当社グループの経営方針、経営環境及び検討すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針・経営戦略等
①経営の基本方針
当社グループは、創業以来掲げている「自らの職業的実践を通じ、コンピュータサイエンスの諸分野を発展させ、それによって人類の未来に貢献する」という経営理念のもと、ITでユーザーの満足度を最大化することを経営の基本としてまいりました。今後もこの基本理念に沿い、急速に変化する市場環境の中で情報サービス産業への期待に応えるべく努力し、収益性と成長性の追求により企業価値と株主利益の向上を目指してまいります。
②経営環境に対する認識
社会や経済のグローバル化の一層の進展、技術の進化及び労働環境向上ニーズの継続等を背景にIT投資需要は今後も増加するものと考えております。
一方で、国内人口の減少を背景として国内需要増加に限界があると考えられるほか、労働人口減少により人材確保が難しくなる等、当社グループの持続的成長を実現していくにあたっての課題も多いと認識しております。
また、当社グループが属する情報サービス産業では、技術の急速な進化・根本的な変革や同業間での厳しい競争が今後も予想されます。
このような状況を踏まえ、たゆまぬ技術革新への取組み、成長する分野・地域での事業拡大、及びそれらを可能とする優秀な人材の確保とビジネスモデルの変革が極めて重要であると認識しております。
③当社グループ経営方針
1)2026年3月期経営方針(成長戦略)
~環境の変化に即応した成長の実現~
○既存事業の持続的成長と生産性向上による事業基盤安定化
○高収益の新しいビジネスモデルの創出
○グループ内連携強化によるシナジー発揮
○受託型ビジネスからコンサルティングを核とした価値の提供を行う提案型ビジネスへのシフト
2)成長戦略
○既存顧客との取引拡大
(a)カスタマーサクセス
①お客様のビジネスの成長・成功に貢献
②既存のお客様の事業に関する知見の更なる向上とコミュニケーションの深化
(b)グループシナジー
①営業力の強いグループ会社のお客様をグループ内の他社に連携
②「グループシナジー推進本部」設置によりグループ連携・シナジー発揮を加速
○ビジネスモデルの変革
(a)コンサルティング業務の強化
①顧客ニーズの高いOracle ERP CloudやSalesforce等のビジネス強化
(Oracle ERP CloudについてはSRA自社利用開始による知見を有効活用)
②自社IPによるコンサルティングサービスの推進
(b)クラウドビジネスの強化
①マルチクラウドやハイブリッドクラウド対応充実と自社IPのSaaS化
②クラウドインフラビジネス(サービスメニュー化やサービスデスク、常駐&リモートのハイブリッド運用ビジネスの強化)
③クラウドベンダーとの連携を強化(AWSセレクトコンサルティングパートナー、IBMクラウドプラットフォームのリーディングパートナー、Azure)
(c)ソリューションビジネスの推進
①セキュリティサービス(情報提供、コンサルティング、運用(SOCサービス))
②ローコスト開発(OutSystems、ServiceNow等によるLowCode、NoCode開発)
(d)AI活用
①自社業務(プログラミング、テスト、保守・運用への試行)→「AIエージェント」も視野
②自社IPサービス(新Univision、Cavirin)への導入
③お客様向け(アナリティクス、RAG活用、生産性向上支援(金融業ドキュメント検索、製造業見える化等))
○自社IP×グローバルビジネスの推進
(a)既存自社IPの商品力向上と販売力強化(新Univision、P-CON、ウェアラブル、Proxim、Cavirin等)
(b)新規自社IPビジネスの開発
①製造業のお客様の生産性向上に資する製造工程の見える化
②「エンターテイメント領域」「安全・安心領域」等B2B2C領域でのビジネス開拓
(スマホ・タブレットアプリ)
(c)オープンソースソフトウェア(OSS)への取組み
①PostgreSQL、Zabbix、HAクラスタリング、OSSプロフェッショナルサポートサービス
②NTTデータグループと連携し、オープンソースソフトウェアの基幹システム導入を促進
(d)グローバルでは東南アジア、特にベトナムを中心とした市場の開拓
3)株主還元方針
○株主還元のさらなる充実を目指す
・配当性向50%を目途に、安定的な高配当を目指す
・株主資本の効率的活用の指標であるROEは、安定的かつ継続的に10%以上確保を目指す
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが事業を推進していくにあたり主に意識すべき環境変化として、地球温暖化対応・地政学リスク顕在化・サプライチェーン不安定化・金融市場の変動・少子高齢化等の「社会的要因」、DX進行・ビッグデータ活用・サイバーセキュリティ対応・IT人材不足等の「業界要因」、AIの進化・IoT技術高度化等の「技術的要因」があると認識しております。
当社グループでは「環境の変化に的確に対応し、技術力を中心とした強みを発揮しつつ新領域にも挑戦することで持続的成長を果たすこと」を目指しております。
そのために「グループシナジーを強化し顧客ニーズの発掘と的確な対応を行うことによる既存顧客との取引拡大」、「コンサルティング業務・クラウドビジネス・ソリューションビジネスの強化推進を柱としたビジネスモデルの変革」及び「提供するサービスやマーケット拡大につながる自社IP製品×グローバルビジネスの推進」を主な成長戦略として掲げております。
このような方針・戦略において、当社グループの事業の持続的成長に欠かせない人材確保は今後益々重要度が高まる課題であると考えております。海外を含めたビジネスパートナー・提携会社との関係拡充を通し優秀な人材を安定して確保していくとともに、当社グループ社員に対し成長機会を提供することにより人材底上げを図ってまいります。
また、今後も海外を含めた事業投融資は継続していく方針であり、当社グループの収益力・財務体力を踏まえた適切な判断を行い厳格な管理を行っていくと共に、投融資資産の価値変動の可能性があることを前提として安定性のある財務体質を維持しつつ、資本コストを上回るリターンの創出により企業価値を持続的に向上させるべく努めてまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、2026年3月期経営方針として「環境の変化に即応した成長の実現」を掲げております。
上記の方針を踏まえ経営成績に関する計数目標を以下のとおりとしております。
(単位:百万円)
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2026年3月期 目標 |
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売上高 |
53,500 |
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売上総利益 |
13,700 |
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売上総利益率 |
25.6% |
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販売費及び一般管理費 |
5,400 |
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営業利益 |
8,300 |
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経常利益 |
8,150 |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
4,900 |
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1株当たり当期純利益(円) |
387.85 |
また、株主還元方針として「配当性向50%を目途に安定的な高配当」及び「ROEは安定的かつ継続的に10%以上確保」を目指すこととしております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) ガバナンス
当社グループでは「サステナビリティ基本方針」「重点課題(マテリアリティ)」を定め、サステナビリティ担当役員を選任しており、各重点課題につきましては株式会社SRAホールディングス管理本部・株式会社SRAコーポレート本部を軸に主に以下の委員会等を設置し対応を行っております。
サステナビリティ担当役員は取締役会に対しその活動報告を年次で行っているほか、内部監査部門もサステナビリティに関する運営状況を監査対象としており取締役会宛に年次報告を行っております。
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重要課題 |
所管部署・委員会 |
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①気候変動等地球環境に関する対応 |
㈱SRAホールディングス管理 本部リスク管理委員会
㈱SRAコーポレート本部 他 |
㈱SRAホールディングス管理 本部 ㈱SRAコーポレート本部 |
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②人権の尊重 |
グループコンプライアンス委員会 |
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③従業員の健康・労働環境への配慮、 公正・適正な処遇 |
働き方改革推進委員会 |
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④取引先との公正・適正な取引 |
グループコンプライアンス委員会 個人情報保護委員会 情報セキュリティ委員会 |
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⑤自然災害等に対する危機管理 |
震災対策本部 ウイルス感染対策本部等随時設置 |
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(2) 戦略
(a) サステナビリティに関する考え方
当社グループにとってのサステナビリティとは、創業以来の「SRAグループ企業理念」、すなわち「自らの職業的実践を通じ、コンピュータサイエンスの諸分野を発展させ、それによって人類の未来に貢献する」という考え方に基づき、グループ各社の得意分野を活かしつつ、ITによる社会変革・未来発展に貢献することにより当社グループと社会の持続的な成長を目指すことです。
中長期的な当社グループの持続的な成長を支え、企業活動を通じ実践すべきテーマとして「SRAグループ倫理憲章」をもとに5つのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を設定しております。
「SRAグループ倫理憲章」及び「サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)」は以下のとおりです。
<SRAグループ倫理憲章>
① 公正で透明な企業活動を通じ、社会との健全かつ正常な関係を維持する。
② 優れたサービスの提供と品質向上に努め、顧客の信頼を獲得する。
③ 株主はもとより、広く社会とのコミュニケーションを行い、企業情報を積極的かつ公正に開示する。
④ 自他の知的財産を尊重し、個人情報をはじめとする情報の保護に努める。
⑤ 社員の人格・個性を尊重し、安全で働きやすい職場環境を提供する。
⑥ 社会秩序や安全に脅威を与え、健全な経済・社会の発展を妨げる反社会的勢力との関係断絶に努める。
<重要課題(マテリアリティ) >
① 気候変動等地球環境に関する対応
② 人権の尊重
③ 従業員の健康・労働環境への配慮、公正・適正な処遇
④ 取引先との公正・適切な取引
⑤ 自然災害等に対する危機管理
(b) サステナビリティに関する取組
重要課題ごとの取組状況は以下のとおりです。
①気候変動等地球環境に関する対応
当社グループ企業理念の下、お客様のビジネスをITの力で変革し、それによって地球環境に対する貢献を目指しております。
(当社グループの取組み)
・主要子会社である株式会社SRAは、一般社団法人情報サービス産業協会(以下、「JISA」という。)の低炭素化社会実行計画に2008年から参加し、CO2の年間排出量を把握し削減に努めています。
・管理部門のペーパーレスを推進した他、テレワーク等の環境整備を行ったことで事業所面積の最適化を図り使用電力を削減しております。
(お客様のビジネスを通じてITを活用することによる貢献)
・ペーパーレスソリューション製品であるP-CONの拡販によりお客様のペーパーレス化を促進することを通し、省資源化を推進しております(株式会社SRA)。
・AIを活用した送電鉄塔の「腐食劣化度診断システム」を東北電力ネットワーク株式会社と共同開発しております(第4回インフラメンテナンス大賞・経済産業大臣賞を受賞)(株式会社SRA東北)。
・神奈川県立がんセンターとAIを活用した遺伝性乳がん・卵巣がん症候群拾い上げシステムの共同開発と
導入を行いました (株式会社AIT)。
・電力会社等の省力化に貢献する取組みを行っております(グループ各社)。
②人権の尊重
当社グループでは、性別・人種・国籍・身体的障がいの有無等に関係なく、労働者としての権利が保障されるとともに、十分な収入が確保され、適切な社会的保護が供与される働き方の維持に努めております。
ハラスメント行為等の職場における人権を侵害する行為については、従業員はもとより契約・派遣社員や社内に常駐する委託先社員を対象としたグループホットラインを設け、事態の早期解決を図っています。
障がい者雇用については適材適所への雇用を促進すべく引き続き取組みを続けております。
(株式会社SRA:法定雇用率2.50%に対し1.93%)
女性の活躍促進については、以下③に記載のとおりです。
③従業員の健康・労働環境への配慮、公正・適正な処遇
従業員は当社グループの事業継続に最も不可欠なものと認識し、毎年の健康診断受診やメンタルヘルスアンケートを通じ、その健康状態の把握に努めています。
こうした取組みに対し、2020年には主要子会社の株式会社SRAが東京都情報サービス産業健康保険組合より健康優良企業の認定を受けました。
また、株式会社SRAでは「次世代育成支援対策推進法」に基づき、仕事と家庭の両立を目的とした行動計画を策定し、各種の取組みを推進しています。
女性の活躍推進については株式会社SRAにおいてJISAの「ダイバーシティ戦略」に賛同を表明し、多様な人材が平等に活躍できる企業を目指すとともに、女性活躍の推進に向けての取組みを行っています。
また、主要子会社の株式会社AITでは、厚生労働大臣から女性の活躍推進の取組状況が優良な事業主に与えられる「えるぼし認定(二つ星)」、東京都の男性従業員の育業取得を推進する企業として「TOKYOパパ育業推進企業」ブロンズ認定を取得しております。
④取引先との公正・適正な取引
当社グループの倫理憲章にある「公正で透明な企業活動を通じ、社会との健全かつ正常な関係を維持する。」を基本方針としています。
システム開発や運用・構築事業におけるビジネスパートナー各社との関係については、下請法や労働者派遣法等の関連法令の遵守を徹底し、緊密な業務提携、安定発注の推進を図っています。
販売事業については、適正な購買活動や営業活動を基本方針に、自社IP製品ビジネスや仕入れを伴う販売ビジネスにおいて権利関係を重視した公正で透明な事業を行っています。
また、コンプライアンス担当に外部ホットライン窓口を設置しており、法令違反行為などが行われている、又はそのおそれがあるときは、取引先やその他外部の関係者にも利用できる仕組みを整えています。
⑤自然災害等に対する危機管理
自然災害に対する危機管理については、事業継続の観点から震災・疫病等に対応するため株式会社SRAホールディングスにおいて災害対策本部を設置してグループ全体をカバーする体制を構築し、情報収集と経営判断とを連携させ指示を行っています。
また、防災マニュアルをグループ各社に配布して社員一人一人が有事の際に備えた行動がとれるよう教育を行っております。
(震災対応)
グループ各社、事業所間をインターネット回線、専用回線、衛星無線の3種類の連絡方法を保有して情報連携が必ず取れる体制とし、被災地以外に対策本部を設置し、経営と連携した事業継続を行える体制を保持しています。
(ウイルス感染対策)
インフルエンザや新型コロナウイルス等の感染症により事業活動が停止しないよう、テレワークへの切替えが容易にできる体制を構築しています。
また、お客様と連携し、社会的インフラの運用を行う部門以外は、テレワークでも生産性を落とさず、お客様の期待に応える体制を構築しています。
(3) リスク管理
当社グループでは、株式会社SRAホールディングス管理本部・株式会社SRAコーポレート本部を軸に経営に重要な影響を与えるリスクに対して、総合的な管理を実施しています。グループコンプライアンス委員会・個人情報保護委員会・情報セキュリティ委員会等の各種委員会、震災対策・ウイルス感染対策等を目的として設けられる対策本部により認識・分析・評価を行い対応すべきリスクに対し所管部署が中心となってリスク低減に関する各種施策を実施しています。
(4) 指標及び目標
当社グループでは下記の指標・目標を掲げております。
(a) 気候変動等地球環境に関する対応
<情報サービス産業協会(JISA)の低炭素化社会実行計画への参加>
JISA CO2削減自主行動計画 業界目標
(2023年度以降)
①オフィス部門についての目標水準:基準年(2020年度)比にて2030年度に9.56%削減
(エネルギー原単位)=(電力消費量)/(床面積)
②データセンター部門についての目標水準:基準年(2020年度)比にて2030年度に9.56%削減
(エネルギー原単位)=(センター全体の消費電力合計)/センター全体のIT機器の消費電力合計)
ご参考:情報サービス産業における地球温暖化対策の取組 2024年2月 一般社団法人 情報サービス産業協会
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/ryutsu_wg/pdf/2023_001_10_01.pdf
<当社グループのペーパーレス活動>
社内申請書類や契約書類の電子化、テレワークの推進等によりペーパーレス化を進めております。
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2020年度 |
2024年度 |
増減率 |
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㈱SRA |
831千枚 |
509千枚 |
△38.7% |
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その他 |
407千枚 |
282千枚 |
△30.7% |
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合計 |
1,238千枚 |
791千枚 |
△36.1% |
<当社グループの電力使用量(千kwh)>
オフィス面積の適正化等電力使用量を抑制する取組みを行っております。
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2020年度 |
2024年度 |
増減率 |
|
㈱SRA |
1,183 |
945 |
△20.1% |
|
その他 |
479 |
420 |
△12.3% |
|
合計 |
1,662 |
1,365 |
△17.9% |
(b) 人材育成方針
当社グループを取り巻く環境として、技術の急速な進化・根本的な変革や同業間での厳しい競争が今後も予想され、たゆまぬ技術革新への取組み、成長する分野・地域での事業拡大を図っていくために優秀な人材の確保・育成が必須であると考えております。
キャリアや役職に応じた階層別研修やコンプライアンス・個人情報保護に関する年次研修、資格取得支援や手当制度を整備し、また新興国でのIT人材の育成を行う等、当社グループの発展につながる個々の社員の成長を目指しております。
特に技術人材に関しましては、当社グループの成長戦略の柱のひとつとして「ビジネスモデルの変革」を掲げており、変革を加速するために先進的な技術を駆使し新しいサービスの創出とお客様のビジネスを成功に導くことができる技術者の育成は最重要課題のひとつであり、下記のような技術人材育成方針を掲げております。
<技術人材育成方針>
当社グループの技術戦略に沿った技術分野に注力し、基礎技術と応用技術力向上を目指し、組織的かつ技術者が自発的に成長する機会を提供する施策を実施する。
クラウド関連とArtificial Intelligence/Machine Learning(AI/ML)関連の技術分野に注力し以下の活動を行ってきており、2024年度はクラウド関連からAI/ML関連の技術分野により注力度合い高めて活動を実施。2025年度はAI/MLを中心に実施していく方針である。
・AI/MLについて、多くの技術者が基礎力を身に着けるための活動
・クラウド技術力の維持のための実践提案力向上を中心とした活動
・クラウド学習環境(AWS、Azure)を継続提供し、社員の自己研鑽を後押し、クラウドとAIサービスにおいて基本的な知見を得る活動
資本・業務提携先であるNALと業務提携関係にあるベトナム韓国情報通信大学の研究をサポートするプログラムを開始し、Database Administrator・Database Architect(DBA)の育成を強化。
<技術人材育成指標>
・AI/MLリテラシーから応用レベルまでの知識習得、G検定・E資格取得人材を拡充。
2024年度においてG検定は新規合格者数41名を含め累計99名、E資格は新規合格者7名含み累計12名と100名を超える資格保有者数となっており、2025年度も引き続き人材拡充を図る方針である。(2025年度目標:150名)
・AI/MLの中でプログラム生成は当社にとり中核技術であり、2025年度においては新規にGITHUB COPILOTの
基礎研修推進し教育を実施する。(2025年度目標:40名)
・クラウド技術力維持に向け実践提案力向上トレーニングコースを自社開発し実施。(2024年度参加者:21名)
・社員の自己研鑽を後押しするクラウドAWSとAzureの自己研鑽環境の提供を継続。
(2025年度目標:利用者数増)
・Oracle Cloud ERP導入のコンサルティングに関する知識・スキルの証明となる認定資格の取得。
(2024年度実績:導入コンサルタント認定資格取得者11名、2025年度目標:資格保有者数維持・拡大)
・コンサルティング実務能力向上に向けた施策実施(実案件への参画、会計知識に関する資格取得)。
(c) 社内環境整備
①人材の多様性
主要子会社である株式会社SRAでは次世代育成支援対策推進法・女性活躍推進法に基づき「一般事業主行動計画」を策定し取組みを行っております。
<行動計画骨子>
・計画期間:2021年4月1日~
・目標:
従業員の在宅勤務比率を100%以上とする(全従業員が在宅勤務を行った経験者とする)
新入社員女性比率(当社グループ)
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男性 |
女性 |
計 |
女性比率 |
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2021年度 |
26名 |
16名 |
42名 |
38.1% |
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2022年度 |
38名 |
19名 |
57名 |
33.3% |
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2023年度 |
38名 |
9名 |
47名 |
19.1% |
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2024年度 |
45名 |
15名 |
60名 |
25.0% |
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2025年度 |
36名 |
17名 |
53名 |
32.1% |
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合 計 |
183名 |
76名 |
259名 |
29.3% |
管理職に占める女性労働者の割合、労働者の男女の賃金の差異につきましてはP.8をご参照ください。
また、米国・オランダ・中国・シンガポール・セルビア・ベトナムと海外拠点の拡充を図ってきている他、韓国での就職セミナー参加や大学を通じて継続的に採用を行っているのに加え、ウズベキスタンの大学を通した採用も開始する等、地域や国籍を問わず優秀な人材を確保しつつ多様性につながる取組みを行っております。
②従業員の健康・労働環境への配慮
・次世代育成支援対策推進法に基づく育児休業取得に関する目標
計画期間内(2020年4月1日~2025年3月31日)に育児休業の該当者の取得率を次の水準以上とする。
男性社員:計画期間中に1人以上取得すること
女性社員:取得率を75%以上にすること
(当社グループ)
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年度 |
男性社員 |
女性社員 |
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2020年度 |
18名中2名(11.1%) |
8名中8名(100%) |
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2021年度 |
23名中3名(13.0%) |
1名中1名(100%) |
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2022年度 |
19名中5名(26.3%) |
4名中4名(100%) |
|
2023年度 |
8名中4名(50.0%) |
5名中5名(100%) |
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2024年度 |
11名中6名(54.5%) |
7名中7名(100%) |
・育児休業後復帰しやすい環境の整備のための取組み
妊娠~出産~職場復帰までの手続き等に関するガイドブック及び手続チェックシート作成・配布。
柔軟な働き方実現のためにテレワーク勤務・育児短時間勤務・フレックスタイム制度を選択できる仕組みを構築。
・健康促進支援
健康管理支援ツール(アプリ)の利用、社員支援プログラム(EAP)の提供。
2020年に株式会社SRAが東京都情報サービス産業健康保険組合から健康優良企業として認定。
・メンタルヘルスケアプログラム
社員のメンタルヘルスケアを総合的にサポートし、「こころの健康」の増進を図る取組み。
・ストレスチェックによる気づきから医師面接・カウンセリングによる相談
・学習コンテンツによる学習機会の提供
ストレスチェックの受検率 目標:100%(当社グループ)
2022年度:88.3%、2023年度:86.7%、2024年度:87.8%
・働き方改革推進
株式会社SRAでは以下の取組みを通じて社員が自己啓発や研修参加等自己の成長のため、また家庭や生活のための有意義な時間が持てるよう支援を行っております。
労働時間削減:年次有給休暇取得率100%を目指す。
記念日休暇、全社年休取得デー、計画年休の施策を実施。
多様な働き方の推進:フレックスタイム制度
テレワーク勤務制度(総務省2021年テレワーク先駆者百選に認定)
2024年度テレワーク比率:48.7%
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
[特に重要なリスク]
①当社グループを取り巻く環境の変化に関するリスク
当社グループが属する情報サービス産業では、技術進化が著しく速く顧客ニーズも多様化・高度化が継続することに加え、他社との競合もさらに激化していくものと認識しております。
また、当社グループの事業活動は、国内外の経済情勢や顧客企業のIT投資動向、各種法規制や税制・会計基準の変更などの影響を受けます。
そのような環境の変化に対し、「ビジネスモデルの変革」、「自社IP製品×グローバルビジネスの推進」といった成長戦略を掲げ事業拡大推進に取組んでおりますが、想定を超える急激な社会情勢の変化が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
②システム開発におけるプロジェクトの採算に関するリスク
当社グループの主要事業である開発事業においては、業務を一括して請け負い完成責任を負う一括請負契約を締結する場合があります。
受注時には一定の利益が期待されるプロジェクトであっても、開発作業開始後の仕様変更、当初の見積りを超えた作業工程の発生などにより採算が悪化することがあります。また、検収後に契約不適合等に伴う追加費用が発生する可能性があります。
このような期待された採算を下回るプロジェクトの発生を抑制すべく、受注時におけるリスク要因のレビュー、見積り精度の向上に努めるとともに、プロジェクト管理体制を強化しております。
当社グループ内で開発事業における中心的な役割を担う株式会社SRAでは、一定金額以上のプロジェクトにつき専任部署が想定されるリスクを指摘しつつ進捗管理及び品質管理を行い、遅延等の問題発生の可能性が高まったと判断した場合には支援を行う体制を構築しているなど、採算悪化を防ぐ対策を講じております。
また、特に大きな問題が発生する場合も想定し、株式会社SRAの代表取締役社長を対策本部長とした全社プロジェクトとして対応を行う体制としております。
しかしながら、想定以上に期待された採算を下回るプロジェクトが発生した場合には、業績に影響を与える可能性があります。
③海外事業投融資に関するリスク
当社グループは海外の成長市場開拓を目指し、現地企業との業務・資本提携、M&Aなどにより積極的な事業投融資を行っていく方針です。
事業投融資を行う際には事前調査の実施はもとより投融資先経営陣と十分な意見交換を行い、また投融資実行後には一定の基準を設け対象案件を特定し定期的に取締役会においてモニタリング報告を行っております。
しかしながら、急激な経済情勢の悪化、株式・為替市場の変動などの「当社グループを取り巻く環境の変化」、政治・文化・制度・法律・会計規則・商習慣などの違いによる「海外事業に特有なリスクの顕在化」、並びに経営陣交代・資本構成の変動・事業戦略の転換・業績変動などの「投融資先企業の変化」により、投融資評価額に想定を超えた変動が発生した場合には当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度においては海外事業投融資等に関する特別損失1,797百万円等を計上しました。
当社グループでは成長戦略のひとつとして「グローバルビジネスの推進」を掲げており、海外事業投融資には引き続き注力してまいりますが、当社グループの業績に与える影響度につき、より一層慎重に見極めながら進めていく所存です。
[重要なリスク]
④金融市場・情勢に関するリスク
当社グループが保有する金融商品には市場性のある株式等があり、株式市場や金融市場の動向による時価変動の影響を受けております。これらの金融商品の時価が著しく下落した場合には、評価損等の計上を行うことになります。
また、海外事業投融資の一環としての外貨建貸付金については、為替相場の変動に応じ為替差損益を計上する必要があり、前連結会計年度末比で円高になった場合には差損を計上することとなります。
当連結会計年度末においては、前連結会計年度末比で円高になったことに伴い為替差損171百万円を計上しております。
これらの市場動向につきましては、定期的なモニタリング並びにタイムリーな情報収集を行いつつ、必要に応じリスク低減策を講じるべく備えておりますが、想定以上の急激な変動が発生した場合には当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
⑤大規模災害や重大な伝染病等に関するリスク
気候変動を背景にして発生していると考えられる異常気象や、地震等の自然災害、火災・テロ・暴動等の人為的災害も含めた種々の要因により、当社グループの人材・設備、顧客やビジネスパートナーに直接・間接の被害が発生する可能性があります。
また、新型インフルエンザや新型コロナウイルス等の感染症の流行により、当社グループ及びその関係者のみならず社会全体の活動が制限される可能性があります。
当社グループでは上記のような被害や事業活動が制限されるような事象が発生した場合にも、関係者と協議しつつテレワークを始めとする柔軟な業務態勢をとることにより、影響を抑制する取組みを行っております。
しかしながら、想定を超える深刻な被害や影響が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
⑥情報セキュリティに関するリスク
当社グループでは、業務上、顧客企業が保有する個人情報や機密情報を取り扱う場合があります。
これらの重要情報につきましては、情報セキュリティガイドラインの整備、情報セキュリティ認証の取得や社員教育・研修、及び内部監査の定期的な実施等を通じて適切な管理を行っております。
しかしながら、想定外のコンピューターウイルスや不正アクセス等のサイバー攻撃、人為的過失等の理由により、運用サービスの停止や機密情報の漏洩、改竄、紛失、消失等が発生した場合、顧客企業等からの損害賠償請求や当社グループの信用失墜の事態を招き、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
⑦人材確保・育成に関するリスク
技術進化が著しくかつ厳しい競争に晒される環境の中にあって、当社グループが顧客の信頼を得て持続的成長を実現していくためには、専門的な情報技術を持ち顧客の潜在的なニーズにも対応できる人材を適時的確に確保あるいは育成していくことが極めて重要であると認識しております。
このため、当社グループでは広く採用活動を行っているほか、技術等の習得のための研修の充実、社員の自主性を重んじた希望業務へのチャレンジ制度の提供、働き方改革を通した勤務環境の向上等、様々な施策を通じて人材の確保・育成に努めております。
しかしながら、同業他社等との人材獲得競争は激しく、人材確保・育成が計画どおりに進まない場合には、採用コストや人件費の増加につながるほか競争力の低下を招くことになり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
⑧ビジネスパートナー及び製品仕入先に関するリスク
当社グループは開発事業及び運用・構築事業においてビジネスパートナーを活用しております。
事業拡大に合わせた技術者の計画的補充、自社で保有していない技術の補完、並びに業務量変動への機動的対応による生産性の向上等、人材確保の最適化を目的としているものです。
また、販売事業においては顧客の多様なニーズに応えるため、国内外の製品仕入先より多種多様なソフトウェア製品等を調達し提供しております。
当社グループは業務の安定性や効率性の維持・向上のため、ビジネスパートナー及び製品仕入先との良好な取引関係の維持に努めております。
しかしながら、ビジネスパートナーの事情により人材の調整が適時適切に行えない、又は製品仕入先の事業戦略の変更等により製品確保が適時適切に行えない場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①経営成績等の状況
当社グループは、2025年3月期経営方針として「環境の変化に即応した成長の実現」を掲げ、「①既存顧客の深耕」「②ビジネスモデルの変革」「③自社IP製品×グローバルビジネスの推進」を成長戦略の柱として業務推進を行いました。
1)経営成績
当連結会計年度の経営成績は、以下のとおりとなりました。
(単位:百万円)
|
|
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前連結会計年度比(%) |
|
売上高 |
51,617 |
9.5 |
|
売上総利益 |
13,179 |
10.3 |
|
営業利益 |
7,940 |
15.0 |
|
経常利益 |
8,126 |
△5.2 |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
3,377 |
△26.3 |
(環境認識)
当連結会計年度は米中摩擦やウクライナ問題の長期化、中東情勢の緊迫化など地政学リスクが高い状況が継続しましたが、国内景気は穏やかながらも回復基調が継続しました。情報サービス産業におきましては業務効率化やビジネス改革等の投資を中心に需要は堅調に推移しましたが、製造業のお客様の一部に中国景気停滞や自動車業界での不透明感などの影響の顕在化が見受けられました。
原材料コストの上昇や金利水準の高止まり等海外経済の減速懸念があることに加え、米国トランプ政権による関税を中心とした新たな通商政策の影響を踏まえた世界的な景気後退懸念や株式を始めとした各種市場の不安定化など、より一層不透明感が高まりました。
(対応方針・施策と実績)
売上高は開発事業、運用・構築事業、販売事業のすべてのセグメントで増加し、特に販売事業が好調に推移した結果、51,617百万円(前連結会計年度比9.5%増)となりました。損益面におきましては、クラウドビジネスを始めとしたより収益性の高い事業を進展させるとともに、既存事業のさらなる生産性向上や単価改善等に努めた結果、売上総利益は13,179百万円(同10.3%増)、営業利益は売上総利益の増益に加え販売費及び一般管理費の抑制により7,940百万円(同15.0%増)となりました。
経常利益は前連結会計年度には大幅な円安の影響により為替差益を計上していたのに対し、当連結会計年度では小幅な円高に伴い為替差損を計上したため8,126百万円(同5.2%減)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は海外事業投融資等に関する特別損失(投資有価証券評価損210百万円・貸倒引当金繰入額1,587百万円)を計上した結果、3,377百万円(同26.3%減)となりました。
(セグメント別)
セグメント別の経営成績は以下のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
売上高 (百万円) |
前連結会計年度比(%) |
営業利益 (百万円) |
前連結会計年度比 (%) |
|
開発事業 |
25,601 |
3.6 |
5,303 |
3.9 |
|
運用・構築事業 |
6,444 |
6.6 |
2,123 |
14.5 |
|
販売事業 |
19,571 |
19.6 |
2,175 |
38.1 |
|
セグメント調整 |
- |
- |
△1,661 |
- |
|
合計 |
51,617 |
9.5 |
7,940 |
15.0 |
(注)1.売上高はセグメント間の取引を相殺消去しております。
2.各セグメントの営業利益には全社費用を含んでおりません。
当連結会計年度では、前連結会計年度比で開発事業、運用・構築事業及び販売事業の全事業で増収増益となりました。
開発事業では、当社グループ顧客の主要な業種である金融業に対する業務が伸長した結果、増収増益となりました。
運用・構築事業では、製造業や金融業に対する業務が伸長し増収増益となりました。
販売事業では、株式会社AITで病院や金融業向けの大口案件があったこともあり大幅な増収増益となりました。
2)財政状態
上記経営成績の結果、当連結会計年度末の財政状態は下記のとおりとなりました。
(単位:百万円)
|
|
当連結会計年度末 (2025年3月31日) |
前連結会計年度末比(%) |
|
総資産 |
51,448 |
8.7 |
|
純資産 |
31,103 |
6.4 |
|
自己資本比率 |
59.9% |
△1.8 |
(総資産)
総資産は前連結会計年度末比4,119百万円増加しました。
現金及び預金の増加3,570百万円、商品及び製品の増加2,332百万円、短期貸付金の減少1,075百万円と長期貸付金の増加1,073百万円、貸倒引当金(固定)の増加1,554百万円が主な変動要因です。
(純資産)
純資産は前連結会計年度末比1,876百万円増加しました。
親会社株主に帰属する当期純利益が3,377百万円であったのに対し、配当金支払額が2,521百万円であり利益剰余金が前連結会計年度末比856百万円増加したこと等が主な変動要因です。
(自己資本比率)
上記の結果として、自己資本比率は59.9%と前連結会計年度末比1.8%低下しました。
②2025年3月期経営方針に対する取組み結果
1)経営目標値
2025年3月期の経営目標値に対し、売上高・売上総利益・営業利益・経常利益が上回る結果となりました。売上総利益率は前連結会計年度比向上したものの経営目標値を下回りましたが、特別損失計上の影響を受けた親会社株主に帰属する当期純利益を除き、販売費及び一般管理費の抑制により営業利益・経常利益は上回りました。
(単位:百万円)
|
|
2025年3月期 目標 |
2025年3月期 実績 |
|
売上高 |
49,500 |
51,617 |
|
売上総利益 |
13,000 |
13,179 |
|
売上総利益率 |
26.3% |
25.5% |
|
販売費及び一般管理費 |
5,700 |
5,238 |
|
営業利益 |
7,300 |
7,940 |
|
経常利益 |
7,350 |
8,126 |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
4,600 |
3,377 |
|
1株当たり当期純利益(円) |
365.49 |
267.48 |
ROEは安定的かつ継続的に10%以上確保することを目指しておりますが、当連結会計年度は11.3%となりました。
2)成長戦略
(ビジネスモデルの変革)
当社グループではビジネスモデル変革に向け「クラウドビジネスの強化」「コンサルティング業務の強化」「ソリューションビジネスの推進」に注力することとしており、下記のような取組を行っております。
株式会社SRAの組織であった先端技術研究所(以下、「KTL」という。)を当社の組織として2022年4月に再編いたしました。技術力のシンボルであるKTLを当社グループの統括会社である当社に移行し、グループ全体の技術やビジネスの連携を一層強化することを企図したものであり人材増強を行いながら活動しています。
クラウド型基幹システムの導入コンサルティングサービスに関しましては、2022年4月にOracle Cloud ERPの自社への導入を行うとともに、「Oracle Cloud ERP導入支援サービス」を開始いたしました。自社導入は財務会計分野を始めとして管理会計分野へと対象範囲の拡大を図っており、その知見を活かした導入支援サービスに努め、当社グループの今後のクラウドインフラビジネスやコンサルティングビジネスの柱のひとつとすべく取組んでおります。
その一環としてOracle Cloud ERPに関わる技術者養成に向けた資格取得支援のために当連結会計年度にはOracle Universityの受講支援を行いました。Oracle Cloud ERP導入のコンサルティングに関する知識・スキルの証明となる認定資格の取得保有者は11名となっており、実案件への参画や会計知識に関する資格取得と併せコンサルティング実務能力の底上げに努めております。
また、当社グループの注力分野であるクラウド関連技術の強化を図るべくAWSの認定資格の取得の奨励・支援を継続しております。
認定資格取得が200を超える企業として「AWS 200 APN Certification Distinction」に2023年度に認定された他、AWS技術者としての最高位にあたる2022 APN AWS Top Engineersの称号を2名が、Japan AWS Jr.Championの称号を1名が受けており、当社グループのクラウド関連ビジネス拡充に貢献しております。
子会社である株式会社SRA OSSは2024年に株式会社NTTデータグループとの資本業務提携を行いました、オープンソースソフトウェアのサポートサービスを同社の顧客へ拡大し、よりミッションクリティカルなシステムに適したサービスへの変革を目指しております。
(グローバルビジネスの拡大)
当社グループでは「成長性の高い東南アジアを中心とした海外市場への展開」を課題の柱のひとつとして掲げております。
株式会社SRAでは、2020年6月にNALと業務提携契約を締結いたしましたが、さらなる関係強化を図るべくNAL株式の36%取得を含む新たな資本・業務提携契約を締結し2023年度に出資を完了、人材派遣による同社の管理体制強化に向けての支援を継続し緊密な関係を維持しております。
2024年度には株式会社SRAがNALと業務提携関係にあるベトナム韓国情報通信大学の研究をサポートするプログラムを開始し、DBAを育成し現地での技術力向上を図りながらPostgresSQLサポート拡充によるビジネス拡大を目指しております。
3)株主還元
当連結会計年度におきましては、売上高・売上総利益・営業利益が経営目標値を上回り、かつ過去最高水準であったことから、前連結会計年度に比べ20円増配し1株当たりの年間配当を180円といたしました。
4)その他の取組み
(人材:活力あふれる組織づくり)
当社グループでは「優位性をもって対応できる人材を育成し、その人材を活かしたグループ経営を推進する」との方針を掲げ活動を行いました。
株式会社SRAでは事業部単位で目標を設定することで新規技術を扱える技術者の育成を推進することを企図し、クラウド及びAI/ML関連の認定資格の取得を強力に推奨・支援することにより技術者層の充実を図りました。
(ESGへの取組み)
当社グループは創業以来、「自らの職業的実践を通じ、コンピュータサイエンスの諸分野を発展させ、それによって人類の未来に貢献する」という経営理念を掲げており、ITでユーザーの満足度を最大化することを通して社会への貢献を果たすべく努力を続けております。
具体的には、創業以来広く社会に対してオープンソースソフトウェアの普及に努めているほか、自社IP製品(P-CON)によるペーパーレス推進提案を通したお客様のESG対応サポートの実施、及び社会インフラの安全性向上に資する技術に関する電力会社との共同開発等を行っております。
また、当社グループ内での取組みでは、働き方改革の一環としてテレワークや雇用延長への対応を始め、子育て支援制度の改善、多様な働き方に向けた制度の整備を行うなど、勤務環境向上のための施策を進めております。
(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
①キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは5,778百万円、投資活動によるキャッシュ・フローは△264百万円、財務活動によるキャッシュ・フローは△1,907百万円でした。
その結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は前連結会計年度末に比べ3,691百万円増加し19,738百万円となりました。
当社グループはベースの事業活動から得られる営業キャッシュ・フローをもとに、2025年3月期計画で掲げた「ビジネスモデルの変革」及び「株主還元の更なる充実」の実現に向け、将来の成長のための投資と株主への還元を行っております。
1)営業活動によるキャッシュ・フロー
税金等調整前当期純利益は6,401百万円であり、貸倒引当金の増減額1,551百万円、棚卸資産の増減額△2,439百万円や仕入債務の増減額2,336百万円等を勘案、法人税等支払額△3,048百万円であったこと等を反映し、営業活動によるキャッシュ・フローは5,778百万円となりました。
2)投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度では無形固定資産の取得による支出△231百万円等により、投資活動によるキャッシュ・フローは△264百万円となりました。
3)財務活動によるキャッシュ・フロー
当社子会社である株式会社SRA OSSが株式会社NTTデータグループとの資本業務提携の一環として出資を受け入れたことに伴い連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の売却による収入が510百万円となった他、配当金の支払額が△2,521百万円であったことなどにより財務活動によるキャッシュ・フローは△1,907百万円となりました。
②資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、キャッシュ・マネジメント・システムを採用しており、グループ内の資金を一元的に管理しグループ会社間の資金融通を機動的に行うことにより、効率的な資金運営を行っております。
また、株式会社SRAにおいては、取引金融機関6社との間で総額5,800百万円のコミットメントライン契約を締結しており、グループベースで資金調達が必要となった場合に機動的に行えるよう備えております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は19,738百万円、コミットメントラインの未使用枠金額は5,800百万円であることから、十分な流動性を確保しております。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。これらの見積り及び判断は、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
連結財務諸表の作成で用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
<貸付金>
短期貸付金及び長期貸付金については、貸付先の経営成績・財政状態等に注視して回収可能性を判断しており、貸付先の財政状態の悪化等により貸付金の回収可能性が著しく低下した場合は貸倒引当金を計上しております。
上述の見積り及び仮定において、将来の予測不能な事業環境の著しい悪化等により見積りに用いた仮定が変化し、貸付先の経営成績及び財政状態がさらに悪化した場合、翌連結会計年度以降の短期貸付金・長期貸付金の計上金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(4)仕入、受注及び販売の実績
①仕入実績
当連結会計年度の仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前連結会計年度比(%) |
|
販売事業(百万円) |
12,997 |
40.5 |
|
合計(百万円) |
12,997 |
40.5 |
(注)1.金額は、仕入価格によっております。
2.セグメント間の取引については、相殺処理しております。
②受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高 (百万円) |
前連結会計年度比 (%) |
受注残高 (百万円) |
前連結会計年度比 (%) |
|
開発事業 |
25,123 |
△0.6 |
5,787 |
△7.6 |
|
運用・構築事業 |
6,562 |
6.6 |
3,133 |
3.9 |
|
販売事業 |
22,771 |
30.9 |
9,095 |
54.3 |
|
合計 |
54,457 |
11.5 |
18,015 |
18.7 |
(注)1.金額は、販売価格によっております。
2.セグメント間の取引については相殺処理しております。
③販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前連結会計年度比(%) |
|
開発事業(百万円) |
25,601 |
3.6 |
|
運用・構築事業(百万円) |
6,444 |
6.6 |
|
販売事業(百万円) |
19,571 |
19.6 |
|
合計(百万円) |
51,617 |
9.5 |
(注)1.金額は、販売価格によっております。
2.セグメント間の取引については、相殺処理しております。
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上を占める相手先がいないため記載を省略しております。
なお、案件管理方法の変更に伴い当連結会計年度より生産実績に関する記載を行っておりません。
該当事項はありません。
当連結会計年度における当社グループの研究開発活動は、研究開発及びその成果に基づくビジネス展開から構成されます。
株式会社SRAの先端技術研究室においては、研究開発分野としてソフトウェアに関わる基礎研究及び技術開発研究に取組んでおります。前年度に引き続き高品質ソフトウェアに関する基礎研究、ソフトウェア検証に関わるモデル検査技術の研究開発及び諸科学の発展に寄与するコンピューティング技術の開発と公開をテーマとして、一部公的研究費助成金(科研費)も獲得しながら進めています。ソフトウェア技術を核としたデジタルトランスフォーメーションを、専門家との共同研究や国内外の研究コミュニティとの協力を通して、産業、教育、学術といった社会の多様な側面で推進するべく、オープンソースソフトウェアを基盤とする技術活用のための研究開発を継続しております。これらは、主に特定のセグメントに区分できない基礎研究であります。
株式会社SRAのプロダクト・サービス事業部は、自社製品・サービスの開発と販売を手掛けており、そのための技術開発や技術検証に取組んでおります。当社グループが今まで蓄積してきた技術や業務の知見を活用した新たなビジネス創出を目指して研究開発を進めております。また株式会社SRA OSSはオープンソースソフトウェアのサポートビジネスや製品ビジネスを手掛けており、オープンソースソフトウェアの研究開発を通じて新たな製品サービスの創出やコミュニティに対する貢献をしております。これらは、主に販売セグメントに係る研究開発であります。
当連結会計年度での研究開発は、当社のグループ会社である株式会社SRAの先端技術研究室及びプロダクト・サービス事業部が中心に行っております。研究開発費の総額は
(1) 高品質ソフトウェアに関する基礎研究
先端技術研究室では、ソフトウェア開発研究の核として、形式仕様の研究開発を継続的に進めております。形式仕様はソフトウェアの仕様を数学的な道具を使って記述し、その特性を分析する技術で、AI時代においてもソフトウェアの信頼性や生産性を高める技術として期待されています。先端技術研究室は、形式仕様の中でも歴史が長いVDM(Vienna Development Method)の国際的な研究コミュニティと協力して、VDMの言語仕様の改訂などへの貢献を継続しています。また、当社独自の形式仕様研究として、信頼性や生産性に加えて操作性や有用性を高めることを目的に、UI技術やアジャイル開発技術、ライブプログラミング技術、プログラム自動生成技術などとの連携によって創造的なシステム仕様の策定を支援する開発環境 ViennaTalk の開発を継続し、オープンソースソフトウェアとして公開して無償で提供しております。
(2) ソフトウェアの正しさを検証する技術開発研究
ソフトウェアの振る舞いを自動的に解析してその正しさを検査するためのモデル検査技術の開発研究を行っております。先端技術研究室では、生物の集団行動が引き起こす創発的な性質を利用した、AI技術を使った研究を進めています。本研究テーマは、独立行政法人日本学術振興会科学研究費助成事業において基盤研究(C)として採択され、2022年度から3年間の研究助成を受けており、当連結会計年度が最終年度となっております。
2022年度から2年間かけて開発した複数の集団の存在を仮定した検査技術を発展させて、当連結会計年度では、これをさらに効率化する手法を新たに開発し、国際的な学術論文誌で発表しました。また、検査技術を評価するために必要な、ベンチマークと呼ばれる汎用的な問題を生成する方法を考案し、海外の学術会議で発表しました。ソフトウェア開発に適用しやすい技術を目指して、引き続き研究開発に取組んでまいります。
(3) 科学的コンピューティングのための技術開発
先端技術研究室では、科学の諸分野にソフトウェア技術を通して貢献することを目指しております。様々な分野の学術研究者と協力して、研究を推進し研究成果を広く応用展開するための、プラットフォームとなるソフトウェアを開発しております。オープンソースソフトウェアとして開発を進めているマルチエージェントシミュレーション環境 re:Mobidyc は、生物学や環境学での数理モデルの構築と検証に特化したもので、現在、食料問題などに関わる研究に利用されています。また、データサイエンス分野においては、OLAP(OnLine Analytical Processing)技術の応用を支援するための専用のデータ可視化ソフトウェア gOLAP を開発しております。これら科学的コンピューティングの技術開発について、re:Mobidycに関するものは2024年度から、gOLAP に関するものは2023年度から、いずれも独立行政法人日本学術振興会科学研究費助成事業において基盤研究(C)として採択され、研究分担者としての助成を受けております。
(4) オープンソースソフトウェア
オープンソースソフトウェアに関しては、継続的に情報収集と整備を進めております。このような活動から得た様々な知見に、ソフトウェア工学の研究成果を組み合わせることにより、ソフトウェア開発プロジェクトの統合管理環境「ProjDepot」、テスト自動化支援環境「Testablish」などの自社製品を開発し、改良を続けております。グループ内の多くの開発プロジェクトがこの環境を利用しており、プロジェクトの開発状況の可視化と生産性向上に寄与しております。
オープンソースソフトウェアのデータベースでグローバルに開発されている「PostgreSQL」においては、株式会社SRA OSSが継続的に新機能提案や改良開発を行っています。これにより、株式会社SRA OSSはPostgreSQLに貢献する企業として開発コミュニティが選出する Major Sponsor企業16社のうちの1社として認定されているほか、5名の貢献者が在籍しており、うち2名はコミッタと呼ばれるソースコードを直接変更できる権限を保有しています。
さらに、PostgreSQLのエンタープライズ活用を目的とした開発も行っており、多機能なクラスタ機能を提供する「Pgpool-II」や、増分ビューメンテナンスの機能を提供する「pg_ivm」をオリジナルのオープンソースソフトウェアとして開発・公開しています。
(5) 新規製品・サービスビジネス
当社グループではビジネスモデル変革の一つとして自社の製品・サービスビジネスに取組んでおります。
株式会社SRAのプロダクト・サービス事業部では、自社製品・サービスビジネスを推進し、サービスを主体とするビジネスモデルへのシフト、デジタルトランスフォーメーションへの対応などを積極的に進めております。
当連結会計年度では、昨年度製品化したスマートグラスによる点検プロダクトの市場展開とフィードバックに対する機能拡張、FIDO2とWAFを連携させたプロダクトの製品の市場展開、ARKitのモーションキャプチャー機能を使った、スマートグラスでの拡張現実(AR)におけるコマンド操作の検証継続、大規模言語モデル(LLM)によるText生成の回答精度を向上させる検索拡張生成(RAG)ツールの機能拡張、そのRAGツールを使った大学向けのAIアバターの開発検証、次期文教システム(UniVision)開発のためのローコード開発ツールの機能拡張、ユーザーの現在位置で災害が起きた場合に管理サーバーから自動で安否を確認するシステム(安否確認システム)の開発を実施しました。社内で使用、検証し有効と判断したものを今後製品化する予定です。
これらはいずれも、高度で高品質なソフトウェアの実現に有益となる技術・環境・ツールを目指して進めているものです。実務レベルへの適用を随時行いつつ、国内外の大学や研究機関との連携を通して最新の技術動向を取り入れながら、研究成果を継続的に構築していく実用型の研究です。これらの研究成果の一部は、コンサルテーションや他機関との協同研究開発作業等にも活かされております。