文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) グループ企業理念
1902年に日本で創業し、アジア・パシフィック、北米等グローバルに事業を展開しております当社グループでは、グループ理念を共有・浸透することで、グループ各社が、それぞれの地域や国で、生命保険の提供を中心に人々の安心で豊かな暮らしと地域社会の発展に貢献するとともに、グループの提供価値を最大化し持続的な成長を実現することを目指してまいりました。
社会の変化が一層激しくなる中で、グループが目指す新たな未来に向け変革を実践するために、グループ企業理念を2024年3月期に刷新いたしました。具体的には、「グループの社会における存在意義」であるパーパス(Purpose)とパーパスを実現するためのバリューズ(Values)「大切にする価値観」について、策定いたしました。当社グループは、新たなパーパス及びバリューズの浸透を通じ、グループ社員の一体感醸成により従業員エンゲージメントを高めるとともに、積極的な挑戦・変革を通じ、企業の革新性を高めることで、社会課題の解決と企業価値向上に向けて常に挑戦し続けてまいります。
〈グループ企業理念〉

Purpose:グループの社会における存在意義
「共に歩み、未来をひらく 多様な幸せと希望に満ちた世界へ」
“Partnering with you to build a brighter and more secure future”
当社グループの目指す世界は、1人ひとりの異なる価値観や生き方が尊重され、多様な幸せと未来への希望に満ちた世界です。このような世界を実現するために、私たちは、お客さまをはじめとするステークホルダーと共に歩み、未来を切りひらくための挑戦を続けてまいります。
Values:大切にする価値観
Purposeの実現のためにグループのすべての従業員が大切にする価値観として、Valuesを定めます。
「いちばん、人を考える」
“We care”
私たちは、お客さま、地域・社会、株主・投資家、お取引先、従業員など、企業活動を通じて関わるあらゆる「人」のことを誰よりも真剣に考えます。
「まっすぐに、最良を追求する」
“We do what's right”
私たちは、お客さまや社会にとっての「最良」を常に誠実に追い求めます。
「まっさきに、変革を実現する」
“We innovate”
私たちは、スピード感をもって自ら変革し続けます。
Brand Message:Purposeを端的に表したコミュニケーションメッセージ
「一生涯のパートナー」
“By your side, for life”
当社グループはPurposeを実現するため、事業活動を通じた社会的価値の創造に取り組みます。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
①経営環境
2025年3月期の世界経済は、各国中央銀行による金融引き締めが続く中でも、全体として緩やかな成長を維持しました。米国経済は堅調な消費に支えられ、全体の減速を抑制する役割を果たしました。一方、中国経済は住宅市場の不安定さと消費の低迷により成長が鈍化しています。日本経済については、2024年に観光需要の回復と株式市場の好調がプラス要因となったものの、物価高による実質賃金の減少が個人消費を抑制しました。また、海外経済の減速が輸出に影響し、景気回復は緩やかなペースにとどまりました。
金融環境については、AI技術革新への期待や米国経済の堅調さを背景に株高が進行しましたが、2025年初めからは株安・円高傾向に転じています。特にトランプ米大統領の関税政策への懸念が市場センチメントに影響を与えており、自動車や半導体産業に大きな影響を及ぼし、日米の株価に下押し圧力をかけています。日本では、賃金・物価上昇を受けて日本銀行が2025年3月期に2度の利上げを実施しました。今後の追加利上げ観測から、2025年3月には長期金利が1.5%を超える水準に達しています。
国内外で生命保険事業を中心に事業を展開する当社グループは、確実な保険金及び給付金のお支払い等を通じて、保険事業者としての役割を継続して果たしてまいりました。また、外部環境が大きく変化する中、中期経営計画における5つの事業戦略(国内保険、海外保険、資産形成・承継アセマネ、新規(非保険)、IT・デジタル)と財務・資本戦略、経営基盤の強化を着実に進展させてまいりました。
②優先的に対処すべき課題
当社グループを取り巻く経営環境は、国内金融市場の「金利のある世界」への変化や、米国のトランプ大統領就任後に続いている世界的な経済環境の急変等によって、不透明さが一層増しております。そのような中で当社グループが持続的な成長を実現していくためには、ビジネスポートフォリオや企業文化等に係る大きな変革を引き続き推進していく必要があると考えております。
このような環境認識の下、第一生命グループは、2031年3月に「日本の保険業界の未来を先導する存在になること」、そして、「グローバルトップティアに伍する保険グループになること」の実現に向けた取組みを進めております。2025年3月期は経済・金融環境の追い風もあり好業績となったものの、資本効率や事業の成長性について、グローバルトップティア水準とはまだギャップのある状況であります。2026年3月期は現行の中期経営計画の2年度目となりますが、こうしたギャップを縮め、成長をさらに加速していくべく、現状の枠組みにとらわれない大きな変革を推し進めてまいりたいと考えております。
国内保障事業では、人口減少・高齢化の進行という環境を踏まえて、質と生産性を重視した中長期的なビジネスモデル変革を進めております。第一生命保険の新契約業績は2025年3月期に一定程度の回復を実現しましたが、コロナ前水準の新契約業績への回帰に向けては道半ばであり、引き続き魅力的な商品・サービスのご提供と高品質なコンサルティングを通じて、お客さまへの提供価値の向上に取り組んでまいります。また、急速な進歩を遂げるAIをはじめとした最新テクノロジーの積極的な活用により、販売部門・アンダーライティング部門双方の生産性の大幅向上を実現することで、今後の環境変化やリスクへの対応力を高めてまいります。
一方、2025年3月期には当社グループの保険代理店出向者による個人情報漏洩事案が判明し、多大なるご心配とご迷惑をおかけいたしました。グループとして再発防止に徹底して取り組み、信頼回復に努めてまいります。
海外生保事業では、各地域における既存事業のオーガニックな成長と、戦略的M&Aによるインオーガニックな成長の両輪で、当社グループの成長ドライバーとして取組みを強化してまいります。既存進出国の市場規模、事業ステージ及び各社の業界ポジション等を踏まえて策定した戦略に基づき、グループ各社の優れたノウハウを相互に活用することなどにより、2027年3月期の海外生保事業からの利益貢献比率について40%を目指して成長実現に取り組んでまいります。
資産形成・承継事業では、多様化するお客さまニーズ・価値観に対して、国内外のグループ会社との連携しながら、商品競争力の強化やコンサルティングの高度化、アセットマネジメント能力の強化に向けた取組みを加速させてまいります。資産形成・承継領域、アセットマネジメント領域は、国内外の双方において高い成長が期待されることから、その成長機会を効率的に取り込むことで、グループの企業価値向上を牽引してまいります。
新規事業では、新たにグループに加わったベネフィット・ワンの持つプラットフォーム「ベネフィット・ステーション」の魅力をさらに高め、保険のみでなく非保険も提供できる強固なエコシステムを構築し、お客さまのWell-beingの実現に貢献いたします。また、既存の当社事業領域にとらわれない新たな事業への取組みによって、従来の生命保険業を超えた「保険サービス業」への変革を行っていくことで、当社事業の差別化戦略を推進し、将来に向けたグループの成長性向上、企業価値増加を実現してまいります。
財務・資本政策では、高い資本効率や成長性が見込まれる事業への資本投下を通じ、グループ全体の資本効率とキャッシュ創出力を高めるとともに、充実・安定した株主還元を目指す「資本循環経営」を引き続き推進してまいります。2025年3月期、資本効率を示す修正ROEは10%を超えて想定資本コスト9%を上回りましたが、引き続き、資本コストを安定的に上回る資本効率を持続的に実現していくことで、当社の企業価値の向上を目指してまいります。
グループ経営管理態勢の面では、グループCXOと事業オーナーによるマトリクス型の経営体制について、新たなグループCXOを設置する等、一層の充実を図りました。外部からの人財登用も積極活用することで、多様性を兼ね備えたプロフェッショナルな経営チームとなりました。このような経営基盤の強化により、持株会社とグループ各事業会社との間の面的な接点が増加し、より密接な連携が可能となりました。これにより、グループ横断的なガバナンス、リスク管理、ベストプラクティスの共有、効率的な事業推進などが可能となり、グループ中期経営計画実行の大きな推進力となっております。
また、事業運営の大前提である持続可能な社会の実現に向けて、当社グループでは、コア・マテリアリティを設定の上、グループ内で共有しております。それに基づいた事業活動を推進することにより、社会価値と経済価値を共に生み出すことで、社会にポジティブインパクトをもたらしながら、当社グループ自身の企業価値を一層増加させていくことを目指してまいります。
当社グループは、国内外において、変化が激しく、不透明感を増す経営環境の中であっても、企業価値の増加に資する変革を加速させてまいります。
(3) 2024-2026年度中期経営計画の進捗
中期経営計画で掲げたグループ重要経営指標は、グループ修正利益の大幅な増益や、国内の金融環境が好調に推移した影響により、計画初年度で2025年3月期は、概ね達成する結果となりました。「主なグループ重要経営指標(KPI)の状況」については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 財政状態、経営成績」をご参照下さい。
2025年3月期における各事業の主な取組みは次のとおりであります。
①国内保障事業
国内保障事業では、マーケットイン思想の戦略遂行によってお客さまから共感される価値創造を目指す中、保障と資産形成・承継の一体的な価値提供に向けた商品・サービスの拡充、リアルチャネル(対面コンサルティング)の強化とオンライン接点の拡大に取り組んでまいりました。
当社グループでは、第一生命、ネオファースト生命、第一スマート少額短期保険の国内3社で「保障」をお届けし、多様化するお客さまニーズにお応えしております。第一生命では、保障と資産形成・承継の一体的なコンサルティングによる価値提供に向けて、新商品の投入を始めとして商品ラインアップの拡充に取り組んでまいりました。ネオファースト生命では主力医療保険である「ネオdeいりょう」を改定し、多様化する入院ニーズに効率よく備える設計を可能にしつつ、若年世代の保険料を引き下げる等、「ちょうど、ちゃんと、いい保険。」をブランドコンセプトに、お客さまニーズへの対応を進めてまいりました。第一スマート少額短期保険では旅行・宿泊予約のキャンセル費用を補償するデジタル完結型保険「トラベルキャンセル保険」を発売する等、新たな保険体験価値の創出に取り組んでまいりました。今後もグループ一体となって、多様化するお客さまニーズにお応えしてまいります。
②海外生保事業
海外生保事業では、グループの成長ドライバーとして、グループ全体の持続的な企業価値向上に向けて、海外各社の成長戦略の推進と、資本効率の追求によるフリーキャッシュフローの創出に取り組んでまいりました。また、新規取組みでは、資本効率の高い良質な投資機会を追求し、新たな事業領域の探索を行ってまいります。
Protective Life Corporationでは、リテール事業(保障・年金)の推進に加えて、2024年11月にアメリカで団体保険事業を展開するShelterPoint Group, Inc.の買収を完了するなど、リテール事業と買収事業の両輪の拡大に向けた取組みを継続いたしました。また、2025年3月、収益改善とリスク削減による余剰資本の解放を目的に、既契約ブロックを出再することを決定いたしました。修正利益は、上記取組みに加え、前年の米銀破綻に関する損失等の一過性損失からの反動もあり増益となりました。
TAL Dai-ichi Life Australia Pty Ltdでは、大型の団体保険を新たに獲得する等、オーストラリアの保障性市場における業界首位の事業基盤を一層強化するとともに、周辺事業への展開についての模索も継続しました。修正利益は、2023年3月期に買収完了したTAL Life Insurance Services Limited(旧Westpac Life)からの収益貢献が利益を押し上げ大きく伸ばした前年から微減となったものの同水準を確保いたしました。
ベトナムでは、業界全体で銀行窓販チャネルの販売低迷が継続し、Dai-ichi Life Insurance Company of Vietnam, Limitedでも減収減益となったものの、販売チャネルの体制強化、募集品質の改善及びお客さまの体験価値向上等に取り組むことで他社と比べて販売減を抑制し、新契約シェア(初年度保険料ベース)は民間生命保険会社の中でトップとなりました。
その他の進出国においても、各社の事業ステージに応じた成長戦略に基づく取組みを行ってまいりました。
③資産形成・承継事業
「人生100年時代」を迎える中で、お客さま毎のライフプランに応じた安定的な資産形成に総合的に貢献するべく、第一生命では、保険に加えiDeCoや投資信託などの提案も行う「資産形成・承継・相続アドバイザー」約700名の育成を完了するなど様々な取組みを進めてまいりました。また、資産形成をサポートするWebプラットフォーム「資産形成プラス」の機能強化を図ることで、デジタル面からも最適なソリューションの提供に努めました。第一生命、第一フロンティア生命では若年層の資産形成や中高年齢世代の資産寿命の延伸、次世代への資産承継をサポートする商品の拡充に継続的に取り組んでまいります。
アセットマネジメント市場の成長取込みとグループ間シナジー最大化を目指し、2024年5月にキャニオン・パートナーズ・グループを関連会社化、2024年12月にはAnd Doホールディングスと資本業務提携契約を締結、2025年2月には丸紅株式会社と国内不動産事業の統合に関する事業統合契約および株主間契約を締結するなど、貯蓄性商品の競争力・商品開発力の向上、アセットマネジメント事業の強化に向けた様々な取組みを進めてまいりました。
④新規事業
新規事業では、当社グループが生命保険業という枠を超えた“保険サービス業への変革”に向け、様々な取り組みを行っております。特に、2024年に買収を完了したベネフィット・ワンのもつプラットフォームである「ベネフィット・ステーション」をエコシステムとして活用し、お客さま一人ひとりのWell-beingの実現を目指してまいります。
「ベネフィット・ステーション」については、第一生命の営業チャネルでの提案活動を開始し、法人との接点構築・強化を通じて、会員数が初めて1,000万人を突破する等、顧客基盤を拡大いたしました。また、UI/UXの改善にも取り組み、ユーザーの利便性向上を実現いたしました。
また、より成長期待の高い良質な投資機会を追求し、新たな非保険事業領域の探索を行ってまいります。
⑤IT・デジタル戦略
IT・デジタル戦略では、テクノロジーを差別化の重要な要素と位置づけてデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しております。その一環として、2024年8月にはマイクロソフトとの戦略的グローバルパートナーシップを締結し、Microsoft Azureを基盤としたクラウド環境の構築や、AI・データ分析技術の活用を進めております。また、デジタル組織能力の内製化にむけてグローバル経験豊富な専門人財の採用、グローバルIT開発センターの立ち上げ、DX人財の育成等、DX推進のベースとなる体制整備を進めてまいりました。
⑥財務・資本政策
<良質な「資本循環経営」の実践>
当社グループは、財務健全性を維持しつつ、持続的な企業価値向上と株主還元の更なる充実を目指して、ERM(Enterprise Risk Management)(※1)の枠組みに基づく資本政策運営を行っております。前中期経営計画に引き続き、今中期経営計画においても、事業運営やリスク削減を通じて創出した資本を、より高い資本効率や成長性が見込まれる事業へ投下することでグループの資本効率・キャッシュ創出力を高め、企業価値向上を目指す「資本循環経営」(※2)を推進しております。リスク削減やグループ会社からの送金率引き上げ等により創出した余剰資本について株主還元に充て資本効率の改善を図りつつ、成長に向けた戦略的投資にも規律を持って資本配賦を行っております。
なお、2025年3月期グループ修正利益をベースとしたグループ会社からの配当は、前期を上回る約3,400億円を確保する見通しであります。
※1 ERMとは、事業におけるリスクの種類や特性を踏まえ、利益・資本・リスクの状況に応じた経営計画・資本政策を策定し、事業活動を推進することを指しております。
※2「資本循環経営」とは、事業運営を通じて稼得した資本や、リスク削減によって解放された資本を財源として、財務健全性を確保しつつ、より高資本効率・高成長事業へと資本を再配賦することで資本・キャッシュ創出の好循環を生み出し、企業価値向上を目指す考え方であります。
<リスクプロファイルの変革に向けた市場関連リスク削減の取組み>
当社グループでは、資本コストの低減とリスクに対するリターンの向上を通じた資本効率の改善を目指してまいります。中長期的に目指す姿として、市場リスクに偏った現在のリスクプロファイルを、保険リスク中心のリスクプロファイルにシフトすることを企図しており、今中期経営計画では、株式リスクの削減ペースを加速させるべく第一生命の保有国内株式を3年間で1.2兆円削減する計画を織り込みました。
2025年3月期について、第一生命では前述の国内株式削減計画の着実な実施による株式リスク削減とあわせて、金利リスク削減に向けても超長期債券の継続的な買入れや入替えの実施、個人保険契約に関わる財務的なリスクを外部の再保険会社に移転する再保険取引等の取組みを進めてまいりました。
⑦サステナビリティ・経営基盤
<サステナビリティ推進>
当社グループでは、グループパーパスで掲げる「多様な幸せと希望に満ちた世界」の実現に向けて、コア・マテリアリティ(当社グループが解決に向けて重点的に取り組む重要課題)の解決に向けた取組みの推進を通じたサステナビリティ戦略を展開しております。各取組みの推進にあたっては、①理念体系の構築・浸透、②計画策定、③実行、実績分析、情報開示、④ステークホルダーコミュニケーションのサイクルを回すことで、取組みに実効性を持たせております。2025年3月期には、グループサステナビリティ推進委員会のグループ社員への公開による各種戦略・取組みの社内浸透や、サステナビリティレポートの充実によるステークホルダーコミュニケーションの更なる強化を図っております。これらの取組みの結果、当社はMSCI社のMSCI ESG Ratingで“AA”を獲得するとともに、S&P社の“Dow Jones Sustainability Asia Pacific Index”の構成銘柄に継続選定されました。
<CXO制/事業オーナー制>
当社では、主要なコーポレート機能を統括する「CXO」を2023年3月期から導入・拡充し、外部登用も含めて実効性を高めてきたことに加え、2025年3月期には主要事業を統括する「事業オーナー」を新設し、双方の機能を有機的に組み合わせたマトリクス型の経営管理体制を持株会社に構築いたしました。グループ全体の視点で最適な戦略や課題の見える化を推進する上で大きな役割を担っております。
<人財戦略>
当社を取り巻く事業環境が一層複雑さを増す中において、事業戦略の実現確度を高め、グループの持続的な成長の原動力となるのが人財であります。当社グループでは、2025年3月期に新たに策定した「共に歩み、未来をひらく多様な幸せと希望に満ちた世界へ」というグループパーパスのもと、人財戦略については、「多様な人財が可能性を最大限に発揮し、挑戦と変革を実現する」というキーメッセージを定めております。当社グループでは、優秀で意欲ある社員に選ばれ、社員が自信と誇りを持って働ける環境を整備するために、2024年3月期から3年連続となる賃上げをはじめとする人的資本投資の拡充を図ってまいりました。また当社では、高い専門性を持つ人財の獲得とリテンション、さらに社員一人ひとりの主体的な成長と挑戦を一層後押しすることを目的として、2025年4月からジョブ型人事制度を導入いたしました。人財戦略に基づく様々な施策が従業員エンゲージメントとしても結実しており、2022年3月期の調査開始以来、全社スコアは着実に上昇しております。
日本国内では企業が関わる人権侵害の事案が相次いで表面化しており、世界ではサプライチェーンにおける強制労働や児童労働等が大きな社会問題となっております。当社グループでは、「人権の尊重」を企業経営の大前提と考え、第一生命グループ人権方針において、事業に関わるすべての方の人権を尊重する責任を果たすことを表明しております。2025年3月期には、当社グループの人権尊重への取組みをまとめた「人権レポート」を発行いたしました。
文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、本書提出日現在において、当社及び当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
<サステナビリティ共通>
当社グループでは、グループパーパスを基点として、2030年に当社グループが目指す姿を実現するために優先的に取り組む重要課題を「コア・マテリアリティ」として定義しております。当社グループは、事業を通じた社会的価値の創造に取り組むことで、現世代・将来世代のWell-beingの向上に貢献し、サステナブルな社会の実現と社会からの信頼・お客さまとの共感を通じた当社事業のサステナブルな成長を目指しております。

(1) ガバナンス
当社グループでは、持続可能な社会の実現に向けた取組みを力強く推進するために、「グループサステナビリティ推進委員会」を中心としたサステナビリティ推進体制を構築しております。2023年4月には「Chief Sustainability Officer(CSuO)※1」を新設し、グループサステナビリティ戦略を推進する職責を担うとともに、グループサステナビリティ推進委員会の委員長を務める体制としております。また、2022年7月より、当社役員報酬の業績連動型株式報酬の一部に、CO2排出量削減進捗に関する指標を含むサステナビリティ指標を導入しております。
※1 2025年4月より、当社のチーフオフィサーに“Group”を冠することとしており、Group Chief Sustainability Officer(グループCSuO)に名称変更しております。
サステナビリティ推進体制(2025年4月時点)

グループサステナビリティ推進委員会では、サステナビリティに関するグループ方針・戦略や対外コミットメントを含む効果的な情報発信の検討、グループ各社における取組遂行状況のモニタリングなどについて、複数の外部有識者の意見も踏まえ、グループ横断的かつ中長期的な視点で議論しております。委員会にて議論された内容は経営会議・取締役会に報告しております。
2025年3月期の主な議論
ア. 取締役会
イ. グループサステナビリティ推進委員会
当社グループでは、SDGsの17の目標・169のターゲットをもとに、国際機関のレポートや外部有識者からの助言などを踏まえて、35の社会課題を選定しております。また、35の社会課題について、当社グループの事業に及ぼす中長期のリスク・機会を把握したうえで、マテリアリティ・マップを作成し、優先順位付けを行っております。さらに、グループサステナビリティ推進委員会及び経営会議・取締役会での議論を踏まえ、フォーカス・エリア内の20項目を当社グループの事業を通じて重点的に取り組むべき重要課題として特定しております。なお、この20項目の共通項などを考慮して、「コア・マテリアリティ」を策定しております。なお、年に一度は「コア・マテリアリティ」をグループサステナビリティ推進委員会の議題とし、社会変化を適切に捉え、機動的な見直しを実施しております。
マテリアリティ・マップ

(2)で特定した重要課題について、当社グループのリスク・機会の認識をグループサステナビリティ推進委員会で議論し、短期・中期・長期の時間軸※2とともに開示しております。詳細は
また、当社グループでは、経営に重要な影響を及ぼす可能性のある予見可能なリスクを「重要なリスク」として特定し、そのリスクを踏まえた事業計画の策定を推進することで、予兆段階から適切に対処するリスク管理を実施しております。グループの重要なリスクの特定にあたっては、グループ会社における重要なリスクの洗出し結果をもとに、各リスクの影響度・発生可能性を4段階で評価し、ヒートマップを用いて、重要度の高いリスクを重要なリスクとしてリスク管理統括ユニットにて特定し、毎年度見直す運営としております。サステナビリティに関連するリスクとして、気候変動及び自然資本・生物多様性の喪失に関するリスクや人権侵害に関するリスクなどを「重要なリスク」として特定し、リスク管理を強化しております。
※2 リスクはその発現時期、機会は具体的な取組みを実施する時期に着目し、短期は3年以内、中期は10年程度、長期は40年から50年程度と定義
持続可能な社会の実現に向けた中長期の目標を定め、グループを挙げた取組みを着実に進めております。2025年3月期より、コア・マテリアリティの進捗を測る指標の中でも特に重視している指標として、「お客さま数」「ESG総合インデックス」を中期経営計画のKPIターゲットに設定しております。具体的な目標については、
<気候変動に関する取組み>
当社グループでは、気候変動問題を地球環境への取組みにおける最重要課題の一つと位置付け、事業会社と保険契約者からお預かりした保険料の運用を行う機関投資家の両面の立場から、ネットゼロを実現するための目標を掲げ、取組みを推進しております。2023年8月には、経済の脱炭素化への移行をサポートする金融機関のグローバルな連合体であるGFANZ(Glasgow Financial Alliance for Net Zero)が策定した移行計画ガイダンスに基づき、ネットゼロ実現に関する行動計画である「ネットゼロ移行計画」を日本の保険会社として初めて策定・開示いたしました。また、当社取締役会長の稲垣 精二がGFANZの最上位意思決定機関であるプリンシパルズ・グループに参加しており、世界の脱炭素化を実現していくため、リーダーシップの発揮に努めております。なお、具体的な取組みの詳細については、2023年8月発行のネットゼロ移行計画、2025年8月発行予定の
(1) ガバナンス/リスク管理
2016年のパリ協定発効により、気候変動への対応は国際社会全体で取り組む課題であるとの認識が高まっており、当社グループにおいても、気候変動への対応はお客さまの生命や健康、企業活動、社会の持続可能性などに大きな影響を与えうる重要な経営課題と認識し、2020年3月期以降、気候変動に関するリスクを「重要なリスク」の一つとして選定し、リスク管理を強化しております。具体的には、Group Chief Risk Officer(グループCRO)が委員長を務める「グループERM委員会」のなかで、物理的リスク・移行リスクの評価・対応方法について議論を行い、必要に応じて、経営会議・取締役会にも報告しております。グループガバナンス態勢の強化の一つとして、「グループサステナビリティ推進委員会」では、気候変動への対応をはじめとするサステナビリティに関わる方針・戦略の立案や取組遂行状況のモニタリングなどを実施しております。
気候変動対応に関するガバナンス/リスク管理体制(2025年4月時点)

(2) 戦略
①気候変動関連のリスク・機会、当社グループ事業への影響
当社グループとして、気候変動によって中長期的にもたらされる影響を、複数のシナリオを用いて分析した結果に基づき、事業会社・機関投資家として、気候変動に対する強靭性の確保・機会獲得に向けた取組みを推進してまいります。
②シナリオ分析
気候変動リスクは広範な波及経路が想定され、かつ様々な時間軸で顕在化する可能性があります。当社グループではTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言を踏まえ、気候変動リスクを移行リスクと物理的リスクに分類したうえでリスクカテゴリごとに整理して認識しております。当社グループにおいては、短期的には3年程度、長期的には10年超の時間軸において顕在化する気候変動リスクとして、リスクカテゴリごとに様々な事例を想定し、保険引受リスク及び市場・信用リスクについてはシナリオ分析を実施しております。
保険金・給付金支払いに関するリスク把握の取組みでは、2021年3月期より、気温と第一生命の保険金・給付金の関係を、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー社と共同で分析してまいりました。具体的には、第一生命の過去の支払実績をもとに、夏季の気温上昇による健康被害の増大に着目した分析を行って最高気温との関係性を推定したうえで、そこに将来の気候シナリオを仮定し、国内生命保険会社3社(第一生命、第一フロンティア生命、ネオファースト生命)の死亡・入院への影響分析を実施いたしました。
また、市場・信用リスクの分析として、MSCI社の気候バリューアットリスク(CVaR:Climate Value-at-Risk)という手法を用いて、投資資産の移行リスクと物理的リスクの分析を行っております。2024年3月末のデータに基づく分析では、ベンチマークとの比較において、1.5℃ Orderlyシナリオで移行リスク、物理的リスクともに優位な結果となりました。このほか、当社グループのポートフォリオの予想温度上昇(ITR:Implied Temperature Rise)は2.3℃という結果になりました。
(3) 指標及び目標
①事業会社としての取組み
当社グループでは、スコープ1及びスコープ2のCO2排出量について、パリ協定での目標を見据え、2026年3月期に50%削減(2020年3月期比)、2031年3月期に75%削減(2020年3月期比)、2041年3月期にネットゼロという目標を設定しております。加えて、グループ中核会社の第一生命では、全社員一体となった取組みを推進するため、「事業や社員の行動変容につながる視点で重視すべき項目」を対象に、スコープ3(カテゴリ15以外)のCO2排出量を2031年3月期に30%削減(2020年3月期比)、2051年3月期にネットゼロという目標を設定しております。
2024年3月期のCO2排出量について、当社グループのスコープ1及びスコープ2は約4.2万t(2020年3月期比約62%削減)となり、2026年3月期までの中間削減目標を前倒しで達成しました。また、第一生命のスコープ3(カテゴリ15以外)は約4.4万t(同約11%削減)となりました。なお、2025年3月期のCO2排出量は2025年8月発行予定の
②機関投資家としての取組み
第一生命では、気候変動問題の解決を責任投資における最重要課題と位置付け、脱炭素社会の実現に向けて取り組んでおります。2021年2月には国内で初めてNZAOA(Net-Zero Asset Owner Alliance)に加盟し、2050年までの投融資ポートフォリオのネットゼロ実現をコミットいたしました。その実現に向け、NZAOAプロトコル(目標設定ガイドライン)に従い、上場株式・社債・不動産ポートフォリオにおける温室効果ガス(GHG)排出量の中間削減目標(2025年3月期までに25%削減(2020年3月期比))を設定し、取組みを進めております。また、2023年8月には、2030年を目標年とする新たな中間削減目標として、2030年3月期までに投融資ポートフォリオにおけるGHG排出量50%削減(2020年3月期比)(※3)を設定いたしました。第一生命の上場株式・社債・不動産・融資ポートフォリオにおける2023年3月期時点のGHG排出量は約890万tCO2e(2020年3月期比約31%削減)となりました。なお、2024年3月期のGHG排出量は2025年8月発行予定の統合報告書2025をご参照ください。
脱炭素社会の実現に向けた機関投資家としての取組みは当社グループ各社にも広がっており、2022年5月には、第一フロンティア生命が、2025年3月期までに投融資ポートフォリオにおけるGHG排出量15%削減(2021年3月期比)の目標を設定いたしました。また、2024年3月には、第一生命と第一フロンティア生命が共同で「責任投資の中期取組方針(2030年3月まで)」を策定し、第一フロンティア生命でも第一生命と同水準の中間削減目標(2030年3月期までに50%削減(2020年3月期比))(※4)を設定いたしました。
また、第一生命では、2022年9月に「トランジション・ファイナンスに関する取組方針」を公表いたしました。トランジション・ファイナンスに取り組むことで当社のファイナンスド・エミッションが一時的に増加する可能性はあるものの、社会全体のネットゼロ達成に向けてはGHG多排出産業の脱炭素化が不可欠であることから、適切なトランジションに資する投資であるならば、当該トランジションの遂行を積極的に支援することを通じて、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
これに加えて、第一生命と第一フロンティア生命では、気候変動を含む社会課題の解決に向けた投融資(サステナビリティ・テーマ型投融資)を拡大しております。さらなる社会へのポジティブ・インパクト創出に向けて、2030年3月期末までに同投融資を5兆円以上、なかでも、同社の責任投資における最重要テーマである気候変動問題への対応強化として、環境・気候変動問題の解決に資する投融資を2030年3月期末までに2.5兆円以上に拡大していく目標を設定しております。2025年3月期末時点で、同投融資の累計は約3.1兆円、うち環境・気候変動問題の解決に資する投融資の累計は約1.5兆円以上となりました。また、投融資によるポジティブ・インパクトの拡大に向けて、インパクト目標指標として、投融資による年間GHG削減貢献量を2027年3月期までに240万tCO2eに拡大する目標も設定しております。なお、2025年3月期のポジティブ・インパクトの実績は2025年8月発行予定の
※3 上場株式・社債・不動産・融資ポートフォリオを対象。絶対量ベース。
※4 社債ポートフォリオを対象。インテンシティベース。
<人的資本・多様性に関する取組み>
(1) 基本方針
①当社グループに集う社員への想い
当社グループでは、Employee Philosophy Statement「第一生命グループで働く人を考える」を制定し、「一生涯のパートナー」として働く私たちが大切にしてきた想いをグループ各社と共有しております。すべての社員が生き生きと個性を発揮し活躍できる世界の実現、そして企業価値の更なる向上に向け、人財の育成や戦略的な人財配置、多様な人財が最大限に活躍できる組織風土の醸成に取り組んでおります。
②グループ人財戦略
2031年3月期に目指す姿である、「グローバルトップティアに伍する保険グループ」、「日本の保険業界の未来を先導する存在」の実現及び企業価値向上に向けて、人財の側面から経営基盤の強化が必要不可欠と考えております。当社グループでは、グループ人財戦略のキーメッセージを「多様な人財が可能性を最大限に発揮し、挑戦と変革を実現する」と定めており、これに連なる人財獲得・人財育成や風土・Well-beingなどの柱のもとで、人財戦略の各施策を推進しております。当社グループを取り巻く事業環境が激しく変化し、お客さまやステークホルダーの価値観も多様化する中で、社員一人ひとりの多様性を力に変えていくことを目指しております。
③人財育成方針
人財育成の出発点は、社員一人ひとりが当社グループの中で目指すキャリアを自ら考え、設定することにあると考えております。事業環境の急速な変化に対応するためには、人財戦略も柔軟かつ機動的に進化させていくことが不可欠であり、人財戦略を体現する社員一人ひとりが自らの目指すキャリアの実現に向けて、主体的にスキルを磨いていくことが何より重要であります。そのため、当社グループではDXを始めとする全社員必須スキルの向上や、グローバルトップティアに伍する保険グループとしてのスキルと目線を備えたグローバル人財の育成、マネジメント力強化など様々な育成施策を展開しており、社員の積極的な参加を通じた各自の目指すキャリアの実現と、企業価値向上に資する人財の育成を両輪で推進しております。
(2) グループ人財戦略の実現に向けた個々の取組
①多様な人財の獲得
新卒採用においては、グループの将来を担う多様性にあふれた人財の獲得を通じて、変化の激しい事業環境においても持続的に価値を創出できる人財ポートフォリオの構築を目指しております。特に近年は、学生の志向や価値観に合致したキャリアパスを提供することで、個々の強みや特性を最大限に発揮し、より高い価値を創出できる環境整備を企図して、特定領域における専門性を入社時から磨くスペシャリティコースの拡充を進めております。2025年4月入社より、従来の5コースに資産運用や海外など3コースを新設し、スペシャリティコースは合計8コースに拡充いたしました。
また、事業領域の拡大と深化を支える人財の確保として、キャリア採用にも注力しています。新卒採用が人財育成を通じた中長期的な人財ポートフォリオの多様化に繋がる一方で、キャリア採用は即戦力の確保だけでなく、社内風土の変革を促す観点からも重視しております。2025年3月期のキャリア採用は149名と、昨年度の80名から大幅に増加し、うち3分の1以上が金融機関以外の出身者であります。保険という枠組みにとらわれず、次の第一生命を創る多様な人財を惹きつけるとともに、これまでのキャリアや経歴を問わず、誰もが思い描くキャリアを実現し、活躍できる環境整備をこれからも進めてまいります。
②戦略的な人財シフト
日本国内において、第一生命保険の事業効率化、成長分野への重点的な人財配置などを目的として、戦略的人財シフトを推進しております。成長領域への人財配置については、収益力強化につながる領域やアイペット、ベネフィット・ワンなどの新規事業だけでなく、デジタルや海外といった拡大を続ける事業領域へのローテーションなどを通じて、事業戦略遂行を支える人財ポートフォリオの構築を進めております。更に、戦略的人財シフトには、社外へのキャリアローテーションなどを通じたリスキル機会による「人財の越境学習」も含まれており、事業戦略の実現に資する人財の育成にも取り組んでおります。
③経営候補人財の育成
日本国内及びグローバルの双方において、当社グループの将来を担うことが期待される人財のプール形成・アセスメント・育成・登用のサイクル循環を推進しております。日本国内においては、CEOを始めとする役員層で構成される人財コミッティが中心となって、役員登用の想定時期に応じて区分された計150名程の人財に対して、育成施策にも積極的に関与しながら経営人財の計画的な輩出に取り組んでおります。海外グループ会社においては、各社の将来を担うことが期待される人財に対して、グループ俯瞰的な視点の獲得やグローバルな経営に必要な知識・スキル獲得等を企図した複数の育成施策を実施しております。
④グローバル人財育成
グローバルトップティアに伍する保険グループへの成長を担う語学力やグローバルなビジネススキルを培うために、海外派遣型研修を含む様々な育成施策を展開しております。また、社員のグローバルビジネス実践力を可視化する手段として、Global Pool Assessmentを実施しており、外国人講師と実際のビジネスシーンを想定したミーティング、プレゼンテーション、交渉を通じたアセスメントにより、5段階中3.5以上を海外駐在可能な基準と設定し、2025年3月期末時点で200名以上が該当しております。2026年3月期末時点で250名の到達を目標としており、引き続き各種育成施策を計画的に推進してまいります。
⑤DX人財育成
CX向上や事業効率向上のために、グループ全体を先導する高度なDX人財の育成・獲得と、社員一人ひとりのデジタルリテラシー向上による組織的な土壌の形成の両方が不可欠と考えており、6フェーズで構成されるDX人財育成プログラムを展開しております。グループのDX裾野拡大を図る重要な指標と位置付けるフェーズ2到達者はプログラム開始1年で2,477名まで到達しており、グループ一丸でのDX推進に向けて引き続き取り組んでまいります。
⑥主体的なキャリア形成支援
グループ社員に求める人財像である「主体的にキャリアをひらく人財」の実現に向けて、多様なキャリア志向を支援するために、目的やタイミング、獲得したい経験に応じた複数の制度を提供しております。中でも、本人希望に基づき異動を実施するMyキャリア制度では、社内の多様な職務に対する公募を行っており、公募職務数・応募者数・合格者数はいずれも堅調に推移しております。2025年3月期からは定期人事異動以外の時期でも柔軟に応募可能なポストを拡充したほか、ラインマネジャー職への公募を導入し、ラインマネジャーから最大2階級下のポストからも応募を可能とすることで、より早い段階からのマネジメントへの挑戦を後押ししております。
⑦株式報酬制度の導入
当社及び国内3生保(第一生命、第一フロンティア生命、ネオファースト生命)では、2024年5月より従業員向けの株式報酬制度を導入いたしました。この制度では、従業員持株会に加入している全従業員を対象に、当社株式の一定数を毎年給付いたします。また、経営幹部層に対しては、業績の達成度合いに応じて上乗せで株式を給付することで、企業価値向上に対して一層のインセンティブを働かせる仕組みとしております。従業員持株会の加入率は95.2%(2024年9月時点)と非常に高い水準に達しており、引き続き本制度を通じた従業員の経営参画意識高揚による生産性向上や、優秀な人財のリテンションに取り組んでまいります。
⑧多様性向上に向けた取組
多様性とは女性活躍推進等のジェンダーダイバーシティだけでなく、多様な働き方の推進や、グループ外出身者の積極的な採用等、非常に多義的な概念と捉えております。多様性をグループ人財戦略のキーメッセージに据える当社グループにとって、多様なバックグラウンドを持つ社員が集うことは「組織知」の多様化に繋がり、変化に柔軟に適応するしなやかな組織作りを実現すると考えており、多様な人財が各自の持つ可能性を最大限発揮できる環境づくりに引き続き取り組んでまいります。
⑨柔軟な働き方と両立支援の推進
社員が生き生きと働く環境を整えるため、両立支援制度の充実と、柔軟な働き方の推進の両輪でワーク・ライフ・マネジメントの推進に取り組んでおります。2023年3月期からは男性社員の育児参画推進に向けて「男性社員の累計1か月以上の育児休業取得100%」を目標として、男性が育児に参画することの意義や必要性の理解浸透に向けたセミナーの実施、育児休業取得に関する教材や上司・部下の対話ツールの提供のほかに、育休取得計画書の提出ルール化や、最大で20日間の有給休暇を付与するなど、法令を上回る取組みを進めております。
⑩エンゲージメント
エンゲージメントは、社員一人ひとりが働く魅力・やりがいをどのように実感しているかを示すものとして、最重要指標の一つと位置付けており、取締役の報酬を構成する業績連動型株式報酬の業績評価指標にも組み入れております。2022年3月期の調査開始以来、エンゲージメント向上に向けた各種取組の効果として、スコアは順調に上昇しております。2025年3月期には、中期経営計画とあわせてグループパーパス「共に歩み、未来をひらく 多様な幸せと希望に満ちた世界へ」を制定し、パーパス浸透に向けてトップメッセージの発信をはじめ複数の施策を実施いたしました。
⑪健康経営
当社グループは、「生活習慣病予防」と「メンタルヘルス対策」の2つを柱とする健康維持・増進施策を通じた重症化予防、女性の健康、両立支援策に取り組むことで、社員Well-being実現の土台となる「健康経営®」を推進しております。また、社員のみならず、お客さま、地域・社会の健康増進に寄与する「健康経営®」を推進することを通じて、すべての人々のWell-beingへの貢献に挑戦しております。2025年3月期には、「第一生命グループ健康経営宣言」を制定しておりグループ一体での健康経営推進に向けて、更なる取組の充実を図ってまいります。
(3) 各種取組を図る指標
(注) 1 実績は2025年4月時点、目標は2027年3月期末時点であります。
2 実績は2025年3月期末時点、目標は2026年3月期末時点であります。
3 実績は2025年4月時点、目標は2030年4月時点であります。
4 実績は2025年3月期末時点であります。男性育児休業取得率については、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合の算出基準に則して算出しております。なお、前事業年度に配偶者が出産した男性労働者が当事業年度に育児休業を取得した場合を含むため、100パーセントを超えております。また、目標は第一生命ホールディングス株式会社、第一生命保険株式会社、第一フロンティア生命保険株式会社、ネオファースト生命保険株式会社を対象としております。
文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、本書提出日現在において、当社及び当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
当社は、当社グループの経営に重要な影響を及ぼす可能性のある予見可能なリスクを「重要なリスク」として特定しております。当社グループの重要なリスクについては以下のとおりであります。
<重要なリスクと選定プロセス>


重要なリスクの特定にあたっては、グループ会社における重要なリスクの洗い出し結果をもとに、各リスクの影響度(※1)・発生可能性を4段階で評価し、ヒートマップを用いて、重要度の高いリスクをグループベースの重要なリスクとして特定し、毎年度見直す運営としております。また、現時点では重要なリスクではないものの、新たに現れてくることが想定されるリスクとして「エマージングリスク(※2)」の洗い出しも毎年度実施しております。
これらのリスクを踏まえた事業計画を策定することで、リスク認識を踏まえたPDCAサイクルを推進し、予兆段階から適切にリスクの管理を実施しております。
※1 影響度は経済的損失額、レピュテーション(売上・経営責任・株価への影響)等の要素を考慮しております。
※2 環境変化等により、新たに現れてくることが想定されるリスク
当社は、これら「重要なリスク」の管理状況を定期的に経営会議、取締役会に報告しており、その状況を認識した上でリスクの発生の回避に向けた対応を推進するとともに、リスクが顕在化した場合には迅速かつ適切な対応に努めております。
なお、当社グループのリスク管理体制については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ⑦ リスク管理体制の整備状況」に記載のとおりであります。
以下に「重要なリスク」並びに投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられるその他のリスクを列挙しております。
(1) 市場・信用・流動性に関するリスク
1) 国内外の金融市場・経済情勢の悪化に関するリスク
日本経済を取り巻く環境は、依然として不透明感が強まっております。2024年度には日本銀行が2度の利上げを実施し、これに伴い長期金利水準が上昇しました。さらに、2025年4月には米国のトランプ政権が「相互関税政策」を発表し、主要貿易相手国に対して追加関税を課す等の措置を導入したことにより、世界的な株式市場が下落し、金融市場の不安定化が進みました。また、ロシアによるウクライナ侵攻の継続や中東地域における地政学的緊張の高まりなど、国際情勢の不安定化に起因するボラティリティの上昇にも引き続き警戒が必要です。今後も、各国中央銀行の金融政策の動向や、米国トランプ政権による通商政策の影響等が世界経済及び金融市場に与える影響は大きく、先行きには不透明感が残ります。
世界的に経済や金融市場の先行き不透明感が一段と強まった場合、金融資本市場は更なる不安定化に直面し、資産価格の下落や市場のパフォーマンス悪化につながる可能性があります。深刻な金融不安が発生した場合には、主要経済圏における経済活動にも大きな影響を及ぼす可能性があるため、引き続き慎重な対応が求められます。
当社グループは、ストレス・テスト等によるリスク耐性の確認を定期的に実施しており、健全性が懸念される場合には速やかにリスク削減のアクションプランを講ずる等の態勢を構築しておりますが、こうしたリスクが現実となった場合、当社グループの保険商品への需要が低下する可能性や、個人保険の解約・失効率が上昇するおそれがある他、低金利や株価下落による資産運用収支の悪化等、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、2024-2026年度中期経営計画において、財務健全性の確保に向けて、経済価値ベースの資本充足率(以下、ESRという。)のターゲット水準を170~200%としておりますが、2025年3月末のESRは210%と200%を上回る水準を確保しております。
第一生命では、金利・株式等の市場リスクの削減に継続的に取り組んでおり、現行中期経営計画期間においては株式リスクの削減ペースを加速する計画を織り込み、金融市場変動の影響を受けにくい財務体質に向けた取組みを強化しております。2024年度は、国内株式削減計画の着実な実施による株式リスク削減とあわせて、金利リスク削減に向けても超長期債券の継続的な買入れや入替えの実施、個人保険契約に関わる財務的なリスクを外部の再保険会社に移転する再保険取引等の取組みを進めております。
2) 株式投資に関するリスク
国内株式市場を含むグローバル金融市場は、世界的な経済・金融情勢により大きく変動いたします。経済危機及び主要経済大国における景気回復見通しの不透明感等に起因して株価が急落する場合、有価証券評価損・売却損の増加及び有価証券含み益・売却益の減少を通じて当社グループの資産運用収支、純資産及びソルベンシー・マージン比率やESR等の健全性指標等を著しく悪化させ、当社グループの財務内容に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、その他有価証券評価差額金は、当社グループの純資産と支払余力及びソルベンシー・マージン比率に影響を及ぼします。
株式市場の著しい低迷及び経済状況の悪化による保有株式の価値減少に係るリスクに備えるため、第一生命においては将来的な株価下落によるリスク顕在化に備え、株式の売却やデリバティブの活用を通じたリスク・コントロールを実施しておりますが、今後、国内外の経済状況及び株式市場が大きく悪化した場合には、当社グループに重大な損失をもたらし、当社グループの財務内容に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
3) 金利変動に関するリスク
当社グループでは、保険契約の引受けによって生じる負債に見合った運用資産を適切に管理するため、長期的な資産・負債間のバランスを考慮しながら安定的な収益の確保を図ることを目的として、資産・負債総合管理(Asset Liability Management。以下、「ALM」という。)を行っておりますが、金利の乱高下といった大幅な市場環境の変動等が起きた場合には、当社グループの財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、中長期金利が長期にわたり著しく低水準で推移した場合には、収益性の確保が困難になり、販売中止を余儀なくされる貯蓄性商品が今後も発生する可能性があります。
第一生命ではALMの考え方に基づき資産と負債のデュレーション(残存期間)を一致させる取組みを継続しております。金利の低下局面では、より低い金利水準を求めて期限前償還又は繰上返済される債券や貸付及び満期を迎えて償還される資産を再投資した際の運用利回りは従来より低くなるため、平均運用利回りは低下いたします。既契約の保険料が原則として変わらない一方、このような低い金利水準により資産運用ポートフォリオの利回りが低下することで、当初想定していた運用収益が確保できない、あるいは逆ざや(資産運用ポートフォリオの平均利回りが既契約の保険料率の設定に用いた予定利率を下回る状態)となる可能性があり、当社グループの収益性及び長期的な事業運営能力に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
逆に、金利が上昇する局面では、資産運用利回りが上昇することにより資産運用ポートフォリオの収益力を向上させることができる一方で、保険契約者がより高収益の資産運用手段を求めることにより保険契約の解約が増える可能性があります。更に、金利上昇時は債券等の価格が下落し、含み損益の悪化により純資産にマイナスの影響を及ぼします。当社グループは金利上昇リスクに対応し、会計上、一定のデュレーションマッチングを条件に簿価評価が可能な責任準備金対応債券を積極的に活用することにより、かかる影響を緩和しておりますが、金利が短期間で大幅に上昇した場合は当社グループの財務内容及び収益性に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、第一フロンティア生命においては、保険契約の引受けによって生じる負債に見合った運用資産を適切に管理するためALMを行っており、金利変動によるESRへの影響は限定的に留まる見込みですが、金利変動に伴う資産と負債の会計上の評価額の計上方法の違い等により、当社グループの純資産と支払余力及びソルベンシー・マージン比率に影響を及ぼす可能性があります。これについては、再保険を活用することで、上記影響を緩和する等の対策を行っております。
4) 資産運用ポートフォリオに係るその他のリスク
安定的な資産運用収益の獲得は当社グループの事業運営にとって重要であるため、当社グループの資産運用ポートフォリオは、国内外の公社債及び株式以外にも、貸付金、不動産並びにオルタナティブ投資等幅広い資産区分に分散投資することでリスク抑制的な運営を行っておりますが、以下に掲げる様々なリスクを回避できない可能性があります。
a 為替リスク
当社グループの保有する有価証券には外貨建のものも含まれております。外貨建の有価証券とは、主に外国債券(外国の国債・政府機関債・社債等)、外国株式及び証券化商品でありますが、特別勘定において保有するもの及び外貨建商品に係る責任準備金に実質的に対応させて保有するものを除いて、外国為替相場の変動による時価の変動が当社グループの業績に実質的に影響を及ぼします。当社グループは、保有する外国債券の一定割合について外国為替相場の変動をヘッジしておりますが、著しい為替差損等が生じた場合、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
b 信用リスク
当社グループが保有する債券の発行体の信用力が信用格付けの引下げ等により低下し、債券の市場価格が下落する可能性及び保有する債券の発行体が元利金不払い等債務不履行に陥る可能性があります。その結果、有価証券評価損が発生したり、有価証券売却損益・含み損益が悪化することで、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが市場リスクをヘッジするために用いている金利スワップ、為替予約、株価指数先物等のデリバティブ取引についても、カウンターパーティー・リスク(デリバティブ取引等の相手方の信用リスク)を有しており、カウンターパーティーに債務不履行が生じた場合には、有価証券評価損及びその他損失の発生や、有価証券売却益及びその他利益の減少につながる可能性があり、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは貸付先の財務内容や信用力が悪化するリスクにさらされており、当該リスクは当社グループの貸付金ポートフォリオの信用コストを上昇させる可能性があります。即ち、当社グループは貸付先に関する評価・見積りに基づき貸倒引当金を計上しておりますが、国内外の経済状況の悪化や業種固有の問題等により債務不履行や信用力の低下が発生した場合には、実際に発生する損失が引当金を超過し又は引当金の増額が必要となり、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは国内の大手金融機関に対して相当量のエクスポージャー(与信等の残高)を有しておりますが、それは主に劣後債であります。一般的に、これら劣後性証券の価値はシニア債券の価値に比べて、発行体である銀行の信用情報の変化に、より大きく影響を受ける傾向があります。そのため、国内の銀行の信用状況や財務内容が悪化した場合には、有価証券評価損、引当金の増額及びその他損失の発生又は有価証券売却益及びその他利益の減少につながる可能性があり、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
c 不動産投資に関するリスク
当社グループは、営業・投資を目的とする不動産を保有しております。景気低迷により、不動産価格や賃貸料の下落及び空室率の上昇等が生じた場合には、当社グループの不動産関連収益は減少し、結果として、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
5) 資産流動性に関するリスク
当社グループが提供する多くの商品は、契約者が積立金の一部を引き出すこと及び契約を解約し解約返戻金を受け取ることを認めております。
当社グループは、今後予想される積立金の引出しや解約の請求、保険金・給付金等の支払い及び金融機関等とのデリバティブ契約に関する担保の差入れ要請に対応するために十分な流動性を提供し維持できるよう、負債の管理と資産運用ポートフォリオの構築をしており、また、流動性を高めるために当座借越契約を締結しております。一方で、不動産、貸付金及び私募債等の一部の資産は一般的に流動性に乏しいものであります。当社グループが、例えば、不測の引出しや解約、感染症の大流行等の大規模災害により、急遽、多額の現金の支払いを求められる場合、当社グループの流動資産及び当座借越が無くなり、その他の資産も不利な条件で処分することを強いられる可能性があります。更に、金融市場における混乱は、当社グループが有利な条件で資産を処分できない又は全く処分できないといった、流動性における危機をもたらす可能性があります。当社グループが不利な条件での資産の処分を強いられる又は資産を処分できない場合には、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 保険引受に関するリスク
1) 保険商品の料率設定及び責任準備金の積立ての前提が変動するリスク
当社グループの収益は、当社商品の料率設定及び責任準備金額の決定に用いる計算基礎率が保険金・給付金等の支払い実績とどの程度乖離するか等に大きく影響されます。計算基礎率には、将来の死亡率(予定死亡率)、資産運用収益率(予定利率)、事業費率(予定事業費率)を含みます。計算基礎率よりも実際の死亡率が高かった場合、資産運用収益が低かった場合、事業費がかかり過ぎた場合には、当社グループの財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、標準生命表や標準利率の改定は計算基礎率の設定に影響し、結果として会社の財務内容及び業績にも影響を及ぼし得ます。近年、当社グループが販売に力を入れている「第三分野」の保険商品(医療保険、がん保険、介護保険等)の料率設定の計算基礎率は、伝統的な死亡リスクを保障する生命保険商品の計算基礎率に比べて限定的な経験に基づくことが多く、相対的に高い不確実性を内包しております。
当社グループは、保有契約の責任準備金について定期的に計算を行い、責任準備金の変動分を費用又は収益として計上しております。保険金・給付金等の支払い実績が当初の計算基礎率より多額となる等により責任準備金の積立不足が顕在化した場合、又は環境の変化によって当社グループの責任準備金の計算基礎率を変更せざるを得ない場合においては、当社グループは責任準備金の積増しを行うことが必要となる可能性があります。このような積増しが多額である場合には、当社グループの財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが販売している円貨建及び外貨建定額商品等の中には、市場価格調整(MVA)を設定するものがあり、国内外の市場金利の低下局面においては責任準備金の積増し、上昇局面においては責任準備金の取崩しが必要となることから、会計上の一時的な変動要因となる可能性があります。更に、当社グループで販売している変額年金保険の中には、最低給付の保証を特徴とするものがあります。この保証型商品については、責任準備金に不足があれば積増しを行う必要があり、結果として費用が増加する可能性があります。当社グループは再保険契約の締結等によって最低給付保証に係るリスクのヘッジに努めておりますが、こうした取組みが成功するとは限らず、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
2) 医療技術の発展に関するリスク
近年、人口構成や疾病構造の変化により、医療はその対象を疾患治療そのものだけでなく疾患罹患予測や予防へと大きくシフトさせています。また、医療者だけでなくバイオテクノロジー、製薬、ヘルスケアなどさまざまな健康関連事業者が医療分野に参入し、疾病と健康の境界があいまいになってきております。これらの変化は疾患の早期診断や早期治療を可能にしました。しかし、更なる技術開発が進んだ場合、将来の疾患リスクを詳細に把握できることも想定され高リスクのお客さまが積極的に高額保険に加入(逆選択)するリスクの増加、また、従来であれば発見されなかった疾病の発見や疾患基準の拡大等により保険金等の支払いが大幅に増加する可能性があります。
当社グループでは、新たに開発する保険商品、保有契約の保障内容を踏まえ、これらのリスクに備えて、医療技術全般に関し、その動向を調査し、数年後を見据えた技術の精度や普及度を評価することで、生命保険の引受け、支払いに与える影響等を分析しております。
また、医療技術の発展に伴い、保険会社にとってはリスクを細分化した保険引受が可能になりますが、個人のヘルスデータの利活用の権限やその範囲は一般に定められたものはなく、お客さまの期待を超えて保険引受に活用した場合には、当社グループの信用が著しく失墜し、損失を被る可能性があります。
3) 再保険取引に関するリスク
当社グループは、責任準備金の積立てにかかるリスクの軽減や金利リスク削減等のため、再保険契約を活用しております。しかし、再保険取引は、将来適切な条件で締結できない又は再保険の締結自体ができないリスクがあるとともに、カウンターパーティー・リスクにさらされており、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) オペレーショナル・テクノロジー・サイバーに関するリスク
1) サイバー攻撃・システム障害に関するリスク
当社グループでは、グローバルに展開するグループ経営を安定的に支え、世界各国のお客さまへの持続的な価値提供を実現するために、「グループITガバナンス基本方針」を制定し、COBIT(※3)をベースとしたグループITガバナンスの態勢整備を推進しております。
また、ITガバナンスの推進をベースに、国内外のグループ保険事業会社のIT責任者を交えた定期的なカンファレンス開催による継続的な情報共有、及び各社の課題意識に沿ったグループ会社間の協働取組を推進することで、グループシナジーを創出して、グローバル経営に貢献するIT活用を目指しております。
しかしながら、当社グループの事業運営は、外部の業務委託先によるものを含め、情報システムに大きく依存しております。当社グループは、これらのシステムに依拠して、保険契約の管理、資産運用、統計データ及び当社グループのお客さまの個人情報の記録・保存並びにその他の事業を運営しております。当社グループが事業運営や商品ラインアップを拡大するにつれて、情報システムへの多額の追加投資が必要となる可能性があります。その結果として、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、事故、火事、自然災害、停電、アクセス集中、人為的ミス、妨害行為、従業員の不正、ソフトウェアやハードウェアのバグや異常、ハッキングや不正メールによるウィルス感染等のサイバー攻撃又は設備、ソフトウェア、ネットワークの障害等の要因により、当社グループの情報システムが機能しなくなる可能性があります。このような障害は、当社グループがお客さまに提供するサービス、保険金・給付金等の支払いや保険料の集金、資産運用業務等を中断させたり、当社グループから発信する情報に誤りが生じる等の可能性があります。例えば、2023年9月には新契約価値等の数値に誤りがあることが判明し、決算補足資料や有価証券報告書などの公表値を訂正いたしました。このような事案を含め、サイバー攻撃・システム障害に関するリスクが顕在化した場合には、当社グループのレピュテーションの低下、お客さまの不満やお客さまからの信頼の低下等のその他の深刻な事態をもたらす可能性があり、また、既契約の解約の増加、新契約販売の減少、行政処分につながるおそれもあります。その結果として、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
※3 COBIT:米国の情報システムコントロール協会・ITガバナンス協会の提唱するITガバナンスの成熟度を測るフレームワーク
2) 情報漏えいに関するリスク
当社グループは、自社システムだけなく、外部の業務委託先によって提供されるものを含め、オンラインサービスや集中データ処理を広く利用しております。そのため、機密情報・個人情報を厳格に管理することは当社グループの事業において重要であります。しかし、外部からの不正アクセスによる当社グループ及び外部の業務委託先等の情報システム等からの情報漏えいや、当社グループ社員による社外活動時の紛失等による情報漏えい等のリスクが全くないとは限りません。これら漏えいした情報を不正利用された場合には、お客さまにご迷惑をお掛けするとともに、当社グループが損害賠償を請求されるなど、当社グループのレピュテーションを大きく低下させ、当社グループの財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
3) 環境変化による態勢逼迫及び統制不備に関するリスク
当社グループでは、お客さまからの解約や保険金・給付金等の請求に迅速に対応するため、また円滑な業務遂行のため、各社での事務態勢構築に努めております。第一生命では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、保険金・給付金等の請求が急増したため、保険金等支払部門の人員を一時的に増強する等の対応を実施いたしました。今後同様の感染症の拡大(パンデミック)が発生した場合は、再度事務態勢が逼迫する可能性があります。経済環境や規制環境の変化、事業規模や事業領域の拡大、感染症発生等の環境変化に対し、既存の事務態勢では対応できない場合や、内部統制等の態勢構築が追い付かない場合には、お客さまに不利益を及ぼすだけでなく、当社グループのレピュテーションが低下し、また当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4) 法令違反・コンダクト・企業文化に関するリスク
1) 不正行為等により企業価値が毀損するリスク
営業職、内勤職、販売代理店及び外部の業務委託先等により、金銭不正行為、顧客保護に反する等違法又は不適切な募集行為、個人情報等の漏えいや不適切利用、違法行為及び不適切な行為が行われる可能性があります。当社グループではこのような行為を防ぎ、見破るための対策をとっておりますが、これらの詐欺、違法行為及び不適切な行為を排除できなかった場合、当社グループのレピュテーションが大幅に低下するとともに、重大な法的な責任を問われ、行政処分につながるおそれがあります。それらの結果として、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
第一生命では、2020年から2023年にかけて、元従業員による金銭の不正取得事案が複数明らかとなりました。
これを受け、第一生命では、個人保険・個人年金保険のお客さまを網羅的に対象として、金銭の不正取得等の被害を受けていないかどうかの確認を実施するとともに、第一生命の商品の取扱いにおいて、同社の従業員がお客さまから直接金銭を授受することを禁止する事務手続の構築等を含めて、金銭に係る不正行為の撲滅に向けた体制整備・取組みを実施しました。
第一生命では、こうした事案の発生を受け、徹底した企業文化・風土の改革に取り組み、これに応じた営業方針の見直しを行いましたが、今後、他の金銭不正に関する事案が判明する等の場合には、第一生命並びに当社グループの社会的信用が更に毀損されることになり、業務運営に影響を及ぼす可能性があるほか、追加的な営業方針の見直し等が必要となる場合が考えられ、その場合、当社グループの事業運営、業績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
2024年8月には、第一生命から保険代理店への出向者により、当該保険代理店におけるお客さまの個人情報が当社グループ保険会社に漏えいしていた事案が判明いたしました。保険代理店における当社グループの実績把握等を目的としたものでしたが、このような不適切な情報取得は許されるものではなく、再発防止を進めております。今後、同様の事案が発生する場合や、取得した情報の不適切利用が判明した場合には、第一生命及び当社グループのレピュテーションの更なる低下を招くとともに、重大な法的な責任を問われるおそれがあります。それらの結果として、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、保険契約の詐欺的な使用や、保険契約時のなりすまし等、社外の違法又は不適切な行為が発生する可能性もあります。反社会的勢力であることを秘して当社グループと取引を行う者もおります。当社グループではこのような詐欺的行為を防ぎ、見破るための対策をとっておりますが、これらの詐欺、違法行為又は反社会的勢力との取引を排除できなかった場合、当社グループのレピュテーションが大幅に低下するとともに、重大な法的な責任を問われるおそれがあります。それらの結果として、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
2) 人権侵害に関するリスク
当社グループは、事業活動が人権に対して影響を及ぼす可能性があることを認識しております。サプライ
チェーンを含む当社グループの事業において人権侵害に該当する事案が生じた場合には、不買運動やSNSでの炎上などのレピュテーションリスク、訴訟や行政罰などの法務リスク、ストライキや人財流出などのリスク、株価下落などの財務リスク等につながる可能性があります。また、当社グループの進出国に重大な人権侵害問題が発覚した場合には、進出国からの撤退を余儀なくされるおそれもあります。それらの結果として、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、すべての役員・社員がプリンシプルベースで考え、行動するにあたって最も基本的な指針となるものとして「第一生命グループ行動規範」を定め、その中で私たちがとるべき行動の一つとして「人権の尊重」を掲げております。
また、「第一生命グループ人権方針」を定めたうえで、「人権方針」に基づいた人権デュー・ディリジェンスの取組みを推進しており、①方針の策定とコミットメント、②人権リスクの特定と影響の評価、③是正と救済策の実施、④情報開示とモニタリング、を定期的に実施することにより、人権侵害の未然防止と救済に取り組んでおります。
(5) パンデミック・大規模災害等に関するリスク
1) 大規模災害等に関するリスク
当社グループは、東京等の人口密集地域又は広範囲な地域を襲う地震・津波・テロ・紛争・戦乱等の大規模災害を原因として大量の死者が出た場合に、保険給付に関する予測不可能な債務を負うリスクにさらされております。当社グループは、業界慣行や会計基準に従って危険準備金を維持しておりますが、こうした準備金が実際の保険給付債務をカバーするのに適切な水準にあるとは限らず、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。更に、物理的な被害その他のこうした大規模災害の影響により、当社グループの業務運営に重大な支障を来す可能性があります。
更に、当社グループが主に事業を展開する日本国内の業務及び情報システム等は、外部の業務委託先及び取引先と同様に首都圏に集中しているため、首都圏に被害を及ぼす地震等の災害によって当社グループの事業運営が著しい混乱に陥る可能性があります。地震等の災害が発生した場合には、当社グループ、外部の業務委託先及び取引先が直ちに業務を再開できるとは限らず、その結果として当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
2) パンデミックに関するリスク
新型コロナウイルスや、鳥インフルエンザ・新型インフルエンザのような感染症の大流行を原因として大量の死者が出た場合に、保険給付に関する予測不可能な債務を負うリスクにさらされております。当社グループは、業界慣行や会計基準に従って危険準備金を維持している他、ストレス・テスト等によるリスク耐性確認を定期的に実施しておりますが、感染の世界的な拡大や金融市場の混乱といったストレス・シナリオの想定を大幅に超える事態が発生した場合等においては、こうした準備金が実際の保険給付債務をカバーするのに適切な水準にあるとは限らず、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
3) 気候変動及び自然資本・生物多様性の喪失に関するリスク
2016年のパリ協定発効により、環境問題とりわけ気候変動への対応は国際社会全体で取り組む課題であるとの認識が高まっております。グローバルに生命保険事業及びアセットマネジメント事業を展開する当社グループにとっても、気候変動はお客さまの生命や健康、企業活動、社会の持続可能性等に大きな影響を与えうる重要な経営課題と認識しております。
当社グループは、気候変動が及ぼすリスクと機会の評価によって経営のレジリエンス(強靭性)を強化するとともに、その状況の開示によるステークホルダーとの健全な対話を通じた企業価値の向上を図るために、2018年9月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言への賛同を表明いたしました。また、2021年3月期には、第一生命で、本邦初となる「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス (※4)」への加盟を通じて、2050年までの運用ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロを表明いたしました。第一生命が加盟する「RE100(Renewable Energy 100%)(※5)」については、2024年3月期までの達成を目標として掲げ、1年前倒しとなる2023年3月期の実績においてRE100達成企業の認定(※6)を受けました。
気候変動に関する物理的リスクと移行リスク(政策・法規制リスク、技術リスク、市場リスク、レピュテーションリスク)は当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。物理的リスクとしては、温暖化に伴う熱中症や感染症の増加による保険金・給付金支払額の増加、台風等による水害発生の増加に伴う保険金・給付金支払額の増加等が想定されます。また、移行リスクとしては、炭素税導入、市場・社会環境変化による資産の毀損、新技術開発、消費者行動の変化への対応等の環境変化への対応が不十分な企業への投融資価値の低下、当社グループの気候変動に関する対応が不十分なことによりレピュテーションが悪化するリスク等が想定されます。
また、気候変動とともに重要な環境問題の一つとして認識されている自然資本・生物多様性の喪失について、自然資本・生物多様性はあらゆる事業活動の基盤であることから、当社グループにとっても、お客さまの生命や健康、企業活動、社会の持続可能性等に大きな影響を与えうる重要な経営課題と認識しております。
2022年10月にTNFD(Task Force on Nature-related Financial Disclosures)の議論をサポートし、枠組み構築の支援を行うことを目的として設立されたTNFDフォーラムに参画し、2023年12月にはTNFDが2023年9月に公開した開示提言(TNFD提言)の採用者として、TNFD Adopter(※7)に登録いたしました。
自然資本・生物多様性に関する物理的リスクや移行リスク、システミックリスクは、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。物理的リスクとしては、自然資本・生物多様性の喪失を原因とする災害の深刻化や汚染に伴う感染症の増加による保険金・給付金の増加等が想定されます。移行リスクとしては、自然資本・生物多様性の保全への対応が不十分な企業の投融資価値の低下、当社グループの自然資本・生物多様性の保全に関する対応が不十分なことによるレピュテーションの悪化等が想定されます。また、システミックリスクとしては、あらゆる事業活動の基盤である自然資本・生物多様性が喪失することで、経済全体に影響が及び、当社グループの資産価値が毀損するリスク等が想定されます。
なお、「気候変動」と「自然資本・生物多様性の喪失」は個々に独立したリスクではなく、相互に影響し合う関係にあるという認識のもと、リスク評価等においても一体的に取り組んでいます。
※4 2019年に設立された、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロのポートフォリオに移行することを目指す機関投資家の国際イニシアティブ
※5 事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際イニシアティブ
※6 RE100 Annual Disclosure Report 2023 のデータを参照しております
※7 TNFD提言に基づく開示を2025年3月期または2026年3月期のいずれかにおいて行うことを表明した企業のこと
(6) その他のリスク
1) 法規制に関するリスク
a 当局の監督権限に関するリスク
当社及び当社グループの国内保険会社、国内少額短期保険業者は、保険業法及び関連業規制の下、金融庁による包括的な規制等の広範な監督下にあります。また、当社グループの海外生命保険会社は、それぞれが事業を行う国や州等の法令や規制等の影響を受け、加えて、特に必要と認められる場合においては、金融庁による報告徴求命令や立入検査を受けることになります。
例えば、日本の保険業法は、保険会社が行える事業の種類ごとに規制を設けるとともに、保険会社および保険持株会社に一定の準備金や最低限のソルベンシー・マージン比率を維持させることとしております。保険業法は、内閣総理大臣に対して、免許取消しや業務停止、報告徴求、会計記録等に関する厳格な立入り検査の実施等、保険業に係る広範な監督権限を与えております。また、保険業法その他の法令等のうち特に重要なものに違反した場合等には、内閣総理大臣は保険会社の免許や保険持株会社に係る認可を取り消すことができます。また、保険会社の財産の状況が著しく悪化し、保険業を継続することが保険契約者等の保護の見地から適当でないと認められる場合にも、内閣総理大臣は保険会社の免許を取り消すことができます。
このように、仮に、監督当局によって当社グループの保険会社や少額短期保険業者の免許や保険持株会社に係る認可が取り消されることになれば、その会社は事業活動を継続できなくなり、当社グループの業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
b ソルベンシー・マージン比率等の規制に関するリスク
現在、当社及び当社グループの国内保険会社、国内少額短期保険業者は、保険業法及び関連業規制に基づき、自己資本の充実度合いを計る基準であるソルベンシー・マージン比率を200%超に維持するよう要求されております。また、当社グループの海外生命保険会社についても、各国の規制等により財務健全性を一定水準に保つことが求められております。
例えば、国内生命保険会社がソルベンシー・マージン比率やその他の財務健全性指標を適切なレベルに維持できない場合には、内閣総理大臣はその生命保険会社に対して早期是正措置を命じることができます。具体的には、生命保険会社もしくは保険持株会社のソルベンシー・マージン比率が200%を下回った場合に、その状況に応じて内閣総理大臣の是正措置命令が発動されることで、保険会社もしくは保険持株会社に対して早期に経営改善への取組みを促す制度であり、ソルベンシー・マージン比率の水準等に応じて、措置内容が定められております。また、実質純資産額(※8)がマイナス又はマイナスと見込まれる場合にも、内閣総理大臣から業務の全部又は一部の停止や子会社等(保険会社及び少額短期保険業者に限る。)の株式の処分を命じられる可能性があります。このような早期是正措置により、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、金融庁は、現行のソルベンシー・マージン規制を改正し、2026年3月期に新たな経済価値ベースのソルベンシー規制を導入する検討を進めております。2024年10月31日に金融庁が公表した規制改正案は、現在の規制とは大きく異なっており、本改正によって生じる変更やそれに伴う制約が、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
※8 実質純資産額とは、貸借対照表の資産を基礎として計算した額(有価証券・不動産等について一定の時価評価を行ったもの)から負債の部に計上されるべき金額を基礎として計算した額(負債の額から価格変動準備金・危険準備金の額を差し引いた額)を控除した金額をいい、内閣総理大臣による早期是正措置において、実質的な債務超過の判定基準として用いられる額であります。
c 国際的な規制に関するリスク
保険監督者国際機構(以下、「IAIS」という。)は、国際的に活動する保険会社グループ(以下、「IAIG」という。) を対象とした共通の監督の枠組みであるコムフレームを開発しており、2019年11月に採択されております。金融庁は、国内における現行のソルベンシー・マージン規制を改正し、2026年3月期に新規制を導入する検討を進めておりますが、当該新規制の基本的な考え方は「ICSの仕様と基本的な構造は共通にした上で、合理性が認められる範囲において国内独自の修正を行った基準を全保険会社及び全保険持株会社に対して適用し、連結規制においてはこれをもってIAIGに対するICSの国内実施とすること」であると示されております。2024年10月31日に金融庁が公表した規制改正案は、現在の規制とは大きく異なっており、本改正によって生じる変更やそれに伴う制約が、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
2022年10月にFATF(※9)はミャンマーを「行動要請対象の高リスク国・地域(いわゆるブラック・リスト)」に指定し、日本を含むFATF加盟国等に対し、強化された顧客管理の適用を要請しております。各金融機関における確認手続きの厳格化に伴い、ミャンマー関連を中心に金融取引の実行が遅延する等のリスクが考えられることから、引き続き動向を注視してまいります。
さらに、国際会計基準審議会は、2017年5月に国際財務報告基準(以下「IFRS」といいます。)第17号「保険契約」を公表し、以後2度にわたる修正を経て、発効日を2023年1月1日以後開始の事業年度としております。この基準は保険契約を経済価値で評価するため、毎期の金融市場の変動が純資産に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、保険契約に関する会計基準(IFRS第17号)について、保険会社の財務諸表作成に影響を及ぼす可能性を考慮し、現在継続して調査・研究しております。今後、IFRS又はこれに準じる基準を当社グループの会計基準において適用する場合には、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
※9 Financial Action Task Force(金融活動作業部会)の略。1989年のアルシュ・サミット経済宣言を受けて設立された、マネーロンダリング等対策の国際基準策定・履行を担う多国間の枠組みであります。国際基準の遵守が不十分な国・地域を特定し、改善状況をモニターするため、「行動要請対象の高リスク国・地域」等を公表しております。
2) 法改正に伴うリスク
日本及び当社グループが事業を営む海外各国において、法規制の改正及びその執行に関する政府方針の変更、当社グループ及び保険各社に対する規制措置並びに当社グループが取扱う商品ラインナップの拡大等に関連する規制動向は、当社グループの保険商品の販売に影響を及ぼし、コンプライアンス・リスクを高めるとともに、コンプライアンスの強化・改善のための追加支出や競争の激化をもたらし、当社グループの事業、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの事業には、多数の営業職及び販売代理店が関与しており、将来において規制の改正がなされた場合、適時にこれに適合した態勢をとることができるとは限りません。
また、日本の現行の所得税法は、当社グループが提供する大部分の保険商品の払込保険料の全部又は一部について所得控除を認めております。同様に、法人又は中小企業の契約者は、一定の条件の下で、定期保険や年金商品のような特定の保険商品につき、保険料の全部又は一部を経費として損金算入することが認められております。こうした当社グループの保険商品の保険料に対する税務上の取扱いに影響を及ぼす税制改正は、当社グループの新契約販売数、ひいては業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
3) デジタル変革(DX)の遅れに関するリスク
テクノロジーや情報を活用して業務の自動化や効率化を進め、お客さまに優れた顧客体験価値(CX)を提供するデジタル変革(DX)は、企業の差別化・競争力の源泉と考えられております。この認識のもと、当社グループでは、DXを重要な戦略と位置付け、「お客さまとの双方向による頻度の高いデジタルコミュニケーション」「生涯設計デザイナーを中心とする販売チャネルへのデジタルサポート」「データ・AIを活用した新しい商品・サービスの開発」等のDXを推進しております。
これら当社グループの取組みが他社に劣後した場合、もしくは革新的な新技術・新規参入者の登場により、マーケティング・商品開発・営業等の各分野で抜本的な革新が起こり、当社グループが対応できない場合は、新契約の獲得・既契約サポートにおける競争力が低下し、将来にわたって業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
4) 日本の人口動態に関するリスク
日本の合計特殊出生率は、1975年頃から長期に低下傾向にありました。2005年以降反転上昇したものの、近年は減少傾向が続いており、足元の水準は日本の人口置換水準からは遠い状況にあります。当社はこうした人口動態を踏まえた商品の開発や営業戦略の策定を行っておりますが、今後、更に人口が減少し、生命保険に対する需要が減少することになれば、当社グループの生命保険事業の規模が縮小し、財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
5) 保険販売が個人向け生命保険商品に集中しているリスク
当社グループの国内生命保険会社の保険料収入においては、個人向け生命保険契約によるものの占有率が高く、個人向け生命保険商品の販売においては、以下に掲げるものを含む様々な要因が影響を及ぼしております。
・国内の雇用水準及び家計所得水準
・貯蓄の代替商品及び投資商品の相対的な魅力
・保険会社の財務健全性、信頼性及びレピュテーションに対する一般的な認識
・出生率の動向及び高齢化といった日本の人口構成に影響を及ぼす長期的な人口動態
・販売チャネルや商品に対するお客さまのニーズ
このような要因の変化等は、当社グループの個人向け生命保険商品における新契約販売の減少又は既契約の解約・失効の増加をもたらし、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの国内保険事業では個人向け生命保険商品の販売チャネルの多様化・複線化を進めているものの、現時点では、大部分を営業職チャネルや銀行等の金融機関に依存しております。今後、新たなチャネルが規制や環境の変化等により、既存のチャネルに取って代わる程の規模に成長した場合や、営業職の採用環境が熾烈化し、想定の採用数を確保できずに営業職在籍数が大幅に減少する場合等には、当社グループは現在の競争力・収益性と市場シェアの維持という点において課題に直面し、結果として、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
6) 銀行・来店型保険ショップ等のチャネルでの保険販売に関するリスク
当社グループでは、営業職員チャネルに加え、銀行、証券会社及び来店型保険ショップ等の販売チャネルを活用し、多様化するお客さまニーズに対応した保険商品の提供を行っております。
第一フロンティア生命では、銀行・証券会社等を販売チャネルとした年金商品等の開発・販売を行っております。ネオファースト生命では銀行窓口や来店型保険ショップ等を通じて、医療保険など第三分野の商品を中心に、わかりやすく簡便な商品・サービスの提供を行っております。
当社グループでは、販売チャネル及び商品ラインアップの多様化を進めるとともに、競争環境に応じた戦略立案と商品提供に努めておりますが、以下を含む様々なリスクが存在します。
・販売戦略が想定どおりに実現しないリスク
・類似商品が競合他社から販売されることによる販売件数の減少
・手数料競争の激化による事業費の増加
・銀行・証券会社等の金融機関と当社営業職との間での競合の激化
さらに、変額年金保険等においては、国内景気の停滞、資産運用パフォーマンスの低下により需要が減少し、販売が低迷する可能性があります。
これらの要因により、当社グループが当該チャネルにおいて競争力を維持・強化できず、収益性の確保や目標とする業績の達成に至らない可能性があります。その結果、当社グループの事業展開、財務内容および業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
7) 競争状況に関するリスク
当社グループの国内生命保険会社は、日本の生命保険市場において、国内生命保険会社、外資系生命保険会社、保険子会社を保有している又は大手保険会社と業務提携している国内の大手金融機関との激しい競争に直面しております。特に、規制緩和、死亡保障性の保険商品に対する需要の低下及び外資系生命保険会社との競争の激化等により、日本の生命保険市場における競争環境は熾烈化しております。競合他社の中には、卓越した金融資産や財務力格付け、高いブランド認知度、大規模な営業・販売ネットワーク、競争力のある料率設定、巨大な顧客基盤、高額な契約者配当、広範囲に亘る商品・サービス等において、当社グループより優位に立っている企業もあります。
株式会社かんぽ生命保険は、巨大な顧客基盤や全国的な郵便局のネットワークの活用、日本郵政株式会社を通じた間接的な一部政府出資の存在等から、日本の保険市場における競争優位性を保持しております。当該競争優位性を保持したまま、株式会社かんぽ生命保険の業務範囲の拡大(保険金額の上限見直しや販売できる保険契約の種類拡大等)が進められた場合、当社グループの国内生命保険会社の競争力が相対的に低下する可能性があります。なお、当社と株式会社かんぽ生命保険は、両社の強みを相互補完・融合することで事業基盤を強化し、持続的な企業価値の向上を実現すること等を目的に業務提携を行っております。加えて、当社グループは、全国共済農業協同組合連合会、全国労働者共済生活協同組合連合会、日本生活協同組合連合会のような、競合する保険商品を提供している各種協同組合との競争にも直面しております。
また、各種の規制撤廃策は日本の生命保険業界における競争の激化をもたらしました。例えば、1998年から2007年の間に制定された数多くの規制緩和により、証券会社や銀行で保険商品が販売できるようになりました。更に、来店型保険ショップやインターネット等を主要な販売チャネルとして活用する保険会社も登場しています。当社グループは、こうした多様な販売チャネルを活用する保険会社との競争が今後更に激化していくと考えております。その他、日本の金融業界における新たな再編が生命保険商品の販売における競争環境に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループはそれぞれの海外市場において現地保険会社との競争に直面しております。
当社グループが競争力を維持できない場合には、このような競争圧力等により当社グループの新契約販売が減少するとともに既契約の解約が増加し、当社グループの事業及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
8) 訴訟リスク
当社グループのうち保険事業を営む会社は、恒常的に、保険事業に関連した訴訟を抱えております。現在及び将来の訴訟の結果について予想することはできませんが、その結果によっては、当社グループに多額の損害賠償責任が発生する可能性があります。当社グループでは、「グループコンプライアンス規程」の制定、グループコンプライアンス委員会の設置及び同委員会におけるグループ会社のコンプライアンス推進状況のモニタリング等を通じて可能な限り訴訟を受ける可能性を排除するための体制を整備しております。多大な法的責任が課された場合や訴訟への対応に多大なコストがかかった場合、当社グループのレピュテーションが低下し、また当社グループの事業、財務内容、業績及びキャッシュ・フローに重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
9) 風評リスク
当社グループは、不適切な事象の発覚等に端を発して、社名が報道・公表された場合に、当社グループの信用が著しく失墜し、損失を被る可能性があります。
当社グループは、プレスリリース及び適時情報開示等により信頼の維持・向上を図り、リスク顕在化の未然防止に努めておりますが、メディアにより事実とは異なる情報が流布された場合にも、保険契約者や市場関係者等が当社グループについて報道された情報に基づき理解・認識する可能性があり、それにより当社グループのレピュテーションが低下し、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
10) M&Aが想定どおりのメリットをもたらさないリスク
当社グループは、株式会社化以来、M&Aを成長戦略の一環と位置づけており、今後もその機会を追求してまいります。しかし、将来のM&Aについては、そもそも適切な買収対象があるとは限らず、また、適切な買収対象があった場合にも、当社にとって受入れ可能な条件で合意に達することができない可能性があり、この他、買収資金を調達できない可能性、必要な許認可が取得できない可能性、法令その他の理由による制約が存在する可能性があり、M&Aを実行できる保証はありません。また、買収実行後に買収対象企業の価値が低迷した場合には、減損処理が必要となる可能性もあります。当社グループは、近年、適切な買収対象の選定、M&Aの実行及び被買収事業の当社グループへの統合等につき経験を積み重ねておりますが、将来的なM&Aの成功は、以下のような様々な要因に左右されます。
・被買収事業の運営・商品・サービス・人財を当社の既存の事業運営・企業文化と統合させる能力
・被買収事業の商品・サービスと当社グループの既存事業分野とのシナジーが発揮できる度合い
・被買収事業の商品・サービスに対する継続的な需要
・当社グループの既存のリスク管理、内部統制及び報告に係る体制・手続きを被買収企業・事業に展開する能力
これらの結果、M&Aが想定どおりのメリットをもたらさなかった場合、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
11) 海外事業の拡大に関連するリスク
当社グループは、日本以外の収益基盤を確保するために、海外において保険事業を積極的に展開しております。特に、海外生保事業では、北米・オセアニア等の先進国の安定市場、アジアパシフィック地域のインド等の成長市場、長期的な拡大が見込めるアーリーステージの新興国市場と事業段階の異なる市場において、バランスよく事業展開をしております。また、展開地域の拡大に伴い、北米及びアジアパシフィック地域に、地域統括会社を設立し、経営管理・支援体制の強化を図っております。当社グループは、進出各国における保険事業のバリューアップに努めておりますが、生命保険商品の普及率が当社の予想水準、あるいは成熟市場の水準まで向上するとは限らず、その結果、当社グループの事業展開、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外への展開においては、以下を含む様々なリスクにさらされております。
・政情や治安の不安
・外国為替相場の変動
・不利益な税制の導入・改正
・法令や規制の予期せぬ変更
・お客さまニーズ、市場環境及び現地の規制に関する理解不足
・人財の採用・雇用及び国際的事業管理の難しさ
・新たな多国籍企業との競争
海外事業の拡大に取り組む中で、上記のような事業展開に関連する様々なリスクが顕在化し、想定した事業展開を行うことができない可能性があります。また、海外企業への投資に関連して減損が生じる可能性や、当社グループの目標を達成できない市場から撤退する可能性があります。これらの結果、当社グループの事業展開、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
12) 従業員の雇用等に関するリスク
当社においては、グローバル保険グループとしての海外を含めた高度な事業管理や、各保険会社における資産運用や保険数理など、従業員に高度な専門性が求められることから、優秀な人財を確保、教育・維持するためには特別な努力が必要となります。
また、国内保障事業において最大のウエイトを占める第一生命の事業は優秀な営業職を雇用・教育・維持できるかということに大いに左右されますが、優秀な営業職を確保するための競争が激化しております。営業職による保険販売は同社保険料収入の大部分を占めており、その中でも生産性の高い営業職による保険販売は、個人向けの保険商品の販売において非常に高い割合を占めております。営業職の平均的な離職率は同社の営業職以外の従業員に比べて著しく高く、生産性の高い営業職を維持し又は採用し続けるための努力が実を結ぶとは限りません。
当社グループが優秀な従業員を確保、教育・維持できない場合や、これらの事由により想定している販売計画を大幅に下回る場合には、当社グループの事業展開及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(7)「重要なリスク」以外の主なリスク
1) 当社グループの格付けの引下げ等に伴うリスク
当社グループの財務健全性が実際に悪化した又は悪化したと判断された場合、保険契約の解約・払戻しの増加、新契約販売の減少、費用の増加、当社グループの資産運用・資金調達・資本増強策に関連するその他の問題という形で、当社グループの事業展開、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの悪影響は、保険業界全体における格付けの引下げの可能性、否定的なメディア報道や風評、業績悪化のみならず、実際の当社グループ会社の格付けの引下げやソルベンシー・マージン比率等の健全性指標の大幅な悪化によって生じる可能性があります。また、特に他の生命保険会社と比較して、当社グループの健全性指標が大幅に悪化した場合には、当社グループの事業展開、財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの財務健全性が実際に悪化した又は悪化したと判断された場合に加え、当社グループが資金調達を行おうとする資本市場・信用市場が悪化した場合等にも、当社グループにとって有利な条件で資本増強ができない又は資本増強そのものができないおそれがあり、結果として、当社グループの事業展開、財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
2) 提携先との関係及び提携先の業績に係るリスク
当社グループは、販売チャネル及び商品ラインアップの拡大のために、損害保険ジャパン株式会社、アフラック生命保険株式会社、株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社りそなホールディングス及び株式会社かんぽ生命保険といった生命保険業界内外の企業と業務提携を行っております。これらの提携関係は、第三分野商品や年金商品等の販売の拡大や、事業基盤の強化を通して、持続的な企業価値の向上を実現すること等を目的としております。また、当社の関連会社で、国内最大級の年金資産運用会社であるアセットマネジメントOne株式会社は、株式会社みずほフィナンシャルグループと当社が出資している合弁会社であります。これらの戦略的提携先が、財務面等事業上の問題に直面した場合、業界再編等によって戦略的志向を変更した場合又は当社が魅力的な提携相手でなくなったと判断した場合には、当社グループとの業務提携を望まなくなる又は当該提携が解消される可能性があります。当社グループが業務提携を継続できない場合には、当社グループの事業展開及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
3) リスク管理に係るリスク
当社グループのリスク管理の方針・手続きは、保険引受リスク、資産運用リスク、流動性リスク、事務リスク、システムリスクを含む幅広いリスクへの対応を想定したものとなっております。当社グループのリスク・エクスポージャーの管理手法の多くは、過去の市場動向や歴史的データによる統計値に基づいております。これらの手法は将来の損失を予測できるとは限らず、将来の損失は過去実績によって示される予想損失を大幅に上回る可能性もあります。その他のリスク管理手法は、ある程度、市場やお客さま等に関する一般的に入手可能な情報に対する当社の評価に依拠しておりますが、それらの情報は常に正確、完全、最新であるとは限らず、また適切に評価されているとは限りません。更に、当社グループのリスク管理手続きにおいては、多数のグループ会社等の情報源から収集した情報を統合する過程で誤りが生じる可能性もあります。一般的に、これらのリスク管理方針・手続きにおける誤りや有効性の欠如は、当社グループの財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、事務リスクの管理においては、膨大な取引や事象を適切に記録し検証するための方針・手続きが必要となりますが、当社グループの方針・手続き自体が必ずしも有効であるとは限りません。従業員、提携先又は外部委託先による事務手続き上の過失は、当社グループのレピュテーション上又は財務上の損害をもたらす可能性があるとともに、行政処分につながるおそれもあり、これらの結果として、当社グループの財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
4) 退職給付費用の増加に関するリスク
当社グループは、年金資産の時価の増減、年金資産における収益率の低下又は退職給付債務見込額の計算基礎率及び資産運用利回りの変化により、当社グループの退職給付制度に関する追加費用を計上する可能性があります。また、当社グループには、将来、当社グループの退職給付制度の変更に伴う未認識の過去勤務費用の負担が生じる可能性があります。その結果として、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
5) 契約者配当の配当準備金に係るリスク
当社の連結損益計算書上の契約者配当準備金は費用として扱われ、これにより会計年度における純利益が減少いたします。契約者配当準備金は、第一生命に係るものでありますが、同社は契約者配当準備金の決定について裁量を有しており、契約者配当準備金の積立額の水準については、同社商品の競争力、業績、ソルベンシー・マージン比率等の様々な要素を考慮して判断する必要があります。その結果として、同社が現行水準を超える契約者配当準備金の積立てを行い、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
6) のれんの減損に係るリスク
当社グループは、他の企業又は事業を取得した場合、その取得に要した費用(取得原価)が受け入れた資産及び引受けた負債に配分された純額を上回る場合には、その超過額をのれんとして認識しており、連結貸借対照表上、のれん又は有価証券に計上しております。
当社グループは、毎期のれんの減損損失計上の要否における判定を実施しており、のれんを含む資産グループから得られる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスの場合、のれんを含む資産グループの回収可能額が著しく低下した場合、のれんを含む資産グループの経営環境が著しく悪化した場合等には、のれんの減損損失を認識する可能性があります。
7) 責任準備金の計算に係る会計基準の変更に関するリスク
責任準備金の積増しを求める基準変更が行われた場合には、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、国際会計基準審議会は、保険負債の現在価値評価を含む、保険契約に係る新会計基準を公表しております。保険負債の現在価値評価が導入された場合、当社グループは、その時々の金利水準等の計算要素を考慮した保険負債の現在価値に基づいて責任準備金を計算していく必要があります。保険負債の現在価値評価の導入を見越して、当社グループは、現行基準において必要とされる金額を超える責任準備金の積立てを行っておりますが、想定している以上の積立てが必要になった場合には、その結果、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
8) 繰延税金資産の減額に係るリスク
当社グループは、日本の会計基準に従い、将来の税負担額の軽減効果を有すると見込まれる額を繰延税金資産として、一部の繰延税金負債と相殺した上で連結貸借対照表に計上しております。繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する前提を含む様々な前提に基づいているため、実際の結果がこれらの前提と大きく異なる可能性もあります。また、将来的な会計基準の変更により、当社グループが計上できる繰延税金資産の金額に制限が設けられる場合や、将来の課税所得の見通しに基づき当社グループが繰延税金資産の一部を回収できないとの結論に至った場合には、繰延税金資産が減額される可能性があります。それらの結果、当社グループの財務内容及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、今後法人税率が変更され、法定実効税率が引き下げられる場合には、中長期的には当社グループの業績の向上及びエンベディッド・バリューの増加が見込まれる一方で、法定実効税率の引き下げ前の税率を前提として計上を行った繰延税金資産の取崩しが行われることにより、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
9) 持株会社体制に係るリスク
当社は持株会社であり、利益の大部分は、当社が保有する国内外の子会社や関連会社が当社に支払う配当によるものとなっております。一定の状況下では、保険業法及び会社法上の規制や、諸外国の規制により、子会社等が当社に支払うことができる配当の金額が制限される場合があります。また、子会社や関連会社が充分な利益を計上することができず、当社に対して配当を支払えない状況が生じた場合等には、当社は配当を支払えなくなるおそれがあります。
10) 生命保険契約者保護機構の負担金及び国内の他の生命保険会社の破綻に係るリスク
当社グループの国内生命保険会社は、国内の他の生命保険会社とともに、破綻した生命保険会社の契約者を保護する生命保険契約者保護機構(以下、「保護機構」という。)への負担金支払い義務を負っております。保護機構は、破綻した生命保険会社の保険契約を引き継ぐ生命保険会社に対する資金の提供等、特殊な役割を担っております。国内の他の生命保険会社と比較して、当社グループの国内生命保険会社の保険料収入及び責任準備金が増加する場合、当社グループの国内生命保険会社へ割り当てられる負担金が増加する可能性があります。また、将来的に、国内の他の生命保険会社が破綻した場合や、保護機構への負担金の支払いに関する法的要件が変更される場合には、当社グループの国内生命保険会社は保護機構に対して追加的な負担を求められる可能性があります。それらの結果、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、日本の他の生命保険会社の破綻は、日本の生命保険業界の評価にも悪影響を及ぼし、お客さまの生命保険会社に対する信頼を全般的に損ない、これにより、当社グループの国内生命保険会社の新契約販売が減少又は既契約の失効・解約が増加し、当社グループの財務内容及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度(2024年4月1日から開始し、2025年3月31日に終了した連結会計年度をいいます。以下同じ。) における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 財政状態、経営成績
①連結業績における概況
営業活動の成果である新契約年換算保険料は、第一生命が新商品の投入効果による活動量増加を背景に大きく回復したものの、2024年3月期が好調だった第一フロンティア生命における海外金利の低下を受けた販売減速で相殺され、国内全体では前連結会計年度比で減収となりました。海外保険事業では、Protective Life Corporationにおいて年金商品の販売が好調を維持した他、TAL Dai-ichi Life Australia Pty Ltdにおいて大型団体保険の獲得があったこと等から、海外全体で前連結会計年度比増収となりました。グループ保有契約年換算保険料は、国内外ともに前連結会計年度末比で増加しました。
当社グループの実質的な利益指標であるグループ修正利益(※1)は増益となりました。株式市場が高位安定で推移したことを背景に、第一生命において有価証券売却益が増加したほか、国内金利の上昇やオルタナティブ資産の増配によって順ざやが増加したこと等により、大幅な増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、グループ修正利益と同様の要因により、増益となりました。
※1 グループ修正利益とは、株主還元の原資となる当社独自の指標であり、グループ各社の修正利益を合計したものです。各社の修正利益は、キャッシュベースの実質的な利益を示します。持株会社である当社は、各社から受け取る配当金等に基づき株主還元を行います。
※2 年度末の数値を記載しています。
基礎利益の詳細については、「(参考1)当社グループの固有指標の分析」をご参照ください。
②主なグループ重要経営指標(KPI)の状況
中期経営計画で掲げたグループ重要経営指標は、グループ修正利益の大幅な増益や、国内の金融環境が好調に推移した影響により、概ね達成する結果となりました。
グループRoEV(※1)は、新契約獲得や期待収益の実現によるEVの増加を買収やインフレに伴う費用増等が打ち消し、△1.7%となりました。新契約価値は、海外子会社において、新基準の適用により保障性商品における割引率が低下し、評価が向上したことに加え、第一生命において新商品投入に伴い活動量が増加したこと等を主な要因として1,724億円となりました。
資本効率を示すグループ修正ROE(※2)は、10.7%となりました。グループ修正利益が大幅な増益となったことに加え、国内株式の削減が計画を上回り進捗したこと等により、現中期経営計画における10%の目標を前倒しで達成する結果となりました。また、翌連結会計年度においても、引き続き10%を上回る見通しであることから、目指すべきグローバルトップティアと当社のギャップを踏まえ、現中期経営計画期間中の目標水準を12%以上に引き上げております。グループ修正利益は、為替市場が円安に進行したことや良好な金融市場環境を背景に第一生命の順ざやが改善したこと等で、現中期経営計画期間最終年度における目標であった4,000億円を超過する4,394億円となりました。そして、現在の各事業戦略の進捗状況や経済環境等を踏まえ、現中期経営計画期間最終年度である2027年3月期の修正利益目標値を4,500億円に引き上げております。
財務健全性を示す資本充足率(ESR)は、210%となりました。株価下落や非保険事業への投資で発生したのれん等の影響により適格資本が減少となるも、市場リスクの削減による必要資本の減少等により相殺し、前期末(新基準ベース)と同水準を維持いたしました。
市場評価を示す相対TSR(※3)(※4)(※5)は、国内株式市場の上昇や、日本銀行の利上げ影響もあり堅調に推移し、競合14社との比較で第5位となりました。

※1 RoEVは、Return on Embedded Valueの略語で、EVの増加額を生命保険会計の特殊性を考慮した利益と見做し、企業価値の成長性を測定する指標であります。
※2 グループ修正ROEは、「修正利益÷{純資産-のれん・確定利付資産含み損益(税後)・市場価格調整(MVA)関連損益累計(税後)等}」にて算出しております。
※3 TSRとは、Total Shareholder Return(株主総利回り)の略語で、キャピタルゲインとインカムゲインを合わせた株主にとっての総合投資利回りを指しております。
※4 相対TSRは、以下の合計14社との比較であります。(HDとは、ホールディングスの略語です。)
国内保険グループ5社(かんぽ生命保険・T&DHD・東京海上HD・MS&ADインシュアランスグループHD・SOMPOHD)
海外保険グループ9社(AIA・Aflac・ Allianz・AXA・Manulife・MetLife・Prudential(米国)・Prudential (英国)・Zurich)
※5 2025年4月1日時点当社集計値であります。
※6 Dow Jones Sustainability Indices
※7 MSCI ESG Rating
〈当連結会計年度の業績〉
当連結会計年度の業績は以下のとおりであります。
① 経常収益
経常収益は9兆8,732億円(前期比10.5%減)となりました。経常収益の内訳は、保険料等収入が6兆7,959億円(同9.7%減)、資産運用収益が2兆5,284億円(同16.7%減)、その他経常収益が5,489億円(同17.3%増)となっております。
a 保険料等収入
保険料等収入は、前連結会計年度(2023年4月1日から開始し、2024年3月31日に終了した連結会計年度をいいます。以下、前連結会計年度及び前期につき同じ。) に比べ7,304億円減少し、6兆7,959億円(前期比9.7%減)となりました。保険料等収入が減少した主な要因は、第一フロンティア生命において、海外金利の低下の影響によって販売量が一服したことに伴って保険料収入が減少したこと等であります。
b 資産運用収益
資産運用収益は、前連結会計年度に比べ5,055億円減少し、2兆5,284億円(前期比16.7%減)となりました。資産運用収益が減少した主な要因は、第一フロンティア生命において、前年同期と比べて為替市場が円高へ進行したことに伴い為替差損益が損失に転じたこと等であります。
c その他経常収益
その他経常収益は、前連結会計年度に比べ811億円増加し、5,489億円(前期比17.3%増)となりました。その他経常収益が増加した主な要因は、第一生命において、セカンドキャリア特別支援制度によって退職者が増加したこと等に伴い退職給付に係る負債戻入が増加したこと等であります。
② 経常費用
経常費用は9兆1,541億円(前期比12.7%減)となりました。経常費用の内訳は、保険金等支払金が6兆5,813億円(同2.6%減)、責任準備金等繰入額が4,146億円(同77.9%減)、資産運用費用が8,102億円(同34.2%増)、事業費が9,897億円(同6.8%増)、その他経常費用が3,581億円(同10.3%増)となっております。
a 保険金等支払金
保険金等支払金は、前連結会計年度に比べ1,755億円減少し、6兆5,813億円(前期比2.6%減)となりました。保険金等支払金が減少した主な要因は、第一フロンティア生命において、販売が一服したことによって新契約における出再額が減少したことに伴い再保険料が減少したこと等であります。
b 責任準備金等繰入額
責任準備金等繰入額は、前連結会計年度に比べ1兆4,628億円減少し、4,146億円(前期比77.9%減)となりました。責任準備金等繰入額が減少した主な要因は、第一フロンティア生命において、お客さまが設定する目標金額に到達したことによって解約となる契約が増加したこと等に伴い戻入益が発生したことにより責任準備金繰入額が大幅に減少したことであります。
c 資産運用費用
資産運用費用は、前連結会計年度に比べ2,064億円増加し、8,102億円(前期比34.2%増)となりました。資産運用費用が増加した主な要因は、第一生命において、国内債券の入替え等に伴って有価証券売却損が増加したことに加えて、第一フロンティア生命において、前年同期と比べて為替市場が円高へ進行したことに伴い、為替差損益が損失に転じたこと等であります。
d 事業費
事業費は、前連結会計年度に比べ634億円増加し、9,897億円(前期比6.8%増)となりました。
e その他経常費用
その他経常費用は、前連結会計年度に比べ334億円増加し、3,581億円(前期比10.3%増)となりました。
③ 経常利益
経常利益は、前連結会計年度に比べ1,800億円増加し、7,190億円(前期比33.4%増)となりました。
④ 特別利益・特別損失
特別利益は190億円(前期比186.2%増)、特別損失は757億円(同143.3%増)となりました。
a 特別利益
特別利益は前連結会計年度に比べ123億円増加し、190億円(前期比186.2%増)となりました。
b 特別損失
特別損失は前連結会計年度に比べ446億円増加し、757億円(前期比143.3%増)となりました。
⑤ 契約者配当準備金繰入額
契約者配当準備金繰入額は前連結会計年度に比べ125億円増加し、1,000億円(前期比14.3%増)となりました。
⑥ 親会社株主に帰属する当期純利益
経常利益に特別利益、特別損失、契約者配当準備金繰入額、法人税等合計を加減した親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,088億円増加し、4,296億円(前期比33.9%増)となりました。
⑦ 資産の部
資産の部合計は、プロテクティブにおいて、前年同期と比べて為替市場が円安に進行したことに伴い有価証券の残高が増加したこと等を主な要因として、前連結会計年度末に比べ2兆526億円増加し、69兆5,929億円(前期比3.0%増)となりました。
⑧ 負債の部
負債の部合計は、プロテクティブにおいて、上述のとおり、円安に進行したことに伴い責任準備金残高の増加したこと等を主な要因として、前連結会計年度末に比べ2兆4,651億円増加し、66兆1,232億円(前期比3.9%増)となりました。
⑨ 純資産の部
純資産の部合計は、第一生命における国内株式及び外国株式の含み益が減少したこと等によりその他有価証券評価差額金が減少したこと等を主な要因として、前連結会計年度末に比べ4,124億円減少し、3兆4,697億円(前期比10.6%減)となりました。
セグメントの業績は、以下のとおりであります。
① 国内保険事業
国内保険事業における経常収益は、第一フロンティア生命において、海外金利の低下の影響によって販売量が一服したことに伴い保険料収入が減少したこと等を主な要因として、前連結会計年度に比べて6,990億円減少し、8兆838億円(前期比8.0%減)となりました。セグメント利益は、第一生命において、金利上昇や良好な金融市場環境に支えられ利息及び配当金収入が増加したこと等を主な要因として、前連結会計年度に比べて1,775億円増加し、5,845億円(同43.6%増)となりました。
② 海外保険事業
海外保険事業における経常収益は、プロテクティブにおいて、前年同期と比べて為替市場が円安に進行したことや良好な金融市場環境に支えられ利息及び配当金収入が増加したことによって資産運用収益が増加したこと等を主な要因として、前連結会計年度に比べて5,192億円増加し、3兆6,690億円(前期比16.5%増)となりました。セグメント利益は、プロテクティブにおいて、前年度において計上した債券評価損及び米金融機関の破綻に伴う損失が剥落したこと等を主な要因として、前連結会計年度に比べて557億円増加し、1,831億円(同43.7%増)となりました。
③ その他事業
その他事業においては、第一生命やTAL等のグループ会社からの配当金収入が増加したことに加え、当連結会計年度より子会社となったベネフィット・ワンの収益貢献を主な要因として、経常収益は前連結会計年度に比べて1,036億円増加し、3,305億円(前期比45.7%増)となりました。また、セグメント利益は、前連結会計年度に比べて217億円増加し、2,210億円(同10.9%増)となりました。
なお、セグメントにおける主たる子会社の業績は以下のとおりであります。
<国内保険事業(第一生命保険株式会社)>
① 経営成績
当事業年度(2024年4月1日から開始し、2025年3月31日に終了した事業年度をいいます。以下同じ。) の経常収益は、保険料等収入2兆1,383億円(前事業年度(2023年4月1日から開始し、2024年3月31日に終了した事業年度をいいます。以下同じ。) 比6.6%減)、資産運用収益1兆3,519億円(同3.7%増)、その他経常収益9,246億円(同87.4%増)を合計した結果、4兆4,149億円(同8.0%増)となりました。団体年金契約が減少したことに伴い保険料等収入が減少したものの、国内株式の売却に伴う有価証券売却益の増加により資産運用収益が増加したこと等を主な要因として経常収益は増収となりました。
一方、経常費用は、保険金等支払金2兆6,630億円(同4.0%増)、責任準備金等繰入額84億円(同0.0%減)、資産運用費用5,519億円(同12.2%増)、事業費4,094億円(同6.3%増)、その他経常費用2,434億円(同2.6%減)を合計した結果、3兆8,763億円(同4.9%増)となりました。経常費用の増加は、市場リスク削減を目的としたヘッジポジションに起因する金融派生商品損失が減少したものの、国内債券や為替ヘッジ付外国債券の入替え等に伴う有価証券売却損が増加したこと等により資産運用費用が増加したこと等が主な要因であります。
これらの結果、経常利益は5,386億円(同37.6%増)となりました。また、当期純利益は3,054億円(同49.8%増)となりました。
生命保険本業における期間収益を示す指標の一つである基礎利益は、給与制度改定に伴う人件費の増加等によって保険関係損益が減少したものの、オルタナティブ資産や国内外の株式及び債券の配当金が増加したこと等に伴い順ざやが改善したこと等によって、前事業年度に比べ292億円増加し、3,602億円(同8.8%増)となりました。
② 財政状態
当事業年度末の資産合計は、35兆1,367億円(前事業年度末比2.3%減)となりました。主な資産構成は、有価証券が28兆7,294億円(同3.4%減)、貸付金が3兆4,230億円(同10.1%増)、有形固定資産が1兆2,195億円(同2.6%増)であります。
負債合計は、32兆7,899億円(同0.9%減)となりました。負債の大部分を占める保険契約準備金は28兆8,910億円(同2.4%減)となりました。
純資産合計は、2兆3,468億円(同19.0%減)となりました。純資産合計のうち、その他有価証券評価差額金は、主に国内株式及び外国株式の含み益が減少したこと等により1兆8,426億円(同23.9%減)となりました。
なお、保険金等の支払余力を示すソルベンシー・マージン比率は、852.9%となりました。第一生命保険株式会社の非連結子会社等を含めた連結ソルベンシー・マージン比率は、896.9%となりました。
③ 契約業績
個人保険・個人年金保険を合わせた新契約高は、前事業年度に比べて1兆1,054億円増加し、3兆3,137億円となりました(前事業年度比50.1%増)。個人保険・個人年金保険を合わせた保有契約高は、前事業年度末に比べて1兆9,492億円減少し、78兆905億円(前事業年度末比2.4%減)となりました。
個人保険・個人年金保険を合わせた新契約年換算保険料は、前事業年度に比べて384億円増加し、959億円(前事業年度比66.7%増)となりました。なお、保有契約年換算保険料は、前事業年度末に比べて45億円減少し、1兆9,449億円(前事業年度末比0.2%減)となりました。
医療保障・生前給付保障等の第三分野の新契約年換算保険料は、前事業年度に比べて125億円増加し、393億円(前事業年度比46.6%増)となりました。第三分野の保有契約年換算保険料は、前事業年度末に比べて9億円増加し、6,913億円(前事業年度末比0.1%増)となりました。
団体保険の保有契約高は、前事業年度末に比べて1兆788億円減少し、47兆3,580億円(同2.2%減)となりました。団体年金保険の保有契約高は前事業年度末に比べて2,727億円減少し、5兆8,991億円(同4.4%減)となりました。
a 保有契約高明細表 (単位:億円)
(注)1 個人年金保険の金額は、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金額の合計であります。
2 団体年金保険の金額は、責任準備金額であります。
3 2018年4月以降の複数の保険契約を組み合わせて加入している商品について、それぞれの保険契約を1件として記載しております。
b 新契約高明細表 (単位:億円)
(注)1 個人保険及び個人年金保険は、転換による純増加を含みます。
2 個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資であります。
3 団体年金保険の金額は、第1回収入保険料であります。
4 2018年4月以降の複数の保険契約を組み合わせて加入している商品について、それぞれの保険契約を1件として記載しております。
c 保有契約年換算保険料明細表 (単位:億円)
(注)1 年換算保険料とは、1回当たりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年当たりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間で除した金額)。
2 医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障害を事由とするものは除く。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含む)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
d 新契約年換算保険料明細表 (単位:億円)
(注) 転換による純増加を含みます。
e 保険料等収入明細表 (単位:億円)
(注) その他は、財形保険、財形年金保険、医療保障保険、就業不能保障保険、コミュニティ保険、受再保険の合計であります。
f 保険金等支払金明細表
前事業年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) (単位:億円)
(注) その他は、財形保険、財形年金保険、医療保障保険、就業不能保障保険、コミュニティ保険、受再保険の合計であります。
当事業年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) (単位:億円)
(注) その他は、財形保険、財形年金保険、医療保障保険、就業不能保障保険、コミュニティ保険、受再保険の合計であります。
<国内保険事業(第一フロンティア生命保険株式会社)>
① 経営成績
当事業年度の経常収益は、保険料等収入2兆9,992億円(前事業年度比14.3%減)、資産運用収益2,024億円(同77.3%減)、その他経常収益2,940億円(前事業年度は0億円)を合計した結果、3兆4,957億円(同20.4%減)となりました。お客さまが設定する目標金額に到達したことに伴って解約となる契約が増加したことに伴い責任準備金の戻入が発生したものの、前年同期と比べて為替市場が円高へ進行したことに伴い、為替差損益が損失に転じたことによって資産運用収益が減少したこと等を主な要因として、経常収益は減収となりました。
一方、経常費用は、保険金等支払金3兆1,773億円(同10.8%減)、責任準備金等繰入額105億円(同98.3%減)、資産運用費用1,475億円(同122.8%増)、事業費900億円(同14.3%減)、その他経常費用204億円(同10.8%減)を合計した結果、3兆4,457億円(同21.2%減)となりました。上述のとおり、為替差損益が損失に転じたものの、責任準備金が繰入から戻入に転じたことで責任準備金等繰入額が大幅に減少したこと等を主な要因として経常費用は減少しました。
この結果、経常利益は499億円(同137.2%増)となりました。また、当期純利益は328億円(同110.0%増)となりました。
生命保険本業における期間収益を示す指標の一つである基礎利益は、新契約費用や標準責任準備金繰入額の減少等に伴い保険関係損益が増加したこと等を主な要因として、前事業年度に比べ798億円増加し、881億円(前事業年度比958.2%増)となりました。
② 財政状態
当事業年度末の資産合計は、8兆8,239億円(前事業年度末比5.2%減)となりました。主な資産構成は、有価証券7兆811億円(同1.9%減)、現金及び預貯金等5,037億円(同35.1%減)であります。
負債合計は、8兆5,659億円(同5.8%減)となりました。負債の大部分を占める保険契約準備金は7兆9,851億円(同3.4%減)となりました。
純資産合計は、2,580億円(同16.6%増)となりました。純資産合計のうち、その他有価証券評価差額金は、外国債券の含み損の縮小によりマイナス321億円(前事業年度末はマイナス358億円)となりました。
なお、保険金等の支払余力を示すソルベンシー・マージン比率は、420.2%(前事業年度末は419.9%)となりました。
③ 契約業績
個人保険・個人年金保険を合わせた新契約高は、前事業年度に比べて6,953億円減少し、2兆4,567億円(前事業年度比22.1%減)となりました。個人保険・個人年金保険を合わせた保有契約高は、前事業年度末に比べて1兆5,173億円増加し、14兆8,533億円(前事業年度末比11.4%増)となりました。
個人保険・個人年金保険を合わせた新契約年換算保険料は、前事業年度に比べて718億円減少し、2,294億円(前事業年度比23.8%減)となりました。なお、保有契約年換算保険料は、前事業年度末に比べて565億円増加し、1兆2,341億円(前事業年度末比4.8%増)となりました。
a 保有契約高明細表 (単位:億円)
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金額の合計であります。
b 新契約高明細表 (単位:億円)
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資であります。
c 保有契約年換算保険料明細表 (単位:億円)
d 新契約年換算保険料明細表 (単位:億円)
(注)1 年換算保険料とは、1回当たりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年当たりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間で除した金額)。
2 医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障害を事由とするものは除く。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含む。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
e 保険料等収入明細表 (単位:億円)
f 保険金等支払金明細表
前事業年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) (単位:億円)
当事業年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) (単位:億円)
<海外保険事業(Protective Life Corporation)>
以下では、プロテクティブの業績を現地通貨であります米ドル建で表示しております。日本円に換算する際の為替レートは、前事業年度(2023年1月1日から開始し、2023年12月31日に終了した事業年度をいいます。プロテクティブにおいて以下同じ。)及び前事業年度末については1米ドル=141.83円、当事業年度(2024年1月1日から開始し、2024年12月31日に終了した事業年度をいいます。プロテクティブにおいて以下同じ。)及び当事業年度末については、1米ドル=158.18円であります。
① 経営成績
当事業年度の経常収益は、保険料等収入6,055百万米ドル(前事業年度比1.7%減)、資産運用収益5,869百万米ドル(同10.4%増)、その他経常収益1,942百万米ドル(同5.5%減)を合計した結果、13,867百万米ドル(同2.5%増)となりました。経常収益の増収は、良好な金融市場環境に支えられ、有価証券利息配当金が増加したことに伴い資産運用収益が増加したこと等が主な要因であります。
一方、経常費用は、保険金等支払金5,975百万米ドル(同1.5%減)、責任準備金等繰入額5,172百万米ドル(同5.8%増)、資産運用費用470百万米ドル(同48.5%減)、事業費1,373百万米ドル(同11.9%増)、その他経常費用409百万米ドル(同37.4%増)を合計した結果、13,401百万米ドル(同0.1%増)となりました。経常費用は、前年度において計上した債券評価損及び米金融機関の破綻に伴う損失が剥落したものの、新契約の獲得に伴う責任準備金等繰入額が増加したこと等によって前年同期と比べてほぼ横ばいとなっております。
これらの結果、経常利益は466百万米ドル(同238.2%増)となりました。また、当期純利益は388百万米ドル(同235.2%増)となりました。
② 財政状態
当事業年度末の資産合計は、124,478百万米ドル(前事業年度末比5.1%増)となりました。主な資産構成は、有価証券が80,794百万米ドル(同4.8%増)、貸付金が14,061百万米ドル(同4.4%増)、無形固定資産が4,155百万米ドル(同11.9%増)であります。
負債合計は、120,734百万米ドル(同4.9%増)となりました。負債の大部分を占める保険契約準備金は、112,678百万米ドル(同5.1%増)となりました。
純資産合計は、3,744百万米ドル(同13.0%増)となりました。
<海外保険事業(TAL Dai-ichi Life Australia Pty Ltd)>
以下では、TALの業績を現地通貨であります豪ドル建で表示しております。日本円に換算する際の為替レートは、前事業年度及び前事業年度末については1豪ドル=98.61円、当事業年度及び当事業年度末については1豪ドル=93.97円であります。
① 経営成績
当事業年度の経常収益は、保険料等収入7,703百万豪ドル(前事業年度比2.2%減)、資産運用収益392百万豪ドル(同12.8%減)、その他経常収益79百万豪ドル(同67.7%減)を合計した結果、8,175百万豪ドル(同4.6%減)となりました。前年同期と比べて責任準備金を計算する割引率が上昇したことによって責任準備金戻入益が減少したこと等を主な要因として、経常収益は減収となりました。
一方、経常費用は、保険金等支払金6,091百万豪ドル(同0.8%減)、資産運用費用54百万豪ドル(同22.4%減)、事業費1,402百万豪ドル(同19.3%減)、その他経常費用20百万豪ドル(同39.8%増)を合計した結果、7,569百万豪ドル(同5.0%減)となりました。事業費を減少させたこと等を主な要因として、経常費用は減少しました。
これらの結果、経常利益は606百万豪ドル(同0.6%減)となりました。また、当期純利益は416百万豪ドル(同3.3%減)となりました。
② 財政状態
当事業年度末の資産合計は、18,428百万豪ドル(前事業年度末比16.3%減)となりました。主な資産構成は、有価証券が9,895百万豪ドル(同23.9%減)、無形固定資産が786百万豪ドル(前事業年度末は同額)、現預金が1,628百万豪ドル(同48.0%増)であります。
負債合計は、15,988百万豪ドル(同18.6%減)となりました。負債の大部分を占める保険契約準備金は、13,828百万豪ドル(同2.4%減)となりました。
純資産合計は、2,440百万豪ドル(同3.2%増)となりました。
(2) 資本政策
① 資本政策の基本的な考え方
当社グループは、財務健全性を確保しつつ、持続的な企業価値向上と株主還元のさらなる充実を目指し、ERMの枠組みに基づく資本政策運営を行っております。
グループの事業を取り巻くリスクを適切にコントロールすると同時に、グループ各社の成長ステージに応じた持株会社への還元や内部留保を行い、必要に応じて外部調達を活用して、グループの成長に向けた投資と資本基盤の強化へバランスの取れた資本配賦を実践することで、財務健全性の確保と資本効率の向上を通じたグループ利益の持続的な成長を推進しております。
2024-26年度中期経営計画(「現中期経営計画」という。)では、「資本循環経営」の実践を通じた持続的な成長を目指しております。
「資本循環経営」とは、事業運営を通じて稼得した資本やリスク削減によって解放された資本を財源として、財務健全性を確保しつつ、より高資本効率・高成長事業へと資本を再配賦することで、資本・キャッシュ創出の好循環を生み出し、企業価値向上を目指す考え方です。具体的には、各事業会社から当社への配当金額は、当社が定める経済価値ベースの資本充足率(以下、ESR(Economic Solvency Ratio)という。)の水準、各国のソルベンシー・会計制約を踏まえて定める配当可能資本「フリーキャッシュ」に基づき決定しております。また、資本の配賦・回収等は、個々の事業リスク特性等に応じた資本コストを設定した上で事業成果を評価し意思決定を行います。こうして創出されたフリーキャッシュ・フローを、全体最適なバランスで健全性確保、成長投資、株主還元に振り向けております。
また、資本コストを安定的に上回る資本効率を目指し、修正ROE及びROEVを中長期的に引き上げる一方で、市場リスク削減等により資本コストを引き下げる取組みを行っております。具体的には、会計利益ベースの資本効率指標であるグループ修正ROEは、現中期経営計画期間中に10%への向上を目指しておりましたが、当連結会計年度において、良好な経済環境を背景としたグループ修正利益の拡大により目標値を前倒しで達成いたしました。翌連結会計年度においても、引き続き10%を上回る見通しであることから、目指すべきグローバルトップティアと当社のギャップを踏まえ、現中期経営計画期間中の目標水準を12%以上に引き上げております。また想定資本コストは現時点では9%と自己認識しており定期的に見直しを実施しております。EV対比の金利・株式リスク削減等を通じ現中期経営計画期間中に8%への低減を目指してまいります。
成長投資については、「中核事業(保障、資産形成・承継)の深化」と「アセットマネジメント事業、新規事業などの非保険領域の探索」を進め、継続的に事業ポートフォリオの拡大・分散につながる投資を行ってまいります。今後も、事業ポートフォリオの拡大・分散によってグループ修正利益の水準を引き上げていく中で、2026年度には海外保険事業の比率を40%に、2030年度には同比率を50%、アセットマネジメント事業を含む非保険領域の比率を10%規模に成長させることを目指しております。
株主還元については、利益に応じた毎期の安定配当として、過去3年平均のグループ修正利益に対する配当性向45%以上を実現することに加え、総還元性向の目安を中期平均50%とし、機動的・柔軟な追加還元を戦略的に検討・実施しております。また、中間配当を原則実施しております。なお、当社の配当政策に関しては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。
上記、資本循環経営の土台となる財務健全性を安定的に確保するため、現在の国内保険会社に対する健全性基準であるソルベンシー規制に加え、国際的な資本規制動向や2026年3月期から導入予定となっております経済価値ベースのソルベンシー規制も踏まえ、従来から資産・負債の時価評価を行う経済価値ベースの健全性指標である資本充足率(ESR)を導入しております。ターゲット水準を170%~200%と定め、200%を超過している場合、市場環境等の状況も勘案のうえ、戦略的投資および機動的・柔軟な追加還元を積極的に検討してまいります。財務健全性の強化に向けては市場リスクの削減に加え、財務格付に留意しつつ必要に応じて外部調達を活用することで、財務健全性の維持・向上を図ってまいります。
<資本循環経営のイメージ>

② 資本政策の当連結会計年度における状況
当連結会計年度の1株当たり株主配当額は、前連結会計年度より24円増配の137円とする予定であり、自己株式取得額は、上限1,000億円といたしました。また、グループ資本の充実や流動性確保に向けて、第一生命保険株式会社において2025年1月に米ドル建永久劣後特約付社債の発行(20億米ドル)を実施しております。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に保険料等収入が減少したことにより、前期と比べて4,047億円収入減の5,925億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に短期資金運用による収入が減少したことにより、前期と比べて3,788億円支出増の9,804億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に社債の発行による収入が増加したことにより、前期と比べて721億円支出減の735億円の支出となりました。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、期首から4,588億円減少し、2兆3,135億円(前連結会計年度末は2兆7,723億円)となりました。
(4)生産、受注及び販売の実績
当社グループの主たる事業である生命保険事業において、他の業態と異なり物品の生産や受注を行わない業務の特性により、本項における記載に該当する情報がないため記載しておりません。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針及び見積りが連結財務諸表に大きな影響を及ぼすと考えております。
① 金融商品の時価の算定方法
有価証券の一部及びデリバティブ取引は、時価法に基づいて評価しております。時価は、原則として市場価格に基づいて算定しておりますが、一部の有価証券及びデリバティブ取引については将来キャッシュ・フローの現在価値等に基づく合理的な見積りによっております。
将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、見積り額は変動する可能性があります。なお、金融商品の時価の算定方法に係る基準は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(金融商品関係)の注記に記載のとおりであります。
② 有価証券の減損処理
売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価が著しく下落したものについては合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。
将来、株式市場の悪化等、金融市場の状況によっては多額の有価証券評価損を計上する可能性があります。なお、有価証券の減損処理に係る基準は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(有価証券関係)の注記に記載のとおりであります。
③ 固定資産の減損処理
固定資産については、資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合に、その差額を減損損失に計上しております。
回収可能価額は、資産グループの時価から処分費用見込額を控除した正味売却価額と割引後将来キャッシュ・フローとして算定される使用価値のいずれか大きい方としていることから、将来、固定資産の使用方法を変更した場合又は不動産取引相場や賃料相場が変動した場合には、新たに減損損失が発生する可能性があります。なお、固定資産の減損処理に係る基準は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結損益計算書関係)の注記に記載のとおりであります。
④ のれん及びその償却方法
連結貸借対照表の資産の部には「のれん」が計上されております。当該「のれん」は、他の企業又は事業を取得した場合、その取得に要した費用(取得原価)が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合に計上されるものであります。また、当該「のれん」の算定において用いられる取得に要した費用並びに受け入れた資産及び引き受けた負債の算定には一定の前提条件を置いており、見積りの要素を含んでおります。
この「のれん」は、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって均等償却しております。
なお、のれんの評価方法は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(重要な会計上の見積り)の注記に記載のとおりであります。
⑤ 無形固定資産及びその償却方法
連結貸借対照表のその他の無形固定資産には「保有契約価値」及び「顧客関連資産」が含まれております。
「保有契約価値」とは、買収等で獲得したその買収時点で有効な保険契約及び投資契約に関して、そのキャッシュ・フローから得られる将来利益を現在価値として計算し、無形固定資産として計上するものであります。また、「顧客関連資産」とは、買収等で獲得したその買収時点で既存顧客との継続的な取引関係により生み出すことが期待されているキャッシュ・フローから得られる将来利益の現在価値として計算し、無形固定資産として計上するものであります。
この「保有契約価値」及び「顧客関連資産」の算定には見積りの要素を含んでおりますが、前提条件については毎期回復可能性テストを実施し、資産計上額の妥当性を判定した上で資産計上しております。
「保有契約価値」及び「顧客関連資産」は、その効果が及ぶと見積もられる期間にわたり、効果の発現する態様にしたがって償却しております。
なお、保有契約価値及び顧客関連資産の評価方法は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(重要な会計上の見積り)の注記に記載のとおりであります。
⑥ 繰延税金資産の回収可能性の評価
繰延税金資産の回収可能性の判断に際して、将来の通算グループ全体の課税所得は事業計画に基づく将来予測に直近の業績見通しを反映し、合理的に見積っております。
また、期末における将来減算一時差異の解消見込年度のスケジューリングに際して、個別に解消年度のスケジューリングをすることが実務上困難なものは、過去の税務上の損金の算入実績により合理的に見積もっております。
繰延税金資産の回収可能性は、将来の通算グループ全体の課税所得の見積りに依存するため、将来、当社グループを取り巻く環境に大きな変更があった場合等、その見積り額が変動した場合は、繰延税金資産の回収可能性が変動する可能性があります。
⑦ 貸倒引当金の計上基準
債権の貸倒れによる損失に備えるため、資産の自己査定基準及び償却・引当基準に則り、債務者の状況に応じ、回収不能見積り額を計上しております。
将来、債務者の財務状況が悪化し支払い能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。なお、貸倒引当金の計上基準は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
⑧ 支払備金の積立方法
保険契約に基づいて支払義務が発生したと認められる保険金等のうち、期末時点において支払いが行われていない、又は支払事由の報告を受けていないが支払事由が既に発生したと認められる保険金等について、支払備金として積み立てております。将来、新たな事実の発生等により、支払備金の計上額が変動する可能性があります。なお、既発生未報告支払備金(IBNR備金)の計算方法は、後記「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
⑨ 責任準備金の積立方法
保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てております。
責任準備金は各国の規制や会計基準に基づき、契約時等に定めた計算方法や計算前提等に基づく将来の予定キャッシュ・フローの見積りに基づき算出した額を積み立てております。
なお、当該見積りと直近の実績が大きく乖離すること等により、将来の債務の履行に支障を来すおそれがあると認められる場合には、追加して責任準備金を積み立てる必要があることから、責任準備金に積み立て不足が生じていないかを検証するために、責任準備金の十分性を確認するテストを実施しております。
なお、責任準備金の積立方法は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
⑩ 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、年金資産の期待運用収益率や将来の退職給付債務算出に用いる数理計算上の前提条件に基づいて算出しております。
このため、実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件の変更が行われた場合には、将来の退職給付債務及び退職給付費用が変動する可能性があります。なお、退職給付債務等の計算の基礎に関する事項は、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(退職給付関係)の注記に記載のとおりであります。
(参考1)当社グループの固有指標の分析
1 主要な固有指標
(1) 基礎利益
① 基礎利益
基礎利益とは生命保険本業における期間収益を示す指標の一つであります。当社グループの基礎利益は、当社、国内保険会社(第一生命保険株式会社、第一フロンティア生命保険株式会社、ネオファースト生命保険株式会社、アイペット損害保険株式会社)の基礎利益、海外保険会社(Protective Life Corporation、TAL Dai-ichi Life Australia Pty Ltd、Partners Group Holdings Limited、Dai-ichi Life Insurance Company of Vietnam, Limited、Dai-ichi Life Insurance (Cambodia) PLC.、Dai-ichi Life Insurance Myanmar Ltd.)の各国で生命保険本業における期間収益を示すために一般的に用いられる利益、関連会社の持分利益(税引前換算)等を合算し、グループの内部取引の一部を相殺すること等により算出しております。
アイペット損害保険株式会社を除く国内保険会社の場合、基礎利益は、保険契約者から受領した保険料等の保険料等収入、資産運用収益及び責任準備金戻入額等その他経常収益等で構成される基礎収益から、保険金等支払金、責任準備金等繰入額、資産運用費用、事業費及びその他経常費用等から構成される基礎費用を控除したものであります。アイペット損害保険株式会社の場合、基礎利益は、税引前当期純利益から非支配株主に帰属する当期純利益(税引前換算)を控除したものであります。また、基礎利益に有価証券売却損益等の「キャピタル損益」と危険準備金繰入額等の「臨時損益」を加味したものが経常利益となります。
海外保険会社の場合、基礎利益として、Protective Life Corporationの税引前営業利益、TAL Dai-ichi Life Australia Pty Ltd、Partners Group Holdings Limitedの基礎的な利益(税引前換算)、Dai-ichi Life Insurance Company of Vietnam, Limited、Dai-ichi Life Insurance (Cambodia) PLC.、及びDai-ichi Life Insurance Myanmar Ltd.の税引前利益を用いております。
② 順ざや額/逆ざや額
国内生命保険会社は、保険料を計算するにあたって、資産運用を通じて得られる収益を予め見込んで、その分保険料を割り引いて計算しております。この割引率を「予定利率」といい、市中金利水準等を勘案して設定しております。そのため、保険会社は、毎年割り引いた分に相当する金額(予定利息)等の負債コストを運用収益等で確保する必要があります。
予定利息を実際の運用収益等でまかなえている状態を「順ざや」といい、まかなえていない状態を「逆ざや」といいます。
当社グループの順ざや額/逆ざや額は、国内生命保険会社(第一生命保険株式会社、第一フロンティア生命保険株式会社、ネオファースト生命保険株式会社)の合算値であります。
(2) 責任準備金
国内生命保険会社の責任準備金は、生命保険会社が将来の保険金等の支払いを確実に行うために、保険料や運用収益等を財源として保険業法により積立てが義務付けられている準備金のことで、生命保険会社の負債の最も大きな部分を占めております。
国内生命保険会社については、保険業法に基づき責任準備金を積み立てており、「保険料積立金」、「未経過保険料」及び「危険準備金」で構成されております。
なお、責任準備金は事業年度末において要積立額を計算し、前事業年度末残高との差額を損益計算書に計上いたします。即ち、事業年度末の要積立額が前事業年度末残高を上回る場合にはその差額を責任準備金繰入額として経常費用の科目に計上し、事業年度末の要積立額が前事業年度末残高を下回る場合にはその差額を責任準備金戻入額として経常収益の科目に計上いたします(四半期会計期間末においても同様に計上いたします)。
責任準備金の積立水準は、積立方式と計算基礎率によって決まります。保険業法において責任準備金の積立方式及び計算基礎率について定められております。
海外生命保険会社については、各国の法令や規制等に基づき積み立てております。なお、連結される米国、豪州及びニュージーランドの生命保険会社の責任準備金については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)をご参照下さい。
(3) ソルベンシー・マージン比率
ソルベンシー・マージン比率とは、通常の予測を超えて発生するリスクに備えて「支払余力」がどの程度カバーされているかを示す行政監督上の指標の一つであります。具体的には、保険会社が抱える保険金等のお支払いに係るリスクや資産運用に係るリスク等、多様なリスクが通常の予測を超えて発生した場合、資本等の内部留保と有価証券含み益等の合計(ソルベンシー・マージン総額)で、これらのリスク(リスクの合計額)をどの程度カバーできているかを指数化したものであります。同比率の算出は、ソルベンシー・マージン総額をリスクの合計額で割り算して求め、同比率が200%以上であれば、健全性について一つの基準を満たしていることを示しております。
(4) 実質純資産額
実質純資産額とは、貸借対照表の資産を基礎として計算した額(有価証券・不動産等について一定の時価評価を行ったもの)から負債の部に計上されるべき金額を基礎として計算した額(負債の額から価格変動準備金・危険準備金等の額を差し引いた額)を控除した金額を言い、保険会社の健全性の状況を示す行政監督上の指標の一つであります。金融庁による早期是正措置において、実質的な債務超過の判定基準として用いられる額であります。
2 当社グループの固有指標の分析
(1) 基礎利益
① 基礎利益
当社グループの基礎利益は、前事業年度比で1,136億円増加し、6,388億円(前期比21.6%増)となりました。これは、主に第一生命において、金利上昇や良好な金融市場環境に支えられ、利息及び配当金等収入が増加したこと等によるものであります。
② 順ざや額/逆ざや額
当社グループの順ざや額(国内グループ生命保険会社合算値)は、第一生命において、上述のとおり、利息及び配当金等収入が増加したことに加え、為替ヘッジ付外貨建債券の残高削減に伴うヘッジコストの減少等に伴い前事業年度に比べ805億円増加し、1,729億円(前期比87.1%増)となりました。
(注)第一生命、第一フロンティア生命、ネオファースト生命の合算値であります。
(2) 連結ソルベンシー・マージン比率
当社グループの連結ソルベンシー・マージン比率は、643.4%と前期比49.2ポイント減となりました。詳細については、以下のとおりであります。
*1 社外流出予定額及びその他の包括利益累計額等を除いております。
*2 標準的方式を用いて算出しております。
(注) 上記は、保険業法施行規則第210条の11の3、第210条の11の4及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
3 第一生命保険株式会社の固有指標の分析
(1) 基礎利益
① 基礎利益
生命保険本業における期間収益を示す指標の一つである基礎利益は、前事業年度に比べ292億円増加し、3,602億円(前事業年度比8.8%増)となりました。主に金利上昇や良好な金融市場環境に支えられ、利息及び配当金等収入が増加したことによるものであります。詳細については、後記「(参考2)第一生命保険株式会社の一般社団法人生命保険協会の定める決算発表様式に準ずる情報 3. 経常利益等の明細(基礎利益)」をご参照下さい。
② 順ざや額/逆ざや額
順ざや額は、第一生命において、上述のとおり、利息及び配当金等収入が増加したことに加え、為替ヘッジ付外貨建債券の残高削減に伴うヘッジコストの減少等に伴い前事業年度に比べ751億円増加し、1,253億円(前事業年度比149.8%増)となりました。
(注)正値の場合は順ざや額
(2) 責任準備金
第一生命は、保険業法等で定められた基準に基づき、標準責任準備金対象契約については、平成8年大蔵省告示第48号に定める方式により責任準備金(標準責任準備金)を積み立て、それ以外の契約については「平準純保険料式」により責任準備金を積み立てており、法令上最も健全な積立方式を採用しております。
<個人保険及び個人年金保険の責任準備金の積立方式・積立率>
2008年3月期より、健全性の更なる向上のために、高予定利率の終身保険のうち払込満了後契約等に対して、追加責任準備金の積立てを行っており、2024年3月期は602億円、2025年3月期は493億円の新規繰り入れを実施しております。
(3) ソルベンシー・マージン比率
保険金等の支払余力を示すソルベンシー・マージン比率は、852.9%となりました。また、第一生命保険株式会社の連結ソルベンシー・マージン比率は896.9%となりました。詳細については、後記「(参考2)第一生命保険株式会社の一般社団法人生命保険協会の定める決算発表様式に準ずる情報 5. ソルベンシー・マージン比率」をご参照下さい。
(4) 実質純資産額
実質純資産額は、前事業年度末に比べ2兆1,591億円減少し、4兆4,666億円(前事業年度末比32.6%減)となりました。
4 第一フロンティア生命保険株式会社の固有指標の分析
(1) 基礎利益
生命保険本業における期間収益を示す指標の一つである基礎利益は、新契約費用や標準責任準備金繰入額の減少等に伴う保険関係損益の改善を主な要因として、前事業年度に比べ798億円増加し、881億円(前事業年度比958.2%増)となりました。詳細については、後記「(参考3)第一フロンティア生命保険株式会社の一般社団法人生命保険協会の定める決算発表様式に準ずる情報 3. 経常利益等の明細(基礎利益)」をご参照下さい。
(2) 責任準備金
第一フロンティア生命においては、保険業法等で定められている基準に基づき、最も健全な積立方式である標準責任準備金を積み立てておりますが、お客さまが設定する目標金額に到達したことに伴って解約となる契約が増加したことに伴い責任準備金の戻入が発生したことに伴い責任準備金は前事業年度末に比べ2,940億円減少し、7兆9,363億円(前事業年度末比3.6%減)となりました。
(3) ソルベンシー・マージン比率
ソルベンシー・マージン比率は、420.2%(前事業年度末は419.9%)となりました。詳細については、後記「(参考3)第一フロンティア生命保険株式会社の一般社団法人生命保険協会の定める決算発表様式に準ずる情報 5. ソルベンシー・マージン比率」をご参照下さい。
(4) 実質純資産額
実質純資産額は、前事業年度末に比べ103億円増加し、2,364億円(前事業年度末比4.6%増)となりました。
(参考2)第一生命保険株式会社の一般社団法人生命保険協会の定める決算発表様式に準ずる情報
参考として、第一生命保険株式会社の単体情報のうち、一般社団法人生命保険協会の定める決算発表様式に準ずる情報を以下のとおり記載しております。
1. 主要業績
(1) 保有契約高及び新契約高
① 保有契約高
(注) 1 個人年金保険については、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金を合計したものであります。
2 団体年金保険については、責任準備金の金額であります。
3 2018年4月以降の複数の保険契約を組み合わせて加入している商品について、それぞれの保険契約を1件として記載しております。
② 新契約高
(注) 1 件数は、新契約に転換後契約を加えた数値であります。
2 新契約・転換による純増加の個人年金保険の金額は年金支払開始時における年金原資であります。
3 新契約の団体年金保険の金額は第1回収入保険料であります。
4 2018年4月以降の複数の保険契約を組み合わせて加入している商品について、それぞれの保険契約を1件として記載しております。
(2) 年換算保険料
① 保有契約
② 新契約
(注) 1 「年換算保険料」とは、1回当たりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年当たりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間で除した金額)。
2 「医療保障・生前給付保障等」には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障害を事由とするものは除く。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含む。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
3 「新契約」には転換純増分も含んでおります。
(参考) 個人保険・個人年金保険の解約・失効年換算保険料
(注) 1 失効後復活契約を失効と相殺せずに算出しております。
2 主契約が継続している「減額」を除いております。
2. 一般勘定資産の運用状況
(1) 資産の構成
(注) 「不動産」については土地・建物・建設仮勘定を合計した金額を計上しております。
(2) 資産運用収益
(3) 資産運用費用
(4) 資産運用に係わる諸効率
(注) 1 「運用利回り」は、分母を帳簿価額ベースの「日々平均残高」、分子を「経常損益中の資産運用収益 - 資産運用費用」として算出しております。
2 「海外投融資」には、円貨建資産を含んでおります。
③ 売買目的有価証券の評価損益
④ 有価証券の時価情報(売買目的有価証券以外の有価証券のうち時価のあるもの)
(注)1 本表には、金融商品取引法上の有価証券として取り扱うことが適当と認められるもの等を含んでおります。
2 市場価格のない株式等および組合等は本表から除いております。
・市場価格のない株式等および組合等の帳簿価額は以下のとおりであります。
(注) 1 本表には、金融商品取引法上の有価証券として取り扱うことが適当と認められるもの等を含んでおります。
2 市場価格のない株式等及び組合等のうち、外国証券の為替を評価した差損益は以下のとおりであります。
(前事業年度末:1,193億円、当事業年度末:1,005億円)
⑤ 金銭の信託の時価情報
(注) 1 本表記載の時価相当額の算定は、金銭の信託の受託者が合理的に算定した価格によっております。
2 差損益には金銭の信託内で設定しているデリバティブ取引に係る差損益も含んでおります。
・満期保有目的、責任準備金対応、その他の金銭の信託については、前事業年度末、当事業年度末ともに残高はありません。
3. 経常利益等の明細(基礎利益)
(注) 1 その他臨時収益には、投資損失引当金戻入額(前事業年度:0億円)、払済終身保険出再に伴う責任準備金取崩額(前事業年度:292億円、当事業年度:1,485億円)を記載しております。
2 その他臨時費用には、投資損失引当金繰入額(当事業年度:2億円)、保険業法施行規則第69条第5項の規定により責任準備金を追加して積み立てた金額(前事業年度:605億円、当事業年度:495億円)及び払済終身保険出再に係る再保険料(前事業年度:379億円、当事業年度:1,251億円)を記載しております。
(参考)
その他基礎収益等の内訳
(注) 1 破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始又は再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権であります。
2 危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権であります。(注1に掲げる債権を除く。)
3 三月以上延滞債権とは、元本又は利息の支払が約定支払日の翌日から三月以上遅延している貸付金であります。(注1及び2に掲げる債権を除く。)
4 貸付条件緩和債権とは、債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取決めを行った貸付金であります。(注1から3に掲げる債権を除く。)
5 正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、注1から4までに掲げる債権以外のものに区分される債権であります。
5. ソルベンシー・マージン比率
*1 社外流出予定額及び評価・換算差額等を除いております。
*2 標準的方式を用いて算出しております。
(注) 上記は、保険業法施行規則第86条、第87条及び平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づいて算出しております。
(参考)連結ソルベンシー・マージン比率
*1 社外流出予定額及びその他の包括利益累計額等を除いております。
*2 標準的方式を用いて算出しております。
(注) 上記は、保険業法施行規則第86条の2、第88条及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
6. 特別勘定の状況
(1) 特別勘定資産残高の状況
(2) 個人変額保険(特別勘定)の状況
① 保有契約高
(注) 保有契約高には定期保険特約部分を含んでおります。
② 年度末個人変額保険特別勘定資産の内訳
③ 個人変額保険特別勘定の運用収支状況
④ 個人変額保険特別勘定に関する有価証券等の時価情報
・売買目的有価証券の評価損益
・金銭の信託の時価情報
前事業年度末、当事業年度末ともに残高がないため、記載しておりません。
(3) 個人変額年金保険(特別勘定)の状況
① 保有契約高
(注) 保有契約高には年金支払開始後契約を含んでおります。
② 年度末個人変額年金保険特別勘定資産の内訳
③ 個人変額年金保険特別勘定の運用収支状況
④ 個人変額年金保険特別勘定に関する有価証券等の時価情報
・売買目的有価証券の評価損益
・金銭の信託の時価情報
前事業年度末、当事業年度末ともに残高がないため、記載しておりません。
7. 有価証券明細表(一般勘定)
8. 貸付金残存期間別残高(一般勘定)
9. 海外投融資明細表(一般勘定)
① 外貨建資産
② 円貨額が確定した外貨建資産
③ 円貨建資産
④ 合計
(注) 「円貨額が確定した外貨建資産」は、為替予約等が付されていることにより決済時の円貨額が確定し、当該円貨額を資産の貸借対照表価額としているものであります。
(参考3)第一フロンティア生命保険株式会社の一般社団法人生命保険協会の定める決算発表様式に準ずる情報
参考として、第一フロンティア生命保険株式会社の単体情報のうち、一般社団法人生命保険協会の定める決算発表様式に準ずる情報を以下のとおり記載しております。
1. 主要業績
(1) 保有契約高及び新契約高
① 保有契約高
(注) 個人年金保険については、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金を合計したものであります。
② 新契約高
(注) 新契約の個人年金保険の金額は年金支払開始時における年金原資であります。
(2) 年換算保険料
① 保有契約
② 新契約
(注)1 「年換算保険料」とは、1回当たりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年当たりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間で除した金額)。
2 「医療保障・生前給付保障等」には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障害を事由とするものは除く。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含む。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
2. 一般勘定資産の運用状況
(1) 資産の構成
(注)不動産については建物の金額を計上しております。
(2) 資産運用関係収益
(3) 資産運用関係費用
(4) 資産運用に係わる諸効率
① 資産別運用利回り
(注) 1 利回り計算式の分母は帳簿価額ベースの日々平均残高、分子は経常損益中、資産運用収益-資産運用費用として算出した利回りであります。
2 海外投融資とは、外貨建資産と円建資産の合計であります。
② 売買目的有価証券の評価損益
(注) 本表には、金銭の信託等の売買目的有価証券を含んでおります。
③ 有価証券の時価情報(売買目的有価証券以外の有価証券のうち時価のあるもの)
(注) 1 本表には、金融商品取引法上の有価証券として取り扱うことが適当と認められるもの等を含んでおります。
2 金銭の信託のうち売買目的有価証券以外のものを含んでおり、当事業年度末におけるその帳簿価額、差損益は、それぞれ、2,233億円、△1億円であります。
・市場価格のない株式等および組合等の帳簿価額
該当事項はありません。
④ 金銭の信託の時価情報
(注) 1 本表記載の時価相当額の算定は、金銭の信託の受託者が合理的に算出した価格によっております。
2 差損益には当期の損益に含まれた評価損益を記載しております。
3. 経常利益等の明細(基礎利益)
(参考)
その他基礎収益等の内訳
4. 保険業法に基づく債権の状況
(注) 1 破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始又は再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権であります。
2 危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権であります(注1に掲げる債権を除く。)
3 三月以上延滞債権とは、元本又は利息の支払が約定支払日の翌日から三月以上遅延している貸付金であります。(注1及び2に掲げる債権を除く。)
4 貸付条件緩和債権とは、債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取決めを行った貸付金であります。(注1から3に掲げる債権を除く。)
5 正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、注1から4までに掲げる債権以外のものに区分される債権であります。
5. ソルベンシー・マージン比率
(注) 1 上記は、保険業法施行規則第86条、第87条及び平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づいて算出しております。
2 資本金等は、社外流出予定額及び評価・換算差額等を除いています。
3 最低保証リスク相当額は、標準的方式を用いて算出しております。
6. 特別勘定の状況
(1) 特別勘定資産残高の状況
(2) 個人変額保険(特別勘定)の状況
① 保有契約高
(注) 個人変額保険の保有契約高には、一般勘定で運用されるものを含んでおります。
② 年度末個人変額保険特別勘定資産の内訳
③ 個人変額保険特別勘定の運用収支状況
(3) 個人変額年金保険(特別勘定)の状況
① 保有契約高
(注) 1 個人変額年金保険については、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金を合計したものであります。
2 個人変額年金保険の保有契約高には、一般勘定で運用されるものを含んでおります。
② 年度末個人変額年金保険特別勘定資産の内訳
③ 個人変額年金保険特別勘定の運用収支状況
(1) 株式会社ベネフィット・ワンの完全子会社化について
当社は、前連結会計年度において、株式会社ベネフィット・ワン(以下、「ベネフィット・ワン」という。)を当社の持分法適用関連会社にしております。
当連結会計年度において、ベネフィット・ワンによる株式併合、自己株式取得等を経て、2024年5月23日付でベネフィット・ワンは当社の完全子会社となりましたが、詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」をご参照ください。
(2) Protective Life CorporationによるShelterPoint Group, Inc.の買収について
当社の連結子会社であるProtective Life Corporationは、2024年11月1日(米国時間)に、米国で団体保険事業を展開するShelterPoint Group, Inc.を、完全子会社化に向けた所定の前提条件を全て充足したことから、当社の子会社といたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」をご参照ください。
(3) Protective Life Corporationの再保険取引について
当社の連結子会社であるProtective Life Corporationは、2025年3月6日(米国時間)付で、傘下の保険子会社を通じて、Protective Life Corporationが保有するユニバーサル保険と年金保険の一部を出再するための再保険取引に係るマスター・トランザクション契約をResolution Lifeと締結いたしました(以下、「当該再保険取引」という。)。当該再保険取引に基づきProtective Life Corporationが出再する保険契約に係る責任準備金は約97億米ドル(米国法定会計基準に基づく金額)となります。
当該再保険取引に基づき出再する保険契約の一部は、2025年4月8日(米国時間)に出再が完了しており、残余部分については監督当局による認可等を前提として、2025年10月までの取引完了を予定しております。
なお、当該再保険取引による当社の当連結会計年度の連結業績への影響はありません。また、翌連結会計年度以降の連結業績への影響については現在精査中であります。
(4) 財務上の特約が付された金銭消費貸借契約について
2024年4月1日前に締結された金銭消費貸借契約等については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。
該当事項はありません。