当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループ共通の価値観として、グループ基本理念「OUR PHILOSOPHY」を策定しています。
「OUR PHILOSOPHY」は、グループの経営、企業活動、構成員において、大切にする考え方やあり方を幅広く明確化し、全ての活動の軸となります。
当社グループは、グループ基本理念「OUR PHILOSOPHY」を軸としたサステナビリティ経営を遂行し、事業活動を通じた社会課題の解決と社会要請に対応した経営高度化を通じたステークホルダーとの価値交換性を向上することにより、持続可能な社会への貢献と持続的な企業価値向上の実現を目指しています。当社グループのサステナビリティに関する情報につきましては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照下さい。
また、グループ全員が力を結集して理想の実現と持続的な企業価値向上に向かうため、10年先の目指すべき姿をグループビジョンとして定めています。グループビジョンは内外環境の変化を踏まえて2024年4月に最新版となる「グループビジョン2032」を策定しています。
(OUR PHILOSOPHY:グループ基本理念)
https://www.tis.co.jp/company/policy/philosophy/
(グループビジョン2032:長期経営方針)
「社会に、多彩に、グローバルに」をテーマに、社会性と革新性を併せ持つ先進的なグローバルITグループとなることを目指します。社会課題解決に向けて、革新的な技術の積極採用や異業種能力を取り込みながら事業の多彩化とグローバル化を進め、ビジネスの革新と市場創造を実現します。
当社グループが持続的な成長を実現するための独自の事業活動領域を戦略ドメインとして定義し、各セグメントは市場特性を踏まえた戦略ドメインのベストミックスで市場の開拓と創造を図ります。
<戦略ドメイン>
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ソーシャルイノベーションサービス |
社会インパクト指標を掲げ、当社グループが直接的に社会課題解決を行う事業 |
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コ・クリエーションビジネス |
当社グループ単独ではなしえない領域において、当社グループと共創パートナーそれぞれが有する強みをかけ合わせ、新たな市場を創造する事業 |
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ストラテジックパートナーシップビジネス |
業界トップクラスの顧客に対して業界に関する先見性と他社が追随できない知見を武器として、事業戦略を共に検討・推進し、ビジネスの根幹を担う事業 |
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IT&ビジネスオファリングサービス |
蓄積した技術・ノウハウを活用し、特定業界・業務において業界ニーズに先回りした将来のデファクトスタンダードとなりうるサービスを提供する事業 |
(2)経営課題
政治的、社会的な緊張の高まりや、世界経済の不透明化に伴う影響など、多くの事象を注視する必要がありますが、引き続き、当社グループにとっては良好な事業環境が継続すると考えています。
社会課題解決と経済発展の両立が求められる社会の趨勢の中で、生成AIをはじめとした革新的技術が次々と実用段階に入り、社会におけるデジタル活用ニーズは拡大、多様化を続けると考えられます。また、このような明らかなビジネスチャンスに関連して、グローバルITプラットフォーマやコンサルティングファームの躍進、周辺産業からの新規参入の活性化等により競争環境は需要サイド、供給サイド共に大きく変化するものと考えています。
大きな環境変化が予想される中、当社グループは強みである顧客と技術への深い理解を更に磨き上げることや多様な能力を有するプレイヤーとの共創を通じて課題解決能力を強化・拡張していくことが重要と考えています。当社グループの経営課題認識は以下の通りです。
①成長領域への積極進出
収益基盤の継続強化を図るとともに、付加価値の高いサービスと技術、人材を生み出す環境を整備
②課題解決能力の強化と拡張
社会と顧客の真の課題に対する洞察力の向上と、これまでの枠にとらわれない課題解決手法の獲得
③人材の高度化
人材の高付加価値化と競争力ある報酬水準の実現
④新技術の実用化に向けたアジリティの獲得
新技術の継続的な評価と現場適用を牽引できる高度技術人材の育成、およびナレッジベースの整備
⑤知財の蓄積/活用の促進
事業構造転換と事業のスケール化を実現する良質な知財の蓄積と利活用促進
⑥ガバナンス高度化
意欲的な成長計画を支えるガバナンスの更なる高度化
⑦事業ポートフォリオ最適化
上記を実現し、最小の資本で最大成果を生み出す最適事業構成の追求
以上を踏まえて、2024年4月からの3か年計画として策定した中期経営計画(2024-2026)「Frontiers 2026」をスタートさせています。前中期経営期間で実行した各種投資や顧客との関係構築を成果に結びつけるとともに、グループビジョン2032実現に向けたファーストステージとしてこれまで実行してきた成果を土台に明確な優位性確立に向けた差別化・集中化によりこれからの市場と顧客に選ばれ続ける理由づくりを進めてまいります。
<中期経営計画(2024-2026)「Frontiers 2026」の位置づけ>
(3)中期経営計画(2024-2026)「Frontiers 2026」について
当社グループは、全方位のステークホルダーとの価値交換を通じて、継続的な事業拡大と持続可能な社会の実現を目指し、社会の課題解決に向けた戦略立案から解決策の実行まで一気通貫の価値提供を目指してまいります。
中期経営計画(2024-2026)「Frontiers 2026」では、フロンティア開拓を基本方針に、未来志向で市場開拓と事業領域の拡大を起点としたバリューチェーン全般の質的向上に向けて取り組んでまいります。
■市場戦略/セグメント全体戦略
セグメント毎に特性を踏まえた多様なサービスの展開を通じて事業領域を拡大、持続的成長に向けた事業基盤の継続強化を図ります。各セグメントにおける成長戦略は以下の通りです。
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オファリングサービス |
・多様なキャッシュレスニーズに対応しながら、新たに社会課題領域に金融・決済の強みを持つ事業主体として事業領域を拡大 ・投資マネジメント高度化により収益力を向上 |
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BPM |
・一部BPO業務の市場縮小が進む中、ニーズの高いCX領域の拡大や他セグメントと連携したサービス拡充など、事業ポートフォリオを見直し成長路線へ回帰 |
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金融IT |
・大型プロジェクト完遂によるピークアウトを迎えるが、顧客との共創事業創出やモダナイゼーションビジネス展開し新規顧客を獲得、顧客基盤の分散を図りながら次なる成長基盤を確立 |
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産業IT |
・製造業・エネルギー・社会インフラを中心に顧客深耕とサービス展開を推進 ・ERP、モダナイゼーションなど多様なサービスを強みに既存顧客の発展と新規顧客の獲得を進める |
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広域ITソリューション |
・5つの注力領域(行政、医療、金融、産業、インフラ)において顧客密着で培った独自のITソリューションを全国展開 |
■市場戦略/グローバル戦略
莫大なマーケットポテンシャルを持つアジアを長期ターゲットとして、グローバルパートナーシップを広げながら、ASEANでのビジネス拡大をさせ、2026年度に連結売上高1,000億円を目指します。事業のリストラクチャリング・コンサルティングとITの融合による事業全体の高付加価値化の推進と、テクノロジー投資機能の高度化の両輪によりスピード感もったビジネスを展開します。
■サービス戦略
社会の潮流の変化、革新的な技術の登場により顧客ニーズの多様化が進んでいます。このような中、社会と顧客の変革を支えていくためサービスの拡充と高付加価値化による市場開拓を進めてまいります。金融ITと産業ITは主に業界軸での市場開拓、オファリングサービス、BPM、広域ITソリューションは機能軸での市場開拓を進め、それぞれの事業指針に沿ったサービスを展開していきます。
■テクノロジー戦略
要素技術の進化と多様化は目覚ましいものがあり、これら技術への早期適応が競争力に大きく影響するものと認識しています。世の中のテクノロジーの中から当社グループとして重要なものを選定したテクノロジーポートフォリオをもとに、これら技術の先回り研究と現場への早期適用を図るための総合的な施策を展開してまいります。
短期では社員の生成AIの利用促進に向けた環境整備、社内の様々な業務でAI活用を前提としたプロセスの再開発、生成AI教育カリキュラムの整備と教育等を進めます。並行してデジタルとリアルの融合が進む中で求められる大量データの転送技術や関連アルゴリズムなど、3年から10年後の事業の差別化の核となる複数の技術とそれらを組み合わせた応用研究を産学連携によって進めてまいります。
■人材戦略
社員と会社の価値交換性の継続的な高度化を実現するために、個の多様化と先鋭化に着目した人材戦略を推進してまいります。多様な個が活躍できる環境・組織風土の整備、新たな労働環境を見据えた次世代の働き方改革の推進、人材データベースのデジタル化による人材ポートフォリオマネジメントの高度化などを通して、社員のエンゲージメント向上に取り組んでまいります。
当社では人材を最重要の経営資本として、人材に対する先行投資を積極的に推進してきました。人材戦略では「働く意義」「働く環境」「報酬」の3つの軸で社員エンゲージメントを高める人材投資を進めており、引き続き、会社と社員と社会の高付加価値化の善循環を強化することで当社のさらなる成長と、成長を実現する内外の優秀人材の確保に努めてまいります。
中期経営計画(2024-2026)では、課題解決力の強化、洞察力の強化、統合力の強化をテーマとして、重点をコンサルタント、高度営業人材、ITアーキテクトの拡充に置き、その育成と獲得に向けた投資と仕組みづくりを進めてまいります。
■知財戦略
当社グループのサービスとサービス提供プロセスを強化し、事業規模の拡大と高付加価値化の両立を実現していくため、知財の蓄積と高度利用がますます重要になると考えています。中期経営計画(2024-2026)では、顧客接点情報のフィードバック強化による知財創出の活性化を図ります。価値の高いサービスと満足度の高いサービス提供プロセスが、顧客とのコミュニケーションを良質化させ、既存の知財のアップデートと次なる知財につながる価値の高い情報を生み出す善循環を強化していきます。
■財務方針/資本政策に関する基本的な方針
当社は、持続的な企業価値の向上に向けて、中長期の経営視点から、成長投資の推進・財務健全性の確保・株主還元の強化のバランスのもと、資本構成の適正化を推進することを資本政策の基本方針としています。
具体的には、持続的な事業利益の成長・収益性向上によるキャッシュ創出力の強化を図るため、積極的に成長投資を推進し、この一環として事業ポートフォリオの見直しも継続的に検討・実施します。
また、バランスシートマネジメントの強化等を通じて当社の事業構造に合わせた資本構成の適正化を推進することにより、財務健全性を確保した上で資本コストを上回るリターンを持続的に創出します。株主還元については事業成長に応じた強化・充実化を図ります。
上記に基づき、中期経営計画(2024-2026)では、成長投資3年累計1,000億円、総還元性向50%、キャッシュ創出力の向上に応じた資本構成の適正化を図ってまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
中期経営計画(2024-2026)では、社会への貢献を測る客観的な指標として、「売上高6,200億円」「営業利益(営業利益率)810億円(13.1%)」「EPS年平均成長率10%超」「ROIC/ROE 13%超/16%超」「1人あたり営業利益3.5百万円超」を掲げています。
中期経営計画初年度は、不採算案件やBPMセグメントの落ち込みに対処し、受注状況も良化の兆しを見せつつあります。中期経営計画の目標達成に向け、売上成長を伴う利益成長が最重要課題と捉え、引き続き「フロンティア開拓」をスローガンにグループ全体で推進します。
今後の重点課題は、全セグメントでの新規顧客獲得と既存顧客の深耕による根幹顧客化です。特に、当社独自のリライト技術「Xenlon~神龍 モダナイゼーションサービス」(XMS)を起点とした大型案件の獲得とグループ連携による顧客開拓を強化し、金融ITとBPMセグメントの成長軌道への回帰を確実なものにしていきます。また、そのために、ERPやXMS、決済をはじめとした顧客の基幹業務領域向けソリューションのラインナップの充実、顧客接点やプロジェクト実績等の知財活用の加速、併せて営業体制の見直しやグループ連携促進を通じてフロントラインを強化します。
また、生成AI活用についてはこれまで全社的なAIチャットボット活用、GitHub Copilot活用など、既存の延長線上での生産性向上に取り組んでまいりましたが、2025年以降は生成AI活用を前提とした抜本的な開発プロセス改革を推進し、ビジネス構造の変革を目指します。
これらの重点課題への取り組みを通じて、一人当たり生産性向上とROIC向上を実現し、ステークホルダーとの価値循環を一層高めてまいります。
<重要な経営指標の進捗状況>
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2023年度 (実績) |
2024年度 (実績) |
2025年度 (計画) |
2026年度 (目標) |
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PH営業利益 |
2.9百万円 |
3.1百万円 |
3.3百万円 |
3.5百万円超 |
|
営業利益率 |
11.8% |
12.1% |
12.5% |
13.1% |
|
ROIC |
13.5% |
12.6% |
13.3% |
13%超 |
|
ROE |
16.0% |
15.3% |
14.5% |
16%超 |
|
売上高 |
5,490億円 |
5,716億円 |
5,820億円 |
6,200億円 |
|
EPS |
203.28円 |
215.00円 |
216.86円 |
CAGR 10%超 |
<中期経営計画(2024-2026)に対する取り組み 2024年度(2025年3月期)総括>
(1) サステナビリティ経営の全体像
当社は、グループ基本理念「OUR PHILOSOPHY」を確固たる軸として、事業活動を通じた社会課題の解決と社会要請に対応した経営高度化によるステークホルダーとの価値交換性の向上を図り、持続可能な社会への貢献と持続的な企業価値向上の両立を目指すサステナビリティ経営を推進しています。
これまで、当社グループはコーポレートサステナビリティ委員会の設置、マテリアリティの特定、解決を目指す4つの社会課題の特定など、サステナビリティ経営の高度化に向けた実行体制を整えるとともに、コーポレート・サステナビリティ基本方針に基づき喫緊の重要な社会課題として優先度の高いテーマである人権や環境に関する取り組みを進めてまいりました。今後はこうした取り組みを継続することに加えて、当社グループの直接的な企業活動のみならず、バリューチェーン全体で当社グループの企業活動を見つめ直していくことが重要な課題であると認識しており、サステナビリティ経営のさらなる深化を通じてサステナビリティ先進企業としてのプレゼンスの確立を目指すべく、マネジメント体制を強化してまいります。
また、不確実性の高まる環境の中においても持続的な成長を実現するために、経営基盤の整備・強化を継続的に推進してまいります。セグメントオーナーを設置して権限と責任の所在を明確化し、グループ各社の強みを活かした成長戦略の実現を推進するとともに、資本コストを意識した事業マネジメントや国内外の企業のM&Aを通じた事業ポートフォリオの入れ替えによる最適なグループフォーメーションの追求、グループ間接業務のシェアード化を含む本社機能のさらなる高度化・効率化に取り組んでいます。加えて、将来の成長に資する成長投資(ソフトウェア投資、人材投資、研究開発投資、M&A・出資等)を積極的に実行していく中で適正リターンを獲得するための投資マネジメントの高度化も推進してまいります。
同時に、企業価値向上と認知度向上への取り組みの一環として、テレビCMや広告媒体への記事掲載等の戦略的なブランド活動も継続してまいります。現時点においても当社グループの認知度向上やそれに応じた効果が社員の働きがいや採用面で得られる等、成果は着実に表れ始めていますが、今後もコーポレートブランドをベースとしたサービスブランドの訴求強化等を目的として引き続き取り組んでまいります。
(2) 戦略
当社グループは、経営計画そのものが社会の持続性に寄与する「サステナビリティ推進の日常化」に取り組んでまいります。その推進に当たり、社会の動向やステークホルダーからの期待、当社グループらしさを踏まえた企業成長等への重要性の観点から、マテリアリティ(重要課題)を特定しております。このマテリアリティを基礎として、グループビジョン、および中期経営計画を策定し、サステナビリティ推進と当社グループの事業活動の融合を高めてまいります。
<TISインテックグループのマテリアリティ>
(3) ガバナンス
当社のサステナビリティ経営体制は、原則年2回行われるコーポレートサステナビリティ委員会を通して、潮流を捉え、サステナビリティに関する課題を議論し、注力すべき課題の選定と対応の方向性が取締役会にて示されます。この課題設定と方向性は、経営会議等を通じて執行側に示され、執行側にてその企画や計画を経営会議で審議した後、取締役会を通じて策定されます。またその執行も、取締役会を通じてモニタリング、監督されます。
コーポレートサステナビリティ委員会は、コーポレートサステナビリティの最高責任者(議長)を社長が担い、取締役、監査役、コーポレートサステナビリティ推進責任者、企画本部長、企画部長により構成されます。また、マテリアリティの進捗を把握するサステナビリティ指標を設定しており、その進捗を毎年取締役会にて確認しています。
<TISインテックグループのサステナビリティ経営体制>
(4) リスク管理
サステナビリティ関連のリスク及び機会は、サステナビリティ推進の専任部署が常に情報を収集し、全社のリスク管理プロセスおよび、コーポレートサステナビリティ委員会を通じて半年に一度評価を行っています。
さらに、ステークホルダーの期待や影響度、当社グループらしさやグループの成長への寄与の観点から、マテリアリティの特定の基礎となる課題の重要性マトリクスを作成しており、毎年1回コーポレートサステナビリティ委員会にて状況と課題の有無を確認します。
(5) 指標と目標
中期経営計画において、マテリアリティの進捗を把握するサステナビリティ指標について、現中期経営計画では以下の指標と目標を設定しています。
|
マテリアリティテーマ |
進捗測定の視点 |
指標 |
対象 ※1 |
2024年3月期 実績 |
2025年3月期 実績 |
2027年3月期 目標 |
|
多様な人材が生き生きと活躍する社会を |
従業員の能力の発揮 |
働きがい満足度 |
B |
52% |
56% |
58%以上 |
|
コンサルタント数 |
B |
510人 |
545人 |
700人以上 |
||
|
管理職に占める 女性従業員の割合 |
B |
11% |
12% |
15%以上 |
||
|
イノベーション・共創を通じ、社会に豊かさを |
社会への価値提供 |
戦略ドメイン比率 |
A |
48% |
51% |
52% |
|
PH営業利益 |
A |
2.9百万円 |
3.1百万円 |
3.5百万円 |
||
|
成長投資 |
A |
3か年累計 720億円 |
年間 195億円 |
3か年累計 1,000億円 |
||
|
高品質なサービスを通じ、社会に安心を |
社会から求められる品質 |
顧客・サービス満足度 |
C |
54% |
58% |
59% |
|
ビジネスパートナー満足度 |
D |
77% |
74% |
81% |
||
|
コーポレートガバナンスを高め、社会から信頼を |
社会から選ばれる企業 |
GHG排出量(Scope1+2)※2 [2020年3月期比] |
A |
60%削減 |
65%削減 (見通し) |
70%削減 |
|
再生可能エネルギー利用率※2 (オフィス・データセンター) |
B |
57%導入 |
64%導入 (見通し) |
2031年3月期 100%導入 |
※1 対象 ・・・ A: TIS及び全連結子会社 / B: TIS及び連結子会社(国内) / C:TIS、インテック、アグレックス、クオリカ、AJS、TISソリューションリンク / D:TIS、インテック
※2 2024年3月期実績のみ対象は、TIS、インテック、アグレックス、クオリカ、AJS、TISソリューションリンク、TISシステムサービス、TIS東北、TIS長野、TIS西日本、TIS北海道、TISビジネスサービス、ソランピュア、MFEC Public、Business Application、Motif Technology Public、Hongson、MISO Digital、Prain Fintech、Msyne Innovations、Playtorium Solutions
(6) サステナビリティに関する重要なテーマへの対応方針
本テーマについても本章記載の「ガバナンスとリスク管理」の枠組みにて実効性を確保しているため、以下に戦略と方針、および指標と目標について記載いたします。
①人的資本に関する方針
a.戦略と方針
イ.人的資本に関する方針
日本国内における生産人口の減少や労働市場の流動化が進み、変化する社会において、高度IT技術者や経験豊富な人材を保有することが重要と考えています。
当社グループのビジネスモデルにおいて、人材は価値創出の根幹であり、最重要の経営資本です。多様な人材が自律的なキャリアを描き、高い活力とエンゲージメントをもって新たな価値創造を行える環境を作ることで、社員と会社の価値交換の善循環を促進し、当社グループの競争力の維持拡大と、社会課題解決に向けたグループ総合力を高めてまいります。そのために、当社グループは人的資本に対して積極的な投資を行い、専門性を兼ね備えた人材が高い価値提供を発揮できるよう、社員一人ひとりの新たな挑戦を支援します。
ロ.中期経営計画(2024-2026)における人的資本への取り組み
中期経営計画(2024-2026)では、課題解決力の強化、洞察力の強化、統合力の強化をテーマとして、重点をコンサルタント、高度営業人材、ITアーキテクトの拡充に置き、その育成と獲得に向けた人材戦略を策定しています。先鋭人材が戦略ドメイン拡大を牽引し、一人当たりの付加価値を向上させることを視野に、人材にかかわる施策・アクションの洗練化を図り、経営戦略との連動性を高めます。
人的資本経営の取り組みにおいては、専門性を兼ね備えた人材がフロンティア開拓をリードし、高い付加価値を提供できるよう「多様な人材が活躍しイノベーションを生む風土や文化の形成」を行い、その上で「事業拡大・変化に応じた人材の確保・育成」による中長期的な経営資源を拡充し、その中から「事業戦略を牽引する先鋭人材の確保」を行うといった三層構造のテーマを設定しています。
中期経営計画(2024-2026)では、人材獲得とキャリア形成、働く環境整備や報酬といった項目で、3年間で100億円を超える人的資本投資を進めています。人材投資がもたらす効果として、2027年3月期には、戦略ドメイン比率52%、売上6,200億円、1人あたり営業利益は3.5百万円となる計画です。これを弾みに、グループビジョン2032を実現し、社会に不可欠な存在となることを目指します。
ハ.3階層テーマ別の取り組み
(イ)事業戦略を牽引する先鋭人材の確保
グループビジョン2032の戦略ドメインは、収益性を拡大できる高付加価値の事業領域であり、戦略ドメイン比率の向上が重要です。これには先鋭人材の活躍が不可欠で、付加価値向上と1人あたり営業利益の増加を実現します。
中期経営計画(2024-2026)では、フロンティア開拓をリードする先鋭人材として、「コンサルタント」「ITアーキテクト」「高度営業人材」を定義し、それぞれ「事業・サービス企画・開発」「営業・提案活動」「役務・サービス提供」のプロセスに関わることで、より収益性の高い事業提供を牽引します。
先鋭人材の確保にあたっては、既存ビジネスの遂行により培った能力・スキルを持った人材に、新たな領域で求められるスキルセットをアドオンすることで、人材の質を高める配転育成やリスキリングに取り組むとともに、事業組織とHRBPが連携した高度人材の採用、M&Aといった手段による拡充を進めています。また先鋭人材の成果創出を促進するマネジメント基盤の整備、機会提供を進めています。
(ロ)事業拡大・変化に応じた人材の確保・育成
生産人口の減少が急速に進む中、持続的な成長を維持するためには、将来の事業を担う人材を採用、およびグループ全構成員の人的資本総量をいかに向上させるかが、経営上の重要課題です。当社グループの基本理念やビジョンに共感する人材を積極的に獲得し、新しいことに挑戦できるフィールドと様々な成長機会を提供します。
<人材獲得>
技術革新や産業構造の変化は急速に進み、様々な社会課題への対応も求められるようになった近年の外部環境の変化に対応し、持続的なビジネスの成長へと結びつけていくため、性別や年齢、人種・地域・国籍、その他さまざまな違いの有無に関わらず多様な人材を採用します。採用の基準として、当社グループの基本理念やビジョンに共感する人材であるかどうかを重要なポイントとし、社員紹介制度やアルムナイネットワーク等を含む、多様な採用ルートを活用しながら人材獲得を進めます。
<人材育成>
社員の成長支援施策として、新しいことに挑戦できるフィールドと様々な成長機会を提供することを重視しています。
キャリア形成については、社員全員が自身の描くキャリアについて上司と面談を行い、ローテーションや多様な業務経験を通してステップアップする仕組みを整備しています。全事業に共通する技術・スキルに関するカリキュラムや、それぞれの事業に必要な学び、将来的に求められる新たなスキルやコンサルティング能力(課題設定・解決スキル)を強化する育成プログラムなど、さまざまなメニューを提供し、社員自身の成長に向け選択可能なメニューを増やすとともに、各組織から選抜したメンバーに対する重点育成にも力を入れています。
また、教育プログラムの提供だけではなく、抜擢と配置転換による育成、および公募の機会拡大を進めています。社員一人ひとりが、将来に向け複線的にキャリアを構築し、技術の進化やビジネスモデルの変化に柔軟に対応できるよう、さらなる強化を図っていきます。
(ハ)多様な人材が活躍しイノベーションを生む風土や文化の形成
社員が自発的な貢献意欲を持って、事業を成功に導くことが企業の成長エンジンとなります。様々な属性・経歴や価値観を有する人材が、一人ひとりの強みを発揮し、新たな企業価値を創出していくことを重視しています。多様な人材が高い貢献意欲を持って他者と協力しながら目標に向かい、自分らしく活躍できる「働きがいのある」環境の構築を進めています。また、社員が仕事を通して社会に貢献する喜びを感じられる企業グループとなることは、人材に係るリスクや損失の低減にもつながると考えています。一人ひとりの価値観や働き方を尊重し、意思と意見を積極的に発信できる企業文化形成に取組みます。
<多様な人材活躍>
当社グループは、多様な人材が各々の「人間らしさ」を発揮し、意思と意見を表すことを大切にしています。さらに、お互いを尊重し、刺激し合い、柔軟で絶え間ない変化やこれまでにない価値を生み出し続けることを目指し、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。「ジェンダー」「国籍」「職歴や経験」「障害の有無」「年齢」「性的指向性・性自認」「価値観や働き方」他の違いに関わらず、人間らしさを最大限発揮し、いきいきと活躍できる風土醸成及び制度・インフラの整備等を推進します。多様な人材が保有するスキルや専門性・経験を活用し、事業を成功に導く組織基盤を確立するためには、一人ひとりの社員が貢献意欲を持って活躍・成長できる組織風土の醸成が不可欠です。中でも、女性活躍はダイバーシティ経営の最重要課題の一つとして位置づけており、エクイティ(公平性)の観点を施策に取込み、女性社員が自分らしく力を発揮できる環境整備を通じて、等級における男女の偏りや男女の報酬格差の是正を進めています。
<健康経営>
働く人一人ひとりの人生の質を向上させることを目的として、「心身の健康」「働きがいの向上」「生活力の向上」の実現を目指した施策を推進し、それぞれの「人間らしさ」の発揮につなげます。また、活力の基盤である健全な職場環境の実現に向けて、労働安全衛生やコンプライアンスを重視した取り組みを強化します。
<働き方改革>
働き方への多様なニーズやスタイルに合わせることを目的として、オフィス改革や働く場所や時間等働く形態の選択肢を増やす取り組みを進めています。社員一人ひとりの働く意識、生活環境、業務環境の違いに注目し、多様な人材が自律したプロフェッショナルとしての能力を最大限に発揮できる職場環境を目指します。
<マネジメント基盤整備>
若手層の早期抜擢・昇格促進、自律的なキャリア形成支援に向けた人事制度の整備と報酬投資を強化し、人材の成長促進、優秀人材のさらなる確保を進めます。当社グループの評価制度では、「Must/Will/Can」の枠組みに基づいて社員一人ひとりが企業の方向性を理解し、自らの意思で目標を設定します。目標の達成度に応じた公正な評価と提供価値に応じた処遇は、企業と社員の成長を促すエンジンとして機能しています。
b.指標と目標
人材戦略の3つのテーマ毎に、成果を測る指標と目標を定めています。中期経営計画のサステナビリティ指標として設定している「戦略ドメイン比率」や「顧客サービス満足度」等の状況と合わせて、取締役会でのモニタリングを行っています。
人材の価値創造に関する指標
|
No. |
人的資本と関連のある指標 |
2025年3月期実績 |
2027年3月期目標 |
|
1 |
(INPUT)人的資本投資額 |
36億円 |
100億円 |
|
2 |
(OUTPUT)一人当たり営業利益 |
3.1百万円 |
3.5百万円超 |
人材戦略の成果に関する指標
|
No. |
指標名 |
定義 |
2024年3月期 実績 |
2025年3月期 実績 |
2027年3月期 目標 |
|
|
1.事業戦略を牽引する先鋭人材の確保 |
||||
|
(1) |
コンサルタント数 |
ステークホルダーとの事業共創による新たな価値の創造で新事業・新サービス企画を牽引。また、ITに閉じないコンサルティングによる提案内容を高度化すると共に上流プロジェクトを推進する社員の人数 |
510名 |
545名 |
700名以上 |
|
(2) |
ITアーキテクト |
デジタル技術活用やサービス統合により商品力の強化に貢献。また、高度な技術力を持って顧客の課題解決を実現する社員の人数 |
- |
270名 |
370名以上 |
|
(3) |
高度営業人材 |
顧客の真の課題を捉えフィードバックすることでソフトウェア資産の高付加価値化を行う。また、顧客理解深化により提案力・受注採算性を向上させる社員の人数 |
- |
262名 |
360名以上 |
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2.事業拡大・変化に対応した人材の確保・育成 |
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(4) |
年間一人当たり 学習研究日数 |
社員一人当たりの年間学習研修日数の平均値 |
12日 |
12日 |
12日以上 |
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3.多様な人材が活躍しイノベーションを生む風土や文化の形成 |
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(5) |
働きがい満足度 |
社員意識調査で「総合的に働きがいのある会社である」の設問に肯定的に回答した社員の割合 |
52% |
56% |
58%以上 |
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(6) |
管理職に占める 女性従業員の割合 |
管理職全体に占める女性管理職の割合 |
11% |
12% |
15%以上 |
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(7) |
アブセンティズム |
病気を理由として休業している社員の割合 |
1.0% |
0.9% |
1.0%以下 |
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(8) |
プレゼンティズム 注3 |
社員が職場に出勤はしているものの、健康問題により業務の能率が落ち、労働損失が発生している割合 |
- |
23% |
18%以下 |
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(9) |
平均月間法定外労 働時間45h以上の 社員比率 |
年間を通して法定労働時間外の月平均が45時間以上である社員の割合 |
2.9% |
2.6% |
1.5%以下 |
注1 実績・目標値はTISを含む国内の連結対象企業の総計または加重平均で算出しています。
注2 働きがい満足度は、特例子会社であるソランピュアを除いた国内連結事業会社の加重平均です。
注3 プレゼンティズムの2025年3月期の実績は、労働損失に関する調査を行い、有効性の高いデータが得られた会社の加重平均です。
注4 2025年3月期よりフレックスタイム勤務制度適用者の法定労働時間の算出方法を変更しています。
②気候変動への対応方針
当社グループは、グループ基本理念であるOUR PHILOSOPHYに基づき「コーポレート・サステナビリティ基本方針」を策定し、その項目の一つとして「地球環境の保全」を定めています。
地球環境問題の中でも、とりわけ重要度が増している気候変動への対応について、事業活動からの温室効果ガス排出削減、事業活動を通じた気候変動対応の推進の両面から取り組みを進め、当社グループの社会的責任を果たすとともに、社会との協働の機会獲得を目指します。
a.戦略と方針
イ.カーボンニュートラル宣言
脱炭素社会の実現に向け、事業活動に伴う温室効果ガス排出量の削減に取り組み、2040年度までに当社グループ自らの温室効果ガス排出量のカーボンニュートラル、および2051年3月期までにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量のネットゼロの実現を目指します。
当社グループは、地球環境問題の中でもとりわけ重要度が増している気候変動への対応に向け、その原因とされる温室効果ガスの排出量削減の重要性を認識し、脱炭素に向けて取り組んできました。そして、当社グループにおいて最大量の電力を使用するデータセンター運営において、主要4データセンターの全使用電力に再生可能エネルギー由来の電力を使用しています。なお、将来的な社会情勢、政府の政策、電力会社の動向等、市場環境の変化を踏まえ、環境負荷の少ないエネルギーを安定的かつ適切な価格で調達します。
ロ.気候変動のリスクと財務影響及び機会
当社グループは、2021年6月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しており、TCFDの求めている基礎項目について情報開示しております。
気候関連リスクとその財務影響について、気候変動に関するRCP(代表濃度経路)とSSP(共有社会経済経路)および、IEA NZE2050(2050年ネットゼロ排出)の科学的根拠等に基づき、1.5℃シナリオと4℃シナリオを用いて各々の世界観を想定し、当社グループの事業に関連するリスクおよび機会の要因を整理しました。
<気候関連のリスクと財務影響>
注1 リスクが顕在化されると想定する期間
短期:1年~3年以内 中期:~2031年3月期 長期:~2051年3月期
注2 2024年度までのリスク低減策と同等の対策を講じ、且つそれ以上の低減策を講じなかった場合の、2030年度における財務影響額
注3 リスクが顕在化した場合に想定される対策費用または被害額が財務に及ぼす年間最大影響額
軽微:~10百万円未満 小:10~100百万円未満 中:100~1,000百万円未満
大:1,000~10,000百万円未満 甚大:10,000百万円~
<気候関連の機会>
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No. |
機会 |
時期 |
気候変動対応に伴い増加するニーズと対象 |
当社及び当社グループの対応 |
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1 |
低・脱炭素化に対応のデータセンター及びクラウドサービス提供機会の増大 |
短期 ~ 長期 |
各企業においてはオンプレミス・クラウドともにエネルギー効率の高いHWの利用や活用する電源が再エネ由来のものを使用する企業が増える。特に、RE100やTCFDで削減目標などを設定している企業から需要が拡大すると想定される。 |
当社グループデータセンターの再エネ比率/エネルギー効率を高めていくことで、データセンターサービスの提供機会を拡大する。 現在の目標として、データセンターの再エネ比率を2030年度中に100%とすることを掲げている。 (TISのデータセンターでは、環境配慮型データセンターへの統合も併せ、再エネ導入比率を2025年度に100%とすることを目指す) |
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2 |
電力会社の環境改善や電力インフラ再設計でのシステム更改ニーズの増大 |
短期 ~ 中期 |
日本の40%を占める発電所を中心としたエネルギー転換部門におけるGHG排出量を減らすべく、火力発電中心の社会から水力・風力・太陽光を中心とした再エネへの転換が急務。合わせて、分散化電源社会に合わせた送電・配電のネットワーク網の再構築・改修の需要が増えてくると考えられる。 |
30年来に渡るエネルギー会社との取引で培った業務ノウハウをもとに、エネルギー会社の発電・送電・配電のDX化や法制度変更に基づくシステム更改などを通じて、電力インフラやエネルギー会社の脱炭素化を間接的に実施中。 |
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3 |
気候変動に関する新しいニーズに対応したITサービス/ソリューション提供機会の増大 |
短期 ~ 長期 |
節エネ・創エネの代表格ともいえるVPPやエネルギー効率を自動的に制御するAI・IoT技術の利活用。更に見えない電源を見える化する各種ITサービスや気候変動リスクに対応したレジリエンスサービス等のニーズが増えてくると想定される。 |
当社の今後の強みとすべく、先行投資型開発やステークホルダーとの協業・共創により、デジタル技術を駆使した各種ITサービスを展開・企画開発中。VPPソリューションや企業向け非財務情報参照・点検サービスなどを展開、環境価値取引移転実証等新技術のビジネス実装にも積極的に取り組みを進める。 |
b.指標と目標
当社グループの環境目標は、カーボンニュートラル宣言の実現です。それに達成に向け、以下のサステナビリティ指標を設定しています。
・基準年(2020年3月期)比におけるGHG排出量(Scope1+2)の削減率
2027年3月期目標 70%削減
・再生可能エネルギー利用率(TIS及び連結子会社(国内)のオフィス・データセンター)
2031年3月期目標 100%導入
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の経営成績、財政状態、キャッシュ・フローの状況(以下、「経営成績等」という。)に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。
なお、当社グループでは、「リスク」を「当社及びグループの経営理念、経営目標、経営戦略の達成を阻害するおそれのある経済的損失、事業の中断・停滞・停止や信用・ブランドイメージの失墜をもたらす要因」と定義するとともに、リスク管理規程に基づき、グループ全体のリスクを戦略リスク、財務リスク、ハザードリスク、オペレーショナルリスクに分類しています。
いずれのリスクも当社グループのリスク管理評価方法に基づき、リスク発生頻度と損害影響度の観点から総合的に勘案したものですが、個々の事象や案件の内容により、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に経営成績等に与える影響の内容と影響度は異なるため、具体的な記載をすることは困難であることから、経営成績等に与える影響の詳細の記載を省略しています。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、グループのリスクを適切に認識し、損失発生の未然防止に努めるため、リスク管理規程を制定しており、この規程に則り、グループ全体のリスク管理を統括するリスク管理担当役員を任命するとともに、リスク管理統括部門を設置し、リスク管理体制の整備を推進しています。また、リスク管理に関するグループ全体のリスク管理方針の策定・リスク対策実施状況の確認等を定期的に行うとともに、グループ会社において重大なリスクが顕在化したときには、対策本部を設置し、被害を最小限に抑制するための適切な措置を講ずることとしています。
また、リスク管理体制の整備の状況として、内部統制システムに関する基本方針及び各種規程等に基づき、グループ全体の内部統制の維持・向上に係る各種施策の推進を図るとともに、内部統制システムの整備及び運用状況のモニタリングを実施し、グループ内部統制委員会にて審議の上、取締役会に審議結果を報告するプロセスを整備しています。
<リスクアセスメントプロセス>
グループの重点管理対象リスクに基づいて各グループ会社社長が作成したリスク方針(トップリスクダイレクション・重大リスク)と各部門で特定されているリスクの双方を評価します。その評価はグループ内部統制委員会においてグループ全体のリスクに係る課題の確認、改善施策の進捗状況として年2回審議され、取締役会へ報告されます。この報告に対する取締役会の指示は、グループ全体の内部統制システムの強化及び改善に反映されます。
<リスク管理プロセス図>
(1)戦略リスク
①人材について
当社グループにおいて、人材は最も重要な経営資源であり、当社グループの事業伸長は顧客に専門的で高付加価値のソリューションを提供する優秀な人材の確保、育成に大きく影響されることから、優秀な人材の確保、育成が想定通りに進まない場合は、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。このリスクに対し、当社グループでは人的資本に関するインパクトパスを分析し、将来財務に影響を与える人材戦略の視点に関するKPIを特定しています。そしてそのKPIのモニタリングを行うことにより、事業成長に必要な人的資本の拡充に活用しています。あわせて、働き方改革・働きがい向上を目的として、多様な人材が活躍できる風土、人事制度、オフィス環境の整備等を通じて優秀な人材の確保に努めるとともに、人的資本に対する投資を強化し、報酬のベースアップを進めて、人材流出による事業成長の停滞を防止する取り組みを試みています。加えて、資格取得支援、キャリア形成支援、研修制度の体系化するなどの人材の育成に関する施策に対しても注力しております。
②市場・景気の変化について
当社グループのビジネスドメインの変化や社会が変化していく中で、社会が必要とする技術やサービスが大きく変化することが予想されます。そのため今後必要となっていく技術シードの把握が遅れ当社グループの技術やサービスの陳腐化が生じ、競争力が低下するおそれがあります。その変化に適切な対応をとることができず、当社グループの有する技術・ノウハウ等が陳腐化し、顧客の期待する高品質のサービスを提供できなくなる、または想定を超える価格競争に取り込まれる等、技術による競争優位性を失った場合当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、経営計画等において継続的に環境分析を実施して市場ニーズを把握し、提供するサービスの高付加価値化等による競合他社との差別化や情報技術や生産、開発技術等の調査、研究を不断に進めています。これにより、テクノロジーポートフォリオより開発競争力の持続的向上につながるコア技術の選定、研究開発の推進及び成果の展開を図るとともに、生産性の革新活動とDX提供価値の向上、不採算案件の抑制等の対応を強化しております。
また、景気変動による急激な円安が生じた場合、為替損失の発生により業績の悪化が予想されます。対して特に多額の取引が存在する場合には、ボラティリティとヘッジコストも勘案し、為替ヘッジを行います。
③投資について
当社グループでは、主として、事業伸長や先端技術の獲得を目的にベンチャーを含む国内外の企業への資本・業務提携に伴う出資、またはM&Aの実行、24時間365日稼働のアウトソーシング事業やクラウドサービス事業を展開するために用いるデータセンター等の大型IT設備に対する投資(初期構築のための設備投資及び安定的な維持・運用のための継続的な設備投資)、サービス型事業推進のためのソフトウェアに対する投資及び人的資本に対する投資を行っております。こうした投資は、事業環境の予期せぬ変化等により、計画した成果や資金回収が得られない場合または資産が陳腐化した場合には、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。また、出資・M&A直後の企業先による不祥事・システム障害等が生じた場合、当社グループの信用・ブランドイメージの失墜や訴訟などの影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、投資案件の内容により、取締役会、CVC投資委員会及び投資委員会等において、事業計画に基づく十分な検討を行った上で投資の意思決定をしており、また、投資実行後も定期的な事業計画の進捗確認を実施しております。加えて、大規模な資本提携先やM&Aを実施した企業に対しては、事業活動におけるリスクを事前に検証・検討した上で、必要な対応施策を継続的に打つとともに、役員派遣を行う等により状況が素早く把握できるように努めています。
④海外事業について
海外事業は、グローバル経済や為替の動向、投資や競争等に関する法的規制、商習慣、労使関係等、様々な要因の影響を受ける可能性があります。これらの要因の影響が予期しない形で顕在化した場合は、当社グループの事業及び業績等に影響が生じる可能性があります。
当社グループは成長戦略の一環として、ASEANを中心とした海外事業の拡大のため、現地企業との資本・業務提携やM&Aを進めております。この出資の実施にあたっては、対象となる企業の業績や財政状態について詳細な審査を行っており、出資後は事業推進部門と経営企画部門が一体となってモニタリングを実施して定期的に当社の取締役会等において報告を行っております。
また、事業会社への人材派遣に加えて、当社においても専門組織である「グローバル財務企画室」を中心に海外子会社・関連会社に対するガバナンス強化の取り組みを進めております。
⑤人権の尊重について
当社グループは自らの事業活動において、直接または間接的に特定のステークホルダーに負の影響を与える可能性があります。これらの事象が発生し明らかになることで当社グループの評判や信用を損失し、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
当社グループは2011年6月に国連人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、当社グループの人権方針を制定しております。さらに、本方針に沿って、人権デューデリジェンスを推進することで、当社グループの事業活動が社会に与える負の影響を早期に把握・是正に向けた適切な対応をとることを進めます。その進捗は当社Webサイト等で適切に開示してまいります。
⑥地政学リスクについて
戦争・内乱、政変・革命・テロ・暴動等により、国際社会の圧力、為替の動向、貿易問題、調達コストへの影響などが新たに発生した場合、当社グループの事業及び業績等に影響が生じる可能性があります。
このような事象が生じた際には、速やかに当社グループへの影響を認識し、それぞれのリスクによる、損失発生の未然防止に努める活動を速やかに実施いたします。また、海外駐在員の危機対応とオフショア取引が遮断した際の対応を含むBCP計画を作成しています。
⑦レピュテーショナルリスクについて
リスクが適切に管理できず社会に負の影響を及ぼした場合、または他社が社会におよぼした負の影響と当社の関連性が想起された場合、信用・ブランドイメージの失墜による事業の中断・停滞・停止や、顧客・ビジネスパートナーの剥落などの影響が生じる可能性があります。特に、コーポレートガバナンス、ビジネスと人権、環境負荷、コンプライアンス、品質、情報セキュリティに関連する事項がこのリスクに関係が大きいと判断しています。このリスクは、特に当社の事業の拡大や知名度の向上と比例して大きくなり、また速やかな管理が行えなかった場合にはグループの子会社で生じた事案でもグループ全体に波及する可能性があると考えています。そこで、当社グループではこのリスクに対して速やかに対応できるよう、グループ横断のエスカレーションシステムを構築し、危機発生時の対応マニュアルを準備しています。
⑧技術革新について
技術革新は顧客や社会に対する課題形成や課題解決のアプローチを一変させる力を持っているため、その対応の遅れは当社グループの競争力の低下を招く恐れがあります。特に近年の生成AI等のAI関連技術の技術革新は、当社のビジネスに大きく影響することが予想されます。そのため、生成AI技術に関する人材育成を推進するとともに生成AI技術の利用推進に取り組んでいます。
(2)財務リスク
①保有有価証券について
当社グループでは、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資すると判断した場合に限り、取引先との安定的な提携関係・協力関係を通じた事業機会の継続的創出などを目的としてその企業の株式を保有します。また、短期の余資運用を目的として債券を保有することがあります。こうした有価証券は時価の著しい変動や発行体の経営状況の悪化等が生じた場合、会計上の損失処理を行う等により、当社グループの事業及び業績等に影響が生じる可能性があります。
このため、保有有価証券については、発行体の財政状態や業績動向、格付状況等を把握し安全性を十分確認するとともに、保有継続の合理性を定期的に検証し、保有意義が希薄と判断した株式については、縮減を進めることを基本方針としています。
(3)ハザードリスク
①パンデミック(感染症・伝染病の世界的な大流行)について
パンデミックにより国内外問わず、行動制限が課せられるなど、当社グループの社員やビジネスパートナー企業の生産活動に大きな影響が生じた場合には、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、パンデミック発生時を想定したBCP計画を策定しています。
②自然災害について
地球温暖化の進行によって、洪水を含む自然災害が従来と異なる場所や頻度で発生する可能性が高まっている中、大規模自然災害やそれに伴う想定を超える長期の停電等により、当社グループが事業展開しているデータセンター等の大型IT設備を用いたアウトソーシング事業やクラウドサービス事業に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、TNFDに基づいた評価を実施しました。また、事業継続計画に基づき、各データセンターにおいて各種災害に対して様々な設備環境を整備するとともに、旧来型のデータセンターを順次閉鎖し、免震構造、堅牢な防災設備、非常用自家発電機、燃料備蓄及び優先供給契約締結をはじめとした信頼性の高い電気設備を備えた最新鋭のデータセンターへの集約を進めています。さらに、DC-BCP基本計画を策定し、運用点検の実施、障害再発防止策の実施を継続します。
(4)オペレーショナルリスク
①システム開発について
当社グループは、顧客企業の各種情報システムに関する受託開発や保守等のシステム開発を中核事業の一つとして展開しております。システム開発が高度化・複雑化・短納期化する中、計画通りの品質を確保できない場合または開発期間内に完了しない場合にはプロジェクト完遂のための追加対応に伴って費用が想定を大きく上回るほか、顧客からの損害賠償請求等により、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、ISO9001に基づく独自の品質マネジメントシステム「Trinity」に基づき、専任組織による提案審査やプロジェクト工程に応じたレビューを徹底し、継続的な品質管理の高度化や生産性の向上に取り組むとともに、グループ品質執行会議を通じた品質強化及び生産革新施策のグループ全体での徹底及び階層別教育の充実化等を通じた管理能力や技術力向上を図っております。なお、独自の品質マネジメントシステム「Trinity」は最新の動向に対応できるよう、更新を継続しています。
また、システム開発にあたっては、生産能力の確保、生産効率化、技術力活用等のために国内外のビジネスパートナー企業に業務の一部を委託しています。その生産性や品質が期待に満たない場合には円滑なプロジェクト運営が実現できなくなり、当社グループの事業及び業績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、ビジネスパートナー企業との定期的な会合・アンケート等による状況の把握や関係強化を図り、国内外で優良なビジネスパートナー企業の確保等に努めています。
②システム運用について
当社グループでは、データセンター等の大型IT設備を用いて、アウトソーシング事業やクラウドサービス事業を中核事業の一つとして展開しております。そのシステム運用においては、オペレーション上の人的ミスや機器・設備の故障等によって障害が発生し、顧客と合意した水準でのサービスの提供が実現できない場合、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)をベースにした保守・運用のフレームワークに基づき、継続的なシステム運用品質の改善を行うとともに、障害発生状況の確認・早期検知、障害削減や障害予防に向けた対策の整備・強化に努めています。
③情報セキュリティについて
当社グループでは、システム開発から運用に至るまで幅広く事業を展開する過程で、顧客企業が有する個人情報や顧客企業のシステム技術情報等の各種機密情報を取り扱う場合があります。これらの機密情報の漏洩や改竄等が発生した場合、顧客企業等から損害賠償請求や当社グループの信用失墜の事態を招き、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。また、インターネットが社会インフラとして定着し、あらゆる情報が瞬時に広まりやすい現在、利用者の裾野が広がり利便性が増す一方で、サイバー攻撃等の外部からの不正アクセスによる事故やシステム障害のリスクが高まっています。このような事態に適切に対応できなかった場合、顧客等からの損害賠償請求や当社グループの信用失墜等の事態を招き、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、グループ情報セキュリティ方針に基づき情報セキュリティマネジメントシステムを確立し、運営することで情報の適切な管理を行うとともに、社員への教育・研修を通じて意識向上に努めています。また、グループ情報セキュリティ推進規程に基づき、グループ全体の情報セキュリティ管理レベルの確認、評価、改善施策の推進を図るとともに、情報セキュリティに関する問題発生時には調査委員会を設置し、原因究明、対策の実施、再発防止策の推進等を含む問題解決に向けた責任体制等を整備しています。
当社グループが取り扱う個人情報について、個人情報保護法、個人番号及び特定個人情報取扱規程に基づき、グループレベルの管理体制を構築し、定期的な個人情報保護法遵守点検により、必要な安全管理措置を講じています。加えて社員への教育・研修を通じて個人情報保護の重要性の認識を徹底した上で顧客情報の管理強化を図る等、適切な運用に努めています。また、在宅勤務の本格実施によるワークプレイスの多様化に対してゼロトラストを導入したセキュリティ対策を実施しています。なお、当社グループでは、当社をはじめとして、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)やプライバシーマークを取得しています。
また、サイバー攻撃等に対しては、グループ全体でのCSIRT(Computer Security Incident Response Team)体制を定義し、グループセキュリティ推進会議にて情報共有を実施するとともに、インシデントを早期に検知し、緊急対応を迅速かつ正確に行う為の組織内CSIRTとして「TIS-CSIRT」を運営しています。さらに、最新の攻撃手法やインシデントの発生状況等、セキュリティに関する広範な情報収集・情報分析・情報発信をはじめ、通信監視、緊急対応、外部連携を実施しています。加えて、有事が起こった際の対策としてIT-BCPを作成し、定期的に訓練を行っています。
④法制度、コンプライアンスについて
当社グループは、様々な国内外の関係法令や規制の下で事業活動を展開しております。法令違反等が発生した場合、また新たな法規制が追加された場合には、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。また、差別やハラスメントが生じた際、生産性低下・コスト増大および社員のエンゲージメントの低下が生じた場合には当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループでは、コーポレート・サステナビリティ基本方針及びグループコンプライアンス宣言に基づき、コンプライアンス体制を構築し、雇用形態によらない全従業員への教育及び法令遵守の徹底に取り組み、公正な事業活動に努めています。コンプライアンス規程に基づき、グループ全体のコンプライアンス上の重要な問題を審議し、再発防止策の決定、防止策の推進状況管理などを通じて、グループ全体への浸透を図っております。中でも、情報サービス産業の取引構造に起因した重要課題である請負・派遣適正化に関しては、個別のリスク管理体制を構築するとともに、『請負・適正化業務マニュアル』を要領化し適切な運用に努めています。また、違法行為を未然防止するとともに、違法行為を早期に発見是正する施策としてグループ内部通報制度の導入、通報・相談窓口の設置によりグループ全体の法令遵守意識を高めております。また、差別やハラスメントを防止するため、良好な人間関係の構築、円滑なコミュニケーションの確立を目的とした教育、啓蒙活動を実施するとともに万が一生じた際には公正かつ厳正な対処をいたします。
⑤知的財産権について
当社グループは事業を展開する上で必要となる技術、ライセンス、ビジネスモデル及び各種商標等の知的財産権について、当該権利を保有する他者の知的財産権を侵害することがないように常に注意を払い事業活動を行っております。しかしながら、当社グループの事業が他社の知的財産権を侵害したとして、差止請求や損害賠償請求等を受ける可能性があり、その場合には当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。このため、当社グループでは、知的財産権に対する体制の整備・強化を図るとともに、社員への教育・研修を通じて意識向上に努めています。なお、当社が保有する知的財産権については、重要な経営資源としてその保護に努めています。
⑥気候変動について
気候変動への対策・対応として、温室効果ガス排出量を削減する「緩和」と、気候変動の悪影響を軽減する「適応」の両面において、企業が課せられる取り組み・責務が徐々に強くなってきており、その結果、事業活動・企業活動における再生可能エネルギーの利用推進の要請が高まっています。そのため、再生可能エネルギーの需要変動により、当社グループのエネルギーコストに著しい影響を及ぼした場合、また、当社グループの再生可能エネルギーへの移行が遅延した場合、当社グループの事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。
このため、当社グループではTCFDへ賛同するとともに、賛同した枠組みに沿ったアセスメントを今後継続的に実施し、その結果を対外開示していくことで、気候変動の緩和のための取り組みの説明を果たしてまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりとなります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、足踏みがみられながらも緩やかに回復しました。先行きについては、引き続き緩やかな回復が期待されるものの、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響や、通商政策など米国の政策動向による影響が我が国の景気を下押しするリスクのほか、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要があります。
当社グループの属する情報サービス産業においては、期中に公表された日銀短観におけるソフトウェア投資計画(金融機関を含む全産業)がいずれも前年度比増加を示す等、DX技術を活用した業務プロセスやビジネスモデルの変革がグローバルで進展する中で、IT投資需要の更なる増加が期待されています。
このような状況の中、当社グループは2024年4月に策定した「グループビジョン2032」の達成に向けたファーストステージとして、当連結会計年度から新たな3か年計画となる中期経営計画(2024-2026)を始動させました。前中期経営計画で実行した各種投資や顧客と関係構築を成果に結びつけるとともに、基本方針に沿った各種施策の遂行により、付加価値を伴った持続的成長を目指してまいります。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
|
(単位:百万円) |
|||
|
|
前連結会計年度 (2024年3月31日) |
当連結会計年度 (2025年3月31日) |
増減額 |
|
流動資産 |
291,556 |
319,080 |
+27,524 |
|
固定資産 |
233,899 |
238,970 |
+5,071 |
|
資産合計 |
525,456 |
558,051 |
+32,595 |
|
流動負債 |
140,277 |
153,210 |
+12,933 |
|
固定負債 |
60,453 |
48,775 |
△11,677 |
|
負債合計 |
200,730 |
201,986 |
+1,255 |
|
純資産合計 |
324,725 |
356,064 |
+31,339 |
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ32,595百万円増加の558,051百万円(前連結会計年度末525,456百万円)となりました。これは主に現金及び預金が運用資産の購入等により19,541百万円減少、繰延税金資産が保有株式の時価変動・売却等により3,680百万円減少した一方、有価証券が38,435百万円増加、建物及び構築物・土地がシステム運用業務における長期安定的な事業継続性の確保を目的とした不動産信託受益権の分割取得等により12,785百万円増加したこと等によるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,255百万円増加の201,986百万円(前連結会計年度末200,730百万円)となりました。これは主に受注損失引当金が1,468百万円減少した一方、未払法人税等が3,947百万円増加、支払手形及び買掛金が2,739百万円増加したこと等によるものであります。
なお、有利子負債合計としては、前連結会計年度末に比べ960百万円減少の37,012百万円(前連結会計年度末37,972百万円)となり、有利子負債比率も6.6%(前連結会計年度末比0.6ポイント減)となりました。
(注)有利子負債にはリース債務を含めておりません。
(純資産合計)
純資産は、前連結会計年度末に比べ31,339百万円増加の356,064百万円(前連結会計年度末324,725百万円)となりました。これは主に利益剰余金が32,843百万円増加、自己株式が取得等により5,563百万円増加(純資産は減少)したこと等によるものであります。
なお、利益剰余金の増加は、親会社株主に帰属する当期純利益により50,012百万円増加、剰余金の配当により17,169百万円減少した結果です。
セグメント別の財政状態は以下のとおりです。
イ.オファリングサービス
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて49,060百万円増加し、208,876百万円となりました。
ロ.BPM
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて812百万円増加し、13,785百万円となりました。
ハ.金融IT
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて2,244百万円増加し、90,636百万円となりました。
ニ.産業IT
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて11,697百万円増加し、87,254百万円となりました。
ホ.広域ITソリューション
セグメント資産は、前連結会計年度末に比べて4,086百万円増加し、127,108百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の業績は、売上高571,687百万円(前期比4.1%増)、営業利益69,047百万円(同6.9%増)、経常利益70,503百万円(同2.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益50,012百万円(同2.3%増)となりました。
|
(単位:百万円) |
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|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前期比 |
|
売上高 |
549,004 |
571,687 |
+4.1% |
|
売上原価 |
397,365 |
411,480 |
+3.6% |
|
売上総利益 |
151,639 |
160,206 |
+5.6% |
|
売上総利益率 |
27.6% |
28.0% |
+0.4P |
|
販売費及び一般管理費 |
87,070 |
91,158 |
+4.7% |
|
営業利益 |
64,568 |
69,047 |
+6.9% |
|
営業利益率 |
11.8% |
12.1% |
+0.3P |
|
経常利益 |
68,553 |
70,503 |
+2.8% |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
48,873 |
50,012 |
+2.3% |
売上高については、近年の事業成長を牽引してきた大型開発案件のピークアウトがある中においても、顧客のデジタル変革をはじめとするIT投資需要への的確な対応やサービス提供の推進による事業拡大等が貢献し、前期を上回りました。営業利益については、増収に伴う増益分に加え、高付加価値ビジネスの提供、生産性向上施策の推進等による効果及び不採算案件の減少により、前期比で増益となりました。なお、収益性については、売上総利益率は28.0%(前期比0.4ポイント増)、営業利益率は12.1%(同0.3ポイント増)となりました。経常利益については、主に営業利益の増加により前期比増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益については、経常利益の増加に加え、特別損益の改善により増益となりました。
なお、当連結会計年度において、特別利益9,570百万円及び特別損失5,926百万円を計上しましたが、この主な内容は、特別利益については政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却益8,558百万円であり、特別損失については減損損失4,242百万円です。
セグメント別の状況は以下の通りです。なお、各セグメントの売上高にはセグメント間の売上高を含んでいます。
|
(単位:百万円) |
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|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前期比 |
|
|
オファリング サービス |
売上高 |
130,759 |
145,515 |
+11.3% |
|
営業利益 |
7,659 |
9,937 |
+29.7% |
|
|
営業利益率 |
5.9% |
6.8% |
+0.9P |
|
|
BPM |
売上高 |
41,953 |
42,646 |
+1.7% |
|
営業利益 |
4,551 |
5,326 |
+17.0% |
|
|
営業利益率 |
10.8% |
12.5% |
+1.7P |
|
|
金融IT |
売上高 |
106,304 |
100,252 |
△5.7% |
|
営業利益 |
15,185 |
12,321 |
△18.9% |
|
|
営業利益率 |
14.3% |
12.3% |
△2.0P |
|
|
産業IT |
売上高 |
121,896 |
128,120 |
+5.1% |
|
営業利益 |
18,287 |
19,330 |
+5.7% |
|
|
営業利益率 |
15.0% |
15.1% |
+0.1P |
|
|
広域IT ソリューション |
売上高 |
172,376 |
177,425 |
+2.9% |
|
営業利益 |
18,497 |
21,576 |
+16.6% |
|
|
営業利益率 |
10.7% |
12.2% |
+1.5P |
|
|
その他 |
売上高 |
9,581 |
10,123 |
+5.7% |
|
営業利益 |
777 |
877 |
+12.9% |
|
|
営業利益率 |
8.1% |
8.7% |
+0.6P |
|
イ.オファリングサービス
当社グループに蓄積したベストプラクティスに基づくサービスを自社投資により構築し、知識集約型ITサービスを提供しています。
当連結会計年度の売上高は145,515百万円(前期比11.3%増)、営業利益は9,937百万円(同29.7%増)となりました。エンタープライズ系、基盤系、決済分野をはじめとするIT投資が拡大したことや、海外事業の寄与に加え、日本ICS株式会社を中心に前連結会計年度に子会社化した企業の業績が反映されたことが不採算案件による影響等を吸収し、前期比増収増益となり、営業利益率は6.8%(同0.9ポイント増)となりました。
ロ.BPM
ビジネスプロセスに関する課題解決に向けてIT技術、業務ノウハウ、人材等で高度化・効率化・アウトソーシングを実現・提供しています。
当連結会計年度の売上高は42,646百万円(前期比1.7%増)、営業利益は5,326百万円(同17.0%増)となりました。一部の既存BPO業務の苦戦が継続する中、DX事業をはじめとする案件獲得や、引き続き効率化施策の推進によるコスト削減を実施したこと等により前期比増収増益となり、営業利益率は12.5%(同1.7ポイント増)となりました。
ハ.金融IT
金融業界に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業・IT戦略を共に検討・推進し、事業推進を支援しています。
当連結会計年度の売上高は100,252百万円(前期比5.7%減)、営業利益は12,321百万円(同18.9%減)となりました。クレジットカード系の根幹先顧客及び公共系金融機関の大型開発案件のピークアウトによる影響が大きく、前期比減収減益となり、営業利益率は12.3%(同2.0ポイント減)となりました。
ニ.産業IT
金融以外の産業各分野に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業・IT戦略を共に検討・推進し、事業推進を支援しています。
当連結会計年度の売上高は128,120百万円(前期比5.1%増)、営業利益は19,330百万円(同5.7%増)となりました。製造系大型開発案件の反動減や不採算案件等の影響があったものの、サービス業、製造業、流通業をはじめとした幅広い業種におけるIT投資拡大の動きが全体を牽引し、前期比増収増益となり、営業利益率は15.1%(同0.1ポイント増)となりました。
ホ.広域ITソリューション
ITのプロフェッショナルサービスを地域や顧客サイトを含み、広範に提供し、そのノウハウをソリューションとして蓄積・展開して、課題解決や事業推進を支援しています。
当連結会計年度の売上高は177,425百万円(前期比2.9%増)、営業利益は21,576百万円(同16.6%増)となりました。医療系販売案件の反動減等の影響を受けたものの、自治体関連や生損保を中心とした幅広いIT投資需要の拡大に加え、不採算案件の大幅減少等により前期比増収増益となり、営業利益率は12.2%(同1.5ポイント増)となりました。
ヘ.その他
各種ITサービスを提供する上での付随的な事業等で構成されています。
当連結会計年度の売上高は10,123百万円(前期比5.7%増)、営業利益は877百万円(同12.9%増)となり、営業利益率は8.7%(同0.6ポイント増)となりました。
前述の通り、当社グループは、当連結会計年度から新たな3か年計画の中期経営計画(2024-2026)を始動させました。「フロンティア開拓」を基本方針に、付加価値を伴った持続的成長を目指すとともに、未来志向で市場開拓と事業領域の拡大を起点としたバリューチェーン全般の質的向上により、社会と顧客の変革の実現を目指してまいります。詳細は「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等」をご参照ください。
当連結会計年度における主な取り組み状況等は以下の通りです。
ペイメント事業におけるサービス戦略推進の一環として、2024年4月に、当社はナッジ株式会社と資本業務提携契約を締結し、デジタルネイティブ世代の利用をターゲットとした「ライト版クレジットカードプロセッシングサービス」の提供を開始しました。また、2025年2月には、同サービスの導入を検討する企業からのニーズに応える観点から、オプションメニューとしてクレジットカード事業の立ち上げから展開まで包括的に支援する「スタートアップスイート」の提供も開始しました。これらの取組みを通じて当社のデジタル決済プラットフォームブランドである「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」のアセット強化を図り、ライトクレジットカード市場におけるトップシェアを目指します。
また、ペイメント事業と同様、中期経営計画の成長ドライバーのひとつとして位置付けるモダナイゼーション事業においては、圧倒的な変換率を誇り、正確性、性能及び保守性に強みをもつ当社独自のリライト技術「Xenlon~神龍 モダナイゼーションサービス」を中心とした展開に加え、2024年11月にはJFEスチール株式会社と本事業の推進に向けた協業を開始しました。今後も社会・企業の停滞・沈滞リスクであるレガシーシステムへの対策に取り組み、技術的負債の解消とシステム最適化を通じて企業及び社会の持続的成長への貢献を目指します。
市場戦略のうち、BPMセグメントにおいては、中期経営計画の目標達成確度を高めるために方向性を明確化しました。新しい価値提供モデルへの変革などの構造改革を実現すべく、BPO事業はニーズの高いCX領域へのリソースシフトを推進するほか、今後の中核と位置付けるBPM事業の成長加速に向けてグループ連携を強化し、「BPaaSビジネス(BPO+SaaS)」モデルの推進等、フルバリューチェーンによる提供価値の向上を目指します。
最も重要な経営資本である人材の高度化に向けては、人材投資による付加価値向上サイクルの実効性を高めるための当社独自の人的資本シナリオを整備し、三階層のテーマに対する取り組みを推進しています。こうした中、これまでの取り組みの成果もあり、2025年2月には「日経スマートワーク大賞2025」において審査委員特別賞を受賞しました。引き続き、専門性を兼ね備えた人材が高い付加価値を提供できるよう、積極的な投資を通じて社員一人ひとりの新たな挑戦を支援し、社員と会社の価値交換の善循環を促進してまいります。
加えて、経営環境の変化に柔軟に対応した機動的な資本政策を遂行し、株主利益及び資本効率の向上を図る一環として、2024年5月から6月にかけて、総額6,499百万円(総数2,216,200株)の自己株式を取得しました。なお、自己株式については原則として発行済株式総数の5%を上限として保有し、5%を超過する保有分については消却することとしています。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて18,566百万円増加し、当連結会計年度末には121,288百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は63,748百万円(前期比1,169百万円増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益74,147百万円(同4,954百万円増)に、資金の増加として、減価償却費18,748百万円(同1,408百万円増)、減損損失4,242百万円(同3,148百万円増)などがあった一方、資金の減少として、法人税等の支払額15,834百万円(同7,801百万円減)などがあったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は17,741百万円(前期比15,075百万円減)となりました。これは主に、資金の増加として、投資有価証券の売却及び償還による収入17,675百万円(同10,680百万円増)などがあった一方で、資金の減少として、有形固定資産の取得による支出18,819百万円(同5,737百万円増)、投資有価証券の取得による支出9,033百万円(同6,146百万円増)、無形固定資産の取得による支出6,593百万円(同742百万円増)などがあったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は27,791百万円(前期比5,902百万円増)となりました。これは主に、資金の増加として、長期借入れによる収入7,200百万円(同15,959百万円減)などがあった一方で、資金の減少として、配当金の支払額17,169百万円(同4,565百万円増)、自己株式の取得による支出7,865百万円(同26,720百万円減)、長期借入金の返済による支出7,042百万円(同5,239百万円増)などがあったことによるものです。
なお、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計であるフリーキャッシュ・フローは46,006百万円(前期比16,245百万円増)の黒字となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
オファリングサービス(百万円) |
123,671 |
107.0 |
|
BPM(百万円) |
40,446 |
101.6 |
|
金融IT(百万円) |
97,348 |
94.0 |
|
産業IT(百万円) |
129,790 |
105.5 |
|
広域ITソリューション(百万円) |
172,675 |
103.2 |
|
報告セグメント計(百万円) |
563,932 |
102.7 |
|
その他(百万円) |
- |
- |
|
合計(百万円) |
563,932 |
102.7 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
オファリングサービス |
136,740 |
110.7 |
48,954 |
115.9 |
|
BPM |
40,922 |
102.4 |
7,943 |
105.3 |
|
金融IT |
93,787 |
92.0 |
40,822 |
88.8 |
|
産業IT |
133,659 |
111.1 |
43,033 |
116.3 |
|
広域ITソリューション |
171,983 |
102.9 |
56,835 |
102.8 |
|
報告セグメント計 |
577,091 |
104.4 |
197,590 |
105.1 |
|
その他 |
- |
- |
- |
- |
|
合計 |
577,091 |
104.4 |
197,590 |
105.1 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
オファリングサービス(百万円) |
131,667 |
113.4 |
|
BPM(百万円) |
40,521 |
101.6 |
|
金融IT(百万円) |
98,918 |
94.4 |
|
産業IT(百万円) |
127,634 |
105.2 |
|
広域ITソリューション(百万円) |
170,437 |
103.4 |
|
報告セグメント計(百万円) |
569,179 |
104.1 |
|
その他(百万円) |
2,507 |
120.1 |
|
合計(百万円) |
571,687 |
104.1 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の財政状態の状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」に記載したとおりであります。
当社グループは、経営環境の変化に柔軟に対応した機動的な資本政策を遂行し、株主利益及び資本効率の向上を図る一環として、株主還元の基本方針である「総還元性向50%」に基づいて総額6,499百万円(総数2,216,200株)の自己株式を2024年5月から6月までの間に取得しました。
自己株式については原則として発行済株式総数の5%を上限として保有し、5%を超過する保有分については消却するという当社の自己株式保有等に関する方針に沿って対応する予定です。
自己資本比率は61.5%となり、積極的な成長投資を可能とする財務健全性を堅持しています。
なお、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は保有方針である月商の2ヶ月程度を上回る状況にありますが、今後の資金需要等を考慮すれば適正な水準であると考えています。キャッシュアロケーションに関しては、構造転換の着実な進展による利益成長及び政策保有株式の縮減等により創出されたキャッシュを、投資・株主還元の強化に加えて資本構成適正化や財務健全性に向けた財務施策へ積極的に活用することができています。今後もこうした善循環を推進することで経営の質の転換を進めてまいりたいと考えています。
b.経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績の状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」に記載したとおりであります。
当社グループは、中期経営計画(2024-2026)の基本方針「フロンティア開拓」のもと、付加価値を伴った持続的成長を目指しており、当連結会計年度においても積極的な事業拡大を通じて業績伸長を果たしました。また、引き続き将来の成長に資する投資を実行しながらも、収益性を向上させる取り組みを推進することができたと考えています。具体的には、成長投資(ソフトウェア投資、人材投資、研究開発投資)の前期比8.5億円増に加え、最重要の経営資本である人材に対する処遇改善による影響(前期比11.9億円増)等がある中においても、高付加価値ビジネスの提供や生産性向上施策等を推進しました。加えて、不採算案件が前期比で13.5億円減少したことも寄与し、売上総利益率は前期比0.4ポイント増の28.0%、営業利益率は同0.3ポイント増の12.1%となりました。
c.経営成績等に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績等に重要な影響を与える要因については、「第2.事業の状況 3 事業等のリスク」に記載したとおりであります。
d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、「第2.事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載したとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりであります。
当社グループは、利益成長に基づくキャッシュ創出力の向上により、積極的な成長投資と株主還元の充実化を推進することを中期経営計画(2024-2026)における財務投資戦略及びキャッシュアロケーションの基本方針としています。当連結会計年度においては上記方針に基づいて、事業利益の成長等に伴う営業活動によるキャッシュ・フローの増加に加え、政策保有株式の縮減等によりキャッシュを創出し、内部強化を目的とした成長投資(人材、R&D及びソフトウエア)やM&A等に充当するとともに、総還元性向の45%から50%への引き上げを含めて株主還元総額(配当及び自己株式の取得の合計)を増加させました。当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは460億円の黒字であり、利益成長及び安定的なキャッシュ創出力は高い水準を維持していると考えています。なお、前連結会計年度比162億円の増加は、前連結会計年度において日本ICS株式会社の連結子会社化に伴う支出があったことが主たる要因となります。
b.資本の財源及び資金の流動性
イ.資金需要
当社グループの資金需要について、営業活動においては、人件費・外注費及び材料費などの支払いに充当する運転資金が主な内容になり、事業規模の拡大に応じて運転資金は増加傾向にあります。なお、当社グループにとって最重要の経営資本である人材との価値交換性の向上を追求する一環として、継続的な処遇改善を実施しております。投資活動においては、中期経営計画(2024-2026)において、3年間で約1,000億円を想定する投資戦略に基づき、内部強化を目的とした成長投資(人材、R&D及びソフトウエア)のほか、ペイメント領域やバリューチェーン拡大等に向けたオファリングサービスの確立を軸とした差別化・集中化のためのM&Aや新技術獲得のための出資といった成長投資を実施しております。また、設備投資として、働く環境の整備、改善を推進することを目的とした経常的な設備の更新、増設等に加えて、システム運用業務における長期安定的な事業継続性の確保を目的とした不動産信託受益権の分割取得を実施しております。
ロ.財務政策
自己資本当期純利益率(ROE)については、引き続き資本効率性を意識した経営を推進していく中、一過性要因を除いて前連結会計年度を上回る水準を実現するという考えから最低ラインとして16.0%超を中期経営計画(2024-2026)における目標とし、長期視点では20.0%超を実現できる企業への成長を目指しています。
当連結会計年度のROEは15.3%と高水準を維持していますが、今後さらに資本収益性を高め、目標達成をより確実なものとするためには、牽引役と位置付ける事業収益力の向上のみならず、バランスシートマネジメントの強化等を通じて当社グループの構造転換の進化に応じた資本構成の適正化を推進することも重要であると認識しています。この認識のもと、翌連結会計年度における財務施策として、資本構成の適正化を図ることを目的とした350億円相当を含めた総額420億円の自己株式の取得を決定しています。
なお、当社グループは、現金及び預金はコミットメントライン契約を含めて月商の2ヶ月程度を保有する方針としております。必要となる資金につきましては、内部資金より充当し、不足が生じた場合は有利子負債の調達を実施することが基本的な考えです。借入金、社債等の調達については、調達コストの抑制の観点から格付「A」の維持を考慮して実施する前提としております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループでは、競争力強化および新規事業創出、中長期の事業成長を目指し、継続的に研究開発活動に取り組んでいます。
当連結会計年度の研究開発に関する費用の総額は、
政治的な緊張の高まりや世界経済の不透明化といった社会的な不安が高まる一方で、デジタル社会の実現に向けてAIや量子コンピューティングといった様々なテクノロジーが劇的な進化を遂げており、これらのテクノロジーに対する期待が日々メディアを賑わせています。弊社では、社会ニーズをとらえ、社会課題解決につながるテクノロジーをビジネスに取り入れていくことが重要と考えており、最先端技術トレンドを幅広く分析し、最先端技術を応用するために、次に掲げる3つの領域の研究開発に注力しております。
(1) 先進的なソフトウェア生産技術の研究開発と現場適用
(2) 持続可能な社会の実現や社会課題の解決に貢献する新規事業創出
(3) 将来の事業の核となる技術の獲得による中長期の事業成長
(1) 先進的なソフトウェア生産技術の研究開発と現場適用
ソフトウェア生産技術については、飛躍的な生産性向上を図るべく生成AI*1の活用に注力しております。当連結会計年度は、前年度に引き続きGitHub Copilot*2の社内利用を拡大し、約3割のプロジェクトに展開いたしました。単なる個人単位での生産性向上にとどまらず、オフショア開発における活用や、生成AIによるコードレビューを大幅に効率化するツールの開発・活用などにより、プロジェクトチーム単位で量的・質的効果の拡大を図っております。また、社内AIChat環境で共有されたプロンプトを利用した要件定義の支援や、設計書からテスト仕様書の自動生成など、システム開発工程全体に活用範囲を拡大しております。各種の取り組みはグループ社員10,000人名以上が参加する相互技術支援サイト「canal」で共有するなど、ノウハウの共有展開を図っております。
(2) 持続可能な社会の実現や社会課題の解決に貢献する新規事業創出
当社グループは、社会課題の解決を目指し、「社会DX」、「事業DX」、そして「内部DX」の三つの領域で総合的な取り組みを進めています。特に「金融包摂」、「都市への集中・地方の衰退」、「低脱炭素化」、「健康問題」の解決に重点を置き、さまざまな事業分野で新たな価値の創造を目指しています。
医療・ヘルスケア分野では、PHR基盤サービス「ヘルスケアパスポート」を展開し、健康・医療情報の共有を通じた地域住民の健康管理を促進しています。千葉県君津市、宮崎県都農町、大阪府門真市など、複数の自治体でこのサービスを活用した健康情報管理の拡大が進んでいます。また、2025年4月13日から開催される大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」では、「大阪ヘルスケアパビリオン公式アプリ」の開発と「ヘルスケアプラットフォーム」の提供を行い、大阪ヘルスケアパビリオンでの体験をサポートしています。
地域活性化の取り組みとして、会津地域でサービス提供している会津コインの商店街、学校等と連携した利用シーン拡大を通して、市民の利便性向上、決済額の拡大につながっています。また、阪南市とは持続可能なまちづくりに向けた包括連携協定を締結し、共創による新しい地域価値創出に参画する等、地域における活性化支援が拡大しています。
(3) 将来の事業の核となる技術の獲得による中長期の事業成長
デジタル社会を実現するために期待されている多くの技術のうち、「様々な分野での活用ユースケースが想定でき」「システムインテグレーションやサービスに活用でき」「実用段階に至るまで中長期での取り組みが必要となる」技術として「量子コンピューティング」と「空間コンピューティング」を中長期の注力テーマとして整理しております。これらの注力テーマについて様々な大学や研究機関と連携し、中長期の事業成長を目指して今後の事業の核となる技術を獲得すべく研究開発を行っております。
「量子コンピューティング」に関する研究開発では、ユースケースを想定した量子アルゴリズムの研究や量子アプリケーションを開発するための量子ソフトウェアの開発を行っております。量子アルゴリズム研究においては、大阪大学との共同研究により組合せ最適問題に対する新量子アルゴリズム「FQAOA」を開発し電力需要ポートフォリオ最適化問題に適用した結果、従来手法と比較して計算精度を約10倍改善することに成功したことを発表しました。また、量子ソフトウェア開発においては、量子プログラムの変換・最適化ソフトウェア「Tranqu」を大阪大学と共同開発し、大阪大学らと共に量子コンピュータ・クラウドサービス向けの世界最大規模の基本ソフトウェア群「OQTOPUS」としてオープンソースで公開・運用を開始しております。
「空間コンピューティング」に関する研究開発では、昨年まで行っていた「XR*3研究」、「Multi-Level Edge Computing研究」をデジタルとリアルを統合する技術として発展させ、インタラクティブなコミュニケーションが可能なメタバースやデジタルツインの実現に向けた研究開発を行っております。空間コンピューティングにおけるデータ収集の一つとしてIoT・ウェアラブルデバイスの普及・利活用に向けて「ウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマット」を広島市立大学らと共にIEC*4に提案し、国際標準規格「IEC 63430」として発行されました。
*1 生成AI
生成AIは、人工知能技術を用いてテキスト、画像、音楽など新しいコンテンツを自動生成するシステムである。大量のデータから学習し、特定の指示に基づいてユニークなアウトプットを作成することが可能であり、ビジネスシーンにおいては、広告コンテンツの生成、ユーザーインターフェースの改善、顧客サポートの自動化など、多岐にわたって活用されている。
*2 GitHub Copilot
生成AI技術を活用したプログラミングに関わる様々な作業を支援するツール。
*3 XR(Extended Reality)
VR(Virtual Reality/仮想現実)、AR(Augmented Reality/拡張現実)、MR(Mixed Reality/複合現実)などのさまざまな仮想空間技術の総称
*4 IEC(International Electrotechnical Commission)
国際電気標準会議