第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営理念、行動指針

 当社グループでは以下のとおり、「アルピコグループ経営理念」、「アルピコグループ行動指針」を定めております。

① アルピコグループ経営理念

 アルピコグループは、信州に暮らす人々とその素晴らしい自然環境を愛し

 「安全・安心」、「便利」、「快適」、「楽しさ・ときめき」

 「知識」の提供を通じて、豊かな地域社会の実現に貢献します。

 

② アルピコグループ行動指針

 アルピコグループの宝は地域のお客様からの信頼です。

 私たちはお客様の満足でNo.1を目指し、誠実に行動します。

 

(2) 経営環境、対処すべき課題

①流通事業

 スーパーマーケット事業を取り巻く環境は、物価高による消費マインドの低下、原材料価格や電気料金の高騰による利益の圧迫等厳しい状況が続いております。このような環境の中、2023年度は「地域社会に食材・食事を届け、食卓を豊かにする」をテーマとし、以下の経営方針及び施策に取り組んでまいります。

 「商品力を高める」方針の下、「価格・価値・健康・ウェルネス」をキーワードとした商品開発を進めます。

 「販売力を高める」方針においては、店舗におけるインストアプロモーションの取組を強化してまいります。また「整理・整頓・清掃・清潔」といった基本の徹底を維持することで、更にお客様の信頼度向上に努めてまいります。

 「営業力を高める」方針では、デジタル(EC事業)とリアル店舗(実店舗)の融合を進め、お客様との接点を増やすことで、来店頻度の向上に努めてまいります。

 今後も地域密着に徹し、地域社会の課題解決に積極的に取り組んでまいります。そのため、環境・人・社会・地域に配慮した「エシカル消費」の推進をはじめとし、持続可能な開発目標であるSDGsへの取組を積極的に進めてまいります。

 

②運輸事業

 運輸事業を取り巻く環境は、移動制限や入国制限の緩和により国内外での移動需要が活発化する等、回復の動きが継続しております。しかしながら燃料費の高騰や人手不足が続いており、先行きについては不透明な状況となっております。

 そうした中、外部環境に左右されず持続的な成長を可能にするため、強固な経営体質への転換を進めてまいります。そのため、販促・マーケティングの強化、生産性向上に向けたDXの推進、先進技術導入による安全マネジメント体制の一層の強化に取り組んでまいります。

 また、本年4月より松本地域の路線バスは、公民連携による運行に移行しております。今後も行政を含む地域や外部企業との共創を強化しながら地域交通の再構築に取り組んでまいります。

 

③観光事業及び不動産事業

 観光事業であるホテル・旅館事業を取り巻く環境は、社会経済活動の正常化の動きが更に進展し、訪日外国人旅行者数の復活も相まって、需要回復の傾向が着実に進むものと期待されます。一方、人手不足が深刻化しており、稼働率向上を阻害し収益を下押ししております。

 このような状況に対処すべく収益性をより意識した、高付加価値型商品を拡充してまいります。また、積極的な海外人材の採用等により人材確保に取り組んでまいります。

 不動産事業を取り巻く環境は、リモートワークや二地域居住の普及、蓼科・八ヶ岳地域のエリアとしての魅力向上等により別荘や移住への関心が高まり、堅調に推移しました。一方、インフラの老朽化、顧客層の高齢化と代替わり等課題は依然として大きいものと認識しております。

 これらの課題に対処すべく、維持更新投資の計画的な実行、新たな顧客ニーズの開拓と提案、別荘生活の魅力発信等に取り組んでまいります。

 

④その他のサービス事業

 保険代理店事業においては、営業体制強化のため営業部門の分業化と専門化を図り、併せてローコストオペレーションを実現することに注力してまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)ガバナンス

 2019年度の台風19号や令和3年8月豪雨等の大規模自然災害では、流通事業や運輸事業を中心に被災による大きな損害が発生した他、2019年末から続く新型コロナウイルス感染症(以下「新型感染症」といいます。)の流行・拡大では全事業でリスクが顕在化し甚大な影響が発生、継続しております。こうした状況下、「サステナビリティ」は当社グループにとって大きな経営課題となると共に、地域社会の生活インフラを支える事業を展開する当社グループの社会的責任を改めて強く認識する契機となりました。

 当社グループは、生活基盤産業を中心に異業種複合体企業グループを形成しており、サステナビリティ関連のリスク及び機会の識別、評価、管理は一義的には各社ごととなります。グループ全体のサステナビリティ関連の会議体として「SDGs担当者会議」を設置し推進、統括し年次で経営会議に活動方針及び活動実績を報告しております。

 各社は年次で「SDGs(CSR)取組計画」を策定し、実績や進捗状況、課題等について四半期毎に開催される「SDGs担当者会議」に報告を行っております。

 

(2)戦略

①マテリアリティ(重要課題)特定プロセス

 サステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための課題について、個別に評価を行った上で重要課題を特定しております。以下の事業・会社及び課題について重要性が高いと判断しております(●印が重要性の高い事業・会社及び課題)。

課題分類

セクター・事業・会社

食品・飲料

運輸

流通

バス

鉄道

タクシー

㈱デリシア

アルピコ交通㈱

アルピコタクシー㈱

環境

温室効果ガス(GHG)排出量

社会資本関係

消費者の福利*

 

販売慣行・製品表示**

 

人的資本

従業員の安全衛生

 

リーダーシップ及びガバナンス

重大インシデントリスク管理

 

 消費者の福利は「全消費者が公平に公正な価格で商品やサービスを購入することができる社会的利益に係る課題」です。

 販売慣行・製品表示**は「消費者が高品質で安全な商品やサービスを購入することができる社会的利益に係る課題」です。

 評価に際し、セクターごとの課題の重要性はSASB(サステナビリティ会計基準審議会)「マテリアリティマップ」の区分に準拠し、量的基準及び質的基準の両者を満たす事業・会社について重要性が高いと判断しております。量的基準では、各事業セクターの前連結会計年度の「売上」、「営業利益・費用」の高い事業セクターから合算し概ね2/3に達している事業セクター・会社を重要性が高い区分としております。質的基準では、各事業の気候関連のリスクのうち物理的リスクの高低を指標としており、具体的には台風・豪雨災害等の自然災害に起因する物理的リスクが顕在化した場合の影響度により判断いたしました。

②サステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組

 イ.温室効果ガス排出量

 流通事業においては、店舗屋根への太陽光パネルの設置、店舗照明のLED化を計画的に進めている他、エネルギーマネジメントシステムの導入によりCO2排出量(Scope2)の削減に取り組んでおります。この他、店舗施設へのEV充電器設置によりお客様の利便性向上とCO2削減に向けた取組も行っております。

 運輸事業においては、バス・タクシーの車両更新を定期的に実施し燃費の向上及び使用電力削減によりCO2排出量の削減を行っております。この他バス・タクシーでは「省エネ運転」の取組を従来から行っております。

ロ.消費者の福利、販売慣行・製品表示

 流通事業においては、以下のサステナビリティ関連の施策実施により、地域社会への貢献、事業の維持継続発展、エシカル消費の推進及び新たな事業機会の創出に取り組んでおります。

・レジ袋削減、再生トレー活用とノントレー食品包装への取組等によるプラスチック使用量の削減

・アルミ缶やペットボトル等のリサイクル推進

・消費期限の近づいた食品のフードバンク事業への提供等フードロス削減の取組

・地域に配慮したエシカル消費への啓蒙活動

・地元長野県産原料・農産物のECサイトを活用した全国販路の拡大等地域資源の活用

 

ハ.従業員の安全衛生

 運輸事業においては、乗務員の安全衛生管理が重大インシデント防止に直結することを踏まえ、定期健康診断や日々のアルコールチェック、運転適性診断等を実施しています。

二.重大インシデントリスク管理

 運輸事業においては、事業の基本方針(安全方針)として「安全はすべてに優先する」を掲げ、全社員に対して会議、通達等を通じて周知徹底を図っております。安全方針に基づき、年度毎に「安全重点施策」及び「行為目標」を策定し、取組状況及び達成状況について、定期的に取締役会に報告しております。

 事件・事故・災害等発生時の報告・対応ルールについてはリスク管理規程で定めており、重大インシデント発生時の報告についてはSNS・携帯端末を活用し即応体制を敷ける体制としております。

ホ.その他

 a.機会

 当社グループは、日本屈指の山岳景勝地である上高地観光関連の事業(沿線バス・タクシー・鉄道運行、都市圏からの直通バス運行、上高地ルミエスタホテル営業等)を多く擁し主力事業の一つとなっております。上高地環境保全の取組は、グループのブランディング向上や収益機会の増大につながることも踏まえ、環境省や地元事業者と連携しクリーン運動等にグループを挙げて取り組んでおります。

 b.リスク管理

 運輸事業においては、自然災害を想定したBCP(事業継続計画)を策定しております。また定期的に有事に備えた訓練を実施しております。

 

(3)リスク管理

 グループ全体及びグループ各社におけるリスク管理に関する事項を審議又は決議する機関として、コンプライアンス・リスク管理委員会を設置しております。

 気候関連リスクに関連する被災等への対応は「危機管理緊急対応マニュアル」等に規定するとともに、各社ごとにBCP等を策定しております。

 

(4)指標及び目標

 流通事業及び運輸事業の温室効果ガス(CO2)排出量は以下のとおりです。尚、目標設定は行っておりません。

Scope1

CO2排出量t

運輸事業(バス・タクシー)

18,872

 

Scope2

CO2排出量t

流通事業

22,903

運輸事業(鉄道)

582

 流通事業においては、太陽光発電により購入電力量を削減しており、当該削減量は1,042tのCO2排出量に相当します。

 

(5)人的資本に関する戦略並びに指標及び目標

 当社グループは、多様性ある人材の確保・育成や人材ポートフォリオの構築が企業の持続的発展には欠かせないとの認識の基、人的資本経営に取り組んでおります。

①戦略

 当社グループでは以下のとおり、「アルピコグループ人事基本理念」、「アルピコグループ人事基本方針」及び「求められる人材像」を定めております。

イ.アルピコグループ人事基本理念

 個々人が、アルピコグループの代表であるという誇りと責任を持って働き、経営理念の実現に向けてやりがいと喜びを感じられる企業風土を目指します。

ロ.アルピコグループ人事基本方針

 横並びの発想をやめて、会社・部門の業績に合わせ、より貢献した人、より頑張った人、新しいことにチャレンジした人を評価し、それに報いる人事制度を実現していきます。

ハ.求められる人材像

 信州を愛し、豊かな地域社会を実現できる人材

 常にお客さまの視点に立って考え、行動できる人材

 失敗を恐れず常に改革・改善にチャレンジできる人材

 

②指標及び目標

 当社グループは、『アルピコグループ中期経営計画(Change & Challenge 2023)』に取り組んでおり、その3つの基本方針の一つとして「企業文化の変革」に取り組んでおります。具体的な目標として「従業員のエンゲージメント向上」、「多様な人材の登用、活用」及び「人材育成、資格取得制度の整備、拡充」の3項目を設定し以下の取組を実施しております。取組に当たっては、当社及びグループ各社の人事部門長で構成する「人事担当者会議」を設置し推進を図っており、取締役会、経営会議及びグループ社長会に進捗報告を行っております。尚、3項目についての指標設定は行っておりません。

イ.従業員のエンゲージメント向上

 2年毎のコンプライアンス・エンゲージメントサーベイの実施、定期健康診断の実施、男性育児休暇制度の充実、コンプライアンス研修の充実、定期的なコンプライアンス・リスク管理会議の実施

ロ.多様な人材の登用、活用

 人事制度再構築、イノベーション研究会及びテーマ別グループ横断プロジェクトによる人材発掘、適材適所への異動

ハ.人材育成、資格取得制度の整備、拡充

 人間的成長を実現する教育研修制度・幹部育成プログラムの整備

 資格取得制度の充実、報酬への反映による学習する風土の形成

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあります。なお、当社グループ(当社及び連結子会社)は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。

本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、以下の記載は、当社グループの事業等のリスクをすべて網羅することを意図したものではないことにご留意ください。

 

(1) 自然災害、事故等に関するリスク

 ① 気候変動、災害、重篤な感染症等のリスク

 当社グループは通常の事業活動が困難となる場合に備え、BCP等を策定しております。しかしながら、豪雨・大型台風・地滑り・豪雪・大規模な地震、火山活動等の気候変動に起因する自然災害、テロ等の犯罪行為、火災や停電等が発生した場合、供給網の寸断、事業所・設備の被災により事業活動の停止や多額の復旧費用等が見込まれ、重篤な感染症が蔓延した場合、政府や自治体による行動制限の実施や消費者の行動抑制等により旅行客等が著しく減少し運輸事業、観光事業を中心に業績悪化が懸念される等、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループ各社の本社を含む営業拠点は長野県内に集中しているため、大規模地震等の災害が長野県で発生し、物的、人的な損害を受けこれらの拠点が機能不全に陥った場合、事業継続が困難となり、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ② 業績の季節変動に関するリスク

 当社グループの業績には季節変動があります。運輸事業である山岳観光路線の旅客輸送や観光事業であるホテル・旅館事業、高速道路サービスエリアの物販店等は、主として観光客に対する売上の割合が高いことから、観光シーズンである第2四半期の業績が他の四半期を上回る傾向にあり、これらの季節変動を考慮した計画策定を行っております。しかしながら、天候不順による影響等何らかの事由により計画どおりに進捗しなかった場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ③ 事故等に関するリスク

 当社グループの運輸事業である鉄道事業、バス事業及びタクシー事業では、安全に旅客を運送し信頼を得ることが事業を継続する上で不可欠であります。そのため当社グループでは運行管理を徹底しております。しかしながら、不可抗力であるものを含め事故が生じた場合、旅客運送事業者として当社グループの信用力が低下する可能性があります。また、マニュアル等を整備し事故防止に努めておりますが、人為的ミス、不慮の事故等により、当社グループが保有する資産について滅失、劣化又は毀損し、その価値が影響を受ける可能性があり、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業環境に関するリスク

 ① 燃料費、電気・ガス料金、原材料等の高騰に関するリスク

 世界的な原油価格、原材料の高騰、及び為替相場の変動等による、運輸事業における燃料費の増大や主に流通事業及び観光事業における原材料価格及び電気・ガス料金の上昇により、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ② 経済情勢等の変化に関するリスク

 当社グループは長野県を中心に各種事業を展開しております。同地域や国内の経済情勢、観光客の減少、消費動向及び人口動態の変化、消費税率引き上げ等の税制改正に伴う可処分所得の減少等、これらの経営環境の悪化が今後の当社グループの見込みを上回って推移した場合、当社グループの収益低下の要因となる等、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ③ 法的規制に関するリスク

 当社グループの事業は各種法令、自治体による条例等の法的規制の枠組みの中で運営しております。これらの法的規制の強化や法改正が行われた場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの主要な事業における法的規制に関するリスクは、次のとおりです。

イ.流通事業では大規模小売店舗立地法(以下「大店立地法」)、食品衛生法等の法的規制を受けております。大店立地法は売場面積1,000㎡超の新規出店や既存店舗の増床等について、騒音、交通渋滞、ゴミ処理問題等、出店地近隣住民の生活を守る立場から都道府県又は政令指定都市が一定の審査を行い規制するものであります。また、食品衛生法は食品の安全性の確保のために必要な規制その他の措置等が定められております。今後、これらの規制の改廃や新たな法的規制によっては規制を遵守するための設備投資が必要となり、多額の資金と減価償却費負担が発生する可能性があります。この結果、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

ロ.運輸事業では鉄道事業法、道路運送法等の各種法令の適用を受けております。路線の拡大・縮小、運賃及び料金の設定・変更等において必要な手続きが定められており、運賃及び料金の設定・変更を機動的に実施できない場合があることに加え、事業の公益性の観点から大きな方針転換が難しい場合があります。また、今後これら法令の改正内容によっては規制を遵守するための設備投資が必要となり、多額の資金と減価償却費負担が発生する可能性があります。この結果、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

ハ.観光事業では旅館業法、建築基準法、消防法、食品衛生法等の法的規制を受けております。旅館業法により、ホテル・旅館の営業には、都道府県知事等の認可を受け、施設の構造設備や宿泊者の衛生に必要な措置等の基準を遵守する必要があります。また、その他法令で必要な措置等が定められております。今後、これらの規制の改廃や新たな法的規制によっては規制を遵守するための設備投資が必要となり、多額の資金と減価償却費負担が発生する可能性があります。この結果、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

ニ.不動産事業では国土利用計画法、宅地建物取引業法、建築基準法、都市計画法等の法的規制を受けております。当社グループは不動産業者として、宅地建物取引業法に基づく免許を受け、不動産販売の事業を行っております。今後、これらの規制の改廃や新たな法的規制が設けられる場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ④ 会計基準及び税制等に関するリスク

 新たな会計基準の適用や新たな税制の導入・変更により、これに対応するための費用の発生や税負担が増加する可能性や税務申告において税務当局との見解の相違等により、追加の税負担が生じる可能性があります。また、消費税率等の引き上げにより、個人消費に影響が出る可能性があります。

 この結果、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ⑤ 保有資産の価値に関するリスク

 当社グループは不動産等の固定資産及び棚卸資産を多く保有しております。これらの時価が著しく下落した場合、減損損失又は評価損等の計上により、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 営業活動に関するリスク

 ① 人的資源の確保に関するリスク

 当社グループの安定経営と将来の成長には優秀な人材の確保とその育成が重要な課題と認識しておりますが、人材の確保と育成が想定どおりに進まない場合、あるいは人材が流出する場合、人件費が急激に増加する場合には、当社グループの今後の事業の拡大及び業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対して当社グループでは新卒採用に加え経験豊富な人材の中途採用を強化するとともに、人事制度の改定、健全な労働環境の維持、各種研修の実施等で人材の確保と育成に注力しております。

 ② 食の安全に関するリスク

 当社グループは流通事業、観光事業であるホテル・旅館事業、サービスエリア事業を営んでおります。万一、当社グループで取扱う商品において産地偽装や消費期限・賞味期限の改ざん、アレルギー等の食品表示の誤り、ノロウイルスや細菌等による食中毒、異物の混入等「食の安全」を脅かす問題が発生した場合には、営業許可の取消しや営業停止処分、信用・信頼の失墜等により、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対して当社グループでは、お客様の信用・信頼を失うことのないよう、衛生管理の徹底、商品検査の実施、表示に関する法令遵守の徹底等、「食の安全」及び「商品の品質」について最大限の努力を払っております。

 ③ 競合激化に関するリスク

 当社グループの様々な事業は新規参入や競合他社による大規模な投資等により競争の構造が変化し、サービス・商品の品質、価格競争力、原材料調達等において競争優位性が劣後する可能性があります。

 流通事業においては、長野県内でスーパーマーケットの運営をしておりますが、競合他社の積極的な出店やネットスーパー等との競合により、来店客数の減少、売上単価の低下等で当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 運輸事業においては需給調整規制の廃止を柱とする規制緩和が実施されており、バス事業への新規事業者の参入や既存事業者を含めた値下げ競争の発生等により、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、観光事業であるホテル・旅館事業においては県外資本のホテルの進出がある中で、競合他社の新築又は改築したホテルに対して競争力を維持するため、改築を含む多額の設備投資を行う必要があります。こうした施策が有効に機能しない場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ④ 公共交通機関の利用減少に関するリスク

 近年の少子化による高校生等の就学者の減少及びマイカー利用者の増加に伴い、年々公共交通機関の利用者が減少しております。この状況はさらに続くことが予想され、当社グループの運輸事業である鉄道事業及びバス事業の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑤ 運輸事業における補助金への依存に関するリスク

 当社グループのバス事業においては、過疎地域における不採算路線の運行にかかる経費を国や地方自治体からの補助金により一部をまかなっております。将来、制度の改正等により補助金の額が大きく変動するようなことがある場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、鉄道事業においては駅舎、橋りょう、その他運行設備等の安全対策上、将来的に更新投資が必要となりますが、投資金額が多額になることから国や地方自治体からの補助金により投資の一部をまかなっております。将来、制度の改正等により補助金の額が大きく変動するようなことがある場合、鉄道事業の存続が困難になる可能性があります。

 ⑥ 販売停滞による資金回収の長期化に関するリスク

 当社不動産事業では、別荘分譲地として「蓼科高原別荘地」及び「八ヶ岳中央高原四季の森」の区画販売をしております。分譲土地の当連結会計年度末の帳簿価額は1,242,120千円であります。不動産市況の低迷等により販売が停滞した場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ⑦ 新規出店等に関するリスク

 当社グループは入手可能な情報及び一定の前提に基づき新規出店計画等を策定し実行しております。しかしながら、当社グループの前提及び予測が不正確若しくは不十分であった場合に加え、想定外の費用の発生又は新規出店その他の投資計画等の遅延、変更もしくは中止等の様々な事由により、営業損益等が計画どおりに推移しない場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、出店後の店舗・事業所の営業損益が計画どおりに推移しない場合、以後の出店計画を見直す可能性に加え、当該出店時の投資金額の回収が長期化する可能性や賃借先の経営状況により敷金・差入保証金の返還に支障が生じる可能性があります。

 これらの要因により、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)情報システムに関するリスク

 ① システムに関するリスク

当社グループでは、各事業において多くのコンピューターシステムを使用しております。このシステムには、自然災害、停電、回線障害、人的ミス、アクセス急増等の一時的な過負荷、ソフトウエアの欠陥、ハードウエアの故障等によるシステム障害のリスクに加え、取引先を装った偽メール、コンピューターウイルス、不正アクセス等のサイバーテロにより、重要データの喪失等のリスクが存在します。これらのリスクにより、コンピューターシステムに障害が生じた場合は、当社グループの事業活動に大きな支障をきたすおそれがある他、システム復旧等にかかる費用の発生や営業収益の減少等により、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対して当社グループでは、重要データのバックアップ、標的型攻撃メールへの対応訓練、不正アクセス防止のため情報セキュリティ強化等の対策を講じております。

 ② 個人情報等の漏洩に関するリスク

 当社グループは定期券や宿泊、ツアーの申込み、ポイントカード等、事業の過程でお客様の個人情報を収集し、保有しております。万一、個人情報の漏洩等が発生した場合、社会的信用を失うと共に企業イメージを損ない、営業収益の減少、損害賠償の発生等当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対して当社グループでは、情報管理基本規程を制定し従業員へ周知徹底すると共に、個人情報保護方針の策定及び個人情報管理基本規程の制定、並びに個人情報保護に関する従業員の誓約書提出や教育を実施し、管理体制を整備しております。

 

(5)コンプライアンスに関するリスク

 ① コンプライアンスに関するリスク

 当社グループでは、アルピコグループコンプライアンス基本方針の下、コンプライアンスに関する社内規程の周知徹底、コンプライアンス・プログラムによる教育・研修の実施等を通じて、役職員一人ひとりのコンプライアンス意識、知識の向上を図り、法令・社会規範・倫理に則した行動を行うように努めています。また、コンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、コンプライアンスの徹底に取り組んでいます。しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、将来において法令違反等が生じた場合は信用の失墜、罰則金、損害賠償請求、免許・登録等の取り消しや行政処分等により、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ② 重要な訴訟その他の法的手続きに関するリスク

 当社グループでは本報告書提出時点において業績に重大な影響を及ぼす訴訟等を提起されている事実はありませんが、事業を遂行する上で、訴訟等及び規制当局による様々な法的手続きが提起又は開始されるリスクを有しております。当社グループはコンプライアンス規程等を制定し、役職員に対して当該規程等を遵守させることで発生リスクの低減に努めておりますが、相手方との認識の相違等により当社グループの事業活動等が将来重要な訴訟等の対象となり、訴訟その他の法的手段を提起される可能性があります。係る法的手続は相当の時間及び費用を要する可能性があることに加え、仮に当社グループに不利な判決、決定等がなされた場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ③ レピュテーションリスク

 当社グループはアルバイトを含め従業員のコンプライアンス教育等に努めておりますが、当社グループの該当有無に係わらず、報道やインターネットの掲示板等により風評が拡散された場合、又は当社グループが属する業界において重大な事故等が発生し業界全体のイメージが低下した場合、当社グループのレピュテーションが低下し収益低下の要因となる等、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)財務に関するリスク

 ① 資金調達等に関するリスク

 当社グループの事業資金の一部は金融機関からの借入により調達している他、リースを活用して設備投資を行っております。このため、当社グループに対する格付けの引下げ等により信用力が低下した場合、必要な時期に希望する条件での資金調達及びリース組成が困難になる可能性があります。また、当社グループの主要な借入金に係る金融機関との契約には、財務制限条項が付されております。これらに抵触した場合には期限の利益を喪失する等の可能性があります。

これらの要因により、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ② 市場金利の上昇に関するリスク

 当社グループは当社がグループ内の資金を一元的に管理するため、当社が債務者として金融機関からの借入により当社グループ各社の設備資金及び運転資金を調達しております。当社グループは有利子負債の削減に取り組んでおりますが、今後の経済情勢等の変化により市場金利が上昇した場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ③ 固定資産の減損リスク

 当社グループは連結財務諸表を作成するにあたって、固定資産の減損会計に関する見積りを行っております。これらの見積りは、将来に関する一定の前提に基づいて作成しており、当社グループが保有する不動産及びリース物件等の有形固定資産、のれん及びソフトウエア等の無形固定資産においては、将来、事業収支の悪化や不採算事業からの撤退が発生する等、前提と大きく異なる場合、相当の減損による損失が発生するリスクがあります。この場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これに対して当社グループでは、会計上の見積りを行う際に入手可能な情報に基づき合理的な金額を算出するように努めております。

 

(7)その他当社グループの業務に関するリスク

 ① 業務委託や取引先に関するリスク

 当社グループの各事業、それらに付随する業務の全部又は一部について、第三者である外部事業者に対し、配送業務や清掃業務等の業務委託等を行っております。何らかの事由により、委託先又はその再委託先が当社グループの定める基準を満たす業務の提供等をしなかった場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。この他、委託先又はその再委託先において法令等に違反する行為があった場合、当社グループが監督官庁から監督責任を追及される可能性や当社グループの信頼性やイメージが低下し顧客の獲得・維持が困難となる可能性があります。この結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは取引先に対する債権の回収不能という事態を防ぐため、情報収集・与信管理等を行っておりますが、予期せぬ取引先の破綻等により債権を回収できない場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ② 継続企業の前提に関する重要事象等について

 新型感染症拡大の影響により、過年度の業績に多大な影響を受けております。当連結会計年度末において、主要取引金融機関とのシンジケートローン契約は、後述の、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項 (追加情報)」に記載のとおり財務制限条項に抵触しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象が存在しております。

 当社グループはこのような状況を解消すべく、環境変化に耐性のある経営体質への変換を図るとともに、金融機関との間での財務制限条項に抵触しているシンジケートローン契約のすべてにおいて、期限の利益の喪失に係る権利行使をしない旨の同意を得ており、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。しかしながら、対応策が予定どおりに進捗しない場合、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

(1) 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における日本経済は、ウクライナ紛争等に因る資源価格の上昇が物価高や電気料金等のコストアップを招いた他、新型感染症の影響によるサプライチェーンの混乱等により、回復に向けた動きは一進一退の状況が続きました。物価高が消費回復を遅らせており新型感染症の再拡大も見られた半面、宿泊・レジャー・外食等のサービス消費は全国旅行支援の効果も寄与し需要回復が見られました。生産・輸出については設備投資や外需が世界経済の減速の影響を受け、年度末にかけては弱含みで推移いたしました。景気回復は足踏み状態となっており、今後、世界的な景気後退懸念が高まる一方、本邦においては物価高・コストアップや人手不足、金利上昇観測が継続していることから、先行きについては不透明感が増しております。

 このような環境下において、当社グループは、『アルピコグループ中期経営計画(Change & Challenge 2023)』に取り組んでおり、「大胆な構造改革による生産性向上」「新たな事業価値の創造と実践」「企業文化の変革」を3つの基本方針としております。主要事業別では、流通事業においては、「店舗、本部業務の効率化」「店舗外販売チャネルの拡大」等に、運輸事業においては、「車両、人員配置の適正化」、「タクシー配車アプリの導入」等に、観光事業においては、「ホテル内業務の集約・統合」「新たな観光・旅行資源の開発」等に取り組んでおります。

 この結果、当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日)の連結営業収益は92,637,628千円と、前連結会計年度に比べ4,840,839千円増加(前期比5.5%増)となりました。また、連結営業利益は545,377千円と、前連結会計年度に比べ2,095,845千円改善(前連結会計年度は1,550,467千円の営業損失)となりました。

 当連結会計年度より、従来の「レジャー・サービス事業」から「観光事業」へとセグメントの名称を変更しております。なお、当該セグメントの名称変更によるセグメント情報に与える影響はありません。

 

 当連結会計年度のセグメント別の概況は次のとおりであります。

 流通事業の営業収益は71,098,677千円と、前期に比べ682,031千円減少(前期比1.0%減)となりました。また、営業利益は1,297,447千円と、前期に比べ667,514千円減少(前期比34.0%減)となりました。

 運輸事業の営業収益は10,707,863千円と、前期に比べ2,191,858千円増加(前期比25.7%増)となりました。また、営業損失は104,533千円と、前期に比べ1,536,750千円改善(前期は1,641,283千円の営業損失)となりました。

 観光事業の営業収益は9,481,497千円と、前期に比べ3,266,554千円増加(前期比52.6%増)となりました。また、営業損失は155,855千円と、前期に比べ1,255,192千円改善(前期は1,411,048千円の営業損失)となりました。

 不動産事業の営業収益は1,286,033千円と、前期に比べ36,334千円増加(前期比2.9%増)となりました。また、営業利益は120,350千円と、前期に比べ8,292千円減少(前期比6.4%減)となりました。

 その他のサービス事業の営業収益は345,714千円と、前期に比べ40,046千円増加(前期比13.1%増)となりました。また、営業利益は70,115千円と、前期に比べ22,740千円増加(前期比48.0%増)となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末と比べ76,757千円減少(前期比2.8%減)し、2,687,383千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益222,789千円に、減価償却費3,156,053千円、のれん償却額305,533千円、減損損失235,291千円、売上債権の増加額470,995千円、等の項目を加減した結果、3,538,780千円の資金収入(前期比52.8%増)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出2,636,060千円、無形固定資産の取得による支出208,347千円、補助金収入304,235千円等により、2,470,918千円の資金支出(前期比51.6%増)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入6,820,000千円、長期借入金の返済による支出7,049,013千円、リース債務の返済による支出977,993千円等により、1,144,619千円の資金支出(前期比29.1%減)となりました。

 

(3) 生産、受注及び販売の実績

 当社グループの各事業は、受注生産形態をとらない事業であるため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 なお、販売の状況については、「(経営成績等の状況の概要) (1)財政状態及び経営成績の状況」における各事業の区分の業績に関連づけて示しております。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討等)

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2023年3月31日)現在において判断したものであります。

(1) 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 財政状態

(資産合計)

 当連結会計年度末における資産総額は54,307,459千円となり、前連結会計年度末に比べ41,758千円増加いたしました。これは、主に売上債権の増加等によるものであります。

(負債合計)

 負債総額は44,517,549千円となり、前連結会計年度末に比べ84,802千円増加いたしました。これは、主に仕入債務の増加等によるものであります。

 純資産残高は親会社株主に帰属する配当金の支払等により、前連結会計年度末に比べ43,043千円減少し、9,789,909千円となりました。

 

② 経営成績

(営業収益)

 当連結会計年度における連結営業収益は、主に運輸事業における都市間高速路線バス及び貸切バス、また観光事業においてホテル旅館事業の宿泊を中心に回復がみられ売上が増加したこと等から、前連結会計年度に比べ5.5%増の92,637,628千円となりました。

(営業費)

 当連結会計年度における運輸業等営業費及び売上原価は、売上増加に伴う売上原価の増加等から、前連結会計年度に比べ2.4%増の66,126,258千円、販売費及び一般管理費では4.8%増の25,965,992千円となりました。

(営業利益)

 当連結会計年度における営業利益は、流通事業おいて営業収益が減少する一方、人件費及び経費の抑制により、前連結会計年度に比べ2,095,845千円増加し545,377千円(前連結会計年度は1,550,467千円の営業損失)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益が増加したこと等により、72,528千円(前連結会計年度は643,116千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(経営成績等の状況の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(3) 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営に影響を与える大きな要因としては、従来から認識していた、労働人口の減少、消費行動の変化、社会規範の厳格化、技術革新の加速等に加えて、新型感染症の流行の長期化を大きな要因として認識しております。

 これらの事業環境に対応すべく、長野県内における各事業シェアの拡大、保有・運営する施設と商品及びサービスの質の向上、経営資源の効率活用や経営基盤の強化に取り組んでおります。

 ここ数年の具体的な取組として、流通事業におきましては、食品スーパー「デリシア」50店舗及び業務スーパー「ユーパレット」8店舗の合計58店舗の展開に加え、移動販売「とくし丸」を29台運行、ネットスーパーを15拠点で展開しマルチチャネル化による顧客・マーケットの拡大、深耕を進めております。また、株式会社デリシアは、調剤薬局事業及びドラッグストア事業を営んでいる株式会社マックドラッグを子会社化し、OTC医薬品販売取扱い店舗拡大や、調剤薬局事業への進出を進めております。運輸事業におきましては、アルピコ交通大阪株式会社及びアルピコ交通東京株式会社をアルピコ交通株式会社に吸収合併し、また、アルピコタクシー株式会社を株式交換によりアルピコ交通株式会社の子会社とし経営の効率化を図っております。観光事業におきましては、中核会社の東洋観光事業株式会社を、ホテル・旅館の運営を担うアルピコホテルズ株式会社と、主に蓼科地区での別荘・ゴルフ場運営等を担うアルピコリゾート&ライフ株式会社との2社に分社化しそれぞれの専門性を十分発揮できる体制といたしました。

 このような諸施策の実行に加えて、当社グループは以下の事業戦略を確実に実施してまいります。

・外部環境に左右されない強靭な経営基盤への変革

・SDGsに取り組み、社会課題解決に資すること

・グループ内の経営資源の活用による事業シナジーの創出

・新たな事業価値の創造と実践に向けた新規事業開発

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性

(資金需要)

 当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、流通事業における仕入原価及び物流費、運輸事業における車両維持管理費、その他各事業における一般管理費等があります。また、設備資金需要としては流通事業における老朽化店舗への更新投資、運輸事業における車両更新投資、観光事業におけるホテル・旅館等に対する設備投資等があります。

(財務政策)

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、金融機関からの借入により資金調達を行い、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)により効率的に資金を運用しております。また、運転資金及び設備資金につきましては、当社において一元管理しております。

 当社グループの主要な事業資産に対しては、各事業を取り巻く事業環境を考慮したバランスのとれた投資を行うことで、回収効率を高め、当社グループの全体の有利子負債の削減を図ってまいります。

 また、資金調達コストの低減に努める一方、過度の金利変動リスクに晒されないよう、借入の一部について金利スワップ等の手段を活用しております。

 

(5) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループが、中期経営計画「Change & Challenge 2023」において定めた主な指標等は次のとおりであります。

 ①生産性向上に向け、グループ間接部門業務の集約と合理化・システム化に取り組みます。

 ②経営体質の強靭化に向け、事業構造の変革により高い固定費比率の改善と労働生産性の向上に取り組みます。

 ③事業価値の創造に向けて、新たな収益の柱の構築に取り組みます。新技術や新サービスをグループ横断的に導入し連携を強化します。

 ④企業文化の変革に向けて、従業員のモチベーションとエンゲージメントの向上を図ります。

 

(6) セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(流通事業)

 流通事業は、長野県内において2023年3月末現在で食品スーパー「デリシア」50店舗(内フランチャイズ1店舗)及び業務スーパー「ユーパレット」8店舗の合計58店舗の展開に加え、移動販売「とくし丸」を29台運行、ネットスーパーを15拠点で展開しマルチチャネル化による顧客・マーケットの拡大、深耕を進めております。当連結会計年度は物価高によるお客様の消費マインドの低下が顕著に見られ、前期比では減収となりました。

 損益面では、原材料、仕入価格の高騰による粗利益率の悪化、電気料金の高騰等が利益の押下げ要因となりました。

 これらの結果、流通事業の営業収益は71,098,677千円と、前期に比べ682,031千円減少(前期比1.0%減)となりました。また、営業利益は1,297,447千円と、前期に比べ667,514千円減少(前期比34.0%減)となりました。

(運輸事業)

 新型感染症の影響により需要の回復に足踏みが見られた一方、都市間高速路線が年度末にかけては回復の動きが顕著となりました。また、全国旅行支援や入国制限の緩和により観光利用は一定程度回復した他、イベント輸送や貸切バス利用も回復し、バス事業全体で 前期比増収となりました。

 タクシー事業は、新型感染症の動向に敏感に左右される中、主力の市街地乗用利用に回復の動きが見られた他、燃料価格補助金等の受給もあり、前期比増収となりました。

 鉄道事業は、2021年8月の豪雨による田川橋りょう被災の復旧工事の完了により、全線にて運行が再開(2022年6月)され、通勤通学等による定期利用客や観光利用に回復が見られ、前期比増収となりました。

 これらの結果、運輸事業の営業収益は10,707,863千円と、前期に比べ2,191,858千円増加(前期比25.7%増)となりました。また、営業損失は104,533千円と、前期に比べ1,536,750千円改善(前期は1,641,283千円の営業損失)となりました。

(観光事業)

 ホテル・旅館事業は、松本市内5施設、諏訪市内1施設の全6施設において宿泊を中心に回復が見られ、前期比増収となりましたが、宴会利用の本格的な需要回復には至っておりません。この間、人手不足が顕在化し稼働率向上に向けてのボトルネックとなりました。

 サービスエリア事業は、秋の観光シーズンや年末年始の連休期間中に行動制限が実施されず、また、年度末にかけては立寄り客の増加が顕著となり前期比増収となりました。

 旅行事業は、新型感染症の動向に大きく左右され本格回復には至らず、コロナ禍前(2019年度実績)との比較では営業収益は5割程度に留まるものの、修学旅行等の教育関連を中心に一定の収益を確保した他、全国旅行支援等の効果も加わり前期比では増収となりました。

 これらの結果、観光事業の営業収益は9,481,497千円と、前期に比べ3,266,554千円増加(前期比52.6%増)となりました。また、営業損失は155,855千円と、前期に比べ1,255,192千円改善(前期は1,411,048千円の営業損失)となりました。

(不動産事業)

 テナント賃貸事業は、新型感染症のワクチン接種会場として空きフロアの利用が継続する等、前期比増収となりました。また、別荘分譲地管理事業は、都市圏からの移住需要等を背景に茅野市の「蓼科高原別荘地」及び原村の「八ヶ岳中央高原四季の森」分譲地の区画販売と別荘工事受注が堅調に推移しましたが、原価高により利幅の圧縮を余儀なくされました。

 これらの結果、不動産事業の営業収益は1,286,033千円と、前期に比べ36,334千円増加(前期比2.9%増)となりました。また、営業利益は120,350千円と、前期に比べ8,292千円減少(前期比6.4%減)となりました。

(その他のサービス事業)

 保険代理店事業は、既存顧客への多種目提案により保険契約が増加すると共に、保険ショップ第1号店の開店(2022年9月)も寄与し、前期比増収となりました。

 これらの結果、その他のサービス事業の営業収益は345,714千円と、前期に比べ40,046千円増加(前期比13.1%増)となりました。また、営業利益は70,115千円と、前期に比べ22,740千円増加(前期比48.0%増)となりました。

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

当連結会計年度において、研究開発活動は行っておりません。