第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針、経営環境

当社は、1979年3月に設立以来、ITシステムの根幹となる技術に焦点を絞りビジネスを行って参りました。その分野は、半導体LSI(大規模集積回路)の設計と設計CADに始まり、企業内ネットワーク(LAN)の機器開発とネットワーク構築、そして近年は、ITセキュリティと映像の圧縮/送信などと、変化してきました。

当社は、受託開発の会社ではありません。輸入再販の会社でもありません。独自の標準製品を開発し、オリジナル製品の販売あるいはサービスの形でユーザーに提供しております。技術的には、ソフトとハードの両面をカバーしています。

当社が属するIT業界は、技術革新が著しく、かつてないスピードで変化し、他のあらゆる産業にも影響を与えつつあります。物と物がつながるIoTや人工知能(AI)の活用等で、あらゆる企業や社会の活動において大変革が迫ってきておりますが、この大変革においてもITセキュリティがKEYになると考えております。当社製品は、全てITシステムの根幹/インフラに属する製品です。したがって市場は世界規模で、当然、競合もグローバルとなります。世界に通ずる技術と実現のスピードが企業成長の決め手になると考えております。

 

(2)目標とする経営指標

前述の経営方針、経営環境の下、当社グループは、ITセキュリティをKEYに新たな技術や市場への積極的な展開により事業の拡大を図り、企業価値を持続的に向上させることを目指しており、1株当たり当期純利益をひとつの指標として経営を推進しております。

 

(3)対処すべき課題等

①海外展開を視野に、ユニークな製品、サービスを開発すること。

②広報/IRを強化して、企業活動や製品/サービスをわかりやすく発信すること。

③刷新した基幹システムをベースに情報系のシステムとの連携を図り、業務の効率化と生産性の向上を図ること。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりです なお文中の将来に関する事項は当事業年度末現在において当社が判断したものです

 

(1)ガバナンス

  当社では、代表取締役と執行役員5名で構成する経営会議において、サステナビリティを含む各事業リスクと課題について、定期的にリスク管理部門から取組状況や目標の達成状況の報告を受け、モニタリングをしております。そのうち重要な事項は、リスク事案発生の都度、取締役会へ報告しております

 

(2)戦略

 リスク管理活動を通して識別された当社における現在の重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであり ます

・情報セキュリティ

・気候変動対策

・社員の健康と働き甲斐

・人材の多様性の確保と人材育成

 

 それぞれの項目に係る当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は次項のとおりであります

 

(3)リスク管理

① 情報セキュリティ

当社はCISO(Chief Information Security Officer)を最高責任者とする情報セキュリティマネジメント体制を整備し情報セキュリティの管理を徹底していますまた情報セキュリティ委員会を設置し中期セキュリティ強化ロードマップの審議インシデント対応体制の整備脆弱性の対応方針の整備等に取り組んでいます

詳細は、「第4 提出会社の状況 4コーポレートガバナンスの状況等 (1)コーポレートガバナンスの概要を参照ください

② 気候変動対策

当社グループが関わるIT産業は、事業を通して気候変動の緩和策や適応策の提供が可能です。従って当社事業の持続的な拡大はIT技術の更なる活用を促し、ひいては気候変動問題解決の一助になると考えています。

一方で、当社自身でも省電力等で温室効果ガス排出量の削減に努めておりますが、当社グループの主たる事業はソフトウェアの開発であり、自社工場及び店舗を持っていないことから、その効果は限定的であります。夏場のオフィスのエアコン使用が電力消費量に大きく影響しますが、節電に努めております。

③ 社員の健康と働き甲斐

社員の健康維持の為の施策として、有給消化取得率及び健康診断受診率の前年度対比での向上を目指すことはもとより、社内イベントの一環としてのゴルフコンペやマラソン大会などの開催参加など、社員一人一人がより健康を意識するような仕組みを構築しております。心理的健康維持においては、コンサルティング会社と契約し、メンタルカウンセリングの提供をしております。また、本社ビルや大阪オフィスに関しては一部レイアウトを変更し、フリーアドレス席、ラウンジを設置し、開放的なオフィス環境のもと、より風通しの良い職場環境を実現できるよう、ハード面でも取り組んでおります。

当社は、社員が最高のパフォーマンスそして結果を出せるように、パソコンなどの社員の業務ツールも可能な限り社員の希望に合わせて支給し、また希望により在宅勤務や時差出勤など、フレキシブルな働き方も可能です。当該環境下、社員は実力を発揮し最大限の成果を出し、会社はそれに応じた報酬を公平に出せる仕組みの構築に取り組んでおります。

④人材の多様性の確保と人材育成

特に女性の活躍に関しては今後の課題といえます。当社において女性の育児休業取得率及び復職率は100%を維持しておりますが、次項、指標及び目標欄の通り、女性の管理職比率は向上の余地があると考えます。まずは社内の研修や啓蒙活動などを通じて女性活躍推進について働きかけて参ります。

人材育成については現在のOJT中心の形態からシフトし、より中長期的な視点でコア人財を育成すべく、計画的な管理者研修制度などを今後取り入れて参ります。

 

(4)指標及び目標

 当社では前項④において記載した人材の多様性の確保と人材の育成に関する方針及び社内環境整備について次の指標を用いております当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります

指標

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2027年4月までに15%以上

13.6%

男性労働者の育児休業取得率

2027年4月までに80%以上

40.0%

労働者の男女の賃金の差異

2027年4月までに15%未満

19.4%

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書(以下、本書という)に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)情報セキュリティ対策について

 当社グループは、開発プロジェクトの推進にあたり、ユーザーの多種多様な重要情報を取扱う機会があります。当社グループは、これらユーザーとの間において守秘義務契約を締結し、重要情報の取り扱いに際しては当社グループのコンプライアンス関連規程・マニュアル等に則り厳格に運用し、当社グループ内部からの情報漏洩を未然に防ぐ措置を講じております。しかしながら、万一、当社グループによる情報の紛失、破壊、漏洩等の発生、又は外部からの不正手段による当社グループシステムへの侵入等が生じた場合には、当社グループへの損害賠償請求又は信用低下等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)自社製品の開発リスクについて

 当社グループは、市場のニーズを先取りした新製品や新技術の開発を行っております。近年はサイバー攻撃に対する予防/検知/記録・分析といった一連の対策を実現する製品、スマートデバイスを安全かつ効率良く業務活用するためのネットワーク認証システムとセキュリティ製品、公衆モバイル回線で高品質な映像をリアルタイムに配信するシステムのためのソフトウエア、ハードウェア製品の開発に注力しております。
 しかしながら、今後の開発プロジェクトにおいて、開発期間中の市場環境の変化、あるいは類似・競合製品の出現によって、将来必ずしも開発コストを回収できない可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)他社商品の調達リスクについて

 当社グループは、国内外の他社ベンダーの商品を販売代理店として取り扱っております。これらには、当社グループの戦略上重要な商品があります。当社グループでは提携する他社ベンダーの業績や事業戦略などの情報収集を常に心がけ、事業方針の変化をいち早く察知するように努めておりますが、将来において主要な他社ベンダーが事業戦略の見直し又は吸収、合併、解散等の理由により商品の供給を停止した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)システムの不具合について

 近年ユーザーニーズは多様化しておりますが、LANからWAN、クラウドコンピューティングやモバイルの活用まで、情報網がシームレス化する中にあって、当社グループは時代の流れをリードする高度なネットワークに特化したシステム構築及びネットワーク機器等の開発に取り組んでいます。しかし、大規模システムの構築には常に初期不良などが想定され、また使用するネットワーク機器等の新製品には不具合が発見されたりします。そうしたトラブル対応には、解決のために多くの時間と労力及び費用が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)プロジェクト管理について

 当社グループは、ネットワークシステムの構築及びネットワーク機器の開発にあたり、全社的なプロジェクト管理体制を構築し、不採算プロジェクトの抑制に努めております。しかしながら、ユーザーニーズに基づく納期の短縮化、又は案件の高度化・複雑化によるプロジェクトの難易度の高まり等により、開発工数が想定を超える不採算プロジェクトが発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)競合について

 当社グループは、企業が情報システムに関して抱える様々な悩みに対し、効果的なソリューションを提供できるネットワーク・セキュリティ製品のメーカーとして、あるいはキャリアクラスの大規模で且つ先端ネットワークシステム構築を行える総合力を持ったネットワーク・インテグレーターとして、競合他社には無い強みを持っております。しかしながら、今後参入してくる機器ベンダーやネットワーク・インテグレーターとの価格競争により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)大口主要顧客との間での取引について

 当社グループでは、他企業との取引額を増やすことによって特定販売先への依存度を下げるように努めておりますが、特定販売先の設備投資動向等によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)人材の確保について

 当社グループは、事業を推進し国際ビジネスを展開して行くためには、専門性の高い優秀な人材を継続的に採用・育成し、確保することが重要であると考えております。しかしながら、当社グループがこのような人材を採用又は養成できず、優秀な人材の流出を防止できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)知的財産権等について

 当社グループは、保有する知的財産権、並びに業務スキル・ノウハウ等の企業秘密の社内管理体制を強化しております。また、第三者の知的財産権を侵害しないよう、社内規定の整備を図り事前の調査を徹底する体制を採っております。しかしながら、技術革新に伴い、当社グループが保有する知的財産権が陳腐化するリスクがあるほか、何らかの要因により当社グループの企業秘密が不正に開示又は流用されるリスクがあります。また、当社グループが認識していない知的財産権の成立等により、当社グループの製品、サービス又は技術に対して、第三者から知的財産権の侵害訴訟等を提起されるリスクがあるほか、従業員の職務発明の補償評価に対して訴訟等を提起されるリスクがあり、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(10)為替変動リスクについて

 当社グループは、いくつかの商品を海外から外貨建てで購入しているため、為替相場の変動により円換算による仕入価格に変動が生じ、利益率の低下を招く可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(11)自然災害等について

 地震や台風等の自然災害、未知のコンピューターウイルス、テロ攻撃、システムトラブル又は伝染病といった事象が発生し、当社グループがそれらの影響を受けた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループでは複数の開発拠点を設置し、システムの一部をクラウドで管理するなど、リスクの分散を図っておりますが、当社グループの拠点・地域において、これら自然災害等が発生した場合には多大な損害を被る可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)投資有価証券について

 当社グループの連結会計年度末における投資有価証券残高の推移及び評価損益の実績は下記のとおりです。

     イ.投資有価証券残高の推移                               (百万円)

2019年12月期末

2020年12月期末

2021年12月期末

2022年12月期末

2023年12月期末

220

121

104

94

97

      ロ.投資有価証券評価損益の推移(△は投資有価証券評価損)               (百万円)

2019年12月期

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期末

△3

△146

△50

△13

△2

 投資有価証券の取得方針に関しましては、当社グループの事業活動に密接に関係のある取引先を中心に出資することにより事業の関係の推進を目指すもの、またリスクを評価した上で手持資金を効率的に運用することでありますが、出資先の経営状態が悪化した場合や、市場において悪影響を与える事象が発生した場合には、将来的に減損処理をする可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.経営成績等の状況の概要

(1)財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の世界経済につき、欧州はウクライナ戦争の長期化で高インフレが続き金融引き締めが継続、経済活動が停滞しました。中国は米中対立による輸出の停滞と不動産市場の低迷等により成長が鈍化し、かなり深刻です。米国は金融引き締めによりインフレが抑制されつつあり、好調な雇用環境を背景に個人消費を中心に堅調に推移しました。わが国は円安による物価高の影響があるものの、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症になり、旅行や飲食等が回復、インバウンド消費も加わり緩やかに拡大しました。

IT投資については、企業、官公庁/自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)による業務プロセスやビジネスモデルの変革、新たなサービスの創出等により拡大しました。ITの活用は子供から大人まで、様々な生活シーンに及び、同時に情報ネットを利用した犯罪も多くなりました。これの対処には、ユーザー認証、デバイス認証などが必須です。この認証技術は当社が最も得意とするITセキュリティ技術と言えます。その需要は、クラウド化した版も含め、底堅いものがあります。

2022年12月に「安保3文書」が閣議決定されました。国家のサイバーセキュリティの体制強化が(ようやく)議論され、政府主導で動き出しています。当社は、世界のトップクラスの実戦経験者と手を結び、新しい組織を作り、各業界のサイバー対策を支援していく予定です。

このような環境下、当期の当社グループの業績は、売上高19,058百万円(前年同期比3.5%減)となりました。この売上高の減少は粗利の低い他社製品の販売を抑え、粗利率の高い自社製品/サービスの販売に力を注いだことによるものです。従い、営業利益は2,608百万円(前年同期比28.1%増)となりました。経常利益は、営業外収益で為替差益128百万円や受取配当金73百万円を計上したこと等により、2,809百万円(前年同期比27.5%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、1,936百万円(前年同期比22.0%増)となりました。

 

セグメント別の経営成績は、次のとおりです。

 

[ITセキュリティ事業]

売上高は17,786百万円(前年同期比4.2%減)、セグメント利益は3,701百万円(前年同期比21.3%増)となりました。

前述のようにスポットの他社製商品の販売がなくなり、売上高は減収となりましたが、粗利率の高い自社製品/サービスの増収により、セグメント利益は増益となりました。中でも、高いセキュリティレベルが要求される重要インフラ企業に「Soliton OneGate」が、公共分野に多要素認証で歴史ある製品「SmartOn」の販売が好調でした。サイバーセキュリティでは、海外企業とユニークな連携をし、官公庁や重要インフラ企業への実戦に近いサービスを提案していく方針です。

 

[映像コミュニケーション事業]

売上高は965百万円(前年同期比14.1%増)、セグメント損失は16百万円(前年同期はセグメント損失132百万円)となりました。

「Smart-telecasterシリーズ」について、国内のパブリックセーフティ分野(警察、消防、海上保安庁、自衛隊)や放送局等へ販売し、売上高は増収、セグメント損失は前年同期比で減少しました。また、クラウド経由で超短遅延/高精細画像をモニターしながら離れた場所にある車両や機械、ロボット等を遠隔監視/操縦する「Zao SDK」の販売を開始しました。福井県永平寺町で国内初となる自動運転レベル4で運行された車両の遠隔監視システムは、この技術の更なるTuningと完成度の向上に寄与しました。一方、建設機械の遠隔操縦の実証実験も始まりました。海外での無人操縦の案件も出始め、納入されたことから、海外での販売活動を一段と強化する計画です。

 

[Eco 新規事業開発]

売上高は306百万円(前年同期比11.7%減)、セグメント損失は219百万円(前年同期はセグメント損失183百万円)となりました。

既存の人感センサーと官公庁向け小型伝送装置を販売しました。人感センサーにつきシステムメーカーの在庫調整の依頼があり、売上高は減収となりました。また、アナログエッジAIの開発は継続していますが、完成が予定より大幅に遅れ、結果、セグメント損失は赤字が拡大しました。このアナログAI素子は極めて意欲的なプロジェクトですが、かなり技術的に難しい部分があります。

なお、2024年1月、JAXA(宇宙航空研究開発機構)開発の小型月着陸実証機SLIM (Smart Lander for Investigating Moon)が月面へのピンポイント着陸に成功しました。SLIMではカメラ映像を基に着陸地点を判断する方式を採用しておりますが、そのJAXAが開発したソフトを、当社のこのEcoグループが、宇宙用FPGAに書き込み、回路実装に協力しました。当社は、ピンポイント着陸のキーとなる画像照合航法の実現に貢献出来て、嬉しく、かつ誇りに感じています。

 

当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べて3,363百万円増加し、22,624百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べて3,584百万円増加し、19,952百万円となりました。これは主に現金及び預金が3,194百万円、前払費用が200百万円、商品及び製品が125百万円増加したこと等によるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて221百万円減少し、2,672百万円となりました。これは主に投資その他の資産その他が84百万円、ソフトウエアが78百万円増加した一方、土地が407百万円減少したこと等によるものであります。

流動負債は、前連結会計年度末に比べて1,826百万円増加し、11,402百万円となりました。これは主に未払法人税等が924百万円、契約負債が747百万円、賞与引当金が217百万円増加したこと等によるものであります。

固定負債については、前連結会計年度末に比べて20百万円増加し、90百万円となりました。これは主にリース債務(固定)が36百万円増加した一方、固定負債その他が15百万円減少したこと等によるものであります。

純資産の部については、前連結会計年度末に比べて1,516百万円増加し、11,131百万円となりました。これは主に利益剰余金が1,603百万円増加した一方、為替換算調整勘定が101百万円減少したこと等によるものであります。

なお、当連結会計年度末において、自己資本比率は49.1%、1株当たり純資産額は599円90銭となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3,194百万円増加し、当連結会計年度末には13,394百万円(前年同期比31.3%増)になりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動から獲得した資金は3,643百万円(前年同期比58.6%増)となりました。

収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益2,808百万円、契約負債の増加729百万円、減価償却費315百万円、賞与引当金の増加216百万円等であります。支出の主な内訳は、前払費用の増加187百万円、為替差益133百万円、棚卸資産の増加78百万円等であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動に使用した資金は57百万円(前年同期比81.1%減)となりました。

収入の主な内訳は、有形固定資産の売却による収入461百万円等であります。支出の主な内訳は、無形固定資産の取得による支出413百万円、有形固定資産の取得による支出90百万円等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動に使用した資金は397百万円(前年同期比57.4%増)となりました。

支出の主な内訳は、配当金の支払額333百万円等であります。

 

(3)生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産する製品は主にソフトウエアであり、また当社グループの取り扱う製品は、受注生産形態をとらない製品であるため、生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 

  販売実績

   当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

ITセキュリティ(百万円)

17,786

△4.2

映像コミュニケーション(百万円)

965

14.1

Eco 新規事業開発(百万円)

306

△11.7

合計(百万円)

19,058

△3.5

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

   2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおり

     であります。

 

相手先

前連結会計年度

(自  2022年1月1日

至  2022年12月31日)

当連結会計年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

ダイワボウ情報システム

株式会社

2,254

11.4

2,095

11.0

 

 

2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容の内容は次のとおりであります。

 なお、本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りや仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額及び会計期間の収益・費用の金額に影響を与えます。しかし、これらの見積りや仮定は、実際の結果とは異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を与える可能性があります。

①貸倒引当金

当社グループは、債権等の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。見積りには期日経過債権の回収期間、現在の経営環境等の様々な要因を考慮しております。

②棚卸資産

当社グループは、棚卸資産の評価方法として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しており、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。また、滞留及び過剰在庫の内、陳腐化した棚卸資産については、適正な価値で評価されるように評価減の金額を見積もっております。

③繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産における回収可能性が低いと考えられる金額については、評価性引当額を設定しております。評価性引当額の必要性を検討するにあたっては、将来の課税所得の見積りに基づいております。

④投資有価証券

当社グループは、長期的な取引維持のために、特定の取引先の株式等を保有しております。これらの株式等には、価格変動性が高い上場株式と、株価の決定が困難な非上場株式等が含まれます。これらの株式等について、時価が取得価額を下回っている場合、将来における価値の回復可能性及び発行会社の経営状態を検討しております。

⑤市場販売目的のソフトウエア

 当社グループは、市場販売目的のソフトウエアの減価償却方法について、見込販売収益に基づく償却額と残存有効期間(3年以内)に基づく均等配分額とを比較し、いずれか大きい額を減価償却費として計上しております。また、減価償却を実施した後の未償却残高が翌期以降の見込販売収益の額を上回った場合、当該超過額は一時の費用として処理しております。当社グループの販売見込収益の算定における主要な仮定は、販売計画に基づく受注予測であります。

 

(2)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①売上高・売上総利益

当連結会計年度の売上高19,058百万円(前年同期比3.5%減)、売上総利益8,561百万円(前年同期比12.2%増)、売上総利益率44.9%(前年同期38.6%)となりました。

売上高のセグメント別変動要因に関する詳細については、「1.経営成績等の状況の概要(1)財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。売上総利益率は、ITセキュリティ事業で粗利率の高い自社製品/サービスの増収により、前年同期比6.3%増加となりました。

②営業利益

経費面では、人材投資や販売促進費等の増加により、販売費及び一般管理費は5,952百万円(前年同期比6.4%増)となりましたが、売上総利益の増加が販売費及び一般管理費の増加を上回ったため、当連結会計年度の営業利益は2,608百万円(前年同期比28.1%増)、売上高営業利益率は13.7%(前年同期10.3%)となりました。

③経常利益

主に営業外収益として為替差益が128百万円、受取配当金が73百万円発生したことにより、当連結会計年度の経常利益は、2,809百万円(前年同期比27.5%増)となりました。

④親会社株主に帰属する当期純利益

特別利益について、債務免除益24百万円、固定資産売却益30百万円が生じ、特別損失でソフトウエア除却損19百万円、事業構造改善費用29百万円を計上しました。これにより、親会社株主に帰属する当期純利益は1,936百万円(前年同期比22.0%増)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の1株当たり当期純利益金額は104.55円(前年同期比18.81円増)となりました。なお、当連結会計年度における財政状態の概況については、「1.経営成績等の状況の概要(1)財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。

 

(3)資本の財源及び資金の流動性の分析

当社グループは、営業活動によって獲得した現金と金融機関からの借入金によって、必要となる運転資金の確保と事業拡大の為の設備投資を行っています。

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「1.経営成績等の状況の概要(2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

当社グループのキャッシュ・フローの状況と指標の推移は次のとおりであります。

キャッシュ・フローの状況

2019年12月期

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

 

営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

2,436

2,620

2,080

2,298

3,643

 

投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△635

△1,120

△464

△305

△57

 

財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△136

△1,105

△481

△252

△397

 

フリー・キャッシュフロー    (百万円)

1,801

1,500

1,616

1,993

3,585

 

キャッシュ・フロー関連指標の推移

2019年12月期

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

 

自己資本比率(%)

46.4

43.8

48.9

49.8

49.1

 

時価ベースの自己資本比率(%)

181.5

222.1

159.1

108.6

121.4

 

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

0.2

0.1

0.1

0.1

0.0

 

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

1,354.9

1,317.3

1,536.1

1,965.2

1,766.5

・フリー・キャッシュ・フロー:営業活動によるキャッシュ・フロー + 投資活動によるキャッシュ・フロー

・自己資本比率:自己資本÷総資産

・時価ベースの自己資本比率:株式時価総額÷総資産

・キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷営業活動によるキャッシュ・フロー

・インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー÷利息の支払額

 

(4)経営成績に重要な影響を与える要因について

「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動には、基礎的な要素技術の開発と、現在の製品の改善のための開発があります。

なお、当連結会計年度の研究開発費は938百万円であり、この他売上原価に算入されているソフトウエア開発費用1,724百万円と合わせ、開発活動に関する費用の総額は2,663百万円であります。当連結会計年度における研究開発活動の主なものの概要は、セグメント別に以下のとおりです。

 

(1)ITセキュリティ事業

ITセキュリティ事業の研究開発費は569百万円であります。主要な研究開発項目は以下のとおりです。

[製品]

① NetAttest EPSの新バージョン(V5.2)の開発・リリース

NetAttest EPSの新バージョンの開発・リリースを行いました。NetAttest EPSは、電子証明書による強固なセキュリティを実現し、導入と運用面を考慮した製品として、2002年の物理版アプライアンス製品としてリリース以降、時代とIT環境の変化に応じて仮想アプライアンスを開発し、最適な形態で提供することで業種や導入規模を問わず多くのお客様から高い評価を受けています。今回の新バージョンでは、仮想アプライアンスの動作サポート環境としてMicrosoft Azure に対応しました。これにより、EPSを導入する企業は、仮想基盤の運用負担を低減しつつ、自社のセキュリティポリシーに柔軟に対応できる認証サーバーを構築できるようになります。

② FileZen S の新バージョン(V1.4)の開発・リリース

FileZen S の新バージョンの開発・リリースを行いました。FileZen Sは、異なるネットワーク間でのファイルのやり取りをシンプルかつ安全に実現する製品として、ネットワーク分離環境を運用している多くの自治体・企業で採用されています。今回の新バージョンでは、持ち出しファイルの原本保存が求められる金融業界からの要望に対応した「ファイルアーカイブ機能」を追加し、ファイルの原本保存や、厳密な証跡管理をおこなうことができます。また、現場でのきめ細かな運用を実現する「承認機能の強化」をおこない、無害化処理の結果に基づいて承認先を動的に変更することが可能となり、更に使いやすい製品となっています。

[クラウドサービス]

① Soliton SecureGateway(SSG) の新バージョン(V2.0)の開発・リリース

視認性と操作性の向上を目的としたUIの再設計と機能強化を行った新バージョンの開発・リリースを行いました。SecureBrowser(当社製品)、WrappingBox(当社製品)の動作を設定するプロファイル設定画面においては、設定項目数の増加に伴い、操作の繁雑さや設定項目の分かりにくさが課題となっていましたが、設定項目の名称や画面上の配置からUIの再設計を行い、管理画面の刷新を実施しました。また、画面上から設定項目のヘルプを表示する動作に対応するなど、管理者による設定作業が直感的に操作できるようになりました。この他、接続可能なSecureBrowser、WrappingBoxのバージョンを指定する機能や、WrappingBox V1.4の機能強化に伴うリモートデスクトップ設定項目の追加などの対応を行いました。

② WrappingBoxの新バージョン(V1.4)の開発・リリース

リモートアクセス環境での利便性を向上させるため、リモートデスクトップ機能を大幅に強化した新バージョンの開発・リリースを行いました。Windowsのデスクトップに作成するショートカットからWrappingBoxを起動し、ログインからリモートデスクトップ接続までを自動で実行する機能や、2回目以降の接続における自動ログインに対応することで、ユーザーが日常的に利用する機能における操作回数を減らし、より快適に利用できるようになりました。また、複数の接続先設定への対応や、画面サイズやローカルデバイスの利用に関する設定への対応など、ユーザーの利用環境に応じた柔軟な設定ができるようになりました。

③ Soliton OneGate(クラウドサービス)の新バージョンの開発・リリース

ネットワーク認証から社内外のアプリケーション利用までの多要素認証に対応したID認証サービス「Soliton OneGate」の機能追加を実施した新バージョンの開発・サービス提供を実施しました。今回の新バージョンでは、お客様のセキュリティと利便性をさらに向上させるために以下の機能を追加しました。

1)ICカード対応

ユーザー認証や追加認証方式にICカードを追加することで、なりすましや不正アクセス防止の選択肢を拡大し、より幅広いニーズに対応できるようにしました。

2)SAML連携機能強化

連携機能強化により、より多くのサービスとの連携が可能になり、シングルサインオン (SSO)の利便性をさらに向上させました。

3)SASE(Secure Access Service Edge)対応:任意CA証明書配布

CA証明書配布機能によりSASEとシームレスに連携することで、ゼロトラストセキュリティを実現し、お客様のIT環境をより安全に守れるようにしました。

4)URLスキーム対応

URLスキームを使ってSoliton KeyManager(当社製品)と連携することにより、証明書配布操作を簡易にし、お客様の運用コストを大幅に軽減しました。

5)一次パスワード・機能停止コード対応

Windowsサインイン機能のスマホ忘れ対策として一時パスワード機能、機能停止コード機能を追加することで、PCログイン時のOneGate認証を必須とすることができるようになり、利便性向上とPCログインの認証強化の両立を実現しました。

 

(2)映像コミュニケーション事業

映像コミュニケーション事業の研究開発費は0百万円であります。

 

(3)Eco 新規事業開発

Eco 新規事業開発の研究開発費は218百万円であります。主要な研究開発項目は以下のとおりです。

①アナログ方式エッジAIチップの開発

超低消費電力でありながら、端末において高度な認識を可能にする、アナログ方式によるエッジAIチップの開発を継続しました。また、当該チップを用いた学習処理に関して宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究を開始いたしました。

②Zao SDKの開発

建設機械等の遠隔操縦について、これまで放送局向けに開発した「Smart-telecasterシリーズ」のアプライアンス製品を建設機械等に搭載していましたが、カスタマイズ要望に十分対処できないという欠点がありました。この問題を解消するため、米国のNVidia社のJetsonシリーズに当社のRASCOW2を移植し、建設機械をはじめ、車両、ロボットに組み込めるZao SDKを開発しました。

 

(4)その他

その他の研究開発費は150百万円であります。主要な開発項目は以下のとおりです。

① 「遠隔運転システム」の開発と空港内での専用貨物車に対する走行実験の実施

遠隔地から自動車を運転操作できる「遠隔運転システム」を、日本航空(JAL)の空港専用貨物牽引車に搭載し、中部国際空港エリア内で名古屋市内から遠隔運転する実証実験を、前連結会計年度に続き実施しました。当連結会計年度の実験では、我が国の公式空港内では初めてドライバー無人の牽引車に、実際と同様、複数の貨物車を連結して遠隔走行し、また、連結された貨物車を航空機の所定位置に遠隔操縦で横付けする操作も実施し、十分な実用性が確認されました。

② 自動運転(レベル4)向け「次世代遠隔システム」の経産省からの受託開発

自動運転(レベル4:ドライバー無人)に必須となる「次世代遠隔システム(基盤となる車載用通信システムを含む)」の開発について、前連結会計年度に続き経済産業省から当連結会計年度も受託し、開発が完了しました。その開発成果により、福井県永平寺町の道路で、わが国で初めてのドライバー無人(レベル4)の自動運転が実用化され、乗客輸送に当たっています。