第3 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

下記「第3 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」を参照のこと。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組み】

下記「第5 3 コーポレート・ガバナンスの状況等」「サステナビリティ・ガバナンス」を参照のこと。

 

3 【事業等のリスク】

当社の取締役会(以下「取締役会」という。)は、2025年6月30日に終了した会計年度に係るリスク管理及び内部統制に関する報告書(Statement on Risk Management and Internal Control)を、ブルサ・セキュリティーズのメイン・マーケット上場規則(以下「上場規則」という。)第15.26(b)項及び企業統治法(以下「本規範」という。)の原則Bに従って発行するとともに、内部統制タスクフォース(Taskforce on Internal Control)が発行しブルサ・セキュリティーズが承認した「リスク管理及び内部統制に関する報告書:上場会社の取締役向けリスク管理及び内部統制に関する指針(Statement on Risk Management and Internal Control: Guidelines for Directors of Listed Issuers)」の指針に基づき、ここに提示する。

 

取締役会の責任

取締役会は、株主の投資及び当社及びその子会社(以下「当グループ」という。)の資産を保護するための適切な統制環境フレームワークの確立を含む、健全なリスク管理及び内部統制システムを維持する責任があることを認識している。取締役会は、財務管理のみならず、業務管理、コンプライアンス管理、リスク管理を含む内部統制システムの適切性と完全性を検討する。内部統制及びリスク管理システムには本質的な制約があるため、取締役会は、内部統制及びリスク管理システムは、当グループの事業目標の達成を妨げる可能性のあるリスクをすべて排除するのではなく、むしろ管理するために設計されていることを認識しており、そのため、重大な誤表示、損失及び詐欺に対する、合理的ではあるものの、絶対的ではない保証を提供するに止まる。

取締役会は、当年度について、当グループのリスク管理及び内部統制(財務その他も含めて)が当グループの効率的かつ効果的な事業活動、財務情報の信頼性及び透明性、並びに法令及び規則の遵守を合理的に保証するものであると考えている。

 

当グループの内部統制の主な特徴

当グループの内部統制システムの主な内容の概略は、以下のとおりである。

 

・承認手続

当グループは、承認手続を明確に定義し、説明責任を明確に定め、取締役会及び上席経営陣内で承認、許可及び管理に関する厳格な手続を有している。承認レベル、職務分掌及びその他の統制手続などの責任のレベルは、株主の最善の利益に鑑みた効率的かつ独立した管理を促すために当グループ内に通知されている。

 

・権限レベル

当グループは入札、設備投資プロジェクト、買収及び事業の処分並びにその他の大規模な取引に関して、会長、取締役社長及び常勤取締役に対して権限レベルを委任している。企業への融資及び投資資金の拠出の要件を含む、一定の限度額を超える資本及び収益に関する承認は、取締役会がこれを決定する。その他の投資に関する判断は、権限の範囲に従って承認される。総合的な評価及び監視手続は、すべての大規模な投資に関する決定に適用される。

 

・財務成績

中間財務成績は、ブルサ・セキュリティーズに開示する前に、監査委員会が審査し、監査委員会の提言に基づき取締役会が承認する。監査済みの年次財務諸表及び当グループの財務分析は、株主に開示される。

 

・内部の法令遵守

当グループは、内部で審査する経営陣のレビューを通じて内部の財務管理の遵守を監視している。財務報告書は、年間目標の達成度を測ることができるよう、主要担当者が審査している。内部の方針や手続の更新は、経営上の欠陥部分の是正及びリスクの変化を反映するため、並びに当グループに関連する法令及び規則の遵守要件の変化を反映するために行われる。内部監査は、手続の遵守の監視及び精査を行い、提供された財務情報の整合性を評価するため、体系的に取り決められる。

 

当グループの内部統制の主な手続

内部統制のシステムの適切性と整合性を審査するために取締役会が定めた主な手続は、以下のとおりである。

 

・内部監査機能及び監査委員会による監視

当グループの内部監査機能は、その内部監査部門(以下「YTLIA」という。)により実質的に提供される。YTLIAは、経営陣が導入した内部統制システムの効率性及び有効性につき評価を行う。

YTLIA は、下記の当グループ会社の内部監査機能を担っている:

- YTLパワー・インターナショナル・バーハッド及びその子会社(以下「YTLパワー・グループ」という。)

- マラヤン・セメント・バーハッド及びその子会社(以下「マラヤン・セメント・グループ」という。)

- YTLホスピタリティREIT及びその子会社、並びにYTLホスピタリティREIT のマネージャーであるピンタール・プロジェック・センドリアン・バーハッド(以下「YTL REITグループ」という。)及び

- 当社及び上記サブグループ以外の当グループの子会社(以下に定義)

ただし、YTLパワー・グループの一部の子会社、すなわち内部監査機能を外部に委託しているYTLパワーセラヤ・プライベート・リミテッド・グループ会社、内部監査機能を各社内の内部監査チームが担っているウェセックス・ウォーター・リミテッド・グループ及びランヒル・ユーティリティーズ・バーハッドとその子会社(以下「ランヒル・グループ」という。)を除く。

同様に、シンガポール取引所(SGX)に上場するNSL Ltd及びその子会社(総称して「NSLグループ」という。)の内部監査機能は、社内の内部監査チームにより実施される。

YTLパワー・グループ、ランヒル・グループ、マラヤン・セメント・グループ、YTL REITグループ及びNSLグループを総称して「上場サブグループ」という。

YTLパワー・インターナショナル・バーハッド、ランヒル・ユーティリティーズ・バーハッド、マラヤン・セメント・バーハッド及びYTLホスピタリティREIT(以下、総称して「上場子会社」という。)は、ブルサ・セキュリティーズに上場しているため、コーポレート・ガバナンスの枠組みの一部として、それぞれの取締役会に監査委員会が設置されている。同様に、NSL Ltdはシンガポール取引所(SGX)に上場しており、独自の取締役会監査委員会を設置している。

従って、YTLIAは、上場サブグループに対する内部監査の責任を報告する際、(該当する場合には)各上場子会社の監査委員会に直接報告する。

上記の観点から、監査委員会による内部監査機能の監視は、当社及び上場サブグループに属さない当社子会社を対象としている。

内部監査機能の説明は、監査委員会報告書に記載されており、YTLIAの人員とリソースに関する詳細は、アニュアル・レポートに記載されているコーポレート・ガバナンスの概要説明に記載されている。この情報は、当社ウェブサイト(www.ytl.com)の「ガバナンス」のページでも閲覧可能である。

YTLIAは、監査対象とする事業部門及びサービス部門から独立して運営されており、内部統制システムの効率性と有効性と重大なリスクに重点を置いて実施された監査の結果につき、監査委員会に対して報告を行う。監査委員会は、YTLIAが提起した重大な課題及び事項につき審査及び評価を行い、経営陣によって適切かつ迅速な是正策が講じられることを保証する。

当年度のレビューにおいて、アニュアル・レポートでの開示が必要となるような重大な脆弱性又は問題は確認されなかった。

内部統制のシステムは、事業環境の変化に伴い、随時審査、改善又は更新されていく。取締役会は、現在の内部統制システムが当グループの利益を守るために有効なシステムであると考えている。

 

・執行理事会及び上席経営陣会議

当グループは、会長(必要に応じて出席する)、取締役社長、常勤取締役、部門長及びシニア・マネージャーから構成される執行理事会及び上席経営陣会議を開催している。この会議は、緊急を要する事項について審議・決定し、財政及び財務に関する重要事項を特定、検討、協議及び解決し、当グループの財務状況を監視するために招集される。また、新しい金融情勢や懸念される事項が早期に明らかにされ、迅速に対処することを確保する役割も果たしている。ここでの決定事項は、すべての関係する従業員レベルに直ちに効率的に伝えることができる。これらの会議を通じて、執行理事会及び経営陣は関係する事業部門における業務上又は財務上の重大なリスクを特定することができる。

 

・現場の視察

取締役社長及び常勤取締役は、生産現場や事業部門、不動産開発の現場へ赴き、様々なレベルの従業員と対話し、協議し、実行された戦略の有効性を直接評価する。現場の視察は、効率的な運営のために、透明性が高く、開かれたコミュニケーション経路が取締役会の執行メンバーによって維持されることを保証する目的で行われている。

 

当グループのリスク管理体制の主な特徴及び手続

当グループの事業活動のすべての分野は何らかのリスクを伴うことを取締役会は認識している。当グループは、株主価値を保護し向上させるため、これらのリスクを効果的に管理することに全力を注いでいる。

取締役会は当グループのリスク管理実務について全責任を負っている。当グループが直面する重大なリスクの特定、分析及び管理は上席経営陣が各事業レベルで行われる継続的なプロセスである。当年度中、取締役会のリスク管理体制における機能は、内部統制システムの適切性と全体性を保証するために経営会議に取締役社長、常勤取締役が参加することにより実行された。当グループの事業に影響を与える重大なリスクの特定及び分析のプロセスの検討と更新、並びにこれらのリスクを管理するための方針及び手続に重点が置かれている。

当グループの事業活動は、市場リスク(為替リスク、金利リスク及び価格リスク)、信用リスク、流動性リスク及びキャピタル・リスクなど、様々な金融リスクを伴う。当グループ全体の金融リスクの管理の目的は、当グループが株主価値を創造することを保証することである。当グループは金融市場の予測不可能性に焦点を合わせ、財務業績に与える悪影響の可能性を最小限に抑えることを目標としている。金融リスク管理はリスク評価及び内部統制システムを通じて行われる。取締役会はこれらのリスクを評価し、適切な管理環境慣行について承認を行う。当グループのリスク管理の詳細については、「第3 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載する。

経営陣は、当グループ内でのリスク意識を高め、各自の担当事業に該当する重大なリスクの特定及び分析を行い、適切な内部統制手続の設定と運営の義務がある。これらのリスクは、継続的に評価され、リスク管理の不備、情報システムの故障、競争、自然災害及び規制など社内外のリスクに関するものが含まれる。重大なリスクを生じさせる可能性をある事業の変化及び外部環境の変化は、適切なリスク軽減策を策定するために、経営陣から取締役社長/常勤取締役に報告される。

常勤取締役会は今後も(i)各事業分野において直面する事業、営業及び財務リスクの特定、評価及び管理を行い、(ii)また定期的に戦略を見直して、リスクが軽減され、管理されているかを確認し、当局が発行するガイドラインを遵守する。これは、当グループが株主持分及び株主価値を保護し、向上させるために常に変化し続ける事業環境に効率的に反応できることを確実にするためである。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 業績等の概要

① 事業実績

2025年度及び2024年度の当グループの主な事業部門別の売上高及び税引前利益は以下のとおりである。

(監査済)

 

2024年度

2025年度

売上高

百万マレーシア・リンギット(百万円)

百万マレーシア・リンギット(百万円)

公共事業部門

21,176.1

(800,245)

69.45%

20,088.6

(759,148)

65.23%

セメント・建材事業部門

5,387.0

(203,575)

17.67%

6,157.6

(232,696)

19.99%

建設部門

787.0

(29,741)

2.58%

712.6

(26,929)

2.32%

不動産投資開発部門

397.0

(15,003)

1.30%

595.5

(22,504)

1.93%

ホテル経営部門

1,603.3

(60,589)

5.26%

1,643.6

(62,112)

5.34%

運用サービス部門及びその他

1,140.3

(43,092)

3.74%

1,599.0

(60,426)

5.19%

合計

30,490.7

(1,152,244)

100.00

30,796.9

(1,163,815)

100.00%

税引前利益

百万マレーシア・リンギット(百万円)

百万マレーシア・リンギット(百万円)

公共事業部門

3,311.7

(125,149)

68.28%

2,927.5

(110,630)

61.76%

セメント・建材事業部門

783.5

(29,608)

16.15%

1,293.9

(48,896)

27.30%

建設部門

15.2

(574)

0.32%

1.0

(38)

0.02%

不動産投資開発部門

83.1

(3,140)

1.71%

188.8

(7,135)

3.98%

ホテル経営部門

286.7

(10,834)

5.91%

334.8

(12,652)

7.06%

運用サービス部門及びその他

370.2

(13,990)

7.63%

▲6.0

(▲227)

▲0.12%

合計

4,850.4

(183,297)

100.00%

4,740.0

(179,125)

100.00%

 

 

② 概況

当社の当年度の収益は308億マレーシア・リンギットと過去最高を更新し、前年度をわずかに上回り、税引後利益は36億マレーシア・リンギットに落ち着いた。

 

当社は、1985年のブルサ・セキュリティーズに上場して以来、41年連続の配当実績を誇っている。当社の取締役会は、普通株式1株あたり5.0セン(前年比で11%増)の中間配当を宣言した。

 

当年度は、株主への追加的な利益還元策として、普通株式5株につき新株予約権1個の割合で、無償割当を実施した。過去数十年にわたり実施してきた他の分配及び金融商品と同様に、当社は今回の新株予約権の無償割当を、株主に対する最も適切な利益還元手段であると判断した。

 

新株予約権の行使に初期費用を要しないことから、株主は将来的に当社グループへの参加時期をより低いコストで柔軟に選択することが可能となる。

 

当年度は、当社の創立70周年という節目の年である。当社は建設業に端を発し、セメント、不動産、ホテル業へと事業を拡大し、マレーシア初の独立系発電事業者(IPP)となり、公益事業分野を成長させてきた。当グループの歩みはマレーシアの発展及び近代化の歴史と密接に結びついている。

 

これまでの事業展開を通じて、当社は重要な国際資産も保有するまでに成長した。具体的には、シンガポールにおけるYTLパワーセラヤ、NSL及びスターヒル・グローバルREIT(後者2社はシンガポール証券取引所の上場企業)、日本のニセコビレッジ並びにオーストラリアの3つのマリオット・ホテル及びウェスティン・パースが含まれる。

 

さらに注目すべきは、ウェセックス・ウォーター、ブラバゾン開発プロジェクト及び複数のホテル資産を保有することにより、当グループが英国における最大級のマレーシア投資家の一つとなっている点である。2025年1月、アンワル・イブラヒム首相により「ブラバゾン・ブリストル(Brabazon Bristol)」が正式に始動された。同プロジェクトは英国における最大級かつ最も壮大なブラウンフィールド再開発であり、商業、住宅、産業、コミュニティ空間を含む複合開発として、英国経済に3万人の雇用を創出することとなる。

 

マレーシアのインフラ建設における70年以上の当社の実績は、この大規模プロジェクトの戦略及び手法の策定に活かされることが見込まれる。マレーシアと英国の間で強化された貿易協定及び協力関係は、サプライチェーンとの新たな提携を促進するとともに、両国間のさらなる投資拡大を確実に後押しすることが期待される。

 

当社の英国進出は2002年のウェセックス・ウォーターの取得に始まり、これにより英国の上下水道事業に関する広範な知識及び経験を得た。現在、当社はこの貴重な経験及び技術的ノウハウを、ランヒル・グループ傘下におけるマレーシアの水事業の発展に活用すべく取り組んでいる。

 

マレーシアは、高度技術及び物流分野を中心に、外国投資家からの関心を高めている。その背景には堅調な経済基盤があり、インフラ整備、都市拡張、製造拠点、物流パーク、データセンター等、多様な非住宅開発によって、力強い経済見通しとなっている。当グループは、これらの発展を牽引する複数の産業において主導的地位を占めている。

 

当グループの70年に及ぶ歩みは、当社が掲げる「正しい価値を築く(Building the Right Thing)」という理念を体現してきたものである。AI主導のイノベーションという新たな段階に移行するにあたり、当社の新規事業は、マレーシア国内における高付加価値雇用及び産業の創出を促進し、同国を地域のAIイノベーション拠点及び中心地として確立することを目指している。

 

当グループの当年度の収益は、30,796.9百万マレーシア・リンギットに達し、前年度の30,490.7百万マレーシア・リンギットを上回った。当年度の税引前利益は、前年度の4,850.4百万マレーシア・リンギットに対して、4,740.0百万マレーシア・リンギットとなった。一方、当期の税引後利益は、前年度の3,898.0百万マレーシア・リンギットに対して、3,578.6百万マレーシア・リンギットとなった。

 

当グループの海外事業は継続して重要な役割を担っており、2025年度の収益に占める海外事業の割合は約73%となり、前年度の77%からやや低下した。

 

当社の取締役会は、基準日を2025年10月2日、支払日を2025年10月23日として、普通株式1株あたり5.0センの中間配当を宣言した。

 

公益事業部門の当年度の収益は、20,088.6百万マレーシア・リンギットとなり、前年度の21,176.1百万マレーシア・リンギットを下回った。また、当年度の税引前利益も、2,927.5百万マレーシア・リンギットとなり、前年度の3,311.7百万マレーシア・リンギットと比較して減少した。

 

業績は、発電事業部門におけるプール価格の下落及びマレーシア・リンギットがシンガポール・ドルに対して上昇したことにより影響を受けたが、英国規制当局による料金引上げの許可及びランヒルからの収益寄与を受けた上下水道事業の業績改善により、一部緩和された。

 

セメント・建材事業部門の当年度の収益は、6,157.6百万マレーシア・リンギットに達し、前年度の5,387.0百万マレーシア・リンギットと比較して増加した。当年度の税引前利益は、1,293.9百万マレーシア・リンギットに達し、前年度の783.5百万マレーシア・リンギットと比較して増加した。この業績改善は、主に2024年10月1日のNSL買収完了に伴う業績の連結、運営効率化投資及びESGを重視した改善施策を含む継続的な効率向上の取組み、並びに前年度におけるラワン工場における設備減損損失の縮小によるものである。

 

建設部門の当年度の収益は、712.6百万マレーシア・リンギットであり、前年度の787.0百万マレーシア・リンギットと比較して減少した。また、当年度の税引前利益は、前年度の15.2百万マレーシア・リンギットを下回る1.0百万マレーシア・リンギットとなった。これは、当年度に第三者契約が完了したことによるものである。

 

不動産投資開発部門における当年度の収益は、前年度の397.0百万マレーシア・リンギットに対し、595.5百万マレーシア・リンギットを計上した。これは、セランゴール州で進行中のプロジェクト、英国ブラバゾン開発プロジェクトの売上増加及びオフィスビルの売却完了によるものである。また、当年度の税引前利益は188.8百万マレーシア・リンギットに達し、前年度の83.1百万マレーシア・リンギットの税引前利益と比較して増加した。これは、英国における投資不動産の公正価値の増加によるものである。

 

ホテル経営部門における当年度の収益は、前年度の1,603.3百万マレーシア・リンギットから1,643.6百万マレーシア・リンギットに増加した。これは、主要ホテルにおける客室稼働率の上昇及び平均客室単価の改善によるものである。また、当年度の税引前利益は、前年度の286.7百万マレーシア・リンギットから334.8百万マレーシア・リンギットに増加した。

 

運用サービス部門及びその他は、当年度において、前年度の1,140.3百万マレーシア・リンギットから1,599.0百万マレーシア・リンギットに増加した。これは主に、ランヒル・ユーティリティーズ・センドリアン・バーハッド(Ranhill Utilities Berhad)(以下「ランヒル・ユーティリティーズ」という。)によって計上されたコンサルティングサービスの売上げによるものである。当年度は、前年度の税引前利益370.2百万マレーシア・リンギットに対して、税引前損失6.0百万マレーシア・リンギットを計上した。これは主に、ヨルダンのプロジェクト事業体に対して実行された株主ローンに起因する未実現為替差損(非現金項目)によるものであり、一方で、ジョイントベンチャーからの持分利益の増加により、一部その影響が相殺された。

 

サステナビリティ

当社は、2017年以降、ブルサ・セキュリティーズのFTSE4Goodインデックスの構成銘柄であり、当年度はYTLホスピタリティREITも同インデックスに加わった。当グループでは、YTLパワー及びランヒル・ユーティリティーズも同インデックスの構成銘柄である。

 

当グループの子会社であるYTLパワーセラヤは、当年度、シンガポールにおいて600メガワットの水素対応ガスタービン・コンバインドサイクル発電所の建設を着工した。当該新設備では、2027年12月31日までの竣工を目指しており、初期段階で少なくとも30%の水素に対応できる設計であり、将来的には100%の水素に対応できるよう改造可能である。また、ジョホール州クーライにおいて、YTLグリーン・データセンター・パークへの電力供給を目的とした太陽光発電プロジェクトの建設工事も開始された。当該プロジェクトは段階的に建設が進められている。

 

当グループは、組織全体でサステナビリティの推進を継続しており、環境負荷の低減及び長期的なレジリエンスの構築を目的として、代替燃料、再生可能エネルギー源及び排熱回収システムを含む、よりクリーンな生産技術への投資に重点を置いている。

 

詳細については、当社の年次報告書と併せて発行する「サステナビリティ・レポート2025」を参照のこと。

 

見通し

マレーシア経済の基盤は引き続き堅調に推移しており、国内各地において新たな成長産業の育成を促進する有望な取組みが進められている。一方で、世界的な貿易政策の影響に関する不確実性は依然として残存している。世界経済全体も、同様の不確実性に加え、地政学的対立の激化による影響を受けている。当グループは、これまでに培ってきた革新性、堅実な財務運営、戦略的な長期計画における実績を今後も成長及び拡大の基盤としていく方針であり、当グループが事業を展開する主要市場の安定した成長動向及び既存事業の基盤的な強みにより、引き続き支えられている。

 

③ 2025年度と2024年度の比較

1 売上高

当グループの当年度の売上高は、前年度の30,490.7百万マレーシア・リンギットに対して、306.2百万マレーシア・リンギット、すなわち1.0%増加し、30,796.9百万マレーシア・リンギットとなった。この増加は、建設部門及び公益事業部門を除くすべての報告部門において収益貢献が増加したことによるものである。

 

2 税引前利益

当年度の当グループの税引前利益は、前年度の4,850.4百万マレーシア・リンギットから4,740.0百万マレーシア・リンギットへと2.3%減少した。この減少は主に、建設部門、運用サービス部門及びその他並びに公益事業部門における利益貢献の減少によるものである。

 

3 当グループへの課税

当年度の当グループへの課税は、前年度の952.4百万マレーシア・リンギットに対して1,161.3百万マレーシア・リンギットに増加した。この増加は主に、YTLパワー及びYTLセメント・グループにおける収益貢献の増加によるものである。

 

4 少数株主持分

少数株主持分は、前年度の1,755.9百万マレーシア・リンギットから当年度の1,625.6百万マレーシア・リンギットに減少した。これは主にYTLパワー・グループにおける収益貢献の減少によるものである。

 

5 税引後利益及び少数株主持分

上記の結果、当グループの税引後利益及び少数株主持分は、前年度の2,142.1百万マレーシア・リンギットに対し、当年度において189.1百万マレーシア・リンギット、すなわち8.8%減少し、1,953.0百万マレーシア・リンギットを計上した。この減少は主に、YTLパワー・グループにおける収益貢献の減少によるものである。

 

(2) 生産、受注及び販売の状況

(1)「業績等の概要」を参照のこと。

 

(3) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

本項には、将来予想に関する記述が含まれているが、これは当事業年度末現在において判断したものである。

 

目標及び戦略

当グループは、価値を最大限にし、長期的に実行可能かつ持続可能な堅固な事業を構築及び運営し、すべての株主に利益をもたらすことを目標に、規制されたその他公益事業資産及びセメント、建設、不動産開発及びホテル経営のコア・コンピテンシーに関連する事業に注力しながら、国内外における未開発地域の開発及び戦略的買収を通じて自らの収益基盤の地理的多様化及び拡大を追求している。

 

また、当グループは、その収益の大部分を利権・認可に基づく規制されたその他さまざまな公益事業資産の運営から得ており、これにより、当グループは、マレーシア国内外において、安定した利益をあげ、不安定な経済及び変化する事業状況から生じる下方リスクを軽減することができている。

 

当グループの戦略の主な要素は、以下で構成されている。

 

・ 特に、規制された公益事業の分野における未開発地域の開発及びマレーシア国内外における戦略的買収を通じた当グループの収益基盤の多様化及び拡大 当グループは、長期の利権に基づき運営している規制された資産及びそのコア・コンピテンシーに関連するその他の事業を取得する戦略を追求している。当グループの規制された公益事業は、継続的な成長を示しており、その資産のうち規制された資産の価値は時間の経過とともに増大している。かかる分野における当グループの既存の海外事業は、引き続き安定した利益を生んでおり、海外での買収は、所得の流れを多様化し、当グループが各国及び各業界に固有のリスクを回避できるようにしている。

 

・ 再生可能及び持続可能エネルギーソリューションを中心とした当グループの中核事業の成長及び強化 事業を成長させるための当グループの戦略は、当グループのコア・コンピテンシーである専門性を活用することである。特に、公益事業、建設請負事業、不動産開発及び投資事業、セメントその他の工業製品及び必需品の製造事業、ホテル開発及び経営事業(レストランの経営を含む。)の分野において専門知識を活用することを試みている。

これには、排出削減及び低炭素代替手段を追求するため、より持続可能な再生可能エネルギーソリューションの開発、投資及び研究開発努力の優先付けが含まれる。

当該戦略を実行するにあたり、当グループは、事業の長期的な持続可能性及び実行可能性を確保するために、ガバナンス、コンプライアンス及び事業の経済的・環境的・社会的影響の管理に重点を置いている。

 

・ 当グループの資本構造の継続的な最適化 当グループは、デット・ファイナンス及びエクイティ・ファイナンスの組み合わせを最適化し、買収の機会に投資するための内部資金及び外部金融の利用可能性を確保することにより、バランスの取れた財政構造を維持している。当グループの成長戦略の重要な要素は、その買収及び未開発地域事業の負債要素を、ノンリコースの融資で賄う慣行である。これにより、当グループが、会社から独立した単体の有効な事業にのみ投資を行うことが保証されている。

 

・ 当グループの事業収益を最大化し、顧客基盤を拡大するための運営効率の向上 当グループは、その公益事業及びセメント工場が、平均して、それぞれの業界の最高効率水準の範囲内で運営されていると確信しており、新しい技術、生産技術及び情報技術の適用を通じて、可能な限り運営効率を一層高めている。

 

財務業績の評価

 

当グループの財務業績

当グループは、前年度の30,490.7百万マレーシア・リンギットの収益に対して、当年度は30,796.9百万マレーシア・リンギットの収益を計上した。当年度の税引前利益は、前年度の4,850.4百万マレーシア・リンギットから4,740.0百万マレーシア・リンギットに減少した。

 

当グループの海外事業は、当グループの収益及び非流動資産のそれぞれについて、前年度の77%及び73%に対して、当年度は約73%及び71%を占めており、引き続き当グループの収益及び非流動資産の最大の割合を占めている。

 

部門別の財務業績

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部門別収益

部門別税引前利益/(損失)

 

2025年度

2024年度

2025年度

2024年度

(修正再表示済み)

 

百万マレーシア・リンギット

公益事業部門

20,088.6

21,176.1

2,927.5

3,311.7

セメント・建材産業部門

6,157.6

5,387.0

1,293.9

783.5

建設部門

712.6

787.0

1.0

15.2

不動産投資開発部門

595.5

397.0

188.8

83.1

ホテル経営部門

1,643.6

1,603.3

334.8

286.7

運用サービス部門及びその他

1,599.0

1,140.3

(6.0)

370.2

 

30,796.9

30,490.7

4,740.0

4,850.4

 

 

 

 

 

 

 

(a)公益事業部門

公益事業部門の収益は、前年度の21,176.1百万マレーシア・リンギットに対して、当年度は20,088.6百万マレーシア・リンギットを計上した。これは主に、発電事業部門の収益の減少によるものであり、プール価格及び小売価格の下落に加え、マレーシア・リンギットがシンガポール・ドルに対して上昇したことが影響している。

 

これは、英国規制当局による料金引上げの許可及びランヒルからの収益寄与を受けた上下水道事業の収益が増加したことで、一部相殺された。また、通信事業部門においても、プロジェクト収益の増加を主因として、前年度を上回る収益を計上した。

 

公益事業部門における当年度の税引前利益は2,927.5百万マレーシア・リンギットとなり、前年度の3,311.7百万マレーシア・リンギットから減少した。これは主に、発電事業部門の業績低下によるものである。

 

しかし、上下水道事業部門は、規制当局による料金引上げの許可に加え、インデックス連動債におけるインフレ圧力の継続的な緩和及びランヒルからの収益寄与を受けて、当年度は黒字転換した。一方、通信事業部門は、プロジェクト収益の増加により、税引前損失を縮小した。

公益事業部門は、引き続き当グループ最大の事業部門であり、当年度の売上高及び税引前利益は、前年度のそれぞれ69%及び68%に対して、それぞれ65%及び62%を占めている。

 

(b)セメント及び建材産業部門

セメント及び建材産業部門の収益は、前年度の 5.387.0百万マレーシア・リンギットに対して、当年度は6,157.6百万マレーシア・リンギットを、当年度の税引前利益は、前年度の783.5百万マレーシア・リンギットに対して1,293.9百万マレーシア・リンギットをそれぞれ計上した。

 

収益及び税引前利益の増加は、主に2024年10月1日のNSL買収完了に伴う業績の連結によるものである。また、運営効率化投資及びESGを重視した改善施策を含む継続的な効率向上の取組みに加え、前年度におけるラワン工場における減損損失の縮小も業績改善の一因となった。

 

当年度について、セメント及び建材産業部門は、収益について当グループで第二位の事業部門であり、収益及び税引前利益は、前年度のそれぞれ18%及び16%に対して、当年度はそれぞれ20%及び27%を占めている。

 

(c)建設部門

建設部門の収益は、前年度の787.0百万マレーシア・リンギットに対して当年度は712.6百万マレーシア・リンギットをそれぞれ計上し減収となった。また、当年度の税引前利益も、前年度の15.2百万マレーシア・リンギットを下回り、1.0百万マレーシア・リンギットとなった。収益及び税引前利益の減少は、当年度中に第三者契約が完了したことによるものである。

 

(d)不動産投資開発部門

不動産投資開発部門の収益は、前年度の397.0百万マレーシア・リンギットに対して、当年度は595.5百万マレーシア・リンギットをそれぞれ計上した。収益の増加は、セランゴール州で進行中のプロジェクトからの収益認識の増加、英国の開発プロジェクトにおける売上拡大及びオフィスビルの売却完了によるものである。

当年度の同部門は、前年度の83.1百万マレーシア・リンギットの税引前利益に対して、188.8百万マレーシア・リンギットの税引前利益を計上した。これは、主に英国における投資不動産の公正価値の増加によるものである。

 

(e)ホテル経営部門

ホテル経営部門の収益は、前年度の1,603.3百万マレーシア・リンギットに対して、当年度は1,643.6百万マレーシア・リンギットに増加した。また、税引前利益は、前年度の286.7百万マレーシア・リンギットに対して、当年度は334.8百万マレーシア・リンギットに増加した。これは、主に主要ホテルにおける客室稼働率及び平均客室単価が全体的に上昇したことによるものである。

 

(f)運用サービス部門及びその他

運用サービス部門及びその他の収益は、前年度の1,140.3百万マレーシア・リンギットに対して当年度は1,599.0百万マレーシア・リンギットをそれぞれ計上した。これは、主にランヒルによって計上されたコンサルティングサービスの売上げによるものである。

 

収益が増加したものの、当年度において税引前損失6.0百万マレーシア・リンギットを計上し、前年度の税引前利益370.2百万マレーシア・リンギットから減少した。これは主に、ヨルダンのプロジェクト事業体に対して実行された株主ローンに起因する未実現為替差損(非現金項目)によるものであり、一方で、ジョイントベンチャーからの持分利益の増加により、一部その影響が相殺された。

 

各部門の状況

 

公益事業部門

発電事業

シンガポール

当年度において、YTLパワーセラヤ及びその子会社(以下「YTLパワーセラヤ・グループ」という。)は、電力10,626ギガワット時の電力を販売し、前年とほぼ同水準を維持した。前年度において計画発電量に基づく市場シェアは18.5%であった。電力市場は比較的安定して推移しており、シンガポール卸電力市場では、電力供給が急増した暑い月を除き、価格変動も小幅であった。

 

YTLパワーセラヤの電力小売事業者であるジェネコは、家庭用・商業用・工業用の消費者で構成される電力小売市場において、当年度は13.2%の小売電力市場シェア(システム総需要に対する小売量の割合で算出。)を占めた。また、当年度の販売量は7,688ギガワット時であった。

 

住宅部門では、ジェネコが再び、シンガポールのオープン電力市場(OEM)において、EMAから大手電力小売業者として正式に発表されており、2025年6月30日現在、市場シェア29.7%を占め、稼働中の住宅顧客数は172,758件に達した。

複合火力及びコージェネレーション設備における定期的な大規模・小規模保守点検の適時実施により、設備の信頼性が引き続き確保された。これらの取組みは、今後建設される出力600メガワットの水素対応ガスタービン・コンバインドサイクル発電所にも拡大される予定であり、今後30年間にわたり、関連共通システムの長期的な信頼性を確保することに重点が置かれている。2024年10月23日、YTLパワーセラヤが新発電所の起工式を実施し、当プロジェクトにおいて重要な節目を迎えた。完成後、当該発電所はシンガポールのカーボンニュートラル目標を支える重要な基盤となるとともに、当グループの低炭素戦略の中核となる見込みである。

 

持続可能な未来の実現に向け、研究機関及び主要な水素関連パートナーとの共同による実現可能性調査を基盤に、低炭素水素の試作開発に関する取組みも進められている。

 

プラウ・セラヤ発電所において最近完成した出力4メガワットピーク(MWp)の太陽光発電設備は、エネルギー効率の向上及びグリーン電力への移行をさらに推進するものである。同時に、直接排出量の削減及び長期的な脱炭素化の取組みを強化するため、炭素回収の機会についても積極的な検討が進められている。また、YTLパワーセラヤ・グループは、発電プロセスで使用される水を対象としたコージェネレーション用水処理リサイクルプロジェクトにも着手する予定である。

 

オペレーターの生産性は、デジタル化変革の取組みにより向上しており、リアルタイムのパフォーマンスダッシュボードを活用することで重要な知見を得ており、データに基づく迅速な意思決定を可能になっている。資産点検にはドローン技術を導入し、人力、高所等の危険を伴う作業の必要性を低減することで、安全性、効率性及び信頼性の向上が図られている。

 

知識集約型の業務運営をさらに支援するため、当グループのAIソリューション部門であるYTL AIラボ・センドリアン・バーハッド(以下「YTL AIラボ」という。)と共同で、ナレッジマネジメントシステム(KMS)の技術基盤を開発した。当該システムは既存のドキュメントライブラリを基盤として構築されており、情報への迅速なアクセスを可能にするとともに、組織全体における意思決定スピードを高めている。

 

品質、環境、エネルギー、労働安全衛生及びサイバーセキュリティの各管理システムにおいて、高水準の基準を維持することに引き続き重点が置かれている。取得した認証には、ISO 9001、ISO 14001、ISO 27001、ISO 45001、BizSafe Star及びSS 651が含まれる。さらに、シンガポール国家環境庁(NEA)のエネルギーマネジメントシステム(EnMS)要件に準拠し、ISO 50001の監査適合を達成した。

 

当グループの燃料管理部門は、スマート石油貯蔵ターミナルの構築に向けた戦略的な取組みを継続し、当年度は顕著な業績を達成した。この取組みにより、当年度の燃料石油及びディーゼル燃料の取扱量は11.13百万トンとなり、前年度の10.31百万トンから増加した。また、燃料船及び貨物船の停泊量も増加し、前年度の969隻に対して当年度は1,029隻に増加した。また、停泊所の平均利用率は前年度の52.97%に対して当年度は55.94%に増加した。

 

マレーシア

ランヒル・グループは、電力購入契約に定められた業績指標を引き続き上回る成果を上げており、当年度における累計送電量は2,603ギガワット時に達した。同グループが運営する2基の発電所の合計発電容量は380メガワットに上り、契約先であるサバ・エレクトリシティ・センドリアン・バーハッド(以下「SESB」という。)に電力を供給する能力を有している。これは、サバ州における独立系発電事業者(IPP)の総設備容量の約25%に相当し、ランヒルは同州最大のIPP事業者となっている。

 

両発電所はISO 45001認証を取得しており、労働安全衛生の観点だけでなく、周辺地域社会及び自然環境の安全を重視するという、揺るぎない姿勢を反映している。

 

ヒートレート削減に向けた取組みを継続的に実施しており、これにより環境面での持続可能性及び規制遵守を支えるとともに、発電事業の長期的な信頼性及び収益性の向上を図った。また、両発電所においては、資産の改修及び更新、施設及び付帯設備の拡充、安全システム及び補助システムの信頼性向上等の保守作業を継続的に実施した。

 

再生可能エネルギー

ランヒルのマレーシアのペラ州ビドールにおける大規模太陽光発電所(LSS4)は、2024年2月に商業運転を開始し、国の電力網へのクリーンエネルギー供給を開始した。ランヒルによる当該プロジェクトの成功裏な稼働開始は重要な一歩であり、新たな収益源をもたらすとともに、同社が設計・建設・稼働を主導し、現在は運転・保守(O&M)も担う実績ある太陽光発電事業者としての信用を裏付けるものである。

 

当該プロジェクトは、ランヒルが自社内に運転・保守(O&M)部門を設立する道を開き、今後、太陽光発電所向けのエンジニアリング、調達、建設及び試運転(EPCC)ソリューションを一貫して提供する事業者としての価値提案をさらに強化することとなった。

 

一方、YTLパワー・グループも、ジョホール州クーライに所在するYTLグリーン・データセンター・パークに電力を供給するため、最大発電容量500メガワットの太陽光発電施設の開発を進めている。当該太陽光プロジェクトは、データセンターの需要に応じて段階的に開発が進められており、当年度中に第1フェーズが着工された。

 

上下水道事業

英国

ウェセックス・ウォーターは、水道事業管理庁(Ofwat)の顧客体験評価指標であるC-MeXにおいて、2024-2025年度のスコアで全17社中第2位となった。C-MeXにおける一貫した高評価により、2020-2025年の料金査定期間中、毎年すべての水道会社の中で上位3位入りを果たしている。英国では、公共及び政治的な監視の高まりを背景に業界全体の傾向として顧客評価が低下しているものの、イングランド及びウェールズの水道消費者の独立した代表機関であるCCWは、ウェセックス・ウォーターの顧客の間で信頼が回復しつつあることを認めている。

 

また、飲料水検査局(DWI)は、水質適合リスク指数において、ウェセックス・ウォーターに業界内で最高水準の評価を授与した。

 

当部門の水効率向上のための啓発プログラム(家庭訪問点検及び事業者訪問を含む。)は、良好な成果を上げている。貯水池及び帯水層の水位は、平均を上回る降雨が続いた結果、良好な状態を維持している。しかし、長期的に安定した給水を確保するためには、1人当たりの水消費量及び供給ネットワークからの漏水の双方を積極的に削減する必要がある。当年度の断水実績は、多数の顧客に大きな影響を与えた2件の重大事故によって影響を受けた。

 

漏水削減の実績は、2020-2025年の料金査定期間の最初の3年間で目標を上回ったが、その後は低下し、残りの2年間では目標を下回った。1人当たりの水消費量は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック期間中の在宅勤務による初期的な増加にもかかわらず、期間終了時には目標に対して良好な水準であった。顧客の節水施策による節水量は、再び目標を達成又は上回った。

 

当年度中に重大な汚染事故は発生しなかったが、激しい長雨に伴い、軽度の汚染事故は増加した。年間の降雨量は、特に集中豪雨時において、ウェセックス・ウォーターの下水道ネットワークに影響を及ぼした。その結果、下水氾濫に関する各種の業績目標の達成状況に影響があったが、下水氾濫リスクを軽減するために、排水システムの強化、洪水対策プロジェクト、地域住民との連携、グリーンインフラの整備等、複数の重要な施策が実施された。

 

これらの取組みにより、複数の地域において下水氾濫の発生頻度は大幅に低減され、異常気象の影響から地域社会を守るという当部門の姿勢が明確に示されている。一方で、さらなる改善も必要であり、今後は予防保全の実施に加え、下水の不適切な使用を防止するための地域社会との連携が不可欠となる。

 

ウェセックス・ウォーターは、雨水越流水改善計画及び水再生処理場の増強に、総額2億ポンド超を投資した。その内訳には、ホールデンハースト水再生センターにおける新設の容量9,000立方メートルの雨水貯留タンクへの1,600万ポンドの投資が含まれている。

 

当部門は、監視体制の強化にも一層の投資を行っており、下水管内モニターの設置数を約3,000基から1万基へと拡大し、問題の早期警戒能力の向上を図っている。強化された保守プログラム、顧客の行動変容を促すインセンティブ施策及び新たな「発生源対策(solve at source)」戦略と併せて、これらの施策は下水流域の管理に対する包括的なアプローチを構成している。

 

マレーシア

当グループのマレーシアにおける主要な水事業は、ランヒルが80%の持分を保有する子会社ランヒルSAJ センドリアン・バーハッド(以下「ランヒルSAJ」という。)の事業活動によって構成されている。ランヒルSAJはジョホール州における唯一の水道事業者として、原水取水、浄水処理、配水及び販売を行い、ジョホール州全域の水供給ネットワークを運営している。

 

ランヒルSAJは、州全域で47か所の浄水場(以下「WTP」という。)を運営しており、その総処理能力は1日当たり23.52億リットルに達する。2025年6月30日時点において、ランヒルSAJのネットワークは、749基の貯水池及び総延長24,418キロメートルの配水管網から構成されており、ジョホール州内の約400万人の住民及び各産業に処理水を供給している。ジョホール州は、非収益水(以下「NRW」という。)率がわずか24.2%と、マレーシアで最も低い水準を維持し続けている。

 

2024年7月から同年12月までの期間における水消費量は277.6百万立方メートルであり、2025年1月から6月にかけては278.5百万立方メートルへと増加した。

 

当該期間におけるデータは、水使用量の明らかな増加傾向を示しており、需要の持続的な拡大を反映している。消費量の緩やかな増加は、主としてジョホール州における人口増加及び州全域にわたる産業・商業活動の活発化によって推進されたものである。特に顕著な増加が見られたのは、イスカンダル地域、州都ジョホールバル及びセデナックであった。

 

前年度におけるNRWの達成率は24.1%であり、国立水道サービス委員会(Suruhanjaya Perkhidmatan Air Negara)(以下「SPAN」という。)が設定した目標25.0%を下回った。2024年1月から2025年6月までの18か月間の達成率は24.2%であり、目標24.5%を下回った。2025年6月時点での現状の達成率は24.2%で、2025年12月の目標24.5%を下回っている。

 

これまでの達成実績により、ランヒルSAJは、NRW削減プログラム全体からSPANのマッチング助成金の対象資格を得ることができた。

 

十分な取水及び安定した水供給を確保するための取組みは、既存の水道システム及びインフラの継続的な拡張及び改良を伴う。ランヒルSAJは、SPAN並びに連邦政府及び州政府の支援を受けつつ、WTP、河道外貯留施設(ORS)及びその他関連インフラ整備プロジェクトの建設を着実に進めている。2025年の主な取組みとしては、マワイ・ゲンブット原水輸送プロジェクト並びにスンガイ・ルバック及びポンティアンのORSプロジェクトが挙げられる。これら3件のプロジェクトはいずれも連邦政府によって実施されている。

 

ランヒル・グループは、再生可能エネルギーの活用にも取り組んでおり、オフィスビル及びWTPの屋上に太陽光パネルを設置し、電力網からの電力依存を段階的に低減する施策を推進している。かかる取組みは、2050年までのカーボンニュートラル達成という国家目標と整合するとともに、グループの脱炭素戦略にも沿ったものである。

 

その他の国々

ランヒル・グループのタイにおける事業は、アマタシティ、チョンブリ及びラヨンに所在するアマタ工業団地内の水道・下水道・再生水処理施設10か所で構成される。これまでに、ランヒルは国際的な水道・下水道事業において、目標の400 MLDのうち386 MLD(達成率96.5%)を達成している。当該施設の総処理能力は119.1 MLDであり、その内訳は、水道・下水処理が101.6 MLD、再生水生産が17.5 MLDである。

 

中国において、ランヒルはランヒル・ウォーター(香港)リミテッド(Ranhill Water (Hong Kong) Ltd)の株式40%を保有しており、同社は15か所の産業用下水処理施設を所有及び運営しており、総処理能力は267 MLDである。ランヒルの中国における戦略的パートナーは、上海市政府の国有企業である上海市工業投資公司(Shanghai Industrial Investment Corporation)(以下「SIIC」という。)である。SIICは上海及びシンガポールの証券取引所に上場している。

 

特にアマタシティ・ラヨン工業団地における産業活動の活発化を受け、総受入下水量は前年同期比で増加した。また、受入下水量の増加には、産業事業者の間で環境持続可能性への意識向上、規制遵守及び節水の取組みが進んでいることも影響している。

 

電気通信事業

電気通信事業及びインフラ

YTLコミュニケーションズは、Yesブランドの下、マレーシア全土で高速4G及び5Gの無線通信サービス、光ファイバーブロードバンドサービス並びにその他の通信インフラサービスを提供している。

 

YTLコミュニケーションズは、2025年2月にシンガポールで開催された「アジアン・テレコム・アワード2025(Asian Telecom Awards 2025)」において、「B2Bクライアント・イニシアチブ・オブ・ザ・イヤー(B2B Client Initiative of the Year)」及び「イノベーティブ・コネクティビティ・ソリューション・オブ・ザ・イヤー(Innovative Connectivity Solution of the Year)」の2部門を受賞し、通信分野の革新における主導的地位をさらに強固なものにした。これらの受賞は、企業顧客に最先端の接続ソリューションを提供するというYTLコミュニケーションズの取組みを裏付けるものであり、Yes 5Gの変革的な可能性をマレーシア国内外の企業及び地域社会に活かしていく姿勢を示している。

 

また、YTLコミュニケーションズは、クラリオン・マレーシアにおいてインダストリー4.0を実現するため、マレーシア初のAI及びロボティクスを活用したプライベート5Gネットワークを構築した功績により、「5G-AxAI統合イノベーション賞(5G-AxAI Integrated Innovation Award)」を受賞し、GTIアワーズ2025において国際的な評価を得た。この世界的な栄誉は、スペイン・バルセロナで開催されたモバイル・ワールド・コングレス2025で授与されたものであり、YTLコミュニケーションズがマレーシア国内の顧客、産業、地域社会に対して革新的かつ実効性の高い企業向けソリューションを提供する上で、確固たるリーダーシップを発揮していることを示している。

 

当グループの「Yes #FirstTo5G」及び「Infinite」データプランは、データ使用量に制限がなく速度制限もない5G及び4Gデータを提供する点で、業界をリードしている。一方、「Infinite+」デバイスプランは、第5世代移動通信技術の導入を促進するものであり、低遅延かつ高速データ通信を実現するとともに、82%の安定した通信エリアを確保している。これらは、デジタル・ナショナル・バーハッド(Digital National Berhad)が構築した5Gホールセールネットワークを最大限に活用し、マレーシアのデジタル経済の実現に寄与している。

 

当部門は、手頃な料金のデータプランの提供を継続するとともに、革新的な5Gサービスを展開することにより、YTLコミュニケーションズの最新ネットワークアーキテクチャによる優れた経済性及びDNBのホールセールモデルによる規模の経済を背景に、パートナーシップ及び協業を活かして加入者基盤の拡大を目指している。

 

2025年3月、YTLコミュニケーションズは、デジタルインフラ企業であるエクイニクス・インク(Equinix Inc.)及びレーザー通信技術の先駆者であるトランセレスティアル(Transcelestial)と、2件の重要な基本合意書(MoU)を締結した。これらの戦略的提携は、マレーシア国内の企業に対し、接続性及びAI機能を全国規模で向上させ、より持続可能な形で革新的な技術ソリューションを提供することを目的としている。

 

YTLコミュニケーションズは、エクイニクスの(世界最大規模の)グローバル・ファブリックを通じて、国際的な顧客によるYTL AIクラウドへのアクセスを可能にし、地域におけるアクセラレーテッド・コンピューティングの需要拡大に対応する。エクイニクスの世界屈指のグローバル相互接続サービスを活用することで、企業はGPU-as-a-Service向けのYTL AIクラウドに対し、信頼性及び安全性の高いアクセスが可能となり、最新世代GPUへのオンデマンドアクセスを通じてAI導入を促進する。

 

YTLコミュニケーションズは、トランセレスティアルとの基本合意書(MoU)に基づき、同社の無線レーザー通信技術を活用するマレーシア初の通信事業者となり、光ファイバー並みの接続性及び新たな柔軟性を備えたネットワークを提供している。

 

インフラ分野において、YTLコミュニケーションズは、2025年2月に、通信インフラ分野の有力なイノベーターであるブリッシュ・エイム・グループ(Bullish Aim Group)と戦略的合弁事業を開始し、次世代共用ファイバーインフラの開発に取り組む。この画期的な提携は、高速接続及び強固なデータサービスに対する急増する需要に対応し、マレーシアをデジタル経済分野における地域的リーダーとして位置づけることを目的としている。

 

この提携により、データ伝送能力を強化し、通信事業者や企業のさらなる効率化を促進することを目的とした統合型光ファイバーネットワークが展開される。また、当該取組みはマレーシアのデジタル変革の目標とも整合しており、インフラの重複を削減し、サービスプロバイダーのコスト低減を図るとともに、より持続可能で包摂的な技術開発の推進を確保するものである。

 

YTLコミュニケーションズは、鉄道資産公社(Railway Assets Corporation)から、マレーシア国内の鉄道沿線1,600キロメートルにわたる光ファイバーインフラの整備契約を受注した。当該光ファイバーインフラは、パダンベサール-ジョホールバル間及びジョホールバル-トゥンパト間の鉄道路線に沿って整備される予定である。当該インフラは、国家ブロードバンド計画及び国家デジタル・ネットワーク計画(JENDELA)と整合し、国内のデジタル接続を支える基幹インフラとなる。

 

YTL AIクラウド

YTLコミュニケーションズは、当グループのAIクラウドコンピューティングプラットフォームも運営している。YTLコミュニケーションズの完全子会社であるYTL AIクラウドは、大規模GPUベースのアクセラレーテッド・コンピューティングに特化したクラウドサービスプロバイダーである。

 

2023年12月、当グループはエヌビディア・コーポレーション(以下「NVIDIA」という。)のジェンスン・フアン創業者兼最高経営責任者とマレーシアのYABダト・スリ・アンワル・ビン・イブラヒム首相との会談において、AIインフラの構築のためのNVIDIAとの提携を発表した。YTL AIクラウドの設立は2024年3月に発表された。

 

YTL AIクラウドは、NVIDIAのグレース・ブラックウェル(Grace Blackwell)搭載DGXクラウド上に、世界最先端のスーパーコンピューターの一つを展開し運用している。当該AIスーパーコンピューターは、AIの学習(トレーニング)及び推論(インファレンス)を加速することを目的としている。

 

YTLパワーは、NVIDIA GB200 NVL72(第5世代NVLinkを備えたマルチノード液冷型ラックスケールシステム)をいち早く導入した企業の一つである。当該スーパーコンピューターは、NVIDIAのQuantum InfiniBandネットワーキングプラットフォームによって相互接続される。当該プラットフォームは、1.4エクサフロップスのAI性能及び30TBの高速メモリを備えた単一GPUとして機能し、最も計算集約型のワークロード向けに設計されている。YTL AIスーパーコンピューターは、AI演算能力で300エクサフロップスを超え、世界最速級のスーパーコンピューターの一つとなる。

 

YTL AIスーパーコンピューターはYTLグリーン・データセンター・パークに設置され、AI/MLワークロード向けの拡張性が高く高性能のクラウドベースのソリューションに対する需要に対応する。また、同パークはジョホール州に位置することで、隣国シンガポールにある世界で最も高密度なネットワーク相互接続ポイントから50キロメートル圏内になる。

 

セメント及び建材産業部門

マレーシア事業

YTLセメント・グループは、マレーシアにおけるセメント事業及び生コンクリート事業を、上場子会社であるMCBを通じて展開している。MCBはブルサ・セキュリティーズのメイン・マーケットに上場しており、マレーシアを代表する建材グループとして認識されている。

 

MCBは、5つの統合セメント工場を運営しており、4か所の研磨基地、3か所のセメント・ターミナル及び2棟の倉庫からなる堅固なインフラに支えられている。セメント生産能力は年間22.3百万トンを誇り、戦略的に配置された各施設は、半島マレーシア全域にわたって包括的な市場カバレッジを提供している。MCBは、生コンクリート分野において主導的な立場にあり、60を超えるバッチ工場を運営し、700台以上の専用ミキサートラックで市場に供給している。

 

YTLセメントは、マレーシア最大の骨材及び採石業者であり、ECOSand(YTLセメントの環境配慮型の砂代替材)、単粒度及び粒度調整済みの骨材、バラスト、ストーンコラム、クラッシャーラン及び各種盛土材等を提供する。ドライミックス分野では、Quickmix®のECODrymix シリーズが国内における先駆的かつトップブランドとして際立っている。

 

NSLの子会社である イースタン・プレテック(マレーシア)センドリアン・バーハッド(Eastern Pretech (Malaysia) Sdn Bhd)は、YTLセメントの統合能力を強化する企業として、プレキャストコンクリート部材及びプレハブ浴室ユニットの製造及び施工を手掛ける主要事業者である。1989年の創業した同社は、国内に戦略的に配置された3か所の生産施設を基盤に、マレーシア及びシンガポール市場に迅速かつ効率的な供給を実現している。

 

これらの事業は一体となって、原材料の採取からコンクリートの配送、プレキャスト部材の施工に至るまで、垂直統合型の建材グループを形成している。当該統合により、YTLセメントはバリューチェーン全体を完全に掌握し、品質の一貫性向上、業務効率の改善、迅速なサービス対応を実現している。その結果、YTLセメントは、幅広い建設ニーズに対応するエンドツーエンドの建材ソリューションを顧客に提供できる体制を整えている。

 

YTLセメントの広範なネットワークは、道路、鉄道及び海路でシームレスに結ばれており、迅速な配送を支え、開発の可能性を最大化する効率的な物流エコシステムを形成している。YTLセメントは、ペトロナスツインタワー、ムルデカ118、シグネチャータワー106、KLタワー、SMARTトンネル、主要空港及び橋梁開発等、国内の象徴的なインフラプロジェクトの多くにおいて重要な役割を果たしてきた。

 

YTLセメントの環境・再生可能エネルギー事業は、ジオ・アラム・エンバイロメンタル・センドリアン・バーハッド(Geo Alam Environmental Sdn Bhd)(以下「ジオ・アラム」という。)及びグリーン・イネーブル・テクノロジー・センドリアン・バーハッド(Green Enable Technology Sdn Bhd)(以下「GET」という。)が行っている。ジオ・アラムは共同処理及び廃棄物管理の大手事業者であり、GETは再生可能エネルギーソリューションを専門としている。

 

YTLセメントは、セメント及びコンクリートソリューションの特化型研究開発施設であるコンストラクション・デベロップメント・ラボラトリー(CDL)を通じて、業界のイノベーション推進にも取り組んでいる。CDLは、顧客及び業界関係者と密接に連携し、脱炭素化及び持続可能な建築手法を含む業界の課題に取り組んでいる。

 

業界発展への取組みを支えるため、YTLセメントはCDLアカデミーを設立し、建設バリューチェーン全体の能力強化に取り組んでいる。同アカデミーは、専門的な研修プログラム並びに業界団体及び学術機関との連携を通じて、技術的卓越性、持続可能な実務及び継続的学習を推進している。

 

シンガポール事業

シンガポールにおいて、YTLセメントは、子会社を通じて、大手セメント供給業者である。当グループは、ジュロン港及びプラウ・ダマール・ラウトに4か所のセメント・ターミナルを保有しており、高度な混合・貯蔵・搬送システムを備えている。

 

YTL セメントは、生コンクリート及び骨材の主要サプライヤーでもあり、同社の ECOConcrete、ECOSand 及び採石製品は、各種ランドマークプロジェクトに広く使用されている。同社は、リゾート・ワールド・セントーサ、シンガポール鉄道試験センター、プラウ・テコン干拓地開発、深層トンネル下水道システム等の開発プロジェクトにおいて、統合的ソリューションを提供してきた確固たる実績を有している。また、多数の主要プロジェクトで採用される信頼性の高いドライミックスブランドJurcemにより、製品ポートフォリオをさらに強化している。

 

NSL の子会社であるイースタン・プレテック(マレーシア)センドリアン・バーハッドを通じ、YTL セメントはプレキャストコンクリートソリューションの大手プロバイダーとして、シンガポールにおける複数の主要データセンター及び産業プロジェクトに供給している。

 

NSL の子会社である NSLオイルケム・ウェイスト・マネジメント・プライベート・リミテッド(NSL OilChem Waste Management Pte Ltd)は、シンガポールにおいて有害産業廃棄物の処理及び物流を専門とする統合型環境サービスを提供している。同社は、化学産業及び陸上・海上輸送を含む重要分野にサービスを提供しており、油性廃棄物及び産業排水等、複雑な廃棄物の取扱いに関して高い専門性を有している。

 

ベトナム事業

フィコ・タイ・ニン・セメント・ジョイント・ストック・カンパニー(以下「Fico-YTL」という。)は、ベトナム南部に3か所ある一体型セメント生産者の一つであり、ホーチミン及びメコンデルタ地域への主要な供給業者である。Fico-YTLは、当年度においても、強力な製品ポートフォリオ及び効果的なコスト管理に支えられ、堅実な事業運営及び持続的な収益性を維持した。同社の資産には、1か所の一体型セメント工場及び2か所の研磨基地が含まれ、年間合計2.5百万トンの生産能力を有する。

 

他の国々における事業

NSLの子会社であるドバイ・プレキャスト合同会社(Dubai Precast LLC)は、アラブ首長国連邦(UAE)のプレキャストコンクリート市場における主要企業の一つである。同社は、住宅、商業施設、インフラ及び産業開発等、幅広い建設プロジェクトを支える革新的かつ効率的なプレキャスト建築システムを提供している。

 

フィンランドでは、パーマリン・オイ(Parmarine Oy)(NSLの子会社)が、スカンジナビア地域におけるプレハブ浴室ユニット及び船舶用防火扉の市場をリードしている。長年の実績を有し、建設業界及び海運産業向けに、高品質かつ機能的で設置が容易なソリューションを提供する企業として高く評価されている。

 

建設部門

インフラ事業

 ゲマス-ジョホールバル間の電化鉄道線の建設は、現在最終段階にある。SPYTLは、合弁事業のパートナーであるSIPPレイル・センドリアン・バーハッドと共に、ゲマスからジョホールバルまでの電化複線化プロジェクトの設計、建設、供給、設置、完成、検査、試運転及び保守管理を行う現地の下請業者に任命された。

 

ゲマスとジョホールバルを結ぶ鉄道は、世界水準の鉄道インフラを整備するためのマレーシアの構想の新たな重要な要素となることが予想される。約197キロメートルの複線路線、駅、電気車両、車庫、陸橋、橋、電化システム及び信号システムで構成される新しい鉄道は、完成時には、ゲマスとジョホールバル間の移動時間をわずか90分に短縮する。

 

ジョホールバルのケンパス・デポを横断する高架橋の設計・建設・完成に向けた作業も継続され、発注者であるペルバダナン・アセット・ケルタピ(Railway Assets Corporation)向けに進められた。

 

YTLコンストラクションは、関連会社であるYTLコミュニケーションズとともに、サバ州におけるポイント・オブ・プレゼンス(PoP)及びギガビット・パッシブ・オプティカル・ネットワーク(GPON)の設計、資材供給、建設、設置、試運転及び保守を実施するため、マレーシア通信省(Kementerian Komunikasi)により主契約者として任命された。

 

当該プロジェクトは、サバ州全域の接続性を強化することを目的としており、高容量ネットワークインフラを未整備地域及び農村部に拡張することで、より広範なデジタルサービスへのアクセスを可能にするものである。当該プロジェクトは着実に進捗しており、計画された636拠点のうち500拠点が完了している。2025年末までに600拠点の完成を目指しており、残る拠点は主に離島等アクセスが困難な場所に位置しており、2026年第2四半期までに完成する見込みである。

 

民間事業

当グループは、ジョホール州クーライにおいてYTLグリーン・データセンター・パークの開発を引き続き順調に進めている。現在進行中の4つのフェーズのうち2つのフェーズが既に完成し、残る2つのフェーズは建設/試運転段階にある。同パークは段階的に整備が進められており、最終的には600メガワットの容量を備える計画である。

 

当年度において、SPYTLはワン・オリエンタル・プレイス(旧オリエンタル・バンクビル)の大規模改修を完了し、数十年の歴史を持つオフィスビルをモクシー・クアラルンプール・チャイナタウン(Moxy Kuala Lumpur Chinatown)という大胆かつモダンなライフスタイルホテルへと変貌させた。当該プロジェクトではアダプティブ・リユースを採用し、建物の構造フレームをそのまま活かすとともに、柱及びスラブ等の主要構造要素を保存することで、建設廃棄物を削減した。

 

既存の設備は、耐久性及び持続可能性を考慮して選定した高性能素材に交換された。旧建物の脱炭素化を図るため、機械設備及び電気設備は全面的に更新され、運用時のエネルギー効率を確保するとともに、長期的な資源保全に寄与している。また、建物の構造的な外形を変更することなく潜在能力を最大限に引き出すため、新たに床スラブを増設し、内部の延床面積を拡大した。さらに、1階から3階部分のファサードはガラスブロックを用いて再構築され、自然光を多く取り込むとともに、街路レベルにおいて清潔感のある現代的な外観を実現した。

 

ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)を活用し、建物を3Dでデジタル再現することで、計画、調整及び課題解決の精度を高めた。また、現場はクアラルンプールでも有数の交通量の多い道路に面していることから、歩行者の安全を確保するとともに、周辺コミュニティへの影響を最小限に抑えるため、安全対策の強化も必要とされた。

 

複雑なプロジェクトであったにもかかわらず、ホテルはわずか12か月で完成しており、これは新築工事に通常必要となる工期のおおむね半分である。こうした迅速な施工及び環境負荷の低い建設プロセスの実現は、アダプティブ・リユースが持つ持続可能な開発手法としての有効性を明確に示すものである。

 

SPYTLは、YTLホスピタリティREIT向けに、改称後のACホテル・イポー(旧シューン・ホテル)の改修工事を無事完了した。また、プチョンのホテルにおいても改修工事を開始しており、同ホテルはACホテル・プチョンとして再開業する予定である。

 

住宅事業

SPYTLがクアサ・ダマンサラで進める住宅プロジェクトは、従業員積立基金(EPF)の完全子会社であるクワサ・ランド・センドリアン・バーハッド(以下「クワサ・ランド」という。)との協働の下、計画どおりに進捗している。クワサ・ダマンサラは、クワサ・ランドがマスターデベロッパーを務め、将来的に住宅・商業・複合用途プロジェクトで構成される、緑豊かで包括的かつ一体感のある居住地区である。その戦略的立地は、スバン空港、クワサ・セントラル駅及びクワサ・ダマンサラ駅、4つの高速道路網等の主要交通インフラによって支えられている。

 

12.7エーカー(デダウン・リンバ)の開発は、2024年2月に開始され、開発総額が2億マレーシア・リンギットと見込まれている。当該プロジェクトでは、68戸の3階建てリンクハウス及び196戸の1.5階建てタウンハウスからなる264戸の住宅ユニットが建設される。同開発では、当グループの美的感覚及び開発プロジェクトの環境に配慮した、モダンかつミニマルなデザインが特徴である。

 

一方、プチョンのレイク・エッジ近郊の32階建てサービス付きアパートメント「ダナウ・プチョン」は、全428戸の低密度かつゲート・警備付きのエンクレーブであり、2027年の完成を予定している。

 

イポーのベルチャムにおける住宅開発プロジェクト「オリーブ・グローブ」では、380戸の2階建てリンクハウスから成る開発が予定どおり進捗している。フェーズ1(132戸)は昨年完了しており、フェーズ2(119戸)及びフェーズ3(129戸)が現在建設中である。

 

不動産投資開発部門

不動産開発-マレーシア

当グループは、クアラルンプール市街地からわずか5キロメートルに位置する250エーカーの一等地(自由所有権)を基盤とするスントゥル・マスタープランに基づき、スントゥルの再開発に引き続き長期的に取り組んでいる。スントゥルは、住宅、商業施設、複合施設を戦略的に組み合わせることで、活気ある都市拠点へと着実に進化している。また、4つの鉄道路線及び都市高速道路網による優れた交通アクセスが、地域の持続的な成長及び居住性を支え、その魅力をさらに高めている。

 

スントゥル再開発の重要な柱となっているのが、スントゥル・ウエストに保有する鉄道関連土地資産の戦略的収益化である。かかる取組みは、持続的かつ安定的な収益をもたらすだけでなく、現代のライフスタイルニーズに応えるものとなっている。さらに、その中核をなすのが、当グループのプレイスメイキング戦略の要となる歴史的建造物のアダプティブ・リユースである。

 

スントゥル・デポは、再生された文化・商業拠点として、全国的な認知度を着実に高めている。2025年6月には、スントゥル・デポのワークショップ2において「ピックル・デポ」及び「パデル・デポ」が開業し、歴史的施設に新たな魅力が加わった。これにより、マレーシア初となる都市型の本格的なピックルボール及びパデル施設(いずれも世界で急速に人気が高まっているスポーツである。)が誕生し、再活用された空間の積極的かつ包摂的な利用を通じて、地域コミュニティとの関わりも一層促進されている。

 

スントゥル・ワークスは、歴史的建造物を軸とした保全のベンチマークとなるプロジェクトである。老朽化したコロニアル建築を完全賃貸のヘリテージオフィスビルへと再生させたことで、権威ある賞により評価を得ている。受賞実績には、「マレーシア・プロパティ・アワード2024(Malaysia Property Award 2024)」のヘリテージ部門及びオフィス部門でのダブル受賞並びに「FIABCIプリ・デクセランス・アワード2025(FIABCI Prix d'Excellence Awards 2025)」のワールドシルバー賞が含まれる。当該プロジェクトは、遺産保全を通じて持続可能かつ長期的な都市価値を創出するという、当グループのビジョンを具体化するものである。

 

これらの成果は総じて、綿密なマスタープラン策定、持続可能な手法、そして地域社会を重視した設計を指針として、都市再生に取り組む当グループの揺るぎない姿勢を示している。

 

マレーシアの不動産市場が2025年に持続的な成長段階に入る中、当グループは、変化する経済環境及び進化する顧客ニーズに対応するため、イノベーションの導入及び業務の柔軟性を活かした戦略的かつ先見的なアプローチを継続している。こうした動向は、競争の激しい市場において差別化された製品を提供する上で、レジリエンス、顧客重視の姿勢、そして強いコミットメントの重要性を浮き彫りにしている。

 

スントゥル・イーストのd2は、当グループが新たに手がける商業開発プロジェクトであり、スントゥルを活気ある交通指向型都市拠点へと再生する都市再開発をさらに促進するものとなる。

 

2026年の開業を予定しているスントゥル・イーストのd2は、ジャラン・スントゥル沿いの一等地(自由所有権)に位置する低密度開発である。338戸の小規模オフィス/ホームオフィス(SOHO)及び13戸の商業区画で構成され、生活及び仕事を統合したライフスタイルを求める新世代の都市居住者向けに設計されている。柔軟に利用可能なSOHO空間、生活利便施設、公共交通との接続性を備え、成長著しいセグメントの需要を捉える好立地に位置している。

 

当グループは現在3件の開発プロジェクトを進行中であり、いずれも市場から高い評価を得ている。こうした強い追い風を背景に、当グループは、戦略的かつ需要の高い立地において、競争力のある価格設定で緻密に設計された住宅を提供し続ける体制を着実に整えている。

 

クワサ・ダマンサラのデダウン・リンバは、完売となった低密度の住宅開発であり、成長戦略上の要所において高い需要を持つ質の高い住宅を提供する当グループの強みを示すものである。同プロジェクトは、3階建てリンクハウスが68戸、1.5階建てタウンハウスが196戸からなる全264戸の住宅ユニットとなっており、景観緑地を囲むように配慮された配置で計画されている。

 

戦略的な立地にあるデダウン・リンバは、主要高速道路による優れた交通アクセスを有するとともに、クアサ・ダマンサラでクラン・バレーの2本のMRT路線が交差する地点に近接し、2つのMRT駅が徒歩圏に位置するという独自の利点を備えている。GDVは200百万マレーシア・リンギットであり、2026年の完成に向け順調に進行中である。

 

ダナウ・プチョンは、プチョンにおいて当グループが開発した既存コミュニティであるレイク・エッジに隣接する戦略的な立地に位置するサービス付アパートメント開発であり、GDVは200百万マレーシア・リンギットである。3エーカーの敷地に計画された低密度開発であり、2棟の高層タワーから構成され、総戸数は428戸となっている。間取りは1ベッドルームから3ベッドルームまで取り揃え、延床面積は566平方フィートから999平方フィートまで幅広く用意されている。

 

現在建設中である当該プロジェクトは、完成後、当グループの住宅ポートフォリオを強化し、プチョン市場における存在感をさらに高めることが見込まれている。

 

クラン・バレー外では、イポーのベルチャムにおける「オリーブ・グローブ」は、同タウンシップ初の門のある警備付きの団地であり、2階建てリンクハウス380戸で構成され、総開発額(GDV)は180百万マレーシア・リンギットである。フェーズ1(132戸)は予定より早く完成し、2025年1月に購入者へ引き渡された。フェーズ2(119戸)は完売済みである。フェーズ3(129戸)では造成工事が進行中で、販売も開始されている。当該プロジェクトは、買い手の強い信頼を反映するとともに、新規成長市場において高品質な戸建住宅を提供する当グループの実力を示すものである。

 

不動産開発-英国

当グループは、旧フィルトン飛行場において、英国最大級の開発基本計画を進めている。ブラバゾン・ブリストルは380エーカーの複合都市開発であり、当グループの英国初の不動産開発プロジェクトである。

 

当年度の受賞は地域及び全国規模の表彰にわたり、ブリストル・プロパティ・アワーズ(Bristol Property Awards)における「デベロッパー・オブ・ザ・イヤー 2024(Developer of the Year 2024)」及び「ウィナー・オブ・ウィナーズ(Winner of Winners)」をはじめ、国内では2025プランニング・アワーズ(2025 Planning Awards)の「ベスト・ユーズ・オブ・ブラウンフィールド(Best Use of Brownfield Land)」、デザイン優秀性を評価するブリック・アワーズ(Brick Awards)等が含まれる。

 

当グループは、第1フェーズである「ザ・ハンガー・ディストリクト」を無事に完成させ、当該フェーズは127戸の戸建住宅及び175戸のアパートメントの合計302戸で構成されている。自宅用購入者に加え、ブラバゾンでは賃貸市場も拡大しており、これは主に114戸のアパートメント棟「ザ・ダイヤルズ(The Dials)」の完成によるものである。

 

次のフェーズである「ザ・ヘリテージ・ディストリクト(The Heritage District)」は、100戸超の戸建住宅で構成され、販売はこれまで同様の段階的戦略で進められる。また、初の専用賃貸住宅(Build-to-Rent、BTR)プロジェクトの建設も開始される予定で、189戸のアパートメント及び7戸の戸建住宅により、当部門の賃貸ポートフォリオが拡充される。

 

1,514床の目的別学生寮(「PBSA」)計画は、ブラバゾンの既存の交通インフラを通じて英国の主要な大学キャンパスへの利便性を活かしており、高い需要が見込まれるブラバゾン市場に対応している。同開発は現在建設中で、第1フェーズ(750床)は2026年9月の入居開始を予定し、最終フェーズ(764床)はその翌年の完成を目指している。

 

商業開発段階においては、ブラバゾンでの最初のグレードAオフィスビルの建設に向け、既に計画承認を取得しており、2025年末の着工を目指している。さらに、2025年9月には追加の20万平方フィートのオフィスビル計画を提出した。当該ビルには、1階の主力テナントとしてウェイトローズ(Waitrose)との間で30,000平方フィートの事前賃貸契約を締結済みである。加えて、70,000平方フィート規模の最先端産業用試験施設に関する事前賃貸契約も最終調整が進んでおり、当グループの商業開発ポートフォリオ拡大に向けた重要なマイルストーンとなる。

 

当グループは、YTLアリーナ・ブリストルの開発についても着実に前進している。現在、本格的な建設工事に向けて、不要構造物の解体を含む準備工事が進行しており、主要な関連インフラの整備も進んでいる。

 

当グループは、開発の推進力を維持するため、主要インフラに多額の投資を行っている。30メガボルトアンペア(MVA)超の電力供給を確保したほか、ブラバゾン東側エリアを支える主要道路及び下水道を完成させた。これにより、継続的な開発が可能となり、将来的なYTLアリーナ・ブリストルの開業も支援することとなる。また、英国政府が資金提供するブラバゾン駅は、主要請負業者であるBAMのもと建設が進んでおり、2026年9月の開業を予定している。

 

不動産投資

当社は、シンガポール証券取引所のメイン・ボードに上場しているスターヒル・グローバルREITに対して37.46%(2025年6月30日現在)の実効持分を保有している。

 

スターヒル・グローバルREITは、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、日本及び中国で小売店舗及びオフィス不動産を所有している。スターヒル・グローバルREITの運用会社であるYTLスターヒル・グローバルREITマネジメント・リミテッドは、当グループの完全子会社である。

 

スターヒル・グローバルREITの不動産ポートフォリオは、2025年6月30日現在、27.5億シンガポール・ドルと査定され、昨年以降、比較的安定している。当該REITの1口あたりの配当は、前年度から0.6%上昇し、当年度は0.0365シンガポール・ドルであった。

 

ホテル経営部門

YTLホテルズ・グループ

戦略的成長と卓越性の一年

2025年6月30日に終了した当年度は、YTLホテルズにとって、持続的な成長、戦略的な事業拡大、そして卓越性への揺るぎない取組みによって特徴づけられる、極めて成果の大きい一年となった。当グループのポートフォリオは現在、8か国に35の施設、総客室数7,000室超にまで拡大しており、グローバル・ホスピタリティ業界におけるリーダーとしての地位を一層確固たるものとしている。

 

マレーシア、東南アジア随一の観光地として台頭

マレーシアの観光業は2025年、重要な節目を迎えた。中国本土からの来訪者だけでも1,000万人を突破し、タイを抜いて、東南アジアで最も訪問者の多い観光地となった。この成果は、特にピークシーズンにおける滞在期間の長期化及び消費額の増加に支えられた、マレーシアの魅力の高まりを明確に示すものである。

 

2024年にはインサイダー・モンキー誌により「アジアで最も愛される国(Asia's Most Loved Country)」に選出されており、マレーシアの観光は、中国のビザ免除措置及び航空アクセスの改善により追い風となった。香港及びシンガポールといったアジア主要ハブからスルタン・アブドゥル・アジズ・シャー空港(スバン)への増便により、レジャー及びビジネス双方の旅行者にとってアクセスが大幅に向上し、当グループの戦略的立地にあるホテルは、目の肥えた旅行者に好まれる宿泊先となっている。

 

強固なポートフォリオパフォーマンスとサステナビリティにおけるリーダーシップ

YTLホテルズは、レジャー旅行及び法人需要の高まりを背景に、全ホテルで堅調な業績を上げ、客室稼働率及び平均客室単価の大幅な向上を達成した。当グループはホスピタリティの卓越性にとどまらず、環境保全への取組みにも引き続き深くコミットしている。海洋センター(Marine Centre)、野生動物・自然保護センター(Wildlife and Nature Conservation Centers)、そして今年で10周年を迎えるタンジョン・ジャラ・リゾート・タートル・ハッチャリー(Tanjong Jara Resort Turtle Hatchery)等の取組みを通じ、これまでに1,300超の巣を保護し、110,965個の卵を保全し、83,772匹の幼体を無事に野生へ放流してきた。

 

戦略的事業拡大による当グループのグローバル展開強化

2025年2月には、ACホテル・バイ・マリオット・イポーが開業し、同ブランドならではの目的性のあるデザイン及び直感的なサービスを市場に提供した。国際展開も、山岳観光の需要拡大を背景に、日本におけるモクシー・ホテル・ニセコビレッジ(Moxy Hotel Niseko Village)の開発を進めている。

 

主要施設における卓越した業績

当グループのクアラルンプールのホテルは当年度も卓越した業績を維持し、JWマリオット・クアラルンプール、ザ・リッツ・カールトン・クアラルンプール、ザ・マジェスティック・ホテル・クアラルンプール及びホテル・ストライプス・クアラルンプールはいずれも力強い二桁成長を達成した。この好業績を支えた主な要因は、MICE部門からの堅調な需要及び国際イベントの回調である。

 

首都圏以外においても、当グループのリゾート施設は主要顧客層において堅調なポジショニングを維持した。国内のステイケーション需要に加え、英国、欧州及びアジアの主要市場からの国際的なゲストも、当グループならではのホスピタリティを引き続き支持した。当グループのラグジュアリーブランドとしての評価は、パンコール・ラウト・リゾートにおけるヴィラの全面改修、キャメロン・ハイランズ・リゾートにおける専用スパスイートの導入等、入念に検討された施設拡充により一層高まった。各開発プロジェクトは、ゲスト体験の向上を図るとともに、オーダーメイド型ホスピタリティへの当グループの取組みを明確に示す形で構想されている。

 

本物の体験で創る大切な瞬間

当グループは、YTLホテルズ・グループの「大切な場所で、大切な瞬間を(Treasured Places, Treasured Moments)」の理念に基づき、毎年恒例のシグネチャーイベント、没入型文化プログラム、持続可能なエコツーリズムの取組み、そして地域に根ざした美食の提供を通じて、一貫して卓越した体験を提供してきた。この揺るぎない取組みにより、ゲストのロイヤルティはさらに深まり、YTLホテルズはラグジュアリーホスピタリティの世界的地位を確固たるものにするとともに、株主に対しても大きな価値を創出している。

 

ラグジュアリーホスピタリティにおける比類なき卓越の一年

当年度は、YTLホテルズにとって並外れた成果を収めた一年であり、世界各地における同グループのホテルがラグジュアリーホスピタリティにおける新たな基準を打ち立て、権威ある賞を受賞し、卓越した財務実績を達成した。YTLホテルズの卓越性、イノベーション、そして持続可能性への揺るぎない取組みにより、ラグジュアリー旅行分野におけるグローバルリーダーとしての地位はさらに強化され、同ホテル及びリゾートは世界最高水準の施設として継続的に評価されている。

 

当年度において、YTLホテルズの卓越した施設ポートフォリオは、世界の各市場においてラグジュアリーホスピタリティを引き続き再定義し、卓越したゲスト体験を提供するとともに、堅調な財務実績を達成した。同社が有する象徴的なホテル及びリゾートのコレクションは、卓越性に対する評価を維持しただけでなく、今日の目の肥えた旅行者の進化する需要に見事に対応している。

 

ニセコビレッジは、ミシュランキーを獲得した東山ニセコビレッジ・ア・リッツ・カールトン・リザーブを日本における卓越したポートフォリオの中核に据え、ラグジュアリーなアルプスホスピタリティの基準を引き続き打ち立てている。当年度、ヒルトン・ニセコビレッジ、ザ・グリーンリーフ・ニセコビレッジ、そしてヒノデヒルズ・ニセコビレッジ、カサラニセコビレッジ・タウンハウスのプレミアムレジデンスで構成される当グループの統合型リゾートは、主要な全指標において卓越した業績を達成し、年間を通じて高い稼働率を示し、高水準の客室単価を維持した。

 

二つのシーズンにわたる魅力は引き続き成功の礎となっており、世界屈指のウィンタースポーツに加え、近年人気が高まる夏期アクティビティも提供している。ニセコ世ライフスタイル区域は、ゲスト体験を一層向上させ、滞在期間の長期化及び消費額の増加を促進している。

 

今後開業予定のモクシー・ホテル及び継続的な設備拡充により、YTLホテルズはプレミアムなマウンテンリゾート体験に対する需要拡大を最大限に活用できる理想的な立場にある。当グループの住宅開発事業の継続的な成功に、受賞歴を誇る東山ニセコビレッジ・ア・リッツ・カールトン・リザーブの卓越性が相まって、ニセコビレッジは世界水準のアルプスリゾートとしての地位を確固たるものとしている。

 

英国において、当グループの各ホテルは、歴史ある魅力及び現代的なラグジュアリーを見事に融合させることで卓越した成果を上げている。最近、権威あるコンデナスト・トラベラー誌の「2024リーダーズ・チョイス・アワード(2024 Readers' Choice Awards)」で表彰されたザ・ゲインズボロー・バース・スパは、歴史的な優美さ及び最新のウェルネス施設を組み合わせることで比類のない体験を提供し、スパホテルとしての新たな基準を示し続けている。

 

当グループのブティック・ホテル(ラグジュアリー・ライフスタイル誌の「ベスト・ブティック・ホテル(Best Boutique Hotel)」に選出された受賞歴のあるモンキーアイランド・エステート、ロンドンのブルームズベリー地区にあるザ・アカデミー・ホテル等を含む。)は、その独自の魅力及び行き届いたサービスにより、常にゲストの期待を上回る体験を提供している。スレッドニードルズ・ホテルは、息をのむようなステンドグラスのドーム及びロンドン金融街の中心部という好立地により、ビジネス及びレジャー双方の旅行者から高い支持を得ている。また、ザ・グラスハウス・エディンバラは、独自のラグジュアリー体験を提供することで、スコットランドの好調な観光市場を着実に取り込んでいる。

 

アジア地域において、当グループの各リゾートは顕著なレジリエンス及び魅力を発揮している。タイでは、ザ・スリン・プーケットが環境保全への取組み及び世界水準のホスピタリティを組み合わせることで、サステナブル・ラグジュアリーの分野におけるリーダーとしての地位を一層確固たるものとした。また、ザ・リッツ・カールトン・コ・サムイは、コンデナスト・トラベラー誌及びフォーブス・トラベルガイド誌の双方から高い評価を受け、同地域有数のラグジュアリーリゾートとしての存在感を一段と高めている。これらのリゾートは、高級志向の国際旅行需要の回復を的確に捉え、高い客室稼働率及びゲスト満足度を達成している。

 

当年度のラグジュアリー旅行業界では、パーソナライズされたウェルネス体験、本物の文化体験、そしてサステナブルな取組みへと明確にシフトしており、これらのトレンドはYTLホテルズが長年掲げてきた理念と完全に一致している。同社の各施設は、こうした嗜好に適応しただけでなく、それらを提供するうえで業界のリーダーとなっており、主要な全指標における一貫した高水準の実績及び年間を通じて受賞した数多くの権威ある賞がそれを示している。

 

YTLホテルズは、戦略的成長及びイノベーションに引き続き注力しており、ターゲットを絞った取得、資産価値を高めるための改修、そしてデジタル変革の推進を通じて、新たな市場機会を的確に捉える体制を整えている。

 

YTL REIT

当年度のYTL REITの投資ポートフォリオは、5,277.20百万マレーシア・リンギットであり、前年度の5,281.88百万マレーシア・リンギットと比較して4.68百万マレーシア・リンギット(0.09%)減少した。

 

当年度において、YTL REIT及びその子会社(以下「YTL REITグループ」という。)が保有する不動産は、独立した専門鑑定士により評価され、評価益が計上された。また、投資ポートフォリオの価値は、プチョンのホテル取得、ACホテル・イポーの改修工事完了、モクシー・ニセコにおける開発活動の継続により上昇した。一方、海外の投資ポートフォリオについては、オーストラリア及び日本における資産が、豪ドル及び日本円のマレーシア・リンギットに対する下落の影響を受け、評価額が押し下げられた。

 

YTL REITグループの1口あたりの純資産価値は、前年度の1.746マレーシア・リンギットに対し、当年度は 1.725マレーシア・リンギットとわずかに減少した。

 

マレーシアのポートフォリオ

当年度において、マレーシアの観光業は観光客数及び観光支出の顕著な増加を記録した。インバウンド観光は、中国及びインドからの渡航者に対するビザ免除措置、航空路線の増便、ビジネス・レジャー、グルメ及びムスリム対応観光を対象とした積極的なプロモーション施策の恩恵を受けた。こうした観光活動の活発化により、YTL REITのマレーシア国内の全ホテルで宿泊者数が前年同期比で増加した。

 

国際ポートフォリオ

ニセコ地域を含む日本の観光産業は、当年度において著しい成長を遂げ、円安が追い風となって訪日客数は過去最高を記録した。特にスキーシーズンにおける訪日客の急増により、YTL REITの日本国内の全ホテルにおいて運営実績も向上した。

 

一方、オーストラリアにおいては、航空便の増加及び堅調な旅行需要を背景に、海外からの渡航者数が大幅に増加した。国内旅行需要は、法人部門を中心に堅調に推移したが、生活費の高騰及び海外旅行需要の高まりにより影響を受けた。

 

シドニー・ハーバー・マリオットは、海外からの渡航者数の増加及び堅調なイベント開催を背景に、当年度の客室稼働率が大幅に上昇した。同様に、メルボルン・マリオットも、当年度に開催された多くのイベント開催により客室稼働率が上昇した。ブリスベン・マリオットの客室稼働率は当年度において低下したものの、同地域の市場は、力強い地域経済、観光地としての魅力向上、継続的なインフラ整備により、安定した状況が続いている。

 

運用サービス部門及びその他

YTLデータセンター

YTLグリーン・データセンター・パーク

当グループは、ジョホール州クーライにおける「YTLグリーン・データセンター・パーク」について、当初の500メガワットから最大600メガワットへと目標量を引き上げる等、着実に開発を進めている。同プロジェクトは、再生可能な太陽光エネルギーを利用して電力を供給する、マレーシア初のデータセンター・キャンパスとなる予定であり、データセンター建設段階に合わせて段階的に開発が進められている。

 

これまで当グループは、コロケーターとしてシー・リミテッド(Sea Limited)と提携し、世界有数のグリーン施設を確立する。さらに、2社のハイパースケーラーとの間で追加フェーズに係る契約を締結しており、同パークのその後のフェーズは段階的に展開される予定である。

 

当該データセンターのキャンパスは、高いエネルギー効率を実現するため、設計及び運営の両面で革新的かつ持続可能なソリューションを採用しており、ハイパースケーラー及びコロケーション顧客の双方において高まる、環境配慮型かつコスト効率の高いデータセンターへの需要に応えることが期待されている。

 

YTLグリーン・データセンター・パークのその後のフェーズは順調に進んでおり、計画されたスケジュールに従い完成する予定である。

 

YTL AIラボ

YTL AIラボは、ソブリンAIモデルを構築し、マレーシアの市場及び国民に対する深い理解に基づく最先端のソリューションを提供することを目的として設立された。

 

2025年8月、当グループのAIソリューション事業を担うYTL AIラボは、ASEAN AIサミット2025において、マレーシア初の国産大規模言語モデル(LLM)である「ILMU」を発表した。ILMUは、YTL AIラボがマラヤ大学と協働し、マレーシアのニーズに応えるべく完全に国内で構築したものであり、地域の知見及び言語能力を最先端の性能と融合させることで、同国のAI分野における大きな飛躍を象徴するモデルとなっている。

 

ILMUは、テキストだけでなく音声及び画像も処理及び生成できるマルチモーダルAIモデルであり、複数の産業分野にわたる実社会の活用に対応できる体制が整っている。その名称には、モデルの核心となる価値観が込められている。「Intelek」は文脈を理解する知性を、「Luhur」はマレーシアの価値観に根ざした倫理性を、「Malaysia」は文化及び言語への精通を、そして「Untukmu」はすべてのマレーシア国民に奉仕するために構築されたことを意味している。

 

イノベーションを促進するため、YTL AIラボは、マレーシア・デジタルエコノミー公社(MDEC)との協働により、「ILMU AIアクセラレータープログラム」の開始を発表した。同プログラムは、ILMUを活用して、地域のニーズに根ざしつつグローバル規模での展開に対応可能なAI製品及びサービスの構築を目指す、マレーシア国内のスタートアップ、中小企業及び世界のソリューションプロバイダーを対象としている。

 

適格企業は、マレーシア・デジタル(MD)ステータス及びこれに付随する各種優遇措置、タレントパス、就労許可証・ビザの取得支援、並びに500万マレーシア・リンギット相当のILMUアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)クレジットを受けることができる。

 

YTL AIラボのパートナーには、Aco Tech、Ryt Bank、Astro、Media Prima、Yes、Carsome、Swipey、Vision Machina、Vistel、TeeniAI、TrustAI及びMesoliticaが含まれ、ILMUの多様な産業分野における能力及び有用性に対する業界からの初期段階での信頼を示している。すべての企業はILMUトークンへのAPIアクセスが可能であり、消費者向けAIチャットボット「ILMUchat」は、2025年9月16日のマレーシア・デイにアーリーアクセスとして提供が開始された。

 

デジタルバンキング

2022年4月、当グループは、シー・リミテッドとコンソーシアムを組み、マレーシア銀行からデジタルバンキングのライセンスを取得した。

 

Ryt Bankとして事業を行うYTLデジタル・バンク・バーハッド(YTL Digital Bank Berhad)は、財務省から2024年12月20日付でデジタルバンキングのライセンスを取得した。Ryt Bankは2025年8月26日に正式に開業した。

 

当該新事業は、当グループとシー・リミテッドとの複合的なシナジーを活用するものであり、当該事業により当グループはマレーシアのデジタル変革の成長にさらに貢献するとともに、国民(特に銀行サービスへのアクセスが不十分な人々及び銀行口座を持たない人々並びに中小企業・小規模事業者)の金融サービスへのアクセス拡大が可能となる。

 

AIの力を活用して比類のない顧客体験を提供することで、Ryt Bankは、顧客にとって意義のある包括的な金融サービスを提供しつつ、顧客の資産形成及び金融目標の達成を支援することを目指している。デジタルファースト型のサービスであるため、口座開設、オンボーディング、KYC(顧客確認)手続はわずか数分で完了する。Ryt Bankは現在、普通預金口座及びVisaデビットカード、さらに限定版Rytカードを提供している。

 

エンジニアリング・コンサルティング及び運転保守(O&M)サービス

ランヒル・グループの子会社であるランヒル・ウォーリー・センドリアン・バーハッド(以下「ランヒル・ウォーリー」という。)は、プロジェクト及び資産ポートフォリオの管理に関する専門的サービスを提供する、石油・ガス分野の有力企業である。これには炭素貯留、脱炭素化及び関連技術ソリューションの提供が含まれる。実績には、世界最大の洋上CCSプロジェクトであるマレーシアのカサワリ炭素回収・貯留(Kasawari Carbon Capture and Storage)(以下「CCS」という。)プロジェクトが含まれる。加えて、ランヒル・ウォーリーはウォーリー・リミテッドと共同で、マレーシアのみならず中東、英国北海、ミャンマー、ベトナム、アフリカ、中国、インド、ブラジル等でもプロジェクトを展開している。

 

ランヒル・ウォーリーは当期、プロジェクトの円滑な実行及び成果物の確実な引き渡しに注力した。主な案件には、ブラジルのP‑82浮体式生産・貯蔵・積出設備(FPSO)プロジェクト、ペトロナス・カサワリCCSプラットフォーム、カタールISNDのウェルヘッド・プラットフォーム、カタール北フィールド生産持続性(NFPS)プロジェクト、シェルのMDOポートフォリオ管理業務、並びにペトロナス・チャリガリ・センドリアン・バーハッド(以下「PCSB」という。)向けのEPCm3ポートフォリオ管理契約が含まれる。

 

バリューチェーン全体の事業者は、継続する各種紛争の影響に対応するとともに、最近では米国が複数の国に課した貿易関税の影響にも引き続き適応している。特に関税の影響は顕著で、世界経済及び各国経済の下押し要因となり、その結果、石油・ガス大手は探査・生産活動に慎重な姿勢を取るに至った。

 

ランヒル・ウォーリーは当期、適合する契約への入札を継続し、フロントエンド・エンジニアリング・デザイン(FEED)及び既存設備の改修・増設を伴うブラウンフィールド案件等、比較的短期のプロジェクトに注力した。

 

これにより、ランヒル・ウォーリーはPCSB向けの1+1年(初年度1年+延長オプション1年)のブラウンフィールド・ポートフォリオ契約を獲得する等、戦略は奏功した。加えて、BASFとの長期契約は固定期間3年で更新された。これら及びその他のプロジェクトは、今後の収益及び利益の見通しに一定の可視性をもたらすとともに、ランヒル・ウォーリーが石油・ガス分野における有力なコンサルティング提供企業としての実績をさらに強化する。

 

一方、ランヒル・グループが当期に完了した主要プロジェクトには、統合流域管理(Integrated River Basin Management)を対象とした国家下水道マスタープラン、PETRONAS KLCCツインタワーに対する技術監査、サバ州コタ・ブルドにおける統合水資源・洪水対策の実現可能性調査のコンサルティング業務、並びにムランティでのデータセンター現場監督業務等が含まれる。

 

当年度におけるグループ内プロジェクトは、主に以下のとおりである。

・ ランヒルSAJ向けジョホール州ブキット・クライ(Bukit Kulai)のセマングガー浄水場(Semanggar セマングガー WTP)の設計及び施工監理。設計段階は完了しており、建設工事は既に進行中で、完成及び商業運転開始は2026年6月の予定である。

・ ジョホール州NRW(非収益水:Non‑Revenue Water)低減プロジェクト第8フェーズの開始。本フェーズはジョホール州の給水効率の維持・向上を支援し、水資源の保全、処理水の損失低減、及びシステム信頼性の向上を通じて、環境及び利用者双方に貢献する。

・ ポンティアン及びバトゥパハット地域の給水信頼性向上を目的とした、全長8.7kmのブヌ(Benut)-レンギット(Rengit)送水管プロジェクトの着手。配水インフラを拡張することで、祝祭期のピーク需要時に生じる低圧問題に対応する。

・ ジョホール州ヨンペン浄水場(Yong Peng WTP)における新設2ML(2メガリットル)貯水槽及び処理水揚水ポンプシステムの更新・改修工事。

 

もう一つの主要なハイライトは、イブラヒム・テクノポリス内の Sedenak Tech Park I(STEP I、現STEP East)における日量25.4 MLD(25.4百万リットル/日)の高架水槽及び関連工事の設計・施工契約の受注である。本契約は2025年4月に受注され、ランヒルが影響力の大きいデジタル・産業インフラ分野へ本格的に参入することを示す戦略的節目となった。

 

電力投資

YTLパワー・グループの電力投資には、YTLパワーが45%の出資持分を有するアッタラート・パワー・カンパニーPSC(以下「APCO」という。)が所有するヨルダンの554メガワットのプロジェクトと、インドネシア・ジャワ島に1,220メガワットの発電所を所有するPTジャワ・パワーに対する実質的な20%の持分が含まれる。

 

APCOは、ヨルダンにおいて554メガワットの山元シェールオイル火力発電プロジェクトを所有しており、発電所の全電気容量及びエネルギーについてヨルダンの国営電力会社(以下「NEPCO」という。)と30年間の電力売買契約を締結している。NEPCOは(プロジェクトの第2基の商業運転開始日から)当該電力売買契約を40年に延長する選択権を有する。

 

APCOは当年度も好調に推移した。この554メガワットの発電所は、ヨルダンで初めて同国の自国産シェールオイル資源を利用する発電所であり、同国の設置済み発電容量の約15%を占める見込みである。

 

インドネシアにおいては、PTジャワ・パワーが30年間の電力売買契約に基づき国有電力公社であるPT PLN(Persero)(以下「PT PLN」という。)に電力を供給している。当該発電所の運転・保守(O&M)は、YTLパワーの子会社であるPTワイ・ティー・エル・ジャワ・ティムールが30年契約に基づき実施している。PTジャワ・パワーの業績は当年度も安定して推移した。

 

ERL

ERLは、乗客体験の向上と市場展開の拡大を目指し、イノベーション及び戦略的施策を積極的に推進する先見的な鉄道事業者として進化を続けている。乗客数の増加、デジタルトランスフォーメーション、持続可能性、ブランド・エンゲージメントの強化に特に注力し、シームレスで安全かつ印象に残る旅の提供に引き続き取り組んでいる。

 

2026年のマレーシア観光年(Visit Malaysia Year)に合わせ、ERLは特に中国、インドネシア、シンガポール、香港等の主要市場からの海外旅行者を対象に、マレーシアを有力な旅行先として訴求する取組みを強化している。Tourism Malaysia(マレーシア政府観光局)との覚書(MoU)を通じ、ERLは戦術的なプロモーションやインバウンド誘致キャンペーン、国の認知度・魅力を高める戦略的施策で連携することで、マレーシアの観光振興を支援する体制を整えている。

 

サラッ・ティンギ駅(Salak Tinggi Station)の改修工事は2025年5月に着手され、バリアフリー化、乗客の快適性向上及び駅全体の利用体験改善を目的としている。改修では駅設備の拡充、誘導表示(wayfinding)の改善、乗客動線の最適化等が行われ、ERLの継続的なサービス向上とインフラ近代化への取組みと整合している。改修後の駅は2025年12月までに全面稼働する見込みで、2026年のマレーシア観光年(Visit Malaysia Year 2026)に向けた乗客増及び観光需要の高まりに対応する体制が整う予定である。

 

ERLは非運賃収入の拡大を引き続き優先課題とし、小売、広告、駐車場及びイベントを重点分野としている。主な施策としては、小売及びイベント代理店との提携強化や、長期の広告コンセッション契約の確保が挙げられる。KLセントラル駅の再開発に伴う制約がある中でも、ERLは新たに4つの小売ブランドの誘致に成功しており、追加の出店候補も進行中である。

 

KLセントラルにあるKLIAエクスプレスの出発・到着ホールは、戦略的な立地及び広い床面積を背景に、イベント及び展示会の人気会場として引き続き高い需要を集めている。サラッ・ティンギ駅の駐車施設は堅調な業績を維持しており、駅構内及び車両内での広告活動に対する需要も大幅に増加した。

 

ERLのキャッシュレス化は、2024年8月時点で採用率100%に到達しており、決済システムの近代化及び乗客の利便性向上に対する同社の強いコミットメントを示している。

 

旅行意欲の喚起及びブランドとの接点創出を目的としたデジタルキャンペーンは、ストーリーテリング、インフルエンサーとの協業、双方向コンテンツを活用し、ソーシャルメディア及びその他のデジタルプラットフォーム上で展開・拡大された。これにより、エンゲージメント、コンバージョン及び乗客数の増加が促進された。これらの施策はターゲット層と効果的な接点を築き、複数のチャネルで顕著な成果を上げた。

 

VISA、Maybank、CIMB、Lazada、WeChat、Mixue、Bank Islam等との新規及び継続的な協業を通じ、ERLは新たな顧客セグメントを開拓し、法人向けチケット販売を拡大している。

 

KLIAエクスプレス及びKLIAトランジットのグローバル販売チャネルは、航空会社、オンライン旅行代理店(OTA)、鉄道事業者、電子決済サービス事業者、旅行アグリゲーター、eコマースプラットフォーム、卸売ネットワークといった主要セグメントにわたるパートナーシップの構築を通じて強化・拡大されている。これらパートナーのプラットフォーム及びコミュニケーションチャネルを活用することで、ERLは市場リーチを拡大し、より広範な顧客セグメントに対してより効果的に働きかけることが可能となった。

 

主要パートナーを対象としたターゲット型インセンティブ・プログラムは高い成果を上げ、参加先の大半が前年比で顕著な成長を遂げた。これを受けてERLは、韓国のAREX、香港のMTR、英国のHeathrow Express等の主要な空港アクセス鉄道事業者と連携したパッケージ商品を導入し、国際展開を拡大した。これらの戦略的施策により、法人向けパートナーシップによる乗客数及び収益は前会計年度比で26%増加した。

 

5 【重要な契約等】

(1) 当年度当初から本報告書の日付までの間に当社と他企業との合併又は合併の契約はなかった。

(2) 当年度当初から本報告書の日付までの間に、当社の事業に重大な影響を与えるような、当社による事業の全部又は重要な部分の譲渡、又は他企業の事業の全部又は大部分の取得はなく、また、当該期間中、当社は上記に関連する契約は一切締結しなかった。

(3) 当社の事業の全部又は重要な一部分を賃貸若しくは預託する契約、別の当事者と当社の営業利益及び損失を共有する契約、若しくは当社の事業に重大な影響を与える技術協力若しくはこれに類する契約の締結はなかった。

 

6 【研究開発活動】

該当なし。