文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
(基本理念)
当社グループでは、グループ共通の価値観として、グループ基本理念「OUR PHILOSOPHY」を策定し、公表しています。「OUR PHILOSOPHY」は、グループの経営、企業活動、役員や社員などの構成員において、大切にする考え方やあり方を幅広く明確化しており、当社グループのすべての営みはこの「OUR PHILOSOPHY」を軸に行われます。当社グループは、社会に対して果たすべき役割として、「デジタル技術を駆使したムーバーとして、未来の景色に鮮やかな彩りをつける」存在を目指してまいります。
また、当社グループでは2017年5月に、この先10年を見据えた目指すべき企業像として新たなグループビジョンを定めました。このグループビジョンをTISインテックグループの全員で共有し、一人ひとりが日常業務の中で実践することで、TISインテックグループが目指す理想の実現及び更なる企業価値の向上を目指してまいります。
(グループビジョン)
①目指す企業像
「Create Exciting Future」をグループ共通の価値観として、先進技術・ノウハウを駆使しビジネスの革新と市場創造を実現します。顧客からは戦略パートナーとして頼りにされ、既成業界・市場の変革に常にチャレンジし、新たな市場を創造するイノベーターとなることを目指します。
②戦略ドメイン
目指す企業像を実現すべく、4つの戦略ドメインを定義しました。
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ストラテジックパートナーシップビジネス |
業界トップクラスの顧客に対して、業界に関する先見性と他社が追随できないビジネス・知見を武器として、事業戦略を共に検討・推進し、ビジネスの根幹を担う。 |
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ITオファリングサービス |
当社グループに蓄積したノウハウと、保有している先進技術を組み合わせることで、顧客より先回りしたITソリューションサービスを創出し、スピーディーに提供する。 |
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ビジネスファンクションサービス |
当社グループに蓄積した業界・業務に関する知見を組み合わせ、先進技術を活用することにより、顧客バリューチェーンのビジネス機能群を、先回りしてサービスとして提供する。 |
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フロンティア市場創造ビジネス |
当社グループが保有する技術・業務ノウハウ、顧客基盤を活かして、社会・業界の新たなニーズに応える新市場/ビジネスモデルを創造し、自らが事業主体となってビジネスを展開する。 |
また、当社グループは、事業を通じた社会課題の解決による持続的な社会発展への貢献という企業が本来有する社会的責任に対する認識をよりいっそう深め、中長期的な企業価値向上を実現するため、コーポレートサスティナビリティに関する取組みをよりいっそう強化してまいります。その一環として、2018年7月に国連が提唱する「国連グローバル・コンパクト」に署名するとともに、社会の動向やステークホルダーからの期待、当社グループらしさや成長への重要性を元に、4つの重点テーマとマテリアリティ(重要課題)を特定し、優先して取り組んでいくテーマも明確化しました。当社グループはマテリアリティへの取組みを通じて、SDGsの達成に向けて貢献してまいります。
加えて、高く新しい目標にチャレンジする活力ある企業カルチャーを醸成し、グループの企業と社員が共に法令等の遵守はもとより高いモラルに基づいた誠実かつ公正な企業活動を実践し、社会的責任を果たすことを宣言した「グループCSR基本方針」に基づき、CSRを重視した経営を推進してまいります。
(2)経営戦略等
当社グループは、中期経営計画(2018-2020)期間である2020年3月期のグループ経営方針を以下の通りと定め、同計画の目標達成並びにグループ企業価値の向上に向けて諸施策を推進してまいりました。
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中期経営計画(2018-2020) 基本方針 |
2020年3月期 グループ経営方針 |
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「持続的な利益成長」
「社員の自己実現重視」
「継続的なスピードある構造転換」 |
・事業拡大・構造転換のための積極的な先行投資 ・収益性向上のための施策推進・事業ポートフォリオの見直し ・ASEANトップクラスのIT企業連合体を目指した成長戦略の推進 ・働きがい向上と人材マネジメントの高度化 ・グループ経営の高度化・効率化の実現 |
グループ経営方針に基づき、構造転換に向けた積極的な先行投資を行いながらも、顧客のIT投資ニーズへの的確な対応による事業拡大、生産性向上や不採算案件抑制等、収益性向上に向けた取組みを推進してまいりました。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
システムの複雑化・大規模化、サービス化の進展、グローバル化の流れ、更には急速に進む技術革新等、経営環境が大きく変動する中、当社グループはIT業界のリーディングカンパニーとして、豊かな未来社会実現の一翼を担う企業グループを目指しております。
当社グループでは、中期経営計画(2018-2020)の基本方針である「持続的な利益成長」「社員の自己実現重視」「継続的なスピードある構造転換」を達成するために、最終年度となる2021年3月期の重要経営指標を以下の通り定め、目標としています。2020年3月期では、全ての指標において当連結会計年度の目標を大きく上回り、中期経営計画(2018-2020)で定めた4つの重要な経営指標について1年前倒しで達成しました。
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中期経営計画 重要な経営指標 |
2019年3月期 |
2020年3月期 |
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2021年3月期 |
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計画 |
実績 |
計画(注1) |
実績値 |
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中計値(注2) |
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戦略ドメイン比率 |
40% |
42% |
45% |
50% |
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50% |
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営業利益 |
350億円 |
380億円 |
420億円 |
448億円 |
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430億円 |
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営業利益率 |
8.5% |
9.0% |
9.6% |
10.1% |
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10% |
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ROE |
10.2% |
11.5% |
12.1% |
12.5% |
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12% |
(注1)2019年11月上期決算発表時点の修正計画。
(注2)2021年3月期中計値は、中期経営計画(2018-2020)策定時の数値。
(4)経営環境
当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、世界経済の先行きには不透明感が高まり、短期的には産業ITセグメントを中心に新たな投資を控え、開始時期を延伸する顧客も増えています。一方で、人々の働き方や暮らしの価値観の変化が進む可能性もあり、このような変化から生じる新たなニーズに応えていくことが必要であると認識しております。
長期的には、新型コロナウイルス感染症拡大影響からの正常化等に不確実性はあるものの、顧客のデジタル経営への志向が強く、IT投資ニーズは拡大することが期待されます。あらゆる産業において、企業変革と競争力の強化のために、新たなデジタル技術とデジタルデータを活用した「デジタル・トランスフォーメーション」の重要性が高まっており、その実現に向けた戦略的なIT投資の増加も期待されます。
日本においてはキャッシュレス決済比率が先進国の中では低水準に留まっているものの、経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」において同比率を2025年に40%へ引き上げる宣言を定めたことを受けて、今後、クレジットカードやデビットカード、QRコード決済など多様なキャッシュレス決済手段の更なる普及や、キャッシュレス社会の実現に向けた諸施策の推進などを背景にキャッシュレス決済関連市場の拡大が期待されます。
一方で、デジタル化の急速な進展やグローバルなITプラットフォーマーの台頭などにより、事業環境が急激に変化し、これまでとまったく異なる発想が求められるようになっております。産業構造の変化や社会課題など、外部環境の変化を敏感に察知し、そこから当社にとっての重要課題を設定し、ビジネスの成長へと結びつけることがより必要となってきていると認識しております。
また、2017年11月には日本経済団体連合会が「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に向けて企業行動憲章の改定を行うなど、日本企業全体がビジネスイノベーションを発揮し、事業を通しての社会課題の解決や、ダイバーシティ、働き方改革等に取り組んでいくことが求められています。当社グループの属する情報サービス産業においても、先端IT技術を有している高付加価値IT人材の確保が一層難しくなることが想定されており、加えて、社会的な課題である長時間労働の是正、多様な働き方の推進など、働き方を変えていくための職場風土・環境の整備の必要性が高まっていることが、重要な環境変化と認識しております。そのような中、当社グループも社会課題の解決をリードする企業への変革を求められていると認識しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは顧客への提供価値を持続的に向上するため、グループビジョンで掲げた「Create Exciting Future」が目指す理想に向かい、構造転換を実現し、4つの戦略ドメインを拡充してまいります。構造転換を強力に進めるうえで、対処する課題は、「デジタル化における価値提供力の強化」、「グローバル事業の拡大」、「経営マネジメントの高度化」、「人材の多様化・高度化」であると認識しております。これらを新型コロナウイルス感染症拡大による影響が不確実な環境の中で、注意を払いつつ、進めていくことが必要であると認識しております。
①デジタル化における価値提供力の強化
社会・生活のデジタル化に取り組む事業者が急速に増加し、当社グループの顧客が、新しい技術と事業の融合や新規事業の創出に積極的に取り組む中、デジタル化を進めるパートナーとしての価値提供を強化してまいります。
当社グループの特徴である決済領域においても、社会・生活のデジタル化に取り組む事業者が増加する中、事業と決済を融合させ、顧客接点を充実化したいというニーズが様々な業界で高まっています。
プロセッシングサービスの中心となるクレジットSaaS(Software as a Service)の展開により、ファイナンス機能を含む総合的プロセッシング需要に確実に応えていくことに加え、デジタル口座、モバイルウォレット、サービス連携、セキュリティ、データ利活用というデジタル化する決済に求められる要素をカバーし、事業展開を進めてまいります。
加えて、決済領域のみに留まらず、地域・都市のスーパーシティ構想や当社が支援した「TOYOTA Wallet」のようなMaaS(Mobility as a Service)領域での決済プラットフォームの提供等を通じて、デジタル化を通じた利便性の高い社会の創造に貢献してまいります。会津若松市のスーパーシティ構想にキャッシュレス、AI・ロボティクス、ヘルスケア分野で関わっていますが、このような取組の他地域・都市への展開を進めてまいります。
②グローバル事業の拡大
グローバル事業については、これまで成長著しいASEANマーケット獲得のために、各国の有力IT企業との資本・業務提携を進める中、「ASEANトップクラスのIT企業連合体」を目指し、タイ国内のエンタープライズ向けITソリューション提供のリーディングプレイヤーであるMFEC Public Company Limited(以下、「MFEC」という。)を当社の連結子会社とすることを目的として、同社株式をタイ王国の証券取引法及び現地法令に基づく公開買付けにより取得することといたしました。連結子会社化により、一層の事業シナジーを創出し、重点領域と定めた決済・銀行・ERP領域について、さらなる事業の拡大、競争力の向上を目指してまいります。
また、東南アジアに大きな影響力を持つプラットフォーマーとの資本・業務提携により関係を強化し、新たな決済手段等への投資を共に進めていくことで、グローバル市場にむけ最適な決済サービスを展開し、決済領域の事業成長を目指してまいります。
③人材の多様化・高度化
「人材の多様化・高度化」については、社員の自己実現を重視し多様な人財が活躍できる仕組み・風土構築を通じて働きがい向上に努めています。社員が仕事を通して自己実現を図り、より高い成果を生み出せるよう、職場風土・環境の整備に取り組む施策をまとめた「TIS人事本部マニフェスト」を策定し、60歳以降も処遇制度が変わらない「65歳定年制度」を導入しております。こうした取り組みの結果、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人として、経済産業省と日本健康会議が主催する「健康経営優良法人2020~ホワイト500~(大規模法人部門)」に昨年に引き続き選定され、経済産業省が主催する「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選ばれております。
構造転換をさらに加速するため、デジタル化を牽引する多様性に富む人材が柔軟で絶え間ない変化やこれまでにない価値を生み出し続けることが必要です。また、IT人材の獲得競争が進む中、採用・育成活動やパートナーとの関係強化等を通じ、持続的に人材を確保するとともに、女性活躍推進を含む多様な人材活躍、健康経営、働き方改革を主軸にダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを推進し、社員と会社の価値交換性の継続的な向上を進めてまいります。
④経営マネジメントの高度化
グループ共通の価値観であるグループ基本理念「OUR PHILOSOPHY」およびグループビジョンの策定と浸透活動の推進、独立社外取締役の増員と多様性の確保、「指名委員会」、「報酬委員会」の設置および内部統制管理体系を整理・集約しグループ内部統制委員会に一本化するなど、事業持株会社体制への移行を機に体制を整えてまいりました。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響が広がり、不確実性の高まる環境において、一層のデジタル化における価値提供力の強化やグローバル事業の拡大を進めるためには、財務の健全性を堅持した上で、新サービス創出のためのソフトウェア投資、人材投資、研究開発投資、M&A・出資等の成長投資が必要となります。投資効率性の向上や資本コスト以上の適正リターンを獲得するため、投資マネジメントの一層の高度化を進めてまいります。加えて、戦略パートナーとして顧客との長期的関係の確立や一層のサービス転換を加速するため、事業マネジメントを強化し、収益構造のストック化を促進することで事業基盤の安定性を向上します。
社会の持続可能性や安心・安全に対する意識が高まる中、長期視点のリスク・機会の観点でESGマネジメントを強化し、社会基盤を支える企業グループとして、事業を通じ、社会課題の解決に継続的に貢献してまいります。
また、グループ基幹システムの統合等による業務効率化を行う「本社系機能高度化プロジェクト“G20”」については、2020年4月から新システムの利用を開始しました。今後は、グループの業務集約と効率化を行い、グループ経営管理の一層の高度化を進めてまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の経営成績、財政状態、キャッシュ・フローの状況(以下、「経営成績等」という。)に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。
なお、当社グループでは、「リスク」を「当社及びグループの経営理念、経営目標、経営戦略の達成を阻害するおそれのある経済的損失、事業の中断・停滞・停止や信用・ブランドイメージの失墜をもたらす要因」と定義するとともに、リスク管理規程に基づき、グループ全体のリスクを戦略リスク、財務リスク、ハザードリスク、オペレーショナルリスクに分類しています。
いずれのリスクも当社グループのリスク管理評価方法に基づき、リスク発生頻度と損害影響度の観点から総合的に勘案したものですが、個々の事象や案件の内容により、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容と影響度は異なるため、具体的な記載をすることは困難であることから、経営成績等に与える影響の詳細の記載を省略しています。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
当社は、グループのリスクを適切に認識し、損失発生の未然防止に努めるため、リスク管理規程を制定しており、この規程に則り、グループ全体のリスク管理を統括するリスク管理担当役員を任命するとともに、リスク管理統括部門を設置し、リスク管理体制の整備を推進しています。また、リスク管理に関するグループ全体のリスク管理方針の策定・リスク対策実施状況の確認等を定期的に行うとともに、グループ会社において重大なリスクが顕在化したときには、対策本部を設置し、被害を最小限に抑制するための適切な措置を講ずることとしています。
また、リスク管理体制の整備の状況として、内部統制システムに関する基本方針及び各種規程等に基づき、グループ全体の内部統制の維持・向上に係る各種施策の推進を図るとともに、内部統制システムの整備及び運用状況のモニタリングを実施し、グループ内部統制委員会にて審議の上、取締役会に審議結果を報告するプロセスを整備しています。取締役会への報告を踏まえ、グループ全体の内部統制システムの強化及び改善に取り組んでいます。
グループ内部統制委員会において、リスクに関しては年2回審議され、グループ全体のリスクに係る課題の確認、改善施策の進捗状況の評価等を実施しています。
<リスク管理プロセス図>
(1)戦略リスク
①人材について
当社グループにおいて、人材は最も重要な経営資源であり、当社グループの事業伸長は顧客に専門的で高付加価値のソリューションを提供する優秀な人材の確保、育成に大きく影響されることから、優秀な人材の確保、育成が想定通りに進まない場合は、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは働き方改革・働きがい向上を目的として、多様な人材が活躍できる風土、人事制度、オフィス環境の整備等を通じて優秀な人材の確保に努めるとともに、資格取得支援、研修制度の体系化のほか、教育日数を目標化する等、人材の育成に注力しております。
②生産技術革新について
当社グループの属する情報サービス産業においては、技術革新の急速な進展とそれに伴う市場ニーズの変化に迅速に対応することが常に求められます。その中において適切な対応をとることができず、当社グループの有する技術・ノウハウ等が陳腐化し、顧客の期待する高品質のサービスを提供できなくなる等、競争優位性を失った場合、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは情報技術や生産、開発技術等の調査、研究を不断に進めており、テクノロジーポートフォリオより開発競争力の持続的向上につながるコア技術の選定、研究開発の推進及び成果の展開とともに、エンハンスメント革新活動を継続的に実施する等を通じて対応を強化しております。
③競争激化、価格競争について
当社グループの属する情報サービス産業では事業者間の競争が激しく、他業種からの新規参入等も進んでいることから、価格競争が激化する可能性があり、想定を超える価格競争が発生した場合には、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、経営計画等において継続的に環境分析を実施して市場ニーズを把握し、提供するサービスの高付加価値化等による競合他社との差別化を図るとともに、不採算案件の抑制やエンハンスメント革新活動等を通じて生産性向上にも取り組んでおります。
④投資について
当社グループでは、主として、事業伸長や先端技術の獲得を目的にベンチャーを含む国内外の企業への資本・業務提携に伴う出資、24時間365日稼働のアウトソーシング事業やクラウドサービス事業を展開するために用いるデータセンター等の大型IT設備に対する投資(初期構築のための設備投資及び安定的な維持・運用のための継続的な設備投資)及びサービス型事業推進のためのソフトウェアに対する投資を行っております。こうした投資は、事業環境の予期せぬ変化等により、計画した成果や資金回収が得られない場合または資産が陳腐化した場合には、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、投資案件の内容により、取締役会、CVC投資委員会及び投資委員会等において、事業計画に基づく十分な検討を行った上で投資の意思決定をしており、また、投資実行後も定期的な事業計画の進捗確認を実施しております。加えて、大規模な資本提携先には役員派遣を行う等、継続的に状況が把握できるように努めています。
⑤海外事業について
当社グループは成長戦略の一環として、ASEANを中心とした海外事業の拡大を進めております。海外事業は、グローバル経済や為替の動向、投資や競争等に関する法的規制、商習慣、労使関係等、様々な要因の影響を受ける可能性があります。これらの要因の影響が予期しない形で顕在化した場合は、当社グループの事業及び業績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、海外事業のリスク管理は、現地のグループ会社や拠点が当社主幹組織と連携し、状況の的確な把握と速やかな対策の協議等、管理体制の向上に取り組んでおります。
(2)財務リスク
①保有有価証券について
当社グループでは、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資すると判断した場合に限り、取引先との安定的な提携関係・協力関係を通じた事業機会の継続的創出などを目的としてその企業の株式を保有します。また、短期の余資運用を目的として債券を保有することがあります。こうした有価証券は時価の著しい変動や発行体の経営状況の悪化等が生じた場合、会計上の損失処理を行う等により、当社グループの事業及び業績等に影響が生じる可能性があります。
このため、保有有価証券については、発行体の財政状態や業績動向、格付状況等を把握し安全性を十分確認するとともに、保有の適否を定期的に検証し、保有意義が希薄と判断した株式については、可及的速やかに売却することを基本方針としています。
(3)ハザードリスク
①パンデミック(感染症・伝染病の世界的な大流行)について
当社グループにおいて、人材は最も重要な経営資源であり、当社グループの事業が人材に大きく依存していることから、パンデミックにより、当社グループの社員やビジネスパートナー企業の生産活動に大きな影響が生じた場合には、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、パンデミック発生時には、WHO(世界保健機構)や日本政府等の対応を適切に把握するとともに、事業継続計画に基づき、各事業所、データセンター等での衛生対策の強化や感染症発生地域への業務渡航の自粛等の対策を発生レベルに応じて講じています。また、在宅勤務を可能とする環境整備等も進めています。
②自然災害について
当社グループでは、データセンター等の大型IT設備を用いて、アウトソーシング事業やクラウドサービス事業を展開しております。大規模自然災害やそれに伴う想定を超える長期の停電等により、データセンターの円滑な稼働が阻害されるような事態が発生した場合は、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、事業継続計画に基づき、各データセンターにおいて各種災害に対して様々な設備環境を整備するとともに、旧来型のデータセンターを閉鎖することとし、免震構造、堅牢な防災設備、非常用自家発電機、燃料備蓄及び優先供給契約締結をはじめとした信頼性の高い電気設備を備えた最新鋭のデータセンターへの集約を進めています。
(4)オペレーショナルリスク
①システム開発について
当社グループは、顧客企業の各種情報システムに関する受託開発や保守等のシステム開発を中核事業の一つとして展開しております。システム開発が高度化・複雑化・短納期化する中、計画通りの品質を確保できない場合または開発期間内に完了しない場合にはプロジェクト完遂のための追加対応に伴って費用が想定を大きく上回るほか、顧客に対する損害賠償等により、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、ISO9001に基づく独自の品質マネジメントシステム「Trinity」に基づき、専任組織による提案審査やプロジェクト工程に応じたレビューを徹底し、継続的な品質管理の高度化や生産性の向上に取り組むとともに、グループ品質執行会議を通じた品質強化及び生産革新施策のグループ全体での徹底及び階層別教育の充実化等を通じた管理能力や技術力向上を図っております。
また、システム開発にあたっては、生産能力の確保、生産効率化、技術力活用等のために国内外のビジネスパートナー企業に業務の一部を委託しています。その生産性や品質が期待に満たない場合には円滑なプロジェクト運営が実現できなくなり、当社グループの事業及び業績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、ビジネスパートナー企業との定期的な会合等による状況の把握や関係強化を図り、国内外で優良なビジネスパートナー企業の確保等に努めています。
②システム運用について
当社グループでは、データセンター等の大型IT設備を用いて、アウトソーシング事業やクラウドサービス事業を中核事業の一つとして展開しております。そのシステム運用においては、オペレーション上の人的ミスや機器・設備の故障等によって障害が発生し、顧客と合意した水準でのサービスの提供が実現できない場合、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)をベースにした保守・運用のフレームワークに基づき、継続的なシステム運用品質の改善を行うとともに、障害発生状況の確認・早期検知、障害削減や障害予防に向けた対策の整備・強化に努めています。
③情報セキュリティについて
当社グループでは、システム開発から運用に至るまで幅広く事業を展開する過程で、顧客企業が有する個人情報や顧客企業のシステム技術情報等の各種機密情報を知りうる場合があります。コンピュータウィルス、不正アクセス等の理由により、これらの機密情報の漏洩や改竄等が発生した場合、顧客企業等から損害賠償請求や当社グループの信用失墜の事態を招き、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、グループ情報セキュリティ方針に基づき情報セキュリティマネジメントシステムを確立し、運営することで情報の適切な管理を行うとともに、社員への教育・研修を通じて意識向上に努めています。また、グループ情報セキュリティ推進規程に基づき、グループ全体の情報セキュリティ管理レベルの確認、評価、改善施策の推進を図るとともに、情報セキュリティに関する問題発生時には調査委員会を設置し、原因究明、対策の実施、再発防止策の推進等を含む問題解決に向けた責任体制等を整備しています。適切な個人情報保護に向けては、個人情報保護法、個人番号及び特定個人情報取扱規程に基づき、管理体制を構築するとともに社員への教育・研修を通じて個人情報保護の重要性の認識を徹底した上で顧客情報の管理強化を図る等、適切な運用に努めています。なお、当社グループでは、当社をはじめとして、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)やプライバシーマークを取得しています。
④法制度、コンプライアンスについて
当社グループは、様々な国内外の関係法令や規制の下で事業活動を展開しております。法令違反等が発生した場合、また新たな法規制が追加された場合には、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、グループCSR基本方針及びグループコンプライアンス宣言に基づき、コンプライアンス体制を構築し、法令遵守の徹底に取り組み、公正な事業活動に努めています。コンプライアンス規程に基づき、グループ全体のコンプライアンス上の重要な問題を審議し、再発防止策の決定、防止策の推進状況管理などを通じて、グループ全体への浸透を図っております。中でも、情報サービス産業の取引構造に起因した重要課題である請負・派遣適正化に関しては、個別のリスク管理体制を構築するとともに、グループガイドライン策定や自主点検チェックリストの活用等を通じて適切な運用に努めています。また、違法行為を未然防止するとともに、違法行為を早期に発見是正する施策としてグループ内部通報制度を導入し通報・相談窓口を設置して、グループ全体の法令遵守意識を高めております。
⑤知的財産権について
当社グループは事業を展開する上で必要となる技術、ライセンス、ビジネスモデル及び各種商標等の知的財産権について、当該権利を保有する他者の知的財産権を侵害することがないように常に注意を払い事業活動を行っております。しかしながら、当社グループの事業が他社の知的財産権を侵害したとして、使用差止請求や損害賠償請求等を受ける可能性があり、その場合には当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、知的財産権に対する体制の整備・強化を図るとともに、社員への教育・研修を通じて意識向上に努めています。なお、当社が保有する知的財産権については、重要な経営資源としてその保護に努めています。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりとなります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、第3四半期累計期間までは緩やかな回復基調が続きましたが、第4四半期になって、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により急速に悪化し始め、先行きも不透明な状況となりました。
当社グループの属する情報サービス産業におけるの当連結会計年度の事業環境は、期中に公表された日銀短観におけるソフトウェア投資計画(全産業+金融機関)がいずれも前年度比増加を示す等、デジタル技術の積極的な活用を通じた経営戦略実現を目指す企業のIT投資動向の強まりを反映して好調に推移しましたが、期末にかけて新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、一部の企業で業況悪化に伴う投資抑制の動きもみられるようになりました。
このような状況の中、当社グループは、「グループビジョン2026」の達成に向けた土台構築のため、当連結会計年度から新たな3か年の中期経営計画を開始し、スピード感のある構造転換と企業価値向上の実現に向けて諸施策を推進しました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ12,242百万円増加の382,899百万円(前連結会計年度末370,657百万円)となりました。
流動資産は、181,543百万円(前連結会計年度末176,231百万円)となりました。これは主に受取手形及び売掛金が9,264百万円増加したこと等によるものであります。
固定資産は、201,356百万円(前連結会計年度末194,426百万円)となりました。これは主に投資有価証券が11,391百万円増加したこと等によるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,306百万円減少の134,942百万円(前連結会計年度末136,248百万円)となりました。
流動負債は、88,479百万円(前連結会計年度末91,126百万円)となりました。これは主に短期借入金が5,094百万円減少したこと等によるものであります。
固定負債は、46,462百万円(前連結会計年度末45,121百万円)となりました。これは主に長期借入金が1,294百万円増加したこと等によるものであります。
(純資産合計)
純資産は、247,957百万円(前連結会計年度末234,408百万円)となりました。これは主に利益剰余金が22,643百万円増加したこと等によるものであります。
なお、自己資本比率は、前連結会計年度末の62.0%から63.3%に上昇し、自己資本当期純利益率(ROE)は、前連結会計年度末の11.5%から12.5%と上昇しています。
セグメント別の財政状態は以下のとおりです。
イ.サービスIT
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて24,836百万円増加し、91,071百万円となりました。
ロ.BPO
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて7,974百万円減少し、2,615百万円となりました。
ハ.金融IT
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて4,945百万円増加し、22,093百万円となりました。
ニ.産業IT
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて17,300百万円減少し、54,070百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の業績は、売上高443,717百万円(前期比5.5%増)、営業利益44,839百万円(同17.9%増)、経常利益46,070百万円(同19.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益29,411百万円(同13.0%増)となりました。
売上高については、IT投資動向が強まりを見せる分野において顧客ニーズを的確に捉えたこと等が牽引し、前期を上回りました。営業利益については、増収効果や収益性向上(売上総利益率は前期比1.4ポイント増の23.9%に向上)による売上総利益の増加が構造転換に向けた対応強化およびブランド強化に向けた施策展開による費用を中心とした販売費及び一般管理費の増加を吸収したことから前期比増益となり、営業利益率は10.1%(前期比1.1ポイント増)となりました。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益については、主に営業利益の増加を背景として前期比増益となりました。
なお、当連結会計年度において、特別利益10,696百万円および特別損失12,128百万円を計上しました。特別利益の主な内容は、2019年9月10日付「投資有価証券売却益(特別利益)の計上に関するお知らせ」で公表した投資有価証券売却益5,445百万円および有形固定資産の整理圧縮による固定資産売却益3,178百万円です。特別損失の主な内容は、当社グループの次世代オフィス構築計画を踏まえて計上した、東京地区におけるグループのオフィス移転・集約に係る費用(オフィス再編費用引当金繰入額)および一部既存拠点の整理に係る減損損失の合計4,112百万円、並びに、2020年1月21日付「Sequent Software Inc.の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」で公表した被取得企業ののれんに係る減損損失2,254百万円です。
セグメント別の状況は以下の通りです。なお、各セグメントの売上高はセグメント間の売上高を含んでいます。
イ.サービスIT
当社グループ独自の業務・業種ノウハウを汎用化・テンプレート化した知識集約型ITサービスを提供するビジネス(初期構築・ERP等を含む。)で構成されています。
当連結会計年度の売上高は125,518百万円(前期比6.7%増)、営業利益は8,198百万円(同3.8%減)となりました。売上高は決済関連ビジネスの拡大等により前期比増収となりました。営業利益については、事業強化のための先行投資費用の増加に加え、プラットフォーム事業の更なる事業強化に向けた戦略見直しに伴う損失計上等により前期比減益となり、営業利益率は6.5%(前期比0.7ポイント減)となりました。
ロ.BPO
豊富な業務・ITノウハウを活用し、マーケティング・販促業務や事務・契約業務等のビジネスプロセスアウトソーシングを提供するビジネスで構成されています。
当連結会計年度の売上高は33,699百万円(前期比7.0%減)、営業利益は2,622百万円(同42.2%増)となりました。前連結会計年度にコア事業への集中の一環として一部の連結子会社についてその全株式をグループ外に譲渡した影響が大きく、売上高は前期比減収となりましたが、収益性改善の取組み等により前期比増益となり、営業利益率は7.8%(前期比2.7ポイント増)となりました。
ハ.金融IT
金融業界に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業の高付加価値化及び業務のIT化・ITによる業務運営の支援を行うビジネスで構成されています。
当連結会計年度の売上高は114,472百万円(前期比7.6%増)、営業利益は14,936百万円(同16.7%増)となりました。大型開発案件の反動減の影響はあったものの、根幹先顧客におけるIT投資拡大の動き等を受けて、前期比増収増益となり、営業利益率は13.0%(前期比1.0ポイント増)となりました。
なお、特定顧客向け提供サービスに活用するノウハウが産業系から金融系に変更となったことに伴い、当該顧客との取引は、前連結会計年度は産業IT、当連結会計年度は金融ITに計上されており、増加要因となっています。
ニ.産業IT
金融以外の産業各分野に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業の高付加価値化及び業務のIT化・ITによる業務運営の支援を行うビジネスで構成されています。
当連結会計年度の売上高は202,701百万円(前期比6.9%増)、営業利益は19,159百万円(同29.7%増)となりました。製造業系の根幹先顧客やエネルギー系をはじめ、幅広い業種におけるIT投資拡大の動き等により、前期比増収増益となり、営業利益率は9.5%(前期比1.7ポイント増)となりました。
なお、特定顧客向け提供サービスに活用するノウハウが産業系から金融系に変更となったことに伴い、当該顧客との取引は、前連結会計年度は産業IT、当連結会計年度は金融ITに計上されており、減少要因となっています。
ホ.その他
リースなどの情報システムを提供する上での付随的な事業及びその他で構成されています。
当連結会計年度の売上高は8,806百万円(前期比2.0%減)、営業利益は932百万円(同3.0%減)となり、営業利益率は10.6%(前期比0.1ポイント減)となりました。主に、グループのシェアードサービスを担うITサービスフォース株式会社を当社に吸収合併したことに伴い、前第2四半期連結会計期間から同社事業に相当する業績について計上するセグメントを変更したことによる影響です。
前述の通り、当社グループは「グループビジョン2026」の達成に向けた土台構築のため、前連結会計年度から中期経営計画(2018-2020)を遂行しています。5つの基本方針である「持続的な利益成長」「社員の自己実現重視」「コア事業への集中」「先行投資型への転換」「グローバル事業の拡大」のもと、スピード感のある構造転換と企業価値向上の実現を目指します。
中期経営計画(2018-2020)の2年目である当連結会計年度については、以下のグループ経営方針に基づき、各種施策に精力的に取り組みました。
<2020年3月期 グループ経営方針>
イ.事業拡大・構造転換のための積極的な先行投資
ロ.収益性向上のための施策推進・事業ポートフォリオの見直し
ハ.ASEANトップクラスのIT企業連合体を目指した成長戦略の推進
ニ.働きがい向上と人材マネジメントの高度化
ホ.グループ経営の高度化・効率化の実現
当連結会計年度における主な取組み状況は以下のとおりです。なお、この取組みの結果、中期経営計画(2018-2020)で定めた4つの重要な経営指標(戦略ドメイン比率、営業利益、営業利益率、ROE)全てについて、1年前倒しで達成いたしました。
イ.事業拡大・構造転換のための積極的な先行投資
当社グループは、社会課題の視点から顧客に対して先回りしたビジネスへの転換を目指しており、中でも成長エンジンと位置付けるサービス型ビジネスの拡大に向けて、グループの成長・得意領域に対して重点的な投資を行うこととしています。
キャッシュレス化等による市場環境の変化やそれに伴う新たなIT投資が見込まれる決済分野においては、長年に亘り培ってきた知見・ノウハウ等の強みを活かし、トータルブランド「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」のもとでサービス型ビジネスの事業拡大を推進しています。
その一環として、これまでに培ってきたクレジット基幹業務システムの技術・ノウハウを最大限に活用し、共通化のメリットと独自性のバランスを考慮した構造による競争力とコスト削減の両立が可能な「クレジットプロセシングサービス」の提供に向けて準備を進めており、着実に進展しています。
また、キャッシュレス化やIoTの進展による様々なサービスの登場が予想されることから、決済関連のサービス型ビジネスの一つとして、様々な決済手段と店舗・EC・アプリなどの多様なインターフェースを一つのアプリに統合する「デジタルウォレットサービス」を立ち上げ、推進しています。2019年11月には、トヨタ自動車株式会社、トヨタファイナンシャルサービス株式会社、トヨタファイナンス株式会社の3社が提供を開始した電子マネー決済、QRコード決済/バーコード決済といった複数の支払い手段を搭載するスマートフォン決済アプリ「TOYOTA Wallet」の構築を支援し、当社のデジタルウォレットサービスを提供いたしました。
また、2020年1月には、デジタルウォレットサービスの中で決済やカード情報をセキュアに格納する重要技術であるトークナイゼーション技術をもつ米国Fintech企業のSequent Software Inc.の株式を取得し、連結子会社化しました。トークナイゼーション関連ビジネスについては、次世代ネットワーク「5G」を活用したIoT決済の広がりなど、今後の世界的な拡大が見込まれます。この領域で有力な技術を持つ同社を連結子会社化し、技術を早期に当社グループに取り込むことで、デジタルウォレットサービスの拡大加速およびIoT決済への対応を進めてまいります。
Fintech、IoT、AI等の新技術の進展や業界の潮流への対応としては、オープンイノベーションの活性化に積極的に取り組んでおり、米国ベンチャーファンド「Sozo Ventures Ⅱ-S」へ出資する等、スタートアップ企業との連携を加速させています。
また、将来の事業展開に備え、定款第2条の目的事項に「電子決済等代行業および資金移動業に係る業務」を追加したほか、沖縄県の八重山諸島における離島船舶、バス、タクシーによる地域観光型MaaS(Mobility as a Service)をはじめ、様々な実証実験に参画しています。なお、2019年11月より開始された、八重山諸島でのMaaS実証実験については、全国の牽引役となる先駆的な取り組みを行う「先行モデル事業」として、国土交通省の「新モビリティサービス推進事業」に選定されています。
ロ.収益性向上のための施策推進・事業ポートフォリオの見直し
事業競争力の更なる強化に向け、不採算案件の撲滅やエンハンスメント領域の収益性向上のための革新活動を引き続き推進しています。その成果は着実に売上総利益率の向上として表れており、当連結会計年度の売上総利益率はプラットフォーム事業の更なる事業強化に向けた戦略見直しに伴う損失計上等の影響がありながらも、23.9%(前期比1.4ポイント増)となりました。
クラウドおよびセキュリティ領域においては、セキュリティ分野において業界屈指の知見を有する株式会社ラックと業務提携を行い、共同で「セキュリティ・バイ・デザイン」をスピーディに実現する次世代型「クラウド&セキュリティサービスプラットフォーム」の提供を推進しています。加えて、当社グループ内におけるクラウド、セキュリティ、データセンター、ネットワークなどのプラットフォーム事業のさらなる強化に向けて、グループにおける各種プラットフォームサービスの「EINS WAVE(アインスウェーブ)」へのブランド統合等を通じ、「クラウド&セキュリティ」などの成長分野を中心に、当社内に設置する事業戦略推進組織で最適化を進め、更なる競争力強化と成長を目指してまいります。また、この一環として、当社で展開しているEDI事業については、2020年4月より当社の100%子会社である株式会社インテックへ会社分割により承継させました。グループ全体最適経営の実現に向けて、EDI事業を株式会社インテックへ集約し、グループフォーメーションの整備を進めるとともに、EDI事業の競争力強化、事業拡大を図ることで、グループとしての更なる価値向上を図ってまいります。
また当社は、2020年2月に、千代田化工建設株式会社の100%子会社である千代田システムテクノロジーズ株式会社のIT事業を新設分割により承継する会社の株式の一部の取得に合意し、2020年10月より新会社を連結子会社化することといたしました。今後は、千代田化工建設グループのデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた戦略的パートナーシップを構築し、将来的には、新会社を通じて培ったノウハウを活用したITソリューション提供を目指します。
ハ.ASEANトップクラスのIT企業連合体を目指した成長戦略の推進
当社グループは、海外事業戦略において、「ASEANトップクラスのIT企業連合体」の組成を目指し、決済・銀行・ERPを重点事業領域と定めた上で、チャネル(拠点・顧客基盤)とテクノロジー(技術)の2つの観点から有力企業との資本・業務提携等を通じた積極的な事業領域拡大を推進しています。
チャネルの観点では、2020年3月に、当社の持分法適用関連会社であるタイ王国のMFEC Public Company Limited(以下、「MFEC」という。)の連結子会社化を目的として、同社株式をタイ王国の証券取引法および現地法令に基づく公開買付けにより取得することといたしました。MFECは、タイ国内のエンタープライズ向けITソリューション提供のリーディングプレイヤーです。当社は、MFECのタイ国内における高いプレゼンス、サービスクオリティ等を高く評価し、2014年4月に資本・業務提携をし、それ以降、時間をかけながら相互理解のもとで幅広い分野で協業スキームの構築や追加出資を通じて関係強化を図ってまいりました。MFECを連結子会社化することで、MFECの事業構造転換の加速および当社グループの海外事業の規模拡大を実現し、当社グループの企業価値向上に向けて取り組んでまいります。テクノロジーの観点では、最先端技術の獲得とそのグローバル市場への投下の実現に向けた取組みの一つとして、シンガポールのスタートアップ企業SQREEM Technologies PTE.LTD.と資本・業務提携を行いました。同社は、世界最大規模の行動パターン・データ・アグリゲーターで、膨大なデータを基に独自のAI技術を利用したデジタルマーケティング、データ分析分野で急成長を遂げている企業です。今後、同社が持つ高度なAI技術と、当社グループが金融機関、製造業等の様々な業界で培ってきた業務知識を活かし、日本およびASEANにおいて、AIを利用したデータ分析でのリーディングカンパニーとなることを目指して協業を推進しています。更に、前述のとおりSequent Software Inc.を当社の連結子会社に、またコード決済ソリューションの提供等で豊富な実績を有する上海訊聯数据服務有限公司(CardInfoLink)を当社の持分法適用会社にするなど、積極的に取り組んでいます。
また、東南アジアトップクラスのスーパーアプリケーションを提供するGrab Holdings Inc.(本社:シンガポール、以下、「Grab社」という。)と戦略的パートナーシップを目指すために、1.5億ドル(約165億円)を出資し、資本業務提携いたしました。東南アジア最大のデジタルペイメントプラットフォームを展開するGrab社と提携することで、グローバル市場に向け最適な決済ソリューションを展開するという当社の目標を更に前進させることになります。Grab社との関係を一層強化し、東南アジアにおける金融・決済領域の協業拡大を目指すとともに、GrabPayなどのキャッシュレスペイメントの利便性を高めるために、東南アジアおよび日本でのデジタルペイメントのインフラ強化および新たな決済技術の開発にも共同で取り組んでまいります。
ニ.働きがい向上と人材マネジメントの高度化
当社では、多様な社員一人ひとりの成長と会社の持続的な発展を実現する「働きがいの高い会社」を目指す方針を掲げ、「働き方改革」および「健康経営」の各種施策に取り組んでいます。
その一環として、2019年4月より新たに、終日テレワークを主とする働き方「テレワーカー」や「勤務間インターバル制度」「スマートワーク手当」等の人事制度を開始する等、社員の健康に配慮し多様な働き方を可能にする環境づくりを推進しています。当社は従前から時間外労働の削減や年休取得率の向上、各種勤務制度の整備などに継続的に取り組み、4年連続で厚生労働省より「くるみん」認定を取得していましたが、こうした積極的な取り組みを通じて、仕事と子育ての両立支援の制度の導入や利用が進んだことが評価され、「くるみん」取得企業の中からより高い水準の取り組みを行っている企業に与えられる「プラチナくるみん」認定を新たに取得しました。また、2020年4月から、人事評価および勤務制度などの処遇が定年後の65歳以降も正社員と同様になる70歳までの「再雇用制度」を導入することといたしました。今後も若手・ベテランに関わらず、意欲のある社員がその能力を最大限に発揮し活躍できる環境を提供し、社員にとって働きがいの高い会社を目指してまいります。
加えて、当社および株式会社インテックは、経済産業省と日本健康会議が選定する「健康経営優良法人2020~ホワイト500~」に、昨年に続き認定されました。グループで働く社員が生き生きと働ける会社を目指し、引き続き「健康経営」を推進することで、グループで働く一人ひとりの人生の質を向上し、「心身の健康」「働きがいの向上」「生活力の向上」を実現する施策を推進してまいります。
ホ.グループ経営の高度化・効率化の実現
当社グループは、共通の価値観としてすべての活動の基本軸と位置づけるグループ基本理念「OUR PHILOSOPHY」を2019年1月に発表しました。これを受けて、ゆるぎない企業活動ならびにグループ一体経営を強力に推進するための基礎として、グループの全役職員への浸透に向けて「OUR PHILOSOPHY」に関する研修を精力的に実施しています。また、コーポレートサステナビリティに関する取組みをより一層強化しており、その一環として、新たに「環境方針」「持続可能な調達方針」「ダイバーシティ&インクルージョン方針」を制定しました。
グループ経営管理の高度化・効率化の実現に向けて、「本社系機能高度化プロジェクト“G20”」を引き続き推進しています。新たなグループ基幹システムは2020年4月の始動に向けて構築プロジェクトが予定通りに進捗し、グループシェアードサービスについても、今後の推進体制を整備するとともに対象業務や展開スケジュールを定める等、順調に進捗しました。なお、いずれも予定通り2020年4月から始動しており、グループ一体経営のさらなる進展に寄与し始めています。
また、企業価値向上を支える経営基盤強化の一環として、「ビジネス機会の拡大」「人材採用力の向上」「働く誇りの向上」の実現を目指して戦略的なブランド活動を強力に推進することとしました。この方針に基づき、当第3四半期連結会計期間から翌連結会計年度にかけてコミュニケーションプランに基づく集中投資を実施し、早期の認知度獲得を図ります。この一環として、2020年2月から3月にかけて、主に東名阪エリアでテレビCMをオンエアしました。
加えて、グループの働き方改革の推進と、グループ間コミュニケーションの促進を目的として、東京地区におけるグループのオフィス移転・集約を実施し、2021年度に豊洲に新拠点を開設することとしました。これにより東京地区は、当社および株式会社インテックの事業機能を集約する豊洲オフィスと、両社の本社機能を集約する西新宿オフィスの2つの基幹オフィスのもと、事業におけるグループの一体感の強化と中期経営計画の目標である構造転換を加速させるとともに、グループガバナンスの強化を図ります。またこれに伴い、既存オフィスの一部について売却を決定する等、資産整理も進めています。
その他、経営環境の変化に柔軟に対応した機動的な資本政策を遂行し、株主利益および資本効率の向上を図る一環として、2019年5月から7月にかけて、計749,800株(取得価額の総額4,139百万円)の自己株式の取得を実施しました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて2,399百万円減少し、当連結会計年度末には54,684百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は38,569百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益44,638百万円に、資金の増加として、減価償却費12,020百万円などがあった一方、資金の減少として、法人税等の支払額15,207百万円などがあったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は26,437百万円となりました。これは主に、資金の増加として、有形固定資産の売却による収入14,863百万円などがあった一方で、資金の減少として、投資有価証券の取得による支出28,587百万円、無形固定資産の取得による支出9,997百万円などがあったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は14,544百万円となりました。これは主に、資金の増加として、長期借入れによる収入3,500百万円などがあった一方で、資金の減少として、長期借入金の返済による支出7,185百万円、配当金の支払額6,767百万円、自己株式の取得による支出4,153百万円などがあったことによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
なお、アウトソーシング・ネットワーク及びソフトウェア開発についてのみ記載しております。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
|
サービスIT(百万円) |
104,715 |
108.2 |
|
|
BPO(百万円) |
20,964 |
91.4 |
|
|
金融IT(百万円) |
112,676 |
108.8 |
|
|
産業IT(百万円) |
179,159 |
102.5 |
|
|
報告セグメント計(百万円) |
417,516 |
104.9 |
|
|
その他(百万円) |
- |
- |
|
|
合計(百万円) |
417,516 |
104.9 |
|
(注)金額は販売価格によっており、消費税等は含まれておりません。
b.受注実績
当連結会計年度におけるソフトウェア開発に係る受注実績は、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
サービスIT |
53,741 |
113.1 |
15,309 |
111.4 |
|
金融IT |
73,249 |
105.9 |
28,400 |
115.6 |
|
産業IT |
119,339 |
98.1 |
35,566 |
95.5 |
|
合計 |
246,330 |
103.4 |
79,277 |
104.9 |
(注)1.BPOはセグメントの特性によりソフトウェア開発がありません。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2019年4月1日 至 2020年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
サービスIT(百万円) |
111,377 |
106.9 |
|
BPO(百万円) |
30,688 |
92.6 |
|
金融IT(百万円) |
114,204 |
107.6 |
|
産業IT(百万円) |
183,292 |
106.0 |
|
報告セグメント計(百万円) |
439,563 |
105.6 |
|
その他(百万円) |
4,153 |
93.8 |
|
合計(百万円) |
443,717 |
105.5 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおりであります。
b.セグメントごとの財政状況及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度のセグメントごとの財政状態及び経営成績の状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載したとおりであります。
c.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2.事業の状況 2 事業等のリスク」に記載したとおりであります。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
システムの複雑化・大規模化、サービス化の進展、グローバル化の流れ、更には急速に進む技術革新等、経営環境が大きく変動する中、当社グループはIT業界のリーディングカンパニーとして、豊かな未来社会実現の一翼を担う企業グループを目指しております。
当社グループでは、中期経営計画(2018-2020)の基本方針である「持続的な利益成長」「社員の自己実現重視」「継続的なスピードある構造転換」を達成するために、最終年度となる2021年3月期の重要経営指標を以下の通り定め、目標としています。2020年3月期では、全ての指標において当連結会計年度の目標を大きく上回り、中期経営計画(2018-2020)で定めた4つの重要な経営指標について1年前倒しで達成しました。
|
中期経営計画 重要な経営指標 |
2019年3月期 |
2020年3月期 |
|
2021年3月期 |
||
|
計画 |
実績 |
計画(注1) |
実績値 |
|
中計値(注2) |
|
|
戦略ドメイン比率 |
40% |
42% |
45% |
50% |
|
50% |
|
営業利益 |
350億円 |
380億円 |
420億円 |
448億円 |
|
430億円 |
|
営業利益率 |
8.5% |
9.0% |
9.6% |
10.1% |
|
10% |
|
ROE |
10.2% |
11.5% |
12.1% |
12.5% |
|
12% |
(注1)2019年11月上期決算発表時点の修正計画。
(注2)2021年3月期中計値は、中期経営計画(2018-2020)策定時の数値。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
イ.資金需要
当社グループの資金需要について、営業活動においては、材料・外注費及び人件費などの運転資金が主な内容になります。投資活動においては、当連結会計年度から開始した3か年の中期経営計画の中で掲げる最大800億円想定の投資戦略に基づき、サービス型ビジネス推進のためのソフトウェア投資をはじめとする先行投資やM&A等、構造転換推進のための成長投資を積極化させる方針です。その他、経常的な設備の更新のための増設、改修等を目的とした設備投資を予定しています。
ロ.財務政策
当社グループは、必要となる資金につきましては、内部資金より充当し、不足が生じた場合は有利子負債の調達を実施することを基本としております。借入金、社債等の調達については、調達コストの抑制の観点から格付「A」の維持を考慮し、自己資本比率は50%以上を確保、D/Eレシオは0.5倍程度まで許容することを前提としております。
なお、自己株式については、自己株式の保有は原則として発行済株式総数の5%を上限とし、5%を超過する保有分については消却することとしています。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、認識している特に重要な見積りを伴う会計方針は、以下のとおりです 。
なお、当社グループは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が2021年3月期の第2四半期中に収束に向かい、経済活動が徐々に回復し、第3四半期から当社グループの事業環境が正常化する仮定のもと会計上の見積りを会計処理に反映しており、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が重要な会計上の見積りの仮定に当連結会計年度及び翌連結会計年度以降も重要な影響を与えないと判断しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大による影響は不確定要素が多く、翌連結会計年度の当社グループの財政状態、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(工事進行基準の進捗率)
当社グループでは、受注制作のソフトウェアのうち、当連結会計年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる契約においては工事進行基準を適用しており、進捗率の見積りは原価比例法を採用しております。当社グループでは、工事収益総額、工事原価総額、及び当連結会計年度末時点における工事進捗度を合理的に見積もり、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を計上しておりますが、見積りが実際の発生と異なる可能性があります。
(受注損失引当金の算定)
当社グループでは、受注契約に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末時点で将来の損失が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能なものについては、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を計上しております。当該損失額は、将来の起こりうる結果を総合的に勘案して算定しておりますが、受注損失引当金の算定において使用される仮定は、見積りの変化によって影響を受ける可能性があります。当社グループでは、受注損失引当金が適切かどうかを常に確認しており、発生が見込まれる損失額について、必要十分な金額を引当計上していると考えていますが、実際の発生は、見積りと異なることがあり、受注損失引当金の計上金額が大きく修正される可能性があります。
(のれん、持分法適用会社に関するのれん相当額及び固定資産の減損)
当社グループでは、減損の兆候が生じているのれん、持分法適用会社に関するのれん相当額及び固定資産について、減損の認識の判定を実施しております。減損の認識の判定における回収可能価額の算定において、将来のキャッシュ・フロー、割引率等について仮定を設定しています。これらの仮定については、経営者の最善の見積りと判断により決定していますが、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
該当事項はありません。
情報サービス産業においては、新技術によるイノベーションが生まれる中、当社グループも市場のニーズや社会課題を捉え、最新の技術トレンドを追いかけながら研究開発し、事業成長戦略につなげていくことが大変重要と考えており、当社グループでは次に掲げる3つの領域の研究開発に特に注力しております。
(1) 人工知能(AI)、ロボティクスの社会実装
(2) Society5.0 に向けた先進技術への取り組み
(3) 先進的なソフトウエア生産技術、およびインフラストラクチャー関連技術開発
当連結会計年度の研究開発に関する費用の総額は、
(1) 人工知能(AI)、ロボティクスの社会実装
労働人口が減少し、働き方改革による生産性の向上が求められている中、エンタープライズシステムの将来の姿として、企業の意思決定支援としての人工知能(AI)と、人の代替としてのロボティクスがその中核になるものと考え、それぞれの技術開発を進めています。
AI技術の社会実装に向けて、当年度は、自然言語処理で企業分析を行うためのデータセット「CoARiJ(Corpus of Annual Reports in Japan)」、および自然言語処理で企業名認識を行うための辞書「JCLdic」を無償公開し、これらのコードについてもオープンソースソフトウェア(OSS)として公開しました。これらの技術により、与信管理や企業分析業務において、財務・非財務両面の分析が可能となり、ESG投資の促進や、企業のSDGsの実現などにつなげられることを期待しています。また、AIシステムの実用化にむけて、金融業や製造業各社と協力して実証実験を実施しました。このように、機械学習や深層学習(ディープラーニング)の活用についての研究と技術開発を実用化するためのノウハウを多く蓄積しております。
ロボティクスについては、欧州の次世代インターネット官民連携プログラムで開発・実装された基盤ソフトウエア「FIWARE」の普及を推進するFIWARE Foundationにゴールドメンバーとして参加しており、FIWAREを活用して、複数のサービスロボットの統合的管理と、業務システムとロボットやセンサーなどの相互連携を実現するためのプラットフォーム「RoboticBase」の研究開発を行っています。当年度は会津大学との協力により、自律移動するロボットを活用した搬送業務自動化の実証実験を行うなど、本分野におけるイニシアチブを形成しつつあります。また、ビジネス化に向けたサービスロボットサービスのビジネスアーキテクチャ整理や法整備に向けた課題についての政府の議論にも参画しております。
(2) Society5.0 に向けた先進技術への取り組み
政府が推進するSociety5.0 で実現する社会では、IoT(Internet of Things)ですべての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、課題や困難を克服します。フィジカル空間のセンサーから膨大な情報がサイバー空間に集積され、サイバー空間では、このビッグデータをAIが解析し、その解析結果がフィジカル空間の人間に様々な形でフィードバックされることでこれまでにできなかった新たな価値が産業や社会にもたらされます。
Society5.0の中核となるスマートシティ構想に向けた取り組みとして、当年度は、北海道桧山郡厚沢部町、福島県会津若松市、富山県富山市、沖縄県石垣島などで、ブロックチェーンで発行した地域通貨などのキャッシュレス、MaaS(Mobility as a Service)、再生エネルギーなどを中心としたエネルギーの地産地消などの実証実験を実施しました。富山市では「富山市センサーネットワーク」を活用した「公共施設環境の見える化による快適な施設利用やエネルギー効率」の実証実験を行いました。今後も、これらの技術を全国に展開していく予定です。また、これらのIoT技術は、電気通信大学とともに提案した東京都の大学研究者による事業提案制度に「AIとIoTにより認知症高齢者問題を多面的に解決する東京アプローチの確立」として採択されました。
VR、AR、MRなどのXR技術については、VR技術を用いたバーチャル空間での会議システム「RE:COLLAVO:Rooms」やVR、AR技術を用いた遠隔コミュニケーションサービス「TeleAttend」などの社会実装に向けた実証実験を行っています。当年度は、東近江市の観光地である近江商人屋敷において、全国で初の「XR技術」を活用した観光案内の実証実験を実施しました。また、東京大学、電気通信大学、東京都市大学とともに、バーチャル空間におけるコミュニケーションについての研究や今後のXR技術の応用について、広範なテーマで共同研究を実施しています。
(3) 先進的なソフトウエア生産技術およびインフラストラクチャー関連技術開発
ソフトウエア生産技術については、取引先企業の事業変革に対応する業務設計やシステム開発である、いわゆるMode2への対応を拡大するため、スタートアップ企業とのアクセラレータプログラムの実施とアジャイル開発*1、DevOps*2などの基本的な技術獲得と開発生産性の向上につながる技術開発をしています。当年度は、慶應義塾大学との包括契約により、エネルギー分野およびAIを用いた画像認識分野での共同研究を開始しました。インフラストラクチャ関連技術では、豊富なシステム運用データをAI・機械学習を用い活用することで、AIOps*3を目指した研究開発を行っています。
*1 アジャイル開発
システムやソフトウェア開発におけるプロジェクト開発手法のひとつで、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進める。従来の開発手法に比べて開発期間が短縮されるため、アジャイル(素早い)と呼ばれる。
*2 DevOps
ソフトウェアの開発担当と導入・運用担当が密接に協力する体制を構築し、ソフトウェアの導入や更新を迅速に進めること。“Development”(開発)と“Operations”(運用)の略語を組み合わせた造語。
*3 AIOps
ビッグデータに人工知能や機械学習を適用して IT 業務を自動化、改善するIT の運用手法を指す。AI を利用することで、大量のネットワークデータやマシンデータを自動的に分析し、パターンを検出。既存の問題の原因を特定し、将来の問題を予測することが可能となる。