第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、提出日現在において当連結グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

私たち「E・Jグループ」は、現在と未来の人々にとって、真に価値ある環境を求めて「今、なにをすべきか」を常に念頭において、建設コンサルタント事業を中核とするインフラマネジメント全般に係わる事業を拡大・発展してまいります。「環境」「防災・保全」「行政支援」における3つの領域のマネジメント力・技術力をコア・コンピタンスとして、地球レベルから地域レベルまでを対象に、時代や社会が求める新たな事業モデルの構築による収益の向上に意欲的に取り組むことをグループ全体で共有し、社会の進化と人類の豊かさへの願いを胸に、高度化・多様化するニーズに応えて、世界へ羽ばたくコンサルティング企業集団、すなわち「わが国第一級のインフラ・ソリューション・コンサルタントグループ」を目指しております。

 

(2)目標とする経営指標

当連結グループは、持続可能な成長の実現と企業理念の実現を目指すべく、経営指標としては、顧客からの信頼性を反映する指標として売上高、企業の収益性を反映する指標として営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益、投資効率性を反映する指標として自己資本利益率(ROE)を、目標とする経営指標として掲げております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当業界をとりまく今後の経営環境につきましては、激甚化・頻発化する自然災害、人口減少等による地域社会の変化、加速化するインフラの老朽化、デジタル革命の加速、グリーン社会(2050年カーボンニュートラル)の実現に向けた動きやライフスタイル価値観の多様化などへの対応など、社会課題解決につながる需要は一層拡大していくものと考えています。

また、国内市場における受注環境につきましては、長期的視点では、国の財政状態の動向等を含め不確定要素も多く、現時点では明確な見通しはやや立てにくい状況にありますが、中期的視点では、気候変動による気象災害の激甚化・頻発化への対応や巨大地震への備え、高度成長期以降に整備されたインフラの老朽化対応の必要性等を背景に、2020年度には約15兆円の「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」予算措置が講じられ、その後、2023年6月に「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法の一部を改正する法律」が可決成立し、それを受けて、2025年6月に閣議決定された「第1次国土強靭化実施中期計画」では、2026年度からの5年間で約20兆円規模の国土強靭化施策が実施されることが確定しました。これによって、当面は安定的な経営環境が見込まれるものと考えております。他方で、世界経済は、格差の拡大、地政学的リスクの増大、深刻化する地球温暖化への対応、金融情勢の不安定化、AI技術の急速な進化、国内においては人口減少の深刻化等不確実性、不透明性がますます高まっております。

今後の社会情勢の変化に伴い、社会資本のあり方や質も変わり、その整備に携わる建設コンサルタントの役割・領域・分野も変化しながら拡張することが予想され、また一方では、地球環境・社会の持続可能性が問われ、企業経営においては「ESG経営の視点」が非常に重要になってきております。

当連結グループは、2021年7月に公表した長期ビジョン「E・J-Vision2030」(2022年5月期~2031年5月期)と、そのビジョンの達成に向けた最初のステップとなる第5次中期経営計画「E・J-Plan2024」(2022年5月期~2025年5月期)期間において達成された事業基盤や収益力の拡大・強化を踏まえ、継続的な取組みが必要なバリューチェーンの進化や企業価値のさらなる向上のための経営基盤の強化などを課題として、2025年度をスタート年とする第6次中期経営計画「E・J-Plan2027」を新たに策定いたしました。なお、第6次中期経営計画での業績は、長期ビジョン「E・J-Vision2030」の業績目標を前倒ししたものとしていることから、長期ビジョンについては、今後、達成時期の修正も含めた見直しを予定しています。

 

第6次中期経営計画 「E・JPlan2027」の概要

(1)第6次中期経営計画の基本方針

第6次中期経営計画は、長期ビジョン「E・J-Vision2030」における「拡大・進化」の期間として位置付けており、第5次中期経営計画の成果と課題および外部環境を踏まえて、以下の4つの基本方針を設定し、事業規模の拡大と企業価値向上に取り組んでまいります。

(基本方針1)基幹事業の拡充と新領域の開拓

①基幹事業における重点6分野の拡充

②新事業への参入

③新市場の開拓

(基本方針2)海外ビジネス本格化への挑戦

①地域×分野を活かす得意分野の拡大

②得意地域における拠点現地化の促進

③グループ企業とのパートナーシップ強化

(基本方針3)バリューチェーンの強化

①プロダクトイノベーション

②プロセスイノベーション

③共創イノベーション

(基本方針4)サステナビリティ経営の推進

①環境負荷軽減に対する取組み

②社会的責任・人的資本への取組み

③ガバナンスに対する取り組み

④資本コストや株価を意識した経営の実践

 

(2)連結業績目標(2028年5月期)

売上高

500億円

営業利益

59億円

親会社株主に帰属する当期純利益

39億円

自己資本利益率(ROE)

10%以上

注)売上高500億円には、新たなM&Aによる業績見込みは組み込んでいません。

 

(4)会社の優先的に対処すべき課題

次期におきましては、第6次中期経営計画の基本方針のうち、以下を優先課題として取り組み事業拡大に努めてまいります。

(基本方針1)基幹事業の拡充と新領域の開拓

 国内事業については、重点6分野(環境・エネルギー分野、自然災害・リスク軽減分野、都市・地域再生分野、インフラメンテナンス分野、公共マネジメント分野、デジタルインフラソリューション分野)の拡充とともに、同業並びに異業種との新たなパートナーシップにより、新事業・新市場への参入や開拓への足掛かりを確実に進め、中長期的な成長を視野に入れた事業拡大を目指す。

(基本方針2)海外ビジネス本格化への挑戦

 海外ビジネスについては、多くの実績を持つアフリカ地域での道路・橋梁・給水インフラの拡大、アジア地域における環境・防災分野の足固め、東南アジア地域における廃棄物分野のトップシェアの獲得など、得意分野を確実に拡大するとともに、これらの地域の営業拠点の整備や現地のパートナーシップ会社との協力体制の整備によって案件や生産の現地化によって事業拡大を目指す。また、エイト日本技術開発とタイのダイナミック社やEJECタイランド、さらには東京ソイルリサーチなど、グループ企業とのパートナーシップ強化による事業拡大を着実に進める。

(基本方針3)バリューチェーンの強化

 オープンイノベーションの活用やIT・AI企業との連携による差別化商品・技術の開発(プロダクトイノベーション)、基幹システムの高度化によるバリューチェーンの効率化やIT・AIの活用による業務プロセスの改善(プロセスイノベーション)、グループ内外の企業との共創による競争力や総合力の拡大(共創イノベーション)への取組みを推進することにより、グループ全体としてのバリューチェーンの強化を目指す。

(基本方針4)サステナビリティ経営の推進

 温室効果ガス削減やSBT認証目標達成などの環境負荷軽減の取組みを継続するとともに、人権尊重への取組みの強化や企業価値を最大化する人的資本経営の実践、リスク対応を含めたガバナンス強化、資本コストや株価を意識した経営の実践への取組みを継続する。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当連結グループは、グループミッションを「地球環境にやさしい優れた技術と判断力で、真に豊かな社会創りに貢献」と定め、国土や環境のサステナビリティを確保すべく、企業活動を行うようSDGs目標を定めて事業を行っております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当連結グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当連結グループは、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、気候変動を含むESGに関する経営のリスクと機会について審議・決定するとともに、担当取締役企画本部長の下で「企画本部」がその具体化を進めております。

また、「取締役会」は、「サステナビリティ推進委員会」で協議・決議されたサステナビリティ経営に係る課題と対応策について報告を受け、E・Jグループの持続的成長に向けた対応方針及び実行計画等についての論議・監督を行っております。

併せて、資本コストを意識した経営を継続し、資本コストの低減、資産構成の見直しも検討事項に加えROEの向上に努めるとともに、投下資本効率の向上を目指して、業務プロセス改善を進め、PBR(株価純資産倍率)1倍以上となるよう、企業価値向上に取り組んでまいります。

 

 

<サステナビリティ経営にかかるガバナンス体制>

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(2)戦略

①気候変動に対する取り組み

<全般的取り組み>

2022年5月期より、パリ協定(※1)が示す「産業革命前からの全世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるという目標」達成に向けた取り組みに着手し、TCFD(※2)の枠組みに沿った環境情報を当社のホームページ(URL https://www.ej-hds.co.jp/sustainability/s_environment/tcfd.html)で継続的に開示しております。

前連結会計年度(2024年5月期)において、SBTイニシアティブ(※3)より、当社のCO₂排出量削減目標が、世界の気温上昇を1.5℃以下に抑えることを目指した科学的根拠に基づくものであるとの認定(SBT認定)を取得するとともに、2022年5月期より開始した環境評価の情報開示に国際的に取り組む非政府組織(NGO)であるCDP(※4)が主催する気候変動情報開示に対する活動を評価する「気候変動プログラム」において、2年連続で「B」スコアを取得いたしました。

※1 パリ協定:

2015年12月にフランス・パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で成立した2020年以降の地球温暖化対策の国際的な枠組みで、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2.0℃より十分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求することを目的とする国際協定を指しております。

※2 TCFD:

気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース」を指し、気候変動に関する情報開示の項目及び内容について提言しております。

 

 

※3 SBTイニシアティブ:

複数の気候関連イニシアティブによる共同イニシアティブであり、企業に対し、気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ、1.5℃に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進しております。

※4 CDP:

機関投資家が連携し、企業に対して気候変動への戦略や具体的な温室効果ガスの排出量に関する公表を求めるプロジェクトを指します。2000年の発足当初は「Carbon Disclosure Project」が正式名称でありましたが、現在はCarbon以外も対象とすることから、略称のCDPが正式名称となっております。このプロジェクトは発足以降、主要国の時価総額の上位企業に対して、毎年質問表が送付されており、企業側からの回答率も年々高まってきております。日本国内でも2005年より活動を始めており、2021年度までは日本企業のトップ500社を対象としておりましたが、2022年度からその対象を東京証券取引所プライム市場上場会社に拡大し、2024年度にはプライム上場企業の70%以上を含む、2,100社以上が回答しております。

<TCFDフレームワークに基づく取り組み>

当連結グループは、2022年5月期に、グループ会社全体を対象として、気候変動によるリスク・機会の特定・評価、気候関連問題が事業に与える中長期的な影響を把握するため、TCFDフレームワークに準拠したシナリオ分析を実施しております。

<シナリオ分析>

シナリオ分析の概要は以下のとおりであります。

・分析の時間軸は、当社の長期ビジョンの最終年度である2030年からカーボンニュートラルの目標年度である2050年までの中長期を対象といたしました。

・分析においては、以下に示すシナリオを採用し、政策や市場動向の移行リスク・機会と、地球温暖化による水面上昇や自然災害などによる水面上昇や自然災害などによる物理的変化に起因する物理的リスク・機会の特定と財務的影響を定性評価いたしました。採用した主なシナリオは以下のとおりであります。

(移行シナリオ)

国際エネルギー機関(IEA)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇を1.5℃以下に抑えるシナリオ(SDS及びNZE)

(物理的シナリオ)

国際気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が策定したシナリオのうち、産業革命前と比べて今世紀末の気温上昇が4.0℃を超えるシナリオ

・各シナリオの前提条件は、各国際機関等が公表している将来的な気候予測や、日本政府による各種データにもとづき設定いたしました。

<事業インパクト評価>

・シナリオ分析に基づく事業インパクト(リスクと機会)評価結果は下記の通りです。

・財務的影響につきましては、2030年の営業利益目標に対する影響程度を大、中、小の3段階で評価いたしました。

 

■1.5℃シナリオに対する移行リスク

分類

要因

2030年度における

事業インパクト

リスク

機会

影響の時間軸

2030年度における財務的影響

対応策

政策・規制

脱炭素社会に向けた規制強化(炭素税の導入等)

・炭素税(140ドル/ton×3700tco2)の負担額増加(2030年度のスコープ1,2のCO₂排出総量に対する課税を想定)

・CO₂削減のための対策費用の増

 

2030

CO₂排出量の削減(省エネ施設への更新、再エネへの転換、ハイブリッド車及び電気自動車への更新 等

市場

脱炭素社会向け商品・事業のニーズ増加・拡大

・CO₂削減・環境負荷軽減事業への参画の可能性

・再エネ管理事業への参入の可能性

・新技術、新素材の開発の可能性

 

2030

脱炭素関連の新規事業への参入、研究開発の強化

市場

ESG投資の拡大

・脱炭素への取り組み姿勢の評価による投資の拡大

 

2030

小~中

環境関連施策の確実な実践

 

■4.0℃シナリオに対する物理リスク

分類

要因

2030年度における

事業インパクト

リスク

機会

影響の時間軸

2030年度における財務的影響

対応策

慢性

平均気温上昇

・野外での労働条件の悪化に対するコスト増

 

~2050

野外労働環境の改善、現場作業の省人化の推進、劣悪環境に対する手当の考慮

急性

集中豪雨に起因する気象災害の激甚化

・災害対応業務のニーズ拡大

・国土強靭化への対応に関するニーズ拡大

 

2050

災害対応、国土強靭化対応の強化、人員のシフト、関連技術の研究開発・アライアンスの強化

急性

降水量の減少

・水環境関連業務のニーズ拡大

 

2050

水環境関連対応の強化、人員のシフト、関連技術の研究開発・アライアンスの強化

急性

海面上昇、気象災害の激甚化

・事業所の土砂・洪水災害リスクへの対応

 

2050

事業所の洪水リスクは限定的

 

 

<気候関連のリスクと機会に対する対応策>

・事業インパクト評価により特定されたリスクと機会のうち、インパクトが大きいと判断された機会に対して、現時点で考えられる対策例を以下に示しております。

・当連結グループでは、長期ビジョンのもと、このような対応を推し進めるとともに、これらの機会を確実にとらえて、SDGs目標の達成につながるサステナブルな世界の進展に貢献してまいります。

 

分類

要因

対応例

移行/市場

脱炭素社会向け商品・事業のニーズ増加・拡大

・再エネ(バイオマス)関連計画の拡大

・脱炭素を目指した廃棄物処理システムの再構築

急性

異常気象の激甚化による災害発生への対応

・グリーンインフラ形成

・再エネ利用スマートシティ

・流域治水計画、立地適正化

・河川、砂防施設の更新

・避難計画、被害想定、BCP、防災訓練・防災計画の更新

・減災計画の見直し

・土砂災害対策施設の更新・新設

・各種監視、避難誘導、情報伝達システムの新設更新

・雨水管理計画の見直し、処理場・ポンプ場施設の更新

物理的/急性

降水量の減少

・灌漑事業の拡大

・地下水利用計画

 

 

②人的資本・多様性(人材の育成及び社内環境整備に関する方針)に関する取り組み

当連結グループは、グループ事業の発展が社会に貢献していくものとして、長期に亘る業容拡大を目指しています。この成長を作り出すのは、人材と適切な職場環境であり、「人材は会社にとって最大の資本であり、その確保・育成に努める」ことを人材基本方針として掲げ、社員の満足度を高め、やりがいのある職場づくりを目的に、働き方改革を推進しております。この取り組みのベースとしているのが生産性の向上です。他の産業に漏れず、建設コンサルタント業界も人手不足の状況にあり、国土交通省が進める「i-Construction」や「CIM」など、AI、ICTを活用した生産性向上を推進しております。また、満足度向上に重要なワーク・ライフ・バランス(WLB)についても取り組みを進め、当社グループの主要子会社である株式会社エイト日本技術開発では、働き方改革のキャッチコピーを定め、社内への浸透を図っております。

一方、建設コンサルタント業界は、大きな変革の時代を迎える中で、従来にも増して活躍の場が広がっております。そして、社会に提供するインフラには、お客さまやご利用者・地域住民のご要望、環境負荷低減、修景、将来への拡張性など、多様な視点・価値観が必要となり、E・Jグループは社員の教育・研修と共に人的資本経営にも力を入れております。

<人的資本経営に関する取り組み方針>

E・Jグループがマテリアリティ(サステナビリティ重要課題)として掲げる「ダイバーシティ経営の実践」では、多様な人材がその能力を最大限に発揮できる環境を提供することによって、個人と組織がともに持続的成長を成し遂げるものです。多様性を確保していくうえで、特に力を入れているのが女性活躍です。元来、建設コンサルタント業界では、女性の就業比率が低く、男性中心の人員構成となっておりました。このような中、グループ子会社である株式会社エイト日本技術開発では2021年より「くるみん」を取得し、同社を含めグループ会社である株式会社共立エンジニヤ、株式会社ダイミックの3社は女性活躍を推進する行動計画を策定し、「えるぼし」の認定を受けています。今後も、他のグループ子会社を含めて、女性管理職比率の向上や男性社員の育休取得率の向上等、女性活躍のための様々な取り組みを積極的に行ってまいります。また、当連結グループにおける「女性活躍推進法」に基づく「全労働者の男女の賃金の差異」は58.1%(EJEC(Thailand) Co.,Ltd.除く)であり、当該差異の縮小を図るべく取り組みを進めてまいります。

<働き方改革の推進>

当連結グループでは、全役職員が活き活きと働き、やりがいのある職場づくりを目指して働き方改革を進めております。この働き方改革を進めていくに当たりましては、業務のデジタルシフトによる、“しくみを変え”、“しごとを変える”ことに取り組んでおります。デジタルシフトにより効率化を図り、長時間労働の更なる是正や多様な働き方が可能な環境の整備とともに、多様な人材が能力を最大限に発揮できる新しい働き方を創り出すことに努めております。具体的な取り組みといたしましては、複数のE・Jグループ各社において、ウィークリースタンスの徹底やノー残業デーなどを実施しております。また、E・Jグループ各社のうち株式会社エイト日本技術開発では、「次世代育成 行動計画」を見直し、アニバーサリー休暇を正式に制度化するとともに、育児・介護に係る「勤務地限定正社員制度」も導入しております。

<人材育成>

企業経営にとって最大の資産となる人材の育成について、E・Jグループは、3つの領域を考えています。1つ目は、倫理・あり方などの人間としての育成です。2つ目は、働く上でのリーダーシップやマネジメントなどのキャリア形成です。そして、3つ目は、業界の第一線で働き続けるための技術・ノウハウの修得です。この3つの領域を相互に連携させながら、OJTや研修などを通じて社会に開かれた人材の育成を進めてまいります。

特に、建設コンサルタント業界においては、事業領域が拡張することにより習得すべき知識・技術が広がり、日進月歩のテクノロジーの進化を取り込む教育が重要となっているため、株式会社エイト日本技術開発の中に企業内学校として「EJアカデミー」を開設し、E・Jグループ社員が参加することで、グループの技術力の向上・人的資源の拡充を目指しております。

<健康・安全を意識した経営>

グループ会社6社では、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」の取り組みが優良であると認められ、「健康経営優良法人」の認定を取得しており、今後も未取得のグループ会社においても取得を推進してまいります。

また、各グループ子会社では法令に基づき、定期健康診断の受診を徹底するとともに毎年1回、従業員を対象にストレスチェックを実施し、主要子会社である株式会社エイト日本技術開発では、2024年度実施率が97.6%となっております。今後も健康リスク値の状況を判定することで明らかになった課題に対して適切な社内体制の構築及び改善策実施を進めてまいります。

<エンゲージメント向上にむけた取り組み>

厳選したプロフェッショナル集団による生産性・効率性の高い経営が当連結グループの収益性の源泉であることから、近年、当連結グループでは、採用活動や研修についてもグループ企業合同で展開し、人的資本の充実に大きく注力しております。特に若年層に対する業務上のノウハウ、専門技術の伝承は一定の期間及び必要な人材を要するため、若年層はもちろんのこと、グループ全体での離職率を増加させない事が課題のひとつであると認識しております。建設コンサルタント業界においても人材の流動化が高まっている事から、当連結グループとしては、上記の取り組みを着実に実施する事で従業員の定着率を高めていくことを目指しており、当期におけるグループ全体の離職率は3.9%(EJEC(Thailand) Co.,Ltd.除く)で、昨年度対比0.6ポイント低減しています。

また、当連結グループでは、当期からグループ全体で独自のエンゲージメント調査を実施し、課題の早期認識、対策の立案、取り組みを実施する事で組織における心理的安全性を確保し、従業員のエンゲージメントとパフォーマンスを高めることに努めています。

 

(3)リスク管理

当連結グループは、グループ全体のリスク管理の推進全般を統括する組織としてグループリスク管理委員会を設置しており、気候変動リスク、人的資本経営リスクを含む、全てのリスクを対象として、グループリスク管理委員会において、特定・評価を実施すると共に、是正計画の妥当性を審議し、継続的にモニタリングできる体制を構築しております。具体的な取り組みとして、人権リスクへの対応では、2022年12月1日付で人権方針を策定しており、2023年度より人権デューデリジェンスを実施し、その取り組み状況について、当社ホームページ(※1)にて人権尊重の取り組みと共に公表しています。引き続き人権侵害に係る救済プロセスを適切に進めてまいります。

また、気候変動リスクへの対応につきましては、TCFDに関する調査、モニタリングを企画本部にて行い、サステナビリティ推進委員会で適切に管理しております。

併せて当社取締役会およびグループ経営会議等での取り組みを通じて、建設コンサルタント業界の事業領域拡大に伴う技術者に求められる知識・技術の広がりや高度化に対応すべく必要な基盤整備を行い、引き続き適切な人的資本経営に努めてまいります。

(※1)当社ホームページ https://www.ej-hds.co.jp/sustainability/s/basic.html

 

(4)指標及び目標

 ①気候変動に対する指標と目標

<CO₂排出量削減目標>

SBT認定取得の過程において、長期ビジョン「E・J- Vision2030」の最終年度である2030年度に向けたCO₂削減目標の見直しを行い、2023年10月に下記の目標に対してSBT認定を取得しました。今後は、この目標に沿って、事業活動におけるCO₂削減の取り組みを進めてまいります。

 

■CO₂排出量削減目標(SBT認定取得:1.5℃水準)

分類

2030年度CO₂排出量目標(※)

スコープ1

基準年排出量の42.0%削減

スコープ2

スコープ3

カテゴリー1

2027年度までにカテゴリー1のCO₂排出量の72.9%以上を占めるサプライヤーとの間にエンゲージメント目標を設定

カテゴリー6

基準年排出量の25.0%削減

                       ※ 削減目標の基準年は、2022年5月期とします。

 

<温室効果ガス(CO₂)排出量の実績値>

・2025年5月期の温室効果ガス(CO₂)排出量の実績値は以下のとおりであります。

・スコープ1の燃料消費による直接排出については、社有車のハイブリッド車及び電気自動車への積極的な更新により、また、スコープ2の電力使用による間接排出については、電力の再生可能エネルギー由来による調達や非化石証書の購入などの削減努力を進めてまいりましたが、新たな関係会社(㈱東京ソイルリサーチ)の加入により、排出量の増大を避けることができず、結果として5.9%の増(前連結会計年度は39%の減)となりました。期末時点におけるハイブリッド車及び電気自動車の比率は保有台数の48%(前連結会計年度実績42%)、使用電力の再生可能エネルギーおよび非化石証書の購入による電力調達比率は、全使用量の65%(前連結会計年度実績59%)となりました。

・また、スコープ3についても、㈱東京ソイルリサーチの加入や、コロナ禍であった基準年に比べて、事業活動が活発化していることにより、大幅に増加している状況にあります。SBT認定取得目標である排出量全体の64%を占めるカテゴリー1のエンゲージメント目標については、本会計年度で実施したサプライヤーに対するアンケート調査結果を踏まえて、次年度に方針を定めて具体的な活動を進めてまいります。

■温室効果ガス(CO₂)排出量の実績値

分類(※)

指標

目標

基準値

(2022年5月期)

(tCO₂)

前々期実績

(2023年5月期)(tCO₂)

前期実績

(2024年5月期)(tCO₂)

実績

(2025年5月期)(tCO₂)

2030年度CO₂

排出量

(tCO₂)

2030年度CO₂

削減率

(%)

スコープ1

2,774

1,879

1,677

1,776

1,609

▲42.0

スコープ2

スコープ3

(カテゴリー1)

17,427

17,404

16,916

22,357

スコープ3

(カテゴリー2~5、7)

2,517

3,961

3,474

7,700

スコープ3

(カテゴリー6)

1,806

2,654

2,815

3,261

1,354

▲25.0

合計

24,524

25,898

24,882

35,094

※ スコープ1:燃料消費によるCO₂の直接排出

  スコープ2:電力消費等のエネルギー消費によるCO₂の間接排出

  スコープ3

   カテゴリー1:購入した製品・サービスによる間接排出(サプライチェーン排出)

   カテゴリー2:自社の資本財の建設・製造に伴う間接排出

   カテゴリー3:スコープ1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動による間接排出

   カテゴリー4:輸送、配達(上流側)による間接排出

   カテゴリー5:事業から出る廃棄物の輸送、処理に伴う間接排出

   カテゴリー6:従業員の出張に伴う間接排出

   カテゴリー7:従業員の通勤に伴う間接排出

 

 ②人的資本・多様性に関する指標と目標

当連結グループは、グループ事業の発展が社会に貢献していくものとして、長期に亘る業容拡大を目指しています。この成長を作り出す原動力は人材であり、その適切な職場環境の充実が重要であると考え、社員の満足度を高め、やりがいのある職場づくりを目的として、以下の指標と目標のもと、人的資本経営の推進に取り組んでいます。

指 標

前期実績
(2024年5月期)

今期実績

(2025年5月期)

2028年5月期

目標値

2030年度

目標値

女性管理職比率

4.7%

4.8

8.0

10.0%以上

男性育休取得率

60.9%

76.5

100.0

100.0%

女性の活躍は当連結グループの成長に不可欠であり、2030年度には、女性管理職10%以上を達成することを目標としています。また、この目標を達成するために新入社員に占める女性比率について、毎年30.0%以上を目指すこととしております。新入社員に占める女性比率は、2024年5月期18.6%、2025年5月期 14.9%と未達で、女性管理職比率は、ほぼ前年並みに留まっていますが、目標を実現するために引き続き新入社員に占める女性比率を毎年30.0%以上とすることを目指して、採用活動を進めてまいります。

 

第6次中期経営計画「E・J—Plan2027」では、従来設定していた上記の指標に加えて、以下の指標と目標を設定いたしました。

指 標

第6次中期経営計画最終年度

2028年5月期目標値

技術者正社員数

1,600

有資格者数(技術士)

850

エンゲージメントスコアの向上

2025年度比3.0アップ

 

以上の取組みにより、働き易い職場環境と自由な発想による生産性向上を実現し、自社の競争力強化に繋げ、全てのステークホルダーへの還元を積極的に実施するとともに、E・Jグループ企業価値の更なる向上に努めてまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当連結グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当連結グループが判断したものであります。

 

(1)官公庁等への売上依存について

当連結グループは、国土交通省等の中央省庁及び地方自治体を主要顧客としており、これらの官公庁等に対する売上依存度は85%程度と高い比率になっております。このため、当連結グループの経営成績は、今後の公共投資額の変動により影響を受ける可能性があります。このリスクに対応するため、海外や民間受注を増やすべく営業活動を実施しております。

 

(2)経営成績の季節的な変動について

当連結グループでは、主として顧客に成果品を納品した時点で収益を認識することとしており、主要顧客である中央省庁及び地方自治体への納期が年度末に集中することから、売上高は第4四半期連結会計期間に偏重しております。これに伴い、当連結グループの利益も第4四半期連結会計期間に偏重する傾向があります。

なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の各四半期連結会計期間の売上高、営業損益は、下表のとおりであります。

(単位:百万円、%)

 

 

前連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日)

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

 

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

通期

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

通期

売上高

3,207

4,672

8,263

21,064

37,207

3,082

4,510

8,916

26,196

42,705

構成比

8.6

12.6

22.2

56.6

100.0

7.2

10.6

20.9

61.3

100.0

営業利益又は営業損失(△)

△952

△474

792

4,982

4,348

△1,053

△745

618

5,662

4,481

 

(3)災害による事業活動への影響について

当連結グループの事業拠点の中には、大規模地震や水害の危険性が指摘されている地域に含まれているものがあります。当連結グループでは、このような自然災害に備えてBCP(事業継続計画)を策定し、また株式会社エイト日本技術開発においては、内閣府が推進する「国土強靭化貢献団体」の認証(レジリエンス認証)を受けるなど防災管理体制を強化しておりますが、災害の規模によっては主要設備、データの損傷等により、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)新型コロナウイルス等、感染症拡大について

当連結グループの従業員に新型コロナウイルス、インフルエンザ、ノロウイルス等の感染が拡大した場合、一時的に業務を停止するなど、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当連結グループでは、これらのリスクに対応するため、予防や感染拡大防止に対して適切な管理体制を構築しております。

今般、世界的に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症に関しては、対策本部を設置し、在宅勤務等のテレワーク、時差出勤、職場における3密の排除、出張等の移動制限、毎日の検温など、従業員の安全と健康を最優先した対応を徹底し、感染者が発生した場合の対応等も定めて影響の極小化を図ってまいりました。

 

(5)成果品に関する瑕疵について

当連結グループでは、専任者による厳格な照査等を実施することにより、常に成果品の品質の確保と向上に努めております。また、万が一瑕疵が発生した場合に備えて損害賠償責任保険に加入しております。しかし、成果品に瑕疵が発生し賠償金を支払うこととなった場合や指名停止などの行政処分を受けるような事態が生じた場合には、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(6)法的規制について

当連結グループは、所管官庁から建設コンサルタント登録、補償コンサルタント登録、測量業者登録及び地質調査業者登録等の登録を受けて事業活動を実施しております。将来、当該登録の取り消し又は更新が認められない場合、もしくは今後、これらの法律等の改廃又は新たな法令規制が制定された場合には、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。登録の更新が認められるよう、有資格者や業務実績の確保に努めております。

また、当連結グループの事業活動には、会社法、金融商品取引法、独占禁止法、下請法、並びに、各登録分野に関する法令・規則・基準等による規制があります。このため、当連結グループでは、コンプライアンス・プログラム及びリスク管理規程等を作成し、行動規範、遵守項目、行動指針などを定め、すべての役職員が法令遵守の徹底に努めております。万が一法令違反が発生した場合には、指名停止などの行政処分を受ける可能性があり、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、提出日現在における当連結グループの主要な登録状況は下表のとおりであります。

登録の名称

所管官庁

会社名

登録番号

有効期限

有効期間(5年)

登録取消事由

建設コンサル

タント登録

国土交通省

㈱エイト日本技術開発

建06第116号

2029年9月30日

建設コンサルタント

登録規程

(第6条)

登録をしない場合

(第12条)

登録の停止

(第13条)

登録の消除

日本インフラ

マネジメント㈱

建06第6550号

2029年6月27日

㈱近代設計

建06第711号

2029年9月30日

㈱共立エンジニヤ

建06第5315号

2029年9月26日

共立工営㈱

建03第5816号

2026年11月10日

都市開発設計㈱

建07第6727号

2030年3月31日

㈱北海道近代設計

建05第10534号

2028年1月23日

㈱アーク

コンサルタント

建04第3336号

2027年1月23日

㈱アイ・デベロップ・

コンサルタンツ

建04第5877号

2027年1月15日

㈱ダイミック

建06第4749号

2029年11月12日

㈱東京ソイルリサーチ

建06第411号

2029年8月25日

補償コンサル

タント登録

国土交通省

㈱エイト日本技術開発

補06第687号

2029年1月29日

補償コンサルタント

登録規程

(第6条)

登録をしない場合

(第11条)

登録の停止

(第12条)

登録の消除

日本インフラ

マネジメント㈱

補05第2361号

2028年6月28日

㈱共立エンジニヤ

補04第2259号

2027年11月29日

共立工営㈱

補02第2781号

2025年8月30日

都市開発設計㈱

補05第5001号

2028年3月11日

㈱アーク

コンサルタント

補05第325号

2028年12月17日

 

 

登録の名称

所管官庁

会社名

登録番号

有効期限

有効期間(5年)

登録取消事由

測量業者登録

国土交通省

㈱エイト日本技術開発

登録第(16)―263号

2028年11月30日

測量法

(第55条の6)

登録の拒否

(第55条の10)

登録の消除

(第55条の14)

無登録営業の禁止

(第57条)

登録の取消し又は

営業の停止

日本インフラ

マネジメント㈱

登録第(7)―19404号

2025年10月8日

㈱近代設計

登録第(13)―4071号

2028年9月30日

㈱共立エンジニヤ

登録第(8)―16514号

2026年12月25日

共立工営㈱

登録第(7)―21757号

2028年10月17日

都市開発設計㈱

登録第(13)―4970号

2030年3月31日

㈱北海道近代設計

登録第(2)―35440号

2028年1月17日

㈱アーク

コンサルタント

登録第(13)―4211号

2028年12月20日

㈱アイ・デベロップ・

コンサルタンツ

登録第(3)―32692号

2030年6月14日

㈱ダイミック

登録第(8)―17886号

2028年11月20日

㈱東京ソイルリサーチ

登録第(13)―4163号

2028年11月23日

地質調査業者

登録

国土交通省

㈱エイト日本技術開発

質04第367号

2027年12月25日

地質調査業者

登録規程

(第6条)

登録をしない場合

(第11条)

登録の停止

(第12条)

登録の消除

日本インフラ

マネジメント㈱

質03第1620号

2026年9月30日

㈱共立エンジニヤ

質03第1627号

2026年10月14日

共立工営㈱

質02第1561号

2025年10月10日

都市開発設計㈱

質05第2148号

2028年12月21日

㈱東京ソイルリサーチ

質05第2422号

2028年5月25日

 

(7)情報セキュリティーについて

当連結グループの事業は、公共性が高く、個人情報を含む様々な機密情報を取り扱っております。当連結グループは全社的な情報管理体制を構築し、情報管理の徹底に努めておりますが、万が一情報漏洩等が発生した場合には、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)システム障害について

当連結グループは、サイバー攻撃を受けた場合の備えとして「防御システムの多層化」を実施し、迷惑メールや不正アクセスを防ぐ対策に加えて、24時間監視し不審なプログラムの挙動を判定し実行防止するEDRシステム(ネットワークの末端を監視・分析・制御するシステム)などによる対策を行っております。並行して従業員の「リテラシー向上」に向けた対策として、攻撃メールへの対応模擬訓練、情報セキュリティー教育などを定期的に実施するとともに、従業員の情報セキュリティー意識を高く保てるよう、適宜情報を発信しておりますが、ランサムウェアなど高度化した外部からのサイバー攻撃により、システムが停止することがあった場合、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)企業買収、他社とのアライアンスについて

当連結グループは、今後も弱点地域・弱点事業領域の解消、技術者不足への対応のため企業買収や他社とのアライアンスを進める方針であります。企業買収等の際には十分な投資分析を実施しておりますが、実施後に偶発債務の発生や未認識債務の判明等、事前調査で把握できなかった問題が生じた場合や、事業の展開等が計画どおりに進まず、投資やのれんの減損処理を行う必要が生じた場合、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)人材の確保、育成について

当連結グループの事業は人材に大きく依存しており、グループの成長は専門性を有する優秀な人材の確保と育成に大きく影響されます。多様な人材が活躍できる企業風土、人事制度、執務環境の整備等を通じて優秀な人材の確保に努めるとともに、各種教育・研修制度の体系化等、人材の育成に注力しておりますが、人材の確保・育成が想定どおりに進まなかった場合や優秀な人材が多数流出した場合には、当連結グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)気候変動リスクへの対応について

脱炭素社会への移行に向け、炭素税などの規制強化や気候変動の物理的影響として、平均気温の上昇、気象災害の激甚化による事業活動へのリスクと機会の両面が考えられます。

当連結グループでは、従前より、気候変動への具体的な取り組みに関して、パリ協定の「1.5℃目標」の実現に向け、TCFDフレームワークに基づく気候変動対応を検討し、その対策に取り組んでおります。主な取り組みは「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度の経営成績等の状況の概要並びに経営者の視点による当連結グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

なお、当連結グループのセグメントは、総合建設コンサルタント事業のみの単一セグメントであります。

 

(1)財政状態の分析

当連結会計年度末の財政状態は、資産合計は前連結会計年度末から105億87百万円増加し520億11百万円となりました。これは現金及び預金が22億73百万円、売掛金、契約資産が28億31百万円、土地が12億33百万円、新規連結によりのれんが25億57百万円それぞれ増加したことが主な要因であります。負債合計は前連結会計年度末から91億26百万円増加し179億57百万円となりました。これは業務未払金が5億42百万円、1年内返済予定の長期借入金が4億5百万円、契約負債が5億23百万円、長期借入金が68億29百万円それぞれ増加したことが主な要因であります。純資産合計は前連結会計年度末から14億61百万円増加し340億53百万円となりました。これはその他有価証券評価差額金が4億65百万円減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が19億16百万円増加したことが主な要因であります。

財政状態の主な安全性分析結果としては、当連結会計年度末の自己資本比率は前連結会計年度末に比べ13.2ポイント低下の65.5%となり、流動比率は11.9ポイント低下の336.3%となりました。それぞれの指標は低下となりましたが、依然として財務の健全性を維持していると認識しております。

 

(2)経営成績の分析

①当連結会計年度の概況

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大等により、景気には緩やかな改善傾向が見られました。しかしながら、米国の通商政策動向や金融資本市場の変動等により、依然として先行きについては不透明な状況が続いております。

当連結グループが属する建設コンサルタント業界の経営環境は、2024年度の国土交通省の予算における公共事業関係費予算が前年度とほぼ同水準となり、また、「防災・減災、国土強靱化の強力な推進」や「持続可能なインフラ・メンテナンスの実現」、「防災・減災対策、老朽化対策等に対する集中的支援」、「社会資本整備の戦略的かつ計画的な推進」、「グリーントランスフォーメーション(GX)の推進」といった、当連結グループの事業に関連する予算については前年度を上回る規模となるなど、国内事業については、安定的な業務量の確保が可能な経営環境が続いてまいりました。

また、海外事業におきましては、一部に地政学的リスクの影響が見られるものの、概ね改善傾向にありました。

当連結グループは、このような状況の中、第5次中期経営計画の最終年度となる当期におきまして、「売上高385億円、営業利益48.5億円、親会社株主に帰属する当期純利益33.5億円、自己資本利益率(ROE)10%以上」という中期経営計画の各目標数値を達成するため、1)既存事業強化とサービス領域の拡充、2)多様化するニーズへの対応力強化、3)環境変化に柔軟に対応できる経営基盤の構築の3つの基本方針のもと、a.事業戦略強化と事業領域の拡大、b.バリューチェーンの全社最適化と経営管理機能の強化、c.資本コストや株価を意識した経営、d.サステナビリティへの取り組みの4点をグループ全体の取組みとして重点的に進め、一定の成果を上げてまいりました。

これらの結果、当連結会計年度の経営成績は、2024年9月30日付で完全子会社化した株式会社東京ソイルリサーチの2024年10月から2025年5月迄の8ヶ月間の業績を連結決算に取り込んだこともあり、受注高は446億51百万円(前連結会計年度比115.2%)、生産高は、手持ち業務の着実な消化に努めたことにより431億48百万円(同115.7%)、売上高につきましては、大型案件を含む一部業務の工期延伸等があったものの、427億5百万円(同114.8%)と期初計画を上回る水準を確保いたしました。

損益面においては、全社を挙げて生産性向上に努めたものの、既存のグループ会社における処遇改善に伴う人件費上昇や協力会社に対する発注単価見直しによる原価率上昇要因を完全には吸収しきれなかったこと、また、「のれん」の償却費用等の発生による販売費及び一般管理費の増加もあり、営業利益は44億81百万円(同103.1%)、経常利益は46億33百万円(同100.8%)、親会社株主に帰属する当期純利益は32億3百万円(同105.6%)となり、いずれも前連結会計年度実績は上回ったものの、残念ながら期初計画をわずかに下回る結果となりました。

 

なお、売上高、売上総利益及び発注機関別の売上総利益の定量分析は以下の通りです。

 

売上高の定量分析                                (単位:百万円、%)

 

業務別

前連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日)

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

変動

期首繰越受注残高

A (注)

建設コンサルタント業務

23,685

25,748

2,062

調査業務

2,486

4,248

1,762

合計

26,171

29,997

3,825

受注高

建設コンサルタント業務

33,996

37,470

3,473

調査業務

4,752

7,180

2,428

合計

38,749

44,651

5,902

売上高

建設コンサルタント業務

32,595

33,472

877

調査業務

4,611

9,232

4,620

合計

37,207

42,705

5,498

期末繰越受注残高

D=A+B-C

建設コンサルタント業務

25,087

29,746

4,659

調査業務

2,626

2,196

△429

合計

27,713

31,943

4,229

総業務量

E=A+B

建設コンサルタント業務

57,682

63,219

5,536

調査業務

7,238

11,429

4,191

合計

64,920

74,648

9,727

総業務量完成率

F=C÷E×100

建設コンサルタント業務

56.5

52.9

△3.6

調査業務

63.7

80.8

17.1

合計

57.3

57.2

△0.1

売上高変動分析

総業務量変動
による要因

総業務量完成率変動による要因

合計

建設コンサルタント業務

3,128

△2,251

877

調査業務

2,670

1,950

4,620

合計

5,798

△300

5,498

総業務量変動による要因=総業務量変動×前連結会計年度総業務量完成率

総業務量完成率変動による要因=当連結会計年度総業務量×総業務量完成率変動

(注) 当連結会計年度の期首繰越受注残高には、当連結会計年度から新たに連結子会社となった会社の連結開始時受注残高を含めております(建設コンサルタント業務661百万円、調査業務1,622百万円、合計2,283百万円。会社別の内訳は、日栄プランニング株式会社:建設コンサルタント業務のみ67百万円、株式会社東京ソイルリサーチ:建設コンサルタント業務593百万円、調査業務1,622百万円)。

 

 

売上総利益の定量分析                              (単位:百万円、%)

 

業務別

前連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日)

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

変動

売上高

建設コンサルタント業務

32,595

33,472

877

調査業務

4,611

9,232

4,620

合計

37,207

42,705

5,498

売上原価

建設コンサルタント業務

21,252

22,390

1,138

調査業務

3,480

6,062

2,581

合計

24,732

28,453

3,720

売上総利益

C=A-B

建設コンサルタント業務

11,343

11,082

△260

調査業務

1,131

3,170

2,038

合計

12,474

14,252

1,778

売上原価率

D=B÷A×100

建設コンサルタント業務

65.2

66.9

1.7

調査業務

75.5

65.7

△9.8

合計

66.5

66.6

0.2

売上総利益率

E=C÷A×100

建設コンサルタント業務

34.8

33.1

△1.7

調査業務

24.5

34.3

9.8

合計

33.5

33.4

△0.2

売上総利益変動分析

売上高変動
による要因

売上原価率変動
による要因

合計

建設コンサルタント業務

305

△566

△260

調査業務

1,133

905

2,038

合計

1,438

339

1,778

売上高変動による要因=売上高変動×前連結会計年度売上総利益率

売上原価率変動による要因=当連結会計年度売上高×売上総利益率変動

 

発注機関別の売上高、売上原価、売上総利益増減分析                (単位:百万円、%)

 

発注機関

前連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日)

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

変動

売上高

国土交通省

9,089

10,347

1,257

都道府県

13,821

13,049

△771

市区町村

6,396

7,002

606

その他

7,899

12,305

4,405

合計

37,207

42,705

5,498

売上原価

国土交通省

6,207

7,330

1,123

都道府県

8,786

8,244

△542

市区町村

4,426

4,817

390

その他

5,312

8,060

2,748

合計

24,732

28,453

3,720

売上総利益

C=A-B

国土交通省

2,882

3,016

134

都道府県

5,034

4,805

△229

市区町村

1,969

2,185

216

その他

2,587

4,244

1,657

合計

12,474

14,252

1,778

売上原価率

D=B÷A×100

国土交通省

68.3

70.8

2.6

都道府県

63.6

63.2

△0.4

市区町村

69.2

68.8

△0.4

その他

67.2

65.5

△1.7

合計

66.5

66.6

0.2

売上総利益率

E=C÷A×100

国土交通省

31.7

29.2

△2.6

都道府県

36.4

36.8

0.4

市区町村

30.8

31.2

0.4

その他

32.8

34.5

1.7

合計

33.5

33.4

△0.2

売上総利益変動分析

売上高変動
による要因

売上原価率変動
による要因

合計

国土交通省

398

△264

134

都道府県

△281

51

△229

市区町村

186

29

216

その他

1,443

214

1,657

合計

1,747

30

1,778

売上高変動による要因=売上高変動×前連結会計年度売上総利益率

売上原価率変動による要因=当連結会計年度売上高×売上総利益率変動

 

(3)生産、受注及び販売の実績

当連結グループは「総合建設コンサルタント事業」の単一セグメントでありますが、生産、受注及び販売の実績については、建設コンサルタント業務、調査業務の2業務に区分して記載しております。

①生産実績

業務別

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

建設コンサルタント業務

35,012

107.1

調査業務

8,136

176.2

合計

43,148

115.7

(注) 上記の金額は販売価格に生産進捗率を乗じて算出しております。

 

②受注実績

業務別

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

受注高

受注残高

金額(百万円)

前年同期比(%)

金額(百万円)

前年同期比(%)

建設コンサルタント業務

37,470

110.2

29,746

118.6

調査業務

7,180

151.1

2,196

83.6

合計

44,651

115.2

31,943

115.3

 

③販売実績

業務別

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

建設コンサルタント業務

33,472

102.7

調査業務

9,232

200.2

合計

42,705

114.8

 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

前連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日)

当連結会計年度

(自 2024年6月1日

至 2025年5月31日)

相手先

販売高(百万円)

割合(%)

相手先

販売高(百万円)

割合(%)

国土交通省

9,089

24.4

国土交通省

10,347

24.2

 

(注) 当連結会計年度において、調査業務の①生産実績、②受注実績(受注高)及び③販売実績に著しい変動がありました。これは主に、2024年9月30日付で完全子会社化した株式会社東京ソイルリサーチの2024年10月から2025年5月迄の8ヶ月間の業績を連結決算に取り込んだことによるものであります。

 

(4)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当連結グループは、2030年度を見据えた長期ビジョン「E・J—Vision2030」を作成し、併せて、直面している課題への対応とビジョン達成に向けた最初のステップとして、2021年度をスタート年とする第5次中期経営計画(2021年度~2024年度)を、2021年7月に策定いたしました。

目標とする経営指標は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標及び(3)中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおりであります。

第5次中期経営計画の4年目である当連結会計年度においては、以下のとおりであります。

指標(連結)

2025年5月期

(目標)

2025年5月期

(実績)

達成状況

目標比(%)

売上高

(百万円)

38,500

42,705

110.9%

営業利益

(百万円)

4,850

4,481

92.4%

親会社株主に帰属する当期純利益

(百万円)

3,350

3,203

95.6%

自己資本利益率(ROE)

(%)

10.0%以上

9.6%

 

(5)キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べ23億1百万円増加し、202億37百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは41億35百万円資金増(前連結会計年度は39億40百万円の増加)となり、前連結会計年度と比べ1億95百万円増加となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益49億23百万円、減価償却費8億59百万円、投資有価証券売却益が5億53百万円、売上債権及び契約資産の増加10億30百万円、契約負債の増加4億37百万円、仕入債務の増加4億55百万円、法人税等の支払による13億1百万円によるものであります。

また、前連結会計年度に比べての増減要因は、主に投資有価証券売却益が5億53百万円、売上債権及び契約資産の増減額が16億80百万円、棚卸資産の増減額が3億19百万円、仕入債務の増減額が6億14百万円、契約負債の増減額が7億19百万円それぞれ変動したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは79億9百万円の資金減(前連結会計年度は9億41百万円の減少)となり、前連結会計年度と比べ69億67百万円減少となりました。

これは主に、有形固定資産の取得により9億95百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得により66億23百万円それぞれ減少したことによるものであります。

また、前連結会計年度に比べての増減要因は、主に有形固定資産の取得による支出が4億85百万円、無形固定資産の取得による支出が3億45百万円、投資有価証券の取得による支出が4億74百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が66億23百万円それぞれ変動したことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは59億44百万円の資金増(前連結会計年度は10億58百万円の減少)となり、前連結会計年度と比べ70億2百万円増加となりました。

これは主に長期借入金の借入れにより76億44百万円増加、長期借入金の返済により4億8百万円、配当金の支払いにより12億84百万円それぞれ減少したことによるものであります。

また、前連結会計年度に比べての増減要因は、主に長期借入れによる収入が76億44百万円、配当金の支払額が4億80百万円変動したことによるものであります。

 

なお、当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは、37億73百万円の資金減となり、当連結会計年度は将来への大きな投資を行ったと認識しております。

 

(6)資本の財源及び資金の流動性

当連結グループの運転資金需要のうち主なものは、製造原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的等とした資金需要は、主に設備投資等によるものであります。

当連結グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資等に関しては自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は74億82百万円となっております。

 

(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当連結グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択と適用、決算日における資産、負債及び会計期間における収益、費用のそれぞれの金額並びに開示に影響を与える事項についての見積りを必要とします。当該見積りについては、過去の実績や現在の状況に応じて継続して評価を行っておりますが、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

当連結グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に以下の会計方針は当連結グループの連結財務諸表作成においては重要であると考えております。

 

①繰延税金資産

繰延税金資産は将来の課税所得を合理的に見積もって、回収可能性を慎重に検討し計上しております。将来の課税所得の見積額に変更が生じた場合、繰延税金資産が増額又は減額する可能性があり、当連結グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

②固定資産の減損

資産を用途により事業用資産、賃貸用資産及び遊休資産に分類しております。事業用資産については管理会計上の区分に基づき、賃貸用資産及び遊休資産については個別物件単位でグルーピングを行っております。収益性が著しく低下した資産グループが生じた場合、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額する可能性があり、当連結グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③受注損失引当金

受注業務に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末の未成業務の内、損失の発生が見込まれ、かつ、その金額を合理的に見積もることができる業務については損失見込額を計上することとしております。損失見込額が多額となる場合には、当連結グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④のれんの減損

当連結グループは、のれんについて、その効果の発現する期間を見積り、その期間で均等償却しております。また、その資産性について子会社の業績や事業計画等を基に検討しており、将来において当初想定していた収益が見込めなくなった場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上する可能性があり、当連結グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当連結グループの研究開発は、株式会社エイト日本技術開発が主体的に実施しております。

当連結グループでは、多様化・高度化・複雑化する顧客ニーズに対し、質の高い技術サービス及び成果品を提供するため、新技術の習得・導入及び品質・生産性の向上を目指して外部の公的機関等との共同研究も積極的に取り入れながら、多面的な研究開発に取り組んでおります。

株式会社エイト日本技術開発の研究開発は災害リスク分野、データサイエンス分野、インフラ技術分野の3分野からなりEJイノベーション技術センターで実施しております。

 

当連結会計年度は、主として以下の活動を実施しています。なお、(完了)と付したものは当連結会計年度中に完了したものであります。

 

①災害リスク分野

・土質定数データベースの構築とAIを用いた設計用土質定数設定プログラムの開発(完了)

・DAS(光ファイバで振動を観測する技術)を用いたモニタリングに関する研究

・STIV解析(時空間画像(動画)による流速解析)を用いた流量観測高度化

・火山・土砂ハザード対策に関する研究開発

・火山・土砂防災ソフト対策に関する研究開発

・干渉SAR(人工衛星レーザー画像を使った観測技術)解析を用いたフィルダム等の大規模土木施設の変位推定および道路・斜面の変状箇所の抽出技術の開発

・水槽模型実験を用いたため池堤体の降雨浸透に対する研究(完了)

・動的な破壊解析手法の検証(完了)

 

②データサイエンス分野

・AUV(自律型無人潜水機)で取得した地形・水質データの高度利用に関する研究

・UAV(Unmanned Aerial Vehicle 通称ドローン)グリーンレーザが有効な水質・底質に関する研究

・UAV用レーザを用いた地上計測およびSLAM(自己位置推定)の精度検証

・波・流れと環境分析結果の見える化に関する研究

・魚類調査におけるAI技術の活用

 

③インフラ技術分野

・構造物維持管理におけるDX開発(一部完了)

 

研究成果

当連結会計年度に完了した主な研究開発活動の成果の概要を以下に示します。

・土質定数データベースの構築とAIを用いた設計用土質定数設定プログラムの開発

機械学習を活用し、特定地域のボーリング調査データから地層構成を推定するプログラムを開発いたしました。このプログラムには主に2つの特徴があります。1つ目は地層構成を推定する際の根拠となるパラメータを抽出する機能を備えていること、2つ目は推定した地層構成を3次元で表示可能なことです。また、国土地理院が公開している地形データと推定地層を重ねて表示することができ、地形と地層を直感的に把握することが可能となります。このプログラムにより、地盤技術者が設計対象地域の地層構成を効率的に作成することが期待されます。従来の手作業による工程を削減し、短時間で精度の高い地層予測を提供できるため、土木や建築の分野において有用なツールとしての価値が高いと考えられます。

 

・水槽模型実験を用いたため池堤体の降雨浸透に対する研究

近年、豪雨によるため池堤体の決壊が全国各地で多発しております。本研究開発では重力場における水槽模型実験を通じて、豪雨時にため池堤体が脆弱化するメカニズムを解明し、降雨浸透に対する安定性の評価手法について検証いたしました。模型実験ではため池堤体の地盤材料に着目し、粒度組成が異なる堤体を対象に、降雨浸透時の飽和領域の形成過程やその後の被災挙動を比較いたしました。その結果、ため池堤体の安定性には粒度組成に起因する透水性、密度条件が大きく影響することが明らかとなりました。さらに、降雨時の被災挙動と地盤物性との関連性を整理し、降雨時の安定性評価に関する判定フローを構築いたしました。本成果を活用することで、ため池の豪雨・耐震診断や改修設計などの実務において、土質試験結果を基に降雨浸透時の安定性を簡便に評価できるようになり、改修の要否を判定する際の一助となると考えられます。

 

 

・動的な破壊解析手法の検証

大規模地震によって、盛土や斜面が崩壊するなどの自然災害が頻発し、これら施設構造物の詳細な耐震性評価と対策方法の検証が学術機関や実務においても鋭意進められている状況にあります。このような状況を踏まえ、地盤の破壊、崩壊を厳密に予測することのできる弾塑性理論に基づく有限要素解析手法の適応性について検証を行いました。その結果、施設構造物の施工過程から地震時の挙動までを統一的に予測する数値解析手法として弾塑性有限要素解析プログラム「Nonsolan」の有用性を、ため池、フィルダムの挙動予測解析を実施して確認しました。今後、この成果は農林水産省(農村振興局)をはじめ各種学会等へのプレゼンテーションにより、地盤の地震応答解析としての認知度向上が期待できます。

 

・構造物維持管理におけるDX開発

新感覚で簡単に作成可能な三次元空間プレゼンAPPの開発(Eye-Con360):従来のBIM/CIM(3次元モデルを導入し、建設生産・管理システムの効率化・高度化を図る取り組み)には「ファイル容量が大きく閲覧環境が限られる」「作成に手間とコストがかかる」「クラウド利用に制限がある」「専用アプリケーションが必要」「操作が複雑で初心者には扱いづらい」といった課題がありました。

これらを解決するため、360度写真上に3DCADモデルを配置して視覚的に分かりやすいプレゼンテーションが行える「Eye-Con360」を開発いたしました。直感的な操作が可能で、BIM/CIMの専門知識がなくてもモデル作成や高度なプレゼンが容易に行えます。また、日照シミュレーション機能により、構造物の影の影響も確認できます。さらに、無償のビュワー版も提供しており、システムを導入していない顧客でも閲覧が可能です。

 

データ統括管理システムの開発(inMap):インフラ施設における膨大な管理データの整理・検索作業は、多大な手間と時間を要しておりました。この課題を解決するため、電子地図上から必要な情報を簡単に検索・閲覧できるインフラ管理システム「inMap」を開発いたしました。本システムは、顧客ごとの管理手法に応じたカスタマイズが可能で、オンライン・オフライン環境、社内ネットワーク環境など様々なシステム構成に対応いたします。工場やプラント内など建物内でも利用でき、簡易GPSを接続することで、自分の現在地が地図上に表示され、スムーズな移動が可能になります。インフラ管理者のみならず、民間企業など幅広い分野での活用が期待されております。

 

公開成果品自動作成マスキングAIの開発:国土交通省業務などにおいて、成果品を公開する際には報告書内の個人情報(顔、車両ナンバー、住所、氏名など)を黒塗りでマスキングする必要があり、従来は手作業で多くの時間と労力を要しておりました。これを効率化するため、AIによって個人情報を自動で認識・マスキングするアプリケーションを開発いたしました。本システムはブラウザ上で稼働しており、データをアップロードするだけでPCの負荷をかけることなく、AIが自動でマスキング処理を行います。これにより、作業効率の大幅な向上に加え、粗利益の改善と働き方改革の推進が期待されます。

 

当連結会計年度における研究開発費用の総額は105百万円であります。なお、当連結グループのセグメントは「総合建設コンサルタント事業」のみであります。