による資金調達を行う必要性が高いと認められる。
(4) 時価DESを選択することの合理性
対象会社では、基準日の前から、本件債務を処理するために有利DESを行うことの検討を開始し、また、債権者らと協議の上で合意し、本総会による株主の承認(特別決議)が得られることを条件として、有利DESを実行することを決定し、2023年5月30日に本件開示によりその旨をアナウンスしていた。
その点、本事案が支配権争奪に当たるか否か、また、仮に当たるとして、現経営陣が支配権を喪失するに至る危険の具体性・切迫性がどの程度かといった点に関しては未だ不透明な点があり、評価が分かれると思われるが、少なくとも、有利DESの検討を開始した時点はもちろん、これを取締役会で決定した2023年5月30日時点では、反対株主らによる株式の買い集めも行われておらず、支配権争奪の可能性が現に生じてはいなかったであろうし、取締役にその認識もなかったと判断される可能性が高いと考えられる。そうすると、客観的に見て、対象会社の取締役において、当初の有利DESに支配権維持目的があったとは認められない可能性もまた高いといえる。
そして、上記(1)及び(2)のとおり、有利DESから時価DESへの変更及びこれに伴う議決権付与についても、取締役の経営判断として合理性を有するとの評価が妥当することを踏まえれば、時価DESへの変更についても、支配権維持目的があったとは認められない可能性が高く、仮に認められるとしても、それは飽くまで副次的な効用として意図していたに留まるものとの評価が妥当と考える。
したがって、最終的に、対象会社が本件債務の処理として時価DESを選択したことについては、不合理な点が認められないというだけでなく、取締役の経営判断として、その合理性を積極的に肯定し得るものと考える。
(5) 小括
上記(3)のとおり、対象会社では、本総会の翌日に返済期限の迫った本件債務を処理すべく、本件債務額に見合う(DESを含めた)資金調達を行う緊急的必要性があり、また、その手段は純資産の増加を伴う新株発行等によることが望ましい状況にあった。
加えて、上記(5)のとおり、本件債務の処理として時価DESを選択したことについても、取締役の経営判断として、その合理性を積極的に肯定し得るといえる。
なお、仮に、支配権をめぐる争いが顕在化していたとの認定がなされるとしても、上記(4)でも述べたとおり、有利DESの検討開始時期および決定時期の点に鑑みれば、対象会社の取締役において、時価DESにつき支配権維持を主要な目的としていたとの推認が及ぶといった判断がなされる可能性は低いと考えられる一方、対象会社において、時価DESを行う合理性(資金調達の必要性)については、積極的に肯定し得ることからすれば、支配権争奪に関する事情の有無ないし程度により、結論が変わるとは考えられない。
以上