第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針

 当社グループは、経営の基本理念として以下を掲げ、当社グループのサービスをご利用頂くことにより、お客様がさらに新しい夢を実現していくことが当社グループの最大の願いであり、その結果として企業価値を増大させ、株主の皆様を始めとしたステークホルダーの方々に貢献してまいります。

 1.信用リスクの引受けによる信用供与と適正な社会資源の配分を通じて、企業の新たな挑戦と活力のある社会成長に貢献します。

 2.自社の経営資源に拘らず、信頼できるパートナーとの協力と自社の専門性に基づき、常に先進的かつ夢の広がる金融サービスを創造します。

 3.自分で考え、行動でき、信頼される魅力に溢れた社員を育成し、自由な発想を活かせる企業を目指します。

 

(2) 中期的な経営戦略

昨今の倒産件数の増加や金利の上昇、労働人口の減少など外部環境の変化に伴い、保証ニーズ上昇や事務アウトソーシング志向、融資から企業間信用への移行など、当社サービスへの需要が高まってきております。また、当社内部においてはこれまで採用した人材の成長や営業基盤の拡張、当社独自の企業データベースの充実が進んでおります。こうした環境の変化は当社の今後の飛躍的な成長へのギアチェンジをはかる好機と判断し、中期経営計画「Accelerate2028」を策定いたしました。

以下の取組みにより、データベース整備を求める安定成長からリスク引受力向上と資源投入により加速度的成長へシフトさせます。

・ 充実した当社独自の企業データベースと流動化を前提とした積極的リスク引受

・ 営業資源の投入増加とデジタル化の推進による効率的な売上増加

・ 新チャネルと新商品の投入及びマーケティング強化による顧客母集団拡大

・ 既存顧客へのサービス充実等による継続率と保証増額率の一層の引き上げ

・ 周辺ビジネスを実施する企業との連携強化に伴う、顧客にとっての商品価値の向上

なお、当社の中期経営計画「Accelerate2028」については、当社ウェブサイトにて開示しております。

 

(3) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

4月に発表された内閣府の月例経済報告では「景気は、緩やかに回復しているが、米国の通商政策等による不透明感がみられる。」とされており、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されますが、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクが高まっております。加えて、物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども、我が国の景気を下押しするリスクとなっており、引き続き不透明な経済環境が続いております。

こうした環境を見据えた上で、倒産動向や経済環境の変化をより一層注視しながら慎重なリスク判断を継続したリスク受託を展開する一方で、営業効率の向上を背景としてこれまで取り込めていなかった新規顧客の取り込みを強化し、リスク引受ポートフォリオの分散を目的とした小規模な契約の契約数を増加させるとともに、今後予想される倒産件数の増加による保証サービス需要の高まりに対応すべく営業体制を強化することにより、企業活動における保証サービスの浸透を図ります。

さらに、当社グループの中長期的な業容拡大に向けて、以下の課題に積極的に取組んでまいります。

 

① 信用リスク受託規模拡大のための既存販売提携先との関係強化及び販売網拡充

 マーケットメイク機能の向上という目的のもと、分散に耐えうる大量の信用リスクを契約先から受託するため、既存の販売提携先との関係強化及び新たな販売網を拡大することにより信用リスクの受託規模拡大を図ります。現状、当社グループは本事業分野において最大規模のマーケットシェアを有しており、幅広い販売網を構築していることが競争力の源泉の一つになっていると考えております。当社グループは、既に地方銀行を中心とした全国的な販売網を構築しておりますが、提携先地方銀行との関係をより一層強化していくとともに、地方銀行以外の金融機関や様々な業態の提携先を拡大し、信用リスク保証サービスに限らず周辺事業のサービスにおいても、さらなる販売網拡充に取り組みます。

 

② 企業の信用情報データベース拡充による審査力強化及びデータベースを活用した事業展開に関する取組み強化

 当社グループは、日本国内において最大級の法人向け信用リスク保証会社であり、企業間取引における様々な情報を取得し、膨大な企業の信用情報データベースを保有する日本でも有数のビッグデータ企業であります。日々収集している動的な情報を活用し、信用リスクを定量的・定性的に分析することで、タイムリーかつより柔軟な価格や保証枠の設定を行いながら信用リスク受託に取り組みます。そのために、審査力を更に強化し、引受けた信用リスクの度合いに合わせてセグメント化した価格体系の導入に取り組んでまいります。

 さらに、日々増大する信用関連情報のデータベースを活用し、システムにより倒産確率を自動計算することで個社ごとに精緻な倒産確率を算出するなど、審査業務の自動化を推進してまいります。

 今後は、これらのデータベースビジネスを核とした成長戦略を展開するとともに信用情報データベースを活用した事業展開に関する取組みを強化してまいります。

 

③ 契約継続率及び増額率の向上

 当社のビジネスモデルはストック型であり、新規契約の獲得とともに契約数の増加に伴い既契約の維持及び既存顧客からの増額依頼を増やすことが重要となっております。従いまして、保証機能以外の付加価値を高めることや、既存顧客へのサービス充実等による顧客満足度の向上に取り組んでまいります。また、保証の周辺分野の金融サービスを提案していくことや、顧客からの要望を定期的に収集するプロセス等を用意し、既存顧客との関係強化に取り組み、契約継続率及び増額率の向上を図ってまいります。

 

④ 契約数の増加に対応するバックオフィス体制の強化及びシステム化の推進

 今後の積極的なリスク引受けに伴い、契約数が加速度的に増加することが想定されます。こうした契約数の拡大に対応するため、営業支援体制の強化やITを活用した営業体制の整備などバックオフィス体制の強化に努めます。また、支払遅延などの情報収集力の拡充と審査ロジックの整備、リスクに応じた保証料率の引き上げなどバックオフィス業務のさらなるシステム化を推進してまいります。

 

⑤ デジタル技術を活用したスムーズなサービス提供の実現

 中小企業をターゲットとして、各企業の与信管理のプラットフォームの中核として活用できるWEB商品投入による顧客基盤の拡大や審査データベース拡充を前提とした審査速度の向上を強みとして大企業・中堅企業の事務削減ニーズに対応した顧客システムとの連携体制の促進を進めるなど、異なる事業環境に置かれる様々な企業がリスクを回避したいと思った時に、いつでもどこでも当社グループのサービスを利用できるようサービス全体のデジタル化をより一層進め、付加価値の高いサービスを実現できる環境づくりに努めてまいります。

 

⑥ 営業資源の増加及び営業活動の効率化による顧客の裾野拡大

 今後予想される保証サービスへの需要の高まりに備え、営業人員を増加させ、集中的な研修の実施や標準的な販売方法の導入を行うとともに契約傾向分析から契約に至るパターン分析及び営業の「型」の浸透とデジタル化を進めることで早期戦力化を図り、営業資源の増加に取り組みます。また、営業効率の向上を背景としてこれまで取り込めていなかった新規顧客の取り込みを強化し、企業活動における保証サービスの浸透を図ります。

 

⑦ 保証対象債権の拡大

 企業間取引の信用リスク受託220兆円に加え、クラウドレンディングやクラウドファンディングを含む直接金融252兆円、融資等の間接金融526兆円の分野の保証なども企業間取引のリスク受託の対象とし、保証対象債権の拡大を図ります。また、国内に留まらず海外での保証事業や各国間のリスク引受けの仲介など、総合商社が設立母体となっている強みを発揮し、海外展開も視野に入れてまいります。

 

⑧ 周辺事業への進出

 既存金融機関や多様な企業との協業による債権買取等の資金化ニーズへの対応やリアルタイムの融資可否の判断、入金の管理督促業務、システム連動による取引金額管理など幅広いアウトソーシングニーズに対応したサービス展開を行うことにより、信用情報データベースの利用方法の拡大を通じて新たな価値創造を行います。また、請求書発行事業、M&A仲介をはじめとするマッチング事業など企業間取引の信用リスク受託のノウハウを活用できる周辺分野への参入も視野に入れ、事業規模を拡大してまいります。

 

⑨ 株主還元強化と資本効率向上

 当社グループは、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要な課題の一つと位置付けており、配当性向50%以上を目標としたうえで、増配もしくは配当の維持を行う累進配当を継続して実施する方針としております。また、財務指標としてROE及びROIC20%以上を目標として掲げておりますが、更なる株主還元の強化と資本効率向上を目的として継続的かつ機動的な自己株取得を行うべく、2028年3月期末までの間に100億円の自己株式取得を実施することで、目標とする財務指標を達成するとともに、DOEの継続的な向上を目指してまいります。

 

⑩ 成長投資の拡大

 企業間取引のクレジットリスク受託の潜在市場に対する当社グループの現在の浸透度は約10%未満となっており、膨大な市場の開拓余地が存在しております。従いまして、残り約90%以上のマーケット開拓を実現すべく、積極的に営業人材への投資やIT・DX投資を徹底して行います。また、企業間取引のクレジットリスク受託が広く認知されるよう新たな提携先との新商品投入やマーケティング強化により、顧客母集団の拡大を図るとともにブランド構築のための投資も行ってまいります。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、事業の成長性と収益性を重視する観点から、連結経常利益を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として位置付けております。当連結会計年度における経常利益は5,203百万円となり、経常利益目標5,200百万円を達成し、上場以来19期連続の目標達成となりました。引き続き当該指標の向上に取組みます。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。
  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する基本方針

 当社のサステナビリティに関する基本方針及び取組については、当社ウェブサイトにて開示しております。

 「サステナビリティ」(https://www.eguarantee.co.jp/sustainability/)

 

(2)ガバナンス及びリスク管理

 当社は、サステナビリティに関する重要事項に関して、経営会議においてリスクと機会の両方の観点から審議・議論し、取り組みを推進しております。取締役会は経営会議での審議結果の報告を受け、サステナビリティ関連のリスクと機会の観点を含め対応方針及び実行計画等に関して、審議・承認を行うとともにサステナビリティ関連の問題に対する目標の進捗状況について管理・監督することでサステナビリティ関連の機会を識別、評価及び管理しております。また、監査役は取締役会への出席を通じて、サステナビリティへの考え方・取組を監査しております。なお、当社の社外取締役及び社外監査役はサステナビリティに関する取組みを推進している大手企業において、管理職や経営経験を有する者も多く、サステナビリティに関するリスクと機会に対応する戦略を管理・監督するために適切なスキルや能力を備えているものと判断しております。

 当社のリスク管理体制は、経営管理部を主管部署とし、取締役及び経営幹部間においてリスクと機会の両方を共有し、各部署に対して社長より周知徹底を図っております。

 

(3)戦略、指標及び目標

① サステナビリティ

 当社は、企業の信用リスクの受託と流動化の事業活動を継続することで、各産業への信用供与と適切な社会資源の配分を実現し、活力ある豊かな社会づくりに貢献していくことをサステナビリティの基本方針として掲げております。具体的な取り組みとして、環境面では太陽光や風力などの再生可能エネルギーに関わる商取引を保証することにより、環境問題の解決を間接的に推進しております。例えば、太陽光パネルの設置工事を行う企業が太陽光パネルをメーカーから購入するときに、メーカーの信用リスクを自社で抱えることができず、購入を控えるケースがございますが、その際に当社がメーカーの信用リスクを受託することにより、設置工事を行う企業が太陽光パネルを仕入れやすくなり、太陽光発電事業の推進につながっております。

 また、社会とのつながりでは、健康と福祉の観点から、病院や社会福祉法人との商取引を保証することにより、介護・高齢者福祉等の社会問題の解決に貢献しております。社会福祉事業は各地域の中小企業が多く取り組んでおりますが、介護ビジネスを担う中小企業は設備投資や人件費等の増加により資金繰りが逼迫している企業も多く、こうした企業の信用リスクを当社が受託することで、資金繰りの支援を間接的に行っています。また、地方創生にも信用リスクを受託することで貢献しています。具体的には、ここ数年EC市場の拡大により各地域の企業と都市圏や県外の企業との直接取引が増加する一方で、各地域の企業では県外の取引先の信用リスクを調べることができず、未回収となった債権を回収するコストも大きくなっています。こうした課題を当社が信用リスクを保証という形で受託することで、回収コストを引き下げるとともに、各地域の企業の商取引の選択肢を広げ、地域社会の発展に貢献しています。また、ベンチャー企業等の信用リスクを受託することで、ベンチャー企業等の成長をサポートしております。

 当社はこうしたサステナビリティに関わる保証債務を指標として開示しており、2025年3月末時点で合計4,400億円の保証を実施しております。

 

② 気候変動リスク

 気候変動への対応につきまして、「3 事業等のリスク (3) 気候変動に関するリスクについて」に記載の通りですが、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」が提言するフレームワークを活用した情報開示を行っており、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

 

(4)人的資本に関する戦略、指標及び目標

① 方針

 当社は、当社が掲げる3つの経営理念の1つである「自分で考え、行動でき、信頼される魅力に溢れた社員を育成し、自由な発想を活かせる企業を目指します。」を体現するため、主体的に自身の能力開発に取り組み、当事者意識を持って日々の業務に向き合う社員の育成を図っております。当社では、マネジメントに必要な3分類のスキル(コンセプチュアルスキル、ヒューマンスキル、テクニカルスキル)習得を重視しており、全社員がスキルを習得できるための研修制度を設けております。

 

② 制度

 雇用、価値観、ライフスタイルなど、多様化が進む社会において、当社はダイバーシティの推進に取り組んでおり、バックグラウンドの異なる個々人が互いを認め合い、活躍できる会社を目指し、制度や文化の醸成に努めています。当社の社内環境整備としては、育児休業制度、介護休業制度、短時間勤務制度などといった、社員各々のライフステージに応じた柔軟な働き方を選択できるワークライフバランスに関する制度を設けております。

 

③ 指標及び目標

 管理職登用において多様性を確保していくため、管理職候補となる女性労働者について、年齢に関わらず積極的にその才能を見出し、管理職として抜擢していくこととし、2027年3月期末までに課長以上の管理職の女性労働者を2023年3月期初(6名)比で5人以上増やすことを目指しており、2025年3月期末時点において7名となっております。また、社員の心と身体の健康づくりに向けた保健指導やメンタルヘルス対策、有給取得率の向上を推進することにより、社員のエンゲージメントとモチベーションの向上に繋げ、会社組織の活性化を図ってまいります。

 

 

 

3 【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 当社グループの収益構造について

当社グループは、事業会社及び金融機関等の顧客から得る保証料を売上高として計上する一方、リスク移転先である金融機関等に支払う費用を原価として計上しており、これらの差額が当社グループの利益となっております。

① 原価の上昇について

当社グループがリスク移転先に支払う費用は、複数年にわたる保証履行実績により決定されているため、一時的に多額の保証履行が発生した場合であっても、短期的な原価の上昇要因とはなりません。一方で、リスク移転コストは1年契約の間は原則変わらないため、保証料率の低下時には利益率が短期的に悪化し、当社グループの業績に影響を及ぼすことも考えられます。また、継続的に保証履行が多発するような景気悪化時には、顧客の保証に対するニーズも高まることから、経済情勢を踏まえ、顧客からの保証料に価格転嫁しますが、価格転嫁が十分に進まない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

② リスク移転について

当社は、信用リスクを受託した債権の保証履行リスクをヘッジするために金融機関等にリスク移転を行っております。そのため、当社がリスク移転を依頼している債権について想定を超える著しい信用力低下や保証履行が生じた場合又はリスク移転先である金融機関等が債務不履行等のリスク移転を引受けることが困難となるような状況となった場合には、想定通りのリスク移転を行えない可能性があります。このような場合には、売上高の減少や原価率の上昇が生じる可能性があり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 自己による信用リスクの保有について

当社は、クレジット・リンク・ファンド1号合同会社(当社が57%を出資している連結子会社であるクレジット・リンク・ファンド1号匿名組合の営業者)、クレジット・インベストメント1号合同会社(当社が82%を出資している連結子会社であるクレジット・インベストメント1号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ1号合同会社(当社が51%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ1号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ2号合同会社(当社が55%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ2号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ4号合同会社(当社が50%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ4号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ5号合同会社(当社が60%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ5号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ6号合同会社(当社が51%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ6号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ7号合同会社(当社が51%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ7号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ8号合同会社(当社が51%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ8号匿名組合の営業者)、クレジット・ギャランティ10号合同会社(当社が51%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ10号匿名組合の営業者)及びクレジット・ギャランティ11号合同会社(当社が51%を出資している連結子会社であるクレジット・ギャランティ11号匿名組合の営業者)をリスク移転先に加える等により、一部の信用リスクを自己で保有しております。

2025年3月末現在の信用リスク受託による保証債務のうち、売掛債権保証サービスに係る保証債務は826,010,006千円であります。これに係る保証債務のうち、当社グループでリスクを保有している売掛債権保証サービスに係る保証債務は132,560,859千円であります。

これらへ流動化する信用リスク及び自家保有を行う信用リスクについては、他のリスク移転先と同様、一定の基準を設けたうえで極度に損害率が悪化しないよう対策を実施しております。しかしながら、想定を超えて保証履行が多発した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 競合等について

当社グループが行っている事業法人向け売掛債権保証サービスと類似した債権保証に係るサービスとして、大手金融機関系ファクタリング会社が提供している保証ファクタリング、損害保険会社が提供している取引信用保険等のサービスがあります。

当社グループのサービスは、金融機関等への流動化、分散機能を活用することにより、引受ける保証対象企業の範囲、保証限度額等に幅広く対応できる点から優位性を有しております。また、金融債権や請負債権など単純な売上債権以外も保証対象とする対象債権の範囲の広さからも他の金融機関が提供しているサービスと比較して、優位性を有しているものと認識しております。

ただし、大手金融機関系ファクタリング会社、損害保険会社は、知名度、信用力等の面で、当社グループと比較して優位な立場にあります。従ってこれらの金融機関と競合する場合、営業推進の上で不利な立場におかれる可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼすことも考えられます。

また、今後において他金融機関が同サービスの開発により新規参入することで競争が激化する可能性も考えられます。そのため、当社グループがより一層顧客ニーズにあった商品開発ができず、相対的に当社グループの競争力が低下し、新規契約率の低下や既存顧客が流出した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (3) 気候変動に関するリスクについて

気候変動への対応につきましては、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」が提言するフレームワークを活用した情報開示をいたしております。今後もTCFD提言に沿った気候変動関連情報の開示を進めることで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

当社は、経営に関する重要事項を審議及び検討し、協議した結果を踏まえ、社長が決定することを目的として取締役を構成員とする経営会議を開催しておりますが、気候変動への対応についても、経営会議において審議・議論し、特定されたリスクや機会への対応策検討、CO ₂排出量の削減等の取り組みを推進していきます。取締役会は、経営会議で審議された重要事項について報告を受け、気候変動への対応方針および実行計画等についても審議・監督を行っていきます。

当社グループでは、TCFD 提言にて例示されている気候変動がもたらすリスク・機会を元に、シナリオ分析を実施しました。

シナリオ分析においては、2℃以下シナリオを含む複数の温度帯のシナリオを選択、設定していく必要があるため、移行面で影響が顕在化する1.5 ℃シナリオと物理面での影響が顕在化する4℃シナリオの2つのシナリオを選択しました。


当社のリスク管理体制は、経営管理部を主管部署とし、取締役及び経営幹部間において各種リスクを共有し、各部署に対して社長よりリスク管理について周知徹底を図っております。

気候変動に関するリスクについては、気候変動によって受ける影響を把握し評価するため、シナリオの分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しました。特定したリスク・機会は経営管理部を中心とする推進体制のもと経営会議において審議・議論し、リスク管理の状況や重大なリスクの判断に関しては、取締役会への報告・提言を行ってまいります。

当社におけるGHG排出量については、当社ウェブサイトを参照ください。

また、当社では、Scope2のGHG排出量について、2030年度に実質ゼロの目標を設定しました。GHG排出量の削減にあたっては、社内の省エネ、節電を心掛けるとともに、化石燃料を用いない再生可能エネルギー等を活用した脱炭素社会の実現を目指していきます。

 

 (4) 災害等が発生する可能性について

東京本社において大規模な震災や火山の噴火あるいはテロ攻撃等の災害が発生し、本社機能が実質的に停止に陥った場合、当社グループの財政状態、経営成績に重要な影響を与える可能性があります。対策として、災害対応能力向上のために体制整備を図るとともに初動対応訓練を実施することで災害リスクの軽減を図るように努めております。

 

(5) 情報管理について

当社グループは、保証サービス事業を通じて顧客の機密情報並びに企業情報、信用情報を入手する場合があります。当社グループはこれら情報の機密を保持し、セキュリティを確保するために最新のセキュリティソフトの更新や、担当別、役職別の管理システムへのアクセス制限など必要な措置を講じております。しかし、かかる措置にもかかわらずこれら情報が漏洩した場合には、当社グループの社会的信用に影響を与え、業績悪化を招く可能性があります。

 

 (6) 紛争が発生する可能性について

当社グループの展開する保証サービスは、保証対象先の倒産等に伴う債務の支払いリスクを複数の金融機関等に分散し、移転しております。その際、リスク移転先とリスク移転契約を締結しており、取引上のトラブルの未然防止に努めておりますが、契約書等の不備などにより、取引関係の内容、条件等に疑義が生じたり、これをもとに紛争が生じる可能性があります。

 

(7) 法的規制について

当社グループの業務内容である売上債権の保証は、「保険業法」上の「保険保証業務」に該当しないため、同法の規制を受けていないものと判断しております。また、「債権管理回収業に関する特別措置法」上の「債権管理回収業」及び「金融商品取引法」上の「金融商品取引業」にも該当せず、同法の規制対象となっておりません。このように、当社グループの業務は、いわゆる業法上の法的規制の対象となっていないため、当社グループはこれらの法令に基づく関係監督庁への届出、許認可の取得等を行っておりません。

ただし、今後、当社業務について新たな法的規制の制定、外部環境の変化等に伴う現行法の解釈の変化、又は他社が提供している業務に係る規制緩和等が生じた場合には、当社グループのビジネスモデルの変更、競合の激化等により、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりとなりました。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の企業倒産件数は前年度比13.4%増加の10,070件(帝国データバンク調べ)となり、負債5,000万円未満の倒産が2000年度以降で最多となるなど、中小零細規模の倒産が増加いたしました。物価高、人手不足、コロナ支援策の縮小などを受け、企業倒産件数は2022年5月以降、35ヵ月連続で前年同月比増加となっており、金利上昇や金融機関の融資姿勢の慎重化、米国の通商政策の影響等により、今後も中小企業を取り巻く経営環境は厳しく、企業倒産件数は増加基調が続く見通しとなっております。

このような環境下、信用リスク保証サービスは引き続き堅調に推移いたしました。市場競争力を向上させるべく、販売提携先の拡充や営業人員の増加などにより、営業資源の拡大を図ることで新規顧客の取り込みを強化してまいりました。

 

[財政状態]

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ9.6%増加し、33,014,129千円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べ5.8%増加し、18,907,097千円となりました。これは、現金及び預金が1,271,441千円増加したことなどによります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べ15.3%増加し、14,107,032千円となりました。これは、投資有価証券が1,677,871千円増加したことなどによります。

負債合計は、前連結会計年度末に比べ10.7%増加し、6,622,796千円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べ10.9%増加し、6,507,514千円となりました。これは、前受金が266,317千円増加したことなどによります。

固定負債は、前連結会計年度末と同額の115,282千円となりました。

純資産合計は、前連結会計年度末に比べ9.4%増加し、26,391,332千円となりました。これは、利益剰余金が1,821,933千円増加したことなどによります。

 

[経営成績]

当連結会計年度末における保証債務は826,010,006千円(前年同期比9.9%増加)となりました。倒産件数の増加を保証料率に反映した値上げ、新規契約の堅調な増加、および既存顧客における保証利用額の増額(保証企業の追加または保証限度額の増額)の影響により、売上高は10,224,244千円(前年同期比11.6%増加)となりました。上半期を中心として倒産件数の増加に伴った保証履行が増加した結果、売上総利益は7,818,743千円(前年同期比6.1%増加)となりました。また、営業利益5,103,513千円(前年同期比5.2%増加)、経常利益5,203,026千円(前年同期比6.1%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益3,491,021千円(前年同期比7.0%増加)となりました。

 

なお、保証債務の推移は以下の通りであります。

(単位:千円)

 

第23期
(2023年3月期)

第24期
(2024年3月期)

第25期
(2025年3月期)

売掛債権保証サービスに係る保証債務

681,320,563

751,842,150

826,010,006

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ2,971,441千円増加し、11,215,316千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

営業活動の結果増加した資金は4,101,741千円(前連結会計年度は3,132,049千円の増加)となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益5,165,256千円等であります。

 

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

投資活動の結果増加した資金は311,334千円(前連結会計年度は4,284,768千円の減少)となりました。主な増加要因は、定期預金の払戻しによる収入1,700,000千円等であります。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

財務活動の結果減少した資金は1,441,634千円(前連結会計年度は1,330,795千円の減少)となりました。主な減少要因は、配当金の支払額1,670,190千円等であります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

該当事項はありません。

 

b. 受注実績

該当事項はありません。

 

c. 販売実績

当社グループの事業は、「信用保証事業」のみの単一セグメントにより構成されております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における業績は、売上高10,224,244千円(前年同期比11.6%増加)となりました。また、営業利益5,103,513千円(同5.2%増加)、経常利益5,203,026千円(同6.1%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益3,491,021千円(同7.0%増加)となりました。その他の財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しています。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況及び②キャッシュ・フローの状況」に記載しています。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、リスク移転先への支払保証料、販売チャネルへ支払う諸手数料、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、投資有価証券の購入によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。当社の事業の性質上役務提供前にその対価を収受するものとなりますので、基本方針に沿って財源を確保しております。よって、運転資金は自己資金としております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 4.会計方針に関する事項」及び「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載の通りですが、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に保証履行引当金、賞与引当金、税効果会計であり、継続して評価を行っております。これらの見積り及び判断・評価につきましては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる可能性があります。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。