第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

当社の主たる事業は、「新たな価値を創造するとともに、人々の健康と幸福に貢献する」ため、革新的な治療薬を生み出し、有効な治療法がない患者さんに対し新たな治療を提供することです。

新しいモダリティ技術による遺伝子治療製品や、独自のDDS技術を活用した核酸医薬などの臨床開発を推進し、新しいメカニズムによる難治がんの治療薬や再生医薬の提供などにより、新たな市場を切り開き、人々の健康と幸福に貢献することを目指しております。

 

(2)目標とする経営指標

当社は医薬品等の研究開発を主たる事業として展開しておりますが、新薬の開発には長期にわたり多額の研究開発投資を要するため、現時点では継続的な事業利益を計上する段階には至っておりません。

当社のビジネスモデルは、①自社開発、②共同研究開発、③ライセンスアウト、④ライセンスインの4つの形態をとっており、既存のパイプラインについては、その進捗状況、提携先の開拓状況、資金等を勘案したうえで、①自社開発から②共同研究開発又は③ライセンスアウトへ、②共同研究開発から③ライセンスアウトへ移行することや、④ライセンスインにより新規のパイプラインを獲得すること、また、化粧品事業等他分野へ進出すること等により、事業進捗の加速化、研究開発費の負担軽減、安定収入の確保等に努めております。

当社は、経営基盤強化策として、早期上市を目的にした導入を推進しています。当社開発力を活かし、アンメットメディカルニーズの高い、後期ステージにある患者さんに必要とされる画期的な製品を導入し、上市までのコストと期間を削減する取り組みを行っています。このような事業活動の推進により、上市製品の積み上げを図ることで、早期に継続的な黒字化を実現することを中長期的な目標としております。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

当社は、治療法がないなど、未だ十分でない医療ニーズ(アンメットニーズ)を満たす市場を切り開き、「人々の健康と幸福に貢献する」ことをミッションとし、事業を推進しております。

成長戦略として、「一段上の企業ステージへ:人々の健康と幸福に貢献」を掲げ、以下の3項目を重点目標とし、これらを最優先の対処すべき課題と認識しております。

 

①承認取得後を見据えた販売体制の構築

開発ステージ後期のパイプラインであるENT103 、VB-111の承認取得による収益化を見据え販売体制の構築を図ります。ENT103は、共同開発先のセオリアファーマ株式会社が2022年4月、外耳炎及び中耳炎を対象に製造販売承認申請を行っており、2023年度前半の販売開始を見込んでおります。VB-111は、プラチナ製剤抵抗性再発卵巣がんを対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(OVAL試験)が、2022年3月に目標症例数の登録を完了しており、当社は国内における販売承認申請に向けた準備を進め、併せて販売体制を構築する予定です。標準治療がないプラチナ抵抗性再発卵巣がんに対する新たな治療法を提供するため、本製品の早期の国内上市を目指しております。

 

②ASO/mRNAなどの核酸医薬の臨床ステージアップ

新規マーケットの創出が見込まれる核酸医薬(siRNA医薬、ASO医薬、mRNA医薬)は、臨床パイプラインの拡充を目指し、着実に次ステージへの移行を図ります。核酸創薬においては、siRNA医薬、ASO医薬、mRNA医薬の3つのモダリティを進めており、そのパイプライン及びパイプライン候補は次表のとおりです。核酸創薬の推進により、低分子や抗体医薬では難しいとされた標的分子に対する新しい治療法を提供する臨床パイプラインの拡充を図ります。核酸創薬は新たな治療域を創造し、新たなマーケットを創出すると期待されています。当社が臨床開発中の既存パイプラインにこれら新規パイプラインが加わることで、当社パイプラインのポートフォリオが充実し、当社の収益向上に寄与することを目指します。

■核酸医薬分野のパイプライン候補の概要

モダリティ

ターゲット

適応症

現在の状況

siRNA医薬

PRDM14

乳がん

・慶応大学との共同開発プロジェクト

・公益財団法人がん研究会有明病院において医師主導第Ⅰ相臨床試験実施中

ASO医薬

TUG1

脳腫瘍

・名古屋大学との共同研究プロジェクト

・非臨床試験及びCMC開発実施中

・AMEDの革新的がん医療実用化研究事業に採択

mRNA医薬

RUNX1

変形性膝関節症

・アクセリードと共同で設立した株式会社PrimRNAが事業推進

・薬理試験及びCMC研究実施中

・AMEDの医療研究開発革新基盤創成事業に採択

 

③M&A等で新たな後期開発品の獲得、提携/導出を推進

当社は従来より、医薬品事業の経営基盤構築や関連事業や周辺事業の拡大を加速させるべく、資本・事業提携等による外部経営資源の活用や外部成長の取り込みを図るためのM&A等に関する検討を行っており、その一環として、2020年9月にアキュルナ株式会社を吸収合併しております。今後は、1)アンメットニーズを満たすグローバルな製品や後期臨床製品の導入、2)核酸医薬等の創薬事業の拡大およびライセンスイン/アウトの推進、3)医薬品事業の経営基盤強化(開発、製造、販売体制構築等)の上で有力な企業との業務提携等を中心に検討を進めてまいります。

 

なお、新型コロナウイルス感染症に関しましては、現時点において、主に以下の事象の発生を予想しております。

・臨床開発段階のパイプラインにおける患者登録の遅れに伴う試験期間の延長

・百貨店等における化粧品の店頭販売の低迷等に伴う当社化粧品材料供給収入の減少

当社の主たる事業は医薬品等の研究開発にあるため、当社への影響は限定的と考えております。

 

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)パイプラインに関するリスク

①既存のパイプラインの進捗に関するリスク(特に重要なリスク)

当社は、新規医薬品を創出することを目的に複数のパイプラインの研究及び開発を進めておりますが、当社のすべてのパイプラインは研究開発途中であり、臨床試験段階における有害事象の発生等により、開発中止や遅延等の可能性が常に存在します。また、当社が意図しない提携解消の可能性、臨床開発が一定の段階まで進捗した際にライセンスアウトできない可能性、ライセンスアウトできたとしても当社の望む契約条件とならない可能性等もあります。

これらが顕在化した場合、研究開発の遅延、研究開発コストの増加、将来の売上高の減少等により、投下資金の回収が困難又は遅延することとなり、株価の低迷や他のパイプラインへの悪影響等も想定され、研究開発計画及び経営成績等に重大な影響を及ぼすおそれがあります。

当社は後述のとおり小規模組織であるため、選択と集中によるパイプラインの優先順位付けと絞り込みを行い、経営資源の効率的な投入、プロジェクト管理の徹底及び強化、医療ニーズや開発トレンドに応じた開発方針の変更、提携先の探索、新規パイプラインの拡充等により本リスクの低減に努めております。

 

②新規パイプラインの拡充に関するリスク

当社は、現時点においては既存のパイプラインの進捗を最優先として推進しているものの、経営基盤強化のためには、新たなパイプラインを増やしていく必要があると考えており、研究段階プロジェクトの臨床段階へのステージアップ、提携やM&A等による他社の技術やパイプラインの導入も並行して検討を進めております。しかしながら、研究段階プロジェクトが想定通りに臨床段階へステージアップできない可能性、他社の技術やパイプラインの導入ができない可能性、導入できたとしても製造販売承認を取得できない可能性等があります。

これらが顕在化した場合、中長期的な事業計画、事業目標の達成が困難となるおそれがあります。また新規パイプラインの拡充は、既存のパイプラインのバックアップにもなりうるため、「(1)既存のパイプラインの進捗に関するリスク」が顕在化した場合のリスクヘッジ機能が低下するおそれもあります。

このため、研究段階プロジェクトのステージアップについては、優先順位付けと絞り込みを行い、経営資源を効率的に投入しております。また、他社の技術やパイプラインの導入については、対象となる企業、技術、パイプライン等に関する詳細なデューデリジェンスを行うなど、意思決定に必要十分な情報を収集し、企業価値、事業価値、シナジー等について慎重に評価検討することとしております。

 

(2)研究開発資金の確保に関するリスク(特に重要なリスク)

当社はいち早く新薬の製造販売承認を取得すべく研究開発に邁進しておりますが、新薬の開発には長期にわたり多額の研究開発投資を要するため、営業キャッシュ・フローがマイナスの状態が続いております。当社において研究開発資金の確保は重要課題の1つでありますが、これまでに実施したファイナンス等により当面の研究開発資金の確保、またライセンスインやM&A等の支出にも対応できる資金の確保までできていると判断しております。しかしながら、研究開発が計画通りに進捗する保証はないため、研究開発の遅延等が生じ、研究開発資金に不足が予想された場合には新たな資金調達が必要となります。適切なタイミングで十分な資金調達ができなかった場合には事業存続に重大な影響を及ぼすおそれがあります。

このため、選択と集中によるパイプラインや研究段階プロジェクトの優先順位付けと絞り込みを行い、経営資源の効率的な投入、プロジェクト管理の徹底及び強化、その他コスト削減策の実施等により支出を抑えております。また、資金調達が必要となった場合に備え、効果的かつ効率的な資金調達手段を検討しております。さらに、医療ニーズや開発トレンドに応じた開発方針の変更、提携先の探索等、多角的に本リスクの低減に努めております。

 

(3)小規模組織であることに関するリスク

①人材の確保及び特定人材への依存に関するリスク

当事業年度末現在、当社は従業員数24名の小規模組織であります。限られた人的資源に依存しているため、従業員に業務遂行上の支障が生じた場合や大量に退職した場合には、各種業務に影響を及ぼすおそれがあります。また、事業ステージにあわせた採用計画を立案、実施しておりますが、想定したタイミングで適切な人材を採用できなかった場合も、各種業務に影響を及ぼすおそれがあります。

このため、教育訓練の実施、業務の文書化等、内部統制のフレームワークを活用した属人化の解消策等により、人材のバックアップ体制を拡充しております。また株式報酬制度の導入等による従業員へのインセンティブの付与や成果主義に基づく人事制度の導入等により従業員のモチベーション向上にも努めております。

 

②第三者への依存に関するリスク

現在当社は、医薬品開発企業として必要な機能のすべては有していないため、それらの業務については外部へ委託しており、主には、臨床試験については開発業務受託機関に、治験薬の製造については医薬品製造受託機関等にそれぞれ委託しております。これら受託機関等の倒産、契約の解消、当社が望む条件で契約締結又は更新できない等の可能性があり、当社は第三者への依存度が高い状況にあるため、これらリスクが顕在化した場合、代替機関の選定や移管のためのコスト増、臨床試験の遅延等が生じ、事業継続に重大な影響を及ぼすおそれがあります。

委託先とは相互利益の考えのもとに契約を締結しており、今後もこの考えを継続することで現契約の維持につながると考えております。また、定期的な連絡会議や担当者レベルでの日常的なコミュニケーション等により、関係の強化や認識の共有等にも努めております。万が一の事態に備え、代替候補先の探索検討を行うことでも、本リスクの低減を図っております。

 

③M&Aに関するリスク

当社は、医薬品事業の経営基盤構築及び関連事業や周辺事業の拡大のためには、提携やM&A等を通じた外部経営資源の活用や外部成長の取り込みを図っていくことが有力な選択肢になると考えており、適宜、探索や検討を進めております。また並行して、外部からのパイプラインの導入、製薬やバイオ企業への投資又は買収等も検討しておりますが、かかる導入、投資又は買収等が成功する保証はなく、想定した時期に提携やM&A等が成立する保証もなく、また、成立しても想定したシナジー効果が得られない可能性もあり、中長期的な事業目標が達成できないおそれがあります。

このため、提携やM&A等の検討にあたっては、対象となる企業に関する詳細なデューデリジェンスを行うなど、意思決定に必要十分な情報を収集し、企業価値、事業価値とシナジー等について慎重な評価検討を行うこととしております。

 

(4)その他のリスク

①競合に関するリスク

当社は現時点では主に抗がん剤領域の医薬品開発を実施しております。抗がん剤を含めた新規医薬品の市場は国内外を問わないことから、常に日本国内のみならず世界中の同業他社と競合状態にあります。当社としては、いち早く新薬の製造販売承認を取得すべく研究開発に邁進しておりますが、他社がより優位性のある製品を開発した場合、当社の医薬品開発の成功確率が低下する可能性があり、事業継続に重大な影響を及ぼすおそれがあります。また将来当社が製造販売承認を取得した後に他社がより優れた製品の製造販売承認を取得した場合、将来の売上高の減少等により、経営成績等に重大な影響を及ぼすおそれがあります。

このため、他分野への進出や他社の技術の導入等により本リスクの低減を図っております。

 

②知的財産に関するリスク

当社が現在臨床開発を推進しているパイプラインは、当社が保有又は当社が他者からライセンスインをしている特許権若しくは特許出願を基礎とするものであり、これらの特許は医薬品市場の大きい米国、ヨーロッパ及び日本を含むアジアを中心に出願されております。

しかしながら、現在出願中の特許が全て成立するとは限らず、また、当社が事業活動を行う全ての地域又は競合相手が存在する全ての地域において特許を出願しているわけではありません。また、特許が成立しても、当社の研究開発を超える優れた研究開発により当社の特許に含まれる技術が淘汰される可能性は常に存在します。これらが顕在化した場合、当社パイプラインの開発継続が困難になるなど、事業継続や経営成績等に重大な影響を及ぼすおそれがあります。さらに、当社の今後の事業展開の中でライセンスインする必要のある特許が生じ、そのライセンスインができなかった場合や、多額の実施料の支払いが必要になった場合には、研究開発コストの増加など、事業計画や経営成績等に影響を及ぼすおそれがあります。

なお、当事業年度末現在において、当社の開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームが発生した事実はありませんが、他者が当社と同様の研究開発を行っていないという保証はなく、今後も当社が他者の特許に抵触するような問題が発生しないという保証はありません。このような問題を未然に防止するため、当社及び特許事務所等を通じた特許調査を実施しており、現時点において当社技術が他者の特許に抵触しているという事実は認識しておりません。しかし、当社のような研究開発型企業にとって、このような知的財産権の侵害に関する問題の発生を完全に回避することは困難であり、第三者との間で特許権に関する紛争が生じた場合又は当社が共同研究開発の相手方と第三者の紛争に巻き込まれた場合には、事業戦略や経営成績等に重大な影響を及ぼすおそれがあります。

 

③製造物責任に関するリスク

医薬品の開発及び製造には、製造物責任のリスクが内在します。将来、当社が開発し製品として販売された医薬品が健康障害を引き起こした場合若しくは臨床試験、製造、営業又は販売において不適当な点が発見された場合、当社は製造物責任を負うこととなり、売上高の減少や損害賠償費用等、経営成績等に重大な影響を及ぼすおそれがあります。また、たとえ当社に対する損害賠償の請求等が認められなかったとしても、損害賠償請求が与えるネガティブなイメージにより、当社及び当社が開発した医薬品に対する信頼性に悪影響を及ぼし、事業継続に影響を及ぼすおそれがあります。

現時点において当社の医薬品事業は研究開発段階であるため、本リスクの可能性は製造業務、つまり委託先に内在すると考えており、製造委託機関への監査等を実施することで、品質管理とその維持に努めております。(化粧品事業については、「(4)化粧品事業に関するリスク」を参照)

 

④化粧品事業に関するリスク

当社は株式会社アルビオンとの化粧品の自社技術を用いた共同開発により、化粧品事業を展開しております。当社は主に、同社に対し化粧品の材料供給を行っております。

化粧品業界は、参入障壁が低いこともあり、激しい企業間競争にさらされておりますが、当社は同社とともに既存の製品にない画期的な製品を開発し、また同社の持つブランド力、マーケティング力及び販売力を活用することにより、現時点において化粧品事業は堅調に進捗しております。しかしながら、他社がより優位性のある製品を発売した場合や、顧客のニーズの移り変わりなど、市場から受け入れられなくなるリスクは常に存在し、これらのリスクが顕在化した場合、化粧品材料供給収入の減少等、経営成績等に影響を及ぼすおそれがあります。このため、消費者ニーズのタイムリーな把握による製品の改良、新製品の開発等により本リスクの低減に努めております。

また、化粧品事業は株式会社アルビオンに対する依存度が高く、契約の解消や当社の望む条件で契約更新できなかった場合等、化粧品事業の継続に重大な影響を及ぼすおそれがあります。同社とは相互利益の考えのもとに契約を締結しており、今後もこの考えを継続することで現契約の維持につながると考えております。また、定期的な連絡会議や担当者レベルでの日常的なコミュニケーション等により、関係の強化や認識の共有等にも努めております。

さらに、当社の供給する原材料等の品質管理には検査の徹底等により万全を期しておりますが、品質や安全性について疑義が生じた場合は、化粧品材料供給収入の減少等により経営成績等に影響を及ぼすおそれがあり、また結果的に当社の製品及び原材料に品質欠陥や安全性に関する問題が生じなかった場合においても、風評被害等により、同様の影響を受けるおそれがあります。このため、製造受託機関による品質適合検査の実施及び当社による検査結果の確認等により、品質管理とその維持に努めております。

 

(5)新型コロナウイルス感染症に関するリスク

今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、世界各国の経済活動に影響が及んでおります。当社は医薬品等の研究開発段階にあるため、当社への影響は限定的と考えておりますが、①臨床開発段階のパイプラインにおける患者登録の遅れに伴う試験期間の延長、②百貨店等における化粧品の店頭販売の低迷等に伴う当社化粧品材料供給収入の減少等の可能性があり、本リスクは今後、新型コロナウイルス感染症の収束後数ヵ月から数年程度存在すると予想しております。①については、治験登録施設の追加等を実施しておりますが、臨床開発の遅延による開発コストの増加、将来の売上高の計上時期の遅れ等の可能性があり、②については、対策が困難であるため、化粧品材料供給収入の減少等の可能性もあり、いずれも経営成績等や事業展開に影響を及ぼすおそれがあります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1)業績

当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、ワクチン接種が進んだこと等により回復傾向に向かうことが期待されておりますが、他方で半導体不足やロシアのウクライナ侵攻による資源価格の高騰、さらには生活必需品の物価上昇等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。

このような経済環境のもと、当社は、製品の製造販売承認申請とライセンスアウトを加速するため、後期臨床開発品に引き続き集中し、その開発を推進してまいりました。また、中長期的な戦略として、自社技術を核とした核酸医薬をはじめとする最先端となる次世代モダリティの取り込みなどM&Aや提携を推進し、創薬事業の拡大にも積極的に取り組んでまいりました。

なお、新型コロナウイルス感染症の当事業年度における業績への影響につきましては、当社は医薬品等の研究開発段階にあるため、軽微であったと判断しております。

 

(臨床パイプラインの進捗状況)

臨床パイプラインの進捗状況は下記のとおりです。

VB-111: プラチナ製剤抵抗性再発卵巣がんを対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(OVAL試験)において、当社が日本国内における臨床試験を担当し、2021年6月に投与開始、2021年12月に目標症例数である30例を達成いたしました。OVAL試験全体としては、2022年3月に目標症例数の登録が完了し、全世界で409例が登録されました。

VB-111はVascular Biogenics Ltd.(イスラエル)から国内の開発及び販売権に関するライセンスを取得した遺伝子治療製品です。OVAL試験は、早ければ2022年後半に無増悪生存期間(PFS)の結果取得が予定されています。なお、2022年4月、本製品は米国食品医薬品局(FDA)よりプラチナ製剤抵抗性再発卵巣がんを対象としてファスト・トラック指定を受けております。また、海外で大腸がん及び膠芽腫(こうがしゅ)を対象とした医師主導第Ⅱ相臨床試験も進められております。

ENT103: 国内における中耳炎を対象とした第Ⅲ相臨床試験は、2021年5月に目標症例数200例の症例登録が完了し、2021年9月に持続する膿性耳漏を有する中耳炎の臨床所見を有意に改善したことが確認され、主要評価項目を達成しました。本結果をもとに2022年4月、セオリアファーマ株式会社(以下「セオリアファーマ」といいます。)が外耳炎及び中耳炎を対象に製造販売承認申請を行いました。

ENT103はセオリアファーマと共同開発中の耳鼻咽喉科領域におけるパイプラインです。今後、薬事承認、薬価収載というステップを経て、2023年度前半の販売開始を見込んでおります。

NC-6004:頭頸部がんを対象に、免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を実施してまいりましたが、2022年4月、第Ⅱb相臨床試験の暫定的な解析において、主要評価項目(PFS)を達成する可能性が低いと推察されたため、本治験について継続しないことをOrient Europharma Co., Ltd.(以下、「OEP」といいます。)と合意いたしました。

NC-6004は、シスプラチンのミセル化ナノ粒子製剤です。ライセンス先であるOEPと共同で臨床開発を進めてまいりました。本製品の開発方針及び契約については、今後、OEPとの協議を進めてまいります。

NC-6300:2021年6月にファスト・トラック指定を受け、米国で軟部肉腫を対象に第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験実施中です。並行してライセンスアウトに向けた活動を行っております。

NC-6300は、エピルビシンのミセル化ナノ粒子製剤です。

 

※ファスト・トラック指定

米国における画期的な新薬について優先的に審査する、優先審査制度です。完治が難しい疾患に対して高い治療効果が期待される新薬を優先的に審査して早期実用化を促すことを目的とした制度です。

 

(核酸医薬の推進)

当社は新たなモダリティである核酸医薬につきましては、低分子医薬や抗体医薬では標的となり得なかった遺伝子からの転写因子であるRNAをターゲットとした新たな治療法の提供を可能とします。当社の核酸用新規DDS技術(YBCポリマー複合体及びポリプレックスミセル)は、核酸医薬の生体内での搬送上の課題を解決するとともに、従来のDDSの製造工程が複雑であるという課題を解決するもので、アカデミアとの共同研究や企業との協働により新規パイプラインの拡充を推進しております。

NC-6100:公益財団法人がん研究会有明病院において2020年9月より医師主導第Ⅰ相臨床試験を実施しております。本試験は治癒的切除不能又は遠隔転移を有する再発・進行HER2陰性乳がんを対象としております。

NC-6100は、慶応大学との共同開発プロジェクトによる転写因子PRDM14に対するsiRNA DDS製剤です。PRDM14は、乳がんの約50%で過剰発現し、その幹細胞性・可塑性に関与することが知られており、新規メカニズムの治療法創出を目指しております。

TUG1(ASO:アンチセンスオリゴ):脳腫瘍の中でも悪性度が高い膠芽腫を対象に非臨床試験及びCMC開発を推進しております。

TUG1 ASOは、長鎖非翻訳RNA TUG1に対するASO DDS製剤です。本プロジェクトは、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学との共同研究であり、日本医療研究開発機構(AMED)の革新的がん医療実用化研究事業に採択されております。

RUNX1(mRNA): 2021年4月にアクセリード株式会社と共同で株式会社PrimRNAを設立し、薬理試験及びCMC研究を実施しております。

RUNX1(mRNA)は、軟骨の増殖・分化に関わる転写因子RUNX1のmRNA医薬です。本プロジェクトは、AMEDの医療研究開発革新基盤創成事業に採択されております。

 

(化粧品事業その他の活動)

株式会社アルビオンが販売する美容液エクラフチュール及び薬用美白美容液エクシア ブライトニング イマキュレート セラム用の当社技術を応用した原材料を供給しております。同社とは共同開発製品であるスカルプトータルケア製品「Depth」事業も共同で推進しております。

また、治療法がない領域に新たな医療を届ける一環として、当社はPRP療法を用いた不妊治療を普及することで患者様のQOL(生活の質)向上のサポートをしております。

 

以上の結果、当事業年度は、開発マイルストーン収入、化粧品材料供給収入、PRP事業に係る医療機器売上等により売上高は264,032千円(前事業年度売上高313,264千円)、営業損失は2,061,088千円(前事業年度営業損失1,302,882千円)、経常損失は1,925,298千円(前事業年度経常損失1,278,764千円)、当期純損失は1,881,678千円(前事業年度当期純損失2,835,793千円)となりました。なお、当事業年度におきまして、以下の営業外収益、営業外費用及び特別利益を計上しております。

・研究開発に係る補助金収入65,000千円を営業外収益に計上しております。

・外国為替相場の変動による為替差益66,320千円を営業外収益に計上しております。これは主に、当社の保有する外貨建預金の評価替えにより発生したものであります。

・第19回新株予約権の発行に伴い、新株予約権発行費4,842千円を営業外費用に計上しております。

・第5回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行に伴い、社債発行費1,775千円を営業外費用に計上しております。

・第11回、第13回及び第18回新株予約権の権利行使期間満了のため、56,136千円を新株予約権戻入益として特別利益に計上しております。

・当社の保有する株式を売却したことにより、投資有価証券売却益4,798千円を特別利益に計上しております。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ794,754千円減少し1,097,044千円となりました。当事業年度のキャッシュ・フローの概況は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、1,752,992千円の支出(前事業年度は1,247,432千円の支出)となりました。研究開発の推進に伴う研究開発費の支出等による税引前当期純損失1,879,056千円等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、244,133千円の支出(前事業年度は871,694千円の支出)となりました。定期預金の預入による支出2,654,962千円、定期預金の払戻による収入2,226,659千円、有価証券の取得による支出10,600,000千円、有価証券の償還による収入10,710,080千円等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、1,145,835千円の収入(前事業年度は11,461千円の支出)となりました。転換社債型新株予約権付社債の発行による収入1,148,225千円等によるものです。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1)生産実績

当社は研究開発を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。

 

(2)受注実績

当社は受注生産を行っておりませんので、受注実績の記載はしておりません。

 

(3)販売実績

当事業年度における販売実績を示すと、次のとおりであります。

当事業年度

(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

264,032

84.28

(注)1.主要な輸出先並びに輸出販売高及び割合は、次のとおりであります。

なお、( )内は総販売実績に対する輸出販売高の割合であります

輸出先

前事業年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

アジア

150,845

100.0

100,336

100.0

合計

150,845

(48.2%)

100.0

100,336

(38.0%)

100.0

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

Orient Europharma Co., Ltd.

150,845

48.2

100,336

38.0

株式会社アルビオン

109,250

34.9

123,379

46.7

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

(1)財政状態

(流動資産)

当事業年度末における流動資産の残高は6,304,085千円(前事業年度末は6,902,163千円)となり、598,078千円減少しました。これは主に、当期純損失の計上に伴う現金及び預金の減少によるものです。

 

(固定資産)

当事業年度末における固定資産の残高は832,162千円(前事業年度末は918,805千円)となり、86,643千円減少しました。これは主に、当社が保有する株式の売却に伴う投資有価証券の減少によるものです。

 

(流動負債)

当事業年度末における流動負債の残高は361,274千円(前事業年度末は265,374千円)となり、95,900千円増加しました。

 

(固定負債)

当事業年度末における固定負債の残高は1,208,099千円(前事業年度末は55,622千円)となり、1,152,477千円増加しました。これは主に第5回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行によるものです。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産の残高は5,566,873千円(前事業年度末は7,499,972千円)となり、1,933,098千円減少しました。これは主に、当期純損失の計上及び新株予約権の行使期間満了に伴う減少によるものです。

 

(2)経営成績

当事業年度における経営成績については、「(業績等の概要) (1)業績」をご参照ください。

 

(3)キャッシュ・フロー

当社は現在、主たる定例的な営業収益がありませんので、研究開発の推進に伴う研究開発費の支出を、主に株式の発行による収入で賄っております。当事業年度末日現在の資金残高は1,097,044千円ですが、一時的な余剰資金については預金又は元本維持を原則とした安全かつ流動性の高い金融商品等に限定して運用しており、それら預金や金融商品まで合わせますと5,945,000千円となります。

一方支出側としましては、当事業年度の経常損失は1,925,298千円、進行期であります第27期の予想経常損失が1,463百万円でありますので、当面の研究開発資金の確保、また事業の進捗によるライセンスインやM&A等の支出にも対応できる資金の確保までできていると判断しております。

なお、新型コロナウイルス感染症に関しましては、以上のとおり当面の資金の確保ができておりますので、現時点において当社キャッシュ・フローへの影響は軽微と考えております。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。また、会計上の見積りにおける新型コロナウイルス感染症の拡大による影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。

 

4【経営上の重要な契約等】

(1)技術導入契約

DEVELOPMENT, COMMERCIALIZATION AND SUPPLY AGREEMENT

契約会社名

(契約締結日)

契約期間

主な契約内容

Vascular Biogenics Ltd.

(2017年11月3日)

契約締結日から「VB-111」の日本国における製品販売終了又はロイヤリティ対象期間(データ保護期間中若しくは知財存続期間又は日本国初回販売開始時から15年間のいずれか長い期間)終了のいずれか長い期間。

① Vascular Biogenics Ltd.(以下、「VBL」)は、遺伝子治療製品「VB-111」の日本国における開発及び商業化に関する再許諾権付の独占実施許諾権を当社に付与する。

② 本契約に基づき、VBLは当社に「VB-111」を供給し、当社は日本における商業化に向けた臨床開発及び販売を担当する。

③ 当社はVBLに対して、契約締結時に契約一時金15百万米ドルを支払う。また開発ステージが一定の段階に進んだ段階で一定のマイルストーンや、上市後は売上に応じた対価を支払う。

 

(2)供給契約

供給契約書及び確認書

契約会社名

(契約締結日)

契約期間

主な契約内容

日油株式会社

(2014年2月7日)

ポリマー供給に関する新たな契約が締結・発効するまで。

当社及び当社の提携先が、ミセル化ナノ粒子を利用した新規医薬品の研究・開発・製剤の商業的製造のために必要とするポリマーを、日油株式会社が当社に独占的に製造供給する供給契約書の契約期間満了(2013年12月15日)後も、合意した条件に従い、同社よりポリマー製造供給を受ける。

 

(3)その他の契約

① 共同開発契約書

契約会社名

(契約締結日)

契約期間

主な契約内容

株式会社アルビオン

(2016年3月24日)

2015年7月30日から、2024年3月31日まで。

① 当社と株式会社アルビオン(以下、「アルビオン」)は、当社が所有する最新の医薬品技術を応用した新しい化粧品素材の共同開発を行い、その素材を使用した化粧品をアルビオンが製品化する。

② 当社は、化粧品素材として使用される原料の供給を行い、アルビオンは、本素材を用いた新しい化粧品の製造・販売に向け、開発を推進する。

③ アルビオンは当社に対し、当社技術利用の対価として一定額を支払う。また、当社から供給された原料の対価を支払う。

 

② 共同開発及び共同商業化に関する契約書

契約会社名

(契約締結日)

契約期間

主な契約内容

セオリアファーマ株式会社

(2018年6月14日)

2018年6月14日から、両社が解約に合意するまで。

当社とセオリアファーマ株式会社(以下、「セオリア」)は、セオリアが所有する医療用医薬品候補物の商業化に向けた共同開発を行い、製造販売承認の取得及び販売を早期に開始するため、相互に協力し推進する。

 

 

5【研究開発活動】

当社における研究開発は、研究部及び臨床開発部を中心に実施しております。当事業年度末現在で、研究開発スタッフは16名にのぼり、これは総従業員の66.7%に当たります。

当社は当事業年度において、以下のような研究開発活動を実施しており、研究開発費の総額は1,923,748千円となりました。

(1)当社の研究開発活動の概要

「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、当社の主たる事業目的は、「新たな価値を創造するとともに、人々の健康と幸福に貢献する」ため、革新的な治療薬を生み出し、有効な治療法がない患者さんに対し新たな治療を提供することであり、新しいモダリティ技術による遺伝子治療製品や、独自のDDS技術を活用した核酸医薬などの臨床開発を推進し、新しいメカニズムによる難治がんの治療薬や再生医薬の提供を目指しております。

前述のとおり当社の研究開発活動は、研究部及び臨床開発部を中心に実施しておりますが、共同研究契約を締結している場合は締結先との共同研究により実施しております。

 

(2)当社の開発品目ごとの研究開発状況について

開発品目

当社が臨床開発を進めるパイプラインは3品目であり、これに続く核酸医薬パイプラインが3品目あります。

(臨床パイプライン)

各パイプラインの概要は、「第1 企業の概況 3 事業の内容 ③ 当社のパイプラインについて」に記載のとおりであります。

(核酸医薬パイプライン)

核酸医薬パイプライン候補の概要及び進捗状況は、「第1 企業の概況 3 事業の内容 ④ 核酸医薬パイプラインについて」に記載のとおりであります。