当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針、経営環境
当社は、1979年3月に設立以来、ITシステムの根幹となる技術に焦点を絞りビジネスを行って参りました。その分野は、半導体LSI(大規模集積回路)の設計と設計CADに始まり、企業内ネットワーク(LAN)の機器開発とネットワーク構築、そして近年は、ITセキュリティと映像の圧縮/送信などと、変化してきました。
当社は、受託開発の会社ではありません。輸入再販の会社でもありません。独自の標準製品を開発し、オリジナル製品の販売あるいはサービスの形でユーザーに提供しております。技術的には、ソフトとハードの両面をカバーしています。
当社が属するIT業界は、技術革新が著しく、かつてないスピードで変化し、他のあらゆる産業にも影響を与えつつあります。物と物がつながるIoTや人工知能(AI)の活用等で、あらゆる企業や社会の活動において大変革が迫ってきておりますが、この大変革においてもITセキュリティがKEYになると考えております。当社製品は、全てITシステムの根幹/インフラに属する製品です。したがって市場は世界規模で、当然、競合もグローバルとなります。世界に通ずる技術と実現のスピードが企業成長の決め手になると考えております。
(2)目標とする経営指標
前述の経営方針、経営環境の下、当社グループは、ITセキュリティをKEYに新たな技術や市場への積極的な展開により事業の拡大を図り、企業価値を持続的に向上させることを目指しており、1株当たり当期純利益をひとつの指標として経営を推進しております。
(3)対処すべき課題等
①海外展開を視野に、ユニークな製品、サービスを開発して時代の変化に対処すること。
②広報/IRを強化して、企業活動や製品/サービスをわかりやすく発信すること。
③基幹システムと情報系のシステムを連携させデータの利活用を図ること。また、業務の見直しと整理を行い、効率化と生産性の向上を図ること。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。
(1)ガバナンス
当社では、サステナビリティを含む各事業リスクと課題について、リスク管理部門が定期的に取組状況や目標の達成状況のモニタリングを行い、その結果と必要な対応を経営会議へ報告し、議論をしております。そのうち重要な事項は、リスク事案発生の都度、取締役会へ報告しております。
(2)戦略
リスク管理活動を通して識別された、当社における現在の重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであり ます。
・情報セキュリティ
・気候変動対策
・社員の健康と働き甲斐
・人材の多様性の確保と人材育成
それぞれの項目に係る当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次項のとおりであります。
(3)リスク管理
① 情報セキュリティ
当社は、CISO(Chief Information Security Officer)を最高責任者とする情報セキュリティマネジメント体制を整備し、情報セキュリティの管理を徹底しています。また「情報セキュリティ委員会」を設置し、中期セキュリティ強化ロードマップの審議、インシデント対応体制の整備、脆弱性の対応方針の整備等に取り組んでいます。
本件に関する事項は、「
② 気候変動対策
当社グループが関わるIT産業は、事業を通して気候変動の緩和策や適応策の提供が可能です。従って当社事業の持続的な拡大はIT技術の更なる活用を促し、ひいては気候変動問題解決の一助になると考えています。
一方で、当社自身でも省電力等で温室効果ガス排出量の削減に努めておりますが、当社グループの主たる事業はソフトウェアの開発であり、自社工場及び店舗を持っていないことから、その効果は限定的であります。夏場のオフィスのエアコン使用が電力消費量に一番大きく影響しますが、節電に努めております。
③ 社員の健康と働き甲斐
当社は、社員の健康維持と働きやすい環境の整備を重要な経営課題と位置づけ、さまざまな施策を推進しています。
まず、社員の健康維持に向けた取り組みとして、有給休暇の取得を積極的に促進し、前年度比での改善に努めています。また、健康診断においては、一部受診補助を実施し、定期的な健康チェックを通じた早期発見・予防に取り組んでいます。さらに、職場環境の改善として、本社ビルのレイアウト変更および改装を継続しており、部門間の円滑なコミュニケーションの促進や、多様な働き方に対応できる柔軟なオフィス環境の整備を進めています。加えて、社員一人ひとりのライフスタイルに応じた働き方を支援するため、在宅勤務、時短勤務、時差出勤、中抜け制度などのフレキシブルな勤務制度を導入し、ワークライフバランスを尊重しながら生産性の向上を図っています。
職場の安全性と健全な企業文化の醸成にも注力しており、ハラスメント防止に向けた研修を役職別に実施し、社員が安心して働ける環境づくりを推進しています。さらに、社員のモチベーション向上を目的とした施策として、リワード制度の導入や全社総会での表彰を実施し、社員一人ひとりの貢献を評価しています。加えて、エンゲージメントサーベイを実施し、スコア向上に向けた施策の検討と実施を行い、持続的な組織の成長を目指しています。今後も、社員が安心して働き、最大限のパフォーマンスを発揮できる環境の構築を推進し、持続可能な企業活動に貢献してまいります。
④人材の多様性の確保と人材育成
当社は、新卒・中途を問わず、年齢や性別に関わらず多様な人材を採用し、OJTや目的別専門研修を通じて社員の成長を支援しています。それぞれの個性を尊重しながら、社員一人ひとりの潜在能力を最大限に引き出すことで、イノベーションの創出と企業価値の向上を目指しています。
また、幅広いビジネススキルを習得できる研修プログラムを提供し、社員のキャリア成長を後押ししています。さらに、ITセキュリティ分野においては資格取得支援制度を導入し、専門的な知識やスキルの向上を促進することで、社員の能力開発を支援しています。
当社では、学生に向けた実践的なインターンシップの機会を設け、現場での就業体験を通じて専門的な知識や技術に触れる場を提供しています。この取り組みは、学生の成長支援だけでなく、優秀な人材の確保にもつながっています。
また、社員が主体的にキャリアを築ける環境づくりの一環として、社内公募制度を導入しています。これにより、異なる部署や新たな役割への挑戦を促し、個々の成長と組織全体の活力向上を実現しています。加えて、派遣社員の直接雇用化を推進し、安定した雇用環境の提供とキャリア支援に取り組んでいます。社員が長期的に成長し、組織の発展を支えるパートナーとして活躍できる環境を整備しています。
男性社員の育児休業取得を促進するため、取得可能性のある社員への丁寧な説明を実施し、制度の理解を深めています。これにより、育児と仕事の両立を支援し、男性社員の育児休業取得率の向上につなげています。
(4)指標及び目標
当社では、前項④において記載した人材の多様性の確保と人材の育成に関する方針及び社内環境整備について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
|
指標 |
目標 |
実績(当事業年度) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
有価証券報告書(以下、本書という)に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)情報セキュリティ対策について
当社グループは、開発プロジェクトの推進にあたり、ユーザーの多種多様な重要情報を取扱う機会があります。当社グループは、これらユーザーとの間において守秘義務契約を締結し、重要情報の取り扱いに際しては当社グループのコンプライアンス関連規程・マニュアル等に則り厳格に運用し、当社グループ内部からの情報漏洩を未然に防ぐ措置を講じております。しかしながら、万一、当社グループによる情報の紛失、破壊、漏洩等の発生、又は外部からの不正手段による当社グループシステムへの侵入等が生じた場合には、当社グループへの損害賠償請求又は信用低下等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)自社製品の開発リスクについて
当社グループは、市場のニーズを先取りした新製品や新技術の開発を行っております。近年はサイバー攻撃に対する予防/検知/記録・分析といった一連の対策を実現する製品、スマートデバイスを安全かつ効率良く業務活用するためのネットワーク認証システムとセキュリティ製品、公衆モバイル回線で高品質な映像をリアルタイムに配信するシステムのためのソフトウエア、ハードウェア製品の開発に注力しております。
しかしながら、今後の開発プロジェクトにおいて、開発期間中の市場環境の変化、あるいは類似・競合製品の出現によって、将来必ずしも開発コストを回収できない可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)他社商品の調達リスクについて
当社グループは、国内外の他社ベンダーの商品を販売代理店として取り扱っております。これらには、当社グループの戦略上重要な商品があります。当社グループでは提携する他社ベンダーの業績や事業戦略などの情報収集を常に心がけ、事業方針の変化をいち早く察知するように努めておりますが、将来において主要な他社ベンダーが事業戦略の見直し又は吸収、合併、解散等の理由により商品の供給を停止した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)システムの不具合について
近年ユーザーニーズは多様化しておりますが、LANからWAN、クラウドコンピューティングやモバイルの活用まで、情報網がシームレス化する中にあって、当社グループは時代の流れをリードする高度なネットワークに特化したシステム構築及びネットワーク機器等の開発に取り組んでいます。しかし、大規模システムの構築には常に初期不良などが想定され、また使用するネットワーク機器等の新製品には不具合が発見されたりします。そうしたトラブル対応には、解決のために多くの時間と労力及び費用が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)プロジェクト管理について
当社グループは、ネットワークシステムの構築及びネットワーク機器の開発にあたり、全社的なプロジェクト管理体制を構築し、不採算プロジェクトの抑制に努めております。しかしながら、ユーザーニーズに基づく納期の短縮化、又は案件の高度化・複雑化によるプロジェクトの難易度の高まり等により、開発工数が想定を超える不採算プロジェクトが発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)競合について
当社グループは、企業が情報システムに関して抱える様々な悩みに対し、効果的なソリューションを提供できるネットワーク・セキュリティ製品のメーカーとして、あるいはキャリアクラスの大規模で且つ先端ネットワークシステム構築を行える総合力を持ったネットワーク・インテグレーターとして、競合他社には無い強みを持っております。しかしながら、今後参入してくる機器ベンダーやネットワーク・インテグレーターとの価格競争により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)大口主要顧客との間での取引について
当社グループでは、他企業との取引額を増やすことによって特定販売先への依存度を下げるように努めておりますが、特定販売先の設備投資動向等によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)人材の確保について
当社グループは、事業を拡大して行くためには専門性の高い優秀な人材を継続的に採用・育成し、確保することが重要であると考えております。しかしながら、当社グループがこのような人材を採用又は養成できず、優秀な人材の流出を防止できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)知的財産権等について
当社グループは、保有する知的財産権、並びに業務スキル・ノウハウ等の企業秘密の社内管理体制を強化しております。また、第三者の知的財産権を侵害しないよう、社内規定の整備を図り事前の調査を徹底する体制を採っております。しかしながら、技術革新に伴い、当社グループが保有する知的財産権が陳腐化するリスクがあるほか、何らかの要因により当社グループの企業秘密が不正に開示又は流用されるリスクがあります。また、当社グループが認識していない知的財産権の成立等により、当社グループの製品、サービス又は技術に対して、第三者から知的財産権の侵害訴訟等を提起されるリスクがあるほか、従業員の職務発明の補償評価に対して訴訟等を提起されるリスクがあり、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(10)為替変動リスクについて
当社グループは、いくつかの商品を海外から外貨建てで購入しているため、為替相場の変動により円換算による仕入価格に変動が生じ、利益率の低下を招く可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(11)自然災害等について
地震や台風等の自然災害、未知のコンピューターウイルス、テロ攻撃、システムトラブル又は伝染病といった事象が発生し、当社グループがそれらの影響を受けた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは複数の開発拠点を設置し、システムの一部をクラウドで管理するなど、リスクの分散を図っておりますが、当社グループの拠点・地域において、これら自然災害等が発生した場合には多大な損害を被る可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)投資有価証券について
当社グループの連結会計年度末における投資有価証券残高の推移及び評価損益の実績は下記のとおりです。
イ.投資有価証券残高の推移 (百万円)
|
2020年12月期末 |
2021年12月期末 |
2022年12月期末 |
2023年12月期末 |
2024年12月期末 |
|
121 |
104 |
94 |
97 |
56 |
ロ.投資有価証券評価損益の推移(△は投資有価証券評価損) (百万円)
|
2020年12月期 |
2021年12月期 |
2022年12月期 |
2023年12月期 |
2024年12月期末 |
|
△146 |
△50 |
△13 |
△2 |
△8 |
投資有価証券の取得方針に関しましては、当社グループの事業活動に密接に関係のある取引先を中心に出資することにより事業の関係の推進を目指すもの、またリスクを評価した上で手持資金を効率的に運用することでありますが、出資先の経営状態が悪化した場合や、市場において悪影響を与える事象が発生した場合には、将来的に減損処理をする可能性があります。
1.経営成績等の状況の概要
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の世界経済につき、米国はインフレの改善が進み底堅く推移、世界的な生成AI需要の拡大を受けデータセンターへの投資が活発化しました。欧州はインフレが抑制されつつありますが、ウクライナ戦争の影響でエネルギー価格の高止まりが継続しています。中国は不動産市場の停滞と個人消費の低迷で厳しい状況のようです。わが国は、円安による物価高の懸念はあるものの、好調な企業業績を背景に個人消費、設備投資とも堅調で、インバウンド需要もあり緩やかに拡大しました。
現在、生成AIの進化で企業等の組織だけでなく社会全般で新たな価値創造の時代が到来しつつあります。従来のDX(デジタルトランスフォーメーション)による業務プロセスやビジネスモデルの変革に生成AIを活用した新たな価値創造が加わり、あらゆる業種や領域でIT投資の需要は旺盛です。このようなデジタルの利活用が進展する一方、サイバー空間は、国家の安全保障に直接影響し、また、国境を越えた犯罪が跋扈する場にもなっています。各国政府はサイバー安全保障の強化に向けた取り組みを加速しており、企業等の組織でもセキュリティの強化が進められています。ITセキュリティは、社会の基幹産業になりつつあります。
このような環境下、当連結会計年度はITセキュリティ事業で次の大型の公共案件まで少し間が空き、「商品・製品」の売上が7,238百万円(前年同期比10.5%減少)となりましたが、高粗利率の「保守」の売上が5,549百万円(前年同期比4.6%増収)、「クラウドサービス」の売上が2,397百万円(前年同期比9.4%増収)となりました。その結果、当社グループの業績について、売上高18,606百万円(前年同期比2.4%減)となり、粗利率は44.6%(前年同期:44.9%)を維持しました。営業利益は、会社のオフィス環境の整備(投資額1.9億円、内販売管理費の増加0.5億円、固定資産の取得1.4億円)や将来的な人材への投資等により販売管理費が前年同期比5.0%増加し、2,043百万円(前年同期比21.7%減)となりました。円安により為替差益が124百万円(前年同期:128百万円)発生しましたが経常利益は2,156百万円(前年同期比23.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、1,725百万円(前年同期比10.9%減)となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりです。
[ITセキュリティ事業]
売上高は17,482百万円(前年同期比1.7%減)、セグメント利益は3,170百万円(前年同期比14.3%減)となりました。
粗利率が高い自社製品による中央省庁向け大型案件が減少(前年同期当該大型案件の実績約4億円)し、減収減益となりました。一方で、サイバー攻撃の被害件数は増加しており、セキュリティ対策の見直し、強化が喫緊の課題になっています。認証を中心とする当社製品/サービスの需要は中長期的に拡大するものと見ています。そのような中、国内シェアNo.1の認証アプライアンス「NetAttest EPS」につき、顧客のIT環境の変化に対応し、Nutanix AHV、Microsoft Azure、AWSと3つの仮想環境に対応しました。多要素認証のクラウドサービス「Soliton OneGate」では、「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(以下:ISMAP(イスマップ)」の認定を取得しました。官公庁はISMAPで認定されたクラウドサービスを導入することが原則になり、高いセキュリティを求める民間企業にも広がるものと期待しています。サイバーセキュリティでは、海外企業とユニークな連携をし、実践に近いサイバー演習サービス等を提案し重要インフラ企業より受注しました。
[映像コミュニケーション事業]
売上高は1,000百万円(前年同期比3.6%増)、セグメント利益は178百万円(前年同期はセグメント損失16百万円)となりました。
「Smart-telecasterシリーズ」について、国内外のパブリックセーフティ分野(公的治安、災害対処)への販売を中心に、売上高は増収、セグメント利益を計上しました。その他、人手不足に対応するため日本各地で実施されている建設機械の遠隔操縦や自動運転車両の遠隔監視の実証実験に参加しました。また、海外ではクラウド経由で超短遅延/高精細画像をモニターしながら離れた場所にある車両や建機等を遠隔監視/操縦する「Zao SDK」の販売を推進しました。米国や欧州で自動運転車両の遠隔監視、建設機械や特殊車両の遠隔操縦向けに販売しました。
[Eco 新規事業開発]
売上高は123百万円(前年同期比59.7%減)、セグメント損失は333百万円(前年同期はセグメント損失219百万円)となりました。
既存の人感センサーの販売が主となった為、売上高は減収となりました。先進プロジェクトであるアナログエッジAIは極めて意欲的なプロジェクトですが、かなり技術的に難しい部分があります。技術者を増員し鋭意開発を進めており、結果、セグメント損失が拡大しました。なお、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)とインド宇宙研究機関が協働する「月極域探査機プロジェクト(LUPEXローバシステムPJ)」において、三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)がLUPEXローバの開発を担っており、当社は三菱重工に対し、LUPEXローバ向け画像航法アルゴリズムの宇宙用FPGAへの実装設計の支援を受注しました。小型月着陸実証機SLIM (Smart Lander for Investigating Moon)案件に続く第2弾です。当社は今後もJAXAと連携し宇宙関連の研究開発PJに継続的に取り組んでまいります。
当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べて661百万円増加し、23,286百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて944百万円増加し、20,897百万円となりました。これは主に現金及び預金が1,298百万円、前払費用が47百万円、リース投資資産が63百万円増加した一方、売掛金が177百万円、商品及び製品が149百万円減少したこと等によるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて283百万円減少し、2,388百万円となりました。これは主に建物及び構築物が44百万円増加した一方、ソフトウエア仮勘定が123百万円、繰延税金資産が89百万円減少したこと等によるものであります。
流動負債は、前連結会計年度末に比べて557百万円減少し、10,845百万円となりました。これは主に契約負債が654百万円増加した一方、未払法人税等が928百万円、未払金が112百万円、賞与引当金が163百万円減少したこと等によるものであります。
固定負債については、前連結会計年度末に比べて66百万円増加し、156百万円となりました。これは主にリース債務(固定)が53百万円増加したこと等によるものであります。
純資産の部については、前連結会計年度末に比べて1,152百万円増加し、12,283百万円となりました。これは主に利益剰余金が1,225百万円増加した一方、為替換算調整勘定が64百万円減少したこと等によるものであります。
なお、当連結会計年度末において、自己資本比率は52.7%、1株当たり純資産額は662円01銭となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,298百万円増加し、当連結会計年度末には14,692百万円(前年同期比9.7%増)になりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動から獲得した資金は2,035百万円(前年同期比44.1%減)となりました。
収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益2,171百万円、契約負債の増加646百万円、減価償却費347百万円、売上債権及び契約資産の減少194百万円等であります。支出の主な内訳は、法人税等の支払額1,328百万円、為替差益122百万円、賞与引当金の減少163百万円、未払金の減少113百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動に使用した資金は237百万円(前年同期比309.2%増)となりました。
収入の主な内訳は、投資有価証券の売却による収入40百万円等であります。支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出190百万円、無形固定資産の取得による支出86百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動に使用した資金は507百万円(前年同期比27.7%増)となりました。
支出の主な内訳は、配当金の支払額500百万円等であります。
(3)生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産する製品は主にソフトウエアであり、また当社グループの取り扱う製品は、受注生産形態をとらない製品であるため、生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
|
ITセキュリティ(百万円) |
17,482 |
△1.7 |
|
映像コミュニケーション(百万円) |
1,000 |
3.6 |
|
Eco 新規事業開発(百万円) |
123 |
△59.7 |
|
合計(百万円) |
18,606 |
△2.4 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおり
であります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
ダイワボウ情報システム 株式会社 |
2,095 |
11.0 |
2,279 |
12.3 |
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容の内容は次のとおりであります。
なお、本文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りや仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額及び会計期間の収益・費用の金額に影響を与えます。しかし、これらの見積りや仮定は、実際の結果とは異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を与える可能性があります。
①貸倒引当金
当社グループは、債権等の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。見積りには期日経過債権の回収期間、現在の経営環境等の様々な要因を考慮しております。
②棚卸資産
当社グループは、棚卸資産の評価方法として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しており、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。また、滞留及び過剰在庫の内、陳腐化した棚卸資産については、適正な価値で評価されるように評価減の金額を見積もっております。
③繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産における回収可能性が低いと考えられる金額については、評価性引当額を設定しております。評価性引当額の必要性を検討するにあたっては、将来の課税所得の見積りに基づいております。
④投資有価証券
当社グループは、長期的な取引維持のために、特定の取引先の株式等を保有しております。これらの株式等には、価格変動性が高い上場株式と、株価の決定が困難な非上場株式等が含まれます。これらの株式等について、時価が取得価額を下回っている場合、将来における価値の回復可能性及び発行会社の経営状態を検討しております。
⑤市場販売目的のソフトウエア
当社グループは、市場販売目的のソフトウエアの減価償却方法について、見込販売収益に基づく償却額と残存有効期間(3年以内)に基づく均等配分額とを比較し、いずれか大きい額を減価償却費として計上しております。また、減価償却を実施した後の未償却残高が翌期以降の見込販売収益の額を上回った場合、当該超過額は一時の費用として処理しております。当社グループの販売見込収益の算定における主要な仮定は、販売計画に基づく受注予測であります。
(2)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①売上高・売上総利益
当連結会計年度の売上高18,606百万円(前年同期比2.4%減)、売上総利益8,293百万円(前年同期比3.1%減)、売上総利益率44.6%(前年同期44.9%)となりました。
売上高のセグメント別変動要因に関する詳細については、「1.経営成績等の状況の概要(1)財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。売上総利益率は前年同期比0.3%減少となりました。
②営業利益
経費面では、会社のオフィス環境の整備や将来的な人材への投資等により、販売費及び一般管理費は6,249百万円(前年同期比5.0%増)となり、当連結会計年度の営業利益は2,043百万円(前年同期比21.7%減)、売上高営業利益率は11.0%(前年同期13.7%)となりました。
③経常利益
主に営業外収益として為替差益が124百万円、受取配当金が18百万円発生したことにより、当連結会計年度の経常利益は、2,156百万円(前年同期比23.2%減)となりました。
④親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益について、投資有価証券売却益27百万円、特別損失で投資有価証券評価損8百万円等を計上しました。これにより、親会社株主に帰属する当期純利益は1,725百万円(前年同期比10.9%減)となりました。
以上の結果、当連結会計年度の1株当たり当期純利益金額は93.11円(前年同期比11.44円減)となりました。なお、当連結会計年度における財政状態の概況については、「1.経営成績等の状況の概要(1)財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
(3)資本の財源及び資金の流動性の分析
当社グループは、営業活動によって獲得した現金と金融機関からの借入金によって、必要となる運転資金の確保と事業拡大の為の設備投資を行っています。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「1.経営成績等の状況の概要(2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社グループのキャッシュ・フローの状況と指標の推移は次のとおりであります。
|
キャッシュ・フローの状況 |
2020年12月期 |
2021年12月期 |
2022年12月期 |
2023年12月期 |
2024年12月期 |
|
|
|
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
2,620 |
2,080 |
2,298 |
3,643 |
2,035 |
|
|
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
△1,120 |
△464 |
△305 |
△57 |
△237 |
|
|
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
△1,105 |
△481 |
△252 |
△397 |
△507 |
|
|
フリー・キャッシュフロー (百万円) |
1,500 |
1,616 |
1,993 |
3,585 |
1,798 |
|
キャッシュ・フロー関連指標の推移 |
2020年12月期 |
2021年12月期 |
2022年12月期 |
2023年12月期 |
2024年12月期 |
|
|
|
自己資本比率(%) |
43.8 |
48.9 |
49.8 |
49.1 |
52.7 |
|
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
222.1 |
159.1 |
108.6 |
121.4 |
97.3 |
|
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
0.1 |
0.1 |
0.1 |
0.0 |
0.0 |
|
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
1,317.3 |
1,536.1 |
1,965.2 |
1,766.5 |
1,711.9 |
・フリー・キャッシュ・フロー:営業活動によるキャッシュ・フロー + 投資活動によるキャッシュ・フロー
・自己資本比率:自己資本÷総資産
・時価ベースの自己資本比率:株式時価総額÷総資産
・キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷営業活動によるキャッシュ・フロー
・インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー÷利息の支払額
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
「3 事業等のリスク」をご参照ください。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動には、基礎的な要素技術の開発と、現在の製品の改善のための開発があります。
なお、当連結会計年度の研究開発費は
(1)ITセキュリティ事業
ITセキュリティ事業の研究開発費は
[製品]
① Soliton SecureWorkspace の新バージョンの開発・リリース
ユーザーニーズの変化に合わせてより機能を想像しやすくするため、製品名を「WrappingBox」から「Soliton SecureWorkspace」に変更し機能追加を実施した新バージョンの開発・リリースを行いました。Windows PC上に生成する隔離領域内で安全に業務アプリケーションを利用し、クラウド活用やテレワーク、インターネット分離などに関わるデータ保護の課題を解決するという基本機能は踏襲し、ユーザービリティを重視してUI/UXを再設計したファイラー機能「ClearFolder」を追加しました。また、Soliton SecureWorkspaceの隔離領域内で動作するアプリケーションからSoliton SecureGatewayを経由してWindowsのファイルサーバーに直接アクセスできる機能を追加し、ネットワークフォルダ上にあるデータのシームレスな操作ができるようになりました。
② NetAttest D3の新バージョンの開発・リリース
NetAttest D3の新バージョンの開発・リリースを行いました。NetAttest D3は、エンタープライズネットワークの信頼性と運用性の向上を目指して開発したDHCP/DNS専用アプライアンスで、高いパフォーマンスと充実した運用支援機能を備えています。今回の新バージョンでは、「NetAttest D3」の既存の強みである導入・運用のしやすさを強化しました。ネットワーク管理者が目的の操作を容易に行うためのメニュー強化と、現状を視覚的に確認できる機能を追加し、運用効率を向上できるようになりました。この他、統合管理アプライアンス「NetAttest D3 Manager」自身の冗長化にも対応しお客様の要件に応じて、より柔軟なシステム導入が可能となりました。
③ NetAttest EPSの新バージョンの開発・リリース
NetAttest EPSの新バージョンの開発・リリースを行いました。NetAttest EPSは、電子証明書による強固なセキュリティを実現し、導入と運用面を考慮した製品として、2002年の物理版アプライアンス製品としてリリース以降、時代とIT環境の変化に応じて仮想アプライアンスを開発し、最適な形態で提供することで業種や導入規模を問わず多くのお客様から高い評価を受けています。今回の新バージョンでは、仮想アプライアンスの動作サポート環境としてAWS(Amazon Web Services)に対応しました。これにより、EPSを導入する企業は、仮想基盤の運用負担を低減しつつ、自社のセキュリティポリシーに柔軟に対応できる認証サーバーを構築できるようになります。
④ SmartOn ID 製品の新バージョンの開発・リリース
SmartOn ID シリーズは、Windows端末に対して様々な認証デバイスを用いて二要素認証機能を実現する製品として自治体や金融機関といった、さまざまな業種・規模の企業で採用されています。今回の新バージョンでは、以下の機能を追加しました。
1) Microsoft Entra ID への対応
Microsoft Entra ID環境で利用している端末に対してもSmartOn IDシリーズを利用できるようになりました。また、Azure Virtual Desktop, Azure Virtual Machinesの環境においても利用できるようになりクラウド上の仮想端末に対しても高度な認証セキュリティを利用できるようになりました。
2)SmartOn IDのPass機能の強化
SmartOn Pass(アプリケーションや、Webアプリに対してID/Passwordの自動入力を行う機能)において認証済みのSmartOn認証情報やWindows認証情報を利用することができるようになり利便性が向上しました。また、SmartOn/Windowsのパスワード変更にも追随しますので少ない認証情報の管理でより柔軟な認証設定が可能となり、コスト削減につなげることも可能になります。
[クラウドサービス]
① Soliton OneGate(クラウドサービス)の新バージョンの開発・リリース
ネットワーク認証から社内外のアプリケーション利用までの多要素認証に対応したID認証サービス「Soliton OneGate」の機能追加を実施した新バージョンの開発・サービス提供を実施しました。今回の新バージョンでは、お客様のセキュリティと利便性をさらに向上させるために以下の機能を追加しました。
1)顔認証対応
パナソニック コネクト株式会社の世界最高水準の顔認証技術による認証機能を追加し、さらに厳格で安全なユーザー認証を実現できるようになりました。
2)大規模環境における運用性と使いやすさ強化
『利用者管理タグ』によるユーザーのフィルタリングや、『利用者運用の委任』に対応しました。これにより、組織単位での運用を効率的に実施できるようになりました。
3)セキュアブラウザ機能を搭載
セキュアブラウザ機能により、データの機密度に応じたブラウザ制限を行い、クラウド上のデータを持ち出せないように制御する運用を実現しました。
また、国産のIDaaSとしては初めて、政府が求めるセキュリティ要求を満たしているクラウドサービスとして「ISMAPクラウドサービスリスト」に登録されました。政府機関や自治体、教育機関においても安心してお使いいただける、信頼性の高いクラウドサービスを継続的に提供する体制を整えています。
(2)映像コミュニケーション事業
映像コミュニケーション事業の研究開発費は
(3)Eco 新規事業開発
Eco 新規事業開発の研究開発費は
① アナログ方式エッジAIチップの開発
超低消費電力でありながら、端末において高度な認識を可能にする、アナログ方式によるエッジAIデバイス用アクセラレータICの回路設計とレイアウト設計を進めました。詳細シミュレーションによって数百マイクロワットでの動作が見込まれており、実チップでの動作検証に向けて設計開発を進めております。JAXAとの共同研究プロジェクトにおいては、当該AIチップを用いたエッジ学習処理についての研究開発を進めました。
② Zao SDKライブラリの開発
遠隔操縦・遠隔運転に不可欠な短遅延映像伝送技術と、安定した映像伝送を実現するマルチリンク通信技術を基盤に、これらの技術を広範な分野へ展開するためのSDKライブラリ開発を推進しました。さらに、映像伝送システムの高度化に向けたAI導入についても検討を進めました。
(4)その他
その他の研究開発費は179百万円であります。主要な開発項目は以下のとおりです。
① 「N:M遠隔監視システム」の全国各地での公道実証の実施
自動運転レベル2~4向け遠隔システムの機能高度化を図り、それによる全国各地で公道での実証を行いました。多地域での多数の自動運転車(N台)を、一カ所又は数か所のセンター(監視・操作者数M)で集中監視・操作し、自動運転事業の効率化を行いました。東京、神奈川地区の複数バス会社の自動運転を神奈川県内センターで集中監視(神奈川県)、四条畷市の自動運転を同市内で遠隔監視(大阪府)、春日井市の自動運転車を豊田市及び東京都渋谷区内の複数センターで遠隔監視(愛知県、東京都)等の公道で実証を行いました。
② 「自動運転遠隔アシストシステム」の実証の実施
名古屋大学と協同で、自動運転走行時、その走行判断困難な局面でセンター内の遠隔支援者が判断を補足し、自動運転機能をアシストするシステムを開発しました。当該システムは同乗ドライバーの完全無人化を大きく促進します。愛知県春日井市の自動運転車を豊田市内センター内の遠隔支援者(遠隔アシスタント)が遠隔アシストシステムを用いて、簡単なボタン操作によって自動運転走行を支援、特に、現状の自動運転では実施が難しい路上駐車迂回追い越しも、スムーズに運転者無人走行を実現しました。公道上での自動運転遠隔アシスト走行は日本初になります。