第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであり、達成を保証するものではありません。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、2030年に目指す姿・目標として「2030ビジョン」を2021年に策定しました。『木とともに未来を拓く総合バイオマス企業として持続的な成長を遂げる』を目指す姿として“成長事業への経営資源のシフト”“GHG削減、環境課題等の社会情勢激変への対応”を基本方針としています。グラフィック用紙の需要減少に適切に対応しながら、経営資源を成長事業・新規事業にシフトし、同時に様々な社会的要請にも耐えうる、筋肉質の体質に変えていきます。

今後も当社グループは、持てる経営資源をフルに活用し、厳しさを増す国際競争を勝ち抜くとともに、グループの成長を実現し、株主価値の持続的拡大を追求していきます。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、「2030ビジョン」の前半にあたる2021年4月から2026年3月までの5年間を「中期経営計画2025」の期間とし、『事業構造転換の加速』を基本戦略に、“成長事業への経営資源シフト”“新規事業の戦力化加速”“基盤事業の競争力強化”の3つを重点課題に取り組んでいきます。

「中期経営計画2025」スタート後の2年間は、不安定な国際情勢や世界的なインフレの進行などにより、原燃料価格や物流費をはじめとした様々なコストが大幅に上昇しました。これらの事業環境の変化に対応するため、生産設備停止を含む固定費削減や石炭使用量削減などのコストダウンに加えて、幅広い製品における価格修正を進めてきました。並行して、政策保有株式や遊休資産の売却を積極的に進めるとともに、設備投資についても厳選することで投資額の抑制に努めてきました。

これらの状況を踏まえ、「中期経営計画2025」及び「2030ビジョン」の達成に向けて今後の戦略・課題について議論を進めた結果、中期経営計画2025の数値目標の一部を以下のとおり見直すこととしました。

 

 <中期経営計画2025 - 見直し後の目標>

・売上高           1兆2,000億円以上(2025年度)

・営業利益            400億円以上(早期に)

・EBITDA           1,000億円  (安定的に)

・D/Eレシオ             1.7倍台  (2025年度)

・ROE            5.0%以上 (2025年度)

 

(3) 会社の対処すべき課題

① 中期経営計画2025(2021年度~2025年度)の達成に向けて

2022年度はロシアのウクライナ侵攻の影響もあり、石炭を含めた原燃料価格や物価の高騰が世界経済に大きな混乱をもたらしました。2023年度は欧米を中心に景気の減速が予測されており、原燃料価格の変動リスクにも引き続き注視する必要があります。国内経済については、急激な物価上昇が個人消費へ及ぼす影響が懸念されるものの、一方では経済活動の正常化やインバウンド需要の回復などによるプラス効果も期待されます。

このように事業環境が大きく変化する中、当社グループでは原燃料価格高騰への対策として、石炭使用量の削減や燃料転換、省エネを推進しました。その結果、2022年度の石炭使用量を2021年度の実績に対して2割以上を削減し、大きな収益改善につなげました。また、自助努力だけでは吸収できなかったコストアップ分については、お客様のご理解を得ながらグループ内の幅広い製品で価格修正を実施して収益力の回復を図りました。今後も適正価格を維持するとともに、成長分野への投資効果を確実に発現させて事業構造転換を進め、中期経営計画2025に掲げた目標を達成します。

目標達成に向けた今年度の重点課題は、「成長分野の収益力強化」、「国内外のグラフィック用紙事業の立て直し」、「GHG排出量削減の加速」です。今年度は中期経営計画2025の折り返しの年であり、各重点課題にスピード感を持って取り組みます。パッケージや家庭紙、ケミカルなどの成長分野では、これまでに実施した投資の効果により収益力を向上させます。また、Opal社ではグラフィック用紙事業からの撤退を決定しました。今後は、成長が見込まれる段ボール事業を中心に、パッケージ一貫サプライヤーとして収益拡大を目指します。国内のグラフィック用紙事業については、秋田工場N1抄紙機の停機など生産能力削減と効率化を進め、競争力を高めます。一方、GHG排出量削減については、収益改善及び生産体制再編成と連動させ、さらなる石炭使用量の削減、燃料転換及び省エネを強力に推し進め、削減目標を上積みします。

上記の重点課題に加え、新規事業の早期戦力化や物流の2024年問題、人材リソースの最大活用など、重要な経営課題への対処を加速し、中期経営計画2025の目標達成に向けて取り組んでいきます。

 

② 事業構造転換の加速

(イ)パッケージ

液体用紙容器事業では、国内は差別化製品の拡販により販売増を達成しました。環境性能と教育効果が高く評価されているストローレス学乳容器「School POP®」の採用も拡大し、今年度は15都府県、200余りの自治体での採用となる見込みです。今後も成長が見込める海外では、オセアニア地域での液体用紙容器の販売拡大に向けて、豪州に液体用紙容器及び充填機の販売子会社を設立しました。Elopak社、四国化工機株式会社との協業をアジア・パシフィック全体で進め、事業成長を図っていきます。北米の日本ダイナウェーブパッケージング社では、操業安定化やコスト削減、投資効果の発現により安定した収益を確保したうえで、国内紙パック事業との連携による高付加価値製品の販売拡大を図ります。

Opal社では、グラフィック用紙の主要原料であるユーカリ材の供給が停止されたことにより、同事業からの撤退を決定しました。今年度の早期に、メアリーベール工場の生産体制最適化を完遂し、今後は需要の伸長が見込まれるパッケージ事業に注力します。豪州ビクトリア州において建設中の段ボール工場の稼働により原紙から製品までの一貫体制を更に強化し、今年度下期中の黒字転換を目指します。

(ロ)家庭紙・ヘルスケア

日本製紙クレシア株式会社では、事業拡大に向けてクレシア春日株式会社及び当社石巻工場内に家庭紙の製造設備を新設します。新設備は、2023年8月、そして2024年5月にそれぞれ運転を開始する予定です。今後回復が期待されるインバウンド需要を確実に取り込むとともに、お客様に選ばれる商品を目指し、長尺の「長持ちロール」を始めとしたさまざまな商品群での差別化や、広告宣伝の強化、新しいコーポレートロゴへの刷新などによるブランド力向上を進めていきます。同時に、グループ内からのパルプ調達の拡大や省エネ推進など徹底的なコストダウンによる収益改善に取り組みます。

(ハ)ケミカル・新素材

ケミカル事業では、適切に設備投資を実施して生産体制を整え、輸出の拡大に取り組んでいます。また、世界的なリチウムイオンバッテリー(LiB)の市場拡大に対応するため、ハンガリーにLiB用CMCの製造販売子会社を設立しました。新工場は2024年12月に稼働予定であり、江津工場との2工場体制へと供給網を強化していきます。

CNF「セレンピア®」は、順調に販売を拡大しています。食品・化粧品用途での採用事例が大幅に増加し、海外展開も進めています。産業用途でも、ヤマハ発動機株式会社と共同でCNF強化樹脂の用途開発検討を開始しました。その他の新素材事業としては、東日本で採用が増えつつある養牛用の高消化性セルロース「元気森森®」について、西日本でも取り組みを進めます。また、持続可能な航空燃料への展開も見据えた国産木材由来のバイオエタノール事業について、住友商事株式会社、Green Earth Institute株式会社と共同検討を開始しました。

今後も木材由来のセルロースを活用した新素材、新規製品の開発を進め、循環型社会に貢献する製品を提供していきます。

(ニ)エネルギー・木材

国内最大級のバイオマス専燃発電設備(75MW)を保有する勇払エネルギーセンター合同会社が2023年2月に営業運転を開始しました。日本製紙石巻エネルギーセンター株式会社では、バイオマス混焼比率を高めるための改造工事を行っており、2023年11月の完工を予定しています。これらの取り組みにより再生可能エネルギーの供給力を高め、収益基盤を強化します。また、当社グループの持つ国産材集荷網や海外のバイオマス燃料調達機能をフル活用した燃料供給ビジネスを拡大していきます。

(ホ)紙・板紙

国内グラフィック用紙事業の生産体制再編成の一環として、秋田工場N1抄紙機、日本製紙パピリア株式会社原田工場3号抄紙機、5号抄紙機の停機を決定しました。新聞・印刷・情報用紙などのグラフィック用紙は今後も需要減少が見込まれるため、生産体制の再編成や一層のコストダウンにより収益改善を図ります。一方、段ボール原紙や紙器原紙に代表されるパッケージ用途の製品は、インバウンド需要の回復や環境面での脱プラスチックの潮流により、今後も需要が堅調に推移すると予測されます。こうした国内外での需要について、確実な取り込みを図ります。

 

③サステナビリティ経営の推進

当社グループは、社会や環境の持続可能性と企業の成長をともに追求するサステナビリティ経営を推進しています。

(イ)温室効果ガス削減

当社グループは、2030ビジョンにおいて「GHG排出量(2013年度比)45%削減」を掲げ、石炭使用量削減、燃料転換、省エネを強力に推し進めてきました。これらの取り組みにより、当初目標の達成に目途が立ったことに加えて、生産体制再編成を含め追加施策を検討した結果、さらなるGHG削減の道筋が見えてきたことから、2030年度のGHG排出量(2013年度比)削減目標を54%に見直します。GHG排出量削減に対する社会的要求は今後も高まっていくと予想されることから、国内のグラフィック用紙の生産体制再編成と連動させて、さらなるGHG排出量削減を目指し、スピード感を持って検討を進めます。2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、脱炭素に関わる新たな技術などを積極的に取り入れ、循環型社会の実現に貢献します。

(ロ)グリーン戦略

森林の持つ価値の最大化と、木質資源を利用した製品の拡大によって、循環型社会構築と事業基盤強化の両立を目指します。当社が長年培ってきた育種・増殖技術や植林技術を活用し、森林の生産性を向上させることでCO₂固定効率の向上を図ります。また、花粉量が少なく、かつ成長も早くて生産性が高いスギ・ヒノキなどのエリートツリーについて、苗木事業の拡大を図ります。行政や自治体とも協働して伐採後の再造林の推進に取り組み、国内林業の活性化及び花粉症問題解決に貢献します。一方で当社が有する国内の社有林については、引き続き適切な管理・維持による生物多様性や水資源の保全など、公益的機能の発揮に取り組みます。

森林がCO₂を吸収・固定する能力に由来するカーボンクレジットについては、「J-クレジット制度」と呼ばれる国の認証制度の見直しなど政策面での動向も注視しながら、地方自治体や他の森林保有企業とも連携し、クレジットの創出を進めます。

(ハ)製品リサイクル

従来は廃棄・焼却されていた難利用古紙について、リサイクルチェーンの構築や技術・設備対応による再資源化の拡充を進めています。従来技術では再利用に不向きとされていた剥離紙を、操業の最適化により再生処理可能としたほか、紙コップや紙パックなど利用されていなかった食品・飲料用製品の古紙について、昨年富士工場に再資源化専用設備を導入し運転を開始しました。近年ではこうした紙容器のリサイクルを望む顧客が増加しつつあります。当社では日本航空株式会社と協働し、機内サービス用紙コップの収集リサイクルを開始するなど、賛同企業からの紙コップ収集を拡大しています。今後、収集古紙の対象範囲を広げ、社会的要請に応えるとともに、賛同企業と協働した新たなスタイルのビジネス構築を進めます。

(ニ)人材リソースの最大活用

企業グループ理念の中で、目指す企業像の要件の一つが、「社員が誇りをもって明るく仕事に取り組む」ことです。そのためには、「社員と企業の双方の成長」を目的とした社員のエンゲージメント向上が必須です。この実現に向けて、「変化にチャレンジする人材づくり(人材育成)」、「社員のスキル・キャリア志向を踏まえた人材の活用(人材配置)」、「社員ニーズにこたえる処遇や制度の構築(人材確保・定着)」を人材戦略の3つの柱とした各種施策に取り組みます。

 

財務面については、政策保有株式や遊休資産の売却を積極的に進めるとともに、投資についても、財務規律を十分に考慮した上で、事業構造転換の加速に必要な投資を厳選していきます。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであり、達成を保証するものではありません。

 

(1) 当社グループのサステナビリティ経営

当社は、2004年度に国連グローバル・コンパクトに署名・参加しました。「日本製紙グループは世界の人々の豊かな暮らしと文化の発展に貢献します」との企業グループ理念の実現を目指すと同時に、国連グローバル・コンパクトが定める4分野(人権、労働、環境、腐敗防止)の10原則に基づき、社会・環境の持続可能性と企業の将来にわたる成長の両立を追求する、サステナビリティ経営を推進しています

 

(2) 企業グループ理念の実現に向けた経営の重要課題(マテリアリティ)

当社は2021年度に、取り巻く環境の変化に対応しながら企業グループ理念を実現するために、10年後に目指す姿を描き、その達成に向けた経営課題を「2030ビジョン」として策定しました。その策定の過程で、企業グループ理念の「目指す企業像」4要件に対応する経営の課題を議論し、ガイドライン等による検証、外部意見の確認や有識者との対話を経て、当社グループの重要課題(マテリアリティ)をまとめています。

さらに、2022年度には、2030ビジョンで取り組む「事業構造転換の推進」をマテリアリティに加えました。

 


 

(3) ガバナンス

当社は、取締役会の監督のもと、代表取締役社長の下にCSR本部を設置し、サステナビリティ経営の推進とリスクマネジメントの統括、企業広報を行う体制を構築しています。

 


 

CSR本部は定期的に取締役会にサステナビリティに関する報告を行っており、2022年度は人権尊重に関する活動などについて4回報告しています。

 

(4) リスク管理

当社は、取締役会の監督のもと、代表取締役社長を責任者とするリスクマネジメント委員会を設置し、年1回以上開催しています。当社グループのリスクの定期的な洗い出しと評価を行い、低減対策及び発現時の対策を検討・審議し、取締役会に報告します。2022年度は、当社の主要な事業リスクの中に、「ESG・SDGs等の社会的要求に関するリスク」を認識しています。

当社のリスクマネジメント体制を含む事業等のリスクにつきましては、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

 

(5) 戦略

当社グループは、2030年に目指す姿・目標として2030ビジョンを策定しました。「木とともに未来を拓く総合バイオマス企業として持続的な成長を遂げる」を目指す姿として、「成長事業への経営資源のシフト」「GHG削減、環境課題等への社会情勢激変への対応」を基本方針としています。

当社グループが有する経営資源を最大限活用し、3つの循環、『持続可能な森林資源の循環』、『技術力で多種多様に利用する木質資源の循環』、『積極的な製品リサイクル』を軸に、2030ビジョンの基本方針に基づいた事業活動を実践することで、当社グループの持続的成長の実現と木質資源を最大活用した循環型社会の構築をともに創出していきます。

 


 

(6) 指標

当社は、マテリアリティと2030ビジョンの基本方針で取り組むテーマを対応させて目標(KPI)を設定しています。2021年度は主な取り組みと進捗状況をまとめ、「日本製紙グループ統合報告書2022」に開示しました。

2022年度につきましては、2023年9月に発行する「日本製紙グループ統合報告書2023」に開示する予定です。

なお、「日本製紙グループ統合報告書2023」は発行後、当社グループウェブサイトにて公表される予定です。

 

 

(7) 気候変動問題への対応

① ガバナンス

当社グループは、気候変動問題への対応を経営課題として位置づけ、温室効果ガス(GHG)排出量削減を中心として緩和と適応に取り組んでいます。

当社の取締役会では、気候変動問題への対応を、企業グループ理念を実現するための重要課題と位置付け、GHG排出削減・環境経営担当役員(年2回以上)やリスクマネジメント委員会(年1回)から、GHG排出削減に関わる各プロジェクトの進捗、特定されたリスク・機会やシナリオ分析結果などの報告を受けて、その業務執行を監督しています。

 

② リスク管理

気候変動関連リスクの評価と対応は、当社グループのリスクマネジメント体制に統合され、リスクマネジメント委員会で管理すると同時に、GHG排出削減・環境経営担当役員の報告(年2回以上)で報告されるリスクは、優先度を選別・評価し、取締役会で迅速な意思決定を行っています。リスク評価については、気候変動戦略ワーキンググループにおいて、複数の気温上昇シナリオを設定し、分析・評価することで、重要なリスクを特定しています。

 

③ 指標と目標

指標

2030年度

2050年度

GHG排出量削減率

目標

実績
2021年度

カーボンニュートラル

54%削減 (注)
 (2013年度比)

20%削減
 680万t-CO

非化石エネルギー使用比率

60%以上

46%

 

(注)エネルギー事業分野を除く製造に関わるScope1及び2

 

④ 戦略

当社グループは、気候変動問題への対応を経営課題として位置づけ、GHG排出量の削減を中心とした緩和と適応に取り組んでいます。当社グループでは、気候変動問題に関わるリスクと機会に対応するために、シナリオ分析を行い、経営課題に取り込むことにより、リスクの低減と機会の拡大を図っています。

エネルギー多消費型である紙パルプ製造を主要事業とする当社グループは、脱炭素化の動きが急加速する状況において、その対応が遅れた場合、カーボンプライシングなどの規制リスクや顧客、投資家からのレピュテーションリスクにより財務影響を受ける可能性があります。一方で、今後、急速な拡大が予想される環境配慮型製品の市場において、当社グループは、森林資源を利用し、社会で必要とされる様々な製品・サービスを生み出し、資源循環できる蓄積を強みとして成長する機会があります。

当社グループは、シナリオ分析及びその他の情報を考慮し、2050年カーボンニュートラルに向けた移行計画を策定しています。GHGの削減については、2021年度に、2030ビジョンにおいて、2030年度までに2013年度比で45%削減する目標を設定しましたが、政策導入、市場ニーズの変化等、主として移行リスク要因の変化が速くなっていること、またその影響も大きくなる可能性があると評価されたことから、生産体制再編成と連動させた石炭削減の追加対策を検討し、2023年5月に、2030年度の削減目標を45%削減から54%削減に引上げました。

 

 

日本製紙グループ カーボンニュートラル移行計画

 


 

 


 

 

⑤ 2030年時点における主要なリスク

(移行リスク)

紙パルプ産業は、エネルギー多消費型産業であり、カーボンプライシングなどの政策リスクにより大きな影響を受けますが、GHG削減を加速させ、早期に低炭素化への移行を進めることで、炭素価格上昇に関わるリスクの低減を図っていきます。また、環境配慮型製品市場の拡大等、市場ニーズの変化に対応するための開発・設備投資費用が増加する可能性がありますが、環境に配慮した高付加価値な製品を適切に市場に提供することで、変化する市場において、リスクを機会に変えて成長していきます。

要因

当社グループへの影響事象

財務影響

1.5℃シナリオ

4℃シナリオ

政策導入
炭素税等の導入、
エネルギー構成の変化など

・炭素価格が上昇する

大 (注)

小 (注)

・燃料転換・省エネルギー対策の設備投資費用が増加する

・エネルギー及び原材料調達コストが増加する

市場ニーズの変化

・認証材チップの調達コストが増加する

・環境負荷低減のための開発コスト、設備投資費用等が増加する

小~中

 

(注)炭素価格影響額 小:100億円未満、中:100億円以上500億円未満、大:500億円以上

「炭素価格」以外は定性評価

炭素価格:IEAによるNet Zero Emissionシナリオを採用

 

(物理的リスク)

台風や豪雨などの気象災害の激甚化は、生産拠点や物流網に被害をもたらしますが、事業継続のための綿密な体制の整備を図り、リスクの低減を図っていきます。また、気温の上昇や降水パターンの変化は、植物の生長を悪化させるため、木材チップの調達コストを増加させるリスクがありますが、複数国・地域にサプライヤーを分散することで、安定的な調達を図っていきます。

要因

当社グループへの影響事象

財務影響

1.5℃シナリオ

4℃シナリオ

激甚災害の増加
(台風・豪雨の頻発)

・原材料調達・生産・製品輸送などの停止により生産量が減少し、納品の遅延・停止が発生する

中~大

・調達・製造・物流コストが増加する

気温上昇・降水パターンの
変化

・自社の植林資産に損失が生じる

・原材料が調達困難となり、調達コストが増加する

 

 

 

⑥ 2030年時点における主要な機会

政策導入や市場ニーズの変化により、バイオマス素材や省エネルギーに資する素材の需要が拡大すると同時に、資源自律を実現する国産材需要の増加やクレジット市場の拡大による森林吸収クレジット需要の増加などの機会に対して、森林管理、育種・増殖技術等の当社グループの強みを活用して成長していきます。

要因

当社グループへの影響事象

当社グループの強み

市場成長

1.5℃
シナリオ

4℃
シナリオ

政策導入
炭素税等の導入、
エネルギー構成の変化など

・蓄電池が普及し、蓄電池用原材料の需要が増加する

・CMC技術・生産設備
・CNF技術・生産設備

大きく
拡大

拡大

・自動車の軽量化ニーズにより、CNFの需要が増加する

・森林吸収クレジットの需要が増加する

・国内社有林
・森林管理・育種・増殖技術

大きく
拡大

維持

・カーボンニュートラルCO₂を利用した化学原料の需要が高まる

・バイオマス由来CO₂供給インフラ(回収ボイラー)

・化学的CO₂固定・利用技術

大きく
拡大

維持

市場ニーズの変化

・脱石化により紙化ニーズが高まるなど、バイオマス素材・リグニン製品の需要が増加する

・木質バイオマス素材開発技術(CNF、紙製包装材料、液体容器、機能性段ボール、バイオコンポジットなど)

・リグニン抽出・活用技術

大きく
拡大

拡大

・国産材の需要が増加する 

・国内の再造林面積増によりエリートツリー苗の需要が増加する 

・国内社有林
・森林管理・育種・増殖技術

拡大

大きく
拡大

・持続可能な航空燃料の需要が増加する

・パルプ・セルロースの製造技術

拡大

拡大

激甚災害の増加
(台風・豪雨の頻発)

・長期保存可能なアセプ紙パックの需要が増加する

・トータルシステムサプライヤー

拡大

拡大

気温上昇・降水パターンの変化

・環境ストレス耐性樹木の需要が増加する

・森林管理・育種・増殖技術

拡大

拡大

 

 

(8) 人材の活用

① 基本的な考え方

当社は、企業グループ理念の中で、目指す企業像の要件の一つに「社員が誇りを持って明るく仕事に取り組む」ことを掲げています。誇りとは、「事業活動の推進を通じて得る社会貢献の実感」、「キャリアを通じた個々人のスキル向上・成長実感」、「職場での働き甲斐や報酬・処遇への充実感」を享受することで培われるものと考えています。また、明るく仕事に取り組むとは、外部環境の激しい変化に対して臆することなく、社員が前向きに働くことであり、そのための企業風土づくりが必要です。この要件を満たすためには社員のエンゲージメント向上が必要であることから、各種の施策に取り組んでいます。

 

② 社員のエンゲージメント向上のための人材戦略

当社は、あるべき社員とのエンゲージメントを「社員と企業の双方が成長していける関係」であると定義しています。当社グループは、2030ビジョンの実現に向け策定された中期経営計画 2025において「事業構造転換の加速」を基本戦略に掲げていますが、これを実現するため、人材の育成、確保・定着に力を入れるとともに、成長事業への人材のシフトをはじめとした人材の活用を進め、社員と企業の双方が成長することを促していきます。また、多様な働き方の実現と、多様な人材が能力を最大限に発揮できる組織づくりを推進し、社員のエンゲージメント向上を図り、「社員が誇りを持って明るく仕事に取り組む」ことを実現していきます。

そのために、人材育成・社内環境整備の方針も含めた人材戦略として、下図のとおり3つの柱を据えて各種の施策に取り組んでいます。

 


 

3つの柱はいずれも重要かつ、相互に連動・循環する要素を含んでいますが、特に「変化にチャレンジする人材づくり」は、現時点における最重要課題と捉えています。労働力人口の減少・人材の流動化に伴い人材確保が難しい状況においては、既存事業の工場で高い操業スキルを蓄積した優秀な人材の職務領域をさらに拡張させ、新規事業の立ち上げや新製品の量産化に適応する人材として再育成・再配置することを加速していきます。

 

③ 人材育成及び人材確保・定着(社内環境整備)の方針に関する指標

当社は、人材育成や人材確保・定着(社内環境整備)の進捗状況をモニタリングするために、下表の通り指標を設定しています。今後は、進捗状況や外部環境の変化を踏まえながら、各方針の進捗状況をモニタリングするうえでより相応しい指標への見直し・追加等を、必要に応じて検討していきます。

 

人材育成及び社内環境整備に係る指標

指標

目標

実績

入社10年後の在籍率〔%〕

80%以上

2012年度に入社した
社員の在籍率 63.4% 

女性総合職採用比率〔%〕

40%以上(2025年度まで)

2023年度 新卒総合職における
女性採用比率 48.8%

年間総労働時間〔時間〕

1,850時間/年以下

2022年度 1,884時間/年

年次有給休暇取得率〔%〕

70%以上

2022年度 78.4%

ダイバーシティ推進制度利用率〔%〕(注)2

70%以上

2022年度 93.2%

 

(注)1.指標に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しています。

2.ダイバーシティを推進する制度(フレックスタイム制度、時間単位年休制度及び在宅勤務制度)を当年度中に利用したことがある本社部門従業員の比率です。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。ただし、これらはすべてのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外も存在し、それらのリスクが影響を与える可能性があります。また文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。

 

(リスク管理体制)

当社は、取締役会の監督のもと、代表取締役社長を責任者とするリスクマネジメント委員会を設置しています。当社グループの経営におけるリスク発生防止と実際にリスクが発生した場合の影響を最小限にとどめることを目的として、リスクマネジメント規程と危機対策規程を定め、平常時と緊急時の両面で対応することとしており、リスクマネジメント委員会では、当社グループのリスクを定期的に洗い出し、評価、防止対策及び発生時の対策を検討・審議し、取締役会に報告します。

 

<リスクマネジメント体制>


 

(1) 経営戦略に関する重要なリスク

原燃料調達や国内外輸送に関するリスク

当社グループは、主としてチップ、古紙、重油、石炭、薬品などの原燃料を購入して製品を製造・販売する事業を行っています。そのため国際市況及び国内市況による原燃料価格の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。また新型コロナウイルス感染症拡大を発端とした世界的なコンテナ輸送能力不足や港湾労働者・トラックドライバー不足、地政学リスクに起因するグローバルサプライチェーンの寸断、さらには環境問題対応によるクリーンエネルギーの使用や原燃料価格上昇の価格転嫁のため、輸送費の上昇や納期遅延が発生しています。今後国内においては、2024年4月からトラックドライバーの残業規制が強化されることによりドライバー不足が懸念される、いわゆる「物流2024年問題」が顕在化することで、この傾向がさらに強くなることが予想され、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。主な対策として、原料や燃料の一部について、リスクヘッジのため予約購入のスキームを設定し運用する等の施策を取っています。また、安定調達のため、船会社との良好な関係を構築するとともに、必要に応じて他社との共同輸送・共同調達の検討、長期契約や複数社・複数地域からの購買、グループ横連携強化による融通及び調達網拡大等を進めています。在庫については、在庫水準の見直しなど、適正な在庫管理や融通を行っています。

 

② 事業構造転換・新規事業創出遅延に関するリスク

当社グループの事業の1つである洋紙事業は、DXの進展や新型コロナウイルスを契機とした生活様式の変化を受けて市場縮小の傾向が続いています。そのため生活関連事業等の成長事業への経営資源のシフト、新規事業・新製品の早期戦力化を進めています。これらが予定通り進捗しないことにより、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。主な取り組みとしては、容器包装を中心としたプラスチック代替となる紙製品の開発、CNFをはじめとする木質バイオマスの利用拡大、成長事業への投資や人材の再配置、海外事業の拡大等になりますが、これらを計画通り進め、収益の向上に努めていきます。

特に海外事業については、グループとして成長していくため、これまで以上に海外展開の速度を速めています。当社グループは、北米・南米・北欧・東南アジア・豪州等で、紙・パルプの製造販売、植林等の海外事業展開を行っており、既存事業とのシナジー効果発現を目指しています。なお、海外における事業展開には、現地政府による法規制の変更、労働争議の発生、政情不安に伴う経済活動への影響等のリスクが内在しています。このため外部法律事務所と情報を共有し適切に対応することでリスクの未然防止に努めています。

 

③ 気候変動に関するリスク

エネルギー多消費型の紙・パルプを主要事業とする当社グループは、気候変動問題への対応を、企業グループ理念を実現するための重要課題のひとつとして捉え、2050年カーボンニュートラルを宣言し、GHG削減に取り組んでいます。脱炭素化の動きが急加速する状況において、当社グループの対応が遅れた場合、カーボンプライシングなどの規制リスクや顧客、投資家からのレピュテーションリスクにより財務影響を受ける可能性があります。

当社グループは、これらリスクに関わる財務影響を適切に評価し、TCFDに基づく開示を行っています。リスクについては、その低減のために、高効率設備の導入や製造工程の見直しによる省エネルギー対策、エネルギー構成の見直しによる非化石エネルギーへの転換を加速することで、GHGの早期削減に取り組んでいます。また、モーダルシフト化の推進や輸送距離の短縮など、バリューチェーンでの排出削減についてもステークホルダーと協働して取り組んでいます。自助努力による削減を継続しつつ、カーボンフリー燃料の利用や森林吸収等により2050年カーボンニュートラルを目指します。

 

④ 製品需要及び市況の変動リスク

当社グループは、紙・板紙事業をはじめ、生活関連事業、エネルギー事業、木材・建材・土木建設関連事業等を行っています。これらの製品等は経済情勢等に基づく需要の変動リスク及び市況動向等に基づく製品売価の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

対策として、DXの進展やコロナ禍における生活様式の変化により、市場の縮小傾向が大きい洋紙事業については、生産体制の再編成を行い、生産拠点の集約に取り組むとともに、需要増が見込まれる生活関連事業への投資等を実施しています。

 

(2) 事業環境及び事業活動に関するリスク

生産設備に関するリスク

当社グループは、主として需要と現有設備を勘案した見込生産を行っていますが、設備トラブルや火災等により生産設備の稼働率が低下した場合などに製品供給力が低下するリスクを負っており、製品供給力の変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。そのため、生産設備について定期的な点検を行い、脆弱箇所を計画的に更新する老朽化対策工事等の実施、複数工場での供給体制の構築、在庫の適正化といった対応を行っています。

 

② 自然災害及び感染症等のリスク

当社グループの生産及び販売拠点周辺で地震や大規模な自然災害が発生し、生産・販売等の事業活動に影響を及ぼした場合、生産停止による機会損失、設備復旧のための費用、製品・商品・原材料等への損害などにより、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。当社グループでは、危機対策規程により緊急時には危機対策本部を立ち上げ、従業員や家族の安否確認、自社や顧客の被災状況の把握、顧客企業への供給継続のための対応を図ります。また緊急事態への対応のためBCM(事業継続マネジメント)を整備し、複数工場での供給体制の構築や、災害を想定した避難訓練や安否確認訓練等を行っています。

新型コロナウイルス感染症は、季節性インフルエンザ等の他の疾病と同様の「5類感染症」に位置付けられましたが、従業員感染による製造ラインの停止リスクは残っています。当社グループは、新型コロナウイルス以外の感染症も含め、感染者の発生が多発して事業継続に影響が出る可能性のある場合の連絡体制を整備し、また必要に応じて対策本部の立ち上げを行う体制を準備しています。

 

人材確保及び労務関連リスク

当社グループは、人材戦略を事業活動における重要課題の一つとして捉えており、今後の事業展開には適切な人材の確保・育成が必要と認識しています。適切な人材を十分に確保できなかった場合、当社グループの事業遂行に制約を受けることにより、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。また、労務関連の各種コンプライアンス違反(雇用問題、ハラスメント、人権侵害等)が発生した場合、訴訟や当社グループの社会的信頼喪失により、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

   多様な人材の積極的な採用や育成、働き方の柔軟性・多様性を前提とした職場環境の整備等を通じて最適かつ効率的な人材の確保に努めており、従業員エンゲージメント向上施策として、2022年度から育児等のライフイベントと仕事との両立支援を中心とした社内制度の見直しを実施しました。また、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から緊急対応として行っていた在宅勤務制度を常設化しました。労務関連のコンプライアンス問題については、定期的にコンプライアンス研修を実施し、従業員のコンプライアンス意識の向上に努めています。

   また当社グループは、全事業所で安全最優先での操業に努めていますが、労働災害の発生は、労働者の健康や人命が失われる重大なリスクであり、災害内容によっては企業としての管理責任を問われ、設備停止の可能性もあります。労働災害を防ぐため独自の労働安全衛生マネジメントシステムを運用し、事業所毎に具体的、継続的かつ自主的な活動を安全衛生計画として組み込み、労働災害の防止と労働者の健康増進、快適な職場環境など安全衛生水準の向上に努めています。

 

環境法令関連のリスク

当社グループは、各種事業において環境関連の法規制の適用を受けており、これらの規制の変更・改正によって、生産活動が制限を受けるあるいは対策のための追加費用が発生するなどにより、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。環境関連の法改正状況について定期的にモニタリングするとともに、環境設備の定期点検や老朽化設備の対策工事の推進などを行っています。

 

情報システムに関するリスク

当社グループは、情報システムに関するセキュリティを徹底・強化し、また急速に普及した在宅勤務環境においても十分な情報セキュリティ対策を講じています。しかし、今後コンピュータへの不正アクセスによる情報流出や犯罪行為による情報漏えい、業務遂行妨害等問題が発生した場合には、損害賠償請求や当社グループの社会的信頼喪失、業務停止等により、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。情報セキュリティに関しては時流に合わせた防衛システムの導入や従業員教育を行い、個人情報については「個人情報取扱規則」を定め、全役員、全従業員及び関係取引先への周知を図るなど、管理体制を強化しています。

 

⑥ ESG・SDGs等の社会的要求に対するリスク

当社グループは、気候変動問題への対応や持続可能な森林資源の活用、生物多様性の保全といった環境に関わる課題のほか、人権の尊重、多様な人材の活躍、ガバナンスの充実など、様々なESG課題に対応していく必要があります。ESG課題の取り組みについて、取り組みの遅れや、投資家やESG評価機関が求める情報を適切に開示できない場合、当社グループの中長期的な成長性についてステークホルダーからの理解と信頼を得られず、当社グループブランドの失墜や、社会的評価の低下により、当社の経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。当社は、ESG評価機関とのエンゲージメントをはじめとする、ステークホルダーとの丁寧なコミュニケーションを継続的に実施することにより、当社グループのESG課題の取り組みを通じた中長期的な成長性について理解と信頼を得られるように努めています。

   主なESG課題のうち、気候変動に関する取り組みは別掲のとおりです。人権の尊重については、2004年に策定した「人権と雇用・労働に関する理念と基本方針」を、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って2022年に「日本製紙グループ人権方針」として改定しました。「日本製紙グループ人権方針」は、当社グループのすべての役員と従業員に適用し、サプライヤー等の取引先に対しても、支持と順守を働きかけることとしています。さらに、2021年に人権ワーキンググループを立ち上げ、人権デュー・ディリジェンスを導入しました。紙・板紙事業、紙パック事業、ケミカル事業に関するバリューチェーンで、すべてのステークホルダーを対象に人権リスクをリストアップした後、それらの評価を実施し、優先度の高い人権リスクを抽出し、対策の実施を進めています。

   また、当社グループの事業基盤は森林資源であり、「日本製紙グループ環境目標2030」で、生物多様性に配慮した持続可能な森林経営に関する目標を掲げています。既存事業の水辺林など配慮すべき地形情報の確認や、森林生態系の定点調査などを実施しています。また、生物多様性を保全するために伐採を行わない保護区・保護林を設定するなど、経済的に利用する森林と、環境保全のための森林を適切に管理しています。

 

⑦ 為替レートの変動リスク

当社グループは、輸出入取引等について為替変動リスクを負っています。輸出入の収支は、チップ、重油、石炭、薬品などの原燃料の輸入が、製品等の輸出を上回っており、主として米ドルに対して円安が生じた場合には経営成績にマイナスの影響を及ぼします。なお当社グループは、為替変動による経営成績への影響を軽減することを目的として、為替予約等を利用したリスクヘッジを実施しています。

 

製造物責任に基づくリスク

当社グループは、製品について製造物責任に基づく損害賠償を請求される対象であり、現在のところ重大な損害賠償請求を受けていませんが、将来的には直面する可能性があります。製造物責任にかかる保険(生産物賠償責任保険)を付保していますが、当社グループが負う可能性がある損害賠償責任を補償するには十分でない場合があります。当社グループではグループ製品リスク委員会を設置し、グループ各社の製品安全リスクの監督、支援を行っています。また、主要製造会社はそれぞれに製品リスク委員会を設置するとともに、製品リスク管理規程の整備を進め、製品安全事故の防止に努めています。

 

訴訟等のリスク

当社グループは、業務の遂行にあたり法令遵守などコンプライアンス経営に努めていますが、国内外の事業活動の遂行にあたり、刑事・民事・租税・独占禁止法・製造物責任法・知的財産権・環境問題・労務問題等に関連した訴訟等のリスクを負っており、その結果、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。特に環境意識の高まりにより、森林資源の利用については地域住民への配慮や生物多様性の調査等を行っています。またコンプライアンスの遵守はグループ行動憲章にも掲げており、従業員に対し周知・研修活動を通じてコンプライアンス意識の喚起を行っています。

 

M&Aや業務提携に関するリスク

当社グループは、新たな事業機会の創出により持続的成長を実現するため、M&Aや業務提携等を行うことがありますが、事業環境等の変化により、当初期待した成果をあげられない場合には、経営成績や財政状態等に影響を与える可能性があります。これらの実施にあたっては、M&Aアドバイザーを活用しながら、事前に事業戦略や相乗効果を十分吟味のうえ実施を決定し、実施後は、最大の効果が得られるよう経営努力をしています。

 

(3) 財務・会計リスク

① 株価の変動リスク

当社グループは、取引先や関連会社等を中心に市場性のある株式を保有しており、株価の変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。このため保有株式の定期的な株価のモニタリングを行うことにより、財政状態に重要な影響を及ぼす可能性を察知しています。

 

② 金利の変動リスク

当社グループは、有利子負債などについて金利の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。当社では、長期借入金の固定金利借入の比率を一定水準以上に保っています。また、返済年限の分散化、調達の多様化に加えて金利スワップなどの金融商品を利用すること等により、金利変動リスクへの対応を行っています。

 

③ 信用リスク

当社グループは、与信管理規程に従い取引先の財務情報等を継続的に評価し、与信限度を設定するなど信用リスクに備えていますが、経営の悪化や破綻等により債権回収に支障をきたすなどの事象が発生した場合には、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

④ 固定資産の減損リスク

当社グループは、生産設備や土地をはじめとする固定資産を保有しています。事業環境等の変化により当該資産から得られる将来キャッシュ・フローが著しく減少した場合、減損損失が発生し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 退職給付債務に関するリスク

当社グループの退職給付費用及び債務は、年金資産の運用収益率や割引率等の数理計算上の前提に基づいて算出していますが、数理計算上の前提を変更する必要が生じた場合や株式市場の低迷等により年金資産が毀損した場合には、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。このため年金資産の運用については、外部コンサルタントの助言をもとに、リスク・リターン特性の異なる複数の資産クラス・運用スタイルへの分散投資を行っており、年金資産全体のリスク・リターンの分析を定期的に実施することで、分散効果の有効性について評価を実施しています。

 

⑥ 繰延税金資産の取崩しリスク

当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、将来の課税所得を見積った上で回収可能性を判断し、繰延税金資産を計上しています。しかし、事業環境等の変化による課税所得の減少や税制改正等により回収可能性を見直した結果、繰延税金資産の取崩しが発生し、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1) 経営成績

当期におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和が進む中で、緩やかに持ち直しています。先行きにつきましては、今後の原燃料価格の動向や、欧米各国の金融引き締めによる世界的な景気後退懸念など、なお不透明な状況が続いています。

当社はこのような状況の中、当期におきましては、グラフィック用紙の需要減少への対応として、石巻工場N6抄紙機の停機を計画通り完了しました。また、将来の需要減少を見通し、グラフィック用紙の生産体制見直しとして、計画を前倒し2023年3月をもって秋田工場N1抄紙機を停機しました。

連結業績につきましては、主に生活関連事業における売上高の増加や、前期から取り組んできた各種製品の価格修正が寄与したことなどにより、前期に比べ増収となりました。一方、これらの増収の効果をはるかに上回る原燃料価格の高騰や円安の影響などにより、当期は営業損失となりました。ただし、石炭使用量の削減などのコストダウン及び価格修正の実現により、営業損失は当第3四半期を底として、当第4四半期の赤字幅は大きく改善されています。また、Opal社におけるグラフィック用紙事業の撤退に係る固定資産の減損損失など19,705百万円を特別損失に計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純損失が増加しました。結果は以下のとおりです。

 

連結売上高

1,152,645

百万円

(前期比 10.3%増

連結営業損失

26,855

百万円

(前期は連結営業利益12,090百万円

連結経常損失

24,530

百万円

(前期は連結経常利益14,490百万円

親会社株主に帰属する

当期純損失

50,406

百万円

(前期は親会社株主に帰属する当期純利益1,990百万円

 

 

各セグメントの経営成績は、以下のとおりです。

 

(紙・板紙事業)

売上高

563,246

百万円

(前期比 5.9%増

営業損失

29,221

百万円

(前期は営業損失5,575百万円

 

新聞用紙は、発行部数の減少が継続し、国内販売数量は前期を下回りました。印刷・情報用紙は、総じて需要が低調に推移し、国内販売数量は前期を下回りました。

板紙は、飲料関係向けの需要が堅調であったものの、自動車関連や工業製品向けなどは低調に推移し、国内販売数量は前期をわずかに下回りました。一方、昨年度から取り組んできた製品の価格修正が寄与したことにより、売上高は前期を上回りました。

 

(生活関連事業)

売上高

440,059

百万円

(前期比 13.9%増

営業損失

7,818

百万円

(前期は営業利益4,770百万円

 

家庭紙は、長尺トイレットロールやペーパータオルの販売が好調であったことに加え、行動制限の緩和に伴い宿泊向けなどの需要が回復し、販売数量は前期をわずかに上回りました。

液体用紙容器は、食品価格全般の値上がりによる生活防衛意識の高まりで需要が低迷する中、給食牛乳向けSchool POP®の採用拡大や充填機販売に伴う拡販により、販売数量は前期を上回りました。

溶解パルプ(DP)は、需要が堅調に推移したことや製品の価格修正が寄与したことなどにより、売上高は前期を上回りました。

海外事業は、製品の価格修正が寄与したことや円安の影響などにより、売上高は前期を上回りました。

 

(エネルギー事業)

売上高

49,908

百万円

(前期比 56.9%増

営業損失

1,734

百万円

(前期は営業利益1,586百万円

 

エネルギー事業は、原燃料価格の高騰による電力価格の上昇などに加え、2023年2月より勇払エネルギーセンター合同会社のバイオマス専焼発電設備が営業運転を開始したことにより、売上高は前期を上回りました。

 

(木材・建材・土木建設関連事業)

売上高

68,896

百万円

(前期比 6.8%増

営業利益

8,894

百万円

(前期比 16.8%増

 

木材・建材は、新設住宅着工戸数は前期をわずかに下回り、一昨年来の世界規模での木材の供給不足もピークアウトを迎えているものの、製品価格が堅調に推移したことに加え、バイオマス発電向け燃料チップなどの販売が拡大したことにより、売上高は前期を上回りました。

 

(その他)

売上高

30,534

百万円

(前期比 1.1%増

営業利益

2,488

百万円

(前期比 17.5%増

 

 

(2) 財政状態

総資産は、前連結会計年度末の1,639,286百万円から27,256百万円増加し、1,666,542百万円となりました。この主な要因は、勇払エネルギーセンター合同会社を新規に連結したことにより有形固定資産などが増加した一方、政策保有株式の売却により投資有価証券が減少したことによるものです。

負債は、前連結会計年度末の1,200,682百万円から50,659百万円増加し、1,251,341百万円となりました。この主な要因は、勇払エネルギーセンター合同会社を新規に連結したことによるものです。

純資産は、前連結会計年度末の438,604百万円から23,403百万円減少し、415,200百万円となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)は、144,346百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,130百万円増加しました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得た資金は、前連結会計年度に比べ6,554百万円減少し、65,823百万円となりました。この主な内訳は、税金等調整前当期純損失41,365百万円、減価償却費66,279百万円、運転資金の増減(売上債権、棚卸資産及び仕入債務の増減合計額)による収入26,834百万円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ6,771百万円減少し、68,018百万円となりました。この主な内訳は、固定資産の取得による支出89,357百万円、投資有価証券の売却による収入21,207百万円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得た資金は、前連結会計年度に比べ47,338百万円減少し、6,976百万円となりました。この主な内訳は、有利子負債の増加による収入です。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの運転資金需要の主なものは、製品製造のための原材料や燃料購入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用です。また設備投資資金の主なものは、新規事業への投融資及び設備投資、既存事業の収益向上や操業安定化等を目的としたものです。
 今後も引き続き成長分野や新規事業へ積極的に投資を行っていく予定であり、その必要資金については、自己資金と外部調達との適切なバランスを検討しながら調達していきます。
 なお、長期借入金、社債等の長期の資金調達については、事業計画に基づく資金需要や既存借入の返済時期、金利動向等を考慮し、調達規模や調達手段を適宜判断し、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)により当社グループ内での余剰資金の有効活用を図り、有利子負債の圧縮や金利負担の軽減に努めています。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しています。

 

(6) 生産、受注及び販売の状況

 ① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

前期比(%)

紙・板紙事業

金額(百万円)

460,989

6.1

生活関連事業

金額(百万円)

374,115

6.6

エネルギー事業

金額(百万円)

49,908

56.9

合計

金額(百万円)

885,014

8.3

 

(注)1.木材・建材・土木建設関連事業、その他は、生産高が僅少であるため、記載を省略しています。

   2.当連結会計年度において、エネルギー事業における生産実績に著しい変動がありました。その内容については、「(1) 経営成績」をご参照ください。

 

 ② 受注実績

  当社グループは主として需要と現有設備を勘案した見込生産のため、記載を省略しています。

 

 ③ 販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

前期比(%)

紙・板紙事業

金額(百万円)

563,246

5.9

生活関連事業

金額(百万円)

440,059

13.9

エネルギー事業

金額(百万円)

49,908

56.9

木材・建材・土木建設関連事業

金額(百万円)

68,896

6.8

その他

金額(百万円)

30,534

1.1

合計

金額(百万円)

1,152,645

10.3

 

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しています。

3.当連結会計年度において、生活関連事業、エネルギー事業における販売実績に著しい変動がありました。その内容については、「(1) 経営成績」をご参照ください。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、「総合バイオマス企業」への事業構造転換と基盤事業の競争力強化のため、新規事業の早期創出、パッケージ事業、家庭紙・ヘルスケア事業、ケミカル・新素材事業やエネルギー・木材事業等の成長分野の拡大、紙・板紙事業の収益力向上に貢献する研究開発を進めています。今後、グループ内の研究資源を最大限に活用し、社内外との連携を密にすることでオープンイノベーション等を推進し、更なる研究開発を進めていきます。

当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、5,760百万円(人件費を含む)であり、各事業部門別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は以下のとおりです。

 

(1) 紙・板紙事業

 国内市場の成熟化と海外市場の成長、深刻化する地球環境問題等の様々な課題に対峙するため、基盤技術研究所、富士革新素材研究所及びパッケージング研究所が中心となり、以下のような取り組みを行っています。当事業に係る研究開発費は3,573百万円です。

① 植林事業に関する技術開発

 事業活動の基幹となる原材料確保のため、自社植林木の生産性向上を目指し、技術開発を積極的に進めています。特にブラジルにおいては、ユーカリの育種と植林地の管理技術向上により、単位面積当たりの収穫量は年々増加しています。更なる生産性向上を目指し、DNAマーカー選抜を始めとする最新技術の導入も推進しています。また、こうした当社の独自技術を活用し、他社と戦略的パートナーシップ契約を締結し、インドネシアの植林事業会社の植林木の生産性向上に取組んでいます。一方、国内においては、CO₂吸収能力が高く成長に優れ、花粉量が少ない等の特徴を持つエリートツリーの苗木生産事業を全国で展開しています。2016年の熊本県に続き、2022年に静岡県、広島県、鳥取県、大分県の4県において「特定増殖事業者」の認定を受け、エリートツリーの苗生産に必要な種子や穂木を生産するため、採種園・採穂園の造成を行いました。今後は2024年から各地で苗木生産を開始し、同年秋以降の苗木出荷を予定しています。

② 品質とコストの更なる改善

 洋紙及び板紙の競争力強化のため、新製品開発や需要家のニーズに応えた品質改善を継続します。また、製造工程の操業性改善をより効率的に行うために、生産現場とより密接に連携を図りながら品質向上とコストダウンの技術開発を迅速に進めています。収益改善に資する技術開発として、安価材料の利用技術の開発、自製填料の高度利用技術の開発等の独自技術開発も推進しています。

③ 将来に資する技術開発等

 「総合バイオマス企業」としての新規事業創出については、木材をベースとした新素材、パッケージ等のプラスチック代替新規紙材料の開発やセルロースナノファイバー、バイオリファイナリー等に関する研究開発に取り組んでいます。

新素材としては、無機物の特徴・特性を備えた機能性材料ミネラルハイブリッドファイバー(ミネルパ®)の事業化に向けた本格的なサンプル供給を行い、更なる用途開発を推進し、商品化を進めています。2022年度は「消臭抗菌」、「難燃」、「X線遮蔽(造影)」等の各機能を持つミネルパの採用拡大を目指して、事業分野の探索とサンプルワークを進めており、システムトイレ用猫砂と高機能吸湿剤で「消臭抗菌」の機能を持つミネルパが採用となりました。

 木材を原料とする養牛用飼料の元気森森®、にんじん森森®(高消化性セルロース)については、民間の牧場で乳牛の乳量増加効果、繁殖成績の向上に加え、和牛の繁殖用母牛でも健康増進効果が確認され始めました。2021年度からは、パルプを牧草と同様に「ロールベール形態」へ加工する装置を岩沼工場に設置し、牧場側で扱いやすい形態でのサンプル提供体制を整え、有償サンプルワークの展開を加速しています。

 パッケージ等のプラスチック代替新規紙材料については、当社の塗工技術を活用し、紙にバリア性を付与した紙製バリア素材「シールドプラス®」、プラスチックフィルムを貼合することなく “紙だけでパッケージができる”ヒートシール紙「ラミナ®」の開発を推進しています。「シールドプラス®」は2020年度に耐屈曲性を向上したリニューアル品を上市、これに伴いスタンドパウチなど新たな形態での採用も増えています。「ラミナ®」についても2020年の販売開始以降、脱プラスチックを可能とする素材としてバリア性を必要としない食品、化粧品、日用雑貨等の二次包装材として採用が進んでいます。また、更なる環境配慮型素材として、他社と共同開発した生分解性に優れるヒートシール紙が2022年11月に菓子製品の外装に採用されました。当社グループの拠点があるフィンランドにおいても同様の開発、生産を行っており、環境対応が求められる包装市場における新たな環境配慮型包材として、国内外への提案を進めています。また、防水性、防湿性、耐油性を有し、かつリサイクルが可能な多機能段ボール原紙「防水ライナ」を開発しました。「防水ライナ」を用いて製造した段ボールケースは防水性等を活かし、箱の形状を工夫することで、発泡スチロールと同様に氷詰めした水産・青果物の輸送や、耐油性を活かした機械部品などの輸送を可能にしました。現在、各段ボールメーカー、代理店と協力し、魚箱用途をはじめとしたユーザーへの展開を図るとともに、ユーザーでの加工効率向上に向けた生産体制拡充を進めています。

 プラスチック使用量削減については、耐熱性・粉砕性・疎水性に優れた木質バイオマス材料を樹脂に高配合したトレファイドバイオコンポジットを開発しました。トレファイドバイオコンポジットはプラスチック使用量を5割以上削減できるとともに、GHG削減にも寄与します。また、セルロースパウダーと樹脂を複合化したセルロースバイオコンポジットも開発しました。当社が培ってきたセルロースパウダー技術を活用し、従来の製品よりも強度や成形性に優れています。今後は、他社と開発を連携することで日用品、容器、建材、家電製品、自動車部材など、幅広い分野への展開を目指し、製品開発と早期の市場投入を計画しています。

 セルロースナノファイバー(セレンピア®)については、2017年度に設置した量産設備(石巻、江津)及び実証生産設備(富士)の稼働により、用途に応じたCNF製造技術と本格的な供給体制を確立し、CNFの市場創出を推進しています。化粧品や食品用途分野で採用が大幅に増えており、2021年度に立ち上げた他社とのコラボレーションによる「セレンピア®」配合のエシカルスキンケアブランド「BIOFEAT.」は、順調に発売1周年を迎えました。また、金属イオンを担持させた変性セルロースを用いて抗ウイルス性を有した不織布や印刷用紙、段原紙等の製品開発を行っています。2021年度に銅イオンをプラスした変性セルロースを使用した機能性シート(抗ウイルス・抗菌・消臭・抗アレルゲン)を用いた医療用マスク 「Cu-TOP(シー・ユー・トップ)サージカルマスク」の販売を開始しました。Cu-TOPについてはその後、大学との共同研究で新型コロナウイルスに対する抗ウイルス効果が高いことを見出しました。

 熱可塑性樹脂中にCNFを強化剤として均一分散・配合するCNF強化樹脂(セレンピアプラス®)は、実証生産設備(富士)によるサンプルワークを進め、自動車部品や住設機器の部材用への採用を目指し、研究開発を進めており、2022年11月に共同検討中のモビリティメーカーの水上オートバイの部品への採用が決まりました。

 NEDOプロジェクトへの参画も積極的に展開しています。CNF強化樹脂開発の案件で2020年度から実施している助成事業を2024年度まで継続することが採択されました。また、2021年度に採択された環境省補助金事業「革新的な省CO₂実現のための部材や素材の社会実装・普及展開加速事業」については、3Dプリンターを導入して成型樹脂材料の開発を進めています。

バイオリファイナリーについては、引き続きセルロース、リグニン等の木材成分の高度利用技術の開発を推進しており、共同開発を進めている「クラフトリグニンのアスファルト利用に関する研究」がNEDO戦略的省エネルギー革新プロジェクトに採択されています。

 

(2) 生活関連事業

 液体用紙容器については当社が、各種化成品については当社及び株式会社フローリックが中心となって研究開発を行っています。当事業に係る研究開発費は2,041百万円です。

 液体用紙容器の分野については2020年末に採用されたストローレス対応学校給食用紙パック「School POP®」の全国展開を推進しています。固形物入り飲料が充填可能な新アセプティック充填システム「NSATOM®(えぬえすアトム)」はグループ会社内にある試験用の飲料殺菌ラインを更新して、実際に客先向け実液充填を行い、採用に向けて保存テストを実施中です。また、大型レンガ型紙容器としては国内最速となる無菌充填機(UP-FUJI-LA82)が完成しており、初号機は既に客先に設置し、生産を開始しています。2号機については新たに開発した高性能、高速口栓装着機と合わせてグループ会社内に設置済で、今後拡販向けにデモンストレーションを実施していきます。非飲料分野向けについては差し替え式紙容器「SPOPS®」及び消毒剤用特別仕様「SPOPS® Hygiene」に対応する高速充填機(UP-MX20)を委託充填メーカーに設置済で、既にブランドオーナー数社の製品を充填、販売開始しており、更なる拡販を推進しています。引き続き環境と衛生性、ユニバーサルデザインに配慮した製品及びシステム(充填機等)の開発を推進していきます。

 化成品の分野につきましては、自動車プラスチック部材用プライマー、接着剤等の機能性コーティング樹脂の新製品開発・製品化を進めています。また、合成系水溶性高分子の用途拡大やリグニン製品の農業分野への拡販支援、飼料用酵母の免疫機能向上データ拡充等を行っています。機能性フィルムではスマートフォン、タブレット端末等の中小型ディスプレー用途や車載ディスプレー用途のハードコートフィルムを開発し、製品化しました。さらに、クリーン精密塗工及びハードコート技術を応用した新製品開発に取り組んでいます。

 

(3) エネルギー事業

 エネルギー事業に係る技術開発として、木質バイオマスを半炭化(トレファクション)して得られる新規固形燃料について事業化を検討しています。また、紙の製造工程で発生する廃棄物を使用した燃料の利用及び当事業のGHG削減についても検討しています。当事業に係る研究開発費は120百万円です。

 

(4) 木材・建材・土木建設関連事業

該当事項はありません。

 

(5) その他

金額が僅少であるため、記載を省略しています。