第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

提出会社の最近5事業年度に係る主要な経営指標等の推移

 

 

第17期

第18期

第19期

第20期

第21期

決算年月

平成25年3月

平成26年3月

平成27年3月

平成28年3月

平成29年3月

売上高

(千円)

373,778

472,197

675,801

243,344

218,694

経常損失(△)

(千円)

432,121

1,094,935

171,274

2,381,182

2,619,075

当期純損失(△)

(千円)

484,446

1,113,687

207,156

2,537,148

2,676,049

持分法を適用した場合の
投資利益

(千円)

資本金

(千円)

5,081,181

10,242,904

10,768,406

10,774,821

11,085,071

発行済株式総数

(株)

325,307

402,652

42,606,858

42,628,858

43,179,384

純資産額

(千円)

4,400,998

13,597,054

14,501,999

12,128,773

10,067,342

総資産額

(千円)

5,606,111

14,340,566

14,704,027

15,386,342

12,939,419

1株当たり純資産額

(円)

135.29

336.86

338.35

278.82

227.75

1株当たり配当額
(内、1株当たり中間配当額)

(円)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純損失金額(△)

(円)

18.85

30.44

5.12

59.53

62.07

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益金額

(円)

自己資本比率

(%)

77.6

94.6

98.0

77.2

76.0

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

635,329

1,086,613

1,120,686

1,971,089

2,525,557

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

121,341

7,059,242

2,562,103

7,384,798

597,249

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

2,327,198

9,581,366

504,504

3,101,346

88,053

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

3,453,995

5,034,174

2,052,417

10,449,992

7,385,639

従業員数
(外、平均臨時雇用者数)

(名)

36

40

48

55

58

(11)

(12)

(12)

 

 

 

 

(注)1.売上高には、消費税等は含まれておりません。

2.当社は、連結財務諸表を作成しておりませんので連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。また、持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社が存在しないため記載しておりません。

3.平成26年2月12日開催の当社取締役会の決議により、平成26年4月1日を効力発生日として普通株式1株につき100株の割合をもって分割を行っております。そのため、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失金額につきましては、第17期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定しております。

4.第17期から第21期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、当期純損失が計上されているため記載しておりません。

5.第17期から第21期の自己資本利益率については、当期純損失が計上されているため記載しておりません。

6.第17期から第21期の株価収益率については、当期純損失が計上されているため記載しておりません。

7.第17期は、興和株式会社からのライセンス及び共同開発契約に基づく製剤供給及びマイルストーン収入並びにOrient Europharma Co., Ltd.(台湾)からの契約一時金収入等により、373,778千円の売上高を計上しましたが、研究開発を推進し、研究開発費237,607千円を計上したこと等により、432,121千円の経常損失を計上しました。

8.第18期は、Orient Europharma Co., Ltd.からのライセンス及び共同開発契約に基づくマイルストーン収入並びに治験薬供給収入、興和株式会社からのライセンス及び共同開発契約に基づくマイルストーン収入、株式会社アルビオンとの共同開発契約に基づく化粧品材料供給収入等により、472,197千円の売上高を計上しましたが、研究開発を推進し、研究開発費926,404千円を計上したこと等により、1,094,935千円の経常損失を計上しました。

9.第19期は、Orient Europharma Co., Ltd.からのライセンス及び共同開発契約に基づく治験薬供給収入、興和株式会社からのライセンス及び共同開発契約に基づく治験薬供給収入、株式会社アルビオンとの共同開発契約に基づく化粧品材料供給収入等により、675,801千円の売上高を計上しましたが、研究開発を推進し、研究開発費1,053,688千円を計上したこと等により、171,274千円の経常損失を計上しました。

10.第20期は、契約収入、化粧品材料供給収入等により、243,344千円の売上高を計上しましたが、研究開発を推進し、研究開発費1,832,664千円を計上したこと等により、2,381,182千円の経常損失を計上しました。

11.第21期は、契約収入、化粧品材料供給収入、化粧品売上等により、218,694千円の売上高を計上しましたが、研究開発を推進し、研究開発費2,252,454千円を計上したこと等により、2,619,075千円の経常損失を計上しました。

12.従業員数は就業人員であり、第17期から第19期までの臨時雇用者数(パートタイマー含む)は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。

 

 

2 【沿革】

年月

事項

平成8年6月

ナノテクノロジーを利用したミセル化ナノ粒子を医薬品開発に応用・実用化することを目的として、ナノキャリア株式会社を東京都世田谷区に設立

平成11年10月

千葉県柏市の東葛テクノプラザ内に本社を移転し、研究所を開設

平成13年1月

株式会社先端科学技術インキュベーションセンター(現 株式会社東京大学TLO)と「シスプラチン内包高分子ミセル」に関する実施許諾契約書を締結

平成14年6月

日本化薬株式会社とパクリタキセルミセルに関する実施許諾基本契約を締結

平成15年7月

東京都中央区に東京オフィスを開設

平成16年5月

国立大学法人東京大学及び株式会社東京大学TLOと「ジアミノシクロヘキサン白金(II)とポリ(カルボン酸)セグメント含有ブロック共重合体との配位錯体、その抗腫瘍剤」に関する実施許諾契約書を締結

平成16年8月

千葉県柏市の東大柏ベンチャープラザ内に本社及び研究所を移転・拡充

平成20年3月

東京証券取引所マザーズに株式を上場

平成20年9月

台湾のOrient Europharma Co.,Ltd.とシスプラチンミセル(NC-6004)のアジア地域におけるライセンス及び共同開発契約締結

平成23年9月

興和株式会社と、エピルビシンミセル(NC-6300/K-912)製剤の全世界におけるライセンス及び共同開発に関する契約を締結

平成24年7月

パクリタキセルミセル(NK105)の第Ⅲ相比較臨床試験(転移・再発乳がん)開始

平成24年7月

株式会社アルビオンと新化粧品素材の共同開発及び化粧品の商業化に関する共同開発契約を締結

平成24年10月

Orient Europharma Co., Ltd.とシスプラチンミセル(NC-6004)のアジア地域を対象とする開発及び販売権に加え、全世界を対象とする製造権を付与する新たなライセンス契約を締結

平成24年10月

シスプラチンミセル(NC-6004)の日本国内における第I相臨床試験開始

平成25年6月

信越化学工業株式会社とポリマーの開発に関する共同研究契約を締結

平成25年9月

エピルビシンミセル(NC-6300/K-912)の日本国内における第I相臨床試験開始

平成25年12月

ダハプラチンミセル(NC-4016)の米国における第Ⅰ相臨床試験開始

平成26年2月

シスプラチンミセル(NC-6004)のアジア地域における第Ⅲ相臨床試験開始

平成26年6月

千葉県柏市若柴に本社及び研究所並びに東京オフィスを移転・統合

平成26年6月

エーザイ株式会社との間で同社所有の新規医薬品候補品に関するライセンス契約を締結

平成27年2月

中外製薬株式会社との間でsiRNA医薬品に関する共同研究契約締結

平成27年3月

東京都中央区に新東京オフィスを開設

平成27年6月

シスプラチンミセル(NC-6004)のアジア地域における第Ⅲ相臨床試験の日本での参加開始

平成27年7月

神奈川県川崎市川崎区にiCONMラボ(川崎サテライト研究所)を開設

平成27年7月

シスプラチンミセル(NC-6004)の米国における臨床試験第Ⅱ相パート(バスケットデザイン試験)開始

平成28年3月

株式会社アルビオンとの共同開発新製品である男性用スカルプトータルケア製品「Depth」販売開始

平成28年6月

シスプラチンミセル(NC-6004)の第Ⅱ相臨床試験(バスケットデザイン試験)の開発地域を欧州地域に拡大

平成28年10月

興和株式会社より、エピルビシンミセル(NC-6300/K-912)に関するライセンス及び共同開発契約の解約申出を受領し、当社による開発承継を決定

平成28年12月

エピルビシンミセル(NC-6300)の米国における第Ⅰ相臨床試験開始

 

 

 

3 【事業の内容】

当社の主たる事業目的は、日本発のナノテクノロジーを応用したミセル化ナノ粒子をコア技術として、主にがん領域において新しい医薬品を生み出し、社会に貢献することです。

 

(1) 当社設立の経緯

当社は、東京大学の片岡一則教授、東京女子医科大学の岡野光夫教授(現 当社取締役)らが発明したミセル化ナノ粒子技術による医薬品の開発を目的に、代表取締役社長CEO 中冨一郎が、上記の発明者らとともに平成8年6月に設立しました。

同教授らは、医薬品を封入したミセル化ナノ粒子が静脈内投与された場合、血中に薬物が長時間循環することができ、効果が持続する薬物キャリア(*1)となり得ることと、がん組織等の病変部へ集積(標的化)することを示しました。

当社では、同技術を利用した医薬品の実用化によって、従来の薬物療法より有効性と安全性が高まれば、これまで期待する効果が得られなかったがん等の難治性疾患の薬物療法をより有効にすることができると考えており、 今後もミセル化ナノ粒子(高分子ミセル)(*2)技術のパイオニアとして同技術のポテンシャルを最大限に活かした製品開発を目指すとともに、当面は社会的ニーズと貢献度の高い抗がん剤事業に特化したグローバル展開を行っております。

 

(2) 当社技術の特長

当社のコア技術であるミセル化ナノ粒子は、水に溶けやすい性質を示すポリエチレングリコール(PEG)からなる親水性ポリマーと水に溶けにくい性質を示すポリアミノ酸からなる疎水性ポリマーを分子レベルで結合させたブロックコポリマー(*3)から構成されます。

ブロックコポリマーを水中で拡散すると、外側が親水性ポリマーで内側が疎水性ポリマーという明確な二層構造を有する20~100ナノメートル(nm)(*4)サイズの球状の集合体であるミセルを形成します。このミセルの疎水性内核部分に薬物や生理活性物質を封入することができます。アミノ酸の種類や構造を化学的に変化させることで様々な化合物に対応が可能です。表面をPEGが覆うことで血液中での安定性を確保します。

ミセル化ナノ粒子を応用した医薬品開発の新薬開発上のメリットとしては、ミセル化ナノ粒子内からの薬物放出をコントロールすることで、副作用を引き起こす濃度以下に調整し安全性を高めるアプローチや、投与後の消失の速い薬物などの血中持続性を高めるアプローチ、腫瘍などへの薬物の移行量を増やすことで効果を高めるアプローチなどが期待できます。

ミセル化ナノ粒子を利用した抗がん剤開発の患者に期待されるメリットとしては、患者の生存期間の延長やがん関連症状の緩和へつながる治療効果の増大、安全性の向上(=副作用の軽減)、簡便な投与で通院治療が可能になるなどの負担軽減、日帰り治療の可能性などから医療費削減など、患者のQOL(*5)の向上を目指します。

 

 

<ミセル化ナノ粒子のサイズ>(当社作成)

 


 

<ミセル化ナノ粒子の一例>

 


 

(3) 当社の事業展開

①ビジネスモデルとその収益について

当社は、ミセル化ナノ粒子技術を特許等の知的財産として所有しており、ナノテクノロジーを応用した製造技術を基盤に創薬の研究開発を進め、事業化を行っています。当社では、有用性(有効性、安全性)を向上させた、医療ニーズに応える新規医薬品の開発、提供を目指しており、パイプラインの研究・開発を進めて製品化に到達するために、事業段階に応じた展開を図っております。

当社の現状のビジネスモデルは、ミセル化ナノ粒子技術を基盤とした(ⅰ)自社開発、(ⅱ)共同研究開発、(ⅲ)ライセンスアウトの3つの形態をとっております。それぞれの内容は以下の通りです。

 

(ⅰ)自社開発

極力製品付加価値を上げてより大きい収入を確保するため、開発医薬品の上市もしくは臨床開発後期段階まで、可能な限り自社開発を推進する方針であり、ワールドワイドな臨床試験を当社主導により展開し、医薬品としての承認・上市を目指す計画です。

ただし、これには多額の費用と人員を要することから、共同開発先やライセンスアウト先の探索を行う一方、薬物候補の選択と合成、製剤、薬効に関する検討を行った後、非臨床試験及び臨床試験を行い、臨床試験で有用性を証明できた段階で下述(ⅲ)のライセンスアウトに移行していくことが適切な選択となります。

 

 

(ⅱ)共同研究開発

当社のミセル化ナノ粒子製剤技術に興味を示した提携先とミセル製剤化に関する共同研究契約を締結する場合もあります。

この場合、提携先が所有する活性成分又は開発可能な活性成分を当社のミセル化ナノ粒子技術に応用し、新規医薬品として開発を進めます。フィージビリティスタディ段階からさらに先に進め、共同研究開発契約やライセンスアウトに進展することを目指しております。

 

(ⅲ)ライセンスアウト

(ⅰ)の自社開発あるいは(ⅱ)の共同研究開発の事業形態においては、研究開発の経過段階で、ライセンスアウトを行います。この場合は、ライセンス契約時点までの知的財産権を含む研究開発成果及び製造権の実施許諾に対する契約一時金(アップフロント)、所定の開発段階に到達したときに支払われるマイルストーン収入、医薬品上市後の販売高に対するロイヤリティ収入や製剤供給収入等が計上されることになります。

ライセンス契約による提携は、当社が保有する特許権及びノウハウについての実施許諾、さらに当社が独占的な実施権を有する特許権の再実施許諾がベースになります。ライセンス契約後の研究開発等の経費は提携先が負担することになり、当社の開発コスト及び開発リスクが軽減されます。

 

各ビジネスモデルの収益については、医薬品の上市まで自社開発を行い、自社販売を行った場合、当該製品の販売による収入が計上されることとなりますが、当社においてはその段階まで進んでいるパイプラインはありません。

共同研究開発の場合には、提携先からの研究開発に対する製剤技術及びノウハウの開示による対価並びにミセル原薬及び製剤の供給収入が計上されることとなり、当社においては複数のパイプラインで当該収入を得ております。

他社にライセンスアウトをする場合は、ライセンス契約時点までの研究開発成果に対する対価及び製剤の供給に対して提携時の契約一時金、所定の開発段階に到達したときに支払われるマイルストーン、開発医薬品上市後の医薬品販売高に対するロイヤリティ等の収入が計上されることになり、当社においては契約一時金や臨床試験開始に伴うマイルストーン収入を得ているパイプラインがあります。

当社では、開発医薬品の上市前に上述のような他社からの契約一時金収入、マイルストーン収入及び研究開発用の製剤供給に対する対価を得ることにより、開発医薬品上市前の研究開発費の負担を軽減し、財務面のリスクの極小化を図っております。

 

②抗がん剤への特化について

抗がん剤の発見と開発の分野は製薬業界の研究開発の中でも最も活発な分野のひとつであり、近年開発が進められている新薬のなかでも、抗がん剤の占める割合は高いものの、未だ製品の改良や新規開発領域の残された分野でもあります。抗がん剤の中には、世界中の医療現場で汎用されながらも、薬物自体及び製剤化のために添加されている溶解剤による副作用が問題となっているものが多数あります。その中から当社は、タキサン系、白金系及びアントラサイクリン系の抗がん剤を選び、ミセル化ナノ粒子医薬品の開発を行っております。また、がん組織への選択性を高めるために、がん標的性のある抗体(*6)などをミセル化ナノ粒子の表面に結合させ、がん細胞への特異的な集積(アクティブターゲティング)(*7)を狙った次世代の抗がん剤を研究・開発しております。最近では、高分子化合物のsiRNA(*8)、あるいは各種サイトカイン(*9)などのタンパク質医薬品の開発を行っており、体内ですみやかに分解されてしまうという体内投与時の欠点を補うミセル製剤の開発を進めています。

また、ミセル化ナノ粒子技術を応用した化粧品開発を行い、株式会社アルビオンとの共同開発に基づき、同社より販売中の化粧品原料を供給するとともに、同社との共同開発品である男性用スカルプトータルケア製品の販売を行っております。

 

 

③研究機関及び提携企業との連携について

当社は、大学発の研究成果(シーズ)を医薬品として実用化するために、積極的に大学あるいは国公立研究機関から知的財産権のライセンスイン(独占的実施許諾権の獲得)及びこれら研究機関との共同研究を行っております。一方、上記のライセンスインをした知的財産権や共同研究の成果を提携企業に対してライセンスアウトする場合があります。また、これらの知的財産権や成果に基づき提携企業と共同開発を実施する場合もあります。それらの提携関係は下図の通りです。

 


(当社作成)

 

④製造について

当社は自社開発医薬品、提携企業との共同開発医薬品にかかわらず、原則として自社が所有、又は独占的実施権を有する特許やノウハウを利用して製品(ミセル原薬及びその中間体、あるいは最終製剤)の製造を自社で行うことを目標としております。しかしながら、自社工場を所有することはその投資の大きさ、固定費の増加等から現状では現実的ではないと考えており、既に設備を保有し、GMP(*10)基準を満たしている医薬品受託企業との間で製品の製造委託契約を交わし、製品製造を委託しております。但し、委託製造といっても、全面的な委託ではなく、当社による原料供給、技術提供及び製造管理を行っており、原材料の受け入れから最終製品の品質保証まで当社が行っております。

 

 

⑤医薬品開発の流れ

医薬品を研究・開発する標準的な段階は以下の通りであり、日本製薬工業協会資料を参考に表示しております。この開発段階は日米欧でほぼ共通となっております。

 

<医薬品開発の流れ>

 


 

<各事業ステージの内容>

 

ステージ

内容

基礎試験

合成

目標とするミセル化ナノ粒子を形成するポリマーの合成、ミセル化ナノ粒子の製造及び製剤化

評価試験
(in vitro・in vivo)

製剤の有効性及び安全性を試験管内などの人工的な条件下で確認する試験(in vitro試験)
製剤の有効性及び毒性を動物を用いて予備的に確認する試験(in vivo試験)

非臨床・臨床試験

非臨床試験

実験動物を用いて、有効性及び安全性を確認する試験

臨床試験

以下の各相があります。
第Ⅰ相臨床試験(PⅠ):
  少数健康成人(但しがんの場合は患者)を対象にして、安全性及び薬物動態を確認する試験
第Ⅱ相臨床試験(PⅡ):
  少数の患者を対象にして、有効性、安全性及び用法・用量を確認する試験
第Ⅲ相臨床試験(PⅢ):
  多数の患者を対象にして、標準治療との比較により有効性及び安全性を確認する試験

製造販売承認の申請・承認

新薬承認

各国の審査機関による新薬の審査・承認

 

 

⑥当社の主要パイプラインについて

本書提出日現在、当社が研究開発を進めている主要パイプラインは以下のとおりであります。

 

(ⅰ)シスプラチンミセル(NC-6004)

シスプラチンは、その有効性により各領域のがん化学療法の中心的薬剤となっています。その一方でシスプラチンの腎機能障害、神経障害や催吐作用が極めて強いため、がん患者にとって苦痛度が高く、さらに投与の際には長時間にわたる大量の輸液が必要なことから、患者の方々の生活の質(QOL)を著しく低下させています。
 当社は、シスプラチンが持つこれらの副作用を軽減し、かつ抗腫瘍効果の増強も期待できる新薬を目指し、ミセル化ナノ粒子(MediCelle®システム)を応用した新規化合物シスプラチンミセル(NC-6004)を開発しています。

 

 

(ⅱ)ダハプラチンミセル(NC-4016)

オキサリプラチンは、世界的に大腸がんの標準的薬剤として成功を収めている抗がん剤ですが、「いつも手足がしびれるような感じ」がするというような末梢神経障害が現れることが知られており、治療中止の大きな要因になっています。
 オキサリプラチンは生体内で抗がん活性のより強いダハプラチンに変換されますが、当社ではこのダハプラチンをミセル化ナノ粒子へ結合・封入(MediCelle®システム)することで、オキサリプラチンが持つ上述の副作用を軽減し、かつ抗腫瘍効果の増強も期待できる新規の抗がん剤が開発できると考えています。

 

(ⅲ)エピルビシンミセル(NC-6300)

エピルビシンは、乳がん、卵巣がん、胃がんなどの適応症で世界的に普及しているアントラサイクリン系抗がん剤ですが、投与を重ねると心臓疾患を引き起こすので、その使用が制限されています。

当社は、その副作用を軽減するために細胞内のpH変化に応答して薬物を効果的に放出するシステムを開発しています。細胞内に薬物が結合したミセル化ナノ粒子素材(ブロックコポリマー)が取り込まれる際に、エンドソームと呼ばれる細胞膜が陥没して形成される小胞に取り込まれると考えられています。エンドソーム内のpHは酸性であることが知られており、このpHの低下により薬物とブロックコポリマーの結合が外れて、薬物が放出される作用機序を利用し、時限的かつ急激に薬物をがん細胞内に放出する効果が期待されます。

 

(ⅳ)パクリタキセルミセル(NK105)

パクリタキセル(タキソール®)は乳がん、卵巣がん、肺がん、胃がんなどの適応症で世界的に普及している抗がん剤ですが、水に溶けにくいため、製剤化にはアルコールを基にした特殊な溶媒が使用されております。その溶媒による副作用が生じることがあり、投与時に副作用軽減のための補助薬剤(ステロイド剤、抗ヒスタミン剤及び抗潰瘍剤)を投与するなど医療現場での使いにくさがあります。当社はミセル化ナノ粒子技術(NanoCap®システム)を応用することにより、パクリタキセルを封入したミセル化ナノ粒子を開発しました。

 

(注)「MediCelle®」及び「NanoCap®」は当社の登録商標です。

 

⑦次世代パイプライン候補について

上述の臨床開発段階にある主要パイプラインに続く次世代のパイプライン候補として、以下の研究開発を推進しております。

 

(ⅰ)ADCM(センサー結合型ミセル)

ADCM(Antibody/Drug-Conjugated Micelle)は、アクティブターゲティングを可能とする次世代型プラットフォーム技術で、世界的に開発が活発化している抗体医薬ADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)の課題を補う次世代型DDS技術です。標的細胞を狙ったターゲティング療法であるADCMは、がん細胞に現れる特異的な抗原を認識する抗体をミセル化ナノ粒子表面に結合し、標的細胞への選択性を高めることができます。抗体と薬物が結合した従来のミサイル療法より多くの薬物を標的細胞に届けることができるため、高い効果と副作用の軽減が期待されております。

 

(ⅱ) siRNAミセル

siRNAなどの核酸医薬は血中に投与すると直ちに代謝を受けて血中から速やかに消失し、充分な薬効を期待できず、医薬品として開発する場合は血中での安定化が必要不可欠となっております。当社では、siRNAなどの核酸医薬をミセル化ナノ粒子へ封入する技術(NanoFect®システム)で血中での安定化を図ります。また、がんや炎症部位に選択的に薬物を運ぶことで薬効を高めることが期待されます。

 

(注)「NanoFect®」は当社の登録商標です。

 

⑧化粧品事業の展開について

当社は、コア技術であるミセル化ナノ粒子技術の医薬品事業以外への応用を目指しており、特に化粧品事業への展開を推進しております。株式会社アルビオンと共同開発した化粧品の原材料を供給しております。また、同社との共同開発製品である男性用スカルプトータルケア製品を当社が販売しております。

 

用語解説

(*1)薬物キャリア

薬物を封入するなどして、組織へ送達するためのシステムであり、薬物運搬体とも呼ばれます。当社のミセル化ナノ粒子や、リポソームなどが含まれます。

 

(*2)高分子ミセル

高分子ミセルとは、水に溶けやすい部分と水に溶けにくい部分を持つブロックコポリマーから形成される球状構造体のことです。水にも油にも溶ける両親媒性ブロックコポリマーを水に溶かすと、ある濃度範囲で外側に水に溶けやすい部分、また内側に水に溶けにくい部分を向けて自己会合し、明確な内核と外殻の二重構造を持つ球状構造体を形成します。この球状構造体を高分子ミセルといいます。

 

(*3)ポリマー

ポリマーとは、1種類の単位化合物の分子が共有結合して、分子量が1万程度以上の化合物のことです。代表的なポリマーとしてはプラスチック類が挙げられます。医薬品として使われるポリマーは、生体内で分解される性質を有するものが多く存在します。

ブロックコポリマーとは、2種類以上の異なるポリマーが結合したものであり、当社のポリマーは、水に溶けやすい親水性部分がポリエチレングリコール、水に溶けにくい疎水性部分がポリアミノ酸からなるブロックコポリマーです。

 

(*4)ナノメートル(nm)

1ナノメートルは10億分の1メートルに相当します。

 

(*5)QOL

Quality Of Lifeの略語で、主に患者の「生活の質、人生の質」を意味する言葉です。医療提供者が患者への治療効果を判定する際に、患者の人生の充実感や満足度から評価しようという考え方のことを言います。

 

(*6)抗体

抗体は、細菌やウイルスなどの抗原(免疫を誘発する物質)の刺激の結果、免疫反応によって生体内に誘導されるタンパク質で、抗原と特異的に結合する活性を持つものの総称です。

 

(*7)アクティブターゲティング

アクティブターゲティングとは、例えば、がん細胞と選択的に結合するセンサーのような働きをする物質をミセル化ナノ粒子の表面に付けることで効率よく、積極的にがん細胞へ薬物を入れたミセル化ナノ粒子を送り届けることをいいます。センサーのような働きをする物質には抗体のような物質を使うことができます。

 

(*8)siRNA

siRNAとは、標的となる遺伝子の一部と同じ配列を有する短い二本鎖RNAのことで、遺伝子の働きを強力に抑制する特徴を有しています。がんなどの疾患では、疾患に関係する遺伝子が過剰に働くことが原因とされているものが多いため、標的遺伝子を強力に抑制することができるsiRNAは、次世代の核酸医薬として、近年特に期待が高まっています。

 

 

(*9)サイトカイン

サイトカインとは、体の中の細胞から放出される、体の機能を制御するタンパク質の総称です。免疫機能、抗腫瘍作用、造血機能などを制御する機能を有するものが知られています。

 

(*10)GMP

ICH(日・米・EUの3極間で、新医薬品の製造承認に際して要求される資料を共通化することによって、医薬品開発の迅速化・効率化を目指す会議)によって協議・合意決定された取り決め事項を「ICHガイドライン」と呼び、日米EUでの医薬品開発におけるガイドラインとしての役目を果たします。ICHガイドラインは以下のような構成となっており、GMPはその一部です。

GLP

(Good Laboratory Practice)

非臨床試験の実施基準

医薬品の製造販売承認申請などのために行われる安全性に関する非臨床試験データについて、信頼性を高めるための試験実施上の基準。

GCP

(Good Clinical Practice)

臨床試験の実施基準

人を対象とした臨床試験(治験)が倫理的な配慮のもとに適正かつ科学的に実施されることを目的として定められた基準。

GMP

(Good Manufacturing
Practice)

製造管理/品質管理の基準

製造所の構造設備や製造管理及び品質管理の全般にわたって、医薬品の製造を行う者が守るべき要件を定めた基準。

GPMSP

(Good Post Marketing
Surveillance Practice)

市販後の調査基準

市販後調査の適切な実施と調査資料の信頼性の確保を図り、医薬品の適正使用の確保を目的として定められた基準。

 

 

4 【関係会社の状況】

該当事項はありません。

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

平成29年3月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

58

43.3

5.3

6,958

 

(注)1.従業員数は就業人員であります。

2.平均年間給与は、基準外賃金を含んでおります。

3.当社は医薬事業の単一セグメントであるため、セグメントに関連付けた記載を省略しております。

 

(2) 労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。