当社グループでは、長年培った自社通信技術を基礎として「モバイル・ワイヤレスコミュニケーションのパイオニア(先駆者)」として成長を続けつつ、より良い製品・サービスを提供することによって経済社会に貢献していくことを社是としております。
また、当社グループの提供する通信技術・製品が、人と人とのコミュニケーションだけでなく、人と機械、あるいは機械と機械の通信に幅広く使われること、また、コミュニケーションの円滑化を通して実りある豊かな社会が創造されることを願い、『新しい「伝わる」と新しい「つながる」でつぎの「楽しい」を創る』を経営理念として掲げております。
当社グループでは、高付加価値による収益性の高い企業を目指しており、経営指標としては売上高、営業利益率及び時価総額を重要な経営指標として考えております。
また、M&A等の投資につきましては、グループ戦略上の意義と回収の態様、そして回収期間を明確にしてガバナンスを効かせることによりバランスを図っております。
当社グループでは、技術開発力に裏打ちされたデバイス製品だけではなく、サーバーや管理システム、さらにはエンドユーザーに対するアプリケーションをワンストップで提供することにより、IoT市場全体をカバーすることで、高い収益性を維持し、また会社財産の安定性を確保した経営を行っております。
加えて、今後の社会環境の変化を見据え、企業としての社会的責任を果たし、早期の営業黒字化と新たな収益の柱となる事業拡大を行うため、IoT関連事業主体の現在の事業モデルから、成長分野へ大きく事業展開を行う施策を講じてまいります。
なお、中期的経営戦略において注力すべき事項は以下のとおりであります。
① 付加価値の最大化
・株主、社員への利益還元の拡大
・企業価値の増大
② 収益性の向上
・現在の成長の維持と管理コストの比率の低減
・グループ連携をした、高付加価値サービスの創造
③ コアコンピタンスの強化
・ネクスコインの価値向上によるネクスコイン経済圏の拡大
・成長分野であるメタバース・デジタルコンテンツ事業の拡大
・モバイル通信技術の資産応用により、AI・VRなどの最新技術を取り入れたIoTデバイス及びサービスの開発
④ 事業シナジーの追求
・「ブロックチェーン」、「トークン」、「メタバース」を掛け合わせた、Web3.0サービスの提供
・IoTの戦略資産に、「メタバース」などの新たな強みを加えた「デジタルツイン」市場での展開
「メタバース」市場規模は、アメリカの市場調査及びコンサルティング会社のEmergen Researchが、「世界のメタバース市場規模は2020年に476.9億米ドルに達し、2028年までには8,289.5億米ドルへ拡大するだろう」との予想を発表するなど、成長性が非常に高く注目されている市場です。しかし、日本国内での「メタバース」はまだ黎明期と言える状態にあります。黎明期は、メタバース参入企業向けの「インフラ」「サービス・コンテンツ」の開発需要に応えながら、ユーザー体験をサポートする機器(モーショントラッキング)などを提供することで、市場の成長を後押しすることが重要だと考えます。
また、「デジタルコンテンツ」市場は、日本国内において2022年に10兆1,545億円(前年比104.7%)の規模に達し、前年を上回る順調な成長を見せました。これにより、コンテンツ市場全体に占める割合も76.5%と4分の3を超える規模となっております。
電子書籍市場は、2023年5月には新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行され、消費者の余暇の過ごし方がホームエンターテインメントからリアルへ変化したことにより、コロナ禍における特需はなくなりましたが、前年比7%の成長を記録しました。特にマンガ分野は市場の8割以上を占め、国内外で注目を集めており2025年度は日本のマンガを扱う海外事業者がさらに増える見込みです。
さらに、このような成長分野の両市場を下支えする技術として、IoTの整備が重要と捉えております。
当社グループは営業利益黒字化並びに売上拡大を目指すことが当面の対処すべき課題であると認識しており、以下に示す取り組みを推進してまいります。
① IoT関連事業の拡大
IoT市場の成長にあわせ事業拡大を図るとともに、注目の高いAIを活用した画像認識分野、自動車テレマティクス分野、フィンテック分野(ブロックチェーン、暗号資産関連)のサービスの拡大を目指します。
② 新たな事業収益の確保
新たな収益の柱となる成長分野へ進出をしてまいります。M&Aなどにより、すでに一定の利益の確保ができている新規事業へ参入することで、事業収益性の強化を図ります。
③ 財務体制の強化
今後の成長に向けた各種資本政策を推進してまいります。
④ 事業ポートフォリオの分散化
今まで培ってきた通信機器開発のノウハウをベースに異業種へのIoT化を推進してまいります。あわせて、通信機器ハードのみの提供に限らず、ソフトウェアを含めたトータルソリューションの提供を目指します。
⑤ ブランドイメージ戦略
積極的な広報活動の推進を行ってまいります。
当社は「効率的で快適な社会の発展に貢献する」ことを企業理念として掲げており、これは2015年に国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の目的である持続可能な社会の実現に一致していると考えます。当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
当社のコーポレート・ガバナンス体制は、「
当社グループは、持続的成長と企業価値向上にあたり、人材は最も重要な経営資源と考えております。従って、多様性に富んだ優秀な人材を積極的に採用し、事業の成長に主体的に取り組める人材の確保と継続的な雇用の創出に努めております。
当社グループの全社的なリスクに関する課題・対応策を審議・承認する会議体として、代表取締役社長を委員長としたコンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、毎月1回開催される経営会議と同時に開催しております。当社のリスク管理体制については、(1)同様、「
当社は「(2) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略」について、本報告書提出日現在において、当該方針についての具体的な指標及び目標を設定しておりません。今後、関連する指標のデータ収集及び分析を進め、開示項目を検討してまいります。
当社グループの事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項について記載しております。また、当社グループは、当社グループでコントロールできない外部要因や、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても投資判断上重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から、以下に開示しております。
以下の記載は当社株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありません。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
① 研究開発型企業であることについて
当社グループには研究開発型企業が存在するため、常に新しい技術をグループ内に蓄積していくことが競争力の源泉となります。このため、優秀な技術者の確保と育成が困難になった場合、または優秀な人材が流出した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
対応策として、当社では技術者の保有スキルの社内標準化、継続的な技術者の採用活動に注力しております。
② ファブレス経営について
当社グループは、モバイル通信機器等の製造の大部分を外部にアウトソースしております。このため、アウトソース先企業の経営状況や当社グループによる今後のアウトソース先の開拓、維持及びグループ内製造の対応の状況が、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
対応策として、製品ごとにアウトソース先を変更するなどの対応を行いリスクの分散化を図っております。
③ モバイル通信機器需要の変動について
当社グループが開発、製造しているデータ通信端末などのモバイル通信機器は、製品間の競争が激しく、技術の進化、競合製品の状況等により需要動向が大きく変動する傾向を有しております。また、短期間で新製品が投入されるという性質を持っております。当社グループでは、ファブレス経営により需要の変動に対応していく方針でありますが、現時点において当社グループが開発、製造する製品数は少なく特定の製品に依存しているため、競合会社の事業戦略や顧客ニーズの変化等によるモバイル通信機器の需要動向の大幅な変化や販売価格の低下等により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
対応策として、陳腐化しにくい付加価値をつけた機器の開発や、ソフトウェアサービスの開発にも注力をしております。
2024年11月期において、TRICHEER TELECOMMUNICATION LTDへ当社グループの主要なモバイル通信端末の製造をアウトソースしております。当社グループと同社の取引方針の変更や生産体制の変更等が、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、研究開発型企業として複数の知的財産を保有し、特許権の出願及び登録、意匠権・商標権の登録を行っております。当社グループは、当社グループの開発、製造する製品が第三者の知的財産権を侵害することがないよう努めており、現時点において侵害はないものと認識しております。ただし、将来において第三者の知的財産権への侵害が生じてしまう可能性は否定できません。当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合、損害賠償請求、信用低下、企業ブランド価値の劣化などにより、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの知的財産権が第三者によって侵害された場合には、侵害者に対する訴訟やその他防衛策を講じるために経営資源を割くことを余儀なくされ、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、モバイル通信機器の開発、製造を行っており、製品に不具合が生じた場合、製品の回収や修理が必要となり、製品の欠陥が理由で事故が生じた場合、製造物責任法(PL法)により損害賠償請求を受ける可能性があります。
当社グループでは、こうした不具合又は事故が生じないよう、外注先、仕入先の管理を含め品質管理体制の整備、安全性の向上、法令遵守を推進することに加え、事故が生じたときのために製造物賠償責任保険(PL保険)に加入しております。しかしながら、当社グループの予見できない事由により、重大な不具合やPL法に抵触する事態が生じた場合、回収・修理費用、損害賠償の負担、当社グループに対する顧客企業及び社会全般からの信用低下、企業ブランドの価値劣化などにより、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、モバイル通信機器の販売・サポート等に関連して、また提供するサービスにおいて個人情報等を保持しております。当社グループでは、取得した個人情報等の外部漏洩を防止するため、個人情報へのアクセス制限、定期的な内部監査による内部統制の強化などにより十分な注意を払っておりますが、個人情報の漏洩が生じた場合、法令違反、顧客企業との契約上の守秘義務違反を引き起こす可能性があります。こうした事態が発生した場合、顧客企業等からの損害賠償請求や、当社グループに対する顧客企業及び社会全般からの信用低下、企業ブランドの価値劣化などにより、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
株式会社シークエッジ・ジャパン・ホールディングスは本報告書提出日現在において、当社の議決権総数の45.90%を保有しており、当社のその他の関係会社に該当いたします。
当該会社の経営方針の変更等が、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは価格競争力及び収益力の向上等を目的として、海外メーカー等に当社グループ製品の一部を生産委託しております。そのため外貨建ての取引が為替相場の変動による影響を受けることとなります。為替予約等の活用や商品ポートフォリオの組み換え等により影響の軽減に努めておりますが、今後の取引の状況及び為替相場の動向により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、海外または日本の法規制や政策の変更等により、送金が円滑に行い得ない状況となった場合には、当社グループの業務、会計処理に影響を受ける可能性があり、その結果、当社グループの経営成績・財政状態に影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、今後の事業拡大のために、国内外を問わず設備投資、子会社設立、合弁事業の展開、アライ
アンスを目的とした事業投資、M&A等を実施する場合があります。
当社グループといたしましては、投融資案件に対しリスク及び回収可能性を十分に事前評価し投融資を行って
おりますが、投融資先の事業の状況が当社グループに与える影響を確実に予想することは困難な場合もあり、投融資額を回収できなかった場合、当社グループの経営成績・財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、暗号資産運用のリスクとして、暗号資産の価格変動や、暗号資産市場の混乱等で暗号資産市場において取引ができなくなる、または通常より不利な取引を余儀なくされることによる損失リスクや、暗号資産のデリバティブ取引システムの障害、暗号資産取引所のシステムの障害及び経営破綻、サーバーへの不正アクセスによる盗難等があります。当社においてはリスク管理を徹底しておりますが、万が一これらのリスクが顕在化した場合には、対応費用の増加、当社への信用の低下等が発生する可能性があり、当社の経営成績・財政状態に影響を受ける可能性があります。
倉庫等の周辺地域において、大規模な自然災害や事故等が発生し、同施設等に物理的な損害が生じ、販売活動や流通・仕入活動が阻害された場合、また人的被害があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
対応策として、当社ではあらゆる事象を想定した初動対応と事業継続計画(BCP)を策定し、危機に備えております。
経営成績等の状況の概要
当連結会計年度におけるわが国経済は、経済活動の正常化が進み、景気は緩やかな回復基調で推移しました。しかしながら、欧米・中国経済の先行き不安、さらには物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動などにより、依然として不透明な状況が続いております。
このような事業環境において、当社グループでは、2023年4月に中期経営計画を策定し、成長ドライバーとなる事業の拡大として、メタバース・デジタルコンテンツ事業の拡大、M&Aによる収益力の強化に向けて取り組みを進めております。
2024年5月には、収益力強化の一環として、外食産業、コスメティックショップ等の小売事業等に強みを持つ総合商社である株式会社ケーエスピー(以下「ケーエスピー」)を子会社化し、新たな事業セグメントとして「ソリューション事業」を開始いたしました。また、同年7月には、メタバース・デジタルコンテンツ事業の事業拡大のため、コミッション*1プラットフォーム『Skeb』を運営する、株式会社スケブ(以下「スケブ」)を子会社化いたしました。
*1 「コミッション」とは、クリエイター(創作者)にクライアント(依頼者)が作品制作を有償で依頼することです。
上記2社のM&Aにより、売上高は大幅に増加しましたが、一方で保有する暗号資産のうち活発な市場が存在しない暗号資産の評価損を「売上原価」として計上したこと、M&Aを行った各社における初年度の営業利益が、のれん償却額を下回った結果、営業損失を計上しております。
上記の結果、売上高においては、2,130百万円(対前期比145.8%増)となりました。それに伴い、営業損失は246百万円(前期は営業損失211百万円)、経常損失は230百万円(前期は経常損失150百万円)、税金等調整前当期純損失は258百万円(前期は税金等調整前当期純損失630百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失は289百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失657百万円)となりました。
当連結会計年度におけるセグメントごとの業績は以下のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較及び分析は変更後の区分に基づいて記載しております。
株式会社実業之日本デジタル(以下「実日デジタル」)は、いわゆる電子書店(電子書籍配信サイト、Web漫画サイト、漫画アプリ、雑誌読み放題サイトなど)及び電子取次が主な取引先となります。コロナ禍における巣ごもり需要が一巡したものの、電子書籍市場は引き続き堅調であり、同社のロングセラー作品である『静かなるドン』(作:新田たつお)をはじめとする漫画の優良コンテンツが売上を牽引しております。『静かなるドン』については新たな読者層の獲得を目的として、2023年7月から「ボイスコミック」という手法でYouTube公式チャンネルをリリースし、2024年6月にはチャンネル登録者数が10万人を突破しました。登録者数が10万人を突破したチャンネルは全体の1%以下と言われており1年未満で到達する事ができました。
2024年12月には韓国のスタジオと共同でWebtoon版『親分には二つの顔がある 静かなるドン韓国リメイク版』の公開も開始いたしました。今後も『静かなるドン』については、さらなる増売施策の実施と、新規読者獲得の2軸を進めてまいります。
スケブでは、提供するサービス『Skeb』で利用できるSkebポイントのチャージ方法に、新たにクレジットカードが加わりました。これにより、Skebポイントのチャージ方法は、クレジットカード、銀行振込、コンビニ決済、Pay-easy、au PAY、Alipay、WeChat Pay、Kakao Pay、GCash、DANA、Touch'n Go eWalletから選ぶことが可能となり、ユーザビリティが高まることが期待できます。総登録者数も345万人(2024年12月31日時点)を超え、さらなる成長を目指してまいります。
実日デジタル及びスケブの営業損益は黒字の一方で、のれんの償却を加味した営業損益は、マイナスとなっておりますが、当連結会計年度は想定どおり成長しており、今後も各取り組みを遂行していくことで、のれんの償却を加味した営業損益の早期の黒字化を目指してまいります。
この結果、当連結会計年度の売上高は316百万円(対前期比114.1%増)、営業損失は5百万円(前期は営業損失1百万円)となりました。
(IoT関連事業)
株式会社ネクス(以下「ネクス」)は、培ってきた自動車テレマティクスをはじめとする様々な分野に対するIoT技術をベースに「IoT×ブロックチェーン技術」、「IoT×AI技術」など、「IoT×新技術」を活用した新たなサービスの提供を目指しております。
AIコンピューティングの分野で様々なプラットフォームを提供しているNVIDIA Corporationが提供するGPU(画像処理やディープラーニングに不可欠な並列演算処理を行う演算装置)を利用したリアルタイム画像認識技術と、マルチキャリア対応の高速モバイル通信技術を搭載した、NCXX AI BOX「AIX-01NX」は、AIソリューションパートナー及び技術パートナーとの共創によるビジネス機会の拡大を進めております。
店舗でのリテールテックや空港等でのヒートマップ解析、侵入検知といった屋内利用から、公共空間や事業所内の屋外で人流解析、交通量調査、監視カメラなどの屋外ソリューションにまで活用範囲が拡大して利用されていることから、防塵・防水機能のほか、FANレス化することで耐久性を向上し、電源ユニットの搭載やPoE機能を実装した屋外用拡張ボックスの提供を予定しております。「AIX-01NX」を屋外用拡張ボックスと組み合わせることによって、需要が拡大している公共空間や事業所の屋外における人流解析、交通量調査、監視カメラなどの屋外ソリューションに活用いただけることが期待できます。
1台でカメラ・センサーなどからの情報をリアルタイムにAI分析して分析結果をクラウドに連携することが可能となっております。リテールテック、製造業、セキュリティ、介護見守り、測定・異常監視、分析やシミュレーションによる効率的なモノ作りから都市レベルの課題解決に至るまでその用途がますます拡大していくことが期待され、デジタルツイン*2などを含めた幅広い分野においても活用が期待される技術であり、今後もこれらの技術をデバイス事業の新たな製品開発に活用してまいります。
*2 「デジタルツイン」とは、物理空間(フィジカル空間)に実在しているものを仮想空間(サイバー空間)にリアルに再現する手法です。物理空間の物体や環境から収集した膨大なデータをもとに、AI分析やAR(拡張現実)、VR(仮想現実)などの最新デジタル技術を活用して仮想空間にそのまま再現することによって、モニタリングするだけではなく、精度の高いシミュレーションを実施して、物理空間へフィードバックすることで、将来起こる変化にいち早く対応することが可能となります。
<屋外用拡張ボックス活用事例>
データ通信端末につきましては、5G Phase 2規格となる3GPP Release 16に対応し、Wi-Fi、Ethernetを搭載したバッテリーレスのルーター・モデムとなる、5Gデータ端末「UNX-05G」が、NTT docomoとの相互接続性試験(IOT)を完了し、NTTコミュニケーションズ株式会社のメーカーブランド通信モジュール・製品ページに掲載されました。5Gは、LTEと比べて超高速・大容量な通信で多数同時接続、超低遅延を実現するもので、現在、本格導入に向けて、ローカル5Gでは集合住宅向け固定インターネット接続サービス、工場設備の遠隔監視、展示会会場のネットワークインフラでの導入試験が進んでおります。また、パブリック5Gでは、5Gのエリア拡大に伴い、自動運転やAIロボットソリューションの遠隔操縦、リモートワークブースでの活用、ライブ配信向けの通信端末として導入が期待されております。
今後、5Gフル機能が利用できる5G SA(Standalone)*3サービスのエリア拡大に伴い、5G SAの特徴である各サービスに応じてネットワークの各種リソースを仮想的に分割し、複数の独立したネットワークを構築可能なネットワークスライシングが可能となります。これらの法人向けのサービスにおいては、ネットワークと適切な接続がされているかを確認しておくことが重要ですが、相互接続性試験により網接続による問題を未然に抽出及び解消することができます。また、サービスによっては相互接続性試験の通過が条件になることがあるため、法人向けの回線サービスの選択肢の広がりとともに、KDDI株式会社に加え新たに株式会社NTTドコモとの相互接続試験完了により、より多くのお客様に端末をご利用いただけることが期待できます。
また、5Gの特徴である「低遅延」「多数端末との接続」をそのままに、通信速度をLTEのCat.4レベル(下り 150Mbps程度)に機能を抑えた、AI/IoT向け通信規格「5G RedCap」に対応するUSBドングル型データ端末を開発しております。コストやサイズ、消費電力の低減が可能となることでLTEから5Gへのリプレースが容易となり、さらに5Gで得られるネットワークスライシングや低遅延などの機能と組み合わせることによって、センサーネットワーク、AMR(自動搬送ロボット)を含むAIロボットソリューション、AIカメラ、ドローン、サイネージ、ウェアラブルカメラなど、これまでLTEでは不十分であったユースケースでもご利用いただけることが期待できます。
*3 「5G SA(Standalone)」とは、コア設備や基地局なども含めて5G専用の技術と設備で構成した5Gサービスです。

<5G RedCap対応USBドングル型データ端末利用シーン>
テレマティクスにつきましては、NTT docomo/KDDI/SoftBankの国内の主なLTE周波数や、みちびき(準天頂衛星システム)など5方式のGNSS*4に対応し、より多くの衛星測位システムを使うことで、ビルや樹木などで視界が狭くなる都市部や山間部においても測位の安定性が向上したOBDⅡ型データ収集ユニット「GX700NC」において、位置情報取得技術のIZatTM*5機能の対応バージョンを提供しております。IZatTM機能を活用することで、従来衛星測位の弱点であった地下駐車場からの利用や、衛星が補足しづらい場所(陸橋の下など)での利用において、測位時間の短縮、測位精度の向上が見込まれます。働き方改革関連法に基づくトラックドライバーの時間外労働の上限規制などの法的規制強化と車両管理業務の効率化、ドライバーの減少、高齢化など市場を取り巻く社会環境の影響で、需要が増加傾向にあるクラウド型車両管理及び動態管理システムにおいて市場を確保しており、今後も、新車などの新しい型式への適合や、排気ガス測定及び管理やEV車の充電、電費及び残量管理などのSDGsへの取り組みなどにも活用の範囲を拡充してまいります。
*4 「GNSS」とは、「Global Navigation Satellite System(全球測位衛星システム)」の略で、GPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星(QZSS)等の衛星測位システムの総称です。
*5 「IZatTM」とは、Qualcommが位置情報取得の機能向上のために開発した方式です。
農業ICT事業(NCXX FARM)では、農作物の生産、加工、販売を行う6次産業化事業と、特許農法による化学的土壌マネジメント+ICTシステムによるデジタル管理のパッケージ販売を行うフランチャイズ事業の事業化を推進しております。
6次産業化事業では、スーパーフードとして人気の高いGOLDEN BERRY(食用ほおずき)の生産、販売を行っております。加工品としてセミドライゴールデンベリーに加え、今年度リニューアル商品となったGOLDEN BERRYプレミアムアイス、今年度新商品のGOLDEN BERRYクラフト炭酸リキュールを販売しております。また、GOLDEN BERRYの栽培時に発生する葉の残渣を活用した「ほおずきエキス」を開発し、化粧品の原材料として活用されております。
フランチャイズ事業では、引き続き自社試験圃場での栽培実績をもとに、自社独自の特許農法(多段式ポット)とICTシステムの提供に加えて、お客様の要望に沿った多種多様な農法・システム・農業関連製品の提供を行う農業総合コンサルティングサービスを展開しております。
この結果、当連結会計年度の売上高は822百万円(対前期比49.7%増)、営業利益は86百万円(対前期比176.4%増)となりました。
(ソリューション事業)
ケーエスピーは、外食チェーン店や介護施設等における、物流を含めたトータルサプライヤーをはじめ、コスメティックショップ等の物販チェーン店における、各種パッケージやSPツールの企画、制作及び販売といった、取引社数に対して商品販売数を増やしていくことによる、ストック型の販売を行っております。
さらに、当連結会計年度は従来の販売先層としては少なかったラグジュアリーホテル及びハイエンドホテルとの口座も増やすことができました。その結果、従来から取り扱っている幅広い継続性の高いアイテムのクロスセルも強化することにより、取引社数の拡大だけではなく、1社あたりの販売金額の拡大が実現できました。
現在のアクティブな販売先顧客社数として、269社への販売を継続的に行っており(第3四半期比127%増)、今後に関しましても、引き続き取引社数の拡大と商品販売数の拡大を図り、さらにストックを積み上げていくことに推進してまいります。
この結果、当連結会計年度の売上高は839百万円、営業利益は59百万円となりました。
(暗号資産・ブロックチェーン事業)
本事業では、NCXC(ネクスコイン)を利用したサービスの向上、NCXCの流通促進、NCXC保有者の拡大を通じたNCXC経済圏の拡大を目指し、価値向上に向けた取り組みを行っております。
NCXC GameFiプラットフォームの開発を行い、ゲーム会社とのアライアンスにより、世の中で既に実績を上げている他社ゲームタイトルを中心に、これらを簡単にPlay to Earnのゲームに転換することができるプラットフォームサービスの提供を目指します。
なお、従来、活発な市場が存在しない暗号資産の評価損は、「売上高」にマイナス表示しておりましたが、当連結会計年度より、「売上原価」に含めて表示する方法に変更しております。
この結果、当連結会計年度の売上高は20百万円(対前期比83.4%減)、営業損失は98百万円(前期は営業利益27百万円)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下資金)の期末残高は、前連結会計年度末と比べて661百万円増加し、1,145百万円となりました。なお、当期増加額のうち、1,282百万円は株式交換による現金及び現金同等物の増加額となります。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により支出した金額は352百万円(前年同期は148百万円の資金支出)となりました。これは主に、資金の増加要因としてのれん償却額153百万円、仕入債務の増加額50百万円があり、減少要因として税金等調整前当期純損失258百万円、売上債権の増加額249百万円、棚卸資産の増加額62百万円があったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した金額は296百万円(前年同期は188百万円の資金獲得)となりました。これは主に、減少要因として関係会社の取得による支出300百万円があったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した金額は28百万円(前年同期は66百万円の資金支出)となりました。これは主に、増加要因として長期借入れによる収入80百万円、社債の発行による収入20百万円があり、減少要因として長期借入金の返済による支出57百万円、社債の償還による支出14百万円があったことによります。
(3) 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 メタバース・デジタルコンテンツ事業、暗号資産・ブロックチェーン事業、ソリューション事業及びその他事業については、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
2 金額は、製造原価によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 メタバース・デジタルコンテンツ事業、暗号資産・ブロックチェーン事業及びその他事業については、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
2 金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(4) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、キャッシュ・フローの状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(資産)
資産の残高は、前連結会計年度末と比較して2,860百万円増加し、5,941百万円となりました。この主な要因は、現金及び預金が665百万円増加、売掛金が436百万円増加、預け金が354百万円増加、のれんが1,157百万円増加したことによります。
(負債)
負債の残高は、前連結会計年度末と比較して1,491百万円増加し、1,609百万円となりました。この主な要因は、買掛金が219百万円増加、借入金残高(※)が272百万円増加、預り金が841百万円増加したことによります。
(純資産)
純資産の残高は、前連結会計年度末と比較して1,369百万円増加し、4,331百万円となりました。この主な要因は、資本剰余金が1,499百万円増加、その他有価証券評価差額金が151百万円増加したことによります。
(※)1年内返済予定の長期借入金、長期借入金残高の合計
当社グループの当連結会計年度における経営成績は、以下のとおりであります。
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、2,130百万円(前期比145.8%増)となりました。
詳細につきましては「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 当期の経営成績の概況」に記載したとおりであります。
(売上総利益)
売上高総利益率は、前連結会計年度より14.7ポイント減少し、28.2%となり、売上総利益は、599百万円(前期比61.6%増)となりました。
(営業損益)
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度より増加し、846百万円(前期比45.2%増)となりました。
以上の結果、売上高営業利益率は、前連結会計年度より12.8ポイント増加し、△11.6%となり、営業損失は246百万円(前期は211百万円の営業損失)となりました。
(経常損益)
営業外収益は28百万円(前期比59.7%減)となりました。これは主に受取配当金の減少によるものであります。営業外費用は12百万円(前期比37.2%増)となりました。これは主に支払手数料の増加によるものであります。
以上の結果、経常損失は230百万円(前期は150百万円の経常損失)となりました。
(特別損益)
特別利益は8百万円(前期比93.8%減)となりました。これは主に投資有価証券売却益の減少によるものであります。特別損失は36百万円(前期比94.2%減)となりました。これは主に投資有価証券評価損の減少によるものであります。
(税金等調整前当期純損益)
以上の結果、税金等調整前当期純損失は258百万円(前期は630百万円の税金等調整前当期純損失)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は289百万円(前期は657百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
当社グループは現在、必要な運転資金、設備投資及び投融資資金については、自己資金、借入、社債の発行及び保有株式の売却といった資金調達方法の中から、諸条件を総合的に勘案し、最も合理的な方法を選択して調達していく方針であります。当連結会計年度末におきましては、1年内返済予定の長期借入金105百万円、長期借入金178百万円、1年内償還予定の社債14百万円、社債29百万円となりました。
当社グループは、今後も営業活動により得られるキャッシュ・フローを基本に将来必要な運転資金等を調達していく方針であります。
当社では、メタバース・デジタルコンテンツ事業を戦略的注力分野とした取り組みを行っております。
「メタバース」の市場規模は、アメリカの市場調査及びコンサルティング会社のEmergen Researchが、「世界のメタバース市場規模は2020年に476.9億米ドルに達し、2028年までには8,289.5億米ドルへ拡大するだろう」との予想を発表するなど、成長性が非常に高く注目されている市場です。
また、「デジタルコンテンツ」市場は、日本国内において2022年に10兆1,545億円(前年比104.7%)の規模に達し、前年を上回る順調な成長を見せました。これにより、コンテンツ市場全体に占める割合も76.5%と4分の3を超える規模となっております。(一般財団法人デジタルコンテンツ協会『デジタルコンテンツ白書2023』)。
さらに、国内クリエイターエコノミーの市場規模は1兆6,552億円で、前年比21.9%増加しました。市場拡大の背景には、ユーザーとクリエイターのつながりを強化するサービスの増加や、クリエイター個人への課金を促進したこと、VTuber関連や音声配信サービスなどの新興サービスが浸透し市場の成長をけん引したことが挙げられております(一般社団法人クリエイターエコノミー協会『2023年版国内クリエイターエコノミー調査結果』)。
当社では、仮想空間で提供されるコンテンツ制作やそのサポート、電子書籍をはじめとするデジタルコンテンツの取り扱い、ブロックチェーン技術を利用したトークン「ネクスコイン」を活用したサービスの提供、仮想空間を楽しむためのハードウェアの開発及び販売などを検討してまいります。
また、上記のサービスの提供に欠かせないインフラの整備としてIoT関連サービスの拡充、「IoT×ブロックチェーン技術」、「IoT×AI技術」など、「IoT×新技術」を活用した新たなサービスの提供を目指しております。
(1) 株式取得及び簡易株式交換による完全子会社化
当社は、2024年2月22日に開催された取締役会において、株式会社ケーエスピーの普通株式の一部を、株式会社ケーエスピーホールディングスから取得したうえで、当社を株式交換完全親会社、株式会社ケーエスピーを株式交換完全子会社とする簡易株式交換を実施することを決議し、2024年5月1日に株式交換契約の効力が発生いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(企業結合等関係)をご参照ください。
(2) 株式交換による完全子会社化
2024年3月15日に開催された取締役会において、当社を株式交換完全親会社、株式会社スケブを株式交換完全子会社とする株式交換を実施することを決議し、2024年7月1日に株式交換契約の効力が発生いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(企業結合等関係)をご参照ください。
(3) 株式の譲渡
当社は、2024年6月27日開催の取締役会において、当社の持分法適用関連会社である株式会社ワイルドマンの当社保有株式の一部を譲渡することを決議し、2024年6月28日付で株式譲渡契約を締結いたしました。なお、本株式譲渡により、株式会社ワイルドマンは当社の持分法適用関連会社から除外しております。
(4) 取得による企業結合
当社は、2025年2月3日開催の取締役会の決議に基づき、株式会社ZEDホールディングスについて、株式会社カイカフィナンシャルホールディングス(本社:東京都港区、代表取締役:鈴木 伸)との間で、株式譲渡契約を締結し、同日付で株式会社ZEDホールディングスの発行済み株式の一部株式を取得して子会社化いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(重要な後発事象)をご参照ください。
当連結会計年度の研究開発活動は、主にデバイス事業分野において「5G RedCap」の活用研究に着手いたしました。
5G RedCapは、5Gの特徴である「低遅延」「多数端末との接続」を維持しつつ、通信速度をLTEのCat.4レベルに機能を抑えることで、コストやサイズ、消費電力の低減が可能です。これにより、中低速のニーズが多いM2M分野でのLTEから5Gへのリプレースが容易になり、さらに、5Gで得られるネットワークスライシングや低遅延などの機能と組み合わせることで、センサーネットワーク、AMR(自動搬送ロボット)を含むAIロボットソリューション、AIカメラ、ドローン、サイネージ、ウェアラブルカメラなど、これまでLTEでは不十分だったユースケースでも利用されることが期待されます。
今後、日本全国に基地局の展開が計画されており、5G/ローカル5GだけでなくsXGPやプライベートLTEの分野でも導入が拡大すると予想されるため、これまでLTEのUSBドングルで得られたニーズに応えつつ、今後求められるであろうDual SIMやルーター機能をコンパクトな筐体に搭載した、デバイス事業の新たな製品開発に向けた取り組みに着手いたしました。
以上により当連結会計年度における当社グループの研究開発費は