第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、企業理念を「高付加価値サービスの創造・提供を通じて お客様の満足と豊かな社会の発展に貢献します」と定めております。

 この理念に基づき、暮らしと社会の安心・安全と、快適で環境に配慮されたサステナブルな社会の実現に向け、日本の社会インフラや人々の生活、産業やサービスを支え、発展させるICTシステム(エネルギー:電力・ガス、交通、宇宙、次世代通信、公共、防災、決済、モビリティ、医療・ヘルスケア、産業機器等)に加え、これらICTシステムのDX・IoT化に向けたAI(人工知能)、データマネジメント、セキュリティ等の先進的なデジタルテクノロジーを提供しております。

(2)経営環境及び対処すべき課題

 当社グループの事業領域である社会インフラ、先進インダストリーにおけるICTシステム投資は、景気動向に左右されることなく、引き続き高水準で推移しております。

 特に「DX」「モダナイゼーション」「デジタルデータ利活用」「AIのビジネス適用」などを目指す企業の投資意欲は非常に旺盛であり、これらテーマがICT市場の成長・拡大をけん引することが期待されています。

 加えて、情報のデジタル化が急速に進展する中、サイバー攻撃の脅威は益々高まっており、社会システム全体に加え、機密情報やデジタルデータの保護など、安全保障につながるセキュリティ対策・サイバー攻撃対策が喫緊の課題となっております。

 

 このような中、当社は中期経営計画「New Canvas 2026」において「デジタル社会の“あした”をリードするイノベーションカンパニー」をスローガンに、成長事業「次世代エネルギー」「スマートインフラ/スマートライフ」と、ベースロード「エンタープライズDX/モダナイゼーション」を中心とした事業戦略を推進しております。

 「次世代エネルギー」では、大手エネルギー企業向けの「ICTシステムの次世代化」に加え、「エネルギーマネジメントシステム」を新規顧客創出につなげてまいります。「スマートインフラ/スマートライフ」では、当社の強みを最大限に発揮することが可能な「スマートレジリエンス」「スマートモビリティ」「スマートエネルギー」の各領域において、1976年の創業以来社会インフラ領域で培ってきたシステム開発力と、AIや宇宙・衛星データ等の最新テクノロジーを融合し、都市のデジタル化に貢献してまいります。ベースロードとしては、最新テクノロジー及びデジタルデータを活用した新サービスの創出に継続して取り組んでまいります。

 また、企業基盤をさらに強固にすべく「人的資本(採用、リスキリング等)」「M&A/アライアンス」「エリア戦略(中部、九州等)」「研究開発・産学連携(AI、宇宙等)」「サステナビリティ」による経営高度化戦略を強力に推進いたします。

 「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」において掲げた目標「2029年3月期:ROE 22%」の達成に向けては、株式分割(2025年4月1日付)、株主還元の強化(配当性向40%→50%への引上げ及びDOE目標6%の新設)を決定するとともに、自己株式の取得・消却を行いました。引き続き、資本コストの低減とROE向上を目指し「利益率向上に向けた成長戦略の着実な遂行」「経営資源の適切な配分に向けた財務戦略の立案・実施」「株主・投資家の皆さまとの継続的な対話」に取り組んでまいります。

 今後も、ガバナンス・コンプライアンスの充実を図るとともに、暮らしと社会の安心・安全と、快適で環境に配慮された持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているために、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティ共通

 当社グループは、企業理念「高付加価値サービスの創造・提供を通じてお客様の満足と豊かな社会の発展に貢献します」を掲げ、事業活動、企業活動を通じて未来の価値を共創することにより、サステナブル(持続可能)な社会の実現に取り組んでおります。

 

①ガバナンス

 当社は、当社グループ全体のサステナビリティ活動を推進するため、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を中心としたサステナビリティ・ガバナンス体制を構築し、この体制のもと、サステナビリティを巡る課題(気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮、公正・適切な処遇等)への対応に取り組んでおります。サステナビリティ委員会は年4回実施し、当社グループ全体のサステナビリティ活動に関する企画検討・立案、リスク及び機会の監視・管理、達成状況の評価などを行っております。重要なテーマについては、経営会議及び取締役会に報告し、審議・決議を経て、推進することとしております。

 

②戦略

 当社グループは、企業の社会的責任を全うすることが、企業価値向上につながるとの認識のもと、すべての行動の基本となる方針として、「サステナビリティ方針」を策定しております。

 サステナビリティ関連のリスク及び機会への対処は、サステナビリティ方針に基づき実施しております。

 

サステナビリティ方針(企業行動規範)

1.法令等を遵守し、立法の趣旨に沿って公明正大な企業活動を遂行します

2.市場における自由な競争のもとに、顧客のニーズにかなう高付加価値サービスを創造・提供するとともに、正しい商品情報を的確に提供し、顧客の信頼を獲得します

3.公明正大な取引を通じて取引先との信頼関係を築き、相互の発展を図ります

4.公正かつ透明な企業経営により、株主・債権者の理解と支持を得ます

5.従業員が企業の一員として連帯感を持ち、自己の能力・活力を発揮できるような環境づくりを行います

6.広く社会とのコミュニケーションを図るため、社会の要求に耳を傾けるとともに、必要な企業情報を積極的に開示します

7.個人等の情報、自社の秘密情報を適正に管理します

8.政治・行政と健全かつ透明な関係を維持します

9.社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力及び団体とは関係を持ちません

10.地域の発展と快適で安全な生活に資する活動に協力するなど、地域社会との共生を目指します

 

③リスク管理

 当社は、当社グループの事業展開に伴うサステナビリティ関連を含むあらゆるリスクに適正かつ迅速に対処できるようにするため、リスク管理規則をはじめとする社内規則を整備し、リスクの的確な把握、適正な対処、監視・責任体制を明確にしております。

 また、内部統制委員会、情報セキュリティ委員会、安全衛生委員会、環境委員会など各種社内委員会の設置及び品質、情報セキュリティ、環境など各種マネジメントシステムの活用により、リスク管理が有効に機能するような仕組みを構築しております。

 加えて、リスクコンプライアンス会議を設置し、リスク情報の共有促進・組織横断的な対策を推進しております。具体的には、定期点検モニタリングを行い、リスク情報を共有、対策検討し、重要事項については、内部統制委員会に報告しております。

 さらには、従業員に対する教育研修によるリスク管理意識の向上や、モニタリング方法の改善によるリスクを検出する仕組みの強化などを通じて、個々の職務執行に伴う具体的なリスクの識別・評価・監視・管理の実効性を高め、リスク管理の充実化を図っております。

 

④指標及び目標

 当社グループでは、サステナビリティ方針に基づく取組みの進捗を測るべく、KPI設定に関する議論を継続的に行っております。

 現時点において、人材育成及び社内環境整備について、以下の非財務KPIの目標を設定し、目標達成に向けた取組みを推進しております。

テーマ

指標

実績

(2022~2024年度平均)

目標

人材の多様性確保

(単体)

女性 新卒採用比率

24.8

2024年度~2026年度平均25%以上

外国籍 新卒採用人数

1.3名/年

2024年度~2026年度平均2~3名/年

経験者 採用人数

8.0名/年

2024年度~2026年度平均15名/年

※本項目については、各連結子会社の規模・制度の違いから一律記載は困難であるため、提出会社単体の記載

 といたします。

 

(2)気候変動

①ガバナンス

 代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」において、気候変動に関するリスクと機会を特定し、対応策を推進しております。取締役会は、気候変動に関するリスクと機会、対応策の進捗状況について「サステナビリティ委員会」から適時適切に報告を受け、目標の進捗に対する監督を行うとともに、適宜対応を指示しております。
 また、全社横断組織「環境委員会」にて、外部環境の変化を踏まえた環境方針及び目標を毎年策定し、常勤役員・事業部長等を構成メンバーとする「経営会議」にて審議の上、取締役会にて決定しております。取組み状況については、適時適切に経営陣に報告する体制を整えております。

 

②戦略

 気候変動が事業に及ぼす影響に対応するため、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などの外部機関が公表しているシナリオに基づき、バリューチェーンの上流・下流を含む当社全事業に与える財務影響が特に大きいリスク及び機会を特定いたしました。

 参照したシナリオは以下の通りです。

・1.5℃シナリオ:IPCC RCP 1.9、IEA Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)

・4.0℃シナリオ:IPCC RCP8.5、IEA Stated Policies Scenario (STEPS)

 

リスク

シナリオ

カテゴリ

主なリスク

時間軸

対応策

1.5℃

移行

リスク

 

評判

気候変動関連の取組みの遅れによるレピュテーションリスク

・気候変動への取組み・情報開示が遅れることによりステークホルダーからの評判が低下し、取引機会の喪失や人材採用難、信用リスク及び資本コストの増加

短期

中期

中期経営計画に掲げる経営高度化戦略のひとつとして、サステナビリティへの貢献を掲げ、気候変動問題を含むESG情報開示の充実化を図っております。
今後も、サステナビリティデータブックの発行やコーポレートサイトへのサステナビリティ情報の掲載、各種サステナビリティ調査への対応などを通じて情報開示の強化に取り組んでまいります。

1.5℃

移行

リスク
 

政策・

法規制

カーボンプライシングの導入

・炭素税等をはじめとするカーボンプライシングの導入により、CO2排出に対するコスト負担の増大

中期

長期

省エネによる炭素排出削減、再エネ導入やLED照明等の低炭素製品への切替による脱炭素化を推進しております。引き続き脱炭素に向けた取組みを進め、中長期的な事業コストの削減を図ります。

1.5℃

移行

リスク


政策・

法規制

GHG排出量開示・削減義務の強化

・2050年カーボンニュートラル実現が社会的コンセンサスとなり、企業に対して法令等による対応要請が高まることによる対応コストの増加

中期

長期

当社グループ全体のGHG排出量(Scope1+2)の算定・開示を実施しております。排出量削減に向けた取組みを継続するとともに、第三者保証の取得、削減目標の策定・開示についても検討してまいります。

1.5℃

移行

リスク


市場

再生可能エネルギーの導入拡大

・再生可能エネルギー設備の導入や、再エネ由来の電力への切替、環境価値証書の購入等の対応コストの増大

中期

省エネを引き続き推進するとともに、再エネ調達方法を継続的に検討し、調達方法分散化による再エネ調達リスクの低減と中長期的なコストの低減を図ります。

1.5℃

移行

リスク


市場

脱炭素を実現する技術・サービスへの移行

・脱炭素サービスの需要と供給の変化をとらえて、適切なサービスを提供できない場合、当社の強みであるエネルギー(電力・ガス)領域における競争力が低下

中期

中期経営計画の成長事業のひとつとして「次世代エネルギー」を掲げ、エネルギー向けビジネスに加えて、大量にエネルギーを多く消費する需要家向けに脱炭素に資するサービスの提供を開始しております。ビジネスの推進にあたっては、専任組織を組成し、エンゲージメントを通じた顧客ニーズの把握に努めてまいります。
引き続き、社会・ニーズの変化に対応したサービスの提供に向けた体制・技術・アライアンス強化等を図ります。

4.0℃

物理的

リスク


急性

異常気象による災害リスクの増加

・異常気象(台風、洪水、高潮等)によるオフィスへの物理的な損害の発生

・台風などの異常気象発生時の交通機関停止等による稼働日数の低下による売上減少

・ビジネスパートナーの被災によるサプライチェーンの寸断

短期

中期

自然災害の発生等による事業継続リスクを重要なリスクのひとつと位置づけ、「緊急時事業継続計画(BCP)」を策定し、継続的に見直しを実施しているほか、危機管理体制の維持・強化を図っております。
また、交通機関の麻痺等に備え、平時から場所にとらわれないロケーションフリーな働き方を推進しております。
パートナー企業の選定にあたっても、特定の会社・地域に依存しないことで、リスクの分散化に努めております。

4.0℃

物理的

リスク

 

急性

気温上昇に伴う猛暑日の増加等による空調負荷の増加

・オフィスにおける電力コストの増加

短期

中期

省エネ機器の導入と使用設備の効率運用等、炭素排出削減を進めております。

 

 

 

機会

シナリオ

カテゴリ

主な機会

時間軸

対応策

1.5℃

製品・

サービス

エネルギー会社のシステム次世代化ニーズの増大

・火力発電から、風力・太陽光・水力・地熱等の再生可能エネルギーや原子力への転換が進み、関連システムの開発ニーズが増加することによる売上増

・水素やメタネーションなど新たな再生可能エネルギー電源開発が進展することに伴い、関連システムの開発ニーズが増加することによる売上増

・原子力の導入により電力会社の収益率が向上し、ICT投資意欲が高まることによる売上増

短期

中期

中期経営計画「New Canvas 2026」において、中期事業戦略フレームワークを策定しております。概要は以下の通りです。
 

■ベースロード
 エンジニアリングサービスDX
 / モダナイゼーション

 

・「CloudLeap」をはじめとする、企業の業務効率化、ビジネス変革へ貢献するサービス、ソリューションを展開中。ラインナップ拡充に向けた商品開発、アライアンスなどの取組みを強化。


■成長事業①
 次世代エネルギー

 

創業来取り組んできたエネルギー会社との取引で培った業務ノウハウをもとに、既存エネルギーインフラの次世代化(DX対応のシステム更新、データ利活用等)や、脱炭素化に向けた取組みを支援。

マイクログリッド、VPP、エネルギーマネジメント等、需要家向けの新市場でのビジネスに挑戦。

 

 

 

 

 

 

 


■成長事業②
 スマートインフラ/ライフ

 

「町や生活のデジタル化」や「スマート化」につながるビジネス領域における取組みを推進。

・スマートレジリエンス
 → 都市計画・防災
・スマートモビリティ
 → 交通(自動車、鉄道等)、物流
・スマートエネルギー
 → 環境・エネルギー


中期経営計画に掲げる経営高度化戦略のひとつとして、サステナビリティへの貢献を掲げ、気候変動問題を含むESG情報開示の充実化を図っております。
今後も、サステナビリティデータブックの発行やコーポレートサイトへのサステナビリティ情報の掲載、各種サステナビリティ調査への対応などを通じて情報開示を強化いたします。

1.5℃

製品・

サービス

需要家に対する省エネルギー化を実現するソリューションの提供機会の拡大

・エネルギーマネジメントシステム等、省エネルギー化・脱炭素化を実現するソリューションの提供機会が増加することによる売上増

・蓄電池の普及が進み、VPP(バーチャルパワープラント)やマイクログリッド等、エネルギーを地産地消する仕組みの構築ニーズが増加することによる売上増

短期

中期

1.5℃

製品・

サービス

レジリエントなクラウドサービスのニーズの増大

・異常気象による大規模災害の増加により、「CloudLeap(クラウドリープ)」をはじめとするレジリエントなクラウドシフト/リフト支援サービスや、クラウドサービスの提供機会が増加することによる売上増

短期

中期

1.5℃

製品・

サービス

GX(グリーントランスフォーメーション)を実現するスマートシティ/スマートインフラ・ライフのニーズの増大

・より効率的な交通手段の利用促進(モーダルシフト)や、交通手段の最適化に実現するMaaSの広がりにより、関連システムのニーズが増加することによる売上増

・EV自動車の割合が増加することに伴い、最新テクノロジーを活用した関連システムのニーズが増加することによる売上増

・物流業において、配送ルート/手段の最適化を実現するためのDXソリューションの売上増

中期

4.0℃

製品・

サービス

自然災害への対策に資するソリューションのニーズ拡大

・宇宙・衛星データを活用した観測ソリューション等、自然災害の被害低減に資するシステム構築のニーズが拡大することによる売上増

・自然災害への強靭性が高いエネルギーネットワークの構築、及び災害時における迅速な復旧に資するシステムの開発ニーズの増加に伴う売上増

・分散型エネルギーシステムや、オフグリッドソリューションのニーズ拡大による、関連システムの売上増

中期

長期

4.0℃

製品・

サービス

気温上昇に伴う空調設備のエネルギー効率化ニーズの増加

・エネルギーマネジメントシステム等、省エネルギー化・電力コストの低減を実現するソリューションの提供機会が増加することによる売上増

中期

長期

 

 

 

③リスク管理

 当社グループは、「サステナビリティ委員会」において、外部環境やイニシアチブの状況、事業部門からの情報等を勘案し、気候関連のリスクを特定するとともに、対応策の検討および決定を行っております。特定されたリスクおよび対応策の進捗状況については、適宜取締役会に報告しております。
 また、特定した「気候関連リスク」を、グループ全体のリスクを管理する「リスクコンプライアンス会議」におけるリスク管理プロセスに組み込むことで、全社的なリスクマネジメントへの統合を図っております。

 

④指標と目標

 当社グループは、気候関連の「リスク」を評価する際に、GHG(温室効果ガス)排出量、財務影響額を指標としております。また、「機会」を評価する際には、マーケット規模、売上等を参考としております。
 気候関連リスク・機会の管理に用いる目標については、引き続き検討してまいります。

 

(3)人的資本

①ガバナンス

当社グループでは、「社員の成長が会社の成長の源泉」であるととらえ、社員の成長を支援するための人材育成に積極的に取り組んでいます。具体的な人材戦略の立案・推進については、人事部門主導のもと、経営会議にて検討・議論を行い、取締役会に報告しています。また、専門組織「人財開発センター」において、市場環境変化や技術革新を先取りする人材育成を加速するべく、必要な人材ポートフォリオの把握と、育成計画の立案と各施策の推進を進めています。

 

②戦略

変化の激しい市場環境に対応し、常に迅速に事業ポートフォリオの最適化を図ることができる組織力を醸成するため、人材の多様性を重視し、女性、外国人、高年齢者や様々な経験を持つキャリア採用者等、多様な人材の採用、起用を積極的に行っています。

 これら多様な社員が、それぞれの特性や能力を最大限活かせる職場環境を整備し、新たな発想や価値を効果的に取り込むことで、当社グループの更なる飛躍につなげる環境づくりを目指しています。

 

<人材の多様性確保を含む人材育成に関する方針及び取り組み>

■人材育成

イ.高度IT人材の育成

 情報のデジタル化が急速に進展する現在のビジネス環境において、企業としての優位性を確保するためには、従業員一人ひとりの高度化(プロフェッショナル化)が求められています。高度IT人材が増えるほど、企業としての競争力は高まり、変化や危機に対し柔軟に対応できるようになると考えています。当社グループでは、高度IT人材を「AIやDX等のIT先端技術に通じた人材」と定義し、育成の取り組みを強化しています。AI研究所を中心とした啓蒙活動に加え、新たに人財開発センターを設置し、専門性に合わせた必要スキルを整備し、各スキルに合わせた研修の開催や、社内の各組織が主催するセミナー、勉強会の実施、先端技術に関する資格取得奨励の強化等を通じて、技術力の向上、習得を推進しています。

 

ロ.コンサルティング人材の育成

 多くの企業がビッグデータやデジタルテクノロジーの活用に対する投資を強化する中、これらIT投資を支援するコンサルタントの需要が高まっています。当社は、これまで培ってきた、特に社会インフラに関わるシステム開発のノウハウや経験を活用し、これらのニーズに対応できるコンサルタント人材の育成に取り組んでいます。具体的には、2024年度より、2つの研修コース(基礎コース、アドバンスドコース)を設けた社内研修を実施し、また実際の業務内でのOJTトレーニングを行うなど、当社オリジナルの教育プログラムを導入し、コンサルタント育成に注力しています。

 

ハ.基礎力強化の施策

 様々なビジネスシーンにおいて保有するスキルや能力を十分に発揮するためには、社会人としての基礎力を向上させることが必要となります。当社グループでは、基礎力を「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームワークで総合力を発揮する力」と定義し、知識やスキルを活かすために欠かせない力であるとの認識のもと、その向上に注力しています。具体的には、各階層に合わせて目標水準を見える化し、毎年2回の社内面談において、役職者と本人がその成長度合いを確認する機会を設けています。また、若手社員を中心として、毎年集合研修を行い、お互いに切磋琢磨し、刺激し合う機会を設けるなど、社員一人ひとりが成長できる環境づくりに取り組んでいます。

 

ニ.経営人材育成の施策

 企業が永続的に成長し存続していくためには、常に次代を担う経営幹部を確保することが必要となります。当社グループにおいても次世代の経営幹部候補となる人材の育成に注力しており、優秀な人材の抜擢に積極的に取り組んでいます。また、候補者を選抜し、経営層幹部による講義や定期的な直接対話(面談)の実施を通じて、当社グループ独自の人材育成を推進しています。

 

■ダイバーシティ

イ.多様な人材の採用

 当社グループでは、多様な人材の確保に向け、新卒採用においては、特に女性や外国人の採用に注力しています。当社グループの採用は技術職が中心ですが、文系理系を問わず、意欲や適性を広く考慮した採用活動を行っており、女性採用比率25%以上を目標に女性の採用を積極的に推進しています。

 また、外国人採用に関しても注力しており、当社グループの海外拠点のあるベトナムからの留学生を中心に毎年数名を採用しています。また、日本語の習得支援の他、一時帰国支援制度を導入し、外国人特有の事情にも配慮した環境づくりに取り組んでいます。

 

ロ.女性の活躍推進

 当社グループでは、多様な人材の強みを生かせる風土づくりとして、特に女性が活躍できる環境づくりを推進しています。当社の管理職の女性比率は10.1%(2024年度末)となっていますが、その比率向上に向けて、新卒採用における女性比率向上(採用目標25%以上)や女性向けのキャリア研修の実施等を通じ、次世代の女性幹部候補者の育成、拡大に注力しています。

 また、在宅勤務(テレワーク)、時差勤務、短時間勤務等の制度整備や、育児等の休業制度の整備・拡充を通じて、多様なライフスタイルに応じた働き方を選択できる環境づくりに取り組んでおり、育児休業を1ヶ月以上取得した社員に対する支援金支給制度を導入するなど、性別を問わない育児休業取得を推進しています。

 

ハ.高年齢者の活躍推進

 労働人口が減少し、人材獲得競争が激化する中、高年齢者を含めた、幅広い人材の活躍が企業の成長に欠かせないものとなっています。当社では、60歳以上の高年齢者の継続雇用制度を見直し、評価により処遇が正社員時よりも高くなる制度を導入するなど、年齢を問わず活躍できる環境の整備に注力しています。また、社外からの経験者採用についても積極的に行っており、60歳以上の採用も、毎年数名実施しています。

 これらの施策の結果、60歳以降の役職者が12名、60歳以降も継続勤務する社員も5年前の2.4倍に増加するなど、高年齢者の活躍が拡大しています。

 

<社内環境整備に関する方針及び取り組み>

■ジョブ型要素を取り入れた人事制度改革

 当社グループを取り巻くビジネス環境は、年々その変化のスピードを高めており、人材の確保とその成長が当社グループにおいても重要な経営課題の一つとなっています。

 当社では従業員一人ひとりの成長こそが企業の成長の重要なベースとの考えのもと、これまでも社員一人ひとりの成長を評価し、処遇に反映できる仕組みを導入し、社員の育成に注力してまいりましたが、さらなる成長力強化を図るため、2024年4月よりジョブ型要素を取り入れた人事制度を導入しました。

 新制度では、社員の担う職務や役割に焦点を当てた評価、処遇制度を導入し、社内外の優秀な人材を今まで以上に抜擢しやすい制度としました。また、複数のキャリアパスモデルを設け、社員が、自らのキャリアを設計し、自律的にスキルアップに取り組みながら、自己実現を図ることができるよう制度を改めた他、それらのキャリアに応じた教育制度を整備するなど、個人の成長を支える環境づくりに取り組んでいます。

 

■ウェルビーイングの向上

 当社グループでは、多様なライフスタイルを持った社員が、働きがいを持って仕事に取り組むことができる環境づくりに注力しています。そのために、社員一人ひとりがその能力を十分発揮し、自らが考えたキャリアを職場で実現できる環境を提供することが必要だと考えています。

 

イ.年次有給休暇の取得推進

 当社では、ワークライフバランス向上を目的に、年次有給休暇の取得促進を含む休暇制度の充実化に取り組んでいます。具体的には、年間の年次有給休暇取得計画の設定や、夏季休暇に合わせた連続取得の推奨等、計画的に休暇を取得しやすい環境を整備しています。

 

ロ.テレワークを含む多様な働き方の制度化

 当社では、自らの業務や家庭の状況等に合わせて時間や場所を選択できるよう、全社員を対象に在宅勤務制度(テレワーク制度)や時差勤務制度を導入しています。現在、全社員の67%が在宅勤務制度を利用しており、全勤務に占めるテレワーク利用率も25~30%を維持するなど、制度の利用が定着しています。

 

ハ.健康経営

 当社では、社員が健康に、安全に、安心して、快適に働くことができる環境づくりに注力しています。具体的には、社員の健康診断受診を推奨することで、その受診率は毎年100%を実現しているほか、産業医との連携により、健康診断結果を業務上の疾病予防等を含む保健指導につなげています。

 また、メンタル疾患対策として、ストレスチェック制度を活用して、その結果に基づく個人と職場へのフィードバックを行っている他、やむを得ず病気やケガで休業した社員に対し、復職前の柔軟なトレーニングプログラムや復職後の短時間勤務プログラムを導入し、確実な職場復帰を支援する体制を構築しています。

 さらに、社員の健康増進を後押しする施策として、オフィスヨガプログラムの実施やウェルネススタンドの設置等に取り組み、「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定されています。

 

■経営への参画意識醸成

 当社では、従業員の経営参画意識醸成と福利厚生(資産形成)とを兼ねて、従業員持株会制度を運営しています。当社従業員のうち、持株会に加入している社員は52%と高く、また株主構成においても、従業員持株会が第2位に位置するなど、従業員の経営参画意識醸成につながっています。

 さらに、経営幹部を対象に「譲渡制限付株式報酬制度(RS)」を通じた、当社株式の付与を行っています。これは、中長期的なインセンティブ要素として機能することを図る制度で、株主との利益共有を通じて経営参画意識の醸成につながっています。

 

③リスク管理

 当社グループでは、「社員の成長が会社の成長の源泉」であると考えており、有能な人材の確保・育成が著しく停滞することが重大なリスクにつながります。人的資本に関するリスクについては、当社グループ全体のリスク管理体制、仕組みの中で識別・評価・監視・管理するほか、人事担当部門が適宜経営会議に報告しています。

 

④指標と目標

 「(1) サステナビリティ共通 ④ 指標及び目標」」及び「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載のとおりです。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から開示しています。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避、発生した場合の対応に努める方針であります。

 なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているために、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(1) 顧客の投資計画に係るリスクについて

 顧客の投資計画の実行は、経済環境や収益動向等に影響を受け、それらが悪化したことにより、顧客のICT投資が凍結・延期・削減される可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクの低減を図るため、当社グループは、特定の事業セグメントや特定の顧客に過度に依存しないバランス経営を図ると共に、事業セグメント毎の主要顧客別戦略を推進しています。

 

(2) プロジェクトに係るリスクについて

 当社グループが顧客にシステムやソリューションを提供する場合、顧客との間で予め対価を契約により定めておりますが、受注時におけるコスト見積の誤り、品質管理、及び工程管理等に問題が生じた場合は、技術者の追加投入や賠償等が発生することにより採算性が低下する可能性があります。

 また、顧客との間で予め定めた期日迄に作業を完了・納品できなかった場合には遅延損害金が、最終的に作業完了・納品できなかった場合には損害賠償責任が、作業完了・納品後に不具合等が発見された場合には瑕疵担保責任が発生することに加え、当社グループの信用の失墜により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクの低減を図るため、当社グループは、次の施策により、高品質な情報システムの提供を図っています。

・「ISO9001:品質マネジメント・システム」に準拠した品質保証推進活動

・品質保証推進の専任組織を中心とした、全社横断的な各品質向上施策の推進

・見積書提出時や、プロジェクトの進捗過程における定期的なリスク診断、当社グループ独自のプロジェクト監視ツールによる各プロジェクトの進捗状況等の「見える化」、情報の一元管理、及び社内各層における情報共有の推進

・品質監査の充実による、品質保証推進の活動形骸化の防止

・プロジェクト・マネジメントの国際的な資格である「PMP資格」の取得を推進し、有資格者によるプロジェクト管理、品質管理、及びリスク・マネジメントを強化

 

(3) 協力会社の活用に係るリスクについて

 当社グループは、顧客から受注したICTシステム開発は、多くの協力会社と協業し、推進しておりますが、協力会社との協業が計画通り推移しない場合、最先端技術を活用したICTシステムの提供や、旺盛なICT投資ニーズに応える開発体制の提供が難しくなることから、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、協力会社との円滑なアライアンス体制の維持・強化を通じて、これらのリスクの低減に努めています。

 

(4) 海外オフショア開発に係るリスクについて

 当社グループは、オフショア開発を推進することで、不足する人材顧客ニーズの一つである「開発コストの抑制」に取組んでいますが、地政学リスクや、災害、人件費の高騰等により、安定した発注が出来なくなる可能性があり、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 これらのリスクの低減を図るため、当社グループは、海外オフショア開発を推進する100%子会社「アドソル・アジア社」が中心となり、開発委託国の多様化や開発拠点の整備・拡充に継続して取り組むことで、安定した海外オフショア開発体制の維持と、最適化を推進しています。

 

(5) 情報漏洩に係るリスクについて

 秘密情報、及び個人情報の保護、並びにその漏洩対策は極めて重要な課題となっており、万が一、情報漏洩等の事故等が生じた場合、損害賠償責任や信用失墜により、当社グループの事業活動、及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 これらリスクの低減を図るため、当社グループでは、「ISO27001:情報セキュリティ・マネジメント・システム」、「JIS Q 15001:プライバシー・マーク」の各認証を取得し、運用の徹底を図っております。当社グループ社員はもとより協力会社とも連携し、開発業務に従事する技術者を対象としたセキュリティ教育や啓蒙活動により秘密情報や個人情報の安全性・信頼性の確保を図っています。

 

(6) 情報システムの障害発生にかかるリスクについて

 当社グループは、事業の特性上、多数のコンピュータ機器を利用していることから、大規模な災害・停電、システムまたはネットワークの障害、不正アクセスやコンピュータ・ウイルス等による被害が発生した場合、プロジェクトの中止や延期に伴う損害賠償責任や信用失墜により、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 これらリスクの低減を図るため、当社グループでは外部のデータセンタを活用し、データの保全、電源確保、対不正アクセス等の対策を講じています。また、セキュリティ技術に関する研究を推進し積極的な活用を図っています。

 

(7) 知的財産権に係るリスクについて

 当社グループが保有する独自技術については、特許権の取得に取組んでいることに加え、第三者の知的財産権を侵害する事態を可能な限り回避すべく特許事務所等にて適時確認をする等の最善の努力をしています。

 しかし、当社グループが事業の展開を進めている分野において既に成立している特許権の全てを検証し、更に将来どのような特許権その他知的財産権が成立するかを正確に把握することは困難であります。

 その為、現在、又は将来利用する技術と抵触する特許権等の知的財産権を第三者が既に取得している可能性も否定できず、万一そのような事態が発生した場合には、当該知的財産権侵害に関する提訴を受け、当社グループに損害賠償義務が発生する等、当社グループの経営成績、及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

 これらリスクの低減を図るため、当社グループが保有する独自技術については、特許権の取得に取組み、あわせて、第三者の知的財産権侵害を回避すべく特許事務所等にて適時確認をする施策を推進しています。

 なお、当連結会計年度末までに取得した特許(累計)は24件となっております。

 

(8) 有能な人材の確保・育成に係るリスクについて

 当社グループは、最も重要な経営資源である人材の確保、及び育成こそが企業の成長・発展の源泉であるとの方針から、有能な技術者、業務ノウハウの保有者、管理者等の確保・育成に努めています。

 有能な人材の確保・育成が著しく停滞した場合、又は、退職者が増加した場合は、受注活動の停滞やプロジェクトの進捗遅延及び中止につながり、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。これらリスクの低減を図るため、当社グループは、多様性にも配慮した積極的な採用活動(新卒・経験者)を推進し、人材確保に注力しております。また、人材育成においては、階層別・職種別の教育研修体系を整備し、年度教育計画を定め、社員一人ひとりの育成プランにつなげるなど、専門知識・実務知識や、最先端技術の習得をキャリア形成とともに育成を図っています。また、市場環境変化や技術革新を先取りする人材育成を加速させるため人財開発センターにおいて、「デジタル人材育成」に特化した育成策を推進しています。

 

(9) 労務管理に係るリスクについて

 プロジェクトにおいては、予期しえないシステム障害への対応、開発遅延対応、開発品質の低下対応等により、追加的な労働時間の発生やストレスによる健康不良等が社員の健康問題や労務問題につながり、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 これらリスクの低減を図るため、当社グループは、プロジェクト管理と連動した労務管理の徹底、有給休暇の取得推進、テレワークの奨励などの「働き方改革」に取り組み、労務環境の改善とリスク低減に努めています。

 

(10)法令遵守に係るリスクについて

 当社グループが事業活動を行うに当たり、「個人情報保護法」「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」「下請代金支払遅延等防止法」「外国為替及び外国貿易法」等の関連法令の適用を受けています。これらの法令に違反した場合、それぞれの法令で定められている罰則の適用を受ける可能性に加え、社会的信用の失墜により、当社グループの事業活動に影響を与える可能性があります。

 これらリスクの低減を図るため、法令遵守に係るリスクを的確に把握していく必要があるという認識に立ち、当社グループは次の施策により、法令遵守体制を確立・推進しています。

・企業活動を行うに当たっての基本的な方針を纏めた「企業行動規範」の制定

・企業倫理の遵守に関する説明会や階層別教育による、従業員の意識向上と周知徹底の推進

・公益通報保護や内部通報制度の確立による、小さな問題が法令等違反へ発展することの未然防止

・顧問弁護士と連携した、法的リスクの回避体制の確立

 

(11)自然災害・パンデミック発生に係るリスクについて

 地震・台風・集中豪雨等の自然災害や、感染症などによるパンデミックの発生は、プロジェクトにおける納期遅延等のみならず、当社グループの事業活動の継続そのものに多大な影響を及ぼす可能性があります。

 これらリスクの低減を図るため、当社グループは、事業継続計画にて、事業活動に中断が生じた場合でも、確実に復旧するための対応方針を定めています。

 また、当社グループでは、オリジナルのリモート開発ツールを活用することで、テレワークや分散開発を推進し、自然災害やパンデミックが発生した場合においても、システム開発への影響を抑制する効果があるものと考えております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における我が国経済は、資源・エネルギー価格や物価のさらなる上昇、慢性的な人材不足、国際情勢不安などが継続する一方、企業の設備投資やインバウンド需要の増加、個人消費の拡大などを背景に、景気は緩やかな回復基調が続きました。

 当社グループ(当社及び連結子会社)が属するICT市場においては「生産性・効率性向上のためのDX」「老朽化したシステムの刷新/モダナイゼーション」「デジタルデータを利活用したビジネスの創出」「AIを活用したサービス提供」などのテーマに対する旺盛なニーズのもと、企業の投資意欲は高水準で推移いたしました。

 当社の主要顧客(社会インフラを支える企業や、日本のモノづくりを担う先進的なインダストリー企業など)においても、これらテーマによるICTシステム投資や、当社が貢献を目指す領域(カーボンニュートラルやスマートシティ)を見据えた取組みを推進しており、引き合いは継続的に増加いたしました。

 

 このような環境下において、当社グループは、中期経営計画「New Canvas 2026(2024年3月期~2026年3月期)」のもと、中長期的かつ持続的な成長に向けた次の重点施策に取り組みました。

 

 成長事業「次世代エネルギー」の取組みとして、AIや半導体、データセンター等における電力消費量の増大が想定される中、効率的なエネルギーの利活用やGX(グリーントランスフォーメーション)に向けて「エネルギーマネジメントシステム」(可視化・分析・効率化)のコンサルティング、PoC(概念検証)に取り組み、精密機器関連をはじめとする製造業等への導入を推進いたしました。

 「スマートインフラ/スマートライフ」の取組みとしては、GIS:地理情報システムを活用し、物流配送ルート最適化や、顧客が保有する各種データの利活用コンサルティングなどを進めました。

 

 ベースロードの強化に向けては、データ利活用やDXによるビジネス変革に貢献する新サービスとして、2024年7月からクラウド移行に特化した「CloudLeap(クラウドリープ)」、アジャイル開発に特化した「AgileLeap(アジャイルリープ)」の提供を開始、2024年10月には、データマネジメントに特化した「D×DLeap(ディーディーリープ)」をリリースいたしました。2025年2月には、これら企業変革ソリューションを統括する新ブランドとして「LeapX(リープクロス)」を発表し、提案活動を推進いたしました。

 

 ビジネスエリアの拡大に向けては「名古屋オフィス」を起点とした中部地区での事業拡大(エネルギー業、製造業)に取り組みました。2024年10月には「九州支社」を移転・リニューアルいたしました。今後、半導体工場の誘致などにより電力需要の増大やICT投資の活性化等が見込まれる九州地区において、さらなるビジネス拡大に取り組んでまいります。

 

 収益力の強化に向けては、上流工程(コンサルティング)へのビジネスシフトや、AIの活用、DX/GXに対応するシステム開発体制の強化・拡大を進めました。この取組みのさらなる強化に向け、2024年9月には、当社の主要ビジネスパートナーの1社である株式会社SALTOと業務提携契約を締結し、協業体制の深化を図りました。

 

 ビジネスモデルの転換に向けては、当社オリジナル・ソリューションや次世代テクノロジーを紹介する「デジタル・イノベーション・ラボ」に加え、GIS:地理情報システムのさらなる普及と利活用を推進する「GISテクニカルセンター」等を活用したソリューション提案・共創活動に取り組みました。

 2025年3月には、SaaS型・サブスクリプションサービスの第2弾となる、AI機能を搭載した商圏分析ソリューション「DOCOYA(ドコヤ)」の販売を開始いたしました。

 

 コンサルティング強化を目指した取組みとしては、DX/モダナイゼーションによる業務効率化やビジネス変革を目指す顧客に向け、業務改革コンサルティングの提供を推進いたしました。加えて「社会インフラ特化型コンサルタント」の育成(第1期:50名)を進め、2025年1月からは、この中から対象者を選抜し、上級育成コースを実施いたしました。

 

 グローバル開発の拡大に向けては、ベトナムにおける「高度IT人材1,000名体制」を確立すべく、IT特区であるダナン市の「アドソル日進ダナン開発センタ」において、アジャイル開発に強みを持つ関連会社の「Techzen(テックゼン)社」を中核としたオフショア開発サービスの提供に注力いたしました。

 また、高度IT人材育成を図るため、ベトナム・ダナン大学との「ITトレーニングセンター」の共同運営に加え、現地での教育・研修事業を本格的に展開するための準備を進めました。

 持続的成長に向けた企業戦略としては、人的資本経営推進の一環として、全社員対象の処遇改定(2期連続・平均6%)や新卒初任給の引き上げを行いました。

 また、持続的成長の源泉となる優秀な人材の獲得に向け、採用活動(新卒・経験者)に継続して取り組み、2025年4月には新入社員49名が入社いたしました。なお、2026年4月入社の新卒採用については、70名以上を目標に掲げ、採用活動を進めております。

 

 研究開発については、当社AI研究所や100%子会社である「Adsol-Nissin San Jose R&D Center, Inc.(アドソル日進サンノゼR&Dセンタ)」を中心に、企業や研究機関との共同研究、リサーチ等に継続して取り組みました。

 産学連携活動としては、東京大学大学院工学系研究科(宇宙・衛星データ×AI)、早稲田大学(エネルギーマネジメント)、慶應義塾大学(GIS・IoT)、ベトナム・ダナン大学(メタバース×教育システム)等との共同研究を継続いたしました。

 ビジネス適用が急速に進む生成AI関連では、自社開発の生成AI「AdsolChat(アドソルチャット)」を活用した業務効率化に加え、生成AIサービスの企画・開発及びサービス化を推進いたしました。

 知的財産への取組みとして、これまでに取得した特許は、累計24件となっております。

 

 持続的成長と中長期的な企業価値の創出に向けては、2024年4月1日付で設置した「サステナビリティ委員会」のもと取組み及び開示を強化し、2024年10月には国際的なサステナビリティ評価機関 EcoVadis(エコバディス)社の調査において、評価対象企業の上位35%に与えられる「ブロンズメダル」を獲得いたしました。

 なお、14期連続増配の実績を踏まえ「日経連続増配株指数」の構成銘柄に2年連続で選定されました。

 

 以上の結果、当連結会計年度の売上高・売上総利益率・営業利益・営業利益率は、いずれも期初計画を超過、かつ過去最高を更新し、中期経営計画で掲げた業績目標(2026年3月期:売上高150億円、営業利益15億円以上、営業利益率10%以上)を1年前倒しで達成いたしました。

 売上面では、社会インフラ事業におけるエネルギー分野(電力・ガス)や公共分野、先進インダストリー事業におけるサービス分野(決済・カード)向けのDX案件などが業績をけん引し、15,463百万円(前期比9.8%増)となりました。

 利益面では、契約条件の見直しに加え、コンサルティングなど上流工程対応やベトナムにおけるオフショア開発の拡大、品質強化施策等により、売上総利益率が27.8%(前期比+0.7ポイント)と良化いたしました。また、九州支社の移転・リニューアルなど、2030年以降の持続的成長に向けた戦略投資とコストコントロールの両立に取り組んだ結果、営業利益は1,710百万円(前期比19.0%増)、営業利益率は11.1%(前期比+0.9ポイント)となりました。

 なお、当連結会計年度の受注高は15,370百万円(前連結会計年度は14,869百万円)、当連結会計年度末における受注残高は3,246百万円(前連結会計年度末は3,327百万円)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりです。

①社会インフラ事業

 エネルギー分野(電力・ガス)では、電力領域で2023年4月に開設した名古屋オフィスを起点に中部地区での営業活動を強化するとともに、受注した複数のDX案件対応を継続いたしました。また、ガス領域でも新規にDX/モダナイゼーション案件を受注し、プロジェクトを推進いたしました。

 交通・運輸分野(道路・鉄道、航空・宇宙等)では、道路・鉄道領域が拡大いたしました。

 公共分野(官公庁向け)では、安全保障システム関連や、防災関連が拡大いたしました。

 通信・ネットワーク分野では、5Gを中心とした基地局開発等に取り組みました。

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は、9,731百万円(前期比17.6%増)となりました。

 

②先進インダストリー事業

 製造分野では、スマートモビリティ(先進EVや自動運転等)が堅調に推移したことに加え、大手メーカー向けDX案件が計画どおり推移いたしました。

 サービス分野では、決済・カード領域において、顧客ビジネス拡大に向けたDX・デジタル化案件に加え、データマネジメント、デジタルマーケティングなどのデータ利活用支援、データ基盤構築案件などが拡大いたしました。

 エンタープライズ分野では、医療・ヘルスケア向け案件が堅調に推移いたしました。

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は、5,731百万円(前期比1.2%減)となりました。

 

③ソリューション事業

 「GIS:地理情報システム」「IoT空間情報」「セキュリティ」を中核ソリューションとした提案活動に取り組み、社会インフラ事業では、電力会社や自治体向けのGISソリューションが堅調に推移いたしました。

 また、先進インダストリー事業では、建設/測量コンサルティング企業向けGISソリューション、製造業・物流業向けIoTソリューションの拡大に取り組みました。

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は、1,209百万円(前期比12.1%増)となりました。

 

セグメント別売上高

事業

2024年3月期

2025年3月期

 

分 野

実績(百万円)

構成比(%)

実績(百万円)

構成比(%)

前期比(%)

社会インフラ

8,275

58.8

9,731

62.9

17.6

 

エネルギー

6,544

46.5

7,458

48.2

14.0

交通・運輸

826

5.9

838

5.4

1.5

公共

548

3.9

998

6.5

81.9

通信・ネットワーク

355

2.5

435

2.8

22.6

先進インダストリー

5,803

41.2

5,731

37.1

△1.2

 

製造

1,657

11.8

1,522

9.8

△8.1

サービス

2,755

19.6

3,078

19.9

11.7

エンタープライズ

1,390

9.9

1,130

7.3

△18.7

全社合計

14,078

100.0

15,463

100.0

9.8

(うち、ソリューション事業)

1,078

7.7

1,209

7.8

12.1

 

 

(2)生産、受注及び販売の実績

 a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメント別に示すと、次の通りであります。

事   業

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 

分   野

生産高(百万円)

前年同期比(%)

社会インフラ

7,096

15.7

 

エネルギー

5,435

12.7

 

交通・運輸

607

△3.6

 

公共

714

76.1

 

通信・ネットワーク

339

22.9

先進インダストリー

4,061

△1.8

 

製造

1,066

△6.5

 

サービス

2,184

10.1

 

エンタープライズ

811

△19.9

合 計

11,158

8.6

 (注)当社グループの生産実績の大半が提出会社によるものであるため、上記の金額は提出会社単独の金額を記載しております。

 

 b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメント別に示すと、次の通りであります。

事   業

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 

分   野

受注高

(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比

(%)

社会インフラ

9,641

6.9

2,125

△4.0

 

エネルギー

7,429

3.5

1,774

△1.6

 

交通・運輸

874

7.2

130

37.2

 

公共

927

32.6

157

△30.9

 

通信・ネットワーク

409

25.2

62

△29.2

先進インダストリー

5,729

△2.0

1,121

0.8

 

製造

1,443

△12.7

205

△25.5

 

サービス

3,100

10.8

721

3.5

 

エンタープライズ

1,185

△15.1

194

39.5

合 計

15,370

3.4

3,246

△2.4

 (注)当社グループの受注実績の大半が提出会社によるものであるため、上記の金額は提出会社単独の金額を記載しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメント別に示すと、次の通りであります。

事   業

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 

分   野

売上高(百万円)

前年同期比(%)

社会インフラ

9,731

17.6

 

エネルギー

7,458

14.0

 

交通・運輸

838

1.5

 

公共

998

81.9

 

通信・ネットワーク

435

22.6

先進インダストリー

5,731

△1.2

 

製造

1,522

△8.1

 

サービス

3,078

11.7

 

エンタープライズ

1,130

△18.7

合 計

15,463

9.8

 (注)最近2連結会計年度の主要な販売先及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次の通りであります。

 

 

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額

(百万円)

割合

(%)

金額

(百万円)

割合

(%)

三菱電機(株)

2,431

17.3

2,777

18.0

東京ガスiネット(株)

1,656

11.8

2,141

13.8

 

(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。

 尚、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

 財政状態は、次の通りであります。

 「流動資産」は、6,679百万円となり、前連結会計年度末と比べ561百万円減少しました。

 主な変動要因としては、売掛金及び契約資産が276百万円増加した一方、現金及び預金が872百万円減少したこと等によります。

 「固定資産」は、3,205百万円となり、前連結会計年度末と比べ245百万円増加しました。

 主な変動要因としては、無形固定資産が115百万円減少した一方、投資有価証券が344百万円増加したこと等によります。

 これにより、資産合計は9,885百万円となり、前連結会計年度末と比べ316百万円減少しました。

 「流動負債」は、2,215百万円となり、前連結会計年度末と比べ83百万円減少しました。

 主な変動要因としては、買掛金が42百万円増加した一方、未払金が150百万円減少したこと等によります。

 「固定負債」は、594百万円となり、前連結会計年度末と比べ16百万円減少しました。

 主な変動要因としては、退職給付に係る負債が16百万円減少したこと等によります。

 これにより、負債合計は2,810百万円となり、前連結会計年度末と比べ100百万円減少しました。

 

 「純資産」は、7,074百万円となり、前連結会計年度末と比べ215百万円減少しました。

 主な変動要因としては、その他有価証券評価差額金が228百万円増加した一方、自己株式が371百万円増加したこと等によります。

 以上の結果、「自己資本比率」は69.8%となり、前連結会計年度末と比べ0.3ポイント減少しました。

 当連結会計年度は、売上高は15,463百万円、営業利益は1,710百万円、経常利益は1,766百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は1,209百万円となりました。この分析については、当連結会計年度における重点施策の取組み状況、セグメント別ごとの経営成績の分析とあわせ、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 又、当社グループの経営方針、対処すべき課題及びその課題に対応するための事業戦略、重点戦略等については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。

 

 ② キャッシュ・フローの状況並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析

 (a)営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動によるキャッシュ・フローは1,027百万円の収入(前年同期は804百万円の収入)となりました。主な要因は税金等調整前当期純利益1,771百万円、売上債権の増加254百万円、法人税等の支払額513百万円等によるものであります。

 

 (b)投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動によるキャッシュ・フローは202百万円の支出(前年同期は71百万円の支出)となりました。主な要因は有形固定資産の取得による支出137百万円、敷金及び保証金の差入による支出83百万円等によるものであります。

 以上により、フリー・キャッシュ・フローは、825百万円の収入となりました。

 

 (c)財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動によるキャッシュ・フローは1,697百万円の支出(前年同期は364百万円の支出)となりました。主な要因は自己株式の取得による支出1,240百万円等によるものであります。

 

b.資金需要

 当社グループの資金需要として主なものは、運転資金として、システム開発のための人件費、外注費、販売費及び一般管理費としての人件費、経費等の他、研究開発投資や、M&A並びに資本業務提携といった投資戦略も資金需要の一つと考えております。

 

c.財務政策

 必要となる資金につきましては、内部資金を充当し、必要に応じて有利子負債の調達を実施することを基本としております。

 又、運転資金の調達手段の利便性確保を目的として総額700百万円のコミットメントライン契約を締結しております。尚、この契約に基づく当連結会計年度末の借入残高はありません。

 

d.経営資源の配分

 当社は、経営理念に『私たちは 「会社の発展」「社員の幸福」「株主の利益」をともに追求します』と掲げて、株主の皆さまへの利益還元を経営の重要な課題の一つとして位置付けております。

 利益配分に関しては、持続的成長と企業価値向上に向けた戦略投資を図りつつも、株主の皆様に業績に裏付けられた成果配分に加え、積極的な還元に努めることを基本方針としております。

 なお、2025年3月期の剰余金の配当につきましては、「累進かつ連続増配(1円以上の増配)」「配当性向40%以上」を前提とし、「年2回(中間・期末)」実施いたしました。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されていますが、この連結財務諸表の作成に当たっては、経営者により一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されています。

これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性が伴う為に、実際の結果は、これらとは異なることがあります。

会計上の見積りのうち、特に重要な判断を要するものは以下の通りです。

 

a. 一定の期間にわたり履行義務を充足する収益認識

「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。

 

b. 完成工事補償引当金

当社グループは、「(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項 (3)重要な引当金の計上基準」に記載の通り、工事契約における完成工事のうち、完成工事の品質に関する補償費用の支出が見込まれる場合には、当該費用見込額を完成工事補償引当金として計上しております。想定していなかった原価の発生等により、当初の見積りを超える原価が発生する場合には、親会社株主に帰属する当期純利益及び利益剰余金に影響を及ぼす可能性があります。

尚、当連結会計年度末において、完成工事補償引当金は発生していないため、連結貸借対照表に計上しておりません。

 

c. 工事損失引当金

当社グループは、「(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項 (3)重要な引当金の計上基準」に記載の通り、工事契約における未引渡し工事のうち、損失の発生が高く、工事損失額を合理的に見積ることができる工事等については、損失発生に備えるため、当該損失見込額を工事損失引当金として計上しております。想定していなかった原価の発生等により、当初の見積りを超える原価が発生する場合には、親会社株主に帰属する当期純利益及び利益剰余金に影響を及ぼす可能性があります。

尚、当連結会計年度末において、工事損失引当金は発生していないため、連結貸借対照表に計上しておりません。

 

d. 退職給付費用及び退職給付に係る負債

当社グループは、「(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項 (4)退職給付に係る会計処理の方法」に記載の通り、従業員の退職給付に備える為、当連結会計年度末における退職給付債務の見込み額に基づき、退職給付費用及び退職給付に係る負債を計上しております。

退職給付債務は、割引率、退職率及び死亡率など数理計算上の基礎率に基づき見積られております。実績と見積りとの差は数理計算上の差異として、発生年度に一括して費用処理しており、退職給付費用及び退職給付に係る負債に影響を及ぼします。この数理計算上の仮定を適切と考えておりますが、実績との差異や仮定の変動により親会社株主に帰属する当期純利益及び利益剰余金に影響を及ぼす可能性があります。

尚、退職給付費用及び退職給付に係る負債に関する見積りや前提条件については、「注記事項(退職給付関係)」に記載の通りです。

 

e. 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産についてその発生の原因ごとに回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる項目については、評価性引当額を計上しております。回収可能性の判断については、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。

将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合には、回収可能性の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、親会社株主に帰属する当期純利益及び利益剰余金に影響を及ぼす可能性があります。

尚、繰延税金資産の発生の主な原因別の内訳については、「注記事項(税効果会計関係)」に記載の通りです。

 

f. 固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、対象資産のグルーピングを行い、減損の兆候の有無を判定しております。

減損するか否かを判断するための対象資産の収益性の評価は、その時の業績等により変動するため、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合には、固定資産の減損を実施し、親会社株主に帰属する当期純利益及び利益剰余金に影響を及ぼす可能性があります。

尚、当連結会計年度において減損損失の認識はしていないため、注記に記載はしておりません。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性のあるリスクにつきましては、「3 事業等のリスク」に記載の通りであります。

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社の社名である「アドソル」は「Advanced Solution(アドバンスト・ソリューション)」を意味しております。中期経営計画「New Canvas 2026」においては「デジタル社会の“あした”をリードするイノベーションカンパニー」をスローガンとして掲げ、競争優位の発揮と事業の成長加速を基本的な方針として研究開発活動に取り組んでおります。

 具体的には、国内外の大学・研究機関との共同研究や最先端企業との連携、AI研究所や米国サンノゼ・シリコンバレーの100%子会社であるAdsol-Nissin San Jose R&D Center,Inc.(アドソル日進サンノゼR&Dセンタ)を通じた最先端技術のリサーチ、研究などを行っております。これら技術のビジネス適用により、サステナブル(持続可能)で豊かな社会の発展への貢献を目指します。また、慢性的な不足が指摘される「高度IT人材」の育成を加速させる革新的なキーテクノロジーの創造・強化・拡充、多様化する開発スタイル(ベトナムを活用したグローバルアジャイル開発など)に適応した新たなインテグレーションサービスの研究開発も推進しております。

 当社グループにおける研究開発活動は、個別の事業セグメントに特化するものではなく、事業横断的に適用可能であるため、セグメント別に分計はしておりません。

 なお、当連結会計年度における研究開発活動の総額は、159百万円であります。