第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、提出日現在において当連結グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

私たち「E・Jグループ」は、現在と未来の人々にとって、真に価値ある環境を求めて「今、なにをすべきか」を常に念頭において、建設コンサルタント事業を中核とするインフラマネジメント全般に係わる事業を拡大・発展してまいります。「環境」「防災・保全」「行政支援」における3つの領域のマネジメント力・技術力をコア・コンピタンスとして、地球レベルから地域レベルまでを対象に、時代や社会が求める新たな事業モデルの構築による収益の向上に意欲的に取り組むことをグループ全体で共有し、社会の進化と人類の豊かさへの願いを胸に、高度化・多様化するニーズに応えて、世界へ羽ばたくコンサルティング企業集団、すなわち「わが国第一級のインフラ・ソリューション・コンサルタントグループ」を目指しております。

 

(2)目標とする経営指標

当連結グループは、持続可能な成長の実現と企業理念の実現を目指すべく、経営指標としては、顧客からの信頼性を反映する指標として売上高、企業の収益性を反映する指標として営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益、投資効率性を反映する指標として自己資本利益率(ROE)を、目標とする経営指標として掲げております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当業界をとりまく今後の経営環境につきましては、激甚化・頻発化する自然災害、人口減少等による地域社会の変化、加速化するインフラの老朽化、デジタル革命の加速、グリーン社会(2050年カーボンニュートラル)の実現に向けた動きやライフスタイル価値観の多様化などへの対応など、社会課題解決につながる需要は一層拡大していくものと考えています。

また、国内市場における受注環境につきましては、長期的視点では、国の財政状態の動向等を含め不確定要素も多く、現時点では明確な見通しはやや立てにくい状況にありますが、中期的視点では、気候変動による気象災害の激甚化・頻発化や高度成長期以降に整備されたインフラの老朽化対応の必要性等を背景に、2020年度には「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」予算措置が講じられたこともあり、少なくとも2025年度までの今後数年間に亘っては、現状水準と同程度の公共事業関係費予算の計上が見込まれること等から、比較的好調な環境が継続するものと思われます。

海外市場においても、世界的な移動制限等の制約が概ね緩和されており、今後の受注環境も緩やかながらも徐々に回復する見込みとなってまいりました。

こうした状況のなか、当連結グループは、2030年度において、「わが国第一級のインフラ・ソリューション・コンサルタントグループ」として活躍できる企業集団であるべく、2030年度を見据えた長期ビジョン「E・J—Vision2030」を作成し、併せて、直面している課題への対応とビジョン達成に向けた最初のステップとして、2021年度をスタート年とする第5次中期経営計画(2021年度~2024年度)を、2021年7月に策定いたしました。

 

1.長期ビジョン「E・J—Vision2030」の概要

(1)E・Jグループの果たすべき役割

コンセプトを「安心・夢のあるサステナブルな社会の実現に貢献する」といたしました。

国内外における今後の社会課題の変化や社会資本の方向性、E・Jグループのコア・コンピタンス等の特色を踏まえて、グループの果たすべき役割を以下の3つとし、これらの主要な役割を果たしながら、建設コンサルタント業に求められる新たなインフラ整備への貢献を進めてまいります。

①環境負荷軽減への貢献

②持続可能でレジリエントな社会づくりへの貢献

③地域の課題解決と活性化への貢献

(2)長期ビジョンにおける基本方針

ESG経営の概念を根底に置き、基本方針として下記の4つを掲げ、上記の役割を果たしてまいります。

①環境負荷軽減対応の強化

再生可能エネルギー等環境負荷軽減施策の普及を支援し、レジリエントな循環型社会の形成に貢献する。

②持続可能でレジリエントな社会づくりへの貢献

国内外の良質なインフラ整備や維持管理と地域の生活環境向上や活性化施策を通して、「安全・安心な社会づくり」に貢献する。

 

③ダイバーシティ経営の実践

多様な人財の開発・育成を積極的に行い、働きやすく、働きがいのある職場をつくる。

④最適な体制構築のためのガバナンスの強化

コンプライアンスやリスク管理を重視したガバナンス体制を整備し、経営の透明性を高め、ステークホルダーとの関係を強化する。

(3)2030年度における連結業績目標

売上高

500億円

営業利益

60億円

親会社株主に帰属する当期純利益

40億円

自己資本利益率(ROE)

10%以上

 

2.第5次中期経営計画「E・J—Plan2024」の概要

第5次中期経営計画における4年間は、長期ビジョン「E・J—Vision2030」の達成に向けた「基盤整備・強化」の期間として位置づけており、第4次中期経営計画までの課題をもとに、既存事業の強化・深耕や新たなニーズに取り組んでまいります。

(1)第5次中期経営計画の基本方針

①既存事業強化とサービス領域の拡充

a.最先端技術を取り入れ、国土強靭化、老朽化するインフラメンテナンス、環境に配慮したサステナブルな社会インフラの整備、CM等の行政支援のサービスを深化させ、重点課題として取り組む。

b.3つのコア・コンピタンスを基盤にした6つの新重点分野により、今後成長が想定される事業領域の拡大、変革を図る。

c.経済発展とともにインフラ整備市場が拡大する東南アジアを中心に、M&Aも含め海外事業基盤の再構築を図る。

d.研究開発、デジタル機材等への積極的投資によりDX推進を加速し、競争優位性を確保する。

②多様化するニーズへの対応力の強化

a.データ、情報資産、ICT技術を活用した新商品、新サービスを開発する。

b.既存の農林事業を活かした地域課題解決ビジネスを深化させる。(BtoBtoCなど)

c.グリーンインフラ、スマートシティ、物流・ロジスティックス推進等未来型社会インフラへの知見・ノウハウ・技術を獲得し新たなインフラニーズに取り組む。

d.新規事業、技術力強化に必要なアライアンス・M&Aを積極的に行う。

③環境変化に柔軟に対応できる経営基盤の構築

a.バリューチェーンの進化により、業務の効率化・生産性の向上・成果品質の確保を図る。

b.グループ総合力を結集し、更なる企業価値向上を目指す。

c.サテライトオフィスやテレワークを活用した多様な働き方を実践し、ダイバーシティを尊重した職場づくりとグループのブランド力強化を行う。

d.イノベーションやマネジメント人財育成の強化を目的とした『企業内学校』の創設と活用及び多様な人財確保によりグループの技術力の向上・人的資源の拡充を目指す。

e.リスクマネジメント・内部統制の強化はもとより、コーポレートガバナンス・コードを踏まえた強固なガバナンス体制の構築と経営の透明性の向上により、株主・投資家との信頼関係を醸成する。

(2)連結業績目標(2024年度)

売上高

385億円

営業利益

48.5億円

親会社株主に帰属する当期純利益

33.5億円

自己資本利益率(ROE)

10%以上

注)2022年5月期の業績を踏まえて、2022年7月12日に目標数値を修正いたしました。

 

(4)会社の優先的に対処すべき課題

新型コロナウイルス感染症による社会経済活動の制限緩和を背景に、景気は緩やかに持ち直しの動きが見られるものの、ウクライナ情勢の長期化による資源・原材料・エネルギー価格の高騰、円安による物価上昇に加え、世界的なインフレに伴う政策金利の引き上げなどによる海外経済減速の影響も懸念され、景気の先行きについては依然として不透明な状況が続いておりますが、当連結グループは、長期ビジョン「E・J—Vision2030」の達成を念頭に、第5次中期経営計画に掲げる基本方針に基づき以下の課題に対処してまいります。

1.事業戦略強化と事業領域の拡大

 3つのコア・コンピタンスを基盤に、最先端技術を取り入れ、国土強靭化、老朽化するインフラ・メンテナンス、環境に配慮した社会インフラの整備やCМ等の行政支援サービスを深化させ、事業戦略を強化すると共に、東南アジアを中心に、М&Aを含めた海外事業基盤の再構築を進め、事業領域の拡大を目指してまいります。

2.バリューチェーンの全社最適化と経営管理機能の強化

 多様化するニーズへの対応力を強化すべく、㈱エイト日本技術開発内に設立したDX推進室を中心に、DXによる経営管理、組織管理に必要な数値の見える化を実施し、バリューチェーンにおける効率的・効果的なマネジメントを可能とするシステムの抜本的な再構築に取り組みグループ全体に展開することで、経営管理、組織管理に必要な数値の見える化を具体的に進めてまいります。また、コーポレートガバナンス・コードの要請に真摯に対応し、経営管理機能の強化を図ると共に、社内の各委員会を厳格に運用することで、取締役会の監督機能の一層の高度化に取り組んでまいります。

   3.資本コストや株価を意識した経営

 資本効率性やPBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)を意識した経営を実践し、企業価値向上に資するため、自社の資本コスト等を的確に把握し、その内容や市場評価に関して、取締役会にて分析・評価を行い改善に向けた「成長投資」、「人的資本投資」施策案等を策定・実践する事により持続的な成長を図り企業価値の向上に取り組んでまいります。

4. サプライチェーンにおける人権の尊重

 2022年9月に日本政府が決定した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」では、日本で事業を行う全ての企業に、①人権方針の策定、②人権デューデリジェンスの実施、および③自社が人権への負の影響を引き起こし、または助長していることが明らかになった場合における救済、の3つの実施が求められております。

     当社では、このガイドラインに沿って、2022年12月1日付で「E・Jグループ人権方針」を制定し公表しております。今後、定期的に人権デューデリジェンスを実施し、人権侵害に係る救済プロセスを適切に進めてまいります。

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当連結グループは、グループミッションを「地球環境にやさしい優れた技術と判断力で、真に豊かな社会創りに貢献」と定め、国土や環境のサステナビリティを確保すべく、企業活動を行うようSDGs目標を定めて事業を行っております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当連結グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当連結グループは、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、気候変動を含むESGに関する経営のリスクと機会について審議・決定するとともに、担当取締役企画本部長の下で「企画本部」がその具体化を進めております。

また、「取締役会」は、「サステナビリティ推進委員会」で協議・決議されたサステナビリティ経営に係る課題と対応策について報告を受け、E・Jグループの持続的成長に向けた対応方針及び実行計画等についての論議・監督を行っております。

併せて、資本効率性やPBR(株価純資産倍率)を意識した経営を実践し、企業価値向上に資するため、自社の資本コスト等を的確に把握し、その内容や市場評価に関して、取締役会にて分析・評価を行い改善に向けた「成長投資」、「人的資本投資」等を策定・実践する事により持続的な成長を図り企業価値の向上に取り組んでまいります。

 

<サステナビリティ経営にかかるガバナンス体制>

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(2)戦略

①気候変動に対する取り組み

<全般的取り組み>

2022年5月期より、パリ協定(※1)が示す「産業革命前からの全世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるという目標」達成に向けた取り組みに着手し、TCFD(※2)の枠組みに沿った環境情報を当社のホームページ(URL https://www.ej-hds.co.jp/sustainability/s_environment/tcfd.html)で継続的に開示しております。

  当連結会計年度においては、科学的根拠を持ったCO₂排出量の算出と削減目標を設定するため、SBTイニシアティブ(※3)に対して、2年以内の温室効果ガス削減目標の認定取得を目指すことをコミットメントするとともに、SBT認定取得のための申請書を提出いたしました。また、気候変動イニシアティブ(Japan Climate Initiative)(※4)へ参加するとともに、環境評価の情報開示に国際的に取り組む非政府組織(NGO)であるCDP(※5)から、2022年に実施された気候変動情報開示に対する活動を評価する「気候変動プログラム」において、「B⁻」スコアを取得いたしました。

※1 パリ協定:

2015年12月にフランス・パリで開催されたCOP21(国連機構変動枠組条約第21回締約国会議)で成立した2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みで、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2.0℃より十分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求することを目的とする国際協定を指しております。

※2 TCFD:

気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース」を指し、気候変動に関する情報開示の項目及び内容について提言しております。

 

※3 SBTイニシアティブ:

複数の気候関連イニシアティブによる共同イニシアティブであり、企業に対し、気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ、1.5℃に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進しております。

※4 気候変動イニシアティブ:

2018年7月に設立された、気候変動対策に積極的に取組む企業や自治体、NGOなど、国家政府以外の多様な主体の情報発信や意見交換を強化するためのネットワークであります。

※5 CDP:

機関投資家が連携し、企業に対して気候変動への戦略や具体的な温室効果ガスの排出量に関する公表を求めるプロジェクトを指します。2000年の発足当初は「Carbon Disclosure Project」が正式名称でありましたが、現在はCarbon以外も対象とすることから、略称のCDPが正式名称となっております。このプロジェクトは発足以降、主要国の時価総額の上位企業に対して、毎年質問表が送付されており、企業側からの回答率も年々高まってきております。日本国内でも2005年より活動を始めており、2021年度までは日本企業のトップ500社を対象としておりましたが、2022年度からその対象を東京証券取引所プライム市場上場会社(約1,840社)に拡大しております。

<TCFDフレームワークに基づく取り組み>

当連結グループは、2022年5月期より、グループ会社全体を対象として、気候変動によるリスク・機会の特定・評価、気候関連問題が事業に与える中長期的な影響を把握するため、TCFDフレームワークに準拠したシナリオ分析を実施しております。

<シナリオ分析>

シナリオ分析の概要は以下のとおりであります。

・分析の時間軸は、当社の長期ビジョンの最終年度である2030年からカーボンニュートラルの目標年度である2050年までの中長期を対象といたしました。

・分析においては、以下に示すシナリオを採用し、政策や市場動向の移行リスク・機会と、地球温暖化による水面上昇や自然災害などによる水面上昇や自然災害などによる物理的変化に起因する物理的リスク・機会の特定と財務的影響を定性評価いたしました。採用した主なシナリオは以下のとおりであります。

(移行シナリオ)

国際エネルギー機関(IEA)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇を1.5℃以下に抑えるシナリオ(SDS及びNZE)

(物理的シナリオ)

国際気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇が4.0℃を超えるシナリオ

・各シナリオの前提条件は、各国際機関等が公表している将来的な気候予測や、日本政府による各種データにもとづき設定いたしました。

<事業インパクト評価>

・シナリオ分析に基づく事業インパクト(リスクと機会)評価結果は下記の通りです。

・財務的影響につきましては、2030年の営業利益目標に対する影響程度を大、中、小の3段階で評価いたしました。

 

■1.5℃シナリオに対する移行リスク

分類

要因

2030年度における

事業インパクト

リスク

機会

影響の時間軸

2030年度における財務的影響

対応策

政策・規制

脱炭素社会に向けた規制強化(炭素税の導入等)

・炭素税(140ドル/ton×3700tco2)の負担額増加(2030年度のスコープ1,2のCO₂排出総量に対する課税を想定)

・CO₂削減のための対策費用の増

 

2030

CO₂排出量の削減(省エネ施設への更新、再エネへの転換、ハイブリッド車及び電気自動車への更新 等

市場

脱炭素社会向け商品・事業のニーズ増加・拡大

・CO₂削減・環境負荷軽減事業への参画の可能性

・再エネ管理事業への参入の可能性

・新技術、新素材の開発の可能性

 

2030

脱炭素関連の新規事業への参入、研究開発の強化

市場

ESG投資の拡大

・脱炭素への取り組み姿勢の評価による投資の拡大

 

2030

小~中

環境関連施策の確実な実践

 

■4.0℃シナリオに対する物理リスク

分類

要因

2030年度における

事業インパクト

リスク

機会

影響の時間軸

2030年度における財務的影響

対応策

慢性

平均気温上昇

・野外での労働条件の悪化に対するコスト増

 

~2050

野外労働環境の改善、現場作業の省人化の推進、劣悪環境に対する手当の考慮

急性

集中豪雨に起因する気象災害の激甚化

・災害対応業務のニーズ拡大

・国土強靭化への対応に関するニーズ拡大

 

2050

災害対応、国土強靭化対応の強化、人員のシフト、関連技術の研究開発・アライアンスの強化

急性

降水量の減少

・水環境関連業務のニーズ拡大

 

2050

水環境関連対応の強化、人員のシフト、関連技術の研究開発・アライアンスの強化

急性

海面上昇、気象災害の激甚化

・事業所の土砂・洪水災害リスクへの対応

 

2050

事業所の洪水リスクは限定的

 

 

<気候関連のリスクと機会に対する対応策>

・事業インパクト評価により特定されたリスクと機会のうち、インパクトが大きいと判断された機会に対して、現時点で考えられる対策例を以下に示しております。

・当連結グループでは、長期ビジョンのもと、このような対応を推し進めるとともに、これらの機会を確実にとらえて、SDGs目標の達成につながるサステナブルな世界の進展に貢献してまいります。

 

分類

要因

対応例

移行/市場

脱炭素社会向け商品・事業のニーズ増加・拡大

・再エネ(バイオマス)関連計画の拡大

・脱炭素を目指した廃棄物処理システムの再構築

急性

異常気象の激甚化による災害発生への対応

・グリーンインフラ形成

・再エネ利用スマートシティ

・流域治水計画、立地適正化

・河川、砂防施設の更新

・避難計画、被害想定、BCP、防災訓練・防災計画の更新

・減災計画の見直し

・土砂災害対策施設の更新・新設

・各種監視、避難誘導、情報伝達システムの新設更新

・雨水管理計画の見直し、処理場・ポンプ場施設の更新

物理的/急性

降水量の減少

・灌漑事業の拡大

・地下水利用計画

 

 

②人的資本・多様性(人財の育成及び社内環境整備に関する方針)に関する取り組み

当連結グループは、グループ事業の発展が社会に貢献していくものとして、長期に亘る業容拡大を目指しています。この成長を作り出すのは、人財と適切な職場環境であり、「人財は会社にとって最大の資本であり、その確保・育成に努める」ことを人財基本方針として掲げ、社員の満足度を高め、やりがいのある職場づくりを目的に、働き方改革を推進しております。この取り組みのベースとしているのが生産性の向上です。他の産業に漏れず、建設コンサルタント業界も人手不足の状況にあり、国土交通省が進める「i-Construction」や「CIM」など、AI、ICTを活用した生産性向上を推進しております。また、満足度向上に重要なワーク・ライフ・バランス(WLB)についても取り組みを進め、当社グループの主要子会社である株式会社エイト日本技術開発では、働き方改革のキャッチコピーを定め、社内への浸透を図っております。

一方、建設コンサルタント業界は、大きな変革の時代を迎える中で、従来にも増して活躍の場が広がっております。そして、社会に提供するインフラには、お客さまやご利用者・地域住民のご要望、環境負荷低減、修景、将来への拡張性など、多様な視点・価値観が必要となり、E・Jグループは社員の教育・研修と共にダイバーシティ経営にも力を入れております。

<ダイバーシティ&インクルージョン>

E・Jグループの考える「ダイバーシティ経営」は、多様な人財がその能力を最大限に発揮できる環境を提供することによって、個人と組織がともに持続的成長を成し遂げるものです。多様性を確保していくうえで、特に力を入れているのが女性活躍です。元来、建設コンサルタント業界では、女性の就業比率が低く、男性中心の人員構成となっておりました。このような中、グループ子会社である株式会社エイト日本技術開発、株式会社共立エンジニヤの2社は女性活躍を推進する行動計画を策定し、「えるぼし」の認定を受けています。今後も、他のグループ子会社を含めて、女性管理職比率の向上や男性社員の育休取得率の向上等、女性活躍のための様々な取り組みを積極的に行ってまいります。また、当連結グループにおける「女性活躍推進法」に基づく「全労働者の男女の賃金の差異」は60.5%であり、当該差異の縮小を図るべく取り組みを進めてまいります。

<働き方改革>

当連結グループでは、全役職員が活き活きと働き、やりがいのある職場づくりを目指して働き方改革を進めております。この働き方改革を進めていくに当たりましては、業務のデジタルシフトによる、“しくみを変え”、“しごとを変える”ことに取り組んでおります。デジタルシフトにより効率化を図り、長時間労働の更なる是正や多様な働き方が可能な環境の整備とともに、多様な人財が能力を最大限に発揮できる新しい働き方を創り出すことに努めております。具体的な取り組みといたしましては、複数のE・Jグループ各社において、ウィークリースタンスの徹底やノー残業デーなどを実施しております。また、E・Jグループ各社のうち株式会社エイト日本技術開発では、「次世代育成 行動計画」を見直し、アニバーサリー休暇を正式に制度化するとともに、育児・介護に係る「勤務地限定正社員制度」も導入しております。

<人財育成>

企業経営にとって最大の資産となる人財の育成について、E・Jグループは、3つの領域を考えています。1つ目は、倫理・あり方などの人間としての育成です。2つ目は、働く上でのリーダーシップやマネジメントなどのキャリア形成です。そして、3つ目は、業界の第一線で働き続けるための技術・ノウハウの修得です。この3つの領域を相互に連携させながら、OJTや研修などを通じて社会に開かれた人財の育成を進めてまいります。

特に、建設コンサルタント業界においては、事業領域が拡張することにより習得すべき知識・技術が広がり、日進月歩のテクノロジーの進化を取り込む教育が重要となっているため、株式会社エイト日本技術開発の中に企業内学校として「EJアカデミー」を開設し、E・Jグループ社員が参加することで、グループの技術力の向上・人的資源の拡充を目指しております。

 

(3)リスク管理

当連結グループは、グループ全体のリスク管理の推進全般を統括する組織としてグループリスク管理委員会を設置しており、気候変動リスク、人的資本経営リスクを含む、全てのリスクを対象として、グループリスク管理委員会において、特定・評価を実施すると共に、是正計画の妥当性を審議し、継続的にモニタリングできる体制を構築しております。グループリスク管理委員会では具体的な取り組みのひとつとして、2022年12月1日付で制定した「E・Jグループ人権方針」に沿って、今後、定期的に人権デューデリジェンスを実施し、人権侵害に係る救済プロセスを適切に進めてまいります。

また、気候変動リスクへの対応につきましては、TCFDに関する調査、モニタリングを企画本部にて行い、サステナビリティ推進委員会で適切に管理しております。

併せて当社取締役会およびグループ経営会議等での取り組みを通じて、建設コンサルタント業界の事業領域拡大に伴う技術者に求められる知識・技術の広がりや高度化に対応すべく必要な基盤整備を行い、引き続き適切な人的資本経営に努めてまいります。

 

(4)指標及び目標

 ①気候変動に対する指標と目標

<CO₂排出量削減目標>

SBT認定取得のため、SBTイニシアティブが求める目標との整合を考慮して、2023年5月期に、サステナビリティ推進委員会及び取締役会の審議を経て目標の見直しを行いました。また、2022年5月期のCO₂排出量についても、SBT認定取得申請に向けての精査により、スコープ3の実績値の一部見直しの必要があり、この数値の見直しを行いました。見直し後の2022年5月期のCO₂排出量を基準として、長期ビジョン「E・J- Vision2030」の最終年度である2030年度に向けたCO₂削減目標(下表)を設定し、事業活動におけるCO₂削減の取り組みを進めております。

目標設定の前提条件は以下のとおりであります。

・削減目標は、21世紀末の温度上昇を1.5℃以内に抑えるSBT水準を目指して設定いたしました。

・削減目標は、長期ビジョン「E・J-Vision2030」の最終年度である2030年度を対象とし、初めてCO₂排出量を算定した2022年5月期を基準年といたしました。

・CO₂排出量の算定は、環境省等が策定した「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」(Ver.2.4)に基づいております。

 

■CO₂排出量削減目標

分類(※)

2030年度CO₂排出量目標

スコープ1

基準年排出量の42.0%削減

スコープ2

スコープ3

カテゴリー1

2027年度までに主要サプライヤーに環境目標の設定を求める

カテゴリー6

カテゴリー7

基準年排出量の25.0%削減

 

<CO₂排出量の実績値>

・2023年5月期のCO₂排出量の実績値は以下のとおりであります。

・2023年5月期は、CO₂排出量削減のために、社有車をハイブリッド車及び電気自動車へ積極的に更新するとともに、使用電力の55.0%を再生可能エネルギー由来により調達しております。

 

■CO₂排出量の実績値

分類(※)

指標

目標

基準値

(2022年5月期)(tCO₂)

実績

(2023年5月期)(tCO₂)

2030年度CO₂排出量

(tCO₂)

2030年度CO₂削減

(%)

スコープ1

2,774

1,879

1,609

▲42.0

スコープ2

スコープ3

(カテゴリー1)

17,427

17,404

スコープ3

(カテゴリー2~5)

2,038

3,450

スコープ3

(カテゴリー6、7)

2,285

3,165

1,714

▲25.0

合計

24,524

25,898

※ スコープ1:燃料消費によるCO₂の直接排出

  スコープ2:電力消費等のエネルギー消費によるCO₂の間接排出

  スコープ3

   カテゴリー1:購入した製品・サービスによる間接排出(サプライチェーン排出)

   カテゴリー2:自社の資本財の建設・製造に伴う間接排出

   カテゴリー3:スコープ1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動による間接排出

   カテゴリー4:輸送、配達(上流側)による間接排出

   カテゴリー5:事業から出る廃棄物の輸送、処理に伴う間接排出

   カテゴリー6:従業員の出張に伴う間接排出

   カテゴリー7:従業員の通勤に伴う間接排出

 

 ②人的資本・多様性に関する指標と目標

当連結グループは、グループ事業の発展が社会に貢献していくものとして、長期に亘る業容拡大を目指しています。この成長を作り出す原動力は、人財と適切な職場環境と考え、社員の満足度を高め、やりがいのある職場づくりを目的として、以下の指標と目標のもと、ダイバーシティ経営の推進に取り組んでまいります。

指 標

実 績

(当連結会計年度)

目標値

(2030年度)

女性管理職比率

4.0%

10.0%以上

新入社員に占める女性比率

32.5%

30.0%以上

男性育休取得率

52.0%

100.0%

 女性活躍は当連結グループの成長に不可欠であり、2030年度には、女性管理職比率10.0%以上を達成する事を目標として設定いたしました。また、その実現のために新入社員に占める女性比率30.0%以上を毎年維持してまいります。

 

以上の取り組みにより、働き易い職場環境と自由な発想による生産性向上を実現し、自社の競争力強化につなげ、全てのステークホルダーへの還元を積極的に実施するとともに、E・Jグループ企業価値の更なる向上に努めてまいります。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当連結グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当連結グループが判断したものであります。

 

(1)官公庁等への売上依存について

当連結グループは、国土交通省等の中央省庁及び地方自治体を主要顧客としており、これらの官公庁等に対する売上依存度は90%程度と高い比率になっております。このため、当連結グループの経営成績は、今後の公共投資額の変動により影響を受ける可能性があります。このリスクに対応するため、海外や民間受注を増やすべく営業活動を実施しております。

 

(2)経営成績の季節的な変動について

当連結グループでは、主として顧客に成果品を納品した時点で収益を認識することとしており、主要顧客である中央省庁及び地方自治体への納期が年度末に集中することから、売上高は第4四半期連結会計期間に偏重しております。これに伴い、当連結グループの利益も第4四半期連結会計期間に偏重する傾向があります。

なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の各四半期連結会計期間の売上高、営業損益は、下表のとおりであります。

(単位:百万円、%)

 

 

前連結会計年度

(自 2021年6月1日

至 2022年5月31日)

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

 

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

通期

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

通期

売上高

3,745

4,748

6,486

21,687

36,668

3,648

4,822

7,756

21,282

37,509

構成比

10.2

13.0

17.7

59.1

100.0

9.7

12.9

20.7

56.7

100.0

営業利益又は営業損失(△)

△591

△161

534

4,709

4,491

△825

△357

495

5,150

4,462

 

(3)災害による事業活動への影響について

当連結グループの事業拠点の中には、大規模地震や水害の危険性が指摘されている地域に含まれているものがあります。当連結グループでは、このような自然災害に備えてBCP(事業継続計画)を策定し、また株式会社エイト日本技術開発においては、内閣府が推進する「国土強靭化貢献団体」の認証(レジリエンス認証)を受けるなど防災管理体制を強化しておりますが、災害の規模によっては主要設備、データの損傷等により、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)新型コロナウイルス等、感染症拡大について

当連結グループの従業員に新型コロナウイルス、インフルエンザ、ノロウイルス等の感染が拡大した場合、一時的に業務を停止するなど、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当連結グループでは、これらのリスクに対応するため、予防や感染拡大防止に対して適切な管理体制を構築しております。

今般、世界的に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症に関しては、対策本部を設置し、在宅勤務等のテレワーク、時差出勤、職場における3密の排除、出張等の移動制限、毎日の検温など、従業員の安全と健康を最優先した対応を徹底し、感染者が発生した場合の対応等も定めて影響の極小化を図ってまいりました。

 

(5)成果品に関する瑕疵について

当連結グループでは、専任者による厳格な照査等を実施することにより、常に成果品の品質の確保と向上に努めております。また、万が一瑕疵が発生した場合に備えて損害賠償責任保険に加入しております。しかし、成果品に瑕疵が発生し賠償金を支払うこととなった場合や指名停止などの行政処分を受けるような事態が生じた場合には、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)法的規制について

当連結グループは、所管官庁から建設コンサルタント登録、補償コンサルタント登録、測量業者登録及び地質調査業者登録等の登録を受けて事業活動を実施しております。将来、当該登録の取り消し又は更新が認められない場合、もしくは今後、これらの法律等の改廃又は新たな法令規制が制定された場合には、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。登録の更新が認められるよう、有資格者や業務実績の確保に努めております。

また、当連結グループの事業活動には、会社法、金融商品取引法、独占禁止法、下請法、並びに、各登録分野に関する法令・規則・基準等による規制があります。このため、当連結グループでは、コンプライアンス・プログラム及びリスク管理規程等を作成し、行動規範、遵守項目、行動指針などを定め、すべての役職員が法令遵守の徹底に努めております。万が一法令違反が発生した場合には、指名停止などの行政処分を受ける可能性があり、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、提出日現在における当連結グループの主要な登録状況は下表のとおりであります。

登録の名称

所管官庁

会社名

登録番号

有効期限

有効期間(5年)

登録取消事由

建設コンサル

タント登録

国土交通省

㈱エイト日本技術開発

建01第116号

2024年9月30日

建設コンサルタント

登録規程

(第6条)

登録をしない場合

(第12条)

登録の停止

(第13条)

登録の消除

日本インフラ

マネジメント㈱

建01第6550号

2024年6月27日

㈱近代設計

建01第711号

2024年9月30日

㈱共立エンジニヤ

建01第5315号

2024年9月26日

共立工営㈱

建03第5816号

2026年11月10日

都市開発設計㈱

建02第6727号

2025年3月31日

㈱北海道近代設計

建05第10534号

2028年1月23日

㈱アーク

コンサルタント

建04第3336号

2027年1月23日

㈱アイ・デベロップ・

コンサルタンツ

建04第5877号

2027年1月15日

㈱ダイミック

建01第4749号

2024年11月12日

補償コンサル

タント登録

国土交通省

㈱エイト日本技術開発

補31第687号

2024年1月29日

補償コンサルタント

登録規程

(第6条)

登録をしない場合

(第11条)

登録の停止

(第12条)

登録の消除

日本インフラ

マネジメント㈱

補05第2361号

2028年6月28日

㈱共立エンジニヤ

補04第2259号

2027年11月29日

共立工営㈱

補02第2781号

2025年8月30日

都市開発設計㈱

補05第5001号

2028年3月11日

㈱アーク

コンサルタント

補30第325号

2023年12月17日

 

 

登録の名称

所管官庁

会社名

登録番号

有効期限

有効期間(5年)

登録取消事由

測量業者登録

国土交通省

㈱エイト日本技術開発

登録第(15)―263号

2023年11月30日

測量法

(第55条の6)

登録の拒否

(第55条の10)

登録の消除

(第55条の14)

無登録営業の禁止

(第57条)

登録の取消し又は

営業の停止

日本インフラ

マネジメント㈱

登録第(7)―19404号

2025年10月8日

㈱近代設計

登録第(12)―4071号

2023年9月30日

㈱共立エンジニヤ

登録第(8)―16514号

2026年12月25日

共立工営㈱

登録第(6)―21757号

2023年10月17日

都市開発設計㈱

登録第(12)―4970号

2025年3月31日

㈱北海道近代設計

登録第(2)―35440号

2028年1月17日

㈱アーク

コンサルタント

登録第(12)―4211号

2023年12月20日

㈱アイ・デベロップ・

コンサルタンツ

登録第(3)―32692号

2025年6月14日

㈱ダイミック

登録第(7)―17886号

2023年11月20日

地質調査業者

登録

国土交通省

㈱エイト日本技術開発

質04第367号

2027年12月25日

地質調査業者

登録規程

(第6条)

登録をしない場合

(第11条)

登録の停止

(第12条)

登録の消除

日本インフラ

マネジメント㈱

質03第1620号

2026年9月30日

㈱共立エンジニヤ

質03第1627号

2026年10月14日

共立工営㈱

質02第1561号

2025年10月10日

都市開発設計㈱

質30第2148号

2023年12月21日

 

(7)情報セキュリティーについて

当連結グループの事業は、公共性が高く、個人情報を含む様々な機密情報を取り扱っております。当連結グループは全社的な情報管理体制を構築し、情報管理の徹底に努めておりますが、万が一情報漏洩等が発生した場合には、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)システム障害について

 当連結グループは、サイバー攻撃を受けた場合の備えとして「防御システムの多層化」を実施し、迷惑メールや不正アクセスを防ぐ対策に加えて、24時間監視し不審なプログラムの挙動を判定し実行防止するEDRシステム(ネットワークの末端を監視・分析・制御するシステム)などによる対策を行っております。並行して従業員の「リテラシー向上」に向けた対策として、攻撃メールへの対応模擬訓練、情報セキュリティー教育などを定期的に実施するとともに、従業員の情報セキュリティー意識を高く保てるよう、適宜情報を発信しておりますが、ランサムウェアなど高度化した外部からのサイバー攻撃により、システムが停止することがあった場合、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)企業買収、他社とのアライアンスについて

当連結グループは、今後も弱点地域・弱点事業領域の解消、技術者不足への対応のため企業買収や他社とのアライアンスを進める方針であります。企業買収等の際には十分な投資分析を実施しておりますが、実施後に偶発債務の発生や未認識債務の判明等、事前調査で把握できなかった問題が生じた場合や、事業の展開等が計画どおりに進まず、投資やのれんの減損処理を行う必要が生じた場合、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)人財の確保、育成について

当連結グループの事業は人財に大きく依存しており、グループの成長は専門性を有する優秀な人財の確保と育成に大きく影響されます。多様な人財が活躍できる企業風土、人事制度、執務環境の整備等を通じて優秀な人財の確保に努めるとともに、各種教育・研修制度の体系化等、人財の育成に注力しておりますが、人財の確保・育成が想定どおりに進まなかった場合や優秀な人財が多数流出した場合には、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)気候変動リスクへの対応について

脱炭素社会への移行に向け、炭素税などの規制強化や気候変動の物理的影響として、平均気温の上昇、気象災害の激甚化による事業活動へのリスクと機会の両面が考えられます。

当連結グループでは、前連結会計年度より、気候変動への具体的な取り組みを開始し、パリ協定の「1.5℃目標」の実現に向け、TCFDフレームワークに基づく気候変動対応を検討し、その対策に着手しております。主な取り組みは「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度の経営成績等の状況の概要並びに経営者の視点による当連結グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

なお、当連結グループのセグメントは、総合建設コンサルタント事業のみの単一セグメントであります。

 

(1)財政状態の分析

当連結会計年度末の財政状態は、資産合計は前連結会計年度末から1百万円増加し392億41百万円となりました。これは現金及び預金が9億98百万円、棚卸資産が6億32百万円それぞれ減少した一方で、売掛金、契約資産が2億53百万円、建物及び構築物が3億59百万円、無形固定資産のその他に含まれるソフトウェア仮勘定が7億2百万円、投資その他の資産のその他に含まれる差入保証金が2億83百万円それぞれ増加したことが主な要因であります。負債合計は前連結会計年度末から23億70百万円減少し93億25百万円となりました。これは未払金が5億66百万円、未払法人税等が6億20百万円、契約負債が11億28百万円それぞれ減少したことが主な要因であります。純資産合計は前連結会計年度末から23億71百万円増加し299億16百万円となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が23億68百万円増加したことが主な要因であります。

財政状態の主な安全性分析結果としては、当連結会計年度末の自己資本比率は前連結会計年度末に比べ6ポイント上昇の76.2%となり、流動比率は57.7ポイント上昇の320.1%となりました。

当連結グループは引き続き健全な財政状態であると認識しております。

 

(2)経営成績の分析

①当連結会計年度の概況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による社会経済活動の制限緩和を背景に、景気は緩やかに持ち直しの動きが見られるものの、ウクライナ情勢の長期化による資源・原材料・エネルギー価格の高騰、円安による物価上昇に加え、世界的なインフレに伴う政策金利の引き上げなどによる海外経済減速の影響も懸念され、景気の先行きについては依然として不透明な状況が続いております。

当連結グループが属する建設コンサルタント業界の経営環境は、国土交通省における2022年度当初予算において前年度並みの事業量に加え、約1.6兆円の2022年度補正予算措置が加わり、また、基本方針として「国民の安全・安心の確保」「経済社会活動の確実な回復と経済好循環の加速・拡大」「豊かで活力ある地方創りと分散型の国づくり」の3つの柱が掲げられ、引き続き底堅い経営環境が続いております。

このような状況の中、当連結グループは、第5次中期経営計画2年目にあたる当期におきましても、ESG経営の概念を根底に取り入れながら、1)既存事業強化とサービス領域の拡充、2)多様化するニーズへの対応力の強化、3)環境変化に柔軟に対応できる経営基盤の構築、という3つの基本方針のもと、下記の課題に取り組みながら事業拡大に努めてまいりました。

a.事業戦略強化と領域の拡大

・重点分野におけるソリューション技術の活用で優位性を発揮しつつ、デジタル技術の活用等により国内事業の競争力強化と事業領域の拡大を図るとともに、若手技術者の育成により持続的な競争力を強化する。

・DX推進や国土形成に関連するプロジェクトへの参画など、新たなインフラニーズへの取組みを進める。

・海外事業においては、案件創出型営業により、非ODA型の新規受注を図る。

b.経営管理機能の強化とバリューチェーンの全社最適化

・DX推進により、経営管理、組織管理に必要な数値の見える化を実施し、バリューチェーンにおける効率的・効果的なマネジメントを可能とするシステム構築を加速するとともに、業務の生産性向上と品質の維持・向上を図る。

c.多様性の確保に向けた環境整備の推進

・女性活躍推進も考慮した人財の確保と育成、職員の意欲向上・定着支援を進めるとともに、新卒・中途採用において多様な人財の確保に努めながら、オフィス環境整備、ICT基盤の整備を通じて業務環境改善を推進する。

これらの結果、当連結会計年度の経営成績は、受注におきましては好調な事業環境から期初計画及び前連結会計年度実績を上回る382億49百万円(前連結会計年度比112.3%)となりました。

売上高につきましては、繰越業務量は前連結会計年度を約20億円下回ったものの、順調な受注と着実な業務消化に努めたことから、生産高は前連結会計年度に比べ15億29百万円増加の372億15百万円となり、売上高は前期に比べ8億40百万円増加の375億9百万円(同102.3%)となりました。

一方損益面においては、繰越業務の支出金の原価率が前連結会計年度に比べ悪化したこと、また、従業員の処遇改善等に係る労務費、計測機器の減価償却費等の費用が増加した半面、今年度の発注単価見直し後の受注業務に関しては、その多くが次期への繰越となったことから、売上原価率が67.2%と前連結会計年度に比して0.5ポイント上昇したこと、また、処遇改善費用、DX関連への投資、自社ビルの増改築等による減価償却費の増加等により、販売費及び一般管理費が前連結会計年度から1億30百万円増加したことなどから、営業利益44億62百万円(同99.4%)、経常利益46億36百万円(同98.5%)、親会社株主に帰属する当期純利益は30億59百万円(同98.0%)となり、各利益は僅かながら前連結会計年度実績を下回る結果となりました。

 

なお、売上高、売上総利益及び発注機関別の売上総利益の定量分析は以下の通りです。

 

売上高の定量分析                                (単位:百万円、%)

 

業務別

前連結会計年度

(自 2021年6月1日

至 2022年5月31日)

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

変動

期首繰越受注残高

建設コンサルタント業務

25,219

22,917

△2,302

調査業務

2,806

2,514

△291

合計

28,026

25,431

△2,594

受注高

建設コンサルタント業務

29,665

33,358

3,692

調査業務

4,408

4,890

482

合計

34,074

38,249

4,175

売上高

建設コンサルタント業務

31,968

32,589

621

調査業務

4,700

4,919

219

合計

36,668

37,509

840

期末繰越受注残高

D=A+B-C

建設コンサルタント業務

22,917

23,685

768

調査業務

2,514

2,486

△28

合計

25,431

26,171

740

総業務量

E=A+B

建設コンサルタント業務

54,885

56,275

1,389

調査業務

7,214

7,405

191

合計

62,100

63,681

1,580

総業務量完成率

F=C÷E×100

建設コンサルタント業務

58.2

57.9

△0.3

調査業務

65.1

66.4

1.3

合計

59.0

58.9

△0.1

売上高変動分析

総業務量変動
による要因

総業務量完成率変動による要因

合計

建設コンサルタント業務

809

△187

621

調査業務

124

94

219

合計

933

△93

840

総業務量変動による要因=総業務量変動×前連結会計年度総業務量完成率

総業務量完成率変動による要因=当連結会計年度総業務量×総業務量完成率変動

 

 

売上総利益の定量分析                              (単位:百万円、%)

 

業務別

前連結会計年度

(自 2021年6月1日

至 2022年5月31日)

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

変動

売上高

建設コンサルタント業務

31,968

32,589

621

調査業務

4,700

4,919

219

合計

36,668

37,509

840

売上原価

建設コンサルタント業務

21,119

21,407

288

調査業務

3,346

3,797

450

合計

24,465

25,204

738

売上総利益

C=A-B

建設コンサルタント業務

10,849

11,182

332

調査業務

1,353

1,122

△230

合計

12,202

12,304

101

売上原価率

D=B÷A×100

建設コンサルタント業務

66.1

65.7

△0.4

調査業務

71.2

77.2

6.0

合計

66.7

67.2

0.5

売上総利益率

E=C÷A×100

建設コンサルタント業務

33.9

34.3

0.4

調査業務

28.8

22.8

△6.0

合計

33.3

32.8

△0.5

売上総利益変動分析

売上高変動
による要因

売上原価率変動
による要因

合計

建設コンサルタント業務

210

121

332

調査業務

63

△293

△230

合計

274

△172

101

売上高変動による要因=売上高変動×前連結会計年度売上総利益率

売上原価率変動による要因=当連結会計年度売上高×売上総利益率変動

 

発注機関別の売上高、売上原価、売上総利益増減分析                (単位:百万円、%)

 

発注機関

前連結会計年度

(自 2021年6月1日

至 2022年5月31日)

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

変動

売上高

国土交通省

10,867

10,686

△180

都道府県

11,130

12,295

1,165

市区町村

5,839

5,814

△24

その他

8,831

8,712

△119

合計

36,668

37,509

840

売上原価

国土交通省

7,522

7,385

△136

都道府県

7,196

8,083

887

市区町村

3,937

4,008

70

その他

5,810

5,727

△82

合計

24,465

25,204

738

売上総利益

C=A-B

国土交通省

3,344

3,301

△43

都道府県

3,934

4,212

277

市区町村

1,902

1,806

△95

その他

3,021

2,985

△36

合計

12,202

12,304

101

売上原価率

D=B÷A×100

国土交通省

69.2

69.1

△0.1

都道府県

64.7

65.7

1.1

市区町村

67.4

68.9

1.5

その他

65.8

65.7

△0.1

合計

66.7

67.2

0.5

売上総利益率

E=C÷A×100

国土交通省

30.8

30.9

0.1

都道府県

35.3

34.3

△1.1

市区町村

32.6

31.1

△1.5

その他

34.2

34.3

0.1

合計

33.3

32.8

△0.5

売上総利益変動分析

売上高変動
による要因

売上原価率変動
による要因

合計

国土交通省

△55

12

△43

都道府県

411

△134

277

市区町村

△8

△87

△95

その他

△40

4

△36

合計

307

△205

101

売上高変動による要因=売上高変動×前連結会計年度売上総利益率

売上原価率変動による要因=当連結会計年度売上高×売上総利益率変動

 

(3)生産、受注及び販売の実績

当連結グループは「総合建設コンサルタント事業」の単一セグメントでありますが、生産、受注及び販売の実績については、建設コンサルタント業務、調査業務の2業務に区分して記載しております。

①生産実績

業務別

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

建設コンサルタント業務

32,377

105.0

調査業務

4,837

99.9

合計

37,215

104.3

(注) 上記の金額は販売価格に生産進捗率を乗じて算出しております。

 

②受注実績

業務別

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

受注高

受注残高

金額(百万円)

前年同期比(%)

金額(百万円)

前年同期比(%)

建設コンサルタント業務

33,358

112.4

23,685

103.4

調査業務

4,890

110.9

2,486

98.9

合計

38,249

112.3

26,171

102.9

 

③販売実績

業務別

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

建設コンサルタント業務

32,589

101.9

調査業務

4,919

104.7

合計

37,509

102.3

 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

前連結会計年度

(自 2021年6月1日

至 2022年5月31日)

当連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日)

相手先

販売高(百万円)

割合(%)

相手先

販売高(百万円)

割合(%)

国土交通省

10,867

29.6

国土交通省

10,686

28.5

 

(4)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当連結グループは、2030年度を見据えた長期ビジョン「E・J—Vision2030」を作成し、併せて、直面している課題への対応とビジョン達成に向けた最初のステップとして、2021年度をスタート年とする第5次中期経営計画(2021年度~2024年度)を、2021年7月に策定いたしました。

目標とする経営指標は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標及び(3)中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおりであります。

第5次中期経営計画の2年目である当連結会計年度においては、以下のとおりであります。

指標(連結)

2025年5月期

(目標)

2023年5月期

(実績)

達成状況

目標比(%)

売上高

(百万円)

38,500

37,509

97.4%

営業利益

(百万円)

4,850

4,462

92.0%

親会社株主に帰属する当期純利益

(百万円)

3,350

3,059

91.3%

自己資本利益率(ROE)

(%)

10.0%以上

10.7%

 

 

(5)キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ10億29百万円減少し、159億94百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは13億82百万円の資金増(前連結会計年度は9億56百万円の増加)となり、前連結会計年度と比べ4億26百万円の減少となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益45億68百万円、減価償却費5億39百万円、仕入債務の減少7億89百万円、契約負債の減少11億28百万円、法人税等の支払による18億73百万円によるものであります。

また、前連結会計年度に比べての増減要因は、主に売上債権及び契約資産の増減額が12億40百万円、棚卸資産の増減額が10億25百万円、仕入債務の増減額が12億73百万円、契約負債の増減額が7億86百万円、未払消費税等の増減額が2億65百万円、それぞれ変動したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは14億87百万円の資金減(前連結会計年度は5億5百万円の減少)となり、前連結会計年度と比べ9億81百万円の減少となりました。

これは主に、有形固定資産の取得により6億17百万円、無形固定資産の取得により7億97百万円それぞれ減少したことによるものであります。

また、前連結会計年度に比べての増減要因は、主に有形固定資産の取得による支出額が2億33百万円、無形固定資産の取得による支出額が6億53百万円、それぞれ変動したことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは9億24百万円の資金減(前連結会計年度は13億15百万円の減少)となり、前連結会計年度と比べ3億91百万円の増加となりました。

これは主に、長期借入金の返済により2億13百万円、配当金の支払いにより6億91百万円それぞれ減少したことによるものであります。

また、前連結会計年度に比べての増減要因は、主に自己株式の取得及び処分による収支が3億91百万円変動したことによるものであります。

 

なお、当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは、1億4百万円の資金減となり、将来に向けた積極的な投資をしたと認識しております。

 

(6)資本の財源及び資金の流動性

当連結グループの運転資金需要のうち主なものは、製造原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的等とした資金需要は、主に設備投資等によるものであります。

当連結グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資等に関しては自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は4億28百万円となっております。

 

(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当連結グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択と適用、決算日における資産、負債及び会計期間における収益、費用のそれぞれの金額並びに開示に影響を与える事項についての見積りを必要とします。当該見積りについては、過去の実績や現在の状況に応じて継続して評価を行っておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

当連結グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に以下の会計方針は当連結グループの連結財務諸表作成においては重要であると考えております。

 

①繰延税金資産

繰延税金資産は将来の課税所得を合理的に見積もって、回収可能性を慎重に検討し計上しております。将来の課税所得の見積額に変更が生じた場合、繰延税金資産が増額又は減額する可能性があり、当連結グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

②固定資産の減損

資産を用途により事業用資産、賃貸用資産及び遊休資産に分類しております。事業用資産については管理会計上の区分に基づき、賃貸用資産及び遊休資産については個別物件単位でグルーピングを行っております。収益性が著しく低下した資産グループが生じた場合、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額する可能性があり、当連結グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③受注損失引当金

受注業務に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末の未成業務の内、損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積もることができる業務については損失見込額を計上することとしております。損失見込額が多額となる場合には、当連結グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④のれんの減損

当連結グループは、のれんについて、その効果の発現する期間を見積り、その期間で均等償却しております。また、その資産性について子会社の業績や事業計画等を基に検討しており、将来において当初想定していた収益が見込めなくなった場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上する可能性があり、当連結グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当連結グループの研究開発は、株式会社エイト日本技術開発(以下「EJEC」という。)が主体的に実施しております。

当連結グループでは、多様化・高度化・複雑化する顧客ニーズに対し、質の高い技術サービス及び成果品を提供するため、新技術の修得・導入及び品質・生産性の向上を目指して外部の公的機関等との共同研究も積極的に取り入れながら、多面的な研究開発に取り組んでおります。

EJECの研究開発はデータサイエンス、インフラ技術、災害リスクの3分野からなりEJイノベーション技術センターおよび各事業部で実施しております。

 

当連結会計年度は、主として以下の活動を実施しております。

 

①データサイエンス分野

・業務のDX化に向けた技術開発

・三次元点群データの自然フィルタリング手法の開発

・構造物維持管理におけるDX開発

②インフラ技術分野

・LPデータ(航空レーザー測量データ)を活用した3D河道計画(多自然川づくり)の研究

・交通解析に関する支援技術の開発

・衛星画像活用に向けた技術開発

・携帯型三次元センシング技術の開発(関西大学等との共同研究)

・AIカメラ・IoTの活用に関する技術開発

・業務品質向上に向けた社内情報の利活用のための自然言語処理技術の開発

・河川港湾部門のDATA Visualization(データの可視化)適用に関する技術開発

・IoT・AIの業務への適用方法の研究開発

・PC橋(プレストレスト・コンクリート橋)の維持管理・更新に関する研究

・AIを活用した道路橋メンテナンスの効率化に関する共同研究(国立研究開発法人土木研究所との共同研究)

・港湾・漁港の健全度管理システム開発

・制振デバイス(ダンパー等)の非線形性が応答値に与える影響検証

③災害リスク分野

・STIV解析(時空間画像(動画)による流速解析)を用いた流量観測高度化

・SAR画像(人工衛星レーザー画像)など衛星データを活用したリモートセンシング技術による土砂災害検知技術の開発

・地すべり機構解析CIMモデル(3次元地形モデルを「バーチャル現場」として活用し、地すべり災害の状況をカラー点群データで再現したモデル)の作成及び活用の検討

・被害推定手法の高度化等に関する研究開発

・南海トラフ地震を見据えた事前復興に関する調査研究

・水槽模型実験を用いたため池堤体の降雨浸透に対する研究

・動的な破壊解析手法の検証~地盤材料への弾塑性理論の適用~

・土質定数データベースの構築とAIを用いた設計用土質定数設定プログラムの開発

・AUV(自律型無人潜水機)で取得した地形・水質データの高度利用に関する研究

・火山砂防・火山防災啓発事業に関する調査研究

・火山ハザードに関する調査研究

・干渉SAR(人工衛星レーザー画像を使った観測技術)によるインフラメンテ・災害監視システムに関する研究

 

研究成果

当連結会計年度に完了した主な研究開発活動の成果の概要を以下に示します。

三次元点群データの自然フィルタリング手法の開発:BIM/CIM(3次元モデルを導入し、建設生産・管理システムの効率化・高度化を図る取り組み)で必要とされる三次元データの取得は数日で完了することが多いが、データ解析やフィルタリングには数週間を要す。また、フィルタリング技術の修得にも時間を要すため技術者の育成も十分でない現状を踏まえ、三次元点群データのフィルタリングに対応するソフトの調査や自動化・AI化の可能性の調査を行った。その結果、パラメータの調整により解析のスピードアップ、省力化、精度(品質)向上が図ることができることを確認した。

SAR画像など衛星データを活用したリモートセンシング技術による土砂災害検知技術の開発:近年土砂災害が広域に発生していること、令和2年に国総研から「SAR画像による土砂災害判読の手引き」が発表されていることを踏まえ、衛星データによる土砂災害状況の把握手法について検討した。衛星データによる土砂災害状況検知の精度は事象発生地域の地域性の特徴(地形、植生等)や発生時の観測状況に大きく左右されるため、本手法はあくまで次ステップの調査の手掛かりとなる一次調査と位置付けることが妥当であるとの認識を得た。

衛星画像活用に向けた技術開発:干渉SARによる地表面変位計測技術により、市街地においては大規模盛土地域のうち危険度が高い地域の抽出、森林部においては地すべり等の危険度が高い地域の抽出を試みた。前者については計測した沈下量は既存の観察データと概ね一致し、さらなる検討が必要なものの危険度が高い大規模盛土地域を抽出できる可能性が確認できた。後者については効果的な計測条件の整理、精度検証等の課題が抽出できた。

地すべり機構解析CIMモデルの作成及び活用の検討:令和5年度より国交省業務においてBIM/CIMが原則適用され、今後三次元地すべり機構解析CIMモデルを用いた計画調査設計業務が増加することが見込まれる。これを受け、本研究では既往資料の収集整理、試行等により実業務に3次元地すべり機構解析CIMモデルを適用するに際しての課題抽出を行った。今後は抽出された各課題について個別に対応していく。

携帯型三次元センシング技術の開発(関西大学等との共同研究):関西大学「携帯型三次元センシング技術開発コンソーシアム」に参加し安価な携帯型三次元点群計機器の開発に加わると同時に、EJECが所有する携帯型三次元点群計機器の効率的な活用について検討した。EJECが所有する機器はUAV(Unmanned Aerial Vehicle 通称ドローン)写真・レーザ測量における建物・樹木下の地形測量(補完測量)、三次元点群測量(地上レーザ計測)における補測計測(補備測量)、BIM/CIM等の業務に活用が期待できることを確認した。

南海トラフ地震を見据えた事前復興に関する調査研究:四国管内では南海トラフ地震を見据えた事前復興の取組みが動き出しつつある。EJECでは事前復興関係業務の受注拡大をめざし宇和島市復興デザインの取り組み、えひめ建設技術防災連携研究会、事前復興に関する大学・コンサルタントとの合同勉強会等へ参加し、大学(東京大学、愛媛大学)、自治体等に高い技術力をアピールし関係を深めると同時に若手技術者の技術力向上を図った。

制振デバイスの非線形性が応答値に与える影響検証:EJECは鋼橋技術研究会(会長:藤野陽三東京大学名誉教授)耐震設計部会に参画している。同部会では橋梁耐震解析の精度に関し検討を行っており、EJECは制振デバイスの設定方法が応答値に与える影響の検討を担当した。粘性ダンパー、鋼材せん断降伏系・軸降伏系ダンパーの非線形性が応答値に与える影響を検証し、制震デバイスを用いた耐震設計の実務で留意すべき事項を整理した。また、成果を土木学会「耐震シンポジウム」や雑誌「橋梁と基礎」に投稿した。これらの活動を通じて官民学各方面にEJECの技術力をアピールできたと同時に、耐震設計関係業務の受注拡大の足掛かりができた。

港湾・漁港の健全度管理システム開発:地方港湾・漁港では定期的な深浅測量に基づき維持管理計画が作成され泊地・航路の維持浚渫工事が実施されるが、近年の波浪激甚化、台風の大型化、河川の異常出水の影響等により土砂堆積量の増大が顕著化し、入出港に支障をきたす状態となってから緊急浚渫となるケースが増加している。これを受け、気象・海象等のビッグデータを基としたAIにより港内の土砂移動を予測し、港湾・漁港の浚渫管理をサポートするシステムの開発を行った。鳥取県と協議の上、長和瀬漁港をモデルとしてシステムを構築しその精度(有効性)を確認した。今後は鳥取県内他港の管理システム構築業務の受注をめざす。

 

当連結会計年度における研究開発費用の総額は96百万円であります。なお、当連結グループのセグメントは「総合建設コンサルタント事業」のみであります。